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全国的な学力調査に関する専門家会議(令和元年11月22日)(第4回) 議事要旨

1.日時

令和元年11月22日(金曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省 東館3階 3F1特別会議室(東京都千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 学習研究者による「教科に関する調査」の質的向上方策について
  2. 令和2年度全国学力・学習状況調査の概要について
  3. 経年変化分析調査、保護者に対する調査について
  4. 令和2年度質問紙調査項目の検討について【非公開】

4.出席者

委員

耳塚座長、大津座長代理、青羽委員、鎌田委員、川口委員、柴山委員、垂見委員、土屋委員、平川委員、益川委員、松谷委員、三田村委員、村山委員

5.議事要旨

議事1: 学習研究者による「教科に関する調査」の質的向上方策について

・資料1に基づき、事務局と関係委員より説明があった。関係委員の意見は以下の通り。

【委員】  教科調査の質的向上ということで、子供たちが最終的にどういう解答をしたかではなく、どのように思考過程を働かせてその解答を選んだのか、そのあたりを検証し、作問の向上に寄与することができればと思っている。それ以外にも学習の科学的な知見等も用いながら、学力が質的に向上するサイクルの構築に寄与することができればと考えている。

 

議事2: 令和2年度全国学力・学習状況調査の概要について

・資料2-1、2-2に基づき、事務局より説明があった。

 

議事3: 経年変化分析調査、保護者に対する調査について

・資料3-1~3-3に基づき、事務局と関係委員より説明の後、意見交換が行われた。主な意見は以下の通り。

【委員】  経年変化分析調査のこれまでの制度設計の中で、特に気を付けたことが2つある。1つは、学力データを統計データとして専門に扱う独立した統計部門といったものがない我が国の実態に合わせて、できればなるべく長く続けられるように、調査設計をシンプルにするということ。もう1つは、当然のことながら学習指導要領等変更があるので、いかに長期間のトレンドを捉えていくかということ。その点に留意し、出題内容その他を開発してきた。その測定技術が調査技術の開発とともに一通り終了したのが、平成25年3月になる。それを踏まえて、平成25年度に第一回の経年変化分析調査を実施したところ、あの大震災がありました。引き続き、東日本大震災の学力への影響調査ということで、IRT(Item Response Theory:項目反応理論)、 推算値による経年比較分析を行った。学校が津波被害に遭ったり、近隣の学校に間借りしたり、あるいは校庭にびっしり仮設住宅があったりしたにもかかわらず、震災前よりも平均的に学力を上げた学校に実際に訪問し、その取組を実地調査した。その成果を、熊本地震のときには、マスコミの方を通じて知らせていただき、学力ケアの指標ガイダンス作成に役に立てていただいたと聞く。
 また、30年ぐらい前、アメリカでレーガン政権のときに出た「危機に立つ国家」というレポートでは、その頃アメリカは経済状況が悪かったが、若者層も含めた子供たちの学力を、20年、30年というスパンで見ていくと、徐々に低下してきていたという報告がされている。国の学力の平均というのは、「異常なし」「変化なし」というのが基本になるのだが、やはり20年、30年と長期間で見ていくと、いつか、どこかで、大震災のような災害が起こったときとか、そういう時にきちんとエビデンスに基づいて教育施策が打てる。経年変化分析調査はそういうデータになり得るものだと考えている。令和2年度のその後も、継続的、安定的に調査していっていただきたい。

【委員】  主に保護者調査を通してSES(Socio Economical Status:社会経済的な背景)を測ることの重要性、なぜこれが必要なのかというところを、改めてお話しさせていただきたい。大きく4点ある。
 1つは、教育施策、あるいは教育の取組の効果を検証する際には、必ず学校、あるいは子供が置かれた社会経済的な状況を統制すること、考慮することが不可欠かと思われる。一見、取組の効果と見えるものも、実はSESが恵まれた家庭で行われている取組であれば、それは見せかけの関連となるので、やはりどんな取組もSESを統制した上で効果があるのか、ないのかを検証していくためにSESという指標が必要であるということ。
 2点目は、SESと学力がどの程度関連があるのかを調査していくこと。例えば子供の貧困の問題。また、ひとり親家庭で育つ子供の学力がどの程度なのか。学力格差が拡大しているのか、縮小しているのか。そして、それに対してどういった手だてをとっていくのか。これはまさに国の責務かと思われる。
 3点目が、このSESについて、上位層のSESの子供と下位層のSESの子供では、家庭の文化的環境や親の関与がどのように異なっているのか、そして、それらがどの程度学力に影響を及ぼしているのか、そういったものを解明していく。SESが学力と関連があるというのはデータから分かっているわけだが、なぜ関連があるのか、そのメカニズムを解明することによって、例えば家庭教育の在り方に反映させるといったことを考える一助になるかと思われる。
 4点目は、教育施策が全ての子供の学力に平等に影響を及ぼすのか、あるいは子供の階層によって異なる効果が見られるのか、こうしたことを検証していく必要があるかと思う。あくまで例えばの話だが、学級規模、習熟度別、あるいはジェンダーによる学力の差異、こういったものも全体で見れば関連はなかったとしても、特定のグループ、例えば階層のSESでは関連が見られる、そういったこともあり得る。状況を考慮して、丁寧に教育施策、教育実態の効果を検証するためにSESが必要だと思われる。
 こういったSESを測る上で、それは生徒の質問紙で聞けるのではないかという御意見もあるかと思うが、やはり例えば親の所得などは生徒質問紙で聞くことはできない。親の学歴も、保護者調査と生徒質問紙で聞くと、やはり保護者調査の方が信頼性が高いということが分かっている。
 OECDのPISAでも保護者調査を実施しているが、これはあくまでオプションということで、日本は参加していない。だからこそ全国学力・学習状況調査で実施されるべきかと思う。
 今までいろいろな国の学力調査を分析してきたが、世界的に見れば、学力の規定要因を分析する際にSESを測定することと、2時点以上の学力の変化を見るということは必須条件となっている。今回これらが合体するということは、極めて合理的で望ましいことかと考えている。なので、今後も保護者調査が安定的に継続して実施される必要があるのではないかと思う。

【委員】  私の方からは、IRTとSES、これを同時に、しかも経年でずっととり続けていくことが重要だということを説明したい。
 まずSESの重要性について。単純に成績のいい学校というのは明らかにSESの高い学校である。だから、そのままスナップショットで1時点だけ、学校の平均点だけ見てしまうと、平均点の高い学校がいわゆる「頑張っている学校」ではなくて、実は「もともと恵まれていた学校が成績が高い」という結果になってしまいがちである。なので、政策や実践の効果を見る場合には、まずSESを調べておかないと何も分からないということが言える。
 次にIRTの重要性について。先ほどSESの影響が大きいという話をしたが、もう一つは、SESをどうコントロールしても、もともと学力の高いお子さん、あるいは学校というのがある。問題は、学力の効果、政策の効果とか、実践の効果を見る場合には、伸びを見ないといけないということ。この伸びを見る場合に、今までの平均正答率のテストだと問題が易しくて得点が高かったのか、あるいは子供の能力が上がったのかの区別がつきづらかった。
 そういうところをコントロールできて、能力が変化したということをちゃんと把握できるIRTというのは、とても重要である。なので、IRTとSESを同時に行うことというのは、政策の効果、あるいは実践の効果を測る上で非常に重要だと考える。さらに、先ほど「伸び」という言葉を使ったが、学力がどういうふうに変化したのかというのを把握しておくことはとても重要である。例えば、かつて学力低下論争というのがあったが、日本が、その間、IRTに基づく学力テストを持っていれば、学力が上がった、下がったという明確な議論ができた。そのため、ずっとIRTとSESに基づくテストをとっておくということは、とても重要だと考える。
 自身の研究の話だが、ある自治体で、学力調査(小学校4年生から中学校3年生までの学力調査)を、IRTを用いて難易度をそろえて、そこに就学援助の情報も加えたところ、小学校4年生の時点でSESと学力の間に関連があり、しかもそれが学年の進行とともに開いていくという結果となった。IRTで等化しているので、単純にできる、できないが学年の進行とともに開いていってしまうということも分かっている。そうしたことを分析する上でも、この両方を同時にとっておくことは大事だと思う。
 さらに経年的にデータを蓄積しておくことも大事である。しばらくは何も変化はないと思われる。しかし、例えば学習指導要領の改訂や、災害等非常に大きな出来事があったときに、それが子供の学力に影響したのではないか、政策変更がどういう効果を持ったのかということを見ていくためにも、継続して、10年、20年、あるいはもっと長く、できるだけ同じような調査を続けていくこと、これが非常に重要であると考える。

【座長】  第1回の平成25年度の保護者調査と、第2回の平成29年度の保護者調査の分析と、合計で4カ年度にわたって関係をしてきた。当時の状況を考えてみると、保護者調査を使って家庭的な背景と学力の関係をナショナルサンプルで検討したものは皆無だった。これが第1ステージというか、ようやくナショナルサンプルで議論する段階に来たなと思う。
 保護者調査がどうして大事かということについては、これまでの中であったので詳しくは触れないが、保護者調査をやらなければ分からないことがあるので、これは重要な転換点だったと思われる。今回、それが経年比較の調査と一緒になって実施する方向になった。これはいわば第2ステージで、経年的に家庭的な背景による学力格差や状況というのもモニターできる体制になったかと思う。
 さらに欲を言えば、例えばパネル調査を実施するとか、あるいは学力格差をできるだけ小さくするための施策の検討を行うということを考えると、別の調査設計に基づくような調査も随時必要になってくるであろうと予測している。もし、そういうものがまた可能になったとすれば、それが第3ステージとなるかと思う。
 なお、これまでのことと少し次元が違うことだが、今回、来年度実施する調査の設計を見ると、小学校の学校数が少なすぎると思われる。小学校の学校規模が小さいために、学校ごとのSES指標を使って分析をしようとすると、小学校の方がどうしても数が足りなくなってしまうという問題が出てくるのではないかと思う。毎回多くの小学校を対象にすることは難しいと思うので、何回かに1回は、この小学校の学校数をもう少し増やした形で調査が実施できればということを、ここで要望しておきたい。

【委員】  話はすごく分かりやすく、経年調査が大切なのもよく分かったが、例えばSESを測っておいて、もう一方で学力調査をやって、それをつなぐ要因として例えば非認知能力のような話が出てきたときに、それは児童生徒と学校質問紙からしか見ることができないということでよいか。そうすると、児童生徒質問紙の項目について、SES的な視点から、もう少し項目を整理してもいいのではないかと思うが。

【座長】 経年変化分析調査を保護者調査とともに実施する予定の児童生徒については、本体調査の方でとれている学校質問紙調査と児童生徒質問紙調査のデータを連結して利用するという設計になっている。

【委員】  測定論的には、今の話は、似た能力、学力を測っているのだが、設計仕様の違う2つのテストのリンキング、対応づけということになる。経年変化分析調査の結果と、毎年行われる悉皆の本体調査の結果を連結させることを、以前、委託研究費を頂いて準備してあるので、それを使えばその問題は原理的にはクリアできるかと思う。

【委員】  いろいろ地域の教育委員会や学校に委託されて分析をやっているが、学力の原因となっている項目を探そうと思っても、行った質問紙の中からしか原因を探すことができない。そういう意味で、もう少しほかのことを聞いてくれればいいのにと思っている。SESを使うという観点からいったときには、学力との間をつなぐような項目をきちんと質問紙の中に入れておいてもらわないと、なかなか分析が進まないのではないかという趣旨である。

【座長代理】  学力が本当に向上しているかとか、どちらが高くて、どちらが低いかということの客観的な測定をするために、かなり凝った統計的な仕掛けというのが必要である。そのために、公開されていない、それなりの量のそれぞれの科目の問題で、よく測定能力がある問題のセットというものをそろえておくことが、長期的に非常に重要になるのではないかと思う。それを使って、こういう政策をやったら効果があった、効果がなかったということの問いに、客観的な根拠を持って答えていくことができるようになる。それだけでというわけではないが、かなり重要な答えを用意することができると思う。現状だと、この調査は、経年分析調査を除いては問題は使い捨てである。大学入試でもそうだが、全部公開してしまうので、問題を作って、そのたびごとに使い捨てというシステムになっているが、そうでない部分を相当分厚くしていくことによってそれが武器になり、様々なことをちゃんと主張するための道具立てになる有効な方法ではないかと思う。国研の内部にそういう相当質の高い問題のデータベースみたいなものを作られるように、長期的には考えていただければと思う。

【座長】  現在は経年比較調査の問題は全部非公開ということだが、増やすこともしているのか。

【委員】 テスト設計上は増やせる仕組みになっている。それで、やはり初出で聞くので後でチェックをかけ、識別力の低い問題などがあった場合、新しく入れ換えるとか、指導要領が変更になったら新しく入れ換えるとかいう形である。積極的に大きなデータベースを作る仕組みではないが、便宜的はできる仕組みになっている。

【委員】  経年変化分析調査といったときに、大きく3つのレベルがあるのではないかと思う。今回はどれなのかと思っていたが、経年変化の一番粗いレベルである、毎回対象校を選び出すレベル1、今回の設計もそれだと思う。次の段階としては、学校に関してパネル化する。つまり、同じ学校を引き続き調べていく。さらにその上のレベルになると、同じ子供を追いかける。小学校6年生だった子供が、中学校3年生になってどうなったかという形で、子供レベルでひも付けができる。恐らくこの3つのレベルがあるのではないか。
 今回の設計は、恐らく最初のレベル1。系列的な変化を追うときに、変化があったか、なかったかというのをより詳細に見るためには、やはり同じ対象を追いかけるというのが一番サンプルによる変動が少ない。一方で、それをしていくと、小学校6年生、中学3年生になって、その後はいなくなってしまうので、同じ子供は2回しかない。学校レベルでつなげるとすると、学校はある程度存続しているとしても、学校の負担ということを考えると、ずっと同じ学校を追いかけるわけにもいかない。
 そうすると、よく時系列で行われているのはサンプルのローテーション。一部については継続し、一部については順番に入れ換えていくということで、そういう継続性と、それから対象者の負担の両方を解決する。今後、長期的に経年変化調査というのをしていくのであれば、そういった観点も考えていく必要があるかと思う。

【委員】  先ほど項目(問題)をいっぱい保存しておくべきだと、いわゆる項目(問題)プールというのがあった。あと、こうした調査を長期間やるには、それの裏付けになる組織、長期的にそれを支えてもらう人材なり、組織なりが必要になってくると考える。そうしたものは、行政の3年ぐらいで異動するというパターンの中ではなかなか難しいとは思うが、何らかそうした仕組み作りというものも、少し考えてもいいのではないかと考える。

 

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