通信制高等学校の質の確保・向上に関する調査研究協力者会議(第5回)議事録

1.日時

令和2年11月11日(水曜日)13時00分から15時00分

2.議題

  1. 高等学校通信教育の質の確保・向上について
  2. その他

3.議事録

【荒瀬座長】 皆さん、荒瀬でございます。こんにちは。
定刻を少し過ぎましたが、ただいまから通信制高等学校の質の確保・向上に関する調査研究協力者会議の第5回会議を開催いたします。
本日は、御多忙の中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
本日もウェブ会議方式にて開催させていただきます。
なお、傍聴者の皆様には、YouTubeでのライブ配信を通じてお聞きいただいております。
それでは、会議を始めるに当たりまして、ウェブ会議を行う上での留意事項と本日の配付資料等につきまして酒井補佐から御説明をよろしくお願いします。
【酒井参事官補佐】 参事官補佐の酒井でございます。本日はウェブ会議方式での開催ということで、ウェブ会議を円滑に行う上での留意事項をお伝えさせていただきたいと思います。大きく5点ございます。
1点目でございます。御発言に当たりましては、インターネット上でも聞き取りやすいように、はっきり御発言いただくなどの御配慮をいただくということ。
2点目は、御発言の都度、名前をおっしゃっていただくということ。
3点目は、御発言のとき以外はマイクをミュートにしていただくということ。
4点目は、御発言に当たっては、手を挙げるボタンを押していただくということ。
5点目は、御発言の後は手を下ろすボタンを押していただくこと。
この5点について御配慮いただけるとありがたく存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
本日の配付資料でございますが、委員の皆様には事前に送らせていただいております。議事次第にございますように、資料1-1から資料5まで、また参考資料といたしまして、1から4までとなっております。御不明な点等ございましたらお申しつけいただければと思います。
【荒瀬座長】 よろしいでしょうか。それでは議事に入ります。
前回会議までは、検討事項1として、高等学校通信教育の質保証方策に関する議論を行ってまいりましたが、本日からは、検討事項2として、新時代の高等学校通信教育の在り方に関する議論についても進めてまいりたいと考えております。
まず、前回会議までの質保証に関する検討状況につきまして、中央教育審議会、新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループに共有し、それも踏まえて、ワーキンググループで審議まとめ案が作成されておりますので、事務局から御説明をお願いしたいと思います。これが終わりました後、検討事項2について、議論を進めてまいりたいと思います。ではまず、酒井補佐、よろしくお願いします。
【酒井参事官補佐】 それでは、通信教育の質保証方策の関係につきまして説明させていただきたいと思います。
資料1-1を用いて御説明させていただきます。御用意いただければと思います。こちらにつきましては、11月2日に開催されました中央教育審議会、新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループにおいて、おまとめいただいているものとなってございます。
資料1-1の2ページをお願いできればと思います。この内容につきましては、既に本会議でも御議論いただいていたものでございまして、また、中央教育審議会でも、7月の時点で一定取りまとめをいただいておったものでございますが、改めて確認させていただいたものになってございます。
大きく4点で構成されております。1点目は、教育課程の編成実施の適正化でございます。その適正化を図るために、大きく通信教育実施計画(仮称)の策定明示を行うことや、面接指導の意義、役割等を明確化するための各施策について御提言をいただいているところでございます。
大きくの2点目は、サテライト施設の教育水準の確保に向けた方策でございます。具体的には、実施校の責任下でのサテライト施設の把握・管理、情報開示の徹底に向けた方策であるとか、面接指導等実施施設として備えるべき教育環境の確保に向けた方策について御提言をいただいております。
大きく3点目は、多様な生徒にきめ細かく対応するための指導体制の充実に向けた方策であります。多様な生徒に応じた教育相談体制の充実に向けた方策や、きめ細かな指導・支援を実現するための教員配置について御提言をいただいたところでございます。
最後4点目は主体的な学校運営改善の徹底に向けた方策です。学校評価・自己点検の徹底に向けた方策、さらには情報開示の徹底・好事例の創出共有について御提言をいただいたところでございます。
具体的な本文は、資料1-2となってございますが、資料1-3を御用意いただければと思います。資料1-3につきましては、この高等学校通信教育質保障方策について、中央教育審議会において、高等学校教育改革ワーキンググループのほかの部会からも様々御議論いただいたところでございまして、関係団体からいただいた御意見についておまとめさせていただきました。簡単ですが、御紹介させていただきたいと思っております。
日本私立中学高等学校連合会から寄せられた意見でございますけれども、高等学校通信教育の質保証についてという御意見の中で、現在、高等学校通信教育は、不登校生徒や特別な支援が必要な生徒など、学校生活への適応に問題を抱える生徒たちに学びの機会を提供するために必要な存在となっている。しかし、一方で、特に広域通信制高校では、自分自身の「やりたいこと」の実現を求める生徒や、予備校に通いながら高校卒業資格の取得を目的とした生徒の受入先となり、サポート校による不適切な教育が実施されたり、近年では、本来の通信制高校の目的からかけ離れた全日型の通学コースが設置され、塾と連携し大学受験対策に特化した教育を行うなどの事例も見受けられる。
また、収容人員や施設、設備、校舎の面積、教員の数等の基準について弾力的な運用が可能とされ、教育課程の基準も全日制課程と比べ特例的に緩和されている中で、教員免許を持たない者による学習指導が行われ、生徒の定員管理も困難となっており、スクーリングの教室も不足しているといったずさんな実態が少なくない。このような現実を見れば、「教育の質の保障」が揺らぎかねないばかりではなく、公教育制度そのものがなし崩し的に瓦解していくことさえ危惧される。本来の通信制高校の趣旨を逸脱している実態を踏まえ、例えばサテライト施設も含め、明確な設置基準を策定するとともに、教育課程を全面的に見直す必要があるといった御意見が寄せられました。
また、2ページ目でございます。全国都道府県教育委員会連合会からの御意見でございますが、高等学校通信教育の質保障に向けて、単位認定の基準・水準を各学校において明確化することによって、本来生徒が身につける内容の質を確保すべきであるといった御意見がありました。
また、全国高等学校PTA連合会からは、「定時制・通信制課程」においては、教育の質保証に重点を置いて述べられています。いずれも具体化し、実現させていただきたい項目ですといった御意見。さらには日本教職員組合からは、定時制・通信制課程については、かつての「勤労青少年」を対象とした課程ではないことを前提に、「多様な学習ニーズ」に応えられるよう、生徒に対する就学支援制度の充実やきめ細かな対応ができる体制づくりが必要ですといった御意見が寄せられているところでございます。
事務局からの説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。今、御説明いただきました資料の1-1から1-3までですが、1-2は大部でありますので、この中で通信制について述べられたところを1-1でまとめて御説明いただきました。この資料に関しまして、何か御質問等ございましたら、よろしくお願いしたいと思います。手を挙げるのボタンを押していただきますようにお願いします。森田委員、よろしくお願いします。
【森田委員】 よろしくお願いします。森田です。簡単な質問だけですけれども、資料1-3について確認をさせてください。
こちらの私立中学高等学校連合会提出資料の中に、幾つかコメントが書かれているわけですけれども、例えば、「自分自身の『やりたいこと』の実現を求める生徒や、予備校に通いながら高校卒業資格の取得を目的とした生徒の受入先となり」までは分かるんですけれども、「サポート校により不適切な教育が実施されたり、近年では、本来の通信制高校の目的とはかけ離れた全日制の通学コースが設置され、塾と連携し」ということがあるんですけれども、そういった状況について我々が知っているところもあるんですが、知らないこともありますし、その次の段階においても、例えば「フリースクールの形で義務教育上認定されていない中学校段階での通信教育が」とかとあります。それから収容人数のことですとか、教員の免許がない者が担当しているといったものはどういうデータを基にここにまとめられているのか、教えていただければと思います。よろしくお願いします。
【荒瀬座長】 ありがとうございます。ほかにはございませんか。よろしいですか。
では、今の森田先生の御質問につきまして、酒井補佐、よろしくお願いいたします。
【酒井参事官補佐】 こちらの日本私立中学高等学校連合会の御意見につきましては、当然団体様からいただいている御意見でありますので、私どもから何か申し上げたとか、そういったものではございません。ただ、私立中学高等学校連合会でも、様々な団体独自で御調査をされていると伺っておりますので、そういった団体の中でいろいろ把握されている実態を踏まえて書いていただいたものと承知しております。
【荒瀬座長】 森田先生、いかがでしょうか。
【森田委員】 ありがとうございました。団体からまとめられた意見ということで承知いたしましたが、通信制高校の中には非常に真摯に取り組んでいて、様々な改善策をされたりとか、尽力されている先生方も多数いらっしゃいます。ここだけ見ますと、非常に、例えば最初の資料の1-1で出てきたようなウィッツ青山のようなところが全てのような表現になっているので、この点について非常に危惧を覚えます。例えばこれをメディアが見た場合に、通信制高校は全部駄目じゃないかみたいな意見になってしまうことが最もよくないことではないかと思います。
特に最近の中では、自分自身のやりたいことを見つけて、通信制高校ならではの学びの中に入ってくる方もいらっしゃいますし、中には数学のオリンピックに出るぐらいのレベルまでいっている方もいらっしゃると聞いています。そういう事例を集めたら多分様々な特色もあると思いますので、こういったデータを出されるときのその裏にどういったデータがあるのかということは、僕としては、何かしっかりした調査なりデータをもって示していただけるといいかと思ってコメントさせていただきました。以上です。
【荒瀬座長】 ありがとうございます。大変大切な御指摘をいただいたと思います。ほかによろしいですか。中西委員。お願いいたします。
【中西委員】 ありがとうございました。中西です。今の森田先生と私も同感ですけれども、その中高連の御指摘の部分は非常にかなりブローアップされているような印象が強くて、もちろんそういう面もあるとは思うんですけれども、どこまでがよくないことなのか、その辺が曖昧な表現になっているので、私も気になった部分です。以上です。
【荒瀬座長】 ありがとうございます。ほかはよろしいですか。
では、後からまたございましたらお願いするといたしまして、次に進みたいと思います。
続きまして、検討事項の2としまして、新時代の高等学校通信教育の在り方に関する議事へと移りたいと思います。今の御意見も、こことも深く関わるのではないかと思います。
まず、本検討事項の検討に先立ちまして、10月2日及び9日に非公開で行いましたヒアリングの議事要旨、また、検討事項2に関する資料や今後のスケジュール等に関する資料について事務局に御用意いただいておりますので、その説明をお願いしたいと思います。酒井補佐、よろしくお願いします。
【酒井参事官補佐】 資料2を御用意いただければと思います。資料2につきましては、今、主査からも御紹介がありましたように、本協力者会議におきましては、10月2日及び10月9日に、通信制高等学校に対しましてヒアリングを実施させていただきました。その概要についておまとめをしたものでございます。
このヒアリングの中では、今回、記載させていただいています5校に御協力をいただきまして、多様な学習ニーズに応じたきめ細かな指導に関する取組とその成果、ICTを効果的に活動した指導に係る取組とその成果、その他学校独自の特色ある教育活動について各学校の現在の取組状況について御発表いただいたものでございます。それぞれの御意見の概要につきましては、この資料2をもって御説明に代えさせていただきたいと思いますが、具体的には、広島みらい創生高等学校様、明蓬館高等学校様、尚志高等学校様、N高等学校様、太平洋学園高等学校様からそれぞれ御意見を頂戴したところでございます。
資料3をお願いいたします。資料3につきましては、本検討事項に関します議論のための論点メモでございます。四角囲みの中を御覧いただければと思います。検討の視点でございます。高等学校通信制課程は、戦後、勤労青年等に高等学校教育の機会を提供するものとして制度化されているが、近年では、通信制課程に在籍する生徒数の若年化・多様化が進んでいる実態にある。制度当初に想定されていた勤労青年を主とする生徒像からシフトし、時代の変化・役割の変化に伴って、今の生徒像に合った令和時代の高等学校通信教育の在り方を検討していくことが必要ではないか。
とりわけ令和時代の学校教育では、ICTが基盤的ツールとなることを前提としながら、生徒の実情にも応じつつ、ICTの進歩とともに、その効果的な活用方法をアップデートしながら進めていくことが重要との視点に立って、実証的に検討を進めていくことが必要ではないかといった点、御提案させていただきたいと思っております。
そして、具体的な論点メモということで、その下を御覧いただければと思います。まず、黒丸でございますけれども、通信制高校において高等学校教育として共通に身につけるべき資質・能力、これについてどのように考えるべきかというのが、まず議論の大前提にあろうかと考えております。高等学校の教育については、御案内のとおり高等学校学習指導要領において、身につけるべき資質・能力、そのために必要な教育内容について定められているところでございますが、通信制高等学校においては、今後のあるべき姿として、どういったものが考えられるのかといった点がまず大前提にあろうかと考えております。
それを受けて、大きく2つの柱を御提案させていただいております。1点目は、添削指導、面接指導、試験、メディア学習等の現在の通信教育の教育指導の在り方に関することでございます。これからの時代の添削指導、面接指導、試験について、求められる資質・能力を踏まえつつ、それぞれの在り方について今後どのように考えていくべきか、また、それぞれのICTの効果的な活用方法をどのように考えていくべきかといった点が大きな課題だろうと考えております。
きめ細かな指導の充実や、生徒一人一人の学習の確実な定着を図るため、学習指導要領に示す目標に照らして、その実現状況を評価することができるよう、通信教育ならではの教育方法に応じて目標に準拠した学習評価による観点別学習状況の評価、これをどのように行っていくことが考えられるか、これがまた大きな課題であろうと考えております。
その上で、これからの時代のメディア学習、多様なメディアを利用して行う学習について、評価者や学習書等の自学自習の効果を高めたり、生徒の学習意欲を喚起したりするものとしてその在り方をどのように考えるのか。また、その報告課題等を通じた指導方法や評価方法は、そのメディア学習の実施目的や実施方法に応じてどのように考えていくのか。これがまた大きな課題であろうと考えています。
さらには、教育課程の編成・実施に関する場面のみならず、生徒の学びをサポートする学習管理システムや、教職員の校務をサポートする統合型校務支援システムなど、通信制高等学校におけるICTの活用方法はどのように考えられるのかといった点についても、大きな課題ではないかと考えております。
ここでICTの活用といったことを記載させていただきました。前回、この有識者会議では、2回にわたりまして、各学校様から意見をいただいております。ICTの活用状況においても、非常に活用されている学校から、現実的に、特に生徒の活用状況については、なかなか厳しいものがあるといった御意見まで千差万別であったと受け止めておりますけれども、そういった各学校の現状を踏まえて、どういった活用方法が考えられるのかといった点は大きな課題ではないかと考えております。
2点目の柱は、学校としての「福祉的な役割」の実現に向けた在り方についてであります。学校は、学習機会と学力を保障する役割のみならず、今回のコロナ禍においても、通信制高校のみならず高等学校、さらには小学校、中学校、高校、大学に至るまで、あらゆる学校種において明らかになったことかと思いますけれども、全人的な発達・成長を保障する役割や、人と安全・安心につながることができる場所、セーフティーネットとしての身体的、精神的な健康を保障するという福祉的な役割を担っているといったところが御議論をされていると。大きく共通認識になってきたのではないかと受け止めておりますが、通信制高等学校における福祉的役割とはどういったものがあるのかといった点は考えるべき事項ではないかと考えております。
また、通信制高等学校において、義務教育段階の学習内容の学び直し、ソーシャルスキルトレーニング、キャリアデザイン、日本語指導など、多様な学習ニーズに応じながら、卒業後の進路を見据えたカリキュラム開発を促進するためにどうすべきかといった点も大きな課題だろうと考えています。
さらには通信制高校において、教師による対面指導や生徒同士による学び合い、地域社会での多様な学習体験や、自らの在り方、生き方を考えて努力した結果を評価していく観点から、技能連携制度のみならず、定通併修制度や学校外学習制度等の活用を通じた学び、これをどのように考えていくのかといった点は大きな課題ではないかと考えております。
これらの事項につきまして、この会議でまとめて、来年の4月からすぐに全国の通信制高校に何か大きな方向性が出ていくといった点は、なかなか難しいだろうと考えております。資料4を御参照いただければと思いますけれども、恐らく、これからの通信制高校の在り方を考えていく上でも、まずは実証研究を通じて、どういった取組が効果的かといった点を時間をかけて考えていくというのが現実的な姿ではないかと考えております。
今、文科省では、令和3年度の予算要求の中で、高等学校における教育の質確保・多様性への対応に関する調査研究といたしまして、丸2番に多様性に応じた新時代の学びの充実支援事業といったものを打ち出させていただきました。この中では、定時制・通信制課程において、多様な生徒に応じた卒業後の進路を見据えたカリキュラムの研究開発を実施するとともに、多様な学習ニーズに応じながらICTを効果的に活用した指導・評価方法等の実証研究を行うことを考えてございます。
8か所で3年間の研究といったところで打合せをさせていただきたいと思っておりますので、今回のこの検討事項の御議論も踏まえながら、今後どういった点で実証研究を進めていき、そして、今後の在り方を考えていくといったところにつなげさせていただければと考えているところでございます。なお、こちらの調査研究につきましては、現在予算要求中でございますので、財政当局との折衝を経て決まっていくものでございます。私どもとしては、なるべくこの点、財政当局にも理解を得たいと考えているところでございます。
最後、資料5をお願いいたします。今後のスケジュールでございます。本日の議論も踏まえまして、この協力者会議につきましては、年末から来年、年度末にかけて、御議論を重ねていただきたいと思ってございます。これを踏まえまして、私ども文科省といたしましては、まず、この検討事項のみならず、検討事項1に関連いたしますけれども、高等学校通信教育の質保証を実現するための関係法令の改正や、ガイドラインの改定等の必要な制度改正について進めさせていただくとともに、今、御説明申し上げました実証研究事業に取り組ませていただきまして、これからの通信教育の在り方について、一歩進めるような取組を始めさせていただければと考えているところでございます。説明は以上でございます。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。それでは、今、御説明いただきました資料2から資料4までの内容につきまして、皆様から御協議をいただければと思います。
新時代の高等学校通信教育の在り方に関するテーマを扱うのは、今回が初めてということにもなりますので、資料も参照していただきながら、幅広く御意見を賜れればと思っております。いかがですか。では、森田委員、中西委員の順によろしくお願いいたします。
【森田委員】 ではまず、森田から幾つか質問させていただきます。論点が多岐にわたるかもしれませんので、一番大きな枠のところから、まずは確認させていただきながら進めたいと思います。
まず丸1番のところですけれども、添削指導、面接指導、及び試験について在り方はどう考えられるのかと御質問をいただいているんですけれども、そもそもこの枠組み自体が、もしかしたら変えなければいけないものではないかということも検討に入るのではないかと思います。在り方ではなくて、IT化された学びですとか、ICTを活用して、場合によっては、先の話をすれば機械学習を使って、適切に個人にフィードバックするような仕組みというのは研究もされていますし、文科省でもいろいろと施策をされていると思いますし、別の省庁で行われているプロジェクトもあるかと思います。
そうしますと、添削指導の在り方というのが例えば今までやっていたように、紙に書いてある答案用紙に対して採点をする、それからコメントを返すというようなものではないとすれば、添削指導というものに関しての考え方も変えたほうがいいだろうと思いますし。面接指導というものが、その面接という言葉に捉えられる、私も非常に重要だとは思いますけれども、授業という考え方、それからそれをどういうふうに支援するのかという考え方からすると、もしかしたら名称自体も考えなければいけないだろうと。
それから試験につきましても、今までの、例えば知識を習得するものに特化したものから、考え方も変えていく必要もあるのかと思っています。情報社会における学びにおいて、今ここで最初に前提になっているところが、60年代から70年代ぐらいの頃の価値観ですとか、学習観が色濃く反映されていて、その呪縛をまず解く必要があるのではないかと考えています。最初の提案はそこです。そこから始まりまして、幾つかこの中でコメントしたいことがありますが、最初1点、私から提案させていただきます。よろしくお願いします。
【荒瀬座長】 ありがとうございます。今日初めてと先ほども申しましたが、ですので多様に御意見いただければと思います。森田先生がおっしゃいましたように、そもそもその論点の柱をどう立てるのかということ自体も、議論していく必要が出てくると思います。これからのことですので、直ちにということにはなかなかならないし、また、予算要求中であるということですけれども、調査研究も始まろうとしておりますので、そういったところの実地の動きも見ながら、今後、議論を重ねていく必要があるのではないかと思っております。
森田先生、また後ほどでよろしいですか。今の続きでなくてよろしいですか。
【森田委員】 分かりました。
【荒瀬座長】 では中西委員、よろしくお願いします。
【中西委員】 ありがとうございます。中西です。質問もあるんですけれども、実証研究の概算要求の関係です。こういう形で、定時制も入っているようですけれども、通信制の高校にある意味特化するような形のこういう事業は、これまでどの程度あったのかということを知っておきたいと思ったのと、今、通信制で学ぶ高校生の数というか、割合はかなり増えていると思うんです。その割合の確認ですね。この2点をまず伺っておきたい。
私も森田先生がおっしゃったように、枠組みから、多分発想を変えていかなきゃいけないんじゃないかという気があって、その1つの見方として、今、申し上げておきたいのは、通信制で学ぶという点でいくと、通信制高校は高校なわけですけれども、ある意味大学的なところがあるんじゃないかという気がするんですね。つまり、自学自習が必要だという点も含めて、特に広域であればあるほど、そういう面があるんじゃないかということも念頭に置いたほうがいいのではないかと思いました。漠としておりますが、質問についてお答えいただければと思います。
【荒瀬座長】 ありがとうございます。内堀委員も手を挙げていらっしゃいますので、お願いします。質問は後からまとめてお答えいただくということで、御準備をいただきたいと思います。日永先生も手を挙げていらっしゃいますね。内堀委員、日永委員の順で。原口委員、このお三方にまずお願いしたいと思います。では内堀委員、どうぞ。
【内堀委員】 長野県教育委員会の内堀です。よろしくお願いいたします。
資料3に関連してです。まず黒丸のところの、通信制高等学校において高等学校教育として身につけるべき資質・能力等をどのように考えるかという点です。通信制であろうが、全日制であろうが、定時制であろうが、日本における高等学校であることには変わりないので、全日や定時と同じように、例えば育成すべき資質・能力が3つの柱からできあがっているといったことについては、当然に共通性でやっていくべきだろうと。通信だから付けるべき力が違うみたいなことは、方向として違うのかというのが1点目です。
2点目は、先ほど森田先生がおっしゃったことと同じことを、ちょっとだけ違う観点から申し上げますと、これまでの社会的な様々な仕組みとか状況、要件みたいなものによって成り立っていた通信制というのがあると思うんですね。例えばICTがここまで発達していない段階での通信制の仕組みだとか、あったと思うんですけれども。それがいけないということではないと思うんです。それはそれとして、例えばあったかい雰囲気の中で学べることをもっと前面に押し出すとか、学校に少し長くいられるとか、あるいは対面を大事にするだとか、もちろん生徒の希望に応じてということですが、通信制の在り方としてそれはそれでありだと思うんですね。
加えて、もう一つというか、全く別の形として、森田先生もおっしゃったようなことがあるだろうと。つまり、ICTを最高限度まで活用することによって、これまで、例えば定期テストくらいの範囲を教えるみたいなイメージで面接指導を捉えていたものを、もっと細かく分けて単元ごとに学習の習得状況を確認していくようなことがありだと。あるいは、これまで放送等となっていたものについてテレビだとかそういうものしか想定していなかったのが、例えばAIを使った学習ソフトみたいなものが入ってきていることによって、もっと個別最適になっていく状況、そういったことを考えていくと、今までの在り方に加えて、全く違う通信制の在り方が考えられる以上、それを駄目と言っていたのでは、ここから先に通信制が進んでいかないだろうと思っているんですね。
ただ、最初に申し上げたように、どの課程であっても、日本の高校として共通に大事にすべきものがあると思うので、そこは何かということをクリアにする中で、もうちょっと様々な条件が緩和されていくのか、違う言い方になっていくのか、そこのところはいろいろあると思うんですけれども、そこを視野に入れて考えていくことがこれからの通信制の在り方だろうと思います。
それからもう一つは、学びにICTを活用するということだけでなく、ここにも書かれていますけれども、学校運営や教員の働き方改革も含めてですけれども、そこにICTを活用していくことによって、通信というぐらいですから、通信システムをもっと活用することによって、アナログな、例えば提出物が出されているか否かのチェックだとか、そういったものからもっと教員が本来やるべき仕事に向かっていくということが、通信ほど可能ではないかと思っているので、その点も考えていく必要があるだろうと。
それから、通信制高校による福祉的な役割という表現は、言いたいことはわかりますが、それを読んだ人たちが本当にぴったりくるのかどうかというのは、私は個人的に疑問です。人と人と接する中での安全・安心というようなニュアンスで福祉的役割を使っているとして、そういったことはどれだけICT機器が発達しても、学校という場において絶対に必要なものであろうと思いますので、例えばICT中心になっていったときにどうやって担保していくのかということが一つ重要な視点になるだろうと思います。
最後1点ですけれども、ヒアリングする中で、幾つかの学校で定時制と通信制を併設することによって様々な新しい世界が展開されていたと思うんですね。長野県においても、夜間定時制とか昼間定時制だけではなくて、午前・午後・夜間とある多部制単位制の定時制と通信制をミックスしたものをつくることによって、様々な可能性が出てくるだろうということで今、検討しているんですが、そういった在り方も、これからの一つの在り方だと思います。全てそうしろということではなくて、一つの通信制の可能性として広がっていくのではないかと思っています。以上です。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。それでは日永委員、お願いいたします。
【日永委員】 よろしくお願いします。もう今まで出てきたお話とそれほど違うことではないんですが、私自身もまず内堀先生が今おっしゃったみたいに、通信制高校も高校であるんだよというところを譲らないというのはすごく大事だと思っています。本当に10年ばかり前に調査をしたときに、全国の通信制高校の、特に公立の先生方がおっしゃるのは、「通信制高校って高校とみなされてこなかったから」とおっしゃるんですけれども、もはや、もうそういうことを言ってちゃいけないだろうというのをまずしっかり考えなきゃいけないと思います。
その中で、添削指導、面接指導、試験、メディア学習を組み合わせて、単位を認定していくというこの通信制の基本の授業の在り方を、多分今までの3名の方がお話しされていたみたいに、本当にこれでいいの、これからもこのままでいいのかというところは、しっかり議論をしていく必要があると私自身も思いました。そのときに、どこかにいってしまったかもしれない高大接続改革の中で、高校教育は何をしなきゃいけないと言われてきたのかと。通信制高校でも新しい技術を使いながらどうやってそれを実現していくのかというところは、ぜひ調査研究の課題にしてほしいと思うんですね。
いろいろなものが消えつつあるのが、大学教員としても残念なところがあるんですが、でも、実際に主体的、対話的で、深い学びを通信制で実現するにはどうしたらいいのというところも当然必要になってくると思います。今も、私どもも大学の授業でこういうzoomを使いながら、どうやってアクティブに学生たちにするのかと日々考えているわけですが、これは通信制高校の子たちにもぜひ体験をしてほしいと思います。あと外部試験も、英語に限らず、外部のそういう検定試験の結果をどう活用するかであるとか、キャリアパスポートもうまくいっているのかどうかが今一つよく見えませんが、でもああいうポートフォリオみたいなのはICTを使って活用するというのも当然必要。
しかも、先ほど内堀先生だったかと思うんですが、学びの基礎診断みたいなことをもっと細かい単位でやっていって、着実に学力を身につけさせるという、高大接続改革の中で言われてきた様々な取組を通信制高校の中で実現することを本当にしっかり考えていく必要があるのじゃないかと感じました。
私からは以上ですが、先ほど時乗先生も多分反応のボタンを押して手を挙げられていたんじゃないかと思いますので、もし御発言があるなら、荒瀬先生、振ってみていただけるとどうでしょうか。以上です。
【荒瀬座長】 ありがとうございます。私が気がついてなくて申し訳ありません。まず原口先生にお話いただいて、時乗先生、もし御発言がおありでしたら、また手を挙げていただけますか。よろしくお願いいたします。では原口先生、お願いします。
【原口委員】 よろしくお願いいたします。公立通信制の現場の状況をお話ししたいと思っています。
ICT活用についてできること、今まででしたらば基礎的な学力の定着を目指して、視覚的に分かりやすい面接指導をするために、プロジェクターとスクリーンを設置していました。ところが、去年から主体的で深い学びの実践ということで、県からChromebookが84台入り、表現することが苦手な生徒が、Chromebookに向かって入力することができて、意見の集約、共有ができるようになりました。1コマの面接指導の中で、生徒が十分に深く考えて、自分の学びを充実させる、そんな姿を実際に見ています。ですので、ICTの活用が深まってきたことは間違いありません。
しかも今年コロナ禍において、学びを停止させない。学びの継続ですね。そのためにオンラインもやってみました。通級指導においてもオンライン通級をやってみたところでございますが、これも非常にうまくいきました。家庭において、安心して自分を表現することができて、学校にいる教員たちに向かって、生徒が自分を表現することができました。ですので、これは有効な学習ツールだと思っております。
生徒は若年化して、ほとんどの新入生は平成16年生まれでございます。デジタルネイティブの世代でございますので、その生徒たちは中学校時代、特別支援級にいた生徒も、もう我々よりもはるかに十分に活用することができております。昨日も、昨年まで紙と鉛筆と地図で行った防災DIG研修をChromebookでやることができました。そういうことを考えますと、この先、条件整備が必要です。GIGAスクール構想の実現が大きな条件整備となりますので、端末の確保、無線LANの増強が必要だと思っております。
だからといって、そのために教員と生徒の対面の大切さをおろそかにするものではありません。ぜひ教員定数についても適切な配置に言及していただきたいと考えております。以上です。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。時乗先生、よろしくお願いします。
【時乗委員】 よろしくお願いいたします。今まで様々な方の中にもあったと思うんですけれども、私は、まず議論のための論点メモの最初の黒丸に書いてあるところですけれども、今回の参考資料の3で、中教審の高等学校部会の教育部会が出しているペーパーがあって、それの5ページに、生徒が高等学校教育を通じて身につけるべきものということで、絵が描いてあります。
どちらかというと、今までの通信制高校は、Aの部分に特化しているような感じの教育をやっているんですね。その一番端的な例が、添削指導で使う添削課題というか、そこに載っている内容です。要は知識を問うようなのがほぼ全てで、それをベースにした添削指導、面接指導、そして試験となっているんです。だから、本当にそれでいいのかどうなのかがまず一つだろうと思うんですけども。私は、もうこのAの部分はそれほど大きな比重を置くべきじゃなくて、どちらかというとB、A以外の部分にある程度力点を置いた通信制高等学校を考えていくべきじゃないのかと思っています。
だから、そういうところをベースにして、添削指導、面接指導、こういったものはどうするのと、そこを根底から考えていかなきゃいけないし、場合によったら、学習指導要領の記載の仕方そのものも考えていかなきゃいけなくなるんじゃないかと。学習指導要領は、ただ単に回数を規定しているだけですから、あそこももう少し、本当に通信制高校に何をやらせたいのかというところで考えていく必要があるんじゃないかと思っています。だから、まずはその1つ目の、丸1の部分については、このA以外のものを、ここをきちんと生徒たちに身につけさせるためには、どういった形であるべきなのかを中心に考えることが大事かと思います。
次に、丸2番の福祉的な役割というところは、私も内堀先生と同様、この福祉的な役割という言い回しはすごく引っかかります。そうじゃない、もっといい言い回しがあるんじゃないかとは思っています。その中で2つ目の丸、要はキャリアデザインを考えるという部分の話は、本当に通信制の学校を研究指定校にして、きちんとした実証的なことをやっていただければありがたいと思っています。特に神奈川県では、この辺のところをトータルでコーディネートするスクールキャリアカウンセラーという、通称、神奈川ではSCCと呼んでいますけれども、こういったものを置いて、様々な取組をしています。横浜修悠館にも、このSCCを置いてやっていますので、そういったところをベースにして、こういう卒業後をにらんだカリキュラム開発をやっていただけるとありがたいかと思っています。以上です。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。今の時乗先生が御説明くださった参考資料3の5ページの部分ですけれども、私も実はこの議論に関わっておりました。それで、学力という点から、この3要素はとても大事だということと同時に、高校生であれば何が必要かということで、2つのことを全ての高校生が身につけるべきものとして、コアと呼んで、一つは社会・職業への円滑な移行に必要な力、もう一つが市民性というこの2つが、議論の末、まとめられたわけです。
まさにキャリア教育につながるわけですが、こういったことは、以前からいろいろと御議論されてきていて、これらが今の学習指導要領にも当然反映されているわけですけれども、こういったことを含めて、さっき日永先生も、通信制高校も高校だという話をしてくださいましたが、高校全てでどんな力をつけるのかといったときに、本当にこれからは通信制を考えていくことが、そのまま実は高等学校教育をどうしていくのかということを考えていくことにつながっていくということを、改めて思いながらお聞きしておりました次第です。ありがとうございます。
賀澤先生、手を挙げていらっしゃったでしょうか。賀澤先生、お願いいたします。
【賀澤座長代理】 これまでの議論をお伺いしていく中で、内堀委員のまとめた発言がありまして、すんなり様々なことが胸に落ちた気がします。
当然ながら通信制において、相変わらず安易な単位認定をしたり、スクーリングの形とはとても思えないような学校も確かにあるんですが、そこに拘泥するだけだと、結局いつまでも通信制の評価そのものが上がっていかないと思うんですね。そういう中で、私自身は、大きく変えるタイミングという立場から、ICT活用に関しては、設備も含めて、積極的に対応していくことがあるのじゃないかと。私は、スクリーニングもありますけれども、スクリーニングに関して、一部のところでは、録音したものを配るようなところもありますけれども、唯一、学校で子供たちが生の教育を受けられるのはスクーリングしかないわけです。そのスクーリングに関して、様々な改良を加えていく中で、例えばある県立高校では、YouTubeを活用して、子供たちが自宅でも当たり前に利用できると。
こういったことを単純に面接指導だと置き換えることは難しいかもしれませんけれども、各高校の様々な取組に関して、何らかの形で評価していくことはできるんじゃないかという気がいたします。当然ながら、通信制高校については、同時に第三者評価機構ができる中で、これを全面的に活用する手法はないかと率直に思っているところです。これは1つの第三者評価機構じゃなくてもいいわけですけれども、様々な形で通信教育規定を基準として、第三者が何らかの形で、その学校の教育手法を改善・改革できるような形の指導も含めた活動を活発にする必要があるのかと考えているところです。以上です。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。では吾妻先生、にお願いいたします。
【吾妻委員】 吾妻です。ありがとうございます。
冒頭、中高連からのコメントに対しまして、森田先生が御発言をされておりましたが、私も同じような思いです。ただ恐らく中高連の今のコメントの中で感じるところは、全日制の学校から見ると、通信制の今の状況が、本来、通信制の生徒を、このような生徒に対応するのは通信制だというところを、かなり幅が広くなっていて、恐らく全日制に行くような生徒をも通信制に多く行ってしまっているのではないかということを大変危惧をしている状況があるのではないかと推測しております。
そういった意味で、今回、通信制の役割として福祉的役割といった表現も新たに出していただいておりますが、通信制の教育とはどうあるべきなのかと、全日制と通信制との役割がどう違いがあるのかを、もう一度改めていろいろと考えていくことも大切ではないかと思います。その上で、教育の中身をどうするのか、そういった議論にもなっていくのではないかと感じております。
ただ、私は現場で生徒と向き合って教育に当たっておりますと、私たちが目指しているのは、現在は通信制でしか教育が受けられなくても、徐々に、全日制に行っている生徒と同じような建設的な行動が取れることを、成長を3年間で何とか促したいということを大きな目標として進めておりますので、通信制の学校の中で、ある程度の教育のスタイルの幅が認められるべきではないかと。
全日制の学校の中では、登校型の学校に対する、危惧を持っている部分があるかと思いますが、登校回数もできれば少しずつ増やすことが自らできるようになっていくようなことを、徐々に目指すことができるのが通信制ではないか。そういう意味で、学びのスタイルの幅を、ある程度をきちっと対応できるようなシステムを、各学校はつくれるようにしていくことが必要じゃないかと思って伺っておりました。私からは以上です。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。ほかにはいかがですか。森田先生、お願いいたします。
【森田委員】 ありがとうございます。最初冒頭に順番かと思ったんですけども、全体のことを皆さんがお話しされているので私もコメントさせていただきます。先生方がおっしゃられたことは本当だと思いました。特に今回、コロナが起こったときに私が感じたことは、全日制の、特に進学校の生徒さんに限って通信で何とかなる。自分で学んでいけるから。ところが、通信制の生徒さんに限って、ちゃんと来ていただいて、どうしたらいいかということで手厚く面接で指導しないとうまくいかないと感じたことだったんですね。
つまり、通信と全日制とは実は教育方法が逆になっているんじゃないかみたいなところを感じたんです。これはまた福祉の部分になっているのかと思っています。最初はそこですけれども。ですので、必ず通信だからといって全部オンラインではなくて、対面でやるところは非常に重要だし、人が人を教えるという営みは根本的に最も尊重すべき部分だとは考えています。
一方で、通信制の特徴は、先ほど話がいろいろな委員から出てきておりましたが、例えば、内堀先生がおっしゃいましたけれども、データを残して、この習得の度合いを全部記録に残すことができる、これがもうすぐ近くまで来ていますし、それによって、適切に先生が判断をして、この子に必要なものを指導として示すことができる。これがまさに個別最適化された学びであり、面接指導でやるべきことではないかと思っています。
それからもう幾つかあるんですけども、先ほど大学のように考えたらいいんじゃないかというような日永先生の御意見もあったとおりですが、通信制高校自体がそのディプロマポリシーを設定し、それについてカリキュラムポリシーを設定し、どういうふうにして学びを保障しているのかということを、それぞれの学校が出してくる。これはもう義務教育の範疇は小中の範囲で、高校に、もしその裁量があるとしたら、そもそも全日制と通信制という枠組み自体がもうナンセンスな分け方じゃないか、定時制も含めて。これは学びのグレードであって、例えば全日制の中に、オンラインの授業がこれから入ってくる。その中に例えば導入学習が入ってくる。これは通信とどう切り分けるのかという問題も多分発生してくると思います。
そうしますと、今、これは少し僕の考えとしては次の次の段階ぐらいの改定かもしれませんけれども、先ほど冒頭に出てきたとおり、通信制高校じゃなくても高校全体の話であり、高校教育全体の中で多様性を認めて、その中でそれぞれの高校がディプロマポリシーを決め、それぞれの高校がカリキュラムを決め、それぞれの高校が方法を決め、多様な中で、その生徒が最も成長していけるようなものに入っていく。そういった教育施設を、制度をつくっていく必要があるんじゃないかと思っています。
特に大学に行く場合には教養を学ばなければいけない。この社会が築き上げてきた2000年分の知見を高校まででぎゅっと詰め込んで、大学に入って、新しい問題を解決したり、それから新しい知識を創造したり、文化を継承するために大学に入っていきます。一方で職能教育を受けて、社会の中で一市民として活躍していく皆さんもたくさんいらっしゃいます。そういった方々と、多分恐らく目標が少し異なってくるんだと思うんです。それぞれの高校がディプロマポリシーを設定し、それに合わせて教育の課程がなされるのであれば、それは、私は高校の教育の課程として十分成り立つのではないかと思っています。
今現在の問題は、これは怒られるかもしれませんが、文部科学省が決めている学習指導要領の内容が非常に知識に偏っていて、大学入試を前提としても、非常に量が多いと思います。これは言い過ぎかもしれませんけれども、大学にいて、各学会学術界を背負った方が学習指導要領をつくったときに、当然その分野の中で、求められるものを全部詰め込もうとしている部分であって、ミニマムではないということです。これも全ての高校生に担わせていることが、そもそもこの社会のひずみを生んでしまっているのかもしれません。
それは先ほどの話の中で、資料3の5番目の図を出してくださいましたが、時乗委員が御指摘くださったものですけれども、おっしゃったとおり、筆記試験や実技試験等の客観的な評価を対象としやすいものということで、Aが非常に注目されているということだったんですが、Aのところからそぐわないであろうと、社会・職業への円滑な移行の力とか、それから市民性とか、そういったものに、例えば移行する豊かな心、健やかな体といったものを中心にするのであれば、そういった課程も許されるべきだと思いますし、その比重割合、このバランスをうまく取るところがこれから求められるんじゃないかと思います。
新しいICTを活用した学びの中で、先ほど原口委員が言っていましたけれども、デジタルネーティブですので、彼らは恐らく様々なコンテンツを使いこなす、我々が思っている以上に、情報社会に適応していく力を持っている。その適応していく力を持っているからこそ、旧世代の、昭和の時代につくられた教育制度の中でなじめずに苦しんでいる可能性もあると思います。この問題を考えるのに多角的に考えていく必要があるということで、まずは私どもの意見とさせていただきます。以上です。
【荒瀬座長】 ありがとうございます。私が何も学習指導要領の責任者でも何でもないですけれども、学習指導要領、今回、特にその前文のところで大綱的に定めたという表現が出てきたり、あるいは知識・技能のみならず、その活用であるとか、主体的に学習に取り組む態度、もっといえばその基になる一人一人の生徒が自分のよさや可能性を認識することができるといったことにも言及していますので、そういった点で見ると、学習指導要領は、なかなかいいことが書いてあるのではないかと思います。
それと、先生がおっしゃったこと、それからこれまで皆さんの御意見の中にもありましたけれども、今、高等学校教育は基本的に単位を取らなければ進級・卒業できないとなっているわけです。その単位の取り方がどうなっているかというと、履修主義か習得主義かという話がまたありますよね。履修主義か習得主義かのどっちかということよりも、そのベストミックスというか、バランスを取りながらやっていくことが、人間というのは可塑性に富んでいるものですから、後々、大事だということもあると思うんですけれども、そういったことも今後考えていく必要が多分出てくるだろうと思いながらお聞きしました。
それと、森田先生がおっしゃったディプロマポリシーですけれども、資料1-2にありますが、高等学校ワーキングでは、高等学校でも、3つのポリシー、スクールポリシーをしっかりと考えて、それを具体的に学校の柱にしていこうということで、ディプロマではなくて、御承知のとおり、グラデュエーションポリシー、どういう卒業時の生徒像を目指していくのかということを明らかにして、そのためのカリキュラム、そして入学してくる生徒たちへの期待といったようなことを考えていこうという話になっておりますので、今の御議論は本当に全て、これも何人かの委員の方がおっしゃいましたように、今後の高校教育をどうしていくのか、もっと言えばそこから我が国の学校教育をどうしていくのか、そういう話にもひょっとしたらつながっていくような感じがあるのではないかと思います。
今日もこれは初めてこういう内容で話をしていますので、私もしゃべり過ぎて申し訳ありませんが、大河原委員、いかがですか。御発言いただいていないですけれども、いかが。もし何か今、お聞きいただいている中でありましたらお願いいたします。
【大河原委員】 ありがとうございます。弁護士の大河原でございます。私も教育自体の専門家でないこともあって、今日皆様にお話を伺って、なるほどそうだと思ったところです。
たくさんの委員の方からお話がありました、通信制高校も高校の一つであるということで、そこは一本筋を通さなきゃいけないということは非常にそう思いました。あとは、この間ヒアリングでお話しいただいた皆様のお話も伺っていて、いろいろと、とんがったことをやられている学校さんもあって、それはそれですごく生徒さんのいろいろな個性を伸ばす面白い取組だと感じたので、そういうところも、できる限り多様にやれるような仕組みであってほしいと思っております。
あともう1点だけ、もしかしたらこの会議とは直接関係ないかもしれませんが、このコロナで、通信制高校だけではなくて、いろいろな学校教育の中で通信を取り入れた教育が行われているところです。その中で、著作権をきちんと処理していくことが法的にはすごく大事なところです。こういった通信教育を、ICTをどんどん活用していく中で、著作権教育も、生徒さんにもそうですし、教員の方に対してもしていくことも、ぜひ啓発していっていただけるといいかと思います。以上です。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。それでは、一旦ここで、御質問も出ておりましたので、酒井参事官補佐にお願いをしたいと思います。よろしくお願いします。
【酒井参事官補佐】 御質問いただきました内容で、中西委員から2点、御質問いただいていたかと思います。1点目は、通信制高校に通う生徒の割合でございます。令和元年度においては、通信制高校に通う生徒さんは約19万7,000人、高校生全体の6%弱という数字になっているところでございます。
もう1点、中西委員から、こういった通信制高校に対する実証研究はこれまでやっていなかったのかといった御質問があったところでございます。従前も通信制高校を対象といたしますか、通信制課程の教育を念頭に置いた調査研究事業は実施してきたところでございます。様々な通信制課程の教育の教育手法であったりとか、様々な困難な課題に対してどういった解決策があるのかといったことを、各学校を指定させていただいて実証研究を取り組ませていただいていたところでございます。
今回新規で要求させていただいている事業との違いは、そういった事業、これまでもいろいろな指導手法の開発といったことでやっていただいておりましたけれども、よりもう一歩進んで、研究開発的な要素、例えばそもそも今までの通信制高校との在り方というのがありますけれども、もう一歩進んだやり方は何かあるのかといった研究開発まで視野に入れたもの、もう一歩進んだものまでやっていただいても、あるのではないか。そういったところで今回、新たに要求しているものでございます。
御質問に関する回答は以上でございます。
【荒瀬座長】 それだけでいいですか。
【酒井参事官補佐】 はい。
【荒瀬座長】 中西委員、いいですか、今の御説明で。
【中西委員】 大丈夫ですよ。
【荒瀬座長】 どうぞ。
【中西委員】 つまり研究開発的なところまでという点では新しいということでいいわけですよね。分かりました。
【荒瀬座長】 そのようです。ほかにはいかがですか。
そういたしましたら、今日いろいろと御意見を頂戴しました。どれもこれも本当にこれから考えていく上で、非常に重要なお話であったかと思います。これは大河原委員が、「ここではないかもしれないけれども」とおっしゃった著作権についても、今後、通信制といいますか、通信によるところの教育が本当に進んでいく上でも、真剣に考えないといけないし、現在の学校教育としても相当重要ですけれども、なかなか浸透していない面もなきにしもあらずということではないかと思っておりますので、そういったことも、全体で共有しながらやっていきたいと思います。
では、先ほど日程的なことを少し、今後のスケジュールということで言っていただいたのですけれども、改めて、これからこういうふうな形でいくということを酒井補佐さんからもう一度御説明いただいて、今後、そういう日程でいく一方で、実証研究が進められていきますので、その様子を見た上で議論していく必要も出てくるだろうと思います。我々の会議の期限といいますか、それは年度内であるようですので、実際には調査研究はその後続いていくということですので、その辺の動きも見ながら、今日いただいた御意見を今後の検討に生かしていくということで、文部科学省には受け止めていただきたいと思います。ただ、まだ議論の時間もありますので、その間、我々も議論を重ねていきたいと思います。
では酒井補佐、次回以降につきまして、もう一度よろしくお願いいたします。
【酒井参事官補佐】 もう一度、資料5を御参照いただければと思います。先ほども御説明をさせていただきましたけれども、今後の日程について、案ということでお示しをさせていただいております。詳細な日程については、また日程調整させていただいて、御連絡させていただきたいと思っております。今、荒瀬先生からも御紹介ありましたように、委員の皆様、今年度末までの委員の任期ということでお願いをさせていただいておりますので、今年度中で一定のまずまとめをお願いさせていただければと思いますが、私どもといたしましては、今回の会議を踏まえて、今後、実証研究事業でありますとか、これからの通信制課程の在り方について、また改めて検討していく、そういったものにさせていただければと考えている次第でございます。
また同時に、文科省では、先ほども御説明申し上げましたが、質の確保に向けた様々な方策ということで、関係法令の改正であるとか、ガイドラインの改定等も併せて取り組んでまいりたいと考えております。この状況についても、また今後、会議で報告をさせていただければと考えておりますので、よろしくお願いいたします。事務局からは以上でございます。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。いかがですか。もし御意見が今ございましたら、出していただければと思いますが、よろしいですか。時乗先生、お願いします。それから原口先生もその後お願いいたします。時乗先生、まずどうぞ。
【時乗委員】 進め方ではないですけれども、多少時間がありますので、よろしいですか。この資料3のところで、観点別評価についての記述があるんですけれども、私はいろいろな学校の通信制の広域等含めて見ていて、添削課題にしても、面接指導にしても、評価にしても、当然試験にしても、こういった観点別評価を取り入れている学校は、ほぼない状況です。形の上としてやっているところはありますけれども、本質的な形でやっているところは、ほぼ。たまたま私が見ている学校がそういう学校ばかりかも分かりませんけれども、なかなか目に留まらないところがあるんですね。
先ほど言ったA以外のものの資質・能力で、特にこれから全日・定時含めて、探求的な活動がどんどん入ってくるときに、このままの状態だと、通信制の高校は、その探求的な活動の流れから、はるか遠いところにいってしまう可能性がすごく私は高いと思っているんです。そういった意味でも、この観点別評価を、逆に通信制の高校だからこそ、きっちりとした形で位置づけていって、その延長線上に、どうやって通信制の高校で探求活動を中心とした教育活動を展開するのかというところもきっちりと考えていかないと、本当に通信制の高校だけ30年前、40年前の学校という形になってしまう可能性がすごくあるんじゃないかと思っていますので、そういったところでも、この後、いろいろと論点整理とかに入れ込んでいただけるとありがたいと思っています。以上です。
【荒瀬座長】 ありがとうございます。では原口先生、どうぞ。
【原口委員】 よろしくお願いします。2点あります。1点目は、先ほどの実証研究事業の実施と、資料4にありました、多様性に応じた新時代の学びの充実支援事業は、全く別物という認識でよろしいでしょうか。
【酒井参事官補佐】 事務局です。実証研究事業は、この資料4の赤囲みの中にあるこの事業、この事業を実証研究事業として取り扱うということでイメージしております。
【原口委員】 同じということですね。そうしますと、手を挙げたいと思って来たものですから、自分のところでテーマを決めるのではなくということでしょうか。
【酒井参事官補佐】 具体な事業の設計については、今検討中でありますので、そこは改めてお示しをさせていただきたいと思っておりますが、通常こういう研究事業をする場合も、一定こういう方向だというのは恐らくテーマになるんですが、具体的な中身、どうやって取り組むかというのは当然各学校様で検討いただくのが、大体一般的に文科省でさせていただく実証研究事業になりますので、その辺はまた詳細を詰めまして、広く御案内をさせていただくようにしたいと思っております。
【原口委員】 分かりました。ありがとうございます。もう1点ございます。福祉的な役割の名称について、いかがなものかという話があったかと思いますけれども、名称はともかく、現実、通信制の課程において、福祉的な価値を外しては、今は考えられない状況にあります。数的にも、令和2年2月21日文部科学省初等中等教育局参事官(高等学校担当)参考資料2「高等学校通信教育の現状について」7頁【在籍生徒の実態等】にいろいろな課題を抱える生徒の割合が載っていますけれども、非常に高い割合で課題を抱える生徒が在籍しています。
(通信途切れ)
【荒瀬座長】 原口先生、もう一度お願いできますか。資料の中にいろいろと課題がある状況の生徒がいたということでありますが、それもあるので、福祉的な役割というのは、名称はともかく、必要だといいますか、これが現実だということをおっしゃったように思いましたが、それでよろしいでしょうか。
【原口委員】 それで結構でございます。既に、コアの部分においても、Aに加えてBを重視して教育に当たっているのが現状でございます。それで、生徒たちは、卒業はできても社会に出るのがとても怖い。そして、社会の中でまた孤立していく、そういう現状を抱えているのが実際でございます。以上でございます。
【荒瀬座長】 ありがとうございます。これは場合によっては今のコアに関する話というのは、もう一度共有した上で議論したほうがいいかもしれません。Aが大事か、Bが大事かという話ではなくて、これは両方ともが非常に重要であるということで、この高等学校教育部会では議論をしておりました。とりわけ、社会・職業への円滑な移行に必要な力とか、市民性というのは、学力に支えられたものである必要があることも考えていたところですので、この辺り、また改めて共有したほうがいいのではないかと思いました。
それと、福祉的役割についていろいろ御議論が出まして、私は申し上げようかどうか迷っていたんですけれども、実は今度、中教審として答申を出しますが、その中で、コロナ禍における学校の在り様が改めて見直される中で、教科の学習面のみならず、福祉的な役割があることが、今、中間まとめが出ておりますけれども、その中にそういう文言が出ておりますので、恐らく事務局でそれに基づいて、この福祉的役割という言葉が出てきたといいますか、使っていただいたのだと思います。
ですから、元といいますか、中教審の議論の中でも、福祉的な役割という言葉が使われていることを改めて申し上げておきたいと思います。福祉の対象になるという意味に使うと限定的な意味になるかもしれませんが、本当に安全・安心、心安らぐ、そこにいると楽しいといったような意味合いを込めた言葉として使われているというのが中間まとめの使い方でありますので、その辺りも、どうぞ御検討の材料にしていただければと思います。よろしくお願いします。
ほかによろしいでしょうか。そうしましたら、少し時間は早いのですけれども、次回以降この新しい通信制高校の在り方、すなわち、高等学校教育の今後をどう展望していくのかということを視野に入れながらの議論を、年度いっぱい重ねてまいりたいと思います。
では、本日のこの会議、これで終了させていただきます。どうもありがとうございました。

―― 了 ――
 

(初等中等教育局参事官(高等学校担当)付)