「キャリア・パスポート」導入に向けた調査研究協力者会議(第1回) 議事録

1.日時

平成30年8月24日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

経済産業省別館850号会議室

3.議題

  1. 座長の選任
  2. 教材「キャリア・パスポート」作成作業について
  3. その他

4.出席者

委員

藤田委員、長田委員、安斎委員、石原委員、戎井委員、川﨑委員、神部委員、熊谷委員、西田委員、葉山委員

文部科学省

大濱児童生徒課長、鈴木進路指導調査官、迫専門職、ほか

5.議事録

【迫児童生徒課専門職】  それでは、開催に当たり、本日の協議会を主催する文部科学省を代表いたしまして、初等中等教育局児童生徒課長、大濱健志より御挨拶申し上げます。
【大濱児童生徒課長】  皆様、おはようございます。児童生徒課長の大濱でございます。本日はどうかよろしくお願いいたします。先月の31日に着任いたしました。まだ、不慣れでございますので、いろいろ行き届かぬ点がございますけれども、その点はよろしくお願いいたします。
 皆様、本日はお忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。また、日頃から、キャリア教育の推進、進路指導の充実をはじめ、文部科学行政各般にわたります多大なる御尽力を賜っておりますことを、この場をおかりして改めてお礼申し上げます。
 今般、AI、人生100年時代というキーワードに代表されますように、日本社会のシステムが大きく変容しつつあります。また、民法の一部改正法が公布され、2022年4月から、成人年齢が18歳に引き下げられる予定になっております。学校教育におきましては、これまでにもまして、こうしたキャリア教育の重要性は高まりますし、それに伴いましてキャリア教育を充実させていかなければいけないということが喫緊の課題になっております。
 そのような中、昨年3月には小・中学校、本年3月には高等学校の新学習指導要領が告示されております。新学習指導要領におきましては、児童生徒が、学ぶことと自己の将来とのつながりを見通しながら、社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力を身に付けていくことができるよう、特別活動を要としつつ、各教科等の特性に応じてキャリア教育の充実を図ることとされております。また、特別活動には、「一人一人のキャリア形成と自己実現」の項目が設けられ、キャリア教育の視点からの小・中・高等学校のつながりが整理されたところでございます。
 児童生徒が自らの学習活動等の学びのプロセスを記述し、振り返ることのできる、ポートフォリオ的な教材、いわゆる「キャリア・パスポート」の導入につきましては、平成28年度中教審答申において、その活用について指摘されております。新学習指導要領においても、学校、家庭及び地域における学習や生活の見通しを立て、学んだことを振り返りながら、新たな学習や生活への意欲につなげたり、将来の生き方を考えたりする活動を行う際、生徒が活動を記録し蓄積する教材等を活用することとされているところでございます。また、平成28年3月に公表されました、高大接続システム改革会議の最終報告におきましては、生徒自らが設定した将来の目標に向かい、どのような学びを重ねてきたのか、そこから何を学んだのかについて、高等学校入学から卒業までを通して自覚的に振り返ることや、それらを踏まえて教員が生徒の学習状況等を把握し、目標達成に向けた助言を行ったり進路指導を行ったりすることを促す取組の推進というものや、入学希望者本人が記載する提出書類の多様化やその内容の充実に関しまして、このような教材の活用を行うことについて提言されているところでございます。
 文部科学省におきましては、新学習指導要領を見据えまして、昨年度から、「キャリア・パスポート」の活用方法等に関する調査研究を実施しておるところでございます。こうした振り返りの活動を行う具体的な手段として有効なものと考えております。なお、学校現場におきまして、全く新しい取組を始めるということよりも、これまで各学校、各学年で行ってきたキャリア教育に関わる取組について、学年、校種を超えて活用できるようなものにすることを目指しております。これまで課題となっていた、中高や高大といった校種間接続の具体的な方策として期待できるものと考えております。本日は「キャリア・パスポート」の作成についてという議題にしております。「キャリア・パスポート」は、最終的には各地域や学校の実態や工夫を反映させて完成されるべきものでありますが、早ければ年内には各教育委員会等に例示を行いまして、併せて、その際、各小・中・高等学校での実施スケジュールについてもお示しすることができるよう、教材の作成を進めてまいりたいと考えております。委員の皆様の御見識と幅広い知見に基づいた積極的な意見交換、忌憚のない意見交換を期待しているところでございます。本日はどうかよろしくお願いいたします。
【迫児童生徒課専門職】  続きまして、本協力者会議の設置趣旨等につきまして、事務局、児童生徒課、鈴木進路指導調査官から御説明いたします。
【鈴木児童生徒課進路指導調査官】  事務局の進路指導調査官の鈴木です。よろしくお願いいたします。座って失礼いたします。
 お配りした資料1を御覧ください。この協力者会議の実施要項でございます。この会議の名目、目的、実施方法を書いてございます。趣旨としましては、端的に言いますと、「キャリア・パスポート」教材の導入ということを、調査研究を行っていただくということを、この会議で行っていただきたいと思っております。「キャリア・パスポート」は、もう御存じとは思いますけれども、児童生徒が将来の生き方や考え方を考えたりする、活動したりするというときの、学んだことの振り返りの教材ということを考えております。そして、実際の先生方にお諮りいただく調査研究の内容でございますけれども、2番にも書いてありますとおり、小、中、高、それぞれが使用する「キャリア・パスポート」について、そして、その学校における指導の在り方、そして、その他「キャリア・パスポート」をどのように活用していくかということを研究内容としております。実際にこの会議において、結果、成果ということで、実施方法というのを3番に書いておりますけれども、各学校段階に対して、教材の例示、それから教員用の指導資料、そのための指導資料を作成するということでございますし、その資料を作成するに当たりましては、この委員会の委員の先生方だけでなく、関係者の方々からも意見を聞くことができると考えております。この会議の実施期間につきましては、今年度いっぱい、3月29日までということを考えております。
 「その他」に書いてありますが、今回の会議の庶務に関しましては、初頭中等教育児童生徒課で行うものとしております。また、児童生徒課につきましては、関係局・課と関係省庁と連携協力をして行うというふうにしております。
 4番の「実施期間」を今年度ということがありましたけれども、これをもって委員の皆様の任期として考えております。ですから、先生方には今年度いっぱい頑張っていただきたいと思ってございます。それから、実際の実施要項が、本会議の目的、趣旨の内容になりますので、こちらをこの会議の実施要項としたいということで、6月に局長決定を先にさせていただきましたので、御了承いただきたいと思います。私からは以上でございます。
【迫児童生徒課専門職】  それでは、議事に入ります前に、本日御出席いただいている委員の皆様の御紹介をさせていただきます。配付させていただいている「出席者一覧」の順に沿って御紹介させていただきます。
 まず、長田委員でございます。
【長田委員】  国立教育政策研究所、長田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【迫児童生徒課専門職】  次に、安斎委員でございます。
【安斎委員】  川崎市教育委員会の安斎と申します。よろしくお願いいたします。
【迫児童生徒課専門職】  石原委員でございます。
【石原委員】  近畿日本ツーリスト関東の石原でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【迫児童生徒課専門職】  次は戎井委員ですが、台風の影響で現在、到着が遅れているところでございます。続きまして、川﨑委員でございます。
【川﨑委員】  川﨑と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
【迫児童生徒課専門職】  次に、神部委員でございます。
【神部委員】  オーシャン・トゥエンティワンの神部でございます。よろしくお願いいたします。
【迫児童生徒課専門職】  次に、熊谷委員でございます。
【熊谷委員】  埼玉県にあります川口市立朝日東小学校校長の熊谷と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
【迫児童生徒課専門職】  西田委員でございます。
【西田委員】  兵庫県教育委員会から来ました西田でございます。どうぞよろしくお願いします。
【迫児童生徒課専門職】  葉山委員でございます。
【葉山委員】  京都市教育委員会京都まなびの街生き方探究館の葉山でございます。よろしくお願いいたします。
【迫児童生徒課専門職】  藤田委員でございます。
【藤田委員】  筑波大学人間系の藤田でございます。よろしくお願いいたします。
【迫児童生徒課専門職】  続いて、事務局の御紹介もさせていただきます。先ほど挨拶させていただきました、児童生徒課長、大濱でございます。
【大濱児童生徒課長】  大濱でございます。改めまして、よろしくお願いします。
【迫児童生徒課専門職】  同じく児童生徒課進路指導調査官、鈴木でございます。
【鈴木児童生徒課進路指導調査官】  進路指導調査官、鈴木でございます。よろしくお願いいたします。
【迫児童生徒課専門職】  同じく児童生徒課、髙群でございます。事務局でございます。
【事務局(髙群)】  髙群です。よろしくお願いいたします。
【迫児童生徒課専門職】  最後に私、同じく児童生徒課、迫でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 なお、本日御欠席の委員の皆様につきましては、資料1の裏面に委員名簿をお付けしておりますので、そちらをもって御紹介に代えさせていただきたいと存じます。
 それでは、次第に基づきまして、まず議題1、本会議の座長を選任していただきたいと思いますけれども、自薦、他薦、いずれかございますでしょうか。
【長田委員】  よろしいですか。
【迫児童生徒課専門職】  お願いします。
【長田委員】  座ったまま失礼いたします。本作業の調査の内容から鑑みて、中央教育審議会等の議論に最初から参加されているということや、また研究の専門性からいっても、筑波大学の藤田先生にお願いするのが適切ではないかと思います。以上です。
【迫児童生徒課専門職】  ただいま、長田委員から、藤田委員の御推薦がございましたけれども、いかがでしょうか。ほかに御意見等ございますでしょうか。
 では、御了承ということであれば、藤田先生に座長を務めていただければと存じます。
【藤田座長】  はい。
【迫児童生徒課専門職】  それでは、今後の協議会の進行につきましては、藤田委員の下で進めていただければと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
【藤田座長】  よろしくお願いいたします。
 それでは、僭越でございますが、座ったままで失礼いたします。今回の協力者の会議ですけれども、非常に重要な会議ですが、座長を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
【迫児童生徒課専門職】  それでは、カメラの撮影につきましては、ここで終了とさせていただきます。
 では、続いてお願いいたします。
【藤田座長】  それでは、議事次第に従いまして、教材ですが、「キャリア・パスポート」の作成作業に入らせていただきたいと思います。まず、関連資料につきまして、長田委員から御説明いただきたいと思うのですが、この会議の根拠と今後の作業、そしてインナー会議及び指定事業に係る経緯について御説明をお願いいたします。
【長田委員】  それでは、改めまして、国立教育政策研究所の長田でございます。よろしくお願いいたします。立場上、この研究について、当初から私が関わっておりまして、これまでも全ての会議に私が入っておりますので、これまでのおさらいと、この後、我々でどんな作業をしていかなければいけないのかということを確認してまいりたいと存じます。先生方には資料を提示いたしますので、資料を御覧いただきながら御覧いただければと思います。
 まずは、お手元の資料2でございます。中央教育審議会の特別活動のワーキンググループや、同じく総則・評価特別部会の議事録をひもときますと、このような検討がされてきております。キャリア教育は、ややもすると就業体験や進路指導といった狭いものとして捉えられがちであるが、本来、自らのキャリア形成のために必要な様々な汎用的能力を育てていくものであり、学校の教育活動全体を通して行うものである。このような中で特別活動がキャリア教育においてどのような役割を果たすべきかを明確にする必要がある。そのために、小学校から高等学校までの特別活動をはじめとしたキャリア教育に関わる活動について、学びのプロセスを記述し振り返ることができるポートフォリオ的な教材(「キャリア・パスポート」)を作成し、活用することが効果的ではないかとの提案がなされた。
 同じく資料2、続きますが、こうしたものが特別活動を中心としつつ各教科等と往還しながら活用されることで、学びを蓄積し、それを社会や将来につなぎ、必要に応じて振り返ることにより、主体的に学びに向かう力を育て、自己のキャリア形成に生かすことが可能となるとともに、特別活動や各教科等における指導の改善にも寄与することが期待されている。また、小・中・高等学校やその後の進路も含め、学校段階を超えて活用できるようなものとするよう工夫しつつ、各地域の実情に合わせたカスタマイズや、各学校や学級における創意工夫を生かした形での活用が可能となるよう検討すべきである。
 こういった議論を受けて、中央教育審議会答申、評価、第1部の63ページには、まずは評価の観点から言って、特に高等学校では評価がうまくいっていない可能性がありませんかということ、さらに、パフォーマンス評価でも取り入れて、多面的・多角的な評価を今後一層充実させる必要があります。その上で、学習の過程における形成的な評価を行い、子供たちの資質・能力がどのように伸びているかを、例えば日々の記録やポートフォリオなどを通じて子供たち自身が把握できるようにしていくことが求められると、評価のところにも記載されております。
 同じく中教審答申63ページ。この中に具体的に、子供一人一人が自らの学習状況やキャリア形成を見通したり振り返ったりできるようにすることが重要である。そのため、子供たちが自己評価を行うことを、教科等の特質に応じて学習活動の一つとして位置づけることが適当である。例えば、特別活動(学級活動、ホームルーム活動)を中核としつつ、「キャリア・パスポート(仮称)」などを活用して子供たちが自己評価を行うことを位置づけることなどが考えられる。その際、教員が対話的に関わることで、自己評価に関する学習活動を深めていくことが重要である。
 これらの答申を受けて、先ほど課長の挨拶の中にもありましたが、昨年3月には小・中学校の学習指導要領が告示、今年3月には高等学校の新しい学習指導要領が告示されています。今回の学習指導要領の総則には、新たに前文が設けられています。前文には、「生徒が学ぶことの意義を実感できる環境を整え、一人一人の資質・能力を伸ばせるようにしていくことは」、途中飛ばしますが、「幼児期の教育及び小学校教育の基礎の上に、高等学校以降の教育や生涯に関わる学習とのつながりを見通しながら、生徒の学習の在り方を展望していくために」学習指導要領が改定されているという記載がございます。そして、学習指導要領の総則は、「生徒が学習の見通しを立てたり学習したことを振り返ったりする活動を、計画的に取り入れるように工夫すること」と明示した上で、「生徒が、学ぶことと自己の将来とのつながりを見通しながら、社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力を身に付けていくことができるよう、特別活動を要としつつ各教科等の特質に応じて、キャリア教育の充実を図ること」。小・中・高の総則にこのように書き込まれたわけでございます。
 それを受けて、学習指導要領の特別活動編においては、学級活動及びホームルーム活動の(3)「一人一人のキャリア形成と自己実現」が設けられ、その中に、現在及び将来の学習と自己実現とのつながりを考えたり、学ぶことと働くことの意義を意識して学習の見通しを立て、振り返ることを重視した記載がございます。加えて、こういった「(3)の指導に当たっては、学校、家庭及び地域における学習や生活の見通しを立て、学んだことを振り返りながら、新たな学習や生活への意欲につなげたり、将来の生き方を考えたりする活動を行うこと。その際、生徒が活動を記録し蓄積する教材等を活用すること」と記されています。
 では、児童生徒が記録し蓄積する教材とはどのようなものを指すのか。これも特別活動の解説編に書き込まれております。生徒が活動を記録し蓄積する教材等を活用するとは、こうした活動を行うに当たっては、振り返って気付いたこと、考えたことなどを生徒が記述して蓄積する、いわゆるポートフォリオ的な教材のようなものを活用することを示している。特別活動や各教科等における学習の過程に関することはもとより、学校や家庭における日々の生活や、地域における様々な活動なども含めて、教師の適切な指導の下、生徒自らが記録と蓄積を行っていく教材である。こうした教材を活用した活動を行うことは、例えば次のような3つの意義がある。3つの意義については簡単に。一つ目は、横をつなぐ。学校教育全体をつなぐ。二つ目は、小学校、中学校、高等学校、いわゆる縦をつなぐ。そして3つ目は、生徒理解、児童理解につなぐ。こういった3つの意義があると、特別活動の解説編では説明をしています。
 特別活動を要としたキャリア教育というのは、そもそもキャリア教育は学校教育の全体で行うものと、これまでもされてきましたが、それがむしろ、かえって指導の場面を曖昧にしてしまった可能性があります。学校教育全体で行うというふうにこれまではしてきたんです。さらに、キャリア教育の場合には、課外活動だったり学校外の活動で、キャリア発達、キャリア形成を積み重ねることも当然できるわけですが、学校教育全体で行うとしてきたことが、むしろ指導の場面を曖昧にしてしまった可能性があるので、学校教育全体で育まれた力、学びを、まとめて紡ぐ場所、時間を設定する必要があるのではないか。これを、特別活動の「学級活動」、ホームルーム活動の(3)「一人一人のキャリア形成と自己実現」に置いたということでございます。反対に申し上げれば、特定の活動を、(3)「一人一人のキャリア形成と自己実現」で行うことが、キャリア教育になってしまわないように気を付けなければならないということです。
 加えて、中教審答申では、特別活動は各教科等の学習を行う上の土台である。さらに、特別活動の学びは、各教科等と往還的な関係にあるということが示されていることも踏まえなければなりません。ちなみに、「キャリア・パスポート」、いわゆる児童生徒が自ら積み重ねるポートフォリオについては、このようにも特別活動の解説編で記されています。小学校から高校卒業まで、その後の進路も含め、国や都道府県、教育委員会等が提供する各種資料等を活用しつつ、各地域、学校における実態に応じて、学校間で連携しながら柔軟な工夫を行うこと。この、国が提供する各種資料等が、この後、我々が作っていくものということになります。そして、更に加えて、この「キャリア・パスポート」、ポートフォリオは自己評価であるということを踏まえた上で、生徒の自己評価や相互評価は飽くまでも学習活動であって、それをそのまま学習評価とすることは適切ではないが、学習評価の参考資料として適切に活用することにより、生徒の学習意欲の向上につなげることはできると記されているわけでございます。
 これを踏まえて、全国展開の前にモデル事業を実施することといたしました。これが、「キャリア・パスポート(仮称)」普及・定着事業でございます。これについては、既にスタートしているところでございます。現在、2年目に入っておりまして、福岡県教育委員会と奈良市教育委員会に、この普及・定着事業を推進していただいております。ただし、モデル事業をスタートしていただくに当たって、ある程度、具体的な方向性を文部科学省としても示さざるを得なかったので、文部科学省内に既にインナー会議を立ち上げて、どのようなものを2地域に研究していただくのかということをあらかじめ策定しております。ちなみに、これが資料3でございます。資料3を御覧いただきながら、お聞きいただければと思います。
 まず、名称については、仮にではございますが、「キャリア・パスポート」とするとしてございます。目的については、小学校から高等学校を通じて、児童生徒にとっては、自らの学習状況やキャリア形成を見通したり振り返ったりして自己評価を行うとともに、主体的に学びに向かう力を育み、自己実現につなぐもの。教師にとっては、その記述を基に対話的に関わることによって、児童生徒の成長を促し、系統的な指導・支援に資するものと設定しております。さらに、「キャリア・パスポート」の定義については、このように、「キャリア・パスポート」とは、児童生徒が、小学校から高等学校までのキャリア教育に関わる諸活動について、特別活動の学級活動及びホームルーム活動を中心として、各教科等と往還し、自らの学習状況やキャリア形成を見通したり振り返ったりしながら自身の変容や成長を自己評価できるよう工夫されたポートフォリオのことである。なお、その記述や自己評価の指導に当たっては、教師が対話的に関わり、児童生徒一人一人の目標修正などの改善を支援し、個性を伸ばす指導へとつなげながら、学校、地域及び家庭における学びを自己のキャリア形成に生かそうとする態度を養うよう努めなければならない。
 それでは具体的に、二つの指定地域にモデルを示す際に、インナー会議で試作したひな形は、以下の方向性に乗って試作されております。一つ目、児童生徒が自ら記述し、学期、学年、入学から卒業までの学習を見通し、振り返るとともに、将来への展望を図ることができるもの。要は、日記や週計画ではありません。日々の記録や授業単位の記録は、「キャリア・パスポート」を記述する上で極めて重要な基礎資料ではあります。これにのっとって作られた試作については、資料4及び資料6となってございます。
 同じく、試作について二つ目。学校生活全体を含む内容とすること。これまでの中教審や学習指導要領にのっとって、教科のみ、行事のみの自己評価票ではないということ。特別活動を要としつつ、各教科等と学びが往還していることを認識できるようなものとすること。
 3つ目、家庭及び地域における学びを含む内容とすること。
 4つ目、学年、校種を超えて持ち上がることができるようにするもの。
 5つ目、散逸を防ぎ、振り返りたい時期や内容を容易に見取ることができるもの。具体的に申し上げれば、作文や絵、ワークシート、写真などを全てつづる思い出アルバムになってはならないこと。また、国が示す様式は一部を除き例示とし、児童生徒や地域の実態に合わせて設置者や学校が最終的にそれは定めることにすること。これの、「一部を除き」としておりますが、二つの地域に示す際に、何かここだけは変えないでくれという指示を実はしておりません。というのは、できなかったんです。あまり量数が多いものではないので、ここだけ固定してくださいというと、ほかをカスタマイズしたときに、1枚のシートの中でストーリーが崩れてしまう可能性があったので、原則、目の前の子供たちを見て、今やっているようなワークシートや振り返りシートなどを大事にしてくださいねという方向性で、飽くまでも例示だというふうにして示しています。そして、小学校1年生から高校3年生までを1冊にとじ込むということを想定しています。お分かりのとおり、1学年で20ページも30ページも積み重ねれば、もう高校生になったときには両手に抱え切れないような量になってしまうと、これが振り返りなのに振り返れないものになってしまう。ですから、子供たちに記録させるものについては、必要なもの最小限にとどめるということが大事だろうと。
 6つ目、教師や家族が対話的に関わることができるようにするもの。
 7つ目、児童生徒、教師、保護者の過重な負担にならないようにするもの。
 8、学級活動・ホームルームの内容及び実施時間数にふさわしいもの。もう、先生方はとくとお分かりだと思いますが、学級活動、ホームルーム活動は通常、年間35時間、学校では設定いたしますので、35時間の中でやらなければならないことは、「キャリア・パスポート」以外に多々あります。ですから、「キャリア・パスポート」に偏重した活動の扱いにならないように注意しなければならないということ。
 そして最後、既に先行実施している県があります。兵庫県、秋田県のキャリアノート等を参考にしつつ、今後、国が例示をしていくということで、既に資料8に、1年間、福岡県で実施した「キャリア・パスポート」についての成果と課題が一望できます。さらに、福岡県から頂いた「キャリア・パスポート」のひな形もそのまま付けております。福岡県の成果は、福岡県のメソッドに応じて教材を作成することができた。教員及び保護者アンケートでは、教材そのものへの意義の理解や評価する声を聞くことができた。一方、課題です。保護者への説明がまだまだ不十分である。教材が導入された場合、各学校のキャリア教育の整理に時間が必要である。キャリア教育そのものを整理しないと、「キャリア・パスポート」に行き着かないということ。そして3つ目、12年間継続する上で、教材内容の精査はもちろんですが、教材の耐久性、12年間、きちっと持ち上がれるものの耐久性の検討が必要であるという回答が返ってきております。同じく資料8、奈良市からも同じものが返ってきております。奈良市についても基本的には同様の意見が返ってきております。
 これら、奈良市、福岡県の1年間のまとめ。5月にちょうど頂いたものなので、1年間のまとめを振り返ると、二つの指定地域から出た意見の大きな柱はここです。新たなものや急に立ち上がるものではなくて、これまで小・中・高校の先生が、各授業や各行事などで大事にしてきた振り返りシートだったり、又はチェックシートだったり、作文だったりを、これまで以上に大事にしていくことなのではないか。いわゆる、今ある宝に注目するということ。しかしながら、それら、普段児童生徒が積み重ねているような記録を全部持ち上がることは、やっぱり物理的に不可能だし、それはかえって子供たちにとっても迷惑な話なので、それらの中から持ち上がるべきもの、これは持ち上がらなくていいもの、いわゆる取捨選択、再編集をどのようにしていくかがポイントになってくるということ。そして、例えばこれを高校3年生まで持ち上がるんだと決めれば、当然、使い方、書かせ方は変わってくるだろうというようなコメントが返ってきております。
 さて、この後、我々委員が頂いた宿題でございますが、平成30年度内公表を目標にして、まずは「キャリア・パスポート」の例示を我々が作成することになります。そして、加えて、「キャリア・パスポート」の例示に係る留意事項。この後、西田委員から兵庫県の留意事項の作成についての紹介がありますが。ですから、この二つを我々は基本的にこの後、作っていくのだということ。そして、もう一つは、その上で「キャリア・パスポート」の保管や管理、引き継ぎなど、いわゆる在り方に関する検討をして、事務局に意見出しをすること。この3つが、これからの我々の作業ということになるかと思います。
 以上でございます。
【藤田座長】  ありがとうございます。今、長田委員から御説明がございましたように、様々な経緯を踏まえて、今年度末までに全ての学校に対して、ある程度の方向性と内容のビジョンというのを示していくのが我々の課題だということを承ったところです。
 これから先生方に御議論いただくわけですけれども、その前に、先ほど長田委員からもありましたように、西田委員が今日、冊子を提供してくださっております。その前に、私からも、「キャリア・パスポート」、片仮名語ですので、当然、外国にルーツがあるということもございますので、そのルーツについて簡単に御説明申し上げ、その後、西田先生から、冊子を使って御説明いただきたいと思います。皆様方からの御意見、御質問等は、またまとめて、11時頃になるかと思うのですけれども、いただきたいと思っております。
それでは私から説明させていただきます。
 まず、「諸外国」と書いてありますが、実際の「キャリア・パスポート」に類似していることを実施している国は、フランスがそうですし、デンマーク、それから北欧の国々は多くがそうなのですけれども、今日は、「キャリア・パスポート」というそのものの名称を使っているアメリカの議論というのを簡単に御紹介申し上げたいと思います。
 それで、アメリカなのですけれども、これはお勉強になってしまうのですが、もともと何が起きたかというと、1990年代に大きな教育改革、80年代から継続した教育改革がありまして、簡単に言うと、学力の引き上げなんです。いろいろやるぞと言われたことはあったのですけれども、一番典型的なのが、アメリカの生徒は、理科、数学の成績において世界一になるという目標を2000年度ぐらいに達成するということを宣言する。そのぐらい、学力向上というのを図りたかったわけです。それで、そういう中で、いわゆる職業教育にも大きな影響が及びました。これまで二流の教育、大学には行かないよねという子供たちの教育としてみなされてきたのですけれども、それでは駄目なんだ、職業教育も含めて底上げしていかないといけないんだという議論がありました。これが90年代の大きなアメリカの特徴です。
 そういう中で、オハイオ州では、どんどん高度化してくる。職業資格も高度化してくる。簡単に言うと、数学とか英語とか理科とかもきちんと勉強した上でないと、卒業要件まで届きませんし、職業資格もおぼつかない。そうなってくると、十分に支援しても、逆にそこに達成しにくい子供たちを増やしてしまうのではないかという懸念も生じました。実際に増えてきてしまったんです。では、彼らは駄目かというと、ここまでは至らないんだけれども、頑張ったことはいっぱいある。その頑張ったことが、従来の調査書ですとか、あるいは資格そのものでは見えてこない。例えば、卒業要件に届かなくて中退してしまった。あるいは資格要件に届かなくてその資格が取れていない。でも頑張った。その頑張ったことをきちんと認めていかないと、かえってこういうふうな教育改革をすることによって、いわゆる落ちこぼれを増やしてしまうのではないか。そのような懸念があったんです。
 それで、これは古い資料になりますが、8年生。8年生というのは日本的に言いますと中学校2年生から、まずは個別のキャリア計画。これは本当に堅牢な、厚めのA4の裏表のシートなのですが、中学校ぐらいから選択科目が始まりますから、選択科目をどうやって取っていこうか、それをどういうふうに重ねていこうかという計画。1枚紙の裏表。そして、自己理解、職業体験記録用紙。こんな職業体験をしたよ。こんなことが得意だよ。こんなことが面白かったよ。それで、職業興味検査・適性検査といったものが、1枚物の裏表。つまり3枚シートというのをちょこちょこ書いていきましょう。それで、11学年、これは高校2年生に相当しますが、ここから「キャリア・パスポート」というものを作っていこうではないか。先ほど申しましたように、様々な努力を積み重ねているので、その努力の経緯をきちんと書き示していこう。そのときに、11学年、高校2年生からの「キャリア・パスポート」のポイントは、第三者評価ということを前提としよう。つまり、就職や進学をするときに、途中で、資格までいかない、卒業要件までいかなかった努力というのをきちんと書いていきますよということなんです。
 それで、収録用紙というのは、大きく四つ例示されていまして、まずは教育長あるいは校長先生が、今から御覧になるものは正しいです、間違いないですと。きちんと彼が、彼女が書きましたということを書き、そして履歴書を添え、それから各種技能証明関係書類ですね。受かったり受からなかったりしますし、点数などですけれども。それから自分がどういうふうに将来進んでいきたいかというような将来計画書。それから、その他の任意書面。こういったものを含めながら、従来の調査書ではカバーできないものというものを進学や就職に使っていこうというのが、もともとの計画でした。そういう計画に対して、州の商工会議所は非常に肯定的に捉え、よし、いいよねということで、商工会議所に加盟している事業所であれば、当然、就職面接のときに「キャリア・パスポート」を持ってきてもらって、それに基づいて自己紹介もしてほしいよということがあったんです。そういった州内全体の取組として、非常に高い評価も全米的に得られたところです。
 ただ、全部うまくいっているかというと、そうでもなくて、オハイオ州立大学というのは州内でも名門の大学なのですが、名門であるがゆえに、州外からの希望者も非常に多いんです。そうすると、オハイオ州全体に「キャリア・パスポート」があるものの、州の外にはないので、そうすると不公平が生じてしまう。それで結局、ある人とない人の入学者選抜のプロセスが異なってきてしまうので、現在では、一部の規模の小さな私立大学での受け入れが確認されるにとどまります。それで、こういうふうな経緯があるので、結果的には今、職業教育コースに在籍する生徒中心の実践に変わってきてしまったんです。中学校2年生からの裏表3枚組というのはずっと全員です。
 それで、2000年代に入りますと、だんだん蓄積されてきて、だんだん問題も出てきたんです。まず一番大きく問題になったのが、いわゆるフォルダーカバーです。バインダーのカバーですね。これが、州モデルに拘束性を付与しなかった結果、学校区、日本で言うと市町村教育委員会ですけれども、市町村教育委員会ごとにばらつきが出てしまったんです。いわゆる、本当にもう100円ショップで買えるような簡略なものから、州の、まちのオリジナルのようなものまで増えてきてしまった。そうすると、実際に企業に持っていったときに、人事担当者の心証が異なるのではないのかなという懸念も出されました。また、それから先ほど長田先生からも議論があったところですけれども、実は任意の書類ということを認めたがゆえに、せっかく、この子を、こんないい子なんだから、別に11学年から限らず、もっとさかのぼって、あのときの作文も、あのコンテストの入賞記録も賞状も、全部入れようということになって、どんどん増えていってしまったんです。そうすると、採用者側が、ではちょっと見せてといっても、こんな厚いものを見せられても、五分、十分の面接では全然見られない。どこを見ていいのだか分からない。結局、本人も振り返れない。そういった問題が出てきたというのが2000年代の状況です。
 そういった中で、今どうなっているのかということを簡単に御紹介したいと思います。現在は、先ほど申しましたように、職業教育コースを中心としたカリキュラムの履修者の卒業要件の一つです。必ず「キャリア・パスポート」を完成しないと高校を卒業できないんです。それで、デジタル化を進めて保管・保存しておくということも、各学校には求められています。それで、具体的に写真を添えた方が分かりやすいと思いますので、オハイオ州内の幾つかの地域、3つですけれども、今日御紹介します。
 まずコショクトンというところがありまして、これは湖のすぐ南なのですけれども、卒業式に相当する職業教育コース修了認定式で、予行演習をやりますよ。予行演習をこれのとおりやるから、ちゃんと出てきなさいというやつなのですが、ここの赤線で囲んだところ。優秀賞を授与される者は、名前を呼ばれる後に階段を上ってメーンステージに行ってください。その後、全ての生徒が列ごとにステージに上がり、「キャリア・パスポート」を受け取ります。受け取った後は各自、席に戻りますが、列の全員が席に戻るまで起立したままでいてください。ポイントはここです。「キャリア・パスポート」を受け取るというのは、やっぱり卒業したという大きな象徴的ないわゆる儀式、日本で言う卒業証書授与に相当するようなものなんです。11年生から2年間掛けて、心を込めて記録をまとめ、そして自分というのはこういうものですよということをまとめた記録を、卒業証書が中に入れられた状態で、「キャリア・パスポート」を受け取る。これが、学校を卒業したということの象徴なんです。
 同じようなことは、オーグレイズの、これは医療系の進学コースの修了認定式なのですが、何で白衣を着ているかというと、皆さんこれから医療系の専門学校や短大あるいは4大に就職するので白衣を着ているのですが、授与されているものは、やっぱり「キャリア・パスポート」なんです。卒業証書単体ではないです。
 それで、こういうことは、実は、途中で退学してしまう、中退してしまった若者に対しても当てはまります。これは、学校区、いわゆるまちの教育委員会の教育委員会便りみたいなものなのですけれども、ダスティン・フェルツさんは、学び直しに遅過ぎることはないという事実を改めて実感している。フェルツさんは、12学年、最終学年ですね、在籍中、単位不足によって高校卒業を諦め中退。しかし、その後、高校に再入学し、成人向けに特設された職業教育コースを履修。このたび、高校卒業証明書と、全米溶接技術者認定資格の双方を手に入れた。それで、この手に入れた彼が持っているのは、ちょっと暗くて見えませんが、よく見ると、ここに「キャリア・パスポート」と書いてあるのを抱えている。やはり、これまで頑張った記録として非常に大きなものがあるというのがお分かりいただけると思います。
 それで、最後ですけれども、こういったアメリカ、今日はアメリカのことしかお話ししていませんが、日本に与える示唆を考えるとするならば、まず2000年代に、ばーっと全州的に大きく問題になった、「キャリア・パスポート」の表紙です。いわゆるバインダーのカバーですけれども、州のモデルに拘束性を付与しなかった結果、学校区、まちの教育委員会ごとの多様性が生じてしまったんです。日本の場合ですと、小学校、中学校、高等学校を含めて、転校が可能性として考えられます。まだ進学、中学校から高等学校に行く場合、いろんな中学校から一つの高校に来たときに、ばらばらなバインダーだと、まず子供たちの心証も違いますし、先生方の心証も異なってきてしまう。やはり、少なくとも12年間使える堅牢さを保証した上で、そしてそのデザインも国としての統一があると、子供たちが転校、特に大きく地域が変わった場合、北海道から関東地域に行きましたよとか、あるいは沖縄から四国の方に移りましたよといった場合でも、子供たちが、「キャリア・パスポート」だけはみんなと同じということで、なじみやすくなるのかな。特に、堅牢性を保証していくということも国としては必要なことかなと思いました。
 それから、「キャリア・パスポート」の書類に州自身がその他の任意書類を推奨したことによって、先生方の親心が、これも入れよう、これも入れようとなった結果、結局ちょっと持て余しぎみになってしまった。先ほど、まさに長田先生が言ってくださったことですが、高校生になって、小学校からの自らの成長や変容を振り返り、それを踏まえて自らの将来のキャリア展望に資するためには、分厚い思い出アルバムでは情報過多なので、では国としてはこんな感じに取捨選択したらいいですよね、こんな感じに集約したらいいですよねというガイドラインがあるといいなと思いました。
 それで最後ですが、そもそもの日米の違いを前提とした議論というのは必須だと思うんです。アメリカの場合ですと、高校2年生、11学年から、もう社会的な移行を目前とした段階から、移行を前提として作ります。ただ、日本の場合は小学校から、自らの学びを振り返ったり展望したりする、自らの成長を振り返る資料なので、第三者評価というのは前提にしていないんですよね。これを前提にしてしまうと、小学校からいわゆる厚化粧たっぷりで、いつか評価される私の記録になってしまうので、本当の心の動きとか自分の感情が記録できなくなってしまう。そういう厚化粧を小学校から受験に向けてするということは、おそらく子供の成長・発達を阻害してしまいますし、学校教育としても望ましくないんだろうな。そんなことを感じながら、では日本の場合、どういうふうなことを頭に置きながら先生方が作れるかということを、私たちは丁寧に示していかなければいけないし、それが、先ほど長田先生もおっしゃってくださったように、これまでやってきた学校の様々な営み、学習の記録作りであったり、そういったものと親和性があって、先生方の御負担や子供たちの負担に直結しないというようなものも、これから議論していくような必要があるな。ですから、アメリカで出てきた経験というのも生かしながら日本のオリジナルなものを作っていかないと、アメリカを横滑りにしてしまうと、いいことばかりではないなというのが、今日お伝えしたかったことです。以上でございます。
 それでは、続きまして西田先生からお願いします。
【西田委員】  それでは失礼します。本日お配りしました「キャリア教育の推進」で、「自立して未来に挑戦する ひょうごっ子!」という資料を見ていただけるでしょうか。これは、教師用資料として作られていますので、最初の方は、キャリア教育とはというようなことが書いてありますが、実際、キャリアノートとして子供たちが使うのは22ページからということになります。これは指導資料なので、先生が気を付けるようなポイントも、吹き出しのような形で書いてあります。
 それでは、兵庫県のキャリアノートの特徴等についてお話しさせていただきます。20ページを御覧いただけるでしょうか。まず、キャリアノートですけれども、これは、キャリア発達を促す様々な学習の経験とか活動の記録、学校行事等も含めた記録等を児童生徒が、日常生活や学習等の振り返りや、また自分の将来を考えたり、将来の生き方について考えることができるように、子供たち自身が書き込むノートとして作成しております。そこに書いてありますように、これにつきましては、ポートフォリオとしてファイリングするような形でこれを残し、キャリアノートをつなぐ、12年間を見通すという形で作られております。要するに、小学校で書いたものを中学校へつなぐ。小・中のものを高校へつなぐという形で、考えて作っております。そして、どういう成果を期待しているかというと、そこに書いてありますように、児童生徒につきましては、自分のこれまでの活動を振り返ることができる。そして、自分自身が自分の成長や変容が実感できる。また、進路選択や将来の決定の参考にできるというような形で考えております。それから、教職員につきましては、児童生徒の理解を深めることができる資料となる。また、系統的な学習を進める上での参考の資料になるということを考えております。
 そして、小学校、中学校、共通の留意点としましては、まず一つ目は、先ほど言いましたように、小学校や中学校に転校してくることもありますので、どの学年からでもスタートできるように、どの学年も同じ構成で作っております。そして、中身につきましては、自分のしてきたこと、また感じたこと、考えたことを、ありのままに書けるような形に考えて作っております。それから、この資料なのですが、これは県のホームページにも載せてありますが、それはワード版で載せてあります。なぜかといいますと、先ほども話があったのですが、各学校、各地域によって、いろんな行事とか、また取組というのがありますので、各学校で対応できるようにしています。つまり、キャリアノートモデルとは、各地域又は学校の実情に応じて工夫して変えられるようにワード版を掲載して、改良ができるような形でしてございます。それから4つ目としましては、教員や保護者からのコメント、大人からのメッセージがその中に書き込めるような形に工夫しているということでございます。
 それで、兵庫県は、兵庫型「体験教育」といいまして、小学校3年生では、環境体験事業といいまして、3日以上、田畑での活動、川での活動とか海での活動とか里山での活動などができるような体験活動を、それから小学校5年生では4泊5日以上の長期の宿泊体験を行う体験活動をやっています。中学2年生では、トライやる・ウィークといいまして、5日間、地域に出た社会体験、職場体験がほとんどなのですけれども、このような体験活動をしております。これらの体験活動とこのキャリアノートの記述というのを結び付けるような意識を持って作っています。
 それではページ構成なのですけれども、21ページを御覧いただけるでしょうか。そのちょうど真ん中のオレンジ色の囲みなのですけれども、「ページの構成」ということで、まず自分自身を見つめるページ、それから学校・家庭(・地域)での役割を振り返るページ、それから1年間の自分の頑張りを振り返るページの3つで構成しております。
 22ページを御覧ください。これは1年生のモデルなのですけれども、まず自分自身を見つめるということで、自分自身を見つめるページにつきましては、自分の好きなこととか良いところを考えようということで、そして23ページについては、これは学校・家庭(・地域)での役割を振り返るページということで、今、実際、学校でやっている係の仕事とか、家のお手伝いのことを記述するという形になっています。そして24ページ・25ページになるのですけれども、ここについては、1年間の頑張りを振り返ろうということで、ここに自己評価ができるように、元気に挨拶ができましたかとか、係の仕事ができましたかというようなことが、自分で色を塗って表現できるようにしています。これは1年生用ですね。
 これと同じ内容なのですけれども、実は、44ページを開けていただけるでしょうか。当然、小学校は発達段階がずっと上がっていきますので、44ページに、見ていただいたら、自己評価のところが、1年生のときは、元気に挨拶できましたかということが、6年生では、場面や相手に応じた挨拶や言葉遣いをすることができましたかとか、係の仕事ができましたかが、委員会、係、当番活動で自分の役割と責任を果たすことができましたかというような、成長に合わせた表現になります。そして、評価の方も、「よくできた」、「まあまあできた」、こういうふうな4つの段階ということで分けております。そこで、もう一点、44ページの囲みの中なのですけれども、この項目は何に基づいて作っているかというと、これは実は、各学校が子供たちに付けたい力はどんな力なのですかという、まずその計画があって、それが、後ほど子供たちがどうなったかという自己評価のものと項目を考えてつなげて、そして、実際にはこの部分については力がついてきたな、この部分はまだまだだなというふうなことで、学校が取組の内容が分かるような項目を作るようにということで指導してございます。
 続いて中学校をお願いいたします。46ページをお願いいたします。46ページの真ん中の「ページの構成」というのがあると思うのですけれども、これにつきましては、まず小学校と同じように、自分自身を見つめるページ。それから中学校では、将来を見つめるページというのを作っております。それから、トライやる・ウィークの事前事後。これは、県が推奨しています5日間の社会体験事業の事前とか事後というものに使えるページ。それから中学生ですので、最後は進路選択。これは、具体的な進路選択に活用できるページというようなページ構成にしてございます。
 それで、特徴的なものとして、将来を見つめるページなのですけれども、これにつきましては52ページを開けていただけるでしょうか。一番上のところですけど、これは1年生のモデルなのですが、将来の自分を見つめてみようということで、一番にまず、あなたが30歳になったとき、あなたはどんな人の笑顔につながることをしたいと思いますかというような聞き方をして、今の自分ではなく30年後の自分の将来を頭の中に想定させて、そしてそれを書く。誰のためにというようなことを子供たちに考えながら書いてもらうというようなものを作っております。これが、中学2年になりますと、60ページですが、同じように、将来の自分を見つめてみようなのですけれども、今度は、30歳は30歳なのですけれども、自分が頑張ったことを、今度は上司ですね、周りの人からどう評価されたいか。どういうふうなねぎらいをもらいますかというようなことで、将来の自分像を考えさせる。それから3年生になると、72ページになるのですけれども、これはインタビューを想定して作っていますけれども、あなたが30歳になったら、あなたが日頃、大事だと思っていること、生きていく上で大切にする生きがいとか価値ですね、そういうふうなものを、30歳のときにどんなことを考えたらいいかなということを子供たちが想定して書けるような形で、要するに今の自分と、将来の自分を結び付けられるような書き方、そして同じ30歳ですので、1年、2年、3年と振り返ると、自分がどういうふうな考え方まで成長しているか分かるような形で書けるような形で工夫しております。
 53ページに戻っていただくと、右側のところに、あなたはAとB、どちらに賛成しますか。自分の気持ちに一番近いものを丸で囲んでみましょうというのがありますけれども、この項目については、将来のことは高校に入ってから考える。今から将来のことを考えているという。これについては、全く同じ項目が、学年の最後、1年生の最後、2年生の最後、3年生の最後で同じように自己評価して、自分がどういうふうに成長していったかというのが、これは数量的に分かるような形で作ってございます。
 活用方法としましては、これにつきましては教師用資料ですので冊子にしていますけれども、子供たちには1枚ずつのプリント形式で配って、そして書けるような形にしていまして、それをファイリングして、ポートフォリオのように重ねていって置いていくと。この中には、各学校で特に力を入れていることとか行事とか、また修学旅行の具体的な事前・事後指導とか、そういうページはないので、そういうものも一緒にとじてもらったらという形で使ってもらうよう県では言ってございます。
 最後になるのですけれども、課題なのですけれども、28年度から使うような形で推進していますが、やはり書くことが目的になって、先ほど教師が対話的な関わりをするというようなことがありましたが、その辺がちょっと充実できていない。形をこなすページをうめるというようなところがあるので、その辺がきちっと、本来の意味を理解した形で進んでいくよう研修等を深めていく必要があるのではないか。それから、小・中・高の連携ですね。一応、今、小中連携とか、小中一貫教育を推進してきていますので、結構、小学校と中学校の先生が一緒にこれについて研修したりというのは、兵庫県の中でも各市町の中であるのですけれども、やはり中学校から高校へというのがなかなか難しいという状況でございます。そのために、今年度・来年度の2年間で、キャリアノートをいかに高校につなぐかというモデル事業を6中学校区指定して、今、研究しているところでございます。
 以上でございます。
【藤田座長】  ありがとうございます。3名、長田先生、そして私、西田先生からいろいろお話をさせていただきました。主体的、対話的で深い学びが標榜されているこの時代にあって、こういうふうなしゃべり続けというのはいかがなものかとは思いますが、やっとこれで皆様方の対話的な学びの時間でございます。3名の発表に対しまして、是非、御質問等、まずいただいて、頭の中をクリアにしてから意見交換をしてまいりたいと思います。是非、お気付きのところ、御質問という形でお出しいただければと思います。誰に向けてでも結構です。お願いします。
 いかがでしょうか。もしなければ、もちろん議論が始まってからでも結構なのですけど。どうぞ、葉山先生。
【葉山委員】  平成30年度内に例示を示すということはお話の中で分かったのですけれども、全国でこれを実施していく時期というのはどう考えておられるのでしょうか。
【藤田座長】  長田先生、お願いします。
【長田委員】  先ほどの課長挨拶の中にもあったと思うのですが、年度内に「キャリア・パスポート」を例示する際に、今後のスケジュールについても、そのときにお示ししますということになっておりますので、その際に、例えば小学校は何年から、高等学校は何年からというようにお知らせすることになるだろうと思います。ただし、国が示した例示を受けて、都道府県教育委員会や設置市や学校がカスタマイズする必要があるということは、当然、準備時間が必要になってくるということですから、例示してすぐに完全実施してくださいねということは難しいだろうとは考えているところでございます。事務局、何か補足はありますか。
【鈴木児童生徒課進路指導調査官】  今、長田先生がおっしゃったとおりなのですけれども、やっぱり新学習指導要領の施行時期と、それから選考する時期、そして各学校まで浸透する作業でございますので、各学校が学習計画を前年度から立てると思います。そこを逆算して進めると、新学習指導要領が始まる小学校段階、もう結構ぎりぎりなのかなというところがあります。逆に、すぐに使うであろう高等学校段階は、まだ余裕はあるのですけれども、ただ、やはりそれでも先行実施した方がいいだろうというところがありますので、それぞれ少し時期をずらしながら考えていかなければならない。それで、特に小学校はもう、すぐにでもというところがありますので、今年度中ということでこの委員会はなってありますけれども、なるべく早めな時期で、ある程度お示しできるような形で、ちょっとせかして申し訳ないのですが、お諮りいただけると有り難いと思っています。
【藤田座長】  今、葉山先生から御指摘いただいたことについては、様々な観点、学習指導要領の実施であるとか各都道府県や市町村のカスタマイズであるとかも含めて、でもそれほど悠長にせずに、なるべくスピード感を持ってということで、これから議論していくということでよろしいですか。ありがとうございます。
 ほかに御質問等ございませんでしょうか。
【西田委員】  よろしいですか。資料4の「『キャリア・パスポート』の試作について」のインナー会議の中の丸8のところで、学級活動やホームルーム活動の内容及び実施時間数にふさわしいものという話があったと思うんです。特別活動の時間は35時間ありますので、その中の一応、実施時間数の目安ということに関しては、国の方では何か、大体これぐらいの時間かなというものはあるんですか。
【長田委員】  学習指導要領上は、児童生徒がまとめたり蓄積する、この活動に、いわゆる学級活動やホームルーム活動が偏重しないように留意することというところにとどめております。具体的な学校現場のことを考えますと、学級活動も小学校は内容が10項目あります。中学校は11項目あります。高等学校は今回の改定で、18項目あったものを12項目まで減らしているんです。それでも高等学校、年間35時間のホームルーム活動で12の内容があるということになると、一つの内容に向けて平均化したとしても、掛けられるのは3時間というようになるわけで、ですから、そんな多くの時間をここに掛けるということはやっぱりできないだろうと想定されます。以上です。
【藤田座長】  35時間までですものね。ほかにいかがでしょうか。
 では、時間ももったいないですので。それでは、これからの時間、しばらく意見交換に使っていきたいと思うのですが、時間の目安としましては、今日、12時までで終了ということは御案内のとおりでございます。それで、最後に学校種ごとに集まって、これからの方策なども意見交換、情報交換した方がいいと思いますので、それに10分ぐらいの時間を確保し、事務局にお戻しして最終的に取りまとめていただく時間も確保すると、45分ぐらいまでの時間は議論に使っていけると思うんです。ですので、最初の15分から20分ぐらいは、いわゆる小・中・高という問題よりも、「キャリア・パスポート」全体について、こんなことを考えているんだとか、こんなイメージなんだとか、こういうことに気を付けたいんだとかいう、先生方のそれぞれの全体イメージであるとか、全体に関する御意見、御感想みたいなものを自由に提示していただけたらなと思います。私の進め方としては、小学校の学級会のように、指名するのではなく、先生方から自発的に発言していただけると、とても心地いいなという感じがするので、是非お願いします。全体に関しての御感想、イメージ、何でも結構です。あるいは質問を交えていただいても結構です。
【熊谷委員】  よろしいですか。
【藤田座長】  お願いします。
【熊谷委員】  二つありまして、一つが、この「キャリア・パスポート」を実際に記入させる、教育課程の中でどこで活用していくのか。例えば道徳だったら心のノートというのがありましたけど、あれは、この心のノートを使って何時間やりなさいというのではないわけですよね。だから、今、先生から御回答いただきましたように、学級活動の各内容、(3)が新設されましたけど、その中で何時間つまんで、これを使いなさいということはないということで、非常に現場としては少し心が軽くなりました。
 もう一つ、西田先生にお聞きしたいのですが、これを、さっき先生のお言葉をかりると、形をこなすだけになってしまう。
【西田委員】  はい。
【熊谷委員】  私、実は小も中も経験しているのですが、特に中でそういう傾向にあるのかな。つまり、配ってしまって、極端な話ですけど、自習の時間にこれを配って書かせると。本来でしたら、これも先ほどお話にあったように、今ある宝を蓄積してあって、それを見ながら。蓄積がなかったら忘れてしまうわけですよね。僕、このとき、こういうふうなことをやった。私、こんなことを褒められた。みんなからこういうふうに認められたというのを見ながら、ここに落とし込んでいく。だから集大成として残っていくのですけど、その蓄積する指導さえしていない。手が回らないというか気が回らない。27年に始まったのですけど、その辺はどのように御指導されていくのですか。
【西田委員】  やはり今までの振り返り資料などを一緒に入れていってくださいねと言われる。結構、各学年、量は多いんです。それを見ながら、この学期に1回とかいうのを書くというのがあるので、資料はあるのですけれども、ただ、子供たちはそれを見ながら、きっちり指導を行う。要するに学校が集めて、それを見ながら書くような指導とか、深まるような指導をしていないところがあります。ただ単に、ここの、どんなことが楽しかったですか。キャンプに行ったら、キャンプはどうでしたかといったら、「楽しかった」だけとかね。先生が、何が楽しかったの? と。友達とどんなことをしたら楽しかったの? それはなぜなんだろうねという、子供たちの思考をある程度、揺さぶるような問い掛けとかが必要だと思います。分かる子やひらめく子はすぐに書けると思うんだけど、なかなかそういうことがすぐ文字にできなかったりする子に対して、ペーパーを配るだけではなく、書かせるときにもそういう問い掛けをして、ある程度、考えさせてやる。そういう示唆を持ったような声が必要なのではないのかなと。そういう研修をしていかないと、先ほど言ったように、ただ単にこれを書けというと、書けない子がたくさんいるというのが現実にあります。特に小学校も多いですね。
【熊谷委員】  ありがとうございます。
【藤田座長】  ありがとうございます。先生方の力量をどう高めていくのかということとセットで考えないと、今、熊谷先生が御指摘になったように、さあ、書こう、はい、おしまいというふうになってしまうのはもったいないですよね。ほか、いかがでしょうか。
【神部委員】  よろしいですか。
【藤田座長】  ではどうぞ。
【神部委員】  eポートフォリオと、あと「キャリア・パスポート」の関連はどうなっているのかということをお聞きしたいというのが1点と、あとは大学の先生にお聞きしたいのですが、大学入試や大学教育で「キャリア・パスポート」はどういうふうに活用されるのかということをお聞きしたいと思っております。よろしくお願いいたします。
【藤田座長】  なるほど。eポートフォリオですね。まずこれは、基本的な方針について長田先生、先ほどちょっと御指摘もあったと思うのですが、もう一度確認をお願いしてもいいですか。
【長田委員】  学習指導要領上の話で申し上げます。学習指導要領上、「キャリア・パスポート」は自己評価であるということが繰り返し記載されているんです。そして、学習指導要領、評価のところで、自己評価は学習活動であると。いわゆる子供が実際に積み重ねた「キャリア・パスポート」が、イコール、そのままコピーペーストで学習評価になることはないと書かれているわけなんです。ということは、いわゆる小学校1年生のときから、これが学習評価になりますよ。例えば大学入試にこのままいきますよとなると、藤田先生の言葉をかりれば厚化粧が始まるわけです。小学校1年生のときから、大学入試に有利なように、有利なように物を書き始めるということは、「キャリア・パスポート」としては全く想定していないわけなんです。ですから、こう申し上げることはできると思います。eポートフォリオをすることによって、「キャリア・パスポート」に替えることはできないだろうというのが原則です。ただし、子供たちが積み上げたポートフォリオ、「キャリア・パスポート」を活用して、それを参考にして学習評価にすることは当然できるわけですよね。さらに、それによって子供たちの学習意欲や生きる意欲を更に高めてあげることもできるわけなので、これを「キャリア・パスポート」とどうやって連動させていくかとか、はたまた大学入試にどうやってこれをつなげていくかということについては、今後やっぱり十分な議論が必要だろうと考えております。事務局、何かありますか。
【鈴木児童生徒課進路指導調査官】  eポートフォリオとの議論は、もちろん高等教育局との連携等もございますし、大学入試の、特に調査書の電子化等々のお話も、実は活路というか、そういったものはできないかというところで御相談は受けているのが現状です。ただ、今、長田先生がおっしゃったような、そもそもの「キャリア・パスポート」の性格というものがございますので、その辺の接点、要は「キャリア・パスポート」を活用したeポートフォリオとか、そういったものを今後考えていく。この場でも議論していただく。これからだと思っております。ただ、イコールになることはないのかなというのは、今、先生のお話からもあったかと思います。
【神部委員】  ありがとうございます。
【藤田座長】  ありがとうございます。ということは、スタートラインとしては、いわゆる「キャリア・パスポート」をそのままの形で、それが電子化されるにしろ紙媒体であるにしろ、例えば大学にぽんと提出して、評価してねということはあり得ないということでよろしいですかね。
 今、神部委員から、大学入試との関係や大学での活用をということで、大学の先生にということがあったのですが、川﨑先生、どうですか。大学での活用などの。
【川﨑委員】  私個人の考え方と、それから一般的に言ってかなり懸念されることと、両方お話ししたいと思うのですが、私個人の考え方は、今、御説明があったとおりであり、「キャリア・パスポート」が入試のためのものになってしまうと本末転倒ですので、それとは飽くまでも切り離して、児童生徒が自分のことを振り返り、将来のことを考える、自分自身を作り上げていくための教材であるべきと思っています。
 ただし、御承知のように、大学入試センター試験が廃止されて、共通テストが、2021年度入学生が受験する2020年度入試から実施される中で、学力の3要素を総合的に評価するということが求められていますので、大学側は特に「主体的に学習に取り組む態度」にどう対応していくかというのは大変苦慮しているところで、そのために、では面接をするのか、小論文をするのか。今のところ、大学側に「キャリア・パスポート」が知られたときに、私立大学等でこれが使えるというふうな判断をするところが出てこないとは言えないので、それがどういう活用の仕方になるのか。それに関して初等中等教育側からの規制というのは非常に難しいと思うんです。それで、大学は個別に入試を実施しますので、例えば私どものところのように、かなり大規模な大学ですと、全部面接をするというのは非常に難しいので。それで、早々と早稲田大学は、小論文を試行的に実施するという入試を一部発表していますけれど、私どものところでもそういうことを参考にしながら学力の3要素全体をどうやって測るか。特に、態度の方をどうするかというところで、内申書等も活用するという考え方もあるので、そういう流れに合わせてちょうど「キャリア・パスポート」が開始するので、その点、十分、初等中等教育側でできることというのは、「キャリア・パスポート」というのはこういう目的のものだというのを明確に伝えるということになると思いますが、それを大学がどう活用するかまではコントロールできないので、そこが非常に大きい問題になってくるなと認識しているところです。
【藤田座長】  そうですね。私も大学の教員としての発言をさせていただくとするならば、まさに川﨑先生と同じことを考えていて、やはり大学入試とリンクさせてしまうと、私たち大学からも、そういう、いわゆるストーリーとして大学に多分評価されるだろうなと思われるものをもらってもどうしようもないんです。子供たちにとってもそれは有益ではないだろうし、教育活動としてそれは望ましくないだろうと。例えば、西田先生から御提供いただいた、46ページ、「大人になって、人生の壁にぶつかった時に…」。これを開いたときに、こんなのうそだよというのを見返しても、全然、勇気も何ももらえないですよね。だから、やっぱり子供たちがその時々、きちんと自分の気持ちを書き残せるもの。そういったものを大学側としても後押ししたいなと、一教員として思いますし、やはり文部科学省として、初等中等教育と高等教育局がどうこれから対応していただくのかということをお願いするというのが、我々協力者会議の役割なのかなということを感じました。
 次に、大学での活用なのですが、実は筑波大学では昔から、キャリオと呼んでいるポートフォリオを作っているんです。1年生のときから積み重ねましょうと。これがもし、高校生が持ち上がってきてくれれば、ではみんなで「キャリア・パスポート」を振り返ってみようか。それで私たち導入課も、フレッシュマンセミナーというんですけど、そのフレッシュマンセミナーで最初にできるなと思いました。だから、そういう大学側の「キャリア・パスポート」みたいなポートフォリオの積み重ねの接続というのは、もしかしたらやりやすい大学は、筑波大学のほかにもあるのかな。そんなことを思いました。ありがとうございます。
 ほかに全体的な御意見はございますでしょうか。お願いします。
【石原委員】  よろしいですか。私どもとしては、採用するという立場としてちょっとお話しさせていただくとすると、「キャリア・パスポート」の意義は非常に重要かなと感じているのですけれども、今、話題になっていますけど、1年目から3年目の社員が離職するという率が非常に高いと報道されていると思うのですけど、弊社でも同じような状況です。それで、企業としては、やっぱり1年目から3年目というのは、非常に費用も掛けて採用してやっていますので、長く勤めてもらいたいという思いが非常にある中で、辞めてしまう。これは適性に合っていないとか、もしかしたら私たちの指導が悪いのかどうかというようなことも、いろんなことが想定されるわけなのですけれども、この「キャリア・パスポート」のお話を聞いて、私たちとしては、採用する面接のときは、どちらかというと、勉強ができる。ある程度、基礎知識は必要だとしても、どちらかというと、どんな経験を学生時代にしてきたかということを、面接の折にいろんな質問を、角度を変えながら変化球を出しながら聞くわけですけれども、その中で、大学というのは比較的身近な活動なので、皆さん自信を持っていろんな話をされるのですけど、私個人からすると、やっぱり中・高でどれぐらいの活動をしていたのかというのは非常に気になるので、中学校の部活だったり生徒会活動だったり、若しくは本当に一生懸命取り組んだことだとか、先生に褒められたことだとか、そういうようなことをちょっとヒアリングして人間性を確認するというようなことを捉えています。ですから、学力とか、そういうものよりも、本当に真面目で、この子は一生懸命取り組んでくれるのだろうなという人たちを採用しようとしています。
 そういう部分で言うと、こういったものが、高校や大学を出てから、うまく社会で活用できたら、私たちも、今度入社してから、今度はOJTをやる各社員が、この子の、この人の良さというか適性を理解した上で接することによって、やっぱり就職すると、自分の思いとギャップが激しくて、なかなかついてこれないということがあるのですけど、昔みたいに先輩の背中を見て、ついてこいみたいな時代ではなくなっている関係上、やっぱり褒めながら、こういうことができるよねということを言うためにも、経験値を知るということは、私たち現場というか、社会の現場では必要かなと思いますので、そういった活用をどう考えているかというのは、議論していく必要性があるのかなと感じます。
【藤田座長】  なるほど。今、石原委員から御指摘いただいたことというのは、大学を経る子、経ない子、いろいろありますけれども、いわゆる就職後もこういった「キャリア・パスポート」の活用の方策ということがあり得るし、それはむしろ早期離職を食い止める可能性すら持っている。そういう可能性はあるなというふうにお伺いしてよろしいですか。
【石原委員】  そうですね。
【藤田座長】  ありがとうございます。そういうことも含めて今後議論ができたらいいなと思っております。ほかに全般的な点で、御意見、御感想あるいはアイデアでも結構なのですが、ありますでしょうか。お願いします。
【川﨑委員】  いいですか。大きく二つなのですが、一つは内容的なこと、もう一つは活用の仕方、指導の仕方に関してです。内容につきましては、それぞれの資料で目的等、書かれていますように、将来を見通したり振り返りをしながら、自分自身の自己評価をして次につなげていくということになっていますけれど、文章はこれで結構だと思うのですが、いずれも自分自身のキャリアの形成を見通したり振り返ったりしてという、見通すというのが先に書かれているのですけれども、専門的な立場からいくと、キャリアというのは常にずっとつながって、連なっているもので、生まれてから死に至るまで自分自身で作り上げていくものですけれども、将来のことを考えるという、将来を展望するような課題は今までのキャリア教育の中でもいろいろ行われてきましたけれど、ややもすると、それが突発的であったり断片的であって、あまりつながる取組になっていなかったことがあると思うのですが、将来のことを考えるヒントというのは、過去の自分とか今の自分の中に埋め込まれている。それがつながっていくように働き掛けていくということがとても大事だと思うので、順番としては、やはり振り返って将来を見通すという手順を踏んで、言ってみたら、これまでの自分を振り返る準備体操を経て、自分の将来を考える。そういうことによって、全く今と切り離された将来ではなくて、可能性のある将来。もちろんそれは発達段階、学校段階によっていろいろ違いがあるのですけれど、そういうところにつなげていくということがとても重要だと思いますので、それは今までのキャリア教育の中でももちろん実現されているところもあるのですが、それを明確にするための体系的なツールとしての意味づけがとても重要だと思うので。なので、振り返って将来をというのを大事にしたいなと思っているんです。
 それと、振り返るというのは二つの振り返りがあるので、それぞれ書き込む時点で、今の自分、あるいはそのときの取組を振り返る、その学年を振り返る、書いた時点での振り返りと、持ち上がっていったときに、1年前、2年前、3年前、あるいは全体を通しての振り返りという二つがあるので、それによって、やっぱり、もちろん修正はいっぱいしていっていいわけなのですけれど、振り返りながら将来をというのを、その都度考えていく。それが科目間の往還だけではなくて、自分の中の過去と現在と将来との往還といいますか、それを大事にしたようなツールができたらいいなと思っております。それが一つです。
 もう一つは、活用の方法についてです。西田先生に大変申し訳ないのですが、西田先生と長田先生にはお話ししたことなのですが、兵庫県の「キャリア・ノート」で、66ページ、67ページを開けていただいて、ちょっと具体的にお話しした方が分かりやすいと思うので、今からちょっとお話ししたいことがありまして、「人とのつながりを考えよう」というのは各学年に入って、中1、中2、中3、それぞれ入っているので、多少内容を変えて作られているものなのですが、2年前、平成28年度だったと思いますが、私が兵庫県のある学校で、研究授業で指導・助言を頼まれてお伺いしたときに、ちょうど中学校2年生で、67ページを扱った授業を先生がされていました。それで、先ほど来、出ているように、シートを埋めることが優先になってしまう。ではどういうふうに指導するかというときに、先生がどう対話的に関わるかというところはとても大事なので、そのやり方を先生方にどう伝えるかという課題があると思います。その研究授業のときに何があったかといいますと、3つ目の枠で、「人とのつながりが将来、どのように役立つのか考えて書こう」というところを授業の中でされていて、生徒が書いた後、「はい、書けた人」と言って、先生が手を挙げてもらって生徒に当てて、話してもらっていたんです。1人目の生徒が、「将来、同窓会に呼んでもらえる」と答えたんです。それで、もし私だったら、「ああ、何々君は、卒業してずっとたっても中学校のときの友達関係を大事にしたいと思っているんだね」というふうにフィードバックすると思うのですが、そのときの先生の対応は、生徒がそういうふうに言ったら、「うーん、そうかな?」と言って、一つの正答を求める、教科の授業のやり方でされていました。それを察した女の子が、社会人になってからもコミュニケーション能力が高まって仕事がうまくできると言ったら、「そのとおり!」と先生が言われていたんです。
 このワークでは一人一人の気付きを促して、何かそれをみんなで共有することによって、いろんな考え方があるとか、いろんな気付きを更に深めて、自分自身を自分らしく作り上げていくところに生かせばいいので、先生が一つの正解があるというふうに授業をされると趣旨が損なわれてしまうのですが、それは単にその先生が良くないとか兵庫県が良くないということではなくて、多分、全国共通の部分があって、「キャリア・パスポート」をどういうふうに使ったらいいかというモデルがないと、やっぱり先生方は分かりづらいのだと思うんです。ただシートを埋めればいいのか、終わったところでどんなフィードバックをして、その時間を終わりにしたらいいのか。もちろん、宿題で書くだけのときもあるでしょうし、先生方が対話的に関わるという関わり方は、私自身はそのとき思ったのは、何か実際に学校の中で、モデル授業ではないのですけど、映像か何かを撮って、こういうふうにファシリテーションをすれば、子供たちを全ての気付きを受け止めて、更に促すような働き掛けができる。その部分が本当はあった方がいいなと思っているのですけど。
【藤田座長】  そうですね。
【川﨑委員】  もちろん、授業で先生が常に対話的に関わるだけではないと思いますが、対話的に関わるという関わり方がまだ共有されていないと思うんですけど。アクティブラーニングと言われて、やっているときだけは、何かうまくいっているのかもしれないですけど、そうではないときに、普通に関わるというのを、何かうまく示せたらいいなと思っております。すみません。ちょっと長くなりました。
【藤田座長】  ありがとうございます。非常に重要な点だと思います。やはり西田先生が最初に御提示いただいたように、書いて終わりではなくて、それをどう振り返っていくのか、そのときにやっぱり子供たちの振り返りがその子の成長を促すような振り返りにならなければいけなくて、教員の一言、二言あるいはコメントの1行、2行というのは大きいじゃないですか。なので、教員の力量をどう高めていくのかなというのは非常に重要なことだなと思いました。
 話したように、私も、特に思春期を迎えた小学校5、6年生ぐらいから高校1、2年生ぐらいまで、例えばこの1年を振り返ってみよう。思い出深いことはありますかと言っても、「特になし」などと書くじゃないですか。でも、小学校の3年生、4年生というのは、1年を振り返るといっぱい書きますよね。そういうときに、「特になし」というのが後退なのではなくて、やっぱり思春期という難しい時代に入って、成長の一過程である。「特になし」しか書けないことが成長なんだ。それで、高校3年生になって、中学生のときの「特になし」というのが、いわゆる黒歴史ではなくて、成長の過程としてしんどい時期だけど、そういうしんどい時期があったから、今ここにいるんだよねという、そういう振り返りの促しができる教員でないと、やっぱり、「特になし」とか、一番あなたのいいところは? 全然ないなどといったときに、余計しんどくなってしまっては困ってしまうので、そういう子供の成長発達全体を理解できる教員の力量というのをどう形成していくのかというのは、非常に重要だなと私個人も思いました。
 ほかに全体に関して何か、コメント、御意見、アイデア。どうぞ。
【安斎委員】  川崎市でも同じように、キャリア在り方生き方ノートということで平成28年度から取り組んでいるところです。その中で見えてきたことと、今お話が出たこと、すごく重なるなと感じていました。
 まず、取り組んでいく中で、やはり小学校のときに書かれていたものを中学校に持ち上がっていったときに、中学校の先生から大変好評を頂いているんです。「その子の背景というものが、キャリア在り方生き方ノートを通して少し見取ることができた。」とか、「今は本当に一言も書かないような子が、実は小学校のときには、こんなふうに一生懸命やっていたんだなと分かると、ちょっとかわいく思えるようになってきました。」などと言っていただけるので、やはりつなげていくという、縦のつながりをしっかりもっていくということは、とても大事だなということを実感しているところです。
 ただ、反面、高校の先生からは、やはり高校というと切り替えの時期なので、「過去の自分というのを持たずに新しい自分として再出発したい場合、そのキャリアノートはどういうふうに使っていったらいいでしょうか。」というような御意見を頂くこともあります。そのときに、今おっしゃったように、そういったことも成長の足跡として、また先生が対話的な何かコメントなどを返しておいていただければ、それで子供たちも、自分を肯定的に受け止めながらつなげていくことができます。高校ですと、中途退学してしまうお子さんもいますが、そういうお子さんたちも、もしかしたらノートがあることで、また学んでみようかという可能性につながるという意味では、やはり何を残していってあげるかという教師側の対話的な関わりというのもとても大事だなと考えております。
 また、私のところは政令指定都市ですので、難しいというところが、今後のスケジュールのところと重なるのですけれども、例示として示されることはとても有り難いのですが、県の取組と、政令指定都市の取組とのバランスや、高校には、県立、私立もあり、そして私どもの市立もあるというような中では、それをどのように連携させていくか。そういったところでは、ファイリングするものがある程度統一されるかもしれないというようなところには、また一つ、何か見い出せるものがあるのかもと感じているところです。
 最後に保護者との関係です。保護者に理解していただくことや、保護者がコメントすることが難しい御家庭というのは実際にあるのですけれども、やはりそれでも、保護者が関われば関わるほど、このノートの意義が高まっていくというのが、実際、取り組んでみて、分かっているところなので、是非、保護者の方に十分理解していただけるような何か手立てを考えたいなというところです。
 以上です。
【藤田座長】  ありがとうございます。様々な観点から、私たちがちょっと見落としがちなところまで含めてコメントを頂きました。ありがとうございます。
 それでは、ちょっと時間が押してきてしまったので、今度は学校段階に焦点を当てながら、小学校、中学校、高等学校というふうに考えたときに、特にこういうところが大切になるよですとか、こういうところは気を付けた方がいいよ、あるいはこういうアイデアがあるよということをお聞かせいただきたいんです。それで、ちょっと時間も限られてしまっているので、学校現場の御経験のある先生方を含めて、小、中、高とお伺いしていきたいと思うのですが、口火を切る形で葉山先生、例えば小学校に焦点を当てたときに、キャリア活動等、どんなところが一番ポイントになりそうなのか。あるいは先生の思っていらっしゃる印象とかイメージとか、小学校に焦点を当てながらお話をしていただいてもいいですか。
【葉山委員】  まず、この話を聞いたときには、先ほどもあったのですが、小学校では割とこれまでも、学年初め、学期初めだったりとかに目標を立てたり、学期の終わりに自分自身の1学期間を振り返ったりするということが、本当に普通のようにやられてきたので、そことうまく結び付けることが、すごく大事だなと思っています。京都市でも、今回の学習指導要領の告示があったときに、その文言を見付けられて、これは本当にやるんですかとか、すごくびくびくとした形で問合わせが実はありまして。でも、今お話ししたように、実際、各校でやってこられているところがあるので、そことつなげたものになっていくと思いますという形で返してはいるのですが。
【藤田座長】  そうですね。そうあってほしいですよね。
【葉山委員】  現場サイドとしては、ちょっとそういう不安感があるのは事実かなと思っていますが、そこをきっちりと現場に伝えていくということと、現場の先生がやっぱりやりやすいような形というのがすごく大事なのだろうなということを、今、一番感じているところです。
【藤田座長】  そうですよね。先生方のこれまでなさってきたことがちゃんと生きますよ、それでものすごい御負担になるということもないんですよということが、うまく伝わるものが必要です。
【葉山委員】  あともう1点あるのは、中学校などは学年団というものがしっかりと組まれていて、1、2、3と持ち上がっていかれるので、先生方が共通した形で持ち上がっていかれると思うのですけど、小学校というのは、やはり1年生から6年生まで持ち上がっていくということがなくて、1年ごとに担任の先生が変わっていく状況もあるということなので、本当に学校の中で「キャリア・パスポート」に何を盛り込むかというところをきちっと6年間で共有しなければ。担任個人の思いで大きく変わってしまう可能性が、小学校はすごくあるのではないかなという思いが。
【藤田座長】  そうですね。学校としての、育てたい資質・能力みたいなものをしっかり定めて、それに大きな流れを付けていかないとということですよね。
【葉山委員】  ちょっと、そこの心配が正直あります。
【藤田座長】  ありがとうございます。熊谷先生、いかがですか。小学校に焦点を当てた場合。
【熊谷委員】  先ほど藤田先生がおっしゃったように、黒歴史にならないように。「特になし」というのも発達。物すごく大切なことだと思います。その観点がなくてやるのだったら、やらない方がいい。つまり、教師サイドの問題だと思います。
 それから別の話ですけど、あと一つだけ。藤田先生にはお話ししたと思うのですけど、どんな職業に就きたいですかといったときに、ある女の子が、通訳になりたいです。これはいいですよね。では、通訳になるにはどうしたらいいか。では、こういうふうにして、こういうふうにして。それで、そのときに先生が言ったのは、通訳になりたい。どうして? と聞いたら、私は日本の人とよその国の人の懸け橋のような仕事がしたいんだ。そうか。では、ほかに懸け橋になるような仕事というのはないかねと言ったときに、その子が、わっと広がるわけですよね。そういうふうに、なりたい自分を固定して、それになるにはどうしたらいいかではなくて、どうして? というところの観点が入ってくると、小学校も中学校もかなり広がってくるかなと思いました。以上です。
【藤田座長】  そうですね。ありがとうございます。本当に、高校は移行準備ですので、ある程度、現実との接点というのは大切ですが、小学校、中学校は、今、熊谷先生がおっしゃった視点がないと、逆に視野を狭窄してしまうというか、もったいないですよね。ありがとうございます。
 では西田先生、中学校の立場からいかがですか。中学校に焦点化した場合、どの辺がポイントになりそうですか。
【西田委員】  中学校になった場合、どこもやっていると思うのですけど、社会体験や職場体験というようなものは大きな体験活動があるので、やっぱりそれも核としたものとして固定してもいいのではないかなという気がします。普通の、自分を見つめるとか、いろんなことは変わるのですけど、やっぱり社会での経験というようなものを、そこには一つページとして、何か「キャリア・パスポート」の中学校版には入れたらいいかなという気はします。
 それと、あと、やはりこれも小も中も一緒だと思うのですけども、各学校でいろんな行事があったり、各地域によっていろんな行事があるので、それの、いろんな今までやってきたシートというのは生かして、それをやっぱり積み重ねて置いておかせるというのが、先生も言われたように大事だと思うんです。それで、それを基に書かないと、今、大抵、1年に一番最後、学年で持ち上げていくのだったら、A4で1~2枚ぐらいに上げないと、高校まで行ったら大概な量になりますものね。クラス40人いたら、一人で見られないので、やっぱりA4、1枚とか2枚になろうと思ったら、そのエキスの部分だけを思い出しながら書くという作業は必要になるので、その分の精査というか、絞り方が大切。だから、僕のイメージでは、今、兵庫県が作っているキャリアノートはいろんなものを入れているんです。だから、学年が分厚いです。だから、それを基に、今から考えられている「キャリア・パスポート」みたいなものに落としていく必要があるのではないかなと思います。以上です。
【藤田座長】  ありがとうございます。先ほど長田先生がおっしゃったように、日々の記録をどうまとめていくかということですよね。
 安斎先生、中学校に注目した場合、何か、こういうポイントがありそうだということは、ありますか。
【安斎委員】  今言っていただいたように、職場体験活動というのが、中学校の現場ではすごく核にされているところが多いなというところです。そこに加えて、夢を持とうとなったときに、どうしても職業名で語ってしまうことが多いので、そうではなくて、変化も激しい社会ですので、どういう人になりたいかとか、もう少し人間性に踏み込んだところでの目標の持ち方というところまで、キャリアノートに示せるといいなと思います。なかなか難しいかもしれないのですが、それこそ先生方の関わり方や対話的なところでも返していけるといいかなと感じます。
【藤田座長】  そうですね。個別の職業ですと、これから継続したり、新しくできたりということもありますし、なくなってしまうものもありますしね。ありがとうございます。
 戎井先生、お待たせしました。本当に今日は大変なところ、お疲れさまです。
【戎井委員】  遅くなりまして大変申し訳ありませんでした。
【藤田座長】  とんでもないです。高校を軸にしてですけれども、高校に限らずお考えだったこと、今までお話を聞いていて思われたことを是非お聞かせください。お願いします。
【戎井委員】  すみません。今、委員の先生方のお話を聞かせていただく中で、特に、何のために書くのかということを、子供たちも先生たちもしっかりと分かってもらった上で書かないと、やはりただ書いてしまうということになってしまうなと思いました。そこを、例えば留意事項とか、最初に配るタイミングで、どうやってうまく伝えていけるかということが、このキャリア・パスポートが本当にうまくいくかどうかの一番のポイントになるのではないかと思いました。
 次に、何のために書くのかという部分と少し関わってくるのですけど、高校はやはり、今日の議論の中でも出ていたのですが、新しく変わっていく大学入試の部分、特にeポートフォリオとの関係がどうなるのかという点です。教員の過度な負担にならないようにということも示していただいているところなのですが、ちょうど線が2本走っていくような感じがあって、何のために書くのかがうまく分かっていないと、同じことを2回やらされているのではないかと先生方も思ってしまうのではないかと考えています。これから議論していく中で、うまく留意事項等で整理されていくといいなと思いました。
 それから、先生がどう関わるかということが非常に大事だというのも、今日のお話の中で自分自身も十分認識したところなのですが、やはり就職であったり進学であったりという出口が目の前にある中で、先生の方が意図的でないにしろ、ややもするとこれまでの話にも出てきました厚化粧を手伝ってしまうようなケースもあるのではないかなと考えたりもしました。そのため、先生がどこまで関わるのかというところと、どうやって関わるのかというところは、やはり本当に大事なポイントになるのかなと思いました。
 あとは、先生の関わりとも関連してくるのですが、そのための時間をどう捻出するのか、年間35時間という中で、どれぐらいの時間が使えるのかという問題です。ホームルーム計画の全体的な見直しも行ってもらう必要があるとは思うのですが、丸々50分を何コマもという話になると、今でもなかなか時間がないという中で、その辺りも課題かなと感じました。
 最後に、中高の引き継ぎが一番大きな課題ではないかと思います。やはり、いろいろなところから高校に来るということもあって、そのための仕組みをどうやって作っていけるのかという点については、まさに先行実施されているような地域からも、いろいろな御意見やお知恵もお聞きしながら何か考えていけるといいなと思いました。
 以上です。
【藤田座長】  ありがとうございます。今、最後に御指摘いただいたところは、高校の先生方がこんな余計なものが来てしまってではなくて、やっぱり小・中の子供たちの過ごし方とか成長の仕方が分かってよかったなと思えるような資料として受け取ってもらえるといいですよね。ありがとうございます。
 それでは、時間も迫ってきてしまったのですが、神部さん、学校外から御覧になって、期待すべきこととか、何か思いなどありますか。全体的に判断して。
【神部委員】  私たち、キャリア教育コーディネーターといいまして、県立高校に昨年度までは5校、今は2校、コーディネーターを配置しております。それで、試験的に「キャリア・パスポート」をやってはいるのですが、やはりうまくいくところとうまくいかないところがございました。それは、先ほど委員の先生方からありましたように、先生方の御理解ということが、まだまだ濃淡あるなということもございまして、スタート期に目線合わせが非常に必要だなということは感じています。何のためにやるのか、これをどういうふうに活用するのかということが、先生方の中で同じラインにいないと、子供たちも、書かされている。これを書いたからといって、何のためになるんだ。何か、アンケートと何も変わらないじゃないかということになっているのは現実としてありました。ただ、一方で、すごくうまく活用されているところは、先生方が対話に使っていらっしゃる。生徒指導も部活指導も日々の活動についても、生徒会活動においてもでした。そこは非常に、成果として残ってはいるので、やはり目線合わせと、あとはどういうふうに活用するのかということが非常に重要だなと思っております。
【藤田座長】  ありがとうございます。まさにそうなるようにしたいですね。
 石原さん、最後になってしまうのですが、先ほど御期待をちょっといただいたのですが、ほかに全体社会から見た、「キャリア・パスポート」に対して御要望や御意見を是非お願いいたします。
【石原委員】  そうですね。私は旅行会社なものですから、特別活動の旅行的行事の中で、どのようにうまく活用できるか。学校の現場の先生からも、私たちに対する期待度というのは多分あると思うので、私ももっと勉強していきたいなと思います。その中で言うと、いろんな先生方のお話だとか事例とか伺ったのですけれども、ここにあるような、福岡や奈良の事例も是非聞かせていただきたいなと感じました。
【藤田座長】  そうですね。長田先生、これはお呼びすることは可能なんですか。
【長田委員】  事務局、いかがでしょうか。
【鈴木児童生徒課進路指導調査官】  今後、スケジュールをまた調整しますので、年内でも、あと1回、2回やりたいということで、今後議論したいということであれば、その際に、そもそも会議の要項にも書いてありますし、協力者以外の先生も呼んで、いろいろお話を聞いて、それで議論しようというのがこの会でございますので、まさにそのとおりできるという話です。
【藤田座長】  日程さえ合えば来ていただく可能性はあるということですね。
【鈴木児童生徒課進路指導調査官】  そうですね。まあ、日程調整が難しいものはありますけれど。
【藤田座長】  そうですね。でも是非お伺いしたいですよね。ありがとうございます。
 それでは、これから、長田先生が冒頭に宿題を私たちに頂いたので、恐らく着席しているのが、多分この辺が中なのだろうな、この辺が多分、小だろうな。多分、その辺りが高かななどと思っているのですが、長田先生、これからちょっと、学校種別に分かれて、意見交換やら情報交換やらをちょっとして、名刺交換などもしたいと思うのですが、ちょっとその前に。
【長田委員】  分かりました。それでは、我々委員の作業として、1か月ぐらいをめどに、いわゆる奈良から出てきたもの、あとは福岡から出てきたものと、私どもでいわゆる試作したものがありますね。この三つを眺めていただいて、そして、この後、データで、いわゆる、私どもインナー会議で試作したものについては先生方にお送りしますので、ここはこうすべきではないかな、ここはこう変えた方がより良くなるのではないか。データを朱書きで直していただくような作業をしていただけないかというお願いなんです。そのときに、全部の校種を皆さんに見ていただくのは酷なので、いわゆる宿題は校種別にお出ししたいと考えております。
 ということで、大変恐縮なのですが、本日御欠席の先生方も含めて、私どもから校種別に分けさせていただきたいと思っております。資料1の裏面を見ていただいて、委員の方、監修が荒瀬先生から、ずっと最後、和田先生まであると思うのですが、私の方ではこのように想定しております。監修の荒瀬先生、菱沼さんについては、校種の割り当てはしない。長田は高等学校。同じく安部委員は小学校。今度は協力者にまいります。安斎先生は、本当は小学校がいいかなと思ったのですが、ごめんなさい、中学校で。石原さんは高等学校で。戎井先生は高等学校。それで、本日御欠席の小田教頭先生は小学校。川﨑先生は小学校。神部さんは中学校。熊谷先生は小学校。小見委員は小学校。西田委員は中学校。葉山委員は小学校。藤田委員は中学校。三川委員は高等学校。山本委員は中学校。和田委員は高等学校、というようにチーム分けをしたいと思っておりました。
 それで、大変恐縮ですが、この後、念のため、顔合わせだけちょっとさせていただいて、一応、想定では、中学校は取りまとめ役を安斎先生に、高等学校は戎井先生に、小学校は小田先生にお願いすることにして、取りまとめていただいて、後で事務局から連絡がありますが、9月の末まで、取りまとめの先生から、朱書きしたものを事務局に送付いただくというような流れになっております。できれば顔合わせを2、3分でも。
【藤田座長】  そうですね。ということは、宿題が来て、それぞれの今、長田先生から言ってくださった学校種を中心に、赤入れをしましょうと。そのとき、ばらばら事務局に送るのではなくて、取りまとめの先生にまとめていただいてお送りしましょうということですね。
 それでは皆さん、ちょっと席を離れていただくことになりますが、本当に1、2分です。名刺交換、あと顔合わせだけちょっとしていただいて、また席に戻っていただければと思います。1、2分でお願いします。ではお願いします。
(グループ協議)
【藤田座長】  では先生方、よろしいでしょうか。本当に大急ぎで進めてしまって申し訳ありません。もう少し議論したいなというところがたくさんあったのですが、12時から様々なお仕事がある先生方も多いと思いますので、時間が迫っておりますので、この辺で今回の議論というのは閉じたいと思います。先生方から、本当に短い時間でしたけれども、貴重な御意見を頂きましたことに、司会としてお礼申し上げたいと思います。
 それでは事務局にお戻しいたしますので、よろしくお願いいたします。
【迫児童生徒課専門職】  先生方、長時間にわたりありがとうございました。今、分かれていただいた校種ごとのチームでの取りまとめの資料につきましては、9月28日までに、チームで取りまとめたものを事務局まで電子メールで御提出いただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 また、次回の日程につきましては、いただいた修正案を基に、10月あるいは11月頃、再度、開催を予定したいと思います。具体的な日時・場所につきましては、再度御調整させていただいて、また御連絡させていただきたいと考えております。
【鈴木児童生徒課進路指導調査官】  その際ですけれども、先ほどおっしゃったとおり、調査研究を実施している自治体の方から説明いただきたいという話で受け止めるということでよろしいですかね。
【藤田座長】  お願いします。是非お願いします。
【迫児童生徒課専門職】  それについても調整いたします。
 なお、本日の資料と議事概要につきましては、後日、文部科学省のホームページに掲載させていただきます。
 以上をもちまして、第1回「キャリア・パスポート」導入に向けた調査研究協力者会議を終了いたします。ありがとうございました。
【藤田座長】  ありがとうございました。お世話になりました。ありがとうございます。


―― 了 ――

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課

キャリア教育・進路指導担当