デジタル教科書の普及促進に向けた技術的な課題に関するワーキンググループ(第1回)議事録

1.日時

令和3年7月15日(木曜日)14時30分~16時30分

2.場所

文部科学省東館3階 3F2特別会議室 ※Web会議での開催

3.議題

  1. 本会議における検討事項について
  2. その他

4.出席者

委員

大関委員、片山委員、加藤主査代理、近藤委員、下山委員、東原主査、渡部委員、榊原オブザーバー、白鳥オブザーバー、長谷川オブザーバー、三村オブザーバー

文部科学省

塩見大臣官房学習基盤審議官、板倉情報教育・外国語教育課長、中川初等中等教育局視学委員、神山教科書課長、度會教科書課長補佐、高見教科書課教科書企画官、安彦デジタル教科書基盤整備検討プロジェクトチームリーダー、佐藤デジタル教科書基盤整備検討プロジェクトチームサブリーダー、中居デジタル教科書基盤整備検討プロジェクトチーム専門官、松本デジタル教科書基盤整備検討プロジェクトチーム専門官

5.議事録

デジタル教科書の普及促進に向けた技術的な課題に関するワーキンググループ(第1回)

令和3年7月15日

【度會課長補佐】 ただいまからデジタル教科書の普及促進に向けた技術的な課題に関するワーキンググループの第1回会議を開催させていただきます。
本日は,皆様お忙しい中,御出席いただきまして,誠にありがとうございます。私は,教科書課課長補佐の度會と申します。本日は,第1回の会議でございますので,冒頭の進行を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
本日の会議につきましては,新型コロナウイルスの感染状況も踏まえまして,ウェブ会議方式としております。なお,主査の選任や会議の運営規則が決定するまでは非公開で進めさせていただきます。
それでは,配付資料の御確認をお願いいたします。本日の配付資料は議事次第のとおりとなっております。不足等ございましたら,事務局にお申しつけください。
それでは,開会に当たり,事務局を代表して初等中等教育局学習基盤審議官の塩見より一言御挨拶をさせていただきます。
【塩見学習基盤審議官】 初等中等教育局学習基盤審議官の塩見と申します。このたびは皆様,本ワーキンググループの委員をお引き受けくださいましてありがとうございます。また,お忙しい中,御出席賜り感謝申し上げます。GIGAスクール構想による児童生徒1人1台端末環境がこの4月から全国の小中学校でスタートしておりまして,子供たちの学びの環境が大きく変化してきております。こうした状況を背景としまして,デジタル教科書,教材の活用促進について,昨年度からデジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議におきまして検討をいただき,先月,第一次報告を取りまとめていただいたところです。
その中でデジタル教科書の今後の在り方につきましては,令和6年度からの本格的な導入に向けまして,本年度から行っております全国的な実証研究のこの成果も踏まえながら,今後より詳細に検討する必要があること,また,実証研究と並行いたしまして技術的な課題につきましても専門的な検討を進める必要があるということが示されているところでございます。このことを踏まえまして,このワーキンググループを設置させていただいたところでございますけれども,このワーキンググループにおきましては,デジタル教科書に標準的に備えることが望ましい最低限の機能や操作性,また,過年度のデジタル教科書を使用できるようにするための方策などにつきまして御検討いただき,技術的な課題の解決に向けて議論をお願いしたいと考えております。
デジタル教科書につきましては,その直接的な利用はもとよりでありますが,そこから得られる様々なデータの利活用ということも通じまして,教育の質の一層の向上を図っていくことが可能となるということ,またこのことを通じて新しい時代の学びのツールとして大きな役割を果たすということが大きく期待されているところでございます。委員の皆様方におかれましては,ぜひよりよいデジタル教科書の実現に向けまして,専門的な見地から積極的な御議論をお願いできればと考えておりますので,よろしくお願いいたします。ありがとうございます。
【度會課長補佐】
続きまして,委員の皆様を御紹介させていただきます。
一般社団法人教科書協会情報化専門委員会委員の大関委員,新潟市教育委員会学校支援課副参事・指導主事の片山委員,東京学芸大学ICTセンター教育情報化研究チームの加藤委員,東京大学先端科学技術研究センター准教授の近藤委員,信州大学名誉教授並びに一般社団法人教育情報化推進機構理事長の東原委員,一般社団法人日本図書教材協会理事・事務局長並びに一般社団法人全国図書教材協議会専務理事・事務局局長の渡部委員でございます。また,本日は遅れて御参加となりますが,一般社団法人リンクデータ代表理事並びに政府CIO補佐官の下山委員も含め,7名の皆様に委員として御参加いただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
また,本ワーキンググループにおいては,学習者用デジタル教科書の開発や配信等に関わる民間事業者様にもオブザーバーとして御参加いただいておりますので,御紹介をさせていただきます。
BPS株式会社取締役の榊原様,株式会社Lentrance取締役開発統括責任者の白鳥様,株式会社スーパーワン代表取締役の長谷川様,最後に富士ソフト株式会社プロダクト事業本部みらいスクール事業部事業部長の三村様でございます。以上4名の皆様にオブザーバーとして御参加いただきます。オブザーバーの方々には,本ワーキンググループにおける議決権はございませんが,本ワーキンググループにおける検討に当たりまして,専門的,技術的な御知見を賜りたいと考えておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。
続きまして,本ワーキンググループの主査の選任に入らせていただきます。事務局からは東原委員にお願いをしたいと考えておりますが,御異議ございますでしょうか。
(委員了承)
【度會課長補佐】それでは,本ワーキンググループの主査を東原委員にお願いさせていただきたいと考えております。東原先生,どうぞよろしくお願いいたします。
以後の進行は,主査でございます東原委員に司会をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【東原主査】 改めまして,東原でございます。どうぞよろしくお願いいたします。主査を務めさせていただくに当たり,一言御挨拶をさせていただこうと思いますが,その前に本ワーキングの運営につきまして,事務局から御説明をお願いいたします。
【度會課長補佐】 事務局でございます。
本ワーキンググループの運営規則の案でございます資料2をご覧ください。こちらに沿って御説明をさせていただきます。まず趣旨といたしましては,第1条のとおりでございます。第2条といたしまして,主査は本会議の議長となり議事を運営する。主査がやむを得ない理由により本会議の会議に出席できないときは,本会議に属する委員のうちから主査があらかじめ指名する者がその職務を代理する。第3条会議の公開に関しまして,本会議は原則として公開とする。ただし,本会議に属する委員等の自らの識見に基づいた専門的・学術的な審議及び率直かつ自由な意見交換を確保する必要があり,または審議内容に個別利害に直結する事項に係る案件を含み,主査が非公開とすることが適当と認める場合にはその一部または全部を非公開とすることができる。
第4条会議資料の公開に関しまして,本会議の会議資料は,原則として配付資料をホームページへの掲載等により公開する。ただし,審議内容に個別利害に直結する事項に係る案件を含む等,主査が非公開とすることが適当と認める場合には,その一部または全部を非公開とすることができる。最後に第5条議事概要の公開に関しまして,本会議の議事は議事概要等をホームページへの掲載等により公開する。ただし,主査が非公開とすることが適当と認める場合には,その一部または全部を非公開とすることができるとさせていただいております。
御説明は以上となります。
【東原主査】 では,本ワーキンググループの運営については,この案のとおりとさせていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。
(委員了承)
【東原主査】 ありがとうございます。では,本ワーキングの運営につきましては,資料2のとおりとさせていただきます。
また,この運営に沿って主査代理の指名をさせていただきたいと思います。私からは加藤委員にお願いしたいと思いますが,よろしいでしょうか。
(委員了承)
【東原主査】 ありがとうございます。では,加藤委員に主査代理を務めていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
では,ここで私から一言御挨拶を申し上げます。技術的なことを中心に扱いますこのワーキンググループは,非常に重要な役割を持っていると思っておりまして,皆様方の御協力がぜひとも必要でございます。特に児童生徒,そして先生方にとって使いやすいデジタル教科書にしていかなければならないと考えております。現在,全国的な規模での実証が行われておりますけれども,いろいろな声が聞こえてきておりまして,その課題もここで解決していくことができればと思ってございます。
使いやすいということが第一でありますけれども,そのことが技術の進展や,他の一般的なツール類のインターフェースの流れと大きく異なってしまってはいけないわけで,技術の進展にうまく沿って進みながら,しかし,ばらばらではない,良いものになっていくというために皆様のお知恵をいただきたいと思います。
主には機能や,操作性のことが今後議論されていくと思いますが,操作性といいましても,ボタンの位置をどこにするかや,イメージをどうしようかという点,それから,それを押したときに,次にどのようなことが起こるのかということが,現在各社多様でございます。どのようにしていけば良いかということを御議論いただきたいのですけれども,関係する方々が非常に多くございますので,皆様方の合意を得ていくプロセスも非常に重要だと考えております。どのようにしたら,より多くの範囲で皆様方の合意を得ていくことができるか,その進め方に関しましてもお知恵をいただき,また,御協力をいただければ大変ありがたく思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは,運営規則にのっとって会議を公開とさせていただきます。
(一般傍聴者入室)
【東原主査】 それでは,まず,資料3に沿って事務局から御説明をお願いいたします。
【度會課長補佐】 事務局でございます。資料3は本ワーキンググループにおける検討事項でございます。まず,概要から御説明をさせていただきますけれども,先月,取りまとめましたデジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議の第一次報告におきまして,以下に挙げるような技術的な課題については,ワーキンググループで専門的に検討する必要があるとされたところでございます。
その内容といたしまして,1点目が特別な配慮を必要とする児童生徒のアクセシビリティやユーザビリティを含む形でのデジタル教科書に標準的に備えることが望ましい最低限の機能や操作性等でございます。2点目がデジタル教科書の供給をクラウド配信により行う場合,一時的にオフラインでも使用できようにするための仕組みでございます。3点目が過年度のデジタル教科書を使用できるようにするための方策(ライセンスの期間や費用の在り方,使用のための仕組みなど)についてでございます。
ほかの分野における検討と関連する以下の事項につきましてもデジタル教科書の普及促進の観点から視野に入れることが重要であることから,本ワーキンググループで各事項の望ましい姿についても共通理解を得ることとしたいと思います。もちろん,詳細な実現方法につきましては,教育データ利活用をはじめとする全体の検討状況を踏まえながら,随時検討していくことになると考えております。
その内容といたしましては,デジタル教科書やデジタル教材の連携に資する学習eポータル等のシステムと連携するために,デジタル教科書に共通に備えるべき規格やデジタル教科書における学習指導要領コード等の附帯情報の付与の在り方,また,デジタル教科書の使用に伴う学習や操作の履歴等の記録の方法や保存場所の在り方などでございます。なお,機能や操作性等の一部の観点については,発達の段階によって求められる水準が異なると考えられることから,本ワーキンググループにおいては,既に普及が進みつつある義務教育段階を中心に検討することとしたいと考えております。
2点目,検討内容でございますが,まず先ほど申し上げましたデジタル教科書の普及促進に当たっての望ましい姿といたしまして,デジタル教科書の普及促進は児童生徒の学習環境をよりよいものに改善し,学校教育の質を高めることを目的としております。一方で,デジタル教科書の導入に当たってはライセンス管理に不可欠である児童生徒個人のアカウントの設定作業や,デジタル教科書以外も含めた様々なツールを学校で使用する際の円滑な切替えなど,ICTの活用に伴う新たな検討事項も出てきております。児童生徒の学びの充実を図るためには,学校において使用しやすい仕組みを確保しつつ,教科書のデジタル化のメリットを生かす形にしなければならないと考えておりますので,デジタル教科書の普及促進に当たっての望ましい姿について検討が必要であると考えております。
なお,先ほど申し上げましたとおり,詳細な実現方法については,教育データ利活用をはじめとする全体の検討状況を踏まえて,随時検討していくこととしたいと思っております。検討事項としては,複数の発行者・教科等のデジタル教科書やデジタル教材を一度の認証で閲覧することのできるシングルサインオン機能や,複数の学習ツールを一覧できる学習eポータルなどの窓口機能,学習指導要領コード等の附帯情報の付与等によるデジタル教科書とデジタル教材の連携,また,様々な学習ツール間での学習や操作の履歴等の記録の方法や保存場所が考えられます。
続きまして,個々の技術的な課題といたしまして,一つ目はデジタル教科書に標準的に備えることが望ましい最低限の機能や操作性等についてでございますが,現在のデジタル教科書はビューアごとに様々な仕様によって制作されておりまして,発行者や教科ごとに機能や操作性が異なっております。そのため,教師がデジタル教科書を導入・管理する際や学校の先生や児童生徒が使用する際の利便性を向上させるために一定の標準化を図る必要があると考えております。
一方で,既に各教科等の特性等に応じたビューアの開発が各民間事業者様によって進められておりまして,一定の範囲で,その各民間事業者様の創意工夫を発揮する余地を残すことが児童生徒の学びの充実に資することから,ビューアの仕様を完全に統一するのではなく,標準的に備えることが望ましい最低限の機能や操作性等について検討することとしたいと考えております。
検討事項といたしましては,デジタル教科書の導入・管理に関係する統一されることが望ましい仕様などについて,まずデジタル教科書の使用開始時に必要なアカウントの設定に係る手順や,登録すべき情報,入力項目の表示順等の様式がございます。こちらはCSVフォーマットが考えられますけれども,これらについては学校現場における作業の煩雑さなどを勘案いたしまして,今年の秋頃をめどに統一を図りたいと考えているところでございます。
続いて3ページ目でございますけれども,学校や設置者が使用する管理画面に表示される情報,アカウントやパスワード等の管理方法やセキュリティ,教科や単元によって変わってくるとは思いますが,クラウド配信におけるデータのダウンロードの方式,キャッシュやストリーミング配信の利用を含むかといった点も視野に入れていきたいと考えております。
続いて,デジタル教科書の使用に関係し,備えることが望ましい機能や操作性等に関しまして,まず,標準的に備えることが望ましい機能というのは,そもそも何かを考える上で,その機能の特徴,例えばペンの太さや色,ルビ振りの範囲などについて,現状,ペンの太さ一つ取ったとしても,各社実装しているものが違いますので,実際どうなっているについても確認をしていきたいと考えております。また,当該機能の操作性について,ペンや,消しゴム,ページ移動,拡大,縮小のボタンについて,例えばボタンの位置や形,大きさ,また,コマンドの階層などを標準化していくことができるのかといったところを模索できればと考えております。もちろん,特別な配慮を必要とする児童生徒にニーズのある機能についても考慮する必要があると考えております。
最後に,クラウド配信で使用するデジタル教科書を一時的にオフラインで使用できるようにするための仕組みにつきまして,災害時や家庭環境等によって通信環境が一時的に確保できない場合にデジタル教科書を使用するための方法や備えるべき仕様等は何が考えられるかというところを検討し,方向性や対応策を提示していくことができればと考えております。
また,過年度のデジタル教科書を使用できるようにするための方策について,こちらも方向性や対応策を提示するという形になるのではないかと考えておりますが,紙の教科書は御案内のとおり,学習した翌年度以降も当然に使用可能でございますけれども,デジタル教科書の使用期間を当該学習年度に限るとした場合,過年度の教科書や書き込んだ内容などが閲覧できず,既習事項の振り返りや学び直しなどができないという課題がございます。また,過年度分の使用に限らず,複数年,継続使用する教科書の年度をまたぐアカウントの扱いも必ずしも統一されてございません。そのため,児童生徒の学びを保障する観点から,ライセンス期間や費用の在り方,使用のための仕組みなどについて方向性を示すこととしたいと考えております。
なお,当然ながら,その内容は経費の部分にも関わってくる部分でございますので,教科書無償給与制度をはじめとするデジタル教科書の今後の在り方に関係してきますところ,親会議である検討会議の議論にも反映していきたいと思っております。
繰り返し申し上げておりますけれども,検討すべき事項としては,適切なライセンス期間,また,複数年にわたりデジタル教科書を使用可能にするための仕組み,これはクラウド配信かダウンロードか,またその期間によっても変わってくると思いますし,仕組みによる費用の違いも考慮しなければならないと考えております。さらに,デジタル教科書を複数年,継続使用する場合のアカウントの継続方法などが考えられるのではないかと考えております。
事務局からは以上でございます。
【東原主査】
それでは,今の事務局の御説明を踏まえまして,このワーキンググループにおける検討事項につきます御意見をいただければと思います。
それでは,近藤委員,お願いいたします。
【近藤委員】 私からは特別な配慮を必要とする児童生徒のアクセシビリティやユーザビリティについて特に申し上げます。
まず,基本的な考え方としまして,制作時に,障害のある子供たちが利用することを想定するということもあるのですが,今,後発性障害とも言われている,例えば発達障害等のある児童生徒のことを考えると,クラスの中にはかなりの数のそうしたニーズのある子供たちがいるということが分かっております。また日本ではまだ十分に分かっていないのですけれども,例えば学習困難のある子供たちの背景に,いわゆる発達障害に類するような困難さのある子供たちがいるということがよく言われているという状況からすると,何か特別な人のためにおまけとして用意するという考え方よりも,基本的にそうしたニーズのある子供たちを前提としてデジタル教科書を作るというような考え方に基礎を置いていただきたいと考えております。
その上で幾つか申し上げます。まずビューアのインターフェースについてです。今現在,ガイドラインに示されているビューアの機能やインターフェースについては内容がかなり大まかな状態となっていますので,ビューアごとにインターフェースのばらつきがかなりある状態であると思っております。これらは画面が見えにくい児童生徒や,手先の巧みさ,巧緻性に困難さのあるような児童生徒,もしくは知的な困難さがあって複雑なインターフェースが特に使いづらいような児童生徒の場合ですと,このインターフェースの在り方そのものが障壁となってくる可能性がかなりあります。
特に弱視のある児童生徒の場合ですと,そもそもそのインターフェースが,何とか見えているのだけれども,拡大の機能を使おうと思っても,その拡大の機能にアクセスするところでまずつまずいてしまうといったことがございます。このビューアのインターフェースについてかなり明確なガイドライン,要件定義に近いようなものを作るということを例えば一つのプロジェクトとして立ち上げていただいて,厳密にガイドラインを作っていくということもあって良いのではないかと思います。
ただし,これは各社が様々な形で取り組んでおられると思いますので,このバランスや考え方をどう整理していくかは,幅広く検討したほうがいいと思います。しかし,特にクラウド上で動くようなものの場合は,ブラウザ上で稼働することにもなります。通常,インターネットやウェブサイト等のアクセシビリティについてはWCAG2.0のような国際的ガイドラインがありますが,障害のある児童生徒の利用について,WCAGではなく,いわゆる教科書のアクセスも検討したほうが良いと思います。このような観点から、特にこの具体性を伴った要件定義を行うプロジェクトベースのものを動かしてしまったほうが良いと思います。
続いて,関連したことですが,現在のガイドラインに示されているものは,一般的なOS等が持っているアクセシビリティの機能との連携をチェックしているのかということが気になっております。例えばキーボードショートカットへの対応や,目次ジャンプ、ページジャンプなどのナビゲーション機能の状況,メモやアイコンのうち自分で置けるようなものやスタンプのようなものの構造化、タグジャンプといったような機能,また様々な入力支援の機能との連携,例えば音声入力等のOSの機能との相性や,OS自体が持つ画面拡大機能,スクリーンリーダー機能と呼ばれる画面の内容を読み上げていくような機能との相性,さらに肢体不自由のある子供たちも使いますので,スイッチインターフェース等のスイッチアクセスなどの支援機能,例えばスキャン入力や,ステップで選択する機能等,様々な機能が使われています。そうした機能との相性など様々なチェックが必要になってくると思います。
それらのことは先ほど申し上げたWCAGの2.0のように,既に検討されていると思いますが,今後,このデジタル教科書についても同様に評価を行っていっていただきたいと思います。また,動画の字幕や,画像や図表やアニメーションなどの代替テキストについても検討が必要だと思います。さらに,ビューア自体ではなくてコンテンツにも関わりますが,数式については、出版社の皆様の方で、音声読み上げエンジンで音声で読み上げる場合の読み上げの内容を作っていただいていると思います。加えて、脚注や添付資料についてはどのような考え方で行っていくのかについて検討が必要と思います。また,使用するフォントの種類についての,エビデンスに基づいた選択等についても評価していく必要があると考えております。
デジタル教科書にはクラウド版とデスクトップ版のものがありまずが,全体的なアクセシビリティ機能を,特別な配慮が必要な児童生徒のみではなく,全ての児童生徒にとって利用できる,ユニバーサルに使える教科書にしていくためには,アクセシビリティ機能の評価体制がしっかりしている必要があると思います。ガイドラインにより,ソフトウェア開発の入り口のところで,遵守事項を定めるだけではなく,でき上がったものについて,後からアクセシビリティ保障の状況を継続的に評価していくような,例えば評価委員会のような仕組みが必要であると考えております。こちらがどのような形でできるのかなども御検討いただきたく思います。
最後に,コンテンツファイルそのものへのアクセスが今後どうなっていくのかについて関心があります。例えばLentranceというビューアは,教材コンテンツの中身そのものは一般的なEPUB形式で作っておられるということです。こういったコンテンツに対して,中長期的には,特別なニーズのある児童生徒は,やはりアシスティブ・テクノロジーを使ってアクセスしていくことになると思います。その場合には,サードパーティー製のビューアで,コンテンツにアクセスをしていくということが必要になると思います。そこで,この教材のコンテンツファイルそのものへのアクセスについて,今後どう考えていくかということも,検討を始めないとならないと思っております。
以上申し上げた内容の多くはビューアの機能にも関わっておりますが,今後はコンテンツのアクセシビリティ,例えば先ほど申し上げた動画の字幕について,その在り方,字幕のつけ方の標準化された方法,またそうしたものを用意しておくのか,さらに画像,図表,アニメーションの代替テキストなどのコンテンツへのアクセシビリティについて議論する必要もあると考えています。加えて今のコンテンツファイルそのものへのアクセスを今後どうしていくかということを含めて,そうした状況がいつ頃やってきそうかということも議論できればと考えております。私からの意見は以上です。
【東原主査】
続きまして,片山委員,お願いいたします。
【片山委員】 私からは2点申し上げます。まず一つ目ですが,管理に関する統一されることが望ましい仕様について,アカウントの設定に関わる手順などを秋口までにCSVでできるよう統一されるということはスピード感があってすばらしいと思っています。今回の改訂を令和6年に反映させていくとなると,現場としては,何社かのデジタル教科書を使用する場合に,いかにこの作業を効率的に簡易にやるかというところが非常に課題となります。
今回,一つの会社のデジタル教科書を入れただけでも,そこが統一化されておらず,また教科書会社によって対応が違うため,学校と教科書会社が直接,個別に対応するという状態でした。そこがなくなることがまず一つ必要だと考えております。また,紙と併用することになるかもしれないという話もございますところ,4月当初に今までの紙の教科書であればその日からすぐ使えますが,それがデジタルになったときに,いつのタイミングでそこの作業ができるのかというところは非常に大きな課題なので,できるだけ簡易に,短い期間で,かつ特別な技術がなくてもできるようにしていくというところをこれから検討していく必要があると思っています。
2点目は,学習eポータルについてです。現在,学習eポータルについて,私の知っている中では大手3社があると思っているのですけれども,その中でデジタル教科書に,どこが乗ってくるのか,乗らないのかということと,また,そもそもeポータルがなくともやれるのか,eポータルで連携するデジタル教科書と,それぞれの教科書が個々ばらばらに入っているようなところとでどのような差異があるのかという辺りを,最初の段階でしっかり確認しておくことが必要と思っています。
eポータルは,既に採用している自治体もあれば,全くない自治体ももちろんあります。その費用のところがどうなるのかというところで,令和6年というのは,現在5年間のリースなどで,見通しでGIGAの導入がされていると思いますが,その途中の段階です。だから,令和6年の1年前段階で端末更新が来るので,今のこの延長上で新規の予算化ができないと考えたときに,eポータルがなくともきちんとやっていけるということ,ただし,eポータルがあるとこうなるというところが早い段階で情報として提示されてくることが大事だと思っています。
以上です。
【東原主査】
では,次は渡部委員,お願いいたします。
【渡部委員】 学校教材を作る立場,販売する立場,それから,学校教材の業界団体の立場から意見をさせていただきます。技術的な話をこれから協議していく前段というところで,先ほど御説明いただいた資料の2ページ検討内容の上のところ,デジタル教科書の普及促進に当たっての望ましい姿というところで,普及促進に当たってはデジタル教材との連携とも非常に重要だとされていますが,この辺りも随時検討していく内容になってくると思います。特にデジタル教科書とデジタル教材との連携を考えていく上で,改めてどこまでがデジタル教科書であって,どこからがデジタル教材なのかということ,また,デジタル教科書とデジタル教材というのは制度的にも全く違うものであるということを常に意識しながら協議していただくことが大事であると思っております。
具体的に教科書と教材では著作権法上の位置づけや関係法令の規定なども異なる上,特に採択の在り方が大きく変わってまいります。教科書は広域採択ですけれども,教材は基本的に学校,先生が主体となって有益,適切な教材を採択するというものでもありますし,また,デジタル教科書は,現行では紙の教科書と同一のものを使用するというような形ですけれども,教材は教科書発行者以外の教材も含めて,多種多様な教材の中から採択されて使用されるというような形で大きく違ってくるところもあります。今後,デジタル教科書と教材がより連携して,タブレット上でシームレスに連携してまいりますと,ますますその線引きが分かりにくくなってしまいます。そのためにもこれからもデジタル教科書とデジタル教材を明確に意識した上で協議していく必要があると考えております。
私からの意見は以上です。
【東原主査】
それでは,続いてデジタル教科書に標準的に備えることが望ましい最低限の機能や操作性について,皆様に御議論いただきたいと思います。初めに大関委員より教科書協会で現在改訂を御検討中のデジタル教科書の発行に関するガイドラインについて,資料4に沿って御説明をお願いいたします。
【大関委員】 それでは,私からは,一般社団法人教科書協会という,教科書の発行者が集まっている協会で作成しているガイドラインの一部改訂版の案の概要について御説明いたします
まず,このガイドラインについての位置づけからです。デジタル教科書は既に発行されており,使用いただいております。令和元年の4月からデジタル教科書の制度が始まりましたが,その先立つこと1年前,平成30年の4月に教科書協会ではデジタル教科書の発行に関するガイドラインを作成して,加盟している全発行者に配布しました。ただ,現在デジタル教科書,特別な教材という位置づけで発行が義務化されたものではございません。各発行者の努力と工夫で発行しているものであるため,あくまでも望ましい在り方を示したものというものがこのガイドラインの位置づけです。強制力のあるものではなく,望ましい在り方を示したものというものになります。
そして,第一次報告にもありましたとおり,令和6年度からデジタル教科書の本格的な導入ということが進んでいくということになって,教科書協会でもガイドラインを改訂しようというところで協議を始めているところでございます。そのため,まだ検討レベルのものということで今日のお話を聞いていただければと思います。具体的にもう少しこの辺りを深められるのではないかというような協議もしておりますので,そちらについても説明の中で触れてまいります。学習者用のデジタル教科書の全国の学校現場での使用は,今年度の実証事業で本格的に始まったばかりと言えると捉えておりまして,その活用の実態,それから,今後の技術の動向,国の施策,これを踏まえながら教科書協会としても,このガイドラインを順次改訂・更新していきたいと位置づけているものでございます。
ガイドラインは5章の章立てで構成しております。まず利用環境の話があり,それから,供給,その後,導入・設定をしていただく。そうして,デジタル教科書を使っていただく。そして教材との連携,それから,教育データの利活用というところの5章でお話をいたします。これまでの委員の皆様から出たお話と重なる部分も一部あります。
まず,利用環境です。GIGAスクールで,小中学校に3OSのタブレット端末,ノートパソコンが配備されました。まずはこの3OSのタブレット端末,ノートパソコン,GIGAスクールで整備されたものが利用環境になると考えられます。そして,GIGAスクールの考え方では,クラウド・バイ・デフォルトのような考え方が示されておりますので,学校や家庭などからアクセスいただき,ブラウザで閲覧,操作できるものが求められるようになるのではないかとしております。そして,デジタル教科書はGIGAスクール構想などでの国や自治体,学校現場の状況や,社会全体の技術を見ながら最適な形で利用できるよう,限られた開発資源の中での対応が求められるとしております。
利用環境に限った話ではないのですが,様々な期待を寄せられているというところは,私ども発行者も承知しているところ,開発資源,制作のコスト,費用,その辺りを踏まえながら,一番求められているもの,最適な形でデジタル教科書を使っていただける,そのようなことを踏まえながらガイドラインを作っているところでございます。
次に,供給です。教科書は少し特殊なコンテンツであると考えておりまして,紙の教科書は4月から全国全ての児童生徒のお手元に自分が使う教科書がきちんと届く,私どもの業界では完全供給と呼んでおりますが,これが実現しております。令和6年度から本格的な導入がデジタル教科書でもなされるならば,この完全供給に向けた対応が求められると考えております。現在は必ずしも年度の初めから導入作業が完了して,すぐ使用されているわけではないという実情がございます。
この現実を踏まえまして,今後デジタル教科書を年度の初めから年度の末まで使用できるよう,それから,転出入した児童生徒が使うデジタル教科書が供給される。そのためには紙の教科書と同様な需要数の把握,これが必要になるであろうということでシステムの開発,運用について,文部科学省などの関係の皆様と協議していくことが,デジタル教科書の完全供給に向けて考えられるというところで検討を始めております。
そして,先ほどの検討事項にもありました使用年数などの課題もあります。何年にわたってデジタル教科書を供給するのか,紙の教科書の場合,破れたり,汚れたり,捨ててしまったりしない限りずっと使えますが,これをデジタル教科書のタブレットの中で使うライセンスに置き換えたときに,何年にわたってどのような形で供給していくことが必要なのかというところを考えていく必要があるというところで,デジタル教科書の供給に関する検討を始めているところでございます。
供給が終わりましたら,導入・設定をしていただくことになります。現在,デジタル教科書の導入・設定作業を現場の先生方が行っていることが多いと理解しておりまして,できる限り簡便にできることが求められるということをガイドラインで記しております。そして,その導入の手順に当たっては,その手順書,それから,動画といったものを分かりやすい形で示すということが望ましいとしておりまして,その手順書や動画を作るに当たっての観点というのもガイドラインで記載しているところでございます。
それから,導入に関する事項の名称について,不慣れな先生方は困惑することも多いのではないかということで,名称は同じ意味で使うということ,その際にはOSや他の市販のソフトとも異ならないような名称で一致させる配慮をするということをガイドラインに記載しています。
次に,クラウド配信方式の導入・設定についてです。現在,クラウド配信でデジタル教科書を使うに当たっては,児童生徒のID,パスワードといった情報を最初に登録する必要がございます。この登録に関する項目等ができるだけ共通化されていると負担軽減になるということで,具体的な対応についても検討を進めているところでございます。
また,その一方で, IDに対する考え方が全体的にどうなっていくのかについても見ていく必要があると考えております。例えばユニバーサルIDのような形で国からIDを発行することになるのか,それとも今と同様に自治体や学校でIDを発行して管理するやり方なのか,その辺りの方向性について,国から,考え方,タイムテーブル,マイルストーンが示されることを期待して,最終的にはそのあるべき姿にデジタル教科書も対応していく一方で,現在行われている当座の方法にもできる限り負担を軽減するという,本来的な在り方を見て対応すること,それから,当座の負担軽減の対応,この二つがあるということで整理しているところでございます。
その当座の対応と一旦は呼ばせていただきますが,その方法の具体的なところです。ユーザー登録用のCSVファイルをできる限り共通にして負担軽減をしていくというところは検討を始めているところです。それに当たって学校や自治体などで,例えばデジタル教科書以外のほかのソフトでも同様な登録が行われているのかや,OSのログインアカウントについてユーザー管理のためのおおもとのファイルのようなものがあるのかなど,その中で我々が何をしていけば良いのかを見ていく必要があるという話をしているところでございます。
さらに,ログイン方法をとにかく簡便にということで,シングルサインオンのような形で簡便に行えることがますます求められること,それから,国のほうで進めている学習eポータルと連携して,アクセスいただくURLが一つであり,そしてシングルサインオンのような形で速やかにデジタル教科書を使っていただくというように,国が進めている全体的な動きなどを見ながら対応していくことが必要になるとして現在検討を進めているところでございます。
続きまして,デジタル教科書の使用における機能と操作性についてです。機能と操作性の二つに分けてお話しいたします。まず,機能の中でも一般機能と特別支援機能ということで,このガイドラインでは分けております。そこでデジタル教科書を使っていただく上で最低限必要性があると考えられる機能をあげております。
まず,教科書ですから,ページがめくれることやいろいろな線を引くこと,フリーハンドペンで書き込むことをあげております。また直線での書き込み,図形の描画,複数の色から選択できることもございますが、その色については,カラーユニバーサルデザインを考慮した色を今後ガイドラインの更新時に示すことができないかということを協議しているところでございます。
それから,書き込んだ内容を保存することもございます。線の太さの話もありましたが,線の太さは教科書の学年によって文字の大きさが違うと,それによって求められる太さが違うというような観点もございますので,それぞれの紙面で学習に合わせた書き込みができるということが,ユーザーの求めていることではないかということで,このガイドラインでは整理しております。さらに,書き込みを消すこと,拡大・縮小すること,この辺りを一般機能としてガイドラインでは示しています。
続きまして,特別支援の機能です。特別支援の機能については,専門の先生に御指導,御助言をいただきながら,ガイドラインを作成,改訂しています。まず,先生から御指導いただいた大きな方向性があります。デジタル教科書は,デジタルの特性を生かすために,ユニバーサルデザインに配慮したものであることが求められるということが最初の大きな考え方になります。そして,将来的には全ての児童生徒が教科書の内容にアクセスできるデジタル教科書を目指すこととなりますが,障害の種別,特性は,様々であるという現実がございまして,求められる支援の全てに現時点で対応することは,現実問題として困難ではないかと考えており、当面,この特別支援機能として学校現場,研究者の方々から最低限必要性があるものとして御意見が多い機能の在り方をガイドラインでは記載しております。
また,特別支援機能への対応は難しいところがありまして,例えば先ほどのペンでの書き込みといったものは,いわゆるビューア機能ですので,デジタル教科書側が何もしなくても一律で対応できるものがほとんどです。特別支援の機能でも,そのようなものもありますが,それぞれのデジタル教科書で対応が必要なものも多いです。例えばルビのデータを用意することや,機械の音声読み上げで,読み間違えたときに正しい読みに補正するといったことはそれぞれのデジタル教科書を制作する段階で個別に行って対応しているものです。そのため,このガイドラインにおいては,ここに記載のある項目でも段階的に対応することも考えられるというような形で記載します。
具体的に特別支援機能の五つの項目をガイドラインで示しております。まず文字色・背景色の変更です。特にリフローの画面,文字を中心に映し出すテキスト中心の画面では,文字の色,背景色を自由に変更でき,自分が見やすい色で見ていただくことができます。その際,標準的に選べる色の組み合わせが,現在はばらばらでございますので,専門家の先生の御意見をいただきながら,組み合わせ,選択方法などを検討しております。Aの教科書でこの文字の色と背景の色が見やすいと感じたならば,Bの教科書でも同じように選べるようにすることで利便性が上がるのではないかと考えております。
それから,明るさ・コントラストの調整の機能,ルビの表示,漢字などに振り仮名を振る機能,拡大表示がございます。任意の箇所を拡大する機能で,ピンチアウトで拡大するものもあれば,リフローの画面で拡大するものもございます。このリフローの画面では,書体を選んで切り替えることができ,例えば同じ明朝体と言っても,明朝体の書体が異なっているとストレスを感じたり,読みづらくなったりするといった特性がある児童生徒がいるとお聞きしておりますので,明朝体といったときに,どの明朝体が最初に選ばれるように出てくるのがよいかということは,今後専門家の先生の御意見を聞きながら,検討していくとよいのではないかと協議しているところでございます。
最後に,機械音声の読み上げです。現在,デジタル教科書の制度の範囲ですと,音声の読み上げは機械による音声の読み上げを指します。掲載されている文章を機械の音声で読み上げるのですが,そのときに例えば化学式の読み方でエスオーフォーニマイナスと,エスオーヨンニマイナスのようにそろっていないことは混乱を生じさせてしまうため,読み方をそろえるということをガイドラインに記載しています。この辺りもデジタル教科書側で個別の設定が必要になるという先ほど申し上げたところになります。
機能の話に続きまして操作性の話です。操作性に関して三つの考え方を示しております。まず,一般の当たり前に使える操作を当たり前に使っていただくというところでございます。子供たちは画面を見ると無条件で,ピンチアウトで拡大をしようとしたり,フリック操作でページをめくったりといった行為をしますので,タブレット端末で直感的に行う操作に関しては,対応していることが望ましいとしております。それから,それぞれの機能のボタンの配置の位置ついてです。これもOSやブラウザの慣れがあろうかと思います。例えば何かを終わりたいときにブラウザですと右上のバツで閉じたり,Windowsですと左下のボタンから終わったり,というように,終わるためのボタンは画面の四隅のどこかあることが一般的であることや,そういった一般的な配置位置などに沿ったものにするとよいということを記しております。
ユーザーインターフェース,操作性につきましては,実証事業などで実際の児童生徒の活用実態を見ながら,あるべき姿を慎重に検討する必要があると考えているところでございますが,現在のガイドラインでは,機能のボタンのイメージ,ボタンアイコンの形,名称案を一定そろえることでユーザーが機能を選択する際に迷わないようにできるのではないかということを記載しております。
今日,このビデオ会議においては, Webexというビデオ会議のシステムを使って皆さんこの会議に参加していると思いますが,例えばほかにもZoomや,MicrosoftのTeams,GoogleのMeetなど様々なビデオ会議のシステムがあり,どれも今私が行っている画面共有ができます。現在,「画面共有」や「画面の共有」のように微妙に違いますが,名称がある程度そろっており,共有するときは「矢印のあるボタン」というように,形が同じようになってきているのでボタンを探しやすくなっていると思います。
例えば,機能ボタンのイメージとして,ここはボタンの画像のイメージを思い浮かべていただきたいのですが,書き込みを消去するときは消しゴムの形をするとよいのではないかということや,実際に消す行為について,言葉を添えるときは「書き込み消去」,「消す」,「消しゴム」,といったものを使うように名称をそろえる配慮をしておくと迷いづらくなるのではないかと記しています。例えば,「ディレート」や,「イレーサー」など全然違う言葉を使うと消すという行為になかなかたどり着かないということも考えられます。この辺りをまずはそろえる配慮をするよう,ガイドラインで記しています。
最後に第5章のデジタル教材の連携と教育データの利活用についてです。デジタル教材との連携のところで,ここはガイドラインの改訂の案としてこのような文章を記載しています。デジタル教科書は様々なデジタル教材等と連携しながら利用されることで,さらに学習効果が高まることが期待できる。発行者が発行するデジタル教材はもちろんのこと,発行者以外が発行する様々なデジタル教材がデジタル教科書とより効果的に連携することが考えられる。連携にあたっては,「学習指導要領コード」などをキーにしたり,様々なデジタル教科書やデジタル教材の窓口となる「学習eポータル」を活用したりするなど国が検討を進める動向を注視する必要がある。このような考え方の下にさらに協議していきたいというところでございます。
教育データの利活用について,デジタル教科書においては,データというと大きく二つに分けられるのではないかということをガイドラインの改訂案では示そうとしています。まず,デジタル教科書への書き込み,例えばペンで書いたデータや,付箋にしたメモなどのデータがどこかに保存されて,また次回開くときに復元されるといったものです。それから,学習履歴データ,スタディ・ログと呼ばれているデータ,こういったデータの利活用が考えられます。そして,これらのデータが教育のデータの標準化等の動向を踏まえ,相互流通性を持ったデータとして活用されるように対応することが求められるということで,この辺りも国の動きを見ていく必要があるとしております。
一方,教育データについては,デジタル教科書が本格的に普及する以前に自治体ごと,あるいは発行者,教材会社やその他の教育に関連するシステムごとに様々なデータが存在しているという現状があると思います。また,教育データの個人情報としての位置づけ,考え方もまだ議論がされているところと思います。そして,個人情報の扱いになるからということで,様々な手続を自治体でしていただいた上で御活用いただくといった実情もあると認識しております。
この辺りも先ほどのIDの話と同じですが,いずれも,国から標準化に向けて,データ形式(案)やタイムテーブルやマイルストーンが速やかに示されることを期待して,その動向に対応していくことが考えられると現在のガイドラインの改訂案には記載しています。令和6年に向けての教科書の編集作業は既に始まっておりますので,この辺りのタイムテーブルを発行者としても見ていきながら,何ができるのかを協議していく必要があると思います。
デジタル教科書は,供給をして導入・設定していただいて,実際に使っていただいて,さらには教材との連携やデータの利活用というように,様々な面がございます。私ども発行者としても令和6年度に,児童生徒や先生に最適な形でデジタル教科書を作っていくに当たって,限られた開発資源の中でどこに注力をして,何を優先的にやっていくかといったことを踏まえながらガイドラインを改訂していきたいということで,現在取り組んでおります。
私からの説明は,以上です。
【東原主査】
次に,各ビューアの機能比較につきまして事務局より資料5に沿って御説明をお願いいたします。
【度會課長補佐】 事務局でございます。資料5でございますが,ビューアの機能比較といたしまして,各社様が備えている機能等を当方でできる限り調べ,各社間で違いがある主なものについて示させていただいたものでございます。
大きく5点に分けておりますが,一つ目がアカウント・ライセンスの登録・管理,二つ目がログインから教科書を選択して閲覧までの操作,三つ目が機能・レイアウト・メニューの階層,四つ目がデータ関係,五つ目が非通信環境下の動作に関してでございます。詳細につきましては,次のページから,それぞれの項目における各ビューア様の状況について示したものでございます。一つ目のアカウント・ライセンスの登録・管理のところでは,例えばCSVファイルでのID登録についてはどんなやり方が今現状あるのかというところを全体的に示しておりますが,例えばCSVファイルであれば,学校等がCSVで登録するものでも,一度登録したら修正が効かないものであったり,修正が効くものであったり,あるいは発行者様において登録してIDを発行しているというやり方がございます。
次にシステムのアカウントに関して,どのようなパターンがあるのかと申しますと,期限が1年間であるものや,教科書と同じ期間使用できるもの,在学期間中使えるもの,期限がないものがございます。続いて教科書のライセンスの有効期間に関しては,1年間だけというもの,または在学期間と同じであるもの,あるいは出版社によるものがございます。ログインに関して,ID/パスワードの桁数の下限は,指定がなかったり,4文字以上であったり,7文字以上であったり,8文字以上であったりとなっております。また,桁数の上限に関しては指定がないものや,64文字以内とするもの,128文字以内とするものがございます。また,ID/パスワードのルールなどについては,学校内では重複しないようにとするものや,半角英数字・記号を含めるとするもの,IDを学年や組・番号とするものもございます。シングルサインオン対応については,Googleのみに対応しているものや,マイクロソフト・Appleに対応済みのもの,検討中の状況も含めて対応していないものがございます。
3枚目の,機能やレイアウト・メニューの階層について,例えばレイアウトに関しては,ツールバーの位置が左右に変更可能なもの,上下左右変更可能なもの,変更がそもそも不可能なものがあるという状況です。メニューの階層についてペンを使用する場合を例に挙げますと,ツールバーに表示が既にされている,または,ツールバーのボタンを押したら出てくる,あるいはツールバーと別に常時表示されているといった仕様がございます。また,ページ移動に関しては左向き,右向きの矢印のようなボタンや,目次からリンクに飛べる仕様,スワイプやページ指定で移動する仕様,さらにはスライダーでページ移動できる仕様がございます。
続いて画面の配色に関しまして,白黒反転ができるもの,グレースケールのもの,複数のパターンから選択できるもの背景色や文字色を任意に変更可能なものがございます。そのほかの機能としてルビや,リフロー,機械音声読み上げは,おおむね各社とも御対応いただいており,またペンの消し方,消しゴムの機能については,オブジェクト単位で消えるものや,一括で消去できるもの,その他選択で消去するものや,ピクセル単位で消去できるものなどがございます。また,データに関して,教科書のフォーマットが,HTML5仕様のものや,EPUB,DAISYのものもございます。
最後に,非通信環境下での動作に関しては,基本的に今クラウド版では対応していない状況ですけれども,アプリ版であれば対応しているビューア様もあるところでございます。
御説明は以上でございますが,委員の皆様方におかれましては,標準化することができるのではないかと考えられる機能や操作性は何か,もしくはそういったことを検討するに当たっての観点,また,実際にデジタル教科書を,今年度の実証事業で全国の約4割の学校に入れさせていただいていて,その使い勝手の観点から,実際にその学校現場から指摘されている声などについて,先生方で聞き及んでいるところがございましたら,御意見をいただければと考えております。
事務局からは以上でございます。
【東原主査】

それでは,今の大関委員と事務局の御説明を踏まえて,標準化することができると考えられる機能や操作性は一体何なのか,もしくはそれを検討するに当たっての観点,また,使い勝手の観点から,実際に学校現場から指摘されている声などについて,皆様の御意見をいただければと思います。
それでは,片山先生,お願いいたします。
【片山委員】 今の大関委員の説明,非常に分かりやすく,さらに今の2枚の資料によって,よく分かりました。管理面と子供の操作に関わる面の二つについて,この二つの技術的な課題を分けて考えていくことがまず必要だと思っています。
管理面では,先ほど学ばせていただきました完全供給のところ,資料5の 1枚目で言うと,現場からの希望とすれば,やはりアカウントの有効期限は,できるだけ期限なしが望ましいですし,また,発行者が登録してIDを発行いただくのが一番望ましいですし,その作業を3月,例えば新潟で言うと3月の25日ぐらいに児童数が決定し,仮のものが決定し,またその年度の境目のところで子供の増減が多少変わってきます。多くの場合5月1日が最終決定になるのですけれども,そういったことから言うと,3月中に作業ができ,人数が確定していって, 4月初めには使用できるようにしていくという辺りが,技術的に管理面を含めて全部やっていただけると,理想であるなと思っています。
また,ログインに関わるところで言うと,パスワードは複雑であるほうが安全であるとは思いながらも,その辺りもシングルサインは大前提にして,こういうところで,子供が困らないような形でしていただくところまでは,できると良いと思っております。つまり,SSO対応にして,それで全部いけるというところまでを大前提にしていただけると良いと思っています。
子供の操作に関わるところ,③の機能・レイアウトからのところですけれども,ここは多分二つで,一つはレイアウトや,メニューの階層,ページの移動,ペンの消し方などは,ある程度そろっているほうが子供にとって分かりやすいと思いながら,各社,基準が本当に100%そろい切れるのかというところには疑問があります。よりこうしたほうが良いとは思う,ある程度の基準までは示しつつも,多少のずれが許容できるのではないかなと個人的には思っています。
もう一方の子供のアクセシビリティに関わることで,画面の配色や,補助機能などはどの教科書会社が採用されたにしても,個に応じた形で配慮ができるよう,なるべく深い階層での基準をそろえていただけると良いと思っています。
最後に非通信環境下の動作について,現行では,基本的にクラウド版で対応していないということから,ここは技術的にどのような可能性があるのかというところを教えていただきたいと思います。本当にできるのかというところが,心配しているところで,アプリ版であれば対応もできる部分はあるとは言いながら,これだと3OSに対応した形は難しいとも思ってもいるので,クラウド版でどのような技術,例えばキャッシュなどを使ってやるのか等,そもそものところでどうなのかというところは,私は分からないでいるところです。
必要感としては,Wi-Fi整備を家庭に働きかけていますけれども,かなりの御家庭が,今,GIGAが本格に進んでいって御協力いただけるようにはなりました。ですが,家庭での使用ということに関して100%はかなり厳しく,どうしても家庭で,クラウド版で実現,対応し切れないということであれば,その代替手段として,どうしても難しい御家庭に対する通信の補助などで対応し切れるものなのかなど,それでフルクラウドで完全にやるという選択肢もあるかもしれないと思っています。
以上です。
【東原主査】
続いて加藤委員,お願いいたします。
【加藤主査代理】 大関委員から御説明いただいた教科書協会のガイドラインでは,いわゆるアイコンのイメージや,名称をそろえるというユーザーインターフェースのところについての方針を挙げていただきましたが,これは大変重要だと思っています。例えば,いわゆる手書きのペンを書きたい,マーカーを書きたいというときに各社のアイコンが違いますと,一瞬悩む可能性があり,それ自体は小さなストレスですが,それが毎回だと問題になります。アイコンのイメージや名称をそろえていくことはあまり難しいことではないと思うので,そろえていければ良いと思っています。
一方で,一連の操作の流れに関しまして,例えば赤ペンから青ペンに変える,あるいは赤ペンから黄色のマーカーに変えるときに,一定程度で操作感が統一されているほうが良いのではないかと思います。私は操作感が統一されていないことも小さなストレスになりかねないと思っておりますが,この一連の操作について,教科書協会として問題視はしていないのでしょうかということを少し聞きたいと思っております。そうしたことは利用状況からきちんと調べていきたいということが書いてあり,もちろんそれは大変重要だと思いますが,そうしますと長い時間がかかってしまいますので,ここの場である程度,何をどの程度そろえるのかを決めていければ良いと思っています。
いわゆる遠隔授業のソフトはMeetや,Zoom,Webex,そしてTeamsなど様々ありますが,使われているうちにだんだんと似てきました。最初は全然違っていたのにだんだん似ていくところもあれば,違うままの部分もあります。このようにたくさんの人が使っていく中で,だんだんと基本的なところが似ていくという流れは,ユーザーが多くいて,ユーザーの意見を基にソフトウエア会社が長いスパンで変えていくという体力があれば,可能であると思いますけれども,今回のブラウザについて,ビューア各社がそれぞれ行うことは難しいと思うので,ある程度限られたところを相談して決めて,子供たちのストレスを減らせれば良いと思います。
以上です。
【東原主査】
大関委員,コメントをお願いいたします。
【大関委員】 一連の操作のところに御質問があったと思い,その点に関してお話しします。教科書協会で話しているときには,教科によって,一連の操作の求められることが違うということがあるのではないかという話をしています。例えば,四角を書くという操作でも,算数で書きたい四角の操作性と文系の教科で何か文字を隠すために四角を書く操作性を考えると,教科によって求められる手順が違ってくる部分があるであろうし,そこの部分にユーザーへの利便性があるのではないかという話をしております。ですので,全教科の共通的な部分と,教科の学習で,この教科はこの機能を特に使うから,というときの操作の手順のバランスが決めづらく,実際,使っていただいている様子を見ていきながらという話が出てきたところでございます。
また,その議論の中では,そのような操作性は,ビューアとしての考え方そのものであるので,全体を変えずに一部だけ変えることが本当に望ましいことなのか,という意見や,ノートやドリルのような機能においてもペンで書くことはございますので,デジタル教科書の操作性を考えるだけでよいのか,その辺りも含めて何が最適かを見つけ出す必要があるという点を,現在,教科書会社の中で議論しているところでございます。
【東原主査】
長谷川オブザーバー,お願いいたします。
【長谷川オブザーバー】 今の話の技術的な側面に関しまして,開発サイドの都合というところでありますが少々お話いたします。まず,アイコンをそろえるというところについて,簡単ではないかというお話をいただきましたが,大関委員もおっしゃったように,全体としてあるユーザーインターフェースのコンセプトやバランス,あるいはその教科,教材に特有の仕組みにのっとったユーザーインターフェースがあります。例えばペンのアイコンだけをそろえることで,ほかのツールのボタンのデザインとの間に違和感が生じる可能性があります。あるいはより具体的な話では,マウスをボタンの上に置くとまずキャプションが出て,そこから色等が変わることで,その上にマウスのポインタがあると分かるというような細かなボタンの仕様も各社でそろえていると思います。そのようなところもユーザビリティには大きく関係してまいりますので,一部だけ統一することは難しいという話を補足的にお伝えさせていただきました。
以上です。
【東原主査】
近藤委員,お願いいたします。
【近藤委員】 私は,もともと教科用特定図書の中で音声教材というものを作るということをやっておりますが,学習者用のデジタル教科書は,音声教材等でやってきたようなことを多く取り込んでいることで,アクセシビリティが向上していることは,すばらしいと考えています。教科用特定図書関係者は,今後音声教材を作らなくてもよくなるということを期待し,本流である教科書が,多様な子供たちのアクセスを前提としたものになっていくことに期待していると思います。
音声教材や点字教科書は置き換えがなかなか難しく,残り続けるだろうと思います。デジタル教科書が注意すべき点は,教材の中身の文章や,文字に限らず,学習者用デジタル教科書が、教室の中での指導や,児童生徒がどのように活動するかということを規定する環境になってきているということだと思います。
先ほど申し上げました通り,3の2番目のところで,国際的な標準化されたガイドラインのWCAGというものがありますけれども,これは,そもそもその情報が、多様な児童生徒にとって、知覚できるものなのか,操作できるものなのか,理解できるものなのか,さらに,その他のいろいろな環境からのアクセスに対しても堅牢であるものなのか,何のためにそのインターフェースの工夫をするのかということを,かなり網羅的に評価しようとして作られている,非常によくできているものです。
ただ,デジタル教科書のビューアの評価項目として考えますと,それが授業での指導の流れの中でどのように使われているのか,子供たちのアクティビティをどう規定しているのかという観点は当然なく,アクティビティレベルのアクセシビリティ評価が必要だろうと思っています。これが学習者用デジタル教科書に非常に特徴的なポイントだと思います。アクセシブルでないところについて,しようがないところもあると思いますが,その場合,どのような指導上の工夫で乗り切っていくのかという提案は,インクルーシブ教育の時代では必要であり,コンテンツとビューアのファンクションそのもののアクセシビリティという観点と,それがアクティビティになるときに,どのようにアクセシビリティを保障していくのかという観点での評価が必要になってくると思っています。
私からは以上でございます。
【東原主査】
下山委員,お願いいたします。
【下山委員】 本日,遅れての参加となってしまいましたので,序盤の議論と重複いたしましたら申し訳ありません。まずは,ライセンスの件ですけれども,私も保護者の方をはじめ,ヒアリングをしていてよく聞くところが,やはり経年で過去の教科書を見たりできるのだろうかという点です。紙の教科書であれば,何かつまずいたときに過去の学年のものを参照でき,例えば中学校に上がった段階で小学校のものを見たい場合が出てくることを考えると,何らかの形で参照できるような形を担保する必要があると考えています。
また,資料4のガイドライン案に関しまして,大変詳細にまとめていただいておりますが,ただ,技術文書として出すものと,特に技術系の方以外の教育関係者の方や,保護者に公表して御覧いただけるような,原則だけをまとめたものが必要だと感じています。イメージが一番近いものとして,香港の教育局でまとめられている教科書のあるべき原則というようなものがございます。こちらは10項目ほどの簡単な文章で原則がまとめられていまして, OSの互換性があることや,オフラインでも動作することなど,簡単にまとめられております。このように上位の原則を一度まとめておき,そこから技術要件を詳細にまとめていくというような構造化したものがあると,より分かりやすいと考えています。
加えて,このガイドラインについて,順次改訂,更新されていくという方針は良いと思います。ただし,更新スケジュールについて,例えば年に一度見直すのか,それとも二,三年に1回なのかなど,対応する企業の方々は,すぐには対応できないものなので,ガイドラインの公開がいつ頃で,いつから実施するかも含め,その大まかな予定だけでも出されていると,より運用されやすいと思います。
さらに,改訂に当たって,根拠として利用者側のフィードバックをとる方法を何か考えるべきと思っております。特に各社,いろいろな仕様がある中でなぜその仕様を選ぶのか,また,それを変更するときには一定程度の根拠が必要だと思っていまして,そのときにただシェアが大きいからというだけではなく,実際に利用されていて,それが一番つまずかずに利用されているというような,アクセスログであったり,操作ログであったり,あるいは質的な評価として何か調査を入れたその結果など,利用者側で本当にスムーズに使われているかを調査し,その最もスムーズに使えている方式を採用するという流れにできると,その改訂もスムーズになり,また,利用者の方にとって最も良い形が作れると思います。利用者側のフィードバックをガイドラインに反映させる形を考えていただきたいと思っています。
また,ガイドラインの12ページの登録の設定について,ユーザーアカウント情報とありますが,ここが特に教員の方々の負担になってくるところだと思われますので,ここを念入りに設計すべきと思っております。特にファイルの共通化というときに,ただテンプレートがあるだけではなく,そのデータ型や,様々なシステムから出力したときに正しく変換できるようになっているかなど,今,運用されている形式を横比較した上で,できるだけ共通項を取る形で,データ型も含めデータ項目定義書として,ガイドラインに提示できれば良いと思います。
データ項目だけではなく,データ項目とデータ型と他に何が必須で,また必須事項以外の,例えばビューアごとに必要である特定の項目など,共通項目として何が必要で,必須でない項目としてどういったものがあるかについて整理が必要になってくると思います。これは現状調査から入る必要があると思いますので,念入りに調査ができればと思います。
ガイドライン案については以上ですが,資料5の現行の仕様の比較に関しまして,実際はどの会社がどの方式を利用しているかという,詳細に調査されたものがあると思います。実際に比較していくときには,マトリックス表のような形で,ある方式をどの会社とどの会社がとっているということや,量的なデータ,どのくらいの割合で使われているかといった分析比較が必要になると思いますので,その形で調査に使っていただきたいと考えております。
また,少し細かいところになりますが,資料5の2ページ目について,IDとパスワードがまとめて記載されておりますが,これらは別々に定義をすべきものだと思いますので,この点も御検討いただくようにお願いいたします。
私からは以上でございます。
【東原主査】
御指摘の資料については,事務局のほうで細かな分析をしていただいているものと思っております。
それでは,渡部委員,お願いいたします。
【渡部委員】 私からは,先ほど来申し上げております,教科書と教材の連携を中心に御意見を出させていただきます。資料のデジタル教科書の導入・設定,③,11ページのところの,IDの発行・認証の方法につきまして,国のほうで一定の方針,考え方,タイムテーブルやマイルストーンが速やかに示されることを期待し,と書いていただいております。恐らくここについてはデジタル教科書に限らず,教材についても方針が定まってくると,それに従って対応するということが出てくると思います。その結果として,よりシームレスになっていくと思いますので,教材としても,この辺りは期待したいところであると思っております。
また,25ページのデジタル教材との連携の下のところですが,連携に係る技術的な観点といたしまして,学習指導要領コードなどをキーにした,教材と教科書の連携がこれから考えられます。また,学習eポータルを活用するというところも出てまいると思いますけれども,一つは学習eポータル等のこれからの検討状況をつぶさに情報共有させていただきたいというところと,教科書発行者と教材の出版社との間でも,必要に応じて連携しながら,研究を重ねていく必要があると感じたところです。
さらに,少し質問でもありますけれども,ビューア機能比較についてのところにも書いておりますが,非通信環境下での動作,オフラインの状況の中で,一時的にローカルで見ることができるというところの,より詳しいやり方や,実際の運用の方法,実際,どのような形でできているのかに関しまして,詳しく知りたいと思っております。
以上です。
【東原主査】
それでは,大関委員,お願いいたします。
【大関委員】 教科書協会の立場を一つだけ補足させてください。今回の資料として御提示した「デジタル教科書の発行に関するガイドライン(一部改訂版/案)の概要」は,教科書協会の内部資料としてのガイドラインとして今のところ運用しているものです。発行者が発行,制作をする上でのガイドラインとして整理しているものを,今回,このワーキンググループでの資料として使用したいという要請がありましたので,概要版を検討用の資料として提示しています。その点を一つ補足させていただきます。
その上でそれぞれの委員の皆さんから,様々な御意見をいただいて,そのとおりの部分もあると聞いておりました。近藤委員からありました,指導の在り方も含めて,授業として最終的にどのように児童生徒に活用いただくかということをきちんとイメージしておくことが必要ということや,片山委員からいただきました現場のお声などは,大変参考になるところでございます。
協会の立場ではなく,発行者の立場として,また委員としての立場としましては,様々な御期待がある中,まずは令和6年度におけるデジタル教科書の本格的な導入に当たって最低限何が必要になるのかという優先順位を考えながら対応していくことが必要になると強く感じました。第一次報告にありました,財政措置を見ながら本格的な導入の在り方を検討するということもあり,実際,どの程度の作業をこの後していけるのかというところについて,様々な教科書の発行者の立場もありますので,協会として引き続き検討していきたいというところでございます。
以上です。
【東原主査】
私も一言だけ話をさせていただきます。教科書協会でいろいろと御検討いただいているというお話を御紹介いただき,我々のワーキンググループでは,それも参考にさせていただきながら,一定の整理をして何らかの方向性を示すことができたらと思っているところでございます。しかし何よりも,これが絵に描いた餅になってしまってはいけないので,ビューア,プラットフォーム,あるいは教科書出版社の方々に合意をいただいて,ここは一歩進んだなと,学校や,子供たち,先生方に喜んでもらえる部分を一つでも多く作り出さなければいけないと思っております。
そのためには,丁寧にいろいろ議論をしていく必要があろうと思います。そんなことがうまく進んでいけばいいかなと思いますし,事務局のほうから御説明がございました最初のアカウントの登録に関して,秋頃というお話がありましたように,令和6年に行く前に来年のこともあります。関係の会社の方々には,急に決まっても対応できないかと思いますが,秋ぐらいまでに決まれば,システムの改良等も御協力いただけるのではないかと思いますので,その辺だけでもまずスタートで一歩踏み出せれば大変うれしいなと考えております。主査という立場をいただきましたので,そこは何とかやっていきたいなと思いますし,機能面は大体何とかなるかと思いますけれども,操作性やイメージといった細かいところになりますと,いろいろとビューア等の設計思想があるわけですから,一部だけの変更,統一というのは難しいということも,私自身がシステム開発をしていた人間でもございますので,同感できるところでもございます。
そこで,どのようにして良い落としどころを作っていくことができるかという御意見について,この会議の外でも皆様方からいろいろお知恵をいただければと思います。渡部委員の御発言にもありましたように,教科書のほうである程度の形が見えてきますと,デジタル教材のほうもそういうことを反映していっていただける可能性もありますので,この検討はとても大事だと思っております。
それでは,最後に次回以降のスケジュールについて,事務局より資料6に沿いまして御説明をお願いしたいと思います。
【度會課長補佐】 事務局でございます。第2回は令和3年9月3日の金曜日,14時半から16時半の2時間で開催させていただければと思います。また,オンラインでの開催を見込んでおりますので,引き続きよろしくお願いいたします。
以上でございます。
【東原主査】
それでは,本日はこれで閉会といたします。委員の皆様,そしてオブザーバーの方,また,オンラインで傍聴してくださっている皆様方,どうもありがとうございました。

―― 了 ――
 

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