主権者教育推進会議(第14回) 議事録

1.日時

令和2年10月28日(水曜日)

2.場所

文部科学省(旧文部省庁舎6階) 第二講堂

3.議事録

【篠原座長】 定刻となりましたので、ただいまから第14回主権者教育推進会議を開催いたします。本日の会議は、新型コロナウイルス対応の観点から、対面とウェブの組合せ方式で開催いたします。ウェブ会議での御参加は神津委員と松川委員です。よろしくお願いいたします。
 本日、欠席は近藤委員と佃委員と伺っております。11人中9名の委員の皆様に御出席いただいております。御多忙の中御参加いただきありがとうございます。本会議につきましては、報道関係者より会議の撮影及び録音の申出があり、これを許可しておりますので御承知おきください。それでは本日の配付資料について、事務局から説明をお願いいたします。
【石田学校教育官】 座長から御紹介ありましたように、本日も対面会議とウェブ会議とを組み合わせた方式にて開催いたします。会場にいらっしゃる委員の先生方におかれましては、御発言に当たりまして札を立てていただく、もしくは手を挙げていただく、インターネットでも聞き取りやすいよう、ゆっくりはっきり御発言をいただく、また、御発言の都度、お名前をおっしゃっていただくようお願い申し上げます。ウェブで御参加の先生方におかれましては、御発言以外はマイクをお切りいただく、御発言に当たっては手を挙げるボタンを押していただくようお願いいたします。
 それでは資料の確認を申し上げます。本日は、資料1として中間報告の案を、資料2としまして中間報告をポンチ絵の1枚にまとめたものをお配りしております。また、机上資料、4種類ございまして、1つがOECDの「人工知能に関する理事会勧告」、もう1つが「これまでの会議の開催状況」について、また参考資料ということで少し厚い冊子になってございますけれども、これは中間報告の別添資料としておつけする予定でございます。これまでのヒアリングでありますとか訪問調査の記録を、これまでの会議での配付資料を整理してまとめたものでございます。机上にはドッチファイルということでこれまでの会議の配付資料をお配りしているところでございます。配付資料は以上でございます。不足等ございましたら、事務局にお申しつけいただければと考えてございます。以上でございます。
【篠原座長】 資料のほうはよろしいですか。何か不足は。大丈夫ですね。
 それではここからは議事に入りたいと思います。前回御議論いただいた中間報告のドラフトですね。皆様から前回、御意見をいろいろいただきました。それを踏まえて事務局と相談し、修正をしたものが、今お手元にあるものです。内容について事務局より御説明をお願いします。
【石田学校教育官】 資料1に基づきまして御説明申し上げます。
 中間報告の案文ということでございます。前回の御意見を踏まえて修正した部分に下線を付す形で準備をしてございます。
 1ページめくっていただきまして目次でございます。2の(4)に、社会総がかりでの「国民運動」としての主権者教育推進の重要性ということを追加させていただいております。こちら、座長と御相談する中で、学校教育だけでなく社会各層の協力を含めて、国民運動として主権者教育を推進していくことが重要であり、そのことを記載することとしてはどうかという御指摘をいただき追記したものでございます。また、目次の一番下に(参考資料)とございますが、これは、先ほど資料の確認のときに申し上げました参考資料をおつけする予定でございます。
 それでは本文に入ってまいります。1ページめくっていただきまして4ページでございます。1つ目の丸ポチの下線部分でございますが、こちらは小玉委員からの教育基本法を掲げる場合に第14条の政治教育をしっかり押さえていく必要があるのではないかという御指摘を踏まえて追記したものです。また、4ページの3つ目の丸でございますが、こちらは田村座長代理からの、OECDの人工知能のレポートで基本的人権が非常に大事であると、こういうことが記載されてあったので、ここの部分を追記してはどうかとの御指摘を踏まえて追記したものでございます。OECDのレポートは別途資料としてお配りしております。内容は後ほど御確認いただければと思いますが、昨年、令和元年5月のOECDの閣僚理事会で、人工知能に関する理事会勧告が採択をされております。この採択には日本政府も加わっておりますが、この勧告の中では、人工知能の関係者が共有すべき5つの価値観を挙げてございまして、その中に、「人間中心の価値観及び公平性」というものが掲げられております。具体的には、AIのアクターはAIシステムのライフサイクルを通じ、法の支配、人権及び民主主義の価値観を尊重すべきであって、この目的のために、人間による最終的な意思決定の余地をAIの開発においては残しておくべきと、こういった勧告がまとめられてございます。
 まさに、この主権者教育推進会議で議論されている、人工知能の飛躍的な進化が予想される未来社会を見据えて、子供たち一人一人に、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質・能力を育成していくと、こういった方向を顕著に示すものであるという旨、追記してございます。
 また、5ページに参りまして、1つ目の丸ポチ、「特に」と、最後のほうでございますが、こちらは中村委員から頂戴した、ターゲットイヤーを定めて、ロードマップをしっかり描いていくことが大事であるとの御指摘を受けたものでございます。
 OECDのLearningFramework2030と同様、新学習指導要領は2030年をターゲットイヤーとして各種の施策を進めているわけでございますが、そういった施策の中に主権者教育をしっかり位置づけまして着実に展開していくことが重要である旨、追記してございます。
 続きまして6ページの2つ目の丸の2段落目でございます。こちらは神津委員からの、主権者教育をめぐっては、平成27年の通知だけではなく、そもそも論のところで、昭和44年通知から平成27年通知に至る過程で、現実の具体的な政治的事象の取扱いが変化したことをしっかりと押さえていくことが必要ではないかとの御指摘を踏まえ、昭和44年通知に係る記載を追記してございます。
 続きまして9ページでございます。(3)の主権者教育をめぐる課題ということで、1つ目の丸の下線部でございますが、こちら、座長の御指摘もございますし、会議の場でも共有されてきたところかと思いますが、投票という行為は主権者教育の出口としての側面を有しているわけでございますが、この主権者教育の入口は社会の動きに関心を持つことにあるということで、この出口と入口のをしっかり意識しながら主権者教育を推進していく必要があるのではないかということで関連の記載を追記してございます。
 また、少し分かりづらいところなのですが、10ページの一番上の丸の後ろのほうは、「なるべく早い段階、幼児期」というのを付け加えてございます。こちらにつきましては植草委員、篠原座長から、やはり高等学校からでは遅いので、なるべく早い時期、幼児期というのを含めて考えていくべきではないかという御指摘ございましたので、追記をしてございます。
 また11ページでございます。主権者教育推進の方向性の1つ目の丸の下線でございますが、こちら神津委員から、モデル校、モデル研究に取り組むということも大切だけれども、既に主権者教育推進会議でも非常に好事例を集めていただいている。そういった今ある好事例を横展開していくことも併せて重要ではないかとの御指摘を頂戴しましたので、その旨追記しますとともに、下に枠線で、主権者教育推進会議での審議の過程でこういった事例報告があったという形で簡潔に事例の内容を整理してございます。詳細は添付する参考資料を参照できる形で中間報告をおまとめいただければと考えてございます。
 次に12ページでございます。(1)の各学校段階の主権者教育の充実について、「その際」という形で、働き方改革の観点と教師の力量形成に係る記述を追記してございます。こちらは中村委員、小原委員、清水委員から、教員の多忙化の現状を踏まえる必要があること、また教員の力量形成にも意を用いる必要がある旨の御指摘を踏まえて、修正をしてございます。同じ12ページの、提言の枠内の研究内容等の2つ目のポツの2行目です。こちらは小玉委員から、この現実の具体的な事象を挙げるときに、政治的、社会的事象ということでこの中身をしっかり開いていくこととしてはどうか。政治的事象の扱いが少し低調であるとの調査結果もある。そういったところをしっかり意識して書き分けてはどうかとの御指摘を反映したものでございます。
 また、13ページの研究内容の1つ目のポチの1行目は、先ほどの小玉先生の御指摘を踏まえた修正でございますが、「※」で、特に現実の具体的な事象を取り上げる際には、異なる立場の主張、他者の利益や損失なども考慮に入れるなど、生徒が多面的・多角的に考え、議論を展開できるような工夫を講じることが重要ということで追記してございます。こちらは佃委員から頂戴した、公益と私益がぶつかる中で平衡点を探っていくような本物の学びが重要ではないかとの御指摘を踏まえて修正したものでございます。
 その下、大学等における期日前投票や不在者投票の周知の工夫ということでございますが、こちらは神津委員から、大学における周知や選挙啓発も大事だが、投票環境の向上も併せて重要ではないかという御指摘を頂戴いたしましたことを踏まえたものです。近年の投票環境の向上策を追記いたしますとともに、13ページの脚注の6として現下の状況をデータとして記載してございます。
 次に14ページの現状と課題の2つ目のポツでございますが、こちらは植草委員から頂戴した社会科のみならず、様々な教科の中で、教育課程上の位置づけをある程度明らかにした上で取組の工夫を進めていくことが重要ではないかという御指摘を踏まえ、関連の記載を追記しおります。
 また15ページの家庭・地域における主権者教育の充実についてということで、①家庭における取組の充実ということで、家庭と学校の連携を促すような書き込みを、より具体に書き込んでおります。これは植草委員、篠原座長から頂戴した御指摘を踏まえたものです。
 例えば上のところでは、学校であるテーマを設定し、家庭で話し合う機会を提供する取組、あるいは学校との連携により学校で新聞記事の切り抜きを用意し、家庭で話し合う機会を提供する取組-学校と家庭の連携によるNIE推進の取組-ということで記載を充実してございます。
 次に16ページでございます。②の提言、多様な主体による連携・協働の推進のところでございますが、地域学校協働活動と併せて、コミュニティ・スクールを一体的に推進していく、こういった中で主権者教育を充実していくことが重要としております。こちらは、小玉委員からの御指摘を踏まえて記述を追記したものでございます。
 次に17ページでございますけれども、こちらは文言の調整でございますが、モデル校におけるメディアリテラシーの効果的な指導方法の開発ということで、①で適切かつ効果的に必要な情報を収集する、②で妥当性や信頼性を踏まえて自分なりの意見を持つということ、この過程を書いてございます。前回お配りした資料では①のところにとどまる記述になってございましたので、②の妥当性や信頼性を踏まえて自分の意見をまとめるところまで一気通貫して記述を追記してございます。
 その次の、学校、家庭におけるNIEの推進は再掲でございます。
 18ページ。冒頭、目次の御説明で申し上げましたが、社会総がかりでの「国民運動」としての主権者教育の推進が重要であるということで-これは座長から御指摘を頂戴しまして-主権者教育推進会議としての提言の実現のためには、学校関係者のみならず各界各層を含めた社会総がかりでの取組、言わば「国民運動」として主権者教育推進の取組を展開することが併せて重要であるということを追記しておるところでございます。
 説明は以上でございます。
【篠原座長】 ありがとうございます。今、事務局から、前回の議論を踏まえた修正点を中心に説明をしていただきました。今日の会議で大体この中間報告を固めたいと思っていますので、今の修正、大体いろんな皆さん方の意見は取り入れたつもりなのですけども、なお、もう少しこうだとか、あるいは全体的なところで御意見でもあれば、おっしゃっていただきたいと思います。どうぞ。
【小原委員】 6ページですけれども、下線を引いてある4行目の終わりのほうです。公職選挙法の改正による選挙権年齢の引下げを踏まえ、習得した知識を活用しというのだけれど、やっぱりもう少し具体的に何を習得したかというのをここに書いておかないと、これが学校現場行ったときに、混乱が生じると思います。
 それからその次の行で、協働との考え方が飛躍しているように思います。主権者教育では、様々な意見を聞きながらとなっています。そうすると、協働する前に議論があるんだろうし、ある程度選挙ということも念頭に置くと、意思決定とその在り方のことも取り上げないと、突然その他者と協働しながらというと、あらかじめ、みんなで働くことが決まっているのではないと不信に思われる。次に、それは誰が決めたんだということになる。で、学校現場ではこれはある意味、混乱が生じるんではないかなと思います。したがってその協働の前に、意思決定の議論というのをプロセスとして入れておく必要があるのではないでしょうか。
 というのは、民主主義というのは意思決定の進め方ですから、それをどう進めるのかというところは子供たちにも教えておく必要があります。僕は、ドイツの学校を見たときに感じたことは、政治体制の異なりという中に、いかにして国が、あるいは政府が意思決定を下していくのかというプロセスも学んでいるし、それを自分たちのレベルに落として意思決定の進め方というのを勉強していることから、やはりここは、意思決定の進め方ということも取り上げておいたほうがよろしいんではないかなという気がいたします。
【篠原座長】 よろしいですか。ありがとうございます。小原委員、今の協働のところは、この白丸全体そうなんだけど、そういう議論は、議論は当然前提として行われるということで「協働」と入っているんですが、まず議論することを入れてはどうかということにもしこだわられるならば、考えたいと思います。今の協働のところ。どうですか。
 小玉委員、どうぞ。
【小玉委員】 小玉です。今、小原委員から御指摘いただいたところに関しまして、この2015年通知、平成27年通知の中に、意見の違いというものを突き合わせて議論するということが書かれてある部分があります。3というところですね。指導に当たってはというところで、一つの見解が絶対的に正しく、他のほうが誤りであると断定することは困難なので、政治というのは意見の対立状況から発生するものなので、生徒が自分の意見を持ちながら異なる意見や対立する意見を理解し議論を交わすことを通してという、この「議論を交わすことを通して」という言葉が。
【篠原座長】 あったほうがいいですか。
【小玉委員】 ええ。この2015年の通知に記載されているので、そこの部分をちょっと抜き出していただけるといいのかなと思いました。以上です。
【篠原座長】 それで小原委員、よろしいですか。ほかに。どうぞ、中村委員。
【中村委員】 若干、今のに関連してなんですけども、その議論をという部分で、学校の先生に、児童、子供、生徒たちの意見を導き出させるような教育ですね、12ページの力量形成と書いてあるのですが漠然と力量形成と書かれても分からない。主権者教育の場合は、やはり子供たちの意見を出し合わせて、意見の違いなんかを実感させていくということが大事じゃないかということで、この力量というところについては、もう少し具体的に書かれたほうがいいんじゃないかなという感じがいたしました、今のお話を聞いてて。
【篠原座長】 例えば、何かアイデアありますか。
【中村委員】 経済同友会の提言では、生徒・児童間の議論を促すファシリテーターとしての能力や、自分の主義主張を押しつけることなく、生徒・児童の意見を尊重し、対等な関係で議論をする態度が強く求められると、これらは先生の役目じゃないかということを言わせていただいてます。
【篠原座長】 分かりました。ほかに御意見は。これ以外のところでも結構です。この報告書についての、御意見もしあれば、どうぞ、全体について。小原委員。
【小原委員】 内容ではないんですけど、この8ページ、2つ目の丸で、「特に社会科や公民科においては、小学校社会科で」となると少し文章が複雑になるので、最初から小学校社会科では、中学校の社会科では、と書いてもよいのではないかと思います。
【篠原座長】 なるほど。
【小原委員】 内容はともかく、社会科や公民科というのが入ってくると文章が複雑になるので、カットされたらいかがかという気がいたします。
【篠原座長】 要するに、読みにくい流れになっているので、すっきりしたほうがいいということですね。ほかに御意見は。どうぞ、植草委員。
【植草委員】 植草です。14ページの、学校間の連携や教科の連携のところですけれども、これ、私が前回ちょっとお話しさせていただいたときに言い足りなかったところなんですけど、どうしても今、小学校のほうが新学習指導要領で英語、プログラミングが入ってきている。で、またここに主権者教育かという思いがどうしても現場には出てくるかなと思うんです。ですから、学校連携のところで、その内容、取組を工夫していくというのはいいんですけれども、併せて、例えばその学校間の取組の精選というか、そこを選んでいくということをやったほうがいいんじゃないかなという感じがしてます。どうしてもやっぱり、同じようなことを繰り返しやっていくというところも正直出てますから、それをまた詰め込みというふうに考えるよりは、ある意味、連携をするといったときにはその精選化をするというところも含まれるんじゃないかなという感じがします。以上です。
【篠原座長】 ありがとうございます。今の植草委員のお話、そのとおりだと思いますが、主権者教育に関係するものが特別活動、道徳、総合的な学習の時間などいろいろありますよね。だから主権者教育というのが何か特別にあるというよりも、いろんなところに割り振ってくださいねという意味で書いてるのですが、もう少しそういうのを入れたほうがいいということですか。
【植草委員】 そうですね。どうしてもまた詰め込まれたという感じがしてしまうとまずいと思うんで。
【篠原座長】 表現の問題ですかね。
【植草委員】 そうですね。
【篠原座長】 分かりました。では、神津委員、どうぞ。
【神津委員】 前回申し上げた意見を、幾つか取り込んでいただいているのは御紹介いただいたとおりですが、追加で申し上げてよろしいでしょうか。
【篠原座長】 どうぞ。
【神津委員】 まず、4ページ中段で、「このような取組を重視する動き」とあって、最後では「軌を一にするものである」となっていますが、前段は日本の状況、後段は世界の潮流ですので、区別した方が良いのではないでしょうか。
 2点目は、5ページの3行目「我が国の近年の状況に目を転じれば」箇所で、とりわけ若年層において投票率が歴然と低い、あるいは年齢層が若ければ若いほど低いということを、例えばグラフも交えるなどして触れておく必要があるのではないかと思います。
 3点目は、6ページの下線が引かれている箇所について、前回申し述べた意見を入れていただいたと認識していますが、昭和44年通知と平成27年通知の違いは、歴史経緯を踏まえて、この主権者教育が現時点でどうあるべきかを考えるときに非常に大事な話ですので、淡々と記述をするだけではなくて、平成27年通知のところでは「一方」という言葉が一言要るのではないか。また、この27年通知についての記述の後に、例えば「我が国の社会がイデオロギー対立の時代背景から大きく変化してきた中で、本格的な主権者教育充実の新段階に移行するスタートを切ったものと言える」など、ステージが変わる中で今が非常に大事な段階だという趣旨の記述を加えてはいかがでしょうか。
 4点目は、11ページの現状の問題点については、「新しい段階にあるのだ」ということを現場の教員の方々が強く認識を共有することが大事ではないかと思います。実際に、教員の皆さんに聞いたところ、やはり対応がまちまちで、例えば積極的に実施した結果、教育委員会で問題になった事例もあるという話も聞きました。
 政治の課題にどこまで踏み込んでいいのか。政治的中立性の重みに萎縮をしていて、かなりナイーブになっている、神経を使って踏み込めない、など、やはり、以前のモードが色濃く残っている状況もあります。主権者教育が新しい段階にある中で、具体性を全体が共有する、その好事例については、かなり盛り込んでいただきましたが、「それを模範としていくということが不可欠だ」という記述も、この11ページ先頭に入れていただけないでしょうか。
 最後は、好事例について、出来れば、例えばこの最終の答申を受ける形で、文科省と総務省と連携して作成された「私たちが拓く日本の未来」をアップデートするときに具体例を盛り込むようなことも今後展開していただければ、と思います。
 少し長くなって恐縮です。私のほうから以上です。
【篠原座長】 ありがとうございます。ほかに御意見ございますか。清水委員。
【清水委員】 PTA、清水です。私のほうからは15ページのところなんですが、枠で囲ってある、丸の3段目、「家庭における主権者教育を推進するためには」というところの2段目のところに、「家庭をつなげるPTAの役割は大きいことから、全国的なPTA団体」という表現がありますが、「全国的な」という表現ではなくて、できれば「全国各地のPTA団体」という表現に変えていただくだとかいうところがありました。あと、最後の丸のところの、「家庭において社会的事象を話し合う機会」と書いてありますが、ここも前のページにいろいろと出ておりましたように、政治的、社会的事象を話し合うという表現に付け加えられたらどうかなというところです。意見です。以上です。
【篠原座長】 ありがとうございます。ほかにございますか。小原委員、どうぞ。
【小原委員】 10ページですけども、このなるべく早い段階というのは分かるんですけども、幼児期、いわゆる幼稚園ですよね。そもそも言葉がまだ分からない子供たちで、具体的な言葉を教えなければいけないときに、主権者というような抽象的なことを教えなければならないというのは、現場にとってはすごい圧力になると思うんです。
 子供も主権者だというのは分かるんですけども、果たして幼稚園にこういうことを持ってくることがどうなのかというのは、実際、設置者としても、どうすればいいんだろうという悩みは生じます。
 現場の先生にとっては大変なことです。その前にきちっと、「あいうえお」を教えるのが先だと思いますし、仲よく遊ぶということで、遊ばせながら学ぶのが幼児教育です。そこへ、抽象的なことをやるのがいいのかどうか、だから早い段階というときに、幼児期を省いていただけると、これを読む側としては受け入れやすいのではないかなという気がいたします。
【篠原座長】 私がこだわったのは、要するに、こういう表現がいいかどうか分かんないけども、昔から三つ子の魂は百までということをよく言いますでしょう。別に主権者教育ということを振りかざして、幼稚園児のときからやれということではなくて、小中高ずっと行きますよね。それを頭に入れながら、世の中、社会のことに少しずつでも関心を持ってもらうという意味で幼稚園の話を入れているので、それぞれの小中高の段階とは当然、教え方は違うと思いますし、また中身も違ってくると思うんですよ。だから、一番最初に書いてるように主権者教育というのはあくまで世の中のことに関心を持ってもらうことが入り口ですから、その入り口の部分に、幼稚園児の、いわゆる保育時のときも入れたらどうでしょうかということでございます。
【小原委員】 ただ、一人が言う場合と、文科省からの文章で出るというのは、受け取る側の圧力というのは違います。当然これ、教員養成にも関わってきますから、幼児教育のカリキュラムの中にもこれ入れなければいけないし、恐らく、実際に幼稚園教諭を養成しているところは非常に悩むことでしょう。ですから、一個人が言う場合と、行政の立場からというのとでは、かなり重みが変わってきます。ここは現場のことを考え、いかがなものかなという気がいたします。先ほど植草委員からも出ましたけども、小学校の教員がこれ読んだら、英語であっぷあっぷ、プログラミングでノックアウトされて、ここに来てまた主権者教育でというのも、とどめ刺されるという感じがはっきりあります。これは現場が抱えてる課題なので、これが文科省から出ると、またさらに混乱が起きるのではないかと思うので、その表現を、現場が受け入れやすいような感じにもう少し考えてください。
【中村委員】 座長、よろしいですか。すみません。中村でございます。
【篠原座長】 どうぞ。
【中村委員】 我々の同友会で、いろいろ主権者教育をずっと勉強してきた中で一番感動的だったのが、その幼稚園、イギリスの事例で、幼稚園で予算があるから遊具を入れると。その遊具を選ばすのは幼稚園の先生が選ぶんじゃなくて、幼稚園児に選ばせたと。選んだのが当たった子と外れた子がいるんですね。その差別なく、今度は決まった遊具で、ここで危険な遊び方は何かねと、みんなで出させ合ったと。この事例って、物すごく感動したんですよね。この年からそういうことをやらせてるのか、これこそシチズンシップのスタートなんだなという、非常に私自身が感動した話ですから、ちょっと御紹介をさせていただきます。
【篠原座長】 ありがとうございます。どうですか。どうぞ。
【田村座長代理】 今の小原委員のお話も中村委員のお話も、そのとおりだと思うんですが、ここで出てる文章の趣旨としましては、新学習指導要領の趣旨というこの文字が入っております。この新学習指導要領の趣旨というのは、中身は、いわゆる教育改革元年と言われている考え方でいうと、就学前教育、つまり幼稚園から高等教育までを一貫した教育の仕組みと考えて、それの中身をぶつ切りにしないで一貫して考えていくと。
 その結果、高大連携、入試改革みたいな話が出てくるんですけれども、その趣旨でいうと、なるべく早い段階、幼児期からやるという、中身としては、その新学習指導要領の趣旨どおりなんですよね。だからこれは文章として間違ってないとは思うんですが、ただ、実際に小原委員が言うように現場は、つまりそういう次の小学校や中学校の段階まで考えて、就学前教育も主権者教育を意識して先生方、やってくださいよという趣旨なんですけども、それがすごくこう、何か特定のことをやるというふうに受け止められちゃうと、確かに圧迫というか、またかよと言われる危険があるので、そういう意味でいうともう少し表現を工夫して、丁寧にここのところをお書きいただくということで、理解が得られるのではないかなという気がするんですけどね。
【篠原座長】 なるほど。その辺は表現を工夫しましょう。例えば、小中から入る。だけどできれば、できるだけ早い段階からとか、何かそういうことでかぶせていくとか、ちょっとその辺は工夫してみてください。
【石田学校教育官】 この学習指導要領の改訂に至る経緯を、少しだけ事務局から御紹介したいと思います。机上資料、ドッチファイルがございますけれども、第1回の別添7というところで、学習指導要領の改訂に至りました答申の、主権者教育に係る抜粋を掲載しています。中教審の答申の関連部分でございます。2枚おめくりいただきますと横のポンチ絵がございます。主権者として必要な力を育む教育のイメージというものがございまして、こちらに幼児期から小学校、中学校、高等学校にかけて、どのように主権者としての意識を涵養していくのかという御議論を頂戴しました。これは篠原座長にも委員として御参画を賜りましたけれども、幼児教育の段階では、小中学校とは違い、決まりの大切さに気づき守ろうとするとか、地域の人々に親しんだり、地域の催しや公共施設など生活に関係の深い情報や施設などに興味や関心を持つということで、まさに座長御指摘のとおり社会の動きに関心を持っていくことを、それぞれの発達の段階に応じた形で取り入れているということでございます。この答申の中身は、幼稚園の教育要領や学習指導要領の中にもしっかり反映されてございますので、それらを踏まえつつ発達の段階に応じ、取り組むことが重要であるという格好で修正することも検討したいと思います。
【小原委員】 それは、こども園とか保育園、文科省の管轄外にも当てはまることなんですか。
【石田学校教育官】 さようでございます。
【小原委員】 そうしたときに、厚労省からの、縦割り行政の関係で、クレームと言うと語弊があるんだけども、管轄外のところに何で口出すんだということが出てくるのではないかなという気がします。
【石田学校教育官】 幼稚園教育要領にもこの内容が盛り込まれているんですが、幼保の連携ということで、保育園は保育指針というのを定めてございますけれども、そちらの内容も幼稚園教育要領と内容をすり合わせてございますので、ここでお示ししたことは幼稚園でも保育園でも認定こども園でも取り扱いいただくという、制度上の立てつけになってございます。
【篠原座長】 一応、小原委員、この議論、ここでいいですか。あとほかにございますか。どうぞ、中村委員。
【中村委員】 経済同友会の提言でも空白世代という言い方をさせていただいたんですけど、昭和44年の通知から平成27年通知までの間の人達は、主権者教育を受けてないんですよね。だから、一番最後にまとめている総がかりで、という部分で、こういう主権者教育的なことをあまり受けてない人たちをどう巻き込むかという部分があるのではないでしょうか。総がかりって、すごくいいなと思うんですが、総がかりにするには、主権者教育が分かってない人まで相まって、ごちゃごちゃになる心配はないのかなと思います。ですので、空白世代の再教育みたいなことも触れてはどうかと感じるのですが。
【篠原座長】 リカレント教育ですね。
【中村委員】 ええ、リカレント教育です。
【篠原座長】 年齢でいうと何歳から何歳ぐらいの間になりますか。
【中村委員】 50年ぐらいたつんですから、二十歳ぐらいから70歳ぐらいまで。
【篠原座長】 幅広いですね。その辺も一つあるのですが、全部完璧に穴をふさぐというのはなかなかこの主権者教育では難しいところがありますので、これからの人たちを中心に、主権者としての意識を持ってもらうということでまず考えるということではどうでしょうか。その上で今おっしゃったような世代を、フォローアップ、カバーしていくかを考えていくと。後でまた今後の検討課題の話をしますが、そのときは大学段階での主権者教育もどうするかというのも、もう少し掘り下げる必要あると思います。分かりました。ちょっとまたそれを受け止めさせていただきます。
【篠原座長】 小玉委員。
【小玉委員】 先ほど来、議論になってる重要な点だと思うんですけど、植草委員の14ページの下線部の指摘もそうですし、今、出ていた10ページ冒頭の丸ポチもそうなんですけれども、○○教育という数あるものの中に、主権者教育がもう一つ付け加わるというイメージで受け取られないようにすることが多分重要だと思います。カリキュラム・オーバーロードを防ぐという意味でも既存のものを主権者教育的に組み替えてというか、生かして再利用するというか、多分その視点だと思います。今あるものに付け加えるのではなくて、既存の教育課程をこういう方向につくり変えていくということなのですよというのが、10ページとか14ページのところでうまく伝わるような、そうすれば例えば幼稚園教育要領も、もう既に今存在してるわけなので、それを生かしていくことが読んでもらう人が分かるような書き方がいいかなと思いました。
【篠原座長】 一応、書いてるつもりなんですが、それぞれいろんな道徳や総合的な学習の時間、特別活動といったところで扱ってください、何か一つぽんと特別に主権者教育があるわけでありませんというのですが、今、小玉委員から御指摘があったように、もう少し丁寧に書いたほうがいいのではないかとの思いました。
 ほかにございますか。では、1つ私から。9ページ目の(3)主権者教育をめぐる課題の中で、「投票という行為は主権者としての行動の一つであり、主権者教育の「出口」としての側面も有している」とありますが、この表現でいいかどうか。「出口」と、ここは言い切ってもいいんじゃないかと思います。それからもう一つは、「主権者教育が、投票という行為にもつながっていくことを期待するものである」とありますが、投票率のアップだけではなく若い人は投票率が低いですから、投票率のアップだけでなく「投票質」の向上にもつながっていくという、投票質という言葉を、ぜひここに入れてはどうかと思います。
 ほかに御意見ございますか。松川委員、どうぞ。
【松川委員】 1点だけ。17ページのメディアリテラシーのところ、多様なメディアを活用して情報を適切かつ効果的に収集し、またその情報の妥当性や信頼性を踏まえた公正な判断をということはそのとおりで、間違ってはいないんですけれども、特に強調したいところとしては、高度情報社会での情報量があふれるほどある、また、デジタル化が急速に進んでいて、情報の量と質が非常に変化しているというバックグラウンドに関する記述を若干加えていただいたほうがいいのではないでしょうか。紙とSNSだとかインターネットの情報というのが、両方が併用されてる時代の中で、インターネットの情報を初めに得て、それからもっと深掘りするために、新聞等の紙の情報で比べてみてという書きぶりは悪くないと思うのですが、現在は、特に大量に情報が浴びせられる社会であるというバックグラウンドをもう少し意識するような書きぶりを加えていただけると、よいのではないかなと思いました。以上です。
【篠原座長】 ありがとうございます。今の松川委員の御意見は、もっと現状をまず踏まえてはどうかということですか。
【松川委員】 ここで書いてあることは全く問題ないんですけども、現状としては、前の時代、それから10年前、5年前とも違って、子供たちにいろんなところから提供される情報が非常に多種多様である、多様なだけではなくて、ある意味で過度に与えられてくるという中で、取捨選択するということが非常に難しくなっているという。主権者教育だけに限ったことではないのですが、そういう環境を踏まえるような一文があるといいと思いました。
【篠原座長】 ありがとうございます。ほかに御意見ございますか。どうぞ、植草委員。
【植草委員】 17ページの、今のメディアリテラシーの関係の一番最後のNIEのところなんですけれども、以前NIEについての議論出たときにも、まず子供たちが新聞に接する機会がないということ以上に、今は新聞を取ってない家庭が多くなってるのではないかと思うんです。先日も私、ちょっと特別に1時間お話ししなきゃいけない生徒がいまして、その子に何やらせようかなと思ったときに、自分が持ってる新聞を渡して、とにかく読んでごらん、興味のある記事を自分でまとめて、感想を書きなさいという形でやったら、新聞初めて読んだと-高校生ですけど-で、面白いって。あまり勉強好きな子じゃないですけど面白かったと。いろんなことが書いてあった、それをよく分かった。じゃあ、これから新聞読めよと。うちで取ってないと。じゃあ、図書館行ってというような話をしました。
 だからここの中で、子供たちが新聞に触れる機会を増やすみたいなところがどこかに入ったほうが、よいと思います。今、本当に新聞に触れるということが大人も子供もないのかなという感じがしています。以上です。
【篠原座長】 私も新聞協会の人にも言っているのは、学校のNIEばかりではなく家庭のNIEをもっと力入れるべきであると。その時に、ああ、うちで取ってなきゃ一部ぐらい取るかということにもつながるんですよね。やっぱり新聞というものが、主権者意識を涵養する上でツールとして相当役に立ちますよということが社会的に認知されないと、なかなか今おっしゃったような問題になると思います。
 例えば、大学でも、まず新聞読ませることから始まるんですよ。ほとんど新聞読んだ経験のない子もいます。だけど授業が終わるとやっぱり習慣づいてくるんですよ。だからそれは学校段階でやるのか、家庭でやるのかという問題もあると思います。家庭で新聞取ってなければ、やりようがないかもしれないから、その辺をやっぱり、新聞協会あたりも、もっともっと深刻に考えて努力していただければ、と思いますね。だから何かここのところ、植草委員の御指摘のように何か言葉を入れたほうがいいかもしれませんね。ありがとうございます。ほかにございますか。よろしいですか。
 今日のこの中間報告の文案をめぐって、御意見は大体出尽くした感じでしょうか。よろしいですか。特にないですね、大丈夫ですね。では、大体皆さん方の御意見出たところで、いろんな意見ありがとうございました。それで、本日いただいた御意見、ごもっともなところも多々ありますので、中間報告としてそういう御意見を踏まえた上で、今日の議論も踏まえて最終的に取りまとめたいと思います。
 取りまとめに際しまして、修正とか、少し挿入する部分も含めて、座長である私に御一任いただければありがたいと思います。いかがでございましょうか。
 (「異議なし」の声あり)
【篠原座長】 ありがとうございます。では、御一任をいただいたということで、これは事務局とまた相談をしたいと思います。
 それでは、今後の検討課題について議論したいと思います。今回の中間報告をつくり、これから最終的な報告をつくるという方向にいくわけですが、今後最終報告に向けて何をやるのかということです。中間報告でこれだけいろいろやりましたけども、何を今後、最終報告に向けてテーマとして取り上げたらいいんだということで4つ考えています。
 むろん最終報告は、この中間報告全体の深掘りがまず大前提としてあると思います。その上で、一つ目は、大学段階における主権者教育について議論したいと考えています。
 小中高は道筋が既にできていますが、問題は大学段階でぐっと緩むんです。大学の3年生、4年生ぐらいだと、あまり主権者教育的な意識がなく来ていますのではないでしょうか。例えば、小原委員が前におっしゃっていたような、高校生もみんなで大学の講義に聞きに来るとか、そういうことをおやりになっていますよね。だからそういうふうなこともいろいろやりながら、大学の主権者教育の在り方というのはもう一遍きちんと掘り下げていく必要があるのかなということで僕は考えています。
 もう一つは、先日来、ずっと議論になっていますが、主権者教育に対する向き合う教員の養成や研修も一つのポイントだと思うんですね。学校現場では先生方が主体になっていろいろなことを考え、展開するわけですから、この辺のところもきちんともう一遍、最終報告に向けて議論する必要があるかなと思います。
 3つ目が、これもずっと議論の中で、小玉委員からも提起もありましたけども、やっぱり教員が萎縮して腰が引けているのでは、なかなか本来の主権者教育が展開できない。かといって踏み込み過ぎても、いろいろ問題が出てくる。この辺のグリップをどうするかという意味で、教育現場における政治的中立性をどう担保をしていくのか。これはドイツやイギリスの例も参考になると思うのですが、この辺のところも日本の場合はどういうふうにやっていったらいいのかを最終報告に向けて議論をしたいなと思います。
 4番目は、選挙というのは、選ばれる側と選ぶ側のやっぱりコラボレーションだと思うんですね。選ぶ側の主権者意識を涵養するのだから、選ばれる側の政党や候補者のほうも、それに呼応して、それなりの対応をしていただきたいと考えています。例えば、もう既にいくつかの政党では選挙のたびに子供向けのマニフェスト政策集というのを出してくれてます。子供の頃からそういう政策を読んで、選挙というか、あるいは政治というか、そういうものを身近に感じて自分がいざ18歳になったらこうしようというようなことを、-学校段階でもいろんな模擬投票やったりいろいろやってるわけですが-選ばれる側の政党側にも未来の有権者を育てることにかかわって、そんなことでより努力をしてもらいたいなと考えています。
 子供たちがそれを読み比べて、メディアリテラシーというよりも、政党リテラシーといったものを少しずつ身につけていくのも-本当は投票はまだできないんですけども-意味があることなのかなと考えます。これは選ぶ側だけではとても対応できません。やっぱり選ばれる側にもさらに一層努力をしてもらう必要があるのかなという意味で考えております。これについて皆さんの御意見、もしくは、もう一つこれを加えろとか御意見ございましたら、どうぞ遠慮なく言ってください。
【小原委員】 個人的な感想なんですけども、今の4つですが、最初の3つと最後のものは性格が異なるのかなという気がします。報告はあくまで行政、文科省が出すものになりますから、ここで検討するのは、対学校、対大学という意味で最初の3つは分かります。4つ目は、いわゆる行政から立法に対して言うことになる。文科省からこれを出す場合、気をつけてやらないと下手すると三権分立の原則に反した報告書になるリスクもありますし、教員側としても政治と教育の分離ということもあります。政治家になる人、政治家に向かって言うというのは非常に難しいと思うんで、4つ目の話は別の機会がよいのではないかという気がいたします。
【篠原座長】 ありがとうございます。これ中教審の会議だと、僕は取り上げることは不可能だと思ってます。これはあくまで有識者会議です。我々の提言を受けてやるかやらないかは文科省当局が決めることになります。僕は、この主権者教育というのはさきほども申し上げたように、選ぶ側だけを幾らやったって完成しないところがあるんです。だから取り上げ方にもいろいろ注意はしなきゃいけないかもしれないけれども、僕はある程度踏み込んでいいんじゃないかと思っています。あくまで文科省当局としてこうするという話ではありませんから。有識者会議としてどうだというのをぶつけて、あとは文科省なり何なりが判断すればいい話だと思っております。
【小原委員】 ただ文科省から出るわけですから。
【篠原座長】 いやいや、だから文科省から出ないんですよ。我々の意見として出すわけですから。そのとおりに当局が動くとは限りません。
【小原委員】 と同時に、学校なり大学が、イデオロギー戦争の渦中に入るのは、先生方は嫌がると思うし、私としても本来は避けるべきかなという気がして……。
【篠原座長】 実際に今、教育現場で行われてるのは、選挙管理委員会だけではなくて、候補者たちが学校へ来て討論会やったり、そういうこともやってるところも結構あります。だからやり方と取り上げ方にもよると思いますが、タブー視する必要はないと思っているんです。それをタブー視してたら主権者教育というのは成り立ちません。特に選挙においては。
【小原委員】 ただ日本の状況からすると、これは今回取り上げるべきことなのか気をつけなければならないと思います。せっかく報告としてまとめる残りの提言まで逆に否定されてしまうリスクがあるのではないでしょうか。
【篠原座長】 自民党や公明党や、ほかの政党もそうですが、子供向けに「未来の有権者の皆さんへ」と言う啓発は、僕は長年、一生懸命頼んできてページを作ってくれているんです。そういうものを後押ししたいということなんです。それが主権者教育につながるんですよ。だからそれは別だと決めないほうがいいのではないかなと僕は思います。主権者教育を考えるときにそこの部分も押さえないと、全体が回りません。
【小原委員】 そこは難しいところです。有識者会議の提言としていうと、小中高は逆にやらなくなってしまうと思うんですよ。有識者会議からこんなこと言われて、どこまでやらなきゃいけないんだ、学校現場はそんなの従わないよということになってしまう。文科省から出るからには、それをやらねばならないと受け止められるのです。
【篠原座長】 子供向けの選挙資料を子供が家に持って帰るんですよ。今、結構持って帰って、親子でそれで対話してるんですよ。それ、家庭の教育になっているじゃないですか。そういう例もあるわけです。そういうふうに配付をするわけです。選挙について学ぶ材料になるわけですよ。どうぞ、小玉さん。
【小玉委員】 小原先生が御心配されてるような懸念もよく分かるんです。分かりますが、例えば法教育というのが、政治教育、主権者教育に先行して、学校に浸透してきていますけれども、法教育においては日弁連、それから検察官、裁判官の法曹三者がかなり学校現場に入って協力してやっていただいていています。要するに法曹界は法教育に対して非常に積極的に関与していて、模擬裁判とか、そういうものも含めて関与しているということを考えれば、法教育における法曹というのに相当するのが政治教育においては政治家ということになりますので、もう少し可能な範囲で、政治に関与する当事者が、法教育における法曹三者と同じような形で関わっていただくということを政治的中立と両立させて可能な限り追求していくという枠組みを提言していくということは、先ほどの神津会長が言っていた55年体制の時代のイデオロギー対立の時代から脱して、新しいステージに政治教育を移行させるというときには非常に重要な論点になると思いました。
 それから1990年代の政治改革で、政党助成法がつくられて、政党自身を公費で助成するという形になって、今は事実上政党そのものが公共財になっていますが、なかなかそこが有権者や国民の中で十分に浸透していないし、政党の側も、そういう期待に応えるような動き方をしているかどうかということも含めて検証していくことが重要だと思います。
【篠原座長】 そうなんです。田村座長代理、どうですか。
【田村座長代理】 小原委員のお話、篠原座長のお話、それから小玉委員のお話、みんなよく分かるわけです。ただ、現実に報告を出すというところまで来たことを考えると、実際にこの報告は、いろいろあるけれども、学校現場に行くんですよね。何だかんだいっても有識者会議の報告ということでも、文科省が子細に協力してますから、学校現場に行くと、そういうふうに受け取られます。私は、小原委員の御心配のとおりに現場に受け止められるだろうなと率直に思います。ですから現場に行くというところを考えると、4番目の議論をしたいならば、ちょっと違う表現みたいなのを考えないと誤解される危険があります。文科省が学校現場に出す要請の中に、立法府に対する注文をしたと受け取られる危険があるから、これはやめたほうがいいんじゃないでしょうか。
 ほかの3つは問題がありませんし、これから必要なことですからぜひやっていかなければならないところなのですが、もちろん4番目は意味がないとも思わないし、非常に大事なことだと思うのですが、この3番目までの流れの延長でまとめてしまうと、想像していた以外のハレーションみたいなことが起きかねない。そんなテーマですから、ここはもう少しよくお考えいただいたほうがいいのではないかというのが私の意見です。
【篠原座長】 ほかの方の御意見どうですか。どうぞ。
【植草委員】 植草です。実は私が以前、校長をやっていた学校で、実際に学校が設置されてる市の市長に来てもらって話をしました。この時に私、校長としてちょっと覚悟もしました。いろんな形で多分いろんな御意見が出てくる可能性はあるなということは覚悟しました。ただ、その市長さんに話をするときに、市の紹介をまずきちっとしてほしいということと、なぜ自分が市長に立候補したかということを、そこを丁寧に、いわゆる進路指導の一環でお話しくださいという言い方でお願いしました。
 後で子供の意見を聞くと、何で市長になろうとしたのかがよく分かったと。中には、本当かどうか分かんないんですけど、自分も市長になってみたいと思ったとか、そういう子も出てくる。そういう意味では、やっぱり、この辺の議論は、少し主権者教育の中に入れてもいいのかなという感じが僕はしています。以上です。
【篠原座長】 ほかに御意見はありませんか。この問題に限りませんけども、今後の検討課題というところで。中村委員、何かありますか。
【中村委員】 今の議論を聞いて、この主権者教育推進会議で文科省の皆さんに提言するところ、最後の部分は、ひょっとしたら総務省に出すものではないかという感じがしたんですよね。選ばれる側の役割ということは公職選挙法の世界に踏み込む。そうするともう、与党か野党かどっちを選ぶみたいな、さっきおっしゃってたイデオロギー対立の話みたいになるのではないか。本来だったら、主権者として、この人の政党に乗っていきたいというのをやる。それは、ある意味ではもう、今、若い大学生がやっているんです。選挙のプラットフォームをつくって、候補者の政策、政党、幾つかの主権者が選ぶべき項目をやって、それに登録してくださいという仕組みをつくる学生がいる。そういう形を提供していかないと、せっかく主権者教育をしたけれども候補者の違いが全く分からない状態みたいになります。ですから立候補するからには、インターネットかプラットフォームで、自分のそういうものを全部埋めない限りは、主権者からは選ばれないぐらいの環境づくりというのは必要なのかなと思います。そうなるとその報告というのは、文科省じゃなくて、総務省になるのかな、という感じはしないでもないんですよね。今、論議を聞いてて、ちょっとそんな感じがしました。
【篠原座長】 神津委員、何かありますか。
【神津委員】 今のやり取りで、この問題の性格はかなり浮き彫りになった部分もあります。それだけに、この会議で少なくとも議論はしていったほうが良いのではないのか。色々な問題の深掘りにも通じることであると思います。
【篠原座長】 ありがとうございます。ほかに御意見ございますか。
【小原委員】 文科省の有識者会議としては、三つ目までをまず取り上げるべきで、四つ目のために、他を軽くしてしまうのは、本末転倒ではないかという気がします。特に難しいのは教員養成です。これは、教育課程部会、教員養成部会との整合性も取らなければならないし、教員研修となったらば、じゃあ、それではいつどこで誰がということを考えなければならない。3番目までは主権者教育を進めていく上で欠かせないものなので、十分に私は時間をかけたほうがいいと考えていますし、先ほど神津委員にもあったように、4番目は議論するけれども果たして報告に書くところまでやるかというと、その前に他をやっていくべきだと考えています。
【篠原座長】 当然、まずは3番目までをやるんです。それから4番目に入ります。それで、どの程度の議論と書きぶりにするか。あるいはこの主権者教育推進会議としてまとまらなければ、例えば、そこのところは座長見解という形で切り離してやるとか、いろんな方法もあると考えています。僕はこの問題は、是非議論だけはしたいと考えています。大がかりにもっともっと政党もやってくれよというつもりもないんです。今、現実に、各党がやっている子供向けのマニフェストとか子供向けの政策集とかをきちんとこれからも定着させてくださいねと。一言で言えば、そんな程度ですよ、僕が言ってることは、そんな大がかりな話じゃないんです。一応この4番目までは今後、審議、議論の対象にする。それで、また最終報告に向けて議論をするというところはよろしいですか。どうでしょうか。田村座長代理。
【田村座長代理】 おっしゃってる意味は分かるんですが、4番目を入れると、誤解される危険があると思うんですね。ですから、とにかく最初の3つをやって、4番目については、座長が今おっしゃった座長見解とか、あるいは、これについてはこんな考えが議論されたといった報告をする形にしておいたほうが、最初の3つでせっかくいい議論をしても生きなくなっちゃう危険があるんですよね。
【篠原座長】 だから、あくまでもこれは議論のテーマとして掲げてるわけで、4番目についての結論の扱いというのはまたいろいろ工夫なり知恵が要ると思います。だけど、一応、その議論の中に入れるということはよろしいですかということを申し上げています。
【田村座長代理】 私としては、最初の3つに集中して、4番目はここで十分今、議論したわけですから、座長の気持ちはもう伝わってるわけですから、審議の過程の中で、そういう時間帯があり、それから、そういうことが必要だというような状況が出てきたところで、やるという程度にされたほうが、ちょっと影響が大き過ぎるんじゃないかという気がしています。
【篠原座長】 いや、僕は全然影響は大きくないと思います。もう今既に各党がやってることを、今後も続けてくださいねというだけの話ですから。そんな、もっと掘り下げて、こうあるべきだとか、そういうところまで踏み込むつもりは全然ありません。既にもう自民党や公明党がやっていて、すごくこれは手応えがあるといって、ずっと選挙のために続けてくれているわけですよ。そういうのも今後定着をし、各党もそれぞれ工夫してくださいねと。僕は、例えば各政党が若い人を呼んで、タウンミーティングをやったりしていますが、そういうのも意味があると思うんですよ。特定の政党が、やることがいいというのではなくて、いろんな政党が工夫して、若い人たち、あるいは子供に、そういうものをアピールしていくことはあっていいと思うし、そういう話を僕は、この段階でどの程度のものになるかというのは別にして、そんな重いテーマだとは思っていないんです。書きぶりはまたいろいろあると思います。もう大分この4番目は議論した感じもあります。どの程度の議論が必要かはいろいろあると思いますが、一応、議論をするということについては、よろしいですか。どうでしょうか。あるいは、4番目については、ちょっと別立て風に入れますか。
【田村座長代理】 そういうふうになさったほうが良いと思います。最初3つの議論はぜひやりたいし、結果をしっかりまとめたいと思っているのですが4番目があるために、他も影響を受けかねないので、何か少し表現を工夫することでどうでしょうか。
【篠原座長】 分かりました。では4番目について、どうしましょうか。
【田村座長代理】 現場では1、2、3にとどめておいていただいたほうが、ありがたいですね。例えば私ですと、現場の校長の立場で言いますから、先生たちがこれを扱ったときに、どういうふうに言うかなということをどうしても想像するので。
【篠原座長】 ただ、これは先生たちの問題じゃないんです。4番目は全然そうではなくて別の人たちにもっと努力してくださいよという話です。
【田村座長代理】最終的には座長が決められることですから、結構だと思いますけども。
【篠原座長】 どうですか、御意見。小玉委員、どうですか。
【小玉委員】 あくまでも検討課題なので、報告に盛り込むことを縛るものではないということが、この場で了解されればいいと思います。
【中村委員】 座長の思いはすごく伝わってくるんですよね。結局、主権者教育をして、その政治的リテラシーを持った有権者を育てていった。だけど、選ばれる側が何の情報も出さなかったら、選ぶ判断材料がないと難しい。だからそこまで行かないと完結じゃないよねという思いが多分、座長にあるのだと思うんです。
 ただ、両委員おっしゃるように、今は、主権者教育の世界で、いろいろ議論させていただいているので、政治的リテラシーをどうつけていくかというところで一つクッションを置いて、その次の段階で、今度は選ばれる側の役割として、まともな情報をどう流していくかとか、そういうことが必要になってきて、それで一巻終わりみたいな世界になるんだと思います。論議するのは構わないと思うのですが、そういうストーリーをつくっておかないと教育現場で混乱が生じる可能性はあると聞かせていただきながら感じました。
【神津委員】 よろしいでしょうか。
【篠原座長】 どうぞ。
【神津委員】 表現に様々な御懸念があるということであれば、何らかの表現に置き換えるのか、それともそれが見つからない場合は、4番目は、「その他」としていただいて、しかし、この会議では必ず議論はする、としていただきたいと思います。以上です。
【篠原座長】 4番目について議論をすると。
【神津委員】 はい。これだけいろいろ意見があるということは、やはり議論の俎上に上げるということには値するものだと思いますので、そこは確認をしていただきたいと思います。報告に盛り込む表現として、気を遣わなければならないことに対しては、何らかの対応は必要かと思います。
【篠原座長】 ありがとうございます。それでは3つ目までと4つ目までをちょっと区別したような感じで表現するというのはどうですか。
【田村座長代理】 それは、最小限にするくらいの話でやっていただいたら……。
【篠原座長】 じゃあ、そうしましょうか。4番目を「その他」にして、丸括弧で、例えば云々など、ぐらいの表現に落としましょうか。その他の中の一つだと。ただし、入れ方については3番目までと区別しておくということで、小原委員、いかがですか。よろしいですか。田村座長代理もよろしいですか。中村委員もいい。清水委員、何かありますか。松川委員もこれでよろしいですか。
【松川委員】 賛成です。
【篠原座長】 ありがとうございます。植草委員もよろしいですか。
 では、中間報告の結に、そういう表現を含めるということでよろしいですね。では、そういうことで、中間報告、先ほどいろいろ御意見いただいた修正は、私にお任せいただくということでよろしいですか。
 では、本日はこの辺りということでよろしいですね。では、次回の予定などについて事務局から説明をお願いいたします。
【石田学校教育官】 座長からお話ございましたように、中間報告は座長一任ということで座長と御相談しながらまとめていきたいと思います。それでは中間報告に一定のめどがつきましたので、藤原次官より御挨拶を申し上げます。
【藤原事務次官】 本日は中間報告をおまとめいただきまして誠にありがとうございます。この会議は御案内のとおり、平成30年8月7日に第1回会合がありまして、その後、新型コロナの感染状況の拡大といった状況があったので、一時開催を見合わせておりましたけど、本日の第14回に至り、やっと中間報告が取りまとめられるという状況になりました。その間、篠原座長、田村座長代理、それから各委員の先生方におかれましては、精力的に御議論をいただきましたことを、この場を借りて厚く御礼申し上げたいと思います。
 文部科学省といたしましては、この中間報告ではありますけど、できるものについては早速、実行に移していきたいと考えておりますし、さらに今後、この会議におかれましては、最終報告の取りまとめに向けてさらなる御議論をしていただくということでございますので、引き続き、委員の先生方におかれましては御指導、御鞭撻をよろしくお願い申し上げたいと思います。どうもありがとうございます。
【石田学校教育官】 今後の日程につきましては、改めて御連絡を申し上げたいと思います。また、お気づきのことがありましたらメール等で事務局まで御意見をお寄せいただければと思います。
【篠原座長】 では、本日の会議はこれにて閉じさせていただきます。ありがとうございました。


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