デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議(第1回)議事録

1.日時

令和2年7月7日(火曜日)14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省東館3階 3F2特別会議室

3.議題

  1. デジタル教科書等の現状について
  2. 本会議における検討事項について
  3. その他

4.出席者

委員

青山委員、片山(敏)委員、片山(弘)委員、加藤委員(Web参加)、河嶌委員、黒川委員、齋藤委員(Web参加)、柴田委員、清水委員、白鳥委員、中川委員、中野委員、平方委員、東原座長代理、福山委員、堀田座長、宮原委員(Web参加)

文部科学省

矢野大臣官房審議官、浅野初等中等教育企画課長、桐生学びの先端技術活用推進室長、中川初等中等教育局視学委員、中野教科書課長、高見教科書課教科書企画官、季武教科書課課長補佐、齋藤情報教育・外国語教育課課長補佐

5.議事録

デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議(第1回)
令和2年7月7日


【高見企画官】 ただいまから,デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議の第1回会議を開催させていただきます。
本日は,皆様お忙しい中,御出席いただきまして,誠にありがとうございます。教科書企画官の高見と申します。本日は第1回の会議でございますので,冒頭の議事進行を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
本日の会議につきましては,新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため,一般傍聴者なしの開催とさせていただいております。一般の方向けには,ウェブ会議の模様をユーチューブ文部科学省公式チャンネルにて,1週間後の15日水曜日から3日間配信することを予定しております。
本日の配付資料ですが,お手元の議事次第の「4 資料」にありますとおり,資料1から資料6,そして参考資料となっております。御確認をいただきまして,過不足等ございましたら事務局までお申しつけください。
それでは,開会に当たりまして,事務局を代表して,初等中等教育局担当の大臣官房審議官,矢野より,一言御挨拶申し上げます。
【矢野大臣官房審議官】 文部科学省の担当審議官をしております矢野と申します。本日は,非常に御多忙の中,御出席いただきまして,誠にありがとうございます。
学習者用デジタル教科書につきましては,林文部科学大臣のときに法律等が改正されまして,昨年より制度化されているわけですけれども,その後,皆様御承知のとおり,昨年度の補正予算でGIGAスクール構想,1人1台端末という事業が打ち出されました。また,コロナ対応ということで,令和5年度までに1人1台を達成するという前提が,今年度内に1人1台端末を達成する,また,校内の高速ネットワークについても今年度内に達成するというように,デジタル教科書が制度化されて以来,大きく事情が変わりました。
我々といたしましては,これまでICT環境整備につきましては様々な取組が行われてきましたが,ハードだけではなく,ソフトと人材の面も一体となった改革・改善が一番重要だと考えております。その中で,デジタル教科書は,まさにソフトの部分の,言わばキラーコンテンツというような位置づけであろうと考えており,単に紙の教科書をPDF化してパソコンにインストールして使うということではなく,既に様々なところで様々な教材と組み合わせて使用されているところもございますが,今までの教科書の機能だけではなくて,それを使いやすくするソフトやアプリ等が一体となった教科書の在り方といったことをメインテーマとして,今回,先生方に御議論いただきたいと考えております。
そのほか,本会議では,児童生徒の学習の充実や障害のある児童生徒等における学習上の困難の低減に資すると考えられるデジタル教科書・教材に関して,児童生徒1人1台の端末環境における活用等についても検討を行っていただきたいと思っております。また,健康面への影響等についても,文科省において別途予算を取って検討いたしますが,御意見を頂戴できればと考えております。
今回,教育のデジタル化に関して,人間工学,特別支援,現場実践といった様々な立場から委員の皆様方に今回お集まりいただいております。先ほど「学習者用デジタル教科書はキラーコンテンツである」「児童生徒の学習の充実に資すると考えられる」と申し上げましたが,私はデジタル教科書の成否が我が国の学校教育を左右すると言っても過言ではないと考えています。委員の先生方の幅広く率直で忌憚のない御意見を頂戴しながら,デジタル教科書を良いものにしていきたいと考えております。何卒幅広い率直な御意見をお願い申し上げまして,私の御挨拶とさせていただきます。
【高見企画官】 続きまして,委員の皆様を御紹介させていただきます。
まず,筑波大学附属小学校教諭,青山委員でございます。
【青山委員】 よろしくお願いいたします。
【高見企画官】 新潟市教育委員会学校支援課副参事・指導主事,片山敏郎委員でございます。
【片山(敏)委員】 よろしくお願いします。
【高見企画官】 宮崎市教育情報研修センター指導主事,片山弘喜委員でございます。
【片山(弘)委員】 よろしくお願いいたします。
【高見企画官】 東京学芸大学ICTセンター教育情報化研究チーム,加藤委員でございます。本日はオンラインにて御参加いただいております。
【加藤委員】 よろしくお願いします。
【高見企画官】
柏市教育委員会教育長,河嶌委員でございます。
【河嶌委員】 よろしくお願いします。
【高見企画官】 一般社団法人教科書協会デジタル教科書政策特別委員会座長,黒川委員でございます。
【黒川委員】 よろしくお願いいたします。
【高見企画官】 東京学芸大学教職大学院教授,齋藤委員でございます。本日はオンラインにて御参加いただいております。
【齋藤委員】 よろしくお願いします。
【高見企画官】 東京福祉大学教育学部教授,柴田委員でございます。
【柴田委員】 よろしくお願いいたします。
【高見企画官】 公益社団法人日本PTA全国協議会専務理事,清水委員でございます。
【清水委員】 よろしくお願いします。
【高見企画官】 株式会社Lentrance取締役開発統括責任者,白鳥委員でございます。
【白鳥委員】 よろしくお願いいたします。
【高見企画官】 放送大学教授,中川委員でございます。
【中川委員】 よろしくお願いします。
【高見企画官】 慶応義塾大学経済学部教授,中野委員でございます。
【中野委員】 よろしくお願いします。
【高見企画官】 信州大学特任教授,一般社団法人教育情報化推進機構理事長の東原委員でございます。
【東原委員】 東原でございます。よろしくお願いします。
【高見企画官】 日本私立中学高等学校連合会常任理事,平方委員でございます。
【平方委員】 よろしくお願いいたします。
【高見企画官】 全日本中学校長会教育情報部長,福山委員でございます。
【福山委員】 よろしくお願いいたします。
【高見企画官】 東北大学大学院情報科学研究科教授,堀田委員でございます。
【堀田委員】 よろしくお願いいたします。
【高見企画官】 公益社団法人経済同友会教育改革委員会副委員長,宮原委員でございます。本日はオンラインにて御参加いただいております。
【宮原委員】 よろしくお願いします。
【高見企画官】
更に,本日は御欠席ですが,全国連合小学校長会調査研究部長の赤堀委員も加えまして,18名の皆様に委員として御参加いただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
続いて,座長の選任に入らせていただきます。事務局からは堀田委員にお願いしたいと考えておりますけれども,御異議ございませんでしょうか。
(委員了承)
【高見企画官】 それでは,以後の進行は,座長である堀田委員に司会をお願いしたいと存じます。堀田座長,よろしくお願いいたします。
【堀田座長】 それでは,改めまして,東北大学の堀田でございます。本日よりよろしくお願いいたします。
座長を務めさせていただくことになりましたが,それに当たり,まずは本検討会議の運営につきまして事務局から説明をお願いいたします。
【季武課長補佐】 教科書課にて課長補佐を務めております季武と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
資料2を御覧ください。「デジタル教科書の今後の在り方に関する検討会議の運営について」という資料を配付させていただいております。こちらに基づき,説明いたします。
まず第1条「趣旨」において,「運営については以下のとおり定めることとする」としております。
第2条「検討会」において,「座長は,検討会議の議長となり,議事を運営する」とし,同条第2項において,「座長がやむを得ない理由により検討会議の会議に出席できないときは,検討会議に属する委員のうちから座長があらかじめ指名する者が,その職務を代理する」と定めております。
第3条「会議の公開」において,「本会議は原則として公開とする」旨定めております。本日は新型コロナウイルス感染症拡大防止のため,一般傍聴席を設けておりませんが,原則,公開とさせていただきます。自由な意見交換を確保する必要性がある場合や,審議内容に個別利害に直結する事項に係る案件を含む場合には,「その一部または全部を非公開とすることができる」としております。
第4条「会議資料の公開」について,検討会議の会議資料は原則としてホームページへの掲載等により公表・公開をさせていただきます。ただし,「座長が非公開とすることが適当と定める場合には,その一部または全部を非公開とすることができる」としております。
第5条「議事概要の公開」において,「検討会議の議事は,議事概要等をホームページへの掲載等により公開する」としております。ただし,「座長が非公開とすることが適当と認める場合には,その一部または全部を非公開とすることができる」としております。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。
つきましては,本検討会議の運営につきましてはこの案のとおりとさせていただきたいと思いますが,いかがでしょうか。
(委員了承)
【堀田座長】 御了承いただきましたので,先に進めさせていただきます。基本的にはできるだけ公開して検討してまいりたいと思います。途中,どうしても非公開でなければ円滑な進行ができないという場合には非公開とさせていただきます。
また,「運営について」の第2条に沿いまして,座長代理の指名をさせていただきます。この分野で長く研究を重ねてこられました東原委員にお願いしたいと思うのですが,いかがでしょうか。
(委員了承)
【堀田座長】 御賛同,ありがとうございます。それでは,東原座長代理,よろしくお願いいたします。
それでは,ここで私より御挨拶を申し上げます。先ほど矢野審議官がおっしゃったように,コロナ禍のこともあって,学校のICTインフラが現状では非常に貧弱であるということや,ICTインフラは非常に大切なことなので急いで整備すべきであるということが,一般的な理解になったのではないかと思います。新型コロナウイルス感染症の拡大以前,前文部科学大臣の頃からGIGAスクール構想に向けて様々なことが動いておりましたし,子供たちが1人1台の端末を持って学ぶということによって起こる学習の充実,あるいは情報活用能力の獲得といったことが学習の基盤になり,各教科等の学びに資するということは,既に学習指導要領にも書かれております。そのような考え方に対して環境整備が十分に追いついていなかったという現状があり,それをどうにかしたいということで,大型の補正予算としてGIGAスクール構想が動いております。現在,多くの自治体において補正予算を活用しながらICT環境の整備を鋭意進めていらっしゃるところだと思います。子供たちが1人1台の端末を持つという時代になったときの学習ツール,あるいは学習コンテンツは,多くはインターネット上にありますが,特に学習コンテンツについては質が多様です。多様であるから学べることが数多くある一方で,良質なコンテンツをきちんと提供していくということが,とりわけ学力保障の観点からいっても重要であり,我が国が誇る教科書をどのようにデジタル化し,どのように紙と異なる使い方ができるのかを検討することが,この会議体の役割かと認識しております。
資料1で配られた設置の要綱を見ると,「2.検討事項」にこう書いてあります。「児童生徒1人ひとりが端末を持った際のデジタル教科書の在り方」。今までは,端末が十分に整備されていないことを前提に,デジタル教科書をどのようにするかという議論が進んできました。平成28年には,デジタル教科書の最初の検討会議が開催され,デジタル教科書を活用しても良いというところまでに踏み込みましたし,平成30年,ガイドラインにおいて,「このような活用の仕方が望ましい」ということが示されましたが,その後,先ほど矢野審議官もおっしゃったように,非常に大きな環境整備の波が来ておりますし,世の中の動きも速くなっております。児童生徒が1人1台の情報端末を持つ時代のデジタル教科書の在り方を検討するということが私たちの仕事ということになります。制度的なことは,法改正も含めると,時間がかかるものもありますが,そのためにも今回の検討会議でしっかりと様々な立場から御意見をいただければと思っております。
私からの御挨拶は以上とさせていただきます。
それでは,ここから議事に移らせていただきます。
まず,資料3に沿いまして,事務局から説明をお願いいたします。
【季武課長補佐】 資料3「デジタル教科書に関する制度・現状について」という資料を御覧ください。こちらに基づいて,デジタル教科書に関する現状等について御説明をさせていただきます。
まず,表紙をめくっていただきまして2ページ目「我が国における教科書について」,デジタル教科書に限らず,広く教科書の制度を御説明させていただきます。冒頭の「教科書とは」に記載のとおり,教科の主たる教材として使用されるものが教科書でございます。こちらは,文部科学大臣の検定を経た教科用図書,または文部科学省が著作の名義を有する教科用図書のことを指すと法令上位置づけられております。教科書は法律により使用義務が課せられており,また,義務教育段階の児童生徒に対しては無償で給与されております。
2ページの下部に,参考として,教科書の編集から使用までのプロセスを掲載しております。実際に教科書が使用されるまでには最低でも4年間を必要としています。まず1年目に教科書発行者が教科書の内容を著作編集し,2年目に文部科学大臣が発行者の作成した教科書の検定を行います。その翌年度,3年目に,公立学校の場合は教育委員会,国立・私立・公立学校法人が設置する学校の場合はそれぞれの学校の校長が,検定に合格した教科書の中から,実際にその地区や学校において使用する教科書を採択します。それを踏まえて教科書供給業者が製造供給を行い,4年目に児童生徒が教科書の使用を開始するというプロセスになっております。デジタル教科書の在り方を検討するに当たっては,その時期について,以上のプロセスも踏まえる必要がございます。
教科書が全国的に基礎的・基本的な教育内容の履修を保障するものとして学校教育において重要な役割を果たしていることを踏まえまして,どのようにデジタル教科書が位置づけられていくのかということを検討できればと考えております。
次に,3ページ目では,学習者用デジタル教科書の制度や現状をまとめて書いております。まず,上の黄色い四角で囲っている箇所がデジタル教科書に関する法令等をまとめている部分になります。いずれも施行日は平成31年4月であり,左上に記載している法律のとおり,現在,学習者用デジタル教科書については,教育課程の一部において,紙の教科書に代えて使用できるものとして位置づけられています。また,その内容については下段の省令に書いておりますが,紙の教科書の内容全てを記録したものということがデジタル教科書の要件となっております。また,法律において「教育課程の一部において,紙の教科書に代えて」使用できるとされていますが,具体的には右に掲載している告示で規定しているところですけれども,「各教科等の授業時数の2分の1に満たないこと」が,現在デジタル教科書を使用できる授業時数の基準となっております。
ただ,法律及び告示の記載部分の括弧書きに書いておりますが,紙の教科書を使用して学習することが困難な児童生徒については,教育課程の全部において学習者用デジタル教科書を使用できることとされております。具体的には,特別支援が必要な児童生徒や,日本語に通じない児童生徒等,紙の教科書だけでは学習することが困難な場合に2分の1を超えてデジタル教科書を使用することができると規定されています。
また,その下の緑の囲いの部分,「学習者用デジタル教科書の費用負担」というところにございますとおり,現状,紙の教科書については義務教育段階では無償給与されておりますが,学習者用デジタル教科書については,義務教育段階も含めて,無償給与の対象外となっております。そのため,実際に学習者用デジタル教科書を使用するかどうかは学校が判断することとなっており,購入に係る費用は市町村教育委員会等が負担する形になっております。
右側の「学習者用デジタル教科書の発行状況」について,小学校用教科書の改訂が行われた令和2年度の発行状況に関しては,小学校について紙の教科書が全部で305点あるうち287点,94%でデジタル教科書が作成されております。また,令和3年度に改訂される中学校の教科書についても,現在95%でデジタル教科書が発行される予定と把握しております。デジタル教科書の作成自体は発行者において対応していただいているという状況でございます。
一方で,その下に「導入状況」という項目があります。こちらはGIGAスクール構想が示される前に行った調査ですので,現在は少し変わっているかとは思いますが,各市町村の域内において,令和元年度に1校でも導入しているところは6.1%,令和2年度に1校でも導入することを検討しているところが14.7%ということでした。この調査においては,学校にいる全員に導入するという場合だけではなく,例えば学校に1人分だけでも導入するという場合も含めて,導入するか否かを聞いておりますので,「1人1台端末で全員にデジタル教科書が行き渡っている」という前提の割合ではないことに御留意いただいた上で,それでもまだこの程度の割合でしか導入されていないという状況であるということを書かせていただいています。
次の4ページには「学習者用デジタル教科書のイメージ」というものを入れております。後ほど黒川委員よりデジタル教科書のデモンストレーション等を行っていただく予定ですので,そちらで御覧いただくとより分かりやすいかとは思いますが,先ほどの省令にもあったとおり,紙の教科書をそのままデジタル化したものが「学習者用デジタル教科書」になっております。
5ページに掲載しておりますが,こういった位置づけについては,平成27年5月より開催された「『デジタル教科書』の位置付けに関する検討会議」において,堀田座長,東原座長代理,黒川委員等にも委員を務めていただき検討を行った上で,デジタル教科書の定義として定めたものでございます。
デジタル教科書の定義が定められた上で,次の6ページ目にありますとおり,「学習者用デジタル教科書の効果的な活用の在り方等に関するガイドライン」というものを,加藤委員,柴田委員や中川委員,中野委員等にも委員として御参画いただいた有識者会議において検討を行った上で作成しております。
このガイドラインの中で具体的に記載させていただいている,デジタル教科書を活用した学習方法の例を,次の7ページ目から9ページ目に掲載しております。7ページ目には,デジタル教科書そのものを使用して様々な学習方法があることを記載しています。ここに記載している機能等についてはこの後のデモンストレーション等で見ていただいたほうがより分かりやすいかと思いますので割愛いたしますが,特別な配慮を必要とする児童生徒にとって学習上役立つ機能や,試行錯誤する際等にどの児童生徒にとっても役に立つ機能も含めて紹介しております。8ページ目にはほかの教材やICT機器との連携についても掲載しており,9ページ目には更にその具体的な活用イメージを掲載しております。
10ページ目の「学習者用デジタル教科書の効果・影響等に関する実証研究」について,こちらは昨年度から中川委員に主査を務めていただき,文科省で行っている実証研究事業です。昨年度から制度化された学習者用デジタル教科書の効果・影響等を検証して,今回の検討会議も含む今後の在り方の検討に当たっての参考にするための研究を行っております。昨年度の実証研究の報告等については,次回の会議でも御報告させていただくことを予定しております。
これまで学習者用デジタル教科書に焦点を当てて御説明させていただきましたが,11ページではGIGAスクール構想として現在文科省が進めているICTの教育現場での活用の全体像をまとめており,実際に現場でICTを活用するに当たっては,ハード面,ソフト面,指導体制を一体的に推進することが必要であるという考えを示しております。左下の「ソフト」の欄の一番上に,「デジタル教科書・教材など良質なデジタルコンテンツの活用を促進」する旨を記載しております。
12ページでは,学校ICT環境整備の実現に向けたイメージを全体的に書かせていただいております。これまで御説明していることと少し重複しますけれども,2019年度(令和元年度)に学習者用デジタル教科書が制度化されました。今年度,小学校における新学習指導要領の実施に伴い教科書の改訂が行われることから,非常に多くの発行者においてデジタル教科書を発行していただき,来年度が中学校の教科書改訂,更に2022年度(令和4年度)から高校においても年次進行で改訂されていくということを書かせていただいております。更に,次の小学校の教科書の改訂時期が2024年度(令和6年度)であることも記載しております。ここが次の具体的なターゲットイヤーであり,デジタル教科書の活用方法のフェーズが変わる部分だと思っておりますので,本会議においては,ぜひこちらに向けた検討を中心に行っていただきたいと考えております。実際に,先ほど御説明いたしました教科書が使用されるまでの4年間のサイクルを考えますと,2020年度(令和2年度)くらいには大体の方針を示していくということが必要になりますので,検討を進めていきたいと考えています。
また,GIGAスクール構想の推進につきましても,もとはもっと長いスパンで考えていたところが,新型コロナウイルス感染症拡大への対応もあり,下の赤い矢印に書かせていただいているとおりかなり加速している状況ですので,そういったことも踏まえて普及促進等に向けた対応について検討していければと考えております。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。
ただいまの事務局の御説明につきまして,何か質問等ございますでしょうか。
平方委員,どうぞ。
【平方委員】 御説明,ありがとうございました。デジタル教科書自体に関しては,冒頭のお話にもあったように,今回のコロナ禍によって,かなり多くのことが分かりました。特にGIGAスクール構想なるものを考えたときに,まとめて言ってしまえば,「スピード感がない」と感じてかなり困った教育機関がたくさんありました。今回のこととそのことを併せると,現在の計画はかなり前に計画されたものかと思います。現況,あるいはもっと今の子供たちの未来を考えたときに,変更しなくて良いのか,少なくともスピード感のところで変更がなくて良いのかということは少し感じました。
【堀田座長】 御見解をいただきましてありがとうございます。
今の件は12ページに記載のタイムラインに表されているところですが,事務局の説明でいえば,一番右側にある2024年度が次の教科書の使用開始です。その前の年の2023年度が採択,その前の年の2022年度が検定,その前の年の2021年度が教科書の編集をしていただくときなので,その前の2020年度,すなわち今年度にデジタル教科書の今後の在り方をはっきりさせなければならないということです。平方委員の御意見でいうと,編集や検定,採択を前倒しすることは難しく,この会議の所掌を超えるため非常に難しいところです。今回,平方委員の御指摘のように,様々なことがあって早まりました。恐らく現場の機運としてはもっと早く,どんどんデジタル教科書を使いたいという方向へ動いていくものと思いますので,制度の話は様々に難しいところはあるにしても,具体的な利用・実践についてはこれからますますニーズが高まるところかと思っております。
それでは,黒川委員に,法令上にいう「学習者用デジタル教科書」に関する御説明とデモンストレーションをお願いしたいと思います。資料4を御覧ください。黒川委員,よろしくお願いいたします。
【黒川委員】 一般社団法人教科書協会の黒川と申します。本日は,当協会の情報化専門委員会委員の大関より,具体的な画面も見ていただきながらデジタル教科書について説明させていただきます。その前に,既に季武課長補佐より御説明いただきましたところと少し重複するところもございますし,御存じの方もいらっしゃるかとは思いますが,改めてデジタル教科書の概要について御説明させていただきます。
2ページを御覧ください。平成31年4月1日に施行されました法改正について,簡単にこの六つを押さえていただければと思います。第一に,教科書と同一であり,検定はありません。また,紙の教科書との併用制です。そして,デジタル教材――これは学習者用デジタル教科書とは別のものですが,これと一体的な活用が期待されています。加えて,特別支援への配慮を行うこと,最後に,有償であるということです。この6点が,デジタル教科書の制度化に当たり,「『デジタル教科書』の位置付けに関する検討会議」等で検討されたことであると思っております。
3ページ,4ページを御覧ください。紙の教科書と,学習者用デジタル教科書――制度上では「教科用図書代替教材」と申しますが,青くなっている箇所は無償,赤くなっている箇所は有償となっております。「制度の範囲」については,特別支援においては全時間使用可ではございますが,原則として単独使用は授業時数の2分の1までであるといったことが今後議論になっていくのではないかと思っております。
5ページからが現状でございます。今申しましたとおり,紙の教科書の内容と学習者用デジタル教科書の内容は同一なのですが,文科省が作成している教科書目録というものがあり,目録中には「学習者用デジタル教科書を発行予定」という印が付いております。ただし,この中には,動画や朗読音声,ワーク等,検定を受けていないデジタル教材の範囲まで一つのセットとして販売しているものもございます。もちろん学習者用デジタル教科書単独で販売しているものもございます。教科書発行者においては,学習者用デジタル教科書と教材を一体的に提供する形がメインになるのではないかと考えているところであります。そうすると,検定対象外の部分が一体的に使用されることになりますので,議論を要するところかと思います。これ以外に,指導者用デジタル教科書もございまして,現状,学校現場では,「デジタル教科書」というと,指導者用デジタル教科書をイメージされるケースが多いです。
グラフにございますように,平成31年3月現在,小・中学校においては6割近く指導者用デジタル教科書を導入しておりまして,高校においても徐々に定着しつつあるところです。
学習者用デジタル教科書の現状については季武課長補佐から説明がありましたとおり,中学校はまだ採択の途中ですので発行予定ではありますが,小学校については94%,中学校については95%,全ての教科において発行の準備をしております。ただ,導入に関しましては,このコロナ禍で,自治体もそれどころではないということであまり進んでおりません。GIGAスクール構想は,まず機器の導入が前提になっております。デジタル教科書については,特別支援に資する機能があることから,現在は学校を通して単独で購入いただくケースが多くなっております。ただ,当初の予定からはあまり進んでおりません。
7ページを御覧ください。デジタル教科書には大きく二つの目的があると思っております。一つは,「新たな学びの実現」,私の言葉で言うと「MY教科書化」です。教科書が,与えられたものから自分自身のものへなっていくというプロセスを含んでいると考えていまして,これにより主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善を目指すことができるものであろうと思っております。二つ目はもう一つの大きな柱ですが,「誰もが学びやすい教科書を」ということで,外国人児童生徒等も含めて,紙の教科書だけでは学習が困難な児童生徒の支援という目的がございます。このような「学びのツールとしてのデジタル教科書」ということを目的として考えております。
先ほど資料3にも活用風景が掲載されていましたが,8ページは実際の国語のデジタル教科書画面を映した写真で,相当子供たちが書き込みをしています。
9ページの写真を御覧ください。先生に言われた結果ではなく,まず各自でやったことを相互でやり取りしたり,議論したりしています。
今後,コロナ禍では画面を通してやり取りをしたり意見交換をしたりすることが可能になってくるのではないかと思います。
自分自身が書き込んだものをみんなに発表して,自分の考えを伝えていくというプロセスが考えられるかと思います。教科によっても大きく変わります。修得型のものであったり,トレーニングであったりする場合もありますが,このように個別から出発する学習というものが今後大きく問われると思っています。
また,個別の学習に資するだけに,特別支援への対応は十分行っていかなければならないのですが,この点については大関より,実際の画面を御覧いただきながら御説明したいと思います。
【大関氏】 教科書協会情報化専門委員会の大関と申します。よろしくお願いします。
(以下、スクリーンに学習者用デジタル教科書の画面を映しながら実演)
こちらが実際のデジタル教科書,小学校国語の4年生の「ウナギのなぞを追って」という説明文の単元の画面です。紙の教科書と同一の画面が映し出されております。ページをめくる際は,スマホのようにスワイプ操作を行います。画面をなぞってページを遷移することができますし,拡大・縮小もスマホと同じようにピンチイン/アウトの操作で行うことができるようになっております。
また,書き込みの際にはフリーハンドのペンで書くことができます。この単元は,「興味を持ったことに着目して読み進める」ということで,画面上に「興味」と大きく書いてみました。サイドラインもこのように文にぴったり合わせて簡単に引くことができるようになっておりまして,間違えたときは消したり,消し過ぎてしまったと思えば,また元に戻したりということが紙で行うよりも簡単に行えます。
続いて,特別支援の四つの機能を説明させていただきます。
まず一つ目が,総ルビ,振り仮名です。ボタン一つで全ての文字にルビを振ることができます。「日本」,「台湾」といったグラフや図版の中の文字も含めて,全ての部分にルビが振られるようになっています。
また,見やすさの観点から,背景色の変更,文字色の変更という機能がございます。まず代表的なものは,白と黒の反転です。画面が白いとまぶしくて見づらいという児童生徒にとっては,黒がベースの画面のほうが見やすい場合もあります。文字の色も,黒い画面に緑の文字にしたり,黄色の文字にしたりすることができます。背景色も,スクリーンですと分かりづらいかと思いますが,薄い黄色にしたり,水色にしたりと,児童生徒が一番見やすい状態で教科書を読むことができます。
次に,機械音声読み上げです。「聴く」というボタンを押します。例えば右下の脚注の部分を少し読んでみます。
(音声再生)
【大関氏】 図版のところについても読み上げることができます。
(音声再生)
【大関氏】 このような形で,脚注やグラフの中の文字も含めて,全て教科書を読み上げるという機能があり,文字で読んで教科書の内容を理解することが難しい児童生徒にとっては,音で聴くことで教科書の内容にアクセスできるようになっています。
また,リフローという機能がございます。こちらはリフローの画面で,教科書の内容はそのまま,レイアウトを変えて表示しております。一番大きな特徴は,文字を大きくして読めるということでして,これでも大きく表示しておりますが,もっと大きくしたいという場合には,サイズを96にしますと,このように大きく表示できます。文字を大きくしても,画面からはみ出すことなく,「ウナギのなぞを追って」という形で円滑に字送りをしながら大きな文字を読んでいくことができます。
特別支援の説明は以上にいたしまして,続いて,教科書と一体的に使われる教材の部分を少し説明させていただきます。教材の部分は発行者によって内容が異なることが多いので,一つの例として聞いていただければと思います。例えば,「漢字」という教材では,単元の新出漢字が出てきまして,漢字の筆順をアニメーションで学習ができたり,なぞり書きをして学習ができたり,言葉の使い方を学んだりすることができます。
また,この「マイ黒板」という教材は,教科書の文字を抜き出して,カードにすることができる教材です。「興味を持ったところに着目して読みましょう」ということですので,自分が興味を持ったところを抜き出します。「実に80年近くの年月がかかったのです」という文章で,「ウナギの研究に80年もかかるのか」というところに興味を持った子供はこの部分を抜き出すことができますし,「調査が始まったのは,1930年ごろのことでした」という文章で,「こんなに昔から調査をしているのか」というところに興味を持った子供はその部分をカードに抜き出すことができます。物語文では,登場人物の心情等を抜き出しながら読み進めるといった学習もできるかと思います。
次は英語について少しデモンストレーションを行いたいと思います。こちらは小学校5年生のUnit2,「When is your birthday?」という単元です。ここでは,「誕生日や誕生日に欲しいプレゼントを尋ね合うことができる」ということをゴールにしております。英語のデジタル教材の特徴は,何といってもイラストの中にある様々なものをタッチすると,ネイティブの音声を流すことができるという点です。例えば,「プレゼント,何が欲しいかな」ということで再生してみます。
(音声再生)
【大関氏】 「鉛筆削り」のイラストを押してみます。
(音声再生)
【大関氏】 このようなことで,自分が好きなところを押して,身の回りにある単語の発音を聴くことができます。誕生日の日付,9日を押してみます。
(音声再生)
【大関氏】 このように画面上の至るところから音声が流れるようになっておりまして,英語の教材ではネイティブの音声に触れることができるというところが,学習者用デジタル教科書・教材の大きな特徴ではないかと考えております。
デモンストレーションは以上にいたしまして,またスライドに戻ります。デジタル教科書が一体どのような技術で作られているのかというお話を少しさせていただければと思います。
今スクリーンに映っているデジタル教科書ですが,HTML5という,ホームページを作っているものと同じ技術で作られております。13ページの概念図を御覧ください。まず情報端末が必要です。その中にはOSがあり,ホームページと同じ仕組みですので,Internet ExplorerやGoogle Chrome等の標準ブラウザで表示することができます。インストールして使う場合は専用のアプリケーションを使うケースもございます。そして,HTML5のデジタル教科書のコンテンツ,これがそろってデジタル教科書を使うことができます。
最後に,15ページからはデジタル教科書の使用方法を少し整理させていただいております。これはあくまで現状ですので,GIGAスクール構想が進んだ場合は必ずしもこうではなくなる部分もあると思います。大きく二つありまして,まず,端末にインストールして使用する。こちらは,ネットワークがまだ円滑につながらない学校等では,通信環境がなくても端末にインストールすることで使用できるという方法です。しかしながら,この方法は一台一台端末にインストールするという,費用と手間がかかります。そこで2番の,サーバーにアクセスして使用するという方法がございます。端末にはデジタル教科書はなく,ホームページを見るがごとく,サーバーにあるデジタル教科書を見に行くという使用方法です。
インストールする方法については,DVDからインストールしたり,サーバーからダウンロードしたりと様々な方法がございます。
16ページについても現在のものを整理した図として御覧ください。サーバーにアクセスする場合,サーバーの設置主体は様々にありまして,学校・自治体,教科書発行者,教材販売会社,こういったいずれかのサーバーにアクセスして見に行くということになっております。このサーバーの中にもプライベートクラウド等様々な区分けがあるのですが,設置主体という分け方でいうと,現在は図ようになっております。ただし,現状は,どの形態に対応しているかは発行者により異なっております。
以上で,私の話は終わらせていただきたいと思います。
【黒川委員】 広範囲にわたりましたが,以上でございます。今後恐らく,サーバーにアクセスして使用する形,クラウド型のものが議論の中心になってくるかと思いますが,現場におけるGIGAスクールの進展状況により,一,二年はインストール型とクラウド型が多少は混在する形になるのではないか思います。本日は現状を御報告させていただきました。
以上で終わりにさせていただきます。ありがとうございました。
【堀田座長】 ありがとうございました。大変具体的で詳しい説明をいただきました。デジタル教科書という,法令で定められているものの範囲と,それと一体的に使用することで良さを引き出す教材の部分の区別をきちんと説明しながらデモンストレーションしていただきまして,ありがとうございました。
まず,ここで黒川委員,大関先生に何か質問等ございましたら質疑を受けたいと思いますが,いかがでしょうか。
【中野委員】 慶応大学の中野です。とても分かりやすい説明,ありがとうございました。幾つかお聞きしたいのですが,まず特別支援に関して質問させていただきます。デジタル教科書の使用方法が教科書発行者によって違う可能性があるかと思っているのですが,特別支援の対象となる子供たちの中には,使用方法が教科書によって違うと混乱するということもあるかと思います。その観点から,今後使用方法の統一のようなことを考えておられるかどうかということをお聞きしたいのですが,いかがでしょうか。
【黒川委員】 デジタル教科書については,ようやくスタートしたばかりです。教科書協会で議論し,おおむね同じような方法になるよう提案しましたが,実際はそれぞれのビューアによって少しずつ違います。できる限り枠組みの統一について協力いただけるようにお願いしましたが,各発行者一斉に仕様を統一することは難しいかと思います。引き続き,この点に関しては研究をさせていただき,委員会等を作りながら対応したいと考えております。
【中野委員】 ありがとうございます。このことはデジタル教科書の在り方において非常に重要なことではないかと思っておりますので,進めていただければと思います。その際に,例えば書体,フォントについても,先ほどのデモンストレーションの中で幾つかの書体は切り替えられるようになっていましたが,特別支援では,子供たちによって,同じゴシック体でも,「このゴシック体がいい」,「これだと読める」ということがありますので,そういったところも各発行者においてシェアしていただけると非常にありがたいと思っています。また,教材機能もすばらしいなと思ったのですが,その部分についても特別支援対応になっているということが今後は求められることかと思っていますので,ぜひお願いします。
最後に,ネットワークの利用に関してですが,私のところでもPDF版拡大図書を出させていただいていて,現在400人程度の児童生徒に使っていただいています。既に特別支援学校はネットワークがつながっているところも多いのですが,ネットワークがあっても接続はできないというルールが各県である場合があります。GIGAスクール構想でネットワークが整備されても,自治体のルール上,接続するのが難しいということが出てくるのではないかと思っておりまして,この辺りは発行者なのか文部科学省なのか判断が難しいところでございますけれども,そういったネットワーク接続のことについて,もし何か課題がありましたらお教えいただきたいです。
【黒川委員】 現時点では少し高次な議論になってまいりますので,今後の課題になるかと思っています。
【季武課長補佐】 その問題については,それぞれ自治体等において条例等による規定がある場合もございますので,どのように対応していくのかということについては文部科学省としてもこれから検討していく必要があると認識しているところです。
【中野委員】 ありがとうございました。
【堀田座長】 中野委員から出された質問は,今後,検討事項について,この後説明いただくことに加えて検討していくべきだという御提案かと理解しております。
それでは,先に進めさせていただきます。ありがとうございました。
【黒川委員】 ありがとうございました。
【堀田座長】 続いて,資料5に沿いまして,本会議での検討事項,具体的に私たちは何を検討していくのかということの案について,事務局から説明をいただきます。
【季武課長補佐】 資料5「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討事項(案)」に従って,一通り説明をさせていただきます。
まず,「1.背景」というところを御覧ください。こちらは今まで御説明させていただいた内容と重複するところもございますが,これまでデジタル教科書の位置づけについて議論を重ね,紙の教科書に代えて学習者用デジタル教科書を使用できるようになったところ,昨年末GIGAスクール構想が打ち出され,更にその後コロナの対応等もあり,一気に端末の整備,ICT環境の整備というものが進んでいるところです。当初,端末を3人に1台整備するとされていたところが,GIGAスクール構想で1人1台を前提に考えるようになり,更に端末の整備を令和5年度までと考えていたところが,コロナ禍で加速をしているところです。これを踏まえまして,デジタル教科書についても,今後の在り方を急ぎ検討しなければならないということで今回会議を設けさせていただいております。
具体的に,「2.検討の視点」に沿って御説明いたします。デジタル教科書には指導者用と学習者用がございますが,以下,「デジタル教科書」とさせていただいているところは全て学習者用デジタル教科書を指しているとお考えください。
「(1)デジタル教科書の在り方」について,先ほど御説明したとおりになりますけれども,まずは,令和6年度からが次の切り替わりの時期,ターゲットイヤーとして考えておりますので,そこからの使用に向けて,機能面や使い方等について御意見をいただければと思います。その上で,令和6年度よりも更に先,将来のデジタル教科書がどうあるべきかについても,ぜひ御意見をいただければと考えているところです。
具体的な検討事項については箇条書きしております。1点目に,「学びの質を充実させるため,デジタル教科書はどのようにあるべきか」,新学習指導要領の内容等に沿って今後どのように使っていくべきかという点を記載しています。
2点目に,学びの充実に向けて具体的に検討が必要な点について,例えば「学習機能や操作機能,学習履歴の把握のためにどのような仕組みが必要か」,「デジタル教科書とデジタル教材をより広く連携させるにはどのようにすべきか」といったことを挙げています。こちらは本会議に限らず,教育データの活用の担当等とも連携しながら進めていくべきところだと思いますけれども,まずデジタル教科書の観点からの御意見等をいただければと思っております。
3点目に,デジタル教科書の導入によって,先生方が授業で使う教材の作成にあたって,今までは一つ一つコピーしたり,拡大して貼れるようにしたりしていたものが,より簡単になるかと思いますので,そういった校務負担に関する影響としてどのようなものが考えられるかという点を挙げています。一方で,これまで使ってこなかったツールを使いこなすためにどのような資質・能力が求められ,どのようにその向上を図るべきかについても論点としてあると考えております。
4点目に,「障害のある児童生徒や外国人児童生徒等がより効果的に学習を行うことができるよう,どのような配慮が求められるか」に関して,先ほど中野委員からも御指摘いただいたように,特別な配慮が必要な児童生徒のためにどのような機能が必要なのかといったことについても議論を進められればと考えているところです。
5点目に,学びの充実のために今後デジタル教科書の使用が増えた場合,懸念される影響,例えば端末の使用時間が増えることによる健康への影響や,学力への影響といったことについて,どのような留意事項や対応方策が考えられるのかということも議論できればと考えております。
6点目に,デジタル教科書を宿題等様々な形で家庭学習において使用する場合があるかと思いますが,その際に効果的な使用方法や留意事項,必要となる支援があるのかといったことも検討が必要と考えています。こちらもコロナ禍で家庭での学習への注目も高まっているところですので,そういった観点からも御意見をいただければと考えております。
次に,「(2)教科書制度の在り方」について,制度面における検討事項を記載しております。
1点目に,資料3でも御説明したデジタル教科書の使用基準につきまして,現在,各教科等の授業時数の2分の1に満たないこととされておりますが,この基準についてどのように考えるべきか,ということを大きな論点として考えています。2分の1に満たないという制限を引き続き維持するのか,それとも変えていく必要があるのかということについて議論いただきたいと思っています。
また,2点目に,「デジタル教科書を法令上の『教科用図書』として位置づけるべきか」について,現行の制度ですと,先ほど御説明したとおり,使用義務が課されているのは紙の教科書で,それに代えてデジタル教科書を使用することができるという位置づけになっているところですが,デジタル教科書そのものを教科用図書として位置づけるべきか,という点を挙げております。
3点目に,デジタル教科書の位置づけが変わることに伴い,検定や採択,教科書の供給といった現在の教科書制度そのものが,様々な場面で大きく変わると思いますので,どのようなところに見直しの必要があるのか,というところから議論できればと考えているところです。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。
今回の検討会議で検討すべき事項の案という形で説明をいただきました。これより,委員の皆様にそれぞれの立場からの御意見を伺えればと思います。
なお,今,事務局から説明いただきました検討事項の案のほかに,更に「こういうことも検討すべきではないか」ということがありましたら,御意見として承りたいと思っております。よろしくお願いいたします。
それでは,まず加藤委員,よろしくお願いします。
【加藤委員】 学芸大学の加藤と申します。
(1)の6点目にあったデジタル教科書を家庭学習等に使用する場合の話や,(1)の2点目のデジタル教科書と教材の連携の話に関係するかと思いますが,デジタル教科書は,定義上,紙の教科書と同一の部分だけであり,それだけでも様々なメリットはありますが,やはりそれと教材が一体的に使えるというところが一番のメリットだと思っています。特に家庭学習ということを考えると,教材がプラスされていることや,履歴がきちんと取れて,様々なことに使えるというところが大事だと思っています。現状,ビューアも多様に存在しているので,それをどのように乗り越えていくのかということを考えていくことが非常に重要ですし,そこが整理できないと,「PDFで良いではないか」というところに戻っていってしまうので,その辺りを議論できればと思っています。
【堀田座長】 ありがとうございました。
続いて,齋藤委員,お願いいたします。
【齋藤委員】 東京学芸大学の齋藤です。ふだんは外国人児童生徒等への日本語指導,日本語教育を専門に研究しております。この領域では,コロナ禍において,オンラインでサポートできないかということが,地域での支援においても学校での指導においても非常に広範囲に,様々に模索されています。ところが,経済的な問題を抱えている家庭も多く,結局,環境が整わないので,学習教材や連絡事項等をデジタル化して提供しようと思っても,子供たちのほうでそれを受け止めて学ぶことができないという状況にあります。したがって, 1人1台端末の実現に向けて動いていくということは,この教育領域でもとても期待しております。それと同時に,現状,外国人児童生徒等の場合,家庭でデジタル教材や教科書を使うためのサポートを親ができない可能性があります。言語の問題や,情報スキルを持っていないという場合があるためです。デジタル教科書やデジタル教材の導入・利用に当たって,オンラインでの家庭学習のサポートをどのようにできるのかということも,併せて検討できればと思います。
もう1点は,今,外国人児童生徒等の散在地域で,外国人の子供のサポートをする人が周りに全くいないという問題が大きく取り上げられています。その場合も,デジタルの教材・教科書があるということが彼らの学習環境を整える上で非常に大きな助けになると考えられます。この会議に大変期待を寄せております。どうぞよろしくお願いします。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございます。外国人児童生徒はこれからどんどん増えていくと思いますので,齋藤委員にはその見地から様々に御指摘いただきたいと思います。
宮原委員,お願いいたします。
【宮原委員】 経済同友会教育改革委員会副委員長を務めるとともに,ファイザー株式会社という外資系のグローバル企業に勤めております。その観点から,2点ほどお話させていただきます。
検討事項案について網羅していらっしゃると思いますし,経済同友会においてもデジタル教科書の可能性を検討していたところですので,こちらも参考にしつつ貢献させていただきたいのですが,1点目に,紙の教科書をそのままデジタル教科書にするだけでは意味がないということは全く同感でございます。検討の段階で,デジタルの強みが生かせることと,紙のままであるべきものということについてはきちんと整理をして議論しないといけないと思っていまして,例えば,紙の教科書で読むことによって想像力をかき立てる,疑問を持たせるということもあるでしょうし,デジタル教科書で動画を使うことによってイメージを膨らませるということもあると思います。企業の立場から言いますと,自律心を持って自分でものごとを探求していくような人材,正解をすぐに求めないような人材がこれから変化の激しい世界で必要になってくると思います。そういった意味では,あまりデジタル教材等に頼り過ぎて,正解をすぐに出せることに慣れてしまうような内容では良くないのではないか思いますけれども,一方で,様々な探索をしていくということにおけるデジタル教材やデジタル教科書というものの可能性は大きいと思いますので,その辺りのバランスを考えながら議論をしていなければいけないと思っております。
2点目に,弊社もほぼペーパーレスになりまして,医薬品業界ですので,新たな製品が出てくるたびに3,000人以上の営業社員の教育を新たにするのですが,それを全てデジタルでやっていくということを既に始めております。子供たちのほうが恐らくデジタル教材やデジタル教科書に対する受容度は高く,先に様々なことに対して積極的になっていくだろうという想像はつくのですが,教員側のサポートというのが非常に重要ではないか思っています。検討内容にも入っておりましたけれども,家庭でデバイスを使うということもそうですが,教える側がそれをどううまく活用するかということを本当に丁寧にサポートしないと,せっかくのコンテンツがうまく活用されないということになるので,この辺りもしっかりと議論させていただければと思います。
【堀田座長】 ありがとうございました。
では,柴田委員,お願いします。
【柴田委員】 東京福祉大学の柴田です。私は児童生徒の健康面に関するところからなのですが,本日お話を聞きながら,現状では大きく二つのことを思っています。
一つは,例えば使用できる授業時数についても,デジタル教科書を用いた学習の仕方に基づいて考えていくのが良いのではないかということです。例えば,授業の45分,50分間ずっと教科書,すなわちタブレットを見ているというようなことはなく,学習上,使う時間というものが決まってくると思いますので,そうした時間を根拠にして考えると良いかと思います。また,今は教室を想定した話をしましたが,家庭学習や遠隔・オンライン教育ということを考えたときに,どのくらいの時間を使うことが想定されるのかについて検討し,対策や指針を考えたりする必要があるのではないかと思います。
もう一つは,デジタル機器特有の使い方,特性も考える必要があるだろうと思います。ディスプレーを使いますので,例えば蛍光灯の画面への映り込みであるとか,教室であれば教員がある程度分かるものも,家庭学習まで考えたときにどのような状況で使用しているかということは把握しづらいというところもあります。そこで,そうした視点を持つことが大事ではないかと思います。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。非常に貴重な御指摘かと思います。
続きまして,清水委員,お願いします。
【清水委員】 日本PTA全国協議会の清水です。私は保護者という立場でお話をさせていただきますけれども,特に小学生のお子さんをお持ちの保護者の立場からしますと,今,柴田先生がおっしゃったように,健康面的なところ,特に視力というところで不安を覚える保護者の方が非常に多いのではないかと思います。また,勉強面でのつまずき等,子供が困ったところのフォローの仕方について,家庭学習にしてもそうですけれども,デジタル教科書になることによって,保護者がどのようにサポートできるのか,入っていけるのかというところに不安要素を覚えるというところがあるのではないかと思います。
中学生の場合は,保護者の方からよくクレームが上がるのが,非常にたくさんの教科書を持って帰らなければならないということです。私の子供も,毎日10キロ程度になる教科書を背負って25分ほどかけて毎日登校していました。これがデジタル教科書に代わることによって少しでも負担が軽くなるのであれば,中学生にとっては非常に良いのではないかと思います。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございます。保護者目線は非常に大切ですので,引き続きよろしくお願いいたします。
続いて河嶌委員,お願いします。
【河嶌委員】 柏市教育委員会の河嶌と申します。私のほうからは2点お話しさせていただきます。
1点目は,今,GIGAスクール構想に関して,教育委員会総出で9月議会の補正予算について検討しているところなのですが,金額的にかなり多額になります。柏市の場合には,児童生徒数が約3万2,000人ですので,これに学習者用のデジタル教科書を入れたときの金額は相当ですし,その前提として,1人1台のタブレットを整備するということになれば,小さな学校が1校造れてしまうかもしれないほどの投資が必要になります。柏市では,指導者用デジタル教科書は既に導入していますが,ようやく今年度から学習者用のデジタル教科書も使い始めたところです。この検証結果によって,どうしていくかという議論が出てきます。
2点目は,デジタル教科書を使いこなす先生方の研修を考えなければなりません。1980年代の後半に日本にAETが――今はALTですが――入ってきたときに,何人かの英語の先生は退職をしたという事実があります。現在,ALTはなくてはならない存在になってまいりましたが,そうなるまでに30年かかっているわけです。柏市の場合には,教職員の半数が経験年数10年未満の若い教職員で構成されていますので,ICTに関しては比較的対応しやすい年代だと思います。ただ,その上の年代もいますので,研修構成をどうしていくかということが,今の検討課題です。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。
続きまして,青山委員,お願いします。
【青山委員】 筑波大学附属小学校で実際にデジタル教科書を使っている者として今のお話を聞いておりました。若い先生方はやはりツールに慣れているので,様々なものを使いたがります。私は国語部ですが,なぜその機能を使っているのか,先生が使いたいから使っているのではないかと思うところもあります。たくさんツールを入れると入れただけ,例えばサイドラインを一つ引くにもそれをさせることが目的になってしまうので,やはり教育にはねらいや目的がありますから,それにどれだけ効果的にデジタル教科書を使えるのかという観点で,先生方への研修,資質・能力の向上が必要になります。
また,子供たちを見ていますと,紙の教科書は,例えば赤い線,青い線を引いてしまうと,ようよう消せないので,「何々しましょう」と言ったときに,自信のある子供はすぐに取りかかりますが,そうでない子は,できる子が言ってから後追いで線を引く,すなわち「まずは手を止める」が紙でした。デジタルだと,みんながまずは線を引いてみる,アクションを起こします。その分,先生方には,それでも線を引かない,あるいは全く違うところに引いている子供たちの情報が一遍に入ってくるので,それをどう処理するかという課題が生じます。それにどう対応するかということも検討が必要かと思います。
最後に,やはり1人1台端末環境では,学校教育の場合どのように知識を共有し,交流させていくかということが重要になります。それと同時に,いわゆる学習支援システムというものがどうしても必要になってきますので,それと併せての議論は必要ではないかと思っております。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。
片山弘喜委員,お願いします。
【片山(弘)委員】 宮崎市教育情報研修センターの片山です。小学校において外国語が始まるときにALTの増員をし,今,GIGAスクールで1人1台端末を整備して,ようやくこれで完了かと思ったところで,次はデジタル教科書という話になっており,やはり費用が必要であるという印象を受けておりますが,これまでのお話を聞かせていただいて,教師の対応や子供の操作スキルといった点についてはきちんと整理をしていかないといけないのであろうと感じております。
更に,子供の学びを進めるという点でいうと,例えば英語では,「Listen to the CD」と言って,CDの音を聴かせたりするのですが,デジタル教科書があれば画面をタップすれば聞こえるので,それぞれの子供たちに応じた指導ができるのではないかとも思っております。そういうことを踏まえると,やはり学びを進めるという側面と,子供たちの支援をするという側面,その点もきちんと整理をして議論が進められるべきではないかと考えております。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。
福山委員,お願いします。
【福山委員】 全日本中学校長会の福山です。この会議においては,学校経営の視点からの意見を述べたいと思っています。
学校経営の視点というと,「人」や「物」,「費用」といったところだと思いますが,例えば,「人」ということを考えてみますと,現状,かなり都道府県,市区町村で差が見られますし,教員も,「デジタル教科書」というと,指導者用デジタル教科書や,あるいは英語と数学等で使っている先生だけが知っている,というのが現実でございます。「学習者用デジタル教科書」は本当に遠いところの話と考えている教員が多いです。指導力を上げる際にも,教育委員会の通所研修と校内研修を一体化する,学校の中で,チーム学校でやっていくほか,スクールネットワークを活用して,国と自治体と学校をつなぐ等,一体化していくことが非常に大事かと思っておりますし,全日中の校長会においても,全国の校長先生にここで議論する方向性,国の方向性を含めてお話していきたいと思っております。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。
片山敏郎委員,お願いします。
【片山(敏)委員】 新潟市教育委員会の片山です。1人1台の時代がとうとう来るかという思いです。私は,1人1台端末環境整備後の,これからの時代の授業作りという観点から三つお話ししたいと思います。
一つ目ですが,「主体的・対話的で深い学び」について,これから教室前提でなくなっていくという点を考えていく必要があるのではないかと思っています。コロナ禍の後には,先ほど来皆様からのお話にあるとおり,家庭学習とつないだ形の学習になってくると思います。また,外部とZoom等でつながっていくという探究型の環境も同時にできていきます。そういったときに,教科書についても予習型や自学自習型のコンテンツとしての側面を検討していく必要があるかと思っています。
二つ目ですが,今回,令和6年を見据えて検討していくということですが,その頃になると5Gであることを前提に考えていく必要があるであろうと思います。今まで紙の教科書を前提とするデジタル教科書においては,文字のテキストと画像のテキストをベースに,音声が少し入ってきているという段階でしたが,動画のコンテンツが使えるようになったときに,その配分をどうしていったらいいのかについて考える必要があると考えています。今まで,紙のほうが,想像力が膨らみ認知がしやすいからテキストだったのか,それとも,動画を入れていくことができるのかという点です。今の子供たちがユーチューブ等の動画から学ぶところもあります。何もかも動画に置き換えるということはもちろんないのですが,どういうときに,どのくらいの配分で動画を入れていくと良いのかというところも検討課題なのではないかと思っています。
三つ目に,教科書とノートが一つの端末で管理されていくことになります。例えば,カード型の形でデジタルポートフォリオにより記録を残していくということを考えたときに,教科書が入っている端末1台でやるというのは非常に難しいです。一方で,子供に端末2台はなかなか与えられないといったときに,そこの連携が課題になります。教科書のコピー&ペーストによりカード型にして残していくこと等によって,学びが蓄積されたときに,どのようにデジタルポートフォリオとして子供が学びを振り返っていくことができるかというところ,子供の振り返りのためのデータの残し方を考えていくというところが難しい課題かと思っています。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。
白鳥委員,お願いします。
【白鳥委員】 ICTの技術に携わる立場として述べさせていただきますと,GIGAスクール構想の発表の中で,学習者用端末の標準仕様が提示されました。これは大変意義のあったことだと感じています。デジタル教科書を製作する発行者や,アプリケーション,プラットフォームを開発する企業にとっては,学習者用端末の標準仕様が提示されたことで動作環境が明確になりましたので,教科書の作り込みや品質保証の部分で基準が持てたと感じています。学習者用端末の標準仕様の見直しは今後もあるとは思うのですが,デジタル教科書の動作環境として,学習者用端末の仕様提示は今後も望まれるものだと考えております。
また,現在,デジタル教科書のビューアプリケーションが複数発行されていると思います。先ほどもありましたけれども,機能性も操作性も様々ありますので,学校現場の児童生徒,先生は,教科によってアプリケーションを使い分けたり,複数のアプリケーションの操作を覚えたり,授業ごとに替えたり等,デジタル教科書の活用が大変になってしまわないかということも少し懸念しております。今後の方向性を考えますと,実際に利用されている方々の御意見を踏まえて,学校現場で簡便に利用ができるように,デジタル教科書やビューアプリケーションが持つべき共通の学習機能を示していくことが求められると思っております。特に操作性に関しましては,学校現場で,例えば利用したいビューアプリケーションを選んで,そこで全てのデジタル教科書が閲覧できるような環境ができると,統一した操作で利用できる環境も整うのではないかと思っています。デジタル教科書・教材の相互の運用性を図るという観点から,デジタル教科書コンテンツの標準仕様というところも求められていくのではないかと考えております。
【堀田座長】 ありがとうございました。
黒川委員,お願いいたします。
【黒川委員】 私が考える課題を4点ほど簡単に申し上げます。
一つは,今日も研修が必要というお話を皆様から多くいただきましたけれども,教科書は本来,学校の授業で大いに活用されるように作られたツールでありメディアですので,学習者用デジタル教科書が入ることによる授業モデルの提案が重要であろうと思っています。効果的に活用いただくための授業プランやアイデアを具体的に提供することが必要であると考えておりますし,今後予想される端末の持ち帰りや学校における自習等,授業と個別学習――ないしは反転学習等と言われているようなものも含めて――との連携を前提としたカリキュラム作成のモデルを提案できればと思います。教科書編集の際も,その点に鑑みつつ検討していかなければならない段階に入っているのではないかと思っています。つまり,個別学習への配慮や,デジタル教科書の範囲を超えるかもしれませんが,家庭学習等への配慮を学習指導要領の範囲内で検討していく必要があると考えています。教科書の中身の話にはなりますが,この点は次の改訂に向けて非常に重要な点だと思っています。
二つ目に,本日出ましたデジタル教科書と外部教材も含めたデジタル教材との連携は,「『デジタル教科書』の位置付けに関する検討の会議」のときから議論されております。技術面だけではなく,また,単に教科書の学習を保障し,補強するだけではなく,教科書から外へ発展する学びへつなげていくことも示していく必要があるのではないかと思っています。
三つ目に,学習履歴,学習ログと言われるデータの活用は,個別最適化された学びを実現するために必須ではないかと思っております。そのためにどういう議論をするかということは,今後の会議においてまた御提案できればと思っています。
最後,四つ目に,今は紙の教科書との併用制ですが,次のフェーズに入ったときにどこにたどり着くのかということです。これは政策的な議論ですし,予算等もありますので,選択制か移行か等,皆様の御意見を十分に聞きながら,時代の変化に対応した教科書の在り方の変容や,特別支援への広範囲な対応といった公共性の高いものに対しても,しっかり対応しなければならないと考えています。様々な局面からパラダイムの転換があるということが大きな前提になるのではないかと思っております。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。
中川委員,お願いいたします。
【中川委員】 よろしくお願いします。放送大学の中川です。
先ほど季武課長補佐からお話がありましたデジタル教科書の実証研究事業を昨年度からお引き受けしている身として少しお話をしたいと思います。昨年度,幾つかの地域や学校でデジタル教科書を使ってきました。やはり活用する側である学校や教員からすると,デジタル教科書の議論の前に,「1人1台の学習者用コンピューターを活用する」ということが,どのように使っていくのかという点で非常に大きな議論になります。40台や80台を学校で使い回すのと,いつも1人1台持って使うのとでは全く意味合いが違います。学習者用デジタル教科書が導入されることは,1人1台の学習者用コンピューターを使うにあたっての橋渡しとして,非常に良いのではないかと思いますし,個人的には,多くの学校で導入して初めから使ってほしいと思うことがあります。ただし,例えばこれまで一斉学習で活用していた指導者用デジタル教科書や紙の教科書でできることばかりで使っていると,恐らく学習者等デジタル教科書は必要ないのではないかという話になってしまうので,学習者用デジタル教科書の効果的な活用法や授業法を,いかに蓄積して共有できるかが重要であると考えています。この視点でいうと「(1)デジタル教科書の在り方」というところはとても大きな話だと思います。例えば,動画コンテンツがいつも良いわけではありません。場面によっては,子供を分かったつもりにさせてしまうこともあります。どこでそのツールを使うと良いのかという議論は蓄積していきたいと思っています。
もう一つは,使い方等を忘れた頃に使うのでは恐らく効果も半減してしまうので,ツールや教材についてはある程度継続して使うことが効果を増すことにつながるのではないかと思います。その辺りについての議論もこの会議でしていきたいと思っています。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。
平方委員,お願いします。
【平方委員】 中高連の平方です。同時に,工学院大学附属中学高等学校の校長もしており,1,200人近い生徒と様々な授業を見ております。
本校では,2013年から,21世紀型教育をきちんと行おうということで,その一環として1,200人近い生徒が全員タブレット,PCを持っています。そのため,今回のコロナ禍においても,全く問題なく,4月13日よりBYODでオンライン授業をやってきました。教師は家庭,生徒も家庭です。21世紀の世界において,これから活躍していく子供たちが,社会と直結していくことを学校教育の中に入れていかなければならないと2007年頃からずっと言ってきましたので,今回の事態にあってもたまたま学校も家庭もWiFiの設備等がきちっと整っていたということです。
今までの日本の教育を見ていると,知識と技能が秀でていれば「勉強ができる」という評価をしておりました。そういうことで,様々な才能を持った子供たちの様々なところを伸ばせるような,クリエーティブクラスの若者を養成していくための教育の仕組みを考え,試行錯誤してきました。詳細に言うと六つあり,その中の一つがウェブだったということなのです。
本校の教師は,教科によって実際に指導者用デジタル教科書を使っています。生徒がデジタル教科書を使っているわけではなく,教師が教科書と準拠している指導者用デジタル教科書を授業の中で活用しています。教師においても,その評価はまだはっきりと定まっていません。その辺りがもう少し分かった段階でまた発言できると思います。何よりも,コロナ禍で休校要請された中で,本当にグローバルオンラインエデュケーションが進んだ,あるいはそれを意識した学校が多くあったなと思いました。例えば本校では,授業とは別に,放課後等に生徒が世界15か国の同世代の子供たちとやり取りしていました。それは今も続いています。これは非常にプラスの面であると感じています。ただし,これだけで良いとされてしまうと,学校教育は何なのかというのがあると思います。
様々な形で指導する教員が果たして現代の生徒をどのくらい理解しているのか,この世代を理解せずにこれから教育をできるのかという点が,今,私の一番の疑問です。以上です。よろしくお願いします。
【堀田座長】 ありがとうございます。
中野委員,お願いいたします。
【中野委員】 ありがとうございます。特別支援の観点からです。
特別支援ではデジタル教科書は必要不可欠です。最初から使うことのできる初めての教科書になると思っています。そのためには,全てのコンテンツ,全ての機能を最初からユニバーサルデザインの仕様で用意していただきたいと思います。デジタル教科書の作成に関するガイドラインは作っておられますが,これを更に進めていただけると非常にうれしく思います。
2番目に,今回のコロナ禍でデジタルのニーズが非常に高まりました。特別支援では特にとても効果的でした。それを支えるためには,オンラインでの提供ということが非常に重要になるかと思います。特に,我々の提供していた教材では,家庭でのダウンロードが今回必要不可欠でした。デジタル教材があったことでかなり効果がありましたので,将来的にはぜひ家庭でもネットワークでダウンロードできる形を考えていただきたいと思います。
3番目ですが,学校での学習と家庭学習,それから各種資格試験等とがシームレスにつながっていく必要があると思います。例えば,「テストもデジタルでやりたい」というニーズが当然出てきます。その辺りを支えるような技術的な環境整備や,家庭へもデータが転送できる仕組みが非常に重要なのではないかと思います。
最後,4番目です。教員の研修が必要だというお話がありましたが,特別支援では,デジタル教科書に関する技術に加えて障害の理解というのが必要不可欠で,通常の学級に在籍している障害のある児童生徒へのサポートをそれぞれの学級の先生にお願いすることは,非常に大変かもしれないと思います。その意味では,地域の特別支援学校等がセンター機能を発揮することでサポートしていくという体制を考えていく必要があると思います。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。
それでは,最後に,座長代理の東原委員,お願いいたします。
【東原座長代理】 3点お話しさせてください。「2.検討の視点」に,「将来的にデジタル教科書やデジタル教材がどうあるべきかを見据えつつ」と明記されております。今後の在り方を考えるのであれば,当面は次の学習指導要領の改訂の時期と,先ほど御説明のあった4年先の教科書改訂の時期,この二つを並行して検討していくのが良いのではないかということを提案したいと思います。先ほど黒川委員に御紹介いただきましたデジタル教科書も,2011年に「学びのイノベーション事業」において検討したものです。それが10年かけてようやく活用したいと考えている学校が使用できるようになりました。そうしますと,次の学習指導要領,もしくはその更に先の検討も今からやらないと間に合わないであろうと思います。このことと,目の前の,法律等々を変更せずともすぐに対処しなければならない課題の両方について,ぜひ御検討いただければと思っています。
また,将来的な話を少しさせていただくと,「主体的・対話的で深い学び」や,「生きる力」を育む知識・技能,未知の状況にも対応できる力を育成しようという大きな教育の目標を考えますと,現在紙の教科書により保障されている基礎的・基本的な内容の履修をはるかに超えたものが求められています。そうすると,この会議での検討事項ではないかと思いますが,今の教育の目標が目指しているものに教科書が応えられるかということも含めて検討の場が必要であり,本検討会議において,その点についての提言のようなものもどこかで出していけると良いのではないかと思います。これまでなかなかそこに踏み込めませんでしたが,コロナ禍を通じて,これまで当たり前ではないと思っていたことを,ある状況になれば結構当たり前だと思えるといったことを経験できたと私は感じております。したがって,やるなら,今やらないともう間に合わないのではないかということで,大きめな話を一つさせていただきました。
加えて,小さめな話を二つだけさせていただきます。「主体的・対話的で深い学び」や「社会に開かれた教育課程」といったことを考えると,デジタル教科書を利用できるライセンス期間がその学年の1年間だけというのは合わないのではないかと思うので,無償化の話と併せて,ライセンスについても,いつまで使えるようにするのかという点に関して,例えば「次の学年でやるべきことまで使えるようにする」等,大胆に考えていく検討が必要ではないかと思います。
最後に,先ほども御指摘がございましたが,技術的な面の検討で,GIGAスクール構想と現在の仕組みがうまく合っていくのか,お互いにそれぞれ何とかしていかないとうまくいかないのではないかということを懸念しております。「学びのイノベーション事業」や「フューチャースクール推進事業」のときに大変な思いもいたしましたので,円滑に進むようにぜひ皆様の英知で検討ができると良いのではないか思っております。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。
最後になりますが,私からも一委員として一言申し上げます。まず,重要なことの一つ目は,教科書というものの範囲を見直さざるを得ない可能性も議論によってはあり得るということかと思います。この検討会議はデジタル教科書の今後の在り方の検討会議ですから,恐らく所掌範囲を超えているとは思いますが,今までの紙の教科書は,紙という媒体でしか流通することができなかった時代のメディアであり,それをデジタルでも紙に代えて使うことができると,現在暫定的に決まっているのであって,更に1人1台端末環境が実現した暁にはむしろデジタルのほうが供給においても利用においても便利な部分というのは幾つか出てくるかと思います。そのときに,「紙であったものをデジタルにした」という考え方で良いのかどうかという根本の問について,急には変えられないと思いますが,質保障と併せてしっかりと検討しなければならないと考えています。先ほどのデモンストレーションでもあったように,学習者用デジタル教科書の定義の範囲を超えたものと連動することによる効果が大変大きいと思いますので,データのフォーマットや教材間連携の話も含めたトータルな議論が必要かと思います。
二つ目は,インターフェースについてです。先ほど中野委員や白鳥委員からもありましたが,教科書採択は,採択母体である教育委員会等がしっかりと調査した上で行われ,これによって各地の状況に合わせた教科書が使われるという仕組みがあります。一方で,教科によって違う教科書発行者の教科書を採択することによる,インターフェースがそれぞれ違うデジタル教科書を使うということの不合理さはやはりあろうかと思います。デジタル教科書を作っている側は,自社の教科書をデジタルでより良く活用できるようにするために工夫をしてインターフェースを作っているのだとも思います。したがって,どこまで統一ができるかは分かりせんが,そういうことに少し踏み込んだ議論をする必要があるかと思います。
三つ目に,研修の話が福山委員や宮原委員はじめ皆様から出ましたが,恐らく先生方にとっては,これまで研修するにもそもそも1人1台端末環境があまりないですし,日常的に利用する場面もなかったので,なかなかすぐに活用するということが難しいのだと思います。しかし,実際に使ってみると,「ああ,子供たちはここまでできるのか」ということが分かり,「それなら授業でこういうふうにやり方を変えてみようかな」とだんだん変わっていくところがあります。したがって,GIGAスクール構想により1人1台端末が入り,そこで中核となるコンテンツとしてデジタル教科書が使われるならば,教科書を中心に置いた授業の仕方というのも,ありようが大分変わってくるかと思います。そういう意味では,これからの研修,OJTが非常に大事になるかと思いますが,そもそも紙もデジタルもこのように使い分けるのだという,仕切りが出てくるのではないかと考えています。こういったことに鑑みて,何らかの制度改正やそういうものにつながるような骨太の議論がこの検討会議でできればと思います。ただし,例えば,「無償にすべきだ」と言ったところで,それは予算の問題等様々なことがありますので,理想は理想です。理想だからすべきかどうかという話と,今どこから改善できるかという話をうまく区分けしながら進めてまいりたいと思います。検討会議が何年も続くわけではありませんので,当面の目標と,しかし,先を見た動きという形で進めてまいりたいと思います。
そろそろ予定の時間となりますので,今日の会議はこの辺りまでにしたいと思いますが,最後に今後のスケジュールにつきまして事務局より御説明をいただければと思います。
【季武課長補佐】 資料6を御覧ください。「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議スケジュール」という資料になります。
第2回につきましては,既に日程調整をさせていただいているとおり,7月28日, 3週間後に開催させていただきます。議題は,「デジタル教科書に係る現状と課題等についてヒアリング・意見交換」であり,先ほど申し上げたとおり,昨年度行った実証研究の結果等について報告させていただいくほか,学校現場でデジタル教科書を使用されている状況につきまして,青山委員等に御発表いただくことを予定しております。また,教科書発行者の立場から改めて現状と課題について御発表いただくことも想定しているところです。
更に,少し先になりますが,第3回についても既に日程調整をさせていただいており,8月25日に開催させていただく予定です。こちらは,「教科書のアクセシビリティ等についてヒアリング・意見交換」ということで,障害のある児童生徒や外国人児童生徒等につきまして,中野委員や齋藤委員に御発表いただくことを予定しています。
その後も日程調整はさせていただき,月1回程度の頻度で開催いたしまして,予定としては,年内にまず大まかな方向性をこの会議としてまとめ,年明け頃に中間まとめを示した上で,更に来年の5,6月頃に最終的に取りまとめを行うという形で進められればと現在考えているところでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【堀田座長】 年内で大体の方向を,となると,議論が多岐にわたる中,かなり忙しくなろうかと思いますので,事務局に整理していただきながらまとめてまいりたいと思います。委員の皆様には本日様々な御意見をいただいたところですが,これからも御協力をよろしくお願いいたします。
それでは,本日の会議はこれで閉会といたしたいと思います。皆様,今日はどうもありがとうございました。
―― 了 ――

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