デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議(第5回)議事録

1.日時

令和2年10月27日(火曜日)16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省東館15階 15F特別会議室 ※Web会議での開催

3.議題

  1. 教材連携の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

(委員)
青山委員、赤堀委員、片山(敏)委員、片山(弘)委員、加藤委員、河嶌委員、黒川委員、柴田委員、清水委員、白鳥委員、中川委員、中野委員、東原座長代理、福山委員、堀田座長、宮原委員、森委員
(ヒアリング)
後藤 匠 株式会社Libry代表取締役CEO
鈴木 直人 電子出版制作・流通協議会副事務局長

文部科学省

桐生学びの先端技術活用推進室長、佐藤学びの先端技術活用推進室室長補佐、神山教科書課長、高見教科書課教科書企画官、度會教科書課課長補佐

5.議事録

デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議(第5回)

令和2年10月27日



【堀田座長】 ただいまから,デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議の第5回会議を開催させていただきます。本日も皆様お忙しい中,御出席いただきまして,誠にありがとうございます。今回も新型コロナウイルスの感染状況を踏まえまして,ウェブ会議方式としております。
本日の議事に入ります前に,前回の会議以降で事務局に人事異動があったとのことですので,御紹介をお願いいたします。
【度會課長補佐】 事務局でございます。前回の会議以降の人事異動により,事務局に交代がありましたので,紹介させていただきます。
10月1日付で,大臣官房審議官(初等中等教育局担当)に塩見みづ枝が着任しております。
【堀田座長】 ありがとうございました。
本日は,教材連携の在り方についてのヒアリングを行います。その発表を踏まえまして,皆様に後半で御議論をいただくということになっております。
最初に,本日のヒアリングについて,森委員に加え,御発表いただく皆様を御紹介いたします。
まずお一人目は,株式会社Libry代表取締役CEOの後藤様です。よろしくお願いいたします。
続きまして,電子出版制作・流通協議会副事務局長の鈴木様でございます。よろしくお願いいたします。
それでは,事務局より資料確認をお願いいたします。
【度會課長補佐】 事務局でございます。本日の資料でございますが,議事次第にお示しのとおり,資料1から資料8,そして,参考資料1と2がございます。前回いただいた御意見につきましては,参考資料2におきまして赤字で記させていただいております。
資料におきまして不足等ございましたら事務局まで御連絡いただきますよう,よろしくお願いいたします。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。それでは,最初の議題ですが,事務局より報告事項が二つございます。資料1につきまして,事務局より御説明をお願いいたします。
【度會課長補佐】 事務局でございます。資料1を御覧ください。こちらは先週23日金曜日に行われました萩生田大臣の定例の閣議後記者会見の会見録でございます。2段落目の4行目,「このため」以降を御覧いただけと思いますが,本検討会議の検討事項にも上がってございます,デジタル教科書の使用を各教科等の授業時数の2分の1未満とする現行基準の見直しについて,検討を加速するよう大臣から御指示をいただいたところでございます。現在,この基準の見直しを含むデジタル教科書の今後の在り方につきましては,本検討会議において先生方に御議論いただいているところでございますが,本件については先行して,年内を目途に一定の方向性を取りまとめていきたいと考えているところでございます。
そして,本件に係る検討のスケジュールでございますが,本日の第5回と,次回11月13日金曜日の第6回会議において御議論いただき,その次の12月22日火曜日の第7回会議で方向性を示すという方向で考えております。先生方におかれましては引き続きよろしくお願いいたします。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。この件につきましては,本検討会議の検討事項に入っておりましたので,今までも議論してきたところでございますし,基準の見直しに当たって,例えば健康面における課題はないのか等といったことについても様々に議論してきたところでございます。次回の会議でこのことをメインに議論していく予定だということでございます。
この件につきまして,御質問等,御確認等ございましたら,挙手をお願いします。
それでは,後ほどの議論の際,関連する事項がございましたら,御発言いただければと思います。
続きまして,資料2について,事務局より御説明をお願いいたします。
【度會課長補佐】 事務局でございます。資料2を御覧ください。こちらは,令和3年度概算要求をしております,学習者用デジタル教科書普及促進事業についての資料でございます。事業内容といたしましては,資料の中ほどを御覧いただければと思いますが,大きく三つございます。
まず左側の一つ目の事業ですが,「学びの保障・充実のための学習者用デジタル教科書実証事業」といたしまして,1人1台端末の環境等が整っている小・中学校等を対象として,学習者用デジタル教科書を提供し普及促進を図る事業をさせていただきたいと考えております。
対象の学校種,学年及び対象の経費につきましては,下の薄緑色の枠の中でございますが,国・公・私立の小学校5・6年生,中学校全学年を対象に,小学校5・6年生の1教科,中学校全学年の2教科分に相当する経費を計上しているところでございます。
次に,資料の右側,二つ目の事業ですけれども,「学習者用デジタル教科書のクラウド配信に関するフィージビリティ検証」といたしまして,多教科でデジタル教科書を同時に,多くの児童生徒が利用する際の円滑な導入・使用を担保し,ネットワーク環境等の改善を促すため,デジタル教科書のクラウド配信に関するフィージビリティ検証を実施させていただく事業となっております。
続きまして,三つ目の「学習者用デジタル教科書の効果・影響等に関する実証研究」ですが,実証研究校での詳細な調査によるデジタル教科書の使用による効果・影響の検証を実施させていただくとともに,学校の先生方の授業実践に資するような事例集や研修動画も併せて製作させていただきたいと考えております。
事業内容としては以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。これは概算要求ですので,このまま行くかどうかはまだ分からないところですが,既に新聞報道等では,デジタル教科書を,教科数は限定されておりますが,無償で現場が使うことができるのではないかという報道等もされており,期待も高まっているところかと思います。
続きまして,議事に先立ちまして,教育データ標準等の取組につきまして,資料3に沿って御報告いただきます。桐生室長,お願いいたします。
【桐生室長】 学びの先端技術活用推進室長の桐生でございます。資料3に従いまして,教育データ標準の公表等について御説明いたします。
1ページを御覧ください。初等中等教育における教育データ標準化の概要を書いております。GIGAスクール構想の進展により,小・中学校等の1人1台端末の導入が加速しております。これに伴い,データの収集・活用について,一定のルールが必要な緊急の状況が生じていることに鑑み,将来的な展望を踏まえつつ標準化していく必要があることから,文部科学省において,こちらの検討会議でも座長をされている堀田座長を座長とするデータ標準化の有識者会議を開催しており,そちらで御議論,御意見いただきながら検討してまいりました。
このたび,「教育データ標準」の第1版を公表いたしましたので,御説明したいと思います。
下の「標準化の枠組み」の図を御覧ください。教育データといってもたくさんのデータがございまして,粒度も様々でございます。その全てを定義し切るということではなく,あくまで,この先,お互いに交換したり,あるいは蓄積したりする単位として,教育データの標準的なものを定義した上で,「このデータを使う場合にはこういった取決めでやっていきましょう」という定義していくことを目指したものでございます。
教育データを大きく三つに区分しています。一つ目は主体情報,すなわち「誰が」という情報です。児童生徒や教職員,あるいは学校といった「Actor」の情報になります。二つ目は内容情報,すなわち対象となるものでございます。学習内容や学んだ対象となるものを定義しようと考えております。三つ目は活動情報です。こちらは一つ目に挙げた主体がどのようなことを行ったかを定義しようとしており,狭義の学習行動だけではなく,関連する行動も含むものと定義しております。以上の三つの区分に従って定義していくと良いのではないかという枠組みを今回示させていただいております。
2ページを御覧ください。こちらが全体の枠組みになっております。全てを一貫して定義するのが一番良いのですが,順序や優先順位もあり得ると考えております。まずは,「②内容情報」のうち,既に初等中等教育では内容が確定しており,全国で標準的に使われている,学習分野の分類である学習指導要領の一つ一つのコードを学びのデータの出発点にしていくのが適当であろうということで,数年前から議論を続けてきたことを踏まえ,このたび,学習指導要領コードというものを策定,公表したところです。
今後,来年の春の第2版策定に向けて,主体情報や,あるいは内容情報,活動情報のうち,全国的な定義が容易なもの,あるいは共通化できるものといったところから定義していき,三つの情報それぞれを定義して決めていくという形で進めていこうと考えております。
3ページを御覧ください。今回公表しました学習指導要領コードです。下のコード表で示しておりますように,左側に「学習指導要領テキスト」とありますが,学習指導要領の一つ一つの文章の一番小さい単位をそれぞれ区分しまして,その区分一つ一つに対して,一定のルールに基づいてコードを割り振っていくといった作業をしております。
こちらのコード表を,現在,文部科学省のホームページにエクセル形式とCSV形式で掲載しております。ダウンロードしていただくと,事業者において活用していただくことも可能ですし,様々な用途で活用しやすい形でデータを掲載しているところです。
中ほどの公表スケジュールを御覧ください。こちらの学習指導要領コードもかなりの分量になっておりまして,最新版の学習指導要領の小・中・高分は既に10月に公表しております。小・中・高の前回改訂版の指導要領については11月,幼稚園・特別支援学校分に関しましては12月に公表を予定しております。
4ページを御覧ください。この学習指導要領コードの活用イメージを示してございます。例えば,左下の子供が,小学校6年生の歴史で織田信長を取り上げている授業をデジタル教科書で学習しており,デジタル教科書の「織田信長」の部分に,「8220……」と書いてある学習指導要領コードがついていると想定します。まず,こちらを更にほかの学習ツール,例えば教材,あるいはデジタル問題集として,これに関連するものはないのかといったことが,学習指導要領コードを横串にして検索することで,すぐにできるようになるといったことのほか,例えば博物館のデジタルアーカイブにもこれをひもづけていただくと,そのアーカイブとの連携も可能となる等,教材間の連携が容易になる内容の単位として,一つのキーになるという働きがございます。
また,今,議論が進んでいるスタディ・ログとしても,ツールごとに様々な蓄積のされ方があると思います。例えばこのデジタル教科書,教材,デジタル問題集で,それぞれ「織田信長の8220……としたところを学習しました」という履歴が蓄積されていくといったことも想定されます。これらを学びの起点として,そのストックや交換あるいは連携といったものに幅広く活用していただくというイメージで捉えております。
次の5ページは,これまで御説明してきました学習指導要領コードとまた別のお話になりますけれども,オンライン学習システム,CBTシステムといったものを来年度の概算要求で要求しておりまして,こちらの中に,本日,議題として上げられております教材連携についての事項も取り上げられておりますので,御説明させていただきます。こちらは,初等中等教育の汎用的なCBTシステムというものを国で開発するため,今年度の補正予算として,現在,プロトタイプの開発を進めているところです。
来年度は,これを全国展開していこうと考えております。ここでは,公的機関で開発された問題を扱おうと考えておりまして,例えば全国の学力調査,あるいは自治体が開発した学力調査といったものを想定しております。こういった問題は現在,ペーパーベースでしかありませんが,こうした問題をデジタル化した上で,学校でも,あるいは家庭でもアセスメントとして使える体制を整えていこうと考えております。
このオンライン学習システム,CBTシステムは,図の右側に記載の機関で開発しているところですが,ここにアクセスする際に,真ん中にあります学習マネジメントシステム―――学習eポータルと書いてありますけども,こうした個人ごとの学習の窓口機能が不可欠になってくるだろうと考えております。ここを基点にオンライン学習システム,CBTシステムにつながりますし,様々な学習コンテンツにつながっていくと考えております。また,この施策と並行して,スタディ・ログ等の蓄積や様々な教材間提携が可能になっていくと考えており,CBTシステムにつなげる上で,学習マネジメントシステムのどういったひな型,モデルがあるかといったことは,こちらの事業の中でも併せて検証したいと考えております。
私からの説明は以上になります。
【堀田座長】 ありがとうございました。教育データ標準の取組は,本検討会議におけるデジタル教科書の検討にも大変深く関わっている内容でございます。また,今日御議論いたします教材連携とも不可分の内容でございまして,データ標準を性急に独自の形で決め過ぎることは今後の発展を妨げますし,一方で,何も決めないと様々なところを個別に調整する必要が生じてしまい,前に進むことを妨げてしまいます。この難しい判断が求められる中で,まずは学習指導要領のコード化を公表し,また,プロトタイプのオンライン学習システムが動き始め,更なる概算要求がされたということを御報告したということになります。ありがとうございました。
それでは,本日の議事に参ります。本日の議事は,「教材連携の在り方について」ということで,有識者の皆様から御発表いただきまして,それを踏まえて御議論いただくということになります。これらの議論に当たりまして,特に意識していただきたいポイントについて,まず事務局より資料4に沿って御説明をいただきます。お願いします。
【度會課長補佐】 事務局でございます。資料4を御覧いただければと思います。本日御議論いただきたいポイントといたしましては大きく3点ございます。1点目に,学習者用デジタル教科書とデジタル教材の役割分担についてどのように考えるか。2点目に,多様なデジタル教材を広くかつ容易にデジタル教科書と連携できるようにするために必要なことは何か。3点目に,学習者用デジタル教科書と紙の教材の組合せについて,どのように考えるかでございます。
検討事項との関連で申し上げれば,従前よりお示しさせていただいております参考資料1の1ページ目の(1)①及び2ページ目の②-1,②-2との関連となります。事務局からは以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございます。資料4に三点書いていただきました。要するに,これは今まで参考資料1や2でお示ししている多くの検討事項のうちの一部で,当初からこのことを丁寧に議論する機会を設けるということになっていた教材との連携を,本日のテーマとして扱うということになります。
それでは,教材との連携に関する議論ポイントにつきまして,御質問,御確認等ございますか。
では,議論は後ほどにしまして,議事の中身に入りたいと思います。今から3名に御発表いただきます。まず,森委員より,資料5に沿って御発表をお願いいたします。森委員,お願いします。
【森委員】 ありがとうございます。一般社団法人日本図書教材協会,全国図書教材協議会理事の森と申します。本日は貴重なお時間をいただき,ありがとうございます。
私たちは,小学校,中学校向けに教材の製作・供給をしている業界団体です。本日は,学校教材の在り方とデジタル教科書との関わりについて,小・中学校に特化して,教材を作り,届けている立場からお話をさせていただきます。最初に,教材の位置づけ,活用事例をお見せした後,デジタル化の効果と要点,最後に,教科書連携への期待をお話しさせていただきます。
2ページから5ページを御覧ください。2ページは学校教材の主な役割です。現在では多くの小・中学校で教材の採択が行われていますけれども,私たちは,長年一貫して良質な教材作り,公平な採択環境づくりに大きな役割を果たしてきました。
さて,学校教材とは何でしょうか。法令の位置づけについて少し確認しておきたいと思います。教材は教育に当たる者が選択・編集して提示・活用するものです。法的には,教材は学校教育法第34条で,「有益適切なものは,これを使用することができる。」とされ,また,地方教育行政法でもその取扱いを定めるように求めています。補助教材も教科書同様に,教育の目的・目標,学習指導要領に照らして作成,活用しなければならないということになります。
教材の構造をイメージで見てみると,教科書と学校教材は4ページのような位置関係になります。現在,学校教材は,こちらの調べによると,小学校向けに8万2,904点,中学校向けに7,254点,加盟者合計では9万158点の教材が発行されています。これらの学校教材の一部が学校用デジタル教材になります。いわゆる図書教材はデジタルを包含していると考えています。
教材には,修得,習熟,評価という三つの領域があります。例えば学習帳,ドリル,テストと言えば分かりやすいでしょうか。
6ページから14ページには,現在の学校教材の活用事例を挙げております。6,7ページは漢字ドリルで,漢字の指導を始める前のスタイルです。机には教科書とノート,辞書,鉛筆,消しゴムが置かれています。ドリルの大きさは,児童が机で学習することを踏まえて作られていることがよく分かります。
8ページは実物投影機を使って,漢字ドリルの親文字を最大限大きく映している様子です。
9ページは辞書を使って意味調べをしています。ドリルには,教科書にない語彙を増やす役割があります。
10ページから12ページではドリルに書き込んでいます。非常に書き込んでいます。とにかく書けることが大事です。学習が終わった後,児童自身のポートフォリオになるイメージでしょうか。
13ページはテストにも書き込んでいます。間違えても自ら直して,見直しをしています。まさに自ら学ぶ,学びに向かう力が養われていると言えます。
14ページはテスト直し指導の様子です。小学校では,このテスト直しが大事です。分からないことを,分かったに導いてあげることができるわけです。このような学校教材の役割をまとめてみると,「1.教科書とつながっていること」「2.教科書を補完すること」「3.学校主体の指導法や評価法が実現できること」となります。学校教材は,教科によって教科書が違っても,先生の指導法をそろえることや,評価基準をそろえることができます。よって,子供たちは迷わず学習でき,評価が客観的になります。これらは学校教材に託された大きな役割と認識しております。
16ページから21ページではデジタル教材の活用事例を幾つか挙げております。近年は各社において様々なデジタル教材が開発されています。現在は,主に指導者用デジタル教材が使われております。紙を補完するということもあり,ダウンロードでの供給も盛んです。テストによる評価分析は多くの学校で行われています。データは,個人面談の資料や通知表,指導要録にも役立っています。
21ページは教科書ビューアーでデジタル教科書と教材を同一画面に並べて表示した先進事例です。これだけ並べると教材がいかに教科書の補完をしているかが分かります。
22ページには,デジタル化による効果を4点挙げています。まずは個に応じた学習への対応です。現在でも,個別最適化のための学校教材は利用されていますけれども,教材会社として特に意識したいところは,低位の学力の子供たち,障害のある子供たち,外国人児童生徒への対応といったところです。
2点目は,紙の教材を補完する役割です。デジタルによって,紙では難しかったことが実現できるようになります。しかし,かえって紙ならではの特性が生かされる場面も出てくるのではないかと思われます。今後は,デジタルと紙,双方の特徴を踏まえて,総合的に教材開発が進むと思われます。
3点目は,学習分析の精度の向上と校務負担の軽減です。単元別,観点別に分析されたデータは,今後,クラウド化によって更に活用が進むものと考えています。また,CBTによって個に応じた指導への展開もでき,先生方の校務負担を更に軽減できると思っております。また,4点目に挙げていますが,家庭との連携もシームレスになると思われます。
23ページを御覧ください。今後の学校用デジタル教材にとって幾つか大切なお話をいたします。一つ目は,学校用デジタル教材を領域としてしっかりと位置づけ,デジタル教科書と適切に連携することです。まずは明確な区分けが大事です。教科書は「何を教えるか」の具現であるとすると,教材は「どのように学ぶか」,「その状況はどうであるか」という,指導と評価の一体化の具現であると位置づけられます。したがって,教科書と教材が明確に分けられ,相互の機能を補完し合う形で適切に連携することが大切です。
また,学校による主体的な採択も重要です。学校教材は学校現場により近い存在として多様なニーズに応えるため,自由に発行されています。したがって,公正な競争が大事です。冒頭申し上げた法令に照らしても,学校教材は,学校が主体的に判断して採択することが重要で,そのためにも適切な連携が求められます。
二つ目に,学校教材が担うべき役割は,これからも変わらないということです。良質な教材を作り,公平な採択環境をつくり,適切な供給を行い,学校現場をフォローし,提案するという役割があります。デジタル化が進んでも,この役割はとても大切なことと認識しています。むしろ,適正なデジタル化を進めるためには,これらの役割をしっかりと全うする責任があると考えています。
24ページを御覧ください。最後に,デジタル教科書との連携への期待を申し上げます。まずは接続方法です。先生が多種多様な教材を検索閲覧でき,すぐに授業で使うことができるような簡便な接続方法を期待しています。一方で,どのような方法でリンクするかを早急に決める必要があります。全てを教科書ビューアーに取り込まなくても上手にリンクさえできれば,広く多くの教材とつなげることができると思っています。
二つ目は,ビューアーの統一です。デジタル教材の開発には多様なインフラへの対応,煩雑な権利処理など,意外とコストがかかっています。その一つに,複数のビューアーの存在があります。現場目線からしても,教材開発の目線からしても,できればクラウド型ビューアーで統一されて,安価に教材が掲載できるような方向に向かうことを期待しています。
最後は,学習指導要領のコード化との連携です。コード化されれば,学習指導要領,教科書,学校教材という一連のつながりが分かりやすくなります。評価分析や学習履歴の共有化,既にある学校教材の学習システムが更に強化されます。
コード化は教科書だけでなく教材にとっても非常に有効であり,今後これらを直接,自由に利用できることを期待しています。
25ページには参考資料を付しておりますので,御参照ください。
以上,日図協,全図協からの発表とさせていただきます。ありがとうございました。
【堀田座長】 森委員,ありがとうございました。大変分かりやすく御説明をいただきました。義務教育において無償給与されている教科書と,その教科書に徹底的に対応して作られ,そして,広く学校現場で長年用いられている教材,それぞれが同時にデジタル化し,上手に連携することが求められているという観点から,教材の業界の代表としてお越しいただき,お話しいただきました。
皆様からの御質問等は,意見交換のときにまとめてさせていただきますので,続いて,株式会社Libryの後藤様より,資料6に沿いまして御説明をいただきたいと思います。後藤様,よろしくお願いいたします。
【後藤氏】 ありがとうございます。デジタル教科書と教材の連携について,資料6に沿ってお話をさせていただければと思います。よろしくお願いします。
私は,株式会社Libryの代表を務めながら,ICT CONNECT21のEdTech推進サブワーキンググループでサブリーダーをやらせていただいておりまして,いわゆる日本のEdTechの企業の方々と一緒に,日本のEdTech間の連携をどうしていくべきかといったところも隔週で議論しております。
私自身は小学5年生のときに,生まれた環境に左右されないような「平和な世界」をつくりたいと志しまして,2012年に東京工業大学大学院在学中に起業して,そのまま,大学院自体は中退してしまいましたが,今に至っております。
当社の開発する「スマートに学べる問題集Libry」というサービスは,出版社と提携して,問題集をタブレットやスマートフォン,PCで見られるようにデジタル化し,そこで蓄積された学習履歴に基づいて,個別最適な学びを提供していく,すなわち個別最適な学習ができるAIドリル機能つきの電子書籍みたいなものを作らせていただいております。後ほどサービスも見てもらえればと思っています。
4ページを御覧ください。当社は,先ほどもお話ししたとおり,出版社と提携し,既存の教材の印刷データをお渡しいただいて,それをタブレット端末等で見られるようにデジタル化して,それをリブリーという学習プラットフォームに乗せて,中学,高校の学校現場に御提供させていただいております。
価格帯で言うと,ペーパーレスで御提供させてもらうときには書籍定価と同価格の売切とし,紙プラス電子版,すなわち,書籍も購入したうえで,電子版も欲しいといった場合には1冊当たり500円買切とし,かなり廉価な価格で御提供させていただきながら,学校教育における教材のデジタル化を進めております。
現在,高校理数科目においては,教科書発行者全5者うち4者である啓林館,東京書籍,第一学習社,実教出版と提携しながら,中学,高校を中心に全国の学校でデジタル教材として提供させていただいています。
高校を中心に全国で500校以上にサービスを御提供させていただいており,高校のおおよそ10校に1校程度には何かしらの形で触れていただいているという状況です。
Libryの実際の中身を見てもらえればと思っております。
(映像再生)
口頭で補足しながら,お話しさせていただきます。リブリーは,基本的にはタブレット端末等で使っていただいております。こちらが生徒の画面で,「問題集を見る」という箇所を押していただくと,自分の持っている問題集が一覧で出てきます。電子書籍ビューアーをイメージしていただけると分かりやすいかと思います。
この中で,「この問題集を解きたい」と思ったら,問題集をポチッと押すと,各章ごとに自分がどこまで終わったのかというゲージが出てきます。その章にある問題が全部解き終わると金色のメダルがもらえます。そのような形で目次が表示されています。
そこから,「今日はこの章を勉強しようかな」ということでポチッと押していただくと,電子書籍のようなインターフェースで中身を見ることができます。ここはかなりサクサク動くようになっており,学校の先生にも,「本当にこんなにサクサク動くのであれば紙と同等に使えるね」と言っていただくこともあります。
先ほどの画面に戻りますと,問題の左上にボタンがついておりまして,ここをポチッと押していただくと,問題が切り取られたページに移動します。生徒はこれを見ながら,紙とペンで勉強することになります。
紙とペンで勉強していただいて,解き終わったらストップウオッチを止めて,「解説を見る」と押していただくと,そこに解説が出てくるので,そこで自分で見比べて,自己採点で丸,バツをつけていくことになります。
そうすると,誰がいつどの問題をどれくらいの時間かけて解いて,合っていたのかどうかという学習履歴が蓄積されていきます。先ほどの紙のノートも,パシャッと写真を撮っていただくと,自分の学習履歴にひもづけられます。
問題の一つ一つに学習要素,いわゆる学習指導要領コードのようなものがついておりまして,それに基づいて教材を横断して,例えば「教科書の章末のこの問題に似ている問題が,あなたが持っている別の教材のここにあったよ」といった形で,教材のレコメンデーションをしてくれるほか,これまでの学習傾向に基づいて,「そろそろこの問題を復習しよう」とか,「ここが苦手ではないですか」といった個別最適なレコメンデーションをしてくれる機能になっております。
現在,学校に非常に受け入れていただいているポイントとしては,これまでの教材を,これまでの勉強の仕方を大きく変えずに,サクサクと勉強することができるところになっております。機能に関しては,様々に重厚につけられると良いのですが,あえて,通常学級等で学習がしっかりと高速で進められるように,機能を絞って御提供させていただいております。そのため,非常にサクサクしたインターフェース,操作感の実現が可能になり,喜んで使っていただいております。
そこでの学習履歴に基づいて,学習履歴を後から確認する,ノートを連携する,類似問題等の検索をしてくれる等,学習のサポートを行っていきます。このことにより,教科書と教材が完全に連動しながら,より効果的に学習ができるように支援しています。その学習履歴が学校の先生にも同時に共有されており,先生は宿題管理のためにノートを回収する必要がなく,生徒が自己採点で丸,バツをつけた上で,ノートの写真をパシャッと撮れば,各問題の正答率も全部集計された形で先生に送信されるようになっております。そのため,これまで先生がやっていた,ノートを回収してきてから,それを出席番号順に並び替えて,各問題が合っていた,間違っていた等の情報をエクセルで集計しながら学習分析して,PDCAを回していくといった業務の負荷が軽減されており,多い学校では,1人当たり1から2時間程度,2時間以上業務負荷が軽減しているケースもございます。
教科書と教材の連携に関して言いますと,デジタル教科書は,その周辺教材の学習履歴を収集して可視化していくことによって,先生の業務負荷が軽減され,より生徒のことを深く理解することができるようになっています。
実際に,まだ開発中の機能ではございますが,「教科書の章末問題の類似問題がこの教材にあったよ」ですとか,「皆さんのクラスの子たちはここが苦手みたいですよ」といったサジェスチョンができるようになっていきます。生徒さんにおいても,教科書をベースに,教材にリンクしていくことによって学びを深めていく機能や,逆に,教材を勉強していきながら,教科書に立ち返れる機能,練習問題から教科書の紙面に立ち返れるような機能を作っていくことによって,うまく連携していけると良いのではないかと思っているところです。
8ページを御覧ください。今,複数の教科書発行者の教材をデジタル化させていただいておりますが,「What」と「How」のベストマッチを作っていきたいと非常に強く感じております。学校によって,どういう教材で勉強したいのか,それをどう勉強したいのかということです。「What」と「How」というのは,それぞれの学校によって,適切な「What」と適切な「How」があるはずで,それを最適な組合せで勉強ができる社会になると良いのではないかと考えております。
そうしながら,ただ教科書をデジタル化するのではなく,デジタル教科書を基点としながら,周辺のデジタル教材にも,学習者中心にうまく連携していくような学習体験を設計していく必要があると感じており,そのために必要となるのが,デジタル教科書・デジタル教材で学習した内容を,共通のコードの下に,学習履歴としてしっかりと蓄積していくことだと考えております。また,デジタル教科書のプラットフォームは様々に出てくると思いますが,デジタル教科書を多様で深い学びの基点とできるよう,それぞれのデジタル教科書から教材につなぐ部分のシステム的なインターフェースをしっかりと共通化していくことが重要だと感じております。
最後になりますが,当社はコロナ禍という環境で,GIGAスクール構想の実現という大きな学校教育の変化のときに,一EdTech企業として居合わせられたことに非常に大きな使命感と責任感を感じております。2021年,国費で情報端末が入っていきます。そこから5年後,2025年頃には自治体で情報端末の買換えが起こってくるタイミングになります。そのタイミングで,「教育のデジタル化を進めて本当に良かった」という成果を残さないと,結局,自治体からも端末の予算が得られず,教育のICT化がブームとして終焉してしまいかねません。私たちEdTechも含めて,産官学連携して,二,三年でしっかりとした成果を残さなければいけないという中で,教科書という日本の教育の根幹にあるもののデジタル化の方向性は,まさに日本のデジタル化の指針,日本の教育のデジタル化の指針になると言っても過言ではないと考えております。
だからこそ,ただ「教科書が電子化されました」ではなく,Society5.0にふさわしく,かつ,学校現場にしっかりと適合するようなデジタル教科書の方向性が示されることを心から期待しております。当社がそれに少しでもお力添えできたのであれば幸いです。
御清聴ありがとうございました。以上となります。
【堀田座長】 ありがとうございました。後藤様より,大変具体的なお話をいただきました。後ほど意見交換で御質問等出るかもしれませんが,よろしくお願いいたします。
では,続きまして,電子出版制作・流通協議会の鈴木様より資料7に沿いまして御説明をお願いいたします。
【鈴木氏】 電子出版制作・流通協議会の鈴木と申します。このたびは発言の場をいただきまして,ありがとうございます。
2ページを御覧ください。まず我々の協議会自体がどのようなものであるかということを先に御説明させていただければと思います。
我々は2010年に発足しました電子出版のデータ制作を行う企業と,電子書店をはじめとした電子出版の流通の企業からなる業界団体です。いわゆる市販の電子書籍に関わっている企業の業界団体ということになっております。
3ページを御覧ください。電子出版の業界の構造を,電子書籍の流通の概念図を用いて御説明させていただきます。
一般に電子書籍は,著者が作品を書き上げて,出版社が編集した原稿を制作会社―――主に印刷会社の場合が多いですが,電子書籍用のデータに加工して作っております。それを一旦出版社にお戻しして,それを出版社から,図の中ほどにございます,電子書籍の取次にお渡しします。その際には電子書籍のメタデータである書誌データを一緒につけてお渡しすることになります。電子書籍の取次から各電子書籍のストアに取次が行われ,ストアから読者のお手元に届くという形になっております。電子書店では,DRM―――デジタル著作権管理を指しますが,コピーが容易にできなくするように施して,読者にお届けしています。
必ずしもこのルートを通るわけではなく,出版社から取次を通さずに,直接,電子書店にデータが送られるということもあります。さらには,電子書店側がプラットフォームを提供して,個人の方も含めて,著者が直接,電子書店で電子書籍を販売するというルートも今はできております。このような業界の構造になっております。
次に,4,5ページを御覧ください。現在の電子書籍のフォーマットに関して簡単に御説明させていただきます。現在の電子書籍のデファクトスタンダードは,EPUBと呼ばれるもので,XHTMLとCSSと画像で作られたコンテンツデータに,目次データが一緒になっていて,ZIP形式で圧縮されたファイルです。現在,W3C,World Wide Web Consortiumが管理しております。
そのEPUBには,リフロー型というものとフィックス型というものがあります。リフロー型は,テキストをデータとして持っており,端末の大きさによって1行の字数が変わります。そのため,小さい端末でも見やすくなっています。
フィックス型は,ページ全体が1枚の絵になっており,テキストは基本的には持っていません。このため,小さい端末では非常に読みづらくなりますが,レイアウトが変わらないので,レイアウトが重要な意味を持つような,例えば実用書や専門書に関しては,こちらの型で配信される場合が多いです。漫画も,フィックス型で作られています。
6ページを御覧ください。電子書籍再生の仕組みとしては,ほかのビューアー等と同じかと思いますが,それぞれのファイルフォーマット用のレンダリングエンジンを積んでおりまして,iOSやアンドロイドOSごとにビューアーが用意されております。
7ページを御覧ください。電子書籍ストアのビューアーは,EPUBの場合,各社専用のビューアーを用意しております。機能としては,EPUBを正しく表示できるようなエンジンを備えており,そのほかに,しおりやマーカー,メモ機能,あるいは辞書機能等の付加的な機能を備えたビューアーもあります。さらに,ビューアーには本棚の機能があり,その読者が購入した電子書籍を管理できるようになっています。
書店ごとにビューアーが供給されており,コンテンツの不正流出等の防止のため,購入した方だけが閲覧できるようなDRMがかけられています。
ストアによっては音声付電子書籍等を配信しているところもあり,その場合には,コンテンツとビューアーがそれぞれ音声対応可能なものになっている必要があります。
私の御説明は以上になります。ありがとうございました。
【堀田座長】 鈴木様,ありがとうございました。
今,3件の御発表をいただきました。それでは,これから教材連携の在り方につきまして,それぞれの御発表の内容も踏まえ,資料4に示した論点を中心に御議論いただきたいと思います。
ただ,その論点を中心にするとはいえ,様々な話がつながってくると思いますので,限定的にはいたしません。学習者用デジタル教科書のこれからの在り方や教科書制度の在り方といったことについても,今までの論点あるいはこれからの論点でもありますので,遠慮なく御発言いただいて構わないと思っております。
それでは,御意見ある方,挙手をお願いいたします。片山弘喜委員,お願いいたします。
【片山(弘)委員】 宮崎市教育情報研修センターの片山です。本日は貴重な御発表ありがとうございました。学校で使用されている教材の現状と今後の方向性がよく分かりました。
それでは,資料4のポイントに沿って意見を述べたいと思います。
まず(1)に関しまして,学習者用デジタル教科書は,学習指導要領に示されている資質・能力がバランスよく扱えるものであると考えます。今回,御発表いただきました学校教材の内容を考慮しますと,デジタル教材では練習問題等のドリル学習が効率よく行えるものであると感じました。このことを踏まえますと,デジタル教材では,資質・能力のうち,特に知識及び技能の修得に大きく寄与すると思われます。
次に,(2)に関することです。デジタル教科書の学習内容とデジタル教材の練習問題等がリンクしていることが重要であるということが発表から理解できました。紙の教科書と教材では,教師が該当ページを指示したり,確認したりしていますが,リンクされていることで,その時間が短縮されるため,利便性はかなり向上すると思われます。
さらに,デジタル教材では,学習者の学習状況を蓄積して把握することができますので,指導者と学習者の双方が補充指導や振り返りなどの際,学習状況に応じてデジタル教科書の内容を参照すること等も必要であると考えております。
最後に,(3)に関することです。例えば国語科の学習においては,文字を書くという実際の作業の繰り返しを通じて感覚を身につけることが必要なものでは紙の教材が必要であると考えております。デジタル教科書では,文字の形や筆順は学習できますが,とめ,はね,はらいや筆圧などは,紙と鉛筆を用いて学ぶ必要があると考えております。
このように各教科の特性がありますので,紙の教材が必要な学習内容や場面を整理する必要があると思われます。また,このことに関しては,学習者の発達段階も考慮する必要があると思われます。小学校では,教科の学習にとどまらず,日常的に鉛筆の持ち方等の文字を書く行為そのものを修得させています。この際には紙が適していると考えます。
例えば小学校低学年や中学年では,デジタル教科書を用いつつ,紙の教材を中心に組み合わせるとよいと考えます。発達段階に応じて,紙の教材からデジタル教材に段階的に移行するような組合せにすると効果的な学びにつながると思っております。
長くなりましたが,以上です。
【堀田座長】 まとめての御意見ありがとうございました。
続きまして,中野委員,お願いいたします。
【中野委員】 (1)について,本日御発表いただいた皆様に質問がございます。本日の御説明をお聞きして,デジタル教材がとても重要であって,学習者用デジタル教科書と有機的にリンクさせることが重要だと再認識いたしました。学習者用デジタル教科書の中に入っているデジタル教材だけではなくて,サードパーティー製のデジタル教材と相互に連携できるということがとても重要だと認識しました。そのため,デジタル教材のアクセシビリティがとても気になりました。現状をお教えいただければと思います。
特別支援教育では,ドリル等の学校教材にアクセスできないことが現在でも大きな課題になっています。学校教材は,教科書バリアフリー法の対象外になっておりまして,障害のある児童生徒の学びの社会的障壁になっています。学校教材のデジタル化を契機に,ぜひアクセシビリティを保障するための取組をお願いしたいために,今のような質問をさせていただきました。
同時に,障害のある教員が教材にアクセスできない場合も少なくありません。そのため,ぜひ障害のある教員がアクセスしやすくなるような取組をお願いしたいと思っておりますが,この辺りの対応がどうなっているかということをお教えいただければと思います。
最後に鈴木様に質問です。同じアクセシビリティの観点から考えると,先ほどEPUBが使われているというお話がありましたが,そのEPUBのアクセシビリティが非常に気になります。ISOにはEPUBアクセシビリティという規格がありますが,そちらへの対応状況等がお分かりになればお教えいただければと思います。
以上です。
【堀田座長】 御質問いただいたところですが,ほかの委員の皆様からも御質問があるかもしれませんので,後ほどまとめて御回答いただくお時間を設けたいと思います。
続きまして,福山委員,お願いいたします。
【福山委員】 参考資料1の(1)③について,お話ししたいと思います。
まず本日は大変貴重な御発表ありがとうございました。教科書と教材の相乗効果の大きさを改めて認識したところでございます。このデジタル教科書と教材に焦点を当てた議論のほか,学校現場からすると,やはりデジタルを取り巻く環境整備が重要な案件となっております。先週,我々全日本中学校長会の理事会がありまして,各都道府県の中学校長会長と情報交換を行う機会がありました。その中でGIGAスクール構想の進捗状況について,1人1台タブレット,ネットワーク環境の整備については急ピッチで進んでいると。年内か年度内には完了するとの意見が大変多かったです。
一方,小学校令和6年度,中学校令和7年度のデジタル教科書の使用を見据えたICTのリテラシーやデジタル教科書に関する研修がどのようになるのか明らかになっていないとの声が多く,令和6年度にコミットした研修計画や実施等の道筋を教育委員会にぜひ示してほしいという声が多数ありました。教師がデジタル教科書や教材を使いこなせるように,教育委員会主催の通所研修,そして,学校内で行われる校内研修だけでなく,大学での教員養成段階でも研修を済ませて,練度を高めて令和6年度,7年度を迎える必要があると考えています。
好事例の収集,整理,発信だけでなく,来年度以降から教師が実際に使用できることが,教員,教師の資質や能力,授業力の向上を図る上でも重要であり,地域差や学校間格差のない効果的な学習活動ができるよう,研修の充実は喫緊の課題であると考えております。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。御指摘いただいた点については後ほど事務局から御意見をいただければと思います。
続きまして,東原座長代理,宮原委員の順番でお願いいたします。東原座長代理,お願いいたします。
【東原座長代理】 本日の議題は,実は私の研究テーマであったところでありますので,座長代理としての発言ではない,自分の意見を言わせていただければと思います。
我々の検討する課題の中に,「デジタル教材」という言葉は出てきますが,「教材」という言葉を使ったときにイメージするのは,今日御紹介いただいたようなものが大半で,あえて言えば,デジタルノートのようなものがあまり思い浮かばないのではないかと思っています。
本日,森委員のお話の中にもワークシートが挙がっていましたから,それに近いものだとは思いますが,今後のまとめにつきましては,デジタルノートのようなものもこの教材に含めるか,あるいはデジタル教材・ノートというように,デジタルノートももう少し目立つようにするという工夫が必要ではないかと思っております。その上で,本日は連携の話なので,例えば理科や社会科の教科書にある図を自分のノートに書きたいときにコピー&ペーストができるほうが良いのではないかと思います。
このことは著作権の話等様々なことと関係しており,かなり大きな話ではあると思いますが,デジタルノートというものとデジタル教科書との連携というのも検討する必要があるのではないかということをお伝えしたいと思います。また,その連携の方向性も,本日のお話はどちらかというと教科書から教材へという矢印の向きだったと思いますが,デジタルノートを作り始めますと,デジタルノートの資料をタップすると,元の教科書につながる等,逆方向の連携の動作も必要になるであろうと思っていまして,本日ずっと伺っていたお話の中では,これまで私が携わってきたデジタルノートについての言及があまりなかったかと思いましたので,キーワードとして申し上げました。
以上でございます。
【堀田座長】 貴重な御指摘ありがとうございました。
宮原委員,お願いいたします。
【宮原委員】 本日は貴重なお話ありがとうございました。私も繰り返し修得しなければいけないような学習にはデジタル教材が非常に有効だとは思っておりましたが,本日お話を伺って,その気持ちを強くいたしました。
そういった領域には恐らく有効であろうし,先生方の御負担も減るのだろうと思うのですが,それに加えまして,こちらの検討会議でもこれまで議論されております,端末自体を家庭に持って帰れるかということと,長期休暇のときに,宿題や課題を進めるという場合には,端末の持ち帰りを含めて,どのようなデジタル教材であれば良いのかを検討するべきなのではないかと思います。例えば,先ほどもお話がありましたが,小・中学校では作文をしたり,日記を書いたりということもございます。そういったことにも,デジタルで対応するのかどうかは考えたほうが良いのではないかと思って聞いておりました。
それを踏まえまして,二つほど,御質問があるのですが,今回,御紹介いただいたようなデジタル教材というのは,特に端末の制限はあるのでしょうか。タブレットを前提にされているということではありましたが,今般のGIGAスクール構想で導入されている端末について,必ずしも各学校全く同じものが入っているということではないように思うので,端末に対する制限があるのかどうかということをお聞きしたいです。また,御発表いただいた事例では,学習するほうも教師側も大変便利であったとは思いますが,これを使いこなせるようになるまで,教師側の負担がどのくらいあったのか,もしくは全くなかったのかという点について,もしよろしければ伺いたいと思いました。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございます。
中川委員,お願いいたします。
【中川委員】 よろしくお願いします。放送大学の中川です。本日議論になったデジタル教材について,一言で「デジタル教材」と言っても,教科書の学習内容の一つ一つと一体で活用しているもの―――特にこちらは教科書発行者が意識されているものですが,そのような教材と,単元の章末に復習するときに使える教材や,単元を超えて使える教材があるので,使う側からすると,どちらが良い,悪いということではなく,こうした教材を区別して考えるべきだと思っています。本日の御発表は主に後者に関するものだったと思っております。
デジタル教材内の役割分担という点では,後者のデジタル教材については,今後特に学校と家庭を結ぶことがますます求められるなか,個人学習を支えるものを充実していける可能性があるということを改めて感じました。
前者のデジタル教材について,先ほど東原座長代理がデジタルノートの例を出されましたが,ガイドライン等でも,例えば教科書の文章や図表等を抜き出して活用するツールや,あるいはデジタルワークシートの例も載っております。ユーザーのことを考えると,こうした教科書に準拠した教材が一体化されれば,教科書の学習内容に引きつけて活用していくものだと思います。そのように考えると,教育データの標準化も大きな要素です。ただし,同時にきちんと実際の学習活動等と連動して,子供の学びを深め,広げるものでないと意味がなく,単に「関連の教材があります」というだけでは駄目だと思っています。ここにどのように踏み込んでいくかが今後非常に重要になっていくのではないかと思います。
概算要求において,学習者用デジタル教科書について示されていることは大変重要だと思いますが,現状がそうであるように,学習者用デジタル教科書の費用を教科書発行者や学校が負担するということでは加速しないので,継続的に,全学年に全面サポートできるようにしていくべきだと考えています。
いずれにしても,制度設計の話が進んでいますが,同時に教科書の学習内容と連動したグッドプラクティスの収集,蓄積をしっかりやっていくべきと考えています。
以上です。
【堀田座長】 貴重な御意見ありがとうございました。
それでは,本日御発表いただいた皆様より御発言いただきます。まず,森委員からお願いいたします。
【森委員】 たくさんの御意見,御質問ありがとうございます。私からは2点,接続の問題と環境についてお話しさせていただきます。
一つ目は接続,アクセシビリティというお話がありましたけれども,今はデジタル教材を活用するときに,まだ環境が整っていない,一つ一つインストールをしていかないと使えないという環境が多いです。この課題を解決するには,クラウド型に適応していくということと,ビューアーが活用できると良いのではないかと思っております。今後その辺りが解決の糸口になっていくのではないかと期待しております。
もう一つは,コピー&ペーストの話もありましたけれども,権利の話です。インターネットで接続しますと,教科書と教材の間で必ず著作権等の権利の話が出てきます。教科書発行者の権利もありますけれども,原著者,原作者の権利の話も出てきます。そこを解決しないと,教科書と教材とをシームレスにできないという点が課題として残っていくのであろうと思っております。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。
後藤様,よろしくお願いします。
【後藤氏】 よろしくお願いします。いただいた質問に対して順次答えていければと思います。まずは片山弘喜委員から御指摘のあったアクセシビリティについて,現状,Libryに関しては,発達障害のある児童生徒や,弱視の児童生徒に対してのアクセシビリティを強調して機能を作っているわけではありません。そこの部分というよりは,日々学習をするところをより効率的にするという点に,より機能開発のリソースを割くことによって,その点への満足度を高めているという状態ではあります。
ただ,デジタル教科書の普及を進めていく中で,そのようなアクセシビリティは非常に重要だと考えておりまして,私の発表でもお話をさせていただいたとおり,その点こそ,「What」と「How」の切り分けなのではないかと思うところです。学習に困難を抱える児童生徒に対してしっかりと対応できるようなHowもあれば,そのような機能が必ずしも必要ない児童生徒に対して,より効果的に機能を発揮できるHowもあり,それらを選択可能な形で組合せて使うということも選択としてあるのではないかと思いました。
先ほどの森委員の御発言に1点だけ補足させていただきますと,学習者の学習環境は様々ございます。カフェであったり,塾の自習室であったり,Wi-Fiがない御家庭もある中で,クラウド一本にしてしまうと,そのような学習環境での学びが閉ざされてしまうことになるのではないかと思っております。したがって,クラウドでアクセスができるということを重要視しつつも,一定量に関してはダウンロードして,インターネットに接続されていない環境でもアクセスができる環境をつくることも同様に重要なのではないかと感じました。
また,東原座長代理のデジタルノートに関する御意見に関しても思うところがありましたので,お話をさせていただければと思います。
今,学習指導要領で言われている三つの柱の中で,知識・技能というところがデジタル教材の強みなのではないかと感じられている方も多いのではないかと思っておりますが,思考力・判断力・表現力等を育むことも,デジタル教科書・教材の機能として重要ではないかと私たちは考えております。まだ開発が実装,完了はしておりませんが,歴史の教科書を見て,自分たちがこう感じたとか,この歴史的なイベントの背景はこうなのではないかという推察を生徒がノートに書いて,それをスクラップブックのような形で,写真としてデジタル教科書・教材に貼りつけ,それを先生が一覧して見ることができたり,クラスで展開して生徒同士の意見のやり取りができたりする機能もあっても良いのではないかと思います。それが必須のものになるかどうかは分かりませんが,知識・技能偏重ではない,より多くの,より広い能力を培えるようなデジタル教科書を教科書発行者と一緒に作っていきたいと考えているところです。
さらに,宮原委員の端末の制限に関する質問について,リブリーに関しては,端末はどの端末でも使えます。ブラウザを通じてクラウドでアクセスすることもできますし, iOS,Android,Windowsそれぞれネイティブのアプリケーションも作っておりますので,インストールして使うこともできます。スマートフォンにも対応しておりますので,iPhoneやAndroidのスマートフォンでもデジタル教科書・教材にアクセスできるようになっています。
使い始める教師側の負担に関しては,先生の御意思にもよりますが,ある程度ICTに慣れていらっしゃる先生に関しては,使い方の動画を一,二回見ていただければ十分に活用いただけていると感じております。あまり慣れていらっしゃらない先生に対しては,リブリー側からもサポートはしておりますが,必ずしも1か月,2か月かかるものではなく,インターフェースをしっかりと作っていけば,使い方の動画を数回見る程度でしっかりと活用できるものにはなっていくのではないかと,当社としては感じております。
以上になります。ありがとうございました。
【堀田座長】 ありがとうございました。
鈴木様,いかがでしょうか。
【鈴木氏】 鈴木でございます。先ほど御質問いただいたEPUBアクセシビリティに関して,私の知る限りですけれども,お答えさせていただければと思います。
EPUBアクセシビリティは,御発言のとおりISOになっておりまして,最新のEPUBだけではなく,以前のバージョンに関しても適用されるアクセシビリティの機能の実装を求めています。例えばファイルが読み上げに対応するような構造を持たなければいけない,あるいは代替テキストのようなものをきちんと持っていなければいけないというところを規定したものです。
ただ,実際の電子書籍において,EPUBアクセシビリティに完全に準拠しているものがどれだけあるかというと,正確な数字は分かりませんが,まだ実装できていない部分が結構あると思われます。例えば代替テキストに関しても入っていないEPUBのファイルが結構多くありますので,この辺りについては出版社とともに制作会社も対応していかなければいけないと考えます。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。
引き続き議論を続けたいと思います。柴田委員,お願いいたします。
【柴田委員】 東京福祉大学の柴田でございます。よろしくお願いします。本日は御発表いただきましてありがとうございます。
私からは,専門である人間工学という視点から少しコメントをさせていただきます。特に議論のポイントの(2),デジタル教科書と教材との連携に関してお話しさせていただきます。私としては,「使いやすいこと」と,「分かりやすいこと」が前提であり,そこの部分を非常に重要視し,必須化するべきだと思っています。
例えばデジタル教科書の利用だけということであれば,1台の端末で使えるかもしれません。ただ,教材の活用ということであれば,1台,あるいは1画面にとどまらず,例えば紙の教科書と紙の教材の利用と同じように,それぞれを交互に参照したり,見比べたりといった使い方も出てくると思います。そして,それはノートの利用にも大きく関わってくると思います。教科書を見ながらノートに書きたい等,先ほどのデジタルノートのお話とも関係してくるかもしれませんが,そういう使い方の連携も非常に重要だと思います。
デジタル教科書のみを使っているときだけではなく,デジタル教材を活用していくところまで含めて,この会議で検討していく必要があるだろうと思いました。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。
黒川委員,お願いいたします。
【黒川委員】 教科書協会の黒川でございます。本日の御発表,ありがとうございました。資料4のポイントに関して,幾つか御意見申し上げたいと思います。皆様の御意見と重複する部分もございますが,御容赦ください。
1点目の観点について,森委員からも御説明がありましたように,実際に今の学校現場で使用されているのは紙の教材が中心でして,デジタル教材は大変少ない状況だと思います。これは教科書の問題とも絡みますけれども,デジタル教材もほとんどが紙の教材をデジタル化したものが多く,主にドリルやワークが中心だと感じています。
今後,教科書も教材も,デジタル化されることによって,数値を取ることを含めて,学習履歴という面から学習効果の向上を目指すことも非常に重要です。その上で,児童生徒の学習の活動そのものの質を高めていくことができるようなデジタル教材―――アプリ等も含むと思いますが,そういう教材の開発が,関連する多くの編集者たちに求められることであろうと私は思っています。
つまり,デジタル化を前提とした教科書や教材の編集に発想を転換していくことが重要だと感じております。教科によっても大きく変わりますけれども,一度本検討会議で御紹介した国語でも,例えば本文や写真を取り込み読解作業に活用するツールとして,弊社のデジタル教材には「マイ黒板」というものがございますけれども,先ほど東原座長代理が御指摘されたデジタルノート等ともっと連携しながら展開していくことは非常に重要だと思っています。
また,国語の場合には,グラフや写真等を前提とした説明文等の読解,動画や音声を活用した「話す聞く」のといった学習活動は,教材である指導者用デジタル教科書等で提供しているものも多いのですが,教材全般にわたって,紙の教材ではできなかったことを実現できることが重要かと思います。あとは思考ツールを活用した教材を用いた学習活動を大事にしたいと思っております。ともすると,ドリル型の教材が全てになってしまうので,思考型の教材も教科書との連携という点から考えると重要かと思います。特に対話的に学ぶような学習活動等に配慮する教材を,ぜひこれから発行者全体で作っていければと思います。
さらに,先ほど申し上げた動画や音声等のコンテンツ系の資料に関しては,例えば博物館等との連携を進めていけば,すばらしいコンテンツを提供することも可能です。今後は,こうしたデジタル教科書の外側にあるコンテンツとどのように連携していくのかということもきちんと考えていきたいと思います。
2点目について,教科書を作る側からの,多様なデジタル教材とどのように連携するのかという観点ですが,義務教育段階のデジタル教科書に関して申し上げれば,小学校用は既に完成しておりますし,中学校用も完成間近になっております。したがって,この段階で学習指導要領のコードをどこまで取り込めるのか,いつから進めていくのかということについては,特に小学校については懸案事項ですので,最も気になっております。令和6年に向けて,できることからやりたいと思うのですが,デジタル教科書の発行者の立場としては,それをどこまで担保できるかは未知数であるということを申し上げておきたいと思います。
最後に,3点目について,片山弘喜委員から御指摘がございましたが,デジタル教科書を見ながら,紙の教材へ書き込むというのは,連携としては当面,非常に有効な学習活動ですので,この点は加えてお伝えをしておきたいと思います。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。
清水委員,お願いいたします。
【清水委員】 清水です。本日は御発表,ありがとうございました。森委員の資料の22ページに,「学校用デジタル教材の主な効果」というところがございました。我々保護者の立場からしますと,このような効果がデジタル教科書及びデジタル教材を組み合わせて使うことで,本当に出てくれるのであれば,大変ありがたいことだと思います。
こちらの資料の中に書いてありますとおり,子供,保護者,学校の三者が,子供の学習の進捗状況を常に共有できる状態になっていると,親の立場としても,非常に子供たちの今の学習の状況を把握しやすくなりますので,効果があると思いますし,非常に期待したいところでもあります。
この学習状況の分析の精度が上がると,結果的に学校の先生方の御負担の軽減につながる旨記載がございますが,我々保護者の立場からすると,非常に学習状況への理解度が高まるという意味でも,デジタル教材の優位性を非常によく理解できたところです。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。
続きまして,加藤委員,お願いいたします。
【加藤委員】 よろしくお願いします。御発表ありがとうございました。本日のお話に出てきた「教材」という言葉の中には,アプリ型のもの,ドリル型のもの,コンテンツ系のもの等が様々に含まれているかと思いますので,それを分類しておかないと話が混線してしまうのではないかと感じました。それに加えて,ポイントの(2)に関係しますが,少なくとも,その教材にどのようなリンクが向いているのかということを整理しておかなくてはならないと思います。
例えば,冊子レベルのリンクでよければ,いわゆる端末上の本棚に,デジタル教科書と一緒に並んでいれば済む話ですし,学習指導要領のコードレベルのリンクであれば,先ほど黒川委員も気にしていらっしゃいましたが,教科書にコードが埋め込まれていて,そこをタップすると関連する教材一覧が出てくる,あるいはもっと細かいコンテンツにしようと思えば,写真をクリックすると動画が出てくる等,場合によって,リンクの仕組みも変わってくると思います。
いずれにしても,先ほどの発表の中にもありました,主体的な採択や「What」と「How」のベストマッチを実現しようとすると,最初から全ての教材を埋め込むことはできないので,後からデジタル教科書に連携していくという仕組みがどうしても必要になってくるかと思います。そうすると,デジタル教科書のビューアー側に,ソフトウェアのAPIか,あるいはデータ形式かもしれませんが,統一的な決まりを作っていかないと,教科書と教材とのリンクができなくなってしまうのではないかと思いました。
最後に,教材に関しては,先生が作ったプリントも教材の中に含まれるということを忘れてはいけないのではないかと思います。
以上です。
【堀田座長】 貴重な御指摘ありがとうございます。
河嶌委員,お願いいたします。
【河嶌委員】 柏市教育委員会の河嶌と申します。よろしくお願いします。本日は御発表ありがとうございました。今年度,柏市では,学習者用のデジタル教科書,デジタル教材,そしてAIのデジタルドリルを小学校の算数で2校,2学年において導入し,検証事業を進めています。
授業の様子等を見ていますと,デジタル教材の使用効果は大変大きいと感じます。現場の先生方の話を聞いていると,重視していただきたい観点として,使いやすさ,廉価,そして学習の履歴が残る,という3点が挙がっています。
現在,GIGAスクール構想に基づいて環境整備を進めていますが,今後課題となってくるのは,指導者用デジタル教科書,学習者用デジタル教科書,そしてデジタル教材の導入です。
教育委員会という立場でぜひともお願いしたいのは,現在,学習者用デジタル教科書とデジタル教材を導入しようとすると,概算で2億円を超える金額となります。しかも,ライセンスの関係から,毎年度発生する費用であり,簡単に財政部局の理解を得られる金額ではありません。
この先,議論も進んでいくと思いますが,現在,コロナ禍で市の税収が落ち込み,かつ先が見えないという状態の中で,様々な事業の先送り等が検討されています。ぜひとも,学習者用デジタル教科書の無償化に向けた制度設計を進めてほしいと思います。
以上です。
【堀田座長】 河嶌委員,ありがとうございました。
赤堀委員,お願いいたします。
【赤堀委員】 よろしくお願いいたします。赤堀でございます。本日は御発表ありがとうございました。3点お話しさせていただきます。
まず1点目です。環境整備のお話が少し出ておりました。我々全連小でも,先日,全国の校長から話を聞く機会がございました。GIGAスクール構想に基づく環境整備は,各自治体の御努力でかなり進んできている,進みつつあると思っておりますが,学校の中で一斉にタブレット等を使うということは,まだまだ環境として厳しいのではないか,それができる環境が整うのはしばらく先だろうというお話が出ています。さらに,先ほどタブレット等の端末の家庭への持ち帰りのお話も出ておりましたが,家庭の情報通信環境が整っていないところもまだかなりあるという実態も報告されております。その辺りについては,ここでの議論とはまた別になるかとは思いますが,御承知おきいただければと思っています。
2点目です。教員の立場としましては,タブレットの扱いそのものを小学校1年生に指導しなくてはなりません。家庭でタブレット等を使い慣れている子もおりますが,まずは小学校に入った段階の子供たちにタブレットの扱いを教えつつ,学習をしていくということになります。冒頭の片山弘喜委員のお話にもございましたが,まずはタブレットの扱いを覚えながら,鉛筆で自分の名前を書けるようになるところから始めることになります。そういった意味では,デジタル教材と紙の教材については,段階を追って,徐々にデジタルのものを増やしていくという考え方が良いのではないかと思っています。
それに絡めまして,今,「名前を書く」というお話をいたしましたが,先ほどデジタルノートのお話も出ておりました。大変興味深く,高学年の子供たちには非常に有効ではないかと思いながら聞いておりましたけれども,デジタルノート等のツールの活用の過程で,または活用前の段階で,作文等も含めて,しっかりと自分の考えを自分の書いた字で表せるようになるための指導もしていきたいと考えています。
そのため,デジタルの教材,紙の教材,またはノートをどのように使っていくかということも含め,単純に導入するだけではなく,自分で考えたことを書き表すことができるようになるためのベースも作っておきたいと思っています。
最後に3点目です。こちらも先ほどお話が出ておりましたが,やはりデジタル教科書,デジタル教材等々の扱いについては,学校現場としては操作が容易であることが大変ありがたいです。教員の努力も必要であることは言うまでもありませんが,「取り組みやすい」というところから始められるとありがたいと思います。既に使いこなせている教員も中にはおりますけれども,まだまだこれからという教員もおりますので,その辺りについてもぜひよろしくお願いいたします。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。
白鳥委員,お願いいたします。
【白鳥委員】 よろしくお願いいたします。本日は御発表いただきましてありがとうございました。大変勉強になりました。
資料4の(2)について,お話を伺い,局所的な連携にならないよう,デジタル教科書,教材の発行者やビューアー会社,サービスを提供している方々との間で積極的に連携していただく必要があるのではないかと思いました。
ただ,「ビューアーをそろえて使いたい」という,サービス間の連携だけでは簡単に解決できない課題も挙がっていますので,教材会社の開発コスト削減のためにも,御発表にありましたが,EPUBのようなコンテンツフォーマットの標準化によって,サービスやプラットフォームに依存しないコンテンツのポータビリティ性,相互運用性を図っていくという考え方も必要なのだと思いました。
また,サービスやプラットフォーム間の連携仕様の共通化は,その手段としてとても重要だと思いますが,その際にもやはり児童生徒や先生が使う際のユースケースや使い勝手が大変重要な要素になると思いますので,連携に関する個別具体的な検討を行っていく必要があると思いました。
さらに,デジタル教材等を含めたサービスは,それぞれ各社独自に運営されている部分もありますので,デジタル教科書との連携を広く促すためにも,自社のサービスに閉じず,デジタル教科書と連携したいと感じるようなモチベーションをどのように企業に提供していくかというところも併せて考える必要があるのではないかと感じております。
最後に,森委員に質問がございます。現在,デジタル教科書の製作,発行はかなり進んでいると思っておりますが,教材のデジタル化というのは,紙と比較して何割程度発行されているのでしょうか。また,もし教材のデジタル化が進んでいないとした場合,どのような障壁があり,それをどのように解決していけばデジタル化が進むのでしょうか。この2点についてお伺いさせていただければと思っております。
以上になります。
【堀田座長】 ありがとうございました。後ほど,本日御発表いただいた方に御発言いただく時間を設けさせていただきます。
それでは青山委員,お願いいたします。
【青山委員】 筑波大学附属小学校の青山でございます。本日はありがとうございました。小学校の現場で指導者用デジタル教科書や学習者用のデジタル教科書を使っている者としては,本日の森委員の資料15ページはとても分かりやすいと思いました。
先ほど,後藤様より「使って良かったという実感がまず得られないと,2025年頃に衰退してしまうのではないか」との指摘がございましたが,まず即効性のある,すぐに効果が現れる範囲での「使って良かった」という実感で言えば,教師の丸つけに時間をかける必要がなく,「どうして間違ってしまったのだろう」というところに子供と時間をかけるような使い方ができる点,あるいは基礎基本の習熟ドリルや教科テストといった教材は,デジタル教材活用の入り口としてとても効果が分かりやすいのではないか思います。
ただ,次の「使って良かった」と思える段階は,東原座長代理がおっしゃっていたような資質・能力や思考力あるいは表現力が,デジタルノートや思考ツールの活用によって身につき,じっくり考えることができるようになったという効果が現れたときではないかと思います。さらに三つ目の段階として,教材同士等,ツールを組み合わせて活用することで,例えば問題発見力や解決力が身についたときに「使って良かった」と思うのではないかと思っています。こうした「使って良かった」という体験が蓄積しないと,2025年問題には太刀打ちできないのではないかと考えながら拝見していました。
学校におけるICTの活用に当たっては,個のドリルではなく,それぞれが自分の思考や考えを書き込み,互いに話し合いながら考えが深まるコミュニケーションのツールとして,デジタル教科書・教材を使うことで,先生方が効果を実感するということ,さらにそうした事例をこちらから発信していくということが大事になってくるのではないかと思いました。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。
片山敏郎委員,お願いいたします。
【片山(敏)委員】 お願いします。本日はすばらしい発表をありがとうございました。2025年問題という話がありましたが,そこまでにどれだけ進めるかというのが本当に大きな要素だと思っています。今,GIGAスクール構想を進めるに当たって,導入を進める立場としては非常に大きな悩みがあります。それは,先ほど来指摘のあった,情報通信環境がない家庭への対応です。この課題が解決できないとなると,フルクラウドだけの提供では怖いと思っています。2025年にはこの課題が完全に解決できるようになるのか,そこの見通しを持たないと,地方と都市部の違いもあるかもしれませんが,日本中でやったときに困る自治体が出てくるのではないかと思っています。
また,費用面の話もございました。例えば,現状,紙のドリルは教材費で買っていますが,公費でデジタルドリルをまとめて導入しました。学校現場においては,紙とデジタルドリルとどっちを使うかという問題がこれから起きたときに,そこが完全に置換えられるのかという点で非常に悩ましいと思います。先ほど,低学年では紙を主体にしつつ,段階的にデジタルを導入するのが良いのではないかというお話もありましたが,果たして本当にそうなのか,例えば漢字の書取り,筆順というのはデジタルのほうが学習しやすいような気もしますけれども,一方で,全てスタイラスを使って書いていくことを今後見込んでいくのか,そういったことも含めて検討していかないと,2025年に自治体によって大きな格差が出てくるのではないかと思います。今回は,本自治体においても何とか予算づけができましたが,2025年までに何としても効果を実感していただきたいと思うと,予算の部分は非常に大きいですので,きちんと検討していく必要があると思っております。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。
それでは,森委員,後藤様,鈴木様から一言ずつお願いしたいと思います。
森委員,お願いします。
【森委員】 白鳥委員からいただいた御質問に対してお答えしたいと思います。現状,学校教材のデジタル化はあまり進んでいないと言えます。こちらの調べによると,カウントで言えば,図書教材の発行が9万点あるのに対して,デジタル化されている教材は4万5,000点ございますが,ほとんどが付録,すなわち紙の教材に付属しているデジタル教材という位置づけです。どのような障壁があるのかという点については,学校においてまだ環境整備が整っていなかったということもあり,当協会加盟各社に関しては,あまりデジタル化に積極的ではなかったというのが実態だと思います。今回,コロナの影響で,急速にGIGAスクール構想の実現が早まるということもあって,今後開発も急速に進めていくのであろうと考えております。
また,制作にかなりのコストがかかることから,しっかりとしたデジタル教材を作ると,紙の教材と比較してかなり高価な価格で提供しなければいけないというところも開発が進んでいない要因ではないかと思っております。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。
後藤様,よろしくお願いします。
【後藤氏】 ありがとうございます。まず,委員の皆様からお話があった,使いやすさの観点については,Libryとしても非常に重要視しております。ただ,私が実際に自治体の方々とお話をしている中で,その「使いやすさ」が,実際のサービスの調達に際しての基準になっていないという実情に,非常に悔しい思いをしたことがありました。
以前,とある自治体で,「Libryは非常に使いやすいので導入したい」と言っていただき,実際に入札をして,評価基準に基づく点数は他社と同じであったのですが,価格は他社のほうが安かったために,そちらを選ばざるを得なかったというケースがありました。何とかこの「使いやすさ」というものを調達の指標に入れられるような働きかけはできないのかと感じたところです。
また,デジタル化を進めるための障壁については,デジタル教材と教科書それぞれについてお話しさせていただきます。まず,デジタル教科書に関して,授業時数の2分の1という現在のデジタル教科書の使用の基準を,緩和ではなく撤廃すべきであると思っております。教科書に代替して完全にデジタル教科書を使えるようにならないと,学校の先生たちはどの授業のときにデジタルを使い,どの授業のときに紙を使うかということを選ばなければいけなくなります。これを検討することはなかなか大変ですので,「紙でいいや」となってしまいます。
したがって,デジタル教科書を教具として思いきり使うのであれば,完全にデジタルに代替できるようにすることが重要だと考えています。そうすることによって,紙教材の制作に使っていたコストをデジタルに配分することもできるようになり,トータルして廉価に提供することもできるようになるのではないかと考えております。
また,デジタル教材に関しては,私が出版社とやり取りをする中でも,著作権処理の問題が大きいと感じております。複数のプラットフォームのデジタル教材を作っていくに当たって,著作権料がプラットフォームの数に応じてかかってきてしまうとなると,出版社としても複数のプラットフォームに手が出しづらくなってしまうということが起こっているようです。その点は課題なのではないかと感じております。
以上になります。
【堀田座長】 ありがとうございます。
鈴木様,お願いいたします。
【鈴木氏】 本日はありがとうございました。「デジタル」という意味では同じですが,デジタル教材・教科書と電子書籍では大分違う環境にあると考えています。学校に端末が入っていくと,電子書籍に関しましても,電子図書館等何らかの形で導入されるきっかけになるのではないかと思っております。大変勉強になりました。今後もよろしくお願いいたします。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。
東原座長代理,お願いします。
【東原座長代理】 本日,改めて皆様の様々な御発言を伺い,「なるほど」と思うことがたくさんございました。ありがとうございます。
立場上,資料4の観点の(1)について,少しまとめさせていただきます。デジタル教科書と教材の役割分担について,皆様の発言を伺っていて,2点考えておりました。まず,「教科用図書」,すなわち現在の紙の教科書については,1回目の会議において中教審の考え方が御紹介されていたかと思いますが,基礎的で基本的な内容の履修を保障するものであると定義されておりました。それをデジタル化したものがデジタル教科書です。そうすると,本日,皆様の御発言の中にあった,思考力・判断力・表現力といったより高度なことの育成については教材の役割になるのではないかという気がしております。デジタル教科書が基礎的,基本的な内容の履修を保障し,デジタル教材は,それを更に発展させていく部分と,教科書の基礎的,基本的な内容の履修をより強化する部分―――ドリルがその代表かと思いますが,そういった思考力・判断力・表現力のようなところを担っていくということを,非常に重要なポイントとして強調していくことが大事なのではないかと思いました。
二つ目に,資料4に示されている議論のポイントは,「どう考えるか」,「必要なことは何か」という表現でしたので,本日の議論は,基本的な方針,考え方のようなものだと思っています。具現化する場合には,加藤委員からお話がありましたように,技術レベルのことをきちんとやっていかないといけないので,そのための次の対策―――ワーキングや委員会,概算要求等,具体的にどう進めていくかということも検討しなければなりません。基本的な考え方に基づいて,業界の方が工夫されていくのは良いのですが,そうするとばらばらになってしまうことがあるので,標準化とも言えると思いますが,何か技術的に実現していくための方策を立てていくということが示せると良いのではないかと思いました。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。
本日,皆様からたくさん御意見をいただきまして,非常に議論が深まったかと思います。GIGAスクール構想に基づく端末は,今年度末に導入されますので,令和3年の当初から端末をどう使うかという話は非常に重要な問題です。そこでデジタル教科書が使えるか,使えないかというのは,GIGAスクール構想そのものの成否にも関係してくると思います。しかしながら,先ほど黒川委員もおっしゃったように,教科書の改訂にはどうしても時間がかかりますし,採択のルール等も様々にありますので,次の改訂に照準を合わせたとしても令和6年になります。この間を埋めるために,文部科学省としてはデジタル教科書の普及促進に係る概算要求をされているわけですが,教科を限定しても,要求額で言えば50億円となっており,それも概算ですので,実際にどうなるかということについては不透明,非常に厳しい状況が待っております。
また,教科書と教材の連携を考えたときに,教科書発行者が複数あり,教材会社あるいは教材の点数は山ほどある中で,それぞれをN対Nでリンクさせ合うというのは,人間の仕事としてはとても無理なことですので,標準化とデータ形式と自動化,エージェントといった何らかの技術開発が,今すぐは無理だとしても,いずれは求められることになります。さらに,それ自体に学習内容を持っている教材同士であれば,学習指導要領コードが非常に機能することになりますが,デジタルノートのようなツールに近いものとの連携についてはどうするかということも検討しなければなりません。
そこに何か子供が書き込みを入れたときの著作権をどうするか―――ここは権利の問題と著作権表記を子供に意識させる仕組みの問題等,様々なこととのつながりがあるかと思いますし,さらに,どこまでを国が決めるのか,決め過ぎると自治体の裁量が奪われるところもありますので,その点も考慮しなければなりません。
自治体が決めるべきこと,むしろ学校に任せたほうがいいこと,教科書発行者の業界で決めていただくこと,教材業界で決めていただくこと,全部それぞれに任せていたら何も進みませんし,不統一になります。この辺りのあんばいをどうしていくかという点は,今後,制度の議論につながっていきますので,皆様からも改めて御意見をいただきたいところでございます。
それでは,本日の会議はここまでといたします。次回以降のスケジュールにつきまして,事務局より,資料8に沿って御説明をお願いいたします。
【度會課長補佐】 事務局でございます。資料8を御覧いただければと思います。次回,第6回は,11月13日金曜日の10時から12時,議題は教科書制度の在り方についてとなっております。第7回は,12月22日の火曜日の15時から17時,同じく教科書制度について扱いたいと思っております。その後も月1回程度の頻度で開催予定でございます。
なお,次回の会議開催方法につきましては,改めて御連絡させていただきます。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。次回,次々回は,取りわけ萩生田大臣から早く検討するようにと指示されております,2分の1の基準の話を中心に議論してまいりたいと思います。それでは,時間となりましたので,本日はこれで閉会といたします。
本日もたくさんの御議論ありがとうございました。森委員,後藤様,鈴木様,誠にありがとうございました。

―― 了 ――

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