デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議(第2回)議事録

1.日時

令和2年7月28日(火曜日)14時30分~16時30分

2.場所

文部科学省東館3階 3F2特別会議室 ※Web会議での開催

3.議題

  1. デジタル教科書に係る現状と課題等について
  2. その他

4.出席者

委員

(委員)
青山委員、赤堀委員、片山(敏)委員、片山(弘)委員、加藤委員、河嶌委員、黒川委員、柴田委員、清水委員、白鳥委員、中川委員、中野委員、平方委員、東原座長代理、福山委員、堀田座長、宮原委員
(ヒアリング)
白井 一之 荒川区立第一日暮里小学校校長

文部科学省

矢野大臣官房審議官、浅野初等中等教育企画課長、桐生学びの先端技術活用推進室長、佐藤学びの先端技術活用推進室室長補佐、中川初等中等教育局視学委員、神山教科書課長、高見教科書課教科書企画官、季武教科書課課長補佐

5.議事録

デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議(第2回)

令和2年7月28日



【堀田座長】 ただいまから,「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議」第2回を開催させていただきます。
本日は,皆様お忙しい中,御出席いただきまして,ありがとうございます。新型コロナウイルス感染症の拡大状況も踏まえまして,本日はウェブ会議方式とし,会議の模様はユーチューブの文部科学省公式チャンネルにてライブ配信しております。
まず,本日初めて御出席される委員の先生を御紹介させていただきます。
全国連合小学校長会調査研究部長の赤堀委員です。
【赤堀委員】 赤堀でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【堀田座長】 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
また,本日御発表いただきます荒川区立第一日暮里小学校長の白井様に御挨拶いただきます。
【白井氏】 本日はお招きいただきましてありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【堀田座長】 ありがとうございました。
更に,文部科学省内の異動により本日付で教科書課長に着任されました神山課長から一言御挨拶をお願いいたします。
【神山課長】 御紹介にあずかりました,本日付で教科書課長を拝命しました神山と申します。デジタル教科書につきましても,しっかりと対応していきたいと思っておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。
【堀田座長】 今後ともよろしくお願いいたします。
それでは,事務局より資料確認をお願いします。
【季武課長補佐】 資料につきまして,議事次第に記載の資料1から7を配付しております。御確認を頂ければと思います。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございます。
まずは事務局より報告事項がございます。資料1について,事務局より説明をお願いいたします。
【季武課長補佐】 資料1に基づきまして,骨太の方針・成長戦略でのデジタル教科書・教材等関係の記載について御説明させていただきます。
今月の7月17日に閣議決定された骨太の方針と成長戦略について,いずれもデジタル教科書・教材についての記載がございます。「1.骨太の方針での記載」を御覧ください。第3章の1.(3)③において,「デジタル教科書・教材の整備・活用を推進するとともに,デジタル教科書が使用できる授業時数の基準の緩和を検討する」と記載されております。
また,3.(1)①において,GIGAスクール構想の加速に向けた対応の中の一つとして,「デジタル教科書・教材・コンテンツの開発・活用」が含まれているほか,デジタル教科書の今後の推進に当たって必要不可欠な「児童生徒1人1台端末,必要な通信環境の整備,効果的な遠隔・オンライン教育」の早期の実現や,「ICTの活用等を含めた特別支援教育」,「教育のデータの標準化・利活用を進める」といったことも盛り込まれております。
「2.成長戦略における記載」を御覧ください。こちらにおいても,デジタル教科書の使用について,「各教科の授業時数の2分の1」という使用基準について言及されているほか,デジタル教科書の活用を促進するとともに,今後の在り方等について見直しを行う旨が記載されております。
2頁下部の「参考」を御覧ください。骨太の方針,成長戦略のいずれにおいても,各教科の授業時数の2分の1というデジタル教科書の使用授業時数の基準について指摘がなされているところです。授業時数の基準は,学習者用デジタル教科書のプラスの面とマイナスの面を検証しながら段階的に進めていくという観点で,まずは主たる教材として紙の教科書を用いることを明確にするため,告示において規定されているということを書いております。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。今般閣議決定された文書における記述も踏まえ,本検討会議において議論することになります。
続きまして,本日の議事に係る御説明を頂きます。前回は委員の先生方に様々な御意見を頂いたところです。今回の議事は,「デジタル教科書に係る現状と課題等について」ということで,実際に学校現場でデジタル教科書を使用されている先生やデジタル教科書の開発に関わっている方の御発表を伺い,具体的な状況を共有した上で議論をするという形になっております。
この議論に当たって特に意識していただきたいポイントについて,事務局より御説明をお願いいたします。
【季武課長補佐】 資料2を御覧ください。1ページに,今回特に議論いただきたいポイントを事務局から3点提案しております。また,2ページからは,第1回会議において頂いた御意見について,前回の検討事項の項目ごとに沿って簡単にまとめております。
まず1ページ目の「(1)デジタル教科書と紙の教科書の利点について」です。こちらは2ページ目の「1.デジタル教科書の在り方」の①と関係しております。前回の議論の中で,デジタル教科書と紙の教科書にそれぞれの利点があるため,それを整理し,双方の利点を生かせるような,ベストミックスな在り方を模索していくべきという御指摘を頂いたところです。今回,実際に学校現場でデジタル教科書を使用されている先生方からも御発表いただけるということで,実際に紙ならではの良さとデジタルならではの良さというところについて議論を頂けると,双方の利点や在り方の検討を深めていくことができるのではないかと考えているところです。
その上で,「このポイントではデジタルを使うべき」「このポイントでは紙のほうが良いのではないか」といったことについて検討していきたいと考えております。
次に,「(2)児童生徒の学びの充実に向けたデジタル教材等との連携について」です。こちらは,資料の2ページ目下部から3ページ目にかけて記載のある「1.デジタル教科書の在り方」の②と関係しております。「デジタル教科書の効果を引き出すには,広くデジタル教材等との連携を行うことが必要ではないか」ということや,実際に連携するためには,教育データの有効な利活用のための標準化の観点を含めた検討が必要との指摘があったところですが,具体的にどのような形で連携を行うと効果的なのかといったところまでは深く議論できておりませんので,今回,その点を深めていくことができればと考えております。
また今回,白鳥委員より,技術的な観点からも御発表いただく予定ですので,そういった面も含めて,どのような在り方が望ましいかについて検討できればと思っています。
また,「(3)児童生徒の『主体的・対話的で深い学び』の実現への寄与について」に関して,こちらも「1.デジタル教科書の在り方」の①と関係いたしますが,例えば授業の中で,どのような場面でどのように使うことで,「主体的・対話的で深い学び」に寄与することができるのかといったことを議論いただきたいと考えております。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。本日議論いただきたいポイントをはっきりさせていただきました。
前回も議論に出ておりましたが,今回,学校現場にいらっしゃる先生とシステムの開発をされている委員からお話を頂きますので,それを踏まえて,デジタルと紙のそれぞれの利点やデジタル教科書とデジタル教材の連携,それによって「主体的・対話的で深い学び」をどのように実現するのかといった観点について,後ほど意見交換を頂きたいということでございます。
それでは,次に参ります。昨年度,文部科学省において実施したデジタル教科書に関する実証研究につきまして,主査として関わっていただきました中川委員と事務局より,資料3に沿って御説明いただきたいと思います。
それでは,中川委員,よろしくお願いいたします。
【中川委員】 放送大学の中川と申します。どうぞよろしくお願いします。
2019年度,学習者用デジタル教科書の使用による効果・影響等について,紙の教科書を使用する場合と比較する実証研究を実施いたしました。この実証事業においては,黒川委員,加藤委員にも御協力いただき,私も有識者委員会の主査をしておりましたので,資料3の前半について説明させていただきます。
まず実証事業の目的ですが,1ページの冒頭にありますように,「今後の学習者用デジタル教科書の効果的な活用の在り方等に関するガイドラインの改善に向けた検討や,学習者用デジタル教科書の在り方の検討に資することを目的に,学習者用デジタル教科書の使用による効果・影響等について,紙の教科書を使用する場合と比較する実証研究を実施する」ということでした。
短い期間ではございましたが,全国から6校に御協力いただきました。
1ページの下の図にありますように,デジタル教科書の効果等についてのヒアリングやデジタル教科書と紙の教科書の類似授業の比較,これに対する授業後のアンケート,さらにはデジタル教科書の有用性に関する意識調査,健康影響の調査等を行いました。
まず,2ページ「(1)学習面」について,全ての項目でデジタル教科書を使用した授業の評価が紙の教科書を使用した授業の評価を上回り,肯定的に評価されていることが確認できました。学習者用デジタル教科書では,「音声の再生や書き込み等の試行錯誤など,デジタルならではの特徴があり,それらが学習内容の理解に役立った」と評価した結果を得ることができました。
意識調査だけではなく,例えば国語科では,授業後のアンケートとともに,各授業における物語等の場面について,児童が理解したことを毎回ノートにまとめてもらいました。それを教師が授業後に3段階から5段階で評価をした結果,デジタル教科書の授業に有意差が見られた事例と,有意差は見られなかったものの紙の教科書の授業におけるノート評価の方が有意に高いという結果にはならなかったという事例が見られました。
資料2ページ「(1)学習面」の二つ目について,多くの児童生徒及び教師が「主体的・対話的で深い学び」に対して学習者用デジタル教科書の有用性を感じていること,及び「個別学習・グループ学習・一斉学習等の場面で効果的と考えられる活用方法」に対して学習者用デジタル教科書の有用性を感じていることを明らかにすることができました。
ただ課題としては,本調査の期間が短かったこともあり,単元を通した学びの深まりというところまでは,あまり言及ができませんでした。
次に「(2)健康面への影響」について,「良い姿勢ができた」,「画面と目の距離を30センチ以上離せた」と回答した児童生徒のほうが,「目が疲れていない」と感じている傾向が見られました。これについては後ほど季武補佐より補足いただきます。
3ページ目の「(3)特別な支援を必要とする児童が学習者用デジタル教科書利用において得られる効果」について,「学習者用デジタル教科書で漢字の書き順を確認する活動」や「学習者用デジタル教科書の線を引く機能で文章に赤線を引く活動」,またタブレットPCの特徴である様々な機能を活用することで,「特別な支援を必要とする児童生徒の学習活動の幅や選択肢を広げることが可能となり,深い学びを実現することができる」と評価した結果を得ることができました。
また,「(4)指導上の支障について」ですが,教員ヒアリングの結果から,「特に学習者用デジタル教科書を児童生徒に使いこなさせるのに,困難は感じない」という意見が大半であり,学習者用デジタル教科書を授業で使用するのに特段の指導上の困難は発生しないと考えられる結果を得ることができました。
最後に,「(5)学習者用デジタル教科書で行う授業を授業時数の2分の1以下に制限することについて」ですが,実証期間が3か月という短い期間だったこともあり,「制約がないほうが自由に活用できるから良い」,あるいは「入試がCBTになるなら積極的に2分の1以上使いたい」という意見がありました。
総じて,学習者用デジタル教科書には,単なる紙の代替品としてではなく,学びの拡張を促す可能性があるという結果が得られました。
それでは,後半について,季武補佐より補足を頂きたいと思います。よろしくお願いします。
【季武課長補佐】 事務局からも御説明させていただきます。
資料の4ページから6ページまでにつきましては,中川委員より御説明いただいた実証研究の成果やアンケートの内容について,より具体的に書いております。
4ページ目に児童生徒へのアンケートの質問例,5ページ目にポストアンケートの質問例と結果例を記載しております。先ほど中川委員より御説明いただきましたが,「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」について,例えば興味・関心をより強く持つことができたかといった観点に関し,児童生徒及び教師に対してポストアンケートを行った結果を示しております。
6ページ目では,健康面に関してポストアンケートを行った際の回答を,参考として記載しております。「良い姿勢で使用できたか」,「画面から目を30センチ以上離して使うことができたか」との項目について,多くの児童生徒が「できた」又は「少しできた」という肯定的な回答をしております。
また, 7ページ目,8ページ目について,昨年度,各教科書発行者に御協力により,障害のある児童生徒や外国人児童生徒等日本語に通じない児童生徒のためにデジタル教科書を無償貸与していただき,実際に使用した学校からアンケートを取って,その成果をまとめたものです。
7ページ目に記載のとおり,教科や発行者も多岐にわたりますし,使用した学校も,8ページ目や9ページ目に記載のとおり,小学校から高校,更に特別支援学校の初等部から高等部まで,多岐にわたっておりました。
結果として,デジタル教科書を制度上使用できるようになったのが令和元年度からということもあり,多くの学校が初めてデジタル教科書を使用したという状況でしたが,8ページ目に「3.調査結果の概要」として記載のとおり,教員,児童生徒ともに多くの方が「紙の教科書よりも学習者用デジタル教科書による指導のほうが便利」と回答しているほか,「紙の教科書よりも学習者用デジタル教科書のほうが使いやすかった」との回答があったところです。
また,9ページ目,10ページ目に,障害のある児童生徒や日本語に通じない児童生徒等,特別な配慮を必要とする児童生徒に対して学習者用デジタル教科書を使用した際の,教員や児童生徒へのアンケート結果を記載しております。全障害種や日本語に通じない児童生徒を含めた結果ではございますが,高い割合で「理解が上がった」「学習意欲が向上した」といった回答を頂いたところです。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。短い期間で学校現場の御協力を頂きながら精力的に進めていただいた結果かと思います。中川委員,ありがとうございました。
意見交換は後ほど行いますが,まず質問等ございましたら,挙手を頂けますでしょうか。
中野委員,お願いします。
【中野委員】 中野でございます。最後に御説明のあった「特別な配慮を必要とする児童生徒」における結果について,資料には全障害種等を含めたデータが記載されているとのことでしたが,データとしては障害ごとの分類もされているのでしょうか。
【季武課長補佐】 はい,データは障害種等ごとに細かく取っており,詳細なデータが記載されている報告書の全体版についてはホームページにもアップロードさせていただいております。
【中野委員】 ありがとうございます。障害特性による違いがありますし,日本語に通じない場合と特別支援の子供たちでは少しニーズが違う場合もあるかと思いますので,今後の議論の中では,その辺りについても丁寧に議論ができると良いかと思います。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。
清水委員,お願いします。
【清水委員】 資料3の後半に様々なアンケート結果が記載されていますが,これは基本的に先生方と児童生徒のみで,保護者へのアンケートはないのでしょうか。
【季武課長補佐】 はい,今回の調査においては先生と児童生徒のみを対象としております。
【堀田座長】 清水委員の御指摘は非常に重要なことで,今後は保護者の感触についても調べてまいりたいと思います。ありがとうございました。
宮原委員,お願いします。
【宮原委員】 ありがとうございました。大変意義のある実証研究だと感じました。デジタル教科書の良い面は多く出ていたと思うのですが,アンケートやヒアリングの結果,「こういう場合は紙のほうが良かった」という情報がありましたら,今後の議論の参考に共有いただければと思います。
【中川委員】 「紙のほうが良い」という明確な言及はありませんでしたが,やはり紙の教科書に慣れている学校では,「紙の教科書の方が使いやすい」というニュアンスも含んでいたかのように思います。
【堀田座長】 何事においてもそうかと思いますが,「デジタル教科書に使い慣れると変わってくるが,使い慣れるまでは使い慣れた紙のほうが良いかもしれない」ということかと思います。ありがとうございました。
柴田委員,お願いします。
【柴田委員】 東京福祉大学の柴田です。6ページの健康面に関するアンケート結果において,子供たちが目の距離を30センチ以上離せていたかどうかという意識に関する項目がありますが,子供たち自身に「30センチというのがどの程度の距離か」という感覚があっての回答なのか,お分かりになれば教えてください。
【季武課長補佐】 実際に「これが30センチです」という指導を全ての学校で行えていたかについては,確認できておりません。
【堀田座長】 ありがとうございました。
続きまして,学校現場におけるデジタル教科書の使用の実践や今後の課題について,実際に活用いただいているお二人に御発表いただきます。お二人の発表の後に質疑をさせていただきます。
まず,荒川区立第一日暮里小学校の白井校長先生より,資料4に従って御発表いただきます。よろしくお願いします。
【白井氏】 荒川区立第一日暮里小学校の校長,白井と申します。私からは,主として算数・社会科における,学習ツールとしての学習者用デジタル教科書の実践を通して,その成果と課題についてお話しさせていただきます。
まず,荒川区のタブレットパソコン事情です。
2ページに書いているとおり,WindowsOfficeを搭載している機種を使っています。現在1.2人に1台ですが,年内に1人1台整備予定です。敷地内は,どこでもWi-Fi受信可能,通信速度は1秒当たり100メガバイトです。現在は家庭への持ち帰りの使用はしておりませんが,新型コロナウイルス感染症拡大の第2波,第3波が来た場合には,持ち帰りも可能とすることを予定しています。
3ページを御覧ください。学校におけるICT環境について,タブレットだけではなく,ほかのICT機器と一体的に使用しています。電子黒板があり,提示用パソコンがあり,書画カメラがあります。児童一人一人のタブレットがあり,授業支援システムで教師用のタブレットPCに情報を集められるようになっています。
ここからは,学習者用デジタル教科書の効果的な使い方について具体的にお話しします。
5ページを御覧ください。まずはポップアップです。教科書の見開きには様々な情報がありますが,見せたいところだけを大きくすることができます。そのことによって子供を注目させることができ,一緒に問題を共有することができます。
6ページを御覧ください。次に拡大です。拡大は,ピンチアップすることにより,教科書に書いてある図の細部まで見られるようにすることです。右側の写真を見ていただくと分かるとおり,例えば社会科の教科書に載っているスーパーマーケットの絵の中で,一人一人客が何をやっているのか,店員が何をやっているのかということを拡大して見られます。下の写真は算数の例ですけれども,元の図の大きさではメモリが小さいので,具体的な数値をピンチアウトして見ている様子です。
続いて7ページを御覧ください。書き込みです。教科書上に直接書き込むことができるので,わざわざワークシートを作る必要がありません。
8ページ,9ページを御覧ください。教科書上のどのページにも書き込みができるスペースがあるわけではないので,先生がワークシートを作ることもあります。ワークシートの活用により,子供たちの考えを可視化することができます。紙面よりも,すぐに書き直すことのできるタブレットのほうが試行錯誤しやすいため,子供たちの取りかかりが早くなってきています。
また,先生がつくったワークシートを何枚でも子供に配ることができるので,子供たちの多様な考えを引き出すことにも役に立っています。
10ページを御覧ください。繰り返し試行錯誤ができます。「まずやってみよう」という気持ちになります。行き詰まったときにはすぐリセットし,すぐにやり直すことができるので,子供たちは時間いっぱいまで意欲的に取り組んでいます。
11ページ,12ページを御覧ください。話し合いの場面です。授業支援システムで児童一人一人の画面の様子を先生機に集約している様子が11ページ右上に映っています。この画面を見ながら,「どの子に発表してもらおうか」「どの子の考えを取り上げようか」ということを検討することができます。実際に,発表する子供の画面を電子黒板に映しながら子供に説明してもらうことができます。
また,ペア学習やグループ学習の際,タブレットを見せ合うことで対話的な学びができます。この際,書き足したり消したりすることが容易にできるので非常に説明しやすく,リセットして考えの過程を説明することもできます。
続いて,13ページを御覧ください。ドリル学習の場面です。特に算数ではドリル学習が非常に大切です。写真にはデジタル教材を使っている様子が写っています。ランダムに問題が出題され,自動で正誤が判定されるので,子供たちは一人でも学習を進めることができます。先生は,つまずきのある子に個別指導ができます。
例えば掛け算,九九の学習では,子供たちが「先生に聞いてもらおう」,「丸をもらおう」と思い先生の前に列ができることもありましたが,そういうことが,解消されました。
14ページを御覧ください。デジタルの良い面をお話ししてきましたが,実はアナログも必要です。例えば,電子黒板では一つの考えしか見せることができません。これまでの多様な考え方を黒板に貼り,同じものを見たり比較したりしつつ話し合い,学びを深めていく場面では,黒板を使うことが効果的であると思っています。
以上のような実践を通して,15ページに学習者用デジタル教科書を使ってみて思うことを記載しています。左の列が先生に関する項目です。
まず,机間指導がとてもやりやすくなりました。先生の端末に子供たちの反応が全て出るため,発表計画も立てやすくなっています。
また,発表させるときには,よく画用紙に書かせたりしていましたが,その必要もなくなりました。
更に,教科書に書き込めるので,ワークシートをつくらなくても良くなりました。
右の列は児童に関する項目です。まず,拡大機能を使って図等を非常に大きくすることで,子供たちが様々な気づきをするようになりました。
また,紙よりもすぐに活動を始めるようになったと思っています。背景には,恐らくやり直しができるという安心感があるのではないかと思います。
更に,「自分の考えが説明しやすい」と子供たちも言っております。
一方,下にマイナス面を記載しています。まず,多様な考えが読み取れません。ノートであれば,子供が自分の考えを一つ,二つ,三つと書き,それを先生が見ると,「三つ考えたのか」,「それぞれこういう考えなのか」と読み取れるのですが,タブレットでは,一つ考え終わると画面を送ってしまうので,前の考えが見られません。この点で,その子が一体どのように多様な考えをしたのか,教師からはなかなか読み取れないという欠点があることに気が付きました。
また,ノートに書かせる時間を意識的に取らずに,タブレットだけを使っていると,ノートは真っ白になり,学習の記録が残らないということも分かりました。
次に,16ページを御覧ください。デジタルの強みとアナログの強みです。
デジタルの強みは,これまでに説明したとおりのことですが,アナログの強みもあります。
まず,学習の記録にはノートや板書がどうしても必要になります。また,先ほどお話ししたとおり,多様な考えの見取りにはアナログが効果的です。多様な考えを比較したり,整理したり,話し合ったりする場合にも,やはりアナログが必要だと思っています。
更に,板書には1時間の授業の流れが全て記録されておりますので,それを基に振り返るということも非常にアナログの強みであると思っています。
17ページには望ましいICT環境等を記載しています。学習者用デジタル教科書単体でももちろん使えるのですが,ICT環境との一体的な使用,例えばWi-Fiを使うことにより,電子黒板に映すことができます。また,教師用パソコンに児童用タブレットが集約できるソフトや,教師が作成したデジタルワークシートを児童用タブレットに配付・回収できるソフト等の授業支援システムも効果的です。
次に,デジタル教材です。1点目に,先ほどもお話ししたとおり,デジタルドリルがあると非常に便利です。2点目に,デジタルコンテンツです。コンテンツ付の学習者用デジタル教科書を購入すれば良いのですが,教科書部分のみのものと比べると高価なため,なかなか難しいと思っています。ただ,現在,教科書にはQRコードが掲載されているので,それを読み取ることによってデジタルコンテンツも使用可能であると思っています。
以上のことを踏まえて,18ページが算数の授業イメージです。デジタルかアナログかというよりは,それぞれの良さを生かした使い方になります。
まず問題の提示です。ここでは子供に注目させるよう,指導者用デジタル教科書を使います。指導者用デジタル教科書は,子供たちに問題を理解させるために,いろんな工夫がされています。アニメーションや動画,数値を入れ替える等といったところで問題を作成していきます。
次に,自力解決です。学習者用デジタル教科書では,直接教科書に書き込むことができます。その後,きちんとノートに記録をさせます。
続く発表のときには,子供たちの学習者用デジタル教科書の画面を教師が端末上で確認し,発表してもらう子を指名します。話合いのときには,発表したものをもう一度紙に貼り,黒板の上で整理をし,比較検討をして,終わりに振り返りをいたします。
最後の練習問題については,デジタルでもアナログでもどちらでも可能かと思っています。
以上が算数における授業イメージです。
紙の教科書が良いのか,デジタル教科書が良いのかということを,19ページで振り返っています。
右の列,「デジタル教科書」を御覧ください。紙の教科書でできることは,全てデジタル教科書でできます。加えてデジタルならではの機能があることを考えるとデジタル教科書のほうが良いのではないかと思うのですが,紙の教科書には「存在感」があります。リアルにそこに存在しているという存在感です。子供が「忘れました」と言うのも紙の教科書です。4月,始業式のときにもらい,初めて折り目をつけて開いてみて,ぱらぱらとめくり,「こんなことを勉強するのか」と思えるのも,3月になって使い込んだ教科書を見て,「ああ,この1年間勉強したな」と振り返れるのも,存在感のある紙の教科書なのです。学びの本質とはあまり関係がありませんが,子供にとって紙の教科書というのは,それなりの存在感があると思っています。更に大事なことは,ICT環境に全く依拠せず,いつでもどこでもできるということです。
以上のことから,「どちらが良いか」ということを考えるのではなく,「学習ツールが一つ増えた」,「便利なものが増えた」と考えたほうが良いのではないかと思っています。
20ページがまとめになります。
まず,とにかく使ってみなければ,良さも欠点も分かりません。先生たちはずっと紙の教科書を使っているので,デジタル教科書を使わなくても授業はできるのですが,使うと,「こんなに良いことができる」ということも分かると思います。
また,デジタルばかりに頼っていると,「Wi-Fiがつながらない」,「システムが落ちた」といった場合に授業にならなくなってしまうので,そのときにはすぐに切り替えてアナログで授業ができるということも大切だと思っています。
いずれにしてもノートと教科書,タブレットを学習ツールとして,先生も子供たちも有効に使うことが大切だと思っています。
最後に,これからも学習者用デジタル教科書を使っていきたいとは思っておりますが,これが課題ではないかということについてお話しさせていただきます。
まず値段です。1教科1人800円前後です。更に,コンテンツ付きでは1,500円前後します。加えて,ライセンスの有効期間は1年間ですので,1年間しか使えません。
本年度は小学校の新学習指導要領移行に伴い教科書も変わったので,指導者用も含むデジタル教科書に対してかなり公費による予算がつきましたが,来年以降購入できるのか,どうしようかと悩んでいるところです。子供の私費負担にするしかないのかということも考えています。
次にインストール作業です。クラウドに置くこともサーバーに置くこともできるのですが,つながらないということもあるので,端末一台一台に入れておくほうが安心です。ただし,そうすると一台一台インストール作業が伴ってきます。ICT支援員にも手伝っていただけるのですが,結局,今は先生が放課後に一生懸命作業し,その後また消毒作業をするということになっています。これが毎年続くと思うと,少し辟易する気持ちもあります。
また,ビューアーが,教科書発行者によりまちまちです。例えばペン機能を使うときにも,ペン機能の位置がビューアーによって違うので,少し戸惑うこともあります。
最後に,現在,回線速度が100メガくらいなのですが,1ギガくらいあると,サーバーにデジタル教科書を入れても円滑に動くのではないかと思っています。回線速度が上がるだけで,インストール作業や使用時の動作も随分楽になるのではないかと思っています。
以上が,今後使い続けるに当たっての課題だと考えています。
お話は以上です。
【堀田座長】 大変具体的で,非常に実感の伴ったお話をしていただき,ありがとうございました。
続きまして,青山委員より資料5に沿って御説明を頂きたいと思います。青山委員,よろしくお願いします。
【青山委員】 お願いいたします。筑波大学附属小学校の青山と申します。私からは小学校国語のデジタル教科書を活用した効果と可能性や課題についてお話をさせていただきます。
2ページを御覧ください。本校はWindows版のタブレットPCを共有する形で1人1台使っております。
3ページを御覧ください。国語には様々な領域がございますが,話すこと・聞くことといった表現活動の領域にデジタル教科書の効果が認められるということは容易に想像がつくのではないかと思います。音声言語の話合いのモデル提示や,記録,加工,保存,再現といった領域には特に向いているということが言えます。
読むことに関しては,この後少し詳しくお話をしていきたいと思いますが,まずは下に2点書いております。
まず,「情報の扱い方に関する事項」が,今回の学習指導要領から国語に入っております。この新設された事項は,思考力に関わる事項です。これに関しては,後ほど申し上げますが,紙だけではなかなか実現が難しい領域に入ってくるかと思います。
次に,「次世代の読解テキスト」と書きましたが,欧米等では,国語の中に「見ること」と言いますか,読解テキストに映像等も含まれ,ビューイングも行われております。このようなこれからのテキストを考えると,紙の教科書だけでは難しいということも想定されております。
「読むこと」というのは紙が最も適していそうなものですが,実際にはどうなのかということを,第1教材,第2教材という二つの教材がセットになっている3年生の説明文でお話しさせていただきます。
4ページから6ページを御覧ください。一つ目は「言葉で遊ぼう」という教材です。この教材は,5ページに映っている分だけで全ての文章になっております。「見開き教材」と呼ばれるものですが,デジタル教科書にサイドラインを引きながら,「問い」と「答え」や「はじめ」「中」「おわり」,更に「真ん中の部分には事例が書いてある」ということを学習します。これは,紙の教科書でも見開きで一覧できますので,あまり変わりがございません。
ただ,この第1教材を学習した後に,もう少し長い,「こまを楽しむ」という数ページにわたる第2教材になったときのことを考えます。子供たちは第1教材を学んだときにサイドラインを引いているので,指示を出さなくとも,「また問いがあったよ」と問いの文に赤いサイドラインを引く,答えの部分に青いサイドラインを引く,といったアクションを起こします。
学習者用デジタル教科書でこの作業をするときには,ほとんどの子供がスクロール機能を使います。サイドに動かす,スライドさせるだけで,6ページある教材を行ったり来たりすることができ,ページをめくる必要がないため,子供も「使いやすい」と言います。
ただし,先ほどの教材とは違い,文章全体を見渡すに当たっては,これでも困難がございます。
「文章全体が分かる」ことに資するものとして,7ページに記載の「本文抜き出し機能」があります。この機能は現在,学習者用デジタル教科書ではなく,デジタル教材部分に当たるものです。第1回の会議で黒川委員からお話がありましたように,教科書紙面から直接なぞるだけで,本文や挿絵,写真を抜き出すことができます。それぞれ自分の考えによって,様々な抜き出し方でまとめることができます。
こういったプロセスは今まで,紙の教材とワークシートでやっておりました。ただ,教師の作ったワークシートは穴埋めだけになりがちです。一方で,本文抜き出し機能を用いるだけでは,抜き出していない文への気づきが足りません。ほかの文には何が書かれているのか等,次の課題に進むに当たって,また前文に戻っていくことになります。
したがって,デジタル教科書とデジタル教材,紙の教科書の三つを使って学習をすることで,大変効果が現れるようになります。
8ページを御覧ください。何となくもやもや考えているものを,以上のようなツールを活用し,自分が書いたものを使って人に説明をします。「考えの表出」と書いておりますが,思考を言語化することが,「分かったつもり」から「分かった」への第一段階となります。
また,他の子供の書いていることと比較したり,情報を共有したりすることにもつながります。
9ページは先ほど申し上げた「本文抜き出し機能」を使用している画面ですが,抜き出している箇所が全く違う友達の考えと比べることができます。
先ほど抜き出していなかった第2段落と第3段落を比較上下段にし,更にまとめの8段落を抜き出しています。教科書上で2段落と3段落,飛んで8段落を同じ場所に示すことは不可能です。これは,デジタルならではの比較の思考を促す見せ方かと思います。更に写真等も抜き出し,自分の考えを構築していく段階になります。
次に10ページを御覧ください。デジタル教材を使って抜き出した画面を,今度はグループではなく学級全体に共有するために大型提示装置に転送しています。自分のつくったものを大きな画面に映し,同じ画面に映っている友達の考えと比べながら説明をしていく様子です。
特に中学年以上の国語の授業では,最初はついてきていても,だんだん休憩モードに入る子供が出てきます。「読む」授業では,分かっている子供だけが授業に参加することなりがちですが,デジタル教科書やデジタル教材を使うと,今どの文を表しているのか,どこの説明をしているのかが視覚的に分かるので,授業への参加度が上がっていきます。
ここまでは,上巻の教材でしたが,11ページは下巻の教材です。紙の教科書の場合,上巻は家庭に置いてあるのですが,デジタル教科書の場合,上下巻ともにタブレットに入っていますし,上巻の学習の際に自分でサイドラインを引いて説明をしているので,「今回もまたサイドラインで何か説明ができそうだ」と子供のほうからアクションを起こしていきます。
写真は「中」の事例部分までスクロールした画面です。この文章では,大豆が様々なものに姿を変えます。「『中』の事例はどんな順序だろう」と考えて,だんだん青いラインが増えていきます。子供たちが自分たちの引いたサイドラインを基にして,筆者が「このような順序で説明しています」と書いていないものに気づきます。「論理の視覚化」と書いていますが,前の既習事項と関連づけ,更にもう一歩先の論理の視覚化を使って,知的たくましさ,「学び方」を学んで学習を進めるということは,デジタル教科書ならではの在り方です。
12ページを御覧ください。今,「すがたをかえる大豆」という説明文を取り上げていますが,デジタル教材に入っている試行ツールの機能を用いて,大豆を起点とする食品がマップ上に工夫して整理されています。中学年以降,特にデジタル教科書にデジタル教材を組み合わせながら学習していくことが,汎用性のある思考力の育成に有効です。
13ページを御覧ください。先ほど,「論理」の文脈で本文抜き出し機能を取り上げていましたが,この機能は要約力にも結び付きます。要約力は,中学年以上になると,基礎的技能としてとても重要です。これまでも,子供たちはノートに要約してきました。ただ,友達と交流をする中で,「自分の書いたものはどうも違うな」と思ったときに,特に学力の低位な子供ほど,「もう書き直したくない」,「書き直すのが面倒」と思ってしまい,決定したものをノートに記しません。そうすると,要約力という基礎的技能が身につきません。デジタル教材の本文抜き出し機能を使うことで,最終的に自分の考えを校正,修正してノートに書くという技能が身につきます。また,資料に「何で上下2段にしてるの?」と書いておりますが,ただ要約するだけではなく,「この置き方によって自分や友達は一体どういうことを考えているのだろう」と考えることも思考力の育成に関わります。
このように,授業デザインとして考えたときに,単に読解力を育てるということではなく,思考力も育てることができると考えております。
14ページを御覧ください。一番下に「課題」とあります。まず発問が全員に共有されます。デジタル教科書では修正が容易ですので,共有された瞬間に子供たちが思考し,主体的にアクションを起こします。
次に試行錯誤の段階です。個の考えを表出した後,何度もやり直しながら試行錯誤します。
以上の段階は,図のグリーンの囲みのとおり,「動的思考」であり,特にデジタルが有効な部分です。子供たちはとにかく,どんどん動かします。友達の発言を聞きながら修正を加え,考えを修正していきます。
ただ,ここの動的思考だけでは,「分かったつもり」になっているだけで,本当の意味での「分かった」にはなりません。また,学力が低位な子供ほど,画面を触っていることで「学んだつもり」にもなりがちです。
そこで,次の段階で一度立ち止まって「静的思考」,すなわち立ち止まって考えを振り返ります。静的思考により,具体的であったものを抽象化・普遍化し,別の文章でも使える力になっていきます。考えをまとめたり,整理したりするときには,紙の教科書やノートに言語化して書き留めるということが大事になります。この段階で「分かったつもり」から「分かった」という確かな理解につながっていきます。
次の15ページでは理想像を示しています。学習支援システムです。先ほど,「大型提示装置に映す」と申し上げましたが,このようなシステムが各教室に入りますと,教師側の画面で,誰がつまずいているのか,誰から指名していくのが良いか,今日の授業をどのように組み立てると良いのかといった授業デザイン等もしやすくなります。金額的な問題もありますが,将来的にこのようなシステムが入ると良いのではないかと思っております。
16ページを御覧ください。先ほどから申し上げておりますように,何ページにもわたる文章の場合,「全体を見渡す」ということがとても大切になります。先生方は全文を映したり,縮小コピーをしてB4やA3の紙にまとめたりします。デジタル教材であれば,そのような作業が不要になります。
このようにデジタル教材とデジタル教科書を組み合わせることで,今後,紙とデジタル教材とデジタル教科書が効果的に使われるのではないかと思っています。
赤字の部分は,先ほどの白井委員からのお話とほとんど対応しているのではないかと思います。
最後のページを御覧ください。国語の授業でデジタル教科書を活用するに当たっては,まず授業観を考えていく必要があります。試行錯誤する時間を確保する分,従来の授業構成や時間配分を見直す必要があります。
また,教師主導から学習者主体の授業へ,授業観を180度変えられないと,子供がどんどん動かすことに対して,子供がどんどん勝手なことをするという印象を持つ先生方も増えてくると思います。どこまで子供に委ねるのか等を判断するためには,教材研究が重要になってきます。
留意点として書いておりますが,デジタル教科書には「分かったつもり」に陥らせる危険性があるということを認識して授業を進めていく必要があります。
その他,現在,「『デジタル教科書』か『紙の教科書』か」といった二者択一の議論になっておりますが,先ほど申し上げたとおり,全文を1枚のシートに表すということは,画面の大きさに限りがあるデジタルでは難しいです。紙の教科書の見開きであれば全文が見られるものを紙ベースで学び,より分量が多いものについては,本文を抜き書きできるツールを備えたデジタル教科書・教材で学ぶといったように,議論の対象を,「現行の紙の教科書か現行のデジタル教科書か」というものから一歩進める必要があるのではないかと考えております。
最後に,「大型提示装置への転送」から「学習支援システムの導入」へ,ということも,理想的なものではございますが,考えていけると良いのではないかと思っております。
以上です。
【堀田座長】 白井先生,青山委員,ありがとうございました。
続きまして,異なる視点からの御発表になりますが,デジタル教科書とデジタル教材との連携を,これまで技術的な見地から取り組んでいらっしゃる白鳥委員より,資料6に沿って御説明いただきます。白鳥委員,よろしくお願いいたします。
【白鳥委員】 Lentranceの白鳥です。よろしくお願いいたします。
私からは技術的な側面で,デジタル教科書とデジタル教材の連携に関する現状と課題,そして今後,横断的な連携を加速させるためにはどのようなことが考えられるのかをお話しさせていただければと思います。
第1回会議において,デジタル教科書の効果を引き出すにはデジタル教材との連携を広く行うことが必要ではないかという御意見や,教育データの標準化とも深く関わる事項であり,教育データの利活用の観点も含め総合的な検討が必要ではないかという御意見がございました。
デジタル教科書・デジタル教材の連携や一体的な活用については様々な論点や観点があると思いますが,学びを広げ深めるための横断的な連携や一体的な活用は,今後一層望まれていくと考えております。
資料2ページ目に,教師・児童生徒自身がデジタル教材を自由にリンクさせて活用する場合のイメージを載せています。連携の方法は様々あるとは思いますが,デジタル教科書本文に,自身が作成した資料や教材のリンクを,付箋等により貼りつけておき,参照するときに,そのリンクや付箋をタップして資料を表示するという活用方法のイメージになります。
操作の方法は様々ですが,既に利用者自身がリンクを設定する機能を持つデジタル教科書やビューアーシステムも出てきております。
今後,1人1台の環境やオンライン環境が整っていくと,例えば先生が準備した資料のリンクを,受け持っている児童生徒のデジタル教科書に送り,オンライン授業の中で参照させる等,活用の幅が更に広がっていくのではないかと考えています。
続いて3ページ目は,共通のコードを用いたデジタル教科書と多様な教材との横断的な連携・一体的な活用のイメージになります。
こちらの図は,「教育データの利活用に関する有識者会議」の学習指導要領のコード化に関する資料の抜粋です。学習指導要領に体系的なコードを割り振り,そのコードをキーに,デジタル教科書・デジタル教材という学習ツールや博物館のデジタルアーカイブ等を関連づけさせて連携するイメージです。
ここでは,デジタル教科書の中で,織田信長に該当する箇所を押すと,織田信長に関連するデジタル教材・問題集,資料等が自動的に連携できることが図示されています。学習指導要領コードにひもづくものであれば双方向から参照できるようになるのではないかとも思っております。
このような体系的なコードがありますと,リンクごとの行き先をマッチングさせることがシステマチックに行えるようになりますので,サービスの提供や教科書発行者をまたいだ横断的な連携が行いやすくなるのではないかと考えております。
もちろん共通のコードを用いない場合でも横断的な連携を実現することはできると思いますが,発行者のシステムごとに個別に仕様を取り決めて連携させる必要が出てきますので,共通コードの活用は,様々なシステムを横断的に結びつける上では重要な要素になってくると考えております。
また共通のコードについて,システム間でどのような連携をさせるかがポイントになってまいります。4ページで技術的な連携方法を示しております。
様々な実現方法が考えられますが,ここでは3つ示しております。それぞれ長所,短所,課題がありますので,一つずつ御説明させていただきます。
まず,「A.単一システム内で連携」は,一つのクラウドシステムからデジタル教科書・教材を配信し,システム側でそれぞれ連携させるイメージになります。既に連携機能を備えているデジタル教科書・教材もございますが,単一のシステムから提供されているものが多いのではないかという印象を受けています。デジタル教科書・デジタル教材一体型のものや,独自のコードを利用し,事前にデジタル教科書・教材,双方向にリンクを埋め込んで連携させるようなケースがこちらに当たるのではないかと思っております。
長所としましては,単一のシステムですので,事前の作り込みや複雑で高度な連携が比較的容易です。その反面,このクラウドシステムから配信されていない教材への連携や,事後的に連携する対象を増やすことが難しいという短所があります。また,連携できるコンテンツの数が,このシステムから提供するコンテンツに限られてしまうという側面もあります。
次の「B.複数システム間で連携」は,サービス提供者や発行者をまたいで連携を行うイメージになります。デジタル教科書・教材は,それぞれのシステムから配信させて,共通のコードをキーとして,それぞれを連携させる構図です。現在発行されているデジタル教科書本文に2次元コード等を埋め込み,同一の発行者の教材を配信するシステムにリンクさせているケースも,この場合に当たるかと思います。
長所としましては,連携するシステムが2社,3社とどんとん増えていきますと,横断的に活用できる教材の数も比例して増えていきます。その反面,複数のサービス間でシステムを連携させる場合,システムごとに仕様やインターフェースの構築が必要となりますので,開発の期間やコストも,連携するシステムの数に比例して増えてしまうという短所があります。
対策としましては,学習指導要領コード等の共通コードの活用と,共通のインターフェース,API等の実装を規格化して連携させるということが考えられます。
最後の「C.中央管理的な連携」は,中央で管理されたクラウドシステムがデジタル教科書・教材等の連携先の情報を一元管理する構成です。各社のクラウドシステムは,中央管理クラウドシステムに連携先の情報を問い合わせて,デジタル教科書の利用者にその連携先の情報を通知して活用を促します。
長所としましては,Bと同様,連携するシステムが増えますと,横断的に活用できる教材の数も比例して増えていきます。またBに比べて,システム連携先が1か所に限定できますので,開発のコストや期間も相対的に下がります。
一方,中央管理クラウドシステムは誰が開発するのかという課題があります。また,連携の方法が画一的になった場合,デジタル教科書・教材の高度な連携が相対的に難しくなってしまうことが考えられ,個々の特性を生かせるような拡張性が必要になると思っています。
5ページ目に,これまで御説明しました3つの連携方式を相対比較した表を載せております。連携するシステムが増えれば増えるほど横断的な活用の幅も広がってきますが,どの方式を採用するにしても,システムの開発は必要になってまいります。特にシステム間の連携を行う場合は,その連携するシステムの数に比例してコストがかかります。
そのため,今後システム面における連携の構造の共通化も重要な要素になると考えています。
例えば,ウェブの標準化活動等ではよくある例ですが,共通の仕様や共通の機能を広く普及させることを目的とし,標準化団体やコミュニティーの中で共通の仕様やインターフェースを定義するだけではなく,その活動に参画している企業やコミュニティー自体が,仕様の先行実装を行い,実装したものをオープンソースとして一般に公開することがあります。
オープンソースのソフトウエアですので,広く自由に利用することができるようになりますし,利用した各社は開発期間の短縮等も図ることができます。
オープンソースのモジュールに機能が追加されれば,利用者は一様に恩恵を受けることもできます。
デジタル教科書・デジタル教材の横断的な連携を短期間で実現させることはとても難しいと思いますけれども,今後,システムを取り巻く環境の整備も一層重要になると考えております。
私からは以上になります。
【堀田座長】 白鳥委員,どうもありがとうございました。私から一つだけ質問させていただきます。最後に言及のあったインターフェースの定義とオープンソース化については,デジタル教科書というよりも,ビューアーやプラットフォームの話になるのでしょうか。
【白鳥委員】 両面あると思っています。システム間のビューアーやプラットフォーム同士をつなげるための共通化・実装とオープンソース化という面に加え,デジタル教科書とシステム,デジタル教科書とビューアーをつなげるためのインターフェースという面も考えられると思っております。
例えばデジタル教科書もしくは教材でドリルを解いた際の正誤結果をどこに保存するのかという問題があります。ビューアーもしくはプラットフォームと連携して保存する必要のあるケースでは,コンテンツとプラットフォーム,コンテンツとビューアーの連携というところも検討が必要になる場合もあろうかと考えております。
【堀田座長】 ありがとうございました。
中野委員,お願いします。
【中野委員】 御説明ありがとうございました。ユーザーインターフェースについても統一化を図っていくということは非常に重要だと思います。今回は,どちらかというとコンテンツに寄った話をしていただきましたが,ユーザーインターフェースの統一化というのも,可能性としてはあるのでしょうか。
【白鳥委員】 はい。あると思っております。先ほどの資料の4ページ目の「A.単一システム内で連携」のようなケースでは,同じシステムから教材を配信しますので,ユーザーインターフェースの統合が比較的容易なのではないかと思っております。
ただ,全くシステムが別になってしまった場合には,それぞれのシステムのユーザーインターフェースになるということになるかもしれません。そうすると,個別に連携,開発することが必要になります。
一方,コンテンツ自体の相互運用性というところを担保できれば,デジタル教科書のコンテンツを他のシステムに乗せて,そこから配信するという形も考えられると思っております。
【中野委員】 先ほど先生方の御報告にもありましたが,教科が変わったときにユーザーインターフェースが変わってしまうと,子供たちの混乱を招くことになります。特に特別な配慮を必要とする子供たちの場合には,そこで混乱してしまう可能性が非常に高いと思いますので,ぜひコンテンツとともに,ユーザーインターフェースの統一化についてもお考えいただけるとありがたいと思います。
以上です。ありがとうございました。
【堀田座長】 ありがとうございました。今の中野委員の御発言は,ユーザーインターフェースについても統一の方向に向かうべきだという御意見と理解いたしました。白鳥委員だけではなく,全員で考えなければならないことだと思いますし,教科書採択とも関係することかと思います。
ここからは,意見交換とさせていただきます。先ほど事務局から説明があったように,本日は主に資料2に記載の三つのポイントのいずれかについて,ぜひ御意見を頂きたいと思います。まず宮原委員,お願いいたします。
【宮原委員】 本日はありがとうございます。
前回も「紙の良いところとデジタルの良いところを組み合わせるべき」ということをお話しいたしましたので,資料2の1点目に関し,紙の教科書とデジタル教科書のどの特徴をどのように組み合わせると良いのかという点について意見を述べさせていただきます。
白井先生と青山委員からの実例を伺っていると,デジタル教科書で十分事足りていると聞こえます。幾つか,私自身も「アナログでないといけない」と納得したのは,ノートを取る,黒板に書いてあることを聞く,あるいは書き留めるといった点と,教科書である必要はないかもしれませんが,真新しい教科書や本をもらったときの子供たちのわくわく感,また,教科書にたくさん書き込んで,使い終わったときの達成感は,紙に教科書ならではだと感じました。
そのように考えると,デジタル教科書が得意なところはこれまでに御説明いただいたとおりなのですが,紙の教科書が得意なところはどこなのかという点が,今回の事例を伺っていてもよく分からないという印象を受けました。ノートや辞書,地図帳のように1学年で終わらないもの,何年もかけて使うようなものや,ノートについては,紙と鉛筆が良いのではないかという印象を持ちました。
また,企業の立場から申し上げますと,デジタル教科書・デジタル教材の活用に当たって気をつけなければならない点は,すぐに正解が出てきてしまいやすいところです。探索できるというのは良いところですが,様々な意見等を瞬時に探索できてしまうと,探索をすることに対する苦労を経験しづらくなります。昨今,一番近道の正解を求めようとする若い人材がかなり多いです。これからもっと変化が激しくなる中で,正解のない世界を生きていくに当たり,正解を求めて様々な道筋を探索できるようになるためには,紙とデジタルをどのように組み合わせると良いのかということを考えなければならないと思います。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。続いて柴田委員,お願いします。
【柴田委員】 東京福祉大学の柴田です。資料2の一つ目のデジタル教科書と紙の教科書の利点に関して,特に健康面に関わる観点から申し上げます。デジタル教科書の利点として,拡大表示ができるという点が挙げられるかと思います。紙の場合,細かいところを見たいときには目を近づけるという行動をしますが,デジタル情報を用いて拡大表示ができることによって,目を近づけなくても,見たい細かいところまでしっかり見られるという利点があると思っています。
本日,中川委員と事務局より御発表いただいた資料3の御報告の中で,良い姿勢ができていたり,体感として画面から目の距離を30センチ以上離せていたりすると,目の疲れをあまり感じていないという傾向が見られていました。それは,子供自身に,姿勢を正しくし,視距離を取ることによって疲労が減るのだという意識・自覚が生まれる点で,非常に良いことではないかと思います。
ただし,「視距離を取っていると自分が思っていること」と実際の視距離とは異なる場合もありますし,主観的な疲労感と,客観的・生理的な疲労とは異なる場合もあるので,教員側が子供たちの様子をしっかりと見るというところは留意していく必要があると思いました。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。続きまして清水委員,お願いします。
【清水委員】 PTAの清水です。私も資料2の1点目に関わる話になります。本日の白井先生の御発表資料4に,様々なキーワードがありますけれども,やはりデジタルに偏った形ではなく,アナログの部分としての紙のツールというものは非常に大切だと思います。
デジタルに偏り過ぎてしまいますと,特に小学生はどうしてもさくさくと動かすのみでなかなか頭に残らず,学習内容があまり身につかないのではないかという懸念もあります。何より,アナログであれば,子供たちが家庭に帰ったときに,「こんなことを勉強した」,「こんなことをノートに書き留めてきた」というところを親が見て,「今ここで,こんなことで悩んでいるのだな」,「今こういうことでつまずいているのかな」と気づくことができます。デジタルの部分のみが進み過ぎてしまうと,親が子供の勉強面の遅れ,つまずきを非常につかみづらくなるのではないかと非常に懸念しております。
以上です。
【堀田座長】 貴重な意見ありがとうございます。続きまして福山委員,お願いいたします。
【福山委員】 まず健康面では,本日も話がありましたが,やはり「1時間使ったら10分休む」等,何かしらの指針やガイドラインは必要かと思っております。
また,本日,資料3の実証研究に係る御説明の中で,「指導上の困難はない」ということが挙げられておりましたが,様々な学校があり,様々な児童生徒がおりますので,なるべくストレスのない操作性を常に追求し,インターフェースも分かりやすいものにしていくということが必要かと思いました。
特にデジタル教材につきましては,協会等を設置し,ICTの専門家だけではなく,幅広く教育の関係者も含めて検討していかなければならないのではないかと思います。
最後に,白井校長先生の発表の中でありましたが,デジタル教材の活用に当たっては費用負担が非常に心配で,毎年,保護者の負担金調査をやっております。今年度,本校の1年生の保護者の副教材の費用が3万1,000円となっております。この3万1,000円に,更にデジタル教材の費用がかかるとなると,教員に対してのみならず,保護者に対してもデジタルの良さを伝えていくことがとても大事になってくるかと思っております。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。河嶌委員,お願いいたします。
【河嶌委員】 柏市教育委員会の河嶌と申します。発表いただいた方々におかれてはありがとうございました。
今もお話がありましたが,費用負担の面が出てきます。市としても多額の費用を投資しなければならないのですが,白井先生,青山先生が実際にデジタル教科書を活用した授業をされて,データを集める中で,同じ単元でデジタル教科書を使ったグループと使わないグループの定着度の違いがあれば,お話を聞かせていただければと思います。
また,全ての先生方が使うとなると,操作性の問題があると思います。発行者によってユーザーインターフェースが違うと混乱を招きますので,できるだけその統一をしていただきたいということが我々からの要望です。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。片山弘喜委員,お願いいたします。
【片山(弘)委員】 よろしくお願いいたします。本日は貴重な発表ありがとうございました。2点,述べたいと思います。
1点目に,デジタル教科書と紙の教科書の利点について,デジタル教科書を使うと,内容の提示が容易なため,児童生徒の実態に応じた指導がすぐにできると感じております。
更に,学習する内容を並べ替えることができると,より児童生徒に応じた指導ができるのではないかと感じております。
また,先ほど「ノートは使うのが良い」という意見がありましたが,私も同様に考えております。学習課題の提示や学習のまとめについては紙のノートも使いながら進めていくことが良いのではないかと感じたところです。
また,御発表の中で,個人やグループ等の学習活動や検討の場面でデジタル教科書を使われる際に,試行錯誤を何回もすることができるという利点が挙げられていましたが,その試行錯誤の成果,「何を考えていたか」が残らない点が課題かと思います。振り返るときに,どのような考え方をしたのかということが自分でも分かると,より良く学びが進められるのではないかと感じました。
2点目に,資料2の三つ目「主体的・対話的で深い学び」というところについて,まず「主体的」に関しては,見通しと振り返りが重要だと言われます。ツールを用いてデジタル教科書の本文を切り取ることができると,単元内で学ぶ項目だけを表示することで,学習の見通しが持てます。更に,先ほども申したとおり,自分の思考の過程を振り返ることができると,主体的な学びにつながるのではないかと感じております。
また,「対話的な学び」については,デジタル教科書に書き込んで,クラスメートとやり取りをすることで,非常に充実した学びができると感じました。
最後に「深い学び」に関して,デジタル教科書・教材の中に見方・考え方を働かせることができる資料がそろっていても,教師やほかの子供との関わりは必要ではないかと感じているところです。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございます。赤堀委員,お願いいたします。
【赤堀委員】 失礼いたします。3点お話しさせていただきます。
1点目に,現在,全国の学校におけるGIGAスクール構想に向けた進捗状況には大変大きな差があります。1人1台端末環境の実現に限りなく近づいていくことが,デジタル教科書・教材のさらなる充実・発展につながっていくのではないかと感じたところです。
2点目に,これまでも何度か話がありましたが,本校を含め,デジタル教科書を使いこなしている教員はまだ少ないという実態があります。大変進んだ実践を伺って感銘を受けましたが,それぞれの教員がそのレベルに到達するには,やはり慣れが必要ですし,更には操作性に関しても,ぜひ今後の開発に際しては配慮をお願いしたいと思っているところです。
3点目に,学校の教育においては,書くことを学ばせて,そこで考えさせるということをとても大切にしてきておりますし,これからも変わらない部分はあると感じています。現行ではデジタル教科書を使用できる授業時数の基準が2分の1未満という話もありましたが,この数字をどのように変えていくかということは非常に難しいと思いました。現在,SNSが進んで,子供たちは操作が非常に上手なのですが,学校現場にいる者としては,それだけで良いのかということをこれからも考えていきたいと思いました。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。片山敏郎委員,お願いいたします。
【片山(敏)委員】 お願いいたします。本日,青山委員の実践から,デジタル教科書だけではなく,デジタル教材との連携が非常に大事なのだということを非常に勉強させていただきました。抜き出し機能や思考ツールとの連携等があって初めて自律型の学びになっていくのだなと思いながら拝聴していました。
これから統制型の授業モデルではなく,子供がどれだけ教科書等のツールをうまく活用しつつ自己調整しながら学んでいくかということが大事になると考えると,デジタル教科書の作り方が非常に大事で,更に,デジタル教材とどのように連携させていくかが大事だということを,非常に感じました。
白鳥委員から提示いただいたA,B,Cの三つのタイプのうち,どれであれば,一番連携が汎用的な形で実現していくのかというところを考えていきたいと思いました。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。
平方委員,お願いいたします。
【平方委員】 資料を拝見し,お話を伺いながら,果たしてデジタル教科書と紙の教科書の利点を出し,比較して検討していくことにどういう意味があるのであろうという疑問を持ちました。既に世界はデジタル化がどんどん進んでいて,「デジタルトランスフォーメーション」とまで言われて,様々な分野で変革が起こっています。教育も,変わらないはずがありません。私立学校の経営もそうですが,教育の中身まで変わっていきます。したがって,デジタル教科書ありきでどんどん進めていかないといけないと思っております。
本日発表してくださった方たちの真摯な取り組みに感謝いたします。
最後に,前回もお話いたしましたが,果たしてZ世代である今の生徒たちについて,生徒とは世代の異なる学校のX・Y世代の教師がどこまで理解できるのかと言えば,近づくことはできても,完全に理解することは永遠にできないと思います。ましてや親の世代も絶対にできないでしょう。そういう研究もやらなくて良いのでしょうか。
また,教科書の中身よりも,デジタル教科書はどのような学びに有用なのか,指導をどうするかということを検討して初めて,良い授業,良い学びができるのではないかという感想を持ちました。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。加藤委員,お願いします。
【加藤委員】 よろしくお願いします。簡単に二つお話しさせていただきます。
自分の考えをまとめて書くに当たっては紙が良いという点は,これまで行ってきた実践に鑑みても,同意しております。ただ一方で,私もそうなのですが,手書きよりもキーボードのほうが考えをきちんと書いていける場合もあるのではないかと思っています。青山委員も言われていましたが,道具が増えたという考え方で,使いたいときに使えるという環境を用意できると良いのではないかと感じました。
もう一つ,白鳥委員から共通コードの話がありましたが,教科書・教材のひもづけにはそのような共通コードがあるとコストも下がり,とても良いのではないかと思いました。ただ,子供が使う際のデジタル教材の連携をイメージしたときに,例えば,ある問題をクリックするとそれに関連する問題が出てくる,ある写真をクリックすると関連する動画が出てくるといったひもづけにおいては,コードの粒度がとても重要になってきますが,共通コードでは,その細かさを表現し切れないのではないかと感じております。コストを下げる仕組みも重要ですが,使い勝手も考えたひもづけの仕組みを考えていければ良いのではないかと思いました。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。黒川委員,お願いします。
【黒川委員】 今日はありがとうございました。ビューアーやインターフェースの統一のお話が出たので一言,発行者の立場から申し上げます。
デジタル教科書は,現在使用され始めたばかりですので,まず現場でお使いいただき,そこでの課題等をもとに,ビューアーやインターフェースの統一についても御検討いただいたほうが良いのではないかと思います。早急に議論を進めなくてはならないとは思いますが,まだ活用が進んでいない中で「統一しなければならない」という議論が先行することは望ましくないのではないかと感じています。
本日白井委員や青山委員からもすばらしい御発表がありましたが,そこには教科特性というものがあるかと思います。ビューアーやインターフェースを統一してしまうと,この教科特性を生かすことが技術的に難しくなってしまうのではないのかと考えております。
例えば本日お話のあった国語の文章をスクロールすることで全文を見るといった機能を実現するには,独自のビューアーが必要です。今まで現場の御意見を踏まえ積み重ねてきた良さが全部失われてしまうという危険性もはらんでいるので,非常に慎重に進める必要があると思います。
ただし,中野委員からお話があった特別支援のフレームに関しては,ビューアーが違っても同じような扱いで操作が可能になるよう,発行者間で力を合わせながら更に調整を進めてまいりたいと思います。
また,教科書と教材の連携に関して学習指導要領による共通コード化の問題がありますが,これは加藤委員がおっしゃったとおり,実際の活用に当たって,粒度の粗さが気になります。今後,子供たちがどのような教材やコンテンツを選べるのかという問題も出てきますし,初めに指導計画ありきという授業デザインになってしまうがあると思いますので,ここも慎重に検討できればと思っております。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。中野委員,お願いします。
【中野委員】 ありがとうございます。二つだけコメントさせていただきます。
まず1点目に,先ほど黒川委員からお話があったインターフェースに関する話について,必ずしもビューアーが統一される必要性はないと思っていますが,特別支援の観点から言うと,異なるシステムが共存できる必要性はあるかと思っています。
例えば,それぞれの障害特性に応じたOSが選択できるよう,将来的にはOSの違いも共存できるような仕組みにしていく必要性があるだろうと考えています。
また,GIGAスクール構想により導入される端末も,現在様々な相談を受けておりますが,一つの学校で全部同じ端末にしてしまうと,特別支援の観点では障害特性により困ることが出てくるかと思っています。
2点目に,「主体的・対話的で深い学び」という観点で考えると,教室での学びだけではなく,家庭での予習・復習も非常に重要になってくるかと思います。ここでも家庭の端末と学校の端末の違いが出てきたり,OSの違いが出てきたりする可能性がありますので,そういったことに関する検討や,学校で行った自分の学びを,家庭での予習・復習のための端末に転送できる機能が必要なのではないかと思います。
加えて,著作権法上の話になりますが,例えば学ぶ最中にスクリーンショットをし,画面に書き込んだ情報を私的利用することが可能なのかということについても,厳格なルールづくりをやっていかないと,現場に混乱が生じるのではないかと思いました。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。それでは中川委員,お願いします。
【中川委員】 よろしくお願いします。先ほど河嶌委員から紙とデジタルの定着度の比較について話がありましたが,先ほど御説明した実証研究の報告書に,実証研究校である戸田東小学校のノート評価や,近畿大学附属高等学校における小テストの実施における紙とデジタルの比較データがあります。ホームページ上にも公開されておりますので,ぜひそちらから詳細な結果を御覧いただければと思います。
また,紙かデジタルかという話について,先ほど調査研究の報告のときに,慣れの問題が影響していたということをお話ししました。本来,デジタル教科書の効果は,より長いスパンで測るべきだと思っております。長期間の実証による結果は,いずれ調査研究等で明らかになるのではないかと思っております。また,機能や特性に鑑みると,紙かデジタルかどちらに利点があるのかということだけで考えるのではなく,具体的な活用場面でどうなのかという観点で見ていく必要があるのではないかと思っています。
例えば,デジタル教科書は,先ほどのお話にもありましたが,書いたり消したりが非常に簡単にできます。しかし,書いたり消したりした履歴が残らないというところもあり,それが具体的な学習場面で良くもなり,悪くもなります。また,特にデジタル教材には,非常にインパクトのある動画が多く入っていますが,先ほどお話があったように,たくさん見ると「分かったつもり」になることも起こることはあります。このような具体的な活用場面で議論をしていくことが,これから必要なのではないかと思っています。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。青山委員,お願いします。
【青山委員】 よろしくお願いいたします。大きく2点です。
1点目に,今の中川委員のお話に続いているところもございますが,紙の教科書を使っているときに,私たち教員は,いかに子供たちにアクションを起こさせるか,主体的に学ばせるか,すなわち動的思考をどう起こすかということに注力しています。それが,デジタル教科書・教材を使った瞬間に,子供たちの思考は非常に動的になります。そうすると,今度は「分かったつもり」,「勉強したつもり」になってしまう場合があるので,いかにそれを静的思考に持っていって,深い学びに持っていくかということに注力する方向が変わっていきます。その点で,紙とデジタルを組み合わせることが重要だと考えています。
2点目に,家庭への端末の持ち帰り,あるいはクラウドや,転送機能の活用の可否によって,デジタルを使ったときの学びの深さは違ってきます。今,子供たちは端末を持ち帰ることができないため,「ここまでは学校の授業で確かめた」というところを必死にノートや紙の教科書にメモして帰り,もう一度家庭で勉強してくるということが行われております。データを家に持ち帰れるかどうかということも含め,考えないといけないのではないかと思っております。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。白鳥委員,お願いします。
【白鳥委員】 本日,白井先生のお話を伺っていて,1点,印象に残った点がありました。それはインストール作業です。先生が放課後作業されているということを聞き,特に年度の変わり目等,非常に大変な思いをされているのだと感じました。
一方,インストール型ではなく配信型になれば楽になるのかと言うと,作業は必要なのだろうと思っています。校内にサーバーセットアップすると,その後のメンテナンスも必要です。また,ブラウザーでオープンなクラウドでも,児童生徒が入学すると一人一人のアカウントが必要ですし,進級や卒業への対応も必要だと思います。作業負担はゼロにはならないかもしれませんが,オンラインになることによって少しは簡便になるのではないかと思っておりますし,そういう簡便なシステムが求められるのであろうと思いました。
以上になります。
【堀田座長】 ありがとうございました。
それでは東原座長代理,お願いいたします。
【東原座長代理】 本日,改めてデジタル教科書のすばらしさ,可能性をお話しいただいて,明るい気持ちになりました。しかし,よく考えてみますと,お話に挙がっているのは,法令上定義されている学習者用デジタル教科書のみによる利点ではなく,デジタル教科書というものの潜在性によって出てきた利点かと思います。もっと具体的に言えば,ビューアーの機能や,連携して動いているデジタルワークシートの機能,協働学習ツールがあるからこそ,本日のような紙と比較する話が出てきたのではないでしょうか。
そのことは,長期的には,デジタル教科書の定義を変えたほうが良いのではないかということを示唆されているのではないかと感じておりました。
短期的には,これから各発行者が様々なデジタル教科書を作ってくださると思います。本日御発表の中で挙がった利点は,デジタル教科書・教材そのものによる利点に加えて,青山委員,白井先生のようなベテランの先生の実践による利点でもあります。全ての発行者が,全ての利点を網羅できるような機能,潜在性を持ったものを作るためには,本検討会議の議題ではないかもしれませんが,ビューアーやデジタルツールの機能として最低限備えるべき基準を示した上で「利点があります」と言わないと,今後混乱を招くのではないかと感じました。
最後に,これまで議論してきたデジタル教科書は,GIGAスクール構想による1人1台端末環境を前提としていなかったのだとつくづく思っています。つまり,これまで議論してきたものは,コンピューターを皆で共有していて,自分が使うときだけそのコンピューターを使うという前提でした。
私が研究してきた中で,これまでの前提の下では強調してこなかったツールがあります。それはデジタルノートです。
極端なことを言えば,デジタルノートが,本日青山委員からお話のあったワークシートの機能であり,抜き出しもできます。デジタルノートとデジタル教科書を一体化させる,更に言えばデジタルノートを持ち歩き,その一部にビューアー機能があって,それによってデジタル教科書が見えるという作りのほうが良いのではないかと感じました。
ここまで検討してきたものの延長だけではなく,長期的には,1人1台を前提として整理し直してみると良いのではないかと思っています。
どうもありがとうございました。
【堀田座長】 ありがとうございました。白井先生,お願いします。
【白井氏】 本日は発表の機会をいただきありがとうございました。青山委員の国語での実践を聞き,教科によっても使い方が違ってくるのだなと思いました。
学習者用デジタル教科書が学校のデフォルトになれば,それぞれの教科で,使い方がもっともっと洗練されていき,もっともっと良さが引き出されていくのではないかと思っています。1日も早く,学校現場で子供たちにとっても先生たちにとっても使いやすい学習者用デジタル教科書が普及すると良いなと思っております。今日はありがとうございました。
【堀田座長】 ありがとうございました。
私からも最後に一つだけ申し上げたいと思います。
本日は紙とデジタルの良さを改めて考えてみて,ほとんどのことはデジタルでもできるということが分かったというのが共通の認識かと思います。ただ,それには慣れが必要なので,過渡期には紙もデジタルも両方使うということが現在の結論だと思いますが,中期的には,他の様々な業界と同じように,いずれはフルデジタルになるということが考えられるのではないかと思います。
そのときに,これまでのデジタル教科書の紙の教科書と同一という現在の定義を,いつまで維持するかということについては,考え直さなければいけない可能性があります。この定義は,検定や無償給与等,様々なことに鑑みて定められています。デジタル教材との連携が非常に重要だという御指摘が多くありましたが,それはデジタル教科書のコンテンツの部分ではなく,それを動かしているプラットフォームやビューアーの話です。そうすると,その辺りの標準化やデータフォーマット,データ連携の仕方等を議論せずにデジタル教科書の議論のみを行っても,中途半端になってしまうのではないかと感じています。
この点につきましては,「教育データの利活用に関する有識者会議」という会議が別に立ち上がっていますので,そちらの有識者会議とうまく連携しながら検討を進めていくことが非常に重要だと考えています。
最後に次回以降のスケジュールにつきまして,事務局よりお願いいたします。
【季武課長補佐】 資料7を御覧ください。次回以降のスケジュールを説明させていただきます。
第3回は,8月25日16時から開催させていただきます。開催方法等については改めて御連絡いたします。
議題は「教科書のアクセシビリティ等についてヒアリング・意見交換」ということで調整をしております。現時点では,特別支援教育の観点で中野委員等から御発表いただくほか,日本語に通じない児童生徒の観点で齋藤委員から御発表いただくという形で進められればと考えております。
また第4回については,9月23日の16時から開催予定です。
引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
【堀田座長】 ありがとうございました。
それでは,本日の会議は以上といたします。本日もどうもありがとうございました。

―― 了 ――

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