「がん教育」に関する懇談会 議事要旨

1.日時

平成31年2月5日(火曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 東館 15階特別会議室

3.議題

  1. 平成29年度におけるがん教育実施状況調査について
  2. 学習指導要領について
  3. その他

4.出席者

委員

○協力者
青木孝子,植田誠治,衞藤隆,柏原聖子,後藤晃伸,田中不二夫,中川恵一,野口直美,野津有司,前川育,若尾文彦(敬称略、五十音順)

文部科学省

浮島副大臣,永山初等中等教育局長,矢野大臣官房審議官,三谷健康教育・食育課長,大塚健康教育・食育課課長補佐,横嶋健康教育・食育課健康教育調査官,ほか関係官

5.議事要旨

・事務局より資料に基づき説明を行い,その後、協力者から意見等を伺った。
・協力者からの主な意見は,以下のとおりである。

○ まだがん教育をやっていないところもあるが、条件の整ったところからやっている現状ではないか。地域や行政で今後がん教育が浸透するための努力が必要だろう。

○ がん教育実施状況調査における「がん教育」とは何を指しているのか。実態を反映する調査にしてほしい。禁煙教育や薬物乱用防止教育なども行われているので、それとの区別がわかるように内容を選択式にしてはどうか。外部講師の活用をどうしていくかは課題。都道府県によって温度差があると承知しているので、都道府県別のデータを出すべきである。また、実態把握やフィードバックをする協議会のような仕組みが今後必要。

○ がん教育の研修を受けている職種で一番多いのが養護教諭であることから、養護教諭はがん教育に対する意識は高いと思われる。学校現場は大変なので、養護教諭をどう活用するかが重要。実践を蓄積していって、それを広げてほしい。

○ 今ががん教育のアクセルを踏むタイミングである。現場のスピード感アップに重要な時期である。

○ 外部講師を務めている医師から外部講師の質の担保という声が聴かれた。医師には研修のポイント制はなじみがあるようで、それを取り入れてはどうか。

○ 学習指導要領は画期的な書きぶりである。教科書の書きぶりがどうなるか関心がある。先生方の研修のタイミングにうまく乗っていくべきと思う。あとは管理職への周知の戦略が必要。いじめに関わる事項等についてなどでは行われているのでがん教育についても管理職に周知していくべき。

○ 調査も関心を喚起するきっかけになるが、管理職研修で理解してもらうことも重要ではないか。

○ 特に経験者の外部講師は選定が難しいと考えている。お金目的の講師もいると聞く。質の担保は必要ではないか。

○ がん検診を目的としたがん教育をしているところもあるというが、子供達のためにがん教育を行ってほしい。

○ 学習指導要領と解説に書きこまれたことでがん教育が進むと期待している。がん教育報告書、外部講師ガイドライン等の「がん患者への理解と共生」について、学習指導要領に見つけられなかった。この内容ががん教育に入っていないと思われるのではないかと危惧している。現場の先生に対して道徳の時間などにがんを題材に思いやりや相互理解、公正、公平などについて話せることを周知してほしい。

○ 外部講師のガイドラインの配慮事項について具体的にどう配慮すればよいかわからないので研修が必要。

○ 全国展開していくには外部講師が不足している。e-learningを行い、最後に試験をして、合格者のリストを公開し、外部講師の候補として必要に応じて県で活用すればよいのでは。国立がん研究センターでe-learningを全国がん患者団体連合会と一緒に作ることを検討しているので文科省のお墨付きがいただけるとありがたい。

○ 学校では今○○教育が大変多い。時間の確保が課題。教育課程に位置付けることが大変。

○ がん教育の授業を受けた子供から、健診や禁煙を親に話したいという感想をもらった。

○ 平成30年度に地区の校長会でがん教育を取り上げた。管理職が知っていると強いと思う。管理職への働きかけが重要と感じる。

○ 学習指導要領にがん教育が明記されてよかった。保健体育できちんとやっているかの調査が必要。授業以外で講演会などを行ったか、調査を継続的に行ってほしい。

○ これまでのがん教育の成果と課題を知りたかったので悉皆調査ができたことは素晴らしい。日本は50年で男性の喫煙率が80%から20%に下がった。がんの意識、行動変容についてもそのくらいのスパンで考えてほしい。調査結果をフォローする研究が必要。

○ がん教育としてどんなものが行われているか。小児がんや家族にがん患者がいる場合の実態について、日本学校保健学会その他のいくつかの学会でがんについての子供達の認識データが出てきたので活用していくべき。

○ 教師向けの踏み込んだ手引が必要。がん教育にはがんへの正しい理解と命の大切さを学ぶという2つの目的があるが、小学生では特別活動の時間を使ったり、道徳など柔軟に使っていくことが必要。活用のためのガイドが必要である。教師と外部講師の連携も課題。基本的なことは教師が教え、総合的な学習の時間などに外部講師を招いて学年、学校で集まるなどが考えられるのではないか。

○ 東京都でリーフレットや指導手引きを作り、各校種毎に指導ができる体制を作ったが、学校が主体性をもって本気にならないと思考力、判断力を養う指導はできない。学校医と専門医が命と向き合うことと知識を学ぶことを目的にコラボ授業を行ったが大変意義ある授業であると感じた。

○ がん教育を持続可能な方法を示してほしい。現場は負担感を感じている。教師の保健の授業を中心に外部講師に協力してもらうのがよいのではないか。授業づくりにおいて、考える場面と教える部分の組み立ては指導方法を豊富に持っている教師が行うべきで、それを元に保健の授業の中で行うのが良いのでは。サバイバーの経験や専門医の知識は在学中に一回聞くようにするなどしたら良いのではないか。

○ 神奈川県では、教師の研修や研究授業などをやったが、教師の意識はまだ高くない。教科書が変わって初めて教師の意識は変わるのではないか。外部講師の確保が課題で、特に経験者の確保が課題であり、組織作りに取り組んでいる。今後がん教育が当たり前になったら、質の高い教育が課題になっていくと思う。新たな手法や人材、教材、医学の進歩の取り入れなど、ステップアップしていくことが必要だろう。

○ 外部講師と担当の先生とのコミュニケーションや事前の相談があるといいものができる。学校の先生の受け入れ態勢次第と感じる。

○ 事前の打ち合わせを行い、要望等を伝えた上で、指導案を作ること、知識だけでなく命の大切さを理解してもらえる言葉選びなどが重要。事前アンケートは大事である。具体的な事例を出すとやりやすい。

○ 外部講師の活用は進めるべきということでやってきていることは今一度確認したい。12か所で名簿を作るということだが、この機能は重要である。これを47都道府県でやるべきで、それをネットで閲覧できるようにするべき。ちょっとしたヒントやコツが示されたTIPS集を作り、誰でも見られるようにするべき。講師からのフィードバックも重要。若い医師はがん教育に興味ある者は多いし、子供達の中に入っていきやすい。

○ がん教育の実施前に調査をすると、身近な人が闘病中という子供が全員の7%~10%いる。したがって、心配なことがあったら来るように伝える。事前に外部講師にも伝える。外部講師に丸投げせず、学校の先生が責任を持って教えることは重要である。あわせて現場のリアルな話は深く考えるきっかけになるので、外部講師依頼にあたって養護教諭は医療機関とのコンタクトもあり、活用できる。外部講師のリストアップも学校個々にやれというのではなくていろいろなところの協力を得てやることが重要。

○ 7月に拠点病院の指針が出て、教育に協力することが望ましい項目として評価されることになったので、配慮すべき事項を明示した上で、拠点病院を活用することが好ましい。

○ 初めての人でもできるようにしている葛飾区のやり方はよい。リスト化といっても、ちゃんとできる人のリストを作るべき。配慮できる医師などを掲載する。より詳細なガイドラインも必要。がん教育の進め方はいろいろなパターンがあるので、地域に合わせて展開できることを周知する必要がある。

○ 新学習指導要領に基づく教師用のがん教育の指導資料を作成する必要がある。それに加えて、外部講師向けのものも必要。その場合、外部講師によるがん教育の話が、教科の保健学習の前か、後かでも要点が違うことを伝える必要がある。保健学習としての評価についてもアドバイスが必要である。外部講師の果たす役割の重要性や、喜びについても伝える必要がある。下手をすると病院内で「若い者が行ってこい」という押し付けになってしまう。外部講師には、社会貢献の素晴らしさや、自分の本務にも意味があることを知ることができる。それを伝える資料がいる。

○ がん教育のイニシアチブをとるのは誰か、多様だと思うが、具体的に詰めた方が良い。

○ 小児がんへの心配りが重要。一人一人希望をもって生きられるようながん教育を進めてほしい。

○ 島しょ部では意識が薄く、人材もいない。地域医療をやっている人を巻き込んでいかないといけないと思う。日本全国、拠点病院の医師の協力が得られる地域ばかりではないため、対応が必要である。

○ 学校医や地域の医師会に関わっていただくことが必要。医師会の協力も得ていってはどうか。

○ 外部講師はだれでもいいわけではなく、教えるべき事例の判断や配慮ができること、正しい知識を教えられて、内容の担保ができることが必要。また、外部講師は学校と意思疎通することも重要。

○ 配慮が必要な人は教職員にもいることを忘れてはならない。

お問合せ先

初等中等教育局健康教育・食育課

がん教育推進係
電話番号:03-6734-2918

(初等中等教育局健康教育・食育課)