いじめ防止対策協議会(令和元年度)(第3回) 議事要旨

1.日時

令和2年2月20日(木曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省東館3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. いじめの重大事態の調査組織の在り方に関するヒアリング
  2. その他

4.出席者

委員

新井委員,長岡様(伊藤委員代理),栗原委員,森本様(栗山委員代理),高田委員,新海委員,田村委員,笛木委員,布施委員,松谷委員,道永委員,八並委員,野村様(渡部委員代理)

​ヒアリング協力者

  京都教育大学名誉教授 桶谷様,神田外語大学客員教授 嶋﨑様

 

文部科学省

大濱児童生徒課長,松木生徒指導室長,伊藤児童生徒課専門官

5.議事要旨

※議事に先立ち、座長の訃報について説明が行われた。
※事務局より資料の確認と資料の説明があった。
 
【座長代理】  事務局から説明があった協議の方向性で、これからのヒアリング、そして、その後の議論を進めていきたいと思う。
 それでは、各種事案ごとの調査組織の調査の進め方をどのようにしていけばよいか等、先ほど事務局から様々な論点が示されたわけだが、それらの論点を中心にして、お二人の先生からヒアリングを承り、その後、皆さんと御議論を進めていきたいと思う。
 それでは、お手元の資料2、資料3として、ヒアリングに当たっての資料を御準備いただいている。まずは、お二人からおよそ20分を目安にして御説明をいただきたい。その説明を伺ってから、まとめてお二人に御質問をしていくという流れで進めたいと思う。
 それでは、説明をお願いする。
【ヒアリング協力者1】  これまでの重大事態の組織における経験について、調査組織の在り方に関する意見ということで求められているわけだが、私自身、皆さん方のお求めにしっかり応じられるかどうかの自信はないが、自分がやってきたこと、自分の経験したことについて、私なりの考えを述べたいと思っている。
 初めに、私は、もともとのスタートは中学校の教員である。3校を回り、京都市の教育委員会に入った。そして、指導主事から生徒指導課長を10年経験し、その後、生徒指導関係、教育相談、そういった関係の部長を4年させていただいた後、京都教育大に御縁があった。その際に、大津のいじめ事案が平成23年に発生し、その第三者委員会の立ち上げの中で日本生徒指導学会から推薦を受けて、いわゆる職能団体の推薦ということで、大津の自死事案における第三者委員会の委員をさせていただいた。かつてこの協議会の委員をされていた委員が当時の委員長をしていたが、あれからもう8年がたとうというところ。その後、京都教育大を退職し、また縁があって大津市の教育長の任を任された。任期途中でがんになって昨年の3月に退職し、その後、今も教育委員をさせていただいている。大津市のこのいじめ問題に関して、長くいろんな問題に関わらせていただいている。
 それでは、早速、資料2を見ていただきたい。私がお話しさせてもらうことはこのことに全て尽きるわけだが、まず、大きな2、いじめの重大事態の調査組織についてということで、私自身は、大津のいじめ事案の第三者委員会の委員のほかに、京都府、大阪府で5つの委員をしていた。その中でも、とりわけ大津市が、自死事案があったということで一番印象深く、そういった経験の中で、また、いろんな文献もあり、私なりにここに書かせていただいている。この辺はまた見ていただいたらと思う。
 (3)から行きたいと思う。調査組織の第三者性、公平性、中立性はいろんなところで議論されている。私は、最近はこういうことを言われることはないと思うが、被害児童生徒並びにその保護者の意向を聴取することが公平性や中立性に反するのではないかという問いを投げ掛けられたことがある。これは、皆さんここでは共通理解されていると思うが、公平性、中立性に反することではない。ここで一番押さえておきたいなと私が思うのは、一番下のところの箱書きに書いた。ガイドラインでもしっかりと被害の子供、そして保護者に寄り添っていこうといった方向性は間違っていないし、被害者に寄り添うことと、調査に当たってその要望を受け入れることはイコールではない、我々はこの辺をしっかりと踏まえていく必要があるのではないか。やはり、ここで寄り添うこととは一体どういうことなのかということを明確に委員の中で話をし、そして、その委員の中でのコンセンサスをしっかりと得ながら進めていくということが大事ではないかと感じた。
 次のページへ。2つ目の問い。遺族側や自治体側双方から出れば中立性が保たれるか、いわゆる中立性の担保がされるかどうかという点。大津の場合は、遺族側から推薦された弁護士が、第三者委員会の委員になられた。私は、これが、見掛けとしては中立性、公平性が担保されると思うが、大事なことは、ここで自分たちが与えられた使命は一体何なのか、この委員会における中立性であるとか公平性とは一体何なのかということをしっかりと議論していくことが大事ではないか。先ほどの寄り添うということもそう。例えば、遺族の方とお話をする、遺族の思いを酌み取る、思いを聞く、「そのとおりですね」ではなくて、遺族の方、被害の子供はそんなふうに受け止めている、こういう思いだということを我々、それぞれの委員がしっかりとそのことを受け止めるということが底辺にあって、そして、いろんな答えを出していくことが必要ではないかと思っている。
 その中で、箱書きに書いた、大津市立中学校におけるいじめに関する第三者委員会の各委員間で確認したポイントというのがある。これは、第1回の第三者委員会で確認した事柄である。教育現場の生徒や教員に寄り添い、その言葉に耳を傾けること。亡くなった生徒がなぜ死を選んだのかを忘れないこと。3つ目に、遺族の視点、我が子の教育を学校に託し、信頼してきた親が学校で何があったのか知りたい、これは当然のことであるし、そういったことを忘れないこと。そして、加害とされる生徒の視点をしっかりと受け止めること。この4点を確認した。
 そういった中で、やはり第三者委員会の透明性ということがあるので、ここでももう既に議論はされていると思うが、当時、大津の方では、しっかりと議論をした後、まずは遺族の方に、今日、第三者委員会で何の話をしたのか、核となるものはこういったお話をさせてもらった。具体的に示すものではなくて、今日はこういうことについてそれぞれのエピソードを拾い上げた。そのことから、何が事実であるのかということを固めていくために議論をした。具体の、例えば、個人情報に関わる話はそこでは出さない。それを遺族にお話しして、第三者委員会を12回やったが、毎回、委員長、副委員長、私たちがやった。その後、委員長、副委員長でマスコミ関係の方に、ブリーフィングを行った。そして、私たちほかの委員も含めて、全国から相当の注目があり、毎回相当数のマスコミの方が詰めておられたので、その後、ぶら下がりということで、その当時のお話をさせてもらった。そこでは、当然、個人情報ではなくて、具体の話もできないが、何が議論されているのかということを、遺族の方や被害の子供たち、保護者がしっかりと理解できるようなことを確認しましょうということで毎回やったことを覚えている。
 次に、調査の目的・趣旨というところ。これも相当この会議では議論されていると思うが、1つは、いじめ事実の全容解明、そこにいじめ事実などの事実を確定する。子供から聞いた事柄、先生方の記録、教育委員会の記録、いろんなところから事実を集めてきて、その中核になるものを客観的に事実と認定していくということと、次が、そのいじめの事案と重大事態との関連性、とりわけ、いじめ行為が重大事態に与えた影響という観点で考えた。その影響の有無を摘示することによって、例えば、これは明らかにいじめがあり、そのいじめと自死、また、いじめと今現在の不登校がどういう関連がある、どういうふうに影響したのかということをそこで議論していくということが大事ではないかと思っていた。
 2つ目に、いじめ事案への対処ということで、現在、子供自身が学校に行けなかったり、非常に心に負担を感じていたり、苦痛を感じているといったことをどう除去できるのか。とりわけ、いじめ防止対策推進法の第1条の中にある「子供の尊厳の保持」という部分が大事。
 私も学校現場にいるし、教育委員会で教育長をさせてもらっていて現場を回ったときに、やはり先生方の思いは、今日起こったことは今日解決する、そのために、いじめ事案の終着点はどこに置いているのか、その日に置いているのは何かといえば、やはり子供に指導して謝罪をさせる、両者が握手をし、ハグをし、今後ないようにしようねといったところで終着点を求めようとする、これが現場の意向としてあるわけ。ところが、やはりそれを焦るがゆえに、被害の子供の心がそこにない、また、そういった気持ちにならない。でも、先生の求めに応じて握手をし、ハグをする。実は、これが大津のいじめ問題の一番の中核だったと私は思っている。担任の先生は、やはり今までの生徒指導の考え方で、両方の子供をつき合わせて、こういう事実があったよね、だから加害の君はこういった問題があるよね、でも、被害の子供に対しても、君もこういった点は反省する必要があるよね、だから両方握手して。この問題、これからまた仲よくしてしっかりやっていこうよといった形でできる子はいいが、必ずしも全ての事案でそれができるとは限らない。しかし、それを教師が求めようとする。そのときに、教師自身が両者の人間関係の修復というところだけを見るのではなくて、被害を受けた子供が尊厳をおとしめられたという、そこになかなか教師の目が行かない。そういったものをしっかりと保持、そして、尊厳を回復できるような手だてをしていく。だから、今日は謝罪で一応終わるけれども、もう一遍、何が問題であったかということをしっかり考えていこうということで、当然、そこで子供が自分の尊厳が回復されたと感じる取組に力点を置いていくということが、私は非常に求められていることで重要ではないかなと思っている。
 それから、同種の事案の再発防止というところで、当然、提言も作成した。大津の第三者委員会に250ページの調査報告書を出したが、提言を私が70ページ書いた。そこで、そのときにいろいろ感じたが、やっぱり単にあれがだめ、これがだめということではなくて、学校現場の先生方の視点、だから、例えば、非常に忙しい中でそういったものが見えなかったという反省があれば、忙しい中でそういう子供たちの関係性であるとか、そういったものを見るために、どういう手だてが必要なのかということをもっともっと掘り下げて考えていくべきではないかなと思っている。
 次に、調査委員の役割ということで書いておいた。今日もお集まりの委員の先生方は、いろんな立場で自分の軸足というものが明確になっている。そういった経験、知識、知見が集積されて課題解決を図っていくといったときに、例えば、いじめの事実の認定の在り方というのは、それぞれの委員の立場で、違う分野にも割って入って意見を述べるという自由さというものは、私は必要ではないかなと思っている。当然、例えば、事実認定に対しては、弁護士の先生方がやはり公的な根拠に基づいてバックボーンが明確にしっかりしているから、私たち以上にそういったものに長けておられる。ただ、例えば、私なんかは教育行政をやり、教育現場に携わってきた人間としては、そういう子供の心の変化とか、教員の心の機微みたいなものから、その事実をどう考えていくのかということも、私は意見として申し上げた記憶がある。私はそういった交流がやはり大事ではないか、単にそれぞれの立場の委員だけで問題が解決できるものではないのではないかと感じている。
 次に、調査方法・対象ということで、こういった形で調査方法は、全体のスケジュールの調整をし、そして、調査委員会の確認事項、留意事項を確認し、関係書類をしっかり入手しということがある。こういうことをずっと見ていくときに、次のページ、一番最後から2枚目。時間の関係で飛ばしているが、「調査手順の図示」というところを見てほしい。ここでも課題になっていた、いわゆる自死事案であるとか、不登校であるとか、不登校の中でも、いわゆるもう転校してその学校にいないとか、そういったケースケースに応じて手順が若干違うのではないか、そこによって手順をしっかりと考えていく必要があるということが、この委員会の中でも述べられていた。私はこれが全て網羅できているとは思わないが、こういった手順が必要ではないか。
 重大事態の調査委員会が設置された。その調査主体はいろいろある。まずは、委員の先生方のスケジュール調整と期間、私は大体半年、自死事案で1年ぐらいをめどにしたらどうかと思っている。そして、私たちは何を狙っていくのか、どこまで求めていくのかということを、第1回、第2回のところで調査委員の中で徹底討論するということが大事で、確認事項及び留意事項がそこにあろうかと思う。
 そして、関係資料を読み込み、そこから出てきたものから、例えば、この生命心身財産の重大事態であれば、被害保護者に意向確認をする。重大事態の調査委員会は、こういう意図で、こんな方法で、これをこういった目的で調査を開始しようと思うということで意向確認をする。そして、調査の対象、方針をその中で決定し、関係資料を読み込んだ部分から、まずは、大津の場合も全てを書き出した。相当数のこの事実が上がってくる。例えば、先生方から頂いた備忘録であるとか、いじめ対策委員会、生徒指導委員会における調査記録がいっぱい出てくる。そういったものが重複している部分もたくさんある。それをできる限り、学校の調査委員会、学校のいじめ対策委員会の中で時系列に整理し、それを調査委員会に持ってきてもらうというのが一番望ましい形だろうと思う。でないと、なかなか時間が掛かる。
 ただし、学校は、できたものを全てそれでやれば事が済むかといえばそうじゃなくて、学校が見落とした、見えていない部分がやはり調査資料から出てくる、そこをどう点検するのかというのも課題としてあるのではないか。
 そして、今、アンケートが必要であれば、そのアンケートをどんなふうに展開するのか。記名式なのか、無記名なのか、どういう形でアンケートをやるのかといったこと。そこから、初めて関係教員の聞き取り、教育委員会が必要であれば教育委員会の聞き取り、そして、関係している子供の聞き取り、また、被害の保護者や遺族への聞き取りということで考えている。
 是非やりたいと思うのは、加害とされた子供の聞き取り。大津の場合も、12月に報告書を提出する際になってやっと、12月下旬になって、それじゃあ話をしましょうと、加害とされた子供の保護者が思いを聞いていただいて、調査することが可能だった。もうあと一歩、当時の委員長と私と2人で、加害とされた子供の調査を2時間、2回やって、もう1回やればというところで、ある新聞社の発表によって、この大津事案はいじめが原因で自死に至ったということを新聞発表されて、その後、それができなくなったということがある。だから、その辺をしっかりと加害の子供への聞き取りを私たちが工夫しながらどうやるのか。
 聞き取りよりも、まずは、私自身、昨年の9月からAIによる大津のいじめ事案の分析というのをやった。その発表に大濱課長もお見えいただいてそのときのお話をさせてもらったけれども、9,000件のデータから見えてきたことに、教員の気づきによって発覚した事案は深刻度が低い。アンケートによって発覚した事案も深刻度が低い。被害保護者から訴えのあった事案は深刻度の割合が高い。特に、加害の子供の指導ができていないときに深刻度の割合が高くなる。逆に、加害の子供の指導ができているときに深刻度の割合が下がる。また、被害者のケアもそうだし、加害、被害の子供の保護者の説明をされているときも、その深刻度の割合が下がっていくという具体的なデータも出てきた。だから、加害の子供に対してどう働き掛けるのか、このときに、学校の調査委員会が働き掛けできないという関係ができてしまったときに、第三者調査委員会が乗り出して、その辺の調査に入り、そして、関係の修復、いわゆる修復的手法というやり方もある。そういったもので、子供同士の関係性を、時間も掛かるけれども、やっていくことが必要かなと思っている。
 次に、出てきた資料をしっかりと精査し、そして、追加の資料が必要であれば検討していく。また、その中で出てきたいじめの事実、こういったことがあるとエピソードを一つ一つ拾い上げて確定していく。ただ、このときに、私は思うが、一つ一つのエピソードを、これはいじめである、これはいじめではないということを認定というのか、そういう議論はしたらいいと思うが、その一つ一つで認定をすべきじゃなくて、全体像をどうつかんでいくのか、子供の思いとか、関係性とか、時系列に並べていくことが私は必要ではないかと。単に一つ一つのエピソードで、これはいじめ、これはいじめではないということで決めていくよりも、全体像をどうつかむのか、全体の中で子供の気持ちはどうであったのかということをしっかりと視点に入れて、いじめというものがどう影響していたのかということを認定していくことが必要ではないかなと思っている。
 そして、被害の保護者へ出てきた結果を説明し、報告書を作成するということが必要ではないかと思っている。
 時間が来たのであとは見ていただいて。今日、求めに応じた形での発言が十分できていない。また後でいろんな御質問を頂けたらと思っている。
【座長代理】  続いて、説明をお願いする。
【ヒアリング協力者2】  先生の方で大きな事案を通しての考察をしていただいたので、私は、いじめに大小とか軽重はないけれども、日常的に起こっていることがたくさんあって、実は今、今日の資料では27の事案をの委員長をさせていただいているということで書かせていただいたが、ここで28件目が入り、8つの自治体で、いわゆる14条委員会の委員長を務めさせていただいている。その中で、4つの自治体が重大事態の調査を抱えており、ただいまやっているところである。そういった28の事案の中から考察したことを、今日、先生方にお話をさせていただいて、そして、先ほども論点の中から出たけれども、第三者委員会の在り方と、私が今日強く申し上げたいのは、同時に、その流れというか、第三者委員会そのものが各地で非常に揺れているというか、ここはどうしたらいいんだろうと、細かなことだけれども、実際にどうしたらいいかということでとても悩んでいるという実態をお伝えできればと思っている。
 それでは、レジュメに従ってお話をさせていただく。1点目の委員のことだが、これは先生の方からも中立、公正の話が出たので、ごく簡単に申し上げる。私が申し上げたいのは1点だけ。中立、公正ということがよく言われるけれども、私は、よく使われる「安全安心」と同じだなと感じている。安全、つまり仕組みであるとか、そういったことに中立性を保ちましょうということだと思うけれども、公正の方は心理的なことで、いずれも、どちらにも偏らないという基本的な姿勢があるわけだが、私は、委員というのは公正であるべきだと考えている。それぞれ、今日お集まりの先生方ももしかしたらそうかもしれないが、ふだんいろいろな考え方をお持ちだと思うが、この第三者委員会では一切そういったものは捨てていただくという言い方も変だけれども、そうではなくて、とにかく公正の目で見ていく。どういう人を選ぶかというよりも、どのようにきちっとやってくれる人を選ぶかというのが、この調査委員会の委員の選出のポイントかと私は思っている。下に幾つかいろんなことを書いているけれども、これは後ほど出てくるので、飛ばさせていただく。
 それから、真ん中よりも下に運営上の問題と書かせていただいているけれども、ここに1点目、これは先ほど論点になかったが、今、各自治体が困っているのはお金である。ここに、1つの例として「3000円赤字・2000万」なんて書いてあるが、どういう意味かというと、実は、私、遠いところの委員会の場合には、交通費のほかに、夜遅くなるため現地に泊まる。大抵1回につき3,000円の赤字。とある事案では、委員の報償費、交通費等について2,000万円掛かっている。したがって、何が申し上げたいかというと、こういった委員会を十分に開くことができる自治体と、それができなくて非常に困っている自治体があるということを申し上げたい。その1つの例として、その「3000円赤字」の3行目にある、交代制委員会って何のことかと思われると思うが、5人分の謝金の予算がない。だから、定足数に足りるような人数でやっていこうという実態があることをまずお伝えしたいと思い書かせていただいた。
 それから、重大事態の流れだが、もちろんガイドラインに沿ってやっているが、現実に見ていくと、一番下の行。「複数の事案の処理に当たって」と書いてあるが、実は、1つの教育委員会が3つの事案を同時に抱えているというケースが、今までに2ケースあった。そういった場合に、第三者委員会を3つとも開くということは非常に困難。何をしているかというと、学校主体の場合について、その調査結果を第三者委員会が検証するという、「検証」という言葉が入っているが、教育委員会が調査チームを組んで調査を行って、そして、第三者委員会に検証を任せようという、これは、ガイドラインの中ではルール違反である。そういったことをせざるを得ないような状況があるということを、これも声を大にしてお伝えしたい。
 したがって、この検証という概念というか、言葉については、きちっと位置付けというか、何をするんだと。これもいろいろ。ある自治体のところでは、1回の会議で検証を済ませ、ある自治体は、調査会とほとんど同じ10回程度、検証に時間を費やす場合もある。これについては明確にすべきだなと考えている。
 次に2ページ目だが、首長のところに教育委員会から報告書が提出されるが、そのときに首長は、地教行法にあるのだから教育委員会が調査委員会、第三者委員会を打ち立ててやったのだから受け取りましょうと思うのかなと、思っていたが、実は、首長部局の方でお持ちの委員会、例えば、男女平等検討委員会とか、そういった委員会を使って、このいじめの重大事態の第三者委員会と同じような調査をまたやって、それを根拠に首長が判断するという例が、もちろん全てではないが、28のうち幾つかある。だから、実質的に3審制になっていると。まず、調査委員会がやって、それを首長部局のところの第三者委員会がやって、そして、再調査となれば再調査の委員会がやると、この実質3審制のような形が行われているところが幾つかある。
 次に(3)に書いてあるところで、多分首長の苦渋の決断だと思うが、これもガイドラインの中には確かに「追加調査」という言葉は入っていないけれども、再調査の判断をするに当たって、首長が、やはりいろいろな事情が多分おありだと思うが、再調査をしなさいではなくて、追加調査をしなさいという形で、今まで28件中2件やらせていただいた。ほとんど再調査と同じだが、追加調査という言葉で、再調査じゃないよと、あなたたちはよくやってくれましたよということを言っていただきながらも、再調査と同じようなことをやるという実態がある。
 3点目はこれをお読みいただければ結構だが、後ほど出てくるので、そこでお話しする。事務局の担当者の問題は多々ある。
 大きな2番だが、これは本日の趣旨とは合致しないかもしれないが、実際にこういう状況があるということをお伝えしておきたいと思い書かせていただいた。27の事案中、私が関係した内容はそこに書いてあるとおりで、8割近くが不登校の事案。ただ、不登校事案でも、生命等の重大事態のような出来事があって、結果として不登校に陥って不登校事案としての学校からの報告が上がってくるケースがあるので、確かにこの78%というのは多いけれども、今申し上げたような事情がある。
 それと、2を見ていただきたい、実は、その不登校事案の中で、「写真を撮る時誘われなかった」、以下、「睨まれた」などあるが、最近の事例で、ある級友がいじめるということで、いじめの重大事態、30日以上不登校になったということで学校から上げられてきたケースだが、その子がどういうことをしたのかと伺うと、生理的に嫌いだと、視界に入るだけで我慢できない子だというケースがあるということをお伝えしたい。
 もちろんこういうことだけではない。不登校事案だから、不登校の子供が、私はよく、中立性、公正性、厳正性の後に、有用性を持った委員会でありましょうということを必ず申し上げる。特に不登校事案はそうだが、その子にとってプラスになるような委員会でなければ、ただただ調査をし、はい、これが結果ですよということではなくて、何らかの形でお役に立てるような委員会にしたいと思っている。それを有用性というふうに使わせていただいている。もちろんその点を目的にやっていくけれども、現実に学校が不登校事案として困っている事案の中に、こういった事案が非常に多いということを是非御理解いただきたい。
 もちろん軽視していいと言っているわけではない。重大な事案としてきちっとした調査をしているけれども、先ほど先生のお話の中にもあったが、実は、加害者の側が非常に追い詰められて、加害者の側がリストカットを始めてしまったりとか、不登校になってしまったりとか、退学してしまったというケースもある。高校の事案に多い。
 次の大きなところで、「重大事態」対処の問題点と書いたけれども、一番下の行のところだけ言わせていただく。先ほど来申し上げているように、第三者委員会そのものも統一性のない対応をしてしまうことがある。つまり、ガイドラインの解釈をめぐって多数の質問、私は100の質問にまとめたことがあるけれども、100の質問に答えてもまだまだ出てくる。具体的にこういう場面はどうしたらいいのかということで出てきて、ここに対しての悩みがあるんだということをお伝えしておきたいと思う。
 さて、3枚目をお願いする。今、加害者の方々って話をしたけれども、3の一番上だが、いわゆる被害の方。実は、そういったことで調査をするに当たり、その子の様子を見ていると、親御さんの方からお話が来る。先ほどの先生の話と全く同じで、学校が発見したケースなどの場合は、うまくというか、良好に進んでいくケースが多いけれども、そうでないケースの場合は、保護者の方がどうしても納得できないということがあると、何が起こっているかというと、その保護者のお子さん、つまりいじめの被害となっているお子さんが、あの子とは付き合わない方がいいよという状況が生まれてしまって、4行目に「接近忌避感情」なんて言葉で書かせていただいたが、そういったことで、重大事態の調査をする中で、第2、第3の問題が発生しているということをたくさん見てきた。そこで書かせていただいた。
 調査の限界は、これは非常に感じていることで、いわゆる調査権がないので、直接的な聴取さえも断られるケースもある。粘り強くはやっておるけれども、そのようなことがある。
 最後に、そこに「問題提起」と書いたけど、むしろ私自身が今考えているお願いである。1点目は、2に書かせていただいたが、いわゆる自死事案の場合、マスコミ等で、これはいじめの自殺ではないかと言われたものを年次別に取っていくと、一番多かった年は二十数件あり、昨年は恐らく7件か8件だったと思う。おおよその年が10件以下。先ほど申し上げたことと重なるけれども、この自死事案をそれぞれの自治体がやるというのは非常に困難を伴う。大津市の場合はとてもよくやられたことのよい事例だけれども、非常に大きな問題で、数はそんなに、日本全国で十数件ということは何年かしかない。そこで、この自死事案については、この重大事態の流れを少し考え直していただけないかというのがお願いの一つである。
 それから、先ほども書いたけれども、在籍していない既卒の事案。相当古い事案になり、調査そのものをしたくとも、まず聴取には応じてもらえない、記録が残っていないということで、これにつきましても何らかの別途の手だてを考えていただかないと、小さな自治体が第三者委員会を立ち上げてこういった事案に取り組むというのは非常に困難。
 2点目は、事務局担当者の負担が非常に大きいこと。予算の措置もされていない。そんなことがあり、このあたりも今回の議題にはなっていないかもしれないけれども、どこかで議論していただければありがたいなと思っている。
 3点目だが、「第三者不当関与」と書いたけれども、これは不当でないケースももちろんあるが、どういうことかというと、本来の首長の方に回っていった時点で、首長に対しては失礼な言い方になるかもしれないが、議員であるとか、各種の団体といったらいいか、いろいろなお考えをお持ちの方々がそこにいろいろ要望に行ったりするわけだが、これが首長の調査に影響を与えないかということをとても懸念している。私自身はまだ経験していないけれども、そんな状況を見ることが多々あるので、書かせていただいた。
 そして、4点目の再調査要件の明確化だけれども、これは先ほど申し上げたが、追加調査の事案が増えている。再調査をしなさいではない。したがって、第三者委員会と重複する調査が行われているということで、最後のページを見ていただきたい。この再調査は、私自身は非常に例外的な措置ではないかと。というのは、第三者委員会の調査としては10回程度が平均だと思うが、相当詳しくやらせていただいている。そういった中で、その書類を見て、首長の段階でこれはいいだろう、これは再調査だという判断をするのは確かに厳しいかと思うけれども、下から3行目に書かせていただいた、そういった追加調査、検証調査というのは、第三者委員会の誠実な対応をおとしめるのではないかと。これはもう私の感想だけれども。したがって、再調査の要件をより明確にする必要があるのではないかと感じている。
 最後に訴えたいのは、子供の最善の利益の保障が私たちの最大の役目だと思っているが、実は、子供の最善の利益の保障が、大人の最悪の利害の相克と書かせていただいたけれども、本来、子供をしっかり守って、子供の立ち直りとか、そういったものを見守るべきこの委員会が、実は、大人同士の仲介役のようなことをせざるを得ないような場面に出会うこともある。そして、さらに申し上げれば、最近増えているのは、教職員の処罰というのか、懲戒処分を求めるケースが非常に増えていて、これに当たり、教職員からの聴取を行ったりするけれども、調査をする全てがそうだというわけではないが、教職員の士気に影響を与えてしまったかなと。これは私の反省である。私自身が考えることがある。こういった状況は、「後付いじめ」、「いじめ利得」と書かせていただいたけれども、要するに、後になっていじめがあったのではないかということを申し出ていただくようなケースが非常に多い。いじめ利得というのは、いじめがあったからうちの子は成績が下がったと、だから、この成績を元どおり、昨年の成績に戻してくれという要求とか、そういったことが絡んでいるケースが非常に増えているので、最後の2行を読ませていただいて終わりにする。やはり、教職員が元気を出してもらって、いじめ防止にしっかりと取り組んでいただかなければならないということなので、子供の最優先の教育に教職員が安心して取り組めるような、そういったことに対しての環境整備をお願いしたいということで、私の発表は終わらせていただく。
【座長代理】 ただいまお二人の先生から、それぞれの経験を基に第三者委員会等調査の在り方について、様々な内容について説明、課題の提示が行われたと思う。この後、ただいまお二人から発表いただいた内容、そして、先ほど事務局から示された、実際に調査を進めていく上で必要になるであろう手順等の論点といったことについて、ある程度焦点化して、お二人の先生、あるいは事務局に質問、御意見を積極的に出していただければと思う。5時が終わりの時間になっている。もう一つ、その他があるので、4時40分から45分ぐらいのところを目安に議論をしていきたい。
 それでは、それぞれ委員の方、質問や御意見があればよろしくお願いする。
【委員】  幾つかお聞かせいただきたいが、まず、先生にちょっとお聞かせいただきたい、お二人の先生のお話の中に共通して中立性、公平性の確保ということでお話があって、全くそのとおりだなと思った。まず、やはり被害児童生徒、あるいは保護者の意向等々、聴取することそのものが公平性、中立性に欠けると言われてしまうと、もう何もできなくなってしまうということで、おっしゃるとおりだなと思う。実際に第三者委員会を進める中で、大津事案の場合ということで、2ページ目の一番上にあるけれども、遺族側からの推薦、そして、大津市側からの推薦ということがあった。これは、人数的なものはどんな形で整理されてスタートしたのかということが1点である。そして、中立性が確保されているか、されていないかは、第三者委員会が判断するというよりは、周りの方々がどう見るのか、あるいは、加害者側、被害者側がどう見るかということが、本当に共通理解が図られて、本来の第三者委員会の役割が果たしていけるのではないかなと思うけれども、大津事案の場合については、そこら辺は特に問題がなかったのかどうなのかお聞かせいただきたい。
 そして、先生の御発表の中で強く感じたことが、最後のお言葉の中にあった、今の学校現場、私どもの仕事は義務教育が中心だけれども、全てと言っていいぐらい、全ての教育委員会がいじめ防止について限りなくゼロにするためにどれだけ努力をしているのか、私は、これは計り知れないものがあると思う。この第三者委員会並びに追加調査、再調査等々によって、やはりいろいろ聞き取ったりするわけだが、その問題を解決している間も教育界は常に前に進んでいる。だから、先生方が萎縮することなく平常の教育活動が進められるような環境の中で、ぜいたくかもしれないが、いろんな調査がなされていってほしい。
【座長代理】  まず、先生、中立性、公平性の確保ということで、御経験に基づいてお話をいただきたい。
【ヒアリング協力者1】  まず、お尋ねの1点目。遺族側からは3名、そして、大津市の市長の方から、いわゆる職能団体ということで、当時は日弁連、そして、日本臨床心理士会、日本生徒指導学会の3つの団体から推薦を受けてという形で、3対3ということになった。そのときに、最初の会議で自己紹介をしたときに皆さんで共通したのは、対峙的に物を見ていったらこれは大変なことになるので、解決し得ないだろう。だから、しっかりと自分たちは何々の代表ということよりも、何が公平、中立なのかということをしっかりここで議論しましょうよと。その観点として、ここに書いた4つの観点を軸にしながら議論することによって、中立性、公平性というものが1つ担保されるのではないか。
 もう一つは、やはり遺族の方が、何でうちの子は死んだのか、何で亡くなったのか、そのことが知りたいという思いは非常に強かったし、初めて遺族の方とお話をさせてもらったときには、当初は、やはりそっとしておいてほしい、うちの子がマンションから飛びおりて、このマンションの価値が下がっていく、そんなことが広がっていったらまたマンションの人に迷惑が掛かるから、それを何とか、という思いだったものが、やはりいろんなところから聞こえてくる、おたくの子はやっぱりいじめられていたのではないかということで、やはり遺族の方がものすごい憤りを感じておられて、一体何があったのかということで、いろんなことで遺族の方なりに調査をされたけれども、それがなかなか見えてこないと。
 大津の中でも問題になった、最後まで議論になったのが、被害の、亡くなった子供の親の虐待があったのではないかということが、まことしやかに学校、地域でずっと広がっていったということが非常に大きな問題になっていた。そして、私たちがやったことは、本当にそういうことがあったのか、それを私たちは虐待として認定をし、しっかり事実として捉えることができるのかということの調査も入った。だから、その辺の事柄をしっかり委員の中で議論したことと、先ほど言ったように、遺族の方にもお話をし、そして、当然、そこには教育委員会や学校の関係者も議論としてお入りいただくので、そこでも現在の状況がこういうことですということがあった。
 ただ、先生がおっしゃったように、誰が判断するのかはそのとおりで、でも、判断してもらうためじゃなくて自分たちが信念を持って、これがやはり公平性であると、結果、遺族の方にも学校関係者にもいろんな方に、これは公平性、中立性が担保されているなと御理解をいただこうと私たちは努力をしてきた。
 このときに、率直に申し上げて、学校、教育委員会は、第三者委員会は敵だった。最初に、さあ、それじゃあ、教育委員会から話を聞いてみようと。実際に私たちが立ち上がったのが実質の10か月後に立ち上がったから、もうマスコミが全国から注目をしてということで。そういったことで立ち上がったので、教育委員会や学校に爆破予告があったり、プールに青酸カリが投入されていたりとか、そういったもう混乱した状況の中で私たちが現地に行っているので、非常に事実をつかむために、先生がおっしゃったように、なかなか学校や教育委員会が、こんなことを言っていいのか分からないが、最初に指導主事が、「事実等いろいろ聞かせてください」と言ったら、書類は何にもお持ちじゃなかった。ボールペン1本持ってこられただけ。私らはもう驚きを隠せない状況だった。ということは、それだけ第三者委員会、あなた方は一体何する人? 本当にこれが事実を解明する人ですかという疑問を持ちながら来られたということで、もう全て斜めからの物の見方だった。でも、私たちは、それに対して真摯に向き合い、加害の子供の保護者に対しても、何度も何度もこういう意図で調査をしたい、だから、是非子供さんに話をさせてほしい。今、まだいじめということを認定したわけではない。しっかりと何が起こったのかということを私たちは究明したい。是非協力をということを、何度も何度もリクエストの手紙を書いて保護者に送った。そういうことの積み重ねが、やはり中立性、公平性というものを客観的に評価していただくことにつながったのかなと思っている。
【座長代理】  あと、先生に対しては感想的な感じだけれども、先生の方で何か、先ほどの件で付け加えることがあったらお願いする。
【ヒアリング協力者2】  一言感想というか、自己反省だけれども、やはり教職員への聞き取りはどうしても厳しくなりがち。そして、実際にこの28件の中で、2桁までいってないけれども、実際に職を去られた方がいる。気を付けてやってまいりたいと思う。
【委員】  先生の件で、これも余り今まで出てきてはいないと思うが、2枚目の2の重大事態の現況の(4)児童等及び保護者とあったが、特に重大事態の第2号の不登校事案の場合に、1にあるような児童等に障害等があるケース13件というのがあって、こういうケースは非常に難しいと思う。そうなってくると、やはり委員の公正中立というのもあるが、先生が1ページで書かれているように、ある種の専門性が当然要求されてくるのではないかと。それが心理であっても、福祉であっても、こういった障害関係に強い専門的な方が入ると。そういう意味で、ケースの状況に応じた委員会の編成が必要じゃないかなと思っている。こういう事案はかなり多いだろうと予測はしている。
 それから、ここでも余り話題には出てきていないが、もう1点は、先生の方でも出ているけれども、特にこういった第三者委員会の運営上の問題である予算措置。この辺が割と曖昧な形でスタートしていくと。要するに回数や、あるいは、特に中立ということで、例えば、かなり遠方から職能団体から推薦された方が移動してくる場合には、旅費もかなり掛かってしまう。その中でこういった、当初予測していない予算を確保しなくてはいけないという形で、その自治体の財源力でかなり変わってくるだろうと。そういう意味では、こういった予算措置の問題を運営上の視点として、今後、考えていかなくてはいけない。
 それから、もう一点は、これも今、最近のニュースでもそうだが、お二人の先生が指摘されているように、割と子供が卒業後にいじめだという形で訴訟を起こすケースも多々あるわけで、そうなってくると、この第三者委員会で収集した情報、あるいは、報告書も含めて、それをどういうふうに管理するかという問題。つまり終わった後、要するに、こういった調査が終結した後の情報管理を一体誰がどこでいつまでやるかという。ここのところを明確化しておかないと、結局、実際に卒後にそういった事態が出たときに、実は廃棄したとなってしまえば何も残らない。そういう点では、こういった第三者委員会後の情報の管理というか、保存に関しても、お二人の先生がくしくも御指摘いるけれども、このあたりも視点に入れておくべきである。
 ただ、今、経験者のお二人から言われるのは、やっぱりいろんなケースがあって、いじめ防止対策推進法は走り出したわけだが、そのスタートアップというか、いろんな職能、うちの学会からも推薦をすることもあるが、スタートするときにどういう手順で第三者委員会を進めていくかということに関しては、恐らくその当事者間が手探り状態でやっていく形になる。そういう点では、ある程度、こういった情報から、文科省の方でも第三者委員会のスタートアップの在り方に関する何かしらのガイドラインなりアドバイス的なものがあればいい。 
【座長代理】  2点目、3点目はスタートアップのマニュアル、あるいは、ガイドラインのようなものを作っていく中で、予算措置についても視点を置くべきだろう。
 それから、もう一点。調査後、情報管理をどうするのか。これは漏れると大変なことになるわけだから、そういうことについてもマニュアル等の中にしっかりと入れるべきだろうということだと思う。
 それから、1点目については、先ほどの議論の中で、どこまで入り込んでいくのかと。本人の問題、あるいは、家庭の問題。そことも関係してくると思うけれども、被害を受けた児童生徒にある種の特性があるような場合、それにどこまで入り込むのか、あるいは、それを理解するための専門性を委員会の中でどういうふうに確保していくのかという御意見かなと思う。その辺について何か、様々な専門性の立場で御意見があれば伺いたい。お二人の先生ももちろん御意見があればお願いしたい。
【ヒアリング協力者1】  実は大津事案もその問題、やはり子供の虐待の問題であるとか、子供の心理であるとか、心理の専門家はいたわけだけれども、福祉であるとか、精神的な、いわゆるお医者さんということで、実は第三者委員会からお願いをして、当時の学会の先生、それから、精神科の先生、福祉の専門家の先生ということで、著名な先生をお招きして、そこで第三者委員会が疑問に思っていることを直接ぶつけてコメントを頂く。それを参考にして、事実の確定であるとか、いじめとの関連性、影響を認定していったという経過があるので、やはり専門家を招いて、いろいろ聞いてヒアリングをして固めていくのも一つの方法なのかなとは思う。
【座長代理】  委員の構成の中にということだけではなくて、ヒアリング等をして専門家の意見を聞くやり方もあるという御意見かと思う。
【委員】  実は私は、先生ほどではありませんけれども、自死事案については7例、それから、不登校時については1例、指導死と言われる事件について1例、現在3つの第三者委員会を同時に並行しているけれども、御指摘の点は必ず問題になってくる。特にいじめを受けて亡くなられたお子さんの、ある種の特性というのはいろんなところで議論される。
 非常に単純化して言うと、例えば、非常にストレス耐性が弱い子供がいると判断された場合に、お医者さんであるとか心理の方は、その子の治療の問題として、その子の問題というふうに扱うかと思われるが、いじめの第三者委員会においては、むしろストレス耐性が弱いゆえにより多くの傷つきを受けたと。要するに傷つきを認定することが非常に重要であるとすると、ストレス耐性が弱いゆえに非常に大きな傷つきを受けたと。そのため行為としてはささいなことであったとしても、非常に大きないじめに当たるのであるというような形で現在では認定をするようにしている。
 その意味では、先ほどの先生の専門家の限界の話は、私はまさにそのとおりだなと思った。専門家のそれぞれの普段のやり方はもちろん発揮しつつも、やっぱり普段のやり方ではないところで認定をしていくということの意識と働きが重要かなと感じている。
【座長代理】  委員会として、それぞれの傷つき、あるいは、それを生んだものをどう認定していくか。専門性はあるけれども、それを総合した形で判断ができるような委員会が必要なのではないかという御意見として承った。
【委員】  今、御指摘いただいた部分というのは、自死なり、そういうことをされた方側の認知の問題であるとか、そういうことになるかもしれないが、いじめを考えたときに、いじめの加害者と言われた人たちの方の発達の問題、例えば、相手がそれほど嫌がっていると分からなかったとか、あるいは、加害者側の方の特性として、非常に乱暴である、衝動的であるとかいうことの問題もあって、それをどのように理解するのか、そういうお子さんの特性として理解するのかというのは非常に問題だろうと思う。ただ、私はスクールカウンセラーの立場で言うと、そういうことも含めて、学校の中での大人がそういう判断をして、例えば、被害者側の方も、彼は、彼女は、非常に傷つきやすいとかいうようなことを判断し、あるいは、加害者の方も、本人は悪気がなくてもそういうことをしてる。だけど相手はつらい思いをしているというようなことを、大人がきちんと判断できなければいけないのではないか。
 また、この法律は非常にすばらしいと思っているが、そういう判断をする教員が、1人で判断をするのではなく、学校の中にいじめの委員会を作って、担任とすればいじめとは思わなかったけどというようなことで、いろんな角度から検討して、そういうことを判断できるということが重要だろうと思う。
 ただ、そのときに、担任だけがそれを見て情報を上に上げるのか、それとも周りの人間がいろいろ見て上げるのかということが、最初にお二人の先生が、どの立場からの発見であったかということで非常に興味深いことを御指摘いただいた、加害者、被害者の両方の立場でやっぱり考えないと。あと、発達の問題で言えば、もう非常にデリケートな問題だろうと思うので、それを、そういういじめの因果関係だけで説明する、あるいは、その特性で説明するのは限界があるのではないかとは思っている。
【委員】  今のお話のほかにも質問させていただきたいことがある。まず、先ほどの件で、もし被害児童の方に個人的な特性として、例えば、障害であるとか、あるいは、御家庭の貧困であるとか、近年ですと多国籍の方とか、性的な違和があるとか、いろいろな特性を持った方というのは当然いらっしゃって、そのことのみが唯一のいじめを受けた理由ということにはならないと思うけれども、何かしらそういう要因も持っていたということが、もし分かるのであれば、やはりそこはできる限り把握していく必要があると思っている。
 前にもこのようなことを発言させていただいたときに、ただ、それを突き詰めてしまうと、逆に被害児童が、本人が悪かったのではないかというような、そういう見られ方をする懸念があって、そこは非常にデリケートな問題だと伺ったので、十分注意をする必要があることは承知している。ただ一方で、このいじめ事案について、学校教育という現場が第三者委員会を設置するということは、結果的にはやはり、教育にどう生かしていくかということ、そこが大きな目標としてはあると思う。そうすると、何かしら異質なものであるとか、自分と違うものに対して優しくできないとか、排除したくなるとか、そういう気持ちが誰の中にもあって、それをどういうふうに変えていくことが望ましいのか。結局、共生社会を作っていくということは、そういう教育をしていくということだと思うので、そういう意味から、教育的な今後の示唆を得るという上でも必要な情報なのではないかなと思う。
 なので、先ほど先生が専門家を招聘されたり、あるいは、座長がおっしゃったように、委員の中に専門家の方を入れたりするといった形で、そういう部分に触らないのではなくて、そこのところも調査の報告書の中にきちんと残していくことは大事なのではないか。ただ、出し方が非常にデリケートだということは重々承知する必要はあると思っている。
 あともう一つ、第三者委員会と言っているけれども、これは場合によれば、民事の裁判とかの何か証拠に使われることもあるかもしれないが、第三者委員会を設置する目的自体は、争い事のためということではないと思う。そうすると、中立公平とは言っていても、まず、その被害を受けた人が出たということは、そこに対して徹底的に寄り添うことは当然必要なことで、その点でも先ほど先生のお話を伺って、本当にそのとおりだなと感じたところ。その上で、やっぱり第三者委員会という言い方をした方がいいのかなというのが、要は何にとっての第三者なのかということが、被害側から推薦、加害側から推薦、自治体から推薦とか、いろいろ対立構造にある中で、誰もが納得する位置にいていただく人を置くということは分かるけれども、誰にとって、何のための第三者かということが、被害側の方にとっても、加害側の方にとっても、また学校とか自治体にとっても分かりやすく説明できる定義付けがきちんとされているのかどうかというのが、全く分からないので、教えていただきたい。
 あと、もう1点。これは事務局にお伺いしたいことだが、今日は非常に御知見、御経験の深い先生方がお二人お越しくださって、お話をお伺いしているけれども、この人選はどういった観点でなされたのかということと、今後もこういう、ほかの形でヒアリングの機会が用意されるのかについて教えていただきたい。
【座長代理】  1つは第三者委員会の目的、位置付け、こういったものが明確なのかどうなのかということ。この点について、事務局の方でお答えいただいてよろしいか。あるいは、お二人の方から。では、第三者性ということも含めて、第三者委員会は何を目指し、何をしようとしているのかということかと思う。
【ヒアリング協力者1】  私はいろいろと考える中で、被害者からも、加害者からも、又は学校からも、いろんなところから、ある一定の距離感を持っているということで、それはよく言われるが、それだけではなくて、何が起こったのか、そして子供が心を痛めたのはどういうことなのか、それに対して周りの大人は何をすべきなのかということを明確に、ただ、往々にして学校はその適切な距離感がないために、被害の保護者とうまくいかなかったり、また加害の保護者ともうまくいかなかったりということで、どうしたらいいのかということになってきたときに、ある一定の距離感がある第三者が、子供の尊厳の回復のために何が必要なのか、そのために何が起こったのかということをしっかりと究明していくことが、求められている一番大事なことではないか、被害者の子供の立場にどう立てるのかということだろうと思う。
 その際によくあるのが、寄り添うということはよく聞く言葉であるが、私は寄り添うということは、保護者から、子供から見て「君の言うとおりだね。先生も私たちもそう考えるよ」ではなくて「君はそう考えるんだね。その気持ち、よく分かるよ」ということ。これらは少し違う。そこがやっぱりカウンセリング専門の先生方は本当に御専門だと思うけれども「あなたの言う通りだ。私もそうだよ」ではなくて「あなたはそう考える。大変だね。その気持ちよく分かるよ」という、そういった距離感を持って事実をしっかり調べていく。そして、この子にどういう手立てをすることがこの子の尊厳の回復になるのかということを、先生が見えない、学校が見えないときに、客観的に大所高所からこうあったらどうだろうということを提言申し上げるのが第三者の役割かなと思う。
【ヒアリング協力者2】  今、お話しいただいて、私もそうだそうだと思って聞いていた。大変申し訳ないが、メモしてみたけれども、1点目は、やはり何といっても子供最優先の姿勢をきちっと保てるかどうかだと思う。誰のためにやるのかではなくて、その子のためにやるという気持ちが絶対に必要。これは2点目も重なってしまうが、私なりの言葉で言えば、カウンセリングの先生にはちょっと違うぞと言われるかもしれないが、私のカウンセリングの基本的な姿勢は、やはり子供の立場に立って、心理的事実はしっかり受け止めると。つまりその子の気持ち。そういったものはしっかり受け止めると。ただ、客観的事実については大人の立場に戻って考えられる人。これが第三者というか、中立公正の方ではないかなと思っている。とにかく子供に寄り添うという言葉があったが、子供の気持ちをしっかりと受け止めて、そして、その上で大人としての判断ができる方、これが求められていると考えている。
【座長代理】  次に2点目だが、ヒアリングの人選についてということで、事務局の方からお願する。
【事務局】  もともと座長と御相談していたときの方針として、スタートアップマニュアルの作成を目指すという前提で御相談をし、公平中立な第三者委員会の委員の経験者にヒアリングを行うことからスタートしている。その上で、具体的には全国的にも大きく報道されたいじめ事案に関わっているような方、複数名と、それから、なるべくいろいろなバックグラウンドの方から話を聞いた方がいいということで、学校関係者や弁護士、精神科医などの心理職など、様々な方から話が聞ければいいという話で方針をいただいていた。
 今日の人選は、一つは大津いじめ事件という大きな事件に関わったということで先生を選ばせていただいて、もう一つ、先生は、超党派の議員勉強会がいじめ法改正を目指して行われているけれども、そこにヒアリングで呼ばれた方で、そういったこともあり選ばせていただいた。
 だから、今日1回だけヒアリングということではなく、次回もと思っていて、それをどのようにするかは、議事第2のところで御議論いただければと思う。
【委員】  私自身も幾つかいじめの第三者委員会の委員をやらせていただいて、自死事案の調査を行った。その中で先生方お二方のおっしゃっていることは全て私の経験からも非常に難しく、そのとおりだなと思えることばかりで、特に問題になったのは、調査の範囲をどこまでするかということだったが、実は私が関わった事案は、委員8名のうち遺族推薦が半分入っていたけれども、結果的にはいじめがなかったという結論になった。
 自死事案なので、遺族の方とどこまで話をするかというところが非常に問題だったけれども、委員の中には、やはり学校で何があったかどうかをまず調査すればいいのであって、遺族の方にヒアリングをする必要があるのか、遺族の方にヒアリングをすると、家庭で何があったのかというところを聞かなければいけないけれども、それはこの調査の範囲に含まれているのか、という御意見があった。結局は、そこは当然するだろうと思って臨んでいたけれども、例えば、学校で何かあったかだけではなく、家でこの時期元気がなかったとか、家で、誰かにこういうことを言われた、というような発言をしていたかということ自体も、学校での事実を認定することにつながるので、そこを含めて遺族に話を聞く必要があるのではないかということでまとまったけれども、遺族の方はすごく自分が責められるのではないかとか、自分に原因があるのではないかということに非常に敏感になられていて、ヒアリングの中で、その点を十分注意して聞いたけれども、やはり気に障るようなことがあると、もうここでおしまいにしてほしいとか、なかなかそれ以上の回答が得られないという問題も起こった。
 それは、最初に、調査をどこまですべきか、あと、遺族の方にこの調査はどういう目的で、どこまでを聞かなきゃいけないもので、遺族の方にヒアリングする理由はこうこうでというような説明がきちんとできていれば、もう少し違ったのかなと思ったけれども、手探りでやっていたこともあって、そのようなことがあったという経験をお話しさせていただくとともに、先生方が経験された中で、そういうことがあったかどうかをお聞きしたいこと、あとは、事務的な問題だが、予算のところはすごく大きくて、私も複数やった中で、予算が潤沢にある自治体では、きちんと予算もつき、かつ報告書の作成についても予算を出していただき、ヒアリングについても問題なく逐語の記録を取ることもお任せできたということもあったけれども、そうではないところは、そもそも記録は誰が作るのか、交通費は出ないとか、報告書作成の基本費用は予定していないということがあり、余りにも差があり過ぎるということで、ここは是非統一した何かを出していただければと思っている。
【座長代理】  後半の方は、先ほどの予算というところと絡んでいくので、今後の重要な検討課題であると思う。
 前半部分。どこまで入り込むのか、調査の範囲をどうするのか、この辺でいつも悩むところがあるということかと思う。その点について、お二人の先生はいかがか。
【ヒアリング協力者1】  私の経験から申し上げると、大津事案の場合は、やはり十分な調査を学校や教育委員会ができなかったということで、遺族の方が民事訴訟を訴えられて、そこの中で出てきた証拠書類の中に、いわゆる「自殺の練習をした」という言葉があって、そのことを実は学校も教育委員会も遺族に示していなかったということが新聞に取り上げられ、隠蔽だということで、教育委員会、学校が叩かれたといった状況に入った。スタンスとして、学校と教育委員会は第三者委員会に協力的でなかったが、遺族の方は全容を解明してほしい、何があったのだろう、ということであった。
 だから、御遺族の方、お父さんを中心にお話を聞かせてもらうということで、「結構です」と賛同を得られた。ところが御家族になると、お母さんであるとか、兄弟であるとかいうことになってくると、やはりものすごく重たいものを背負っておられるので、なかなか難しかった。でも、その中で、何があったのかという、とりわけ学校や世間は、親の虐待がこの自死を招いた。そういう結論とか、そういう雰囲気をずっと醸し出してきたから、大津の教育長が、私の前々教育長が「いや、この問題はいじめじゃないですよ。いじめもあったかも分からないけど、家庭の問題ですよ」ということで暗に虐待というものを、記者会見でもう述べておられた。それでいろいろ対峙的な関係になってしまったということで、そういったものが出てきた以上、本当にそれがあったかどうかということで、詳しいことを聞かないとだめである。お父さんとお母さんにいろんな話を聞かせてもらったときに、「お父さんとこの子の関係はどうだった?」ということをお姉ちゃんに聞いた。それをお姉ちゃんはこんなふうに言ってる、友達はこんなふうに言ってる、というふうなことをつき合わせて、事実をつき合わせた。
 例えば、極端な例が、クイックルワイパーという掃除をする用具で、お父さんがその亡くなった子の足を思い切り3回ほどたたいている。この現象だけ切り取ったら虐待になる。なぜそうなのかということを聞くと、ここではなかなか言いにくいが、彼自身が、亡くなった子が約束されたことをしなかった、重大なうそをついていた、という。
 そういったものもあるので、いろいろ調べていったときに、なぜお父さんがそういうことを、その行為自体は決していいということには認定されないけども、お父さんの思いあまったことはどうしてなのかということが、やっぱり事実としていろいろ出てきたということで、これは虐待と我々は捉えるのではなくて、行き過ぎていることは確かだが、一つの親の思いとしてやられたことだということで、いろいろな事実を積み重ねていったということである。
 そんなことがあるので、やはり最初にどこまでやるか、その限界はどこなのかというのは、なかなかつき合わせたときに難しい部分はあるけれども、その都度その都度、これは調査をすべきかどうかということを議論する。最初はこうだったけれども、進んでいったとき、第3回、4回目にいったときに、やっぱりこれはきちっと調べていきましょうよと、どなたか提案したときに、皆さんの総意でもって合意形成がされたら、そこで調査に入っていくことが私は必要ではないかなと思う。最初に決めたことは、一応決めるけれども、それにとらわれることなく、調査段階で出てきた時点で柔軟に考えていく、そのときの合意形成が一番大事かなと思う。
【座長代理】  時間が大体40分に差し掛かっている。何かほかに御意見があれば、お願いする。
【委員】  簡単に1問、先生に。
 2枚目の紙に本人自身の発達障害等々の課題があるような場合の件数と、保護者の場合もあるけれども、大体そういったお子さんは保健、医療、福祉等の専門機関に掛かっている場合が多いと思う。そちらからの情報を得るということについて、円滑な協力をしていただくのが一番好ましいが、うまくいかなかったこともあるかもしれない。そういったあたりのポイントを御教示願いたい。
 というのは自死事件で、かなり詳細な、深刻な状況を本人や保護者が訴えた記録が関係機関から後から出てきたというのがあったので、いかがか。
【ヒアリング協力者2】  そこに13件と書いたが、多くがやっぱり認知の問題を抱えているお子さんで、悪気はなかったのだけれどもというレベル。そして、今のお話の中で私自身も一番困っているのは、やはり医療機関等々のお話を伺いたいけれども、情報がなかなか得られないということで、とても困った。お答えにならないが、そんなことで悩んでいる。
【委員】  高知県においても第三者委員会を開いて、そして、被害に遭った子供さん、あるいは保護者の方にお話をして、納得していただける場合と、やっぱり納得していただけない場合がある。特に、確かにいじめはありました、でも、そのいじめだけが、例えば子供さんが亡くなったことの要因ではありません、ほかにも要因がありました、といったときに、やはり遺族の方はなかなかそれを了解できないだろうと思う。そこは今日のお話の中にもあった、第三者委員会がスタートする時点で被害者の方も含めていた時のこと。第三者委員会の役割とか立場というものをどういうふうに納得していただくのか。
 今日、お話があったように、我々の役割としては、やはり子供さんの尊厳を守る、最後までそのスタンスでこの会を持っていきたいというところで、そこにどれだけ納得をしていただけるのか。当然、あったことについては、調査段階のことについてはお話をしていくということも分かるが、最終段階で、どうしても納得いただけないという場合もある。そのときにはやはり、お話の中にもあったように、追加調査とか、あるいは再調査といったものも求められる。多分これはこれから増えていくのかなと考えるところだが、そうすると、何かこう、屋上屋を作るような形にもなってくる。そういう意味で、スタート段階でも、いい話し合いの仕方とか、そして、追加調査、あるいは再調査というものを、今後どういうふうに考えていくのか、それがあって当然と考えるのかどうなのか、そういったところを少しお聞かせいただけたらありがたい。
【ヒアリング協力者1】  私も大津の教育長をさせてもらっていたときに、大津で重大事態が十数件あった。そんな中で、納得いただけないということも多々あった。そういった中で、やっぱり最大限、私は行政の立場でそれを見ていたが、第三者委員会の立場であれば、最終的にこういう状況で、私たちの今までの力を結集したときに、この範囲でしか調査はでなかった、その結果、いじめが認定された、しかし、いじめと、例えば自死であるとか不登校であるとか、そういった重大な事態等の影響はこういう形であったというところまでお話をしっかりとして、それでも納得いかないということは当然起こってくると思う。それで再調査については、手続上認められているから、やむを得ないだろうと。
 ただ、屋上屋を重ねるというのか、再調査は調査をしたことに対してどうなのかということで、同じことをまた一からやるということではない。再調査委員会の趣旨としては。だから、調査が適正であったかということをもう一度検証いただくのは再調査の意味があって、やった人間にとっては、それを客観的にもう一遍調べてもらうというのは、私はほじくり返されるということではなくて、どうぞ、それは我々に足らないところがあれば、そこを見てもらって、補っていただけたらありがたいなと、私は最初の調査委員会のときはそのように捉えている。それが子供のためになるのであれば、そういうことも当然あるだろうと思っている。
【座長代理】  まだ御意見もあるかと思うが、議事の1はここまでにしたいと思う。
 少なくともここまでの議論で、スタートアップのところで調査の目的とか、範囲とか、あるいは被害者本人、保護者、御遺族への伝え方などについて、ある程度統一したものを作っていく必要性というのは、かなり確認できたと思う。中身についても様々な論点が出てきた。そのことを受けて、また、この後、4回目、5回目となるか分からないけれども、議論をしていきたいと思う。
 それでは、議事の2に移りたいと思う。今後のヒアリングについて、委員の皆様の御意見を頂きたい事項がある。
 昨年10月、前回の協議会では事務局の方からヒアリングの人選について、当時の座長と事務局に一任していただきたいという旨をお伝えし、それを踏まえて、今回のヒアリングに至った。
 一方で、その後、机上配付資料1から6
にあるように、委員から、いじめの被害者や御遺族といった、重大事態の当事者からヒアリングを行うべきだという御意見を、座長、それから事務局に頂いている。
 まず、机上配付資料の1から6について、事務局から説明をお願いしたいと思う。
【事務局】  メールの文章ということもあり、机上のみの配付とさせていただいているが、6種類ある。
 まず一つ目が本日御欠席になっている委員から事務局宛てに頂いたメールである。ヒアリング対象者についての意見ということで、有識者の方と、それから御遺族の方、こういった方からヒアリングをすべきだといったようなことを述べる意見になっているけれども、最後のあたりの、「この方々、ヒアリングをするにふさわしい方と考えられます。なお、私の方で、御遺族の方に打診しておりますので、ヒアリングについて了解が取れ次第、速やかに御連絡いたします」といったメールが最初に来たということである。
 この中身がどうこうということではないが、やはり座長に一任がされた後にこのメールが来たことについて、いかがなものかというのが最初の事務局と座長の受け止めだったということである。
 2にいって、最初に事務局の方から、「それは座長に一任いただいていますので」ということで返したところ再度メールを頂き、やはり、同じ主張をされているが、3で、今度は事務局ではなく、座長に同じような内容のものを書面で要求したということである。この中で、やはりヒアリングについての自分のお考えを述べていて、今後の進め方について討議の時間を設けるべきだったのではないかといったこともおっしゃっておられるけれども、4にいっていただき、これまでは委員からであったが、もう一方、委員からも事務局宛てに、ヒアリング対象者についての御意見を頂いた。
 これも結局、ヒアリング対象者については座長に一任ということは承知しているけれども、やはり自分としてはこういう方がふさわしいというようなお考えを述べるといった内容になっている。5と6はそれに対して、やはり難しいというお返しを事務局からしたというメールである。
 このやりとりを経て、実は今日開いた第3回というのは、昨年の11月に開きたいという予定で進めていて、その方針も頂いていた。まず、座長から頂いていた方針としては、座長に一任いただいたので、第3回、今日開くことになったけれども、もともと予定していたお二人からヒアリングをしたい、これが一つ。
 他方で、委員からの御要望にもあったとおり、今後どうするかという意見交換の場を設けたいと、それがまさに今からお願いしている議題2の議論になる。
 3つ目としては、このメールをそのまま机上配付してはどうかという3点の御指示があり、そのとおりに今日はさせていただいた。
 そういうこともあり、実はいろいろな配付資料の要望が計5種類ぐらいあったけれども、それは申し訳ないが、今日は配付をやめて、もともと御指示いただいていたメールの文章を配付させていただいたという経緯である。
 一旦、資料の説明ということで終わりたいと思う。
【座長代理】  今の説明に出てきたように、前回の会議の中で、ヒアリングの人選については座長と事務局に一任していただきたい旨をお伝えし、そして、その意向に従って、今日、先生、先生に来ていただいたということである。今、その経緯について資料に基づいて説明があったけれども、今の説明を踏まえて、御意見や御質問があったらお願いしたいと思う。
【委員】  これは私の意見ということではなく、委員から託されたものがあるので、それを御紹介させていただく、誰にヒアリングをするのかということの一任とは別に、いじめ防止対策推進法であるとか、あるいは重大事態の第三者委員会との関係でいうと、やはり3分野からのヒアリングが必要である。その3分野というのは、当事者、被害者、遺族、それから、委員経験者、今日は委員経験者ということだったと思うけれども、それから、それとは別に有識者、この3分野からヒアリングをすることが好ましいということで意見を頂いている。これは机上に配付されたもの以外にも、最近、日弁連のメールで頂いているものだが、そういう意見を頂いている。
 1つが遺族。これはお名前も、こういう方がおられるという御提案もあるが、それはここでは御披露せずに、事務局の方に言っていると思うが、そういった意見。それから、今日は委員会の経験者ということだったけれども、他に有識者のヒアリング。これについても、ここでお名前は言えないけど、机上配付のものにあるが、そういう御意見を頂いている。
 なので、一任という問題はあるかもしれないけれども、やはりいじめ防止対策推進法であるとか第三者委員会のことを考えると、3分野からヒアリングをすることが好ましいというのが委員の意見であるということを御紹介させていただければと思う。
【事務局】  既に御説明した内容も含めて、改めて考え方を述べたいと思うけれども、様々な形で御意見を頂いている中に、やはり第三者委員会のそもそもの在り方に及ぶものも入っているが、そちらについては、超党派の議員の勉強会で法改正の議論が続いていることもあって、その中に実は再調査の仕組みそのものを見直すべきではないかといった重大な論点も入っている。それは28条以降の条文を変えたり、追加の条文を設けたりといったような話なのだが、そういった話と連動して、当然、行政の方で定めている基本方針とか重大事態ガイドラインも大幅に見直す必要が将来的に出てくるので、そういった論点とはまた別に、法改正がされるかどうかに関わらず、やはり現場で実際に困っていて、早急な対応が求められている手順、第三者委員会の進め方、委員長に任命されたけれども、一体どうやって進めていったらいいのか非常に困っているといった問題に対して、速やかに対処する必要があるだろうという考え方があり、当面スタートアップマニュアルの作成というものを議論の出口ということで、優先課題としようという考え方がまずあったということである。
 その前提で考えたときに、ヒアリング対象者としてふさわしいのは、実際、委員会の委員長なり委員をされて、いろいろな方に接しながら苦労して委員会を回されたりした方から意見を聞くのがいいのではないかということで、座長とも御相談をしていたということである。
 だから、今日、机上配付した中で、この方がいいのではないかといった有識者とか御遺族とかの御意見を頂いて、その内容自体がというよりは、まず手続的なところで、やっぱり座長に一任いただいたものが、後で特定の委員からこの人にやってほしいということで、ある意味水面下でプレッシャーが掛かってしまうようなやり方というのは、座長にも申し訳ないところもあったので、それは控えてほしいという思いもありお配りをしたけれども、他方で、そもそも制度論を見直すといったような段階になったら、また、委員長経験者とか、そういった方とは別に、こういった方から話を聞いた方がいいという話は出てくると思うし、その議論はスタートアップマニュアルの後に必ずやらないといけない場面が出てくるので、その際に改めて、どういった人からヒアリングをしたらいいかというのは、進め方も含めてここで議論していただきたいと思っているが、まずはやはりスタートアップマニュアルの作成というところを目指して議論を進めていくべきではないかということを考えているところである。
【座長代理】  スタートアップマニュアルを作るという方向性でヒアリングをやっている、その上での今日の人選であるということだが、よろしいか。
【委員】  私も委員長経験者であるので、いろいろな意味でスタートマニュアルの中身について申し上げたいこともたくさんあるけれども、例えば青森市の事例であるとか、あるいは天童市の事例であるとか、結構揉めた事例に関わっていく中で、やっぱりこういうやり方がいいだろうということで、委員会の中でも議論をし、自分の中でもいじめ防止対策推進法の意味であるとか、第三者委員会の意味を含めて、こういう形で進めていくのがいいだろうということは、ある意味ではガイドラインに載っていないような、ガイドライン策定前でもあったけれども、ある種、手探りでありつつ、法の趣旨を踏まえながらということで進めてきてはいるが、それが遺族にどういうふうに映っていたのかとか、あるいは伝わっているのかというのは、やっぱりスタートアップマニュアルを作る際にも結構重要な要素かなと思う。そういう意味では、それぞれの関わられた遺族の方が第三者委員会を経験していく中で、特に最初の段階、あるいは途中の段階、あるいは最後の段階まで含めて、どういうところに問題点を感じたのかということをやっぱり、当事者の目から見ることはとても大事なことかなと思っているし、渡部委員もそのようにおっしゃっていたかと思う。
【事務局】  事務局としてはあくまで、これまで座長と御相談した経緯に基づいてこういう考え方だとお示ししたところなので、是非皆様で次回以降の進め方ということで御議論いただければと思う。
【座長代理】  御意見いただければと思う。いかがか。
【委員】  可能なのかどうかが分からないけれども、先ほどのお話を伺っていると、予算措置等々の問題で、設置される自治体の方がどんなふうに動くのかというのが結構違うようにも思ったので、自治体で実際に第三者委員会を設置して、御苦労はどんなことがあったのかといったことはお聞きする必要はないか。
 逆にそれはここにいらっしゃる方々が、例えば教育委員会の方だとか、校長会の方とかいらっしゃるので、分かるから聞けるということであればいいけれども、もしそうでないのであれば、今日の先生方のお話で、委員会の中身をどう運営していくのかとか、ヒアリングをどういうスタンスで、どうやって行うのかというあたりはよく分かったが、会議体のマネジメント、そこのところも併せてやっていかないと、恐らく迅速なスタートとならないように思うが、それはいかがか。
【事務局】  予算的なところで困っているという話も聞いてはいたけれども、スタートアップマニュアルの議論とは分けて考えていた。あと、国費でというのは多分難しい。要するに、いじめが起こって調査をするときに国が予算して委員を雇いましょうというのは、なかなか難しいと思っており、それはスタートアップの議論の中には含めていなかった。重要じゃないとは言わないけれども、実際に委員の立場の方々がどうやって進めていったらいいのか困っているということを何とかしたいというところから課題の認識があったので、そこは考えていなかった。
【委員】  スタートアップマニュアルということで、マニュアルというものがもしかすると質の担保を求めているのかなと思う。そうすると、予算規模のあるところがそれに合わせて質の担保ができる、規模が小さいところはそこまでたどり着けないで終わってしまう可能性があったとき、国としてもどうするかということが懸念されるのかなと思う。
 やっぱり被害者からすると、どこの市町でも同じレベルでやってもらいたいというのが恐らく被害者の考えだと思う。たまたまその市にいたからここまでやってもらえた、たまたまこっちだったらできなかったということが発生したときは、やっぱり今後難しいことが発生するかなと懸念される。
【座長代理】  今、実際の調査のマネジメントをどうしていくのか、予算や人員等、あるいは時間の問題も指摘された。これらの問題がかなり実質的な運用に関わる課題だと思う。それから、今、本当に、私自身も第三者委員会の委員長を何度かやっているけれども、どう進めるのかということで困っていることが、実際に調査に当たった委員、教育委員会、あるいは、当然、被害者、加害者、皆ある。その中で、どのようにしていけば最終的にそこにいる子供たち、あるいは未来の子供たちがより最善のものを得られるのか、そのために我々は何ができるのかということを、今、考えなければならない。
 時間も来ているということもあるので、今日は委員長経験がある経験豊富なお二人に大津の事案について聞いた。また、次回、これはちょっと個人的な見解になるけれども、御遺族、あるいは加害者といった場合には、事案の個別性に対して意見が出てくる可能性が高い気がする。お二人は何件もやってきた中でいろいろ出てきた。だから、もしも可能であれば、例えば、先ほど弁護士が委員長をやられたという御経験の中で、弁護士の専門性という立場でどうなんだろう、あるいは心理職、あるいは医療職、福祉職、そういう中で同じように委員長経験をやってどうなんだろうと。教育を専門とする者とはまた違う見方が出てくるかもしれない、そういうものをまず多角的にヒアリングして、それで、スタートアップマニュアルを質的な保障をしながら作っていく、さらに先に、それを実際に運用していく面でどうしていくのかというような、そして、さらにスタートアップマニュアルから離れて、いじめ防止の対策という観点に立った時には、被害者あるいは、今、実は加害者の訴訟ということも起こっている。加害者に対してどう指導・支援をしていくのかということも、ここでの議題になっていくと思う。今話した形で、次回、ヒアリング等、今日の皆さんの御意見を踏まえながら人選をさせていただけるとありがたい。森田先生の御意向というか、御遺志というか、を踏まえ、そして、事務局とも相談しながら進めていければと思っている。
【委員】  自治体の事務局は本当に大変。私は日本で一番安い第三者委員会の委員だと思うけれども、それこそお金のないところも含めて、それから事務局体制を、もともと教育委員会の指導課などというのは、こういうものに対応した組織を持っていないので、第三者委員会が機能し始めたときにあたふたといろいろ組織をし始める。そのときの混乱であるとか、何をやったらいいのかということは本当に大変で、スタートアップマニュアルの一つの目的として、そういうのがあってもいいと思う。
 ただ、一方で委員長として関わる中で、要は教育委員会に対してこうしてください、ああしてくださいと、人選をこういうふうにしてくださいと、この限りにしてくださいみたいなやり方というのは、ある程度描き出すことはできるので、例えばそういう人と自治体の人を招いて一緒に聞くということになれば、いろいろ重層的には聞けるかなと思う。
【座長代理】  それでは、今、自治体の中で実際に担当していく教育委員会等のヒアリングも必要ではないのか、教育委員会の方もいらっしゃるわけだが、それも踏まえて、次回以降について、この協議会を進めていきたいと思う。
 それでは、ここまでの意見を踏まえて、次回以降について事務局から進め方等の御意見があれば、方向性があれば、お示しいただければと思う。
【事務局】  今日はどちらかといえば学校関係者的な方をお呼びしているが、バランスの観点から、弁護士の方と心理職の方のヒアリングもさせていただけないかと思っている。その点、もしそれでいいということであれば、具体的な人選はまた御一任させていただきたいが、そこまではまずお聞きした上で、教育委員会はどうするかというのはまた御相談したいと思う。それでよろしければ、ヒアリングの次回の人選としたいと思うが、いかがか。
【座長代理】  いかがか。
(「結構です」の声あり)
【座長代理】  それでは次回、弁護士及び心理職、医療という観点で調査に携わってきた方から、今日とはまた違う視点が出てくるかもしれない、それをヒアリングして、スタートアップマニュアルをどのような方向で進めていくのかというところを詰め、そして、その上でまた運用に関して、地方自治体の教育委員会、および教育委員会事務局等からもヒアリングをするという方向性を持って進めていきたいと思う。
 予定した時間を少しオーバーしてしまって申し訳ない。皆さんの御協力を得て、何とか次の議論、そして最終的には本当にいじめのない学校社会を作っていく、そのための再発防止をするために今、我々が調査委員会の在り方を探求しているところだと思う。
 貴重な御意見をたくさん頂き、会議の進行に御協力いただいたことに感謝し、きょうの会議を閉会したいと思う。
 
―― 了 ――

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