全国的な学力調査に関する専門家会議(令和元年9月20日)(第3回) 議事要旨

1.日時

令和元年9月20日(金曜日)15時30分~17時30分

2.場所

文部科学省 東館16階 16F大会議室(東京都千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 「平成31年度英語『話すこと』調査検証ワーキンググループ」からの報告
  2. 今年度の全国学力・学習状況調査について
  3. 「全国学力・学習状況調査」の個票データ等の貸与について
  4. その他

4.出席者

委員

耳塚座長、大津座長代理、青羽委員、鎌田委員、柴山委員、垂見委員、土屋委員、戸ヶ﨑委員、益川委員、松谷委員、三田村委員、村山委員、吉村委員

5.議事要旨

議事1:「平成31年度英語『話すこと』調査検証ワーキンググループ」からの報告

・資料1-1、1-2に基づき、事務局及びワーキンググループ渡部主査より説明及び報告の後、意見交換が行われた。主な意見は以下の通り。

【委員】  結論から言うと、今回の「話すこと」調査の実施によって、日本の英語教育のさらなる充実に向けて極めて重要な一歩を踏み出すことができたと考えている。今回は、全国の多様なICT環境の中での100万人の一斉調査であり挑戦的な側面があったが、実施に当たっては、それぞれの学校や教育委員会をはじめとした関係者の努力があった。今回の挑戦をすることによって、ある意味、学校のICT環境の整備の課題というものも浮き彫りになったのではないかと感じる。これがオンラインCBT(Computer based Testing)で実現されていれば、音声録音データの回収など今回学校で手間がかかった処理は、自動化できたはずである。本来だったら可能だったものが、整備状況を鑑みると断念せざるを得ないという状況で実施に踏み切ったということは、正直残念な部分もあった。しかし、我が国の教育分野のICTの活用状況が世界からも大きく後塵を拝しているのが事実であり、そういう意味では、少なくとも今回の調査でICT整備が遅れており困った状況に気づいた自治体があったというのは意味があったと思う。ICT整備に限って言うと、「あった方がよい」という存在から「なければならないもの」へと認識を改めていかなくてはいけない。そのために、CBTをやることのよさや利便性についても、学校や教育委員会が一層理解を深めていく必要があるということを一番強調しなければならないと思っている。そのことの有用性はまだまだ十分には分かっていないのではないかという気がする。それは教育委員会関係だけではなくて、自治体の財政担当や議員、最終的には首長の政策決定などにいかに火を付けていくかということが極めて重要で、そのためのPR戦略のようなものも、この調査の結果で示していくことも重要だと感じている。
 また、これまでも申し上げていることだが、「話すこと」調査を次回実施する際には、どんなことがあってもUSBによるプログラムインストールや音声データ回収はなくしてもらいたい。どこまでCBT化できるのかということは、実際やってみないと分からない部分があるが、そういう努力をしてもらうというのが非常に重要だと思う。
 最後に、このワーキングを通して、学力調査室の事務局の皆さんの御苦労が痛いほど分かったので、この場をおかりしてその御尽力に敬意を表したい。

【委員】  CBT化の大前提として、コンピューターがどれだけ整備されているかがポイントである。まずはその環境整備から始まらないといけないということと、ICT環境を整備する場合も、例えば、一度現場に納品されたものは相当古くならないとリプレイスされないという現状もあり、それを踏まえて、活用しやすいICT環境の整備をいかに進めていくかは、それぞれの教育委員会の力量ではないかと思う。

【委員】  今回の調査は、限られた準備の中で、調査を受ける生徒とそれを実施する学校と先生方、それを統括している教育委員会の側に最大限寄り添って、多くの方が全力を尽くされたと思う。この経験を今後どう生かしていくかということが本当に大事である。1つは、次回は解決すべき問題としては、実施上の環境があげられる。ICT環境というよりは、調査の公平性という観点であり、隣の子供の声が聞こえる、あるいは実施が給食と昼休みを挟むということが問題漏えいということで心配されるという点である。これは、全部裏を返せば、いかに日本の中学校が生徒に公正に試験等を実施しようとしているかという問題意識の高さの表れでもあると思うが、ここらはしっかり手を打っていかないといけないと思う。
 と同時に、ICT環境。全体的に子供を取り巻く情報教育や設備の在り方の問題であり、予算を伴う。しかし、今回、全国学力・学習状況調査で実施ができたわけなのでこの実態をどうすれば限りある予算で改善できるのかということを、プロの方の目を通して考えていってほしい。ここで終わらず、日本の学校をよくするために、次回はこういう案がある、ということを皆で検討していくチャンスだと思う。また、何といっても生徒の英語の話す力を画期的に高めるチャンスだと思う。ここをしっかりやらないといけない。
 ただ、報告書の別紙9「全日本中学校校長会からの意見・要望」にもあるが、いわゆる指導改善とか授業力向上というのは多忙化とつながる問題ではないと思う。学校の先生にとっては、やりがいであり、本務であり、一番大事にしていかねばならない時間である。しっかり授業改善や指導改善をしていかねばならない、生徒らの話す力を高めなくてはいけない、そういう動きに作り上げていかなければならないと思う。

【委員】  自分は、この英語「話すこと」調査の検討が始まったときから、調査実施に係るマンパワー、コスト、そこから得られるデータの信頼性の低さの観点から、ずっと調査実施に反対してきた人間である。ただ、予想された困難や想定外のことを1つずつ乗り越え、ここまで持ってこられた渡部主査と事務局の皆さんには、ねぎらいの言葉を申し上げたい。また、この調査に協力してくださった全国の生徒の皆様や学校関係者、保護者の方々にも本当に頭の下がる思いがしている。
 本年6月に「学校教育情報化推進法」という法律が施行された。これから、学校におけるICT環境は見違えるように改善されていくだろう。それを前提として、次回調査では、今現在、医療系共用試験、TOEFL 、IBTなどで採用されている学力の測定技術であるIRTに基づくいわゆる「アダプティブテスティング方式」、それから採点については、現状の人による採点ではなくて、いわゆる自動採点、AI採点の技術開発をしていただければ、大変ありがたいと思う。そこまで行けば、調査の報告で明確になったような様々な課題の大部分が解消されるかと思う。あくまでも技術開発のことなので、なかなか先は見えないが、そのあたりも次の調査に結び付けていただければと思う。

【委員】  自分が教育委員会で分析をしたときに、英語の先生から、今回の「話すこと」調査は組み立てたものを発話するという部分が多くて、会話としての即時性のようなところは余りきちんと測れていないのではないかという懸念が出た。今回いろいろトラブルがあり、どうやって実施にかかるICT環境を整えるかという点に注目がいっているが、「話すこと」のどういう能力を測るのかという点もしっかり検証すべきではないかと考える。例えば、生徒がその場で考えて即時性のある対話ができるような問題に変えていくなど、課題だと考えている。

【座長代理】  事務局の方に考えておいていただきたい点を申し上げる。今回、中学生の余りうまくない英語発話のデータというのが大量に蓄積されることになった。それは将来的に日本の生徒の「話すこと」の資質能力の現状として貴重な検討資料、分析資料になるのではないかと思っている。調査が終わったから全部処分するのではなく、基礎研究を含めて利用する方策を考えておいていただければよいかと思う。

【座長】  調査の方法から考えて、不測の事態やトラブルは当然生じるだろうと予想していた。問題は、どこに課題があるかということを明確にすることができるか、未然防止策の決定、あるいはトラブルを最小化するための対応としてどういうことができるかということをはっきりさせていくことではないかと思う。次の調査で対応できるものと、もう少し先まで見通さなければいけないことがはっきりしてきたのではないかと思う。次の調査は意外ともう間近に迫っていて、できることも限られてくるとは思うが、しっかり御対応いただきたい。

 

議事2: 今年度の全国学力・学習状況調査について

・資料2-1、2-2に基づき事務局より説明の後、委員の提供資料に基づき益川委員が説明。その後意見交換が行われた。主な意見は以下の通り。

【委員】  1つだけ教えていただきたいが、今、政策立案の方がEBPMに触れている。委員がおっしゃったこういう検証ベースの取組を入れることによって、どういう効果が得られるのか。改善指標というのはどのあたりを想定されているのか。

【委員】  イメージとしては、例えばいろんな点数が出てきたときに、点数から物語れることの価値のようなもの、例えば、今回、従来のA問題、B問題を一体にして、その中で力を測定する形になったが、そうすることの確実さのようなところを見ることができないかと考えている。

【委員】  端的に言って、深い学びにつながるような実践が増えているというような指標を設定するということか。

【委員】  必ずしもそういうわけではない。既に出されている点数自身の価値付けや意味付けがしっかりしていくという意味合いでの発言である。

【委員】  委員の提案に賛同する。いわゆる平均正答率が全国的に接近してきて、良好な形で安定しているが、ここから先は点数の裏側の解釈が本当に大事になってくると思う。ここがしっかりされないと指導改善も見えてこない。せっかく調査して評価しているが、やっぱりそれは指導と一体化していないといけない。そういう意味で深掘りしていく方向性は絶対必要だと考える。学校現場で取り組んでもらう際、研究指定校のような形式をよくとるが、それもよいが、例えば、政令指定都市の国語教育研究会等に手を挙げてやってもらうような案も試してみることが必要である。そういった議論の場にどんどん現場の先生が参加していくような形を、一度トライしてみてはいかがかと思っている。
 それから、毎年同じような課題があるというのは、調査を受ける児童生徒は毎年違うのだから仕方ないことだとも思っている。これまでのような深堀り研究をしながらも、例えば、学校現場から距離を置いて俯瞰して見てみる必要もあるのではないかと思う。現場の先生方の頑張りはよく分かるが、学力観とか学習観とか指導観等は本当に大丈夫なのだろうか。実は、毎年、同様の傾向や課題が出てくることの1つの大きな要因はそこに現れるのではないかとも考えられる。こうしたことは、学校現場と距離を置いて引いて見てみないと分からないことだと思う。それら深掘りしていく面と俯瞰してみる面と、両方をやっていく必要があるのではないかと思う。

【委員】  この指導方法で子供たちの学びがどういうふうに変わるのかというのを具体的に見るというのももちろん大事だと思うが、この授業案を見て実際に先生方がどんな授業をするのかというのも見た方がいいのではないか。つまり、ちゃんと目的があって、意図があって授業の例が作られているのだが、それが本当にそういう形で実施されるのかどうか、うまく受け止められるのかどうかというのも大事なことかと思う。
 具体的な問題に基づいて考えると、例えば、書くことの調査問題において、単に「提示された条件を押さえて書きましょう」というような指導になってしまう可能性がある。そういった方向の指導ではなくて、「自分が何かを主張したいときには、やっぱり根拠となるものはたくさん取り上げたいですね」という文脈での指導の方が必要な場合もある。そうなると問題の趣旨がどこにあるのかというのが大切になってくる。そういう意味では、そういった分析に取り組むのであれば、問題文の方もよくよく考えないと、指導が小手先の方にいってしまう可能性がある。「この問題が解けるには、こうしたらいい」という解法攻略のような形の方に行ってしまうと怖い。そういう意味で、学習の専門の方に作問に入ってもらうのはよいかと思う。

【委員】  そもそもだが、この授業例はどれぐらいニーズがあるのだろうか。具体的なものとして現場ではぴんとこないとも思えるがいかがか。国から何を返すかというと、結果を返せば、それはそれぞれの現場で自分たちのクラスがどうだったか、という問題となり、これが実際の指導に返るにはタイミングが遅い、というような話が導入当初あったと聞いている。調査としてCBTや様々なテクノロジーを使って高度な調査をしていこうとしている、その一方で、調査を指導の改善に役立てようとしている。これがやや分裂状態になりつつあると考えている。
 先ほど出た「アダプティブテスティング方式」、これはそれぞれが違う問題をやって能力を推定してということであるが、その前段階にあるIRTもそうだが、基本的にはいわゆる日本型のテスト形式とは相性が悪いという側面がある。なので、調査は調査、指導は指導と役割分担して考えていくとよいのではないか。学力調査は、国、つまり学習指導要領等に返って、今、国がとっている政策がこのような結果になりましたということを国が反省する材料とする。現場は現場で、調査を意識した指導がつながっていけば教員の力量が上がっていく。どこかで整理しないともたないという感覚を持っている。

【座長】  今の御発言は、調査問題の内容や提供資料の改善点というところを外れてしまうが、そういうことについて考えていくことはとても重要である。CBTの導入の可能性を考えるだけでも非常に大きな論点がいくつも含まれていて、簡単には進まないだろうと思われる。今の悉皆調査の枠組みでCBT等は導入できない。つまり、学力の測定調査と指導改善に生かす目的というのは両立しないところまで来てしまっているので、十分な検討が必要になってくるだろうと思われる。なので、こういうことについて自由に意見交換をする場というのをどこかで設けていかなければいけないと思う。事務局の方でもその点に御配慮いただきたい。

【委員】  こういう問題を扱うとどうしても、問題ごとに「これができないのはなぜだろう」という話になりがちである。特に個々の学校でデータをもらったときに、うちの学校は全国と比べて平均点がどうだった、この問題は正答率が低かった、この問題の無解答率が高かった、何でこれができないのだろうという形で、個々の問題の話になっていく。例えば、問題の後半から急に無解答率が全国より増えてくる場合がある。それは単純に最後まで問題を解き切れないという課題があるということで、後ろの問題が解けないという問題とは別の問題である。そのように個々の学校を見ていくと、問題の内容に起因するものではない、別の次元の課題もある。特に、学校の規模が小さくなると、個々の子供たちの特性がそのまま学校の結果に出る。抱える課題が違うのだから、そういう点でも学校の分析を助けられるような仕組みが欲しいと思っている。

【委員】  活用という点について、先ほどから議論になっている授業改善やこれが本当に生かされているのかということについては、以前からまだまだ課題があると感じている。
 大きく2つのことを言う。1つは、データ活用のリテラシーが、学校現場に身に付いているのかということ。ここにまず大きな課題がある。例えば、教育委員会や学校管理職は、国などでまとめられたものを確実に伝えていくということに注力をしてしまっていて、それ以外のこと、例えば、この数字は何を意味するのかとか、質問紙調査のまとまった数字等を、独自に教育委員会なり学校なりが分析するという力がまだまだ足りない。そういう努力をしていこうとする意欲もあまり見受けられない。管理職にそういう力がなくてはいけないだろうと思い、過日、教頭を対象にしてデータ活用研修会というのを民間の力を借りて行った。そうすると、こういう読み方をすれば自分の学校独自のものが見えてくるのではないかと、参加者にとっては目からうろこの部分があり非常によかったとの感想であった。国レベルで、中堅の教員や指導主事等を対象に、データリテラシーを育成していくような研修を是非やっていっていただきたい。それをやっていかないと教育委員会や学校はなかなか自走できず、何でも受け身になる可能性がある。是非これは要望しておきたい。できることならば、教員養成の段階や年次研修等にも入れられるようにしていってほしいというのが1点目の意見である。
 2点目は、先ほどから出ているEBPMの推進について。本市では今年の6月に教育委員会の中に、「教育シンクタンク」として、EBPMを回す組織を作った。これもチャレンジングなことではあるが、動き始めてすぐ「Check」のレベルでの課題が見えてきて、簡単にはいかないということになった。日本の教育のデータというのは、異なる指標等があってデータが標準化されていないという部分が1つの壁になっている。データポータビリティとよく言われるが、データを標準化して、定義付けしてそろえていくということを一刻も早くやっていただきたい。そうすると、他自治体との比較などにより多くの有益情報が取得しやすくなる。また、個人情報保護の問題等あるが、ぜひ全国学調を活用しながら、日本型のビッグデータを活用するシステムを作っていっていただけるとありがたい。

【委員】  今の意見について、自分も最も重要と思っている。全国学調のデータが学校にDVDで届くが、あの膨大なデータをどれだけ活用し切れているかが大きな課題である。指導のアイディアとか、そういったことももちろんありがたいが、それ以前に、あのデータをどう読み取るか、そこから課題を見付けるかというところが最も弱い部分だと実感している。
 学校で感じるのは、平均正答率が何%か等は保護者にとってはどうでもいいこと。学校の結果がどれだけ上回ったとか、都道府県や全国と比べてどうだったとかは、学校全体のことであり、我が子のことではない。常々、教員に求めたいのは、分析をする際に他者と比べてどうということではなく、目の前にいるこの子のつまずきがどれか、別の子はどれか、そしてその子たちが集まって集団を作っている。その集団にふさわしい指導法は何なのかという視点がないと、実際の授業改善にはつながらないし、一人一人の学力の底上げにはつながらない。やはり非常にミクロなレベルで、個に応じた指導というものがテーマであるので、先ほどの、個々のデータから課題をいかに読み取って、一人一人の課題に向き合えるかというその技術やスキルが大いに必要だと思っている。

【委員】  英語の話になるが、この議題と関連して、CBTも含めて非常に大きく改革をしていかなくてはいけないのではないかと考える。学校にWi-Fi環境ができれば、非常に大きく進むのではないか。このような調査についても、ただコンピューター室があるというレベルでは学力を測ることもできないのではないかと思う。世界ではCBTが当たり前で、そういうものを学校の中に導入をすべきだと強く思う。実践もしているがいい効果が出ていると思われるので、それをこれから大きく改善していただければと感じる。

 

議事3: 「全国学力・学習状況調査」の個票データ等の貸与について

・資料3-1、3-2に基づき、事務局から全国学力・学習状況調査の個票データ等の貸与について説明があった。

 

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総合教育政策局参事官(調査企画担当)付学力調査室

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