通信制高等学校の質の確保・向上に関する調査研究協力者会議(第1回) 議事録

1.日時

令和元年10月1日(火曜日)14時00分~16時00分

2.場所

中央合同庁舎4号館1階108会議室

3.議題

  1. 会議の運営について
  2. これまでの取組状況等に関する事務局説明
  3. 委員からの発表
  4. 意見交換
  5. その他

4.議事録

○座長について、荒瀬委員が適任である旨了承された。
○荒瀬座長から、賀澤委員が座長代理に指名された。
○本調査研究協力者会議の公開及び傍聴について、資料2に沿って取り扱うことについて了承された。

【荒瀬座長】 それでは、進行いたします。まず、通信制高等学校の質の確保・向上に関しまして、これまでの取組状況等について事務局から説明、よろしくお願いいたします。
【坂東参事官付専門官】 では、事務局から御説明申し上げます。資料3をごらん下さい。「通信制高等学校の質の確保・向上に向けた取組について」と題しまして、これまでの取組等、御説明したいと思います。
1枚おめくり頂きまして、「『広域通信制高校に関する集中改革プログラム』において提示された広域通信制高校における質の確保・向上方策について」でございます。そもそもの経緯といたしまして、通信制高校の関係では、平成27年12月に、ウィッツ青山学園高校の問題があらわになりまして、これを受けて文部科学省内に「広域通信制高校の教育運営改善緊急タスクフォース」というものが設置されました。翌28年3月、タスクフォースでは「広域通信制高校に関する集中改革プログラム」を提示いたしまして、広域通信制高校の質の確保・向上のために、ここにございます四つの方策が示されたところです。以後、文部科学省ではこれを踏まえまして、質の確保・向上のための取組を様々に推進してきたところでございます。
御紹介いたしますと、対策1は、広域通信制高等学校の質の確保・向上のためのガイドラインの策定でございます。対策2は、広域通信制高等学校に関する徹底的な実態把握・点検調査の実施でございます。対策3は、全国的に展開する広域通信制高等学校への指導監督・評価の仕組みの検討でございます。そして、対策4といたしまして、広域通信制高校の情報公開の積極的な推進でございます。
2ページへ参ります。文部科学省では、これを踏まえまして、様々な取組を進めてまいりました。以下9点、時系列に御紹介したいと思います。まず、1点目でございます。「高等学校通信教育の質の確保・向上のためのガイドラインの策定」でございます。こちらは、通信制高校による主体的な学校運営の改善の取組や、所轄庁による通信制高校に対する指導監督を行うための指針となるものとして、平成28年9月に文部科学省が通知として全国に発出したものでございます。これを策定するに当たりましては、当時、有識者会議を立ち上げまして、本日お集まり頂きました委員の皆様の中にはその当時のメンバーの方もおられますが、様々に御尽力頂いた次第でございます。
2点目でございますが、このガイドラインに基づきまして点検調査を開始いたしました。文部科学省のほか、所轄庁、それから、高等学校が株式会社立であった場合には内閣府も一緒になりまして、更に、アドバイザーの先生方の御協力を得ながら、実際に各地の高等学校を訪問し、このガイドラインを踏まえまして、学校運営についてチェックを行うという取組でございます。こちらは平成29年2月に開始いたしましたが、本年9月25日時点で既に34校調査済みでございます。なお、まずは全国の株式会社立高等学校から着手いたしまして、既に17校全て調査済みでございます。
次に3点目でございますが、学習指導要領の改訂でございます。後ろに参考資料1がございますので後ほどごらん頂ければと思いますが、高等学校学習指導要領の通信制課程における教育課程の特例というものを改訂いたしまして、通信制のカリキュラムにおける面接指導等の時間のメディア減免に係る配慮事項等を追加いたしました。平成30年3月に公示したところです。
4点目としまして、高等学校通信教育の質の確保・向上のためのガイドラインを改訂いたしました。この時も、当時の有識者会議の皆様に御議論頂きまして、この改訂に至ったわけでございますが、先ほど2点目として申しました点検調査を続ける中で、更なる課題が次々に明らかになってきましたので、これに対応するために指導監督を強化しようということで、ガイドラインを改訂したものでございます。
3ページへ参ります。5点目に、学校教育法施行規則の改正を行っております。これは、都道府県等が、自らが所轄する通信制高校の施設を網羅的に把握し、指導監督を徹底すべく、面接指導等を行う施設を学則に必ず記載しなければならないこととするために学校教育法施行規則を改正しまして、これを平成30年4月1日に施行したところでございます。
6点目は、これと抱き合わせですが、所轄庁において、面接指導等実施施設に係る学則の認可を行っていただく際に参照すべき指針を作りまして、全国にお配りしております。
7点目でございますが、高等学校通信教育の質の確保・向上のための指導監督マニュアルというものを当時策定いたしました。これまで、私ども文部科学省が中心となって点検調査を行ってきたわけですが、実際には、各所轄庁においても、定期的に各地の通信制高校をチェックしていただく必要があると考えておりまして、その助けとしていただくために、いわば分かりやすいマニュアルのようなものを策定いたしまして、これも全国にお配りしたところです。
8点目は、サテライト施設に関する情報の集約及び公表でございます。これは広域通信制高等学校の特徴の1つでございますが、その学校そのものが所在する都道府県の中にも、それから、他の都道府県にも、サテライト施設が多数存在しておりまして、各施設と広域通信制高校との繋がりが、一見して明らかではない傾向があるという課題がございます。このため、所轄庁自身が指導監督を行いにくく、そもそも生徒さんや保護者さんが学校を選ぶ際に分かりにくいといったような御意見を頂きましたので、サテライト施設に関する情報を文部科学省にて調べまして、これを当省のホームページに公表しております。
9点目でございます。経常費補助の配分の仕組みの見直し、これは補助事業の関係ですが、私立の広域通信制高校で、仮に不適切な学校運営が発覚した場合には、その改善を促すための指導の一環といたしまして、経常費補助を減額して交付することができるという仕組みを平成30年度から適用しております。数件でございますが、実際に適用された事例がございます。
以上9点を、このウィッツ青山学園高校の一件以来、様々に取り組んできたところです。
4ページからは「参考」ということで、各種資料を並べてございます。5ページは最初に策定されたガイドラインの内容です。これは割愛いたしまして、次に6ページですが、先ほど申しました点検調査のスキーム図です。補足させていただきますと、点検調査においては、私ども職員自らが各地を訪問しておりますが、実際には検査後に文部科学省から各所轄庁宛に通知を発出し、指摘事項を文書でお伝えしております。所轄庁に対し、各学校を適切に指導監督していただきたいということをお願いするものでして、3か月後を目途に各学校での改善状況を私どもの方に報告するようにと、文書によるやりとりを行っております。右下の赤囲いの中にこれまでの点検調査等で明らかになった課題の例を並べております。例えば、添削指導について、正誤の採点のみに留まっており、十分な指導が行われていないといったような指摘をしております。
次に7ページでございます。先ほど、ガイドラインの概要を5ページでお示ししましたが、これは、平成30年3月に一部改訂した現行のガイドラインです。赤い字で細かく書いておりますが、かなり網羅的な内容になっております。と申しますのも、点検調査で実に様々な課題が浮かび上がってまいりましたので、明確に指導ができるよう、ガイドラインに具体的な方向性を書き込んだ次第です。
8ページは事業の話でございます。通信制高等学校の質の確保・向上のために調査研究を行っておりまして、その事例としまして、右の四角の中にございますように、例えば、定時制も含めまして、モデル校のようなものを設けまして、より効率的かつ効果的な学習プログラムを普及させるといった調査研究事業を行っております。あるいは、下の四角の中にございますように、点検調査もこの調査事業の一環として進めているものでございます。これは令和2年度予算でも要求中でございます。
9ページからは、これまで主にご説明してきました過去の取組に対しまして、最近の動きとして、今後に向けた提言のようなものを頂いておりますので御紹介したいと思います。まず、9ページは、自民党の教育再生実行本部から本年5月に頂いた提言についてです。通信制高校は、不登校、あるいは中途退学経験者といった様々な背景を抱えた生徒の受け皿になっており、制度や教育内容を、時代に合わせて改善していくことが必要であると御指摘頂いております。それから、下のポツにございますように、通信制課程につきましては、第三者評価の実施等、教育の質の保証を徹底する仕組みを構築する必要があるのではないかという御提言を頂いております。
次に10ページです。こちらは政府の教育再生実行会議の第11次提言です。こちらは自民党の提言に続いて同じく5月に出されたものでございますが、右上の黄色く着色した部分に定時制を含めて通信制について記載しております。キャリア形成に必要な社会的スキル等の育成方法について検討すること、あるいは、「学びの基礎診断」を活用すること、それから、こちらも第三者評価を実施すること等、記載しております。11ページはその原本でございますので、割愛いたします。
12ページは、本年4月の中教審の諮問の概要でございます。これを受け、13ページに参りますと、「中教審において審議をお願いしたい事項」というものが掲げられておりまして、この2ポツの「新時代に対応した高等学校教育の在り方」ということで、3番目の黄色に着色したところでございますが、「時代の変化・役割の変化に応じた定時制・通信制課程の在り方」が審議事項になっております。
実際、この会議と並行しまして、「高校改革WG」が中教審の正式な会議として開催されておりまして、本日御出席頂いております荒瀬先生には、そちらの座長も務めていただいております。また、内堀先生にも、そちらの会議にも御出席頂いておりまして、ここでの御議論、例えば、これまでの点検調査で見えてきた様々な課題や、あるいは今後の通信制高等学校の在り方といったことを御議論頂いた上で、これはまだ事務局の素案に過ぎませんが、可能であれば、このWGでの議論と繋がりながら進めていくことができれば、より発展性のある会議となるのではないかと考えております。
事務局からは以上でございます。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。
今、坂東専門官が最後におっしゃいましたけれども、当たり前のことではありますが、通信制高校というのが高等学校教育から切り離れてあるということは全くないわけでありまして、高等学校教育の中で考えていくということで中教審の高校ワーキングの方にもここでの議論を共有していくということをしていければと思っております。今御説明頂きました事柄につきまして御質問がございましたら、御意見がおありの方もいらっしゃるかもしれませんが、今日は第1回ということで後ほど全ての委員の皆さんから御発言を頂く機会を用意しておりますので、御質問のみ受けさせていただきたいと思います。いかがでしょうか。どうぞ、中西委員。
【中西委員】 済みません、遅れて来ていきなり質問というのも何なのですけれども、今の御説明も途中だったので申し訳ないですけれども、そういう話があったのかどうか分からないのですが、所轄庁の体制が以前に比べて少しは充実するようになったかということと、それから、今、第三者評価云々という話もありましたけれども、たしかそもそも関係者評価自体もちゃんとなされていないというような話もたしか以前の会議でお聞きした記憶はあるので、そのあたりはどうなっているのかというのを今の段階でお聞きするべきなのか分かりませんけれども、今伺えるなら伺いたいと思います。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。
ほかにございますか。どうぞ、森田委員。
【森田委員】 よろしくお願いいたします。私が聞きたいことは、最後のところにありますが、中教審の関係なのですけれども、この会議と中教審の関わりは先ほど説明にあったとおりではあるのですが、実際のところ、そちらのワーキングでどういうことが話されているのかということは、かなりこの会議の中でも重要な位置を占めるのではないかと考えていまして、そちらの報告も含められるのでしょうか。それともこっちはこっちで、独立で話をして、もし関連するところがあれば委員長が上に持ち上げるという形なのでしょうか。そのあたり少しお聞かせ頂ければと思います。
【荒瀬座長】 ありがとうございます。
ほか、よろしいでしょうか。では、事務局でお答え頂くということでよろしいですか。
【塩川参事官】 事務局でございます。所轄庁の話でございます。またこの後の会議の中でも議論させていただきたいと思っておりますが、もちろん先ほど事務局の方から報告がございました、いろいろ点検する中で所轄庁に課題が見られるケースがあるのではないかという話もさせていただいている中で、あるいはこの後の時乗先生からのご報告ともオーバーラップするかもしれませんが、そうした中で所轄庁がガイドラインの必要性等も認識してきている状況もございます。
ただ、一方で広域通信に限らず、ともすると私学担当の部分、今までにも言われている課題でございますけれども、必ずしも私学、広域通信、あるいは通信全般的に課題が十全に改善されているわけではないところでございます。そうした中で今回の会議において私学担当の委員の先生にも入っていただくなどしているところでございます。
所轄庁については、改善してきている部分もありますが、まだ十分ではない面もあるというのが実態かと思っておりますので、今後、議論させていただきたいと思っているところでございます。
それから、この会議と中教審の立て付けの話でございます。我々として、この会議でどのタイミングまでにきちんとしたものをまとめて中教審へというようなことまでは細やかに詰めている段階ではございません。ただし、中教審との関係で申しますと、もちろん会議体としてはそれぞれに独立しておりますが、それぞれで細やかに議論いただくことと考えております。従って、必ずしもまとまったものがない段階であっても、場合によってはお繋ぎすることも考えております。
その際には、当然ながら、中教審の高校ワーキングの議論についても情報共有する中で進めていきたいと考えております。本日は1回目ということで、また、高校ワーキングの議論もまだ立ち上げて間がないところでございますので、まだ資料の方はお示ししておりませんが、次回からは資料も適宜お示しさせていただければと思っております。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。
三つ目の中教審との関係につきましては、今のお話のとおりなのですけれども、一方で高校ワーキングの方では、この会議があるということを高校ワーキングが認識している中で進めておりますので、当然のことながら、高等学校教育についてどうしていくかというときに通信制高校はどうするのかという話がありますが、まだ論点整理の案というのが出ている途中だということで、出ましたらまた事務局にお願いして資料は出していただくようにしたいと思います。よろしいでしょうか。中西委員、よろしいですか。
そうしましたら、今日、今も御紹介がありましたけれども、時乗委員から御発表をお願いするということになっております。先ほど事務局から説明頂きました広域通信制高等学校に対する点検調査に広域通信制高校アドバイザーとして御対応頂いておりまして、今回は点検調査を通じて見えてきた課題等について、専門家としてのお考えを御発表頂きたいと思います。
それでは、時乗先生、よろしくお願いいたします。
【時乗委員】 皆様、改めまして山手学院の時乗でございます。若干、私の自己紹介を兼ねて、私が通信制高校に携わるようになったのは、現在、神奈川県で横浜修悠館高校という高校があります。できて十一、二年たつ学校なのですけれども、その学校を造るときにちょうど2001年あたりぐらいから、その学校の構想を考え出しました。その構想を考える段階から関わっていまして、具体の設置、そして開校当初の校長という形で、あれこれ通信制の高校に十四、五年携わってきた関係で、今回、広域通信制高校のアドバイザーという形で2年近くやらせていただいています。その中から、本当に様々な課題が見えてきました。その幾つかはガイドラインの改訂という形で反映させていただいていますけれども、まだまだ多い課題ということですので、その辺について少し発表させていただいて、できれば、こういったところを受けてガイドラインの見直しだとか、あるいは本当に通信制高校が持っている可能性を広げつつ、質の確保、そういったものをどうやっていくのかというところで、今回、御議論を頂ければありがたいと思っています。
では、次、お願いします。本日の発表内容ですけれども、資料4に印刷してございますけれども、まず大きく2点、問題提起、そして点検調査での具体的な指摘事項ということでお話をさせていただいて、その後に私見ではありますけれども、通信制高校の今後の在り方ということについてお話をさせていただければありがたいと思っています。
次、お願いします。まず、大きく分けて、今回、いろいろな学校に行って感じたことは、この2点です。まず一つはガイドラインの改訂というような形で出させていただいていますけれども、学校現場はこのガイドラインの理解が必ずしも十分ではない、あるいはその各学校の実際、実態に合わせるような形でこのガイドラインを解釈して学校の運営を行っているというのが一つ垣間見られました。
その大きな理由として3点ほどあるのではないかと思っているのですけれども、まず1点が、今、各広域通信制は毎日登校できるコースという、そういうものを設けるとともに、登校日数を極端に少なくするようなコースを作ろうというふうにしています。場合によったら年に1回、3泊4日で全ての面接指導絡みで完結してしまおう、そういうふうなことをやっている学校があります。当然、3泊4日でやるわけですから、ガイドラインだとか、あるいは学習指導要領、そういったところの部分をかなり自校の現状に合うような形で解釈していかないとなかなか3泊4日でやり切るというのは難しいということになります。
二つ目は、当然、広域通信制の学校につきまして、本当に様々な教育的ニーズを持っているお子さんが通っておられます。本来だったら、そういうごくごく限られた一定程度の配慮が必要だという生徒さんに対して適用できるような制度を、場合によったら本校の生徒は全てそういう生徒なのだということで、それを一般化してしまって学校が持っているレギュラーの生徒の中にそういったものを落とし込んでしまっている、そういうところがあります。あと3点目は、これは私立高校なのでやむを得ないところがあるのかも分かりませんけれども、卒業率の高さ、うちの学校は98%卒業していきますとか、そういった卒業率の高さを一つの学校の特徴という形でやっている学校もあります。当然、そうしたところは、特に添削指導で出されている報告課題の質とか量、そういった部分がガイドライン等から見てどうなのかなというものがあります。
次ですけれども、これは画面の黒ポチの二つ目で、先ほど中西委員からも御質問がありましたけれども、所轄庁の部分がきちんとしたガイドラインにのっとって指導監督ができているのかというところなのですけれども、これも行くたびに正直言って私が感じる部分ではあるんですね。正直申し上げてなかなかこの所轄庁の指導監督というのが、いい形で機能はしていないという現実があります。私なりにその理由を考えてみたのですけれども、一つは多くのところでは行政職の方がやっておられて、いわゆる教員籍の方がそこに入っておられないので、特にこれは県立などでもそうなのですけれども、通信制高校というのはなかなか分かりづらい部分がありまして、そこに直接絡んでいる人間ではないと分からない部分があるにもかかわらず、教員籍でない方が担当されているというところで、なかなかこの通信制高校の部分について分かりづらいというのが一つ。
あとは、これは私の察するところなのですけれども、一応、行政職の方ですので、異動の頻度が割と高くて、前に持っておられた方の知見がうまい形で後任の方に引き継がれていないような形で、全て一から勉強というような状態でやってられるようなところもあるのではないのかなという感じを受けています。そういったところで、恐らく所轄庁の方は学校からこれこれについてはこうなのだ、このガイドラインはこういうふうに読み込んでいけば問題ないのだというふうなところで、そこを信じてやってられるというところが実態なのかなというような印象は持っています。
では、次、お願いします。次は具体的な指摘事項ということで、一応、通信制の教育は三つの部分を持っています。一つが面接指導と言われる部分、もう一つは添削指導、そして試験というこの三つの部分を持っていますので、こういったものについて一つ一つお話をしていきたいと思います。まず、面接指導ですけれども、そこにも書いてあります、要は視聴代替を使った面接時間の8割減免という部分を前提に学校運営を行っている学校が当初ありました。今回、新しい学習指導要領の改訂を受けてガイドラインにも反映されていますが、この8割減免というのが、個々の生徒の状況に応じて8割減免ができると明示されました。基本的には6割ですよという部分が大分徹底してきていますけれども、まだまだ3泊4日でやっているような学校については、8割減免を使った運用をしているというところがあります。
あと、これは最近の部分なのですけれども、この8割減免は大分減ってはきているのですけれども、あと、ここに来て出てきたのが実減免という部分、要は1時間放送視聴を見たら、1時間の面接時間を減免しますよという減免の仕方なのですけれども、視聴代替という制度は、トータルでの教育活動の中で計画的にずっと視聴していって、その結果6割減免ができますよというものですので、1時間見たから1時間減免しますよ、という制度ではないということを、ある意味誤解されて運用されている学校があると思います。
他に、これは私も気になるところなのですけれども、総合的な学習の時間の面接指導というのが、本当個々の学校によって違ってきています。通信制の学校で、この総合的な学習の時間をうまく実施するというのはなかなか難しいところはあるのですけれども、本当に場合によったら、その連携施設での活動をそのまま総合的な学習の時間というような形で扱っていこうと考えられている学校とか、いろいろあります。そのあたり、今後の検討の部分なのだろうと思います。
次は添削指導の部分ですけれども、まず、添削指導については、各教科それぞれ1単位について何回必要だというような部分があります。本当に数少ないのですけれども、この添削指導の回数が不足しているという学校も中にはありました。また、先ほどの卒業率等々の関係にも絡むのでしょうけれども、回数は、例えば数学I、3単位ですので全部で9回必要なのですけれども、その9回の回数はきちんと確保されているのですけれども、要は、1回の生徒が提出するレポートの分量がすごく少ない。場合によったら、A4、片面1枚。多くてもA4裏表、さっき言ったように数学I、全部で9回ですから、A4、9枚の内容で数学Iを全部やったというような形でやっているところが中にはありますので、この回数も含めて量的な部分をどう考えていくのかというのは、この部分については、はっきりとガイドラインの中では示されていないところなんですね。非常に抽象的な形で書かれている部分ですので、この1回についての分量をどうしていくのかというのも是非御議論頂ければありがたいと思っています。
また、最近はWeb上での課題を提出するという学校も出てきています。その際に問題になっているのが、Web上での自動採点機能を使って、ほとんどもう学校側に提出されるときは、それが自動的に採点されて、最後に担当の教員がコメントを書いて返すというような形のシステムを使っている学校もあります。それを考えたときに、では、そもそも添削指導の本質的な意味というのは何なのかというのを考えると、このWebなどの自動採点機能と添削指導の絡みというのも再度ここで検討していただければありがたいと思います。
次に、試験の部分なのですけれども、これもガイドラインでははっきりとは書かれていないところなのですけれども、先ほど言いました3泊4日で、集中スクーリングでやるような学校は、例えば7月、8月ぐらいに3泊4日の集中スクーリングを実施すると、そこで全ての面接指導等を完結しないといけないので、そのときに試験を1回だけ実施します。そうすると、5月からやった内容は8月の試験で点検はできますけれども、では、9月から後半やっている部分は、基本的には試験での点検はせずに単位認定をしているということになりますので、試験と単位認定に絡んでのところなのだろうとは思いますけれども、ここの試験の実施回数についても是非御検討頂ければありがたいと思っています。
次は教育課程の部分です。これも一つ目の連携施設を実施校の一部であるかのように誤解されていることというのは、これはよくあるのが基本的に実施校では、ある意味、高校に必要な最低限の科目、74単位でしたら、それは本当に必須履修科目から始まっての最低限の科目を置いていて、生徒の興味・関心に応じて選択する科目は連携施設の方でやっているというような形をとっている学校があります。その際、連携施設の活動だというのがはっきりと明示されていればいいのですけれども、あたかも自校がやっている教育活動の一環として表に出しているというようなところもあります。
二つ目は、実施校の設置者は連携施設と協力・連携を行うような場合は、きちんとした文書での取り決めということが必要なのですけれども、こういった文書での取り決めがないというような学校もありました。あと、これは私がすごく心配しているところではあるのですけれども、先ほど言いました総合的な学習の時間が、今度、総合的な探究の時間に変わってきます。この総合的な探究の時間というのは、ある意味、通信制高校などが場合によったら最も得意とするようなところなのではないかなという印象は持っているのですけれども、ここを本当にうまく通信制の学校が実施できるのかというところが正直いろいろな学校を見ていて心配になるところであります。
次は生徒支援、進路支援という部分ですけれども、これは全日制高校の部分でも、こういったキャリアカウンセラー等をどこまで充実できているのかという話はありますけれども、特に広域通信制の場合、本部校はいいのですけれども、連携施設などに通っている生徒に対して、こういった生徒支援、場合によったら進路支援、こういったところをもっともっと充実させていく必要があるのではないかなということも感じております。
以上で今回、お手元に用意した資料は終わるのですけれども、こういったところから、先ほど最初に指摘しましたガイドラインの徹底等、どのように行っていくのかということ、あとは所轄庁の部分が本当に機能的な形で指導監督ができるような、そういった仕組みをどうするのかということを是非御協議頂ければありがたいと思っています。これから少し時間を頂いて、5分ぐらいですけれども、この先、通信制高校をどういう形で展開していけばいいのかということなのですけれども、今回、点検調査へ行って、一部の通信制高校の中には、その通信制高校が持っている可能性を本当に一生懸命広げようと頑張っている学校もありました。こういった部分は、本来でしたら先ほど話がありました荒瀬先生とか、内堀先生が行っておられるワーキンググループの方での御議論になるのではないかなと思いますけれども、一つ、そのような学校が取り組んでいる中で、AIを含めた個別最適化された学習環境が注目を集めており、そのような環境を何とかうまく使っていこうという工夫をしているところもありました。
あるいは動画配信、双方向の授業、こういったものを活用して、面接指導の代替ではなく、特に双方向授業などの場合は面接指導の代替ではなくて、面接指導そのものとして扱っていければ、いろいろなところで教育の幅が広がるということをおっしゃっていた学校もありました。また、今、話題になっていますギフテッドの皆さんを含めて、いわゆる通常の学校という枠組の中でおさまり切らない生徒さんが、今、声を上げ始めています。そういった生徒さんの学びの場として、通信制高校が持っている可能性というのは非常に高いと思いますので、そういった新しい教育ニーズに応えられるような、そういう取組というのを一生懸命考えてられる。そういうところも聞いています。
私は、通信制高校というのが、今までは本当に高校卒業の単位を取るための学校という位置付けであったように思うのですけれども、これから本当に高校を卒業した後の人生につながるような、そういった学びの場であってほしいし、通信制高校というのは本当に全日制にはない強みを持っています。こうした強みを生かしていく新たな学びの場というのを是非作っていただければありがたいと思います。それと同時に、通信制高校が持っている可能性を広げるために柔軟な考え方を取り入れていく一方で、当然、通信制高校といっても高等学校ですから、高等学校としての質をどう担保していくのか、どう確保していくのかという課題が出てくると思います。
ただ、そういう可能性を広げていく車輪と質の担保をきちんと保証していく車輪、この二つの車輪をうまく回せるような、そういった仕組みを是非作っていただければありがたいと思っていますし、そういった制度の見直しとか、ガイドラインの見直し、そういった部分をやっていっていただければありがたいと思っています。私からの発表は以上とさせていただきます。ありがとうございました。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。
大変詳しく御発表頂きました。そうしましたら、今、時乗委員がおっしゃったことに対しての御質問とか、御意見とかも含めて、今日は先ほども申しましたように最初の回でもありますので、各委員からというふうに思っておりますが、どなたからでも結構ですので、いかがでしょうか。では、賀澤委員、よろしくお願いいたします。
【賀澤委員】 時乗先生は、点検調査のアドバイザーをやってきたわけですね。だから、現実にその学校を見て、その結果のレポートだと率直に思いますし、私自身も全くここに書かれていることについては同意しているところです。総花的になりますが、指摘をしていきたいと思います。ガイドラインの理解、恐らくガイドラインを読まない学校も私の知るところでは幾つかあるところで、広域通信制に関わるガイドラインに関わって何らかの形で通信制高校を対象にガイドラインの逐条解説でも構いませんけれども、何とか浸透させるための方式、方策を取るべきではないかという気がいたします。
それから、これもこのページで指摘されたことですけれども、東京都も私学部がありますが、私学部に高等学校出身の指導主事がいることがなかなかないんですね。まあ、当たり前と言えば当たり前なのですけれども、ただ、隣の佐藤委員は宮城県で校長を経験した上で私学部に入られたということで、極めて力強い思いになったのですが、例えば広域通信制に関わっての指摘が大きな惨事になったのはウィッツ青山の事件です。事件だと私は思っていますが、ウィッツ青山高校の単位認定委員会に私は6回ほど参ったのですけれども、やはりこの伊賀市教育委員会には私学部担当者にも高校の教育課程を読める人は誰もいない。そういう中で起きた事件だったと思いますね。ですから、東京都も決してそれを捨てているわけではないですけれども、例えば校籍の指導主事を1人置くとか、そういった手配をもう既にしているというふうに聞いております。
それから、指摘事例に関わっては、アドバイザーならではのところで、全くこのとおりだと思いますね。面接指導に関わって、果たして一人一人の生徒の学習実態、捉えているのかというのは、私は率直に思いますし、レポートに関わっても穴埋め的なレポートが圧倒的に多い。実は、冒頭にお話し頂きましたけれども、我々、全国高等学校通信制教育研究会が去年と今年、学校現場における校内研修、教員研修を展開しようじゃないかという形で、私も去年4校に行って保護者会にも参加したりしたわけですけれども、その場で見た、私がお客様でいるというのも分からないで、カウンターで何も持ってこない生徒に対してレポート1枚ポンと置く。それをその先生なのかどうか、こっちは事務室のカウンターで、ここはAと言いなさい、ここはBだ。それぞれ子供は一生懸命書いて、約15分間で終わってしまった。これがスクーリングとレポート提出の二度の取組だと。これは、さすがに校長先生はいなかったのですが、大問題になりますよという話はしたのですが、基本的にスクーリングとは何かとか、レポートの意義とか全く学んだことがない教頭先生でしたね。
例えば本日、委員として来ている原口委員が今年6月の全通研の全国大会で報告したことですが、レポート1枚に対して7回のやりとりをする。つまり、提出すればいいのではなくて、レポートの内容に関わって7回やりとりする。7回やることがいいかどうかはまた別の話ですが、少なくとも1単位35時間を学ぶことは、これは全日制だろうが、定時制だろうが同じだと思います。私ども学校の学習時間を自宅での学習も含めてやっていけば、大体35時間になる。1単位35時間、3単位105時間、これは当たり前のことだと思いますね。
つまり、全日制に比して通信制が互角に学んだことを示すためには、そういう取組が必要だろうと思います。つまり、出せばいい、あるいは丸バツで提出すればいいという話ではなくて、レポートもあくまでも学習教材ですから、それをやりとりすることが極めて大切だと思います。ですから、そこに丸バツで書いて済む話ではないと思いますし、連携施設、実施校、これも4か所行きましたけれども、これは学校ではないですね。実施校ですけれども、秋葉原の駅の隣に小さなビルがあり、そこに四畳半程度のお部屋が二つある。そこで子供たちに対して実施校のごとく話をするという場面で、これも室長さんと少し話をしたのですが、意見がなかなか一致できなくて困ったところです。
それで、最後のところの指摘事項4のところで、これは、私自身は第1回目の協力者会議のときに声を大にして言ったわけですけれども、通信制高校ならではの例えばスクールカウンセラー、ソーシャルワーカー、私はこれに養護教諭を入れて、3職という言葉はどこにもないのですけれども、この三つが最低限ないと学校は維持できないということだと思います。これはその中で言ってもソーシャルワーカーを私学1校が採用するのは大変なのだという指摘もありますけれども、本校ではもう既に8人の教員を大学院にやりました。2年間。露骨な話ですが、1学年、1年間で30万かかります。2年間で60万です。これを毎年1人ずつ養成するということで支出をしています。
これもまた笑い話になってしまうのですが、8人いて2人は、その資格を取った途端に転職をしました。お金を返せと今迫っているところですけれども、ソーシャルワーカーは各高校が一定の人物を指名して学ばせることは十分可能です。ですけれども、文科省が都道府県を通じて何らかの支援、30万、30万というわけにもいかないでしょうけれども、ソーシャルワーカーを設置するために何らかの補助が果たしてできないのかと思います。
そして、スクールカウンセラーは、これは別に臨床心理士で各協会に属するかどうかは別として、どの協会に属するかは別として子供たちの心理状態をしっかり捕まえて子供たちに関わっていくことは極めて大事だと思います。この指摘事項4は通信制高校の在り方そのものだと率直に思います。つまり、元気な子たちが毎日ニコニコ笑って、微笑んで学校に来るような状況下ではない。私どもの保健室、それから、相談室、昼休みはもういっぱいですよね。10人、20人なんてレベルではない。その子たちは次のスクーリングが始まるよといってもなかなか出れない子たちなわけです。しかし、その子たちがそこにいることで次のステップが歩めるということですね。家にいたのでは、次の階段を上れないわけです。これは極めて大事なことだと思います。
それから、ソーシャルワーカーはあまりそういった事例が要らないのではないかとお考えかもしれませんが、例えば親による虐待があった。それはピアニストで国際コンクールに優勝するような、本当に素敵な生徒なのですが、お母さんがレッスンのときに、まさに物差しのような棒で叩くわけです。そういうことに嫌気を差して自ら児相に入って、児相の施設に宿泊をしています。これもソーシャルワーカーが間に入った結果、児相の宿舎に入れたことだと思います。もし我々が何の前提知識もなく、その子供に関わって親御さんと交渉してもけんかになるだけだと思いますね。各高校に1人ずつをというのではなくて、各高校が育成することを支援するようなシステムが作れないかということを考えているところです。雑駁な話になりましたが、時乗先生が今まで経験してきたこと、あるいは自ら神奈川県立の通信制高校を作るときのお考え等々、学ばせていただきました。
以上でございます。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。
今、佐藤委員のお名前が出ましたけれども、所轄庁の御経験、実際に高校教育を御存じの上で、お立場をどんなふうにして受け止めていらっしゃるかということを含めて、話を頂ければと思います。
【佐藤委員】 宮城県の佐藤と申します。どうぞよろしくお願いします。宮城県の私学・公益法人課には高校の校長経験者を1人在籍させて、副参事・学事担当という扱いにしております。大体は所轄庁として宮城県で設置認可をした幼稚園、小学校、中学校、高校等の教育課程等の指導等を行っています。広域通信に関しては、県内にも幾つか、宮城県で設置認可をした学校があります。そこについては、所轄庁として私立学校法の範囲内での指導を、現地調査と称して数年に1回のサイクルで実施し、学校の様子を見せていただいている状況です。
宮城県には、宮城県以外で設置認可された広域通信のサポート施設などもたくさんありますので、そちらの方についてはお邪魔してお話を伺うとか、様子を見せていただくというようなチャンスもありません。広域通信で問題になっているのは、そのような部分が大きいのかなと思います。それから私立学校法との関係で、所轄庁とはいえ所轄する私立学校にどの程度指導、助言等が行えるかという判断も難しい部分なのかなとは、正直言って思っております。
先ほど少し質問等でもありましたように、では、実際に各都道府県の所轄庁でどれだけ私立学校の担当部署に行政職員を含めて配属されているか、人員的な問題、ここも非常に大きいのかなと思っておりました。宮城県の方も、特にこの学事を担当している行政職員が、私以外に5人おりますけれども、この人員で先ほど話したように幼稚園から小学校、中学校、高校、そして専修各種学校まで全部担当しています。宮城県でもかなりの学校数があり、それを行政経験のみの人間だけで仕事をやっていくことにハードルの高さもあるのではないかなと思います。
宮城県のうちの課の職員はよくやっていると思います。非常に負担も大きいと思います。宮城県の私学には非常に協力的にいろいろやっている部分はあるかと思いますが、なお十分目の届かない部分があるのも現状ではないかなと思っております。今日いろいろ見せていただいて、お話を伺いながら勉強させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。
私が御指名するような形になってしまって申し訳ありません。時乗委員が初代の校長をお務めになったところで、今、校長先生をお務めですよね、原口委員。済みません、よろしくお願いいたします。
【原口委員】 私が3代目の校長でございます。本当に新しいタイプの通信制を作るのだという、全国のどこにもない公立の通信制を作るのだということで、ものすごく気合の入った学校作りでございまして、公立でありながら非常に大きな規模で、12年前は5,000人だったと聞いております。1期生は5,000人規模で二つの通信制が1本になり、1学年1,250人という定員を実は今も神奈川県は崩していません。しかし、少子化と、それから、広域通信制の高校の拡大により生徒数はどんどん減り、現在は約2,000名でございます。在籍2,000、そして活動生が1,500、活動率は75%です。この会議の前身であります、この会の名前が通信制高等学校の質の確保・向上に関する調査研究協力者会議なのですけれども、その前に「広域」というのが付いていたんです。今回、「広域」が取れました。
その広域通信制高等学校の質の確保・向上のときに、27年の7月に文科省が初等中等教育局制度改革室の方で急ぎ、取られたアンケートがあるのですけれども、全国の公立、このとき77校です。法人率151校です。株式会社立16校、計244校を調査対象としたこの調査を大規模に行ったところ、課題は広域通信制のみではなく、公立高校にもあることが分かりました。日本中で一番進んでいるという公立高校でも、そこの課題は同じでして、一番職員たちが驚いたことはやはり、実時間減免は不適切ですよというところでした。実時間減免とは、面接指導を1時間欠席した場合には、足りない場合には1時間メディア学習で補う。それをどこも多分、全国の通信制の公立高校でもやってきてしまったのだと思います。それを職員が理解、修正するのに大分時間はかかりました。
今もガイドラインにしっかりと書かれている、継続的な、計画的な、メディア学習を行うことが必要なのだという、そういうことで皆理解をし、そして、実時間減免はとにかく不適切なのであって、一人一人をしっかり見て、前期で日数が足りなさそうであれば、後期にはもうメディア視聴も含めたものを取り入れていくのだという、そういうことが公立高校の中でも認識されていきました。それで、先ほどの時乗先生のお話の中で通信制高校の可能性を広げようとする学校もあったということですが、AIを含めた個別最適化、それから、動画配信、双方向、これは多分、森田先生の専門領域ではないかと思いますので、是非そのあたりは聞きたいですね。もう1点、5月17日、11次提言の概要が示されたときに非常に驚いたのですが、それは定時制、通信制の在り方のところの二つ目のポチに、高校生のための学びの基礎診断の活用促進による質の確保・向上、とありまして、いつの間にこういうところに学びの基礎診断が入ったのであろうかと。
つまり、通信制高校の質的な担保に学びの基礎診断を使うということにです。学びの基礎診断が業者のテストとして値段も含めて記されております。普通は大体3,000円です。一番安いところで1,700円だったのですけれども、経済的な困窮家庭も多くある通信制の中で、こういう試験をこういうところに使っていくのか。これが共通性の確保なのかというところで少し疑問に感じております。当然のことながら、多様性の対応については非常に皆さん認識をしていらっしゃることと思いますけれども、一方多様性の対応ばかりに目を奪われて、共通性の確保に至らないのはまずいとは思うのですけれども、そこは一本の試験だけではないやり方がきっとあると思います。先ほど出ました探究の時間、総合的な探究の時間の在り方、そういうことも含めて卒業後の社会参加に向けての教育活動等々も共通性の確保や質の確保・向上と言えるのではないかと思いますので、そのあたりも議論したいと思っております。以上です。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。
学びの基礎診断は業者が作成なさった問題を実際に使うという形になっておりますけれども、そもそも何でやるのかというその趣旨が実は大事でありまして、どこの業者の何を使うかという話とは少し違うわけですね。現に必ずこれをやらなければならないとなっているわけではなくて、都道府県によっては独自の基礎学力のアセスメントをなさっていらっしゃるところもあります。全ての高校生が、探究とかも含めて様々な学習活動をしていく上で基礎学力が必要になるわけで、当然、学校の取組というのは学校も相当様々な幅がありますので、それぞれの学校でどんなものを基礎学力として考えて、それを全ての高校生に付けるかということについて真摯に取り組むことが必要であるということが趣旨です。御存じの上で御指摘のことかと思いますが、そのような意味で11次提言にも載っているのだと私は解釈しております。そのような形で共有できればと思っております。
今、原口先生がおっしゃってくださった中で、森田先生、引き継いでいただいたような形になっていますので、森田先生から是非、御専門からお話を頂ければと思います。
【森田委員】 ありがとうございます。何者かが分からない方もいらっしゃるかもしれませんので、少し簡単に説明しますと、通信制の高校に関しましては六、七年ぐらい関わらせていただいております。最初、僕も何が起こっているか分からないものですから、公立、私立、株立、訪問させていただきまして、学校の実態を少し見ながら見学させていただき、今はNHK学園さんの方にはたまたまですけれども、何回かお邪魔させていただきながら、先生方のお話を伺ったり、賀澤先生から御指導頂いたりしながら勉強しているところです。
それから、今、全国の通信制の高校の研究会の方では指導、助言者をしておりますので、ここ数年はセミナーを担当しておりますし、今年ですと広島にできたばかりの広島みらい創生高校の方でセミナーをさせていただきました。また、昨年は厚木清南でセミナーをさせていただいたり、NHKの高校講座の委員もしたりしていますので、そちらの関係でどんなふうにメディアを使うのかということを指導しております。一方で、研究の方は、先ほど少しありましたけれども、教育工学をしております。教育工学と聞くと何かなかなか聞き慣れないかもしれませんが、最近の言葉で言えばEdtechと言われるものでございます。
70年代からずっとありまして、先ほどAIを使った個別最適化の話というのは、古くは、昔からやられていたものですし、我々の仲間がそういったことに関わって研究をしておりますので、情報も入ってきております。それから、動画配信の双方向に関しましては、90年代からもうやっていまして、研究は20年前に終わっています。実践では毎週、私たちの学部には通信制のコースがありまして、月曜日は夜8時から12時まで社会人とディスカッションしながらゼミをしていますので、ごくごく普通に使っているものでございます。大学の方では、今、学部の指導だけではなくてFDということで大学の教員全体の全学の指導を僕が責任を持って担当しております。あとはMOOCですか、全国の大学の中でedXと言われるプラットフォームに加盟しているのは5大学でして、そのうちの一つが本学でございまして、そこの副マネージャーをしておりますので、毎年、国際的なフォーラムに参加させていただきまして、世界の中でどんな形でオンラインの学習が進んでいるのかという情報は、一応、私どもの方で収集させていただいております。
こういった背景の中でお話をさせていただきたいと思いますけれども、今、先ほど原口先生から御紹介がありましたとおり、通信制の可能性を広げるというところで、是非いろいろ頑張っていきたいと思っております。幾つか提言を頂いたわけですけれども、そもそも何が問題なのかということを考えざるを得ない。私も通信制高校に携わっていろいろ考えさせられまして、今、本当に未来、これからの世の中を生きる子供たちが柔軟にカリキュラムを作った中で学んでいけるのは通信制高校しかないのではないかなと思っています。というのは、先ほど僕はなぜこれは中教審とつながっているんですかという質問をしたかと申しますと、高校の制度全体を見直さないといけない時代に入ってきたのだなと感じているからです。10年前は懐疑的でした。10年にMITを訪問したときにそういった話を聞いて、いや、そんなことはないだろうと思っていましたが、5年ほど前ぐらいに行ったときには、もう確信に変わっています。時代は変わりました。
まず最初の問題は、時間で単位化していることが問題だと考えています。これは大学の問題だけではなく、実は高等学校も時間割を決めている、その枠が余りにもかっちりしているためにいろいろな問題が発生しているのではないかなと思っています。もちろん、これを崩した場合に全日制が崩壊してしまうというのは、私は全く意に持っていることではありません。むしろ、そこの枠がないことが通信制の強みでありますから、先ほどの話から出ておりますけれども、総合的な探究の部分ですとか、それから、そこから発展した形でSTEAMの教育、プロジェクトベースの教育などは最もやりやすい、これが通信制高校の特徴だと考えています。
その際に先ほど少し幾つかの委員から御報告があったのですけれども、面接指導、添削指導で時間数が足りていないという話がありましたけれども、そもそも問題は、その時間数を確保すればいいというものではないはずです。簡単に言いますと、知識を習得するということも踏まえて、今はアウトカムベースのカリキュラムに移行しているところだと思いますので、能力をどう育てるのかだと思うのですが、時間ではなく、習得したかどうかが問題であって、それを言いますと、できない子たちが非常に問題になってしまうかもしれませんけれども、学者が作った学習指導要領でここまでというラインが本当にほとんど学者にならない、一般の生徒さんたちにとって必要なのかどうかということを見直さなければいけないのかなと思っています。それが提言できるのが、実は通信制高校のこの会議なのではないかと思っていますし、そこを見たときに一体何が最低限必要な知識、スキルであり、習得しなければいけない能力なのかということを考えなければいけない。
その中で学習指導要領が学問継承、学者を育てるため、学者が考えて設定しているものから、少し一歩離れて社会全体の中で必要なものをもう1回考え直すというフェーズに持ってきて、その中でこの高校の中で何を習得すべきかということを再検討する、そういったフェーズが必要なのではないかなと思っています。先ほど基礎学力がという言葉が出てきたところなのですけれども、本当に基礎になるものをここまでというふうに決めたら、もう無尽蔵に入ってきてしまうんですね。大学の方でこれだけ必要なんですと言ったら、もうどんどん詰め込まれて学術会議の中で学会を背負ってやってくる大学の教員がこれでもかというぐらい詰め込んだのが高校のカリキュラムですから、それを全て身に付けなければいけないとなった途端に、この通信制高校でも時間数が足りないし、きゅうきゅうしてしまうような問題が起こっているのではないかなと思っています。
済みません、話は戻しますけれども、テクノロジーを活用するという面では、これからどんどんやっていくべきだと思っていますので、先ほど出た中では、例えば添削の自動採点はなぜいけないのかが僕は全然理解できません。それから、面接指導をオンラインでできない。なぜできないのかが理解できません。そういったものをどんどん活用して、例えば3泊4日しか来ないけれども、オンラインで補完しているというような学びも十分これからは検討されるべきだと思いますし、そういう意味ではガイドラインが制定されておりますけれども、済みません、そこの部分も少し検討がもう1回必要な部分もあるかなと思いながら見させていただいております。
以上です。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。
今後またいろいろと学習指導要領についても話ができればと思っております。一つ、今回、前文の中で確認、大綱的に示すものであるというふうな言葉も使われておりますし、それこそ各学校が自分たちの目の前にいる生徒をどうしていくのかということを考えていくという方向で今動いているというふうに思っておりますので、是非また先生、御意見もお出し頂ければと思います。
では、吾妻先生にお願いしたいと思います。
【吾妻委員】 よろしくお願いします。私、東海大付属望星高校という通信制の学校の校長をしておりまして、今回、私立の高等学校、通信制の高等学校の立場からいろいろ意見を言わせていただいたりするのも一つなのかなと考えてまいりました。東海大学の付属高校なのですが、東海大学付属高校、全国で14校あるのですが、望星以外は全部全日制の学校でございまして、本校のみで通信制の高校です。そういったこともありまして、以前は平日に登校するコースもあったのですが、これを数年前にやめてしまいました。そこはほかの付属の全日制に委ねていいところだろうということで、むしろ、通信制の教育に特化した教育の原点に返ってやろうというような形で、今、振り返りながら進めさせていただいております。
ガイドラインを設定していただいて、それを私たちももう一度再点検をしながら教育活動を行っておりますが、むしろ、ガイドラインをどう守っていこうということ以上に、やはり今、通信制の子供たちにとってもこの3年間でどうやって学力を付けて、あるいは人間的に成長させて卒業をさせられるのかというようなことを具体的にどのような形で進めるのかということが大変大きなテーマとなっております。私たちにとってみると、メディアを使った教育、それから、添削指導、面接指導ということのこの三つの柱で進めていくというのが大きな基本的な教育ですので、そういった中で具体的に、先ほど森田委員も言われていましたが、少ない回数の中で何を選択して、どのように教育をしていくのかということをこれから4技能も身に付けさせたいとか、様々な方向性もある中で、実際にどのような形で、本当に生徒の中にはスクーリングに来ることもなかなか難しい、何年かかっても単位がなかなか取れないという生徒も現実的にいる中で、一方ではやはり大学等にもきちっと対応できる学力も付けさせたい。
数学IIIやコミュニケーションIIIも開講していますので、そこら辺はもう少し歯応えがあるような教育にしたいなという思いもありながら、実際に、でも、ついてこれないと困ってしまうなというような、そういったせめぎ合いの中で教育活動を展開しております。ですので、私が個人的に思うのは、もちろんガイドラインが守れているか、守れていないかということも大変重要な問題ではありますが、そういったこと以上に、これからの教育の中で通信制として何がより、通信制ならではできるという時乗先生がおっしゃっていたような、そういったことを次々と提言できれば、なおいいのかなというように考えてみたところでございます。
以上です。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。
それでは、続いて内堀委員、お願いいたします。
【内堀委員】 長野県教育委員会の内堀です。来年度、長野県では望月にサテライト校が開校する予定です。望月高校という地域高校を閉じていく中で通信制を導入して新しいサテライト校を作ったのですけれども、その中では、一つは自由度があるところが通信制のよさだということで自由度を確保しながら、一方で、例えば先ほどから出ていますEdtechにしても、個別最適化ということで個々に合ったペースで、合った教材を与えたとしても、学びへのモチベーションがなければ結局それが機能しないという部分があるのだと思うんですね。そういったものを支えていくためにどうしても、その支えというのは人といいますか、教員といいますか、周囲の大人だったり、友達だったりするものですから、基本的には週1回の登校なのですけれども、一応、学校には教員とか地域の方々が毎日来ていますので、そこのところへ子供たちが来ることによってサポート体制を作ろうということです。
ですから、自由の追求と、それから、サポートの追求ということで、両面を追求した結果、そんなような学校を作れたらなと思って、仕組みについては公表していますけれども、更に細かいところを詰めているところなのですが、通信制高校というのがどういう学校なのかというようなこと、先ほどから時乗先生をはじめ、いろいろな方が発言をしていただいているのですけれども、何か一つは戦後すぐの作りが、全日制、まずありきで、全日制に行けない状況にある、例えば働いているとかという状況にある定時制があり、その定時制も毎日行かなければいけない学校、そこに通えない子供たちが行くところという作りになっていると思うんですね。
ただ同時に一定の質を担保しなければいけないので、一定の決まりを作っているということだと思うのですけれども、先ほども少し紹介していただいて、ワーキングの方にも出ているのですけれども、今後新しい高校がどうあるべきかということを考えるときには、そういう3段階の仕組みでいいのかというところがあると思っていまして、例えば全日制って、本当に毎日来なければいけないのかなというところも含めて、何が高校教育に必要なのかということを根本的に議論することが必要だと思っているんですね。
そっちの方向性が1個あって、現行のガイドラインに適用させるにはどうしたらいいかという議論があるので、聞いていて、今あるガイドライン、今ある仕組みにいかに適用させるかという議論と今後どうあるべきかというところが少し乖離していってしまうような気が実はさっきからしていまして、そこを一致させるのであれば、どちらかというと未来志向を含めながら、どういうところまで現行でやっていくのかというか、ルールはルールなので守ってもらわなければいけないのですけれども、いかに現行のルールを守らせるかという議論と将来どうあるべきかという議論が多分かみ合わないので、そこを両方見て議論をしていかないと、何か二重構造みたいな感じになっていく可能性があるのかななんてことを少し感想として思っています。だから、どうしたらいいかということは難しい部分なのですけれども、そんなことを思いながら聞いていました。
いずれにしても、通信制、現行の通信制は全日も定時も行けなかった子、行けない現実、その時点で行けない子供が行く学校というところを超えて、自分が自由に時間を使うことができる学校としての価値がものすごく上がってきている。そこが多分、通信制の可能性だと思うんですね。ですから、そこの可能性をおっしゃっているのですけれども、ただ、そこのところが将来的に通信制だけそれでいいのかという議論もあると思うので、感想めいた感じになってしまっていけないのですけれども、議論の方向性を少し整理しながら、二本立てでやると多分、全く違う話が共存した会議になってしまうというような懸念は少し思いました。
以上です。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。
そもそも先ほども話が出ましたけれども、この会議の元の会議というのがウィッツ青山という異常な状態、お金のことも含めて、そういうところの問題から出ましたので、いかに正常化を図るかというところが中心の議論だったように思います。ただ、一方で、何度も出ていますけれども、可能性をどう追求するかというのは、これは本当に大事なことで、これは今、内堀委員もおっしゃいましたけれども、何も通信制のみならず、全日制の高校もどうしていくのかというのを根本的に考えなければならないわけですが、ただ、気を付けなければいけないのは、これからの可能性を追求するというところにばっかり目が行ってしまうと、ちゃんとやるべきことができていないのが見逃されてしまう。これが一番よくありませんので、そこのところは十分注意しながらということではないかと思います。済みません、大河原委員、よろしくお願いいたします。
【大河原委員】 弁護士の大河原と申します。私は、ふだん大学、短大を設置している学校法人の法律業務を専門にやらせていただいておりまして、通信制高校の業務も若干は携わっているのですけれども、今日、時乗先生のお話を伺いまして、いろいろ問題があるということはよく分かりました。法律家としては、そういった問題に対して是正をしていくときには根拠が必要というのは非常に感じるところでして、そういう意味では、今後ガイドラインの精緻化や周知、それから、もう少し規制を強化しなければいけないところがあるのかということを検討することになるのかなと考えております。
ただ、先生方、皆様おっしゃっていて、本当にそうだなと思うのですけれども、通信制高校はいろいろな生徒の受け皿になっているところで、自由度というか、選択肢の広さ、懐の深さみたいなことをやっぱりできるだけ維持した方がいいかなとは思っております。そういう意味で、ガイドラインの内容を見直すことになった場合でも、先ほど森田先生におっしゃっていただいていたような好事例をもう少しこの会議の中でも教えていただいて、そういったものを採り入れたガイドラインにしていけるとすごくいいのかなと思っております。
あともう1点は、大学の場合、認証評価という制度がございまして、基本的には大学は7年に一度、その認証評価機関の評価を受けるという制度になっております。今、この制度の評価員に就任しておりまして、非常に感じるのは、この評価を7年に1回、各大学が受けるのですけれども、それを使って改善をされている大学が多いなということでございます。この通信制高校の制度の中でも、そういった認証評価のような制度ができていくといいのかなと。認証評価で指摘されたことについては法人全体で対応していかなければいけなくなるという意味で、改革のためのいいきっかけにもなると感じているところですので、そういった評価制度なども検討していくといいのかなと今思っております。
以上でございます。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。
それでは、時乗先生、もし今いろいろ御意見が出た中で何かおっしゃることがございましたら。
【時乗委員】 いろいろとありがとうございます。私は、基本的には内堀先生がおっしゃる部分というのは全くそのとおりだと思っているんですね。だから、現在のガイドライン、いろいろと細かく書いてある部分と書いていない部分とあります。そのあたりをうまく調整することによって、本当に通信制高校が持っている可能性を広げていけるような、そういうガイドラインの見直しというのを是非検討していただきたいと思っていますし、併せて、一方で高等学校としてやるべきことは、こういう形できちんとやっていくんだというような部分もその中に織り込んでいって、今話にありましたように、そこの部分を第三者なりが評価して、ここはきちんとやっていますよ、こういうところは課題ですよというような部分が提示できるような、そういった仕組み作りなどができると、先ほど言った両輪がうまく回っていくような、そういったものができればいいと思っています。ありがとうございました。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。
では、中西委員、お願いいたします。
【中西委員】 私も前回の「広域」が付いた通信制の会議に参加させていただいていて、その最後の方で、そのときはあまり前向きな話はできなかったですけれども、次はしたいですねというような発言を最後にした記憶があるんですね。今回、こういうお話が改めてあって、今回は前向き志向を入れてやりますというお話も伺ったので、では、よろしくお願いしますというふうに申し上げたのですけれども、内堀先生がおっしゃっているような二つの方向性の乖離というのをこのまま放置するわけにはいかないなと伺っていて思いました。問題点というのは、ほぼ前回の会議でかなり出し尽くされた記憶があるんですね。では、それをどうするかという議論は必要だと思うのですけれども、改めて問題点はこうだ、あれだ、これだということから出発するのではなくて、問題点はもう指摘されているわけなので、それをどうしていくかということを改めて考える部分は必要ではないかと思うのですけれども。
前回は、だから、急いで調査をされた経緯もあったと思うのですが、今回はそうではないわけで、先ほど申し上げた所轄庁の体制であるとか、あるいは学校評価のことであるとか、あるいはその地域、地域の連携施設などのチェックに、その所轄庁同士の連携が必要だという話もたしかあったと思うのですけれども、そういうことをどう進めていくのか。ある程度進んでいるということが分かった上で前向きな話を重点的にお願いしたいなと思います。それこそ、森田委員もおっしゃっていましたけれども、通信制高校だけの話ではなくて、ある意味ボーダレスというか、遠隔授業のことを考えていくと、それと通信制の高校の話というのは、境目がどんどん薄くなってくることだと思いますので、そういう幅広い視点も踏まえながら前向きな議論をしたいなと思っております。
以上です。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。
それでは、日永委員、よろしくお願いいたします。
【日永委員】 ありがとうございます。もう皆さんが言ってくださったことのもう一度の焼き直しになってしまいますけれども、私自身が、先ほども出てきましたが、認証評価機関として今やっている大学基準協会というところでずっと仕事をしてきて、その後、2007年にたまたま山梨大学に出てきたときに学校評価が義務化されてというので、学校評価のガイドラインの改訂などに関わったのが最初だったと思うのですが、その後たまたま文部科学省さんから委託事業を頂いて、その当時の通信制高校、広域、狭域の委託調査をさせていただいたんですね。そのときに調査のタイトルは、第三者評価の基準とか手法の開発というのでいただいたのですが、当時の私の報告書には、こんなものできるかというようなことを書いた覚えがあります。
なぜかというと、法的な根拠が全くなかったんですね。当時は、先ほどから出てきているように、その通信制高校の基準、あるいは法的なルールなどというのはほとんどなくて、それに対して実態は非常に規制緩和の流れの中で非常に多様な、ある意味、言葉は悪いですけれども、雑多なと言ってもいいぐらいのものがいろいろ混じっているという、見えた中で、こんなものを例えば第三者評価の仕組みを作って基準を作ったとしても、その根拠になる法令が全くないままやっても何にもならないですよ。ましてや、当時は業界団体に任せるみたいな話もあったのですが、どうしてもやっぱり安易な教育と安易な学習という、その部分で提供者と消費者が一致しているような状況がある中で、なかなかそれは業界団体に任せてもうまくいくような話じゃないですねという話も書いたような記憶があります。
そこから、ウィッツ青山の事件、私自身もその委託調査のときにウィッツ青山、行っていまして、その当時はまだ経営者が代わる前だったんですね。問題点はあるんだけれども、例えばサポート校とあらかじめ一応、文書を交わすなんていう、そこそこちゃんと気を使った学校運営をされていた時期に、その当時の経営者と話をする中で、ああ、こういうやり方もあるんだねなんていうことを思っていたところ、交代した途端にあの問題が起きてきたなんていうところがあったのですが、今日、時乗先生から報告があったのを改めて伺うと、その当時の状況と改善はされつつあるのだけれども、問題の根幹は全く変わっていないなというのを改めて思いました。
そうすると、この会議、たまたまやっぱり質の確保と質の向上が中黒でつないであって、先ほどから出ているように、多分、前者の質の確保の部分については、せっかくできたガイドラインに基づいた点検調査、これはある意味、第三者評価的な営みだと思うのですが、そういうガイドラインを基にした定期的な活動、そういう点検を踏まえて多分、自己評価を本当に促していけるような、そういうガイドラインの普及みたいなことを続けていく必要があるし、その中で出てきた問題点をどう埋めていけばいいのか。報告にもあったように、まだまだガイドラインだから解釈に柔軟な部分があって、また、通信制高校が多様なので、非常にいろいろな解釈ができるから、そこの、どう解釈すべきかということを決めていくとなると、これは規制の強化になっていくのだろうと思うのですが、でも、その方向性はやっぱりないと、どうしようもないかなと。
ICT活用が、希望がある部分は私もすごく承知しているのですが、逆にさっき言った安易な教育と安易な学習に活用されているというのが実態なので、そこをどうするかなどという部分はやはり必要で、もっと言えば、元々自ら学ぶ意欲のある人がいつでもどこでも学べるという通信教育だったはずで、それに基づいて国の基準も作られているのに、一般の高校も含めてですが、なかなか自ら学ぶ意欲が持ち得ない、学習も継続できないというような子供たちの受け皿でもあるにもかかわらず、今日も出てきましたけれども、インプットとして規制されている、こういう人を置かなければいけないとか、これだけ人を置かなければいけないという部分が、人、物、金、全部が不十分な状態がまだまだ続いているわけですよね。
だから、いずれはそういう質の確保に向けては、そういう本当に規制の強化の部分というのは必要になってくるのだろうなというふうに、改めて今日思いました。その一方で、質の向上をするということであれば、これは先ほどから出ていますけれども、評価を道具として活用するというのは、これはありだと思っていて、一つは先ほどお話ししましたけれども、そういう第三者評価的な今の点検調査がせっかくうまく機能しているのであれば、これを定期的にやるというのがもしかしたら早道なのかななどという思いもするのですが、通信制高校の場合、広域もありますので、これは多分、国レベルで、国単位で第三者評価を構築していかないと無理な話があるので、というのは、第三者評価をやるときって、評価の継続性だけではなくて、どの学校の評価においてもある程度の共通性を持って見なければいけないんですね。だから、評価者がコロコロ、コロコロ変わっていたら実はうまくなくて、それを支えるバックオフィスもしっかりしなければいけないなんていうふうになると、実は今のこの点検調査の仕組みって、すごくいいあれだなと。
あとは、これに例えば自己評価の基準としてガイドラインをきちんと示してあるのですから、その自己評価に基づいて第三者がどう見ていくのかみたいな、そんなことができれば、先ほどの大学の認証評価とほぼほぼ同じようなことができるなというふうに、そんな可能性のある活動が既にされているなと思っています。その中で今後の質の向上というふうなところで言えば、今日もありましたけれども、よくある第三者評価の評価基準作りの中で、もちろん最低限の部分を見つけて保証していくのと違って、より向上していくためには、それぞれのグッドプラクティスを将来の基準にするという流れはやっぱりいろいろなところでやられるわけですね。こういうことがこの点検調査の中でいい、みんなで共有していこうというものができてきたら、それをまた基準化していくみたいな、そういう流れというところでも、第三者評価を継続的にやっていくことの意味はすごくあるなと思います。
もう一つは、これも質の向上につながるのだと思うのですが、今度の学習指導要領で学校評価とカリキュラムマネジメントの一体化みたいな、一体的運用みたいなことも言われていました。なので、最低限、こうやってできているというだけではなくて、個別最適化ですが、とにかく生徒の現状を踏まえてアセスメントに基づいた自己評価というのを各学校に促す。これは実は通信制高校だけでなくて、ほかの校種、あるいは全日制、定時制も含めた全ての学校にとって必要なことなのですが、それを高校全体の中で促していくためにどうしたらいいのかということができていくと、大学で学生たちを教えていく中で、なかなか学習意欲と学習経験が不足していて、何で自分がこんなところにいるんだろうというふうにどこかで思いながら大学にいる子たちもいるんですね。
さっき、人生につなげる学びの場としてというのがありましたけれども、通信制高校を出て、なかなか学習経験がなくて大学で苦労しているという子たちは山ほど聞くので、うちの大学は幸いなことにまだ聞かないですけれども、私学の先生方から聞くと、結局、安易に卒業した結果がそこになっているのかなと思うので、いろいろな意味でこの質の確保と向上について、いろいろ話がまたできればいいかなと思います。済みません、話が長くなりましたが、学校評価との関わりってすごく大事だなと改めて確認をしました。ありがとうございます。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。
若干時間がまだありますが、何か付け加えるということがございましたら。よろしいでしょうか。今いろいろと御意見を頂きました。ありがとうございました。今、高校ワーキングの話も出ましたけれども、その高校ワーキングは新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会というところに所属しておりますが、それこそ、その中で高等学校教育というのは一体何のためにやっているのかということを考えていかなければならないということで、その際にここの通信制高校がいろいろな課題がよく見えるということもありますので、逆によい取組もまたよく見えるということも当然あるわけですから、それが高等学校教育をどうしていくのかというところに刺激的に議論を生んでいくということにつながればいいなと思いながらお聞きしておりました。ありがとうございました。
よろしければ、今の話を受けて何か事務局の方からございますでしょうか。
【塩川参事官】 事務局でございます。本日は建設的な御議論、ありがとうございました。おっしゃっていただいた先生方の御意見のとおりと思っております。といってもいろいろな御意見があったわけでございますけれども、課題につきましては、時乗先生からの御報告にもありましたように、引き続きの課題であろうと思っております。そうした中で学校の設置者、それから、学校本体、所轄庁、更には国、それぞれの役割が重要だと思っています。そうした役割の中で、一体どこにどのような課題があるのかということをもう少し整理していく中で、おのずとガイドラインのどこをどう変えていくかということも、次回以降、議論ができればと思っております。
そうした中で、今、必ずしも学習保証ができていない高校の通信制高校についてどうあるべきかということを探りつつ、その通信制高校の良さをきちんと生かすこと、更にそれを通信制高校に限らず、全ての高校共通の在り方について、通信制という切り口から議論をさせていただくことで、ひいては中央教育審議会の議論にも繋げていければと思っております。今言ったような観点で、議論が複線化、交差しないよう注意しながら、次回に繋げたいと思っているところでございます。まずは、事務局からの御礼を述べさせていただいたところでございます。ありがとうございました。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。
今いろいろなところでいろいろな議論が動いていますけれども、これらがいい意味でつながり合って、重なり合って動いていくといいなと思います。今回、学習指導要領、教育要領を含めて、全ての学校段階の指導要領に前文が付きましたが、その中で「生徒が学ぶことの意義を実感できる環境を整え、一人一人の資質、能力を伸ばせるようにしていくことは、教職員をはじめとする学校関係者はもとより、家庭や地域の人々も含め、様々な立場から生徒や学校に関わる全ての大人に期待される役割である」ということが述べられています。通信制高校に関わる方々も、その役割をどう果たしていくのかということがやっぱり問われていると思うんですね。その大人の責任をどう具体にそれぞれの場面で果たしていくかということを真剣に考えていく中でガイドラインがよりよくなり、かつまた取組がしっかりしていくということが期待されているのだと思います。
そうしましたら、次回以降の日程につきまして御説明、よろしくお願いいたします。
【植原参事官付専門官】 次回の会議につきましては、調整の上、委員の皆様に追って御連絡させていただければと思います。また、本日の資料につきまして、郵送を御希望される委員の皆様は、机上にあります封筒に資料を入れて置いておいていただければと思います。
以上です。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。
それでは、本日の予定はこれで全て終了させていただきます。よいお話をたくさん伺うことができました。ありがとうございました。

―― 了 ――
 

(初等中等教育局参事官(高等学校担当)付)