新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議(第8回)議事要旨

1.日時

令和2年6月30日(火曜日)15時00分~17時00分

2.場所

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、WEB会議にて開催

3.議題

  1. これまでの議論の整理について
  2. その他

4.出席者

委員

宮﨑主査,岡田主査代理,阿部委員(代理尾上氏),石橋委員,市川宏伸委員,市川裕二委員,一木委員,大出委員,片岡委員,金森委員,北村委員,木村委員,滝口委員,竹中委員,田村委員,野口委員,東内委員,日詰委員,佛坂委員,松倉委員,真砂委員(代理山下氏),山口委員,山中委員,吉藤委員

文部科学省

浅田総合教育政策局長,蝦名大臣官房審議官(初等中等教育局担当),八田特別支援教育課長,佐々木特別支援教育企画官,分藤初等中等教育局視学官,若林特別支援教育課課長補佐

オブザーバー

本後オブザーバー(代理田中調整官・加藤専門官),西牧オブザーバー,梅澤オブザーバー

5.議事要旨

【委員】新型コロナウイルス感染症に関連して、地方自治体の長にとって最も難しいのは学校を臨時休業させるか否かの判断であった。これから最も重要になってくるのがオンライン教育の充実・強化であり、特別支援学級の児童生徒についても、1人端末機1台を持ち、家庭でオンライン学習する環境を早く準備するということが、我が国全体の喫緊の課題でもあり、これをさらに速度を上げていく必要がある。これは、学校を臨時休業させるか否かの問題と同時に、障害ある子供も将来在宅で働いたり、学校に行けない子供がオンラインで学んだりすることにもつながる重要な問題。
また、学校を閉める必要があったのかどうかについては、専門的な見地から一度検証しておくべきである。多くの医師会の考え方は、子供は感染しにくいので、学校を臨時休業させる必要はなかったというものであったため、専門家と文部科学省で一度は検証しておく必要があるのではないか。

【委員】4月に就学する医療的ケアが必要なお子さんの保護者の付き添いが外れるのに時間がかかり7月や9月になることも少なくないが、お子さんの自立の観点からも保護者の負担軽減からも、早く保護者の付添いが外れることが望ましい。資料に早期からの相談・支援と、そして就学前からの支援の充実という言葉があるが、就学相談の中で就学内定を行った後速やかに、医療的ケアが必要なお子さんの就学後の教育開始に向けた具体的な準備や観察、学校医や指導医等の連携を行い、スムーズに就学を開始できるようにする旨を、「障害のある子供の学びの場の整備・連携強化」の中で記載していただきたい。
「特別支援学校における教育環境の整備」の中で重度・重複障害について述べられているが、現在の学級編制基準は、強度の行動障害や医療的ケアの様々な対応があることが考慮されず、障害の種別と重複の有無で定められている。医療的ケアの有無や内容は受け入れる学校にとっても大きなファクターであるため、医療的ケアの状態についても学級編制基準に含めるなど、学級編制基準を今の状況に合わせて大きく見直す必要がある。

【委員】「障害のある子供の学びの場の整備・連携強化」の就学前の部分で質問だが、5歳児健診の全国での実施率が分かれば教えていただきたい。
次に、就学相談で成長事例を提供するというのは素晴らしい取組であり、就学相談の担当者としても是非活用していきたいと思うので、できれば、就労など成人した後まで含めた成長事例を考えていただきたい。また、就学先の小学校によって支援の内容にばらつきがあるのが現状だと思うので、どの小学校に行っても支援が受けられるというようにこれからも努めていただきたい。

【委員】「小中学校における障害のある子供の学びの充実」の部分に管理職のリーダーシップという項目を入れていただいたことは大変ありがたいが、管理職の研修にも触れていただきたい。管理職に昇任する際、それぞれの職層に応じた研修があり、まず、管理職にきちんと特別支援学級や通級による指導、特別の教育課程のことを理解していただくために、管理職としての特別支援教育に特化した研修も必要だと痛感している。
「特別支援学級と通常の学級との交流及び共同学習の拡充」に関して文科省から交流及び共同学習ガイドが示されているが、平成31年の3月に改訂されたものの事例に特別支援学級と通常の学級との交流及び共同学習の事例が含まれていない。特別支援学級と通常の学級との交流及び共同学習を進めていくためにも、そうした事例を示していただきたい。
「自校通級を進めるための環境整備」についても記載があるが、通級による指導を受けているお子さんの多くが他校に設置されている通級指導教室に通っていて自分の学校で指導を受けられていることは少ないと思う。そこで、教師の巡回指導や、ICTを活用した遠隔による専門的指導が必要となるが、そのつながりが分かるように書いてほしい。
2.に「小中学校における障害のある子供の学びの充実」について記載がある。後に記載されている教師の専門性の部分にも関わってくるが、特別支援学級の教育課程の充実や学びの充実について記載されている。自閉症など、知的障害以外の特別支援学級のお子さんも増えているところなので、特別支援学級の学びの場の充実というような項目も入れていただきたい。

【委員】「就学前における早期からの相談・支援の充実」の保護者への具体的な情報提供というところで、やはり就学先決定というものは、保護者にとって非常に負担が高くストレスの高まることだと思うので、就学相談では特別支援教育全体の概要について情報提供していくのは当然であるが、権利条約や差別解消法の背景も含めた情報提供、転級や転学の手続方法、教育支援委員会の決定方法、学校での合理的配慮の意思表明の手続、学校と合意形成がうまくいかないときに保護者はどうしたら良いかなど具体的な情報提供をしていただくと、就学先決定後も柔軟に就学先を変えられることや学校と交渉しながら子供への支援を続けられるということが分かると思う。
「小中学校における障害のある子供の学びの充実」の部分で通常の学級においても障害のある子供が在籍していることや交流及び共同学習を拡充していくというが書かれているが、そのためには、通常の学級において、全員が同じ内容、同じペースで、同じ方法で学んでいくという前提を変えていかなければ難しい。そのため、障害のある子供も含めた多様なニーズのある子供がいることを前提とした学級経営ですとか授業づくりについても言及していただきたい。
また、保護者支援は、小中学校においては触れられていないが、小中学校においても保護者への情報提供や子供を中心とした連携、ペアレントトレーニングなどの保護者支援をしていく必要があるということも言及していただきたい。

【委員】私立の特別支援学校では、国の学校施設設備のバリアフリー事業を使って建物を整備しようとしても制約があり、なかなか思ったような整備がやっぱりできていので、整備できる内容の枠を少し広げていただきたい。また、施設設備についても長寿命化を図るための、老朽化制度に関する耐力度テストについても見直していただくことができないか。
あわせて、ICT化の促進についても、限度額に上限と下限があり、下限であっても400~500万程度ということになりますと、小規模校がタブレット端末を購入するに当たっても、今は比較的1台安く購入できるので、それを上回るということになると百数十台のものを購入しなければならないというようなことになる。このため、そういった金額についても何とか調整していただけるとありがたい。
それから、子供たちの障害特性によって修業年限を延長するということも検討していただきたい。また、今年度、専攻科を設置する私立の特別支援学校にも修学費が頂けることになり保護者の負担が軽減されることになった。高等部卒業後の学びの場の選択肢が広がったとことにより大学や専門・専修学校に進学をしている子供たちもいるが、そうした子供たちの学びの場として専攻科も選択肢にあることも考えていただきたい。

【委員代理】障害者権利条約に基づくインクルーシブ教育をどう進めるかという観点をさらに強調していただきたい。
また、今年の5月に成立した改正バリアフリー法で公立の小学校・中学校のバリアフリーが義務づけになり、障害者差別解消法も施行されているが、そういった内容が入っていない。例えば、特に2012年の「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」では、権利条約を批准するまでの短期、批准してから以降の10年間の中長期で、このインクルーシブ教育を実現すると書いてあったが、2014年に批准してもう既に6年経っている中で、この権利条約が言うインクルーシブ教育がどこまで実現し、どういう課題があるのか、そういった観点をもう少し基本的な考え方のところとかで打ち出していただきたい。
さらに、障害のある児童生徒も、自分の住む地域の通常学校や学級に通うことを原則とするといった教育制度への転換が必要ではないか。また、保護者への具体的な情報提供というところで、「合理的配慮の提供」とあるが、障害者差別解消法に基づき、「本人・保護者の意思表明に基づく合理的配慮の提供」としていただけないか。
その次の次の行の「更に、特別支援学校や特別支援学級等に」という言葉があるが、その前では「小学校・特別支援学校双方で受けられる教育の内容」と書かれているので、それを受けて、「更に、通常学級、特別支援学校や特別支援学級等に」と、多様な形態全てでの事例ということを示すべきではないか。
あともう1点、その後の就学相談の充実の部分で、「就学相談担当者の専門性向上を図ることも重要である」という点は非常に大切なことだと思う。その専門性の中には、障害者権利条約の理解や障害者差別解消法、特にその合理的配慮というようなことの理解も入るということで、障害者権利条約や障害者差別解消法も含めた専門性の向上ということを入れていただけないか。
次に「障害の有無に関わらず、全ての子供ができる限り通常の学級に在籍して必要な時間に特別な指導を受ける取組を行う自治体」などの多様な取組を踏まえ検討することには非常に期待をするが、ここに、原則、居住する地域の小学校・中学校の就学通知をまず出して、その上で、本人・保護者が特別支援学校を希望される場合は申出に基づいて選択ができるという仕組みを取っている事例も書き加えていただきたい。
「小中学校における障害のある子供の学びの充実」に関連して、改正バリアフリー法の成立を踏まえ小学校・中学校のバリアフリー化が義務づけされたことを踏まえて環境整備を進めていく必要があるということを明記いただきたい。バリアフリー法に基づいて数値目標を立て、実施計画をつくり、予算措置を行って実施をしていくことにより基礎的環境整備を進めていくことが重要。
高等学校に関しても、特に入学のハードル並びに合理的配慮を、義務教育での水準で維持されるための仕組みを検討する必要があるということを書き加えていただきたい。

【委員】盲学校・聾学校の役割について書かれているが、特別支援学校のセンター的機能を強化するためにも、「また、そのためにも、教師配置を含めた特別支援学校の支援体制の充実も求められる」というような文言を加えていただきたい。インクルーシブ教育が進めば、近隣の小中学校等への就学を希望するケースが増えてくると思われ、例えば盲学校の在籍数が少なくなると、教員数は少なくなり、地域支援が厳しくなると考えられる。様々な連携強化が求められているので、「教師配置を含めた特別支援学校の支援体制の充実も求められる」書き加えていただきたい。

【委員】「基本的考え方」の中で、インクルーシブ教育システムの理念の構築について書かれているが、特別支援学校や特別支援学級の教育内容の充実が大きな課題になるので書き加えるべき。特別支援学校の学習指導要領が変わったというのは非常に大きな転換だと私は思っており、これからの新しい時代の特別支援教育のことを考えるときに、特別支援学級や特別支援学校の教育内容はどうするのか、教科学習の充実等も含めてこれからの教育を考える必要があると思っている。
次に、教員の専門性の最後のところに「国際疾病分類の改訂の動きを注視し、」と書いてあるが、教員の専門性に限った問題ではなくもっと大きな問題として、知的障害の概念、考え方、分類を、診断基準や診断カテゴリーの変化を踏まえて、発達障害との関係を含めて抜本的に見直しの検討を進める必要があるのではないか。
「障害のある子供の学びの場の整備・連携強化」の「特別支援学校における環境整備」について、特別支援学校の対象障害種ではないものの、成長とともに精神疾患の症状が顕在化し、特別支援学校で学習することが必要な者もいるため」と書いてあるが、これはどこの特別支援学校に就学することをイメージしているのか。就学基準に照らせば、病弱者しか考えられない。学校教育法第72条にある視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由、病弱者という分け方における知的障害、また、学校教育法施行令第22条の3項の規定というのは平成14年に医学・科学等の進歩等を踏まえて改定して以降18年間見直しがなされていないと等を考えると、この部分についての見直しが必要なのではないか。知的障害特別支援学校の状況を見ると、中学校の自閉症・情緒障害学級の少人数学級で指導を受けてきた生徒の中、知的障害を併せ有している方は、知的障害特別支援学校高等部に入学できるが、併せ有していない方は入学できない。また、入学の段階では知的障害と診断されたが、卒業時に療育手帳が取得できない場合もあると聞く。そういうことを考えると、知的障害という枠での考え方は見直さなければならないと考えている。
また「小中学校における障害のある子供の学びの充実」の部分に、障害のある子供と障害のない子供が共に学ぶ取組について、記述されているが、特別支援学校の児童生徒のことはどう考えるのか整理が必要である。文章全体の構成が、学校種別で書かれているが、障害は連続しているので、私は学校種別では語れないと思っている。

【委員】これから学校のバリアフリー化を進めていくことを環境整備のところに書いていただきたい。特に、発達障害について音や光等で苦手がある人が多く、国交省は、空港や駅でも対応ができる設備も入れていこうと言っている中で、新しい特別支援教育と言いながら学校が後からついていくのはもったいない。

【委員】医療の世界では、2013年に国際的診断基準が改訂され、知的障害を自閉スペクトラム症とか注意欠如多動症あるいは学習障害と横並びにして神経発達症というくくりにした。日本語版はまだ出ていないが、英語版ではICD-11でも同じ扱いになっている。知的障害だけを特別扱いするのはおかしく、例えば知的障害だけは通級による指導を使えないというのもおかしい。
それから、通常級、特別支援級、それから特別支援学校といった分け方は、知的障害のように無い方と有る方と重い方がいる障害では成り立つが、発達障害についてはIQでは測れず同じような分け方はできない。したがって、通常級にも発達障害の非常に重い方がいるかもしれず、逆に、特別支援学校には発達障害がそれほど重くない方もいるかもしれないという状況があるということを頭に入れないといけない。
そして、免許状については、確かに免許を作って特定の教師が担うより全体で発達障害の子供の指導に当たればよいという論になるが、養成段階の1単位だけでは不十分で、通常学級に発達障害の方が入ってきた場合に、いろいろな問題が起きてしまう原因になる。
また、強度行動障害は知的障害の特別支援学校の先生方が見ていると思うが、こういう方についても、最近、医療の考えでは、知的障害で起きている問題ではなく発達障害、特に自閉スペクトラム症の重さによって生じてくるものだというふうに考え方が変わってきているので、それを踏まえて再考していただきたい。
特別支援学校を不登校になっていた方でも漫画を描く才能が物すごくあり、不登校のまま卒業した後に、漫画で名前を上げている方がいたりする現状もあり、いわゆる異能者教育というものも、今すぐとは言わないが考慮していただきたい。イギリスでは以前から特別な才能を持っている人は普通ではなく特別な教育を受けさせており、十数年前から台湾、その後中国もそういう考え方を取り入れている。日本の教育はどうやったら普通になるかという旧態依然としたところもあるが、例えば久里浜等で異能者教育に取り組んでもよいのではないかと考えており、どこかへ書き込んでいただけたらありがたい。

【委員】全ての教師に求められる特別支援教育に関する専門性については、障害について学ぶのみでなく、多様な子供たちがいることを前提とした学級経営や授業づくり、例えばユニバーサルデザインの視点を用いるなど、そういったことに関する専門性が必要。
養成研修においては、いまだに現場でよく聞くのは、学習障害のある子供に対して「ノートはほかの子供と同じように書くべき」だとか、感覚過敏のある子供に対して「配慮ではなく、我慢をすべき」といったような声が通常学級の中で多く聞かれる。合理的配慮というものは子供が学びにアクセスするための子供の権利であるということを、改めて養成研修の中で全ての教員に対して伝えていくべき。その上で、通常の学級でどのような配慮ができるのか、合理的な配慮ができるのかということを具体的な手続とともに学ぶべき。
また、特別支援学級及び特別支援学校については、先日もまた体罰があったが、特に行動障害のある子供に対しては、教師が抑圧的に関わる関わり方しか知らないため、体罰に発展する危険性がある。そのため、行動問題のある子供についてエビデンスのある指導方法を学び、活用していく必要があると考えている。
ICTの活用については今回、踏み込んだところまでまとめていただいたが、コロナの影響も踏まえて、個別の教育支援計画や指導計画をICT化していくことは本当に必要だと思う。関係機関の連携を推進するに当たって、「連携してください」とただ言うだけでは本当に進まないので、計画を共有して、オンラインでケース会議をしていけるような仕組みを迅速に整えていくことが必要。ICTは自治体差や学校差があるので、今回のGIGAスクールの取組の中で強く全国で推進していければと思う。
最後に関係機関の連携強化の部分で、トライアングルプロジェクトについて記載がなかったので、トライアングルプロジェクトを踏まえて、福祉と教育の支援計画の共有したりケース会議をするなどの具体的な連携についても付け加えていただけるとありがたい。

【委員】ICT機器を活用した遠隔授業は、病気療養中の子供にとって非常に有用な方法であるが、コロナウイルス感染症への対応という、危機的な状況にあって遠隔教育が大きく進展しているというのは間違いないことだと思う。そのような中、授業のみならず、様々な大会あるいは行事などオンラインで開催する意義も出てきている。病気のために外出できない子供たちがオンラインで様々な大会に参加するということが今後も行うことができればと思う。
そのような点で、ICT 活用のパートにもコロナウイルスへ対応した記載があればよいと思う。そうすることによって、「基本的な考え方」WITHコロナ・AFTERコロナの時代においてのICTの整備充実という点とも呼応してくる。ICT機器を活用した遠隔教育というのは、今後、知識の伝達だけでなく、対話や、あるいは学び合い、教え合いの場になっていくということが大切であるということも、基本的な考え方として押さえられたらよいのではないか。

【委員代理】「特別支援学校の教師に求められる専門性」の重複障害を持つ子供の中で盲ろうの子供に言及していただいており、こういった形で盲ろうのことについて言及していただくのは大変ありがたい。盲ろう障害は情報の取得の補完関係にある視覚障害と聴覚障害が重複している点で特異な独自の障害になり、障害者権利条約の24条においても、特に盲人、聾者、盲ろう者という3つの障害分野を区分して、その教育の在り方について規定しているということなどを踏まえると、やはり我が国の学校教育の中で盲ろうを独自の障害として明確に位置づけて、盲聾の子供に対する高い専門性のある教育手法の確立あるいは専門性の高い教員の養成・育成などの取組が求められていると思うので、この辺りを明確に今回の報告の中では書いていただきたい。
また、先ほど高等部の修業年限の延長や専攻科の中でそういったことをやっていけないかというような話があったが、盲ろうという障害の特性から、やはり盲ろうのお子さんについては学習に時間がかかるため、高等部3年間では足りず、まだまだ学びの時間が欲しいという声をよく聞く。修業年限の延長や専攻科の活用など、今の学校の仕組みの中で柔軟な対応ができないかという点も書き加えていただきたい。

【委員】コロナ禍でオンライン教育が行われているが、臨時休業中に家庭学習の支援を行い、保護者からも「それが頼りだった」とのコメントを頂いていた。学校に来られないという状況は、実は在宅あるいは病院にいる訪問教育のお子さんと同様の状態とも言える。訪問教育のお子さん、例えば在宅訪問のお子さんは、全国的には、3人のお子さんを1人の担任が受け持って、週3回、1回2単位時間の授業を行うことを標準としており、実際これが限界である。訪問のお子さんも、このGIGAスクール構想等による情報教育環境を活用して、訪問教育プラス自宅での学習支援をある程度積み上げるための制度や人員について考えていく時期に来ている。
「医療的ケアが必要な子供への対応」に関して、医療的ケアに携わる看護師の位置づけを法令上も規定する必要がある。肢体不自由特別支援学校では常勤で勤務しており、他の校種でも医療的ケアが行われていく状況の中で、重要な役割を担う看護師を法令上位置付ける必要がある。
あわせて、文部科学省による就学支援に関する資料中に障害の種類や程度などについて記されているが、この中に医療的ケアに関しても、学校における考え方が整理できるような情報の柱として位置づけられるべきと考えている。

【委員代理】「障害による学習上又は生活上の困難について本人の立場に立って捉え、それに対する必要な支援を」ということが書かれているが、障害者基本法では、2011年の改正で、障害というのは権利条約の社会モデルを採用して、障害及び社会的障壁による様々な困難、制約と捉えている。このため「障害及び社会的障壁による学習上や生活上の困難」とすべき。 併せて、障害のある当事者が子供のときに、社会モデルやそういったことを教えてもらえれば、社会に出たときにもう少し苦労しなくても済むのではないかと思うことがある。そういう意味で、障害のある本人の立場に立って捉えるというのは、障害者権利条約や社会モデルをしっかり理解した専門性ということであってほしいと思のため、「権利条約や社会モデルを理解し」というような言葉が入らないか。
また、盲ろうの部分についても、盲ろうは一つの独自のカテゴリーとして書いていただきたいと提起させていただいているが、文章中、盲と聾というのと、盲ろうというふうに、2つの書き分けがある。「盲とろうの重複障害の」ではなく「盲ろうなどの重複障害の」と書いていただきたい。
ICTの関係で、特にこのコロナ禍での対応ということで、どこの学校現場も本当に大変な状況の中、いろいろ支援をしていただいたと思っているが、一方で、例えば聴覚障害がある学生が字幕やいろんな情報がやはり得られなくて困っているという話も聞こえてきたりしている。現在行われているリモート学習やオンライン学習が、視覚障害、聴覚障害あるいは盲ろう、肢体不自由、知的障害、発達障害などある全ての児童生徒が利用できているのか改めて検証し、課題の確認と提言を行っていく必要があるのではないか。特に情報へのアクセシビリティーや、あるいは情報機器を使うことが得意な人と不得意な人でディバイドが生まれてしまわないか、そういったことへの対応についても書いていただきたい。

【委員】論点整理でいろいろ書いていただいて、私としては非常にありがたい。3回目の会議で提言させていただいた意見は基本的に今も変わらないし、こういうことを環境整備としては整えていただきたいと思っているが、新型コロナが起こったことで、学校現場の話を聞いたり、自分の大学で起こったことを踏まえると、もともと積極的にICTを活用していなかった学校は子供に何をすればいいのかが分からなかったということである。対面の授業と同じ内容をオンラインでやろうとすると、無理が生じてしまったということもあった。これまでICTを積極的に活用していた先生方は、オンラインになっても上手に使っていると聞いている。そこはすごく大事なことだと思う。 実際、オンデマンドだったり、ビデオの授業をやっていると、ネットワークが有効なものと対面が有効なものがあることがあるが、これらを整理することが重要。その中でも、不登校の子供などオンラインのほうが学びやすい子供も出てきている。オンライン授業が終わって皆が登校できるようになったら、不登校の子供たちは置いてきぼりになってしまったという話を聞くことがあるので、コロナがなくなったとしても必要な取組を続けてほしい。
その中で情報保障の問題というのは、非常に重要だと思う。オンラインだから情報保障が必要なのではなく、常日頃の学習活動の中でも情報保障を求めることが必要であるし、教育、学校にとどまらずあらゆる情報通信が関係するため、経済産業省や総務省等とも連携して情報保障の環境を整えていただきたい。 先日、文科省の課長が、「コロナのこの状況では、できるところから、できる人から」というふうに言っており、熊本の教育長も同じようなことを言っていた。特別支援教育は、確かに個別の子供の課題があるが、やはりできるところからやっていかなければならない。教育の情報化に関する手引の新しい挿絵は、現場の養護学校の先生が描いてくれた絵だが、これはすごく参考になるものなので、ぜひこの教育の情報化の手引の新しい手引を現場の先生にも知っていただければと思う。

【委員】教師の専門性の中身が伝わりにくいと感じた。特別支援教育の定義との対応で、その教育の担い手に求められる専門性、それは自立活動だということを明確に打ち出して、今後の各方面の取組の後押しをしていただきたい。
校務のICT化について、個別の指導計画の作成や共有がこれまで十分に進んでいなかったとするならば、その背景は、特に小学校の通常学級の先生や特別支援学級の先生がそもそもなぜ作成しなくければならないのかという必要性や、どのような視点・考え方で作成するといいのか、関係者といかなる情報を共有するといいのか、つまり書式に何を情報として記すべきか、この辺りの理解が不十分であったり、作成に際して不安を抱えておられたりと、ここが一番の要因だろうと考えている。作成を支える体制としてICTの活用というのは有効だと思うが、一方で、個別の指導計画というのは自立活動の意義・理念と密接に関連していると、ここを十分に押さえた上で書式の検討には慎重さを要すると考える。

【委員】外国人の児童生徒の教育の充実について、群馬県の状況をお伝えさせていただく。
2019年6月に施行された日本語教育の推進法に基づいて日本語教育の基本方針が閣議決定されたことは、地方紙でも取上げられた。昨年の12月末の時点で、群馬県内の市町村では伊勢崎市が約1万3000人と最も多くの外国人の住民がおり、伊勢崎市教育委員会では、日本語教育の研究班が日本語を使いこなすレベルに応じて共通指標を設けて、一人一人に適切に適した教育に取り組んでいる。子供の日本語レベルや性格を把握するということで、柔軟で的確な指導ができると聞いている。この研究班が考案した日本語習熟度の共通指標の「日本語ステップ」では、話すこと、それから聞くこと、読むことの技能ごとに、挨拶や簡単な言葉を使うこととか、それから自分の名前を見分けることができるといったような発達段階を設定して能力を見極めて、効果的な教育につなげようとしている。
市の教育委員会では、巡回日本語指導のコーディネーターを創設し、担当教諭を配置して授業に参加して、外国人児童生徒の指導・支援に当たって、1人が数校受け持っている。このコーディネーターが、外国人の児童が少ないなどの理由から日本語教室が未設置の学校での教育の充実を図っている。
また、群馬県の教育委員会では、本年度より巡回型の日本語指導教員を県内に5小中学校、地区としますと、前橋市、高崎市、渋川市、安中市、中之条町に配置して、周辺の複数の学校に派遣して指導する取組を始めている。担当者は週に1日ずつ2~5校ぐらいを巡回してということで、その生徒が急増した場合については、年度途中でも担当校を増やしての対応も検討するとしております。こういったことを、外国人児童生徒は特別支援学校にも在籍をしているので地方自治体のほうでも同時に対応を図ってもらいたい。

【委員】教員の育成、専門性の向上については、校長として悩ましく思っている。また、自立活動の明確さをもう少し書いていただけたらなと思う。私自身は、個別の指導計画がきちんと書ける教員を育てていきたいと思いながら勤務している。
ICTの活用について、デジタル教材の普及が進んでおり、教科書にもQRコードが充実し、デジタル教材の活用が進められるようになっているが、知的障害のある子供たちの教材についてデジタル教材がどのように進んでいくのか見ていきたい。広島県では、ICTに関わってですけど、ICTを活用したクラス運営や教材提供が進んできている。家庭にタブレットの無い子供にも教育委員会が貸し出しを受け付けているところ。今からその可能性をどんどん模索しながら進めていきたい。

【主査代理】連続性のある多様で柔軟な学びの場の構築を進める中で、通常学級と特別支援学級それから特別支援学校で連続性がある学習内容が整えられるようになってきたが、唯一、知的障害の教育課程については別のものとなっており、通常学校の先生たちは大学でも学習していないのではないか。例えば小・中・高の算数・数学について学んだ先生も、特別支援学校の知的障害の算数・数学についての学習は担保されていないと思う。教科の連続性ということを考えたときに、知的障害の教科と通常の小・中・高等学校の教科の連続性を担保していくことが必要になってくるのではないか。知的障害の教育課程に関する内容をもうちょっと書き込んでいただけると良い。
肢体不自由や病弱、視覚、聴覚の障害のある子供が通える特別支援学校は少なく、通級による指導を受ける機会も十分に担保されていないため、これを、担保するため特別支援学校の総合化等により全県域で学びの場を整備していく必要がある。

【委員】香川県は小さい県なので、盲学校については幼稚部から高等部専攻科まであわせて在籍者が17名しかいない。先ほど、盲ろうの教育の記載があったが、盲学校の中でも教員のOJTが成立しづらい実態がある。教員の異動もあり、本当に専門性と一言で言うが、どうやってそれを高めていけるかというのが、今の課題。同じように聾学校も肢体不自由も病弱も1校である。
特別支援教育といったときにどうしても、専門性の高い特別支援学校から考えがちだが、まずは通常の学級から、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校というように先生方の意識を、全ての教員がどこでも取り組むものであるという意識を変えていくところから取り組もうとしている。先ほど就学前のところで、通常の学級での成功事例も書き込んでほしいという意見があったが、身近な事例から提供していただけるとありがたい。

【オブザーバー】特別支援教育総合研究所は来年度から第5期に入る。そこに向けて、これまで培ってきました特別支援学校を中心とした専門性だけではなく、通常の学校での様々な支援が必要な子供たちがいる中での授業の在り方などについても今後力を入れていきたいと考えており、同時に、障害種別の専門性も十分維持できるような取組も様々進めていきたい。

【委員】全国の特別支援学校の校長からアンケートを取ると、教員養成大学の指導の充実をしっかりしてほしいという声が非常に多く上がった。
知的障害と発達障害の子のことも含めて教育の連続性ということを考えたときに、知的障害とか発達障害のお子さんの教科指導の充実ということを考えたときに、特別支援学校や特別支援学級の先生が障害のあるお子さんたちの教科学習をどう充実していくかということに取り組んでいかなければ、連続性は生まれないと思う。特に自閉症等の発達障害のあるお子さんたちについては、情緒的な課題が苦手で、例えば、国語だと詩を理解することが難しい反面、説明文は得意であるなど、特性のある児童生徒もいる。そうしたことを踏まえて、知的障害のお子さんも含めて、特別支援学校や特別支援学級で教科学習をどのように進めていくのかを研究した上でないと、連続性というのは保障できないと思う。
特別支援学校に入学する前に、就学前機関をどのように利用しているのかについて、数校の特別支援学校を対象に調査した。障害のあるお子さんの幼児教育というのは非常に多岐にわたっているということが分かった。幼稚園や保育園だけではなくいろいろな専門家が関わっているので、連携が重要でトライアングルプロジェクト、家と教育と福祉の連携を高めていくこと必要だと考えている。

【委員】意見ではないが、最初に提起された件について今後はどういうふうにするのか、あるいはこの委員会で扱うべきかどうか、事務局あるいは主査に御検討いただけたらいいなと思う。



―了―

お問合せ先

文部科学省初等中等教育局特別支援教育課企画調査係

(文部科学省初等中等教育局特別支援教育課企画調査係)