令和元年7月30日(火曜日)13時~15時
文部科学省9階 総合教育政策局会議室
【林調査官】
定刻になりましたので、ただいまから外国人児童生徒等の教育の充実に関する有識者会議(第2回)を開催させていただきます。
本日はお忙しいところをお集まりいただき、まことにありがとうございます。日本語指導調査官の林でございます。本日、冒頭の議事進行を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
なお、カメラの撮影は、冒頭の頭撮りのみとさせていただきます。終了のタイミングは、またお声を掛けさせていただきます。
初めに、7月9日付で事務方に異動がございました。御紹介をいたします。浅田総合教育政策局長でございます。
【浅田局長】
浅田でございます。今、話がありましたように、この第1回の会議の後、7月9日付でこの職に就かせていただきました。実は、この外国人の子供たちへの教育ということでいうと、私は5つの仕事を、随分前になるのですが、内閣官房にある教育再生実行会議の担当室長というのをやっていた時期があります。平成28年の5月にその教育再生実行会議の第九次提言というのを私のときにまとめたんですが、そのときのテーマが、「全ての子供たちの能力を伸ばし可能性を開花させる教育へ」ということで、これまでの学校教育の中で、また様々な困難を抱えて力を伸ばし切れていないんじゃないかという子供たちへの支援ということを大きなテーマにしました。そのときの柱の一つとして、日本語教育が十分でない子供たちへの教育ということにも焦点を当てて幾つかの提言をまとめていただいたところであります。当時のことを思い返すと、学校での対応が1つ、それから学校間の例えば情報の連携といいますか、ということ、それから地域と連携しての、あるいは地域ぐるみでの取組ということが1つ。そしてもう一つの大きな柱として、これから特に大事になるねと当時認識していたのは、進学あるいは就労にどうつなげていくかということであったと思います。当時我々がその教育再生実行会議の議論で使っていたデータは平成26年のデータでしたが、その後、2年後の28年には日本語教育を必要とする子供たち、外国人の子供たちも、それから日本国籍の子供たちももちろんおりますが、いずれも約1.2倍に増えている、恐らくその後もっと増えていると思います。それから、ずっとこの問題は以前から私自身もちろん問題意識を持っておりましたが、教育をたどってみると、多分その時期によって例えば出身の国であるとかあるいは言語であるとか、それから日本国内のどういう地域にそういう子供たちが多いといったことも含めて、かなり変わってきているなという感じもします。それは恐らくこの先もそうでありましょう。我々としては、この先ということも考えながら、その子供たちの力を、可能性をどうやって伸ばしていくのか、その子たちの一生をどういうふうにサポートしていくのかということを真剣に考える必要があると思っております。
この会議、私自身はきょう初めてでございますが、テーマとしては非常に重要なテーマについて御議論、御意見を頂く場でございます。皆さん方のお力を頂きながら、我々としてもできるだけいい施策につなげていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
【林調査官】
ありがとうございました。
続いて、寺門社会教育振興総括官でございます。
【寺門総括官】
寺門でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【林調査官】
ありがとうございました。本日は、総合教育政策局から平野審議官にも出席を頂いております。
【平野審議官】
平野でございます。どうかよろしくお願いいたします。
【林調査官】
それでは、これより先の議事進行につきましては、浜田副座長にお願いできればと存じます。よろしくお願いいたします。
【浜田副座長】
失礼いたします。京都教育大学の浜田と申します。前回は本務のために欠席をさせていただいて申し訳ございませんでした。
ただいま御案内のように、本日、佐藤座長が欠席でいらっしゃいますので、私の方で進行を務めさせていただきます。何分にも不慣れな座長でございますので、よろしく御協力のほど、お願いいたします。
最初に、配付資料、議事の確認等を事務局よりお願いいたしたいと思います。
【林調査官】
配付資料の確認をさせていただきたいと思いますが、配付資料については議事次第のとおりでございます。御確認いただければと思います。不足等ございましたら、事務局までお申し付けいただければと存じます。また、平成28年度の有識者会議の報告書を机上に置いております。また、前回の第1回の資料もドッチファイルにとじておりますので、議論の際には適宜御参照いただければと思います。
本日の議事につきましては、資料3を御覧いただければと思います。資料3の主な検討事項1の(1)の「指導体制の確保・充実」について議論を行っていただくこととしておりまして、まずは櫻井委員から浜松市の取組について、村松委員から兵庫県の取組について御説明を頂き、その後、意見交換を頂きたいと思っております。
また、意見交換に当たっては、済みません、追加で配付させていただいた資料5を御覧いただければと思いますけれども、「指導体制の確保・充実に関する主な検討事項 事務局作成メモ」ということで、本日御議論いただきたい内容についてちょっと整理をさせていただきました。簡単に説明させていただくと、3つの柱がございまして、1つ目が集住地域・散在地域におけるそれぞれの支援の在り方、2つ目が特別教育課程の普及、3つ目がICTの活用ということで、1つ目の集住地域・散在地域のそれぞれにおける支援の在り方については、集住地域において、机上に配付しております28年度の有識者会議の報告の中に、拠点校等を中心とした指導体制の構築、教員の拠点校、児童生徒の拠点校、指導のノウハウ、支援人材の拠点、済みません、これは「機構」と書いていますけれども、拠点「機能」ですね、に取り組まれている事例、自治体が増えているというところなんですけれども、更にこういった取組を推進するという方向でよいのかと。そのためにはどのような支援が必要かなど、御意見いただければと思っています。散在地域については、そもそも体制が整っていないというところがございますので、その散在地域の取組を後押しするために、これも平成28年度の有識者会議の報告にあります拠点校等の拠点機能を中心とした広域の学校間・市区町村間における指導体制の構築という取組を一層促進するということになっておりますけれども、この辺も含めてどのような支援が必要かということで御意見を頂戴できればと思っています。
(2)が共通する課題ということで、1つ目が教員の加配、配置、基礎定数化の話ですけれども、今、日本語指導が必要な児童生徒は18人に1人ということで、10年計画で進めておりますけれども、その中で、各自治体でどのような運用を図ることが有効なのか、ここで一応、例えば県費とか市費負担の日本語指導教員の配置等と書いていますけれども、御意見を頂ければと思っています。
2つ目が日本語指導補助者・母語支援員等についてです。これは国庫補助による支援件数、私どものきめ細事業の件数も増えていますし、参考資料の1と2を併せて御覧いただければと思いますけれども、こちらが2年に1回やっている日本指導が必要な児童生徒に対する施策の実施の状況ということで、資料1が28年度の調査で、資料2が30年度です。30年度はまだ全体についてはまだちょっと公表できていないのですけれども、ここの部分だけ今回抜き出して資料にしています。ここの1つ目の指導体制のところを見てもらうと分かるんですけれども、28年度に比べて平成30年度の方については、国からですとか市町村については、国及び都道府県の助成金とか委託費を受けずに独自に予算措置を行って政策を進めているというようなところも増えている中で、どの程度の支援員等の配置が適正なのか、当面更なる配置に向けた方策として何が考えられるのかというところを御意見を頂ければと思っています。
2つ目が特別の教育課程の普及ということで、これも前回ちょっと御説明させてもらったんですけれども、特別な指導を受けている生徒が約8割と。そのうち、特別の教育課程を受けているのが約4割という中で、これらの割合を増やしていくためにはどのような方策が考えられるのか。特別教育課程も活用した初期集中支援、最初の初期集中支援の中、例えば初期指導教室、プレクラス等について、先ほどのきめ細事業の中でも、今補助ができるようにはなっていますけれども、これらを全国的に普及するためには更にどんな有効な方策があるのか。例えば、特別免許状制度ですとか、特別非常勤講師制度の活用といった方策も有効となるのではないかといったあたりも御意見を頂戴できればと思っています。
3つ目、最後ですけれども、ICTの活用ということで、多言語翻訳システム、本年度きめ細事業で新たにメニューとして追加して支援をしているところですけれども、なかなか授業には活用しにくいという意見も聞かれています。そんな中で、児童生徒の多言語化が進む中でも有効なツールとなり得るものだと考えていますので、授業での活用に向けどのような工夫が考えられるのか。
2つ目、遠隔教育についてということで、これは参考資料の3に愛知県の瀬戸市の取組を参考に付けています。文科省の実証研究事業で行っているものですけれども、愛知県の瀬戸市の学校で、要は日本語教室がない学校と日本語教室がある学校を遠隔で結んで合同授業を行っているという取組が行われております。こういった取組の例も踏まえまして、今後の課題等々を御議論、御意見を頂ければと思っています。
最後に、資料は本日付けていないんですけれども、学習用デジタル教科書についてということで、本年4月1日より、紙の教科書に代えて、学習者用のデジタル教科書というのが使えるようになっています。これについても外国人児童生徒等に対しても、音声機能ですとかルビ振り機能なんかも付いているので、有効になり得るものと考えておりますけれども、活用に向けてどのような課題があるのか等々、御意見を頂戴できればと思っております。
済みません、本日の議事については以上です。
それと、カメラ撮影はここまでとなりますので、これ以降はカメラの撮影は御遠慮いただければと思っております。
以上です。
【浜田副座長】
ありがとうございました。それでは議事に入りたいと思います。本日は、浜松市及び兵庫県の御報告を伺うという予定になっております。
最初、資料1でございます。「浜松市における外国人児童生徒等の状況と指導体制について」ということで、櫻井委員よりお願いいたしたいと思います。
【櫻井委員】
それではよろしくお願いいたします。浜松市における外国人児童生徒の状況と、それからうちの市で行っております指導体制についてということで説明をさせていただきます。このレジュメに沿って説明をさせていただきたいと思いますので、お願いします。
ではまず1枚めくっていただきまして、外国人児童生徒の状況ですけれども、3ページにあります。これがここ平成17年からの外国籍児童生徒の推移になります。平成20年がピークでずっと数は減ってきていたんですけれども、27年から増えてまいりまして、昨年から最高ということで更新をしております。今年度5月1日は1,796人の子供たちが小・中学校に在籍をしております。
次のページです。その国籍の内訳なんですけれども、南米系がとても多く、ただ、それ以外の国というのもとても多くなってきておりまして、多国籍化が進んでいて、今、在籍が30か国ということになっております。
ではもう一枚めくってください。じゃあそのような子供たちが学校にどのぐらいの数いるのかということなんですけれども、市内には小・中併せまして146校あります。そのうちの120校に在籍があります。でも、その半分は9人以下の在籍になります。在籍があるうちの半分が9人以下の、本当に少数の在籍ということになりますが、反面、90人台、80人台ということで、5月1日だと99人だったのですが、1学期末の数字ですと、その99人だった学校は今在籍が109人になっておりますので、100人を超えた学校が1校あるということになります。集住地区と分散、散在している地区が混在しているという市町になります。
じゃあ、そのうち日本語指導が必要な子供たちはどのぐらいいるかということなんですけれども、日本国籍、外国籍併せまして1,359人の子供たちに日本指導が必要だということで、学校から調査結果が出ております。
じゃあ、そのような子供たちにどのような支援をしているかということなんですが、8ページです。大きく3つの支援を行っております。まず1つ目として、就学相談と適応支援と母語支援、それから2番目として、子供の日本語の能力に応じた支援、それから3番目としては、その子供の成長の道筋の中で、その時々に合わせた支援、ライフコースを見据えた支援、この3つを行っております。
では9ページになりますが、まず1つ目の就学相談と適応支援、母語支援ということで、大きくこの4つの支援を行っています。まずアとして、母語による教育相談、電話相談だったり来所相談だったりするんですけれども、教育委員会に相談員としてバイリンガルが5人常駐しております。そのバイリンガルの相談員が相談を受けるわけなんですけれども、年間約600件の相談があります。大体多くのところは編入や転入に関する相談なんですが、中には発達支援に関わること、それから進路、いじめられたとか、それから不登校に関する、日本の子供たちと同じような問題で相談を掛けてくるということがあります。
それからイとして、学校の要請を受けて相談員が訪問します。生徒指導上の問題が起きたときに依頼を受けるということ、それから三者面談、それから保護者懇談会などの要請を受けて訪問は行っております。
それからウとして、就学ガイダンスを実施しております。浜松市に編入・転入する場合に、外国の子供たちに対してガイダンスを行っております。昨年度の実績として、学齢の子供たちで181人、新学齢、来年小学校1年生に入学する子供たちのガイダンスとして210人行っております。
それから4番目、エとして母語教室を開催しております。ポルトガル語とスペイン語、ベトナム語、この3言語だけなんですけれども、母語教室を行っています。
では10ページです。外国につながる子供たちの受入れの流れなんですけれども、まず、外国につながる子供たちが初入国だったり市外からの転入であったりするわけなんですが、区役所で住民になる手続をします。そうすると、私がいる教育総合支援センターを紹介されますので、そこで就学ガイダンスを行います。ただ、ここで行うのは、公立の小・中学校に就学を希望する保護者のみということになります。市役所と教育委員会がちょっと離れた場所にあるものですから、区役所、市役所で手続をした後に教育委員会を紹介されるということになります。それで就学ガイダンスを行いまして、その後、健康安全課で結核検査のための受診券を発行します。それから教育総務課で就学のための手続を行い、学校に就学ということになります。外国人学校からの編入であったり、それから、浜松にはいるんだけれども不就学からの編入についても同じ流れになります。
では11ページです。就学ガイダンスで聞き取る児童生徒に関わる情報なんですけれども、主にここに書いてある6点のことについて聞いていきます。その中で、日本語の能力について、DLAの初めの一歩というところで、簡単な能力検査を行います。なぜこのように詳しく聞き取るかということなんですけれども、子供たちの持っている文化背景などを踏まえて学校で指導を行う、そこが重要だというふうに考えまして、ここで聞き取った内容は全てデータで学校の方に送付をしております。さらに、ここで聞き取った内容というのは、特別の教育課程の個別の指導計画の様式1の内容とつながっているところがありますので、打ち込むと、もうその様式が個別の指導計画の様式1にデータが飛ぶというふうにしてありますので、個別の指導計画の様式1とともに学校にデータを送信するということになります。
次に、日本語能力に応じた支援者の派遣、2番になりますが、支援者の派遣スケジュールは、12ページにある表のように行っております。一番上の流れが時系列になっておりまして、初めの14日間は初期適応指導を行い、それが終わると同時に、日本語の基礎、それから日本語学習支援が始まるというような流れになっております。
では、詳しくは13ページになります。編入手続前のガイダンスを行った後、初期適応指導が必要かどうかを判断します。2番です。初期適応指導が必要、具体的には、日本の学校に初めて就学するということ、それから日本語が、こちらで行っているDLAの初めの一歩で半分以下の修得状況だということが分かりますと、初期適応指導が必要というふうに判断します。そうすると、3番の初期適応指導を実施します。これは4時間×10日間で、バイリンガル支援者を各学校に派遣します。これはどこの地域に就学しても全ての子供に平等に4時間×10日間の支援者を派遣しております。ここで実施する内容というのは、本当に日本の社会で生活するために必要とされる日本語、例えば体の不調を訴えるときの言い方だとか、それから挨拶の言葉、日本の社会で生きていく上で必要な交通ルール、そういうものをこの4時間×10日間で修得させます。次に、それが終わりますと、4番の日本語の基礎指導を実施します。教育委員会が定めている67の文型の指導、それからもちろん文字指導も行いますが、これは70時間設定しております。この4番についても、浜松は南北80キロということでとても広いんですけれども、どこの学校に就学しても平等にここは実施するということになっております。それが終わりまして、5番の日本語・学習支援の実施、教科の補習であったり、日本語と教科の統合学習を行います。初期適応指導が要らない、必要ではないという子供についても、日本語学習支援が必要な子供たちもおりますので、そこは5番からスタートということになります。それが終わりますと、在籍学級において、先生の支援を受けながら日本語で学ぶということになりますが、4番と5番につきましては、在籍学級にいながらの必要に応じて取り出し、入り込みということになりますので、6番まで在籍学級で全く学んでないというわけではありません。
14ページになりますが、浜松はセンター方式ではなくて、在籍校への直接の支援者派遣という形をとっております。
次のページです。教員向けの研修です。このように日本語の指導のシステムが確立していても、やはり学校の先生、それから学校に派遣するバイリンガルに研修をして、よりよい指導をするということが必要になりますので、浜松市としては、教員向けに3つの研修会を実施しております。この3つの研修会のうち、静岡市の日本語指導加配2人も2回の研修会には参加するということになっています。それから、バイリンガルの支援者向けの研修会として、初期適応指導の研修会も行うのですけれども、最近の状況としては、特別支援に関わるもの、それから進路に係る通訳を依頼されることがとても多く、そういう重要な局面では教育委員会にいる相談員が実際に学校に行って通訳をしていたんですけれども、なかなか依頼数が多くなってきまして間に合わないという状況がありますので、今はこちらで雇用しているバイリンガルにも、育てていくという意味で特別支援や進路に係る通訳の仕方の研修会を行っております。
次に16ページです。3番目としてライフコースを見据えた支援の推進です。主な進路に関わるところ、それから進路選択のところ、それからその時々の必要な支援というものがありますので、今、4点ここに書いてあるものを主に行っております。入学準備ガイダンス、これは今年度2月に実施します。今年度から新学年の子供たちへのプレスクールを実施することになりましたので、その中で実施します。それから、これは実施が終わっておりますけれども、進路について語る会、ロールモデルに登場してもらって、親子で進路についての話を聞くということ、高校進学のシステムについても県立高校の先生に来てもらって説明をしてもらう、そういう機会を設けております。それからロールモデルとの出会いということで、要請があった学校にロールモデルを派遣して、保護者会や総合的な学習の時間に、外国の子供たちに自分の高校進学の状況だとか、なぜそういう道を選んだのかということを外国人のロールモデルに説明してもらっています。それからステップアップクラスを実施しております。これは中学生を対象とした放課後の勉強教室です。市内の2か所で年間60回実施しております。
次の17ページです。特別の教育課程に関しましては、平成29年と30年の報告からなんですけれども、実施数を見ていただきますと、平成29年の学校設置者への報告数が645人です。平成30年は825人ということで、180人増えています。これは、加配の数は増えていないんですけれども、特別の教育課程を編成した指導を実施するために、平成30年から外国人児童生徒教科指導員という制度を開始しました。この教科指導員というのは、中学校でいいますと、年間350時間を、免許を持っている人が各学校に行って教科指導をする。教科指導というよりも、日本語と教科の統合学習を行うということで派遣をしております。これにより、日本語指導加配措置校以外に特別の教育課程を編成した指導が実施可能になりました。
では、18ページにもう少し詳しく書いてありますが、今年度、令和元年度は小学校に13校、29人の教科指導員を派遣しております。それから中学校は、ここは15校と書いてありますが、17校です。17校に13人ではなくて15人派遣をしております。中学校が17校に15人です。小学校の29人については、先ほどのお話にもありましたけれども、国のきめ細の補助事業で3分の1補助をしていただいておりますけれども、中学校の15人のうち9人は、きめ細の国の補助を受けてこちらが委嘱をして免許を持っている者を派遣しておりますが、6人については浜松市に頂いている、日本語指導加配ではない加配を1人工を崩して6人工にし、それで6校に配置をしております。
19ページです。特別の教育課程を編成した指導を普及させるためにということで、次の4点行っています。1番として、外国人支援担当指導主事による学校訪問を年間7校に対して行っています。この学校訪問についてはどのようなことをするかということなんですが、日本語指導加配、それからこちらで派遣している教科指導員、それから支援員などの支援の様子、授業の様子を参観します。で、そのJSLのカリキュラムにのっとった指導をしている場合がほとんどですので、そのことについて指導助言をしたり、それから個別の指導計画の記入方法についての指導助言をしたりしています。ただ、年間7校しか行けませんので、それ以外の学校については、ほかの指導主事が学校訪問をする際に、個別の指導計画などの帳簿点検のみを行っております。これは全部の特別の教育課程を行っている学校に行っております。
2番として、教科指導員コーディネーターが教育委員会に1人いますので、学校訪問をして、主には教科指導員の授業を参観し、教科指導員を懇談を行い、学校長とも話合いをする、そういう機会を持っております。
3番として、特別の教育課程実施のための研修会、先ほどの研修会に当たりますけれども、全てが特別の教育課程に当たる研修会ではないのですけれども、必ずこの新任日本語指導加配研修、それから先ほどのリーダー研修、教科指導員研修の中には特別の教育課程に関する研修を取り入れております。
それから4番目として、教務主任の研修会、それから教頭研修会で、日本語指導が必要な子供たちのための特別の教育課程について説明をしております。
20ページです。ICTの活用です。浜松市として昨年からタブレットを10台配置をしております。タブレットのテレビ電話の機能を使って、教育委員会にいるバイリンガル相談員と学校にいる先生や児童生徒、保護者等をつなぐということをやっています。ここで活用できるどのような場があるかということなんですが、家庭訪問に持っていくということ、それから生徒指導などの緊急対応に対して行っております。
それからもう一点は、21ページです。多言語翻訳アプリを使いましてその場に応じた翻訳をするということ。それから今年度からポケトークを2台教育委員会に配置をしてもらっておりますので、ポケトークを使った翻訳というものも行っておりますが、昨年度まではボイスビズというものを入れてもらっておりましたけれども、なかなかその場に応じた使い勝手が余りよくなくて、というのは、授業の中で使うことが多かったわけなんですけれども、学校の先生が入れるときに、なかなかその入れ方がなれていないということで、何回も言い直しをする必要があるんですね。そうすると、授業の中でどうしても加配が取り出して行うような授業だったらいいんですけれども、一斉授業の中でそのタブレットを使用して何回も言い直しをするというのはどうしても効率的ではないということがありまして、今年度はボイスビズは入れておりません。でも、グーグル翻訳でも学校によっては、特に中学校なんですけれども、中学校年齢で来た中学生については頻繁に使っているということがあります。そこの水色の四角でも書いてあるんですけれども、使用者に慣れが必要だということ、それから正確に翻訳できているかというところがなかなか難しいということがあります。
課題ですけれども、22ページですが、先ほど申しましたように、多言語化への対応が課題となっています。それから、バイリンガル人材を確保するということがとても難しく、誰でもいいわけではないものですから、学校のシステムが分かっているということ、それから子供が好きだということ、教えるのが好き、そういうような人材を、今もハローワークに依頼したり、それから市のホームページで募集を掛けておりますけれども、なかなか採用できないということがあります。
それから、特別の教育課程を編成した指導を実施するための免許を持っている者の派遣の拡充ということが課題となっております。先ほど数字を直していただいたのですが、実は2校2名ずつ増やしていただきました。書き換えていただきましたが、実はその前に出ていた数字というのは、今実際に派遣できている先生、教科指導員の数です。実は2校分2人の先生がまだ採用できていないということで、教科指導員が、免許を持っていて学校に行って指導したいという人もなかなか採用できないということになっております。
それから、今後増え続けることが予想される外国人児童生徒への持続可能な支援者派遣の在り方、今、直接派遣方式をとっておりますけれども、今のバイリンガルの数、それから指導者の数でいいますと、ちょうど今の数というのが子供たちの来日の数、編入の数がちょうどいいバランスがとれているんですけれども、今後、今以上に増えていったときに派遣がし切れない状況になってくるということが予想できます。
それから、日本語指導担当者のスキルアップと人材育成。
それから、赤で書きましたけれども、学校の先生たち、教師のグローバル化が必要だなというふうに感じております。
以上です。
【浜田副座長】
櫻井委員、ありがとうございました。浜松市の中でも集住地域と散在地域があるということ、その中で、母語による支援、日本語指導、それからライフコースを見据えた支援ということで、体制作りをしながらされているということ。それから、特別の教育課程を普及するための工夫ですとか、あるいはICTの活用についても御報告を頂きました。ただいまの御報告につきまして、もし簡単な御質問等がありましたら、この場でお受けしたいと思いますが、いかがでしょうか。
私の方から1点だけお伺いしてもよろしいでしょうか。先ほどバイリンガル人材の確保が非常に難しいというお話があって、実際にそういう能力を持った方は得にくいということは想像できるんですけれども、もう1つ、雇用形態の問題といいますか、多くの地域で時間幾らという形で雇用されていて、それを定職として生活をしていくというのは難しいということも背景の一つにあるのではないかというふうに思うのですけれども、浜松市はどういうふうな雇用形態でバイリンガル人材の方に仕事をしていただいているのか、お願いします。
【櫻井委員】
バイリンガルの職種なんですけれども、4職種あるんですね。そのうちの浜松市の非常勤として雇用されているものについては、比較的月給で雇用されているものですから、いいんですけれども、2職種につきましてはやはり時給ということで、どうしても支援者、バイリンガルのほかの業者との取り合いということにはなっていくかなというふうには思います。
【浜田副座長】
ありがとうございます。ほかはいかがでしょう。藤巻委員、お願いいたします。
【藤巻委員】
2点お伺いしたいんですけれども、13ページのところで、初期適応指導なんですけれども、在籍学級において日本語を学ぶというのは、学校で日本語を学ぶ、学校に通って教育が始まるということだと思うんですけれども、それまではどこで子供が勉強するのか、時間はどのくらい、何時間くらいの指導ということなんでしょうか。
【櫻井委員】
支援者は、学校へ在籍している、就学が決まっている学校に直接派遣をしておりますので、どこかに集めて子供たちを指導するということはありませんので、子供1人に対して必ず支援者が派遣されるという形をとっております。
3番につきましては、どこの学校に就学しても4時間×10日間、これは大体午前中の4時間を10日間連続で派遣をしております。
4番については70時間ということになっておりますけれども、5か月までに70時間のこの67文型の指導が終了するということでやっております。これは浜松市が業務委託をしているNPOがありますので、そこがマネジメントをして、どこの学校に何時間入るかということは決めて、とにかく5か月までに70時間終わるということでやっております。5番につきましては、教科の補習は、やはり4番のNPOが引き続き行うということと、日本語と教科の統合学習については日本語指導加配、それから教科指導員が実施しているので、それぞれの学校の子供たちの状況に応じて1人当たりの取り出しの時間というのが決まってくるかと思います。
【藤巻委員】
そうすると、その子供が通っている学校で、その在籍学級に配属される前に個別にやっているということですね。
【櫻井委員】
そうです。3番については、在籍学級に午前中は入らずに取り出しをされるということになります。
【藤巻委員】
既にもう在籍学級で学んでいるけど取り出しをやっているという意味なんですか。
【櫻井委員】
そうです。
【藤巻委員】
在籍学校において日本語を学ぶというのは、取り出しや入り込みを必要としない状態になるということですか。
【櫻井委員】
そういうことになります。
【藤巻委員】
その全段階が100時間以上あるという意味でよろしいでしょうか。
【櫻井委員】
そうですね、はい。で、5番のところまで来るのに、支援者をこちらで派遣をしているその派遣のシステムにのっている子供たちというのはたくさんいるものですから、毎年毎年たくさんの子供たちがこちらに来ますので、子供たちをずっと支援するということがなかなかできないものですから、期限を決めておりまして、在籍から3年までの支援というふうにしています。
【藤巻委員】
分かりました。それで支援するのはNPOの方々という理解でよろしいですか。
【櫻井委員】
4番はNPOです。5番の教科の補習はNPOですけれども、日本語と教科の統合学習については日本語指導加配、それから先ほど申しました教科指導員、免許を持っている者になります。
【藤巻委員】
分かりました。
もう一点だけちょっと、最後気になったんですけど、課題のところで、赤字で教師のグローバル化とありますよね。具体的な説明がなかったんですけど、これはどういうことを意味しているか、教えていただけますでしょうか。
【櫻井委員】
子供たちの多様な文化背景というものを生かして指導していくことが必要だというふうに考えています。子供たちが持っている母語だとか母文化というものを、子供たちが強みとして社会に出たときにそれを生かした職に就くとか、自分の得意なところを生かして社会人として成長していくというところを考えますと、やはり日本に合わせるというような考えではなくて、子供たちのよさを伸ばす、持っているものを伸ばすというような考えでやはり先生たちは指導する必要があるかなというふうに思うんですけれども、どうしても画一的な指導というのになりがちで、教師のグローバル化が必要だというのはそういう意味です。
【藤巻委員】
ありがとうございます。
【浜田副座長】
古沢委員、お願いいたします。
【古沢委員】
済みません、ありがとうございました。非常に多角的な支援をされていることがよく分かりました。私の方からも2点だけお伺いしたいんですが、1つは、高校入試というのが1つ大きなハードルになると思うんですけれど、それはどのような支援をされていて、静岡県は特別枠というのは、この間頂いた資料だとそれほど多くなかったような感じがしたんですけれど、それについてお伺いしたいのと、あと、特別免許状制度を活用されているというのは、どのような経歴の方が多いかということなんですが。
【櫻井委員】
まず特別枠なんですけれども、外国人枠ということだと思うんですけれども、中学校年齢で来た子供たちは外国人枠という枠を使って受験をすることができます。高校入試に関しましては、私どものところで派遣をしている教科の補習を行うNPOが、技能別日本語として中3生に対しては、面接だとか、それから作文に特化したような支援を入試が近くなってくるとやっていくということもあります。
それから、特別免許状については、浜松市ではそれを使ったものはやっておりませんので、はい。
【古沢委員】
分かりました、ありがとうございます。高校入試の場合、外国人枠は限られているかなと思うんですが、浜松市の場合は非常に外国人が多いので、一般枠で受けざるを得ない生徒もいるのか、それとも何年も挑戦しているのか、それだけ最後に教えてください。
【櫻井委員】
やはり外国人枠というのは、どうしても中学校年齢3年間という、3年以内に来たということが必要になってきますので、そこも外国人枠を使って受験をするという子供たちは限られてきてしまいます。どうしても中1前の春休みに来たとか、そういうところはどういうふうになるのかというところは、それぞれの学校の取組に聞いてみないと分からないんですけれども、実際、外国人枠があっても、それを使っていないという子供たちもおりますので、どうしても自分が希望する高校に入りたいと思うと、子供たちは外国人枠ではなくて一般入試を使うというふうにも選択をすると思います。
【古沢委員】
ありがとうございました。
【浜田副座長】
では、田中委員、お願いいたします。
【田中委員】
2点お伺いをさせていただきたいのですけれども、受入れ過程で日本語基礎指導の実施70時間をNPOが担っているということなんですが、これは特別の教育課程の枠組みの中にNPOの支援者が組み込まれて実施をしているということなのかということと、あと、母語の教室を開いているということなんですけれども、ポルトガル語とベトナム語とスペイン語というのは、なぜこの3言語になっているのか、また、母語の教室も、母語で教育をしているのか、母語教育をしているのか等で詳しい支援の内容を少しお伺いできればと思います。
【櫻井委員】
まず、13ページの日本語の基礎指導ですけれども、これは特別の教育課程として実施をしているわけではありません。NPOが派遣されて指導をしております。NPOは日本語教師の資格は持っておりますけれども、教員免許状は持っておりませんので、特別の教育課程として認めてはおりません。
それから母語教室なんですけれども、この3言語がなぜかというところなんですが、この母語教室の歴史がとても古くて、もう10年以上はやっているというところで、多分そのきっかけになったのが、南米系が、とても日系人が多いというところで、そこが発端かなというふうには思いますし、そのベトナムの子供たちというのは、どうしても難民の子供たちが多くて、帰るつもりがないというところで、母語が、本当にベトナムの子供たちって親子の会話がなかなか成立しないというような問題があるんですね。親ももう帰るつもりがないものですから、あえて教えるということはしない。そうすると、小学校の高学年になったり中学生になってくると、親子で本当に込み入った話ができなくなるという状況があって、そういう状況を見てベトナム語をやり始めたのではないかなというふうには思います。で、この母語教室というのは、母語と母文化を教えるという教室になります。
【田中委員】
その母語教室の実施に際して、ほかの母語のユーザーというか、例えばフィリピン語を母語とする御家庭から、例えばうちもやってほしい、という要望というのは出ていますでしょうか。
【櫻井委員】
実は浜松市にフィリピノナガイサというNPOがありまして、そこのNPOが自分のNPOの中で母語教室をやっておりますので、特別そういう話は聞こえてはきません。
【田中委員】
ありがとうございます。
【浜田副座長】
では、高橋委員、手短にお願いできればと思います。
【高橋委員】
では1点だけ、高橋ですが、ICTの活用のところですけれども、タブレット端末10台、それからポケトーク2台ということでしたけれども、学校数から考えると少ないかなという印象なんですけれども、どういう学校にそれを配置しているのかということと、あと、その使い方なんですけど、やっぱり有効活用というところでの使い方を、例えば研修とか、それからあと、横浜市なんかでは放課後取り出しの授業で個別で自主学習をするために使ったりするような工夫をされているところもあるんですけど、どのような使い方の工夫とか検討されているか、教えてください。
【櫻井委員】
学校に配置している台数なんですけれども、1台は教育委員会に置いておいて、9台配置をしているわけなんですが、浜松市は南北80キロで東西50キロぐらいあるんですけれども、そこが8のブロックに分かれているんですね。各ブロックで1台以上になるように配置をしております。で、昨年から始まったんですけれども、昨年はこちらが意図して配置をしたんですが、今年度は、使う意思のある学校に手を挙げてもらって、そこに配置をしております。
研修なんですけれども、配置をするときに研修を行って、このような使い方ができますということは話をしておりますけれども、その後は特別研修はしておりませんので、そういう研修を行うともっと使い勝手がよくなって、先生方の日本語の入れ方というのも精度が上がってくるのかなというふうには思いました。
以上です。
【浜田副座長】
ありがとうございました。まだ御質問はあろうかと思いますが、取りあえず次の御報告に移らせていただきたいと思います。
それでは、資料2を御覧ください。「兵庫県教育委員会子ども多文化共生教育の取組」ということで、村松委員から御報告をお願いいたします。
【村松委員】
失礼いたします。兵庫県教育委員会の村松でございます。兵庫県は国の第3期教育振興基本計画等を参酌いたしまして、今年度から、5年間の兵庫の教育の指針となります第3期ひょうご教育創造プランを策定し、心豊かな人作りを基調とした教育を推進しているところでございます。これまでにも多文化共生社会の実現を目指す教育の充実に向けて取り組んでまいりましたが、今年度は特に重点取組事項に位置付けております。これからその取組の一端を報告させていただきます。
まず初めに、兵庫県の外国人に係る現状を説明させていただきます。皆様も御承知のとおり、兵庫県は東西で見ても南北で見ても日本のほぼ中心にございます。10の県民局がありますが、昔ながらの文化や歴史などから、大きく分けて5つの地域ごとの特色がございます。兵庫県に住んでいる外国人県民の人数は、一時期減少したのですけれども、三、四年前に10万人に回復し、現在は増加傾向にございます。一番多く住んでおられる地域は、明治維新後は日本を代表する港として発展いたしました、もともと国際色豊かな神戸、そして工場等が多い阪神地域でございますが、かつて日本最初の定住促進センターがございました姫路市にもベトナムの方のコミュニティがあり、兵庫県の中でも集住地域といえます。それ以外の地域も高速道路が通っていて流通がよいため、工場が多い中心部、兵庫の真ん中のあたりとか、農業、水産業が盛んな地域にも一定数の外国人の方が住んでおられます。
次に、日本語指導が必要な児童生徒の現状を説明いたします。棒グラフは平成23年度から30年度までの公立学校に在籍する外国人児童生徒数を示しております。増減がございますけれども、約3,000人以上の児童生徒が公立の小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校、高等学校、特別支援学校に在籍しております。グラフの中の赤文字でございますが、日本語指導が必要な児童生徒の割合を示しており、その割合は年々増加しているということが分かります。日本語指導が必要な児童生徒の母語別の割合、校種別在籍割合、在籍人数別学校の割合を円グラフで示しておりますけれども、このグラフからも、多言語化、散在化傾向があるということが読み取っていただけるのではないでしょうか。
次のページには兵庫県教育委員会の「子ども多文化共生教育のあゆみ」を紹介しております。第1回の有識者会議でも御紹介いたしましたが、兵庫県の外国人児童生徒教育の基盤には多文化共生の考え方がございます。そのきっかけとなりましたのは、平成7年に起きました阪神・淡路大震災でございます。平成12年には「外国人児童生徒にかかわる教育指針」を策定いたしまして、人権教育を基盤とし、外国人児童生徒の自己実現を図り、全ての児童生徒に多様な文化を持った人々とともに生きていくための資質や技能を身に付けさせる「子ども多文化共生教育」を推進しております。冒頭に申し上げましたひょうご教育創造プランや毎年作成しております指導の重点にも明示しているところでございます。
そして、平成15年には子ども多文化共生教育を推進する中核施設として、子ども多文化共生センターを開設し、外国人児童生徒の母語を話せる支援者として子ども多文化共生サポーターを県費で派遣しております。この2点につきましては、後ほど説明させていただきます。
また、兵庫県全体といたしましては、平成15年度のひょうご国際新戦略懇話会報告に基づいて多文化共生施策を展開してきたところでございますが、平成27年度にひょうご多文化共生社会推進指針を策定いたしまして、県全体で多文化共生を推進するための施策を実施しております。
それでは、次を御覧ください。ここは簡単に御紹介させていただきますが、県教育委員会は、子ども多文化共生教育を推進するために、部局や市町組合立教育委員会、公益財団法人兵庫県国際交流協会、NPOやNGOの皆さんと連携をしております。連携している施策については、また後ほど御紹介させていただきます。
それでは、次に兵庫県教育委員会の取組について具体的な内容を御紹介していきたいと思います。説明のために「支援・指導体制」を、「受入れ体制の整備」、「指導者等への支援」、「研修・研究」「学習支援」の4つに分類して、国と県の施策を当てはめてみました。この後はこの4つの分類に即して説明していきたいと思います。各施策の前の丸を色分けしています。これは、国の事業を活用又は連動しているもの、独自の事業ということで色分けをさせていただいております。ただし、国はこの施策以外にも多くの事業をされておりますので、国の施策は兵庫県に関連の深いものを挙げさせていただいておりますことを御了承願います。
それでは、受入れ体制の整備について御説明いたします。外国人児童生徒の受入れ体制整備に関する事業は、県としては重要だと認識しておりますので、先ほどのネットワークを十分活用しながら進めているところです。外国人児童生徒等に対する教育支援事業は、国の補助事業を活用しています。1の運営協議会には、県が間接補助を行っている市だけではなく、政令市である神戸市、中核市の姫路市、部局や県国際交流協会が参加し、学校の受入れ体制整備だけでなく、市町部局の取組、地域の日本語教室等の情報交流をするために年2回行っているものです。
2の就学支援ガイダンスは、夏休み前に県内4会場で実施し、市町教育委員会やNPOと連携して運営をしています。日本語が分からない、あるいは日本の学校制度が分からない保護者のために通訳者が同時通訳をするとともに、翻訳しております就学支援ガイドブックや入試に関する資料を配布しています。年々参加者が増えており、一緒に参加している学校の先生方や市町教育委員会と情報共有することで、夏休み中の支援に生かしています。もちろん、中学生の参加者が多い現状でございますけれども、中学生になってからでは支援は遅いということで、最近は小学生にも参加を呼び掛けて保護者の意識を高めていただいているところです。
3の就学状況調査ですが、兵庫県は毎年実施しています。流れを説明しますと、県教育委員会が部局の私学担当課や外国人施策担当課を通じまして、関係各所に調査協力依頼をすることで市町教育委員会が照会しやすい仕組みを作っています。外国人家庭の都合もあり、市町教育委員会は、その子供の所在の確認にとても苦労されるわけですが、不就学の状況が分かったときには家庭訪問を行い、市町の国際交流協会の協力などを得ながら就学支援を行い、実際に就学につなげるようにしています。また、こういう取組をしていることによりまして、年度途中でも地域の方やNPO等から、不就学の子供の情報提供があることもございます。保護者の不安等を除きながら、子供が学ぶ機会を失わないように、県としても取り組んでいるところでございます。
次、指導者等の支援として子ども多文化共生センターの取組を紹介させていただきます。
先ほど紹介させていただきました「子ども多文化共生教育推進」の中核施設となっております。県立高校の施設内に作られた施設ですが大きな役割を担っています。また、センターのある県立高等学校の敷地内には、これは全国でも珍しいと思いますけれども、県立芦屋国際中等教育学校を併設しております。この学校は、外国籍、帰国子女、日本国籍という異なる言語環境や文化的背景の下に育った生徒が能力や適性に応じて弾力的に学ぶ中高6年の一貫校でございます。この学校が作成した日本語指導資料をホームページにも掲載するなど、研究においても連携しているところでございます。
また、センターでは電話による教育相談を始め、日本語指導や多文化共生に関する書籍、民族楽器、民族衣装などを貸し出したり、一般県民の方が登録している子ども多文化共生ボランティアや面接等の通訳として、多言語相談員を学校へ派遣しております。ホームページには授業の実践事例集をはじめとする日本語指導に関する資料、母語翻訳されている資料等も掲載しています。中には人権教育資料として多文化共生に関わる教材も他言語で翻訳して掲載しております。センターは、教育委員会や教員だけではなく一般県民からの相談等にも対応しております。県外からの視察も増えているところです。
センターは各種団体とともに、指導者等を対象とした研修など多文化共生に関わる取組も多数行っております。資料に載せております取組以外にも、青年海外協力隊の経験者が子ども多文化共生サポーターとして活躍していただいている御縁で、昨年度ホンジュラス国で作成しましたスペイン語の算数教科書をセンターに寄贈していただくなど、子供の支援のためにという様々な人の志が集まっております。詳細につきましては子ども多文化共生センターのホームページを是非ごらんください。今年度リニューアルしております。
次に研究・研修についてでございます。兵庫県教育委員会は日本語指導研究推進校3校で研究を進め、日本語指導支援推進校の担当教員、日本語指導は日本語指導支援員、子ども多文化共生サポーター派遣市町の指導主事、派遣校の管理職等を対象とした研修会を実施しております。
しかしながら、担当者や指導者が異動等により2、3年で交代する、また、それぞれの立場によって身に付けたい専門性が異なるために、指導者等のスキル向上、ノウハウの蓄積などが課題となっております。その上、散在地域では日本語指導をできる指導者や、それに対してスーパーバイズができる指導者そのものの数が少ないため、市町教育委員会が独自で研修を行うことは難しいという課題がございます。
そこで、県教育委員会は日本語指導や多文化共生教育に必要な知識やスキルを身に付けたいと考えている教職員等を対象とする日本語指導養成研修会を開催しております。この研修を受講した人が地域のリーダーとなれるよう、文部科学省委託事業のモデルプログラムを活用しながら、研修会の内容の充実に向け、試行錯誤を重ねているところです。
最後に学習支援についてです。子ども多文化共生サポーター派遣事業は、教育課程内で、原則在籍学級において、母語を話せる子ども多文化共生サポーターが、母語によって担任等の学習指導等の補助をします。日本語指導研究推進事業は、「特別の教育課程」による日本語指導も含めて、教育課程内で、在籍学級において、担任または教科担任が、誰もが分かりやすい教科指導について、研究を進めております。
日本語指導支援派遣推進校事業は、2通りございます。1つは「特別の教育課程」において支援員が、日本語指導の補助をする。または、放課後に支援員が日本語指導をしています。85%が少数在籍校でございますので、日本語指導担当教員が配置されることはほぼございません。その中で、少しでも外国人児童生徒が安心して学べるように、子ども多文化共生サポーターを派遣しております。また、日本語指導担当教員がいない学校でも外国人児童生徒が分かりやすい授業を行う。そして、児童生徒が自分の夢を実現させるために義務教育段階で日本語の習得と基礎学力の定着を図るため、日本語支援員を派遣する。このように事業を展開しているところでございます。
公立高校の入学者特別枠選抜実施校ですが、先ほどお話もございましたけれども、今年度から3校から5校に広げ、入学後の支援も行っております。まだまだその条件や支援体制については研究・検討していく段階ではございますけれども、児童生徒の自己実現を図れるよう、引き続き指導・支援を充実してまいります。
最後に、まとめにかえて、散在地域である兵庫県の取組について報告しました4つの視点に基づいて、今後の課題等をお伝えします。
指導支援の体制についてです。今報告をさせていただきましたとおり、子ども多文化共生教育の推進については政令市の神戸市も含め各市町教育委員会の理解、協力を得ながら子ども多文化共生サポーターを派遣しておりますので、受入れについてはある程度円滑に進められていると思っております。
しかしながら、転編入後の支援、特に日本語指導や学習支援に関しては、地域間格差、同じ市町内でも学校間格差がございます。冒頭に日本語指導が必要な児童生徒の状況を御紹介しましたが、公立学校に在籍する外国人児童生徒のうち約68%は日本語指導が必要ではないと学校あるいは教師が判断しており、この児童生徒は特別な支援の期間を終え、自己実現を目指す子ども多文化共生教育の中で育っていることになります。しかし、生活言語が話せていても学習内容は習得している状況なのか。
一方、日本語指導が必要な児童生徒は約32%おりますが、そのうちの78%の児童生徒は学校に1人、又は2人の在籍です。日本語指導の専門性のある教員の配置や指導も期待できないという状況にあります。
それから、日本語指導が必要な児童生徒を地域別に、特別の教育課程を受けている、特別な指導を受けている、特別な指導を受けていないに分類してみました。ただし、日本語指導が必要な児童生徒には全く日本語が話せないというレベルから、学年相当の学習内容の定着に課題があるという児童生徒まで幅が広いということを念頭に置いてお聞きいただければと思います。そこを踏まえた上で、例えばAという地域ではどちらかといえば外国人の方が多く在住されているため、支援を行う意識は高いのですが、加配教員の配置が少ないため、特別の教育課程の実施率は高くはありません。
一方、Bという地域は、ある1つの市に外国人児童生徒等の在籍率が高い学校がございますので、加配の教員も多く、特別の教育課程の実施率が高い。その一方で、その市内であっても少数しか在籍しない学校、あるいはその周辺の市町では在籍学級で支援を受けている児童生徒が多いという状況でございます。
対象となる日本語指導が必要な児童生徒も、その必要とする支援のレベルが変わっていく上に、県や市町、教育委員会担当者、管理職、担当教員が2、3年で変わる現状では、日本語指導だけではなく、学習についても継続性のある支援を行う体制整備については、散在地域では常に課題となっていると思っております。
次に、指導者支援についてです。先ほど、担当者等が2、3年で変わると申し上げましたけれども、児童生徒の情報はカルテ等で引継ぎがあったとしても、その情報を読み取ったり次の手立てを考えたりするための情報を得ることが難しい現状があります。せっかく支援を続けてきたのに、またゼロから始まるということも少なくありません。また、初めて外国人児童生徒等が在籍する学校に異動になった先生方については戸惑いが多いという現状でもございます。兵庫県教育委員会は、これまでにも県独自にマニュアル等を作成してきましたが、初めて担当になる先生方がどのようにやっていけばいいのか、それから、兵庫県は母語支援者が派遣されるというふうな県の施策も生かしながら、まずは登校初日、そして次の1か月というように、それぞれの立場で支援等の見通しが持てるようなマニュアルを作成しようと今年度取り組んでいるところでございます。
それから、母国において児童生徒が、何年生でどういう内容を学んでいるのか。日本は学習指導要領、教科書もあり、大体この辺を学んできているなということが把握できますが、外国のカリキュラムの情報は得にくいところです。もしそういうことが大まかでも分かれば、学校現場、先生方がすごく助かるのではないかな、児童生徒の事前学習や復習、補習に生かせるのではないかと思っています。県や市単位では調べることが難しいので、こういう情報を持っておられるところがあればと、常々思っています。
次に研修・研究でございますが、これは体制整備、指導者支援に重なる点が多くございます。第1回会議のときに申し上げたのですけれども、先生方には日本語指導が必要な児童生徒の支援のために研修等を受けていただきたいのですが、働き方改革を進めている中で、時間を余り増やすことができない現状があります。
そうした中で、先生方が知りたい、学びたいと思ったときに必要なのは、スーパーバイズをしてくれる人なのか、あるいは互いに学び合える場なのか、そういう人や場が散在地域の近くにあればと思います。また、兵庫県教育委員会といたしましては、児童生徒の実態に応じた支援を行うため、また、どこで児童生徒が困っているのかを把握するためにも、DLAの研修は必要だと考えております。活用のための研修、実践事例など、国には有効な情報発信を期待するところです。
そして学習支援についてです。ここも大きな課題がございます。進学のための受験があるため、中学生になって来日した生徒には高いハードルがございます。正に時間と学習量との格闘です。ICT活用の可能性を考える必要もあるのではないかなと思っております。ただ、本県ではICTはまだ情報検索の方法程度の取組でございますので、また今後いろんな情報を頂けたらと思っております。また、学校だけではなく地域での支援、外部支援者の活用の在り方の検討も必要なのではないかと考えます。
最後に、「障害のある」または「あると思われる」子供たちも含めて、この課題についても学校に御理解いただくための情報が必要だと考えております。
兵庫県教育委員会の取組について説明をさせていただきました。途中でお示ししましたとおり、様々なネットワークを構築し、それぞれの立場で取り組んでおりますが児童生徒や保護者、学校の願い、思いには十分に答えられておりません。それでも外国人児童生徒と、それから外国につながりのある児童生徒の自己実現が図られ、多文化共生社会を目指すように努めてまいりたいと思います。
御清聴ありがとうございました。
【浜田副座長】
村松委員、ありがとうございました。散在地域での取組として、子ども多文化共生教育の取組ということで、各部局とのネットワーク、国際交流協会ですとかNPOも含めたネットワーキングに力を入れておられるということ、それから、日本語指導者が得られない場合に、学校全体で分かりやすい日本語を用いた指導の充実を図るという取組をされていることなどを御紹介いただきました。それでは、同じように、ごく簡単な質問がございましたらお受けしたいと思います。いかがでしょうか。
藤巻委員、お願いします。
【藤巻委員】
ありがとうございます。兵庫県の外国人教育支援、児童の教育支援がよく分かりました。子ども多文化共生教育というタイトルで最初に人権教育が出てきたんですけれども、今回の有識者会議のテーマの1つでもある日本人児童生徒に対する人権教育とか、あるいは異文化理解教育、国際理解教育については何か取組をされているのか、教えていただけますか。
【村松委員】
「外国人児童生徒に関わる教育指針」を策定したと冒頭に御紹介しましたとおり、外国人児童生徒だけではなく、全ての子供たちが外国人に対する偏見や差別の不当性について認識を深めたり、あるいはそういう偏見や差別をなくしていこうとする意欲や態度を身に付けさせる教育の推進しております。学校では人権教育の時間や教科等の時間を使って国際理解教育を行っています。先ほど御紹介しました子ども多文化共生センターの教材、資料を活用したり、ボランティアが学校に招かれたりしています。あるいは子ども多文化共生サポーターがいることでその学校の子ども多文化共生教育が進む、サポーターさんもその立場で自分たちから発信しています。
【藤巻委員】
学校において国際理解教育というのは、総合の学習みたいな時間を使って行っているということですか。
【村松委員】
そうですね、全ての学校というのは難しいかもしれませんけれども、そういう時間を使いながら行っているところが多いと聞いております。
【藤巻委員】
分かりました。
【浜田副座長】
ありがとうございます。それでは、まだ御質問はおありかもしれませんが、全体の意見交換に移らせていただきたいと思います。ただいまの櫻井委員、村松委員からの御説明も踏まえまして、それから冒頭に御説明ありました資料5の事務局作成メモにあります内容を中心に、委員の皆様から御意見を伺えればというふうに思います。御発言がおありの方は、恐れ入りますが挙手をお願いできますでしょうか。
一応、御報告の中では集住地域、散在地域、それぞれの課題、あるいは課題を踏まえた取組について御説明があったわけですけれども、平成28年度の有識者会議の報告では、集住地域につきましては拠点校を中心とした指導体制の構築の推進、それから散在地域につきましては拠点的機能を中心とした広域の支援といったようなことが提言されているわけですけれども、そのほかにこういった支援が必要ではないかとか、あるいは、こういった体制ではこういった課題が残るのではないかとか、現場のことをよく御存じの皆様もおいでになりますので、是非とも具体的な事例も含めて御紹介いただければ有り難いかなというふうに思います。
いかがでしょうか。
【浅田局長】
すみません、すごく単純なことで。
【浜田副座長】
浅田局長、お願いいたします。
【浅田局長】
ごめんなさい、ちょっと私、一部抜けていたので聞き漏らしていたらすみません。ポケトークとか、そういう新しい機械がどんどん出てきていて、私は基本的には便利なもの、使えるものはどんどん使ったらいいと思っているんですが、今現在の使い勝手といいますか、どの程度使えるものになっているのか教えていただけないでしょうか。
【浜田副座長】
いかがでしょうか。櫻井委員から使っておられるという御報告があったんですけれども、御感想など伺えればと思いますが。
【櫻井委員】
例えば、親が来たとかいうときに、ポケトークがあれば、その場で何を話したいかということが分かりますので、そういった点では便利なものだなと思いますが、精度を確認するというところがなかなか難しいものですから、実は教員が個人で持っていたポケトークで話をしたら実は違っていたということがありまして、よくよく話していくと、保護者が言いたいことと、それから学校が保護者から聞き取ったと思うことがうまく合わなかったものですから、こちらの相談員が保護者に電話をしたら、いや、そういう意味ではなくてというところがあったので、本当にそれが合っているかどうかというところを信用して使っていると、連絡事項などのやりとりぐらいだったらいいんですけれども、子供の進学に関わる、発達支援に関わるというようなところではなかなか使うことは難しいかなと思っているので、ないよりはいいぐらいのつもりで今、私どものところでは使っております。
【浜田副座長】
ほかにいかがでしょうか、お使いになった……。高橋委員、お願いします。
【高橋委員】
ポケトークとか、あとVoiceTraという無料のスマホアプリがありますけれども、それに、またVoiceBizというものが作られていますけれども、日本語で音声を入れると母語が表記されて、またその母語が日本語に翻訳されるという3段階になっているんですね。ですから、日本語が正しく入っていても、翻訳されたものがまた日本語に翻訳されたときに違っているかどうかが分かるんですね、3段階になっているので。最初に入った日本語と、後から翻訳された日本語が違っていることがままあります。やっぱりどうしても、先ほど櫻井委員がおっしゃったように、長い文章になると精度が落ちてくるので、なるべく短文で伝えていかなきゃいけないというところがあると思います。ですからなかなか実際に授業の場面で使うというのは難しいかもしれないんですけれども、私が関わっている学習支援教室では、デジタル教科書というか、デイジー教科書というのがあって、これは障害者用の教科書なんですけれども、音声を読み上げてくれるものなんです。あれを自分で見て、読んでくれる。ルビ付きのものと、ルビ付きでないものがありますけれども、そのときに出てきた単語とかを自分でタブレットで翻訳して意味を調べるみたいな、自分で勉強していくツールとしてはすごく有効なんですね。読み上げた日本語を正しく聞いて、その言葉をポケトークなりVoiceTraで音声入力して、自分の言葉がちゃんと日本語に入ったか確認でき、翻訳した意味が2回できるっていう、手間はかかるんですけど、そのときに母語支援者の方がいてサポートしてくれるとより有効ですし、それは予習で使うのがすごく効果的なんですね。予習で前もってやると、授業に参加したときの理解度が全然違うので、予習でそういう機械を使うことは多分今後効果的な利用になるのではないかなと、個人的には思っています。
【浜田副座長】
ありがとうございます。では田中委員、お願いいたします。
【田中委員】
私たちの支援現場でもVoiceTraを推しアプリとして結構活用を進めているんですけれども、翻訳の精度を確保するためにインプットの日本語をやさしい日本語にしなくてはならないという、一段階、活用のための研修が必要だという認識でいます。やさしい日本語での会話みたいなものがスムーズにできないと、今の段階では翻訳アプリは、単語レベルか、本当にごく限られた定型文レベルでの使用にとどめるべきだろうと認識しています。頂いた資料5の事務局作成メモや、お二方の御発表を伺って、やはりポイントになるのは人材の育成と不足であろうと思います。学習の直接的な支援にせよ、親御さんの支援にせよ、あるいは母語の支援にせよ、散在地域にせよ、集住地域にせよ、いずれにせよ支える人材をいかに確保するか、あるいはそうした支援人材の支援をどうしていくかという部分が研修等も含めて課題になるんだろうと思います。リソースが限界を迎えている中で、やはり効果的に施策を展開するためには、ある程度距離を超えて広域で対応するというような視点がやはり必要不可欠かなと思いまして、そういった意味でもICTを活用していく、例えば研修自体も県庁の中で実施するものを配信して遠隔で受講できるようにする、あるいはそれを録画して配信していつでも見られるようにするですとか、あるいは母語の支援人材も、言語的マイノリティーのお子さんが出てきたときにどう対応するかみたいなことを考えれば、県単位で母語支援人材を確保しておいて、オンラインでつないで、必要があるときに母語支援者をつなぐ。あるいはお子さんの出身国との協力を得て、時差が許せば海外とつないで母語の教育支援を受けるというような発想も技術上は可能になっているということですので、そうしたICTの活用方法、包括的課題、全ての課題にそうした支援を取り込んでいくとなると、人的資源の限界やコスト面での限界などを少し打開しやすくなるのかなと捉えています。
【浜田副座長】
貴重な御意見ありがとうございました。
いかがでしょうか、ほかに。
【高橋委員】
ちょっと今の補足をさせてください。ICTの翻訳システムですけれども、精度を上げるという意味では、今、多分総務省と文部科学省共同で進められていると思うんですね。エンジンの精度を上げる、データベースをどんどん広げるというようなことをされていると思うんですけれども、VoiceBiz自体がやっぱり値段が高くて、今、行政端末としては大分利用されているようなんですけれども、学校現場ではなかなかやっぱり単価が問題で利用が難しい状況にあるんです。これがもうちょっと普及すると、データベースのエンジン精度も上がって、運用基金も上がるんじゃないかと思うんですけれども、もう一つは、NPOがもうちょっと安価に使いやすいような仕組みを是非検討していただくと、多分NPOの方が使う機会は多いんじゃないかと思うんですね。学校だとなかなか、全体の中で先生の使うチャンスというのが学校によって大分限られてくる可能性があるんですけれども、NPOはそういう、外国につながる子供だけの学習教室がたくさんできていますので、そういうところでうまく、そういったICTを使うということが普及すると、非常にエンジン精度も上がって使い勝手がよくなるんじゃないかと思いますので、是非文部科学省、それから総務省も関わっていると思うので、何か連携して検討していただければと思います。
【浜田副座長】
ありがとうございます。いかがでしょうか。
古沢委員、お願いいたします。
【古沢委員】
今の人的資源に関連して、特別免許状制度、特別非常勤講師制度自体、自治体によって非常に要件が厳しくて、なかなか活用されていないという面があるんですが、どのあたりが課題になっているのか、両委員に、村松さんと櫻井さんにお聞きしたいと思います。
【浜田副座長】
ありがとうございます。櫻井委員からお願いしてよろしいですか。
【櫻井委員】
この特別免許状制度というものが正規と同じような役割をしていただくような免許状だということを、直接免許のことに関係しているのが私たちの部署ではなくて教職員課なものですから、実際にこの特別免許状制度を使ってない理由は何かということをちょっと聞きましたところ、結局10年という期間の中で、実際に正規教員と同じような感じで雇用していかないといけないと、先を見通して、1年、2年というスパンの中で採用するというものではないと。臨時免許とは違って、10年という区切りがあるものだから、雇用される側も10年ということで考えて応募してくるだろうし、雇用ということを考えたら、その人の人生も関わってくるものだから、もちろん採用に当たっては、試験ではないですけれども、そういうものもあるということで、その人を正式採用みたいな感じで採用していかないと気軽には難しいという話は聞きました。
【浜田副座長】
ありがとうございました。
では、村松委員、お願いいたします。
【村松委員】
免許の担当課ではありませんので回答は難しいのですが、県の採用というところで考えますと、散在地域では、そこだけに特化した採用というのは難しいところがあります。
外国人児童生徒に関する知識がある方たちが採用されるような条件整備など考えられないものか担当課と話したこともありましたが、今すぐは難しい状況です。日本語指導が必要な児童生徒も日本語の習得が進んで支援が必要ではなくなるなど、学校の在籍状況が社会状況によって変わったり、地域によって変わったりすることがありますので、散在地域では、難しいという印象がございます。
【古沢委員】
ありがとうございました。
【浜田副座長】
ありがとうございました。いかがでしょうか。教員配置のことに話題が移っておりますので、事務局でお作りいただいたメモの中の教員配置についても、是非委員の先生方の御意見を伺いたいと思います。
義務教育標準法の改定で、基礎定数化というのが今進められている途中ではありますが、実際には、基礎定数ではなかなか十分な指導ができない中、県費、市費の先生方というのを各自治体で工夫しておられるかと思いますけれども、そのあたりのことを差し支えない範囲で結構ですので、少し御紹介いただければ有り難いかなと思いますが、いかがでしょうか。
櫻井先生、よろしいでしょうか。
【櫻井委員】
先ほどの話の中で皆様にも御紹介させていただいたんですけれども、結局18人に1人ということで、その基礎定数の部分と、それから10年掛けてということで、今年3年目で、総数の10分の3が定数化されて、それ以外のところは加配ということで頂いております。加配の基になっている人数が28年の数字ということで、うちの市町だけでもかなりの数の子供たちが増えておりますし、特別の教育課程を実施することが子供たちのよりきめ細かな指導につながるということで、そういう指導をとにかくしてもらうということを学校にも投げ掛けておりますので、実数としては増えております。
その実数が増えて、この2年間でもう180という数字に増えて、28年を基にした数字からだと、なかなかきめ細かな指導までいくような教員が配置できないということで、教科指導員という制度を始めたわけなんです。ただ教科指導員も全部の学校に配置できるわけではないものですから、先ほども村松委員の方からありましたが、1人、2人の在籍がある学校というのは、特に教科指導という面ではどうしても何もできないまま、子供たちの努力にお願いをしているというところになるわけなんですが、本当は拠点があって、巡回指導などをやれるようなそのシステム作りができればいいのかなと思っておりますが、まだそこまでは浜松市では至っていないというのが現状です。
【浜田副座長】
ありがとうございます。村松委員、いかがでしょうか。
【村松委員】
兵庫県の場合、18人以上在籍する学校は姫路市に数校あるだけで、日本語指導担当教員の加配は難しいです。
ただ、外国人の児童生徒については、受入れ等支援が必要ですので、外国籍の児童生徒が在籍する学校に配置された児童生徒支援加配教員には日本語指導や生活支援をしていただいています。
拠点校となりますと、先ほども言いましたとおり、日本語指導の専門性のある教員を配置することが難しいわけですから、自分の学校だけではなく、他校に巡回指導するということも現状としては難しい。また、子供が移動するにしても、教員が移動するにしてもかなり時間が掛かります。時間制限のある中でどこまできめ細かなことができるか。現状としてはなかなか難しい。小学生の子供たちが拠点校に行く交通手段もないため保護者の方に送っていただくことになります。保護者の方たちはそういう時間がとれませんので、拠点校を実施していただきたいけれども、現状としてはなかなか難しいというジレンマがあります。
【浜田副座長】
ありがとうございます。どうしても散在ですと、先生が巡回をするか、子供たちが移動して拠点校に行くかということなんですが、様々な課題があるというふうなことかと思います。
ほか、いかがでしょうか。
松尾委員、お願いいたします。
【松尾委員】
多文化教育を専門にしております。前回は欠席ということでした。
集住地域、散在地域のそれぞれにおける支援の在り方ということで面々ございますが、ここにありますような形で、方向性としてはそうなのかなとも思うんですけれども、一番思いますのは、何を手掛かりにこういう議論をしていくかということがなかなか見えてこないところがありまして、恐らく実践されている方々は感覚で話すことができるかもしれないんですけれども、やはりデータがとれていないんじゃないかということを感じておりまして、これまでの継続から考えますと、日本語指導が必要な児童生徒というのを軸にして、それと学力の関係でありますとか、高校入試でありますとか、大学入試の関係でありますとか、例えばそういう基礎的なデータがありますと、拠点校とそうじゃないところを比べて、よしあしみたいなことを議論することが可能かなと思うんですが、そういう基礎的なデータがないというのが1つ課題かなと思っております。
個人的に思っておりますのは、まずはこれまでの継続から難しいことは分かっておりますけれども、日本語指導が必要な児童生徒とはどういう生徒なのかという基準を明確にして、できるだけ全国で統一できるような形にして、そのデータをベースにいろんなほかのデータとリンクさせながら活用を考えていくと。もっと言いますと、本当に日本語なのかということもあると思います。
例えば、PISA調査でありますと、移民一世、移民二世という形で、移民という言葉は使わないにしても、そういうデータを基に、世代間のデータを比較しながら政策提言に結び付けているということもありますので、そういったデータに基づく教育政策というのが求められていると思いますので、議論の手掛かりになるような、政策設計の在り方というか、そういったのも併せて検討していただくと非常にいいかなと思います。
【浜田副座長】
松尾委員、ありがとうございます。
今、データが必要というふうな御提言がありまして、1つは日本語指導が必要であるという基準を明確にするという御提言だったんですけれども、例えば、ほかにどんなデータがあるといいかというような、もし具体的なことがありましたら、松尾委員、もう少し伺えたら有り難いかなと思うんですが、いかがでしょうか。
【松尾委員】
例えば、先ほどのPISAの調査ですと、移民という言葉はいろいろありますので使わないとしても、移民一世の場合は両親ともに外国生まれであり、自身も外国生まれの子供である。移民二世の場合は、両親ともに外国生まれであり、自身は移住国地域生まれの子供であるという形で定義されているわけです。外国人の子供たちといってもいろんな子供たちがいるわけで、だから、どういう属性を持っている子たちがいて、その子供たちと学力であるとか、進路であるとか、キャリア形成であるとか、それにリンクしているのかみたいなデータがあると、すごく実質的な議論が進むんじゃないかなと思います。
【浜田副座長】
ありがとうございます。そういった子供たちの背景と、あと、例えばPISAですとか、全国学力調査ですとか、そういったデータをリンクさせて分析していく必要があるというふうな御提言かと思います。
すいません、藤巻委員お願いいたします。
【藤巻委員】
すいません、データということで、ちょっと一言お願いしたいんですが、前回の有識者会議では、散在地域に拠点校を設けて、教員が巡回するということが報告書に盛り込まれたと思います。今回もその延長線上でお話が進んでいるかなと思うんですが、例えばこれを受けて、北海道の道南地域なんかで何が行われているか聞いてみると、そういうことは全く行われてないということでした。兵庫県は散在地域ということですが、北海道の場合は超散在地域なので、そういったことが行われてないのかもしれないんですけれども、前回の有識者会議以降、前の会議の報告書で盛り込まれた拠点校設置と、教員の巡回というのがどの程度行われているかという基礎的なデータがないと、その先の議論もできないのかなという気もいたします。もし事務局の方で、そういう実態把握をされているんであれば、あるいはそういう資料を出していただいて、それを基に議論をした方がいいと思います。前回の有識者会議との連続性といいますか、ここの事務局メモにも拠点校の話がまた出てきているので、実際その拠点校作りというのは進んでいるのか、教員の巡回というのは行われているのかというところをちょっと知りたいなと思いました。よろしくお願いします。
【浜田副座長】
事務局の方からいかがでしょうか。その後、内田委員に御意見を頂きたいと思います。
【三好課長】
男女共生課長でございますけれども、データ整備の必要性というのは正におっしゃるとおりでございまして、今後いろんな調査をしていきたいと思っております。
きょうも参考資料1、2というところで、しれっと本邦初公開の資料も実は入っているんですが、平成30年の受入れ状況調査のデータの中から、指導体制とか、検証の状況とか、受入れ体制がどう変わっているのかと。これで見ると、いわゆる日本語指導の支援員とか、あるいは母語支援員なんかも含めた方々の派遣というのは少し市町村で進んでいるなというようなデータが、これは要するに一番上のデータですね、一番上の棒グラフの青色の方が市区町村における様々な支援員の派遣というところで、例えば338が367になっているとか、334が341になっているとか、多少進展しているようなものがありますけれども、それ以外のところでは進んでないというところがございますが、2年に1回やっております受入れ状況調査の最新のデータというものが、今、最終報告段階に来ておりまして、また、この有識者会議の議論の中でも紹介をしていきたいと思っております。
それから、もう一つ、今回初めてやらせていただきました全国レベルでの就学状況調査も春に実施をして、今、データを集計しているところでありますが、今回せっかくの機会ということもありましたので、今、藤巻委員の方から御指摘のあったような、要するに各地域において拠点校というものでやっているのがどういう体制でやっているのかとか、あるいは、今、日本全国で日本語指導補助者とか、母語支援員が何人いるんだというデータも、今まで文部科学省は持っていなかったので、そういったことも、その調査の中で今回確認をとっておりますので、できれば次々回の有識者会議ぐらいまでにはお示しができるように準備を進めていきたいと思っております。
【浜田副座長】
ありがとうございます。
では、内田委員お願いいたします。
【内田委員】
ありがとうございます。今のお話も受けて、母語支援員とかいうお話で、データとかで出てくるときに、いつもどうしても就学前って全く出てこなくなるんですけれども、その辺もう少しでも何か入れていただけたら有り難いです。
小学校の前に何をやっているところがあって、そういうところは一体効果があるのかないのかというのも、出てくれば、やった方がいいのであれば、皆さん積極的にされるだろうし、そこのあたりもとりにくい年齢だということは重々分かっているんですけれども、一部でも出てきたら有り難いなと思います。
それが1点と、その前の話で、散在地域で派遣してというお話を伺っていて、でもNPOさんさえいないのが本当の散在地域になってくると思うんですね。そうすると、結局、現場の教員にどういう対応ができるかという話に最後のところはなっていくので、そこまで、これだけ外国籍の子供たちが日本各地に広がるようになってきているので、拠点校配置だけでは解決しない地域があるんじゃないかということをやっぱり考えざるを得ないんじゃないかと思います。
そうすると教員の研修に行くかなと思うんですが、ちょっと前にTALISの教員調査の結果が出てきましたよね。先月、もうちょっと前でしたっけ、ウエブでダウンロードできるようになっているんですけれども、そこで日本の教員は圧倒的に多文化への対応に対して自信がないと答えている数字が非常に低いんですね。だから、そこもせっかくデータで根拠として出てきていますので、そこをどうするかというところも含めて考えていけたらなと思いまして発言させていただきました。
以上です。
【浜田副座長】
ありがとうございます。ほかいかがでしょうか。
高橋委員、お願いいたします。
【高橋委員】
調査に関わることですけれども、先ほど松尾委員もおっしゃったんですが、日本語指導が必要というところの考え方にも関係あるんですけれども、やっぱりどうしても、日本生まれとか、小さいうちから日本に住んでいる子供の指導の必要性というところが数字的に見えてこないところがあって、どうしてもそういった日本生まれであったり、小学校前とか小学生低学年で日本に来た子たちが、実は日本語の定着がなかなか難しいんだよということがもうちょっと明らかになれば、日本語指導の教員がもっと必要だねというふうになるんじゃないかと思うんです。日本語指導が必要だという概念もそうですけれども、神奈川県のある市では、日本語だけではなくて、教科の理解がそれに伴ってなかなか難しいというような概念も組み入れたりしているんですね。ですから、その辺の何か調査というか、明確化があると、もうちょっと教員加配等が広がるんじゃないかなと思っています。
【浜田副座長】
ありがとうございます。よろしいでしょうか。
予定していた時間がそろそろ近付いてきております。本日は浜松市、それから、兵庫県での御報告を踏まえて、皆様方から様々な御意見を提案していただきました。
1つ目はICTの活用ということで、地域が離れている散在地域の状況、あるいは、なかなか教員が確保できない、支援員が確保できないというふうな状況の中で、リソースをいかに効率的に使っていくかということを考えると、やはりICTの効果的な活用が望まれるという御意見がありました。
それから、支援体制を考えるために、やはりデータに基づいた議論が必要ではないかということで、これまでもたくさんのデータを集めていただいていますが、例えば、就学前の子供たちの状況ですとか、あるいは、日本生まれの子供たちの学力を含めたいろんな課題というのが浮かび上がってくるような、そういったデータ、あるいはデータ分析といったようなものが今後求められるのではないかという御意見がありました。
また、教員のグローバル化が必須という御報告もありましたが、散在地域では、やはり一人一人の教員の力量というものに子供たちの支援が懸かっているという状況が非常に強うございます。そういった教員のグローバル化への対応の能力をどういうふうに高めていくかということが非常に大きな課題として指摘をされたかと思います。
限られた時間ですけれども、様々な御意見をどうもありがとうございました。
それでは、事務局の方にお戻しをいたしたいと思います。連絡事項等、よろしくお願いいたします。
【林調査官】
ありがとうございました。
お手元にある資料4をごらんいただければと思います。
資料4、今後のスケジュールですが、次回の開催日時については、第3回は、8月28日水曜日の10時から12時を予定しております。第4回については、9月24日火曜日の15時から17時。第5回が、10月29日火曜日の15時から17時。すいません、ここはちょっと会議室の関係で、予備日として10月28日月曜日の10時から12時。第6回については、11月26日火曜日、15時から17時。ここもすいません、会議室の都合上、予備日として11月25日月曜日の10時から12時ということで予定しております。申し訳ございません、スケジュールの確保の方をお願いいたします。
第5回、第6回については、会議室が決定次第、どちらかの日付にするかというのは早急に連絡を差し上げますので、よろしくお願いいたします。
また、本日の配付資料につきましては、そのまま置いておいていただければ、後日郵送させていただきますので、よろしくお願いいたします。
以上でございます。
【浜田副座長】
それでは、これにて閉会とさせていただきます。皆様どうもありがとうございました。
―― 了 ――
総合教育政策局国際教育課