高等学校における日本語指導の在り方に関する検討会議(第1回)議事録

1.日時

令和3年5月26日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

Web会議

3.議題

  1. 高等学校における日本語指導の在り方に関する検討会議の運営について
  2. 高等学校における日本語指導の在り方について
  3. 検討事項及び検討の進め方について
  4. ヒアリング(1.角田仁委員、2.千葉県立生浜高等学校)
  5. 自由討議

4.議事録

【佐藤座長】 それでは改めまして、本検討会議の座長に着任いたしました明治大学の佐藤と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
早速議題2、高等学校における日本語指導の現状と課題に入っていきたいと思います。
まず事務局より、高等学校における日本語指導の現状と課題について説明をお願いします。
【小林外国人児童生徒教育専門官】 それでは、資料3に基づきまして、事務局の方から、高等学校における日本語指導の現状と課題について御説明をさせていただきます。資料を共有しようと思いますので、少しお待ちください。
それでは御説明をさせていただきます。資料の分量が多いところもありまして、また、参加されている皆様はよく御存じの資料などもあるかと思いますので、簡単に御説明をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
まず初めに、外国人児童生徒の教育の現状について、幾つかのデータなどを御説明させていただきます。
資料3ページの、四角囲みの中に書いておりますが、日本国内に在住する外国人の方が、その保護する子供を公立の義務教育諸学校へ就学させることを希望する場合については、国際人権規約などを踏まえまして、全て無償で受け入れているところでございます。これにより、日本人の児童生徒と同じような教育を受ける機会を保障しています。
こうした背景を踏まえまして、現在、公立学校においては日本語指導が必要な児童生徒が多数在籍している状況にあります。
文部科学省では2年に1回、こうした児童生徒の状況の調査を行っておりますが、その調査結果によりますと、平成30年度の一番新しいデータでは、円グラフでお示しをしているように、こちらは外国人児童生徒の母語になりますが、ポルトガル語、中国語、フィリピノ語、スペイン語などを母語とする子供たちが多い状況となっております。
こちらの母語のトレンドは余り変わってはいないのですが、その他の中に含まれる母語の数が非常に現状では多種多様となっています。
また、右の日本地図を御覧いただければと思いますが、外国人児童生徒の在籍が非常に多い県があれば、散在しているような地域もあるということになっております。
資料4ページは平成30年度の調査結果で、これまで10年間の日本語指導が必要な児童生徒の推移を示したものでございまして、直近のデータでは5万人を超える状況となっています。
次のページでは、高校生に限ったデータをお示ししてみました。高校生については、この5万人の人数の中ではまだ少ないのですが、ただ伸び率につきましては10年間で2.7倍増となっていまして、非常に伸び自体は多くなっているところですので、今後も更に高校段階での日本語指導が必要な生徒が増えてくるものと思われます。
6ページについては、都道府県ごとの日本語指導が必要な児童生徒の学校種別、都道府県別の在籍状況となっております。7ページは義務教育段階ですが、日本語指導などの何らかの特別な指導を受けている児童生徒の割合ですとか、又は義務教育段階で既に導入されている特別の教育課程による日本語指導を受けている児童生徒の割合をお示ししているグラフでございます。
8ページで、同じく高校生段階の指導を受けている生徒数、又は指導の割合の推移をお示しさせていただきました。高校段階では、まだ特別の教育課程の編成という制度がありませんので、何らか日本語指導などの特別な指導を受けている生徒の割合と人数です。
指導を受けている人数は年々増えてはきているのですが、指導を受けている生徒の割合で見てみますと少し下がってきているような状況にありますし、義務教育段階よりも低いという現状があります。
9ページは御参考ですが、令和元年に実施をした、外国人の子供の就学状況等の調査結果でございまして、このデータでは、全国初めて就学状況の調査を行いましたが、2万人程度の外国人の子供が不就学の可能性がある、又は就学状況が確認されていないという現状が明らかになったデータでございます。
こちら10ページが、また高校生段階の日本語指導が必要な児童生徒のデータですが、こちらは平成29年度中の高校生の中退状況ですとか進路状況などを調査した結果でございます。上段が日本語指導が必要な高校生のデータ、下段がそういった生徒を含む全高校生のデータとなっております。
黄色の欄を御覧いただくと、日本語指導が必要な高校生については中途退学率がかなり高く、また大学・専門学校への進学率は低い状況にあり、就職した者における非正規の就職率が高く、また進学も就職もしていない者の割合というのも高いという状況になっております。
11ページの表につきましては、文部科学省で各都道府県教育委員会に毎年、入試の状況について調査をしている結果から抜粋したものでございます。公立の高等学校での帰国生徒・外国人生徒に対する入学者選抜の状況についてお聞きしています。
これを見ますと、都道府県によっては、外国人生徒・帰国生徒向けの特別定員枠を設定し、また試験教科を軽減するとか、様々な受験に際しての配慮などを行っている都道府県もあります。
次に、学校での受入れ体制整備、文科省の施策を中心に御説明したいと思います。
細かくて恐縮なのですが、この13ページで、これまで帰国・外国人児童生徒の教育に資する施策として実施してきたものを、主な内容をお示ししています。
義務教育段階ですと、先ほども少し申し上げましたが、日本語指導が必要な児童生徒に対する特別の教育課程を編成できるように制度化を図りました。これが平成26年4月から施行しております。
また、こうした特別の教育課程に基づく指導を担うための教員の配置につきましても、義務教育標準法を改正いたしまして、日本語指導が必要な児童生徒18人に対して1人という標準で教員配置を行うことといたしました。これについては、平成29年度から令和8年度までの10年間をかけて、計画的に義務教育段階の定員の措置を行っているところでございます。
このほかにも、就学促進ですとか、また学校での受入れ体制を整えるための補助事業の実施ですとか、外国人児童生徒等教育アドバイザーの派遣など、現状では様々な施策を実施させていただいているところでございます。
こちらは、学習指導要領における日本語指導に関連する記載を抜粋したものでございます。この14ページでは、小学校学習指導要領と指導要領解説の関連部分を抜粋しております。中学校についても全く同様の記載が行われております。
15ページでは、高等学校学習指導要領における関連記述を抜粋しております。内容としては余り変わらないのですが、特別な教育課程の編成が、小中学校だけが今できますので、その部分の記載に関しては高等学校にはないという状況になっております。
16ページが、外国人児童生徒等の教育の充実のための、令和3年度の予算の一覧でございます。外国人児童生徒の教育に関しましては、文部科学省で約9億円の予算を今年度は確保をしているところでございます。
その中でも一番ボリュームを占めておりますのが、2つの補助事業になります。17ページの真ん中の丸い囲みの中に、帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業とありますが、こちらが学校での日本語指導の体制整備などを行うための補助事業となっております。
その下の、外国人の子供の就学促進事業、こちらの方が、就学に課題を抱える外国人の子供たちについて、就学を促進するための補助事業となっております。どちらも、文部科学省から自治体に対し、3分の1の補助を行わせていただくような仕組みとなっています。
特に、帰国・外国人児童生徒等に対するきめ細かな支援事業につきましては、高校生に対する包括的な教育支援のメニューを準備しておりまして、18ページの日本地図の中で赤字でお示ししている自治体につきましては、高校生対象の補助メニューですとか、高校生への支援の取組などを実施されているところでございます。
19ページは、実際にこの補助事業を活用して取り組まれている自治体の事例ですが、こちらでは、日本語指導はもちろんですが、キャリア支援につきましても、就職アドバイザーを派遣するなど、高校卒業後も見据えたような取組を行われています。
20ページでは、これまで文部科学省で作成した様々な資料、手引、ガイドブックなどについてお示ししておりますので、後ほどまた御覧いただければと思います。
ここからは、就学促進ですとか進学機会の確保、その後の継続的な支援に関する施策について、少し御説明させていただきたいと思います。
22ページにつきまして、令和元年6月に、日本語教育の推進に関する法律が成立いたしました。この法律では、日本語教育を推進するための基本的な方針を定めることになっていまして、令和2年6月に、日本語教育の推進に関する施策の基本的な方針を政府として定めて、閣議決定を行っております。
その閣議決定の内容を受けまして、文部科学省では令和2年7月に、外国人の子供の就学促進、就学状況の把握に関する指針というものを取りまとめて、各自治体に通知をさせていただいております。
23ページで、オレンジの枠囲みでお示ししているのが、令和2年6月に閣議決定をした、日本語教育に関する施策の基本的な方針になります。
外国人児童生徒に対する日本語教育等についても明記をされていまして、中には中学校・高校における進路指導の充実ですとか、キャリア教育などの包括的な支援を行うことですとか、公立高等学校入学者選抜における特別定員枠の設定など、高校進学に関する取組も実施することが明記されております。
24ページは、令和2年7月に文部科学省が策定をいたしました、外国人の子供の就学促進等の指針の概要でございます。
こちらは基本的に、外国人の子供の就学促進、就学状況の把握のために必要な事項を列記したものでございますが、この概要資料の2ポツの(6)を御覧いただければと思いますが、高等学校への進学の促進についても指針の中で明記させていただきました。
早い時期から進路ガイダンス、進路相談などを実施することによって、高校への進学の促進を図ることですとか、公立高等学校入学の選抜において外国人生徒特別定員枠の設定、又は様々な受験上の配慮を行うことなどの取組についても明記した上で、自治体に通知をさせていただいております。
また、25ページの資料につきましては、令和3年度の予算の中で、高等学校における日本語指導体制整備事業という新たな事業を立ち上げましたので、その概要でございます。今、この会議の開催のための経費はもちろんですが、高等学校における日本語指導のための指導資料作成の予算も確保いたしましたので、こちらは今年度4月に東京学芸大学と契約を結ばせていただいて、同大学に2年間の計画で、高校における日本語指導のための指導資料作成の事業を委託して、実施をしているところでございます。
26ページについては御参考になりますが、高校卒業後に国内で就労を希望する外国人生徒の在留資格の取扱いについて、昨年度、入管庁の方で少し整理がなされました。
その内容につきましては、文部科学省を通じて、各都道府県教育委員会、指定都市教育委員会に通知をしたところでございます。小学校・中学校段階に在留資格家族滞在で来日し、高等学校を卒業した後、就職の内定が得られた外国人生徒につきましては、その条件によって定住者、また特定活動などの在留資格に変更することができるような仕組みとなっております。
施策の説明などは以上ですが、一応、御紹介としまして、最近の主な動きを幾つかまとめております。
28ページ、外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策、政府全体としての外国人材受入れの取組をまとめたものでございますが、平成30年12月に初めて策定されて、毎年度改定が行われています。こちらには、もちろん外国人児童生徒教育の充実、高校生の支援などについても明記されているところです。
また令和元年度には、外国人児童生徒教育の充実に関する有識者会議を設置しまして、高校段階の支援を含む様々な充実施策が提言されました。
また中央教育審議会でも、本年1月に答申が行われましたが、その中には、増加する外国人児童生徒等の教育の在り方についてが、初めて盛り込まれたところでございます。
そのほか、外国人児童生徒等教育アドバイザリーボードの設置ですとか、外国人児童生徒等の教育に関する動画の制作などについて、29ページ以降に、資料をつけさせていただいておりますので、こちらは後ほど御確認いただければと思います。
また、参考資料の1につきましては、資料3の28ページでお示ししております令和元年度有識者会議の報告の中から、高校段階の外国人生徒等の施策に関する提言の部分を抜粋したものをつけさせていただいております。
参考資料の2につきましては、中教審の答申で、同じく外国人児童生徒等の内容の部分を抜粋したものを添付させていただいておりますので、こちらは議論の中での参考にしていただければと思います。
申し訳ありません、長くなりましたが、事務局の方の説明は以上でございます。
【佐藤座長】 ありがとうございました。質問もあろうかと思いますが、続きまして議題3、検討事項及び検討の進め方について、事務局からまず説明をしていただいた上で、その後、まとめて質問の時間を設けたいと思いますので、よろしくお願いします。
それでは議題3、検討事項及び検討の進め方について、事務局から説明をお願いしたいと思います。
【小林外国人児童生徒教育専門官】 それでは説明をさせていただきます。まず、今、画面共有させていただきましたが、資料4を御覧ください。こちらについては、本会議で検討いただきたい主な事項・論点の案ということで、事務局の方で作成をさせていただきました。
まず1ポツでは、高等学校における日本語指導の制度化の必要性ということで、高等学校における日本語指導が必要な児童生徒を取り巻く課題ですとか、日本語指導の制度化の目的と、それによって期待される効果、また制度化に当たって配慮すべき事項などについてが主な検討課題・論点になるかと思いまして、このように作成をさせていただいております。
日本語指導が必要な高校生の進学ですとかキャリア支援の充実につきましては、参考資料1としてお配りしております令和元年度の有識者会議において議論をされていますので、基本的にその内容を踏まえた議論としていただくのかなと思っております。
次に2ポツ、高等学校における日本語指導の制度化の在り方です。
この四角の囲みの中につきましては、それぞれの検討事項・論点につきまして、小中学校における日本語指導のための「特別の教育課程」編成については、その制度などがどのようになっているのかを参考として抜粋しました。実際の議論の際には、この小中学校の制度も参考としていただきながら議論をいただければと思っています。
制度化の在り方につきましては、教育課程上の位置づけですとか、日本語指導の対象とする生徒についてですとか、また指導の内容、指導の実施形態、指導時間・単位数、指導計画の作成についてですとか、また単位認定、学習評価、高校ですので全日制・定時制・通信制の課程ごとの配慮というか、制度設計の違いの必要性、指導に当たる教員等について、検討事項・論点として挙げさせていただきました。
3ポツにつきましては、高等学校における日本語指導の制度化に当たっての充実方策ということで、国、教育委員会、学校、それぞれの役割での体制整備や、教員の専門性の向上ですとか、また今後の展望と課題などについても御議論いただく必要があるかなと思いまして、このような検討事項・論点をお示しさせていただいております。
また、資料5の方を御覧いただければと思います。こちらにつきましては、主な今後のスケジュールといいますか、検討の進め方について案をお示ししました。
本日が5月26日、第1回会議でございまして、この後、事例発表をしていただいて、ヒアリングですとか自由討議を行っていただければと思います。
第2回、6月14日の会議でも、また学校現場の先生方からの事例発表、ヒアリングですとか、また第2回からは、今お示しをした検討事項・論点に基づいて、日本語指導の制度化の在り方や充実方策について御議論いただければと思います。
7月19日、第3回会議でもヒアリングを予定しておりますが、こちらは文科省側といいますか、少し高等学校教育の制度的なところについて説明を行いたいと思います。ここでもまた、制度化の在り方、充実方策について御議論いただければと思いますし、この辺りから少し、論点整理の内容なども事務局からお示ししていければなと思っております。
8月30日、第4回会議では、できれば少し報告書の素案などもお示しをし、第5回会議、9月22日、こちらでも報告書案に基づいた議論を行っていただければと思います。
最終的には10月あたりをめどにして、会議の報告書の公表を行っていただければなというふうに、このような進め方で案を示させていただきました。
以上でございます。
【佐藤座長】 ありがとうございました。今、事務局から資料3、それから資料4、資料5について説明をしていただきましたが、ここまで御質問、御意見がありますでしょうか。もし御発言ある方については、挙手のボタンがどこかにあると思いますので、挙手のボタンでお知らせをいただけますでしょうか。何かございますか。
高橋委員、どうぞ。
【高橋委員】 高橋です。よろしくお願いします。ちょっと気になったのは、先ほど見せていただいた資料の中の、在留資格の変更のところですが、あの在留資格は基本的に「家族滞在の高校生」の在留資格ということなので、最初の表記のところに「家族滞在」が抜けているので、ちょっと誤解を招く恐れがあるかなと。下の方に「家族滞在」と書いてあるのですが、その辺は、「家族滞在の高校生」の制度というところで確認をお願いしたいと思います。
それから、あともう1つよろしいですか、すみません。もう1つは、この議題の中で、いろいろ今後検討する課題の中に入っている中で一番、私がもう1つ気になるのは、小学校・中学校段階で特別な教育課程が実施されている中で、そこと高校のつながりですね。そこをもうちょっと議論した方がいいのではないかと思うんです。
やっぱり中学校段階で特別な教育課程を受けている生徒が、高校に入ったその最初の段階から、特別な教育課程での個別指導計画等とか日本語の力とかを、高校段階でつないでいくというような仕組みが必要で、その辺を課題にしていただければと思っています。
今のところ、気がついたのはその1つです。よろしくお願いします。
【佐藤座長】 分かりました、ありがとうございます。1つが在留資格です。資料3の26ページ目のところは若干の誤解を招く可能性があるので、タイトルに、家族滞在を入れたらどうかということと、それから、小中との違いをどういうふうに制度設計していくのかという御意見だったと思うのですが、2番目については、この後議論を深めていきたいと思います。
そのほか、ございますか。高橋委員、挙手のボタンを取り下げていただけますか。ありがとうございます。
ほかはどうでしょうか。この制度設計、今、高橋委員の方からもあったのですが、私たちはまず確認しなければいけないのは、高校の日本語指導の実態把握ですが、この後のヒアリングで、かなり分かるのではないかと思います。
それから、今、高橋委員の方から御指摘がありましたが、小中との違いをどうしていくのか、制度設定する場合に、高校の独自性をどのように考えていくのかというのと、もう1つは小中との接続をどうするかという点です。
私は小中における特別の教育課程の制度化に関する検討会議の座長を務めさせていただいたのですが、やはり一番ネックになったのは、個別指導をどうつくるかという話でした。誰がどのようにつくるのかは高等学校も同様で難しいですね。小林専門官の話にもありましたが、定時制と全日制の場合に違うと思いますし、一番重要な点は誰が個別指導計画をつくるのかということです。さらに実際に時間数などの具体的な制度設計をどう詰めていくのかということもあります。また、高等学校での日本語指導を充実させたときに、入学時にどのようなレベルの日本語力の生徒を受け入れていくか。それから、卒業時の日本語力の判定をどうしていくのかといったように、いろいろと議論を深める必要がある論点が出てくると思います。この後、資料4のところで幾つか論点が出されておりますので、さらに議論を深めていきたいと思います。そのほか何かあれば伺いますけれども。
もしなければ、全体的な議論のところで皆さんのお話を伺いたいと思います。資料4と5については、原案どおり進めたいと思いますが、よろしいでしょうか。ありがとうございます。
続きまして、今日、非常に楽しみにしているのですが、2件のヒアリングに入っていきたいと思います。本日は角田委員と、千葉県立生浜高等学校の仲江外国人児童生徒等教育相談員から、それぞれ取組について15分ぐらいずつ御説明を頂きたいと思います。
その後、残りの時間を使って、お二人への質問を含めて、全体的な議論を開始していきたいと思いますので、よろしいでしょうか。
それでは、角田委員からお願いしたいと思います。角田先生、よろしくお願いします。
【角田委員】 こんにちは。私は東京都立町田高等学校定時制課程の教員の角田と申します。よろしくお願いいたします。
今日は、高等学校における日本語支援の取組についてということで報告をしたいと思います。報告内容としましては、日本語指導が必要な高校生の受入れ状況について。2つ目は、高等学校における日本語指導の体制。3番目は、高等学校における日本語指導の取組事例について、報告したいと思います。なお、東京都立高校の事例を中心に、今日は御報告をしたいと思います。よろしくお願いいたします。
まず、日本語指導の必要な高校生の受入れ状況ということで、先ほど小林専門官からお話がありましたが、全国的な数は先ほどありましたが、東京都立高校における生徒数はどうなっているのか、こちらの方を御覧ください。
日本語指導が必要な生徒数は、外国籍・日本籍含めまして、この10年間で約4倍になっております。全国が先ほど2.7倍ということでしたが、それ以上に東京都立高校では生徒数が増加しているということです。もちろん私立高校もありますので、その数を入れるともっと多いかなと予想されます。非常に急カーブで上昇していることが分かります。
次に、都立A高校定時制課程ですが、こちらの外国につながる生徒の経年変化、生徒総数を報告したいと思います。
こちらは日本語指導・支援の必要な生徒数以外に、この高校に外国につながる保護者あるいは出身、海外から来た生徒たちがどのくらいいるのかということで調査した数字になります。
大体生徒数は600名弱、500名台なのですが、2015年から2020年にかけて、このように毎年一定数の40、50名ほどの生徒が入学してきていることが分かります。
次に、外国につながる生徒の中で、日本語指導が必要な生徒についてです。
「取り出し人数と割合」と書いてありますが、「取り出し」というのは、初めての方もいらっしゃるかと思いますが、これは教科と同時並行に行う日本語指導の必要な生徒に対する個別学習、並行学習となります。「取り出し」という言葉についてはいろいろ意見、是非がありますが、都立高校では「取り出し」という言い方をしております。都道府県によっては別な言い方もあるかと思いますが、こちらを御覧ください。
取り出しの生徒の割合は、外国につながる生徒の中で、大体2015年が約45%。一番多いとき、2018年においては70%ぐらいになっていますということで、若干違いがありますが、外国につながる生徒がたくさん入学していると同時に、日本語指導が必要な生徒も多いということが分かります。
それで、この都立A高校定時制の日本語指導が必要な生徒ですが、ルーツ別の取り出しの経年変化生徒数です。ルーツ別といいますのは、どういう地域から来ているのかという数字になります。
御覧ください。一番上が中国のルーツの生徒たちです。母語で言うと中国語。それから、その次に多いのがフィリピンルーツの生徒たちです。母語がフィリピノ語、タガログ語、あるいはフィリピンの各地域の言語という生徒たちが次に多いことが分かります。
2017年以降は、それ以外にネパールの生徒、ネパール語を母語とする生徒たちが増えていることが分かります。その他、インドあるいはタイ、ここには載っておりませんがミャンマーとか、あるいは中南米の生徒たちもおります。この学校は中国の生徒が多く、次にフィリピンの生徒が多い。ただ、近年はこのルーツが多様化しているということが分かります。
都内の定時制高校はもっと、これ以上に多言語あるいは多国籍の生徒が多い定時制高校もあります。
こちらは、この都立A高校定時制のあるクラスの3年間の経年変化に関する資料になります。2018年度の新入生が183名おりました。1年生です。そのうち日本語指導の必要な生徒数が35名になっております。183名以上35名です。多いと思います。
こちらの高校のあるクラス、1年G組のクラスは21名でした。このうち外国につながる生徒が8名。それに対して日本語指導の必要な生徒が7名ということで、33%、3人に1人が日本語指導が必要な生徒です。
2年生から3年生になっていくのですが、在籍生徒数は21、17、14と減ってきますが、日本語指導が必要な生徒は退学しないで、割合的には増えています。
次に、このA高校の日本語指導が必要な生徒の中で、入学前ですが、日本の中学校、都内の中学校から入学してきた生徒が一番多いということが分かります。2018年は22名です。
ここで注目したいのは「ダイレクト」という言葉がありますが、このダイレクトというのはどういうことかといいますと、日本の義務教育、中学校を経由しないで、海外から日本にやってきた子供・若者たちです。
この子供・若者たちは、来日して都内のNPO等支援の団体や教室で勉強して、中学校は海外で卒業して、都立高校を受験します。こうした日本の中学を経由しないで日本の高校に入ってくる、そういう生徒、子供・若者が一定数いるということになります。こういう生徒たちもいることに注目しておかなければならないと思います。
また1年生、2年生のときに他の高校から転入してきた生徒がおります。
次に、日本語指導の必要な生徒が高等学校に入ってきたときに、どのように日本語指導が必要かどうかを把握しているのか、その方法についてですが、1つは高校生の書いたもの、書類やノート、それから高校生との面談、対話、ホームルームや授業中の活動から判断します。それから、ルビ振り入試等で入学してくる生徒もそうです。ルビ振りというのは都立高校で行われている在京外国人入試の中の1つの方法なのですが、問題用紙にルビが振られている。そういう方法で入学してきた生徒たちがいます。次に、先ほども議論がありましたように、中学校からの情報、あるいは支援者からの情報もあります。学校外との連携によって把握することができます。
課題としましては、それぞれが、先生方が自分の経験の中で判断しているということで、何か決まった客観的な基準・評価があるということではありません。それぞれの高校の経験と特性を通して把握しているということになります。
そしてこのような情報をもとに、総合的に判断して、学校は日本語指導が必要な生徒を確定し、指導体制を構築していきます。
例えば都立高校におきましては、取り出し授業という、教科の授業に並行した個別の授業があります、次に学校設定教科・科目、それから通常の授業での工夫などです。しかし全ての授業が取り出し授業になっていません。現状は、取り出し授業は一部の授業のみですので、通常の授業での工夫が求められます。そのほかに、日本語外部人材活用という、都立高校で特徴的な外部連携の制度があります。
取り出し授業の制度につきましてはこのようになっております。後で御覧いただければと思いますが、この制度は原則は日本語教育ではなくて教科教育です。あくまで、国語総合とか、あるいは現代社会の授業を分かりやすく、日本語の支援の観点を導入しながら行うということになります。ですから、高校の免許を持っている専任教員あるいは非常勤講師が対応します。都立高校の場合には、特に非常勤講師の方にこの取り出し授業が委ねられているという特徴があります。
次に、日本語外部人材活用の制度事業ということで、放課後あるいは休み時間等に、高等学校教員の免許を持たなくても生徒を教えることができるもので、地域の支援者等にお願いする制度事業があります。
ただ、高等学校が独自に人材を探さなければいけないとか、課題等はいろいろあります。こちらはかなり有効に、使われているのが現状です。
次は、NPOと連携した日本語指導事業ということで、幾つかの高校で、先ほど在京外国人入試というものを御紹介しましたが、都立高校には8校ありますが、そのうちの1つの高校、都立六郷工科高校は、地域のNPOに委託して、都教委からの委託事業ということで新たな授業をつくり、そこで専任の教員とNPOの方々が連携して、日本語の授業を開講している例があります。
一方、大学と連携した日本語指導の事業もあります。同じく在京外国人入試の高校では、幾つかの高校で、大学生を高校に派遣してもらい、放課後等に日本語の勉強をしたり、生徒とのコミュニケーション活動に取り組んでいる高校もあります。
さらに一部の高校なのですが、学校設定教科・科目という事業を活用しまして、市民講師の方が日本語の授業を行っているケースもあります。この場合には専任教諭とのチーム・ティーチングによって行われます。
次に日本語指導の取組事例ということで、都立B高校定時制では、カリキュラムに、学校設定教科・科目を活用した例になります。
例えば1年生のところ、左の欄ですが、「国際理解」という学校設定教科をつくります。その中に「日本語コミュニケーションA」という学校設定科目をつくります。教科と科目というのは、教科というのは国語とか地歴というのが教科ですが、その中に更に学校のオリジナルの科目をつくります。この学校では、1年生、2年生、3年生で「日本語コミュニケーションA・B・C」というのをそれぞれ開講していました。
次に、この都立A高校の場合、定時制の3部制・単位制の高校の場合ですが、学校設定科目の中に「日本語コミュニケーション」「日本語文法」「日本語漢字語彙」という科目のを合計6単位置いておりまして、自由選択授業ということで、市民講師と専任教員によるチーム・ティーチングによって開講しております。
この学校のカリキュラムを見てみますと、1年生、2年生の自由選択科目に日本語科目を置くことによって、日本語の指導体制をつくっております。そうしますと、取り出し授業が国語は2年間で4単位、それから地歴・公民科は3年間で6単位取れます。そのほかに、先ほどの学校設定科目で多くて6単位が取れますので、合計16単位ぐらい取れるような仕組みになっております。
そのほかに、この学校では放課後、講師の方、学年の先生が連携して、生徒の補習、進路学習に取り組んでおります。
その他、日本語の学習だけではなくて、居場所づくり、部活動、あるいは多文化共生学習等も必要になってまいりますので、そのような取組も求められているということで、後で資料を御覧いただければと思います。また、大切なことですが、学校の体制づくり、新たな委員会や分掌の設置など学校組織の再編成についても是非、この検討委員会の中で議論していただければと思います。
最後に、高校中退について、わたしが経験した2つの都立高校では高校中退がとても多かったです。先ほど文科省さんの方では中退率の全国平均が9%となっておりましたが、ある定時制高校は中退率が65%あるいは30%という時期もありました。このような課題事例を何とかしたいということで、この検討会で是非検討していただければと思います。
以上になります。ありがとうございました。
【佐藤座長】 角田先生、どうもありがとうございました。
引き続きまして、千葉県立生浜高等学校の外国人児童生徒等教育相談員の日本語指導員などを担われておられます仲江さんから発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
【千葉県立生浜高等学校】 生浜高等学校の日本語指導員をやっております仲江と申します。よろしくお願いします。今回、生浜高校から情報発信しておりますので、同じ日本語指導に携わっている教員等も在籍しておりますので、後で御質問等ありましたら対応していきたいと思います。
では、15分ほど時間を頂いておりますので、資料に基づいて報告を始めたいと思います。
生浜高校は、全日制と定時制のどちらも併設している学校なのですが、日本語指導は定時制課程にのみ設置されておりますので、今回は定時制の扱いについて報告したいと思います。
こちらは定時制の在籍数になっております。外国につながる生徒を正確に調査することは難しいのですが、80名程度と考えております。
こちらは、「日本語基礎」が開講して今年で7年目になりますが、開講してから昨年までの6年間の日本語基礎を受講した生徒の出身国の推移でございます。人数の増加のみならず、出身国も非常に多様化しておりまして、様々な問題が表面化しております。
それでは、いつ日本語基礎受講生が来日したかというものについて調査いたしました。
見ていただきますように、実は8割以上の生徒は中学生以降に来日しております。中学校を卒業した生徒、先ほど言われました都立高校の御報告があったと思いますが、この「高校2年編入」というのは、自分の国で高校1年生まで終わって編入したという生徒たちもおります。
つまり、10 %以上の生徒が中学生以降に来日しているということで、教科学習言語能力の習得には不十分な状況が推察されると思います。実際、私がこの生徒たちに言語使用状況を調査しましたところ、半数以上の生徒が3言語以上のトリリンガルでした。家庭内言語はL1(第1言語)、母語が中心になっておりまして、言語力に関して聞きますと、L1(第1言語)だったら8割以上が読み書きに対して「よくできる」「大体できる」と評価していたのですが、一方、日本語力に関しては半数以上の生徒が「授業中に先生の言っていることがよく分からない」「教科書がよく理解できない」などの自己分析をしておりました。
生浜高校では、外国につながる生徒への対応としまして、日本語基礎が開講した後、外国につながる生徒支援委員会などを設置しております。
また、平成31年度から令和2年度、今年の3月まで3年間、研究指定校になっておりまして、取組の幅が広がってまいりました。今回は、生浜高校で日本語基礎が設置された後、現在までの取組について報告をいたしたいと思います。
こちらが、生浜高校における外国につながる生徒への支援体制になっております。
外国につながる生徒支援委員会としましては、日本語基礎の担当教員、それと日本語指導員、進路部、教務部、健康支援部の教員がメンバーとなっております。私、日本語指導員としましては、支援計画の立案や日本語指導、また教科指導への助言や進路指導への助言などを行っております。
では、まず、この支援体制から、学校設定科目である日本語基礎について報告いたします。
やはり外国につながる生徒の学習背景は非常に多様になっておりまして、指導の方法はそれぞれ異なっております。生浜高校における日本語基礎の受講生の現状としまして、やはり母語なら自信があるけれど日本語は自信がない生徒が多い。日本語も母語も文章を書く機会がほとんどない。でも日本語が書けるようになりたいという必要性を実感していることから、日本語基礎の授業では表現活用、作文やスピーチに重点を置いております。
このときに、やはり生徒の言語リテラシーというか、生徒の言語能力にも着目しておりまして、日本語の授業ではありますが、日本語のみではなく、日本語や母語でも作文を書くような時間を設置 しております。
こちらが、学校設定科目「日本語基礎」の報告です。日本語基礎は週1回、45分を2コマ、1年間2単位で、日本語基礎は2単位のみの設置になっております。テキストは固定していません。生徒の言語リテラシーを駆使できるような環境を設定しておりまして、母語が話せる支援相談員という形で、中国語の母語話者とフィリピノ語の母語話者の方も適宜、日本語基礎の授業に入り込むことになっております。
やはり生徒の母語の力を生 かそうということで、翻訳アプリなども使っております。作文や漢字(JLPT)のレベル別、また文法、事前にテーマを与えてスピーチ活動なども行っております。
日本語基礎の特徴としまして、日本語基礎の授業で他教科の教員による授業を行っております。
こちらが日本語基礎と他教科の教員の、連携の一部です。地歴・公民の教員が、防災に関する日本語を身につけて、災害が起きる前や災害時にどのように行動すべきか判断できるようにするなどの授業や、日本の気候、国語科の教員、理科の教員、また知識構成型ジグソー法を用いた協調学習なども行いました。
この中から、国語科と理科の教員が実際に行った授業について少し紹介したいと思います。
国語科の教員としましては、日常生活で使用する語彙を身につけ、日本語で説明できる表現の幅を広げたいということで、教員が実際に書いたイラストを基に、子供たちは「上」と「下」という表現は割と知っているのですが、「手前」とか「奥」という言葉、あと「直線」「波線」「点線」などのような表現方法を学習しました。
また理科では、ふだん 食べているお菓子の包み紙の表示が正確に読み取れるかということで、お菓子の箱の裏に書いてある日本語が分かりますかという問いかけから、保存方法、賞味期限、消費期限、アレルギー表示の情報を読み取ることができるような授業も行っております。
また、外国につながる生徒たちは、日本語基礎だけではなく通常の授業で教科を受けております。そこで、生浜高校では、日本人生徒と日本語支援が必要な生徒が一緒に学ぶ中で、教員が工夫して授業を行おうということで、幾つか取り組んでいる授業を紹介したいと思います。現代社会、化学基礎、コミュニケーション英語、音楽、書道などで取組が行われました。
こちらで御覧いただいているのは、実は書道で年賀状文化について理解するときに、中国出身の生徒が書いた年賀状と、フィリピン出身のバングラデシュで授業を受けた生徒が書いた年賀状となります。
各教科の授業における取組から2つ紹介したいと思います。まず、各教科の授業における取組としましては、やはり翻訳ツールなどを活用することを進めて おります。
現代社会の授業の場合は、授業で使うプリントを前の授業のときに配付するようにしています。来週はここを勉強するよという形で、プリントを準備しております。
このときに、外国につながる生徒のみをターゲットにはしていません。希望者全員に配付しますので、外国につながる生徒でも希望しない子にはあえて渡すことはしておりません。授業が終わった後に、学習内容の要約文を配付するような形を取っております。
これが、実際に生徒が使用したプリントです。中学のときにフィリピンから来た生徒ですが、事前にプリントを受け取ったために、付箋で書いているのは、実は英語の訳を自分でして貼っております。こういうのは翻訳ツールで写真を撮ると英語訳ができるようになっていますので、このように工夫しております。
また、コミュニケーション英語の場合には、あえて英語を逐語訳するような活動もしております。授業の内容を工夫することで、それぞれの言語、英語や日本語の学習につながるという形で、コミュニケーション英語の授業もこのような形で行っております。
先ほど申し上げましたように、日本語基礎は1年間、週1回2時間だけの授業になっております。しかし日本語基礎、日本語の勉強というのはそれだけでは足りませんので、教科担任や担任と工夫しながら、進路実現に向けた日本語指導というものを行っております。
日本語学習会を月曜日の2時半から5時半までと、長期休暇期間にも学習会を行っております。このときはいろいろな先生に手伝ってもらって、マンツーマンに近いような形の勉強会を考えております。学習相談会と生徒会主催による学習会も行っております。
また、学習内容に関しましては、英語が得意な生徒も多いですので、高校在学中に英検1級まで取ろうよという形で、準2級から1級までの指導や、JLPTの学習をしております。
今回、JLPTに特化して、もう少し詳しく教え たいと思います。実は漢字の学習というのはとても難しいというか、なかなか気分が乗らないというか、目標設定しにくいですので、実践コース、基礎からコースのように、コースで分けてモチベーションを保てるような働きかけをしております。
実際に、単調で到達度が見えにくい漢字学習状況について、教員が細かく範囲を分けて、ラジオ体操のスタンプカードのように、スタンプを集めて漢字を勉強しよう、みたいな取組もしております。実際に学習するためのプリントも、教員がテキストに沿って練習用紙を作成して配付しております。
生浜高校では、JLPTに関して非常に学校全体で取り組もうというような形をしておりまして、JLPTを取得した場合の単位の認定化があります。教員に対しても、JLPTに関する情報を提供しております。
生徒の日本語力をJLPTの程度で、「あの子はまだ5級程度の漢字しか駄目だよ」とか、「大学に行くなら2級はないと駄目だね」 、「就職するなら3級だよ」 、という形で、模擬試験なども実施しております。
やはり生徒にもJLPTの学習の意識づけをして、受験を積極的に進めて おります。漢字学習の一環として、JLPT学習の時間も設定しております。
今回、外国につながる生徒の支援体制ということで、見立てシートについて御紹介したいと思います。こちらは、実は神奈川県に視察に行ったときに、神奈川で使用されていた生徒状況調査書、ちょっと名前は違うかと思うのですが、それをベースにして生浜高校で作っております。これは、外国につながる生徒の言語環境、学習環境、生活環境について担任が製作 することになっております。
見立てシートの活用としましては、外国につながる生徒に対する教師の見立ての力をつけるため、情報を共有化するため、進路指導や生活指導を充実させるため、教科指導を充実させるため、のようにしておりまして、見立てシートの記入が目的ではないです。ですから教員の方にも、「見立てシートを横にして 生徒に事情聴取するような形では使用しないでください」 ということで活用しております。
これが実際の見立てシートです。生まれた国、母語だけではなく、生徒の生育歴、学習歴も調査しております。やはりこれが生徒の学習言語及び教科学習言語能力を知るための大切なポイントだと考えます。
先ほどありましたビザの種類や、生徒の日本語力・母語力、家庭内の言語状況なども確認しております。やはり母語の習得状況も大切なポイントであると考えております。
見立てシートに担任が記入するということで、見立てに必要な情報を知る。それで実際埋められなかった情報に気づく。必要な情報を得るために何が必要なのか、情報の変化に敏感になる。長期的視野に立つ現時点での必要な指導の見極めをしようということで、生徒への指導の充実につながるように考えています。
見立ての際の洞察力、共感力、分析力を育成することは重要であり、得られた情報を多角的に分析、また教員間での情報を共有するということを考えております。
実際、見立てシートの情報共有化としまして、以前は紙媒体で記しておりました。すると更新や閲覧に手間がかかるということで、実は閲覧件数は伸びませんでした。
そこで、昨年度から見立てシートをデータ化しまして、教員サーバーからアクセスができるようにしました。すると閲覧件数がやはり伸びまして、令和2年度、昨年の11月から今年の3月まででアクセス数は57件を数えております。
見立てシートを活用するための教員研修も行っております。外国につながる生徒の現状と課題や、第二言語習得論、在留資格などの情報を、新年度新たに赴任する教員の研修の場で実施しております。今年度も4月1日に、生浜高校に新しく赴任された先生方を対象に教員研修を行いました。
これが教員研修の一例です。言語習得論や言語活動の4領域について、また第一言語と第二言語の関係などを先生方に情報提供しております。
また、在留資格についても先生方に情報を提供しております。高校卒業した後の進路につきまして、在留資格の取扱い、特に家族滞在のビザを持つ生徒たちの進路状況は非常に制限される可能性があります。そこで、3年生になってやっても間に合わないということで、1年生に入った段階で見立てシートに沿って、担任が生徒たちのビザの状況などを把握して、保護者本人と就労を考えるようになっております。
こちらは生浜高校の支援体制ですが、やはり日本語基礎を学校設定科目として設置したということで、メルクマールとして非常に重要なことだと考えます。
もちろん、外国につながる生徒支援委員会の先生方が中心となり、教科担当の先生方に話しかけたり、担任に情報提供したり、やっております。
しかし、こちらは一朝一夕に指導体制がこのように構築できたわけではありませんでした。やはり学校全体の体制として取り組むことが、日本語指導を必要とする生徒、ひいては外国につながる生徒に対する体制づくりに非常に重要だと考えます。
日本語基礎があるということで、日本語を学習しなくてはいけない生徒がいるということを学校全体に 紹介するとともに、日本語基礎があるからオーケーではなくて、やはり全体的な支援体制を構築することが大事だと考えております。
生浜高校の7年間の、今年で7年目になるのですが、取組の効果としましては、やはり教員の意識の変化ということで、教科学習の工夫やホームルームでの工夫、保護者への対応、進路指導などを考えていられるかと思います。
支援体制の構築ですが、前は生徒が「中退しない」だったのが「卒業する」、今度は「進路を確定する」ということで、出口保証ではないですが、卒業して、その後何をしようかとつなげるような体制を考えております。
情報を、見立てシートを導入したことで共有化できているのではないか。生徒同士の交流なのですが、これは特筆すべきというか、外国につながる子自体が生徒会役員にも入っていますし、生徒がやはりみんなで勉強しようということで、生徒中心の勉強会があります。ただ、これは今のコロナ禍では停止しているのですが、また落ち着けば、生徒同士の交流が活発化すると思います。
外国につながる生徒自身の学習意欲も向上してまいりました。やはり現実的な将来目標の設定や、日本語学習や教科学習に前向きに取り組む。いろいろと日本人生徒以上に進路選択の幅が広がっている現状もあります。
しかし、課題も見えております。やはり日本語基礎の教材の設定は非常に難しいです。生徒も多様であり、同じ時間に指導するための教材設定の難しさ。支援体制は構築できたのですが、担当者が変わってもいかに持続させていくかということ。
あと、進路実現を見据えた個別の指導計画。日本語力が不足している生徒への効果的な学習指導の在り方など、まだまだ解決すべき課題はたくさんあります。
教員間の見立てる力の差があるのも事実です。見立てシートを全部の教員が活用できているわけではありませんが、点から線に、線から面にということで、支援体制を構築していきたいと思っております。
生浜高校におきましては、日本の学校だから日本語で 勉強するのではない、日本語以外の言葉を使えることが生徒の個性、武器だよというような視点で取り組んでいければいいなと思っております。
これが参考資料です。御清聴ありがとうございました。
以上で生浜高校の発表を終わります。
【佐藤座長】 仲江先生、ありがとうございました。
それでは残りの時間、これから自由な討議に入っていきたいと思いますが、まず今日、とても興味深い発表していただきました角田委員と仲江相談員の発表について、御質問、あるいは、先ほど事務局から提案のあった資料4と5に関わるものでも結構でございますので、自由に発言をしていただければと思います。
なお、今回初めての会でもありますので、できるだけ多くの委員の方々に御発言いただきたいと思いますので、御発言は端的にお願いします。御意見、御質問等ある方は挙手ボタンで挙手をしていただければ分かりますので、どうぞ御自由にお願いします。
自由に何なりと、どうでしょうか。いかがですか。
では高橋委員、どうぞ。
【高橋委員】 角田先生、仲江先生、どうもありがとうございました。今、御説明いただいた中で、定時制高校で進路というところでいうと、就職を希望する生徒が多いのではないかと思うのですが、その中で、就職での進路実績とか、あとは話題に出た家族滞在の生徒の割合とかその進路の状況とか、私も神奈川県の高校から、家族滞在の進路のところでは、もう何校かから、在留資格の変更も含めてサポートしているのですが、その辺の状況とか、もちろん大学進学、専門学校も含めて、まず進路の状況が分かったら教えていただきたいのですが。
【佐藤座長】 まず、では角田委員の方から、分かる範囲で結構でございますので、お願いいたします。
【角田委員】 御質問ありがとうございます。進路実績ということで、具体的な例を1つ挙げたいと思いますが、今御質問にありました家族滞在の高校生について、法務省から出ました通知なのですが、この通知に沿って、わたしの高校では、家族滞在の生徒が今まで2名、就職が可能になって、民間の会社に無事合格することができました。
手続はなかなか大変で、行政書士の専門家や支援者など学校外の方のお力も得たのですが、何とか就職することができました。通知がなければ、就職できなかったケースです。
それから、家族滞在だけでなくて、例えば公用という在留資格もあるのですが、これは大使館等に勤めている保護者の家族が持っている在留資格で、こちらの生徒もこのままでは就職ができなかったのですが、同じように弁護士さんなど学校外の方と連携して在留資格の変更ができ、無事、昼間働きながら夜は専門学校に通うことができたフィリピンの生徒がおりました。
この通知によって、こうした在留資格の生徒たちの進路の実現が可能になった事例になります。
以上です。
【佐藤座長】 ありがとうございました。
【千葉県立生浜高等学校】 生浜高校に関しては、進路担当の教員がおりますので代わります。
【千葉県立生浜高等学校】 どうも初めまして。生浜高校のミヤザキ と申します。よろしくお願いします。私自身は、先ほど仲江からも話がありました日本語基礎の授業担当者でもあります。それから進路指導部ですので、進路のお話をさせていただきます。
本校は、先ほども話がありましたが3 部制の定時制ということで、定時制も午前部・午後部・夜間部というふうに3つに分かれております。傾向としましては、午前部・午後部の方が、専門学校を含めた進学を希望する生徒が 多いです。一方、夜間部の方は就職を希望する生徒が多いような状況にはなっております。
午前部・午後部の生徒の中には、自分の語学の力を生 かして大学進学をした生徒もおりますし、専門学校に進んだ生徒もおります。また、今問題になっていた家族滞在のところについても、専門家のサポートも頂きながら、うまく切替えができて就職できたケースというのもあります。
私が所属しているのが夜間部ですので、少し具体的な事例も御紹介できればと思うのですが、私が担任をやっていた際に、やはり外国につながる生徒がクラスの中でも一定数おりました。国としてはフィリピンになります。
それぞれの生徒が自分の進路を決定していくときに、やはり就職を選択したのですが、その際に、制度の部分ですとかそういったところではなく、やはり日本人が多くいる環境の中に自分が飛び込んでいくのが怖いということで、学校あっせん の形ではなくて、自分の知り合いのつてを頼って仕事を見つける。それは結果的に非正規の仕事だったのですが、そういった進路選択をしていた生徒もやはりおりますので、制度の部分とは別で、長く日本で暮らしていくときに、非正規ではなくて正規の仕事の方がいいんだというところをどう伝えていくのかというのは、やはり課題だと思っております。
ただ、昨年度は1人、学校あっせん の形で正規の仕事に就くことができた生徒がおりましたので、その生徒を、夜間部の中ではモデルケースの1人として、今年度在校生に対して、こういった先輩がいたんだよということで紹介していければと考えております。
今年度、やはり家族滞在の外国籍の生徒がおりますので、そういったところを今正に、今後どういうふうな進路指導をしていこうかと検討しているところです。
以上です。
【佐藤座長】 ありがとうございました。そのほか、今日は初めてですので、先ほど言いましたように、それぞれいろいろな方々から御意見いただければと思いますが、どうでしょうか。御質問、御意見、何なりと結構でございますので。角田委員ももちろん結構でございますので、どうぞ。
皆さんが考えている間に、私から質問させていただきたいのですが、角田委員の方から、日本語指導が必要な生徒の、日本語力の判定の話が出てきたのですが、どういう形で日本語力の判定をしているか、判定をどういう形で指導に結びつけているのか、あるいは、小中の場合は日本語力の判定にDLAを使っていますが、高等学校でDLAを使うことできるかどうかについてお聞かせいただきたいのと、仲江先生の方には、日本語能力の判定に見立てシートを活用している、あるいは日本語能力試験を使っているというお話でした。ただ、日本語能力試験はあくまでも結果ですので、具体的に指導に結びつけるような日本語力の判定をどうされているのかということをお聞かせください。よろしくお願いします。
まず角田先生から、よろしければお願いします。
【角田委員】 御質問ありがとうございます。本当に高校によっていろいろ違いがあると思うのですが、都立の定時制高校での経験ですと、入ってきた生徒に対して、統一的な評価の方法は行っておりませんでした。入試の成績、それから入学した当初、国語・数学・英語などのテストを行うという高校があります。こうした結果を見て、この生徒は日本語指導が必要であるかどうか、授業についていけるだろうかどうかというように、高校の教員がほとんど経験的な判断をしているのが現状です。
このため何とかしたいということで、例えば日本語取り出しの講師の先生、あるいは外部人材の方に相談しながら、日本語のレベルを把握するための方法についてこれまで提案も受けてきましたが、残念ながらまだ学校現場では統一的なものができていなかったのが現実です。
一言で言いますと、高校の担任あるいは教科の教員の経験的な判断で、日本語指導が必要かどうか判断しているのが現状です。
以上です。ありがとうございました。
【佐藤座長】 ありがとうございます。
仲江先生、よろしくお願いします。
【千葉県立生浜高等学校】 まず、外国につながる生徒に関しましては、新入生に対して、4月の新学期の前に入学許可候補者に対する説明会というものを用いて おります。そのときに、日本語基礎というのがありますよというのを特別に紹介しておりまして、以前でしたら、フィリピンの 生徒たちが、「私たちは日本語基礎で勉強しています」というようなアピールをして、日本語基礎を一緒に勉強しましょうというような形をやっていたのですが、今はコロナでそれはできないのですが、入学許可候補者説明会のときに、私とかほかの教員たちも在席しておりまして、一対一で説明するときにちょっと難しいかなというときには、横のブースで、JLPTの5級から1級までのを 用意していまして、5級程度が読めるかどうかというので、日本語基礎を勉強しませんかという誘いをしております。
外国人特別選抜制度が本校にはありますので、それで入ってきた生徒に関しては、日本基礎を取るという形で進めております。
実際の子供の日本語力なのですが、これは本当に難しくて、実は私は筑波大学の先生が開発されたSPOT子供版という、TTBJ for KIDSというのがあるのですが、そちらの方を使って、学習言語の力というのを、日本語基礎受講生に対して、テストじゃないよという形で行っております。
という形で、やはり子供の日本語力を見るのは、すごくしゃべっても読み書きできないという生徒や、黙っているけれど読み書きは得意だよという生徒がいるので、難しいのですが、まず入学許可候補者説明会が、1つのチェックする様子かなと。
あとは、日本語基礎に関しては2年生、3年生でも取れますので、1年生で入った後で、これは勉強した方がいいんじゃないかなという生徒が2年から取るみたいな形の捉え方でやっております。
以上です。
【佐藤座長】 ありがとうございました。何かほかに御質問はいかがですか。
オチャンテ委員、どうぞ。
【オチャンテ委員】 皆さん、こんにちは。遅れてしまったので、皆さんの発表を聞くことができなかったのですが、最後に生浜高校のお話を少し聞かせていただいたのですが、1つ質問があります。進路実現に向けての、月曜日の午後2時半からかな、勉強を行っているということですが、その対象となっているのは高校3年生の生徒だけなのか、全員になっているのか、質問です。
あと、ほかの皆様にも同じ質問ですが、分かる範囲で、今まで中途退学した生徒がいたなら、どういった理由で、また何が退学につながったのか、もし分かる事例があれば教えていただきたいです。
以上です。
【佐藤座長】 じゃあ、まずは生浜高校の仲江先生からお願いできますか。
【千葉県立生浜高等学校】 月曜日の日本語学習会というのは、1年生から3年生まで、制限しておりません。生浜高校は3部制定時制ですので、共通した放課後という時間がないので、あの時間に図書室で勉強していると、私のいる職員室に近いですので、プリントなどを配付して、何か質問があったらおいでという形で、自習に近い形にはなっております。
ですが、生徒たちが自分で、JLPTの勉強をしたい子、進路 の勉強をしたい子、大学を調べたい子みたいな形で、自習の時間みたいな形でやっております。
ですから、1年生から3年生まで、日本語基礎を取っていない生徒も来る場合もあります。
以上です。
【オチャンテ委員】 ありがとうございます。そうすると、クラブ活動みたいなものではなく、取りあえず参加したい人は誰でも参加できるというような形ですか。
【千葉県立生浜高等学校】 そうです、はい。ですから、バイトで来られないという生徒もいるし、毎回来る生徒もいるし、とにかく日本語の勉強を続けさせようという意識づけみたいなのもあって、勉強会という形の時間を設けています。
【オチャンテ委員】 ありがとうございます。
【佐藤座長】 中退について、角田先生、回答があればお願いします。
【角田委員】 ありがとうございます。中退の理由は本当に実に様々なのですが、やはり高校の方の受入れ体制ができていないというのが大きいと思います。授業で、例えば日本語の支援がないことで、その生徒の成績が1が多くついてしまい、高校は義務教育と違いますので、結果として成績が不振ということで、高校中退してしまう生徒がいます。
また、経済的な問題で働かざるを得ない生徒たちが多く、仕事に時間を取られ、学校になかなか行くことができない場合があります。例えば定時制高校ですと、夜、学校が10時に終わった後に、そのまま一晩中、朝まで働いていた生徒がおります。この生徒は体を壊してしまい学校に通うことができなくなりました。
あるいは教室の中で孤立してしまう生徒もいます。ですから、例えば日本語の授業と同時に多文化共生学習などに取り組み、周りの日本人生徒たちが温かく受け入れることができることで、中退防止に結びつくと実感しております。
以上です。
【佐藤座長】 ありがとうございます。
生浜高校でも、何か中退に関してお答えいただけますか。
【千葉県立生浜高等学校】 今こちらで、教員でいろいろ打合せしていたのですが、中退に関しては、やはり午前部・午後部・夜間部でそれぞれちょっと違いはありますが、中退している生徒を見ると、人間関係で悩んだというよりも親の都合で中退させられている生徒が多いです。もう卒業間近なのに、親がフィリピンに帰るから帰らなくちゃいけないというような生徒がいたり、あと、ちっちゃい子の面倒を見なくちゃいけないから出席日数が足りなくなっちゃったみたいな感じで中退している生徒が多いのではないかということで、実は理由をしっかりと調査しているわけではないですので、私の肌感覚にはなるのですが、そのような状況で、生浜高校で中退率は下がっているというような話は聞くのですが、それはやはり外国につながる子供たちの居場所を全体で考え、孤立化させないような取組が、少しは中退率が減ってきたということに関係あるのかなという肌感覚はあるのですが、申し訳ないですけれど数字として表せるようなものは今はないです。
以上です。
【佐藤座長】 ありがとうございました。ほかにどうぞお願いします。
【オチャンテ委員】 すみません、角田委員に質問なのですが、先ほど、生浜高校の場合だと中退率は少し減っているような感覚があるというような話があったのですが、角田委員さんのところの場合だと、今、一生懸命いろいろな活動を行われているようですが、何か変化がありましたか。
【角田委員】 やはり授業に日本語の授業がある、活躍できる部活動がある、進路についても、学年の先生や進路部の先生等が一生懸命取り組む。学校全体で取り組んでいくと、中退は減っていくと実感しております。そのような学校の体制が弱い高校は、私の経験ですと、やはり中退が高かったのかなと思います。
【オチャンテ委員】 ありがとうございます。
以上です。
【佐藤座長】 ありがとうございました。
山本委員、いかがでございますか。何か、御意見でも結構ですので、どうぞお願いします。
【山本委員】 ありがとうございます。両校の先生方、どうもありがとうございました。
本県でも、取り出し授業というのはやっている学校があるのですが、高校だと単位を取得して卒業していくということになるので、例えば取り出し授業で補助をしたとして、取り出しをしていない生徒との比較で、評価の方法というのはどんなふうにされていますでしょうか。同一の評価基準でやっていく、ある面、公平だとは思うのですが、取り出し授業の子にとっては、テストの問題自体が読めなかったりとか、そういうことがあると非常に難しい結果になることは大いにあるのかなと。どこの県も抱える問題とは思うのですが、各校ではどうされているのか、参考に教えてください。
【佐藤座長】 ありがとうございました。
どちらからいきましょうか。角田先生、よろしいですか。
【角田委員】 その点は、学校によっていろいろ議論がされてきました。同じ科目の取り出しクラスの生徒が成績で5を取って、通常のクラスの生徒が4を取った場合、それはどうなのかという意見もありました。現在では、その生徒が、授業の目標に対してどれだけ到達したのか、それぞれの生徒の学習の状況等に応じて評価活動をしていくことになると思います。
授業の内容あるいは試験においてもそのような観点から、取り出し授業の先生方は、学習内容や副教材、試験問題を工夫されています。学習指導や評価の在り方について、それぞれの学校で、生徒一人一人の実態に合わせて開発・工夫していくことで、生徒の学習意欲が高まり、学習の成果があがり、結果として、高校中退の減少につながると思います。
【佐藤座長】 ありがとうございました。
仲江先生、お願いします。
【千葉県立生浜高等学校】 生浜高校の場合は取り出しはやっていないのですが、生徒に関する評価ということであれば、教員の方から情報提供できるかと思いますが、外国につながる生徒の評価に関しての情報でよろしいでしょうか。
ではお願いします。
【千葉県立生浜高等学校】 外国につながる生徒ですが、取り出しは行っていないので、日本人の生徒がたくさんいる中に外国の生徒が一緒に学んでいるような状況にはあります。
評価の部分については、テストについては全く同じテストを実施しておりますので、当然、点数としては低くなってしまう現状はあります。
ただ、外国につながる生徒で、日本語がまだ得意ではないというところも考慮しまして、特別に追加の課題等を与えて、そういった取組を評価して、最終的に評価をしているというような現状にはなっております。
以上です。
【佐藤座長】 ありがとうございました。評価の問題はとても大事ですよね。高等学校で制度設計していくときにこれをどうするかというのは非常に大事な問題だと思います。
高校の場合、単位をどうするのかという点も絡んでくるので、これはまた後でしっかり議論したいと思います。
例えばアメリカなども、ESLクラスで成績が優秀であってもメインストリームだったら悪い成績がつくということはよくあります。これは同じレベルではないですが、個人の頑張りを評価するもので並列的に捉えることではないと思いますが、日本でも取り出しの場合とメインストリームの場合の評価をどうするかは考える必要があります。
山本委員、それでよろしゅうございますか。
【山本委員】 ありがとうございます。
【佐藤座長】 それでは額田委員、御意見をいただければ。よろしくお願いします。
【額田委員】 やはり取り出し授業を本校でも行っていますが、その評価の問題は大変難しいところがあります。
基本的には、次回、私の方から座間総合高校の日本語支援について報告をさせていただく中で、実際に評価の問題についてもお話をさせていただきたいと思います。
神奈川県の場合、日本語支援が必要な生徒のための入学者選抜の枠がもともとあります。在県外国人等特別募集という枠がありまして、本校の場合は10名、全ての公立高校を合わせて145名分の枠がありますので、それで入ってきた生徒たちが、主に取り出し授業ということになっていきます。日本語の授業も含めて、実際には、入ってきた生徒の日本語力というのは随分差がありますので、その差を見ながらやっているというところです。
次回は、そんなところも含めて、評価の問題、それから、この在県外国人等特別募集枠というものについての報告とか、あるいは、今日、高橋委員もいらっしゃいますが、外部の、高橋委員の多文化共生、「ME-net」と私たちは言っていますが、そこからやはり支援を私たちの学校は頂いています。そういったことについても御報告をしたいと思います。
以上です。
【佐藤座長】 ありがとうございました。こういう形で出していただくと、何を我々が検討しなければいけないのかという項目が出てまいりますので、少し幅広い意見を伺いたいと思います。一通り伺いましたので、あとまたどなたでも結構です。いかがですか。どうでしょうか。
では高橋委員、どうぞ。
【高橋委員】 ではお願いします。日本語の授業の、カリキュラム上の位置づけというか、置き方がもう1つの課題もあるかなと思うのですが、神奈川の定時制の場合、いわゆる昼間の時間帯において、選択という形で日本語の授業を置くというようなケースも結構あるのですが、例えば全日の場合はなかなかそれが難しくて、そうすると特に1年生で必修科目が多かったりすると、どういう形で日本語を置くのかということも、神奈川の場合はすごく課題になるのですが、もし、ほかの生徒と一緒に日本語を設定する場合に、何か工夫をされているか。例えば裏番組の、神奈川では例えば歴史・地理とかと組み合わせて選択し、地理を2年生で選択するみたいな形を置いています。あと、国語総合という科目と日本語ってかなり密接なのですが、この国語総合の運用をどういうふうに日本語と絡めるかということも大きな課題かなと思うのですが、あくまでも国語総合は国語総合だと思うのですが、ただ、国語総合の授業を理解するためにはやっぱりどうしても日本語というものが必要になるので、そこをどういうふうに組み合わせていくかみたいなことをお聞かせいただければと思います。
【佐藤座長】 どなたか、どちらでも結構ですのでお願いします。
【千葉県立生浜高等学校】 生浜高校の方は、来年度からカリキュラムを、時間割の変更を今、考えておりますので、それについて、日本語基礎が何を組むかというのを、担当の教員から報告してもらいます。
【千葉県立生浜高等学校】 日本語基礎を担当していますイシバシ と申します。教務部でもあります。
来年度なのですが、 生浜高校は自由選択制の授業形態をしていまして、子供たちが自分で必要な科目を取るという形ですので、今、水曜日の5、6、7、8というところで、裏番組で例えば芸術の代わりに取るというような形で運営しているのですが、来年度からは国語総合と組み合わせることによって、子供たちが困るのは国語総務とか社会関係の名詞等が分からないという部分で困るということで、1年目は日本語基礎を先にやってしまって、国語総合が後に回っていくというような形で授業を組んでいくという形になっています。
以上です。
【佐藤座長】 角田先生、お願いします。
【角田委員】 定時制高校でも、学年制と多部制単位制の高校では違いがありますが、ある学年制の高校の場合、授業の始まる前に、日本語の選択授業を置いていました。多部制単位制の場合は、1部の生徒が2部の時間帯の授業を取ったり、あるいは3部の生徒が2部の時間を取ったりするなどの選択することができる弾力性があります。
【佐藤座長】 高橋委員、よろしいですか。
【高橋委員】 国語総合との関係は、角田先生のところはどうですか。
【額田委員】 よろしいですか。同じ神奈川県ですので、申し訳ありません。座間総合高校の場合、この在県特別募集、我々は「在県」とよく言っているのですが、この特別募集枠で入ってきた生徒たちの国語総合については、国語の先生と日本語の先生で教えています。実際には日本語指導もかなり入り、もちろん国語の授業もやるというような形を取っています。入学してきた1年次については、その後放課後に日本語補習というものがあります。そこで日本語の授業を実際にはやっているという形です。
それで、2年次になると、「日本語I」「日本語II」という学校設定科目があります。この日本語I、日本語IIというのはなぜ2年生に同時にあるのかというと、これはレベルによってなんです。だから、あまり日本語能力が高くない子は日本語Iを取る。そうじゃない子は日本語IIを取る。
それで3年生になると、今度は「日本語II」と「日本語上級」という学校設定科目があります。日本語IIが2年生で終わった子は日本語上級、日本語Iをやった子は、基本的には日本語II、よっぽどできるようになっていた場合は上級に行くこともありますが、というような形で日本語指導を行っています。
基本的には、日本語検定のN1とかN2を目指させてはいるのですが、大体そんなにたくさんは受かりません。毎年N1が1人か2人、N2も2、3人といったところが現状です。
以上です。
【佐藤座長】 ありがとうございました。今の教育課程上の位置づけはかなり大事な話で、小中学校の場合には正規の授業の中に日本語を位置づけましたが、高等学校の場合、学校設定科目や自由選択科目などいろいろなところに位置づけられる可能性もあります。
ただ、今、額田委員の方から放課後という話がありましたので日本語指導を正規の教育課程に位置づけていく必要もあります。
内容については、それぞれ個々の指導計画の中に位置づければいいわけですから、内容はそれぞれ多様性があってもいいと思うのですが、制度設計する場合に、教育課程上の位置づけをどうしていくのかは重要になってきますし、定時制と全日制で果たして同一でいいのかどうかというような議論も大きな検討課題だろうと思います。
ほかに何か、この際ですから、何かもうちょっとこんな議論が必要なのではないかというようなことがあれば、是非出していただければと思います。
角田先生もどうぞ、委員ですのでどうぞ自由に意見を述べてください。
【角田委員】 ありがとうございます。日本語指導の必要な生徒たちにとっては、取り出し授業や日本語の選択授業は学校の授業全体の一部分でしかなく、高校には他に理科や家庭、体育・保健、芸術、さらには選択の授業など実に様々な授業があります。しかし、対応する取り出し授業がない授業がほとんどです。さらに、生徒が孤立しないで一緒に学ぶ日本語支援のある多文化共生の教育プログラムも必要です。このような実践例がありましたら御紹介いただきたいと思います。
【佐藤座長】 分かりました。もともとこの特別の教育課程というのは、個別の指導計画をつくるということで取り出しを前提にしているわけですが、今のお話ですと、在籍学級に在籍したまま、教師が特別に指導計画をつくって、一緒にやりながら何かを支援するというようなことも可能性としては考えられるかもしれません。いろいろな可能性があると思います。
今のお二人の御発表を伺っても、多様ですよね。こうした多様性の中でこの制度化をするというのは、一元化するということにもなりかねないので、この多様性をどう生かしていくのかということですよね。
小中学校の場合もそういう議論があったのですが、しかし、やはり学校の正規の授業として位置づけることが必要だろうということで、特別の教育課程の制度化に至ったわけですが、高等学校ではこの多様性をどう生かしていくのかということは、すごく大事だろうと思います。
ほかに何か。もうお1人、ないし2人ぐらい、御意見を伺えますけれど。
オチャンテ委員、どうぞ。
【オチャンテ委員】 ありがとうございます。小中学校と違って高校だと、例えば総合学科とか、特色のある高校とかもあります。資格に向けて頑張っている子供たちも中にはいますし、定時制高校も普通科とかあるので、多分いろいろな指導、可能性が出てくると思うんです。
例えば特別措置で入学した子供たちで、来日間もないのような子供たちの日本語指導と、日本生まれの子供たちで、ある程度会話はできるけれど、実際、その力のままで社会に出ていくのか、正社員としてうまくいくか、大学に進学できるのかということも、やっぱりまだまだ日本語に課題が残ったままの子どもがいます。日本語の指導の対象は、来日したばかりの子供たちとそうでない日本生まれの子どもになります。例えば私もいろいろな高校生と関わるのですが、やはり来日して間もないの子どもの場合、母語ができる子供たちだと、日本語が分からなくても自分の意思を何とか伝える、自分の思っていることとかをどうにかして伝えることができるのですが、日本生まれの子供たちの中には、それさえも言えない。何が分からないのか、自分の意見を出せない子どもという2つのパターンにはっきり分かれるんです。
それで、両方の子供たちにどんな日本語の指導が必要なのかということも、どんな指導ができるのか、高校として、社会に出て行くために必要とされる力を獲得できるような支援がいいのかということも、併せて考えなければならないかなと思います。
【佐藤座長】 ありがとうございました。貴重な意見ですよね。是非、そういう観点からも議論が進めばいいと思いました。
ほかにいかがでしょうか。高橋委員、どうぞ。
【高橋委員】 まず、先ほど佐藤委員もおっしゃった多様性というところを考えると、高校の場合は、日本学術会議の報告でもあったのですが、やっぱりコーディネーター的な学校での役割というところが重要になってくるのではないかなと思うんです。
神奈川でも多文化教育コーディネーターというのを県の事業として、今、県立高校22校に派遣しているのですが、やはりコーディネーター的な俯瞰する役割の人たちと学校の教員が協力して、本当に学校ごとに多様な生徒の状況を把握して支援する仕組みというのがもう1つあることを、何か制度の中に組み入れるようなことがないと、日本語指導担当で入った人は日本語指導だけとか、進路担当は進路だけとか、そういうことになりがちなんです。特にいろいろ細分化されていますから。
そこをどういうふうに、全体像を見て、特に中退だとやっぱり家庭状況も含むので、場合によっては福祉の機関とかと連携するケースも出てきますし、あとは、進学や就職の場合は企業とか大学と連携する可能性も出てくるので、スクールソーシャルワーカーとの連携とかそういうことも出てきますから、東京は今、ユースソーシャルワーカーの制度がありますよね。また、コーディネーター派遣も4校で始まったと聞いていますから、その辺との連携も含めて、どういう仕組みが必要だというのは是非議論していただければと思います。
【佐藤座長】 ありがとうございました。今のも非常に貴重な意見です。多分この特別の教育課程をいかに運用していくのかというところに関わってくると思います。特別の教育課程の制度設計、これには法律の改正も必要になってくるかもしれませんので、そこに焦点を当てながらも高橋委員のおっしゃっていただいたような仕組みも必要になってきますので、この後議論を深めていきたいと思います。
それから、冒頭で御説明がありましたが、東京学芸大学にこの教科に関わる日本語教材の開発、あるいはガイドラインの作成を依頼しているということですので、それらとどう関連づけるかも検討する必要があります。あるいは国語総合などともどうリンクさせていくのかという議論も必要です。しっかりとした制度設計をしつつ、その制度をいかに柔軟に運用していくのかという視点で議論も深めていきたいと思います。最後の課題のところに、是非こうしたものは載せていければと思います。
今日、第1回目の議論でしたが、お二人の御発表で、大変示唆を得る論点が出していただきました。次回は、額田委員、山本委員から御発表いただけるということでございますので、評価の問題なども含めて、私たちが議論すべき論点が更に出てくると思います。
今日出てきた論点については事務局の方で整理していただければと思います。
活発な議論をしていただいてありがとうございます。時間が迫ってまいりましたので、第1回の会議はここで終わりにしたいと思います。
御意見あろうかと思いますので、発表についての御意見、あるいは御質問等があれば、会議終了後で結構ですので、メールで事務局までお願いします。
小林さん、よろしいですね。
【小林専門官】 はい、承知しました。お送りいただければと思います。
【佐藤座長】 それでは、本日は改めて、限られた時間の中で積極的に御発言いただいてありがとうございました。御発表いただきました角田委員、仲江相談員におかれましては、本当に御多忙の中、ありがとうございました。
それでは、時間になりましたので、最後に事務局より連絡事項があればお願いいたします。
【小林専門官】 それでは、次回開催につきまして御連絡させていただきます。次回の開催日時につきましては、6月14日、月曜日、13時から15時を予定しております。本日の会議に引き続きまして、次回もウェブ会議での開催とさせていただきたいと思います。
額田先生から事例発表ということを御案内いただきましたが、次回の会議につきましては、額田委員、山本委員から、それぞれの学校や県でのお取組について御紹介いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
以上でございます。
【佐藤座長】 今日、角田先生、仲江先生、どうもありがとうございました。改めてお礼申し上げます。
また、額田委員と山本委員については、次回よろしくお願いしたいと思います。
まだコロナの状況が大変厳しゅうございますので、それぞれ皆さん、是非健康に留意して、また次回、お目にかかれればと思います。
今日の会議はこれで閉会したいと思います。どうもありがとうございました。


―― 了 ――
 

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