デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議(第7回)議事録

1.日時

令和2年12月22日(火曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省東館3階 3F1特別会議室 ※Web会議での開催

3.議題

  1. 教科書制度の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

青山委員、赤堀委員、片山(敏)委員、片山(弘)委員、加藤委員、黒川委員、齋藤委員、柴田委員、清水委員、白鳥委員、中川委員、中野委員、東原座長代理、平方委員、福山委員、堀田座長、宮原委員、森委員、石戸委員

文部科学省

塩見大臣官房審議官、浅野初等中等教育局企画課長、中川初等中等教育局視学委員、齋藤情報教育・外国語教育課課長補佐、神山教科書課長、高見教科書課教科書企画官、度會教科書課課長補佐

5.議事録

デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議(第7回)

令和2年12月22日



【堀田座長】 ただいまから,デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議の第7回会議を開催させていただきます。本日も,皆様お忙しい中,御出席いただきまして,ありがとうございます。
今回も新型コロナウイルスの感染状況を踏まえまして,ウェブ会議方式としております。
本日の議題は,「教科書制度の在り方」ということで,二つのことを御議論いただく予定です。一つ目は,先般より議論しております,学習者用デジタル教科書の使用を各教科等の授業時数の2分の1未満とする現行の基準の見直しについて,二つ目は,学習者用デジタル教科書の普及促進と円滑な導入の在り方について,皆様に御議論いただきたいと思っております。
それでは,事務局より資料確認をお願いいたします。
【度會課長補佐】 事務局でございます。議事次第を御覧ください。本日の資料は,資料1から4及び参考資料となっております。参考資料は,赤字になっている箇所が前回いただいた御意見となっております。不足等ございましたら,事務局まで御連絡いただければと存じます。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございます。まず報告事項から入ってまいります。予算のことについて,事務局より御報告をお願いいたします。
【度會課長補佐】 事務局でございます。資料1を御覧ください。来年度予算事業でございます,「学習者用デジタル教科書普及促進事業」について御説明いたします。
昨日,来年度の政府予算案が閣議決定され,本事業の予算額(案)は約22億円となっております。概算要求段階では約52億円でございましたが,その時点から大きな変更となった点について御報告申し上げます。
事業内容のうち,「①学びの保障・充実のための学習者用デジタル教科書実証事業」について,変更がございます。概算要求時には,7割程度の学校を対象とすることを想定しておりましたが,こちらを5割程度とする方向で考えております。また,対象の経費について,概算要求時には,中学校の全学年の2教科分の学習者用デジタル教科書の経費とする方向で検討しておりましたが,こちらを1教科に変更しております。
大きな変更点は以上です。「②学習者用デジタル教科書のクラウド配信に関するフィージビリティ検証」及び「③学習者用デジタル教科書の効果・影響等に関する実証研究」については,概算要求段階から変更等はございません。
この事業を通じて,学習者用デジタル教科書の普及促進に努めてまいりたいと考えておりますので,引き続き御指導のほどよろしくお願いいたします。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。資料1につきまして,質問等ございますでしょうか。
私から1点補足させていただきます。今回,52億円の概算要求をしていたところ,22億円に減額となってはおりますが,初等中等教育の義務教育段階の予算として22億円というのは実は桁違いに大きな予算額であり,政府としても相当な力を入れているということでもございます。
GIGAスクール構想により令和2年度中に端末が入り,令和3年度に,学年・教科限定とはいえ,学習者用デジタル教科書をできるだけ多くの学校現場で活用できる機会を提供するための予算でございます。教科書発行者等にも非常に御苦労をおかけすることになりますが,この分野の前進に向けては非常に貴重な予算だと考えております。
それでは,先に進んでまいります。本日は二つの事項について御議論をいただきますが,まず,学習者用デジタル教科書の使用を各教科等の授業時数の2分の1未満としている現行の基準の見直しにつきまして,事務局より御説明をお願いします。
【度會課長補佐】 事務局でございます。学習者用デジタル教科書の使用を各教科等の授業時数の2分の1に満たないこととする基準の見直しについて,御説明申し上げます。
資料2の1ページを御覧ください。まず「1.検討の経緯」について,三つ目の白丸に記載してございますが,現在,GIGAスクール構想により1人1台端末環境が急速に進むとともに,令和3年度において小中学校用の教科書の約95%でデジタル教科書が発行される見込みである等,デジタル教科書を巡る環境整備が進展しております。このような状況を踏まえ,令和2年10月23日,萩生田文部科学大臣より,デジタル教科書をより有効に使用できるようにするため,その使用を各教科等の授業時数の2分の1に満たないこととする現行の基準の見直しについて,本検討会議における検討を加速するよう御指示があり,この基準について,他のデジタル教科書に係る論点に先行して一定の方向性を示すこととなりました。
続きまして,「2.デジタル教科書を取り巻く状況」について,先ほど申し上げましたとおり,1人1台端末環境が進むとともに,令和3年度においては,小中学校用の教科書の約95%においてデジタル教科書が発行される見込みであること等に加え,2ページの(3)を御覧いただければと存じますが,諸外国においても―――教科書制度自体,その定義や検定等の制度,使用義務の有無,有償か無償か等,様々な観点において異なっておりますが―――国によってデジタル教科書の活用の状況は異なっております。
このうち,例えば韓国では,使用義務のある教科書の中に紙の教科書もデジタル教科書も含まれており,初等学校の中・高学年,中学校,高校の一部教科でデジタル教科書が開発・使用されております。2015年から希望する全ての学校で使用が可能となっており,2018年8月現在,初等学校の80.4%,中学校の69.8%においてデジタル教科書が使用されております。
また,確認できた限りではございますが,諸外国において,デジタル教科書の使用を各教科等の授業時数の2分の1に満たないこととする基準に相当する制度は見受けられません。
続きまして,「(4)現行基準等に関する実証研究校の意見」を御覧ください。令和元年度に実施した「デジタル教科書の効果・影響等に関する実証研究事業」における調査結果によれば,「学ぶことに興味や関心を持つことができる」,「学習を振り返り,次の学習につなげることができる」,「自分の考えを繰り返し書き直したり,考え直したりすることができる」,「直接書き込んだり消したりを繰り返せることは,考えるときに便利である」,「書き込みをしたデジタル教科書を見せることは,自分の考えを説明するのに役立つ」,「グループでの話合いで,書き込みをした教科書を見比べることは,話し合いに役立つ」と考える児童生徒が多く見られたところです。
また,現行基準につきまして,実証を行った学校現場の教員には,デジタル教科書の使用を制限する必要性は感じられていないことが分かっております。具体的には,「制約がなく自由に使えるほうがよい」,「2分の1未満の使用の義務化は必要性を感じない」,「必要に応じて多様な授業が可能になると考えるから2分の1以上使えるようにしてほしい」という意見がございました。
続きまして,「3.児童生徒の健康に関する留意事項や対応方策」に関し,まず「(1)デジタル教科書を使用する際の健康に関する留意事項」について申し上げます。本検討会議の第4回で議題として扱わせていただいたところ,その過程で示された専門家の主な意見を整理させていただいております。
まず,デジタル教科書を見る時間の考え方について,前提として,紙であるかデジタルであるかを問わず,長時間にわたって継続して近距離で注視することは,視力低下の予防の観点から避けるべきであり,また,近距離でないとしても,長時間継続した注視は,目や体の疲労の原因となることが指摘されております。
また,学校における授業では,常に手元の教科書を見ているわけではなく,黒板を見る,大型提示装置を見る,先生のほうを見る等,手元の教科書との距離と比べて遠くを見る状況が通常であり,これはデジタル教科書を利用する場合も同様であることから,それが目の休憩にもつながるものと考えられます。
併せまして,授業者の側でも,児童生徒が長時間にわたって端末の画面を注視しない等,目や体の疲労を軽減するように工夫することが重要です。具体的には,授業で端末を使用する場合は,30分に1回,20秒程度,画面から目を離して目を休めるように指導したり,端末を見続ける一度の学習活動が長くならないようにしたりする等,健康面にも配慮した授業展開とすることが望まれます。
次に,目と端末の画面との距離について,30センチメートル程度以上離すということが非常に重要であり,20センチメートル間隔で見ることは避け,30センチメートルから50センチメートル離して見ることが必要です。令和元年度に実施した実証研究事業における調査結果におきましても,「良い姿勢が出来た」,「画面との目の距離を30センチメートル以上離せた」と回答した生徒のほうが,目が疲れていないと感じている傾向が見られたところです。
また,良い姿勢で画面との視距離を保つことが,目の健康から重要です。これは,姿勢が悪い状態で斜めに見ていると,右目と左目で映像が変わることにより,目に負担がかかるためです。また,近くを長く凝視していると,まばたきの回数が減りドライアイになりやすいことから,この点についても留意が必要です。このため,視距離が短くなってしまう児童生徒への指導を行うことが必要となってまいります。
続いて,適切な学習環境等について,学習環境の観点から,端末の画面の反射を抑えることや,画面への映り込みを防止することも重要であるため,児童生徒に対し,端末の画面の角度を調整するよう指導することが必要です。
端末の画面の見えにくさの原因やその改善方策,児童生徒の姿勢に関する指導の充実など,教員や児童生徒が授業においてICTを円滑に活用するための留意事項について,既存の「児童生徒の健康に留意してICTを活用するためのガイドブック」にも記載しているため,これを参考にすることが適当であると考えております。
なお,色覚異常を有する児童生徒は一定数いると言われていることから,授業において,教科書の色名のみで指示等をせず,教科書も色合いだけでなく,コントラストに差をつける等の工夫をすると見やすくなると考えられます。
次に,「(2)留意事項を踏まえ必要となる対応方策」について,先ほど来申し上げてきたことを踏まえれば,現行基準が見直されたとしても,デジタル教科書を連続して見る時間,目と端末の画面との距離,適切な学習環境等に留意することにより,健康面に適切に配慮しつつ使用することが可能であると考えられます。
こうした留意事項がしっかりと守られるようにすることが対応方策として重要でございますが,さらに児童生徒の健康を確保するため,今から申し上げる取組を併せて行うことが適当であると考えられます。
まず,児童生徒の健康の状況の把握について,学校においては,教員が児童生徒の健康観察を行い,それを踏まえて指導を行うことも必要になると考えられます。その指導に当たっては,児童生徒の発達段階に応じて行うことが必要です。
また,心身への影響が生じないよう,日常観察や学校健診等を通して,学校医とも連携の上,児童生徒の状況を確認するよう努めることが重要であり,必要に応じて,眼精疲労の有無やその程度等心身の状況について,児童生徒にアンケート調査を行うことも考えられます。
続きまして,家庭における留意事項といたしまして,家庭における使用の在り方について,学校におけるデジタル教科書の使用上の留意事項を家庭においても守るように指導することが必要です。その他,例えば,睡眠前に強い光を浴びると,入眠作用があるホルモンでありますメラトニンの分泌が阻害され寝つきが悪くなることから,睡眠前の強い光を発するICT機器の利用を控えることが適切であることなど,家庭で特に留意すべき事項も指導することが適当であると考えられます。
次に,健康に関する意識の醸成も重要であり,健康面に留意するという視点をまずは教員が理解し,そのことを授業等における指導によって児童生徒に伝え,さらには保護者の方々にも適切に説明をすることによって,児童生徒がデジタル教科書を使用するに当たっての配慮を,学校と家庭が協働して行うことが可能になると考えられます。
また,児童生徒が,自らの健康について自覚を持ち,リテラシーとして習得した上で学習に取り組めるようになることも重要です。例えば,目の疲労を感じたら目を休める,遠くを見る等の行為が必要になると考えられます。
続いて,学校現場等への周知について,今後,デジタル教科書の普及促進を図っていく上で,児童生徒の健康に関する留意事項を含め,効果的な活用の在り方等を学校現場等に周知していくことが求められるところ,既存のガイドラインの改訂等の対応が必要になってくると考えられます。
そして,デジタル教科書以外を含むICT機器の活用との関係について,現行基準の見直しは,学校の授業における使用に係るものではありますが,中長期的に見ると,授業における使用の比重が高まれば,自ずと授業時間以外の学習等におけるICT機器の活用の度合いが高まることも考えられます。
このため,デジタル教科書以外も含めた児童生徒のICT機器の活用状況及び児童生徒の視力等の状況について調査を行うこと等により,今後のICT機器の活用状況の変化と児童生徒の健康面への影響との関係についても確認を行っていくことが望まれます。
最後に,「4.現行基準の見直しに係る方向性」につきまして,これまで申し上げてきたことを踏まえれば,デジタル教科書の使用を各教科等の授業時数の2分の1に満たないこととする現行基準について,児童生徒の健康に関する留意事項について周知・徹底を図り,必要な対応方策を講じるとともに,ICTの活用に係る教員の指導力の向上のための施策等を講じていくことを前提として,デジタル教科書の活用の可能性を広げて児童生徒の学びの充実を図るために,撤廃することが適当であると考えます。
なお,重要な点として,現行基準を撤廃するとしても,それはデジタル教科書を各教科等の授業時数の2分の1以上において必ず使用しなければならないということを意味するものではなく,あくまでも必要に応じてデジタル教科書をより有効に使用できる環境を整えるための措置であり,その旨を関係者間で十分に共有する必要があると考えます。
事務局からは以上でございます。御議論のほどよろしくお願いいたします。
【堀田座長】 ありがとうございました。これまでの議論を基に,事務局にて見直しの方向性の案を作っていただいたところでございます。これにつきまして,委員の皆様方に御意見をいただければと思います。
その前に,資料2の参考資料についても事務局より簡単に説明いただきます。
【度會課長補佐】 事務局でございます。まず参考資料1につきましては,学習者用デジタル教科書について定めている学校教育法と学校教育法施行規則,そして現行の基準を定めている告示を参考として載せさせていただいております。参考資料2につきましては,本体資料上の3ページで,「『学習者用デジタル教科書の効果的な活用の在り方等に関するガイドライン』において示している内容に加え」というような記載があるところ,その関係する部分の抜粋を載せさせていただいております。
【堀田座長】 ありがとうございます。参考資料1にありますように,2分の1の基準は,学校教育法そのものでも,その下の施行規則でもなく,その下の告示において規定されております。この見直しに係る検討を現在していることになります。
それでは,御議論いただきたいと思います。まず,柴田委員,お願いいたします。
【柴田委員】 東京福祉大学の柴田でございます。今御説明いただいた案で異論はございません。もちろん,健康面に十分に留意をして使っていく必要があるという考えに変わりはございませんが,学びの充実を図るために,2分の1という基準は特に必要ないだろうと思います。
ただ,先ほどの説明の中にもありましたけれども,学校現場への周知の仕方,しっかりと学校の先生,学校に伝えるということが非常に重要になると思います。また,こちらも先ほどの説明の中でありましたが,発達段階に応じて,例えば低学年の児童に対してどのように健康面に関することを指導していくのか,高学年に対してはどうかという辺りをしっかりと考えていく必要があると思っています。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。赤堀委員,お願いします。
【赤堀委員】 赤堀でございます。よろしくお願いいたします。今回の案につきまして,様々にお骨折りいただきまして,ありがとうございます。学校としましては,児童の健康に関する留意事項を中心に記載されている点が大変よいのではないかと考えております。
また,先ほど柴田委員のお話にもありましたけれども,あくまでも学習者用デジタル教科書を使うのはよりよい授業をつくるためのもの,すなわち,可能性を広げて,子供たちの学びの充実を図るためのものであるということ,加えて,必要に応じてより有効に活用できる環境を整えるための措置であるということが示されている点についてもありがたく思っています。
前回も申し上げましたけれども,本来であれば,次年度以降も継続して行われる効果検証によって,健康面や学力向上に関する効果等に対する有効性が明らかになってから撤廃すべきであるという考え方に変わりはございません。ただ,基準がなくなった環境で,紙の教科書との併用を前提にして,指導者の選択の幅が広がることで,よりよい授業ができるようになることを期待しております。
本文について二つ申し上げます。一つ目は,6ページの「健康に関する意識の醸成」の1点目の後半,「児童生徒がデジタル教科書を使用するに当たっての配慮を」という文言についてです。もちろん,この点は教員が意識することが大事ですし,家庭との連携・協働も必須になってまいりますが,デジタル教科書のみではなく,1人1台端末環境全般に関わる内容なのではないかと思います。その観点にたった表記にしていただくべきではないかと思いました。
二つ目に,「デジタル教科書以外を含むICT機器の活用との関係」の1点目の後段,「自ずと授業時間以外の学習等におけるICT機器の活用の度合いが高まることも考えられる」という記述について,趣旨を御説明いただければと思っております。
以上です。
【堀田座長】 いただいた御質問は後でまとめてとさせていただきます。続いて中野委員,お願いいたします。
【中野委員】 よろしくお願いいたします。まず今回の骨子案の趣旨については異論ございません。
しかしながら,4ページの「目と端末の画面との距離」の項目に,障害のある児童生徒に関する留意点の記載をお願いしたいと思います。ポイントは,「障害のある児童生徒にとって適切な端末や設定の選択が必要であること」と,「視力等によっては,30センチメートルの視距離が確保できないことがあること」です。例えば,「障害のある児童生徒の場合,目と端末の画面との距離を確保するためには,端末の画面サイズや設定等を考慮する必要がある。また,視力等の影響で30センチメートル程度以上の視距離を確保することが困難な場合には,医師等のアドバイスを受けることが必要である」という趣旨の記述の追加をお願いしたいと思います。
以上です。
【堀田座長】 具体的にありがとうございました。続きまして,福山委員,お願いいたします。
【福山委員】 見直しの方向性案をお示しいただき,ありがとうございました。教師も生徒も,ICT活用の練度を高め,ICTリテラシーや情報活用能力を身につけるためには,「使いたい」という意欲や主体性が大切であること,また,意欲や主体性を持たせるためには,自由に使える環境が必要であるということ,これらについては,私も同意でございます。
一方,前回の会議において,現段階では様々な面で懸案事項がございますので,2分の1の基準の撤廃については慎重に対応していただきたいと申し上げました。ただ,本日御提示いただいた基準の見直し案には,懸案事項についての留意点や対応方策が示されており,学校現場の声が踏まえられたものとなっておりますので,2分の1の基準をなくすことに反対はいたしません。今後,留意点等を注視しながら,前に進めていければと考えております。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。続きまして,片山敏郎委員,お願いいたします。
【片山(敏)委員】 お願いいたします。趣旨については賛同いたします。
先ほどの赤堀委員の一つ目の御意見とも重なりますが,既にGIGAスクール端末の実際の活用が始まっていますので,この観点から,例えば目安として,30分使用したら目を休めるように指導する,目の健康のため30センチメートル以上離すといったことが周知徹底される必要があると考えています。
新潟市においては,GIGAスクールに関するガイドラインを策定し,その中で今挙げたような文言を入れております。今後検討の上,次の改訂で示すということではなく,子供たちの活用が実際に始まっている今,すぐにでも目の健康を守るということを重視した対処が必要かと思っております。
以上です。よろしくお願いします。
【堀田座長】 ありがとうございました。続いて,齋藤委員,お願いいたします。
【齋藤委員】 齋藤です。よろしくお願いいたします。見直しの案の趣旨やこれまでの委員の皆様の御意見に関して,私からは特に異論はございません。2分の1の基準の撤廃に関して,外国人児童生徒の教育という立場から,改めて2点申し上げさせていただきます。
1点目に,外国人児童生徒に教えるのは,通常学級の担任教員ではなく,取り出し授業で日本語指導を担当する先生である場合が多いかと思います。その際,特別な教育課程を編制する場合には,子供たちの学びをサポートする上で,学年を超えて他学年の内容を扱うことも積極的に考えられると思っております。その観点から,ぜひともデジタル教科書の弾力的な使用の在り方を認めていただきたいと思っておりましたので,まずは2分の1の基準が撤廃されることにより,現場も非常に使いやすくなるのではないかと思っております。
また取り出し授業の場合には,国語の授業をずっと行うというよりは,必要に応じて,今日は国語,明日は算数,といった時間割で指導を行う可能性もありますので,「2分の1という基準がある,ない」というよりは,「柔軟に使うことができる」というメッセージに非常に大きな意味があると感じており,今回の御提案に大変感謝しているところです。
さらに,特別支援教育を受ける児童生徒と共通している部分としましては,音と文字とを一体化して把握する,あるいは文字の文章ではなかなか理解が進みにくいところを,音声で聞くことによって理解できる場合が多くございますので,その点でも非常に有益だと考えております。また,アニメーション等の機能の活用によっても,非常に理解が進むかと思っておりますので,今回の2分の1の基準の撤廃については,外国人児童生徒を支援する立場としても,非常にありがたいと思っております。
以上です。ありがとうございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。続きまして,中川委員,よろしくお願いたします。
【中川委員】 よろしくお願いします。中川です。今回の御提案に異論はありません。懸案事項にとてもきめ細かく留意を記載いただいたと感じております。
前回の会議以降,既に学習者用デジタル教科書を使っている学校の教師に独自にヒアリングをしましたけれども,一番多かったのが,「GIGAスクール構想により児童生徒1人1台端末環境の実現が既に進んでおり,ほかのアプリやソフト等の活用には制限がないのに,なぜ学習者用デジタル教科書だけ制限があるのか」という意見でした。
片山敏郎委員の御発言にありましたように,端末の活用全体として検討されている自治体は少なくないのではないかと想定しています。もちろん,健康面に留意することは大前提だと思います。
さらに,来年度予定されている実証事業を進める上で,各教科等の授業時数の2分の1未満という制限がないほうが,より有効に活用することが期待できるという観点からも,撤廃が望ましいと思っています。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。清水委員,お願いいたします。
【清水委員】 私も今回の御提案に賛成でございます。委員の皆様方がおっしゃっていたとおりかと思います。特に,子供たちの健康面と家庭における留意事項についても細かく御提案をしていただいておりますので,ここのところは私からもお伝えしていた観点が非常にしっかりと入っていると感じております。
また,6ページの「健康に関する意識の醸成」に,学校の先生方と家庭が協働して配慮しながら意識を高めていくという点が記載されていることや,7ページの最後の項目に,2分の1以上使わなくてはならないわけではないという点が記載されていることにも,非常に賛成できるかと思います。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございます。続きまして,片山弘喜委員,お願いいたします。
【片山(弘)委員】 片山です。よろしくお願いいたします。案についての御説明ありがとうございました。説明の内容や趣旨については,私も賛成です。
ただ,少し細かいところではありますが,1点修正をしたほうがよいのではないかと考えられるところがございます。4ページの一つ目の文章の文末に,「それが目の休憩にも繋がるものと考えられる。」との表記があります。一方,その下の文章に,「目を休めるよう指導したり」という表記がありますが,黒板を見る,大型提示装置を見るということだけで目の休憩につながるとは考えづらいのではないかと思いますので,この点については修正をしたほうがよいのではないかと思います。
以上です。
【堀田座長】 御指摘ありがとうございます。
事務局にてこの案文を作成するに当たって,これまでの議論の中で皆様からいただいた数多くの御意見に配慮していただきましたので,その結果,多くの委員の先生方に御賛同いただけたのではないかと思います。
事務局から補足や質問に対するコメントはありますでしょうか。
【度會課長補佐】 事務局でございます。先ほどの赤堀委員からの御指摘にありました,6ページの「デジタル教科書以外を含むICT機器の活用との関係」の1点目については,デジタル教科書の使用が増えていくと,それに伴いデジタル教科書以外も含めた様々なコンテンツの使用も増え,ICTそのものに慣れ親しんでいくことが想定されるという趣旨でございます。
また,片山弘喜委員から御指摘いただいた点については,文言等検討させていただきます。
【堀田座長】 ありがとうございました。
私からも座長としてコメントさせていただきます。2分の1の基準の設定を決めた時点では,GIGAスクール構想が実現するとはとても考えられなかったという現実がありました。また,教科書制度という非常に大きな制度がある中で,「デジタルでもよい」という新たな規定に踏み込むに当たって,一種の規制のような形で出てきた部分もあるかと思います。
しかしながら,先ほど中川委員がおっしゃったように,ほかのデジタル教材には特に「どこまで使ってよい」という決まりはなく,また,子供たちはそのほかにもICTのツールを使います。教育データの利活用の観点からいえば,それらがシームレスにつながっていくような時代を想定しておりますので,デジタル教科書にだけ「教育課程の2分の1を超えない」という基準を定めておくことが,今日においては十分な意味をなさないのではないかという意見が多くあり,今回の検討につながっているところです。
なお,事務局の御説明にもありましたけれども,デジタル教科書については平成30年12月にガイドラインが作られています。このガイドラインもGIGAスクール構想が打ち出される前に出来ていますので,皆様の御意見を踏まえて,2分の1の基準の見直しも含め,ガイドラインの微修正を行うこととなる旨,付け加えておきたいと思います。
そういうことを前提に,お示ししている見直しの案については,本日の御議論を踏まえて事務局が修正をし,公表します。この日程につきましては,文部科学省と相談しながら,座長の私が判断してまいりたいと思います。したがって,この後は座長一任という形にさせていただければと思いますが,御異議はございますでしょうか。
御反対はなかったということで,事務局と相談しながら公表に向けて進めてまいりたいと思います。
とりわけ,学校現場の先生方からは非常に貴重な御意見をいただき,それを踏まえることでよい文案が出来たのではないかと思っております。本当にありがとうございました。
それでは,二つ目の議題に参ります。学習者用デジタル教科書の普及促進と円滑な導入の在り方につきまして,資料3に沿って事務局より御説明をいただきます。お願いします。
【度會課長補佐】 事務局でございます。資料3「学習者用デジタル教科書の普及促進と円滑な導入の在り方について」を御覧いただければと思います。
まず「(1)基本的な認識について」です。デジタル教科書は,付随する機能の活用のほか,デジタル教材や学習マネジメントシステム等との連携を通じて,主体的・対話的で深い学びや個別最適な学びを実現する上で,有効なツールの一つと考えられるため,児童生徒の学びの充実の観点から,可能な限り広く学校教育において活用されるよう普及促進を図ることが重要と考えております。
現状,デジタル教科書の普及率はまだまだ低く,その主な原因としては,ICT環境整備の状況やデジタル教科書が有償であること等が挙げられます。
一方,紙の教科書は,長年にわたり学校教育の基盤を支える主たる教材として使用されてきた実績があることに加え,例えば一覧性に優れている等の特性があることや,書籍に慣れ親しませることをはじめとする教育的な役割を果たしております。
これらを踏まえれば,義務教育段階では,紙の教科書とデジタル教科書の両方を無償で措置できることが教育面の効果からは望まれるものの,財政的制約等も踏まえれば,例えば,デジタル教科書の段階的な導入を検討する際に,どのような在り方が考えられるかについて,現時点での考え方を整理しておく必要があると考えております。
そのため,「(2)段階的な導入の在り方について」に進みますが,令和3年度~5年度において,予算事業等を通じてデジタル教科書の普及促進を図りつつ,令和6年度以降の紙の教科書とデジタル教科書の在り方について,十分な実証によりエビデンスを得ることが重要であると考えております。そこで,その実証研究をより有効に進めるに当たっての視座として,仮に段階的にデジタル教科書を導入する場合の在り方としては,どのようなものが考えられるか,御意見をいただきたいと思います。
次のページに,段階的に導入する際の在り方の例を示させていただいております。
一つ目に,発達段階や教科特性の観点に応じて,デジタル教科書を導入することは考えられるか。例えば,小学校高学年からのデジタル教科書の導入を優先する,あるいは,特定の教科等におけるデジタル教科書の導入を優先する等といった在り方です。
二つ目に,設置者ごとに当該年度で使用する教科書を紙の教科書とするかデジタル教科書とするかを選択できるようにすることは考えられるか。また,高等学校段階では,学校ごとの選択制を導入する等ということについても考えられるかどうか。
三つ目に,仮にデジタル教科書を主たる教材として使用することとした場合にも,必要に応じて紙の教科書を使用できるようにすることは考えられるか。その際,紙の教科書については,学校に備え付けた教科書を貸与する等の対応が考えられるか。
以上が例示でございます。
その他の考えられる在り方も含め,本議題につきまして,先生方から御意見をいただきたいと考えております。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。2分の1の基準の議論は先ほど終わりましたが,今後,GIGAスクール構想による端末が学校現場に入りますが,現場の皆様に御尽力いただきながら,よりよい学習指導のインフラとしてこの端末が機能していくためにも,デジタル教科書がしっかりと普及していくということ,円滑に導入され,授業で利用され,指導法の改善につながるということが非常に重要かと思います。
早急に全てに予算措置するということも難しいので,どの程度の期間になるかはまだ分からないところもありますけれども,当面の間,どのような形で段階的に普及促進していき,全てを一度に普及できないとすれば,どのような観点で,どこから最優先すべきなのか,「こういう考えもあるのではないか」といったことを委員の皆様にそれぞれの御専門の立場から御意見いただきたいと思っております。
それでは,まず,青山委員,お願いします。
【青山委員】 よろしくお願いいたします。小学校の現場といたしましては,先ほどお話がありましたように,段階的な導入を検討する場合は高学年からがよいのではないかと考えております。ただし,クラウドにうまくつながらない,端末の調子が悪いといったときに備え,学習の保障の観点から,学校に対して紙の教科書の貸与を行う,あるいは,デジタル教科書・教材についている,各読み物を1枚のシートに俯瞰できるようにした教材等を紙ベースで保障する等といったことは必要かと思います。
また,低学年に対しても,授業中に教師用デジタル教科書等を先生が使っているところを見せることで,「ああやって使うのか」と徐々に理解していくことが想定されるので,低学年・中学年段階では,先生が指導者用デジタル教科書等を提示装置,プロジェクター等を通して使って見せるということも求められるかと思います。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。実際にデジタル教科書を活用されている青山委員のお立場から,非常に説得力のある御意見だったと思います。GIGAスクール端末をどう使えばよいかという不安があるかと思いますが,教科書をめくる,教科書を拡大するといった操作は比較的容易ですので,まずはこういうところから端末の使い方に慣れていくということも大事ではないかと考えております。
では,黒川委員,お願いいたします。
【黒川委員】 よろしくお願いいたします。私からは発行者の立場からの意見を申し上げます。今回の議題は,本格的な導入を目指している令和6年度に向けた話かと思いますので,その前提で意見を申し上げたいと思います。
令和6年度に本格導入をすることとなった場合,まず全国の自治体や各学校の持続的な環境整備や家庭での通信環境の確保が大前提です。それに加えて,学校現場での学習スタイルや指導法の研修,家庭の理解といった,これまでも議論されてきた点の国民的コンセンサスが求められるのではないかと思います。
そうした観点からも,令和6年度に関しましては,本格的な普及段階のスタートと捉えて,紙の教科書の供給を続けるとともに,必要に応じてデジタル教科書を活用可能とする併用制が妥当ではないかと,私としても業界全体としても考えております。
今回,資料3は,予算面も配慮しつつ,段階的な導入を検討するということが提案されているものと読ませていただきましたので,その観点について発行者の立場からのコメントをさせていただきたいと思います。
まず①について3点申し上げます。一つ目に,先ほどの青山委員の御発言と異なる考え方にはなりますが,「発達段階に鑑みると低学年が不適切」という御意見については,これまでの実証事業を見ておりますと,必ずしもそうとは言えないのではないかと思っております。適切な授業デザインが出来ていれば,問題ないのではないかと考えます。青山委員が御指摘されたように,指導者用デジタル教科書を活用すると低学年の授業が非常にスムーズに進みますので,そうした活用方法も参考になるのではないかと思います。ただし,普及に当たっては,「低学年から活用することで,主体的で対話的な学びを進めていく」等,筋の通った考え方で進めていくべきではないかと感じております。
二つ目は,段階的ではありますが,教科の選択というのはありうるのではないかと考えます。授業時間数が多い,あるいは教科特性からデジタルに適しているという教科を優先することで先生方にも指導法やICTの活用に慣れていただくということも,普及という観点からは考えられるかと思います。
ただし,三つ目に,特別な配慮が必要な児童生徒への対応に目を向けますと,学年や教科を限定すべきではないということも考えられます。「低学年であればデジタルの活用による支援は必要ない」ということはありませんので,慎重な検討や判断が求められるところです。
次に,②について,「選択制」という文言が書かれています。供給を行う発行者の立場から申し上げますと,転出入のときの対応等事務手続が大変煩雑になり,極めて混乱することが予想されますし,困難ではないかと感じております。
また,③について,デジタル教科書を主たる教材として使用する場合には,最初に申し上げましたように,学校や家庭の端末やネットワーク環境の課題を乗り越えなくてはなりません。その上で,紙の教科書を学校に備え付けるという御提案がございましたが,この問題点を幾つか申し上げたいと思います。
一つ目に,主要教科も備え付けのみにするのかということです。授業時数が多いことから,学校での授業のクラス間の重なりが懸念されます。また,夏休み等の長期の休暇の際には,1人1冊あることが望ましいのではないかと考えます。
二つ目に,教科書には毎年訂正がありますが,これにどう対応するのかということです。備え付けにするとしても,ある程度毎年度供給する必要があるかと思います。
三つ目に,これは現在の情勢に鑑みた考え方ですが,様々な感染症等が起こり得ることを考慮すると,使い回しが果たして適切なのかということも検討が必要かと思います。
四つ目に,備え付けになった場合,その程度にもよりますけれども,業界として持続的な発行や供給が可能になり得るのかということも,教科書発行者側の課題としてきちんと検討したいと思っております。
最後に,資料3の「(1)基本的な認識について」の1点目,「デジタル教材や学習マネジメントシステム等との連携を通じて」と記されておりますが,学習マネジメントシステム等との連携についてはまだ具体性がありませんので,可能性としては十分あるものの,「デジタル教材等との連携」という表記にとどめておいたほうがよいのではないかと思いました。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございます。業界の立場から詳しく御意見いただきました。
続きまして,宮原委員,お願いいたします。
【宮原委員】 産業の立場から,導入・展開ということについて,4点意見を述べさせていただきます。
一つ目は,委員の皆様の御意見を伺っていても感じることとして,教師の側にどれだけ設計する負担をかけないかということも考えなくてはいけませんので,まずはベースのシナリオを幾つか示すということが必要かと思います。そのシナリオは多くとも三つ程度,前提とするべき要件をベースにつくることになるのではないかと思います。例えば自治体による整備の状況,あるいは先生方のデジタルリテラシーの状況等,幾つもあると大変なので,三つ程度のグループに分けつつ,ベースのシナリオをつくるということを御検討されてはどうかと思いました。
二つ目に,具体的なシナリオについて,案として挙がっているものを一読した印象として,恐らく財政的な制約等もあるとは思うのですが,ICT端末そのものは,小中学校の児童生徒に配布されることとなっているので,使えるチャンスは平等にあったほうがよいと感じております。例えば,学年別に1教科デジタル教科書を選択することとする場合,学校単位で1教科だと,学年によってニーズが異なる場合もあるかと思うので,できればそれぞれの学校単位かつ学年別に1教科選択する等現場で選択権を持たせることではどうでしょうか。低学年であれば,自由に図や絵が描ける教科を選択し,中・高学年では,算数でドリル的に使うということもあるかと考えます。他にも,調べ物であれば社会ということもあると思いますので,学年別に1教科といった枠組みの選択権を持たせるということが二つ目の導入の仕方での検討課題かと思いました。
三つ目に,1学年1教科選択したとしても,特別な配慮を必要とする児童生徒への対応がどこまでできるのかということは明確に示さないといけないと感じております。
最後に,ここまでは導入段階の話でしたが,今後どう展開,拡大していくかといった見通しについても,財政状況がどうなるか分かりませんけれども,お示ししないといけないのではないかと考えました。
概念的な話ではございますが,以上です。
【堀田座長】 ありがとうございます。では,清水委員,お願いします。
【清水委員】 ありがとうございます。保護者という立場から話をさせていただきます。以前,日本PTA協会の立場として,保護者の観点から意見を発表させていただいた際にもお伝えをしましたし,本日も委員の先生から御意見がありましたけれども,私は極力,小学校高学年から活用するとよいのではないかと思っています。
なぜかというと,低学年の子供たちがGIGAスクール端末を使い,故意にではなく,取扱いの中で壊してしまったり,破損してしまったり,紛失してしまったりといったことが怒るのではないかと思っております。親の立場からしますと,その場合にどう担保するのかという点も非常に気になるところです。実際,子供たちが端末の持ち帰り等も含めて使い出す際には,そういったところも含めて検討していかないといけないと思います。
そういった意味合いから,段階的な使い方という観点で申し上げると,なるべく小学校の高学年から使用するようにするのがよいのではないかと思っています。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。森委員,お願いします。
【森委員】 日本図書教材協会の森と申します。教材を作っている立場から意見をさせていただきます。教科書ではなく教材ではございますが,現在学校現場でよく使われているデジタル教材は,なぞり書きのような簡単なソフトです。これは低学年での使用が多いのです。この間もある小学校の実践を見させていただきましたけれども,小学校1年生の授業で活用しておられましたので,低学年,高学年というのは関係ないのかもしれないと感じております。
また,デジタル教材の作りやすさでいいますと,算数が作りやすいです。ニーズが多いのは社会や理科でして,これは恐らく,資料や図版といったものを見たい,調べたいというニーズを反映しているのではないかと思っています。
導入の順番については,私見にはなりますが,学年というよりも,市町村を決める,または区域の中で指定校を決める等といった形で,学校全体で導入を図っていくのが一番よいのではないかと思います。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。中川委員,お願いいたします。
【中川委員】 よろしくお願いします。中川です。私はデジタル教科書の普及促進の面からお話をさせていただきたいと思います。その観点から考えると,普及促進を中途半端に進めるべきではないと考えております。予算の問題があることは十分推測できますし,先ほど黒川委員が指摘された,ICT環境の充実の面への配慮はもちろん必要だと思います。その上で私は,全学年同時に導入すべきだと考えています。
一番大きな理由は,対象学年ではない教員はいつまでたっても自分ごとにならないということです。1年,2年と段階的に学年ごとに進めてしまうと,場合によっては,「自分には全く関係ない」という教員が出てきます。しかし,これは一部の教員だけが奮闘するべき問題ではないと思います。
加えて,国の事業となりますと,保護者からすれば,例えば「なぜお兄ちゃんは使っているのに,妹は使えないの?」ということになるのではないかということも少し心配しております。
むしろ段階的な導入というのであれば,教科のほうですればよいのではないかと思っております。ただし,この場合も全学年該当する国語あるいは算数・数学から始めるべきだと思っています。もちろん特別な配慮を要する児童生徒はじめ,児童生徒個々の実態に応じて紙の教科書での対応をすべきとも考えております。
また,高校は学校ごとでよいと思いますが,小中学校は自治体単位でデジタル教科書選択の判断をするのがよいと考えています。これは研修等において,各学校で情報共有,共通理解がしやすいということが一番の理由です。
以上になります。
【堀田座長】 ありがとうございました。齋藤委員,お願いいたします。
【齋藤委員】 既に委員の皆様から御指摘がありましたが,一律で何年生にどの教科を配布するという考え方も,様々な事情に鑑みると必要なのだと思う一方,外国人児童生徒や,中野委員の御専門の特別支援の子供たちの特性に応じて,個別で使用することが有効であるという場合には,その子供たちを優先的に導入の対象とできるといった仕組みを考えていただけるとありがたいと思いました。
そのときに,在籍学級との関わりの中でデジタル教科書をどのように使っていくかという観点から,学年ごとにデジタル教科書を導入していくよりは,宮原委員がおっしゃっていたように,学校でこの教科と決めて段階的に導入していくほうが,別室で授業を受けている子供たちにとってはよいのではないかと思いました。
段階的な導入というのがどの程度の期間を想定されているのか分からなかったので,私の専門である外国人の子供の立場に立っての意見しか申し上げられませんが,特別な配慮を必要とする児童生徒に考慮いただきたいと思っております。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。では,加藤委員,お願いいたします。
【加藤委員】 加藤です。よろしくお願いします。段階的な導入を行うに当たっては,その先の全面導入のことを考えると,エビデンスの確保の観点からも,学年や教科は限定しないほうがよいのではないかと思っています。
今年度,私が行っている研究でも,初めて低学年の子供たちに使ってもらっております。効果はまだ検証できていないものの,驚くほど自然に使ってくれています。デジタル教科書を使うことを契機として,ほかのシーンでも端末を活用できるようになっていっていますので,学年を絞る必要はないのと思っています。
教科については,具体的な意見はありませんが,ある程度学校単位等で行ったほうが学校での研究はやりやすいのではないかと思います。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございます。赤堀委員,お願いいたします。
【赤堀委員】 赤堀でございます。お願いいたします。基本的には段階を踏んでの導入が望ましいと考えております。今回示していただいている例の①に関して,教科の特性によってどの教科から入れるとよいのか考えてみました。例えば外国語等については,音声が出るものもあると聞いておりますので,そういった機能は大変有効なのではないかと思います。そうすると,小学校5年生,6年生からではないかというイメージを持ちました。そのほか,小学校では算数も大変活用しやすそうだという印象はございます。
ただ,前回も申し上げておりますが,教科や単元によってもよりデジタル教科書がふさわしい内容とそうでない内容というのはあると思っています。先ほど社会科や理科等でのニーズも高いというお話がございましたが,教科書としての扱いなのか,そこに組み込まれている資料的なものなのかという辺りについても,大変興味があるところです。いずれにしても,これからの実証検証の中でぜひ幅広く様々なパターンを研究していただけると大変ありがたいと考えています。
②の「設置者ごとに」という点については,学校間や自治体間の差につながってしまうのではないかという懸念を持っていますので,紙とデジタルどちらかを選ぶということは厳しいような気がしております。その点,黒川委員が冒頭におっしゃったのと同意見でございます。
③の貸与につきましても,現在の新型コロナウイルス感染症の状況を考えても,また,実際に書き込むことができるというのが大きなポイントであることは間違いないですので,貸与ではなく,自分の物を持たせるという制度はぜひ残していただきたいと思っています。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。では,中野委員,お願いいたします。
【中野委員】 慶應義塾大学の中野です。特別支援の観点から,意見を三つと質問を一ついたします。
まず一つ目の意見です。教科書協会の黒川委員がおっしゃいましたが,障害のある児童生徒の中には,教科書にアクセスする際に,発達段階や教科特性にかかわらずデジタル教科書が必要不可欠なケースがあり得ます。日本語に通じない児童生徒も同様のニーズがあると思います。そのため,「障害のある児童生徒や日本語に通じない児童生徒等で,アクセシビリティの観点からデジタル教科書の利用が必要不可欠だと判断された場合には,発達段階や教科特性に限らず,利用できるようにすること」という趣旨の記述を加えていただきたいと思います。
二つ目の意見です。障害のある児童生徒のことを考えると,デジタル教科書の導入は,全員一律ではなく,必要に応じて利用できるようにしていただきたいと考えています。
三つ目の意見です。点字教科書については,完全にデジタル教科書に移行させることが現時点の技術では難しいと考えられます。なぜなら,現在の点字端末では,図形等を表示することができないからです。一方,テキストの部分は,音声等でアクセスできるデジタル教科書は非常に効果的です。そのため,点字教科書に関しては,必ず紙とデジタルの併用としていただきたいと思います。
最後に質問です。紙の教科書との併用等が議論されていますが,この紙の教科書の中に拡大教科書が含まれているのかどうか,お教えいただければと思います。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。事務局より今の質問へ回答をお願いします。
【神山課長】 特別な配慮として拡大教科書や点字教科書が必要だという子供たちには,デジタル教科書が本格的に導入されるとしても,拡大教科書,点字教科書が必要だと認識しておりますので,そういう前提で御議論いただければと思っております。
【中野委員】 ありがとうございました。
【堀田座長】 ありがとうございます。では,柴田委員,お願いします。
【柴田委員】 東京福祉大学の柴田でございます。まず私の専門である人間工学の観点からお話をさせていただきます。現在の小学校就学前からデジタル機器を使っているような状況を考えますと,デジタル教科書は低学年からでも使えるだろうと思います。さらには,情報化社会ということを考えても,学習の充実を図るために,低学年から使うのがよいだろうと思っております。もし使いづらい,あるいは改善する余地があるのであれば,例えばインターフェースやコンテンツのデザインを最適化するといった検討がなされるとよいのではないかと思います。
ただ,健康面から申し上げますと,低学年ではまだデジタル機器等の使用経験も浅いことが予想されますので,学校の先生の指導による細やかな配慮等が必要になってくるかと思います。少なくとも,健康面に関することは,低学年の段階から姿勢指導等と併せて子供たちに伝えていく必要があると思っています。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。片山敏郎委員,お願いいたします。
【片山(敏)委員】 ありがとうございます。令和3から5年にかけてはデジタル教科書の効果・影響に関するエビデンスを取ることが非常に大事なので,そこを重視すると,普及促進を徹底することが必要だと思っています。現場目線で考えると,全学年で取り組み,どの先生方も参加することで,研究の中に位置づきながら使っていくことになるだろうと考えます。
また,教科を絞る場合には,自治体ごとで教科を選定するのがよいと思います。そうすることで,教育委員会と校長会,あるいは小教研,中教研等といった組織的な形でしっかりと取り組んでいけると考えます。使っていくことで,エビデンスが示されてくるのではないかと思っています。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。福山委員,お願いいたします。
【福山委員】 現状,情報端末や環境整備に自治体ごとの差異が生じております。令和6年度,7年度の段階でどの程度になっているか分かりませんが,学校教育法に定められているように,紙の教科書を基本として,必要に応じてデジタル教科書の併用を進めるという在り方が基本なのではないかと考えています。
その際,段階的な導入の在り方としては,示されている例の①が妥当なのではないかと思っております。特定の教科という点でいいますと,中学校では3科や5科,つまり,国数英,それに理科と社会を合わせた5科と,実技4科,すなわち音楽,美術,保健体育,技術家庭がありますが,実技4教科に比べると,国,数,英,理,社の5教科のほうがデジタル教科書を使いやすいのではないかと考えています。
また,発達段階も大事ですので,小学校の高学年から活用することが望ましいかと思います。加えて,生徒個々の状況に応じてデジタル教科書をツールとして使うことができるという形,すなわち紙の教科書を基本にしてデジタルを必要に応じて使うという形がよいのではないかと思います。
最後に,デジタル教科書・教材につきましては,子供たちにとって認知機能を超えた操作上のストレスがないように作成いただくことを業界の方にぜひお願いしたいと思っております。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。石戸委員,お願いします。
【石戸委員】 こんにちは。石戸です。
まず一つ目の議題に関して,規制より緩和のほうがずっと大変だということを改めて実感しました。2分の1の基準は速やかに撤廃すべきと訴えていましたので,それに向けて非常に丁寧に議論を進めて取りまとめてくださった事務局に感謝申し上げたいと思います。
二つ目の議題については,設問の意図が分からないなと思い,どうコメントしようかと考えておりました。設問で問われているように「考えられるか」と聞かれれば,全て考えられると思うのです。ただ,国として一律に決めるべきことなのかということが,私には分からないなと思い,悶々としておりました。
国として一律に決めるべきことと,自治体や現場で決めてよいことというのがあるはずですが,例えば先ほど議論のあった2分の1の基準というのは,私は本来後者の典型であったという気がしております。教科書の2分の1の基準は,本来決めなくてもよいことを国として一律に決めたから,今になって困ることがあり,基準の撤廃に向かって動いたということだと思います。
逆に,デジタルを主にするのか否かということは,国が主導して決めなくてはいけないことであって,それが今決まっていないという状況だと感じます。導入例を見てみると,条件や制約の話になっていますが,今申し上げたとおり,まずはデジタルを主にするのか否かという全体の判断をするべきで,もしデジタルを主とするならば,従の取扱いを検討するよりも,いかにして使用を推進するのかということを考えるのがよいのではないかと思います。
もう一点,本日の議題ではありませんが,教育データの活用についてコメントをさせてください。デジタル教科書の活用を推進した暁には,データの活用の議論が本格化するだろうと思います。学習履歴等のデータを活用する方向に進むことによって,個別最適化されたより豊かな学習環境が整備できると思いますが,運用の仕方によっては全く違う方向に行ってしまいます。
既にマイナンバーにひもづけるというニュースがあり,誤解も含め,「学習データは国や学校が管理する」というイメージに基づいて賛否両論の議論が発生しており,それこそが今申し上げたことを示していると思います。私としては,データを学習者自身のものとして,本人の意思で利活用し,管理できるような安心できる環境をつくるのはよいと考えておりますが,データは誰のものかといったことからしっかりと議論し,その活用の仕方を検討するとともに,誤解のない情報発信を引き続きお願いしたいと思っています。
なぜ,今回の主題でないと思いながらもこの発言をしたかというと,今般の動きを巡る反発が,我々がデジタル教科書を唱え始めた10年前に受けた反発と非常に似ていると思っているからです。デジタルという新しい波に対する漠然とした不安感から,メリットをさほど掘り下げずに,「まずは反対」という声が多かったのです。結果としてそこから制度化までに日本はとても時間がかかってしまいました。データ利活用でも同じことが起きかねないのではないかと危惧しており,その辺りもこの会議で議論していただけるとありがたいと思っています。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございます。片山弘喜委員,お願いいたします。
【片山(弘)委員】 よろしくお願いいたします。まず学習用デジタル教科書の普及促進に関して,多くの学校現場の先生方はそもそも学習者用のデジタル教科書が何たるものかということも知らないという状況であると私は認識しております。現場の先生方にとっては,デジタル教科書といえば,指導者用のデジタル教材であって,その指導者用デジタル教材ですらも,全ての教科で用いられてはおらず,その活用の周知が十分ではないと認識をしております。
我々の自治体でも,外国語科の指導においては,指導者用デジタル教材が必要だということで,その整備等も進めているところですが,そのなかでも指導者用イコール学習者用という認識が大きいと考えております。先ほどから外国語科における活用の話が出てきておりますけれども,「学習者用デジタル教科書は,指導者用デジタル教材の中に入っている映像や音声を子供たちも使うことができるもの」という認識ではないかと考えています。
特定の教科等におけるデジタル教科書の導入を優先する場合の例として外国語という話が出てきておりますが,学習者用にも映像や音声が入っていれば,外国語でも導入を優先するという考え方ができる一方,これまでの議論の中では,映像や音声については後に回すということでしたので,ほかの教科も同様に考えていくと,デジタル教材というものを考えずに,まずはデジタル教科書を全ての教科で平等に進める必要があると考えております。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。では,東原座長代理,お願いいたします。
【東原座長代理】 2点申し上げます。一つは,「発達段階」や「段階的」という言葉で象徴されていることについてです。令和6年までの準備期間としてどうするかということが大事だと思います。令和6年を迎えるまでに何を全国が経験しておかなければいけないかと考えますと,全ての先生がデジタル教科書を使った授業経験があるという状態にしておくことが必要です。全ての先生が1回は授業をしたことがある,小学1年生から中学3年生までの全ての子供が経験したことがあるということが大事で,その経験値が,令和6年からの選定のときに,「どの教科,どの学年はやろう」ということを決めるのに役立っていくと思うのです。段階的にというのは,一気に全部やるということではなく,徐々にという意味ですけれども,まさに令和6年までの間に徐々に全員の先生,全員の子供たちが経験できるようにするために,段階的にどうしたらよいだろうかという議題だと思います。
あえて申し上げると,一部の委員の皆様の御発言どおり,決して小学校1年生でも使用できないということはなく,その使い方や機能等によって十分生かせることが数多くありますので,全学年の子供たちに経験いただくことで,「何となく高学年のほうがよいのではないか」ということはないことをぜひ皆様に御理解いただきたいと思いました。
二つ目は,私も制度をよく理解できておりませんので,半分質問のようになりますが,黒川委員が御発言されていた,紙の教科書との関係のことです。本日の資料にもございますけれども,告示において,第1条第1号に2分の1の基準が定められております。その次の第2号では,「児童生徒がそれぞれ紙の教科書を使用できるようにしておくこと。」と,児童生徒が1人1冊,紙の教科書を使用できるようにしておかなければならないということが書かれているのです。
この告示がそのまま生きるとすると,恐らく紙の教科書が必ずすぐ近くになければいけないということを意味しており,同じ学年で国語の授業を全クラス一斉にやるとなれば,1クラス分等ではなく,全員分備えておくことが必要という話になるのではないかと思います。その点についてもどこかで一度きちんと議論をして,この告示の規定を撤廃しないのであれば,紙の教科書を全員分必ず用意しなければいけないということになろうかと思いますし,この機会に撤廃しておいてもよいということであるならば,撤廃した後も不都合なく使えるように何らかの準備を行うという段階に進む,それこそ段階を踏むことになるのではなかろうかと思っております。今申し上げた告示の規定も一度議論したほうがよいのではないかと考えております。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。皆様からたくさんの御意見をいただきました。本当にありがとうございました。それぞれの委員の先生方の御意見につきまして,座長として整理させていただきたいと思います。
まず,赤堀委員等から出ました,「高学年からにするべきではないか」,「低学年からでも大丈夫なのではないか」という話は,案ずるより産むが易しといった部分もありまして,「やる前は様々なことが心配だったけど,やってみると意外とそこは問題なかった」ということもあるので,経験者の意見は尊重されるべきかと思います。一方で,やってみたことで生じる,想定外のことも様々に起きることがあり,ここについての不安が現場には大きくあるので,段階的とはいえ,まず早めに全ての先生,子供たちが経験するということは,東原座長代理もおっしゃいましたけれども,非常に重要なことかと思っております。
二つ目に,片山弘喜委員より,英語のデジタル教科書に動画等が入るのであれば,それは必要になるけれども,そうでないのであればそこまでの必要性はないという御意見がございました。また,森委員からは,教材としては理科や社会が資料性の観点から重視されるという話がありました。今後,予算の関係でデジタル教科書を導入する教科を決めるという場合には,誰がどこまで決めるかということについて,石戸委員のおっしゃったとおり,文科省と自治体が調整して決めていくことになります。そのときに,「デジタル教科書が現状の定義のままであればこの教科で使うほうがよい」,あるいは例えば「英語は,むしろ購入してでもデジタル教材を導入するべきであって,デジタル教科書はこっちの教科のほうがよい」といったことが判断としてはあり得ると思います。これも経験値がその判断に役立つことを考えると,来年度の予算の話が冒頭にありましたけれども,国としては,そういう事業での経験も踏まえて各自治体が戦略的に判断していかれることを尊重すべきだと私は考えております。
ほかにも,齋藤委員からいつまでの期間で段階的に導入をするのかといったお話や,東原座長代理等から令和6年の本格導入に向けて当面どうするのかというお話もありました。いずれにしても,経験値を上げるということが重要ですが,これをいつまでのスパンで考えるのか,「本格導入」というのはどういう状況のことをいうのかといったことも考えなくてはなりません。国の経済財政諮問会議等では,KPIとして2025年に義務教育段階で100%と書かれていますけれども,それは必ずしも無償化を意味しているわけではないですし,無償化をするのであれば,制度的にも大きな転換が必要で,そのためには現実性,予算措置の可能性が見込まれなければなりません。
こうしたことは今の段階ではまだ読み切れない部分がありますので,石戸委員からもありましたように,先にそちらを決めてからほかのことを下位目標として決めるべきだという御意見もあるかと思いますが,まずは今の段階で用意できること,経験しておくべきことをどのように進めていくかという議論をしているところです。そういう観点では少し難しい議論になっておりますが,定められない,決め切れない社会の状況の中で,方向性としては大体皆同じ方向を向いているので,まずは学校現場に広く経験していただくための方策を検討しているということになります。
そのときに,こちらも石戸委員からの御指摘にありましたが,教育データの利活用というのは非常に重要なことです。例えば,これまでの議論にもありましたが,デジタル教科書のフォーマット,標準化をどこまでやるのかということや,学習履歴はどのように取るのか,それはどういう分析の仕方で,誰がどのようなフィードバックを受けるべきなのかといったことについては,教育データの利活用の在り方の検討会議において進んでいる議論であり,この会議のメインの議題ではないものの,デジタル教科書を進めるに当たって非常に重要なことです。教育データの利活用の会議や,教育再生実行会議のようなところにも,こういう意見があるということを私のほうから伝えてまいりたいと思っております。
これらのことは,自治体の個人情報保護法制の問題や,クラウド利用の可否,ネットワークの速度の問題でクラウド版のデジタル教科書が使えない等,供給の問題とイコールになる部分も含め,様々な課題がたくさん横たわっておりますので,順次できるところから様々な経験をし,最終的なゴールに向かっていくような形で進めてまいりたいと思います。
最後に,御意見のある委員の先生がいらっしゃればお話しいただければと思いますが,いかがでしょうか。
それでは中野委員,お願いします。
【中野委員】 本日の議論と直接の関係はございませんが,今後データ利活用を進めていく際に,デジタル教科書がアクセシブルになっていくということは非常に重要だという指摘がこれまでの議論でもあったように考えています。
その中で,書体の問題というのが大きな問題かと思っています。教科書の中では,例えば教科書体という書体が使われておりますが,この教科書体は必ずしも障害のある子供たちにとって見やすいとは限りません。例えばデジタル教科書で様々な子供たちが問題なく使えるような書体の開発や文部科学省等からの御支援も今後検討しておかなければならない重要な問題の一つだと考えています。
特に書体に関しては,それぞれが開発すると非常にコストがかかるという問題があり,その制約のために限られた書体しか使えないということになってしまうのは困ると思っていますので,デジタル教科書を制作する上でよりユニバーサルデザイン仕様になるための基本的な整備,環境等の整備についても,今後御検討いただければなと思っています。
以上です。
【堀田座長】 貴重な意見ありがとうございました。東原座長代理,お願いいたします。
【東原座長代理】 お願いします。事務局への質問になります。最初に御説明いただきました普及促進事業について,こちらの現段階のスケジュールを聞かせていただきたいと思っております。来年度,しっかり実証を行おうと思うと,後ろ倒しになってしまっては十分に実証することが難しいと思いますので,なるべく早くスタートできるとよいのではないかという観点からの質問です。
以上です。
【堀田座長】 では,事務局よりお願いします。
【度會課長補佐】 事務局でございます。来年度事業でございますので,なるべく新年度当初からできるよう,現在手続等を準備しているところでございます。諸般の事情により変更の可能性もございますが,当方としては,新年度から実証をできるように進めてまいりたいと考えております。
【東原座長代理】 ありがとうございました。
【堀田座長】 単年度予算ですので,予算案が国会に通るのかどうかも含めて難しいところがあるかと思いますが,なるべく早めに進めていきたいということでした。ありがとうございました。
それでは,本日の会議はここまでといたします。次回以降の予定につきまして,事務局よりお願いいたします。
【度會課長補佐】 事務局でございます。資料4を御覧ください。次回第8回は,年明け,令和3年1月27日水曜日,9時から11時で,議題は「中間まとめに向けた論点の整理について」です。その次の第9回は,翌月,令和3年2月22日月曜日16時から18時で,中間まとめの案を御提案できればと考えているところでございます。
次回の開催方式については,改めて御連絡させていただければと存じます。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。第9回で中間まとめの案を検討しまして,その後,中間まとめを公表いたします。本検討会議は令和3年7月までの会議体ですので,中間まとめの後,最終まとめに向けて様々な段取りを行っていくことになります。引き続きの御協力を何とぞよろしくお願いいたします。
それでは,本日はこれで閉会といたします。本日もありがとうございました。

―― 了 ――

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