主権者教育推進会議(第12回) 議事録

1.日時

令和2年8月27日(木曜日)

2.場所

文部科学省 3F1特別会議室(東館3階)

3.議事録

【篠原座長】 では、定刻となりましたので、ただいまから第12回主権者教育推進会議を開催いたします。
 本日の会議は、新型コロナウイルス感染症対応の観点から対面と、それからウェブ会議を組み合わせた方式で開催することといたします。ウェブ会議での御参加は神津委員と松川委員のお二人です。本日は近藤委員が御欠席ですので、11名中10名の委員の皆様に御出席をいただいております。御多忙の中、猛暑の中、こうやって御参加いただき、ありがとうございます。
 なお、本日は新型コロナウイルス感染症対策のため、傍聴者は別室にて会議の様子をリモート視聴することとしております。また、本会議につきましては、報道関係者より会議の撮影及び録音の申出があり、これを許可しておりますので、御承知おきください。
 それでは、本日の配付資料について、事務局から、まず確認をお願いいたします。
【石田学校教育官】 本日もよろしくお願いします。座長から御紹介ありましたように、本日も対面会議とウェブ会議を組み合わせた方式にて開催をさせていただきます。御留意いただく点、毎回重ねてで恐縮でございますが、ウェブで参加する先生方におかれましては、御発言に当たりまして手を挙げるボタンを押していただきますとともに、御発言以外はマイクをお切りいただくよう、お願いを申し上げます。また、対面で参加の先生方におかれましては、インターネットで参加されている方も聞き取りやすいよう、ゆっくり、はっきり御発言いただくということと、もう1点は御発言の都度、お名前をおっしゃっていただくとウェブ参加の方々にも、どなたが御発言されているか分かっていただけますので、その点も御配慮をお願い申し上げます。
 それでは、資料の確認を申し上げます。議事次第を御覧いただければと思います。配付資料は議事次第にございますとおり、資料1から資料3、参考資料1、参考資料2をお配りしております。資料2として、2-1、2-2をお配りしておりますが、こちらは前回、第11回の会議で御質問を頂戴しました諸外国における世代別の投票率、並びに我が国の選挙において投票所に使用した施設の状況を、総務省にておまとめいただいた資料でございます。後ほど総務省より御説明をいただきます。併せて机上に主権者教育推進会議のこれまでの配付資料をファイリングしてお配りをしておりますので、こちらも適宜、御参考いただければと思います。不足等ございましたら事務局にお申しつけください。
 以上でございます。
【篠原座長】 資料のほうは皆さんよろしいですか。何か不足のものがありますか。大丈夫ですか。
 それでは、議事に入らせていただきたいと思います。前回の主な意見について、事務局から、まず御報告をお願いいたします。
【石田学校教育官】 資料1を御覧いただければと思います。
 第11回における主な意見ということでございますが、この回は主として家庭や地域における主権者教育の充実方策ということについて、意見交換を頂戴しました。
 お手元の資料の12ページをお開きいただけますでしょうか。12ページは学習内容、学習方法に関することについての御意見を整理したものでございます。真ん中より少し下の黒ポツでございますけれども、今のコミュニティ・スクール制度の枠組みの中で生徒自身も少し発言できるような場を作りながら、生徒、保護者、地域住民がそれぞれ異なる立場から議論できるような場を行政として作っていくことも大事だということで、既存の制度の活用ということの御意見を頂戴したところでございます。
 また、2つ下でございますが、民主主義ということに関わりまして、民主主義は絶対的ではなく相対的な制度であり、みんなが支えていかないと続かないと、こういうことを繰り返し教育の場で伝えていくことが大事なのではないかという御指摘。他方、13ページの1つ目の丸でございますけれども、学校の実態として、生徒会活動、児童会活動がものすごく弱くなってしまっているのではないかと。自分で決める、自分でつくるということが重要ではないかという御議論を頂戴したところでございます。
 続きまして、16ページでございます。外部の専門家や関係機関等との連携というところに関わる御意見でございます。16ページ、下から3つ目のポツでございますけれども、学校運営協議会ですとか地域学校協働本部の設置が進められて、保護者、地域の方々が学校での授業、または土曜授業を受け持って話をする機会があるため、こういうところに特化したカリキュラムがあってよいのではないかとの御意見。
 また、諸外国のということで、その下のポツでございますが、ドイツにおける政治教育を担うNGOへの予算配分、イギリスでの地域と家庭の連携など、こういう海外での事例を参考としてはどうかという御意見を頂戴しております。
 また、次の黒ポツにありますように、家庭と学校をつなぐサードプレイスが重要ではないかということで、一番下の行にあります公民館でありますとか、17ページにまいりまして、主権者教育の関連するNPOと、こういうところの連携、協力が大切ではないか等の御意見も頂戴したところでございます。
 その次に、家庭教育との連携ということでございますけれども、こちらの前回の御意見が19ページでございます。19ページの一番下のポツからになりますけれども、学校の所在する自治体と協働して、生徒が市の課題の解決策を提言する活動を親が見て「子供はここまで考えているんだ」とびっくりする経験があったと。20ページにつながりますけれども、こういった形で子供たちの発表を親に見せることによって、親も考えるようになるのではないかという御意見。
 また、その次の黒ポツにありますように、一方で、親の実態、保護者の実態として、子供を地域や社会の構成員として自立させていくという観点から考えたときに、親の思う自立という中に、主権者的な意識というのがあまりないのではないかと、こういったところがしっかり涵養されていくことも大事ではないかという御意見を頂戴したところでございます。
 このほか様々な御意見を頂戴しましたが、時間の関係上、割愛いたします。
 以上でございます。
【篠原座長】 次に総務省より御報告をお願いいたします。
【清田選挙部管理課長】 総務省選挙部管理課長の清田と申します。
 私からは、右上に資料2-1と書いている諸外国における世代別投票率の資料について、まず御説明させていただきます。こちらの資料の出典元でございますが、国立国会図書館の政治議会課がまとめられているレポートから引用したものでございますので、レポートをそのまま引用させていただいていることに御留意いただければと思います。
 レポートでは、5か国の世代別投票率について整理されております。
 まず、アメリカについて、1ページでございます。こちらは2000年以降の選挙の状況でございまして、中間選挙も含めた投票率の状況でございます。全体の傾向としては、御覧いただきますように、年齢が上がるにつれて投票率が上がっていくという状況でございます。また、中間選挙と大統領選のある年だと投票率がかなり異なっているといった傾向も見受けられる状況でございます。
 続きまして、2ページ、こちらはイギリスの下院総選挙における世代別の投票率でございます。こちらについてもアメリカほどではございませんが、右肩上がりという状況、さらに投票率についてはアメリカよりも高いと言える状況になっているところが特色でございます。なお、先ほどのアメリカの資料とイギリスの資料では年代区分が若干異なっておりますので、そこも御留意いただければと思います。
 次に、3ページ、ドイツの下院総選挙における世代別投票率でございます。こちらはアメリカ、イギリスと違いまして、さらに投票率が高いという状況、なおかつ右肩上がりの状況も、上がり方が少し緩やかである状況でございます。いずれの投票率も、7割から8割の状況になっているところが特色でございます。
 続きまして、4ページでございますが、フランスの世代別投票率でございます。こちらは逆に日本とよく似ている状況になるかと思いますが、一旦少し下がってから上がり、最終的には少し落ちるという状況になっているところでございます。こちらも世代区分が、最初が18から24になっているとか資料の違いがございますが、傾向としては日本に近い状況になっているところが特色でございます。
 最後に、5ページでございますが、スウェーデンの総選挙による世代別投票率ということでございます。こちらも、先ほどのドイツと似ておりまして、7割から8割の投票率となっているという状況でございます。
 以上、各国の世代別の投票率の状況についての資料でございます。
 続きまして、資料2-2、右上に記載しております、投票所に使用した施設について、これは私ども総務省の調べでございます。国政選挙のたびに、こういった調査を行っているところでございまして、直近、調査結果が出ている2回分について、資料を作成させていただきました。令和元年の参議院議員通常選挙につきましては、現在、取りまとめ中でございますので、直近の数字としてあるのが記載の資料になるところでございます。
 平成29年の衆議院議員総選挙でございますと、投票所は4万7,000余の箇所、期日前は5,300余の状況でございました。それぞれの施設別ということでございますが、特に学校につきましては、投票所においては非常に多く使われているところ、さらに大学についても期日前投票、投票所ともに、一部でございますが使われている状況でございます。基本的に、公共施設を中心に使われているところが多いこともございまして、一部、駅であるとかショッピングセンター、いわゆる商業施設の設置もあるという状況でございます。これは平成28年の参議院議員通常選挙も同様の状況でございました。
 以上、投票所に使用した施設の状況についての資料でございます。
【篠原座長】 ありがとうございます。何か今の総務省の清田課長の御説明に対して、質問がございましたら、どうぞ。
 私から1ついいですか。アメリカとフランスを除くと非常に高いですよね、イギリス、ドイツ、特にスウェーデンなんか。この理由はどのように分析されていますか。特に若い人の投票率が非常に高いですよね。
【清田選挙部管理課長】 日本との違いというところをどこまで分析できているかという点については、なかなか難しいところがございますので、一概に言いにくいところであります。フランスについては、我々と似ている部分があるかとは捉えておりますが、国民の投票に対する考え、国民の皆さんの行動の異なりというのが、傾向として近年出ているのかという、我々は捉え方をしております。
【篠原座長】 そこは一概には言えないんでしょうけど、やっぱり主権者教育がしっかりされている国という位置づけでいいのかなという感じがしますね。実際、私も見てきた感じで言いますと。
 このことも含めまして、また後で何か皆さんから御意見があれば、どうぞ出していただきたいと思います。では、前へ進めたいと思います。
 本日は、3番目の柱であるメディアリテラシーの育成を含めて、その他いろいろあると思いますので、主権者教育の改善、充実に係る内容について、自由に意見交換をいただければと思います。まず、資料について事務局から説明をお願いします。
【石田学校教育官】 それでは、資料3-1、資料3-2に基づいて、御説明を申し上げたいと思います。
 今ほど座長からも御指摘を頂戴しましたように、本日は資料3-1に示す、主な議論の柱が3つございますけれども、これのみならず、その他の内容も含めて主権者教育の改善、充実に係る内容について、自由に意見交換をいただければと考えてございます。
 1つ目の柱、2つ目の柱につきましては、前回、前々回で御議論を一旦頂戴してございますけれども、本日も参考資料1、参考資料2ということで、それぞれの回にお配りした資料をお配りしているところでございます。
 私からは3つ目の柱のメディアリテラシーの育成ということにつきまして、資料の御説明を申し上げます。資料3-2でございます。今回の議論の柱であるメディアリテラシーの育成の趣旨ということを二重丸で書いてございますが、主権者として現実社会の諸課題について、多面的・多角的に考察を深めるには、各種の統計、白書、新聞やインターネットの情報など豊富な資料や多様なメディアを活用し、必要な情報を適切かつ効果的に収集し、解釈する力が求められると。その際、情報の妥当性、あるいは信頼性を踏まえた公正な判断力を身に付けることが重要となると。こうしたメディアリテラシーを育成するには、どのような工夫や留意すべき点が考えられるかということで、論点例を事務局として、これまでいただいた御意見を基に論点例を3点立ててございます。
 1点目は日常的に多様なメディアに触れる環境作りについてということでございます。主権者教育の第一歩は、社会への関心を持つことにあると。子供たちが日常的に現実社会の諸課題に関心を持つことができるよう、学校、家庭など様々な場面で、多様なメディアが発信する情報に触れて考える機会を充実することが重要であると。その際の工夫や留意点はどのようなものが考えられるかということでございます。
 これまでの御意見をまとめてございますけれども、多様なメディアに触れることの意義に関する御意見ということで、上2つでございます。最終的に自分の意見を持つことが主権者教育では重要なんだけれども、社会への関心を持つことが、そのための第一歩であると。2点目のポツの2行目でございますが、様々な社会の問題点が分かるようなニュースについて情報を収集し、多角的な視点から考えていくことが重要であるという御意見を頂戴しております。
 また、学校での授業の扱いということで、多くの授業時間を割かなくても、朝の10分、15分を使って社会に関する学びを深めるということもできるのではないかといった工夫の意見も頂戴しております。
 また、家庭でのNIEの取組ということで、第5回でも取り上げてございますけれども、そのときの御議論でございます。学校での取組だけでなく、新聞というメディアを媒介させることにより、家庭において、争点のある課題について最も身近な親子間で話し合ったり意見交換したりするなど、家庭におけるNIEにもっと力を入れていくことが大事なのではないかということ。また、次はNIE委員会の先生が御発表された中のことでございますが、家庭との連携事例として、新聞を用いたコンクールに取り組んでいると。新聞記事を読んで感想を書き、記事の内容について家族や友人と話や意見交換をしていくと。2ページにまいりまして、そうした中で自らの意見がどう変わったか、変わらなかったかを作文等で書くと、こういうことを通じて、家庭で親子で話し合うことで、同世代で話し合うよりも意見の広がりや深まりが見られるという状況があると。
 また、次のポツの2行目でございますが、自分の意見を友達や家族と話をすることで、違う意見も受け止めながら、さらに自分の考えを磨いていくと、こうした作業を続けていくことが投票、1票の大切さにもつながっていくのではないかという御意見も頂戴したところでございます。
 これが1つ目の論点例の多様なメディアに触れていくということでございますが、2つ目の論点例は、多様なメディアの特性に応じた情報の収集についてということでございます。新聞やテレビ、ネット記事やSNSなどのインターネットの情報と、多様なメディアの特性に応じて、適切かつ効果的に必要な情報を収集することが期待されるが、その際の工夫や留意点ということでございます。メディアの特性に応じた取扱いということでの御意見でまいりますと、1つ目の意見にありますように、紙のニュース、デジタルのニュース双方にメリット・デメリットがある。こういった様々なニュースを、トータルでニュース媒体をどう使うかということを考えていくことが重要であるとの御意見を頂戴しております。このあたりの課題に迫るための具体的な方策につきましても、御意見を頂戴できましたら幸いでございます。
 また、新聞に関わる意見を4つまとめてございますが、新聞のメリットは信頼性の高さや一覧性の高さである。読み比べる際に、満遍なく全紙を見るのではなくて典型的な2つを比べていくと、こういう問題の本質に迫っていくこともできるのではないか。読み比べるということに加えて、記者がどのように記事にまとめているかという視点も役に立つ。活字メディアに対するリテラシー能力の努力も放棄すべきではなく、新聞をしっかり教材として使っていくことでリテラシー能力を育めるといった御意見を頂戴してございます。
 次に、インターネットに関わる御意見でございますが、上2つが社会の現状についての意見でございます。若者がどういうところから情報を得ているのかを考えてみると、新聞を取っていない家庭が増えてきており、ネットを通して情報を得ることが進んでいる中で、若い主権者がどのように情報を得て、自己の意見を形成していくのかという点に注目することが大事なのではないか。また、大人も子供も問わずネットで情報収集し、ネットで発信することが強くなってきていると、こういったことを意識していくことが大事なのではないかという御意見。
 そして、3ページ目に参りまして、ここからは情報の収集に関わる意見ですけれども、膨大な情報の中から個人が何を選ぶのかが問題であって、デジタル化されたメディアをプラスにどう使っていくかと、こういう視点が主権者教育の中でも大切なのではないかと。特にネットメディアの特性として、見出しからそのニュースを選ぶと、次からはそれに関連するニュースばかりが表示されるようになるなど、自分で選んでいるようでいて、実は偏りのある情報にしか接していない仕組みになっていく。こういったことにも気をつけながら、ネットメディアを前提にリテラシーを高めていく必要もあるのではないか。SNSやインターネットは自分に都合のいい意見だけを見がちで、自分と異なる意見と向き合わなくなってしまうと、そういう欠点もある。こうした環境下での主権者教育の在り方についても検討することが大切なのではないかという御意見を頂戴しました。
 また、その下に2つまとめてございますのは、主権者教育を推進するツールとして、オンライン、SNSの活用も大事なのではないかという御意見を頂戴したところでございます。
 3つ目の論点例でございますが、次は情報の収集というところから先に進みまして、収集した情報を基に自分なりの意見を持っていくという点でございます。主権者として現実社会の諸課題について、多面的・多角的に考察を深めていくためには収集した情報の妥当性、あるいは信頼性を踏まえて公正に判断し、自分なりの意見を持つこと、自分たちが社会を作っていくんだという当事者意識を持つことが期待される。その際の工夫や留意すべき点について、御意見を頂戴できればと考えてございます。
 情報の妥当性、選択や判断、妥当性や信頼性に関わる御意見を3つ整理してございます。様々な情報源がある中で、情報を選択していく力を含めて子供にどうつけていくのか。情報が氾濫しているような状態の中で、どの情報を捉えていくのか、自分の判断で捉える力というのが主権者としての素地ではないか。情報リテラシーを磨き、フェイクニュースのような情報に踊らされないようにしていくかが重要であるとの御意見を頂戴してございます。
 また、当事者意識に係る御意見を2つ載せてございます。3ページの一番下でございますが、子供の頃から自分たちが社会を作っていくという当事者意識を持つことが重要であり、そのためにニュースについて情報を収集し、多角的な視点から考えていくことが重要であるということ。
 最後のページ、4ページにまいりまして、日常の中で社会的な問題に気付き、課題を見いだし、自分の意見を持っていくことが重要である。こうした作業を続けていくことが大事なのではないか。これは再掲でございますが、こういった御意見を頂戴したところでございます。
 以上、メディアリテラシーの充実について、これまでいただきました意見を基に、事務局で立てました論点例を御紹介しましたけれども、先ほど座長からも御指摘ございましたように、本日は資料3-1に示す柱の3つだけではなく、その他の内容も含めて改善、充実に係る内容について、自由に意見交換を頂戴したいと考えてございます。どうぞよろしくお願いします。
【篠原座長】 どうもありがとうございます。
 今、御説明がありましたように、今日はメディアリテラシーの問題を中心にということになっておりますけれども、これまでの議論なども振り返り、踏まえながら、まだおっしゃるところがいろいろあろうかと思いますので、そういうものも含めまして、大学での主権者教育の在り方とか教員研修の問題だとか、御自由に御意見を出していただいて、それで、次回以降に中間報告の取りまとめに向けた作業に入りたいと思いますので、今日までは平場の議論ということで、どうぞ御自由に御意見を出してください。よろしくお願いします。
 神津委員、どうぞ。
【神津委員】 メディアリテラシーは、1つの科目として教育体系に位置づけられることが必要ではないかというほどに、今日において重要なアイテムだと思います。主権者教育に絞って申し上げると、今、多種多様のメディアの情報があふれ返っているといっても過言ではない状況の中で、例えば、1つの事象、1つの政治に関わるテーマに対して、多種多様な複数のメディアで比較をしていく。そのことによって、それぞれの利点、あるいは欠点・長所を学習しながら手にすることが大事ではないでしょうか。
 多種多様のメディアは世代によって使われ方がかなり偏っているということも含めて、自分がどういう情報を得ているのか、ということの気付きが非常に大事ではないかと思います。物事を捉えるのに何か大事なのか、どういう心構えが大事か、といったことを認識していくことが非常に大事ではないかと思います。
 以上です。
【篠原座長】 ありがとうございます。今の御指摘は大変重要な御指摘だと思うんです。私も大学で教えていて、例えば、新聞なんかを読ませるんですけども、今、5大紙、6大紙とありますけれども、それぞれ非常に方向性が分かれていますよね。社説なんかもはっきりと。だからこのグループの中から1紙、このグループの中から1紙という読ませ方をしているんです。そして自分の意見を作ると。1つの新聞だけでやっていると、そっちの意見、方向しか社説は出ていませんので。今、神津委員がおっしゃったように、バランスを取ってメディアに接して、自分の意見を作るということは大変大事なことかという感じがいたしました。
 松川委員、どうぞ。
【松川委員】 先ほどのまとめのレポートの中にも出ていた意見なんですけれども、特に若者に親和性の高いネットメディアによる情報収集の留意点ということで、大変気になることがありますので、少し申し上げたいと思います。
 紙の媒体、新聞、それからテレビ、ラジオ、ネットメディアを提供される情報量という視点からみると、圧倒的にネットメディアによって提供される情報量が加速度的に大きくなっているということ。それから、その情報の中で個人が何を選ぶかという点で、ネットメディアの恐ろしいところは、AIというかコンピューターが、自分のことを自分よりもよく知る可能性が非常に高くなっているということなんです。新聞やテレビでも、それを読んだり見たりした人が反応するというやり方は今までもあって、新聞だったら記事に対して投書するとか、テレビであっても視聴率とかというものがあるわけですけれども、ネットメディアの場合は、個人の反応が直に個人にフィードバックされるという怖さがあります。
 インターネットで何か情報をクリックすると、その後、これでもかという形で自分のクリックした情報の関連情報を提供してくる。例えば、ユーチューブの動画をあるテーマで見たとしますと、その次に開いたときに、それに関連するようなものを山のように送ってくる、提供してくることがあるわけです。もちろん自分が興味ある情報を最初クリックするわけですけれども、その後、それに関連するものばかりが出てくるので、自分が知りたくないとか聞きたくない情報に触れることが相対的に少なくなるところに、ネットメディアが提供する情報の恐ろしさということがあるわけです。自分の知りたくない情報は出てこなくて、自分が知りたいとか好きな情報が次から次に出てきて、そういうものに埋もれてしまう偏りが増すことが、これまでのメディアとかなり違うということなんです。
 それについて、自覚できていればいいんですけれども、もちろん今まで新聞を読んでいても、自分はこの新聞が好きだというのがあって、それと違う傾向のある新聞はあまり読まないということは、あるわけですけれども、ネットメディアの場合は、膨大な情報の中で、自分が最初にクリックして、しばしばクリックしたものと近いものを次から次に送ってくるようになっている。自分が主体的に選択しているようなんだけれども、どんどん過去の自分の履歴をコンピューターのほうが蓄積してきて、自分の考えというか、自分の欲しい情報を向こうで勝手に決めて提供してくるということはこれまでないことなので、それについてどれだけ自覚できる人間を作っていくのかというのが、主権者教育の中で非常に大きな課題ではないかと思いました。
 取りあえず、以上です。
【篠原座長】 ありがとうございます。これも大変重要な御指摘だと思います。主権者教育の問題に関わらず、ネットメディアの問題というのは各方面にいろいろな影響を与えている。しかも現実、若い人や子供たちは、ほとんどインターネットで情報を取って、新聞を読まないどころかテレビも見ないと、こういう状況がどんどん進んでいる。その中でネットメディアというのを主権者教育の中にどう位置づけたらよいのか、これは大変難しい問題も絡んでいるような気がいたします。何か御意見ありましたら、どうぞ出してください。
 では、植草委員。
【植草委員】 植草です。
 この問題はすごく根が深くて、生徒に何か調べ物をしてきなさいと言いますと、10人中9人以上がインターネットで調べてくる。何でインターネットかというと、簡単であるのと、あと、ただで情報が入るところです。
 これについて困っているのは学校現場なのですが、私の知人の中学校の先生が面白いことをやっていたのは、情報とはそもそも本当は価値があって、お金と交換するものなんだと。例えば本はお金を払って情報を買うものだと。ということは、インターネットというのは何でただなの、何で簡単なの、そこから考えようということをやっていました。なるほどと私は考えました。何か調べ物をしなさいという前に、簡単であることとか、ただで情報が手に入ることという基本のキのところから入っていくのはなかなか面白いと思いました。
 以上です。
【篠原座長】 ありがとうございます。なるほど、今、10人中9人ということで、よく分かるような気がします。ほかに御意見、どうぞ、北川委員。
【北川委員】 日本PTAの北川でございます。
 これは意見というよりも情報提供に近くなるかも分からないのですが、我が家には21歳、中3、小6の子供がいます。我が家はどうかというところです。ツイッターに代表されるSNSなのですが、情報の速さはもちろん親にはもう太刀打ちができないです。反省すべき点ではあるのですが、家庭では新聞はまず読まない。21歳の長女も小学校から中学校で読んでいたかというと、学校の課題とかでは読んでいるのですが、これは親が幾ら言ってもなかなか読むまでには到達できないのが現状だと思います。
 情報が瞬時に入るというのは皆さんおっしゃられるとおりですが、例えば、我々が新聞やテレビで得られる情報と相違があるのです。その中で、フェイクニュースについて話し合って、実は違った情報があるのだという話ができるのは良いのですけれども、我々が新聞で得た情報のほうが間違っているとかということもあります。疑わしいところがあることを議論するのはいいのですが、こちらが太刀打ちできないというところにまで来ているのではないかと思っています。
 先ほども植草委員が言われたように、現在、学校で能動的な授業になってきてはいるのですけれども、主権者教育を絡めたリテラシーの授業がどうしても必要になってくるのではないかとの意見でございます。以上です。
【篠原座長】 ありがとうございます。北川家の話を御紹介いただきながら、大変分かりやすいお話でございました。ありがとうございました。
 ほかにございませんか。どうぞ、佃委員。
【佃委員】 今日のテーマの、学校での主権者教育の推進にしても、メディアリテラシーの育成にしても、結局、学校でのアクティブ・ラーニングと言いますか、議論を通じて、そういう素養を涵養していくということになるんであろうと思います。なかなか家庭独自でやる、あるいは、子供たち同士でやるというよりも学校の先生、学校がそういうアクティブ・ラーニングの場で議論を主導して、そして、何が問題点か、それから、各新聞の論調の比較等の議論をリードしていかなきゃいかんと。基本的には学校の先生の役目というのが非常に大きいんじゃないかと思います。
 だから、そういうことを考えますと、今までの議論でもございましたけれども、いろいろな意見が対立する課題については、学校の先生が触れたくない傾向があると。すなわち完全に中立でなきゃいかんという非常に強い縛りがあるものですから触れたくない傾向があると。それだと、議論は絶対に深まらないという気がして、これは前に神津委員もおっしゃいましたけれども、ぜひ先生は自由に自分の主張はこうだと。自分の主張を言うことが悪いのではなくて、それを押しつける、子供に刷り込むというのが悪いことであって、自分はこう思うけれども、こういう意見もあるし、みんなはどう思うという議論を主導する、コーディネートするということは、これは絶対に必要になってくるんだろうと。そういう議論を通じて、メディアに対するリテラシーも高まってくるのではないかと思います。
 以上です。
【篠原座長】 ありがとうございます。現場での中立性の問題は前にも御指摘いただいて、大変重要なテーマなんです。大変大きなテーマなので、この問題は中間報告の後、また議論を続けまして、最終報告でこの問題を取り扱いたいと思っていますので、御理解いただければと思います。よろしいですか。
【佃委員】 はい、分かりました。
【篠原座長】 じゃあ、中村委員、お待たせしました。
【中村委員】 中村でございます。
 まさにメディアの関係で、分断みたいなのが起こってきたのは、トランプ大統領が出現して、いろいろなことがフェイクニュースだと叫び始めて、そこから非常に起こってきたような状態で、そこでポピュリズムみたいなものが台頭してきたと。そこでもうどちらかに偏ってしまう、いわゆる分断社会ができると。これがイギリスのブレグジットでも同じようなことが行われたという世界で来ていて、今、日本でもコロナの部分で、同調圧力というのかムラ社会みたいなもので、いわゆる自粛警察みたいなのができたり、ネット上で罹患した人たちを責めてみたりと、こういうものがインターネットの世界で瞬時に拡散していっちゃうこと、これがすごく怖い部分があって、これは政治の世界においても、今後、インターネットがどんどん普及していくと、そういうことがますます深くなっていく可能性があると。
 そこのところをどのように主権者教育の中で修正するか、いろいろな氾濫する情報を自ら判断する力を身に付けると、言うのは簡単なんですけど、これが一番、ものすごく難しいんだろうと思うんです。これは正直言って、前回、前々回でやった学校教育でもやるべきだし、家庭内でもやるべきだし、そういういろいろなコミュニティー、社会、こういうところを全部使ってしていかないと、分断を止めるというのが非常に難しいんだと思うんです。今のアメリカを見ていても何かすごい状況になっちゃっていて、どうなっていくのかという感じがしています。だからそういう面では、たしかどこかで調べたとき、ドイツかなんかで本当に中立性のある機関が事実とデータに基づいて集計して、物事を判断材料として提供していくと、そういう機関みたいなのが、何か必要になってくるのではないかと思っています。そういうものができると、そこのところというのは事実とデータと、これがどこまで信憑性があるかというのはあるんですけども、そういう中立性を担保した中で、そういうものを何か作り上げていくという努力が必要なんじゃないかという感じがしております。
【篠原座長】 これもまた大変重要な御指摘でございました。これも先ほどの佃委員の御意見にも少し関わるのですが、ドイツの中立性の担保の仕方というのは、政治の場としての議会が中心になってかかわっているんです。しかし、逆に日本の場合はいろいろやると、また議論が拡散するんです。だからここも大変悩ましいところだと思います。また、そういうことも踏まえて、議論を深めていきたい、重ねていきたいと考えております。
 小玉委員、どうぞ。
【小玉委員】 先ほど来、議論になっているインターネットメディア、SNSの問題なんですけど、前提として、一般の市民がメディアの受け手であるだけではなくて、メディアの発信者にもなっているというところは、インターネットメディアが普及していることの積極的な面として、特に民主主義の拡大という意味では、まずは肯定的に評価するということを前提にした上で議論する必要があるということが1つあると思います。
 ただ、その上で、今の委員の先生方から議論が出ていますように、特にSNSの最大の問題はクラスターが形成されるというか、同じような意見を持っている人だけが集まって、1つの集合を形成していくので、割と心地よいコミュニケーションの空間がそこで出来上がってしまって、自分と異なる意見に耳を貸さなくなってしまうという問題がどうしても出てきてしまう。それが最大の問題ですので、学校教育では自分と異なる意見が存在していて、そこでどういう対立や争点が生まれるのかというところを、生のいろいろな問題を素材にしてとことん話し合うことが重要ではないかと思います。例えば、Go Toトラベルの問題であったり、あるいは、最近で言うと、野党の政党が合同することをめぐる問題であったりとか、いろいろな生々しい問題があるわけですが、そういうことについては当然、SNSなんかではそれぞれのクラスターごとに、いろいろな同好の士が集まって盛り上がるわけですけれども、それだけではなくて対立する意見がそこに当然あるわけだから、そこを教室の中で議論するような場を作っていくとか、そうすることで民主主義を活性化していくことが重要なんじゃないかと思います。
【篠原座長】 ありがとうございます。今の御意見も大変重要な御指摘で、学校の教室でそういうテーマでディベートみたいなものをやってもらうと大変いいと思いますが、それと同時に家庭でも、そういうテーマで親子で話し合う雰囲気や環境ができるとよいと思います。
 小原委員、お待たせしました。
【小原委員】 小原です。
 メディアリテラシーの件ですが、主権者教育に限ったことではなく、ほかの教科にも大きく関係してくることです。今の中学校、高等学校、そして大学の学びの在り方が調べ学習的になってきた。調べ学習でよく使われるのがインターネットに流れている情報ということですけれども、新しい学びの様式に対して、今の高等学校のカリキュラムで対応できているかという問題にたどり着くのではないかという気がいたします。
 「情報」が高等学校の科目として提供されるような時代は、まだまだインターネットの普及がほとんどなされていなくて、これからどうしようかという時代でした。ところが、今は中学生、中には小学生までがインターネットを使っている時代にあって、高等学校で情報の科目を提供して、いわゆる新しいメディアの使い方を学ぶ時代ではありません。
 むしろ、ここから先は教育課程の問題になってくるのですが、情報を高等学校ではなくて中学校、あるいは小学校の高学年まで落として、そこからメディアリテラシーの在り方だとか、メディアの使い方というものを指導する時代になってきていると思います。ある意味、文科省は時代に遅れています。遅れていることをそのままにして、何か新しい学びの様式に見合うようなことをやりましょうと言っても、それは到底無理です。
 そこは無理を承知で言うと、もし主権者教育にもメディアリテラシーというのが非常に重要だということであれば、メディアリテラシーを使っての学び方、学びの様式、これを早い段階から改めていく必要があります。レポートを書くにしても、インターネットから持ってきて、それをコピーペーストすればいいわけなんですけども、そうすると引用先が分からない。本来の研究に求められていることにつながりません。安易に情報が取れるので。それをどう使うかときちっと教えないと、それはなかなか自分の考えをまとめるということにはたどり着かないと思うので、私はメディアリテラシーを取り上げるのであれば、科目をどこに何年生に置くかというところも含めて検討していく時代ではないかという気がいたします。
【篠原座長】 ありがとうございます。教育現場から見ると、そういう流れをきちんと作らないと、ただ、メディアリテラシーだと言ったって確かに進みませんよね。小原委員の御指摘のとおりでございます。それは教員もそういう意識を持たないと、あるいは、検証を重ねないとうまく行かないんじゃないでしょうか。どうでしょうか。
【小原委員】 結局それは教員養成まで戻っていってしまうんですけども、もしそれを使うのを許すのであれば、使い方を教員が知らないといけないことになりますから、教員養成の免許科目の中にメディアリテラシーの活用だとか情報ということを含む必要がここから出てくると思います。
【篠原座長】 瀧本局長、矢野審議官にお聞きしたいんですけど、新しい学習指導要領が、今年度から小学校から順番に実施されますよね。メディアリテラシーの問題というのは、これだけSNSやインターネットに中心になってくると次の改訂では学習指導要領の書き方も少し考えていく必要があるのではないかとの指摘が、小原委員からあったのですが文科省としていかがですか。
【矢野大臣官房審議官】 今回、学習指導要領の総則で、一番大きな改正点がございました。メディアリテラシーとは書いていないんですが、情報活用能力という文言が入っています。これは学習するに当たっての基盤的な能力だと位置づけられていまして、つまり、今まで読み書きそろばんという言葉がありますけれども、読み書きそろばんと同じように学習の基盤、情報活用能力、すなわち、どういう情報を取捨選択して、それを活用していくか。まさに本日のメディアリテラシーの議論に恐らく通じるものがあるんだろうと思いますが、そういうことを学習指導要領は書いておりまして、我々もそれにのっとって、ここでの議論をどう現場で実行していくかが1つの大きな課題と考えています。
【瀧本初等中等教育局長】 瀧本です。今の座長からの御質問に関連してです。実は私が小学校のとき、-今でいう所のメディアリテラシーの基礎かもしれませんが-たしか5年生だったか、6年生だったか国語の教科書の中で、ある交通事故について書いた2紙の記事を引用した文章が国語の教材として掲載されていました。私の自宅は1紙しか新聞を買っていなかった家庭でしたから、こんなに同じ事故について記事の内容が違うのかと気づかされたのがあります。
 そういったように、様々な角度から報道がなされるということについて、気付かせて考えさせるという内容が教科書の教材には含まれていました。国語科の授業であれ、社会科の授業であれ、いろいろな人のものの捉え方とか見方とか考え方があって、そこから自分もしっかりとした考えを持って、ほかの人の意見にも耳を傾けていく。そのためにいろいろな教科の中で、ディベートを用いた授業とか様々取り組まれていることが以前以上に、私が子供のとき以上に行われてきているんだろうと思います。それがさらに発展して、安直にインターネットメディアの内容をにわかに事実と捉えてしまうことを、気を付けていかなければならないことにまでつながっているかどうかという課題はあると思います。
 それから、今の新しい学習指導要領の中でも、随所に情報活用能力やメディアリテラシーに関する記述というのはあります。
 つい先日も世田谷区の小学校6年生だったと思いますが商店街に署名運動をして回っている取組が紹介されていました。それは自分で一生懸命考えて、学校行事がなくなっていっているが学校行事を体験したいから、もう一年6年生をやらせてほしいというのに賛同してくださいというので回っている。自分なりに自分の意見を持って賛同を求める。ですが、ある商店街の頑固おやじさんみたいなところに行った時に、「それはいいけど、今度小学校に上がる子が入れなくなるからどうするんだ、俺は署名しない」と言われた。考えて悩んで、確かにいろいろな立場の人がいるから、自分のことだけ考えて主張したら駄目なんだとなった。ほかの人の立場も考えて主張しなくては、ならないということを自ら学んだ。学校でいろいろな考えを持ったり、ディベートしたりする経験の中で、それを地域社会に転換していって、そこでより深い学びを彼はしたんだと思いますが、そういうことに留意したような授業というのは、いろいろな教科でも行われつつあるのかと私は理解しております。
【篠原座長】 ありがとうございます。小原委員、今の話でよろしいですか。
【小原委員】 教育課程でまたやってもらえればいいです。
【篠原座長】 分かりました。先ほど、私がまた次の学習指導要領の話まで言ったのは、恐らく今言ったそういう流れ、ソーシャルメディアの流れがどんどん強まるんだろうと思います。強まれば強まるほど、一方で、リアルなもの、オンラインではなくてリアルなものが、また改めて見直されるときがだんだん来るんだろうと思うんです。だから、例えば教科書においても、今は紙の教科書をベースとしつつ、デジタル云々と入っていますけども、どんどんデジタル化がこれから進むと思います。だけど、どこかでまた紙の教科書や新聞などのリアルなものが大事だ、対面的なものが大事だという時期が僕は必ず来ると思っていますので、そういうものをうまく考えながら、次の学習指導要領を考えていただきたいという点で申し上げました。よろしくお願いします。
 田村委員、大変お待たせしました。
【田村座長代理】 ありがとうございます。現在、学習指導要領が改訂されて、現場でそれを受け止めているわけですけれども、受け止める側で申し上げると、今回の改訂は2030年の時代を予想して、その時代で生きる子供たち、つまり今、小・中・高校に通っている子たちが30歳前後になるんですけれども、そこで役に立つようなことをやろうということが改訂の趣旨と受け止めているんです。
 OECDが2030年の教育についての意見をまとめた中間報告でも述べられているようにエージェンシーというのは非常に重要な考え方だということが学習指導要領改訂の議論の中で、学校現場に降ってきた言葉なんです。エージェンシーというのは日本語にすると-恐らくいろいろな訳し方があると思うんですが-当事者意識という言い方になるんじゃないかと僕は思っているんですが、当事者意識というのは今、言った主権者教育の中核になることなんです。つまり先ほどから御指摘があったように、今のメディアの世界というのは、明らかにどんどん進歩していく人工頭脳、AIの力でビッグデータが即座に活用できるという世の中になっていく、2030年は明らかにそうなっていきます。
 例えば、テレビのニュースで流れる項目の順番というのは、事前に発表されたメディアの反応の順番を使って発表しているわけです。これも現在、AIがビッグデータを活用してやっているわけです。それは視聴率の関係で、やっている人は順番の高いほうを最初に報道したほうが、視聴率が上がるという仕組みなのだそうです。また、子供たちがより多く影響を受けるフェイスブックやインターネットのニュースも同様と聞いています。みんなが反応することが大きなニュースになるという意味では、ある面、正しいんですけれども、ある面、先ほどから心配されておられるようなポピュリズムに直接つながってしまう心配もあるわけです。だからそこでとても大事なことはエージェンシー、つまり自分で考えるということの大切さですよね。
 これは、私は大学で言う、いわゆるリベラルアーツを学ぶ意味なんです。当事者意識、自分で考えるということの大切さを本当に自分の身に付けるためには、リベラルアーツが大事だと言われて、大学ではそのことを一生懸命やっておられるわけですが、これはもうできるだけその意味で言えば、その分野を高校に、あるいは中学に、あるいは小学校に下げていくと、こういうこともこれから工夫して、とにかく自分で考えることは最後の最後で絶対に大事なんだということをはっきりさせることが、結局、主権者教育を充実し民主主義を実りあるものにするために大事だということを伝えていくという話になっていくのだと思っております。
 ですから、メディアの問題とは、そういうことを端的に私たちに問題点を示してくれるいい例なので、ぜひこれはしっかりと議論して、座長がメディアの出身でいらっしゃいますから、きちんと文章を書いていただいて、世の中に伝えていただきたいという気がしております。
 以上です。
【篠原座長】 どうもありがとうございます。私がメディアにいた頃は、こんなにデジタル化が進んでおらず、アナログ的な世界でやっていましたので、戸惑いのほうがむしろ今は大きいのですが、田村委員が今おっしゃったようなリベラルアーツ、自分の意見や主張をどう作り上げるかという点でメディアをどのように活用するのか。活用するためには身に付けなければならないことが沢山あるわけです。
 ですから、これは議論すればするほど、難しいテーマだなという感じがいたします。主権者教育を進めるに当たって、メディアをどう活用していくかということに、限定的に行かないと、議論がまとまらない気もいたします。
 まだ時間がございますので、御意見があれば、どうぞ。今まで出た意見に対してのコメントでも結構です。
 北川委員、どうぞ。
【北川委員】 日本PTA、北川でございます。
 今、田村委員がおっしゃった当事者意識というところはとても重要だと私も思っています。大人でもなかなかできないことで、社会を作る当事者意識を持ってもらうには、子供たちには自分が主人公の人生を考えることがとても大切だと思っています。もう一つは、社会の大人全てが、意見の対立も含めて認めてあげる意識は必要ですが、大人がその世話を焼くというよりも、情報が氾濫する中でも、子供同士でも問題解決しているという事実もあり、保護者として見ていくことも大切かと思います。性格も育ちも違う子供たちが切磋琢磨して、学校の活動や部活動を通じ、また、家庭内の兄弟関係の中でも行われているのも、これもまた事実です。我々が育った昔ながらに行われていることでご、学校の先生も地域、家庭も捨てたものではないのではないかと、そういう感情もあるというところです。
 意見でございます。
【篠原座長】 ありがとうございます。ほかにございませんか。
【中村委員】 田村委員が、おっしゃったとおり、リベラルアーツ、考えることに重点を置くべきじゃないかなと思います。というのは、スマホ1つで、知識というのはその中に全部詰まっちゃっているんです。学校の先生には大変申し訳ない部分があるんですけど、今まで延々と教えてきたことというのは、知識の押しつけという世界については、スマホで足りちゃう世界があると。一生懸命、「いい国作ろう、鎌倉幕府」だと覚えたことは、スマホの中に全部載っちゃっているわけですよね。だから、その部分を少しリベラルアーツの時間割を増やしていくとか、自分で考えるということに主眼を置いた学習指導要領が実施されていくと変わっていくんじゃないかと。
 実際としても、スマートフォンに様々な情報が入っていて、それとか実態と併せて、うちの女房がよく言うんですけど、三角関数なんて使ったことがないと。授業の時だけ受けたけど、あれはどうやって使うのとか、みたいなことが実際あるわけですよね。だから、先ほど読み書きそろばんと言われたんですけど、逆に今はそれが非常に大事で、初等中等教育を卒業した後の段階で、きっちり読み書きそろばんとリベラルアーツ、これが足されていればオーケーじゃないかというのは、2030年の姿とか言われたんですけど、それでもいいんじゃないかという気はしないでもない。当事者意識で自ら考えるという力をどうやって付けたらいいのかと、そうなると、ディベートの教育授業を増やすとか、いろいろなことが変わってくると思うんです、場面が。
 だからそういうことを、すごくがらっと変えちゃうような気がして、言っていいのかと思いながらしゃべっているんですけど、実際、私の孫なんかがこの間言っていたのは、「学校に行けないの。でも、教わっていないんだけど、試験はあるの」といって悩んでいるわけです。「どうするの」とか言って、「うーん、だからママに教わっている」とか言って、ママやパパは大変なわけです。家庭で先生の代わりをやっていると、コロナの中で。だからそういう部分で難しい、記憶で知識を得る部分は、本当にスマホに任せていっていい時代が、将来的には来るんじゃないかと。
 ただ、私は理科系に進んだんですけど、それは小学校のとき、つるかめ算の謎を解いたときのうれしさから理科系に進んじゃった部分があって、そういうことは、あれもなぞなぞの解き方みたいな考える力、ああいうのは大切だと思うんですけど、ただ記憶をしていくというものについては少し違うのかなみたいな感じがしております。
【篠原座長】 ありがとうございます。これは私の意見なんですけど、子供たちは、スマートフォンで第一次情報を見ますよね。これは止めようがないと思うんです。だから、それはそれで認めて、その上で、自分の意見を作るための深堀りをどうさせるかが大切だと思います。そうした流れを我々として子供たちにどのように手助けをしていけばいいかを考えることが重要です。第一次情報をスマートフォンで入手して、例えば、ベラルーシの問題が今こうだと、それは何でこうなっているんだというものを深掘りするには新聞のほうがより活用しやすい。あるいは、テレビのニュースで映像で見るというのも良い。その辺の役割分担みたいなものが各メディアの特性に応じたものとして、主権者教育を進める流れの中で位置づけられるといいのではないかと思います。なかなか、そのとおりにはいかない部分もあると思います。そのときに家庭の役割というのも大きく影響してくるという感じが私はしています。
 PTAのあたりも学校と家庭をつなぐ唯一の組織ですから、PTAの役割、責任というのも、これはかなりあると思っています。どうぞ、小玉委員。
【小玉委員】 小玉です。
 今のリベラルアーツの関係で言いますと、今度、科学技術基本法が改正されて「科学技術・イノベーション基本法」となり、これまでの科学技術基本法の対象からは人文科学は除外されていましたが、改正された法律では、人文科学が含まれることになりました。そうすると、例えば、これまではスーパーサイエンスハイスクールのように、理科系の教科に対して援助するとか、あるいは、JST(科学技術振興機構)が小・中・高の教育を支援するときも理数系の科目でとなっていたのが、今後は、そうした支援の対象に文科系の教科も入るようになってくる可能性があります。そうした動きには、社会全体が文科系と理科系という区分で運営されてきたことに対する反省が反映されていて、ですから、主権者教育というのも、ともすれば社会科とか文科系中心であると考えられがちですけれども、むしろリベラルアーツとしての市民性を基礎とした文理融合型で主権者教育を考えることが求められているのではないかと思います。例えば、今のコロナ下でPCR検査の数の問題とか、あるいは、9年前の震災のときの原発の問題とかもそうですけど、政治の問題と理科系の問題というのは、切っても切り離されない関係であるということがますます増えてきているので、理科系と文科系の融合というところがすごく大きなテーマに今後はなってくるのかと思います。
 それから、もう一つ、座長がこの間、言われてきたことで、今日もちらちら出ていましたけれども、主権者教育を実際に具体化していくときには、ドイツなんかがやっている政治教育センターの日本版みたいなものを少し制度化していくという提言も考えていくことが必要なのかなと思います。大がかりな予算措置をして、新たに何か作るというと大がかりな話になりますけれども、既存の、例えば、カリキュラム開発という点では国立教育政策研究所とか、高大接続という点では大学入試センターなどの機関を改組というかリニューアルする中で、ドイツ等がやっている政治教育センターの日本版みたいなものを提案していくことで、この会議での議論を具体的な実行過程に乗せていくことが可能になってくるといいのかと思ったりしています。
 以上です。
【篠原座長】 ありがとうございます。
 後段の部分については、先ほど佃委員の中の御意見もあったんですけれども、教育現場の中立性の担保をどうするかという問題と全部絡んでくるので、最終報告のほうに、中間報告ではあまりそれに触れずに、最終報告に持っていきたいかと思っているんです。よろしいですか。これは議論を少し深めないといけないと思っています。簡単にドイツがこうだから、日本もこうだというわけにもいかないし、あるいは、ドイツも実際、僕は視察で見させていただいたんだけども、政治的中立性の担保まではやっていないんです。政治教育センターみたいなものと、あと、議会の超党派で委員会を作っていまして、副教材とか出版物みたいなものを超党派で偏っていないかどうかチェックをするというところで止まっているんです。教育現場で中立性が確保されているかどうかまでは取り上げてはいないんです。
 だから、非常にデリケートなところがあるんですけども、日本では現場での問題がよく取り上げられて、佃委員みたいに思い切って、自分の意見を教員の先生にしゃべらせて、それで、俺はこう思うけどどうだという部分で、思い切ってやったらどうだという御意見もあるし、いや、やっぱり教員は中立性を保って自分の意見は言うべきじゃないという意見もあるし、これはなかなかデリケートなところなので、最終報告までに皆さんの議論を重ねて仕上げていきたいと思っています。中間報告は先ほど申し上げましたように、これまで議論してきた学校教育、学校、それから、家庭、地域、そういう中で主権者教育をどのように進めていくか。それで、その際にメディアの問題をどう絡めていくかというところを中心に、中間報告をまとめていきたいと思っております。
【佃委員】 メディアリテラシーというと、すぐメディアを受け取る側のリテラシーのことばかりを議論しますよね。僕は一度、新聞の方と意見交換したことがあるんですが、読ませる側のリテラシー、これは読ませる人というのはプロなわけです。読む側はその文章をどう読み解くかというプロではない。プロではないって、そもそもリベラルアーツとして持つべきものなのかもしれませんが、読ませる側のプロはそういうリテラシーをきちんと持つべきだと。絶対誤解をさせてはいかん、偏ってはいかん、一面だけを言う、うそは言わないんだけど一面だけを言うわけですよね。だから僕はそういう意味で、ここにいつも不思議だと思っているのは、メディアリテラシーの育成といったら、読み方のリテラシーのことしか言っていないというのは、僕は本当におかしいと思うんです。読ませる側のリテラシーのほうが大事だろうと思います。
【篠原座長】 前に新聞協会の方にも来ていただいてヒアリングしたときに、新聞のほうも、もっとマインドを持ってやっていただかないと駄目だという話、注文をかなりしたつもりです。どこまで受け止めてくれているかという問題はあると思いますけれども。
 あと、神津委員、松川委員、そろそろ時間が来ているんですけど、御意見がもしあれば、どうぞ短めでお願いしたいと思います。
【神津委員】 よろしいですか。
【篠原座長】 神津委員、どうぞ。
【神津委員】 総務省に資料説明をいただいた部分で発言したいのですが、よろしいですか。
【篠原座長】 どうぞ。
【神津委員】 資料2-2「投票所に使用した施設」に、共通投票所の項目があります。ここでは全国で4か所あるいは7か所となっており、去年の参院選はもう少し増えているかと思いますが、非常に低い状況です。共通投票所というのは、非常に人が多く集まる場所に、複数の投票区の投票を可能とするものですので、これは投票率アップの決め手の1つだと思っています。これは私どもの連合の政策の中でも、推進すべきとしています。今日のメインのテーマとは違いますが、総務省にはぜひ検討いただきたいということを、補足的に申し述べておきたいと思います。
 以上です。
【篠原座長】 ありがとうございます。清田課長、どうですか。
【清田選挙部管理課長】 共通投票所につきましては、平成28年の法改正でできるようになったという経緯がございまして、その直後の参院選ということもありまして、7か所という状況でございました。
 課題としては、複数の投票所で投票できるということになりますので、二重投票の防止をどうするのかという点で、投票所間をオンラインでつないでチェックするシステムが事前に必要であるとか、そういった課題があるところです。そういう技術的な点で、各市町村で検討が必要だという状況もあると伺っております。
 直近の状況では、昨年の参議院選で数だけ把握しておりまして、45か所に増えております。参議院選ですと、いつあるか分かるということで、ある程度事前に検討できるといったところもあったのではないかと思いますが、総務省としては、法改正を経てできた仕組みでございますので、各団体で活用していただくよう、これからも助言をし、増やしていきたいと考えております。
【篠原座長】 ぜひそれは神津委員が言うように増やしていくということは大事だと思います。神津委員、何か今の説明にコメントありますか。
【神津委員】 デジタルの活用というのがポイントですから、ぜひお願いしたいと思います。
【篠原座長】 分かりました。
 今日のテーマとは必ずしも一致しないかもしれませんけど、投票のときに子供を連れていけると、公選法が改正されていますので、あれもどんどん、総務省も周知していただければと思います。大分周知が進んで前よりは子連れ投票は増えていると聞いていますけども、あれは僕らも相当汗かいて、公選法改正をお願いしたわけで、ぜひもっと活用するようにやっていただきたいと思います。
【清田選挙部管理課長】 地方団体に対する周知を引き続きさせていただく考えでございます。
【篠原座長】 子供が親に連れられて投票所に行くと、そういう流れができると、小さい頃から選挙ってこういうものなんだと、選挙によって世の中をこうするんだというのが、理屈なしに身に付いていって、それで投票率につながってくると思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。
 時間がそろそろですけども、ほかに何かどうしてもという御意見があれば、よろしいですか。
 では、事務局にまず、お返しします。
【石田学校教育官】 どうも御審議ありがとうございました。
 次回以降の日程等につきましては、改めて御連絡をさせていただきます。
 また、座長からも中間報告の話を頂戴してございます。次回の会議では座長と御相談の上、事務局としてドラフトを御用意していきたいと考えてございます。本日の御議論の中で、こういったことも追加でという御意見がございましたら事務局のほうまでお寄せいただけましたら幸いでございます。よろしくお願いいたします。
 事務局からは以上です。
【篠原座長】 今、御説明があったように、これまでの議論を踏まえまして、中間報告のドラフトを次回の会議で事務局と相談しながら、皆さんに提示をさせていただいて、2回ぐらいそれで議論をやりまして、それで中間報告を作りたいと思っております。
 中間報告の柱は、これまで言った3本の柱プラスアルファで盛り込みたいと思っていますので、今日の議論もどこまで反映させられるかというのがありますけれども、また改めてドラフトを見て御意見をいただければと思っております。さっき小玉先生なんかの話があったやつは、少し最終報告と切り分けながら進めたいと思っていますので、取りあえず、よろしく。まず、中間報告で目玉をどのようにするかと、僕らは頭の中ではこういう商売をずっとやってきたものですから、見出しになるようなやつをどこか作らないとメディアは取り上げないだろうと。これも取り上げてもらうことが周知につながると思っております。
 それでは、本日は忙しい中、ありがとうございました。これで会議を閉じさせていただきます。


―― 了 ――

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