通信制高等学校の質の確保・向上に関する調査研究協力者会議(第6回)議事録

1.日時

令和3年1月19日(火曜日)14時00分から16時00分

2.議題

  1. 高等学校通信教育の質の確保・向上について
  2. その他

3.議事録

【荒瀬座長】 お待たせいたしました。ただいまから、通信制高等学校の質の確保・向上に関する調査研究協力者会議の第6回会議を開催いたします。
本日は御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。
本日、ウェブ会議方式にて開催させていただきます。なお、先ほど酒井補佐から御説明がありましたように、傍聴者の方々にはYouTubeでのライブ配信を通じて傍聴していただいております。
では、会議を始めるに当たりまして、ウェブ会議を行う上での留意事項と、本日の配付資料等につきまして、酒井補佐から御説明をよろしくお願いいたします。
【酒井参事官補佐】 それでは失礼いたします。本日はウェブ会議方式での開催ということで、ウェブ会議を円滑に行う上での留意事項を、いつものことでございますが、お伝えをさせていただければと思います。
大きく5点ございますが、まず1点目、御発言に当たっては、インターネット上でも聞き取りやすいよう、はっきり御発言いただくよう御配慮いただければと思います。
2点目は、御発言の都度、お名前をおっしゃっていただければと思います。
3点目は、御発言のとき以外は、マイクをミュートにしていただきたいと思います。
4点目は、御発言に当たっては「手を挙げる」ボタンを押していただければと思います。
最後5点目、御発言の後は「手を下ろす」ボタンを押していただくといった点、御配慮いただけるとありがたく存じます。御協力のほどよろしくお願いいたします。
本日の配付資料でございますが、議事次第にございますように、資料1、資料1-1及び1-2、参考資料1及び参考資料2となっております。御不明な点等ございましたらお申出いただければと思います。
【荒瀬座長】 それでは、議事に入りたいと思います。
前回の会議の議論を踏まえて、通信制課程における主体的・対話的で深い学びの実現、観点別学習状況評価の実施に向けた取組について理解をより深める観点から、原口委員にヒアリングをお願いしているところであります。
本日は、まずは横浜修悠館高等学校長の原口委員から御発表をいただきまして、その後に、本調査研究協力者会議の審議まとめに向けた議論を進めてまいりたいと考えております。
では、原口委員から御発表いただきます。原口先生、大変お忙しい中ありがとうございます。今日は動画での発表ということでお聞きしております。事務局のほうで御準備のほう、よろしくお願いいたします。
【動画音声】 新しい生活様式の全日制で応用できる通信制における主体的・対話的で深い学びの実践について、報告させていただきます。よろしくお願いいたします。
本報告は2部構成になっています。第1部では、地歴公民科における問いの設定や、スクーリング・レポートの工夫を例に、深い学びを考えます。
第2部では、今年度、コロナ禍で実践した取組を紹介します。ポイントは、グーグルフォームを活用した対話的な学びと、観点別評価に着目したレポートの改定です。
それでは、まず第1部です。
今年度は、スタートからコロナ騒動で各学校が初めての対応に追われたことと思います。新しい生活様式が学校でも求められ、感染のリスクが高い学習活動として、対面でのグループワークや近距離での活動が挙げられています。つまり、今まで行っていた話合い活動ができず、離れていても学べる方法を模索・工夫していく必要があります。
文部科学省のホームページに、「主体的・対話的で深い学び」のイメージ図が掲載されています。「深い学び」は習得・活用・探究の過程や、各教科の見方・考え方、思いや考えを創造するなど、キーワードが述べられています。
今回のテーマは「深い学び」ですが、深い学びを実現させるためには、「主体的な学び」、「対話的な学び」とのバランスを取りながら授業づくりを行う必要があります。特に「対話的な学び」に関しては、今まで行ってきたことができないということを念頭に置き、場合によってはオンラインなどを活用しながら授業を計画していくことが求められます。
次に、全日制と通信制の仕組みを説明します。
全日制の「授業」に当たるものが、通信制の「レポート」になります。生徒は、基本的には、教科書を読み込みながら、レポート自学自習で作成していきます。レポートは一問一答や文章から抜き出す問題、自分の意見を書く問題など、教科・科目によって内容は様々です。
今回コロナ感染防止策として、全日制の先生も、家庭学習ができるように動画コンテンツを作成したり、課題を配信したりされたかと思います。通信制はもともと家庭学習が主なので、本校では「修悠館マイページ」と呼ばれる独自のシステムにより、レポート解説動画やレポートを完成させるためのヒントプリントなどを配信しています。
しかしながら、それらは知識の習得のためのものだったのではないでしょうか。まずは最低限抑えてほしいことを中心に作成したのではないかと思われます。
そこで今後、全日制でも、グーグルクラスルームなどG Suiteを活用して、問いを中心とした課題提示を行ったり、通信制でも、レポートの改定やスクーリングの工夫などにより、知識の活用・探究を意識することが必要なのではないかと思います。そうすることで、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善ができるのではないかと思います。
「基軸となる問い」という言葉を聞いたことがありますか? ぜひ「令和2年度版高等学校初任者のための授業づくりガイド」(神奈川県立総合教育センター発行)の87、88ページを御覧ください。地歴公民科のページではありますが、他教科にも応用できる視点であると思います。「新学習指導要領解説 地理歴史編」と「公民編」にも、問いの具体例が示されるなど、今から授業に取り入れていきたいキーワードになっています。
なお、「基軸となる問い」には3つの定義があります。鍵となる概念を含むこと、学ぶ価値があること、転移を促すことです。ここでは紹介にとどめますが、授業づくりガイドを読んでいただき、概要を押さえてほしいと思います。
これは昨年度、実際にスクーリングで使用したワークシートです。3回のスクーリングで1通分のレポートを完成させていきます。
お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、中国の単元が1時間、東南アジアで1時間なので、相当ぺースが早いことが分かります。従って、ポイントを絞ってスクーリングをしていかなければなりません。まず、レポート1通分の基軸となる問いを設定し、各スクーリングで本時の問いを設定します。今回は、その中でも生徒の学びに顕著な効果のあった問いを紹介します。2回目の「中国は本当の先進国と言えるのだろうか」です。
教科書を見てみると、中国についての記述は、人口世界一、GDP世界2位、農業大国、世界の工場、海外進出など、近年急激に成長を遂げ発展しているプラスのイメージの記述が多く見られます。しかしその一方で、環境問題や地域格差、一人っ子政策による少子化の進行など、課題も見られるわけです。
「中国は本当の先進国と言えるのだろうか」という問いによって、生徒は、先進国・発展途上国とはどういう国のことを言うのか、中国の強みと弱みは何なのかということを考え始めました。生徒の思考に刺激が与えられた問いの例であったと思います。
私のスクーリングでは、NHK高校講座の動画を見せることが多々あります。生徒のイメージを喚起するために、動画の活用は有効です。
特に通信制の生徒は、話を聞くだけでは内容が頭に入ってこないことが多いので、動画やスライドを多用して、生徒の学習内容の定着に努めています。
この回では、「中国の地域格差」がテーマで戸籍制度の問題点を扱っています。
中国には農業戸籍と非農業戸籍があります。農業戸籍の持ち主には農地が割り当てられますが、その代わり、都市に定住することができない仕組みになっているのです。
ある農業戸籍の家の娘が大学に合格しました。大学を卒業すれば農業戸籍から非農業戸籍に変わることができるため、父は娘だけでも都市に住ませて、安定した職業に就かせられるようにしたいのです。しかし、大学の入学金は8万円。一家の年収の7倍です。娘は大学に行くことができるのでしょうか。そんな内容です。
生徒は、食いつくように動画を見ていました。中国の成長をネットや新聞やテレビで目の当たりにしている生徒にとって、この動画の内容や問いは、固定概念に刺激が与えられたのではないかと思います。そして、その日の振り返りでは、問いに対する自分なりの答えが記述されていました。いろいろな情報、知識を総合して判断し、自分なりの結論に至る、とても有意義なスクーリングになりました。
もう1つ紹介します。ヨーロッパの単元で、EUを扱ったスクーリングでの問いです。
例えば、「EUの政策にはどのようなものがあるか」という問いにすると、生徒はすぐに答えを見つけ出します。しかし、これは知識を問う問いなので、深い学びにはつながりません。深い学びにつなげるためのステップアップとしての問いとしては良いと思います。
そこで、「EUの政策の中で最も成功したと言えるものは何か」という問いを設定しました。この問いによって生徒は、そもそもEUの政策ってどんなものがあったっけ、と知識の確認をします。そして、数ある政策を比較検討し、根拠、理由を持って、自分なりの意見を述べようとしていました。
このように、2つの問いを紹介しましたが、問いによって生徒の思考を刺激し、知識を再確認しながら、根拠を持って意見や考えを述べることができる問いが、生徒にとって学びが深まるのではないかと実感しています。
続いて、世界史を例に、問いを意識した授業づくりの1例を紹介します。
事前に1年間の学習計画を練り、レポートとは別に学習シートを補助教材として冊子にして作成しました。
まず、国名などの、学習を始めていくために必要な基礎的な知識問題を最初に設定して、世界史学習の準備を整えます。
各レポートごとの主題を「基軸となる問い」として設定し、この基軸となる問いにつながる小さな問いを、毎回のスクーリングの主題にしました。そうすることで、学びに一貫性を持たせることを心がけています。学びに一貫性を持たせることによって、毎回のスクーリングやレポートの何が一番大事だったのかが明確になり、生徒の学習の定着につながります。
教員から提示した問いで探究する経験を積んだ後、自らが問いを立て探究する経験にステップアップしました。次期学習指導要領の歴史総合では、学習全般において課題・問いを設定し、探究する学習が求められています。その視点を他教科・他科目でも実践していき、探究への可能性を探っていきたいと思います。
ある生徒が、自分で問いを設定し探究するスクーリングの後に述べた振り返りです。自分で考えて問いを設定し答えていく活動が有意義であったことを記述しています。また、自分なりの意見を持ち、様々な方法で表明することの重要性も感じてくれたようで、授業担当者としては、活動の狙いが生徒に伝わったのではないかと感じました。
今までレポートの解説が一問一答中心だったため、考える経験を積むことがありませんでしたが、問いを中心にスクーリング内容を構成したことで得られた声であったと思います。
昨年度、全てのスクーリングが終わった後、提出されたレポートのメモ欄に書かれていた記述です。私からの指示は全くありませんが、生徒自ら問いを立ててきました。
「これまで学んだ地理の学習をこれからどのように生かし、向き合っていくのか」。これは究極の問いだと思います。教科科目で学んだ内容を、卒業後の自分の人生に生かそうとしているのです。これ以上の喜びはありません。
後期の3か月間を用いて、問いを提示し続けました。継続することで、生徒にもトレーニングの効果が出てきました。最終的には、自ら問いを設定し探究する経験も積みました。そうすることによって、学習の楽しさや深さを実感したのではないかと思います。
なお、今年度も取組を進化させていきます。クロームブックやオンラインツールを用いて、問いの探究を計画・実施していきます。
次に、本校のレポート学習を通じた深い学びのための工夫を紹介していきます。
知識・理解を深めるための基本的な用語などの問い、思考・判断・表現力を深めるための問い、関心・意欲を深めるための問い。いずれにおいても大切にしているのは、必ず回答への道筋や手だてを示すことです。そして、学習の後半では、その手だてを応用することで回答に近づけるように、問いを設定していきます。また、各問いがどのような力を深めるためのものなのかが分かるように、観点を明確にし、テストとリンクさせることを大事にしています。
レポートの添削では、生徒の取組を褒めることももちろん大切ですが、その学習が今後の世界史学習にどうつながっていくのかを示すことで、生徒は学びの価値が分かり、学習の転移を促すことにつながります。
最後に、昨今、生徒同士や、生徒と教師が対面でコミュニケーションを取るような従来型の形式での学習が難しい状況での、スクーリング中の対話を通じた深い学びのための工夫についてです。
本校では、生徒の大半がコミュニケーションに強い苦手意識を持っており、生徒の意見を直接聞くことやグループワークが難しいので、その課題を解決するためにグーグルフォームを活用しました。生徒へ配付している補助教材にグーグルフォームへのリングをあらかじめ設置し、年度の最初に、生徒へ利用方法と趣旨を説明します。
このスライドは、教科書の地図を比較し、違いを読み取る課題を生徒に行ったときの実際の反応です。スクーリングを行うときには、生徒からの意見を分類分けし、その意見を基にスクーリングを展開していくようにしています。この工夫によって、大きな声を出さなくても、生徒は意見を表明することができ、また、その意見を全員で共有することができます。
この方法を行うときには、一度に出す質問を必ず1つに絞ることを意識しています。そうすることで、生徒があせってしまったり、混乱したりすることを防ぐようにしています。こうした取組は、新しい生活様式が求められる学校現場でも、きっと応用できると思います。
続いて第2部です。
今年度は、コロナ感染防止の影響もあり、6月は分散登校で、通常のスクーリングが再開したのは7月でした。昨年度末にクロームブックを常設する部屋を作り、そこでスクーリングを行いました。1人1台のクロームブックを用いて、様々な取組を行った1年でした。
通信制のスクーリングでは、コロナ前からもともと、他者と意見を交換したり、共有する機会が乏しい現状がありました。今年度のオンラインでの学びをチャンスと捉え、通信制のスクーリングでもICTの活用実践を積み重ねました。
そのうちの1つが、グーグルフォームで問いに対する自分なりの考え、答えを入力し、それを全体で共有することです。また後期には、他者の考えからどのような学びを広げていくのかというところまで発展させていきました。
スクーリングはこのような流れで行いました。ある日のスクーリングでは、民族・領土問題を学びました。スクーリングの冒頭で教員から問いを投げかけ、問いに対する答え、考えをグーグルフォームで収集しました。
収集後、生徒全体に共有し、自分以外の考え、表現の仕方などを確認する時間を設定しました。その後、他者の考えを得た上での学びを振り返りました。
今年度は授業時間の都合上、ここまでの取組でしたが、来年度以降、さらに内容の充実を図っていきたいと思います。
これは、問いに対する生徒の考え、意見です。ふだんはあまり多くを語らない生徒ですが、このように入力する機会を設けると、自分の考えを表現することができます。それだけでもこの活動の意義はあるのですが、内容を見ると、主観・抽象的な表現が見られます。また、何を書けばよいのか、これで合っているのかなど、自信なさそうに入力している生徒も多く見られました。
これは、他者の意見を得た上での学びの振り返りです。効果は大きく2つあったと思います。1つは、考えの再確認です。初めの入力のときに自信がなかった生徒も、自分と同じ考えの人がいると知ったことにより、自信を持つことができるようになりました。もう1つは、視点の追加です。自分では気づかなかったことに気がつき、視野が広がり、学習内容を深めていくためのきっかけになりました。
ここからは、最終である12通目のレポートに書かれた、1年間の振り返りを御紹介します。
12通目になると自分なりの問いも立てられるようになり、受け身の学習、レポートを完成させるだけの学習からの脱却が見えてきました。他者の考えを知ることは生徒にとって新鮮であり、この経験が、生徒自身の学習に対する意欲を高めたことと思います。
この生徒は、初めは自分の考えを入力することができず苦戦していたが、スクーリングの出席を積み重ねることにより、入力ができるようになったことを述べています。学びが単発にならず連続していくことでの効果を実感しています。
また、グーグルフォームで自身の考えや他者の意見を共有することの効果も実感しています。学ぶ力が身につくことを感じており、今年度の実践が生徒にとって有効であったことを示していました。
この生徒は、問いを探究する経験を積み重ねていく中で、探究とは終わらないものなのだということを述べています。人生を通して探究し続けることの大切さを実感するとともに、そこには問いが切っても切り離せないことを学びました。
この生徒は、最後の振り返りではありませんが、あるレポートの中に、こういったことを記入しています。レポートに取り組む中で分からないことに遭遇したので、自ら調べてみたようです。その経験を経て、じっくり考えたり調べたりすることが大切だということ、スクーリングで学んだことをきっかけに、積極的に復習したり、深く調べたりすることで、学びを最大限生かしたいとのことでした。レポートとスクーリングをうまく組み合わせることにより、生徒の学びは無限大であることを改めて知ることができました。
ここまでは、スクーリングでの取組を述べてきました。
次は、レポートの改定についてです。レポートの設問1では、教科書を一読し、知りたいことや学びたいことを記入する欄を設けました。学習の見通しを持たせるとともに、何を学ぶのか、何のためにこのレポートに取り組むのかを考えさせる仕組みにしました。
また、最後の設問では、レポートやスクーリングを終えての学びの振り返りを記入する欄を設けました。このレポートで学んだことを次のレポートに生かしたり、前のレポートの学びを振り返ったりすることにより、学び続ける仕組みを盛り込みました。
また、数値目標を立てることにより、量を書くことを意識しました。本校のレポートには、各設問に観点別評価を示していますが、この設問は、どれだけの量を書けたか、見通しを持てたかの、関心・意欲・態度にしています。
来年度に向けたレポート改定の展望についてです。
今までは評価にあまり触れてきませんでしたが、次期指導要領の実施が近づいてきたこのタイミングで、いま一度、レポートの評価について考える必要があると感じます。
自由記述欄には、量的・質的なルーブリックを用いて、生徒の学びの方向性、立ち位置を明確にしていきたいと思います。また、今まで関心・意欲・態度であった観点を、思考・判断・表現に変更し、レポート・スクーリングを通じて、これからを生きる生徒に身につけさせたい力の育成に努めていきたいと思います。
最後に、今年度、グーグルフォームをはじめとするICTの活用やレポートの改定などによって、生徒の学習にどのような変化が出たのかを知る1つのデータがあります。それはレポート完成率です。
レポート完成者とは、スクーリングに年間4回以上出席し、レポート12通を合格し、1月に行われる期末試験を受験する資格を持つ生徒のことを指します。
昨年度はレポート完成率66.7%に対し、今年度は87.5%と高いレポート完成率を達成することができました。これは、決してレポートを易しくしたわけではないのに、学び方を少し工夫したことにより、学ぶ意欲など、主体的に取り組む生徒が増えたことによると考えます。
令和4年度からは、新学習指導要領が実施されます。今後も、通信制の特徴を生かした主体的・対話的で深い学びの実現に向けて、我々も探究していきたいと思います。
以上で報告を終わります。御清聴ありがとうございました。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。大変分かりやすく、しかも本当に丁寧な取組をなさっていることがよく分かる内容であったかと思います。
原口先生、今、これは先生の学校の複数の先生がなさっている御発表かと思うのですが、追加して何か補足いただくようなことはございますでしょうか。
【原口委員】 御視聴いただきありがとうございました。前半部分は、今年、神奈川県の初任者研修のために作成したものです。そして、令和2年11月24日、第1回の文部科学省主催の定時制・通信制の研究協議会の神奈川県の事例としても紹介したものでございます。
後半については、本日のために、本校で行っている主体的・対話的で深い学びの実践におけるICTを用いたスクーリングとレポートの工夫と、そしてレポートの観点別評価の定着、これからルーブリック評価導入の試作を御覧いただいたということでございます。
もう1つ、委員の先生方だけにお配りしてあります資料として、本校の5本のレポート添削事例があると思うのですが、よくできているレポート、それから再提出のレポートがある中で、一番の課題と感じているものは数学入門のレポートでございます。
見ていただくと分かるのですが、数学Iの前に置いてある学校設定科目でございます。小中学校9年間不登校の生徒が、引き算ができない、掛け算九九が定着していない。最後のところで、本人が「割り算が本当に嫌いです」と、漢字で書けるのですが、九九がなかなかできず、28引く1ができなかったり、そういう生徒が現実には何名もいる。そういう生徒に1対1で丁寧に取り組んでいかないと、しかも、取り組んでも学力の定着が難しい。このような厳しい現実が実在しているということが、通信制の大きな課題と感じております。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。では委員の皆様からの御質問等をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。お手をお挙げいただけるとありがたいです。
では内堀先生、お願いいたします。
【内堀委員】 すばらしいご報告をありがとうございました。レポートの部分とスクーリングの部分と、どちらも工夫をされていたと思うのですが、生徒の学びがどんどん深まっていくのが感じられる報告で、本当にすばらしいなと、全国の通信制がみんなこうなってくれたらいいのになと思ったところです。
一点お聞きしたいのは、授業というかスクーリングのほうは、報告された先生御本人のお言葉にもあったように、まだ道半ばで、これからやっていきますということなのですが、レポートというか添削のほうがすごく成果が上がっている感じを受けたのですが、通常の添削指導だと、多分あそこまで行かないのではないかなと思うんです。例えば全日とかでも、毎日授業をやっていても、ああいうふうにどんどん深まっていくためには、相当な伴走といいますか、寄り添って指導をしていくという部分があったり、あるいは生徒同士で深め合うという部分があったりしないと難しいのですが、通信制の、いわゆる添削指導であそこまでどんどん深まっていくというような理由として、どんなものが考えられるのかと。レポートが問いを立てられていて、それが本当にすばらしいなと思ったのですが、それだけではないような、もう一つ何かキーがあるような気がするのですが、そこを教えていただけるとありがたいと思います。お願いします。
【荒瀬座長】 ほかにはいかがでしょうか。まとめて原口先生からお答えいただければと思いますが、いかがでしょうか。
森田先生、どうぞ。
【森田委員】 本当にすばらしい実践報告をありがとうございました。私も通信制の高校の生徒さんたちの学びをずっと見させていただいて、特にレポートの完成者のパーセンテージの上昇ですとか、本当に先ほど内堀委員が言ったとおり、すごくすばらしい成果が上がっているということを認識いたしました。
私は視点を変えて質問させていただきたいのですが、こういった取組をするのに、やはり先生たちが、最後に言っていましたが、先生自身がやはり探求者となって、よりよい改善をしていく。それこそ先生たちが主体的に学びを追求していかなければいけないと思っています。これについて、学校全体でどのような方針を持っているのか。今回参加していただいて成果を上げた先生たちは、どのようなキャリアを持った先生たちなのか。校長先生はどのような形で先生たちを勇気づけているのか、励ましているのかとか、そういった学校全体の雰囲気みたいなものも、一つお聞かせいただければと思っております。よろしくお願いいたします。
【荒瀬座長】 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
よろしいですか。また、ありましたら手を挙げていただくということで、原口先生、今、内堀先生と森田先生からの御質問ですが、お願いできますでしょうか。
【原口委員】 まず、内堀委員からいただきました、レポート添削のみではない工夫は何かということですが、本校はコース制ではなく、科目によって選べる、日曜講座以外のIT講座と平日講座を持っております。一番多く生徒が取っているのが、実は月曜日から木曜日まで連続して行っております平日講座でございます。
ですので、回数的には、必要出席回数は少なくて済むのですが、平日講座において、もう必要回数をクリアしている生徒も出席してきます。その効果が一番大きいと感じております。学びの連続性という形です。
日曜日プラス1日か2日というのが通信制の基本かと思いますが、13年前に神奈川県が新しいタイプの通信制として本校を発足させた高校改革において、平日講座を作ったことが成功していると思っております。
2つ目の、森田委員からの質問でございます。教員自身が探究者となっていく学校はどのような雰囲気であるのか。非常にありがたい御質問です。
今日、声として出演した2人は、教員になって7年目、本校着任2年目の中堅職員でございます。
本校は13年の間に12年間、文科省の研究開発事業に手を挙げてまいりました。毎回、この研究開発事業は、研究のためのものだけではなく、全て実践に落とし込んで、目の前の生徒のためにやっているものでございます。これが今、4期目の研究開発事業に取り組んでおり、最終年度なのですが、これを担っているのが、初めて、平均年齢37歳という13名の若手で担い始めました。この効果が大きいと思います。
地歴や理科では、切磋琢磨して、職員がお互いの授業、スクーリングを見合って、これは取り入れよう、これはいいという形で、ベテランがそれをうまく利用して、修悠館スタンダードというレポートのユニバーサルデザイン、そしてスクーリングのユニバーサルデザイン、そういうものをつくり上げてきて、教員同士が学び合える土壌があります。
これも、私が着任する前から、本当に13年かけて積み上げてきたもので、私自身も本当にありがたいと思っているところでございます。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。今お答えいただきましたが、加えての御質問はよろしいですか。
では、後からまた、内堀先生、森田先生、加えての御質問がありましたらお願いするとしまして、賀澤先生、お願いいたします。
【賀澤委員】 賀澤でございます。横浜修悠館ならではの取組に、少し仰天をしているところなのですが、ただ、知りたいのは、教員たちの作業ボリュームの話です。ここまで持ってくる上での、通信制課程における教員たちの作業ボリュームの問題。
もう1つは、生徒の側から見た学習ボリュームというか、通常の通信制高校で学ぶ、あるいは作業する範囲からいくと、ちょっときついのかなという気も、今の説明の中では思ったわけですが、教員の側の作業ボリューム、それから学ぶ側の学習ボリュームについてのバランスは取れているのかどうかをお伺いしたい。
以上でございます。
【荒瀬座長】 ありがとうございます。
中西先生、お願いします。
【中西委員】 ありがとうございます、中西です。先ほど原口先生から学びの連続性というお話がありましたが、通常はそういう連続性を持った形でできない、できていない学校が多い通信制において、先ほど御説明にあったグーグルフォームなどでやり取りをするということが、それが効果としてどの程度あるとお考えなのか、その辺りのことを伺いたいと思います。
【荒瀬座長】 ありがとうございます。
では原口先生、お2人の御質問にお答えをお願いいたします。
【原口委員】 まず、賀澤委員からいただきました教員の作業ボリュームです。今、在籍生徒は2,051人です。活動している生徒というのが、うちでは履修登録をしている生徒のことなのですが、80%、8割1,640人が活動しています。
それで、教員数は会計年度職員含め40名ほどです。32クラスありますので、1クラス大体、在籍が六十四、五名で、来ているのが50名ほどでございます。毎日50名来ているわけではないので、その半分以下ぐらいですが、教員は17時に仕事を終えて帰ることが可能です。
そして生徒も、中学校の特別支援級から来ている生徒、そして外国につながる生徒もいるのですが、十分についていっています。
さらに、放課後にトライ教室という学び直しの教室や、レポート完成講座という1対1で学びを支援する講座がありますので、そこに出席してレポートを完成させたい、勉強を続けたいという生徒の側の希望も非常に高くて、学校中、本当に学びの空間、そんな感じがしております。教員も生徒も、今、その学びのバランスは、ボリュームのバランスは取れていると考えております。
次に、中西委員からの、通信制において学びの連続性ができていない学校も多かろうと。グーグルフォームでのやり取りの効果、とても高い効果を感じています。
通信制の生徒も、表現したくないわけではなく、皆、表現したいという思いを強く持っています。今まで学校に行ってなかったけれども、自分を見てほしい、自分の気持ちを表現したいという生徒はとても多く、それがグーグルフォームでの入力でならばできると。それを、瞬時にみんなの考えを共有できる、それがとても大きな効果として自分に戻ってくる。自分の意見が大きなスクリーンに映されるというのも、効果としては大きいと思っております。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。今、お答えいただきましたが、加えての御質問がございましたらお願いいたしますが、いかがでしょうか。
森田先生、どうぞ。
【森田委員】 もう1つ質問させてください。今いろいろ学びのプロセスを見させていただきました。通信制の場合には、生徒さんが、先ほどおっしゃったとおり、毎日来るわけではなかったりするわけです。そうすると、学校内、オンラインでもいいのですが、どんなふうにコミュニティを形成しているのかということが、私として聞きたいと思ったことでございます。
生徒さんたちは、学び合うというような場面がどこかにあるのでしょうか。それともやはり、通信制の特徴かもしれませんが、自学自習ということで一人一人が独立して学んでいるような感じなのでしょうか。ちょっとその辺の雰囲気を教えていただけますとありがたいです。よろしくお願いいたします。
【荒瀬座長】 では原口先生、お願いいたします。
【原口委員】 学びのコミュニティは形成されてきているところです。先ほど申し上げた、小中の学びが整っていない生徒に対しては、放課後のトライ教室というのがありまして、そのトライ教室には頻繁にリピーターが、ハードリピーターもいます。
そこでは退職教員が学習支援ボランティアとして入っております。同じ先生に同じ生徒が教えてもらいたいとして学びに来る、そういう空間ができているということです。
そして、外国につながりのある生徒に対しては、架け橋教室という名前で、ほぼ週4日、11時から午後2時まで、学習の場を設けております。そこにもやはり生徒が集ってきますので、そういう学びの空間として効果の高いコミュニティの形成もされているところでございます。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。ほかには。
内堀先生、どうぞ。
【内堀委員】 先ほどは名乗らずにすみませんでした。長野県教育委員会の内堀です。よろしくお願いします。もう1つ、教えていただきたいのは、約2,000人の生徒に、教員だけで約50人いるというのは、多分通信制としては教員の数が多いのではないかと思うんです。手元に標準法がありませんので確認できませんが、県単独で教員をつけておられるかどうかというようなこととか、それはどれぐらいなのかといったことを、支障がなければ教えていただければありがたいなと思います。お願いします。
【荒瀬座長】 原口先生、お願いいたします。
【原口委員】 県でつけていただいているのですが、通常プラスアルファという形で加配がついています。どんな学校にも、生徒指導加配などはついているかと思うのですが、本校には就労支援加配とかキャリア加配、それから、新しく今年から他校通級も始めておりますので、通級指導のための生徒13人に1人という国の基準に合わせた加配も3本ついています。そういう加配をもって、人数が少し増えているという形でございます。
【荒瀬座長】 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。
よろしいですか。私も、お話を聞いていまして、とても驚いたといいますか、あるべき姿と言えばそれまでなのですが、すばらしいお取組がこうして行われていて、通信制に限らず全日制も含めて、なぜこういった取組がほかの学校で日常的に行われていないのかと考えておりました。
ここの議論もそうですが、既にまとめも出ましたが、高等学校ワーキングで、高等学校の在り方というのをいろいろと検討して提言をしたわけでありますが、今のお話のようなことが進んでいくことが、切実な願いであるということなんです。
そこが、なぜ、それがうまく進まないのかという、原口先生、あるいは時乗先生も前いらっしゃったわけですので、原口先生や時乗先生から、どういうふうにしていけば日本の高等学校教育が、今おっしゃっていた――もちろん課題はおありなのだと思うのですが、それでも、こうして学びが少しずつ進んでいって、さらには深まっていっているという、こういう事実を厳然としていくためにはどうしていったらいいとお考えか、お話を聞かせていただけるとありがたいと思うのですが。
まず原口先生、いかがでしょうか。
【原口委員】 これはもう本当に、神奈川県が13年前に時乗先生を中心に立ち上げた、新しいタイプの通信制の仕組みに時代が追いついてきたと考えております。ぜひ時乗先生に御意見いただきたく。
あともう1つだけ、神奈川県がこれも施策としてやっています、初任者が5年たちましたら、2校目は定時制か通信制に丸をつけるというのがあるんです。そこで5年目の、初任校で力をつけた者たちが、みんな定時制や通信制に入ってくる。
本当に、5年ぐらい前まで通信制課程は平均年齢50代の後半だったのですが、一気にそれが平均年齢47歳にまで下がって、新しい風が吹いてきた。それがとてもいい形でお互い刺激し合って、ベテランもよくやります。中堅もよくやります。そういう中で、どんどん人が育っていく、いい施策だなと私は思っております。
【荒瀬座長】 では時乗先生も、重ねてお願いできますでしょうか。
【時乗委員】 時乗です。いきなりすごく大きなテーマを振られた感じがするのですが、発表の中にもありましたが、やっぱり、通信制の授業をいかに――授業というか、通信制の教育活動ですね、通信制の教育活動をいかに充実させていくのかという一つのポイントは、やっぱり報告課題というか、レポートというか、あれをどう作るのかというところに、ある意味全てかかっているという気がして、12年前、あの学校を創ったときに、今日も非常に懐かしいレポートの評価の表などが出ていましたが、やっぱりレポートの最後に、それぞれの観点を書いて、その観点ごとに評価をしていくというところから始まって、レポートをどう作っていくのかというところが、ある意味、最初の出発点だと思うんです。
当然、レポートをこうやって作ろう、そのためには生徒にこういう活動をさせようという前提でレポートを作っていますから、そうすると、そのレポートを前提とした面接指導をどうやっていこうかという形で、後がどんどんどんどん積み上げていくことができるという、これもある意味では通信制だからというところなのかも分かりませんが、じゃあ全日で何でできないのかという話になってくると、これはいろいろな御意見とか考え方があるとは思うのですが、全日って、ある程度教科書を前提に学習を進めるというような形で、普通教科はそういう形でやっているのですが、そもそも教科書が、数学1の教科書、数研の教科書などをぱっと開いてみると、僕たちが高校時代に教わった50年前とどこが違うのというぐらい、同じ感じのつくりがしてあるんです。
これは当然、教科によって随分と差はあるのだろうとは思いますが、やっぱりそういった意味では、あくまでも教科書を1つの題材にして、全日の授業などはずっと進めていくことを考えれば、その教科書をどう作っていくのか、あるいは、もっといくと、教科書をベースにして、自分が授業の教材をどう作っていくのかというところに、もっともっと教員の力が注ぎ込めれば、こういった教育活動も、いろいろなところでできるようになるのではないのかなとは思っています。
以上です。
【荒瀬座長】 ありがとうございます。あまり私がしゃべっているのはよくないかもしれないのですが、さっき原口先生が、平日に生徒がやってくる、それで学びの連続性がつくれるというお話をなさっていて、全日制というのは毎日来ているわけですよね、月曜から金曜まで、基本的に。
それで、そういう形をつくると学びの連続性というのが生まれるというのが、なかなか全日制を見ていると、毎日来ているのに、じゃあどうしてなのかなと思っていたのですが、今、時乗先生がおっしゃいました、教科書を教えているというのではなくて、何が大事なのかという、まさに、先ほどから出ていた「基軸となる問い」というか、本質的な問いをしっかりと生徒と教員が共有する中で学びを深めていくというようなことが実現すると、きっと、当然のことながら、全日制であれ、定時制であれ、通信制であれ、学びが変わっていくのかなというようなことを思いました。
もう1つ、大変感動いたしましたのは、今、原口先生のお話の中でもありましたが、さっき、生徒さんの感想みたいのが書いてあって、その中で、地理で、先生の授業はめり張りがあって本当に楽しい、みたいなことが書いてあって、先生が地理が本当に好きなんだなと思いました、みたいなことを生徒が書いているのがあるんです。
これってとても大事なことで、授業をしている教員が、やっていることがとても好きで、一生懸命になって学んでいることが、生徒にもちゃんと伝わっていて、学びの大切さというのが共有されているという、こういうことが本当に大事なんだなということを改めて思いながら聞かせていただきました。ありがとうございました。
ほか。中西先生、どうぞ。
【中西委員】 すみません、私、この後3時から授業なものですから。次の回はまだ、この後のテーマに意見を述べる機会はあるんですよね。何か進行がよく分かっていないので。いかがなのでしょうか。大丈夫でしょうか。
【荒瀬座長】 すみません、今日この後、事務局のほうから御説明、論点整理の説明をしていただいた後、具体的に議論もしますが、次回も御意見いただく機会はあります。
【中西委員】 じゃあ次回、骨子も含めて意見は述べさせていただきます。ここでちょっと失礼します。
【荒瀬座長】 はい。それと、中西先生、よろしければ御意見をメールで事務局に送っていただけるとありがたいと思います。
【中西委員】 分かりました。では先にそのようにいたします。すみません。
【荒瀬座長】 よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
ほかの委員の方、よろしいでしょうか。時乗先生、手を挙げていらっしゃいますか。
【時乗委員】 時乗です。一点補足させてください。僕がこういうことを言うと、すごくある意味、誤解を生むのかも分からないですが、今の修悠館の発表というのは、確かに僕はすごくすばらしいと思うんです。
でも、くしくも原口先生がおっしゃっていたように、週のうち何回か来ている生徒、要は、そこに学びの連続性がある生徒、それが大事なんだと。だから平日登校講座に来ることが大事なんだというような形でおっしゃっていましたが、だったら全日とどこが違うのという話に、僕はつながってくるような気がするんです。
だから、特に世界史などは、1単位について、面接時間って1時間ですよね。3単位4単位だったら年間に3時間4時間の面接時間でいいという形になっていますので、逆に言うと、その年間3時間4時間の面接時間で、いかにあれだけの学びを深める仕掛けができるかどうかというところが、本当の意味でも、僕は通信制の面接指導の在り方をどうするのか、あるいはレポートとか添削指導の在り方をどうするのか、そこの根っこに、これを忘れちゃうと、僕はいけないだろうと思うんです。
たくさん来ることを前提にしていろいろな教育活動を組んでいくと、本当に、じゃあ通信って何なの、というふうになってしまうので、やはりそこは忘れないで、それぞれの在り方を検討することが大切だと思っています。
ちょっと言い過ぎたかも分かりませんが、以上です。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。大事な御指摘をいただきました。
ほか、よろしいでしょうか。
では、原口先生、本当にお忙しいところありがとうございました。また今回、お使いになったものもあるということなのですが、今回のために作ってくださった部分もありますので、本当に、関わってくださっていらっしゃる先生方にくれぐれもよろしくお伝えください。ありがとうございました。
【原口委員】 はい、しっかりと伝えます。ありがとうございました。
【荒瀬座長】 それでは、次に移りたいと思います。
本調査研究協力者会議の審議まとめに向けた議論をしたいと思うのですが、事務局のほうで資料を用意していただいています。その御説明を、酒井補佐からまずしていただこうと思います。よろしくお願いいたします。
【酒井参事官補佐】 失礼します。事務局の酒井です。私のほうからは、資料1-1と資料1-2について御説明をさせていただきたいと思います。
今、荒瀬主査からお話がありましたように、本会議につきましては、今年度中が委員の皆様の任期ということもありますので、一定の議論のまとめを、ぜひお願いできればと考えているところでございます。
そういった中で、審議のまとめというところで、資料1-1は骨子案というところで御提案させていただき、また資料1-2は論点ということで、本日資料を作成させていただいたところでございます。
資料1-1が審議まとめの骨子案ということになっております。これにつきましては、これまで5回の会議を重ねてまいりました。様々な論点資料を出させていただいて御議論いただいてまいりましたが、その内容をそのまま記載させていただいているものでございます。
資料1-1、第1章が通信制高校を取り巻く現状、第2章が高等学校通信教育の質保証方策で、この会議で御議論を議論いただきました通信教育の現状の課題と対応方策、その対応策につきましては大きく4点で、教育課程の編成・実施の適正化、サテライト施設の教育水準の確保、さらには、6ページ目以降ですが、多様な生徒にきめ細かく対応するための指導体制の充実、主体的な学校運営改善の徹底といったところ、それを記載させていただいて、次点更新ということで、中央教育審議会の議論の状況等も追記をさせていただいた上で、今、この御提案をさせていただいております。
内容については、これまで各会議で見ていただいたものをそのまま記載させていただいておりますので、詳細な説明は割愛させていただきたいと思っております。
この8ページ目に、第3章というところを記載させていただいております。新時代の高等学校通信教育の在り方ということで、この会議でも秋口以降、各通信制高校にヒアリングをさせていただいたり、前回の会議でも御議論いただきました。その内容をここに、第3章以下に記載をしていくといったことをイメージしているところでございます。
その論点といたしまして、資料1-2を御参照いただければと思います。本日、主として御議論いただきたい内容というのが、資料1-2におまとめしている内容ということになっております。
まず1ページ目、検討の視点というところであります。内容は、これまでも御議論をいただいて御認識いただいているものかと思いますが、通信制課程につきましては、1つ目の丸ですが、近年では生徒層の若年化・多様化が進んでいる実態があると。そして、制度当初に想定されていた勤労青年を主とする生徒像からのシフトといったことが言われているところです。現在の生徒像に合った、令和の時代の高等学校通信教育の在り方、これは一体どういったものかというのが話の前提にあろうかと考えています。
「また」でございます、2つ目の丸であります。今日の情報通信技術の急速な発展といったところがあります。高等学校通信教育の質を飛躍的に向上させ得るような先端技術を効果的に活用した新しい学びの形を取り入れた学校が生まれてきているところでございます。ICTが基盤的なツールとなることを前提とした効果的な活用方法について、今後、実証的な研究を進めていくことが必要であると考えています。一方で、この会議でもヒアリングの中でも議論が出ておりましたが、ICTであれば全ていいのかと。そういったものでは当然ないと。
3つ目の丸であります。特にまた今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大というような状況もございます。この中で、高等学校の役割とは何なのかといったところであります。
例えば、生徒にとって安全・安心な居場所を提供するといった、いわゆる福祉的な機能というようなものであったり、教室内外の活動において、他の生徒と学び合って多様な考え方に触れ切磋琢磨するといった、社会性・人間性を育むといった社会的機能。こういった高等学校の持つ役割、これが新型コロナウイルス感染症の中でも再認識されるようになったといったことかと認識しております。
こういった高等学校の有する多面的な役割を前提にして考えていく。その上で、これからの通信教育の在り方は一体どういったことが考えられるのかといったところが、大きな検討の視点ではないかと考えているところでございます。
2ページ目をお願いいたします。
本日御議論いただきたい内容といいますか、今回、文章にしておりますが、この文章を参考にしつつ、ぜひ先生方にいろいろと御議論を賜れればと思っております。
2ページ目が、通信制課程において、高等学校教育として共通に身につけるべき資質・能力に関してであります。いわゆる通信制高校に通学する生徒さんが身につけるべき資質・能力とは一体どういったものかといったところであります。
1つ目の丸、2つ目の丸というのは、これまでも様々な場面で指摘を受けてきたところだと考えています。2つ目の丸の一番最後、4行目以降、「とりわけ」というところでございます。高校教育の期待されるものということでありますが、初等中等教育最後の総仕上げを行う学校段階として、社会で求められる資質・能力を全ての生徒に育み、生涯にわたって探求を深める未来の創り手として送り出していく。このことはこれまで以上に強く求められているといった点は、様々に指摘をされてきているところであります。
3つ目の丸であります。平成28年12月の中央教育審議会で、学習指導要領改訂に向けた答申をいただきました。この中で、やはり学校教育については、育成を目指してきた生きる力――中段になりますが、生きる力といったところ、これは改めて捉え直した上で、学校教育がしっかりその強みを発揮できるようにしていくといったことが必要とされて、そのために、教育課程全体を通して育成を目指す資質・能力については、何を理解していて何ができるのか、理解していること、できることをどう使うのか、どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るのか、この3つの柱に整理をするといったことが提言がなされたところであります。
この資質・能力でありますが、一番最後の丸、2ページ目、御覧いただければと思います。
学習指導要領は様々な審議がなされているところでありますが、いわゆる生徒が身につけるべき資質・能力というのは、全日制・定時制と通信制課程に違いがあるかというとそういうわけではなくて、通信制課程においても全日制・定時制課程と同様であると考えております。
育成を目指す資質・能力を整理した上で議論していくのは、恐らく資質・能力は目指すべきところは同じでありますが、教育方法の違いというところで、通信制課程特有の教育方法といったところについて、生徒の具体的な学びの姿を考えながら構成していくことが必要ではないかといったところで、記させていただいているところであります。
3ページ目を御参照いただければと思います。そういった上で、通信制課程において今後の学びの在り方とはどういったものかといったところであります。
1つ目の丸にあります、これは前回の会議でも御議論になったかと思います。通信制課程において必要となる資質・能力をバランスよく身につけるために必要となるものでありますが、通信制課程については、先ほどの修悠館高校の原口委員の御発表にもありましたとおり、添削指導・面接指導・試験といった通信制課程特有の教育方法を基礎としながらも、学びの質を重視した改善を図っていく。そのためにはどういったものが考えられるのかといった点が、大変重要な視点であると考えています。
今回の学習指導要領を申し上げるまでもなく、大きな柱として主体的・対話的な深い学びの実現化といったことが言われているところでありまして、学校教育の在り方といたしましては、それに向けた授業改善というのが、これはあらゆる課程、全日制・定時制・通信制課程に共通して求められているところであろうかと考えております。
そういった主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善をどのように実現していくのか、そしてそれを添削指導・面接指導・試験という通信制課程特有の教育方法と照らし合わせながら、どういったものが考えられるのかといった点は、非常に大きな課題であると考えているところであります。
「また」であります、2つ目の丸であります。当然でありますが、教育課程の実現といったところは、言わずもがなでありますが、教育課程と学習指導方法の改善と学習評価を車の両輪として考えていくといったことが必要だろうと考えています。
全日制課程においても、これまでも同様ですが、これまで以上に、この新しい学習指導要領の下では、観点別学習状況の評価を充実するといったことが指摘をされているところであります。恐らくこれについては、通信制課程についても同様であるところであります。
3つ目の丸でありますが、資質・能力のバランスの取れた学習評価を行っていくといった中には、論述やレポートの作成、発表、グループの話合い、そして作品の制作等のパフォーマンス力と、様々な多面的・多角的な評価が本来的に求められるといったところであります。さらには、総括的な評価のみならず、学習の過程における形成的な評価についても大変重要視されるというのが、高校教育を取り巻く状況であろうと考えております。
こういった中で、通信制課程において、いわゆる指導と評価の一体化といった中で、どういった指導方法、どういった学習評価というのが考えられるのかといった点は、大変重要な点であろうと考えております。
さらには、4つ目の丸です、「また」と書いているところでありますが、先ほど申し上げましたように、高校教育の役割といった点、学習機会、学力を保障するという役割のみならず、いわゆる生徒にとって安全・安心な居場所を提供する福祉的な役割とか、社会的な機能など、多面的な役割・機能を実現していくといったものが求められている。そういった中で、いわゆる学習はどういったことが考えられるのかといった点であろうかと考えています。
そうした中で、前回の会議で御議論いただいた内容でありますが、参考資料1に意見概要ということでまとめさせていただきましたが、この3ページ目の一番下のポツということで、少しおまとめをさせていただいています。
例えば前回の会議でいただいた御意見ですが、添削指導・面接指導・試験といった在り方、このそもそもの考え方を変えていく必要があるのではないかというような御意見がございました。
また、4ページ目にかけてでありますが、一方で、通信制高校も高校であり、まずはその認識に立って、改めてしっかりと考えていかないといけないということ。添削指導・面接指導・試験、そしてメディア学習を組み合わせて単位認定するという通信制課程の基本の在り方、この中で、今後、実証研究といったところを前回の会議でも御提案差し上げましたが、高校教育では何をすべきかといったことを意識しながら、その実現に向けて進めていく必要があるのではないかといったような御意見であったり、また、学校ヒアリングの中でも、定時制・通信制を併設することで様々な可能性が開かれていったという中、通信制課程においても、生徒の多様な学習ニーズを踏まえ、必ずしも通信教育の方法のみによらずとも、対面による教育方法を組み合わせて行うといったことも考えられるのではないか。さらには、添削指導・面接指導・試験の実施に関して、観点別評価を取り入れている通信制高校は非常に少ない印象もあると。通信制高校に観点別評価をしっかりと位置づけるとともに、探求的な活動をどのように展開していくかを考えていくことが重要ではないかといったような御意見が、少し簡単でございますが、まとめさせていただくとこういった御意見を承ったのでないかと受け止めているところであります。
こういった資料でまとめさせていただいていますが、こういった点を踏まえつつも、これからの高等学校通信教育の在り方ということで、どういった方向性が考えられるのかといったヒントを、ぜひ頂戴、御議論を賜れればと考えております。
そして、前回の会議でも申し上げましたとおり、令和3年度におきましては、また新たに通信制課程と定時制課程も合わせました実証的研究というのを文部科学省のほうで始めさせていただきたいと思っているところであります。そういった中で、今回この会議で賜りました審議まとめ等で御提言いただきました様々な論点を踏まえつつ、各学校に対して、文部科学省のほうから指定させていただいて、少しそういった研究を進めていただいて、高校通信教育のこれからの在り方について、さらに、この会議が終了後も、なかなかこれは、突然今年の4月から変わっていくというわけではないかもしれませんが、今後、中長期的な課題として受け止めさせていただければと考えているところであります。
説明は簡単でございますが以上でございます。よろしくお願いいたします。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。それでは、今御説明いただきました資料1-1と1-2について、御意見を頂戴できればと思います。御質問ももちろん結構でございます。
酒井補佐が御説明くださったものでありますが、資料1-1のほうは、基本的にこれまで議論してきたことをまとめていただいているということで、大きな変更点とか御意見がございましたらお願いしたいと思うのですが、どちらかというと資料1-2のほう、今後まとめていくということで必要になってまいりますし、また、回数的にそんなにたくさんの回数が取れないといいますか、場合によっては今日と次という形になる可能性だってあるわけですので、こちらのほう、特に資料1-2のほうに関して、たくさん御意見いただけるとありがたいと思います。いかがでしょうか。
では内堀委員、お願いいたします。
【内堀委員】 長野県教育委員会の内堀です。1-2に関してということで2点ほど申し上げたい、その上で、ちょっと感想めいたものになりますが、さらに意見を申し上げたいと思います。
1-2に関してですが、1-1の6ページのところとも関連するので、そちらを先に御覧いただければと思うのですが、6ページの上から3つ目の丸のところなのですが、非常に多様な子供たちが入ってきて、人的な支援が必要であるというようなことで、ここは現状をどうするかという話ですので、「ガイドラインの改訂等によりその趣旨を明確化することが適当である」ということで結構なのですが、これからにについて、先ほど御発表になった学校みたいな形の、毎日通えるものを入れるか入れないかということは別として、当初設計された通信制課程と、今ある通信制というのは全く別物だと考えたほうがいいと思うんです。
ですので、そういう意味では、教員を含め、それ以外の人的な支援をどうしていくかというようなことについて、今後の通信制の在り方として記載が必要であろうと。とりわけ、標準法の改正はやっていかないと、標準法どおりに人をつけて今の通信制がやれるとは到底思えないので、そういうことを一つ入れていただければありがたいなというのが1点です。
2点目は、1-2の4ページの一番最後のまとめですが、ここのところで、モデル校などを作ってやっていくということで、非常にいいなと思います。ただ同時に、最後のところですが、「先導的な事例の創出・共有を図っていくことが適当ではないか」という形でこの会議をまとめておられるのですが、先導的な事例の創出・共有を図るとともに、次回の学習指導要領の改訂とか、あるいは様々な法令等の改善というようなものにも資する、というようなことを入れていただいたほうが、私はいいのかなと思ったりします。それが、まとめに対する意見です。
あと2点は感想めいた意見ですので、記載していただくかどうかは御判断にお任せしますが、一つは、個別最適というようなことが各方面で言われて、今回の中教審のワーキング、特別部会、それから分科会、全部そうですが、個別最適と協働的ということで整理していただいていますが、その個別最適な学びの視点として、生徒の側から見て、自分に合ったという位置づけにしていただいているとは思うのですが、例えば学ぶ内容とか学びの在り方というものに対しても、個別最適ということが結構重要かなということを、今日の事例発表でも思いました。
というのは、例えばある単元について共通の問いを設定するとします。一方で、今日のレポートの中に「きみは」という質問があるんです。「あなたは」という。学んでいく上で、共通して学ぶものとともに、自分自身が、「私として」何をここで学びたいのか、何を学んだのかということ、それも個別最適なことだと思うんです。
そういった切り口がどこかで必要な感じがしていて、特にこういう、先が見通せなくて、変化が激しくて正解がないという時代において、1つの問いに対する1つの答えに近づくことだけではなくて、やっぱり自分は何を学びたいのか、自分は何を学んだのか、今どう思っているのかといった、パーソナルな、個人的なものを、これからは学びとしてしっかり入れていくということが必要ではないかと思っているということが1つです。
それから2点目については、前回の会議でも、委員のどなたかが御発言になりましたが、課程というものをどう捉えるかというのは、これからうんと重要になってくると思います。
高校ワーキングでも、これまでいわゆる普通科という学科に対して「普通科」という名称以外使えなかったのが、今回、それ以外の名称を付すことができるようにまとめたと思うのですが、そういう点では、課程についても、それがどういうものなのかというのをもう一回整理する必用があると思っていて、先ほど時乗先生もおっしゃっていたように、通信制のミニマムエッセンシャルというか、最低限はここですよというのはあるのですが、それを充実させようとしていくと全日に近づいていって、全員共通はここまでなのだけれど、プラスアルファでこういうことができますよ、というふうになっていくのだと思うんです。
全日制や定時制の履修と修得の話もそうだと思います。履修要件を厳しくすれば、履修段階で、もう修得以前に単位認定がされないということが結構今まであったと思うんです。例えば出席で、5分の1以上欠席した場合はもう履修要件の段階で駄目だ、みたいなことをやってきたと思うのですが、修得主義ということを徹底していくときに、本当に履修のミニマムをどの辺に設定して、というようなことを考えていくと、全日も定時も通信も真ん中に寄ってくる部分があると。全てではないですけれども、そういうふうになっていくのではないかなと思っていて、てすので、設定する基準とあるべき姿、あってもいい姿をどうとらえていくかということが、これからの施策として重要になってくるのではないかなと思っています。
本当に感想めいた、意見にもなっていないのですが、以上であります。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。
佐藤先生、手を挙げていただいていましたでしょうか。
【佐藤委員】 はい。検討事項2に限られると、今お話しすることはないのですが……。
【荒瀬座長】 いえ、どうぞ、全般で。
【佐藤委員】 よろしいですか。私は、私立学校関係の通信制課程の問題点などを先生方と共有するということで、この会に参加していたと思うのですが、残念ながら、この審議のまとめや、あとは論点整理、資料1-1、1-2に共通して、私立の通信制学校に関しての問題点を洗い出しながら、そこを改善していくというような観点が欠けているのではないかなというところがあります。
広域通信については言及しているのですが、通信制課程の設置条件そもそもの部分の審議とか、先ほど公立学校の通信制課程のお話を伺わせていただきましたが、在籍生徒数に対して、教員の数が私立と比較すると随分潤沢に入っているなという印象もありましたので、公立と私立では学校の成り立ちなども違うと思いますので、所轄庁と私立学校の関係性なども精査していただくことは、この質の確保向上に関する会議を設置する上では非常に大事な論点だったと思います。その点、改めて言及いただけるといいのかなと思いました。
以上です。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。
では時乗先生、どうぞ。
【時乗委員】 時乗です。お願いします。私も感想めいたところではあるのですが、1つ、人の問題で、横浜修悠館に限らず、本当にいろいろな面で課題を持っている生徒が入ってきていて、それで、高校を卒業したはいいけれど、あとが……となるような形の子たちがそれなりにいるんです。
だから、高校を卒業した、それでちゃんと社会に接続していく、いわゆる働くというか、そういう、高校卒業後の社会なり何なりへの接続というところをきちんとやっていくためには、要は、今までの教員が持っているスキルとか経験値といったものではなかなか難しいところがあるので、一部の学校には既に入っているように聞いていますが、例えばスクールキャリアカウンセラーみたいな専門的なノウハウを持っている人材を配置するようなことも、これからぜひやっていっていただきたいと思っていますので、そういった文言がどこかに入るといいかなとは思っています。
これも前回言ったところですが、やはり基本的に僕は、通信制の生徒だからこそ探求活動というのをもっともっと入れていく必要があると思うんです。
家で本当に教科書を見ながら、何を見ながら課題をやっている生徒たちが、一番生き生きしてくるというのは、そういった探求活動の場に出てきて、仲間たちといろいろなことができるというのが、やっぱりすごく大切だと思いますので、そういう探究活動というのを、もう少しボリュームを持った形で入れていただけるといいかなと思っています。
あとは、これも内堀先生の先ほど言った面接時間数などとの兼ね合いにはなるのでしょうけれど、やっぱり通信制の最大の特徴というのは、そういう、ある種マストでやらなきゃいけないものというのがすごく小さくて、あとは本当に生徒一人一人がいろいろな思いの中で時間を使うことができるというところにあると感じているので、やっぱりそういう、通信制ならではの特徴を生かした教育活動というのをもっともっと各学校は取り組んでいって、それがうまく探求の時間とか探求活動に結びつくような仕組みができるといいかなと思っていますので、そういったところもどこかに入れ込むことができれば、入れていただけるとありがたいと思っています。
以上です。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。
ほかに御発言いかがでしょうか。吾妻先生、どうぞ。
【吾妻委員】 東海大望星高校の吾妻です。よろしくお願いいたします。論点整理等拝見させていただきまして、おおむね私も同じような思いでございます。学びの在り方については、全日制であろうと通信制であろうと同じことが必要だということを、具体的にしっかりと示すと。3つの柱ですとか、観点別のですとか、形成的評価ですとか、キャリア教育ですとか外部検定ですとか、そういったことが通信制であっても必要なのだということをしっかりと明記をして、通信制だからできないのではないかということをしっかりと払拭していくということが、最も大事ではないかなと感じました。
そういう意味で、そういったことをまずしっかりと明記をして、全日制と変わらないのだと、生徒へのアプローチの仕方を、具体的に、通信制だったらどういうふうにやっていくのかというのを、みんなで研究しながら進めていくのだということを、しっかり進めるということが大切なのではないかと、今日の原口先生の発表などもお伺いして、特に強く感じた次第でございます。
あとは、先ほど原口先生の横浜修悠館のお話を伺っていると、教員数が非常に多くて、私学だとなかなか経営上難しいなというふうに、実際に感じたところです。
こういった形をしっかりと、教育の中身を高めていくためには、やはりそういった財政的な支援も、全日制と同じような水準までには補助していただけるような、経営基盤が安定をしていかないと、なかなか実現ができないのではないかと感じました。
あと、先ほど内堀先生もおっしゃっていましたが、やはり課程の問題というのは、これから少子化に向かって生徒が少なくなっていくと、ますます全日制と通信制の距離が縮まってきて、具体的には学校間のいろいろな軋轢がより強くなってしまうというところが非常に懸念をされているところでございます。そういった意味でも、その課程がどうあるべきかというところは、しっかり考えていく必要があるのではないかと感じました。
感想的な話で大変恐縮でございますが、以上です。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。日永先生、どうぞ。
【日永委員】 すみません、私も途中、別の学内の会議で抜けてしまったので、議論にちゃんと参加できなかったのですが、申し訳ありませんでした。
今伺っていて、本当に同じような、本当に感想めいた、また繰り返しのコメントになってしまうのですが、やはり通信制高校、今日も伺っていて、本当にきめ細かく一人一人に対応していくということが求められる、求めるのであれば、今、何人もの方もおっしゃいましたが、そこで働く人、これは教員だけではなくて、様々な職種の方がちゃんとチームをつくって、子供たちをちゃんとサポートできるような体制を、設置者に限らずつくっていけるように、行政の側もやっぱり支援するということも含めて求めることは必須だろうなと改めて思いました。
特に、サテライト施設の職員・スタッフなどもその中に入ってくるのだろうなと、どこかで思うところがあって、この間やっぱりいろいろなところで、たまたまこうやって名前が出てくるものですから、個別にいろいろな方から連絡をいただくのですが、相当やっぱり勤務状況、勤務実態が厳しいということを、よく私のところも耳に入ってきます。それはそうですよね。やっぱりこれだけの生徒をきめ細かく見ざるを得ない状態に置かれている中で、もちろん先生方の心身の健康にかなり影響が出ているというのは、これはもう通信制課程に限らないことですが、働き方改革という、今、目指している方向性を、やっぱり通信制高校にも当然当てはめるべきだろうなということを思いました。
なので、これまでは割と教員の免許を持たない方が指導することに対して、割と規制を強めるという方向性ではいろいろ打ち出してきたと思うのですが、それプラスアルファの部分が、やっぱりもうちょっと積極的に言えないものかなというようなことを思います。
それと、これも内堀先生はじめおっしゃっていたことですが、大学でもそうですが、PBL的な学習をもっと取り入れやすいようにする、探求活動というのがすごく大事だという中で、やっぱりスクーリングは最低限でやりつつ、本当は個人で独自の問題設定、あるいはグループで問題を設定して、実際に社会に出ていくとかいうようなことが、これは今の話で本当につながってきて、これになるとまた先生方の負担も大変にはなると思うのですが、何かもっと自由な探究活動、社会と直接つながれるような、これをやればキャリア教育にもつながっていくと思うのですが、いろいろな社会の問題を直接考えられるような、そういうことができるような自由度というのを、通信制だからこそ持たせてもいいのかなということを感じました。
すみません、あまり明確な意見ではなく、感想めいたもので申し訳ありませんが、以上です。ありがとうございました。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。
大河原先生、お願いします。
【大河原委員】 弁護士の大河原でございます。どうもありがとうございます。私も感想めいたものになってしまうのですが、何点か。
1点目は、やはり全日制の高校以上に多様な方がいらっしゃって、かつ、取り組みたいことを取り組ませてあげるというような環境が求められるということもあって、難しいなと思うのは、それをどう評価するのかというのがやはり難しいところなのかなと思っています。
先生方の御意見も伺っていて、恐らく現場でもかなり、その辺りは苦労されているのではないかと思うのですが、やはり通信制高校も高校ということで、そこを卒業された方というのは、全日制の高校を卒業された方と同様に、ある程度の課程をクリアしてきているという担保がされていないといけないというのはあると思いますので、その辺りの評価をどのようにするか。この1-2の3ページの上から3つ目の、学習評価のところでいろいろ書いてくださっていますが、こういった評価を、各教員の先生方がある程度バランスよく評価できるようになっていないといけないので、そういう意味でも、教員の方々の能力の向上というのもありますし、あと、偏りのないようなバランス感覚というところもすごく大事になってくるかなと思います。すみません、素朴な感想で恐縮です。
もう1つは、先ほど佐藤先生もお話しくださったように、私も、私立の通信制高校のお話があまりフォーカスされていなかったので、その辺りを報告書の中でもう少し言及していただけるといいのかなと思いました。
以上でございます。
【荒瀬座長】 ありがとうございます。今おっしゃった、教員のまさに評価能力をどう高めるかというのは、これは本当に大きな課題であると認識されていると思うんです。大事な御指摘をいただきまして、ありがとうございました。
日永先生は、これは先ほどの挙手をなさっているんでしょうか。改めてでしょうか。
【日永委員】 すみません、手を下ろし忘れただけでございます。申し訳ありませんでした。
【荒瀬座長】 分かりました。ありがとうございます。
ほかにはいかがでしょうか。賀澤先生、森田先生、この件についてはいかがでしょうか。
森田先生、ではお願いいたします。
【森田委員】 では発言させていただきます。全て、大体、今聞いたところによりますと、私の言いたいことは全て言っていただいたのかなと思いながら聞いておりました。
特に、いわゆる知識ベースからコンピテンシーベースに移行した中で、ミニマムな学習指導要領みたいなものをデザインしていただければいいかなと思いながらも、やはり高校として、ここまでは身につけてほしいというものが日本はあると。その中で、時間割がないという最大の特徴を生かした、先ほど日永先生もおっしゃっていましたが、プロジェクトベースの学びというのは通信制に合っているのではないかなと思います。
特に、私は今、STEM/STEAM教育に関わっているのですが、こういったものは今、全日制には全く――と言うと失礼かもしれないのですが、もちろん先進対応はやっておりますが、なかなか導入しにくいというのは、やっぱり知識の習得に多くの時間を割いている部分があるということもありまして、そういったものも何かできるなと感じていました。もちろん、こういったものが一つではないのですが、一つのアイディアです。
あとは、多様な生徒の話が出てきまして、本当に繰り返しになってしまうといけないので簡単に述べますと、生徒のコミュニティというものもやはり通信制の中には必要であって、これは「学びの実践共同体」という言葉があるのですが、生徒さんもコミュニティが必要なのですが、先生もコミュニティが必要で、先ほど少し出てきた中で言えば、教師教育という視点でいうと、非常に通信制というのは先生が伸びるための一つのいいきっかけになるのだなということを、横浜修悠館の事例から感じたものです。
これはここに書くかどうかは別として、非常に多様な生徒さんが集まってくる中で、画一的な学びから多様な学びへの視点の転換、そういった中で、やはり設置基準の中で、通信制高校は人数が少ないということもありますが、今回、コロナで分かったことは、実は先進的――進学校に限っては通信で学べる、オンラインで学べるのだけれど、通信制の高校の生徒に限っては、やはり対面で手厚くやっていかないとなかなか進めない部分もあったのではないかということもあって、通信だからオンラインでいいのではなくて、来なくていいのではなくて、むしろ通信だからこその寄り添い方があるはずで、そういったところは本当に教育の本質だなと感じていたところでございます。
そういう意味で、既に先生たちがおっしゃったことなのですが、そういったことを、感想めいたことではありますが述べさせていただきます。
以上です。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。
では賀澤先生、お願いいたします。
【賀澤委員】 賀澤でございます。昔話をするようですが、4年半前にウィッツ青山の事件があって、それをきっかけとして通信制に様々なスポットが当たって、様々な教育手法を横浜修悠館の先ほどの報告がございましたら、いろいろな方がいろいろな形で、通信制教育のありようを変えてきたところがあると思います。
ただ、これだけの様々な取組の中でも、やはり指摘されると大きな問題になりそうな学校も幾つかあるやに聞いているところであります。それは学校の大きさとか小ささとは全く別なところであるというふうに思います。
今回のまとめが、そういった学校にぜひ届いてほしいと思いますし、そこで学ぶ生徒が、少なくとも4年半前に戻るような実態をなくして、通信制を発展させていただきたいと思っているところです。極めて感想的な思いですが、よろしくお願いします。
【荒瀬座長】 ありがとうございます。もともとこの会議もそういうところからスタートして、具体的にどのようにして高校教育の質の確保というのを実現していくかというところで、ガイドラインを出したりしてきたわけでありますが、一方で、今回のコロナ禍の中での学校教育の在り方というのを考える中で、通信制教育というのが一つ非常に大きな鍵を持っているということにも気づくことができたということではないかと思っております。
ただ、今、賀澤先生がおっしゃったように、ちゃんとした高校教育がなされるという大前提が崩れてしまったらどうにもならない話でありますので、一方では、きちっとそこのところを見ていかなければならない。その点から、複数の御意見をいただきましたが、私立についての言及というのもしっかりとしていかなければならないだろうと思いますし、かつ、また、どういう形で学校教育が進められていくか、円滑に進めることができるかということを考えると、どういう支援策というのを考えるのかということも、また重要になってくるのかなと思いながらお聞きいたしました。ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。よろしいですか。
では、また資料をお読みいただきまして御意見がありましたら、先ほど中西先生にも申し上げたことでありますが、メール等で事務局のほうに御連絡いただくということで、よろしくお願いいたしたいと思います。
少し早いですが終わらせていただきますが、よろしいですか。
ありがとうございます。では、今日はこの辺りにしたいと思います。
では最後に、次回以降の予定につきまして、酒井補佐、お願いいたします。
【酒井参事官補佐】 失礼いたします。次回の日程は調整中でございますので、また追って御連絡させていただきます。本日はありがとうございます。
【荒瀬座長】 では、これで今日の会議を終了いたしたいと思います。お忙しい中ありがとうございました。

―― 了 ――
 







 

(初等中等教育局参事官(高等学校担当)付)