デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議(第6回)議事録

1.日時

令和2年11月13日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省東館15階 15F特別会議室 ※Web会議での開催

3.議題

  1. 教科書制度の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

赤堀委員、片山(敏)委員、片山(弘)委員、加藤委員、河嶌委員、黒川委員、齋藤委員、柴田委員、清水委員、白鳥委員、中川委員、中野委員、東原座長代理、福山委員、堀田座長、宮原委員、森委員


文部科学省

塩見大臣官房審議官、中川初等中等教育局視学委員、川口特別支援教育課課長補佐、下岡健康教育・食育課専門官、神山教科書課長、高見教科書課教科書企画官、度會教科書課課長補佐

5.議事録

デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議(第6回)

令和2年11月13日



【堀田座長】 ただいまから,デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議の第6回の会議を始めます。本日も,皆様お忙しい中で御出席いただきまして,ありがとうございます。
今回も新型コロナウイルスの感染状況も踏まえまして,ウェブ会議方式としております。
本日の議題は,「教科書制度の在り方」ということで,皆様に議論いただきたいことが三つございます。一つ目は,学習者用デジタル教科書の利点等について,今まで幾つも御意見が出ているところですが,これを整理したいと思います。二つ目に,学習者用デジタル教科書とデジタル教材の役割分担等について,三つ目に,学習者用デジタル教科書の使用を各教科等の授業時数の2分の1未満とする基準について,御議論いただく予定でございます。
それでは,事務局より資料確認をお願いいたします。
【度會課長補佐】 事務局でございます。お手元の議事次第を御覧いただければと存じます。資料は,資料1から資料6と,参考資料1,2でございます。前回いただいた意見につきましては,参考資料2の「これまでの会議における主な御意見」において赤字で記させていただいております。御不明点,過不足等ございましたら,事務局まで御連絡いただければと思います。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございます。本日,青山委員と石戸委員が御欠席となっておりますが,お二人からは事前に御意見をいただいておりますので,それぞれの議題の際に事務局から共有いただきたいと考えています。
それでは,議事に入ります。本日は,事務局資料1に記載の三つの論点基づいて議論いただきます。まずは,「1.学習者用デジタル教科書の利点等について」に関して,事務局より説明をお願いいたします。
【度會課長補佐】 事務局でございます。本日は,先ほど堀田座長から御説明いただいたとおり,大きく分けて三つ御議論いただきます。初めに,資料1の1ページ目,「(1)学習者用デジタル教科書の利点についての認識は下記のとおりでよいか」という項目について,今までにいただいた御意見を基に列記させていただいておりますが,これらに加えて考えられる利点等について御意見をいただければと思います。
次に2ページ目,「(2)学習者用デジタル教科書を本格的に導入するに当たって留意すべき点は何か」という項目について,留意すべき点の例を次の6点挙げております。共通に求められるデジタル教科書の機能の整理。デジタル教材や学習支援システムとの連携を円滑に行うために,デジタル教科書に必要な事項の整理。デジタル教科書の使用に際し,健康面に関する留意すべき事項の周知。家庭においても使用できるよう,パブリッククラウド方式による配信にすること。復習等ができるよう,過年度の教科書も使用できるようにすること。紙の教科書とデジタル教科書の在り方の検討に当たって,十分な実証研究を行うこと。なお,その際,両方を併用できる状態で実証を行うこと。以上6点に加えて考えられる留意すべき点について御意見をいただければと思います。
以上2点についてよろしくお願いいたします。
【堀田座長】 事務局から資料1の1ページ目と2ページ目について御説明いただきました。これにつきまして,何か御質問等ございますでしょうか。
特にないようでしたら,先に進めたいと思います。まず,こちらの点について石戸委員から御意見をいただいておりますので、事務局より共有をお願いします。
【度會課長補佐】 事務局でございます。事前に石戸委員からいただいた意見を御紹介させていただきます。
「論じられている内容に異論はありませんが,デジタルの利点を論じるフェーズは過ぎており,当然必要なツールとして導入するという認識を教育分野でも持つタイミングではないかと考えます」という御意見をいただいております。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございます。皆様からも御意見をいただきたいと思います。本日の議題の1点目,学習者用デジタル教科書の利点・留意点について改めて確認する趣旨は,これから紙の教科書に加えて学習者用デジタル教科書がGIGAスクール端末に入り学校現場で使われていくに当たって,具体的にどのような利点があるのか整理して学校現場に示すということと,今後予算折衝等行っていくに当たって,学習者用デジタル教科書を使用することのメリットをしっかり強調しておくということでございます。
おおむねこれまでの議論で出尽くしているかもしれませんが,改めまして皆様に,「こういうメリットもあるよ」,あるいは「こういう留意点も大事ではないか」という御意見を出していただいて,固めていきたいと考えております。
それでは,まず黒川委員,よろしくお願いいたします。
【黒川委員】 黒川でございます。1の(1)について,細やかな表現上の確認も含めて申し上げたいと思います。
四つ目に,「ペア学習やグループ学習の際,タブレットを見せ合うことで対話的な学びができる。書き足したり,消したりできるため,説明がしやすい。」という点が挙げられていますが,この「書き足したり,消したりできるため,説明がしやすい」という文言の意図が通じにくいのではないかと思いました。例えば,「書き込み機能等を使って視覚的に表示できるため,説明がしやすい」という書き方のほうが伝わりやすいのではないかと思います。
次の五つ目に,「デジタル教科書を使用すると,内容の提示が容易なため,児童生徒の実態に応じた指導がすぐにできる」とありますけれども,こちらも,「内容の提示が容易なため」という文言が,なかなかその後の「実態に応じた指導がすぐにできる」ということにはつながりにくいのではないかと思います。すぐには代案が出ませんが,この表現の背景をもう一度確認したいと思いました。
同じく五つ目に,「学習する内容を並べ替えることができると,より児童生徒に応じた指導ができる」とありますが,教科書発行者の立場から見ても,こちらの意図が伝わらないのではないかと思いました。現時点では,学習者用デジタル教科書は紙の教科書と同一の内容とすることとされており,学習内容を並べ替えたものを学習者用デジタル教科書と呼んで良いのかということも考えると,五つ目は「こうあってほしい」というコメントに近いものなのではないかと思いましたので,その辺りを確認させていただきたいと思います。
また,六つ目の「児童生徒の作業状況の共有や,クラス全体に対して特定の生徒の作業を踏まえた指導を容易に行うことができる」という記載について,こちらはデジタル教科書単体による利点ではなく,授業支援ソフト等を活用することで生まれる利点ですので,この点について追記が必要ではないかと思います。
さらに,七つ目に「紙の教科書やノートを組み合わせて活用し,考えたことをまとめて書き込み,抽象化・普遍化することで,深い学びを促し,確かな理解に繋げることに資する」とありますが,「抽象化・普遍化する」という文言が読み手からすると分かりづらいので,具体的にどのような学習活動をイメージしているのかについての確認が必要ではないかと思いました。
最後に,九つ目の3行目に「児童生徒の自主的な教材へのアクセスが容易となり」とありますが,「自主的な」という文言をあえてここに入れる必要はないのではないかと思いました。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございます。大変貴重な御意見ありがとうございました。
続きまして,宮原委員,お願いします。
【宮原委員】 よろしくお願いいたします。基本的に本検討会議で議論されたことが資料中に網羅されていると思うのですが,三つほどお話しさせていただきます。
一つ目に,本項目は基本的に学習する側の利点を重点的に書かれているように思うのですが,議論の中では,デジタル教科書を使うことによる指導者側の利点という観点での議論もあったかと思うので,その点も加えていただいたほうが良いのではないかと思いました。
二つ目に,教科書の内容の大きな改訂は,学習指導要領の改訂のタイミングのほか,規定の周期で行うこととなっているところ,アップデートや細かい修正等も,クラウド型かダウンロード型かによって違うかもしれませんが,ある程度最新の情報を児童生徒に届けることが容易になるのではないかと思いますので,その点も利点としてお考えいただければと思います。
三つ目に,保護者の立場から申し上げますと,たくさんの本をランドセルやかばんに詰めて毎日通う様子を見て,健康上,生育発達上の問題があるのではないかと常日頃思っております。毎日重いかばんを持って登校するという現状の子供たちの負担を軽減できる可能性があるので,すこしここでの論点とは違うかもしれませんが,考慮に入れていただけると良いのではないかと思います。
以上です。
【堀田座長】 大変貴重な御意見ありがとうございます。本日いただいた意見については,次回までに事務局にて反映いたしますが,一通り御意見が出た段階で,一度事務局より御発言いただきます。
続いて,中野委員,よろしくお願いします。
【中野委員】 よろしくお願いいたします。まず,(1)の9点目,「障害のある児童生徒への効果として,…」の部分について,アクセシビリティやユーザビリティが確保されていれば,紙の教科書へのアクセスが困難であった障害のある児童生徒が教科書へアクセスすることが可能になるということが,障害のある児童生徒にとって一番本質的なところではないかと思います。また,学習意欲の増進や学力の向上に関しては,障害の有無にかかわらず期待される利点ではないかと思いますので,9点目の中に書く必要性については検討が必要ではないかと思いました。
また,(2)の留意すべき点として,必ず「障害のある児童生徒のアクセシビリティやユーザビリティを確保すること」という文言を入れていただきたいと思います。現状,かなりアクセシビリティに配慮した機能は入っておりますが,改めてここに書いていただくことが重要だと思います。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。東原座長代理,お願いいたします。
【東原座長代理】 よろしくお願いします。(1)の前段階の話にはなってしまいますが,現在,学習者用デジタル教科書の定義は紙の教科書と同一のものということになっていますので,厳密に言うとここに列記されている機能の中には「教科書」に含まれないものも多いのだろうと思っております。そのため,例えば「学習者用デジタル教科書の利点等について」という見出しの下に,「デジタル教科書は,そのビューアー等の機能との組合せにより…」と追記する等,あくまで機能の部分とコンテンツの部分の両方があるということを意思表示しておくことが大切です。今後より良いデジタル教科書を目指していくに当たり,紙と同じ内容だけでは列記されている利点は出てきませんので,この点を最初に記載しておくと良いのではないかと思います。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。続きまして,柴田委員,お願いいたします。
【柴田委員】 柴田でございます。先ほど宮原委員から御指摘がありましたが,デジタル教科書によって重いランドセルの問題が解決できるというのは利点ではないかと思っています。子供へのそうした身体的な負担は,諸外国においても以前から人間工学の分野で指摘されているところですので,私からも利点として考えて良いのではないかという意見をお伝えさせていただきます。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。清水委員,お願いします。
【清水委員】 PTA協議会の清水です。宮原委員,柴田委員がおっしゃった,教科書の身体的な負担の話ですが,以前申し上げたように,現状,特に中学生になりますと,非常に重たい教科書をたくさん持って登校しているという実態が全国的にあります。保護者の立場からも,この負担の軽減については,ぜひ文言として入れていただきたいと思います。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。続きまして,中川委員,お願いします。
【中川委員】 中川です。よろしくお願いします。見せ方の問題として,このまとめをいつ誰に見せるかにもよりますが,利点が今のように羅列されていますと,書いてあることを一度読み手においてそしゃくしなければなりません。記載の順番は今後議論になると思いますが,何について書いているのか,小見出しをつける等の工夫を検討いただければと思います。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございます。最終まとめに向けて,年度内に中間まとめを出すことになりますが,本資料は今後まとめにも入っていくことが想定されている文章ですので,今のような意見は大変貴重でございます。ありがとうございます。
続きまして,片山弘喜委員,お願いします。
【片山(弘)委員】 よろしくお願いいたします。まず,学習者用デジタル教科書の利点については,資料に記載されている内容で網羅されていると思います。その中でも特に,直接画面に書き込み,その内容を消すという行為の容易さや,拡大表示については,紙の教科書と比べると大きな利点または良い機能であると考えております。
次に,留意点について,仮にデジタル教科書がパブリッククラウド方式で配信された場合,学校で用いるとなると,学校に在籍する全ての児童生徒の同時アクセスに耐え得る帯域が確保されていることを確認することが重要であると考えております。勤務先でも確認をしましたが,その点については不安が残ったという面もございますので,意見として述べさせていただきます。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございます。今の御意見を踏まえても,デジタル教科書を利用するときの留意点の前に,そもそもGIGAスクール構想により導入される端末がこういうものに対応できているのかというレベルの話もあるということがよく分かりますで,そういった点の書き分けについては検討してまいりたいと思います。
白鳥委員,お願いします。
【白鳥委員】 1の(2)の留意すべき点について,システム的な面で,デジタル教科書のビューアー会社や配信会社に御留意いただきたい点になるのかもしれませんが,安定的な運用という観点も大事になってくるのではないかと思っております。学校の授業に支障が出ないよう,デジタル教科書のシステムのメンテナンスを行っていただきたいと思っております。OSやミドルウエアのアップデート,セキュリティ対策といったことが必要になってまいりますが,例えば利用停止を伴うメンテナンスが必要な場合でも,授業が実施されていないタイミングで行っていただくような配慮が大切なのではないかと思っております。
また,1点目に「共通に求められるデジタル教科書の機能の整理」とありますが,機能面だけではなく,非機能の要件に関する整理も必要だと思っております。デジタル教科書が動作するための端末のスペックや,サポートするブラウザ等に加えて,クラウドでデジタル教科書が配信されるに当たって,そのサービスがどの程度利用停止せずに安定稼働しているのか―――いわゆるSLAと言われるサービスレベルアグリーメントはどの程度必要なのかといった,共通して求められるデジタル教科書の非機能要件の整理も,留意すべき点になるかと思っております。
以上になります。
【堀田座長】 ありがとうございます。続きまして,河嶌委員,お願いいたします。
【河嶌委員】 柏市教育委員会の河嶌です。先ほど宮原委員,柴田委員,清水委員からも話がありましたが,子供たちの登下校時の負担軽減については,ぜひ記載してほしいと思います。これによって,子供たちの交通事故の防止にもつながりますので,よろしくお願いします。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。加藤委員,お願いします。
【加藤委員】 よろしくお願いします。細やかな観点ですが,スクロールやリンク等,いわゆる紙の教科書にある物理的な制約が超えられる機能はメリットになると思いますので,書き加えると良いのではないかと思いました。
また,本検討会議において繰り返し申し上げていて申し訳ないのですが,本格的に運用されたときには,現状,複数の出版社,複数のビューアー,複数の配信サイト,複数の認証を使うことになりますので,その辺りの使い勝手を考慮していかなければいけないのではないかと思います。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。赤堀委員,お願いします。
【赤堀委員】 赤堀でございます。よろしくお願いいたします。1の(2)についてお話しさせていただきます。デジタル教科書の利点については,各委員からたくさんお話が出ており,大変納得するところも多くございます。我々としましても,各学校で教師がより良い授業を構築する際に,そのツールが増えるという点で可能性を感じているところです。
ただ,教育においてデジタルが万能ではないということについても,我々としては大切にしていきたいと考えていますので,発達段階や集団,一人一人の状況に応じて,個別最適な学習を進めていきたいと思っています。そのためにも,教科書についても紙とデジタルを併用して,それぞれの子供たちの特性等によっても使い分けられるようにしてほしいと思っています。紙の教科書の併用についてもここに明記していただけるとありがたいと思っています。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございます。今,赤堀委員がおっしゃったことはごもっともでございまして,そこで用いられる学習者用デジタル教科書の利点,という説明が現状記載ができておりませんので,最終的な文章にはその点が分かるよう書き加えたいと思います。
黒川委員,お願いいたします。
【黒川委員】 よろしくお願いします。(2)について3点申し上げます。
一つ目に,皆様からも既にお話がございましたが,デジタル教科書の本格導入に当たっては,持続的な環境整備の担保が絶対条件になります。これはこの会議で議論する話ではないかもしれませんが,端末や通信環境の確保を国や自治体と共に行っていかなければなりません。授業や家庭で使う場合にストレスなく活用できる環境の実現が大前提となりますので,デジタル教科書の検討というのは,単に先進研究ということだけではなく,普及のための壮大な計画だと思っております。公教育における国家プロジェクトの一つとして位置づけなくてはならないということが前提としてあると思います。
二つ目に,今後,普及促進事業やフィージビリティ検証事業等が行われる可能性がございますが,そういった事業を行った上で,エビデンスに基づいた導入をお願いしたいと思います。理論的には様々なことが言えますが,我々発行者からしますと,デジタル教科書を紙の教科書と同様に完全供給できるか,紙の教科書と同様に,発行者が完全供給をきちんと担保できるかということが最大の課題になります。大規模な実証を行った上での導入でないと,何が起こるか分からないというのが現実かと思っております。
最後に,現場の先生方と話していると,端末も入ってきて,授業のカリキュラムをどうするかという課題がございます。令和6年に向けた議論をしているところですが,そこに向けて教科書のみならず,指導書も作ります。その内容も含めて教員への研修が必ず必要になりますので,ICTの活用を前提としたカリキュラムを考えていくということも非常に重要になるのではないかと思っております。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。清水委員,お願いします。
【清水委員】 (2)の留意すべき点について、改めてお願いになりますが,3点目の「デジタル教科書の使用に際し,健康面に関する留意すべき事項の周知」について,特に健康面を危惧される保護者の方が多数いらっしゃいますので,保護者にも分かりやすいよう,しっかりと周知の徹底等をしていただくようお願いさせていただきます。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。それでは,委員の皆様からの御意見がある程度出ましたので,事務局より御発言いただきます。神山課長,お願いします。
【神山課長】 様々な御意見ありがとうございました。記載については,いただいた御意見や全体を踏まえて見直したいと思います。例えば,教科書のデータだけではなく,ビューアー等の機能も重要だといった点や,ランドセルの重さの軽減なども利点の一つだという点等もきちんと踏まえたいと思っておりますし,その上で,全体を示すときの分類をもう少し分かりやすくできるよう,対応していきたいと思います。
また,特に御意見の多かった,メンテナンスや同時アクセスに耐えられるようにする必要があるといった点につきましては,前回御説明をいたしました,現在要求中の来年度の予算事業等を通じてフィージビリティ等をしっかり確かめていきたいと思っております。
また,今申し上げた技能面,システム面だけではなく,紙との併用ができるようにしながら見定めていくことも重要だという御指摘もありました。その点については,来年度の事業においては紙の教科書を給与した上でデジタル教科書を使っていただく形になりますので,そういった実証研究等を踏まえながら対応していきたいと思っておりますし,その際,健康面等も含めた周知をしていくということも併せて進めていく必要があると思っております。
そのほかにも様々な御意見をいただきましたので,座長とも相談しながら修正させていただきたいと思っております。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。皆様から出していただいた意見の中には,一つ目の議題のみならず,この後行う二つの議題の内容も含まれていたように思いますし,そもそも現状の分け方で良いのかという点も含めて大幅な見直しを行う可能性もあります。議題としては先に進めてまいりたいと思いますが,具体的な御指摘あるいは文言の代案等については,メール等でも構いませんので,会議後にも事務局にお寄せいただければと思います。
それでは,次に参ります。「2.学習者用デジタル教科書とデジタル教材の役割分担等について」に関して,事務局より御説明をお願いします。
【度會課長補佐】 事務局でございます。資料1の3ページを御覧ください。「学習者用デジタル教科書とデジタル教材の役割分担等について」ということで,2点ございます。
まず,「(1)学習者用デジタル教科書の検定の在り方について」に次の三つを挙げております。学習者用デジタル教科書も,現行の紙の教科書と同様,その内容の正確性・適切性を確保するための検定制度が必要であることには変わりがない。学習者用デジタル教科書については,今後,デジタルの特性を生かして動画や音声等も取り入れることが考えられるところであり,これらも含めて検定の在り方について今後検討していくことが必要。なお,令和6年度の改訂については教科書の編集・検定・採択をそれぞれ令和3年度,4年度,5年度に行う必要があるというスケジュール等を考慮し,検定の範囲は現行の紙の教科書と同様としてはどうか。
続きまして,「(2)学習者用デジタル教科書とデジタル教材等との連携について」に次の四つを挙げております。学習者用デジタル教科書を本格的に導入するに当たっては,デジタルの良さを最大限に生かしながら使用することができるようにする必要がある。デジタル教科書は,上記の検討等の教科書制度との関係を考慮する必要があるため,デジタル教材のほうが相対的に自由度は高く,多様な教材の迅速な提供を行うことが可能であり,現在でも,教科書発行者において,デジタル教科書とそれに関連するデジタル教材をセットで提供することが行われており,動画等のデジタルならではの良さを取り入れた,一体的かつ効果的な活用が進められている。このように,全ての児童生徒が学習すべき学習指導要領の内容で適切に構成されたデジタル教科書と,個別最適な学びや主体的・対話的で深い学びのより一層の実現に資するデジタル教材との一体的な活用は,児童生徒の学びの充実に資すると考えられる。そこで,デジタル教科書と,発行者以外が製作したものを含むデジタルや紙の教材との連携を図る上で考慮すべき留意事項や有効な方策は何か。
学習者用デジタル教科書とデジタル教材等との連携につきましては,前回第5回で御議論いただいたところではございますが,以上(1),(2)の2点について御意見をいただければと思いますので,よろしくお願いいたします。
【堀田座長】 ありがとうございます。ただいまの事務局の御説明について,何か質問等ございますでしょうか。特にないようですので,これから皆様の御意見をいただきますが,本日御欠席の石戸委員より御意見をいただいておりますので,まずそちらを事務局から御紹介ください。
【度會課長補佐】 事務局でございます。石戸委員からの御意見を紹介させていただきます。
「(1)の学習者用デジタル教科書の検定の在り方に関して,『検定制度が必要であることには変わりがない」とありますが,社会が大きく変化する中で,その前提から考え直すことも必要ではないかと考えます。質の担保は重要ですが,その方法は今の検定なのか,改めて考え直すタイミングではないでしょうか。
令和6年度の改訂においては,デジタル教科書を法令上の教科用図書と位置づけ,デジタル教科書を無償給与の対象とすること,さらに,次の改訂までに前述の検定の在り方を検討するのが良いのではないでしょうか。それに当たり,かかるコストの算出と予算措置が重要であると考えます。」との御意見をいただいております。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。
検定の話は,石戸委員の御意見もありましたように,教科書の質保証が重要という観点に立った論点です。子供たちの学習情報として世の中の様々な情報が役に立つわけですけれども,その基盤となる中核的なものとして,質保証された教科書というものが,紙のときと同じようにデジタルでも存在すべきではないかということ,一方で,技術は日進月歩ですので,新しい技術や新しい方法論で考えられた教材まで全部4年ごとに検定していると無理も生じてしまうことから,そういうものについてはできるだけ現在の教材と同様に検定対象にはせず,有機的に連携できるようにするということ等がこれまで話に上がっていましたが,その在り方について御議論いただきたいと思います。
まず,森委員,お願いいたします。
【森委員】 日図協の森と申します。私からは,教材を作る立場として,(2)の二つ目について申し上げます。二つ目に記載の内容について,1文目と2文目で少し言い方が変わっているように思っております。1文目は,デジタル教材も多様な教材を提供することができるというオープンな話である一方,2文目からは教科書と教材の一体化,すなわちクローズドな話だと思いますので,これは二つに分けたほうが良いのではないかと思います。
デジタル化によって教科書の機能が拡張することには全く異論ございませんが,教材の機能を付与する場合は,教科書発行者以外の公正な競争に十分配慮する必要があるのではないかと思っています。場合によっては,教材領域のほうがデジタルならではのよさを発揮できるとも考えております。今後のテクノロジーの急速な発展を考えると,デジタル教材の発展余地を残しておいていただきたいと思います。
そういった意味では,教科書と切り離すことができない副次的な機能,例えば音声,映像や素材提供のようなところと,教科書と切り離しても成り立つ教材領域,例えばドリル等の学習機能や学力分析のようなところをしっかりと区別しておく必要があるのではないかと思います。後者の領域は,無償化の対象に加えるべきではないと考えております。
また,「一体的な活用」ということをあまり言い過ぎますと,自治体が教材部分も選択すると勘違いされる恐れがありますが,実際には法令に基づいて学校現場が主体的に判断して使用する教材を選択するべきであり,自治体は現場の判断を尊重すべきだと思っております。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございます。東原座長代理,お願いいたします。
【東原座長代理】 既に話のあった機能の整理とも若干関わってくるかもしれませんが,どのような連携の在り方が良いかということについては,今後の議論によりだんだんと定まってくるのではないかと思います。それをどのように規定していくのか,ガイドラインに連携の方式を定めるのかといったことや,技術的なことをどのようにメンテナンスしていくのかといったことの大枠の方向性を書き込めると良いのではないかと思います。
例えば(2)の4点目にある,「考慮すべき留意事項や有効な方策は何か」という問いに対する答えをどのような形で示していくのかをこの会議においてもう少し検討し,その結論として,連携の仕方やビューアーの機能等のガイドラインを作成する,あるいは実証事業を踏まえて標準仕様のようなものを作成する,等といった具体的なゴールをまとめの中に書くと良いのではないかと思います。
よろしくお願いいたします。
【堀田座長】 ありがとうございました。御提案いただいた点を反映できるかについては,今後の議論の進行にもよるかと思いますが,御指摘のとおり,このところ何回かの会議では,既に様々な場面で実装されているような技術的な部分について,例えば標準化や方式を決めるといったことをある程度したほうが良いのではないかという意見が強く出ているところだと思います。一方で,それを誰がするのかについての議論はまだ十分ではないと思いますので,その辺りについてきちんと検討し,まとめに示すべきだという御趣旨だと理解しました。ありがとうございました。
続いて宮原委員,お願いいたします。
【宮原委員】 ありがとうございます。デジタル教科書とデジタル教材の役割分担に関して,こちらに書いていることに反対なわけではございませんが,現場のそれぞれの先生方の教え方,学習のやり方の多様性を尊重しないといけませんので,デジタル教材の自由度を高くし,現場で選択ができるということをまず担保するべきだと思います。そのために,デジタル教科書とどのようにリンクさせていくかということについては,仕様のガイドライン等で規定しないと,民間で様々な仕様が出てくる可能性があります。現場がリンクする際に混乱するということがないように,ある程度の整理が要るかと思います。
また,様々な機能を実装し,学習者の多様性にある程度考慮したデジタル教科書を実現するにしても,それでは拾い切れない機能があるだろうと思うので,そこについては,デジタル教材で補完するといったことを考えるべきなのではないかと思いました。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございます。
片山敏郎委員,お願いします。
【片山(敏)委員】 お願いします。まず,(1)の検定の在り方ですが,二つ目にあります動画や音声等の検討は,本当に進めていかなければいけないと思います。教材との連携というのは非常に大事なのですが,デジタル教科書自体に動画や音声のよさを入れていくということをしないと,全ての子供にそのよさを感じてもらうことは難しいと思っています。
次に,(2)のデジタル教材との連携について,やはり費用負担についての検討を早い時期から考えていく必要があります。現在,漢字・計算ドリル等,保護者に負担いただいて購入する教材も多いと思いますが,さらに,どの教科でもデジタルの教材とリンクさせていくとなると,相当な費用がかかってきます。先ほど,自治体で一律に使用する教材を選択することになるのは良くないという森委員の御指摘もありましたが,どんなに良い教材があっても,それを購入できない,子供の元に届かないということでは本末転倒ですので,保護者が負担できる範囲でどの程度廉価で提供できるのかですとか,そこに補助が入ってくるのかといったことを含めて,検討していく必要があるのではないかと考えています。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。河嶌委員,お願いいたします。
【河嶌委員】 河嶌です。編集・検定・採択という流れの中で,自治体,市教育委員会は採択を行わなければなりません。その一連の事務の中で,専門調査員による選定資料の作成作業があるのですが,紙の教科書であれば,今までの使用経験を生かして作成することが可能だったのに対し,デジタル教科書に関しては,その使用経験がまだ十分にない状態で選定資料を作成することは難しいのではないかと思います。
また,デジタル教科書とデジタル教材をセットとして考えていくのか,あるいはデジタル教材はあくまで教材であって採択における調査研究の対象外なのか,そういった点によってもまた違ってくると思います。ぜひとも,採択という事務の中で急にデジタル教科書に関する調査研究を行うのは難しいということを御承知おきいただきたいと思います。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。続きまして,赤堀委員,お願いします。
【赤堀委員】 赤堀でございます。お願いいたします。まず,(1)については,先ほど河嶌委員から教育委員会の観点でのお話がありましたように,私も現段階ではデジタル媒体で採択するということは非常に難しいと思うので,採択についても,三つ目に書かれているとおり,令和6年度については紙の教科書と同様とするのが良いのではないかと思っています。
(2)のデジタル教材等との連携について,タブレットに教科書と教材が両方入ってしまっていると,それを実際の授業の中で連携して使うというのは非常に難しいだろうと想像しています。現在は,例えば紙の教科書とデジタル教材,指導者用デジタル教科書と紙の教材,という形で使っていますので,様々な教材を1台のタブレットで代わる代わる見るということが現実的なのかという課題はあるかと思っています。
コンテンツの工夫がなされることや,機能がバラエティに富んでくるだろうということについては大変期待もしておりますが,現実の授業の中でどのように使っていくのが望ましいかという観点から,紙の教材等との連携も含めて書いていただけるとありがたいです。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。中野委員,お願いいたします。
【中野委員】 まず(1)の学習者用デジタル教科書の検定の在り方について,「検定の際に,障害のある児童生徒のアクセシビリティ,ユーザビリティを確認することが必要」という趣旨の文言を加えていただけるようにお願いします。
(2)の学習者用デジタル教科書とデジタル教材等との連携については,「デジタル教材等に関しても,デジタル教科書と同様に,障害のある児童生徒のアクセシビリティ・ユーザビリティを確保することが必要である。なお,デジタル教材等のアクセシビリティ・ユーザビリティは,教科書発行者以外が作成するデジタル教材やCBT等にも適用する必要がある。」という趣旨の文言を加えていただけるようにお願いします。また,デジタル教材等の役割分担等については,ガイドラインを作成する必要があると思いますが,その中に,アクセシビリティ・ユーザビリティについての項目をぜひ,加えていただくようお願いします。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。
ほかに御意見等ないようであれば,次に参りますが,いかがでしょうか。
それでは,続いての議題にまいります。現在,告示において,学習者用デジタル教科書の使用を各教科等の授業時数の2分の1未満とする基準が定められておりますが,これにつきまして,資料1の3と,資料2から5に沿って,事務局より御説明いただきます。
【度會課長補佐】 事務局でございます。資料1の4ページを御覧ください。「3.学習者用デジタル教科書の使用を各教科等の授業時数の2分の1未満とする基準について」ですが,まず(1)に関して,教育課程の一部において紙の教科書に代えて学習者用デジタル教科書を使用することができると学校教育法上定めております。法律上,「文部科学大臣の定めるところにより」と規定しており,法律ではなく文部科学省告示において,各教科等の授業時数の2分の1に満たないことを基準として示しています。
この基準については,1人1台端末整備の状況や学習者用デジタル教科書の発行状況,健康面への影響や発達段階,諸外国における例,学習者用デジタル教科書を使用している学校の意見等を考慮しつつ,その必要性について検討してはどうか,ということに関して御意見をいただければと思います。併せて,(2)の「この基準を見直した場合に考慮すべき留意事項や対応方策は何か」についても御意見いただければと思います。
関連して,資料2から5につきまして御説明させていただきます。
資料2を御覧ください。こちらは,学習者用デジタル教科書を巡る環境整備の状況について記載しています。まず上の表から申し上げますと,GIGAスクール構想の実現に向けた端末の調達に関する8月末時点の状況です。今年度末までに9割以上で端末が配備される見込みとなっております。一方,下の表にあります学習者用デジタル教科書の発行状況についても,令和3年度においては小学校教科書,中学校教科書共に95%に達する見込みとなっております。
続きまして,資料3でございます。こちらは,検討会議における健康面への影響に関する専門家からの御意見を記載しております。健康面については,第4回で議論いただきましたが,その際にいただいた御意見を集約している資料でございます。
次に,資料4でございます。こちらは,教科書研究センターにおいて作成された海外教科書制度の調査研究報告書等を基に,諸外国における教科書制度についてまとめたものです。一番下の欄にございますとおり,デジタル教科書の使用に関する基準,例えば先ほど申し上げた「各教科等の授業時数の2分の1未満」に相当するような制度は見受けられない状況です。
最後に,資料5でございます。こちらは,昨年度文部科学省が実施した「デジタル教科書の効果・影響等に関する実証研究事業」の実証校において実施した調査の結果です。まず,上段の「健康面への影響」に関しまして,例えば2行目の後段から読ませていただきますが,「目の疲れ」の質問項目と,「良い姿勢」「画面と目の距離」の質問項目との関係では,良い姿勢ができた,画面と目の距離を30センチ以上離せた,と回答した生徒のほうが,目が疲れていないと感じている傾向が見られたという結果が出ております。これは,学習者用デジタル教科書を使用する際には,姿勢に関する指導を適切に行い,目と学習者用コンピュータの画面との距離を30センチ程度以上離すよう指導することが有効であることを示唆するものであるとの報告がございます。
また,下段の「学習者用デジタル教科書の使用を各教科等の授業時数の2分の1未満とする基準」につきましては,主に太字部分を読み上げさせていただきますが,今回実証を行った学校現場の教員には,制限についてほとんど意識はされておらず,また,制限する必要性は感じられていないことが分かりました。また,2分の1以上使いたいかという要望については,「制約がなく自由に使えるほうがよい」「2分の1未満の使用の義務化は必要性を感じない」「必要に応じて多様な授業が可能になると考えるから2分の1以上使えるようにしてほしい」という意見がございました。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。ただいまの事務局の説明につきまして,何か質問や確認等ございますでしょうか。
それでは,皆様の御意見をいただければと思います。まず,本日御欠席の青山委員と石戸委員より御意見をいただいておりますので,事務局より御紹介いただきます。
【度會課長補佐】 事務局でございます。まず青山委員からの御意見を紹介させていただきます。
「教科用図書に代えて教科用図書代替教材を使用する授業の授業時数が,各学年における各教科及び特別な教科である道徳のそれぞれの授業時数の2分の1に満たないことという現在の規定は改正すべきと考えます。理由は次の3点です。
一つ目の理由は,2分の1に規制する明確な根拠がないからです。
二つ目の理由は,まずは実際に学習者用デジタル教科書をどんどん使い,慣れてほしいという現段階で,2分の1というブレーキはかけないほうが良いからです。新たなものを導入するには時間も労力も必要とします。そのため,不慣れなものは敬遠する傾向がある教員に,2分の1という規制は,デジタル教科書を使わない言い訳ともなりかねません。GIGAスクール構想でお試し用に無償配布しても,使用しないのであれば無駄になってしまいます。まずは2分の1を撤廃し,使い過ぎて問題になったら授業時数のどの程度が適当かを検討すれば良いと考えます。そこで初めて検証をするスタートラインに立つことができるとも言えます。
三つ目の理由は,PISA調査の調査方法やCBTの導入など今後の潮流を見据えたとき,2分の1はナンセンスとなるのではないかと思われるからです。」
青山委員からの御意見は以上でございます。
また,石戸委員からの御意見を紹介いたします。
「デジタル庁の新設に注目が集まっているように,社会全体がデジタル導入の加速,デジタルトランスフォーメーション推進に動いている中,今すべきことは,いかに利活用を高めるかということではないでしょうか。
以前の会議で,2分の1の基準を導入した根拠を質問したところ,『定量的エビデンスはないが,健康への不安・懸念の声が多い中で慎重に導入した』,『デジタル活用の制度的バランスを取った』という話がありましたが,その後の状況の変化を踏まえると,基準に明確な根拠がないのであれば,速やかに撤廃すべきであると考えます。留意すべきことは特にないと考えます。仮にあったとしても,一律の規制で制限することには抑制的であるべきと考えます。むしろ良いデジタル教科書の活用の仕方を広く共有する等,普及の方策について議論すべきと考えます。」
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございます。
それでは,委員の皆様の御意見をいただきたいと思います。中野委員,お願いいたします。
【中野委員】 よろしくお願いします。2分の1の基準をなくすということについては賛成でございます。現行の制度上でも,特別支援教育においては,子供たちの障害の状況に応じて2分の1以上デジタル教科書を使うことができます。ただし,障害のある児童生徒の健康面への影響を考え,「目と学習者用コンピュータの画面との距離を30センチ程度以上離す」ことができるようにするために,適切なディスプレイ,端末,OS等の選択ができるようにすることが大切だと思います。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。片山敏郎委員,お願いします。
【片山(敏)委員】 片山です。お願いします。他国の状況や,健康面の心配も留意事項を守っていれば薄いということから,2分の1の基準は撤廃すべきと考えております。現場においては,青山委員のお話にもあったとおり,新たなツールを導入することに対してのブレーキ効果が非常に大きく,2分の1という基準があると,より一層ブレーキがかかってしまうのではないかと思います。もちろん,健康面に関して,画面と目の距離を離すということや,時々休むといった留意事項は何らかの形で明言をしたほうが良いと思いますが,その上で,基準については撤廃をすべきだと考えています。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。片山弘喜委員,お願いいたします。
【片山(弘)委員】 お願いいたします。今後,1人1台端末の整備がなされると,授業時数の全ての時間で端末が活用されることもあると考えられます。そうなりますと,デジタル教科書の使用時数の基準が,デジタル教科書の使用自体に制限があるというイメージを与えかねません。また,デジタル教科書の発行も多くなっておりますので,紙の教科書と比較して同等以上の効果があるのならば,全ての時間でも使用を可能とするように見直しても良いと考えております。
また,基準の見直しに当たっては,健康面への影響に関する御意見を踏まえ,目と学習者用端末の距離を30センチ程度以上離すことや,良い姿勢で端末を使うこと,また,反射や映り込みを避ける工夫を確実に周知し,児童生徒への指導を行うことが重要であると考えております。この30センチ離すことや良い姿勢に関する指導につきましては,これまでも学校現場で行われていることですので,教師にも浸透しやすいと思います。また,児童生徒に,目が疲れたときの症状を明確に伝えて,そのときの対処法を適宜指導することも重要であると考えております。
以上です。
【堀田座長】 具体的にありがとうございました。中川委員,お願いいたします。
【中川委員】 中川です。お願いします。2分の1の基準は見直すべきと考えています。理由は三つあります。
まず一つ目は,私が主査をしていた「令和元年度デジタル教科書の効果・影響等に関する実証研究事業」において,先ほど事務局から資料5に沿って御説明があったように,調査結果からもそのことが読み取れるからです。重要なのは,既に実際に学習者用デジタル教科書を使っている学校の教員が,このような意見を述べたということです。
二つ目に,GIGAスクール構想によって,多くの学校で児童生徒1人1台端末環境が実現しますが,使う側からすると,端末自体のほかのアプリやソフトの活用には制限がないのに,なぜ学習者用デジタル教科書だけ制限があるのか,その明確な理由がないからです。もちろん,健康面に留意するということは大前提ですが,制限を課す必要はないと考えます。
最後に,来年度予定されている実証事業を進める上でも,各教科等の授業時数の2分の1以上使用できたほうが,より有効に活用が期待できるからです。
以上3点から,基準は見直すべきと考えます。以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。河嶌委員,お願いいたします。
【河嶌委員】 河嶌でございます。まず2分の1の基準について,あえて現段階で「2分の1に満たないこと」という基準を設ける必要はないと思います。実際にICTの活用が始まり,各学校現場でデジタル教科書の使用が増加した際に,その結果を踏まえて,あるいは検証しながら,基準の必要性を検討すべきだと考えています。
また,一つ目の議題に戻ってしまうのですが,留意点として,デジタル教科書の導入に当たっては,使いやすさを最も大事にしてほしいと思っております。現場の教員にとっても使いやすいものであるべきです。今後も様々な方からの御意見を聞くと思いますが,ICTの扱いが得意な先生の声だけではなく,不得意な先生の声もぜひ拾ってほしいと思います。現場にデジタル教科書を導入したとしても,実際に使われなければ,次の段階で財源を確保することは見込めないと思います。よろしくお願いします。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。柴田委員,お願いします。
【柴田委員】 柴田でございます。私も2分の1未満という基準は設ける必要はないと思っております。健康面に関しては,以前の会議でも議論したとおりでございますし,また,学校での実用性も考えると,学習での効果を優先して使っていくべきであろうと考えています。ただし,健康面に関する留意すべきことは守っていく,進めていく必要もありますし,学校においては,先生方から子供たちの健康観察をなさる等といった指導も必要になると思います。その指導に当たっては,子供たちの理解に合わせた指導の仕方が必要になってくるだろうと思います。すなわち,低学年の子供や高学年の子供,それぞれにどのような指導をするのかというところも考えていく必要があろうかと思っております。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。赤堀委員,お願いいたします。
【赤堀委員】 お願いいたします。多くの委員の方とは少し異なる方向で申し訳ございませんが,現状,ほとんどの学校では,学習者用デジタル教科書を使用していません。1人1台端末環境下での実証研究はこれからであるということ,使用に関する枠組みがまだ明確にはなっていないということに鑑みると,現段階で基準の撤廃について議論をすることには疑問を持っています。この状況での基準の緩和,ましてや撤廃というのは,学校現場において,「デジタル教科書さえ使っていれば良い授業になる」といった誤った風潮につながる恐れがあるのではないかという心配もあります。
ただ,先ほど申し上げたように,紙の教科書とデジタル教科書を併用する形で,教師がより良い授業を展開するためのツールの一つとして活用の可能性を広げるという視点であれば,基準を緩和することも考えられるかもしれないとも思っています。その場合も,その意義は十分に周知していただき,いたずらに使用頻度を上げることのみをよしとしないよう,十分な配慮が必要だと考えています。
以上です。
【堀田座長】 御指摘のとおり,きちんと意義については周知をするという前提で議論はしているところではございますが,大変重要な意見です。ありがとうございました
森委員,お願いします。
【森委員】 学校教材の観点から申し上げますと,デジタル教科書に使用制限があると,今後普及するであろう学校用デジタル教材の普及に支障をきたすのではないかと危惧しております。現場では,「デジタル教科書」なのか「デジタル教材」なのかを実際に導入された後で見分けることは難しいのではないかと思いますので,デジタル教材の発展を阻害しないような基準をつくるか,または2分の1の基準を撤廃する方向で考えていただければと思います。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。
清水委員,よろしくお願いします。
【清水委員】 PTA協議会の清水です。私も多くの委員の皆様方と同じ意見です。2分の1の基準に関しましては,明確な根拠がないように思いますし,ここで基準を設けることはないのではないかと思います。資料5にも書いてありましたとおり,実際に既にお使いになっている現場の先生からのお声も非常にそのとおりだと思います。先ほど申し上げましたように,健康面には十二分に留意するというところは徹底しなければいけないと思いますが,2分の1の基準に関しましては撤廃すべきだと思います。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございます。東原座長代理,お願いいたします。
【東原座長代理】 私も皆様と同じように,2分の1の規定はなくして良いと思っています。
先ほど御説明のありました学校教育法の34条に「教育課程の一部において」という文言がありますが,その「一部」という文言の捉え方に関して,堀田座長が座長を務められた「『デジタル教科書』の効果的な活用の在り方等に関するガイドライン検討会議」の議事録で,「『一部』の最大値は2分の1だ」という趣旨の旨を読んだ覚えがございます。
そう考えますと,本検討会議の議論の結果,仮に2分の1を撤廃するという話になったときには,告示を書き換えるだけで対応するのか,学校教育法の「教育課程の一部において」という規定の改正も行うのかによって,表現が違ってくるような気がいたします。
現状,告示を書き換えることによって対応するのではないかという印象を持っていますが,学校教育法の「教育課程の一部」という文言まで改正する方向であるとするならば,この検討会議で議論することではないとしても,その点を意識する必要もあるのではないかと思っており,どのような対応を予定しているのかお伺いしたいと考えています。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございます。神山課長,お願いいたします。
【神山課長】 東原課長代理より御指摘いただいた点について,御指摘のとおり,学校教育法には,「一部において」という文言がございまして,それも踏まえて,文部科学大臣が定める告示において,導入当初は「2分の1」という基準を定めておりました。
ただし,法令上,「一部において」と規定があるときに,必ず「2分の1未満」でなければいけないのかというと,一般的には必ずしもそうではないと解釈されております。したがって,法律に「一部において」と書かれていたとしても,告示において2分の1の基準を緩和するということは制度上可能であると考えています。
その上で,告示を先行して改正するのか,法律の見直しをどうするのかといったことについては,本検討会議での御議論を踏まえて,適切に対応してまいりたいと考えております。
以上でございます。
【東原座長代理】 ありがとうございました。
【堀田座長】 ありがとうございます。続きまして,福山委員,お願いします。
【福山委員】 福山でございます。私もデジタル教科書や教材との一体的な活用による利点は十分理解しておりますし,方向性としては皆様と同じように考えております。また,本日健康面で出ておりましたランドセルの話は,私も学校現場で感じるところでございます。
これからGIGAスクール構想が進み,デジタル教科書を使用する機会が増えていく一方で,デジタル教科書・教材の使用に伴って配慮すべき事項,懸念すべきことがやはりございますので,私は現段階で2分の1未満の使用基準を外すべきではないと考えております。
理由は三つあります。一つは教師側の課題です。今まで私はこの場で,教師の研修の充実を図るべきということを述べてまいりました。デジタルに対するリテラシーや技能の習熟等は,計画的な研修で段階的に練度を高めていくことによって,全国で一定水準の指導技術をもって授業展開できると考えたからです。2分の1未満の基準をなくすとなれば,自治体や学校の裁量で自由に使えるようになりますので,積極的に使いたい教師は使えますし,使用頻度が増えれば,その体験を通じて教師のデジタルを使った授業力も上がると思います。
しかし,一方で全国的に多くの教師が初体験であること,教師のデジタルを使った指導力に大きな差異があることを考慮すると,資料3でも,教師が理解するということや保護者にも周知するということが書かれておりますが,健康への影響について,教師に知識・理解がなかったり,健康への影響に留意した授業計画や授業展開ができなかったりすることによる,授業を受ける側である児童生徒の健康面に及ぼす影響は考慮すべきであると考えております。
今後,教育委員会主催の研修や校内研修等様々な研修を通して,先生方が段階的にICTのリテラシーや健康面の配慮事項を踏まえつつデジタルを使った授業を行うための指導力を身につけていくことが肝要と思います。
二つ目は生徒の問題です。中学校の場合は,ネット依存やSNS問題があります。この会議でもリテラシーの話が出ておりました。今,大事なのは,メディアリテラシーはもちろん,メディアコントロールの力を生徒に身につけさせていくことです。発達段階による差異もありますので,中学校段階では,周囲に保護者や教師がいなくても,タブレットやスマホの使用について,生徒自ら健康面について理解して,メディアの使用をセルフコントロールできる力の育成に取り組んでいかなければいけないと思います。
ネット依存やSNS問題に対して,家庭での使用も含めた1日のデジタル機器の使用率を考慮すれば,家庭への周知や理解促進,メディアコントロールを身につけさせるということについて,学校と家庭の協働的な取組が必要となってまいります。しかし,現段階では,全国的にメディアコントロールを身につけるための取組はまだあまり見られていないのが現状かと思います。
三つ目は家庭からの視点に立った問題です。デジタル教科書・教材にかかる費用面,健康への影響,自治体や学校の取組,学校と家庭の協働的な取組について,まだ保護者に理解されているとは言えません。保護者からは,「オンライン学習になると,ネットでゲームができてしまうのではないか」,「通信費,バッテリーやメンテナンスにかかる費用はどうなのか」,「将来的に副教材費に様々なものが組み込まれていくのではないか」等様々な不安の声もありますので,保護者,家庭に対して周知するという期間も必要かと思います。
教師,生徒,保護者の視点で課題を挙げさせていただきました。これらの課題や懸念があることを承知した上で,基準をなくして自由裁量権を与えてしまうと,今後,家庭のWi-Fi環境,自治体のICT環境整備状況やデジタル教科書の導入状況によって,自治体間の格差や地域差の格差,学校間の格差を生じさせることにつながると考えます。
そのことによって,全ての児童生徒が個に応じた教育を平等に受ける権利を守ることと,国の果たすべき義務として指導内容に関わる一定水準の条件を確保すべきことの両面を同時に担保できなくなる恐れがあると思います。したがって,実証事業の実施により,枠組みのないデジタル教科書活用による成果と課題を分析する必要があると思います。その結果をもって,再度この基準の可否について検討することが適当であると考えます。その間は,現在予想されている課題や懸念事項を各自治体で解消すべき期間として,現在ある2分の1の基準には手をつけないようにしておく必要があるのではないかと考えています。
仮にこの基準について検討を継続する場合は,「各教科等の授業時数の2分の1に満たないこと」という基準を,「総授業時数の2分の1に満たないこと」に変更するということを提案したいと思います。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。続きまして,宮原委員,お願いします。
【宮原委員】 宮原でございます。ありがとうございます。私は,2分の1の基準の撤廃に賛同しております。理由は二つございます。
一つは,今までの議論において,紙の教科書とデジタル教科書を比べたときに,紙の教科書がデジタル教科書より勝っている利点は,少なくとも大きな点ではなく,基本的にデジタル教科書で全てカバーできそうなこと,また,むしろデジタル教科書により多くの利点があると確認できたことです。
二つ目は,今回の検討は「最大2分の1としている基準をどうしますか」という議論であって,「2分の1以上使用しなければならない」,「100%を目指す」,「10%では駄目なのか」という議論ではないことです。むしろ,先ほどの議題で申し上げましたように,学習現場での教師,児童生徒,あるいは家庭の状況を踏まえた選択権が広がるということではないかと思っております。
ある学校現場においては2分の1を超えて積極的に活用するという学習の形態を取られるでしょうし,紙の教科書を基本にしてやっていくという学校現場もあるのではないかと思っておりますので,そういった選択肢を広げるという意味で,2分の1という基準は不要ではないかと思います。
なお,これは紙の教科書が撤廃されるわけではないということが大前提になっています。その場合,全国に1人1端末が確保されると,デジタル教科書の活用が進むだろうとは想定されますが,全く使わないということもあり得るわけです。そうすると,児童生徒のデジタルリテラシーに,学校の教育方針によって格差が生じるということがないよう,何らかの手当てをしないといけないのではないかと,皆様の御意見を伺いつつ思っておりました。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。加藤委員,お願いいたします。
【加藤委員】 よろしくお願いします。私も2分の1の基準を撤廃することに賛成です。既に皆様がおっしゃったことと重複いたしますが,資料5を見ると,実証研究事業で使っている先生たちが,必要に応じて多様な授業が可能であるということを挙げています。私が一緒に研究をしている先生方も,ずっと使えるという環境に効果があると言っています。そういう先生たちが,この2分の1の基準に制約されてしまい,「効果がある」と思っているにもかかわらず使えないという状況になってしまいます。宮原委員御指摘のとおり,使わなくてはいけないというルールではないので,ぜひ基準は撤廃したほうが良いと思っています。
また,この基準が残った場合には,先ほどの御意見の中にもありましたように,学習者用デジタル教科書の定義にも関わります。いつどの時間に「デジタル教科書」を使い,どの時間に使っていないのか,先生方には非常に混乱してしまうと思いますので,そういった点を整理していくことが必要になってくるのではないかと思いました。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございます。
それでは,議題3につきまして,神山課長より御意見お願いいたします。
【神山課長】 多様な御意見ありがとうございました。2分の1の基準について,撤廃もしくは緩和をして良いのではないかという御意見もございましたし,また,現場のほうから,必ずしも性急には撤廃しないほうが良いのではないかといった御意見もありました。このことに関しましては,本日いただいた御意見を踏まえて,座長ともよく相談させていただき,次回,事務局より今後の方向性についての案を示した上で,また御議論いただきたいと考えております。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。本日の議論の論点はいずれも非常に重要なことですので,私からも意見を申し上げたいと思います。
一つ目のデジタル教科書の利点について,ようやくこれからGIGAスクール構想により端末が導入され,高速ネットワークやクラウド等を初めて授業で活用する方々がたくさんいらっしゃいます。子供たちも先生方も利用経験を積むのはこれからですし,ましてや研修もこれからです。デジタル教科書の供給側も,大規模なサービスを準備されていますが,実際に様々なところで使われ始めるとどうなるかということはこれから分かっていくことになります。
実証研究もしっかりやっていくという前提ではありますが,ICTの活用が得意な方も,そうでない方も,実証事業に手を挙げるような学校も,そうでない学校もたくさん使うという,活用の経験値が上がっていくのはこれからだと思います。多くの先生方が,「これまで紙で授業してきたけれども,デジタルも一部取り入れてみようか」と考えたときに,どこから取り入れるのか,どのように取り入れるのか,それによって授業のやり方をどう変えていくのかということを経験されるのもこれからということです。
この段階で,デジタル教科書の利点を挙げ連ねるのは,今後,法改正や予算要求等をしていくときに,「デジタルになった場合こういうことが想定される」,あるいは「実証研究校での実証の結果からこういうことがはっきりしている」,「専門家の集まった検討会議ではこういう論点が整理されている」ということを示すためでございます。したがって,今後,「本当にそうなのか」ということについて裏づけを取っていくことが私たちとしては大事なのではないかと思っております。
二つ目の検定の在り方について,義務教育の場合,検定,採択,無償給与に関する教科書関連法令は,我が国の根幹となる教育関係法令でございます。紙の教科書のもとでは長らく現行の制度ですけれども,デジタルになってもこのままの制度で良いかという議論は当然必要になることだと思います。ただ,それを今決められるのかということについては,たくさんの経験が蓄積していくのはこれからだということを考えると,速やかに制度を変更するというのは難しかろうと思います。加えて,今後どれだけ予算措置ができるかによっても,どの程度デジタル教科書の利用頻度が上がるかということは変わってくるので,そのスピードとの関係もあろうかと思います。
いわゆる「図書教材」と言われてきた学校教材についても,学校教育法34条や地方教育行政の組織及び運営に関する法律等の規定により,教科書以外の有益な教材を用いることができるところ,どのような教材を使うかということは学校で決め,それを教育委員会に届け出ること等が定められていますが,この法令の見直しが必要かどうかもこの段階では決めにくいかと思います。そうすると,この法令に従えば,当面,教材については受益者負担が続くことになりますが,そうであるべき部分と,それにより負担が過度に増加して保護者が大変になるということがどの程度起こるのかということについて,私たちはこれから慎重に考えなければならないと思います。
また,デジタル教科書と教材の連携の在り方については,東原座長代理も含め多くの委員が御発言されたように,連携したほうが良く,ほぼシームレスで,教材を使っているのか教科書を使っているのか,子供から見ると分からないほどになるというのが理想的である一方で,誰がどういう形でどのようにリンク,連携させるのかといった技術的なことも含めた様々な検討はこれからしなければいけないことかと思います。
どうリンクするのか,リンクは人が一つ一つ貼るのかといったこと,それから,例えば学習指導要領コードが先日発表されましたが,そういうものと自動的にリンクするためには教育データの利活用の標準化等の話が不可欠ですので,その辺りのことを検討しなければなりません。加えて,個別最適な学びを目指すに当たっても,自治体ごとの個人情報保護条例が2,000個あるという話がよく議論になっているように,学習ログがそもそも取れるのか,取れてもそれをクラウドに置けるのかといったことについて,自治体ごとに様々な違いがあることが課題になっています。
また,デジタル教科書そのものの話ではございませんが,GIGAスクール構想により導入した端末がうまく動くかといった課題が,いずれデジタル教科書がうまく使われるかという課題ともつながっていきますし,デジタル教科書がデジタル教材とうまくリンクして子供や先生方に資するようになるためにも,教育データの標準化は非常に重要な課題になります。様々な場で様々な検討が同時に進んでいますので,そういうものを見極めながら判断していくことになろうかと思います。
最後の2分の1の基準に関して,端末が既に行き渡っている学校が幾つかありますが,そういう学校の子供たちの様子を見ていると,情報活用能力が圧倒的に伸びていると思います。今までは,子供たちに情報活用能力がほとんどないことを前提に教材等が作られてきたと思いますが,あっという間に多くのことを調べてくる子供たちに,その情報は本当に正しいのかということも含めてたくさん議論させるということがこれから必要になります。そのときに,質が保証されている教科書というのは,非常に絶大な価値があろうかと思うわけです。
そういう情報活用能力を,小学校では今年度から,中学校では来年度からの学習指導要領において学習の基盤となる資質・能力として置いています。各教科の学びの基盤として情報活用能力が機能するのだという学習指導要領の立てつけは,GIGAスクール構想で端末が子供たちのところに届き,それを様々な形で様々に使ってみて,子供たちに情報活用能力が身についたときの話が既に書かれているということです。
私たちは,今のところ教育においてほとんどICTを使わない,OECDでも活用頻度が最下位である日本で,子供たちがどうなのか,先生たちがどうなのかという議論をしてきましたが,これはGIGAスクール構想の端末が導入されることによりデジタル媒体が様々に使われるようになるとどんどん様変わりしていく部分です。そういう意味で,まだ経験していないことについて読み取れない不安がたくさんあるのです。
本日,特に小学校と中学校の校長会より御出席いただいている委員から,「まだこれから活用が始まるのだから,拙速に過ぎるのではないか」という御意見をいただきましたが,これは非常に貴重な御意見でございます。我々は活用している学校を見ているからこその意見を申し上げていますが,まだ経験していなければ当然不安なわけです。全ての学校についてどうするかということが今の課題でございますので,多くの学校がデジタルを活用した授業に取り組んでいったときにどうなのかということを考え,制度としては先んじて改革しておかないと,いつまでも規制に縛られて昔のままになってしまうのは怖いことだと思います。
また,本日何度か指摘がありましたが,「2分の1の基準を撤廃する」というのは,「2分の1以上デジタル教科書を使う」という話ではなくて,デジタル教科書を使おうと思った教科について,熱心に取り組んだ結果,子供たちに情報活用能力も身につき,先生の指導力も身につくことが期待されるというときに「2分の1」という上限が邪魔にならないようにしておくという話です。宮原委員がおっしゃったように,それであればデジタル教科書を使わなくても良いという解釈もまたあるわけですが,いつか紙ではなくデジタルのほうが無償給与されるという国策も考えうることに鑑みると,子供たちが情報活用能力を身につけ,ICTをしっかり活用出来るようなスキルを持つことはこれからの時代不可欠ですので,このことについても義務教育の段階でしっかり保障していかなければならないと思います。
座長としては,ほかの会議体での議論や,中教審,政府の会議等での議を踏まえつつ,様々なこととどう組み合わせて判断していくのが良いのか,非常に悩みながら皆様の貴重な御意見を数多伺ったところでございました。この後は事務局とよく相談し,次なる案を皆様に御提示させていただきたいと思います。
本日の会議はここまでにしたいと思います。
最後に,次回以降のスケジュールにつきまして,事務局より資料6に沿って御説明をお願いします。
【度會課長補佐】 事務局でございます。資料6を御覧ください。次回第7回は,12月22日火曜日,15時から17時を予定しております。議題は「教科書制度の在り方について」ということで,先ほど神山課長より申し上げましたとおり,本日の議題にあった2分の1の基準ついて,何かしらの方向性を示させていただければと考えております。
続いて第8回は,年明け,令和3年1月27日水曜日,9時から11時を予定しています。議題は「論点の整理について」ということで,第7回までに出た議題や論点を整理し,中間まとめに向けた素案に近いものを御提示できるような回にできればと現状では考えております。
その後も月1回程度の頻度で開催予定でございます。なお,次回の会議の開催方法については,改めて御連絡させていただきます。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。本日は,本当に多くの御意見を皆様からいただき,非常に活発な会議になったかと思います。
この後,次回,次々回の会議の頃は,ちょうど中教審の最終答申も出る頃でございまして,そういったところとの調整も図りながら,中間まとめを出していくことになろうかと思いますので,引き続き御協力いただければと思います。
それでは,本日の会議はここまでとさせていただきます。ありがとうございました。

―― 了 ――

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