データ時代における学校健康診断情報の利活用検討会(第2回) 議事要旨

1.日時

令和元年11月15日(金曜日)13時~15時

2.場所

文部科学省5F1会議室

3.議題

  1. 学校健康診断情報の利活用について(ヒアリング)
  2. その他

4.出席者

委員

弓倉座長、浅野委員、田中委員、東委員、堀田委員、村田委員

文部科学省

矢野大臣官房審議官、平山健康教育・食育課長、下岡専門官、小林学校保健対策専門官、大塚課長補佐、粟野専門官

オブザーバー

説明者:内閣官房健康医療戦略室参事官 田中謙一
     京都大学大学院医学研究社会健康医学系選考副専攻長教授 川上浩司

※関係部局及び関係省庁からオブザーバーとしての参加があった。

5.議事要旨

<次世代医療基盤法について>
○ 医療機関での症例などのデータは将来の医療に役立つことは理解しやすいが、子供の身長・体重・視力等のデータは、本当に医療に役立つのか。
○ 次世代医療基盤法の意味は、学校健診等のデータを単独で扱うのでなく、他の健診や電子カルテ、レセプト等のデータとつなげるところにある。健康診断の結果とその後罹患した病気を結び付ければ、分かることも増えて、有意義ではないか。
○ 本人・保護者の同意は、学校現場では非常に丁寧、慎重に行っている。書面の同意は不要、拒否しなければ使ってもいい、という点は現場感覚からは引っ掛かる。
○ 法律上、次世代医療基盤法が個人情報保護法の特則として、文書で通知を行い、本人が拒否しなければよいことを担保したが、より丁寧な形で対応するのは問題ない。
○ 学校設置者や保護者の理解を求める上で、「匿名加工」が適正にされているかどうかが重要。次世代医療基盤法の求める「匿名加工」とは、単に個人を識別できないようにするだけでなく、医療情報に復元できないようにすることを求めている。主務府省は、匿名加工を適確に作成する能力があるか、必要な確認を行った上で認定している。さらに、認定事業者等が実際に医療機関や学校の設置者に対して必要な説明をしていく努力が重要。

<学校健康診断結果の活用について>
○ 学校健康診断は健診のみで終了ではなく、事後措置として結果を21日以内に本人及び保護者に返すことが法令上定められている。精密検査が必要な場合のみならず、異常なしも含め、毎年各家庭に返している。また、保健指導等の健康教育にも健康診断結果を生かしている。
○ 学校健康診断結果も用いた経年分析により、例えば、3歳時の口腔衛生状態と中3時点の虫歯数は因果関係があるが、1歳半時点の状態とは関係ないという分析結果から、どの段階での保健指導が重要なのかが見えてきた。縦断的につなぐことで得るものは大きい。
○ 親の学歴や年収との関連についての調査分析は、社会的に大きな問題を生じさせ、強い反対を受けることもある。ただ、海外には多くの研究があり、特にアメリカでは社会疫学(Social epidemiology)の分野で、親の学歴、年収、職業等が子供の健康に与える影響がよく知られている。
○ 大学の学校医をしているが、健康課題のある学生について、過去のデータをつなげて見たい場合がある。健診結果のデジタル化は重要である。
○ 今の学校保健統計調査報告書でも分析すると非常にいろいろなことが分かる。今、子供たちがとても不思議な体重の変動をしているが、集団としてのデータがなく、個人を追っていたのでは絶対分からない。

<学校健康診断結果の活用にかかる学校現場や保護者の理解について>
○ 学校健診結果を本人が自分で電子保存するならよいが、電子情報を個人に返すのを、学校を介してやると難しさが生じる。ひとたび学校の管理下から離れて、どこかの業者なり何かのシステムがデータを加工するところで何かが起こらないかという懸念は残る。少なくとも全国統一でそのようなことができるのか疑問である。ビッグデータ活用も、お金が絡む点に懸念が残る。
○ ビッグデータとしての活用に関して、本人や保護者の知らないところで何かあってはならないし、理解を得た上で行わなければならないので、学校現場は保護者にきちんと説明をしなければならない。しかし、保護者世代も教員自身も、自分のデータが活用されることへの理解がまだまだ進んでいない現状において、いきなりビッグデータの活用の話になると、ハードルが高く、学校現場も負担感を感じてしまう。
学校のICT化、デジタル化を進め、まずは個人に返すことから始め、保護者にも便利だと理解してもらった上で、次のステップへと進めれば、学校現場の理解も自ずと深まる。また、ゼロ歳からの母子保健の段階からデータをデジタルで積み重ねてきた世代なら、小学校でもハードルが下がると思われる。教員や保護者の理解を得るためには、一つ一つ積み重ねていくことが望ましい。
○ できることから進めるという観点では、学校健診結果の返却時にQRコードを付すのが最もハードルが低いが、これにより保護者も情報に興味を持ったり、集団の中の位置を知ったりすることでデータの価値を感じ、電子情報を読み取るという習慣もできる。
○ 学年便り等のお知らせを学校のHPに掲載することは広く行われており、いつでも参照できるようにしておくことの価値が認められてきていると思われる。健康診断情報をQRコード等で返すということの価値も、十分理解されるのではないか。
○ 重要なのは学校長であり、校長会の場などで話をするとよい。心と体の健康なくして学力は上がらない。家庭との関係では、虫歯がないのか、虫歯だらけなのかが、家庭環境により二極化している。生活指導にも結び付く話でもある。
○ データ化の負担が養護教員に集中しないよう、学校の情報化、すなわち学校健診情報を簡単に取り扱えるような校務支援システムや、学校健診結果がQRコードですぐに出せるようなシステムを整えることが必要である。
○ 現在の技術では、手書きデータもOCRで相当正確に読み込める。予算さえ確保できれば、デジタル化のための養護教諭等の手間もかなり減らすことが可能である。
○ 得られたデータが完全に匿名化されるのであればそれほど深刻に考えなくても、匿名化が納得いく形で十分浸透すればよい。他方、個人情報として扱うデータは、本人への返却を前提に、万人がよく理解できて、日常的な、あるいは将来にわたる健康管理に活かせるデータとすべきであり、その内容をどう選ぶかが重要となる。

<マイナポータルを通じた本人への情報提供について>
○ 学校ごとのクラスや出席番号により情報管理すると、学級編制との関係で効率が悪い。
○ 学校現場でマイナンバーを直ちに扱うことは難しいが、何らかの一意になるユニークな記号により一人一人の情報がつながることは望ましいため、学校現場の負担を増やさず実現する方法を今後も検討しなければならない。具体的には、マイナンバーとも対応させて、教育委員会が一意に振った番号が、校務支援システムの名簿に入った形で学校に降りてきて、現場の教員からすれば何か番号がついているだけだが、その番号をキーにしてすべて管理できる、というような仕組みを自治体に義務付けるような法制度がないと、なかなかうまくいかないのではないか。必要であればマイナンバー法も改正して仕組みを整えることが必要である。

お問合せ先

初等中等教育局健康教育・食育課

保健指導係
電話番号:03-6734-2918

(初等中等教育局健康教育・食育課)