いじめ防止対策協議会(令和元年度)(第2回) 議事要旨

1.日時

令和元年10月21日(月曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省東館13階 13F1~3会議室

3.議題

  1. いじめの重大事態の調査組織の在り方に関する論点整理及び今後の進め方について
  2. その他

4.出席者

委員

新井委員,栗山委員,高田委員,佐藤委員,新海委員,田村委員,笛木委員,布施委員,松谷委員,森田委員,渡部委員

文部科学省

蝦名初等中等教育局審議官,松木生徒指導室長,伊藤児童生徒課専門官

5.議事要旨

【座長】  事務局から説明があった問題行動等調査について、委員から御意見、御質問をいただきたい。
【委員】   いじめや不登校に関わるデータの御説明をいただいたところ、8ページの、学校において認知したいじめの件数は、各都道府県別のいじめの認知件数が一目瞭然に分かる。その認知件数が多くなっているのは、いじめ解消に向けたスタートラインに立っているからという御説明があったが私も同感である。
 また、認知件数を重視すると同時に、重大な事件・事故等も起こってしまっているという状況から、認知したいじめのうち、解決せずに年度を超えて残ってしまっているものというのは必ずあると思う。これについての調査結果というのはあるのか。
【事務局】  説明した調査のやり方としては、年度中に認知した件数を聞き、その年度中に解消が図られたのが八十何%だという解消率まではとっている。しかし、年度を超えて残っているいじめというのは、新たに発生したいじめではないので、調査結果には入っていない。調査はあくまで年度で切っている。
【委員】  いじめの認知件数がかなり増えているが、文科省の指導もあり、もともと一定程度潜在的にあったいじめが、認知されデータとして反映されるようになったのか、実態として増えているのかについて、文科省はどういう認識か。
【事務局】  いじめの定義が法律上は身心の苦痛という形で25年度に書かれたわけだが、統計上も18年度からそのような定義に変わっている。認知件数は、法律ができたあたりから増えてきた。これは、急に学校が悪くなったということではなく、むしろ大人の側の意識、先生の捉え方が変わったと考えている。
 平成28年度から29年度、29年度から30年度に掛けていじめの認知件数は増加しており、増加分の8割以上が小学校における増加になっている。これは、小学生というのは言葉をうまく伝えられないとか、いろいろなことでついつい相手に手を出すとか、いろいろなトラブルもあると思うが、それを、単なるトラブルではなく、いじめとして認知してきたことによるものであり、子供たちが変わったというよりは、大人の側の、いじめの定義に関する理解が進んできたことが、この認知件数の増加になっているのではないかと考えている。
【委員】  ということは、必ずしも実態を反映しているのではなく、大人側の変化なのか、実態が本当に増えたからなのか、まだ判断しにくいということなのか。
 また、文科省が盛んに通知を出したり、法律を制定したりするなど、いろいろな施策をとっているが、いじめがなぜ減らないのか、増える要因はなんなのか。さらに自殺の件数。これは厚生労働省等も関わると思うが、児童の自殺が増える原因について、もう少し踏み込んだ検証とか、客観的に分析して、そこを文科省なりに捉えて、さらに施策という形での方向性、検証、そういうのは具体的にお考えか。
【事務局】  子供たちが様々な悩みを抱えていて、それが複雑化しているという状況があるとは思っている。ただ、なぜここ数年、例えば不登校や自殺が増えているのか、多分いろいろ理由がつながってくる部分はあるのではないかと思うが、そもそも何が子供たちに起きているかという分析については十分できていないと思う。
 一部、そんなに大きな予算ではないが、来年度、不登校について問題行動等調査では拾えないような、深掘りをした調査をやろうと思っている。問題行動等調査は、あくまで学校側から見た要因であり、子供たち自身が実はどう悩んでいるかという調査をするなど違うアプローチを考えている。いじめも、自殺も、いろいろある中で、一歩ぐらいにしかならないが、そこは重要だという認識は我々も持っている。
【委員】  認知が増えたことは望ましい。しかしながら、認知件数が減っていくのがいつ来るのか。とりわけ気になるのが、いじめの重大事態が増えていること。もちろん、そこには認知が進み、疑いがあるものを重大事態としたから増えたという側面もあると思うが、重大事態の深刻化ということも踏まえて、御指摘があったように、いじめや不登校、あるいは自殺の増加の背景に何があるのか分析していくことが、今、求められているということかなと思う。
【委員】  関連して、8ページ、都道府県別のいじめの認知件数が出ているが、各学校現場で、先生方のいじめを意識した取り組みがすごく向上していると思う。ここまで頑張るのかと感じ取れるぐらい、私は一生懸命いじめゼロを目指して取り組んでいるというふうに思っている。
 5回ほど、何をもっていじめとするかという定義が若干変わってきている。先生方も、学校現場も、教育委員会も、数については大変神経をとがらせて見ている。そんな中で、都道府県別のデータを見ると、余りにも差があり過ぎる。
 データの見方として、まだまだ学校現場の認知の仕方にずれがあると見ておいた方がよいのか、あるいは特別な取り組みをしていじめの件数が低くなっている都道府県があると見ていいのか、文科省はどのように見ているのか。
【事務局】  いじめの認知件数が1,000人当たり100になっているなど、認知件数が非常に多い県に対し個別に問い合わせると、やはり認知件数を上げるための取り組みを教育委員会が率先して行っている。例えばアンケートをしっかりするように奨励したり、教員に対していじめの発見に資するような研修をしっかり行ったり、いじめの対応のためのマニュアルを整備したりするなど、特段の取り組みをすることで数字が上がっているといった状況である。
 そういった取り組みをするかしないかで、数字に差が出ると思う。ただ、都道府県格差については、25年度は83倍あったが、5年後には10倍にまで縮まっている。このため、認知の取り組みが進み、認知漏れがなくなっているものと考え、我々としてはよいことだと受けとめている。
【委員】  今の1,000人当たりの認知件数のところで、少し質問させていただきたいのだが、例えば宮崎県だと101.3件ということは、10人に1人がいじめに遭っているという実人数なのか、それとも、同じ人が何度も受けたいじめの回数がカウントされているのか、そこの見方を教えていただきたい。
【事務局】  いじめというのは、例えばある子供がある日、悪口を言われ、次の日もまた悪口を言われたというふうに、一定期間、何回か続くわけだが、それをトータルで1件とカウントする。そのトータルでカウントしているいじめが本当に解消したかどうかは、大体3か月ぐらいを目安として、本当にその行為が止んでいて、子供たちが心身の苦痛を感じていない場合に、解消したとカウントしている。行為の数だけカウントしているわけではない。
 そのため、この1,000人当たり何件というのは、いじめられた子の人数に近い数字になっていると理解いただきたい。
【委員】  今の話だと、例えば3か月ぐらいたって一旦解消し、もう一度、同じ方が同年度内にいじめに遭った場合には、2件目という数え方になるという考え方なのか。
【事務局】  1年の間にとっているデータなので、理論的にはその可能性はあるが、ほとんどないのではないかと思う。
【委員】  ということは、生徒の10%がいじめに遭っている県があるということでいいのか。
【事務局】  その通り。いじめの定義は心身の苦痛であり、10人に1人がいじめを受けている県があるということになる。それは別におかしいことではないと我々は考えている。
【委員】  私もそれがおかしいと言っているわけではない。そうすると、相当な対応が先生方や保護者等に求められてくると思うが、各県別のいじめ防止、あるいはいじめ対策のための予算のとり方などに関する資料はあるのか。
【事務局】  それについては、申し訳ないが資料はない。
【事務局】  先ほどのいじめの解消の話だが、1度いじめが解消した後、もう一度いじめが始まった場合も、2件ではなく1件とカウントしているので、訂正させていただく。
【委員】  5ページの学年別の認知件数と、7ページの重大事態を比較すると、重大事態は中学校の方が圧倒的に数が多いが、いじめの認知件数は小学校の方が圧倒的に多く、中学1、2、3年生となるにつれだんだん減ってくる。
 小学生のいじめの認知件数がどんどん捕捉できるようになったという点に関して、それは対策を講じることができるという意味では評価すべき点かと思うが、もしかしたら中1、2、3年生と年齢が高くなってくることによって、心身の苦痛というものを小学生みたいに素直に表出するという形ではなく、むしろそれを覆い隠してしまって、なかなか外部から捕捉できなくなってきているような傾向にあるのではないかと感じる。
 そのため、中学1、2、3年生というところに関しては、本当はたくさん埋もれているものをうまく把握できていないのではないかという懸念があることを申し述べておく。
【事務局】  やはり小学生で、まだコミュニケーション能力が十分ではない児童が、相手のことをちょっと傷つけるということは、発達段階も踏まえれば多いのではないかと思う。そのため、小学校でそういったものもいじめとして認知していくと、中学校より多くなるということは、それなりにあると思っている。
 重大事態については、数十万件の認知件数のうち602件となっており、非常に重い事態と捉えている。重大事態が中学生で増えているということについては、中学生の時代から暴力行為や不登校が増えており、そういった非常に難しい時期が関係していることもあると思っている。
【委員】  今のことに関連して、小学校の低学年のときには、いろいろな形でトラブルがあって当たり前で、その辺を、今までは子供たちのトラブルだからということでいじめと認知されなかったものが、認知されるようになったのかなと思っている。
 先ほど御指摘があったように、中学生ぐらいになると、自分のことをうまく表現できないということがあるのかもしれない。しかし、いじめの認知をするときに、例えば、本人が大丈夫だと言ったからいじめに認定しないということはなく、状況を見て、やはり人権を無視しているとか、度を越しているということに関しては、本人が大丈夫だと言ってもいじめにカウントしているので、表現方法が未熟だったということだけでは説明できないかなと思う。
 不登校の問題と関連して考えると、中学生ぐらいになって不登校が多くなるときに、ある程度勉強の大変さ、様々な多様性、困難さがあると思う。対人関係の上で、私もカウンセラーをしていて思うが、いじめられていることをうまく表現できない子が、学校に行かないという形で表現する。私自身はそれを非常に肯定的に思っており、様々な問題解決の方法として、学校に行かないという選択肢をする子もいるのではないかなと思う。その辺のところももう少し細かく、掘り下げていきたい。
【委員】  1つ、マスコミのニュースなどでとても気になったのは、この問題行動調査に関する記事が出たときに、やはり認知件数が増えることがよくないと言っているマスコミがほとんど。
 私たち保護者からすると、そういうものしか目にしないので、文部科学省からもしっかりと、マスコミに対して、文科省の認知の方法はこうであって、認知件数の増加はいいことだと伝えるべき。学校の現場の先生も頑張っているということをもっとはっきりと言わないと、認知件数が増えることがよくないということばかり切り取られて報道されている。
 それと、今たくさんのデータの中で、認知件数が多いところと、教師に対して暴力があるところとか、いろいろなデータを都道府県別に比較していくと、認知件数は多いけれども、先生に対しての暴力が少ない県がある。そうすると、先生方がよく見ていて、子供たちも落ちついているというのが見て取れる。あと、両方少ないという県もある。暴力も少ないし、認知も少ない。県全体が、多分落ちついている状態なのではないかと想像ができる。
 私も結構いろいろな学校を見て回りまわるが、今の子供たち、相当落ちついているように、私の目には映る。どの学校に行っても、皆さん、子供たちも落ちついているし、先生方も大分落ちついている中で、中学生というのは悩みを親に言わないことも当然あるため、今言った中学生の自殺というのは、なかなか先生方だけで解決するのは難しいと思う。
 家庭の問題というのは大変大きいかなと思っている。保護者の代表としてだけれども、やはり文部科学省や教育委員会、学校だけのせいにして、いじめ問題を解決しようというよりは、国民全体としていじめ問題に関わるべきであり、さらに自殺までしてしまうというような案件は一件もあってはいけないことだと強く思っている。これは国民的な運動にしていかないと、行き止まってはいけないと私は思っている。
 この辺を、私たちもそうだけれども、共通の認識としてやっていかないと、増えたね、減ったねという話ではないと思っているので、十分その辺もこの会議の中で協議をしていただきたいと考えている。
【座長】  大変いい御意見が出てきた。単なる数だけではなくて、その中身、あるいは暴力等々のリンクというか、そういう分析も必要だろうと。
 それともう一点お伺いしたいのだが、不登校や暴力行為等の都道府県別の差は数ポイントしかないが、いじめはどうか。
【事務局】  不登校の場合、一番多いのが1,000人当たり21.9人の宮城県。一番少ないのが福井県で11.6人なので、2倍弱の開きとなっている。いじめは10倍。不登校というのは認知ではなくて、実際発生した事実だが、いじめの方は認知なので、そういった部分がこの数字の差異に表れていると考えている。
【座長】  そのあたりは御注意いただきながら、現場も努力をしていただいているが、さらに一層努力を重ねていただきたい。
 それでは、一応、ただいまの問題行動等調査はこれで終わらせていただいて、議事に入らせていただく。
 本日の本題、いじめの重大事態の調査組織の在り方について、これの論点メモが主になるが、これについて、まず事務局から御説明をお願いする。
【事務局】  それでは、資料2に基づき論点メモについて御説明する。関連する資料として資料3もあるが、これは、第1回の会議における論点メモに基づいた御議論の概要、いじめの重大事態の調査組織に係る御発言のみをまとめたものである。
 こういった発言、例えば事案ごとの調査組織の在り方、調査組織と学校の役割分担という部分については、この重大事態というのがいろいろな事案ごとに分かれるわけだが、例えば上から10行目ぐらい、現在進行形の事案を本当に利害関係のない第三者委員会でやるべきなのか、あるいは、学校内の調査組織でしっかりやって、そこに第三者を入れる形にするかなど、調査組織の在り方というのはやはりケースごとに違うのではないかということ。
 事案の中には不登校や自死事案もあるので、事案に応じて、その組織の在り方を変えるという必要があるのではないかという御意見もあった。
 それから、次の調査組織と学校の役割分担。この調査委員会が活動しているからといって、学校が何もしないということではないのではないかといったような御意見もあった。また、調査過程における加害者に対する指導の中身の充実を図るべきではないかといった御意見もあった。
 それから、次のページにいって、例えば上から3つ目、調査組織の一般的なパターンだと、いじめが発生した場合に基本的には学校の先生方、これは上から2つ目のマルで、先生方が事実関係を明らかにしていくけれども、不登校が続いていく中で、保護者との信頼関係がなくなってしまう。だから、早い段階で第三者を入れるべきではないかといったような御意見もあった。
 また、その次の学校における情報の整理・管理についても御意見があった。学校側が情報をきちんと整理・管理できていないのではないかと。そこをきちんと徹底してもらうべきではないかといった御意見もあった。
 それから、次に第三者委員会の議論に関する外部への情報提供についても御意見があった。これは3ページ目になる。多くは、議事は非公開となるけれども、1回議事が始まってしまった後、被害者の保護者から見えなくなることもある。そういった中で、議論の場は非公開だけれども、例えば座長が簡単なブリーフィングを行うなどによって、ある程度見えるようにするというパターンもあるのではないかといった御意見もあるところ。
 事実認定の話については、1つ目のマルで、背景の人間関係の分析とか、本人がどの程度継続的に苦しんできたかといったようなことなど、しっかり調べていくべきではないか、何を調査していくかということをしっかり位置付けるべきではないかといった御意見や、やはり人間関係ということで、加害者と被害者との人間関係を細かく把握すべきではないかという御意見があった。
 それから、これは難しい問題だが、被害児童生徒本人の要因。病気とか、家族の状況等もあるわけで、これも一通り網羅的に調査しておかないと、全体が見えなくなるのではないかといったような御意見もあった。
 それから、調査組織の委員の人選について、4ページ目、これについても御意見があった。被害者側から推薦された委員について、被害者と常時接触することを通じて信頼感を醸成し、第三者委員会への信頼へとつないでいく役割を果たしたなど、様々なメリットもあったのではないかといった御意見があった。
 遺族推薦については、遺族推薦だからといって遺族側の主張どおり判断するわけではないといったような御紹介もあった。また、これも先ほどの話とつながるが、いじめの第三者委員会は全てがブラックボックスになってしまっているのではないかという問題への指摘もあったところ。
 等々、こういった様々な御意見を頂いて論点メモを整理したものが、この資料2ということになる。1ページ目は、前回の会議で配ったところから変更はない。現状・課題というものを整理しているわけだが、変更点を中心に御説明する。
 まず2ページ目、変更した箇所というのは、大きく分けると4か所になる。1つ目は、事案ごとの調査組織の在り方や進め方について。これは、自死事案とか、不登校事案、児童生徒が学校を転校したような事案など、事案には様々な種類がある。そういった事案ごとに、調査組織がどうあるべきか、どう調査を進めていけばいいかということは違うのではないかということ。
 スケジュール感という場合でも、不登校の場合だと余り時間を掛けてしまうと、子供が卒業してしまう、中学校は3年しかない。例えばそういったような事案の違いによってスケジュールとか、いろいろなものが違ってくるのではないかといったことがある。そういったものを考えるべきではないかといったようなものを、追加している。
 次に、調査組織と学校との役割分担についてという部分。これについては、調査組織が設置されて、調査が始まってしまったら、そこに丸投げではなくて、やはり学校は学校としてきちんと教育委員会と役割分担をしながら、適切に支援とか、指導とか、関与とか、そういったものを進めていくべきではないかといった観点から、この論点を追加している。
 学校の教員だけに任せるのではなくて、また、第三者や外部専門家等も調査に関与していくべきではないかといったことも書いている。
 それから、いじめの定義のところはそのままということで、次に、被害児童生徒・保護者への説明・情報提供である。被害児童生徒の保護者等への事前の説明が不十分という指摘もあるけれども、これを改善して保護者等との信頼関係を構築していくためには、どのようなことが考えられるか。
 それから、調査組織の児童の状況について、被害児童生徒の保護者等に対してどのような情報提供をしていくことが考えられるか。これは、先ほどの議事の非公開の部分があるが、議論の状況をどのようにして、非常に関心が高い保護者等に対して情報を提供していくか、という論点を追記している。
 それから、次のページには、再発防止策の内容として、どういうものが望ましいかといったようなことを書いている。
 それから、最後のところ、学校におけるいじめ問題に関する児童生徒への指導について。これは加害児童も、被害児童も、共に対応しなければならないわけだが、このいじめは許されないという教育の側面について、学校や家庭で適切に指導していくべきであり、どのような指導の在り方が考えられるかといったようなものも重要な論点であるため、追記をしている。
 この中で加害者に対する指導というものが、前回、非常に重要な指摘として御意見を頂いたわけだが、これをしっかりこの場で議論しようとすると、かなりの時間が掛かる。むしろこれは、中長期的課題として検討する必要があるだろうと思っている。どのような検討をすべきか、ということは、また事務局の方で考えさせていただく。
 ただ、重要な論点として考えていきたいと思っている。
【座長】  ただいま事務局から説明があったが、いじめの重大事態の調査組織の在り方について、この論点を基に議論を進めたいと思う。どなたからでも結構なので、よろしくお願いする。
【委員】  調査組織ということで、そもそも論というところで確認だが、お金の支出はどこがやるのか。例えば公立高校だと、所管するのは教育委員会かなと思う。私学だと私学が対応する。最近増えているのはフリースクール。小・中学校で不登校ということで、別なところに行って、小・中学校に籍はあるけれども、フリースクールで登校している子とか、いろいろなパターンが考えられるが、その辺、お金の支出というのは誰がやるのか。
 そもそも論で、組織を作るに当たって、予算組みがあって組織を作るのか、組織を作ってから予算を付けるのかが見えない。私もこの間からなので、その辺の順番がどちらなのか。組織を作るのに、業務ありきで組織を作るか、組織を作ったところで業務を落とし込んでいくのかということも、教えていただきたい。
【事務局】  基本的には、公立の場合だと、やはり教育委員会がそれぞれ予算を出している。私立の場合だと、恐らく学校法人ということになる。
 それから、フリースクールは学校ではないので、もしフリースクールに通っているお子さんについて、いじめが問題になって調査するとなったら、籍を置いている学校を所管するところ、公立であれば設置者である教育委員会だし、私立であれば学校法人が調査のための費用を賄っているのではないか。
【座長】  そもそも論でいくと、国が法律を決めて、そして重大事態に関しては調査を義務付けている。それが全て、ただいまの御説明のように都道府県、市町村の教育委員会、あるいはそれぞれの学校法人に委ねられてしまっている。この事実について、恐らく御疑念があったのだと思うが、いかがか。
【委員】  はい。
【委員】  私学と公立の関係で、私はよく分からないのが、私学で負担されて調査するけれども、公立の場合は再調査申し立てで県知事に行く。私学の学校というのは、再調査という概念はあるのか。
【事務局】  私立の場合も再調査はある。その場合は都道府県知事が再調査を行うという主体になる。法律でいうと、第31条、私立の学校に係る対処、ここの第2項、前項の規定により報告を受けた都道府県知事は、飛ばして、調査の結果について調査を行うことができるという条文がある。
【座長】  いじめの場合はいずれにしても重層的責任構造、つまり首長、それから都道府県教育委員会、私立学校の理事長、学校当局、それぞれが責任を負わなければいけない。その責任の1つが今の再調査、一番明瞭に重層的な責任構造を表していると考えられる。
 だから、逆に言えば、よくあるように、教育委員会の方が学校に丸投げするというのは、重層的責任構造に反する。一定の責任をとらなければいけないし、指導もしていただかなければいけない、あるいは相談もしていただかなければいけない。教育委員会と各学校現場とはそういう関係があるとお考えいただきたい。
 現場へ入ると、教育現場へ任せるということも非常に多いように聞いている。その辺は少しお考えいただきたい。
【委員】  論点の方に入って、前回、委員の方からあったように、死亡事案と不登校事案の違い、私も現に今、不登校事案、これは小学校1年生で青あざをつくって、入学直後から暴力を受けて血を流して帰ってくる事件なのだが、その場合に、それを重大事態と見るかどうか、最終的に県指導員から重大事態と見なさいと指導があったのだが、それから動いていない。
 要するに不登校になったままで、強度の心的障害、外傷を抱えて、夏にも布団を頭から被って、多分侵入症状だと思うのだが、怖がって学校に行けない。加害者が意外と家の近くで、出られないという状態が続いている。特にそういう小学生の場合は一刻も早く学校に登校させるとか、それから専門的な医学的対処、それから、ある意味では加害生徒の調整、そういう不登校の場合は同時進行的にしなければならない課題。
 別々にやるのではなくて、相互に情報交換しながら、専門家を学校に入れながら、ベターな方法を模索していく必要がある。私はそういうことを作ってほしいと申し入れをしている。そういう形にすれば、第三者委員会よりは、むしろ最初の初期調査の中で、第三者、ある意味では児童の発達心理などに詳しい方とかを早く入れてチームにして、できるだけ学校の方に登校ができるように安全を保障していく多角的な対応が早期に必要なので、そういう事案を抱えれば、両者の事案というのは、やはり同一に論ずるのではなくて、もう少し柔軟に考えた方が、子供さんの成長、発達という面では必要なのではないかと考えている。
【座長】  今の委員の御発言が実際に現場の事実だとすれば、最初の基本方針を決めたときの2号、つまり不登校事案に関するこの委員会と、それから、いろいろな方々の御意見の間で少しずれがあるように感じている。当時は、要するに不登校事案、重大事態に関するいろいろな手引、あるいは調査等についてガイドラインを作っていくというのが基本方針の最初であった。
 その段階で、2号事案に関しては、本命、やるべきことは、もちろん調査も大事だけれども、今不登校に陥っている子供たち、これをどうするか、どうやって支援していくかということが本命であって、その対策を講じながら、そして事実調査というのを並行させていく、こういう順番で議論が進んでいっただろうと思っている。
 それが、いまだに委員がおっしゃるような事実が現場の中で、あるいは教育委員会の中でそういう雰囲気が見られず、調査優先、子供、置いておけというようなことがあったとすれば、私どもの趣旨とは異なっているので、その辺は文部科学省の方でも現状を少し押さえていただきながら、当初の、本来の不登校の子供たちをどう支援するかと、これが正面から優先事項だということを改めて認識していただきながら、事実調査は事実調査、そして今後の改善点は改善点と、切り分けるわけではないが、マンパワーの関係も踏まえいろいろなやり方があるので、混ぜていただくのはいいが、趣旨の置きどころ、そのあたりはもう一遍、再点検していただく必要があると思っている。
【委員】  今の点に関して、私も前回、その点、この問題に関して申し上げたが、不登校の事案についても実際の重大事態調査の事案を見ていると、まさに現在進行形で重大事態調査にする事案と、その子が例えば転校とかしてしまって、その学校には関わっていなくて、むしろ学校の対応が問題なのだということをしっかり調査してほしいという形での検証型の不登校事案があり、同じ不登校事案でも、それがどういう分類に属するのかということをしっかり見て、むしろ、これは完全に学校と切り離した第三者にやってもらった方がいいのだというのであれば、しっかり時間を掛けてでも検証型ということで、第三者がしっかり判断していくと。そうでなくて、むしろ今おっしゃったような、現在進行形で、まさにこれからこの子をどうしようかという事案に関しては、第三者に任せてしまうと、実際問題としてかなり時間が掛かるので、やっぱり学校に専門家を入れるというのがいいと。そういう形で、同じ不登校事案でも、やはり事案によって違うのかなとは思っている。
【委員】  不登校というのは、第三者を連れてきて、子供が本音を話せるかというと、非常に難しいところがある。やはり、普段学校で見ている先生方が話をしてあげる。外部の人を連れてきて、じゃ、人間関係がつくれるかというと、なかなかその辺も厳しい。そうすると、学校に欲しいのは、スクールカウンセラーがいつもいることだと思う。
【委員】  今の点だが、私も中学生が実際に不登校になっていて、卒業を控えるという段階で、学校の組織に弁護士として行ったというケースがある。それは、おっしゃるように、確かに子供から話を聞くときに、いきなり弁護士が行って話を聞かせてくれというのも難しいので、聞き取りに関しては、学校の先生のこの先生がやるという形でアドバイスしながら。
 ただ、この事案の見方に関しては、全体的に弁護士が見ていって判断していくという、役割分担は当然するので、そういう意味では第三者が入るということが、第三者がそのまま子供と向き合ういとうわけではない、それはケース・バイ・ケースの対応としていろいろあるのかなと思う。
【委員】  一応、主治医の先生がおられて、先だっても相談に行って、そういう支援には十分協力するという了解を得ているので、そういうことを再度、学校側に提起して、一緒にディスカッションしていただけるかと。
 それと、いじめの場合の固有の問題だが、本件の場合は、子供さん自身も経過は省略するが、学校、教育委員会にものすごい不信が強い。そこを、もう少し説きながら、こう安全確保できるから一歩行こうよとか。そのあたりはケースによると思うが、そういうアプローチが必要な場合もあるので、なかなか一概に論じられないため、そういう柔軟なチームができないかということ。
【座長】  ありがとうございます。今、いろいろと出てきた。やはり子供が中心なので、その状態に合わせながら柔軟に対応していただき、子供の利益を最優先、これをお考えいただいた上で措置していただきたい。それが多様な教育機会の学校法法案の趣旨にも沿う考え方だろうと思っている。
 これは推測だが、先ほど加害者の問題が出てきた。これ、中長期的にとおっしゃった。そもそもこのいじめ問題というのは、それぞれの国によって社会問題のなり方が違う。
 治安だとか、社会防衛と言うが、そういう面から考える、あるいはマナーの無規範状態、アノミー、こういう状態から社会全体を考えていく立場からいじめに関わる。あるいは、EUのように民族関係、あるいはいろいろな国々の利害が絡まりながら、労働の場をめぐって大人が熾烈な争いをする。
 EUの連帯に関わる、そういう事態に関して、それが大人の利害が子供の世代に全くそのまま移っていくということになると、非常にそのあたりの民族間、あるいは移民間、この間の差別が子供の世界へ反映して出てくるので、それが非常に重点項目になっている。
 我が国は、どちらかというと、もちろん、以前からいろいろな差別問題、いろいろなものが絡んでいたが、特に80年代、いじめが一般化する。いろいろないじめが出てくる。そのときに、我が国は被害不安、これが社会問題のコアになる。つまり、被害を、不安感をどういうふうに鎮めていくかというのが政治の課題でもある。
 だから、ちょうど80年代の中頃のいじめの我が国の対策は、みな相談窓口を開設するというのが中心だった。あと、それから10年して愛知県でいじめを苦に、中学男子生徒が自殺する事案等があった。この段階に入ってくると、それがある意味では犯罪性を帯びていたのだが、むしろそういうものではなくて、スクールカウンセラーを導入する。そして、不登校と抱き合わせながら、試験的に我が国は普及していくというように、被害不安をやりながら、被害保護というところへ重点が掛かって、それがずっと今日まで流れている。
 それは、単に行政の流れだけではなくて、我々の研究界もそうだし、それから、いろいろなスクールカウンセラーや支援、要するに、加害側へのケア、支援、そして教育的な指導というのは、非常に手薄になってしまった。そのために、我が国の中ではそういう技法、そういうものに関する蓄積が非常に少ない。
 あるのは、文部科学省等が出されている出席停止書。これは、被害者を守る。懲罰ではない。被害者を守る、しかし、性格は懲罰的なもの。それから、懲戒だとか、あるいは訓戒、こういうものが中心で、処分が中心の加害対応というのが、我が国のずっと支配だった。これは刑事手法や、そういうものにはなじむやり方だが、教育、指導という点については、我が国の実績というのは、どの業界も、スクールカウンセラーを挙げたけれども、そこだけではなくて、いろいろなところで、現場でもそうだが、蓄積がない。
 だから、皆さん方がどうやっていいのか。例えば非行臨床と言われるような考え方すら、現場の中に入り込んでいないというか、確立していない。そういう技法が全く成熟していない。海外では、そういうものが随分開発されている。それをそのまま日本に持ち込んでいいのかどうかの検証すら行われていない、文化が違うから。例えば有名な罪の文化だとか、恥の文化だとか、我が国にはいろいろなものがある。
 向こうは向こうで、いろいろな文化がある。よく宗教の違いがどうだとか、いろいろと言われる。仏教とキリスト教、あるいはイスラム、いろいろな宗教等も全然違う。罪とか、代償とか、要するに罪というのは、非常に宗教の根幹にある概念で、これに対する文化的な差というものも組み込んだ上で、今の対応をしていかなければいけない。
 そうすると、それを実証、検証しながら、ここにこんなものがあるから、海外でやっているから、それを早速導入しようという安易なことでは、それはがたがたになってしまうし、日本の培ってきた文化、教育と言われるものも瓦解しかねないという側面もある。だから、中長期的というにらみは、今おっしゃったように、単に行政の少し議論が大変だからというわけではなくて、それだけの中身を詰めて、皆さん方にお示しするには、そう短期ではいかないよと、私は受けとめて聞かせていただいたけれども、そういう意味としてよいか。 また違った意味付けがあるかもしれないが。
【事務局】  おっしゃるとおり。加害者指導論というものが、日本ではまだ十分詰まっていないところがあるのではないかという趣旨である。やはり諸外国と比べると、日本特有の事情なのかもしれないが、おっしゃるとおりの考え方である。
【座長】  だから、日本の政策、いろいろなところが全部被害者保護という方に優先してしまう。被害と加害とのバランスのきいた、というのは、加害者がいなければ、いじめは起こらない。そこのところへどういうふうに指導を加えていくかということ、これは非常に大事なところ。
 だから、今後、中長期的という中で、我々の社会もここへ関心を向けながら、単に懲罰、懲戒というものだけではなく。それも必要な場合がある。犯罪と結びついているし、いろいろな問題がある。だけれども、そこだけではなくて、もう少し緩やかな教育的指導・支援と言われる中でどうこの問題を扱っていくかというのが、私は必要だろうと、その段階に来ているのではなかろうかと思っている。今、それを考えなければいけない時期だろうと思っている。
【委員】  今伺ったのは、少年事件に関わっていたけれども、一時期、犯罪被害者の問題がクローズアップして、弁護士はそういう非行事件、特に重大な非行事件の場合は、被害者のことを考えさせる。少年院も思考が変わっていったのだが、私が当時関わった事件でも、被害者にまで行って、無理をお願いして、加害者に言いたいところを書いてくれないかとお願いして、審判廷まで準備していくのだが、それを審判廷で読んで、私のケースは泣き出して、被害者の気持ちを分かったりする。
 そういうふうに、いじめというのはかなり難しい問題。悪気はないとしても、そこまで苦しんだということを、本当に心の悩みまで、かなりの継続的な指導と根気強さが要ると思う。それは、強いて言えば、同じ学校に不登校から復帰するわけだから、一時期出た修復司法的な手法である。最後、本当に事実を認め、最後の段階で謝罪して、じゃ、これから一緒に同じ空間で生活しようよと持っていくという、非常に難しいことだろうと思う。
 私としては、そういう点のアプローチを学校の関係者の方に是非していただきたい。私は被害者側が多いので、被害者の子の気持ちを何とか加えた。私も弁護士だから、加害者側の生存発達権も決してないがしろにしたいとは思っていないので、彼らが失敗を踏まえてさらに成長するというところにも、やっぱりどこか関心があるので、そういった方向での何らかの対応ができないかなというのは、前々から思っている。
【座長】  今、委員の方から出たように、修復的司法、これはヨーロッパ、アメリカ、もともとアボリジニから出てきたもの。スタティックな社会の中の逸脱、あるいはこういう問題、それをどう中に含み込みながら、スタティックな社会なので、外へ放り出すわけにもいかない。処罰で切り捨てるわけにもいかない。ともに生活をどうやって再構築していくか、この理念に基づいて作られたのが、修復的司法。
 司法手続なので。普通はリストラティブジャスティスといって、修復的正義というふうに表現しているが、この手法というのは、以前から着目はされているのだが、なかなか司法界では評判が悪い。最近、また関心が高まってきた。
 以前は二言目には、謝ったら終わりだと言われていて、重視されていなかった問題というか、むしろ今の懲罰中心の司法手続というのに委ねるという考え方が強かったが、近年、非常に修復的司法にしても、あるいは修復的正義にしても組み込んでいこうという考え方が出てきた。また、今おっしゃったように少年院の処遇、そういうものに関しては、この考え方が非常に貫徹してきている。だから、社会内処遇も含め、今、家族を考えさせるとか、いろいろなことがあるが、そういう司法もみな、修復的正義の考え方に基づいているというふうに、私も理解している。
 やはり参考にすべきだろうと思う。関係者によると、ヨーロッパ、あるいはオーストラリアなんかに行くと、いじめ問題にむしろ一番向いているのではないかと思う。つまり、傷害とか、殺人だとか、おどろおどろしいものというのは難しいが、こういう被害・加害関係が比較的浅い、あるいは軽い、軽微な関係の場合には、非常に適切に向いている、そういう司法行為ではなかろうかと言われている部分もある。
 少し、その辺も参考にしていただきながら、中長期的な中でどういうふうにこれを考えていくかということが、やっぱり必要だろうと思っている。
【委員】  そういう中で、学校側の立場として、加害者に対する指導というのもこれから大切になってくるのではないかと思うので、是非そういった議論とか、そういう方向性が出てくればありがたいなと思っている。
 それと、もう一点、学校の状況が変わってきたのは、私ども、東京だからかもしれないが、地域によって違うが、外国人籍の子供たちも増えてきたり、あるいは古い言葉で言うと国際結婚というか、ハーフの子とか、そういった生徒の考え方や宗教的に違う生徒が多数、以前よりも多くなったりしている。そういう生徒たちに対する指導も、これから、日本の指導として考えていかなくてはならないと思っている。
【座長】  これから大変重要な課題になってくる。要するにダイバーシティー、そういう考え方は1つ、やっぱり。
【委員】  今加害者のことが出てきたので、調査と絡めて、私もそこが非常に気になっている。1つは、法が加害者に対して、あるいは加害者の保護者に対して厳罰主義をとっていて、保護者に対する指導ということに関しても、成長支援という視点がほとんど見られない。文科省の問題行動調査でも、いじめる児童生徒への対応という中で保護者に報告したというのが、先ほどの資料を見ても、全体では45.6%しかない。
 小学校が少ないのは、もしかしたら一々家庭までにというのがあるのかもしれないけれども、いじめているということが保護者に伝わっていないのが半分以上ある。ここが1つ、大きな問題かなと思う。
 調査に当たって、私も今まで幾つもやってきたけれども、加害者に関して言うと、保護者の同意がなければ話を調査の中で聞くことができない。これは、もちろん、子供たちの権利の保護でもあり、必要だが、非常に難しいなと思うのは、先ほどからずっと話があるように、いじめは加害者がなければ起きない。
 したがって、調査報告の中でいじめを認定するということは、ある意味、加害行為を認定する、加害者を認定する。これが、調査をどこまでやるのかという問題にも絡んでくるけれども、いじめの認定をして、それが重大事態、とりわけ1号の方に絡んできた場合には、その因果関係を調査委員会の中でどこまで特定できるのか。実際に携わってきた中で、私自身、非常に不安を持ちながら因果関係の特定をせざるを得ないところがある。
 もちろん、委員会に当然各分野の専門家の方が入っているので、周知を集めてやっていくのだが、とても難しい。いじめの定義が非常に広範である中でいじめを認定する、加害行為を認定する。それが重大事態につながったときに、果たして因果関係で結んでいいのかというのをいつも思いながらやっている。いじめの認定までは行けるけれども、その先の因果関係というのを、果たして捜査権もない中でやっていいのか。
 だから、当然加害者の保護者は、あるいは加害者は身構える。もちろん、刑事訴追とかいうことではないけれども、参考資料にならないわけではないので、加害行為を認定されることを非常に恐れる。我々は調査をしながら認定をし、今どういう認識に立っているかということを伝えながらやっていくわけだが、その辺が、実際にやってきて非常に難しいなと思う。
 例えば遺書に相当するメモみたいなものが残っていて、これこれだから、重大な事態を引き起こすということが書いてあったとする。そこに書かれている内容が、一般的な見方からすると、それが果たして重大事態につながるものと判断するのが難しいような内容が書かれている場合もある。
 しかし、そこには被害者の真実があるから、当然それに我々は依拠して調査を進めていく。それが事実として出てくる。その事実は加害者なり保護者が認める。しかし、それと重大事態とを結び付けられるかといったときに、犯罪性を伴わないようなもの、それが重大事態を引き起こして、そこを因果関係で結べるのかということを、本当に悩みながら調査報告をまとめざるを得ない。この辺のところに非常に難しさを感じている。
 どうしたらいいかということは言えないのだが、そこに調査の在り方の困難さがあるなということを感じているので、この辺もここで詰めていければいいかなと思う。
【座長】  大変難しい議論。ただ、今のお話は、我々研究者にも、パラダイムシフトをしなければいけない、こういう段階に来ていることをも含まれている。というのは、今のこの重大事態の調査そのものは、パラダイムで言うと、因果関係を求めて、そして予防するという、因果、予防パラダイム。
 これは、要するに過去のいろいろな事案を検討しながら、現在の起こっている事態、これは不登校でも何でもそうだが、その事態をにらんで、そこへどういう対策を打つのかと。つまり、因果関係を基にしながら防止策を講じていくという現在の要件、これが完璧であれば、それはいい。科学パラダイムというのは大体これに沿ってきた。
 ところが、こういう人文科学、我々の経験科学なり、わけの分からないものがいっぱい出てくる。調べてみても、不登校でも、当人すら何が原因なのか分からない。あるいは、今の重大事態の調査でも何が現在の原因に当たるのかというところが、委員がおっしゃったように分からない。しかし、自信がないまま調査は因果関係を推定し、今後の対策を立てるとなっているので、まさに因果、予防、パラダイムそのものを実現しなければいけない。
 そうすると、根拠がないのにそれをやらなければいけないというジレンマが、我々やる方にも、研究者にも起こってくる。現実にそういう事態が多い。その場合に、我々、もう一つ、状況的パラダイムというのを作る。つまり、現在の状況から将来へ向けて、この子を現在の状況を含みながらどうしてやるかと。つまり、過去から現在へ、そして未来へという架け橋ではなくて、現在を出発点としながらどうやっていくのか、この論理を立てる。
 それは、ある意味では、先ほどの修復的手法なんかはそれにのっとっている。つまり、因果関係というものの推定ではなくて、むしろ例えば家族、保護者の話が出てきた。委員の方からも、家族にどう働き掛けるか。つまり、単に前へ置いて、あんたはこの問題をどうしているかというのではなくて、保護者、加害側も、被害側も、関係の修復の場合には、社会修復はまた別だが、関係を修復する場合には、加害者も、被害者も、保護者も含めて、そして、1つの会議体、ファミリーグループカンファレンス、FGC、こういうものを一般的に構成して、そこで関係を蓄積していく。そういう形で、その子供を今後集団から排除するのではなくて、含み込んで行動変容を図っていくというやり方。
 その行動変容にとどまらないのが社会修復といい、例えば教室なり、あるいは学校の安全安心な空間を、それぞれが自分が何をできるか考える会議体にまで、さっきのファミリーグループカンファレンスを拡大する。そして、それぞれが提案をして、1つの学級や学校の安全安心、快適さを確保していく、こういう流れをとるのが、大体一般的な修復的正義のいじめのパターンの場合のやり方。
 というのは、現在の状況へ当てはめながら、これからの加害の側の子供、あるいはこれからのみんなの空間、学習状況、環境、これをどうしていくか。現在に立脚しながら、現在の状況を踏まえながら、どう未来へこの場をつくりかえ、よりよい場にしていくか、こういう方策がある。
 これをうまく突き合わせながら、分かるものに関しては、分かるところまでは因果推定をやりながら、分からないものに関しては、そこは分からない。分からないところをやみくもに踏み込むよりは、むしろ現在へ焦点を当てて、これからの子供たち、あるいは教室、学級の場、環境というものをどう調整していくか、この2つをうまく交ぜながらやっていくというのが、大体今の考え方だろうと解釈している。
 だから、それを法が求める一本やりの単なる因果予防のこれまでの科学、自然科学、これの考え方に立脚したものというよりは、むしろ人間、あるいはあすへ向かって生きていかなければいけない。先ほど委員からあったように、あるいは大人に向けて成長を図っていくというか、懲罰ではなくて、その子の成長支援をしていくと。こういう観点から言うと、やっぱりそういう手法をにらみながら、両方、これから少し改善していかなければいけないというのが、これからの在り方かなと思う。
【委員】  今の委員のお話を伺いながら、今日はすごく議論が難しくて、しっかり付いていけているわけではないが、ただ、子供を取り巻く問題というのは、いじめだけではなくて虐待というものもあったり、非行というものもあったり、いろいろなことが絡んでいる。
 今日は、厚労省の方も、法務省の方もお見えだが、例えば児童相談所にも児童を扱う方々がいらっしゃるとか、また、市町村に保健師さんたちなどもいらっしゃるとか。私は精神保健福祉士なので、メンタルヘルスに関連しながら社会復帰を必要としている方々の支援を考えるという立場。
 そうすると、いじめに遭った側の方にしても、また、子供をいじめるという行為をする人にしても、何らか心の傷というのが原因になっていることもあり、また出来事の結果として心の傷を負うということがあると思うので、それをどういうふうに地域社会の中でケアしていくかということを考えると、恐らく文科省の範疇の中だけではないところも十分連携していく必要があると思う。
 それから、今いろいろなお話をお聞きしながら、これは適切とは思えないので、言うのはなかなか躊躇する部分はあるが、医療観察制度というのがあって、これは重大な他害行為を犯した精神障害のある方たちの治療と、社会復帰を支援する仕組みである。当然、法務省や厚労省の方はお詳しいと思うが、保護観察所や精神科医療機関が連携をしながら、地域社会の中で罪を犯した方の精神疾患の治療と、それから障害に対しての福祉的な支援を他職種が連携してどのように支えていくか、そういうことについて一定程度の仕組みが作られている。
 相当な予算もとられていることで、速やかにそれと同じことをというわけではないが、ただ、学校の中だけで被害児童の方も、また加害児童もそれぞれ家庭があって、その家庭環境、またはその地域の問題ということも、恐らく絡んでいる場合というのはあるのではないかと思う。
 つまり貧困な地域ということもあるかもしれないし、先ほど出たように、外国人の方が多く住んでいらっしゃる地域ということもある。また、被害児童、加害児童ともに障害などを抱えているとか、親が何か課題を抱えているとか、そういった複雑多様な生活問題もあるだろうなと思ったときに、この調査というお話から今日はスタートしていると思うが、その調査組織の中でどういったところまでが調査できるのかというのがよく分からない。
 加害児童の方のことについては調査が非常にしづらいということを、今、委員がおっしゃられていた。実際には、加害児童の側の、例えば家庭環境にもいろいろ課題があるとか。なので、そこに対しての手当てをしていかないと、このお子さんはもういじめられなくなったけれども、今度、別のお子さんということもあり得るし、将来そういう人が逆にいじめられる側になっていくとかも。
 また、加害児童ももともとは虐待された経験があって、それを学校で別の形で表現しているという、そういう可能性もあるのではないかなと思う。そうすると、この調査自体が検証的なものなのか、それとも再発の予防であるとか、被害に遭った方の支援のためのものなのか。目的によって、当然人の集め方というのは違うと思うし、どの事案においても、もしかしたら複数の目的を持たせなければならないということなのかなとも思う。
 そうすると、調査メンバーというのも余り固定的に考えることも難しいのかもしれない。ただ、一方で、人が次々変わると、情報も錯綜するので、どこかにきちんと核となる方というのが必要なのではないかと思う。それが、どこがいいのかというのはよく分からないのだが、例えば教育委員会などにそういう方を配置することができるのかどうかとか、それとも、学校ごとに置くというのは難しいと思うので、そういったことに長けた方を新たに育てていくとかいうことも、必要なのではないかなと感じた。
 先ほど机上配付資料で、調査結果の概要をお示しいただいて、いじめの認知件数が増えている。いじめ自体が増えているかどうかは分からないけれども、認知件数が増えているというお話があって、いじめということを聞かない日というのはほとんどないと思う。ネットのニュースなんかでもたびたび出てくる。
 私が懸念するのは、いじめがこんなに多いというのをびっくりする報道もいかがなものかと、先ほど委員がおっしゃったように思う。一方で、いじめがあることは当然というような風潮ができることも、非常に恐いなと思う。やっぱり本当は一件もない方が望ましいわけであって、その報道の仕方をどういうふうにしていただけるのかということも、マスコミの方々にはよく考えていただきたいと思う。
 本来あってはならないことが、今こんなにいっぱい起きてしまっているということについて、真剣に考える場というのが、いじめが起きたときの調査だけでは十分ではないのかなと思い、定期的にいじめ問題について地域で考える。それも、学校現場だけではない人たちを巻き込んだ形での協議体みたいなものがつくられていって、そうすると、いざ調査が必要になったときにも、そこで知恵をもらいながら、ネットワークを活用しながら子供たちを支援していく、あるいは学校の先生を支援していくという、そういうことも構想できる可能性はあるのではないかなと感じた。
 今すぐ何かできるという話ではないが、中長期的とおっしゃったので、是非、文科省、法務省などとも連携して御検討いただけるといいのではないかと思う。
【座長】  ただいまの意見と、それから、先ほどの委員と、今の委員の意見と付き交ぜると、先ほど関係修復とおっしゃった。ここに限定されると、そういう今の視点が入ってこない。ところが、社会修復という考え方に立つと、今のような、例えば先ほどファミリーグループカンファレンスと言われるものを拡大するというのは、いろいろな関係者をそこに含み込みながら、なおかつ先ほど焦点がぼやけたらいけないというのは、調査チームと支援チームというのを、ちゃんときっちり切り分けていく。
 そして、支援チームをしっかりとした様々な関係の方々、つまり文部科学省を超えた、省庁を超えた行政の仕組みだと、いろいろな方々、あるいは地域の方々、あるいは個人情報、守秘義務があるので、だから民間の方々にも広げる場合にも制約はあるけれども、それを超えながら、その子供を中心に、あるいは空間、学級、学校、そういうものを中心にしながら、そこへいろいろな支援を注ぎ込んでいく、こういうシステムがある。
 これはもともと、いわゆるRJと言われるリストラティブジャスティスの中でも、コミュニティージャスティスと言われていた概念。つまり、コミュニティーそのものに基づく、そういう考え方を持っているので、単に加害者、被害者という関係だけ、これを修復するということに留まらない。
 むしろ、今おっしゃったような趣旨に沿うようなものを含んでいる。そういう手法が海外ではとられて、コミュニティージャスティスよりも、社会修復、そういう考え方。コミュニティーというのは、御存じのように非常に複雑な概念で、使わないように、日本では社会司法と申し上げる。そんな手法。だから、そういう面も中長期的な考え方の中で、うまく切り分けながら対応策を今後考えていくというのが、1つあり得るだろう。
 ただ、今回の調査報告書にどこまでそれを盛り込めるかというのは、まだそういう実証的な問題や様々な問題が解決されないまま、海外の例があるだけで、それはそのまま行こうというわけにはいかないので、これをどう取り扱うかということも含めて、今後、少しは検討しておかなければいけないかなと思う。
【委員】  スクールカウンセラーの立場で一言。愛知県の事案があった次の平成7年からスクールカウンセラーが始まったが、そのときから、スクールカウンセラーをずっとやっている。当時を振り返って思うが、やはり学校という環境が、そういうコミュニティーという部分では非常に閉鎖されたところということを、思っていた。最近は、本当にチーム学校とかいう考え方で、いろいろな立場の方が参加するし、調査研究にしても、やっぱり予防だろうと私は思っているけれども、そのためには学校の中で小さくまとめるのではなくて、社会全体としてどういうふうにその犠牲を有効に活用するか、みたいに考えていかなければいけないだろうと思っている。
 スクールカウンセラーも、当初はいじめ、不登校の、よく言われることだが、事後対応というか、そういうことがあったときの心の癒しということに主眼を置いてやっていたが、最近は文科省の方からも御指摘を頂いているように、そういう事後の対応だけでなく、予防教育、心理教育のレベルからずっと関わっている学校の子供たちの健全な成長、また、お父さん、お母さん、地域の方々への保護者会等を通じての心理教育をやっていく必要があるという指摘を頂いている。
 我々もその方向で努力をしている。最近の研修はカウンセリングと、心理検査等、アセスメントと同様に心理教育の訓練をひたすらしている。少し前にトロッコ問題とかいうようなSOSの出し方でちょっと不適切な問題もあったが、そういうことも含めながら、一生懸命心理教育、予防教育について対応していくことが必要だろうなと思っている。
 それは心の傷つきということを考えたときに、傷ついた方がおられたら、その方への支援は当然のことだが、そういう傷つきを与えた人間に対しても、最近は司法の領域でもそうだが、単なる刑期を満たすだけでは再発の予防には一切ならないので、そういう部分ではアクトの問題とか、様々な問題で、そういう受刑者の方々へのアプローチも十分やっている。また、非行の問題もそうだが、決して我々スクールカウンセラーが、不登校やそういう子供だけに関わるのではなく、非行の子供たちにも関わる。
 実際に非行の子供たちと関わっていると、虐待を受けていたりして、視点を変えれば、彼らもやっぱり被害者だと思う。最近は、スクールカウンセラーに様々な領域の対応をしろと言われているので、虐待や、LGBTや、様々な性的な被害を受けたお子さんたち、様々な領域に対して対応していけと言われて、力量以上の期待を上げられて、非常にプレッシャーは感じているが、一生懸命やっていこうとは思っている。
 それと、もう一つ、是非とも我々だけスクールカウンセラーを増やしていただくということもあるし、スクールソーシャルワーカーもあるが、学校の先生と一緒に力を合わせてということも思っている。平成7年の学校現場の雰囲気とは完全に違うので、社会にもそのことを分かっていただいて、加害者も、被害者も一緒になって成長できることは心掛けていきたいなと思っている。
 また、先ほど委員からいろいろな御指摘を受けたが、その辺も参考にしながら、是非ともこれから研鑽していきたいと思っている。
【座長】  多様な問題に今までの臨床心理という領域も対応しようと、今努力も重ねていただいている。私的には、非行臨床もしっかりやっていただきたいし、暴れん坊の元気のいい坊やたちも、やっぱり視野に入れてということも申し上げてきた。
 いろいろな御苦労は多いと思うが、是非とも臨床、スクールカウンセラー、あるいはスクールソーシャルワーカーの力量も、引き上げていただくように御支援、あるいは御助言をお願いいたしたいと思っている。
【委員】  たまたま今週の木曜、金曜に全日中の研究協議会全国大会があった。そこで、私が発表することになっているのだが、きっかけはいじめ防止対策推進法の改正の話だったが、認知件数が増えた。それぞれの学校が気をつけて見るようになったので、認知件数、どんどん増えてきたというお話を頂きながら、それぞれの学校で様々な対応をしているにもかかわらず、まだ重大事態、特に自死の案件が続いてしまっている。
 ということで、防止法の改正を待つまでもなく、中学校自身がもう一度自分たちのやってきたことを見直して、何かしら行動していかなければいけないのではないかということで、今度の24日に全日中の本部として提言を行うことになっている。その提言を行うに当たって、自己点検ということで全国に調査を掛けた。全数調査ではなく抽出で、700ぐらいだから10%には行かなかったが。
 その中で、例えば校内の体制であるとか、生徒指導についてとか、早期発見・早期対応についてとか、あと家庭、地域、関係諸機関との連携とか、文科省から出されているいじめ防止のための基本方針にのっとった形で調査を掛けた。基本方針だから、少なくとも公立の中学校、小学校もそうだが、それにのっとって学校としては動いていかなければならぬということだと認識している。
 中でも、家庭とか、地域とか、関係諸機関との連携に関して、何かあれば、もちろん連携をするが、日常的に連携できているという学校は全体の4分の3ぐらいしかない。全国いろいろな場所があるが、日常的に可能かどうか。例えば東京とか、大都市でいえば日常的に割と関係機関とのやりとりもできる。
 例えば東京でいえば、スクールカウンセラーの方は、うちの学校はちょっと不登校のモデル校になっているような関係で、週に3日間入っていただいた。あとは、自治体によって、スクールソーシャルワーカー、これはどちらかというと西の方が充実度合いは大きいのではないかなと思う。
 それぞれあるにせよ、日常的に連携をしながら、子供に関わる大人みんなで子供を見ていきましょうよという形で、情報の共有であるとかいうことができていない学校が多過ぎる。ということで、今度の提言の中でもそこのところが第1番で、これをしっかりやっていかないと、最終的にはいじめをなくすというところは目標だが、少なくともいじめによる自死の事案、そこのところは何としても止めていかなければいけない。
 そこら辺、実際に調査をしても、なかなか中学校自身、まだまだ足りないところがあるなというところは、調査の結果から出ている。さっきの被害・加害の話で言うと、中学校でよくあるのは、例えば、日頃、一言言わなくてもいいことを言ってしまう子がいて、同じクラスにちょっとわんぱくな、やんちゃなやつがいて、一言要らぬことを言ったら、やんちゃなやつが暴力を振るった。
 一言言われただけでいじめだとは言わないが、いじめの定義からすると、嫌なことを言われたので、いじめ。だけど、その当人はいじめだと言わないから、その時点でいじめにはならないけれども、暴力を振るってけがをさせた時点で、相手はいじめだと言う。そこで、両方の保護者の方と話をしながら、結構ぐちゃぐちゃともめてしまうという件は、結構ある。
 だから、そこら辺のところ、学校で預かっていくのはなかなか難しいなということはある。先ほど先生がおっしゃった、保護者に対して、特に加害の側の保護者に対して、学校から状況の説明をして、指導ということではないが、話をするときに、教員が間違えるのは、昔僕も経験があるけれども、隣のクラスの子がちょっとやらかして、そこの担任が保護者も呼んで指導した。
 指導した夜に、その前の年に私が担任だったので、私のところに電話が来て、申しわけありませんでしたというところから話が始まったが、あの担任の先生の言うことが正しいのは分かるけれども、むかつきますという結論だった。まあまあと言いながら、応じながら話して、何ということもなく終わったが。
 保護者の方との初期対応、もう一つ、子供たちをめぐる周りの大人のコミュニティーみたいなものを作っている初期対応、日常的なそこら辺のことが、なかなかうまく進んでいないところが、結構中学校としては悩みの種である。
【委員】  手短に。1つは、大津のケースなんか、最近そうだが、要するにクラスがいろいろなグループに分かれてしまっている。本件のこの大津の場合も、抽象的に言えば一定のグループから出ようとしたのが1つのきっかけになって、いじめに発展していって、それがかなり激しさを増していって、委員が言われる、徐々に論争構造ができていって、直接、周辺と。
 だから、今言った加害者といっても、クラス全体という1つのいじめの構造ができてしまうと、その場合にどういう指導を、直接の加害者、その周辺、あおった、それから無関心を装った子に対して、教員としてどう臨むのか。やっぱりそこは答えが出ていないように思う。その具体的な取り組みの成果とかがあるのか、よく分からない部分がある。
 それと、さっき言ったように、いじめというのはものすごく関係性がある。ある専門書には過剰適応の子供たちと書いてあったが、どこかのグループに属さないと、自分の不安感、存在感が学校でない。そこにいるために、少々家でも我慢する。
 兵庫県のある報告書を読むと、そこに着目して、そこのグループは、中心の子はいろいろいじめていたが、ある日から特定の方にいって、そういうグループが彼女は嫌だし、苦痛と、そういう中で死を選ぶ。だから、いじめというものが一定程度生徒間のリーダー的な関係性の中にある。
 だから、表面的だけでは捉えないけれども、その構造の中で、客観的には些細だが、一定の支配の関係の中で非常に苦痛を感じているというのが、幾つかの報告書を読むと書かれている。だから、そのあたりを外形的に捉えるのか。いじめとは何なのか。
 文科省のいじめの概念は、それはそれでいいが、中をもう少し専門家が豊かにしていかないと、意外と見落とす局面が出るのではないかと思う。
【座長】  今日、いろいろと御議論いただいて、まだまだ言い足りない方々、顔がちらちら見えているが、ともあれ時間が来た。今日は、少し加害・被害という観点の加害性についての議論も深まったし、様々な論点からおっしゃっていただいて、重大事態の論点も少し視野が広がったかなと思っている。
 それでは、本日の御議論いただいた内容を踏まえて、今後の協議会の進め方について、事務局から御説明をお願いする。
【事務局】  今後の協議会の進め方等については、本日、委員の皆様から頂いた御意見を踏まえ、議論の内容を改めて整理しお示しをさせていただきたい。
 なお、今後のスケジュールについて補足説明をさせていただく。資料2の4ページの3、今後のスケジュールとして書かせていただいている。
 次回以降は、いじめの重大事態の調査組織の事例等に関するヒアリングとして、2回ほどヒアリングを行い、その後、令和2年に、ヒアリングなどの状況にもよるが、中間まとめということで出させていただきたいと考えている。
 次回以降、2回に渡ってのヒアリングだが、具体的には重大事態の調査組織の経験をされた方を対象にし、本日、御議論いただいた論点メモを中心にヒアリングをしてはいかがかと考えている。ヒアリング対象者については、本日、委員の皆様から頂いた御意見を踏まえつつ検討したいと考えているが、その人選等については座長と事務局の方に御一任いただければと考えている。
 なお、次回の開催については、今後のスケジュールでもお示ししているが、現時点では11月中を予定している。日程調整を行った上で、後日、再度御連絡をする。
【座長】  それでは、以上をもって、本年度第2回の会議を閉会させていただく。
 
―― 了 ――

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