外国人児童生徒等の教育の充実に関する有識者会議(第5回) 議事録

1.日時

令和元年10月28日(月曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省9階 総合教育政策局会議室

3.議題

  1. ①就学状況の把握に向けた方策、②就学促進に向けた方策、③外国人児童生徒の高校進学の促進方策(委員からのヒアリング)
  2. ヒアリングを踏まえた意見交換
  3. その他

4.議事録

【佐藤座長】
 おはようございます。定刻になりましたので,ただいまから外国人児童生徒等の教育の充実に関する有識者会議(第5回)を開催させていただきます。
 お忙しいところ,お集まりいただき,ありがとうございます。
 なお,カメラの撮影は,冒頭の頭撮りのみとさせていただきます。よろしくお願いします。終了のタイミングはまたお声をかけさせていただきたいと思います。
 では,早速,配付資料,議事の確認等に移りたいと思いますけれども,事務局よりお願いいたします。

【林調査官】
 では,配付資料・議事の確認等に移ります。本日の配付資料ですけれども,お手元の議事次第のとおりでございますが,参考資料として,先月の9月27日に公表しました「外国人の子供の就学状況等調査」,「日本語指導が必要な児童生徒受入状況等に関する調査」の結果を参考資料として付けております。
 また,これまでの有識者会議の資料は机上に御用意しておりますドッチファイルにてとじておりますので,議論の際に適宜御参照いただければと思います。
 本日の議事につきましては,資料3を御覧いただければと思います。主な検討事項ですけれども,2番,「外国人児童生徒の就学・進学機会の確保」ということで,就学状況の把握に向けた方策,就学促進のための制度的・運用的方策の在り方,外国人児童生徒の高校進学の方策ということで本日は議論をお願いしたいと思っております。
 まず愛知淑徳大学の小島先生,オチャンテ先生から御発表を頂き,その後意見交換としたいと思っておりますけれども,意見交換に当たりまして,資料4を御覧いただければと思います。事務局作成のメモを作っております。簡単に説明させていただきますと,1番,「就学状況の把握に向けた方策」ということで,教育委員会による外国人の子供の就学状況への支援としてどのような方策が考えられるかということで,例として9月27日に公表しました「外国人の子供の就学状況等調査」,ここで把握した先進事例の横展開,次に,「定住外国人の子供の就学促進事業」,これは補助事業ですけれども,各自治体が行う就学状況調査,就学促進の取組に対しての補助の拡充,見直し,あとは,出入国管理庁や市町村住民基本台帳部局との情報の連携,例えば出国情報の共有など。
 二つ目,黒丸として,外国人の就学状況を把握していない自治体もある中で,何らかの制度的な対応を図ることも考えるべきかと。その場合の具体的な方策や課題は何か。例えば教育委員会が外国人の子供の就学状況を把握することや就学促進に関する取組を行うことを義務付け,又は外国人学校に通う子供の保護者に対して教育委員会に就学状況を報告することを義務付け,外国人児童生徒等についても学齢簿の作成を義務付け等。次に,「日本語教育の推進に関する法律」,今後,同法律に基づく基本方針を作ることになっていますけれども,その中でこうした観点を盛り込むべきと考えられるか。
 2番の「就学促進に向けた方策」では,就学促進に向けた制度的な対応として,日本人の保護者が負う就学義務に準じて,子供を教育機関に通わせる等の何らかの義務を外国人の子供の保護者に対しても課すことは考えられるか。その場合,どのような論点があるか。例えば外国人学校での教育や家庭学習を含めるか。その場合,外国人学校や家庭学習をどう定義するか。それらにおける教育の質をどう担保するのか。在留資格や在留期間を考慮する必要があるか。外国人に何らかの義務を課す場合に,各国の理解を得て,各国の義務教育制度との整合性,特に教育課程の調整をどのようにとるか。何らかの義務を課した場合に,受入れ環境の整備や学ぶ者に対する支援をどのようにするか。学校教育法第一条で定める学校に通う場合と教育機関で学ぶ場合の整理や財源について。何らかの義務を課した場合,修了認定の基準や効果をどのようにするのか。次のページに行きまして,地方出入国在留管理局の窓口等で就学案内をすることは考えられるか。
 3番,「外国人生徒の高等学校進学の促進方策」についてですが,一つ目の丸としては,外国人生徒の高校進学等を促進するために,高等学校入学者選抜においてどのような取組が考えられるか。例えば高等学校入学者選抜における特別定員枠設定,拡大,高等学校入学者選抜における特別の配慮の実施,編入学試験の弾力的実施,また,各都道府県での先進事例についてどのような手段をとれば効果的に全国展開を図ることが可能となるか。補助金等のひもづけですとか,公表等。
 二つ目の黒丸として,高等学校進学後の学習支援として,高等学校においても外国人生徒の特別の教育課程の適応対象とすることについてどう考えるか。
 三つ目として,外国人学校を卒業した者に対する高等学校入学資格の取扱いが都道府県により異なっている中,県等が当該資格付与により適切に行う方策についてどう考えるか。
 四つ目として,現在文科省の補助事業「帰国・外国人児童生徒等教育の推進支援事業」の補助メニューの一つとして実施している「外国人高校生に対する包括的な教育・支援」,今年度は静岡県,三重県,川崎市,新潟市,大阪市,豊橋市の6自治体で実施していますけれども,当該補助事業の活用も含め,学校と自治体内,関係部署,国際交流協会等の外郭団体,NPO等の民間団体等の関係機関との連携をどのように図るか。特に地域にどのような関係機関があり,どのようなリソースを有していること,教育委員会,学校側でどのように把握するか。関係機関側からアプローチを図りやすくするために,教育委員会・学校側で講ずべき方策はあるか。
 一応参考で高橋先生の団体の取組を記載させていただきました。こちら,後ほどの議論で参考にしていただければと思います。
 説明は以上です。
 カメラ撮影についてもここまでとさせていただきます。これ以降はカメラの撮影は御遠慮ください。
 以上です。

【佐藤座長】
 ありがとうございました。それでは,議事に入りたいと思いますけれども,お二方から発表をしていただきます。その発表に基づきながら,今,事務局から説明がありました資料4のような論点に沿って議論を進めていきたいと思っております。よろしくお願いします。
 それでは,まず資料1,「外国人児童生徒等の就学・進学機会の確保」についてと題して,愛知淑徳大学の小島先生に説明をお願いします。二,三十分程度でお願いできれば有り難いです。よろしくお願いします。

【小島准教授】
 皆さん,おはようございます。愛知淑徳大学の小島でございます。本日はお時間頂きましてありがとうございます。
 また,この二十数年間,不就学の子供たちの解決に向けてということで取り組んできた者として,9月に発表された就学調査について御尽力くださった関係者の方々に大変敬意を表したいと思います。
 ですけども,そこに至っての研究に携わってくれた可児の子供たちのおかげでここまで来たのかなということにも感謝しつつ,また,今回の調査に至って御尽力くださった関係者の方々に大変敬意を表したいと思います。
 では,資料の方を御覧いただきまして,こちらの方進めていきたいと思います。今回,会議に至りまして,2点の点について御依頼いただきましたので,この点に基づいて進めていきたいと思います。
 では,1点目の「就学状況の把握と就学促進のための制度的・運用的方策」という点について進めさせていただきます。過日の調査の報告によりますと,約6人に一人が教育にアクセスできていないという結果が発表されたというのは大変ゆゆしき事態なのかなと感じております。といいますのも,日本ユニセフのホームページによりますと,今,世界の中で大変経済的に厳しい状況の中で教育にアクセスできていないという地域の中で最も高いのがサハラ砂漠の南側であるアフリカ地域である。そこが約5人に一人であるという状況です。日本に暮らす外国人の子供たちとサハラ砂漠の南に住むアフリカ地域の子供たち比率はほぼ同じ状況であるのです。
 そのため,まず求めるところについては,国の姿勢を全ての子供が学ぶ権利というところの保障を掲げていただきたいというのが一つであります。
 そこに至って,自分自身が取り組んできたことを例に説明します。
 私は岐阜県可児市という,総人口約10万人のまちであるんですけれども,そこで2年間の就学実態調査を行いました。2003年から2004年までの2年間にかけていったんですけれども,この就学実態調査を踏まえまして,2005年度からは,14年前になります,可児市長は不就学ゼロを掲げまして,取組を開始しました。
 開始した取組,行った取組というのが,主な点が,記載してあります4点になります。まず1点目が,コーディネーターの起用が始まりました。この就学実態調査を行うに当たって,関係者たちと協働で行ったということから,この調査を行ったことによってお互い顔が見える関係になったんですよね。この関係を崩さないように,そしてそれを連携という形で行っていくことで不就学ゼロになっていくのではないか。そして,その間の接着剤としての人がポジションとして必要ではないか,そんな議論からの着想でした。
 子供たちやその保護者をすぐに変えることはできない。でも,行政からできることをやっていこうよと。いう点が主立った動きの一つです。そして,外国人の子供たち一人一人に福祉的なソーシャルワーカーのような視点も必要だろう,そんなところでコーディネーターの起用が始まりました。その初代コーディネーターに私,起用いただきまして,この年から教育委員会の一員として不就学ゼロに取り組んでいったわけです。
 2点目です。行ったことの具体的内容として,庁内の連携での就学手続の促進を行いました。といいますのも,就学実態調査,2年間かけて3度行ったんですけれども,その3度,実態調査を行う,同じ対象者を3回,時間をかけていった結果,その中で不就学になっていく子たちの中の比率として,就学手続のときに,新規来日した子供や可児市に新たに転入した子供たちからの不就学も多かったのです。でしたので,まずは庁内でできることということで,就学手続時に対して,全ての対象者に就学案内を行うということをしました。住民手続を行う市民課が,当時は1階にあり,教育委員会は4階にあったんですけれども,全ての人たちを4階に案内していただくということを行ったんですね。
 と同時に,右にあります「ようこそ,可児市へ」,この案内を多言語で作りました。こちらはポルトガル語になります。これを新たに可児市民になる手続時に提示し,そして全員を4階に案内していただく。そして,教育委員会の窓口で就学手続を行いながら,併せて就学状況の把握を同時に行うという形にしました。
 ですので,このときに外国人学校等の方を希望する方については,そのように記入し,それ以外の方についても,教育委員会の窓口で全て把握する。
 ですけども,当初始めた頃については,市民課が把握する学齢の子と,こちら,教育委員会で把握する子たちに差が出たりしてしまったんです。ですので,その子供たちの名前等を照合し,把握できていない子供については個別訪問を行うことで,全ての子供の就学実態把握をしました。
 時間帯の工夫というのがとても個別調査では必要だなということが就学調査のときには分かっていましたので,昼間に行っても,保護者とは会えません。その時間は大変工夫が必要でした。
 では,そのときの状況が,もう今から14年前になりますけれども,NHKの「クローズアップ現代」さんで放送されたものが今NHKさんのウェブにアップされているものですから,当時の状況を御覧いただきたいなと思います。
(映像上映)

【小島准教授】
 こんな形で行ってきました。すいません。この後いろいろ続くんですけれども,また御興味ございましたら御覧いただければと思います。
 こうしたことを数か月始めたところで,新たに可児市民になられた全ての学齢期の外国人の子供とその保護者が4階に上がることについては,さほど問題は庁内の中では見られなくなったという状況でした
 当時,可児の場合は,300人の方が月にいらっしゃって,200人の方が出ていくという,人口で見ていくと100人単位の外国人住民増加ではあったものの,そんな形の,いわゆる500人の人たちが移動しているという状況だったんですね。その中で就学年齢の方は約1割でした。こうした取組をすることによって,移動する子たちが,かなり少なくなっていったというのが可児で見えたことの一つでした。
 そんなことを含めながら,3点目です。行政が責任持って外国人の子供たちの教育を行っていくんだという自分たちの姿勢を見せていきたい。そんなところから,分掌規定の明示というのも変えました。これは後ほどお話しします。
 また,体系的な指導体制というのにも取り組んでいったわけです。
 そんなことを踏まえまして,強く強く強く今回求めたいところが,可児は不就学ゼロを掲げたことによって,みんなが同じ目標に向かってできたということが,「不就学ゼロ・大プロジェクト」という,仮称ですけれども,こうした共通した目標を持つことで,SDGsとしても一緒に進めていけるのではないのかなと考えます。
 そこで考えたプロジェクトは5点です。一つ目は,入国時に全ての方たちへの就学案内です。先日も名古屋出入国在留管理局長とお会いし,何か庁でもしたいというお話がありました。ですので,是非就学案内を全員にしていただきたいです。就学年齢のみならず,全ての方を含めてです。
 2番目です。全ての自治体で就学手続の促進をしていただきたいという点です。就学案内は駄目です。案内は駄目です。案内ではなくて,就学手続の促進です。といいますのも,自分たちも行ったときに,そのチラシを読めるか,読めないかによって行政サービスというのは異なってしまうというところに陥ってしまう方たちって何人もいらっしゃいました。ですので,案内ではなく,就学手続をするということの促進を,手続側を本人の自己責任じゃなくて,こちら行政側に持たせるという形が一番好ましいのではないのかと考えたところです。
 ここの例としては,各自治体の方たちに参考になるのが,重国籍の方々たちが今行っている就学義務の猶予の免除方法の方法です。各自治体に取扱い方法がありますので,それらを応用した方法であるならば,その部分は可能であるのかなと思うところです。
 3点目です。全ての自治体での訪問調査の実施です。学齢期にある子供とその保護者については,かなり移動があります。また,日中では会えない方たちも多いという状況の中で,今,厚生労働省が行っていらっしゃる居住実態が把握できない児童という調査がございますので,そことの連動ということで,かなりそこの部分は可能であるのではないかと考えます。
 この厚生労働省との連携となっていくと,4番目です。文科省の学校基本調査での項目を改善することによって,連携と連動調査の実施が可能になっていくのかなと考えます。
 項目での改善は,1点目,学校基本調査の17の項目です。今,右に四角にあります15のうち,外国人児童生徒数という形で,再掲になった形で,いわゆる総数ですね,が学校基本調査では報告するようになっています。これを,是非学年別,国籍別に変えていただきたい。そうすることによって,かなり行政側の方の数の照合が,正確に照合することができるかと思います。私が可児市教育委員会に勤めていたときには,毎月学齢簿と住民の情報について,学年別・国籍別,公立の小中学校にいる子供たちの実態を常に照合していました。ここを入れることによってかなり変わってくるのかなと思います。国はなかなかできないとおっしゃるかもしれませんけれども,私,自分が学生のときに図書館にこもり込んで調べた結果,ありました。1956年から1970年までの学校基本調査の間では,国籍別の調査が行われていましたので,私持っています。全部コピーしましたので。ありますので,かつてはやっていたという経験を踏まえますと,これは不可能ではないと思うんですね。なので,行っていただきたい。
 また,不就学学齢児童生徒調査もありますけれども,これはいろんなところで言われていますとおり,注にありますとおり,1番,外国人は,対象から除外するになっています。これを含むというふうにすることによって,1年以上の居住者の不明者や就学猶予者が分かりますので,3番の厚生労働省との調査の連動というのは可能になっていくのではないのかなと考えます。
 また,理由別長期欠席者の調査ですよね。児童生徒の問題行動,不登校等の生徒の調査というところについても,今は総数でしかありませんので,外国人児童生徒という項目を加えることによって,子供たちの実態がより見えてくるのではないのか。それによって,今後のサポートの在り方,支援の在り方等がよりかいま見えてくるのではないのかと考えます。
 そして,強く提案したいことの5点目です。これは,すぐにできることというふうに私は考えております。全ての自治体で各種の規定化の促進です。今回国が行ってくださった調査によりますと,各種規定化の整備状況というところで,教育委員会,組織等に関する規則の中で,外国人の子供の教育に関する分掌規定があるか,ないか,また,内部規定等があるかないかというところについては,明示なし,規定なしと回答されているところが多かったというのは御承知のとおりです。
 つまり,いまだに各自治体の中では,担当者任せ,担当者次第になってしまっているというのがここから見てとれるかと思います。規定がありません。また内部規定等もございませんので,そのときの担当者がやるぞとなればやってくださいます。ですけれども,そのときの市民課も変わります。また,様々な部署等で変わっていくという状況の中で,それが明文化されていないことによって,結局,そのときの担当者次第に任されているのです。思いがある方がいらっしゃったら就学手続ができるというのが現状だということが今回の調査で如実になった点ではないでしょうか。
 私が可児市教育委員会で真っ先に取り組んだことが,可児市の教育委員会の事務組織等に関する規則の改正でした。学校教育課に新たに「外国籍児童生徒の教育に関すること」を追加しました。それによって,2番です。「可児市外国人児童・生徒の学習保障事業の実施基準」と「手引き」を策定したところです。そこには,編入手続等に関わること,また,実態把握や体系的手続,各学校の役割等々全て明文化するということを行いました。
 2005年からこれ行って,14年目の今,可児市はどうなっているか。いまだに可児市が先進地と言われています。その理由は,ここにあるのかなと思っております。
 ここの中で明文化したことということが,今もその意志をずっとずっと皆さん大事にして,引き継ぐことのできる体制ができているからではないかと思います。可児市はみんな「かにっ子」という理念で行っています。
 また,昨年,可児市が外国人住民に対して市民の意識調査を行ったところ,可児市を選んだ,可児市に今なぜ住んでいるのかを聞いたところ,教育が充実しているからという点を項目に挙げた方たちがかなり上位にいらしていたというのが分かったことでありました。
 そのため,10万人都市を,日本人人口は減っているものの外国人人口は増加していますので,可児はこの10万人の人口を近年維持していられるのではと考えるところです。
 2点目になります。「外国人生徒の高校進学の促進」です。この点については,本人の努力とは関係なく進学もできないという自治体格差が大きいですので,これを即是正していただきたいということを願います。
 別紙にカラー刷りしていただきました,A3の両面で印刷していただいたものがあるかと思います。こちらの方を御覧ください。見ていただきますとわかりますとおり,措置と枠が各自治体によって全く異なる。これは〇(丸),×(ばつ),△(三角)で示したものですけれども,異なるというのがお分かりいただけるかなと思います。
 枠と措置の内容につきましては,そちらの裏面の方に用語説明とかございますので,また協力していただきました各自治体の担当者,担当課のところも全部明記してあります。
 この調査は,各地で活動されていらっしゃいますNPOや研究者等々で構成する全国組織の有志の会でして,このメンバーの一員としてこちらの委員でいらっしゃる高橋委員も神奈川の担当として活躍されているところです。
 では,先ほどの資料の方に戻っていただきまして,表1を御覧ください。こちら,抜粋ですけれども,日本語指導が必要な児童生徒の数が多い第5位のところについて比較したものがこうなります。全日制のみですけれども,見ていただきますと,措置と枠が×(ばつ)と〇(丸)で区別してあるところです。
 高校というふうに書いてあるところについては,日本語指導が必要な高校というところの欄のところから出したところなんですけれども,ここ,定時制と全日制の区分がないんですけれども,第1位の愛知県,また,第4位の静岡県については,措置が×(ばつ)であることと関係してか,高校の数ががくっと下がっているというのがお分かりいただけるかなと思います。
 ですので,私たち,今,有志の会では,こちら,措置というのがかなり進学というところに大きく関係しているのかなと考えているところです。
 また,枠が〇(丸)印に全てなっているんですけれども,その〇(丸)というのも全く地域によって異なるというところを示したのが表2になります。こちら,第1位から第3位までの状況ですけれども,定員を見ていただきますと,愛知では若干名であるものの,神奈川は115,東京については155という形で定員枠を持っていますので,こんなところも入学者の数が異なるというところと比例しているということがお分かりいただけるかと思います。
 今年度もこの調査,実施しておりまして,そこの中では,定員内,定員外という枠の考え方なのかどうかというところも新たに項目を今年は増加しているところであります。
 このことを確認した上で,「すぐにできること!」です。次のページになります。3点提案したいと思います。一つは,今見ていただきました措置,枠ですね。公立の高校入試の中で全く自治体によって異なるというところについての是正をお願いしたいこと。とりわけ今,「特別の教育課程」の学修を終えて高校入試をする子たちが増えてきました。といいますのも,2014年から始まった「特別の教育課程」で学んだ子たちが評価されるような入試方法に全くなっていないんですよね。ですので,せめてでも最低限の指標をこの検討委員会の中で示していただきたいと願うところです。今回の文科省の調査でも,中学校で「特別の教育課程」を受けて指導を受けている生徒というのは年々増加し,約6割近くの子供たちがその指導を受けているという状況から見ても,この指導を受けている子供たちが評価される県立高校,公立高校の入試になっていただきたいと願うところです。
 二つ目です。公立高校の受験資格の扱いの統一化です。今回の文科省の就学調査から明らかになったとおり,就学の中でも外国人学校に行っている子供たちの数がかなりいたということが分かったところです。最後のセーフティーネット,つまり,日本の公立学校から外国人学校に移る子たちも多々います。そうしたところを鑑みますと,外国人学校から日本の高校に進学できる道筋を是非作っていただきたいところです。これも全国の中では自治体によって異なっています。
 先ほど見ていただきましたA3の一覧のペラですけれども,そこについては,6番目になります。下の方になりますけれども,各種学校の認可を得た外国人学校の中等部の者というところがありますけれども,そこを見ていただいてもわかりますとおり,自治体によって扱いが異なることが明らかです。
 日本語指導が必要な子供たちが多い,全国で第1位の愛知県の中では,これは対象外になっていますので,ここの図を見ていただきますと,それが顕著に見てとれるかと思います。
 各種学校認可校のブラジル学校の高校を卒業した子,また,ブラジル政府認可校の高校を卒業した子については,愛知県立大学をはじめ,日本の国公立大学に進学することが可能であります。であるにもかかわらず,今,その子たちの高校部については,中学からの卒業資格については入学できないという扱いになっているんですよね。ですので,内容ではなく,場所で判断されてしまっているということが明らかです。
 ですので,ここの点については,最低限,今,大学の入学資格については,外国人学校からの入学が可能になっておりますので,そこに準じた扱いを最低限はできるような形を願うところです。
 最後になります。高校に特化した外国人生徒の受入れの手引きを作成していただきたいというのが最後になります。といいますのも,もちろん文科省さんは外国人児童生徒の手引きを作り,今年については改正されて発表しているんですけれども,どうしてもやっぱり小中学校の方に偏っていることもあり,高校側の方からはなかなかそれが使いにくいという声が私たちの地域では聞こえているところです。
 大阪や神奈川では率先して作られているところがございますので,是非高校に特化した,小中での特別の教育課程が引き継ぐことができる体系的な指導計画を重んじた内容を是非お願いしたいところであります。
 といいますのも,2005年当時に私が関わった子供たちが高校進学することが当たり前になっていった中で,5年後に岐阜県内の公立高校卒業者を見たときに,高校を卒業する子たちがすごく少なかったんですよ。えーっと思いました。これは私たちが見ている子供たちだけかと思い,岐阜県の特別枠を持つ全高校を調べたのが2011年のことです。そうしましたところ,公立高校卒業までに行き着いた子たちというのは全部私たちの知り合いの子だったんですね。ですので,全く卒業に至る子たちが少なかったというのが岐阜の現状でありました。
 でしたので,高校での学び方,また,高校での指導の仕方というのは何か考えていく必要があるのではないかというのを持ちかけたのが2012年のことでした。ですけども,岐阜県内で最も外国人の子たちの比率が高い,可児からもたくさんの子たちが行っていた高校については,外国人の子たちに特化しての取組はできないということをずっと言われ続けました。
 でしたので,その高校に私通い続けました。そして日常の子供たちの生活を見せていただくということを何度かさせていただいたんですね。その結果,外国人の子供たちのみならず,そこでは日本人の子供たちもドロップアウトする子たちが多かったり,また,日本人の子供たちも,ひとり親世帯が多かったり,なかなか給食費や修学旅行のお金が払えなかったりという家庭もいるということを現実として見ました。
 また,日本人の子供たちのみならず,外国人の子たちはやめていく子が多かったんですけれども,やめていく理由として,自分たちは一生懸命高校に入りたいと思って小中の勉強を頑張ってここまで来た。にもかかわらず,周りが余りにもやる気がない,モチベーションが低い子たちが多い状況の中で,自分もそれに飲み込まれてやめてしまったんだという子たちが多かったんですね。日本人の子供たちもそうでしたけれども,仕事をするということがイコールお金を稼ぐということにしか結びついておらず,人が生きていく中の生きがいややりがいを知らない。進路を考えていく,次の自分の生き方を考えていくという時間がなかなか持てていない,ということが分かりました。
 でしたので,2013年度から,高校の中で,外国人の子だけじゃなくて,全ての子供たちがキャリア教育を受けられる,いわゆる生きがいというものを考えていく,働くって何なのか,そして,やりがいって何なのかということを考えていくことを重んじた教育を実践していきました。それらについては別添の資料を御覧いただければと思います。そうした結果,昨年については,文部科学省大臣表彰を受賞するまでになっていきました。
 ですので,こうした外国ルーツの子供たちの環境を整えていくということは,その子だけを特化していくのではなくて,その環境全ての子供たちを考えていった中での取組が必要かと思われます。そんなことを含めたマニュアルが今後出ていくことを希望していくところです。
 お時間になりましたので,以上で報告を終わりにしたいと思います。ありがとうございました。

【佐藤座長】
 ありがとうございました。資料4の論点の就学状況の把握と就学促進のための具体的な方策,それから,外国人生徒の高校進学の促進ということで,前半については5点,後半については3点の具体的な提案をしていただきました。
 小島先生,ありがとうございました。続きまして,資料2,「外国人児童生徒等の就学・進学機会の確保-当事者,研究者として考える-」と題して,オチャンテ委員の方から説明をお願いします。30分でお願いできますでしょうか。

【オチャンテ委員】
 まず遅れてしまって申し訳ないです。小島先生の後に発表するのは大変恐縮ではございますがよろしくお願いします。
 まず簡単に自己紹介し,私が日本に来てから生活している伊賀市の取組,そして,インタビューとかでは,特に移民第2世代の進路について,研究したことについて伝えていきます。最後に今後の必要な支援についてまとめます。
 何回か私もここに出席しているので,自己紹介も既にしているけれども,私はオチャンテ 村井 ロサ メルセデスで,日系4世のペルー人です。96年の12月に来日しました。両親が出稼ぎとして日本に来て,その呼び寄せとして96年に来日しました。最初は定住者ビザ,今は永住資格を持っています。
 日系ですので,曽祖父は日本人でした。曽祖父は明治42年に一人でペルーに渡っていきまして,その82年後両親が出稼ぎとして日本に来ることになりました。斡旋(あっせん)業者が三重県の伊賀市の工場に連れていったということで,三重県伊賀市と直接関係があるわけではなかったのですが,私が日本に来てからずっと三重県の伊賀市で生活をしています。
 当時は15歳で,中学3年生の年齢です。3人兄弟なのですけど,兄は16歳で,兄は学齢超過でした。しかし,当時の中学校の校長先生が,理解があって,その判断によって入学が認められました。そのおかげで,兄と二人中学校で学んで,卒業して,定時制高校に進学することができました。そこにわずか2か月通って,定時制高校に進学しました。
 定時制高校も全く日本語はゼロという状態で,そこでもやはり当時の校長先生の判断で,日本語がゼロという状態でも入学が認められたと。そこで恐らく校長先生から日本語ができないので1年後に戻ってきてくれと言われたら,多分挫折していたのではないかと思います。
 ですので,まず中学校に兄が入学できたということも校長先生の判断で,高校も校長先生の判断,たまたまいい先生に恵まれたおかげで今の自分がいるのではないかと思います。
 そこで毎日授業始まる前に30分間日本語の勉強をして,夏休みも日本語の勉強をすることができて,高校3年生から,たまたま近くに天理大学があって,そこのスペイン語学科の学生が支援として通訳に来るようになって,継続的な日本語を学ぶ機会が提供されて,日本語の能力試験3級,2級と合格して,大学進学を目指しました。継続的な日本語を学ぶ機会が与えられたことが大きかったと思います。
 その後,大学に進学して,大学でも,小さな大学であったため,結構学科長との個別面談とか, 1年目,2年目のときに先輩が付いて,いろいろ面倒見てもらい,あと,カトリックの大学だったので,シスターの支援があったんです。恐らく大学の2年生までは支援を受けていました。
 ですので,高校の4年間と大学の2年間,合わせて6年ぐらいの何らかの支援を受けていたということになります。で,やっと大学3年生から文章が書けるようになり,それで,卒業論文を書けるようになったという形になります。
 ですので,やっぱり継続的に日本語を学ぶ。1年ぐらいだと,確かに日常会話ができるようにはなるけれども,文章を書けるとか,授業についていくようなところまでは難しいです。なので,やっぱり私でも6年間かかりました。日本語を学ぶ機会があってもすぐに学習言語は身に付かないです。
 で,その後大学院に進学をして,5年間,三重県の小中学校,外国人児童生徒巡回相談員をさせていただきました。そこでは毎日三重県内の小学校・中学校を回って,外国籍の子供たち,どういう問題,課題があるのか,翻訳,通訳,学習支援,授業に一緒に入ったりとかもしました。あと,保護者の支援,相談とかにも乗りました。
 現在,桃山学院教育大学で講師をしています。養成大学ですので,学校の先生になろうと思っている学生と毎日関わっています。
 主な研究はこちらのとおりになりますので,ちょっと時間の関係で,また読んでいただければと思います。
 私は日本に来てからずっと三重県の伊賀市を,地元としていつも紹介しています。非常に面白いところではあって,まず外国の人が多いんです。工場も多いんです。もし行くことがあったら分かると思いますが,いろんな車関係の下請会社とか,製造業,たくさんあります。働く場所があるので外国籍の労働者が集まってきます。
 今,人口比でいうと6.16%(パーセント),20人に一人が外国人というような状況にはなってきています。
 今のところは,南米,ブラジル,スペイン語圏,ペルー,ボリビア,アルゼンチンとかの人たちは全体の約5割になっているけれども,中国は最近少し減って,ベトナムの人が圧倒的に増えています。これは日本中で同じことがあると思いますね。ベトナムの技能実習生とかが増えてきています。
 伊賀市の面白いところは,まず小さなまちですが非常に連携しています。ということで,非常に連携,例えば市教育委員会と国際交流協会とか,NPO,ボランティア団体とか,宗教団体が連携して,外国籍の子供たちだけではなく,労働者の皆さんの支援を行っています。
 例えば1993年には伊賀日本語の会が設立され,主に外国籍の労働者の日本語学校のボランティアです。伊賀の伝丸というNPOさんもあって,これは通訳とか翻訳の支援を行っています。あとは外国人の相談にも乗ったりしています。2016年から伊賀市の多文化共生センターができて,常に通訳をできる方がいて,そこにいろんな悩み相談ができます。こういうような支援団体がたくさんあります。でうまく連携されているまちです。これは一つの紹介になります。
 私が来日した96年から約23年がたとうとしています。両親は91年で38歳だった。今はもう結局65歳です。もう年金暮らししています。やはり私と同じような移民,1.5世代とか2世代は,今後保護者の老後のこととかも見ないといけないんです。まず,日本語が分からないというのだけではなく,年金暮らしといっても,例えば年間30万とか,本当に低いです。恐らくこれは今後大きな課題にはなるのではないかと懸念しています。
 では,本題の方に入ります。外国の子供たちが非常に増えているということは皆さん御存じのとおりです。で,どんどん言語・文化が多様化してきています。
 様々な背景を持っている子供たちがいます。日本生まれの子供たち,また乳幼児で来日した子供たちのケース。特にこの中には,移動する子供たちとか,母国と日本で移動したり,学習言語が育ちにくいケースにはなるかと思います。そして,学年の途中で来日している子供たちのケースの二つあると思います。
 ですので,外国人児童生徒という一つの概念の中に収めることは難しいと思います。もう既に日本しか知らない,日本で生まれて育っている子供たちも多く存在しています。また,それこそ来てばっかり,まだ来て1か月,1年以内とかの子供たちも一緒に学校の中で勉強しています。
 ですので,来日したばかりの子供たちには,初期適応の実施を,継続的な日本語を学ぶことは充実させないといけないんです。いろいろ予算のことで1年しか先生がつかないとか,つけないとか,それで,ほったらかしではないんですけど,後はどうにかして自分で勉強するしかない。そうすると,やっぱりなかなか学習言語が身に付かず,勉強についていけず,高校進学になってくると,どうしても入試試験が壁になっていくというような課題があります。
 日本生まれの子供たち,また乳幼児で来日した子供たちには,学習言語の習得と教科の指導を同時に行わなければならないんです。特に私は,大学生のインタビューを行っているんですけれども,やっぱりみんなが言うのは,日本語の指導はよく受けたけれども,その代わりに例えば社会科の勉強はしていないとか,理科の勉強はできていないとか。その時間には日本語の勉強をしていたので。で,大学生になってくると,自分が社会のこと全く分からないとか,日本史が分からないとかとよく聞きます。ですので,やはり高校の入学試験に間に合うように,日本語だけではなく,教科の学習も同時に行わなければならないです。日本語で学ぶ力を付けなければならないんです。
 あとは,自己表現をできない子供。よく現場の先生と話す機会が多いんですけれども,やはり作文を書けない子供たちが多いんです。これが入試になってくると,作文を書けないとか,点数をとれない。これはよく日本生まれの子供たちに多いんです。来たばっかりの子はまだ母語ができるので,言いたいことは片言の日本語でも言えるし,書けるんです。しかし,日本生まれの子供たちの中では,自分が思っていることをなかなか文章に表せなく,言葉にすることが難しいという課題もあり,入試試験のときには作文を書けないということがあります。
 あとは,これは何回かここでも話題になっていますが,いじめとか,差別への防止・対応,そして,自分の居場所として感じる学級・学校の課題である。例えば日本語が分からなくても,学校は楽しいとか,クラブ活動していて楽しいと思う子供たちが,うまくそのまま中学校に行って,高校に進学して,日本語が身に付いて,更に進学していくようなケースを見てきました。でも,やっぱり学校が嫌になってドロップアウトするケースもたくさんあります。
 ですので,日本語教育とか学習教育だけではなく,やはり日本人側の異文化理解とか国際理解を同時に行わねばならないんです。
 では,その次に,第2世代の若者たちの高等学校の進学についてです。まずこれは私が伊賀市で行った調査です。伊賀市と三重県ですね。高校進学に対する意識が高くはなってきていますし,肯定的にもなってきています。そのおかげというのは,行政や地域のボランティアのサポートも少しずつ充実してきていますし,そこに行くと,問題を共有できる相談相手という役割も果たしています。あとは,身近なロールモデルの存在も増えてきています。
 例えば,これは伊賀市の写真ではあるけれども,どんどんいろんな地域でも行われている学習支援教室ですね。ボランティアの教室,週1回とか,週に何回か行われている地域もあります。
 ここでは,居場所作りとか,そこに行くと,同じようなルーツの子供たちが集まっているとか,丁寧に教えてくれるボランティアの先生,いろんな年齢の先生がいるのです。
 これは伊賀市の国際交流センターが主催となって,NPOの「伊賀の伝丸」と「伊賀日本語の会」が協力して行っています。
 あと,夏休みの学習支援教室とかも,これは「奈良学園大学」の学生と私が勤めている「桃山学院大学」の学生ボランティアで,年に1回夏休みを子供たちと一緒に行う活動です。3日間,子供たちを呼んで,夏休みの宿題だけではなく,いろんな日本の遊びとか同時に行っています。これは非常に好評で,毎回保護者たちから来年もお願いしますと言われます。
 あと,これは伊賀地区の外国につながりを持つ子供たちの進路ガイダンスです。これは15年以上前から開かれているんです。どこの地域でも今行われているんですが,伊賀市の特徴としては,小学校4年生からの子供たちと保護者を呼んで,対象となっています。
 ですので,早い段階から高等学校の教育制度,入学をするための必要な情報を提供しなければならない。中学3年生からでは遅い。中学校からでは遅いということが,長年見て分かってきて,これは小さいときから高校に行くのは当たり前なことだということを保護者にも理解させなければならないんです。どうしても高等教育についてうまく理解できていない,中学校で中等教育が終わってしまう。そこから大学に進学するというような,誤った捉え方をする保護者もいるので,やっぱり保護者の考え方を変えるためには,早い段階から,小学校から高校に行かないと日本では生活は難しいということを伝えています。
 そして,同じときに,全体会では地域のロールモデル,伊賀市出身の高校生,大学生,専門学校に行っている,また社会人になった先輩の体験談,メッセージを聞く場面を設けています。これは毎年行われています。今年は400人の参加がありました。
 まず,小学校4年生からというのを,やっぱり外国籍の子供たちの保護者もそうなんですけれども,日本の教育システムが分からないし,派遣,非正規の雇用で働いている,親戚の皆さんも非正規の雇用,工場で働いていますし,子供たちが見ているロールモデルというのはそれしかないんです。お金の使い方とかが分からないとか,時給幾らだとかという生活だけではなく,やっぱり早い段階から高校に進学する意味を理解させなければならないと思います。
 そのおかげで伊賀市の進学率は,平成31年3月の進学率では97.4%(パーセント)となってきています。そして,卒業した39人のうち,地元の全日制の高校に進学したのは33人です。ですので,伊賀地区のどこの高等学校にも外国につながる子供たちが在籍しているような結果になっています。
 私が来た当時は,みんな,定時制高校にしか進学できなかったけれども,今はむしろ両親が定時制高校ではなく全日制に通ってほしいとか,保護者の思い,考え方も変わってきています。
 しかし,まだまだ課題があります。やはり学力の問題とか,入試試験の壁です。多様な将来の夢を描けない,将来への展望のない進学をすることで退学につながっていくようなケースもあります。
 将来への展望のない進学というのは,先ほども伝えたように,彼らの周りには社会人としてのロールモデルの存在が少ないんです。単純労働以外の多様な職業を持つような身近なロールモデルはやっぱり少ないです。ですので,将来何になりたいとか,本当に限られた将来の夢しか挙げられないんです。
 ですので,今後,現実的な夢として見ることができるような仕組み,将来の展望を与えるような活動が極めて必要となってきています。
 そして,中途退学につながる要因についてですが,やはり学力の問題,勉強についていけないのは一つです。あとは,進学した高校への無関心。先ほど小島先生の話にも出たけれども,本当はA高校に進学したかったけれども,学力的にはB高校に行きました。でも,B高校ではなかなか周りの子供たちが余り勉強しないとか,何か自分に合わないような雰囲気だとか,自分がやりかったこととは違う高校に行くことになったので,やっぱり関心を持てないことに繋(つな)がる。高等学校でいじめに遭ったり,経済的な問題とか,どんどん保護者の年齢も高くなって,どうしても病気がちになったりするとか,親のことを心配になって早めに仕事しなければならないという思いになってやめてしまうケースもあります。
 ですので,退学の理由はこれというのは,一つだけではなく,幾つか重なっていくんです。例えば勉強にはついていけないし,経済的な面も厳しいとかでやめてしまうんです。勉強は楽しい,でも経済的に厳しくあっても,何とかしてでもみんな卒業するんです。しかし,ついていけないとか,関心がないプラス嫌なこと言われたりとか,両親が仕事で苦しんでいるのを見て,やっぱり高校をやめて仕事するというような子供たちのケースが多いですね。
 ですので,やっぱり支援はまだまだ不十分であります。特に高校に進学してからの支援が非常に不十分であります。
 では,第2世代の進路のところに行きます。ちょっと時間の関係で,ここを簡単にまとめていくと,例えばCと書いてある高校卒業後の就職とか,うまく高校を卒業して,地元の企業,地元の会社に入社する若者も少しずつ増えてきています。正社員となるケースとかです。しかし,高校を中退する者の中には,やっぱり非正規の雇用になっていきます。
 又は,定時制高校を訪問することが多いけれど,よく言われるのは,高校としては紹介したい幾つかの企業があるけれど,そこではなく両親が勧めるような会社に就職するんですとか,なぜなのかといろいろ聞かれるんですけど,やっぱり子供たち自身は,例えば正社員の月給と非正規の時給との差が分からない。保護者も分からないと思われます。1時間時給は幾らだ,と判断します。そうすると,例えば高校が紹介するいろんな会社で,給料は少ない。最初はやっぱり少ないんです。でも,結局それがどんどんどんどん働いていくと上がっていくものなんです。それが理解できてないんです。そうすると,いや,そんなところの給料が駄目なので,やっぱり親が働いている工場とかを勧められる場合が多いんです。まずそこが分かっていないんです。そこをきちっとキャリア教育で学ばなければならないところです。恐らく日本人は,子供たちは親の姿を見ながらいろいろ学んでいくと思うんです。それがまずないんですね。
 ですので,やっぱりキャリア教育,お金の使い方でさえも分からないこともあるので,そういうことも学べるような支援とかも必要なんです。
 高校を卒業して例えば大学に進学して,そこでやっと自分の多様な能力とか強みを生かせるような,例えば日本語とほかの言語ができるからこの企業に来てほしいとか,そういうような企業が増えているんですね。自分の強みが,あっ,これだ,言葉ができるというのはどれだけ強みなのかということ,そこでやっと理解するんですね。大学生の話を聞くと,もっとスペイン語の勉強やっとけばよかったとか,もっとポルトガル語やるべきだったんだとかみんな言うんです。でも,これって,本来であれば小学校のときに,周りの日本人の子供たちが,スペイン語ができるんだ,ポルトガル語ができる,すごいんだねと言われて,もっとやらなきゃいけないという気持ちにさせるようなことはなかったということです。みんなの話では,やっぱり恥ずかしくて,なかなか学校では母語を使えないとか,母が来るたびに自分が恥ずかしくて,母が香水を付けるだけでも嫌になったとか,そういうような自分を隠すような環境だったと挙げる子供もいます。もちろん学校の中の文化というのもあるが,やっぱり強みを小さいときから生かせることによって,恐らく子供たちも,おうちでもっとママとスペイン語で話さなきゃ,ポルトガル語使えないといけないというようなことには繋(つな)がると思うんです。残念ながら,今はそういう学校にはなっていないです。自分の片仮名の名前でさえも恥ずかしくて,あえて日本名にするような子供たちが非常に多いので,やっぱりここをきちっと子供たちが自分の誇りを持って,多様な強みを小さいときから気づいて,もっとそれを生かせるような,学校の中でも生かせる場を提供しなければならないと思います。
 これは先ほど小島先生がおっしゃっていたことなので,ここはさっと行きます。やはり自治体によって温度差があります。これは残念ながらどこの地域に行くかでその子の人生が決まるというのは,聞くだけでも恐ろしくなるんです。例えば,みんな進学しているので,自分も進学する。全く進学していない地域では,本当に5割の子供たちは進学していないんです。残念ながら,そういうケースは,温度差,地域によって対応の温度差があります。
 そして,高校だけではなく,やっぱり大学にも特別入試枠が,特に国公立とかの大学での特別枠,今,学力的に,なかなか国公立を目指すこと難しい,私立の大学に行く若者が多いけれども,やはり経済的には厳しいんです。なかなか留学生としての奨学金とかも受けることもできないですし,在留資格によっても奨学金も借りられない場合もあります。
 ですので,大学には行きたい。夢を持ってはいるけれども,経済的な面で難しくて,1年工場で働いて戻る子もいれば,働いていって,そこに慣れてしまって,夢を忘れていくような残念なケースも見てきました。
 ですので,大学に進学したいというような子供たちへの支援も必要です。結局この子供たちは日本に残って働いていく若者になります。ですので,きちっと大学に進学できるような支援とか,借りられるような奨学金とか,在留資格関係なく借りられるような奨学金ももっと必要なのではないかと思っています。
 あとは,社会で活躍している若者と,保護者と同じような単純労働で不安定な生活している若者と二分されています。頑張って大学に行って,ものすごいキャリアを積んでいる若者もいれば,両親と同じような非正規の雇用で不安定な生活している若者がいます。
 彼らは文化・言語,多様なリソースを持っているんです。その強みを生かせるような環境を提供しなければならないんです。社会全体で支えるような仕組み作りとか,多文化共生とか,異文化理解などが求められます。
 今後の必要な支援について,先ほども小島先生の中であったので,重なることが多いんです。ただ,当事者として自分の体験から言いますと,いろんなマイノリティ状態である若者が,内面的にいろんな悩みを抱えています。親子関係の問題もありますし,例えばうまく継承語を話せない,なかなか親とうまく言い合わないとか,通じない,常に保護者から求められるものが大きいとか,やっぱり通訳もしなければならないです。常にいろんな情報を自分で管理しなければならない。子供でありながら親のことも見なければならないというような状態があります。これは非常に大きな負担になっているんです,子供たちにとって。
 ですので,彼らは内面的に様々悩みを抱えています。そのためにはやっぱり内面的な悩みについて理解してほしい。背景はどうなのか。例えば来る前に親と生活していたのか。日本に来てから初めて親と会う人たちも見てきましたし,それこそ国で大事に育てられたおばあちゃんと別れて日本に来たとか,本当にいろんな子供たちがいます。もちろん日本を楽しみに来ている子供たちもいるけれども。
 その背景とかを理解しなければならないんです。それは日本語指導教員,担任任せではなく,やっぱり全員で行う。保健の先生とか,スクールカウンセラー,支援員,母語支援がいると,母語支援員の先生とかで連携して行う必要があります。
 そして,これらのことを,先生になろうと思っている学生,養成大学で,今後担当することになる子供たちのことを前もって知る必要もあります。そして,実際先生になっている皆さんの研修も,体験したことがないとか,日本語分からない子供たちの対応が分からない若い先生向けの研修も今後重視しなければならないと思います。
 生徒指導を行う際は,やっぱり生徒個人,もちろん家族背景のコンテクストの中で子供を見なければならないと考えられます。
 あとは,アイデンティティーの悩み,揺らぎとか,例えば,日本人でもない,ペルー人でもない。親子のコミュニケーションツールである母語の継承とかの課題もあります。実際例えば大阪府立高校の「枠校」の中で母語を学ぶ時間もあると聞いております。ですので,母語を学べるような時間があるか,ないか。もちろんあった方がいいとは思うけれども,なかったら,母語を使えるような環境にするだけでも大きいと思います。例えば校長先生が外国語で「おはよう」とか,「ボンジーア」とかって言ってくれるだけで,周りの子たちにそれがすごく影響し,自分が母語を使っていいんだというような環境になるのではないか。
 あと,親の期待と自分の学力のレベルの相違とか,理解されない部分もあります。これは先ほど伝えたように,親はやっぱり子供たち,いろんな通訳してもらっているので,日本語が分かるはずだと思い込んでいる。そのため,勉強がうまくいっていると勘違いする保護者も結構いるんですね。で,成績が上がらない,勉強についていけないとき,何で勉強していないのと言われ,親自身からも期待が大きいですし,なかなか理解されない部分もあります。ですので,こういうことも理解していただきたいと思います。
 最後に,国籍を問わずに全ての子供たちの就学保障が求められます。どこの地域に行っても同じような支援体制が受けられる。社会に出て活躍できる若者の育成,進路の保障が今後必要不可欠となってきています。
 最後,移民第2世代,第3世代,そして今後も増え続ける多様な子供たちも将来の日本の社会を担っていく一員となります。ほぼ多分帰らない。帰る子供たちも中にはいるかもしれないけれども,ほぼみんな日本で暮らすと思います。自分も日本に23年,日本の方が長いです。ですので,恐らく何もなければ帰ることもないと思います。私と同じような移民2世代とか,移民第3世代とかの子供たちも,今後は日本にとどまるんです。ですので,日本の社会を日本人の子供たちと同じように支えていく者となります。
 日本にいる全ての子供たちが,自己実現し,自立した社会の一員になるようにみんなで連携していけたらなと思っています。
 少し早口だったんですけど,これで一旦終わります。

【佐藤座長】
 ありがとうございました。それでは,お二方の御説明を踏まえ,さらに資料4の柱も見ながら議論をしていきたいと思います。まず御意見を伺っていきたいと思います。全員から是非御意見を伺いたいと思いますけれども,まずどなたからでも結構ですが,どうぞ。

【高橋委員】
 高橋です。御発表ありがとうございました。小島先生からすごく具体的な提案を頂いたんですけれども,特に検討事項の1番,2番に関わるところですけれども,就学促進,不就学をなくすというところをどういうふうに制度化していくかというところですけれども,まず一つお聞きしたいのは,子供が就学していないところの御家庭を訪問したときに,親が就学を例えばさせない,しなくていいよと,今話題になっている虐待に近い,ヤングケアラー的な側面で,子供に小さい子の面倒見させるみたいなことで就学をあえてさせないようなケースって考えられると思うんですね。そういうときは,虐待に近い状態というふうにも考えられるんですけれども,そうすると,親は就学を望まない,行かなくていいみたいな可能性もちょっとあって,そうすると,ある程度義務化が必要になってくるのかなと思うんですけれども,その辺をお聞かせいただければと思います。

【小島准教授】
 ありがとうございます。今高橋委員がおっしゃったような事例というのは多々あります。ありました。ですので,そこは個別に話していってというところになっていくんですけれども,就学義務となったときに,就学をどう位置付けるかということで大きく関係するのかなと思います。今回の調査で分かったとおり,外国人学校に通っている子たちもかなりの数がいる。そして,今回の調査の中では,結果では,就学というところに位置付けられた外国人学校等ですので,その「等」がどのぐらいのところなのかというところも踏まえた上で,就学義務という話になっていくのかなと思います。
 ただ,外国人の子たちに限っては,就学義務というのが保護者にあるというのがとてもいいんじゃないのかなというのが思うところです。今おっしゃったような事例というのがあると,子供が選択できるような環境じゃないというのが現状ですとあるので,それを就学義務の対象を保護者にするということによって,子供が制度的に教育にアクセスできるという形になっているのかなと考えます。

【佐藤座長】
 ほかはどうですか。櫻井委員,浜松で不就学ゼロ作戦というのをやっていましたけれども,それを踏まえて御意見を頂ければ。

【櫻井委員】
 浜松の場合は,国際課が中心となりまして,不就学ゼロ作戦ということで,現在,不就学はゼロとなっておりますが,やはり就学の義務があるということ,そこがやっぱり大事かなと思います。学校に入っていくに当たって,保護者に就学させる義務がないということで,入る前に区別をされてしまっているということがあります。ある意味選択肢を与えるための就学の義務のないところというのもあるのかなと思いますが,来年度の,令和2年の1年生に対し申立てを行っています。特別永住者の権利を持っている保護者から,絶対申立てをしなきゃいけないのか,それでないと学校に入れないのかというような連絡を頂きました。そういうときには,日本国籍を持っていない人たちが外国人学校に就学するのか,それとも日本の学校に入るのか,選ぶことができる権利ですよという説明をしています。ただ,当然日本の学校に入るということを考えていた人にとっては,ちょっとそこで区別されたなという感じはすると思います。
 それから,この子は義務がある,義務がないというふうに考えて指導している先生はいませんけれども,学校の先生方にとっても,何か問題が起こったときに,この子義務ないんだよねと,もしかしたら思うかもしれません。そういうところで,学校のグローバル化というのがちょっと阻害されるのかなと感じます。多文化共生で今後はやっていかなければいけない学校にとっては,義務がないというところが少しマイナスに働いているのではないかなと思います。
 今,就学の義務というところで,もし今後,保護者に就学の義務を課すとなると,例えば在留資格がない子供というのも恐らくたくさんいるわけで,そういう子供にとって就学の義務というのはどこまで影響していくのか。公的な支援が受けられていない在留資格のない子供や観光ビザで入ってきて,それから申請をして,その申請が下りるのを待っていますという子供たちがいるのですが,早く学校に行かせるべきだなと思います。その辺のところにも良い影響があるのではと思います。

【佐藤座長】
 実態からすると,義務化という議論が可能だと思うんですけれども,義務化は一条校の位置付けや学習指導要領の規定も絡んでくるんですよね。外国人学校やインターナショナル・スクールをどう位置付けるかという議論が必要になる。だから,単純に義務化には行かないと思うんですね。その辺,分けて議論をしていきたいと思います。何らかの形で学校に行かせるべきだということは共通理解でいますが,それがイコール義務化という議論とすぐには結び付かない外国人学校は,小島先生の言うセーフティーネットワークになっているわけで,その位置付けをどうするかという議論も併せて考えなくちゃいけないと思います。ほかにどうでしょうか。どうぞ,いろんな意見を頂ければと思いますが,どうでしょうか。

【古沢委員】
 すいません。ありがとうございました。お二人の発表,非常に興味深くお聞きしました。オチャンテさんは,特に当事者でいらっしゃるので,文化,言語等,多様なリソースを持つ強みを生かせる環境を提供するというのは,本当にそのとおりだなと思いました。
 小島先生の発表の中で,質問なんですけれど,高校進学の中で,枠を設けているところと措置を設けているというところがあるんですが,私の理解では,何らかの措置をとっているところというのはかなり多いと思っていたんですが,非常に外国人の多い愛知県と静岡県で設けていないというのは,多いなりの何か理由があるのかなと思ったりするんですけれども,その辺はどのように分析されていらっしゃるかということと,あと,措置があることによってどのようなメリットがあるかというのを,措置というのは,受験生の配慮だと思うんですけれども,それをお聞かせいただければと思います。

【小島准教授】
 御質問いただきましてありがとうございます。愛知県の判断については全く分かりませんので,是非直接聞いていただきたいぐらいです。私たちも,このメンバーたちがそれぞれ各自治体にこれを調査しなから,その根拠を出していただくような形にするんですけれども,それが全く出てこないという状況があります。
 措置によってのメリット,デメリットについては,私よりも高橋委員の方が高校の先生でいらっしゃったので御存じかなと思うのですが,よろしいでしょうか。

【佐藤座長】
 知っている範囲でどうぞ。

【高橋委員】
 措置については,神奈川県の場合は,滞日6年以内で,問題の漢字に振り仮名を付けるとか,時間の延長とか,それから,あと面接試験があるんですけど,面接のときに分かりやすい日本語で面接官が対応するというような形の規定がありますけれども,大体ほかも準じたり,あとは大阪みたいに辞書の持込みが可とか,そういったいろんな県によって特徴がありますけれども,基本的にそういった措置を受けたということは,入試の段階の情報として学校で共有されますので,入った後に当然何らかの,入学後も支援が必要だということで,神奈川の場合,共通認識されて,場合によっては教員の加配とか,いろんな授業での取り出しというか,個別対応の授業の選択をするとか,あとは,神奈川では多くプレースメントテストしていますので,そのプレースメントテストの対象者に入れて,その子たちの日本語の状況を把握して,今後の授業に生かせるみたいなことを取り組んでいます。

【佐藤座長】
 よろしいですか。

【古沢委員】
 ありがとうございます。

【佐藤座長】
 特別枠と言ってもかなり厳格な特別枠の規定で,滞在何年というと,規定を受けられる子供がかなり限られてしまって,枠はあっても,実質的にメリットが受けられないという問題もあります。この枠の中身をもうちょっと調べたり,柔軟な運用が必要だと思うんですけれども,ほかにどうぞ,何か。

【田中委員】
 3点,お話を伺っていて,補足というか,気になった点なんですけれども,まず,入国時の就学案内,小島先生,言及ありましたが,出入国在留管理庁との連携というのは本当に必要だなと思っています。プラス加えて,できれば外務省とも連携をして,出国前,出身国を出国する前にある程度日本国内の教育制度の情報が届くという必要性を,特に高校入試の滞日年数の制限がある中で,現場では感じることが多いです。例えば滞日年数の制限が3年だった場合に,小学校6年生の夏ごろに来日をしてしまったお子さんなんかは,中3で受験を迎えるときに特別入試枠が使えないというようなことが出ていて,例えば9月始まりの国の場合なんかですと,そういったお子さんが,小6で,出身国で6年生終わったので来たというような,小6の9月に来たというようなケースが多くて,事前の情報提供ができると大分違うのになというようなことも多くあります。
 もう1点,これはどなたかに確認をしていただきたいんですけれども,義務教育の定義について,外国籍の保護者のお子さんが育てる外国籍のお子さんというのは義務教育の対象外であるというのは皆さん明確に認識されているところだと思うんですけれども,今,外国籍の保護者が育てる日本国籍の子供,日本国籍の保護者が育てる外国籍の子供というような存在に対して,義務教育がどこまで適用されてくるのかというところがやや曖昧なように思うんですね。なので,不就学の問題に関しても,義務教育の範囲に入っている,入っていないではなく,保護者が日本国籍であっても,子供が,国籍にかかわらず,日本語ができないので,就学の手続をさせないというようなケースなんかも出ています。その辺り,少し明確なガイドラインというか,判断がつくようでしたら,お教えいただけると,少しでもそうしたケースが出たときに,現場の混乱について,こういうことですよということをお伝えできるのかなと思っています。
 さらに,これは小島先生にお伺いをしたいんですけれども,いずれも先進ケースというのが,いわゆる集住地域における事例であり,モデルであるというところがありまして,地方,あるいは散在状態の地域において,全ての子供が学ぶ権利を保障するという観点で捉えると,受入れ体制の整備とセットで進まないことには不就学の問題というのは,就学手続上も,入学後のドロップアウトを防ぐためにも,なかなか進まないんじゃないかなと思います。そこで,小島先生の御提案になった幾つかの取組の中で,散在地域においてはこうしたような形で推進をしていく必要がある,こういった工夫があればより散在地域の自治体も取り組みやすくなるということがあれば,是非教えていただければと思います。

【佐藤座長】
 義務教育の対象者で,外国籍の子供,両親の日本国籍ってあり得るのかどうか。もしあり得るとすれば,どのようにするかについては後日,次回でも回答いただければ。じゃあ,小島先生,三つ目の話で。

【小島准教授】
 ありがとうございます。この可児の例は,集住地域と言われますが,当時取り組んだときは集住地域ではなかったんですね。なので,どの自治体も集住地域になっていく可能性がある,というところを皆さん考えていかなければならないのかなと思うんです。
 というのも,可児市が不就学ゼロを取り組むとき,集住地域の愛知県豊橋市の担当者から言われたんです。当時,外国人児童生徒が小中学校で1,000人になろうとしているというときの豊橋市さんでした。可児市の小中学校では当時は200人くらいで,外国人集住都市会議等に参加している自治体の中では少なかった地域の中でした。「1,000人になってしまったら何もできない」と言われたことも,可児市が動く要因になったかと思います。可児市では,当時外国人住民の比率が3から4%(パーセント)だった時期から,今は8%(パーセント)近くになっているところです。
 だから,各自治体で,これからの住民を考えていくことが必要です。
 ですので,学校の具体的な部分というのは,なかなか子供がいないと見えにくいものですから,ハードの部分で制度としてできるところというところを今回御提案しました。
 特に入り口の話が多かったんですけれども,就学の考え方ってどうしていくのかというときには出口も関係してくるんですよね。なので,さっきの就学義務の扱いをどうしていくかというところで,外国人は就学義務の対象ではないというところが曖昧なことが,学校をやめるという選択肢もできちゃうこと。それがまた環境として許されちゃうところにあるということも同時に議論していく必要があるのかなと思います。
 以上です。

【佐藤座長】
 よろしいですか。

【田中委員】
 はい。

【佐藤座長】
 ほかはどうでしょうか。御自由にどうぞ。じゃあ,村松委員。

【村松委員】
 きょうはどうもありがとうございました。本当にお話を聞いていて,今までは「移動する子供たち」というのが外国籍の子供たちの姿だったのが,言われて久しいのですけれど,定住化,多国籍化,そして進学,キャリアということが大きく課題になってきているというのであれば,こういう変化に対応した法令や制度というところを変えていく必要があると思いました。個人の,先ほど校長先生の判断ということがありましたけれども,今は個人の判断に左右されざるを得ないところがあると思いますので,そういうところの後ろだてになる法とか根拠というものがしっかりあるといいと学校サイドでは思います。
 さて,兵庫県も不就学の課題には取り組んでいます。兵庫県も全県で実施する中で,一番苦労しているのは,実際に日本に居住しているのかどうかという確認。とにかくコンタクトがとれた子供さんに対しては積極的に関わっていますが,なかなか居住確認ができない。実際に会うことができない。また,教育委員会のみではなかなか対応ができない。さらに,学校ではということになると,個人の情報まで踏み込んでいくことにもなる。ここの辺りも,後ろだて,根拠がありませんので,なかなか動きにくいところかなと思っています。
 そういうことを含めて,支援体制を確立するためにこそ実態把握が必要だと思っておりますので,この辺り,どこまでできるか。それこそ,人数というのは瞬間風速なので,なかなか実態がつかみにくいところはありますけれども,公立学校のニーズ,そして外国人学校のニーズというところも踏まえて,実態把握をすることが必要だなと思いました。
 あと,学力のことですが,こちらもやっぱり生徒の実態把握が必要だと思っています。今,文科省の調査では日本語指導が必要な児童生徒の定義が二つあって,全く日本語が話せない,学力の定着が十分ではないということですけれども,これもやっぱり瞬間風速の数字であって,個人の追跡ができていませんよね。今の日本語習得がどれぐらいで,1年後にはどのぐらいまで伸びているか,学習内容の定着ができているかということは,今の段階では,教師の主観に頼ることも多く,個人の個別の指導計画を立てるにしても,客観的指標に基づいた,そういう実態把握が必要だと本当に感じます。そうでなければ,今の指導体制の中でどこまでやらなきゃいけないのかということが学校では本当に判断ができにくいです。Aというレベルなのでこういう支援が必要だ,これに基づいた予算,人的配置が必要なんだという根拠が大事かなと思います。
 ただ,個別の指導計画,個人のカルテを作るとなれば,そういうことができる人材と,あと雇用の問題,配置の問題というのがとても重要になってくるかなと思います。ここは,今,文科省で,各教育委員会の担当者会などをしていただいているところではありますけれども,更なる意識化をしていただくということで,高校でしたら,県立学校の先生方が,特に高校担当の先生に来ていただく。あるいは,市町,全ての関係部署を呼ぶことはできませんので,せめて義務教育担当の指導主事が来るという研修会をやっていただけたら有り難いかなと思います。今は恐らく,高校担当,義務教育担当のどちらかが出てくることになっているかと思いますので,お願いしたいと思います。
 あと,母語が確立している生徒,例えばオチャンテ先生は中学生の時に来られたとおっしゃっていましたが,母語が確立されている児童生徒に対して,理科や社会,算数の教科書の翻訳版,そういうものがあれば子供たちの理解の助けになるなと,お話を聞きながら思いました。
 最後に,不就学の問題もありますけれども,退学や不登校ということも大きな問題かなと思っているところです。
 以上です。

【佐藤座長】
 ありがとうございました。松尾委員,どうですか。

【松尾委員】
 率直な感想なんですけど,やはりどこの地域に住んでいるかということでその子供の人生が決まってしまうというのは非常に大きなゆゆしい問題じゃないかと思います。座長もおっしゃいましたように,確かに一条校ということを考えますと,かなりハードルが高いのかなとも思いますけれども,ただ,諸外国の例を見てみますと,やはり一市民として外国人の子供たちを同等に受け入れるということで制度設計をしているところもあります。今回大きく法律が変わったということもありますので,本気になってその方向に向けて考えていく時期にあるんじゃないかなというのを非常に思いました。
 皆さん御存じのように,ヨーロッパの例とかを見ておりますと,平行社会とか言われて,日本人社会と外国人のエスニック集団の社会が平衡状態で交流がない世の中になったりでありますとか,テロの問題もあります。そういうのを考えますと,非常に危惧しております。恐らく今何とか回っているのは,NPOの皆さんの努力であったりとか,自治体の皆さんのすごい努力があって何とか回っているとは思うんですけれども,やはり制度設計をきちんとこの辺りでやっとかないと,将来が非常に不安だなというのを本日のお話も聞きながら感じたところです。
 以上です。

【佐藤座長】
 ありがとうございました。どうでしょうか,藤巻委員は。

【藤巻委員】
 小島先生のお話伺って,「不就学ゼロ・大プロジェクト」,これ,是非いろんな自治体で展開していただいたらいいと思います。浜松市の話は本日は詳しく聞きませんでしたけれども,同市も不就学ゼロのため,いろいろな取組をされています。こういう取組を全国で広げていくということがまず大事だと思うんですけれども,報告にもあったように,自治体間格差というものが非常に大きく,私も全国の外国人集住地域をこれまで取材,調査した経験でいうと,この分野というのは,熱意ある人が取り組まないとなかなか進まないと思うんですね。やっぱり教育委員会であるとか学校の先生が本気になるには,制度的な仕組みを作っていかざるを得ないと思いますので,今,松尾先生からも御指摘がありましたけれども,いろんな課題があるのは承知しておりますけれども,将来的には外国人児童生徒の教育を義務化するということですね,そういうことも検討をしていくということは大事かなと思います。
 今,松尾先生もおっしゃっていましたけれども,ヨーロッパの例なんかを見ましても,やっぱり教育を受けていない,学校に行っていない子供が将来どうなるかということを考えると,ホームレスですとか,犯罪者だとか,テロリスト,オーバーに言いますとそういう人たちを将来量産していく可能性はあると思うんですね。やっぱりそういう意味では,どこまで外国人の定住化,永住化が進んでいくか,その辺も見極めなければなりませんが,そういう将来を見据えた場合に,外国人の子供全てに教育を与える必要があるのではないか。それから,保護者の方にどのようにその辺を認識してもらうかということで,先ほどオチャンテ委員から伊賀地区の外国につながりを持つ子供と保護者の進路ガイダンスの取組を発表していただきましたけれども,こういう取組ですね。やっぱり保護者の方に,学校へ行く,それから高校へ進学する,大学に行くということで,将来の選択肢が広がっていくんだという,子供自身に夢を持たせる意味でも,まず保護者の方が日本社会の中で教育を受けることでどのように将来の展望が開けていくかということを認識してもらうことが大事だなと思いました。こういう保護者に対する進路ガイダンスの取組もこれから全国的に広げていくようなことを考えていけたらいいなと思いました。
 以上です。

【佐藤座長】
 ありがとうございました。じゃあ,内田委員,どうでしょうか。

【内田委員】
 やっぱり地域差の話というのはどうしても気になりますよね。私が関わっている地域でも,熱意がある方がいらっしゃったからこんなことが起きていてということがやっぱりあります。それはそれですばらしいことなんですけれど,やっぱり制度設計は必要なのじゃないかと思います。そして,いろんな学校の先生方とか,保育者で,真剣にやりたいときに,自分一人ではできないんだけど,そういう制度の後ろだてですとか,仕組みですとか,価値観としてそういうふうにするものだということがあれば,働きかけて,仲間をつくってということができるということもあると思いますので,何らかの方針なり価値観の共有という,制度までいけなくても,段階的に,まずこういうものだとか,何か出していく必要はあるのかなと思いました。それが1点です。
 2点目は,ビザの問題で,保育の場合,民間だったり,社会福祉法人であるとか,結構園長先生の一存で受け入れていたんだけど,小学校,あれっ,この子行けるのかな,行けないのかなということがちらほらはあるようなんですね。それはやっぱり地域の判断になっていく。そのときに,でも,目の前の子供が保育が受けられない,うちでほったらかしになっているかどうかとか,学校に行けるかどうかというところを考えたときに,子供に対してはこうするという,制度とはまた違う,子供にはやっぱりいい教育を,みんなが教育を受ける権利を持つという何らかの基本的な姿勢は要るのかなということを思ったのが二つ目です。こちらは個人的な意見なんですけど。
 三つ目のオチャンテ委員の発表にもありました進路ガイダンスですとか,それから,小島委員のキャリアのその延長線上で,私は幼児教育とか子育て支援が自分の専門ですので,そういうことを含めて,小さいときからでも伝えておけるという,そういうことを保護者が知っていることが大事なんだと。日本人の親であれば大体知っていることを御存じない。そういう情報を提供していく場は,小さいときからありますので,折に触れて少しずつ伝えるという仕組みも作っていけるといいかなと思いました。
 以上です。

【佐藤座長】
 ありがとうございました。大体一通り皆さんの御意見を承りました。さらに資料4の就学状況,就学促進に向けた方策,それから,高等学校進学の促進方法で,具体的な提案もありました。特に高校進学の促進というのはこれから大きな課題になっていくと思います。高等学校の方の支援について,きょう,小島先生からは,自治体間の格差,受験資格扱いの統一化,受入れ手引き,マニュアルの作成という具体的な提案も頂いております。この制度のすき間ができてしまいどうしても抜け落ちてしまうので,制度的なところをどうするかという話でした。実際に手引きといった対応についてきょうお話しいただきましたけれども,高橋委員,どうですか,この辺のところは。

【高橋委員】
 高校進学については,かなり教育委員会の姿勢が大きく影響しているかなと思うんですね。ですから,教育委員会の姿勢と,あとは高校側が,当然日本語が不十分な生徒が入ってくると,どう指導していいか分からないというのが本当に実感なんですね。そこの恐怖感というか,指導が困難になるんじゃないかということで壁を作っている可能性も正直ありますね。そういう意味でいうと,やはりそういった日本語指導が必要な生徒が高校に入ったとき,どういう指導の仕方が有効なのかとか,それは日本語指導だけじゃなくて,実は教科指導も含めてですけれども,どういった指導が有効であるか等々,それから,学校の中で,先ほどオチャンテ委員からもありましたけれども,周囲の日本人の生徒が外国につながる外国人生徒を受け入れたときに,プラス思考で,教育も含めてですけれども,プラス思考で学校の中で多文化共生の教育をどういうふうに具体的な取組としてやっていくのがいいのかというところの手引き,マニュアルは是非必要かな。先進的な高校の例とかもありますし,神奈川県でもいろんな取組をしていますから,そういったことを是非発信をしていくことが必要かなと。
 そういった意味でいいますと,何か仕掛けが必要かなと思うんですね。各都道府県というか,自治体ごとの教育課題をやっぱりみんなで洗い出して,どうやったら,その地域で,今ある外国につながる子供たちの教育の課題についてどういうふうに取り組んでいったらいいのかみたいな,何か会議を,やっぱりこれは強制的に僕はやらなきゃしょうがないんじゃないかなと思うんですね。会議の仕掛けを,文部科学省は必ず会議をやりなさいと。NPOも含めてですけれども,やることによって,地域の教育課題の洗い出しをしてくださいというところに踏み込まないと,なかなか地域の中では,自分一人ではできないとか,先ほどみたいなことがあったので,そこまで1回踏み込んで,あとは,日本語教育については,アドバイザリーボードの先生方もいらっしゃるので,そういうところの方を活用して,そういう会議に積極的に関わってもらうとか,文化庁の日本語教育のアドバイザーの方たちもいらっしゃいますから,そういう方たちも活用して,やっぱりより積極的に何か仕掛けをしていく時期じゃないかなと私は思います。

【佐藤座長】
 ありがとうございました。田中委員,どうですか。手引き,マニュアルにこだわらずに,高等学校段階での御意見をお願いします。

【田中委員】
 東京都はわりと入試については拡充の方向になっていまして,有り難い限りというところなんですけど,別の県の話を聞いたりすると,枠は持っているんだけど,実際には機能していない,溶けちゃうというふうに言われることがあります。2名分の枠を全ての高校に持っています。でも,入れるか,入れないかの判断は,すごく不透明で,3名受験したのに1名も入らなかったみたいなことも起きたりするんですよね。その辺り,実は都道府県レベルにお任せするだけでは解決しないような部分って実際にはあるんじゃないかなと思っていまして,何らかの形でガイドライン的なものを国レベルで示していくというのが,私,個人的には必要なんじゃないかなと思っています。
 さらに,高校進学という点でいうと,中学校に在籍をしていないお子さんで,15歳以上で来日したような学齢超過のお子さんたちの場合は,進路の情報がとても入りづらいということ,それから,外国人が高校に進学できると思わなかったというような保護者の方も少なくないことということで,進学ガイダンスのような取組というのはかなり積極的に行っていかないと,15から18歳ぐらいで何をしているのかが分からないという。この辺りは就業しているか,していないかぐらいの状況しかつかめないような部分もありますので,高校年齢相当の若者の把握みたいなところもちょっと考えていく必要があるんじゃないのかなと思います。
 更に入学後の支援については,どのような指導が有効なのかということを高校の先生が分かっていない不安というのはもちろん大きなものかなと思っていますが,日本語教育以外の点においては,一般の進路多様校の日本人の生徒さんにも共通するような課題というのを海外ルーツの高校生も多く抱えやすいのかなと思っていまして,外国人だから,そうでないからという形で分けるよりかは,ある程度既に中退予防等の観点から,高校にNPOが,外国人向けでなく,主に日本人生徒を対象とした形でも入っているようなケースというのはたくさんありますよね。高校内のカフェも,もともとは外国人向けでない部分から始まっているようなところもありますので,こうしたスキームを積極的に活用して,既に高校に入っているようなNPO等にどうやって外国人の更生にも対応してもらうかというような観点も必要かなと思いました。

【佐藤座長】
 ありがとうございました。きょう,議論の俎上(そじょう)に載っていないんですけれども,義務教育段階のこういう子供たちに対する学習保障として夜間中学の話もあると思います。こういう夜間中学,全国でまだ33校しかありませんが夜間中学に対する支援も議論の俎上(そじょう)に載せる必要があるかなと考えています。
 ほか,どうですか。よろしいですか。何かどうしても言っておきたいということがあれば。小島先生,どうですか。

【小島准教授】
 ありがとうございます。何点かありまして,一つはさっきのお話の高校入学のところですよね。高橋委員がおっしゃってくださったとおり,枠か,措置がないと,外国人の子供たちの対応というのが高校でされないというのが最も大きな点なんですよね。閉校する高校も増加している現実です。外国人の子たちも,枠や措置を使わなくても入学できるような子たちも大分増えてきているというのが実際です。というのも,定員割れしている高校が多いからですね。なので,地方都市ではそのような状況が多々あります。
 それで入っていく。なので,もう日本語指導等の対象じゃないよねという。当初から外国人の子たちじゃないというような,日本人の子たちと同じという扱いが日常化してしまっているのが高校なものですから,この措置,枠という考え方があることの地域については,入学した枠についてはそれでいけるんだけれども,そうじゃない子たちに対してどう高校側が対応したらいいのかということが,経験がなく,近年はそうした関係者からの相談がすごく多いんですね。そのため,高校に特化したマニュアルやある種の指標などが示されると,もっともっと高校側の方が変わってくるのかなと期待するところです。
 というのも,高校の先生たちと意見交換させていただく場が最近多いんですけれども,「特別の教育課程」って先生知らないですものね,高校の先生。まずそこからスタートかという話です。なので,DLAなんて全く分かりません。なので,「特別の教育課程」を引き継ぐなんていうこと自体ができないのが今高校の状況でありますので,そこから考えていくためにも,措置,枠という考え方を均一化するのと併せて,高校への何かしらアプローチというのはしていかないといけないんじゃないのかなと思うところです。
 また,日本語指導が必要だと考えられた場合,特に枠とか措置で入学した子についての対応も,悲しい状況も多々あります。というのも,日本語が分からないイコール学力がものすごく低い生徒という扱いがいまだあるのです。ある高校では,あいうえおから始まったりですとか,1から10まで数えることを始めたりですとか,数学の時間ですね。能力というものを,15年間生きてきたこの子には,それぞれのものがあるんだということが全く評価されていないような形であるものですから,そうしたことも含めて,高校への対応というのはすごく重要ではないのかなと思っているところです。
 あと,高校でのキャリア教育ということで,ロサ委員が言ってくださったところを重視するならば,高校の中にいろんな人と出会えるような場があることも重要です。外国ルーツがある子たちの進路ガイダンスやロールモデルというのは,子供たちからするとすごく遠い存在なような,あの子は賢いからああいうことできるんだよねというようなところもあったりするんですね。そのため,学校の日常的な場面に外国ルーツの人たちが活躍できるようになったり,また,そういう方たちが雇用されたり。いいんですよね,部活動の指導者であってもいい。いろんな場面の中で外国ルーツの人たちがいろんなところで活躍できる場というのがあるんだよねというようなことが早くから子供たちの社会で見えるようになることが,すごく重要ではないのかなというふうに子供たちと関わっていると感じるところです。
 そして,夜間中学の話なんですけれども,東海地域については,今,私が住んでいる地域については,夜中が全くないというところであります。ですけども,学齢超過の子たちはいっぱいいます。なもんですから,NPOの方たちがそれをサポートしているというのが現状です。ましてや,先ほども報告したとおり,外国人学校の卒業生の公立高校進学も無理ですので,外国人学校を卒業した子たちについても,含めて,中卒認定試験を受験する。そのためのサポートをNPOがしているというのが現状です。
 今,その子たちの教室を始めて10年たったものですから,その子たちの追跡調査を今年やっているんですけれども,悲しくなるような話ばかりです。といいますのも,なぜかといいますと,中卒認定試験,日本語ゼロの子が5教科を1年で合格するというのは物すごい大変なことなんですよね。それは来日する時期が4月であるとは限りませんので,時期によって違う。しかも,中卒認定試験は1年に1回しかありませんので,その1回の試験に合わせて5教科を合格できるまでに皆力を合わせてやっているところです。それを合格しないとなると,2年も3年もかかる子たちがいっぱいいます。そこでは,先が見えない進路の中で,モチベーションが下がることがいっぱいあります。ましてや,そうしたNPOが教室やっていても,そこに通うための通学費,交通費等も大人料金ですので,学割は利きませんので,そうすると,月3万も4万もかけて教室に通う。でも,それが払えなくなると,子供たちは勉強したくても,経済的な理由によって子供たちが就労せざるを得ない。それは妹,弟のためにも働かなければならないというような状況に置かれてしまっている部分がすごくあるんです。
 だから,すごくこの夜間中学の話というのは,非常に重要だと思っています。東海地域では,NPOだって支え切れないような実態が数々あります。不就学の子供が学齢を超過した時に学び直しをしたくてもできない現実があることを含めて,夜間中学との議論と併せてお願いしたいところであります。

【佐藤座長】
 ありがとうございました。きょうは就学の支援,就学の促進,それから高等学校について議論していただきました。初回の会議でお話ししたと思うんですけれども,目指すべきところはかなり共通していると思います。この会議ではアクションプランを作っていかないといけないと思います。きょうは小島先生の方からお話しいただいたのが参考になると思いました。さらに,中期的に解決していくべき課題を提案すること。それから,長期的に検討していく課題も考える必要があります。論点を整理して,すぐに対応すべきこと,中期的に解決すべきことなどを整理しながら,国と自治体との役割も考える必要があります。自治体にもお願いすべきところはお願いしつつ,アクションプランを具体的に作っていくというのがこの会議の大きな仕事だろうと思いますので,是非それに向けて私どもも精力的に議論をしていきたいと思います。
 それでは,きょう,お二方の先生,ありがとうございました。
 また,委員の方々にも御発言いただきありがとうございました。
 それでは,事務局,連絡事項があればお願いいたします。

【林調査官】
 ありがとうございました。今後の会議のスケジュールですけれども,資料5を御覧いただければと思います。次回の開催,第6回を11月26日の火曜日,15時から17時,場所はここです。また同じ場所です。文科省9階総合教育政策局の会議室で,7回を12月17日,火曜日,15時から17時,8回を年明けの1月21日,火曜日,15時から17時,9回を2月27日,木曜日,10時から12時を予定しております。予定の確保をお願いできればと思います。
 また本日の配付資料につきましては,そのまま置いていただければ,後日郵送させていただきます。
 以上です。

【佐藤座長】
 ありがとうございました。
 それでは,本日の会議はこれにて閉会したいと思います。どうもありがとうございました。

―― 了 ――
 

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