学校における携帯電話の取扱い等に関する有識者会議(令和元年度)(第5回) 議事要旨

1.日時

令和元年9月2日(月曜日)15時30分~17時30分

2.場所

文部科学省 中央合同庁舎第7号館 東館3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 関係団体からのヒアリング
  2. その他

4.出席者

委員

伊藤委員、上沼委員、竹内委員、玉田委員、森田委員
【ヒアリング協力者】
全国特別支援学校長会、全国市町村教育委員会連合会

文部科学省

蝦名審議官(初等中等教育局担当)、松木児童生徒課生徒指導室長、伊藤児童生徒課専門官、粟井男女共同参画共生社会学習・安全課安全教育推進室長、齋藤情報教育・外国語教育課長補佐

5.議事要旨

※事務局より資料についての説明があった。
【座長】 それでは、まず、全国特別支援学校長会から御説明いただきたいと思っております。
【全国特別支援学校長会】 まず、全国特別支援学校長会に関しましては、5障害種、視覚障害、聴覚障害、そして、肢体不自由、知的障害、病弱と、五つの障害種の学校長会で成り立っていて、その統括をしているのが全国特別支援学校長会ということになりますので、小学校、中学校、高等部、幼稚部からある学校もございます。その中で、各障害種によって取扱いが変わってきますので、その辺の話もさせていただきたいと思います。
また、実は携帯電話につきましては、特に全国的な調査は、今のところ学校長会としては行っていないです。今日話をすることについては、各障害種の方から聞き取った内容で把握している範囲ということで、御承知おきいただければと思います。
まず、携帯電話の持込みについてですが、実は、特別支援学校については、従来携帯電話の必要性については非常に言われていて、この平成20年に文科省が通知を出す前から、携帯電話については各学校で取扱いをしているという現状があります。
なぜかというところですが、理由を大きく五つ挙げさせていただいています。
まず、一つ目は通学時の必要性。特に視覚障害とか聴覚障害は、本当に携帯電話がいろいろな連絡のツールになっておりますので、通学時に必要となります。それから、知的障害の方も一人通学をしている。肢体不自由の方についても、一部一人通学をしている方がいますが、そういう一人通学時にきちっと連絡が取れるということがとても重要になります。
二つ目は、緊急時や災害時においてどう連絡を取っていくのかといったところです。携帯電話が、学校としても、今一番児童生徒と連絡を取れるツールでもありますし、昨今、公衆電話等もなくなり、何か困ったときに、自分から発信をすることが難しい方もいらっしゃいますので、本当に緊急時、通学時にきちっと連絡を取って安全確認ができるかということが、特別支援学校長の中では非常に大きく取り上げられております。
三つ目は、企業訪問・現場実習における必要性。就労を目指して、学校から離れて一人で企業等に行って実習を受けてくるときの、終わった後の連絡であるとか、また、聴覚障害の方については、実際に面接を受けているときに、どういった内容が必要なのかということを携帯の方にきちんと打ち込んだり、また、音声言語に切り替えたりということで、本当に必要なツールとして、この携帯が活用されているということです。
四つ目は、家庭や学校との連絡手段についても、今は携帯をお持ちの方が多くて、家の電話で連絡することが難しくなってきているということです。また、御家族の方でも障害のある方がいます。そういう方たちとの連絡調整については、通常の中ではなかなか難しい部分で、迅速に連絡を取るためには携帯電話の必要性があります。
最後に、五つ目は、GPS機能の有効活用ということです。一人通学をしていると、行方不明になってしまったり、安否を確認するような場面が出てきます。そういったときに、きちっとGPSの機能を使うことによって所在地を確認していくということが、障害のある児童生徒の通学等についてはとても必要であり、有効でもあり、基本的には、特別支援学校については、携帯電話が必要であると考え、各学校でルール等を決めて対応しているという現状があります。
持込みをする場合のルールがあるのですが、これはもう学校によって様々です。ただ、基本的にはルールをきちっと決めて、保護者との共通理解、また、児童生徒の理解の上に進めていますが、多いのが、登校時に学級担任等が全部集約をして預かり、鍵の掛かるロッカー等があれば、そこに施錠をして入れて、最後、下校時に返却をする。要は、登校した後利用するということをしないようにしている学校もあります。
また、自己管理ができる場合については、持ってきて、その後、かばんの中にあるということは確認をしますが、持ち出さないようにしていくこともありますし、軽度の知的障害の方については、自分で鍵を管理して、ロッカー等も準備されているところは、その中に入れておくということで、それぞれの学校で児童生徒の実態に応じた管理の方法を採っています。
届け出制も行っていて、保護者から同意を得て持ち込みますということを、学校の年度の当初に、携帯電話を使用するということについて保証しておく。そういう貴重品を子供たちが勝手に持ってきていないという状況を、確認しておくためのルールを設けている学校が非常に多いということでございます。
課題としては、ルールについて、なかなか徹底し切れないところです。子供たちとの間でのルールの徹底よりも、家庭との共通理解も非常に大切だというところです。ルールを徹底しても、そのルールの理解度が子供たちによっても違うということもございますので、どこまでルールを徹底していくか。言うだけではなかなか難しい部分がある。
学校内で管理する方法も、先ほど教員が預かることと自己管理の場合がありましたが、盗難、紛失、それから、破損があった場合にどうするのかということも、管理をする場合には課題として挙げられております。
それから、携帯電話によるトラブルというのは、どこでも起こり得るし、起こっている内容です。それに対してどのように対応していくかという知識や理解については、教員、子供たち、それから、御家庭の方も、きちっと共通に認識をしていかないと、トラブルが広がっていくという状況があります。特に、破損した場合どうするか、学校側が預かると言ったのだから、学校が補償しなさいという場合もあるのですが、なかなかそうはいかない。個人の持ち物ということもありますので。ただ、必要性がある以上、その辺についてどう理解を求めていくかということが、今は課題となっております。
続いて、トラブルが起きたときどうするかといったところですが、トラブルの例としては、SNSについては、利用に起因するトラブルが多いです。いじめの問題、画像の流出ということは、実際に起きています。
また、携帯電話はどうしても依存性が強いので、校内にいる間は確かに管理をして、操作をしないというようなこともできるのですが、通学の途中については、単に安全性の連絡を取るという手段ではなく、本人たちがいつでも確認ができる状況にもあるので、ずっと見ているということにもつながっています。
トラブルが発生しますと、まずは状況を把握しなければならないということもあります。それから、全体への周知と、個別の指導ですね。
未然防止策としては、警察署や携帯電話の会社の方たちと連携して、研修会を開いたり、これは児童生徒だけではなくて、保護者の方に対しても、そういった内容のものを周知して、学校と家庭が連携できるようにするという対応をしている学校が非常に多くあると聞いています。
携帯電話の持込みを認めた場合に想定される、教育活動や生徒指導への影響については、先ほども触れましたが、やはり紛失とか盗難、それから、いじめについては、とても大きな影響があるだろうと。要は、携帯電話を持ち込んで、それを授業中に使う、使わないというよりは、携帯電話の使用方法、児童生徒同士のコミュニケーションのためにも当然使える手段ではあるけれども、やはり使い方。それから、それを行うことによって、どういう影響が及ぼされるのかということが、なかなかイメージできずに、単に操作性で扱ってしまうというケースもあって、その辺は、自分だけではなくて、他人に対する影響が非常に大きいということがあります。
中には、不適切な画像をダウンロードしてきたりするお子さんもいて、どういう状態であるのか管理をしておかないと、トラブルを起こし、それが教育活動にも影響していく、ほかの生徒の指導にも影響するといった状況です。
いじめについては、特別支援学校の中でもあります。LINE等によって、つらい言葉を投げかけられたりということも中にはありますし、それが引き金になって二次障害を起こすようなケースも出てきているというのは、事実としてあります。
最後、携帯電話の持込みに関する保護者や生徒、教員の声とありますが、非常に要望は多いです。携帯を持たせてほしいということについては、生徒、保護者からは要望が多いということもありますが、もちろん、特別支援学校としては必要性を感じているので、きちんとしたルールの基に取扱いはしていますが、課題は都道府県、地域によっても山積しているということは耳にしておりますので、今後、様々に取り組んでいかなければならない内容ではないかと考えております。
以上で説明を終わらせていただきます。
【座長】 それでは、続きまして、全国市町村教育委員会連合会から、よろしくお願いします。
【全国市町村教育委員会連合会】 まず、第1に、全国市町村教育委員会連合会としての携帯電話の取扱い等に関する活動についてですが、特段活動はしていないという状況です。都道府県の市町村教育委員会連合会の各会長が集まっての会議が年に何回か開催されるわけですが、このメンバーにつきましては、教育長あるいは、教育長職務代理者で、都道府県ごとに1名会長がいますが、その中で、学校における児童生徒のスマートフォンや携帯電話の持込み等についての話題は、今のところ出ておりません。また、話題にしてほしいというお話も出ていない状況です。
私ども、全国連としては、内閣府から出されている通知がございます。「青少年の非行・被害防止全国強調月間」、これが7月いっぱい行われたわけですが、その取組依頼が全国連の方にも届いておりましたので、これを都道府県教育委員会・市町村教育委員会連合会に全て流しまして、是非とも国の取組に沿った取組をそれぞれがしてほしいという依頼をして取り組んだところで、その中身について1番から6番まで、通知を写させていただいたところでして、協力をしていただいたということです。
特に、1番のインターネット利用に係る子供の性被害の防止、これを国として最重点課題と挙げておりましたので、私どももこれが第一の重点課題だということで、協力を求めたところです。
2番です。学校における携帯電話の持込みに関する現状ですが、これは(1)、今日資料にも出されておりますが、文部科学省からかつて出された通知文によりまして、それぞれの教育委員会、そして、学校現場の中で運用されていると理解をしておるところでして、その中身については、1番、2番、細かくは読みませんが、1番については、携帯電話の持込みは原則禁止とすべきであること、それから、2番としては、例外的に持込みを認めることも考えられる。このような場合には、校内での使用を禁止したり、登校後に学校で一時的に預かり下校時に返却するなど、学校での教育活動に支障がないように配慮すること。この2点が文科省から出されている内容でして、これに基づいて、県教育委員会も、市町村教育委員会も、現場の公立小中学校の校長先生方も取り組んでおられると認識をしております。
(2)について、一部の教育委員会からの聞き取り内容のまとめということですが、1番、緊急時の児童生徒に係る保護者への連絡等につきましては、一斉メール等を使っているので、今のところ不都合は生じていないという回答でした。
2番、個別な事情がある場合には、後ほど御説明しますが、個別に対応している。区域外通学、あるいは、病気への対応等です。もう少々具体的に後ほど触れます。
3番、学校への携帯電話等の持込みについて、保護者からの持込み要請がある市町村教育委員会と要請のない市町村教育委員会とがあると書いてあるわけですが、要請のない市町村教育委員会がほとんどであると、私ども全国連事務局としては把握をしておるところでして、これにつきましては、現場の校長先生方の認識とは若干離れているかもしれません。細かく市町村教育委員会に報告があるわけではないと思いますので、我々が把握している以上に、現場の校長先生方は御苦労なされているのかもしれませんが、全国の小学校長会、あるいは、中学校長会、また、本日、特別支援学校の校長会からもお話がありましたので、それについては、そちらのお話を伺っていただきたいと思います。
4番ですが、携帯電話の持込みを可能とした場合、新規に購入しなければならない家庭が多いのではないかと思うわけでして、これも一つの大きな問題かと思います。
5番、教育委員会の児童生徒に係る携帯電話の所持率については、それぞれいろいろな数値をお持ちかと思いますけれども、私どもが把握した小学校5・6年生児童の所持率は65.3%、そして、中学校が82.7%と把握しているところです。もちろん、前後はあろうかと思いますが。
6番、聞き取った範囲内では、今後、携帯電話等の持込みについて、市町村教育委員会として検討する予定があるかどうかを尋ねたところ、ほとんどの教育委員会が、その予定はありませんという回答を得たところで、これは先ほどの全国特別支援学校長会とは違った情報になってしまうかと思いますが。
3番、現状に対する意見についてですが、1番、多くの市町村教育委員会が、携帯電話等の持込みは原則禁止としているが、特別な場合は、学校ごとに校長が保護者との協議を行った上で許可している現状にあるので、特段問題がない、必要性は低いと言っているのではないかと把握しております。
2番、現状では、携帯電話等の持込みの「原則禁止」については、公立の小中学校に限ってですが、原則禁止を解く必要性は今のところ低いのではないかと捉えております。
持込みを可能とする場合、先ほど申し上げました、家庭の経済的な負担を考える必要がありはしないか。
4番、5番、ゴシックにしてありますが、携帯電話等の持込みについて、「原則禁止」から変えるのであれば、「市町村教育委員会の実情に応じて」、可能か否かではなく、「柔軟に対応する」に、国としては変更したらいかがか。ただし、学校ごとの対応は避けるべきだという意見です。
それから、5番目ですが、携帯電話等の持込みを巡る問題にかかわらず、携帯電話等に係る事件、事故を未然に防ぐ対策を、今も優先してそれぞれがやられているとは思いますが、今後も取り組むべきであるという意見を添えておきました。
その他ですが、これは文章化していないわけですが、現に大学生、社会人でも、スマホやSNSの誤った扱いによって大きな実害が出ている現状である以上、十分にこの有識者会議で御議論いただきまして、結論を出していただく必要がありはしないかと思います。
先ほど申し上げた特例、特別な場合って一体どんな場合なのかということですが、区域外通学が想定されます。
二つ目として、緊急性の高い病気などが考えられます。
それから、三つ目は、事件、事故を含めた非常災害時に、児童生徒がひとりぼっちにされてしまう環境に置かれた場合には必要かと思うわけですが。学校の校長先生方によって、特別な場合がどんな場合なのか、御判断をしていただいて、必要だと思われる児童生徒につきましては、許可をしているということで問題はないのではないか。しかしながら、緊急性の高い事件、事故、非常災害時で必要だという場合につきましては、全児童生徒に関わる問題になるということです。
最後になりますが、この有識者会議が現在5回目ということですが、どのような方向に進められているか、私は十分理解していないわけですが、どのような形で変えられようとも、県教育委員会ですとか市町村教育委員会は、文部科学省から出された通知は絶対的なものという見方をして取り組む教育委員会がほとんどだろうと思います。それが、現場の校長先生方に通知されますので、現場の校長先生方もそのように認識し、実践に移すだろうということから考えますと、今の平成21年1月30日に文科省から出された通知を変えるということであれば、慎重に議論をされて、いろんな問題を想定した上で結論を出していただきたいということを、全国市町村教育委員会連合会としては要望させていただきます。
以上です。
【座長】 それでは、ただいまの両団体に関する御質問、あるいは、更には小学校、中学校、高等学校について、前回お話しいただきました。その内容も踏まえて、いろいろ御意見もお持ちだろうと思いますので、それについてお願いしたいと思います。
【委員】 まず、全国特別支援学校長会に質問させていただきたいです。私も立場上、岡山、鳥取、兵庫県、大阪、いろいろなところの特別支援学校の先生方と支援をしていて、特にスマホの必要性もすごく感じていますし、一般の学校以上に、有効活用、ICT活用されているのを把握しております。その中で、すごく子供たちの可能性が広がっているのも分かるのですが。
一方、活用の中で、トラブル事例がありますよね。最終的に認めていられたり、ロッカーで使われたり、いろいろなことがありますが、把握しておられる範囲で構いませんので、持ってこさせることによって、どういうトラブルが実際起きていて、それに対してどんな対応をしているかというのを聞きたいのですが、いかがでしょうか。
【全国特別支援学校長会】 一つの事例ではあるのですが、やはりいじめの問題です。何気なくA君がB君に誹謗中傷的なメールを送信すると、それを保護者の方が確認して、学校も確認することで、そこで一旦は消去したりとか、一回見た段階ですぐに削除したりということはできるけれども、止まらずにまたやってしまう。結局、保護者等でも管理しきれない場合、1回目は分かりました、消しましたということで、送られた保護者も納得されるけれども、2回目送られてくると、どうなっているのかというトラブルが起きます。一度指導をして、すぐに改善ができればいいのですが、実際に出すメールとか、送ってしまう画像について、自己コントロールができないようなケースで、それが複数回繰り返されるといったときには、どうしてもトラブルになってきます。それはもう生徒同士だけではなくて、やはり保護者も学校もそこに入っていかざるを得ないので、どう管理をしていくかということが起きてきます。
ただ、先ほども言ったように、スマホそのものがどうしても必要だといった場合に、持たせないということが現実としてどうか。踏み込んで話をしていかないとならないところがあります。特に一人通学をしているお子さんについては、それがないことで、本当に何かあったときに、安否の確認も、安全管理も、それこそ公共の交通機関を使っていると、様々なトラブルがあって、自分ではなかなか対処できないときに連絡ができないということになる、それこそ命に関わるので、どっちを優先しますかといったところで、ルールを子供たちと一緒に確認しながら進めていかねばならないといった事例は、割と多く上がってきているということです。
【全国特別支援学校長会】 携帯電話もしくはスマートフォンについて、これを持っていることによるトラブルというのは、今言ったような話がありますが、大体の学校は、学校に持ってきた後に預かってしまいます。うちの学校もそういう形をしていますが、教育活動上の支障があるかというと、学校にいるうちはないかもしれない。
でも、学校が終わった後は、携帯電話をお持ちの方が、特別支援学校のお子さんでも結構いますので、一般的なスマートフォン等のSNSのトラブルというのはあるだろうと思います。
だから、学校の中にいるときの教育活動の支障なのか、スマートフォンを持っていることの支障なのかは、きれいに分けないといけないと思います。
ですから、特別支援学校の場合にも、お持ちの方が結構多いので、学校としても、当然スマートフォンの使い方についてもしっかり指導していく。その意味においては、教育活動の中にスマートフォンを使うという機会を設けないといけない部分も、特別支援学校はあるかもしれません。
小中学校全ての事例と同じかもしれませんが、例えば、生活の勉強をするような時間に、スマートフォンの正しい使い方を学校が教える機会を設ける必要は、教育活動上はあるかもしれない。特別支援学校の場合は。そこら辺の整理をしないといけないと思っています。
以上です。
【委員】 もう一点だけお聞きしたい。確かに、持っていることによるいじめ、それから、校内で預かることの支障について。校内で支障はないとおっしゃるのですが、どんな形で管理をしているか。携帯電話を預かる際の管理の仕方とか、保管の仕方であるとか。それから、トラブルが起きたとき、例えば、預かっているときに壊れたとか、公立の小中学校については事例があまり聞けないので、そのあたりについてお聞きしたいのですが、どうですか。
【全国特別支援学校長会】 先ほど少し触れましたが、登校して集めるという学校が多いです。それが、実は携帯電話だけではなくて、貴重品、それこそお金であるとか、お財布であるとか、定期券であるとか、要は、子供たちが登校して、学校の中では必要ないけれども、ないと困る貴重品関係を、朝の段階で担任が全部集めて、貴重品袋みたいなところに入れて、職員室等の管理のできるロッカーに入れて施錠するといった学校が非常に多いのではないかと思います。
ただ、中には当然自己管理というような学校もあると思いますが。実際にどれぐらいの生徒が持ってくるのかによって管理の仕方が変わってきます。本校の場合は知的の小中なので、自主通学をする子供たちは少なく、携帯を実際に持ってくるお子さんというのは多くないですね。そうすると、かばんから出さない形で、持っているのは分かっているけれども、教室の中に置いておいても特に盗難等はないです。
ただ、高等部等で、ほとんどのお子さんが自主通学をしている場合だと、定期等を持ってきます。携帯電話も必要だと持ってきている場合には、担任が実際には預かる。
ただ、預かったときに、やはり破損とかが出てきます。本来貴重品は持ち込まないというのが学校の原則としてあっても、持ってこざるを得ない。破損については、基本的に傷が付く程度であれば、学校が責任を取ることではなく、そこについては同意くださいというような同意書を保護者から頂いているところが多いとは思います。
【全国特別支援学校長会】 私の学校は、肢体不自由特別支援学校と知的障害特別支援学校、それぞれ小中高があり、六つの学部があるところなので、一人通学を中学部ぐらいから始める方もいらっしゃいます。小学部で持ってきている方はほとんどいらっしゃらないと思いますが、中学部ぐらいから持ってきて、高等部の方はかなり持ってきています。
どうやっているかというと、各教室に金庫があります。簡単な金庫を買いました。手持ち金庫みたいな、ちょっとしたダイヤル式みたいな。本当は職員室に持っていきたかったのですが、先生方が職員室まで来るのに時間がかかるので、教室で管理したいということがありました。私とすれば、ものがなくなっちゃっても困るし、壊れても困るから、簡単な金庫に入れるというルールを作りました。
ただ、そのときに、携帯電話だけが問題になるわけではありません。お金の問題とか、お財布の問題とか、定期の問題とか、もう学校に来たらお勉強に関係ないものは先生に預けてねと。先生が預かったときに壊れても大変だし、なくしても大変なので、やっぱりこの金庫の中へ入れておくということをやっています。高等部と中学部で生活の決まりを作って、学校に持ってくるときには、必ず保護者の方に、持ってきてもいいけど学校は預かるという約束事をして、保護者の方にも御説明した上でやりとりをしています。
【委員】 要するに、破損については同意書を取って、故意の場合は別にして、過失がない場合は見てもらう。それから、金庫とかロッカーを用意しないと、なくなったり、大変なことが起きるということですよね。
【全国特別支援学校長会】 特別支援学校だから、自己管理をするということは、お子さんの責任にするわけにもいきませんので、やっぱりそこら辺は学校としての管理をしなくてはいけませんが。逆に言うと、学校とすれば、私物の持込みを学校がどこまで管理するのかという責任の線引きがありますので、そこら辺を保護者の方の了解の下で、両方が一所懸命やるというところ。こういう管理は学校がしますけど、ある程度ものが壊れたりすることについては、持ってきている保護者の方も了解してくださいという、やりとりはせざるを得ないと思います。
【委員】 分かりました。小学生にしろ、それから、中学生にしろ、未成年なので、同じような感じで私たちも聞かせていただきましたが。ありがとうございました。とても参考になりました。
【委員】 携帯電話だと、壊れるというのは、過失だったら、ごめんねというのはできると思うのですけど、貴重品をお預かりになっていたわけじゃないですか。そのときに、保護者の方とどういうお約束の上で預かるお話になっているのかというのを教えていただければと思います。
【全国特別支援学校長会】 これも同じですね。要するに、学校に入学するときの段階で、貴重品については、一度学校がお預かりしますと。本来であれば、多額の金額を持ち込むのは避けていただきたいけれども、高等部あたりになってくると、小銭を持たせることもありますので、定期とお財布はまず預かります、帰り際に返しますので、というようなことを、まず入学のときに話して、約束事として、それは同意を取りませんが、学校のルールとしてお伝えすることになっています。
【委員】 今お話を伺っていたら、大体一般的にいろんなところで起こるトラブルと同じようなトラブルが起こっていると伺ったのですが。特別支援では、いろいろなタイプの障害の方がいらっしゃると思うのですが、そういうことで起こる問題の違いというのはございますでしょうか。
【全国特別支援学校長会】 知的障害のお子さんについては、やはりSNSのルールをしっかり守らなければいけないということについてよくお話をしないと、課金のかかるゲームをいっぱいやる、もしくは、個人情報を写真で上げてしまうということなどに対して、やらなければいけないところはあるかもしれないです。
ただ、視覚障害のお子さんとか聴覚障害のお子さんは、一般的なルールについて、一般的に分かってくださいという指導をしていく。知的障害の場合は、お子さんの障害の状態に応じて、分かりやすく具体的に説明をしていくということが必要かもしれません。
【委員】 私の方から幾つか。
先ほど、持ってきて、かばんの中での管理という説明があったのですが、この場合も同意書といったものは得ているのかというのが1点。
それから、もう一点は、発達段階、あるいは、障害の程度によるということで、自己管理は難しいという話があった。そうなると、年齢の低い、あるいは、障害の重いお子さんに対しては預かる。その後、自己管理ができる子供には自己管理をさせるという考え方になるのでしょうか。その2点についてお願いします。
【全国特別支援学校長会】 まず、かばんですが、これは同意書を取ります。要は、一人通学をするという段階から同意書を取っていきます。ただ、それをする際には、是非GPSの機能を持っている何かを携帯させてほしい、いつでも確認ができるように、ということで、そこからもう同意を取っていくので、携帯電話についても、持ち込む段階では同意を取りながら進めているので、全くこちらが関知しないということはないです。
あと、先ほどあった重度のお子さんの場合については、なかなか自分で操作をするということが難しい方もいるので、そこまでは求めていない。ただ、先ほどもあったように、すっといなくなる、行方不明ということがないわけではないです。いろいろ思いがありますので。なので、居場所の確認をする上で、本人は知らないけど、かばんの中に入れておくということも実はあるんです。取り出さないけれども。そういうのもありますが、重度のお子さんは基本的には預かることが多いと思います。
ただ、そのうちだんだん自己管理へというところについては、卒業後の社会生活を考えたときに、就職した後に、会社が預かってくれますかというわけにはいかなくなります。作業所なんかもそうですが。そうしたときに、どういう管理をしますかということについては、やはり自己管理のできる生徒さんについては、きちっと自己管理のできる力を付けていくということになるので、これも先ほど話したのですが、学校によっては、軽度のお子さんだけが通ってくるような学校もありますので、きちっと鍵の掛けられるロッカーを全部用意しておいて、自己管理をしなさいといったようなことで、生活指導も含めた中で実施している学校もあると聞きます。その学校の子供たちの実態によって、自立に向けた指導の一環として、ルールを決めて行っているのではないかなというところです。
【委員】 もう一点だけお聞きします。鍵の掛かるロッカーという話がありました。それが適切だろうなと思っているところですが、市町村の小中学校は、ほぼ鍵が掛かるロッカーがないというところが、大きな課題になっているかと思っています。
それから、これについては、教育委員会さんの方への質問になるのですけれども。実を言うと、先ほど、だんだんと自立へということで、預かるところから自己管理へという話が出てきたところですが。実際、小中学校の校長会の方々のヒアリングをこの場でさせていただいたときには、小学校の方が自己管理をさせている状況になっていて、中学校では預かっている状況が結構多かったです。このあたりのところで何か御意見をいただけたらありがたいなと思っています。
【全国市町村教育委員会連合会】 小学校では自己管理をさせているというのは、クラスの実情にもよると思いますけれども、特段の問題が起きにくいのが小学校だろうと思っております。中学校になりますと、やっぱり担任の目を気にしながら、使いたいときに使ってしまうということを避けるために、担任の先生、学校として預かるような形をとっている、あるいは、事故を防ぐために預かっているというのが正直なところかなとは感じましたけれども。実情によるだろうと思いますね。
【委員】 そうなってきたときに、小学校については、保護者との信頼関係の下で行うので、先ほど特別支援学校さんの方では、同意書を求めた上での持込み、これについては、かばんの中であろうと、あるいは、預かりについてもというお話があったところですが。実際、小学校の方では、信頼関係という話の中で、同意書を必ず取ると、かえって摩擦が生じてしまうのではないかというような意見もあったのですが、このあたりのところはいかがでしょうか。
【全国市町村教育委員会連合会】 大変難しい問題だと思います。前提として、全児童生徒に持たせるのかどうか、あるいは、希望者だけ持ってきなさい、自分のものがある児童生徒だけ持ってきなさいという場合であるかによって、いろいろと意味合いが変わってくるだろうと思います。自己管理をしていて壊れたときだとか、予想もつかないようなトラブルがあったとき、誰の責任なのかという責任論も含めまして、大変難しい問題だと思います。教育委員会と校長会がしっかりと連携を取って、文科省からの通知を基に、一つの線に定めていくだろうと思いますから、そこら辺は、一つの線が定まったらお任せする形をとらざるを得ないのかなと思いました。
【委員】 保管方法について、今お話があったように、小学校は割と自己管理で、中学校が学校保管ということがあるのですけれども。今、特別支援学校の先生方がおっしゃったように、やっぱり鍵付きのロッカーで金庫に入れるというのがないと、発達に偏りのある子とか、いろいろな子がいるので、特に若年層は、いろいろ不安なこともあるということを考えると、今あるねじれの状態、小学生が自分で持っていて、中学生は学校が管理するという形について、携帯電話を持ち込ませるということになってくると、考えなければいけない状況がある。しかし、今大きな課題と先ほどおっしゃいましたけど、莫大な予算が要りますよね。その問題等も考えなければいけないし、非常に難しい問題だと思います。
特に、これから許可をする場合とか、しない場合、いろいろな場合が想定されますが、子供たちが自分で保管するということも考えた場合に、今後、数がどんどん増えていった場合、ロッカーがない状況で自己管理をこれまでどおり続けていったときに、例えば、今、先行事例でやっておられる特別支援学校の先生方とか、教育委員会の方々が、小学生が自分で保管することに関して持っておられる懸念であるとか、不安であるとか、そのあたりをお聞きしたいのですが、いかがでしょうか。
というのも、私はいろいろなところで、いろいろな小学校や中学校や特別支援学校にも絡んでいるのですけれども、以前、ある特別支援学校のお子さんが、動画を見るのが好きで、性的な動画がすごく好きな男の子や女の子もいますよね。その中で、盗撮の動画に興味を持った子がいて、女子トイレをのぞくのが好きな子が、同じことをするために、持ってきた携帯電話ですき間から女の子のところを見た子がいて、「何でいけないのか」と言うわけです。みんなネット上でやってるではないかと。それを幾らやっても止まらなかったような事例等も、小さい子には考えられます。
だから、そのあたりも非常に難しい問題だと思うので、お金のこともありますし、難しいですけれども、子供たちに自分で持たせておくこと、かばんで保管させておくことに対する懸念とか、実例とか、不安とかについてお聞きしたいのですが、いかがでしょうか。
【全国特別支援学校長会】 携帯電話の管理について、うちの学校のルールというのは、持ってきたら先生に預けるということでやっていますが、実は今、小学部、中学部、高等部についての話の中で、本校の場合でも、高等部のお子さんがルールを守らなくなる例というのは結構あります。
それも一つの発達の側面であるわけですが、自意識が成長するに伴って、管理されることから、自分でやりたいという気持ちが芽生えてくるわけです。
そのときに、やってもいいこととやってはいけないことというのはいつでもあるもので、それをどう教えているかということと、持っていいことと持っていけないことを同じ話にしてしまうと、また話が違ってくると思います。やっていけないことは、持っていようが持っていなかろうが、学校の中以外でも、やってはいけないわけですから。
だから、繰り返しになりますが、学校の中で持たせないからといって、課題のある使い方をしなくなったとは限らないと思います。そのこととはきれいに分けないといけないのかなと思っています。
あと、ルールのことで言えば、小学校では自分で管理ができて、中学校になってくるとなかなか管理できないというのは、特別支援学校の中でも、成長の発達の段階でよくあることだと思います。そのときに、大人側がどうしていくのかというのは、すごく難しいです。同じだと思います。
ただ、私の思いをお話しさせていただくと、我々の方も決して、文科省の21年度の通知の、全てのお子さんが自由に持ってきていいという原則ではないということはあります。今、連合会の方がおっしゃっておりましたけど、2番の携帯電話を緊急の連絡手段としてやむを得ず持ってこなくてはいけないケースが、特別支援学校の場合は多いということです。皆さん持ってきてくださいというわけではなくて、原則はこれに従っているのですけれども、特別な支援の多い方は例外が多いので、個別対応をしなければいけないという流れですので、全て持ってきていいということではないと思っています。
【全国市町村教育委員会連合会】 基本的には、今、特別支援学校の校長先生がおっしゃられたことに同感です。
もう一つは、金庫等、保管の関係を考えますと、予算はそれぞれの教育委員会が工面しなければならないということになるわけで、新たな予算付けというものがいかに難しいかということです。
私は教育委員会を長年務めさせていただいて、このお仕事に就かせていただいているわけですが、現職時代、教育委員会時代、それこそ1万、2万、10万、20万、すぐ付くだろうというものでさえ、財務課担当に首を振らせるのは難しいということでして、最終的には財政担当の部長なり、あるいは、市長なり、直接教育長とお話に行って、そういう大変な状況なのかということを御理解していただいた上で、特別に予算を付けていただく。そうなりますと、その後の財務課と教育委員会との関係が大変悪くなるということで、まあ難しいです。
ただ、今お話が出ているように、原則禁止を解いて、それぞれ持ってこさせる方向で考えようとするならば、やっぱり管理の策というのは、何もしないで持ってきていいというわけにはいかないであろうと思います。ですから、方向によっては、教育委員会は教育委員会としての策をしっかりと練って対応すべきであると考えております。
【委員】 ちょっと進めて議論したいのですけれども。今、大阪が先行していまして、大阪の場合は、小中学校とも子供が自分のかばんの中で管理しなさいと。その中でやっていこうということを原則として出されて、この1年間かけてどうするかを、大阪としては認める、だけど、あとは各市町村で考えていきなさいという、まさにおっしゃったような形でやられているのですけれども。今、私もいろいろな教育委員会と一緒に考えていまして、子供が自分で持つかどうかという、そのあたりの予算の面等というのが、今非常に大きな問題となっています。大阪の御意見は、そちらには通っていないですか。
【全国市町村教育委員会連合会】 大阪については、文書等で、インターネット等で調べさせていただいただけで、特段お話はしていないわけですけれども。大阪の取組について知ったときには、正直言って驚きました。
ただ、想定される問題、今おっしゃられたような性的な問題等々、こういうものが初めから想定されているのに、策を持たないで、持ってきていいですよというわけにはなかなかいかないだろうと。事件、事故が起こってから対策を考えましょうというのでは、後手後手だろうと思います。
ですから、これから進むであろう方向性に従った策を、しっかりと教育委員会として持つということは責務であろうと考えます。
【委員】 その大阪のきっかけとしては、まさにおっしゃったように、学校ではもちろん必要ではないだろうと。それから、教育活動の中でも必要ないだろうというのは、前提としてあるのですけれども。聞くと、大阪で北部地震がありまして、非常に不安に思われた保護者が、何か緊急事態があったときにどうするのかと。それで、許可なく持たせてはどうかというのが出発点で、まさに学校にいるかどうかというよりも、登下校時が問題で、自然災害というのはいつ起こるか分からないから、常に登下校中はかばんに入れて持たせてはどうかという議論です。
だから、おっしゃるように、教育活動云々の話というよりも、登下校中がまさに今大きな問題で、登下校中に震災がいつ起こるか分からないということにあると。そこが議論の出発点で、これは大阪だけではなくて、南海トラフであるとか、東京のいろいろなところ、いろいろな震災があったところがあって、そういう議論でいくと、登下校中に持たせてくれと。持つと、当然、学校にも持ってくることになるので、保管という形になるのですけれども。その辺の登下校ということに関しては、どのようにお考えになられているか。
特に支援学校の場合は、電車に乗ってきたりする子もいますし、登下校の話についてはどう思われるか、お聞かせください。
【全国市町村教育委員会連合会】 私どもの考えといいますか、この会議に出て個人的に思った発言になってしまいますけれども。非常災害時といいますと、これは全児童生徒に関わる問題で、一人で置かれた環境の中で、保護者が連絡を取りたい、子供から親に連絡を取りたい、これは方策がないわけですよね。ですから、その連絡を取らせるためにのみ、非常災害時のみに連絡を取り合うため持たせたいとなると、分かりましたと言わざるを得ないだろうと思いながら聞かせていただきました。
ただし、登下校のときというのは、これは特別支援の関係とはやっぱり切り離して、私ども、公立の小中学校だけで考えますと、特段必要性はないのかなと把握しているところです。特に登下校で必要な場合、区域外等々、それから、事故に遭った場合等のルール作りについては、最初から想定されますので、それについてはルール作りをし、保護者への理解を求めておくということでして、何とかなくても乗り切れるのかな、そんな考えの下で、今後とも検討する予定はないという回答を得ていると思っております。
【委員】 ただ、災害はいつ起こるか分からない。もう明日起こるかもしれない。ということで、常に持たせたいという保護者がいっぱいいるというのが一つと、あとは、この前私も非常に驚いたのですが、川崎で下校時に刺される子がいましたよね。それで、保護者がすごく心配されるわけですよ。いつ起こるか分からないから、子供のために持たせたいという方もおられて。ただ、私たちからしたら、刺す人が来て、携帯でお母さん助けてというのもなかなか言えないけれども、心配される保護者のことも非常に分かる。
だから、そのあたりが今大きな議論の中心かなと思います。いつ起こるか分からないので、今時だから、常に携帯で、GPSで分かるようにするというのも考えておられるという、そのあたりは多分議論の中心になっているかと。だから、非常事態で特別な状態が常に想定されるので、今時だから持たせたいという保護者と、いやいやそれはというのと、その大きな乖離があるのかなというのは思います。
私も、都会であればすぐ近くですが、今、平成の大合併で、遠くのところから通っている学校とか、バスで行っている学校とか、たくさんあるので、田舎であったりすると、非常に心配するお父さん、お母さんも今おられる。特に、彼らは、家に家電がないです。スマホを持っているお父さん、お母さんは、家に家電がないので、帰ってから子供に持たせているので、子供に電話があって、みんな電話を持っているのが普通の状況になっている現在、子供にスマホぐらい持たせてほしいという保護者の声もたくさんお聞きしますので、そのあたり難しいなというのが率直な感想ですけど、そこについてお願いします。
【全国市町村教育委員会連合会】 私も、この会に出させていただいて、改めて勉強させていただいたわけですけれども。非常災害時、いつどこで何が起こるか分からないから持たせることにするという理由付けは、ものすごく説得力があると思います。どの保護者も納得するのではないかと。命を守るために、あるいは、緊急時、非常災害時ですよね。これを説明すれば、どの保護者も、学校も、校長先生方も、そのとおりだと思うと思います。
一方で、非常災害など起こるわけないだろう、たまたま起こりやすいところが起こっているという見方をされる保護者が、私はまだ多いのではないかなと思います。地域によって、その格差はものすごくあるのではないかな。その格差が大きい中で、一つの方向性を論じながら、一つの形を定めようとすることにかなり無理があるのではないかなと感じます。
【委員】 現場の御意見、大変参考になるのですけれども。学校側が今大変なのは、保護者の責任領域と学校側の責任領域というのがあまりはっきりしていなくて、何でもかんでも学校にやってくれみたいな感じになってしまうので、大変なのかなという面があると思います。
それで考えると、どのように子供の登下校の安全を図るかというのは、本来保護者の領域であると思います。保護者の領域であるのに、その保護者が、そのためにうちは携帯を持たせたいと言っているときに、要するに、登下校なので、どうしても学校に持ってこなくてはいけない。学校の持込みがだめだから登下校に持たせないという話をすると、今度は保護者の方が、では、登下校まで学校が責任を持ってくれるのかみたいな方向に流れることはないのかなというのが気になっていて。
例えば、先ほどおっしゃったように、親によっては、すごく震災とかを気にしています。その震災を気にしている親がいるのと、いつ起こるか分からないからいいよという親がいるのと、それは御家庭の考え方なのでいいと思うのですけど。そちらの気にしない親のために、気にする親が制限されるという話になると、何か起こったときに、「だから、私はそう気にしたではないか」みたいな話になりかねないのかなというのを気にしています。
お話をされているときに、登下校について責任を問われる可能性というのは、今現在、話としては出ていないか伺ってみたいのですが。
【全国市町村教育委員会連合会】 私の経験したお話で、少々前になりますが、学校の水道から出る水は飲ませられない、あるいは、保護者は学校に水筒を持っていかせたいという問題がかなり強く出された時代がありました。これはそんなに昔のお話ではありません。しかしながら、学校としては、水質も定期的に検査し、しっかりとおいしい水が水道から出る、水筒をあえて持ってこさせる必要はないということで、どの校長先生方も、それは受け入れられないということで処理してきた問題がありました。
しかしながら、ここ数年、猛暑が続いておりまして、熱中症ということで騒がれる事案がものすごく出てきました。それから、だんだん教育委員会も、校長先生方も、気持ちが徐々に変化し始めて、今や普通になってきています。
そのときに出た問題、水道の管理は誰がどのようにするのかと。全て何が起こっても保護者の責任にするのか、あるいは、学校の問題なのか、衛生的な問題は一体全体どうなるのか、水といいながら、水筒の中身の問題はどうなのかという問題が、実はいろいろと出された時代がありまして。そこで、学校側と保護者側で相談させていただいて、あるいは、教育委員会ももちろん報告を受けて、そして、ルール作りから始めて、このルールの下に、では、許可をしましょうということで、どの学校も導入し始めたという問題がありました。
ですから、大もとは、やっぱり子供が一人になったときに守ろうではないかという大人の発想から、実際問題、携帯をどうするかということですので、持ってこさせる、持ってこさせない、あるいは、どんな形にせよ、保護者と学校側のルール、あるいは、教育委員会として一律にルールを作るのであれば、ルールをしっかりと作り、互いに認め合ってスタートするというのが、やっぱり私は原則であろうと思います。
【委員】 登下校の責任がどこにあるのかといったところが難しい問題なのかなと思っています。
一つ言えているものとしては、登下校時は基本的に学校の管理下であるということ。スポーツ振興センターの保険適用については、子供たちの登下校は入っています。つまりは、この保険の適用の範囲で言うと、学校も責任があるということ。
一方で、今、働き方改革の中での指針が出てきていて、登下校については、教員が担うべき仕事としては外してあります。これは保護者、地域でしっかりと見守るべきものであると。
というところを考えていくと、両者の責任といったところはやや曖昧になっている部分もあって、保護者の理解をしっかりと求めていかなければいけない。今回の議論は、そういういい機会になっているのは間違いないのですけれども。
そうなってきたときに、先ほど同意書の話が出てきたのですが、やはりこのあたりのところを、きちんと保護者と学校の双方が責任のあり方を確認し合いながら、同意書みたいなものをとるなど確実に対応していく必要があると思いますが、このあたりいかがでしょうか。
【全国市町村教育委員会連合会】 おっしゃるとおりだと思いますね。しっかりと相談をしていただいて、一つの形を確立するということで、私は大賛成でございます。
確かに、登下校は管理下ということの規定があります。事故があっても何でも、管理下については登下校が含まれるということですので、保護者に登下校の見守りを任せたから学校は一切関係ないというわけにはいかないということでして、お互いに一緒になって、保護者と学校と、もっと言うならば、地域ぐるみで子供たちを守るという観点からいきますと、責任問題をはっきりさせるというよりは、皆さんで子供たちの命を守るためにどうしていかなければいけないかという、そんな議論をして、まとめた上でスタートしていただくということが大前提だろうと思います。
【全国特別支援学校長会】 お子さんの発達年齢というものもありますので、一概にこの形だということは言えないかもしれませんが、私ども特別支援学校の方のことから少しお話をしますと、実は、特別支援学校のお子さんたちが学校を卒業した後に、企業なり、福祉作業所なり、もしくは、特例子会社に勤めたときに、今の世の中全体が、もうスマートフォンのLINEとかメールで、仕事のシフトとか、もしくは、その日の欠席とかをやる時代になっています。
だから、これは私の個人の考え方になりますけれども、スマートフォンでも、携帯電話でも、確かにメリットもあるし、デメリットもいっぱいあるけれども、そんなことを言っていれば、交通の信号を守るとか、守らないということも全て同じになっていくわけで、発達のレベルによって違ってくると思いますが、ある意味、うちの高等部の生徒を見ると、持っていて当たり前、それをどう使っていくのかを教えなければいけない時代なのだろうと思ってはいます。
それを小学校の段階から教えるのかどうかというのは悩まなくてはいけないところだと思いますが、中学生ぐらいになったら、もう持っていて当たり前で、それをどう使っていくのかを教育の中で教えなくてはいけない時代なのかなと。
ただ、高いものであったり、個人のものであったりするので、鉛筆がなくなったとか、筆箱がなくなったレベルではないところが、今回の問題ではすごく大変な話で、今、話がありましたが、保護者とのやりとりの中での同意みたいなものをやらないと、学校としては、責任が負えないかなという気もしないでもないです。
もう一点は、こういう議論を進めていくことは、決して全ての生徒さん、児童さんが携帯電話を持たなければいけないという話ではないと思います。それは、保護者の方の生活の仕方とか、お子さんの状況とか、いろいろを踏まえて、その生活の仕方によって、うちの家庭は持っているから学校とのやりとりの中で同意書を求めて、うまく使っていくようなことを教えることも含めて、どうやっていきましょうかという話なのかなと思っています。
大阪のこのガイドラインを見ても、決して全部のお子さんが携帯電話を持ちなさいということではなくて、持っている人はかばんに入れて管理することを覚えていきましょうということだと思うので、そこら辺を整理しないと、正直言って、こんな事例もあります。高等部、中学部で一人通学をしていると、知的障害のお子さんは、行方不明になる場合があります。電車を乗り間違えてしまったりして。GPS機能があると非常に追跡しやすいです。
ただ、だからといって、保護者の方に携帯電話を買ってくださいとは言えないです。持っている方は使ってくれるとうれしいなと思いますが。我々の方から、買わなければ一人登下校させませんとは絶対言えないので、あったらうれしいけど、買うか買わないかは保護者の判断だし、GPS機能を使うか使わないかも保護者の方の判断になります。
そこら辺について、御家庭とよく御相談、連携をしながら、まず学校としての責任を踏まえながらやらなければいけないというのは、現実的な校長としての判断になるかなと思っています。
【全国特別支援学校長会】 これも私見にはなりますが、実際、20年前はありませんでした。携帯電話という、本当にこんな大きい、担いでいくような、会社の社長さんなんかが持っていて、車の中にもあるぐらいで。それがだんだん発達してきて、ガラケーになり、今はスマートフォンというふうに時代が進んできた中で、その当時、もしもいなくなった場合に、探すすべがなかった。だから、それこそ現場実習へ行きました、一日経っても帰ってきません、でも、連絡の取りようもないし、探しようもなかった。電車に乗ってくれれば、終電でどこかへ引っかかってくれれば何とか保護できるかなとか。でも、それでも見つからずに、結局、3日間歩き通して帰ってきたという子もいます。命があったからいいですけど。
それが、今の時代になって、子供たちの安否確認を、全員とは言わないまでも、確認できる時代になってきた。これをどう使うのかというところですよね。本当に命に関わるときに、すぐにでも迅速に対応すれば保護できるかもしれない。でも、一つのルールで、持たせないでくださいといったところで、持たせなかったために、それが遅れてしまうことだってないとは限らない。今、これだけ社会でいろいろと事件だ、事故だという報道もあって、親御さんは非常に不安な気持ちになっているときに、やっぱり安心材料をどう親御さんに持たせて、一緒にやりましょう、連携をしましょうという、言葉だけではない実効性を持たせることは、とても大きいと思います。
そういうことがあって、信頼が生まれて、では、どうしましょうと、次に、それこそ教育活動にうまく回っていけばいいのだけれども。その一つ一つ、全てを同じラインで行うことは難しいとは思うのですが。まず何を優先順位で考えるのかといったときに、今出てきている登下校の問題というのは、とても大きな問題ではないか。子供たちの安心をきちっと守っていく、命を守っていくということについては、必要性はやはりきちっと議論することだろうなと思っています。
ただ、強制ができる問題ではないので、あくまでも保護者の方が必要性があると思ったときに、きっと申請なりして、同意を取って、学校と連携をしながら進めていかざるを得ないと思うのですが。その辺の命というところに関しては、ほかに優先されるものがないです。この言葉を言ってしまうと。だから、そこの部分をどう取り上げていくかだろうなとは思います。
ただ、使用の問題はとても大きくて、かといって、使用させるために、違った意味で傷付き、命を落とす子もいるというのも事実ですから、切り分けながら、でも、切り分けられない問題もある。そこは両面としても議論としては必要になってくるので、どうまとめていくかというのは非常に難しい問題ではないかと私は考えています。
【委員】 まさに命の危険の問題と、日常的に起こるトラブルの問題があります。もしかしたら登下校時ということで、命の危険のために持たせてはいるけれど、それを取り出していることによって、ながらスマホの問題とか、交通事故に遭ったりする問題が発生します。安全のために持たせている道具が、もしかしたら、小さい子供がそういう機器を持っていることで、悪意の第三者による盗難とか危害に遭うというような日常的なトラブルも起こるかもしれないところのせめぎ合いになると思います。命の問題というときにはGPS機能があって、既読機能が付いていることによって、そこを掘り返せば生きているかもしれないというときのために、LINEの既読機能とGPS機能が有効ではあります。命の危険があるというところにいけば有効だけど、日常的な場面では非常に子供たちを苦しめる機能です。
特別支援学校の場合は、必要だと思うのですが、一般の小学校、中学校の生徒さんが、日常的に通学のために持っていることは、安心なのか、日常的な危険が増えるのかということについてはどのようにお考えか、伺ってもよろしいでしょうか。
【全国市町村教育委員会連合会】 これもまた難しい問題ですが。教育委員会も、多くの校長学校方も、携帯電話そのものの必要性というのは高く見ているでしょうけれども、学校への持込み、登下校も含めまして、その必要度はまだまだ高いとは認識していないという状況ですよね。先ほども申し上げたとおりでございますが。
よって、教育委員会も、今の状況下の中で、持込みは、いろいろな状況を考えても、まだまだそこまでは高まっていないだろうという見方をしているから、今後の検討をする予定はないということだろうと思いますけれども。
もうちょっと周りが高まってくれば、また認識も変わってくるのでしょうけれども、非常災害時だけを考えると必要なのでしょうけれども、通常の団体生活をする学校では、今のところ必要がないという結論を持っているのではないかなと思います。
ただ、問題が起こってからでは間に合いませんので、今後とも必要があれば、連合会を通じて、教育委員会に何らかの形で働きかけていくということは、もちろん可能でございます。必要性について議論をしてほしいということは、お話しできるかなと思いますけれども。
【委員】 先ほど特別支援学校の方からあった、特に行方が分からなくなってしまった子を探すすべとして必要という部分と、緊急時非常に近いことではないかなと思っています。そのときに、持たせたら、持込みという状況が必然的に生じてくるので、そこの部分をどうしようかというのが、ここでの議論なのかなと思っているところではあります。
そこで、頂いた資料で、3、現状に対する意見の4に、携帯電話等の持込みについては、「原則禁止」から「市町村教育委員会の実情に応じて柔軟に対応する」に変更してはどうかというところで、先ほど御説明がありましたが、このあたり、もう少し御説明していただけたらありがたいと思うのですが。
【全国市町村教育委員会連合会】 一応私は、事務局長として、私どもの会の会長がいるわけで、会長と連携を取りながら、この文面についてはまとめたものでございます。この有識者会議が、どんな問題がスタートで、どんな形を整えようとしているのかということが分からないまま作ったもので、ある程度今までの通知を文科省として見直さなければならない必要性が生じたので、この有識者会議が発足したのかということを念頭に、原則禁止を変えるのであればどうしようというところで、一つの意見としてまとめたもので、持たせてもいい、持たせてはならない、あるいは、原則禁止というところから、置かれている市町村によって状況が変わるだろうと思います。
大きな災害があった地方につきましては、その認識というものはものすごく強いと思います。ですから、また近々起こってしまうだろうという、そんな感じは当然多くの保護者、市民が持つと思いますので、そういう地方については、持たせなければならない必要性というのはものすごく高まるのではないのかなと。
そういうところと、全く災害が起こらないようなところと比べてみても、一律には答えは出ないだろうということから、市町村教育委員会の実情に応じて柔軟に対応するという形に変更してはどうかという、そんな形にまとめさせていただきました。
【委員】 実情としては分かるところがあるのですが、一方で、実情に応じて柔軟に対応せよとなると、教育委員会ごとに判断してほしいという話になるかと思います。
例えば、学校ごとの対応は避けるべきである。これはそのとおりだなと思っているところではあるのですが。区市町村として、方向付けをしなければならない。
一方で、区市町村と区市町村で考えていったときに、例えば、隣の区市では原則禁止だけれども、自分の区市では柔軟に対応といったような、見解が分かれる状況が生じてくるかなと思うのですが、この辺のところはいかがでしょうか。
【全国市町村教育委員会連合会】 難しいところですね。ですから、非常災害、これは言うまでもなく日本全国どこに起こるか分からないという観点から、どこでも起こり得るという視点で見て、一つの見解を示そうということであれば、それはそれでよろしいかなと思いますけれども。ここら辺は、議論をすべきところかなと思います。
小学校長会、中学校長会がどう考えておられるのか。一つの意見としてお持ちなのか。それから、携帯電話についての扱いについて、どう考えるのか。悉皆調査ということで、やってみるのも一つの手なのかなとも思っているわけでして。
私どもの意見については、区は話が別ですが、市町村全部で1,700以上あります。資料がなくて、正確には分からないですが。私どもに加入されている市町村については、1,600を超える数があるわけで、これを全部調べるというのも至難のわざかなとも思うわけですが。市町村の教育委員会のお考えを把握するというのも大切なのかなとは、今思っているわけですが。その程度しか答えられません。
【委員】 まさに今大阪が御提案されたような、府としては認めるけれども、あとは市町村の実情に合わせて、この1年かけて考えようという方針を出されて、7月末の段階で、私が把握しているところで、二つの市町村が、もう認めると。大阪府の出したものでそのままいこうと。それは、一つには、地域が小さいし、いけるのではないか。二つ目には、小さいから認めなくてもいいと。うちは広いから認める。二つが認めて、二つは認めない。残りは、まだ残りの1年かけて議論しようということです。
いろいろなところの教育長とお話をすると、「もう隣がどうか聞いてこい」とか、「教育委員会、どうするのか。うちだけ先走りすることはできない。どうしたらいいのか」とか。結局、聞いていたら、「文科省がどういう方針か見よう」みたいな感じも実際あって。
そういう話があったときに、東京都が、これまで高校は認めていなかったところを認めて。あれも驚きました。みんな持っていたのですが。認めたら、もう対になるように、小中学校も、都としては認める、あとは市区町村で考えろというようなニュアンスをある新聞には書いていて、別の新聞には違う形でも書いていて、よく分からないのですけれども。
私の把握では、大阪がやり、東京がやったとなると、もうなだれのように起きてしまうのではないかとも考えています。これは別に責めているわけではなくて。というようなことがあるので、決して全ての市町村が考えていないというわけではないので、だから、そのあたりのことをやっぱり。これは私が質問したら変ですけど、東京も変わりましたよね。
【委員】 東京都は、持込みについて、都立学校については、都の方で方針を出しました。一方で、区市町村については、区市町村ごとに考えてほしいという形になっています。自分の区も当然、校長会等の意見も聞きながらという形になるのですが、今後、方向を定めていかなければなりません。区をまたいだ上での情報交換をしながら、最終的に詰めていこうかというのが今の状況になっております。
【委員】 今、手元にある朝日新聞の6月20日の丸山ひかりさんという記者が書いておられる記事によると、東京都教育委員会は、20日、都内の公立小中高校への携帯電話・スマートフォンの持ち込みを認める考えを示した。災害時に連絡を取る手段として重要性が見直されているほか、高校生の大半がスマホを利用している実態なども考慮し、「原則禁止」から方針転換した。スマホを含む携帯電話の持ち込みについては……という記事があります。
こういうのを一般の方々も見ておられる状況で、多分、東京、大阪って影響が大きいですよね。だから、それに対して、私たちも考えを持っていかなければいけないし、また、先ほどおっしゃったように、時代の流れもあるし、私たちはもともと生徒指導を担当しているので、学校に持ってきたらどういう状況が起こって、どうなるかも非常に危惧するところもあるのですけれども、今、この流れというのはなかなか難しいなという考えもありますので、本当に広い議論が必要だなというのがあるので。
だから、市町村として全く考えていないと難しいと思うので、やっぱり広い議論も必要ですし、みんなで考えていかないといけないというのは思っています。そのあたりはいかがでしょうか。
【全国市町村教育委員会連合会】 私どもは、あくまでも教育委員会連合会ということで、教育委員会とは違います。それで、私どものそれぞれの担当については、教育総務課というところが担当課になりますから、学校教育とは少し離れたところになります。ですから、そこら辺、調査するにしても難しいわけですが。
市町村教育委員会で言えば、小学校長会、中学校長会の御意見を十分にお聞き取りいただいて、議論に生かしていただければ、それで私は十分なのかなとは思っております。
【全国特別支援学校長会】 特別支援学校の場合には、御案内のとおり、ほぼ都道府県立ですから、区市町村の設置というのは非常に少なくて。東京の場合も、区立は特別支援学校があります。5校なので、その場合は、区の教育委員会の御判断になると思いますが。東京都がこういう方針と決まれば、都立特別支援学校はその方向になると思います。他の道府県も多分同じではないかと思います。ですから、小中学校については、多分、市町村の教育委員会レベルでは、またちょっと議論が違ってくるのかなと思います。
【委員】 小学校の校長会と中学校の校長会の先生方のお話を伺ったのですが、小中の校長会の先生方は、原則禁止にして欲しい、また、保護者の方との信頼関係で、できれば個別に対応していきたいというような御意向を、前回は伺いました。
私自身は教員研修をずっとやっておりますので、全国でこの夏休みに20か所ぐらい、小学校、中学校、高校の現場の先生方と情報モラルの研修をいたしました。その際に手を挙げていただくと、小学校の場合はほぼ100%、先生方は持込み禁止にしてほしいという方に手を挙げられて、中学校で大体9割の先生方が禁止で、1割ぐらいが、これからICT機器を活用するという意味では、先進的に持ち込んでもいいのではないか。高校の先生方は、全く興味がないという感じでした。
実情としては、今、全国の市町村の連合会の場合も、大体同じような感じでしょうか。
【全国市町村教育委員会連合会】 その結果、校長先生方の意向を教育委員会も把握されて、今後検討する予定はないというような、そんなお気持ちを私どもに示しているのかなと思うわけですが。非常災害時を中心に論じ合うと、やっぱり必要だということになるでしょうけれども、通常の教育活動では必要性は低いと判断した結果なのかなと思っております。
ですから、非常災害時を議論するということになると、これはまた別な議論になるだろうと思いますけどね。
【委員】 まさに別の議論が今大阪では起こっていて、地震があったから持たせるようにという議論からスタートしているので難しい。
【全国特別支援学校長会】 特別支援学校長会ですけど、我々は、特別支援教育という視点においても、全国的な活動をしている点から言うと、原則という言葉がすごく難しい言葉だなと、正直言って思うのですが。
支援の必要なお子さんの中には、携帯電話を持ってきて、それで、自分の日々のスケジュールを見たり、今日の予定を調べたり、もしくは、コミュニケーションの手段にするお子さんもこの頃多くなってきています。
携帯電話という言葉で言うと、電話の機能しかないようですが、今のスマートフォンは、ほぼパソコンと同じ状態になっていますので、結構この中にいろいろな情報を入れて学校に持ってきたいという方はいらっしゃるのではないかなと、個人的には思います。
そのときに、合理的な配慮という言葉が、特別支援教育の中では当たり前にやらなければいけないといったときに、この合理的配慮として、持ってきてはいけませんということは恐らく言えなくなるだろうなと思っています。
ですから、原則という言葉がすごく厳しいように聞こえますが、危機管理のことも含めて、まさにその状況によって、どういう合理的配慮をしていくのかということは、障害という言葉だけに限らなくても、地区的な問題もあると思います。交通の便が非常に悪いところとか、連絡が非常に行きにくいところも含めて、保護者の方の御心配も含めて、持ち込んだことがあった場合には、持ち込んだときのルールについてどうしていきましょうかということを話していただくのが、特別支援教育の目から見ても、小学校、中学校でも、支援の必要なお子さんをお持ちの御家庭から、「うちの子供のために持っていきたい」と言われたときに、「いや、原則だから持ってきてはだめだよ」と言うのはなかなか難しいから、持ってきた場合ではどういうルールにしましょうかというところを定めていただくと、小学校、中学校の校長先生は楽になるのかなと私は思いますが。
【委員】 この前、確かに小中学校の先生たちは、持ち込むのはちょっとという話だったのですが、その結果どうなっているかというと、私が聞いた感じだと、要するに、特別に許可しているからほかの人には言わないで、だから、本人がかばんで管理という形で潜ってしまっていて、かえって不健全な状況になっているのかなというのが気になりました。それを信頼関係による教育的配慮と言われると、ちょっと違う気もするかなと思うので。なので、潜ってしまうよりは、きちんとお話をした方がいいのではないかなと思った。
要するに、小学生は持ってこなくていいという校長先生方の理由が、学校での管理が大変だというお話だとすると、だったら、管理の方法をどうしようかという話になるのかなと思います。なので、その辺の持ってこない理由とか、持ってきている場合に、潜ってしまっているというのではないような、そういう透明性を持ったルール作りが必要なのではないかなと思って伺っていた次第です。
なので、学校の先生たちが不要だとおっしゃっているのは、潜らせた方がいいからという話だと、ちょっと違うかなと思って。
【全国市町村教育委員会連合会】 今のお話、もちろん現実的なお話だろうと思いますけれども。潜った持たせ方は、やっぱり好ましくないと思いますよね。校長先生方が見ても、教育委員会が聞いても、やっぱりそれはしっかりと子供たちに説明をして、理解させた上でしっかりと持たせると。だから、あの子が許可されているから、私も許可しているという話には発展しないだろうと思います。しっかりと説明すれば。ですから、黙って秘密で持たせる必要性というのは、私は全くないだろうと思います。
ですから、先生がおっしゃるような形で、きちんと周りに説明をして、持たせるのであればしっかりと許可し、説明をして、理解を求めながら進めるというのが基本だと思います。
ただ、面倒くさいからとか、それは理由にはなりませんよね。面倒くさいから持込みはやめてくださいというのは。これは、一つの理由として挙げるとしたら、ちょっとやめてくれということですね。議論にはならないですよね。
【委員】 まさにそのとおりですけど。とてもよく分かって、潜って、となるのは大変だということは分かるんです。
私がこの夏に話を聞いたある小学校の先生は、受験があるので、40人のうち32人が持ってきていると。だから、私の机には32個のスマホがあると。1個10万円のスマホとしたら、ここのロッカーに320万円がある。どうしようというわけです。それがどんどん増えてきて、時代が変わって、10年後に、みんなが許可制で10万円を持ってきたという話になると、なかなか難しいので。だから、そう考えていくと、確かに大変な問題ですけど。今、一方で、持ってこさせる場合の管理の仕方ですよね。320万円がここにある状態は、不健全な状態なので。
確かに、先生がおっしゃったように、私も教育行政に長年いたので、1万円を出すのが大変ですけれども。でも、一方で、持ってくる形になると、やっぱり320万円がここにあるのはおかしな話なので、金庫であるとか、ロッカーであるとか。そのロッカーにしても、例えば、40人みんなが持ってきたら400万円で、学級に4クラスあったら1,600万円で、それが3学年あったら、何千万円の話になります。それはもう本当に保険に入るのかどうかぐらいのレベルになってくる。だから、そのあたりまで私たちは考えていかないといけないと、今聞いていて、すごく切迫感と、とはいえ、なかなか予算がないので、大阪の場合は、各自のかばんでと言っているのですが、かばんで管理して、一つの教室に、体育の間に400万円があるという状況も不健全なので、考えなければいけないことがものすごく増えて、明確になったなと感じました。これは意見です。
そのあたり、何かお考えになることはありますか。
【全国特別支援学校長会】 やはり貴重なものにもし何かあったときに、誰かを疑うということが生じる可能性があります。根拠もなく疑うということは、この中にもしかしたら盗った人がいるかもしれないとか。でも、何が原因かも分からずに、勝手に疑うということは絶対やってはいけないし、疑われた本人たちは傷付くというような、そういったことにもつながっていく。
だから、管理する上で、特別支援学校の場合には一クラスの子供の数が多くありません。小中であれば6名だし、高等部であれば8名ということで、教員がある程度管理できる数になっているから、しっかり管理をしましょう。それが、小学校とか中学校で、今あった30人、40人という児童生徒さんの貴重品を全部本当に学校が管理できるかというと、そこについては、学校長さんは非常に苦慮するだろうなというところもあるし、何かあって、保護者から同意を取っても、どこまで理解してもらえるか。でも、同意をして出したから、結局学校の責任でしょうということは絶対ないとは言えない。そういった議論というのはあると思います。とはいっても、その必要性を本当にどう考えていくのか。
それから、貴重品を管理するときもやっぱり気を使います。教員が管理するのでも当然気を使うし、子供たちに管理させるのであっても、かばんの中に入れるということについても、ある程度管理できるだろうという見通しの下でやっているけど、100%はないので、そこは常に神経を使わなければならないという学校の現場における状況は、いずれにしても必ず生まれるだろうと思いますね。
【全国特別支援学校長会】 まさにお話にあった金額が高いというところについてが、今までの教育の中ではなかった話だと思います。
例えば校外学習、例えば遠足というものが、小学部とか小学校、中学校であったときも、お小遣いは1,000円までとか、500円までとかいう世界だったのが、今、私のポケットにもiPhoneが入っていますけれども、これはもう10万円のものを普通に持ってくる世界になってしまったので、金額が違ってきているというところの話だと思いますね。
だから、そこについて、やっぱり何かルールを定めないといけなくて、そのときに、今、連合会の会長のお話がありましたけれど、学校ごとに定めるのだと、校長が困ってしまいます。だから、そこは教育委員会とか文部科学省の方で方針を出していただいて、こういう方向なのだと決めていただかないと、各校長は、今おっしゃったとおり、何千万円のものの管理を自分がやるのかという話になってしまいますので、それは話がすごくなってしまうので、もうこういうルールを新たに作らないといけない金額のものを、お子さんが普通に持ち歩く時代が来た。そのことについてどう考えるかというのは、大人の中でルールを定めるしかないのかなと思っています。
【全国市町村教育委員会連合会】 全く同感でございます。
ルール作りの観点でお話しをさせていただきますと、どこでなくなるかによりますけれども、なくなった場合に、これは保護者の責任ですから買い直してください、5万円、10万円を出してください。学校でなくなったから、学校の責任ですから、10万円を出してください。こういうルールでうまく進んでいくのかな。持込み可とする場合ですよ。そういうルール作りではなくて、双方が納得するような、そんなルール作りってないのかな。
どちらが持つにしても、これは大変な話です。学校が持つ。これは財源がどこから出るのか、という問題がございます。まさか、管理者のポケットマネーというわけにはいかないでしょう。
ということで、教育委員会にもよりますが、学校現場で校長先生が管理責任を問われた場合、これは保険がおりる、そういう保険に、多くの教育委員会で実は入っています。ですから、そういう保険に入るというルールで、保護者にも、持込み可とする場合には少々負担をしていただきます、教育委員会も頑張りますからというようなルール作りができたら、私は最高かなと思います。お金の関係で議論するとなると。
ですから、学校側も、教育委員会側も、保護者側も、本当に安心して新しいルール作りができ、そのルールに則った運用ができれば、私は最高かなと思いまして、発言をさせていただきました。
ルールづくり、これは簡単なようで、ものすごく難しい問題だろうと思います。ですから、どういう立場の方も、それならいいだろうと納得できるものができればよろしいのかな。それを期待したいと思います。
【座長】 それでは、以上をもちまして、今年度第5回の会議を閉会させていただきます。
―― 了 ――
 

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