全国的な学力調査のCBT化検討ワーキンググループ(第6回)議事要旨

1.日時

令和2年10月29日(金曜日)10時~12時

2.場所

Web会議(文部科学省 東館9階 総合教育政策局会議室)
※YouTube配信にて公開

3.議題

  1. 特別な配慮が必要な児童生徒への対応について
  2. その他

4.出席者

委員

大津主査、石田委員、礒部委員、宇佐美委員、川口委員、澤田委員、柴山委員、 寺尾委員、冨山委員

5.議事要旨

議事1:特別な配慮が必要な児童生徒への対応について

資料1、2、3に基づいて、国立教育政策研究所(以下、「国研」という。)、中野教授、南谷准教授より説明があった。委員の意見は以下の通り。

【委員】
・国研に伺う。特別な配慮について、本人や学校等からの要望や意見がこれまでにあったのか。現在の調査環境の配慮例として、障害のある児童生徒については、学校の判断により、当該児童生徒の障害の種類や程度に応じて、時間延長、点字・拡大文字・ルビ振り問題用紙の使用、代筆解答用紙の使用、別室の設定などの配慮がなされている。現状、これ以外の要望や課題が上がっているのか。あったとすれば、その内容が知りたい。
・中野先生に伺う。御紹介があったUD(ユニバーサルデザイン)ブラウザは、機能的に個々の見え方に合わせた設定ができ、学力調査のCBT化に有効に働く可能性の高いアプリであると考える。現在、盲学校や弱視特別支援学級、弱視通級指導教室、通常の学級に在籍している多くの弱視児童生徒が教科書デジタルデータの提供を受けて、UDブラウザを介して学んでいる。UDブラウザの大学入試センター試験での実績で問題データの処理や加工、解答方法、どのような準備が必要だったのか、課題などを知りたい。また、これまでの取組から学力調査のCBT化へのUDブラウザの活用の可能性や課題をどのようにお考えか。
・南谷先生に伺う。CBTに準ずるPBT出題も可能となるよう設計すること、どうしても問題を代替せざるを得ない場合の難易度、等質の検討やテスト問題の蓄積の必要性等について御指摘をいただいた。センター試験における代替例も幾つか挙げていただいたが、代替問題の判断や、その妥当性の検討は、現在どのような体制で実施されているか。

【国研】
 現在、個別の御要望の内容まで把握できていないが、国研の関係団体、特別支援学校の関係団体への聞き取りで把握に努めている。

【中野教授】
・大学入試センターでUDブラウザの実績について、PDFの閲覧の際に活用した。自由に文字の大きさを変えることができるという点では非常によかったが、フォントを変えることや、国語において縦書きを横書きに変換することはPDFだけではできず、その点で十分ではなかった。受験生によると、それでも紙ベースの拡大よりははるかによかったとのこと。
・それぞれの学校では、それぞれの子供の障害特性を知っている先生が、その子供に合わせてコンテンツ作りをしている。これをCBTとして一般化した場合にどうやって作っていくかは一つ大きな課題かと思う。UDブラウザは一つの例として考えていただきたい。今後のCBTシステムを構築する上でノウハウは活用していただきたい。情報も公開したいと思っている。

【南谷准教授】
・センター試験、大学入学共通テストの試験問題は、全国の大学から専門家に集まっていただき、各教科の作題部会にて作問している。この作題部会と横並びで全国の特別支援教育に関わる専門性を有する大学教員が集まっている特別問題部会が設置されている。作題部会が作った各教科の問題を特別問題部会でチェックするというプロセスである。代替問題の作成依頼を各教科の作題部会に通知する。作題部会では、それを踏まえて、視覚障害のある受験者にも受けられる問題を再度作題し、それをまた特別問題部会で閲覧してから判断をする仕組みになっている。したがって難易度や出題内容の保障は、有識者の学識に依存して行われてきており、テスト理論等を活用する部分は希薄というのが現状。それらの協力によって難易度、出題内容ともに十分なものを作ってきたという自負は持っている。

【委員】
・本質的な問題作成や自動代替問題の提案等あったが、これらは突き詰めると公平性・公正性の問題になる。これは測定論的に見て、本質的な能力が同等の人が受験した場合、結果も同等になる、という理解でよろしいか。
・その理解が正しいとして、大学入試センターで、そういう同等性を担保するノウハウの研究はされているのか。

【中野教授】
 本質的な能力が同じ人が同等に評価される必要性があることを申し上げたが、これの実現は極めて難しい問題かと思う。例えば視覚障害に関して、空間概念に関わるような問題をどう表現するかというのは、ユニバーサルデザイン仕様ではとてもできないので、何らかの代替をする必要があるが、その判断は技術論的に非常に難しい。試験のことなので当然クローズドの場となるが、その中で、視覚障害の専門家に判断してもらい、UD化するのか、それとも代替するのかを、どういうプロセスで実現していくかは極めて難しい。過渡的な措置として何らかのアファーマティブアクション的な、不利にならざるを得ず、なおかつ代替が難しいものを埋め合わせる何らかの措置を考えていく必要性がある。

【南谷准教授】
 センターにおける同等性の保障手段については、現状の作題体制として、テスト理論に大きく依拠するというより、各教科の有識者の見識、あるいは特別支援教育に関わる研究者の知識に支えられてきた部分が強い。研究の面では、これまでの関心は時間延長をする場合の対応。同じ問題でどれだけ時間を延長すれば公平と言えるのかということに関心が集中しており、代替問題についてはあまり研究されてきていないという印象を持つ。今後の研究で個人的に注目しているのは、CATを活用して、解答状況や時間を観察していくことで、どういう問題が特定の障害を持つ人にとって取り組みづらい問題なのか、その取り組みづらさが、本人の学力ではなく障害に起因する制約によるものなのかを分析すること。新たな方法論が構築できたら興味深い。ただこれは、現実味があるものかは申し上げられないが、今そのようなことを考えている。

【委員】
・現状、障害を持つ方が全国学力・学習状況調査をどれぐらい受験できているのか、カバー率について。全ての学校でそれぞれ障害を持つ方がいて、どういう判断で参加の可否を行っているのか、またそれを把握しているのかどうか。
・南谷先生のスライドの「CBTへの障害受験者配慮の位置付け方」の図が分かりやすいが、このときに、1番の「標準CBT環境」をできるだけ広くしていくことが大事になる。このときの切り分けとして、1番と2番を切り分ける際、2番と3番の切り分けもだが、どこを具体的な目標にしていけばよいのかを知りたい。

【事務局】
 1つ目の質問に関して。資料1にある対象人数の冊子対象という数値で把握しているのが現状。実施要領においても、特別支援学校及び特別支援学級に在籍している児童生徒について、原則調査の対象としているところ。

【南谷准教授】
 2つ目の質問に関して。実際の学力調査で採用するCBTがどういうものかが見えてこないので確実なことは言えないが、1と2の切り分けとしては恐らく音声読み上げ機能である。1は、画面の表示調整機能をサポートすることはできると思うが、それにもリフロー機能は取り込めないだろう。そうすると、2の「専用CBT環境開発」で重度障害者用のCBT環境の一部として対応するものとなる。音声読み上げ機能に関しては、ほぼ2の「専用CBT環境開発」でやることだろう。2と3の切り分けとしては、これも受験者の状況が未知であるため、断定的なことは言えない。結局、1、2、3それぞれの負担は、対象となる受験者の規模は別として、同じぐらいだと考える。3の「ペーパーテスト化、その人による代読」のポイントとしては、個別対応になる側面が強いので、3でカバーする人数が増えれば増えるほど、実施側の負担が大きくなること。3の人たちをどれだけ2の側へ取り込んでいけるかが、円滑に、なおかつ受験者にとって充実した実施をしていく上で非常に重要な課題だと考える。

【委員】
 1つ目の質問に関して、資料1にあるのは受験した方の人数である。何らかの事情で障害があり受験できなかった方がいると思われるが、その人数は把握できているのか。

【事務局】
 現時点では、調査に参加した児童生徒数で把握をしている。

【委員】
・1つ目に関して、今の段階では、障害を持つ方は枠の中に入っていないということ。そこから考え直さなければいけないところ。
・2つ目に関して、仕様が決まらないと、というところはおっしゃるとおりだと思う。

【事務局】
 先ほどに関して補足する。
 調査の実施要領において、特別支援学校及び特別支援学級に在籍している児童生徒についても調査の対象である。一部の条件に当てはまる場合のみ調査の対象外となっているということである。

【委員】
 南谷先生に伺う。資料にあった内容は同じで出題形式を変更したという意味での代替問題において、障害受験者と配慮を必要 しない受験者のデータの間で、IRTでの困難度や項目特性が数値的に同じとみなしてよいかというような検討はなされてきているのか。
 その場合、データ間でかなり乖離があるとの前提で考えた方がよいのか。この点のいかんによってIRTの項目特性を踏まえた代替問題を使うことの意義やCATを活用することの意義が変わってくるのではないかと思われる。

【南谷教授】
 端的に言うと、そういった検討ができない状況をご承知おきいただきたい。視覚障害の点字受験者数は決して多くないので、統計的な情報として活用できる人数がおらず、解答状況等を観察したとしても、何か有意なことが言えるのかは、かなり難しいところ。現状として、特別支援教育や各教科の専門家の見識に頼りながら、同等性や難易度を保障しており、それで特段問題は生じていない。ただし将来に関しての不安はあるのが現状である。

議事2:その他

資料4に基づいて、事務局より説明。委員の意見は以下の通り。

【委員】
 この調査について、まずは小規模からの試行・検証や問題開発等に取り組むというのは非常に大事なこと。その際には支援の必要な児童生徒を念頭に置いた試行・検証、問題開発であることをお願いしたい。

【委員】
 試行検証については、方向性や機能についてしっかり議論を重ね、決まったものから実装していくことが重要になってくる。仕様書についても具体的な機能として盛り込んでいくことが必要だと感じる。

お問合せ先

総合教育政策局参事官(調査企画担当)付学力調査室

(総合教育政策局参事官(調査企画担当)付学力調査室)