主権者教育推進会議(第6回) 議事録

1.日時

令和元年6月24日(月曜日)

2.場所

文部科学省 5F3会議室(東館5階)

3.議事録


【篠原座長】 まだ小原委員が御到着ではありませんけれども、定刻となりましたので、ただいまから、第6回の主権者教育推進会議を開催いたします。本日も御多忙の中、お集まりいただき誠にありがとうございます。
 本日は、小玉委員、近藤委員、佃委員が御欠席となっており、9名中6名の委員の皆様に御出席いただいております。田村先生も大変お忙しい中、日程を作っていただいて、ありがとうございました。
【田村座長代理】 いえいえ、とんでもないです。
【篠原座長】 また、本会議につきましては、報道関係者より会場の撮影及び録音の申出があり、これを許可しておりますので、御承知おきください。
 まずは本日の議題に入る前に、事務局に異動があったようですので、御紹介をお願いいたします。
【大内主任学校教育官】 失礼いたします。御紹介させていただきます。
 教育課程課長に滝波が着任しております。
【滝波教育課程課長】 滝波です。どうぞよろしくお願いします。
【大内主任学校教育官】 以上でございます。

【篠原座長】 それでは、本日の配付資料について、事務局から説明をお願いします。
【大内主任学校教育官】 配付資料の確認をさせていただきます。議事次第にございますとおり、資料1から3を配付させていただいております。また、委員の皆様方の机上の方には、本日御発表いただきます神奈川県教育委員会さんが作成しております「シチズンシップ教育」指導用参考資料等の関係資料を御参考として配付させていただいております。過不足等ございましたら、事務局にお申し付けください。
【篠原座長】 それでは、議事に入らせていただきます。
 本日は2つの自治体からのヒアリングを行います。前回御欠席の委員もいらっしゃいますので、まずは事務局から、前回の主な意見などについて御報告をお願いします。
【大内主任学校教育官】 それでは、お手元に資料1を御用意ください。
 前回、経済同友会政治改革委員会及び日本新聞協会NIE委員会から御発表いただいたところでございます。それについての御意見を頂戴しておりますので、主な意見ということで御紹介させていただきます。
 まず初めに資料1の1ページ目、主権者意識の涵養の項のところでございますが、1枚おめくりいただきまして2ページ目になります。2ページ目の上から4つ目の中点でございますけれども、社会の出来事を自ら考え判断し、主体的に行動する主権者を育てることが大切である。社会の動きに子供の頃からどう関心を持たせ、自分が社会の形成にどう参画・寄与していくのか。こういう態度を養うのが、主権者教育の肝だと考える。また、こうした主権者教育の推進は、義務教育段階から行うべきというような御意見を頂戴したところでございます。
 同じくその次の中点でございますけれども、高校で急に主権者教育を実施しても、そう簡単には身に付かない。特に効力感を高めたり、議論をする能力を身に付けたりするには高校からでは遅過ぎるので、初等教育段階や就学前の教育から取り組んでいくべきではないかというような御意見を頂戴したところでございます。
 少し飛びまして、5ページ目でございます。メディアリテラシーの育成ということで、この1つ前、4ページのところに少し出ておりますけれども、基盤となる資質・能力の育成ということで、この中でメディアリテラシーも扱ってまいりましたが、前回のヒアリング、それからこれまでの主な意見を踏まえまして、項として新たにメディアリテラシーの育成の項を立てました。こちらの方に御意見を統合しております。
 主な意見といたしましては、5ページ目のメディアリテラシーの育成の項の5点目からでございます。新聞を読み比べる際に、万遍なく全紙を見るのではなくて、典型的な2つを比べてみることで、問題の本質に迫ることができるのではないかというような御意見。
 それから、その次でございますけれども、多くの授業時間を割かなくとも、朝の10分、15分を使って、社会で起きている事柄について子供たち同士で対話をする時間を作るといったことなど、社会に関する学びを深めることができるのではないかというような御意見でございます。
 2つほど飛びまして、その次でございますが、非常に膨大な情報の中から個人が何を選ぶのかが問題である。デジタル化されたメディアをプラスに使っていくことが大切であり、デジタル化の視点は、今後の主権者教育の中でも取り扱うべきと考えるという御意見。
 その次でございますけれども、膨大な量の情報が流れ込んでくる中で、いかに情報リテラシーを磨き、フェイクニュースのような情報に踊らされないようにしていくかが重要。
 最後の中点でございますが、日常の中で社会的な問題に気付き、課題を見出し、自分の意見を持っていくことが重要である。また、それを友達や家族と話をすることで違う意見も受け止めながら、更に自分の考えを磨いていくと。そうした作業を続けていくことが投票、一票の大切さにもつながっていくのではないかという御意見を頂戴しております。
 また、その次の6ページ目の1つ目の中点ですが、紙のニュース、デジタルのニュース双方のメリット・デメリットがあり、デジタルのニュースについても、紙のものと比べるなどして教育していくことが必要ではないか。テレビでは芸能もスポーツも政治もパラレルに出てくるので、自分で教育欄や文化面を選んで読むのとは異なるが、トータルでニュース媒体をどう使うかということを考える必要があるのではないかという御意見。
 その次の中点ですが、子供の頃から自分たちが社会を作っていくという当事者意識を持つことが重要と。そのために様々な社会の問題点が分かるようなニュースについて情報を収集し、多角的な視点から考えていくことは重要ではないかという御意見を頂戴しました。
 また、6ページの一番下の方の項で、家庭教育との連携の項がございます。この関係で、7ページ目、地域との連携の1つ前のところの中点でございますが、学校での取組だけでなく、新聞というメディアを媒介させることにより、家庭において、争点のある政治的な課題について、最も身近な親子間で話し合ったり、意見交換したりするなど、家庭におけるNIEにもっと力を入れていただきたいというような御意見を頂戴しております。
 また、7ページの地域との連携の項でございますが、こちらを1枚おめくりいただきまして、8ページの教員養成・教員研修の項の手前の後ろの方から3つ目の中点ですが、現在の有権者である大人たちはほとんどが主権者教育を受けていない世代であるが、その層に向けてどのように教育をしていくのかというような御意見。
 その次ですが、企業従業員への研修などを通じて主権者教育をしていくということも、経営者として取り組むべきではないかという御意見。
 その次の中点で、地域社会を構成しているのは、家庭、PTA等の団体、企業など様々あるが、例えば企業においても、企業の中だけで教育をするのではなく、地元の地域社会での活動に関わっていくことも大切であると。社会教育という観点から、地域での取組をもっと進めていただきたいというような御意見を頂戴いたしました。
 資料1につきましては、主な意見として、以上でございます。
【篠原座長】 ありがとうございます。
 それでは、学校教育における主権者教育に関する取組について、これからヒアリングを行います。
 本日は、品川区教育委員会事務局教育総合支援センターより、大関浩仁センター長、青木由布指導主事においでいただいております。また、神奈川県教育委員会高校教育課より、濱田啓太郎課長、越藤邦夫指導主事にお越しいただいております。
 では、まず初めに、品川区より御発表いただき、その後、神奈川県教育委員会から御発表いただいて、それを2つ終えたところで、まとめて質疑応答と意見交換を行いたいと思います。
 品川区においては、小・中学校および義務教育学校に「市民科」という特別な教科を設け、これからの社会を主体的に生きていくために必要な力を育成するという取組を行っておられますので、その取組の内容や成果と課題などについて、20分程度で御発表いただきたいと思います。
 それでは、大関さん、青木さん、御発表、よろしくお願いを申し上げます。
【大関品川区教育委員会事務局教育総合支援センター長】 品川区教育委員会事務局教育総合支援センター長の大関と申します。
 本日は、本区における主権者教育につきまして、20分のお時間を頂きましたので、区立学校の取組を簡潔に御説明したいと思います。
 まず、本区独自の教科「市民科」を先ほど座長より御紹介いただきましたが、平成18年度より、当時は構造改革特区としてですが、その後、教育課程特例申請いたしまして、小中一貫教育を進める中の柱の一つとして、市民科という独自の教科を品川区では義務教育段階である小学校・中学校、そして現在の義務教育学校で9年間、一貫して行ってきております。
 学習指導要領で言います特別の教科道徳、総合的な学習の時間、そして特別活動の時間を合わせるような形で、そして独自の視点から、品川区民として子供たちが自分の生き方についてしっかりと考えを持って、自分のこととして課題意識を持ち、品川区の自分の住んでいる地域の中で何が課題であるのか、自分は何ができるかということをしっかりと実践していくための9年間の学習として、市民科という独自の時間を設けております。学年によって差はございますが、およそ週に2コマから3コマの時間を設けて、区立学校の1年生から9年生まで、それぞれの学校で品川区立学校教育要領に基づいて学んでいるところでございます。
 本日は主権者教育を中心に御紹介させていただきますので、本区の区立学校の場合には、本日のお手元の資料でこの後御紹介させていただきますが、社会科だけではなくて、市民科と合わせた形で、どのような形で主権者教育というものを捉えているかを報告したいと思います。
 本区におきましては、まず主権者教育のねらいといたしまして、やはり各学校においては、児童・生徒が政治や選挙に関する理解をしっかりと深めていくこと。そして我が国や地域の課題というものを理解して、また課題について多面的・多角的に考えられる、自分なりの考えをしっかりと形成させたいというねらいを持っております。さらには、根拠を持って自分の論を説明し、そして友達の発表なども聞いて、場面によっては意見を交わし合う。さらには自分で実際に実践をしてみてどうなのか、常に自分の生き方を見直しながら、市民科によってしっかりとした品川区民としての生き抜く力を育てたいというねらいを持っております。
 本日はお手元の資料2-1のところに、左半分になりますが、社会科及び市民科学習における主権者教育につきまして、教科や、そして学年段階に応じて、特に主権者教育と関連深いであろうというものを羅列してございますので、ここをもう少し具体的な部分につきまして、指導主事の青木より御説明をした後、残りの時間で、実際にある学校で行われている主権者教育の例なども御紹介させていただければと思います。
 それでは、指導主事の青木に代わります。
【青木品川区教育委員会事務局教育総合支援センター指導主事】 品川区教育委員会事務局教育総合支援センター指導主事の青木と申します。よろしくお願いいたします。
 私の方からは、品川区の市民科の中でどのように系統的に主権者教育を行っているのかということで、一部単元を御紹介させていただきます。品川区の資料を1枚めくっていただきまして、資料2-2を御覧ください。左側のページになります。
 まず、1・2年生の単元で、自分の意見を持つこと、それから話し合うことの意味や大切さを学ぶ「みんなの考えを生かしてよりよいクラスに」という単元があります。国語科とも関連させながら、これは学習を進めていくんですけれども、ここでは一人一人の考えが同じではないこと。また違う考えが出され合うことで、よりよい考えへと高まっていくこと、そういったことについても学ぶ単元になっています。
 こちらの単元例の横に、小さく「話合い1」と書いてあるんですけれども、これが3・4年生になりますと「話合い2」となって、「学級会を開こう」という単元へとつながっていくことになります。右ページになります。こちらの「学級会を開こう」では、1・2年生のときよりもより高度な議題に関して話し合いや議論を進めていくことになっていきます。また、より効率的な話し合いの仕方の役割分担等も学びながら身に付けていきます。
 こういった話し合いを通して、学級生活あるいはその生活のルールをよりよいものに変えていく、そういった意識を高めることや、あと実際それができることで達成感を持たせる。そういったことも学びに中に入っております。
 これは話合い3まで、5・6・7年生まであるのですが、こちらの資料では5・6・7年生に関しては別の単元を載せさせていただきました。1枚めくっていただきまして、品川区では5・6・7年生、品川区では7年生と呼んでいますが、中学1年生になります。「学校における自治的活動~児童会活動~」という単元です。今までは、3・4年生までは、学級生活をよりよくしようというようにフィールドが学級にとどまっていたものを、高学年になったことで、学校生活へと視野を広げていくような単元の設定になっています。
 ほかの話合い1・2・3の単元で学んだスキルを活用して、ここではそこにプラスをして、学校生活をよりよくするための創意工夫であるとか、アイデアを提案していくことも学んでいきます。もちろんどんなにおもしろくて目標達成できそうなアイデアでも、例えば安全面で無理があったり、予算面で無理があれば却下されたりしていくのですが、そういったことも考え合わせながら、どの提案を選んでいったらいいのかなとか、もしかしたら条件を変えたらその提案は通っていくんではないか。これはそういったような思考力も必要となる単元になっています。
 そこから7ページに行きまして、これが8・9年生、中学2・3年生になりますが、「地方自治への施策提案」の単元を設定しておりまして、視野を地域へと広げていく、そういう流れになっております。実際に品川区でどのような施策が展開されているのか、その背景にある思いも知って、それについて話し合いをする流れになっています。その中では、よりよいまちづくりを実施するための自分たちの提言をまとめていこうといったシミュレーションも設定されています。
 こういったよりよく自分たちの生活をしていこうというねらいの単元のほかに、実際に地域の人との関わりや、地域の活動に参加をしていく。そういった単元や、あと模擬選挙なども入ってきますが、政治の仕組みについて知っていく。そういった学習とも関連をさせながら、総合的に主権者教育の方を進めていくといった形を品川区では取っております。
 市民科の単元については以上になりますが、ちょっとここで資料2-1に戻りまして、実際の学校で行われている実践事例について、2つほどここに載せさせていただいております。私の方からは、上の「学校における自治的活動~委員会活動」の実践事例について簡単にお話をさせていただきます。
 これは、品川区立山中小学校6年生で数年掛けて行っているものですが、単元名が新しく「学校をよりよくする活動を自分たちでつくろう!」ということで設定をしています。
 ねらいが、学校生活を成り立たせるために必要な仕事を責任をもって行うことの大切さを知ると同時に、学校をよりよくする活動を自分たちで考え、成果が上がるよう工夫して実行する力を育てるというものです。
 本来委員会活動というものはこういうものですが、ここの学校では、自分たちでよりよくしようとか、工夫をしよう、そういった主体性が弱いということで、こちらの委員会活動を6年生が毎年見直しを図って、自分たちで委員会の種類から設定をしていこう、そういう活動にしてもらいました。
 学習の流れの丸2番のところの当番活動、必要な活動を入れながら、学校をよりよくするための新しい活動、委員会について話し合い、決定するであるとか、丸3番の2つ目の黒ポチの、計画を実現できるように、担当の先生や関係する方々にプレゼンをしたりアドバイスをもらったりして、活動内容を決定するといったところから、児童の主体性がぐっと上がったと成果報告を受けております。
 こちらの紹介に関しては、以上になります。
【大関品川区教育委員会事務局教育総合支援センター長】 残されている時間の中で少し補足説明、それから模擬選挙のもう一歩進んだ取組の紹介をさせていただきたいと思います。
 説明を続けておりますが、1年生から9年生までと私どもは表現しておりますが、品川区立学校教育要領に基づきまして、小学校単体、あるいは中学校単体におきましても、それぞれ中学1年生であれば7年生、3年生であれば9年生というふうに区内では呼んでおります。
 まず本区の場合、小学校1年生の入学の段階で、単独の小学校に行くのか、それとも9年間の義務教育学校に行くのか、そこでまず学校選択をしていただくということが一旦ございます。その後、更に7年生に進む段階で、単独の中学校に行くのか、義務教育学校の後期課程に行くのかという2回の選択の機会がございます。なお、あくまでも学校選択は学区の中で、まず学区の児童・生徒が最優先で、枠に余裕があれば選べるということで、場合によっては抽選となる学校もあるのが実態でございます。
 そのような形で9年間一貫で進めていく際には、教育要領に基づいて各校が学習を進めておりますので、いわば本日御紹介いたしました主権者教育の基となる市民科は、カリキュラム・マネジメントのコアとして、各校、学校は違っても、学区をまたがって進級・進学をしたとしても、問題なく9年間一貫して学習を進められるように本区では取り組んでいるところでございます。
 それでは、少しスライドも使いながら、資料2-1でいきますと右下の模擬選挙、宮前小学校5・6年生の立正大学と連携した学習の例なのですが、各学校、模擬選挙を明るい選挙推進委員会などの協力を得て進めている学校がほとんどなのですが、大学と連携して更にもう一歩深めるという形を、ここ3年ほど前から着手をしたところです。
 私、3年前小学校の校長をしている際にその学校に立正大学に来ていただきまして、いろいろ試行錯誤する中で、今、年々深め出しているところなんですが、右側の資料に学習の流れで①から⑥までございますが、まず①の選挙について、基礎知識というものを学ぶ段階から、大学生に小学校へ来てもらいまして、大学生が君たちのまちについてどんな願いをもっているかというヒアリングを子供たちにしてくれます。これは最初の立正大学の西谷准教授が来ていただいている場面ですが、この後更に5年生・6年生と一緒に、どんなまちにしたいのかというものを大学生が子供たちにいろいろ投げ掛けて、子供たちも自分の意見を述べるというのをまず最初にやっております。
 お手元の資料でいくと資料2-3、実際に大学生の指導に使われているマニフェスト作成のための聞き取り調査メモを立正大学より頂戴したものを、そのまま今日は参考資料として、立正大学の許可を得て付けております。これは2月ですので昨年度になりますが、区立宮前小学校で行われた際のマニフェスト作成のための聞き取り調査のために、大学生がこのようなメモを基に子供たちからたくさんの意見を聞いて、その結果、その意見に基づく立候補者を、大学生がマニフェストをしっかりと子供たちに説明もしてくれまして、そして更に子供たちは大学生と意見交換をして、自分たちの意見を最も取り入れてくれている候補者はこの人なんだというものを実感を持って、その上で模擬選挙を体験するというところに特徴がございます。
 実際の投票箱ですとか用紙は本物を使って体験をするという模擬選挙は、多分いろいろな学校でやっておりますが、多分1回だけの取組であり、ただこうやってやるんだなという、まずは第一歩だと思います。本区の場合、まだ全部の学校ではありませんが、実際に自分たちの意見を吸い上げてもらって、さらに候補者とやり取りをするというものを小学校段階からやることによって、自分たちのまち品川区をよくしていくんだという当事者意識を育てたいというふうな取組を現在着手しているところでございます。
 これは区内の大学の協力を得たことで、明るい選挙推進委員会と大学と両方タイアップする形で実現ができ始めたところでございます。ここの体験をした子供たちが、この後更に中学生になったときは、自分たちの生徒会活動ですとか、更に自分の生き方としてどのような進路を選んでいくのかというところにつながっていくのが市民科のねらいでございますので、本区におきましては児童会と生徒会の各校の役員も全区で集まりまして、児童会・生徒会役員懇談会も毎年1回やっております。私たちの学校はこういうねらいで、こういう取組をやっていますということをお互いに報告し合って、昨年度の例ですが、児童・生徒だけではなくて都立高校の生徒会の方も呼んで、高校生と一緒に意見を交わす、そのようなところまで今スタートを切って、更に深めるための工夫をしているところでございます。
 20分が近付いてまいりましたので、一旦品川区の主権者教育の取組の報告はこれで終了させていただきます。ありがとうございます。
【篠原座長】 ありがとうございました。
 それでは、続いて神奈川県の教育委員会の御発表を頂きます。神奈川県の教育委員会では、管下の高等学校において、政治参加教育、司法参加教育、消費者教育、道徳教育の4つを柱とする「シチズンシップ教育」を実践しておられますので、その内容や成果と課題、これをまた20分程度で御発表いただきたいと思います。
 確かここは、最初モデル校を作ってやっていましたよね。今、全県立高校ということだと、流れはそうだと思いますけれども、それでは濱田課長、越藤指導主事、御発表よろしくお願いします。
【濱田神奈川県教育委員会高校教育課長】 それでは、よろしくお願いいたします。神奈川県教育委員会高校教育課課長の濱田と指導主事の越藤で参りました。どうぞよろしくお願いいたします。
 神奈川県の県立高等学校、中等教育学校も合わせてでございますので「等」と付けさせていただいておりますけれども、では、今現在、さっきお話しいただきましたように全校で「シチズンシップ教育」の取組というのを行っているところでございます。
 本日お手元にこのスライドのハンドアウトをお配りいただいているかと思います。生徒の実際の写真が入っている部分がございますので、今お手元にある資料には、この後映すもので若干写真がないものがございますけれども、基本的には同じものということで御覧いただければと思います。
 あと、机上配付させていただきました資料がございますので、こちらについて、今のところここで御説明はなかなかできないと思いますので、後ほどお時間のあるときにまた御覧いただければと思っております。
 さて、神奈川県では「シチズンシップ教育」ということでございますけれども、これはお手元にお配りしている机上配付の資料のものなんですけれども、表紙は実はこういう緑色の冊子で作っていたものでございます。こちらは平成22年度末に作成をいたしまして、平成23年度からこの指導用参考資料も踏まえまして、全ての県立高校で「シチズンシップ教育」に取り組むこととして、その取組をスタートいたしました。
 実は、神奈川県ではこの「シチズンシップ教育」を全校に取り入れるに当たりまして、平成19年から22年まで、「シチズンシップ」を研究する指定校を県独自に11校指定していまして、その指定校で取り組んだ成果等を踏まえて、この指導用参考資料を作成いたしまして、その後から全校での取組にという形で展開していったものということでございます。
 「シチズンシップ教育」の取組は、一枚にまとめたものがこちらなんですが、これは小さくて分かりづらいかもしれませんけれども、本県におきましては、これからの社会を担う自立した社会人を育成するということを目的としまして、積極的に社会参画するための能力と態度を育成する実践的な教育、こういう教育を「シチズンシップ教育」と位置付けておりまして、キャリア教育の一環として全校での取組を行っているところでございます。
 今、申し上げた目的の部分ですね。その部分、この取組で育成したい能力・態度というところ、この部分を今拡大してございますけれども、責任ある社会的な行動を取るような態度であるとか、地域社会に積極的に参加する姿勢であるとか、更には社会や経済の仕組みについて理解をし、諸課題の解決に主体的に取り組んでいく力、こういった力を養うということを目的としております。
 神奈川県におきましては、この「シチズンシップ教育」を①から④の、今前に映させていただいておりますけれども、この4つの柱という形で整理をしておりまして、政治参加教育、司法参加教育、消費者教育、道徳教育という4つになります。これに基づきまして、各学校ではそれぞれの生徒の実態等もございますので、そうした生徒の実態等を踏まえながら学校ごとに具体的な計画を立てて、教育課程に位置付けた形で実施をするということとしております。本日は主権者教育ということでございますので、この取組の中の主に政治参加教育の部分をこの後、説明させていただければと思います。
 政治参加教育の実践的な取組ということでございますけれども、全校で「模擬投票」と本県では呼んでいますけれども、模擬投票を位置付けまして、3年ごとに行われます参議院議員通常選挙を活用いたしまして、参議院議員通常選挙が行われる際には必ず全県立高校で取り組むということにしております。今回、今年も7月に参議院議員通常選挙が予定されているということでございますけれども、全校での模擬投票を実施します。また、今回から県立の特別支援学校の高等部においても、模擬投票を全校行うということにしております。そうした意味では、先進的に取り組んでいる部分かなとは思っております。
 模擬投票につきましては、平成22年、実は全校での「シチズンシップ教育」は平成23年からと申し上げたんですけれども、平成22年に行われました参議院議員通常選挙のときから全校での模擬投票の取組をスタートさせていまして、これまでに3回、今年を含めますと4回ということになりますが、実施をしているというところでございます。
 高校での「シチズンシップ教育」を先行する形で取組を進めてまいりましたけれども、こういう取組は高校の取組だけで完成するというものではございませんので、義務教育、小・中学校における取組も必要であるというところから、神奈川県では平成28年度から、小・中学校においても主権者として必要な政治的教養を育む教育の普及ということに努めてございます。こちらの資料も机上配付させていただいたものでございますけれども、小・中学校における政治的教養を育む教育、その指導資料ということで、県内の小・中学校に配布をしたものということでございます。子供たちの発達段階に合わせて、自ら考えて判断できる力を養うための様々な取組というのを位置付けて一例として載せております。
 それでは、その事例の一つとして、中学校3年生の社会科公民的分野の事例を簡単に紹介させていただきます。こちらの事例は、テーマとしまして「人口減少を食い止めるには?」というテーマを掲げたものでございます。神奈川県の清川村という県の西部にある村がございます。清川村は人口減少が進んでいる、いわゆる過疎化が進んでいる村になります。その清川村で育った生徒たちの会話の中で、村の人口は3,000人を切るのかというような会話があったそうでして、その会話を一つのきっかけとしまして、村の人口問題をどのように解決するべきか、その対策を考えるという学習を行ったということでございます。
 生徒たちは、村役場やあるいは地域の方々からのお話を聞くということをしまして、清川村の人口問題を自分たちの課題として捉え、課題の解決策を考えて、班ごとにまとめて発表をした後に、学級の中での意見交換を行うという学習活動を行いました。その他の事例につきましては、お手元の資料をまた御覧いただければと思います。
 また、特別支援学校の高等部での政治参加教育ということですが、先ほど今回の参議院議員通常選挙から特別支援学校の高等部全校で模擬投票を実施するというお話をまとめておりますが、2校で先行して実施していたというようなこともございまして、前回のところで行われた取組事例をまとめた実践事例集というのを作っておりまして、それを基に、今年の実施について各学校で計画をしていただいているというところです。具体的には、その障害に合わせて、選挙とはどのようなものか体験する活動を行っていくという事例を載せています。
 その際の事例を一つだけ紹介をさせていただきますけれども、こちらは架空の候補者による選挙公報を作成すると。これは知的障害教育部門の高等部1年生の授業での実際の事例ということですけれども、選挙管理委員会の協力を頂きまして、実践的な学習を行うということで実施をしたものでございます。こちらは知的障害教育部門の生徒用の選挙公報ということで、実際にこれを作ったということなんですね。そういうものを作って、それを基に学習をしていったということです。後ほどお手元の資料がございますので、そちらを御覧いただければと思います。
 また、高等学校におきましては、新しい学習指導要領が令和4年度から実施になるところで、公民に新科目として「公共」が必履修で設置をされているところですけれども、その新科目「公共」につなげていくような取組を進めるというところで、本県独自の指定校として、教育課程研究開発校「新科目『公共』に係る研究」という、ちょっと名前が長いんですけれども、そういう指定校を県内に6校指定をしております。
 目的はそこに書いておりますような目的で、学習指導要領改訂に係る新科目、学習評価、そういった教育課題について対応していく、そのための教育課程の研究開発ということで、6校に取り組んでもらっているところです。昨年、学習指導要領解説の方も示されましたので、そちらの「公共」のところに示されているような内容、その内容の取扱い、そうしたことに基づいて、実際に授業をどう展開していくのかといった指導計画や学習評価の在り方といったことを研究するということで、今現在取り組んでもらっております。
 そうした指定校の一校である神奈川県立瀬谷西高等学校の取組を簡潔に紹介させていただきます。平成28年からこの指定校の取組をスタートしておりまして、瀬谷西高校では学校を挙げて「シチズンシップ教育」の実践ということで取り組んでおります。
 この学校の研究テーマ、「キャリア・シチズンシップ教育」の理念を生かした新科目「公共」の研究開発ということで、18歳の段階で何ができるようになるかという観点からのカリキュラム・マネジメントというテーマを設定して、研究に取り組んでもらっています。
 具体的な取組方針ということでは4項目掲げておりまして、公民科の職員だけでやるということではなく、学校全体で生徒に身に付けさせたい資質・能力、そしてその育成のためのカリキュラムの検討というのを行っております。各教科ではなぜ学ぶのかを意識した授業改善に取り組んでおりまして、生徒にこの授業は何のために行い、そのような資質・能力を身に付けるのかということを意識付けることができるように取組を進めております。
 そうしたことを職員がしっかりと共通理解を持ちながら進めていくために、この学校の中では、中央教育審議会の答申で示されているものを使って、この「キャリア・シチズンシップ教育」とはどういうことなのかと。これを職員が共通理解を持てるように、各教科等での学びが一人一人のキャリア形成、よりよい社会作りにどのようにつながっていくのかを見据えながら、各教科等をなぜ学ぶのかということをしっかりと意識付けながらやっていきましょうという理解を持ちながら進めているところでございます。
 また、学ぶ意義というのを「真正の学び」というフレッド・ニューマンさんの言葉を引用して学校の中で説明をしておりまして、そうした学びは現実世界に存在する本物の社会的実践に可能な限り文脈や状況を近付けて学びをデザインすることだとニューマン氏が述べているということで、そうした学校での学習を現実世界の出来事を活用して学びを計画するということで組み立てながら進めているというところでございます。
 そのような「真正の学び」の例として、模擬投票も位置付けて行っております。瀬谷西高校では、平成29年にありました衆議院議員総選挙の際にも、現代社会を履修している生徒を対象に模擬投票を行っています。イベントで終わらないように、事前事後指導を含めて、学校が目指している真正の学びになるように取り組んだということでございます。
 そのために、この際に1年生の現代社会の中で、事前指導・事後指導をこういった形で計画を立てまして、まず初めに生徒自身が選挙における政策争点を設定しております。生徒が設定した政策争点を基に、架空の政党及び政策を立案する活動を行いました。その後模擬投票を経て、選挙結果を振り返るという活動を行っています。現実の選挙と模擬投票の結果の共通点や違い、なぜそのような結果となったのかなど、生徒自身が選挙結果と向き合うことによって、社会へ参画する意識を意識付けさせるといった取組となったということでございます。
 こちらのスライドは、その模擬投票の事前指導の際の様子になります。生徒が選挙公報を使って政策の分析を行ったり、架空の政党を作ってそのグループの代表が政策を発表したり、そうした取組をしております。そのような取組を通して、意欲的に現実社会の課題を追究する学習というのを行ったところでございます。
 今後の神奈川県の取組ということですが、今現在、実は「シチズンシップ教育」の指導用参考資料は平成23年から使っているものですが、大分時間がたっていろいろ状況が変わってきております。選挙権年齢あるいは成年年齢の引下げ等が行われているといったようなこともございますので、そうしたいろいろな背景を踏まえて、現在指導資料の改訂作業に取り組んでおります。今年度中に改訂を目指しております。
 そうした中で、例えばその事例として載せるようなものとして、高校の教員と税務署の職員の方とで連携した形での単元指導計画を作成して、教材開発をしていると。その事例を載せたいと考えております。
 また、「公共」の実施に向けて、先ほど御紹介しました指定校6校がございますけれども、そうした学校での取組の成果あるいは課題を全校に周知していく中で、効果的な取組事例なども周知を進めていきたいと考えております。
 なお、模擬投票等実施をしていく際に、やはり政治的な中立の確保といったようなことも課題になりますので、そうしたもののマニュアルの作成なども今後検討していきたいと思っています。なお、取り組んでいる指定校等の先進的な学校では、例えば市議会と連携をして請願を実際に作るとか、あるいはまちと連携をすることで、まちに対して施策としてこういうものはどうなのかというのを提案する、そうしたことなども取組を始めている学校がございますので、そうした学校の取組を支援し、それを他の学校に周知するという形で、本県の「シチズンシップ教育」の取組の推進を図っていきたいと考えているところでございます。
 以上でございます。ありがとうございました。
【篠原座長】 ありがとうございました。
 それでは、品川区、神奈川県のいずれの御発表に対してでも結構ですから、御質問、また御発表を受けての御意見など、御自由に御発言いただきたいと思います。
 いつもどおり、御発言の際には名札を机上に立てていただくようお願いします。また御発言の後には、名札を元に戻していただければ幸いです。
 時間があと45分ぐらいありますから、その枠の中で、どなたからでもどうぞ。それでは、小原委員。
【小原委員】 品川区の方に質問がありますが、義務教育学校でこういった教育をなされるんですけれども、実際投票に関わってくるのは18歳、高校3年生、あるいは大学1年生です。義務教育学校でのその教育が、いわゆる都立高校及び私立学校で行われる、似たような類いの教育にどのようにつながっていくかというところまでは考慮がなされているんですか。それとも、小・中完結型の枠の中でやるべきことを教えてのことですか。
【篠原座長】 はい、それでは、どうぞ。
【大関品川区教育委員会事務局教育総合支援センター長】 御質問、ありがとうございます。小・中9年間で学んだ本日御紹介したような教育が、その後の高等学校にどのように接続するかという部分でございますが、現段階において具体的な取組等は持っておらず、まだ今後の課題だと我々も認識しております。
 主権者教育だけでなく、一貫教育がその後高等学校にどう接続するのかという部分につきましては、これまで本区でも検討委員会などを立ち上げて検討も大分進めてきたのですが、どうしても中・高の流れですとか、あるいは高・大の接続ですとか、様々な路線が複雑にございまして、まだ現段階において、本区だけでこれだという道筋は具体的なものまでは到達できていないのが現実でございます。
【篠原座長】 ほかに。どうぞ、田村委員。
【田村座長代理】 続いて、品川区のやり方についての御質問なんですが、7年生と9年生があるという御説明がありましたが、実際生徒の動きは6年で動くんですね。
【青木品川区教育委員会事務局教育総合支援センター指導主事】 はい。
【田村座長代理】 そうすると、7年生というのはどういう意味なのかということと、それから今の9年生の後どうするのかということが当然続くわけですから、学校へ行くんでしょうから。しかもオーストラリアなどはもう現実に16歳から始めているわけですね。そうすると、もう即という感じですよね。だからその辺のことは議論されたんでしょうか。
【大関品川区教育委員会事務局教育総合支援センター長】 よろしいですか。単独の小学校であれば6年生で卒業しますので、その後の7年生からはまた別の中学校に進む、あるいは義務教育学校ですとそのまま9年間ストレートで上がっていく。前期課程から後期課程というふうに変わるだけの状態ですが、そもそも本区の場合、9年間を4・3・2の流れで考えておりまして、1年生から4年生までで一つのまとまり、そして5・6・7年生で一つのまとまりという考え方にして、教育課程も区の独自の教育要領をこれまで開発してきたという前提がございます。ですので、7年生で学校が変わる場合もあるし、変わらない場合があったとしても、基本的には教育要領に基づいて学んでまいりますので、それほど心配はしておりません。
 そして、9年間学んだ後の進路先でございますが、これはもう非常に多岐にわたっております。高等学校以外に各種学校へ進むお子さんも、数的には少ないかもしれませんが、現実にはいらっしゃいますし、それぞれ御自身の進路選択がある中で、やはり義務教育段階だからこそ、しっかり身に付けておきたい。その後高等学校に進まないケースもあるのだというのを前提で、まずは9年間の義務教育として、品川区民に求められる自分の考え方をしっかり身に付けさせようというものが本区の考え方でございます。
【田村座長代理】 そうなんですね。
【篠原座長】 よろしいですか。はい、ほかに、どうぞ。
【植草委員】 すみません。あと、私の方からも品川区にちょっとお聞きしたい点があります。
 まず1点は、今後小学校の方がカリキュラムが様々なものが入ってきて、結構タイトになるんじゃないか。英語、道徳の教科化、プログラミング。そういう中で、この位置付けというのは今後どう展開されるのか。これが1つです。
 もう一つ、先ほどやはり小原委員からあった、私も本当にそれを感じました。せっかくここまでやっていて、高校との接続というところがすごくあったらいいんだろうなという感じがします。ただ、最後のところで少しお話があったのが、都立高校の方から生徒会ですけれども、入り込んでいるという話があった。もしそういう事例がほかにもあればお聞かせ願いたいのと、あと、大学と小学校が連携しているマニフェスト作り、例えばそこに高校生が入り込む、大学生・高校生が一緒になって小学校の生徒から聞き出したものをマニフェストに作っていく。そうすると、高校の生徒たちにもこれは非常にマニフェスト作りというのは大きな勉強になるかなと思うんですけれども、そのあたりはいかがでしょうか。その2点です。
【篠原座長】 はい、どうぞ。
【大関品川区教育委員会事務局教育総合支援センター長】 まず1点目でございますが、カリキュラムの部分は、おっしゃるとおり非常にタイトだという部分は現実に課題としてございますので、本区におきましては土曜授業を設けておりまして、基本的には第1土曜日、第3土曜日を原則として、あとは地域のお祭り行事ですとかそういったものに応じて、学校によっては多少変更はしておりますけれども、土曜授業を設定することによって、国の学習指導要領の部分を踏まえつつも、総授業時数は国よりも多く設けてございます。
 以前よりそのような形で取り入れる中で、1年生から英語もやっておりますので、その中で進める中で、委員がおっしゃったように、多分200を超える何々教育というのが様々に求められてくるものを新たに上乗せしていくのでは、とても消化し切れずパンクしてしまいますので、今ある中でどのように有効的に実際役立つ内容を取り入れていけるのか。ある教科の単元の中にどう取り入れるかという部分は、常に工夫しているところでございます。
 2問目の御質問いただきました、やはりその後の高等学校への接続という部分ですが、先ほど申し上げましたように、高等学校の都立高校の生徒会の方に来ていただいたり、あるいは卒業生をお呼びして、これは中学校が多いんですが、子供たちと実際に意見を交わすなどというものは、各校、工夫はしているところでございます。
 せっかくおっしゃっていただいたのはとてもいいヒントを頂いたなと私は思っておりまして、区内の立正大学さんは附属の高校も、場所は隣の大田区の方になりますけれども、ありますので、例えばそういったところの協力を得たりとか、今後は新たな発展課題として捉えたいと思います。
【篠原座長】 ありがとうございます。
【田村座長代理】 もう一つ、すみません。
【篠原座長】 どちらが先ですか。松川委員。
【松川委員】 それぞれ先進的な取組の御説明、ありがとうございました。品川区と神奈川県、両方にお聞きしたいんですけれども、品川区の方の市民科、神奈川県の「シチズンシップ教育」、それぞれ平成18年からとか平成22年からというので、かなりもう10年以上やっていらっしゃるわけですが、一番お聞きしたいのは、その指導体制なんですね。市民科につきましては、小学校前期課程の部分は多分学級担任の先生が中心になっておやりになるんでしょうけれども、後期課程の中学校の部分というのも、やはり学級担任がおやりになるのか、それとも公民とか、いわゆる社会の先生が中心になっておやりになるのか、その実態。それから、先ほど何々教育というのがたくさんある中で、やはり将来的にこの主権者教育というものは、何か専門性があって専科的な先生がやるのがいいのか、それとも全ての先生がおやりになるということなのか、やはりそこは社会科系の知識をお持ちの方が中心になってやるのがいいとお考えなのか。それから、先ほどもいろいろあったメディア教育のお話もあるので、もっと違う教科の先生が束になって掛かるような指導体制がいいのかということをお聞きしたいです。
 神奈川県の方の「シチズンシップ教育」も、高校になると特に現代社会だとか公民の担当の先生が中心にやられるのか、それとも学校一体となって、他教科が専門の先生も束になってカリキュラムを検討した方がいいのか、その指導体制というものについて、この10年くらいの経験を踏まえてどのようにお考えなのか、伺いたいです。
【篠原座長】 それでは、まず品川区の方から。
【大関品川区教育委員会事務局教育総合支援センター長】 品川区の場合ですが、指導体制は1年生から6年生までの場合、それから7年生以降も学級担任が市民科は指導しております。その指導をしっかり行えるために、独自の教科書だけではなくて、指導書も作成して、更には市民科推進教師というものを対象の研修会を設けまして、各校代表者がそこでしっかりと市民科の教え方を学んで、各校に戻り更に伝達講習するということで、担任であれば誰でも品川は市民科を教えられるという体制を作って取り組んでおります。
 ただ、東京都が人事権を持っておりますので、平均6年で異動してしまうという部分が課題としてございます。
 また専門性が必要かという部分ですが、当然教員が知識は深いことは望ましいとは思いますが、市民科を指導するにおいては、多くのゲストティーチャーを活用させていただいております。地域の士業の方、例えば会計士や税理士さんなどを招いた形で、租税に関することを学ぶような場面もございますし、また先ほど申し上げました主権者教育の場面では、品川区明るい選挙推進協議会の地域の方々がやはり協力をしてくださっています。
 教員が全てを抱えるのは、やはり現実的には無理だと思いますので、そのためにゲストティーチャーを迎えるための、これは区の教育委員会としては学校を支援するということで、例えば講師の謝金ですとか、そういった部分で可能な限り学校のことは支援したいと考えているところでございます。
【篠原座長】 それでは、神奈川県、お願いします。
【濱田神奈川県教育委員会高校教育課長】 よろしくお願いいたします。先に、すみません、私、先ほど説明の中で、一部誤ったところがございますので、訂正させていただきます。市議会と連携して請願を作るというお話をしましたが、陳情を作っているということでございました。陳情でございましたので、訂正させていただきます。
 本県、平成19年から指定校を始め、「シチズンシップ」の研究をし、そこは平成21年までの3か年だったんですが、平成22年に指導資料を作って、平成23年から全校で取組を進めてまいりました。
 その中で、これは学校によって若干実情が違うことがありますので、全校必ず同じということではもちろんないんですけれども、多くの場合、特に模擬投票を実施する場合の事前事後指導、これはやはり公民科の授業の中でやることが非常に効果的であるというところがございますので、公民の教員が主に担っているというところはございます。
 ただ、これも公民科以外の教科の教員も、クラスの担任あるいは副担任としてそこに加わっていくことによって、そうではない、いわゆる公民を専門に学んできた者とは違う、市民感覚としてどうなのかという視点で子供たちに話ができるということがございますので、そうしたこともしております。
 あるいはほかに、先ほど品川区からもお話がありましたけれども、司法書士とかいろいろな方をお呼びするということがありますし、あるいは弁護士をお招きして、裁判員裁判の模擬裁判を高校でするというようなこともございます。そうしたようなケース、私が校長をしていた学校も実はその指定校の一校でございましたので、そうしたところではまさに分掌組織の中の業務に位置付けて、学校の中で計画をし、クラス担任等が中心になって生徒の指導に関わるという組織的な体制を構築した上で実施をしていると、そうしたことがございます。
【篠原座長】 ありがとうございます。あとは寺本委員、はい、どうぞ。
【寺本委員】 ありがとうございます。丁度伺いたいところは松川委員が聞いていただいたので1つ省きますが、この授業それぞれの学校、小・中・高校ですが、まず児童生徒がこれを始めたときと、だんだん学年が進んでいってこの主権者教育を自らが体験していって、どう変わっていったのか。学校内での様子もそうでしょうし、地域における様子もそうなんでしょうけれども、そういった部分で顕著なものがあったら教えていただきたいのと、それから、特にその神奈川県の最後の方にありました、教員と税務署が連携した単元指導計画、教材開発とあるんですが、これは具体的にどういった形のものをされていらっしゃるのか。2点教えてください。
【篠原座長】 それでは、これは神奈川県への質問ですね。
【越藤神奈川県教育委員会高校教育課指導主事】 それでは、神奈川県がお答えします。税務署との連携ということなんですけれども、具体的に「公共」の学習内容で、租税の役割等について主題を設定し探究するものがあります。その際に、主題は具体的には学校が、具体的には教員が設定していいんですけれども、その際に先生がこういう資料を用意してほしいということを税務署に投げ掛けて、最新のデータを御用意いただくということを実際の事例としてはやりました。
 具体的に言いますと、高齢社会に向けて、この先どのような税収及び社会保障費の負担が掛かってくるかという最新のデータを御用意いただいた上で生徒に配布し、生徒がこれからの日本の税の在り方について探究を進めるというふうな授業をやりました。それ以外にも、学校ごとにその主題を設定することが可能なので、もちろん高齢社会だけではなくて、例えば地方と国の税の違いについての資料であるとか、学校ごとに様々な資料を税務署と連携して用意していただき、授業を組み立てております。
【濱田神奈川県教育委員会高校教育課長】 例えば、今子供たちがグループの中で探究的にというようなお話をしましたけれども、税務署の職員の方に、税の専門家ですので、子供たちが探究している場面の話し合いのところでアドバイスを頂いたりとか、そういうことで生徒たちの学習を深めるといったようなところに参加をしていただいたりとか、そんなことをしております。
【篠原座長】 それでは、田村委員、どうぞ。
【田村座長代理】 実は幼稚園とか保育園、あるいはこども園から小学校へ行くときは、今、それまでの指導要録の中身を上級学校に連絡しますよね。その観点で言うと、7年生についてはどこへどういう形で伝えるのか。それがどういうふうにその後生きるのか、どう考えておられるのか、お聞きしたい。これが1点です。
 それから、神奈川のこの「真正の学び」というのを教えていただきたいんですけれども、オーセンティックとオーセンティシティというような言葉でよく使われ、多分世界遺産が石造りの文化から考えられたものが、そうじゃなくて、土作りも、木で作ったのも世界遺産にするというその概念、奈良会議が有名ですけれども、基本的にそこでがらっと変わったんですね。変わったことを印象付けるために、オーセンティシティという言葉をその世界では使い出したんですけれどもね。
 ここでそのニューマンという人の「真正な学び」ということを引用してオーセンティックという言葉を引用されたのは、今までは間違っていてこれが正しいんだという意味なのか、どういう意味でこの言葉を使われたのか、教えていただきたいと思いまして。
【篠原座長】 それでは、まず品川区の方から。
【大関品川区教育委員会事務局教育総合支援センター長】 はい。6年生から7年生への接続の工夫の部分でございますが、単独の小学校と中学校の場合、校舎が離れておりますので、普段やはり別な学校という形で子供たちも過ごしている中、例えば6年生になりますと、中学校体験に連携校に進む場面もございますし、また中学校の教員が小学校に出向いてきて学習をしてくれる場面もございます。
 また毎月のように小と中、連携校で一緒に合同研究をやりながら研究会も進めますし、また教員の品川区の、品川区教育会と呼んでおりますが、各教科の部会は、これはもう小・中学校教員全部一緒に、自分の所属する教科部会で一緒に授業研究もやっておりますので、小学校の教員も中学校を見に行く、中学校の教員も小学校を見に行くというのを毎月進めているのがまず素地でございます。その上で、更に品川教育の日を毎学期設けまして、中学校の教員が小学校に見に行くし、小学校の教員は中学校に進んだ7年生がどうなったのかを見に行く中で、一人一人の子供の要録を引き継ぐだけでは見えない部分の実態の子供の様子、あるいは家庭環境も含めた情報共有というものは特に力を入れて取り組んでいるところがございます。
【田村座長代理】 6年の子と7年の子は混ざって中学に来るわけですね。
【大関品川区教育委員会事務局教育総合支援センター長】 はい。7年生への進級という部分でお話ししました。
【田村座長代理】 中学校の受け取る側からすると、混ざっている生徒が来るという感じで。
【大関品川区教育委員会事務局教育総合支援センター長】 そうですね。6年からそのまま後期課程に進む義務教育学校の立場もあれば、中学校になりますと基本的に区内全域の学校選択の形を取っておりますので、様々な小学校単体から進んでくるという部分がございます。
【田村座長代理】 そうですか。
【篠原座長】 よろしいですか。それでは、神奈川県の方です。
【濱田神奈川県教育委員会高校教育課長】 失礼します。瀬谷西高校が掲げております「真正の学び」という言葉なんですけれども、これは現実社会の現実の課題を実際に捉えて、そういう題材を基にした実践的な学びを進めていこうという趣旨での真正の学びという使い方をこの学校ではしております。ニューマンが述べている言葉の中にそういうようなところがあるということなんだそうです。
 以上です。
【篠原座長】 よろしいですか。
【田村座長代理】 はい、よく分からないけど。
【篠原座長】 また、それは後で。
【田村座長代理】 それでは、このニューマンを勉強してみます。
【篠原座長】 小原委員、お待たせしました。
【小原委員】 神奈川県教育委員会にお伺いしたいんですけれども、ともかくこの「シチズンシップ教育」のその「シチズンシップ」というのは、どこかの国をモデルにしたんでしょうか。イギリスがよく知られているケースですけれども、そこをモデルにして、そこの言葉を使われたのでしょうか。
 というのは、「シチズンシップ」というのは非常に定義が難しいのです。いずれにしろ国籍を前提にしています。すると横浜市のように、もう既に4万人の外国籍の子供たちがいるといったことに対して、果たして「シチズンシップ・エデュケーション」と英語で使うことの妥当性という問題もあるのではないか。そのあたりの定義はどのようになされているのかということ。
 それと、「キャリア・シチズンシップ教育」という二つのことを一つにしていますけれども、これは全く内容が異なってくると思います。「シチズンシップ教育」というのはどちらかというと国籍を前提にしている教育に対して、キャリアというのは国籍関係なく仕事のことです。しかも、これ高等学校でやるということは、高卒でキャリアレディにするのか、それとも大学進学を含めたキャリア教育ということが含まれているのか。この辺は受ける側に誤解を生じさせるんではないかなという気がいたしますが、その辺をどのように捉えているのか。
 3点目が、これもまたちょっと曖昧な定義になっていますけれども、瀬谷西高校のケースですけれども、この「キャリア・シチズンシップ」、子供たちに必要な資質・能力ということが言われていますけれども、何にとって必要な資質であり能力なのか。資質というのは下手をすると生まれながら持っているというものを意味しますから、今さら資質を学校教育で取り上げるのはいかがかなという意見もある中にあって、それはどのレベルにとって必要な資質・能力なのか。このあたりの定義を少しお聞かせいただければと思います。
【篠原座長】 3点あったと思いますが、役割分担は大丈夫でしょうか。
【濱田神奈川県教育委員会高校教育課長】 全てにきちんとお答えできるかどうかがあれなんですけれども、「シチズンシップ教育」という言葉の由来につきましては、イギリスの「シチズンシップ教育」をもちろん参考にはしておりますけれども、本県ではあくまでこれからの社会を担う自立した社会人を育成するために必要な態度とか、そういうものを育成していくための教育という定義付けをして行っていますので、委員がおっしゃるようないわゆる国籍とか何かということにこだわるということは一切なく、まさに神奈川県で暮らしている全ての高校生たちが社会に出て活躍していくために、自立した形でその力を発揮できるようにという、そのためのものという位置付けをしております。
 それから、キャリア教育の中に位置付けているという部分では、今まさに申し上げましたような、社会を自立して生きていくというために必要な力の一つであるという位置付けで「シチズンシップ教育」を位置付けているものですから、キャリア教育の中で社会的・職業的な自立を目指してキャリア教育に学校全体で取り組んでいく。その中の一つがこの「シチズンシップ教育」であるという位置付けで考えております。
 資質・能力というところでは、学習指導要領の中で資質・能力という言葉の使い方をしておりますので、そこでは子供たちが将来身に付けるべき力というのを資質・能力という言葉の言い方で説明させていただいていますけれども、社会に出てから生き抜いていくために必要な力としての資質・能力という考え方で捉えております。
 以上です。
【植草委員】 すみません。また少し神奈川県の質問をさせていただきたいんですけれども、神奈川県の「シチズンシップ教育」、先ほど政治参加教育を主に説明されたんですけれども、司法参加教育、これは先ほど模擬裁判というところでお話があったと思うんですが、かなり裁判員制度、その辺が絡まるんじゃないかとは思うんですけれども、10年経過してということで、この裁判員になるということ自体も非常に難しい部分があるし、主権者教育の中のやはり一つの肝にもなるかなと思うんですけれども、その辺もう少し具体的なお話が聞けたら一つ。それが第1点。
 もう一点は「公共」の方です。すでに研究指定されているということですばらしいなと、本当に早いなという感じがします。もしお聞かせいただければと思うんですが、「公共」を見ていくと、やはり一番最初の「公共の扉」が非常に難しい、現場から考えると難解なんじゃないかなと思っています。
 特に、ただ神奈川県の方は「シチズンシップ」の中で道徳教育も交えてやっているんで、その辺も少し絡むのかなということで、具体的にはその「公共の扉」、どんな形で進めている実践例があるのか、もし幾つか紹介していただけたら。非常にこれは難しいなと個人的に思っていますので、お願いできればと思います。
 以上です。
【篠原座長】 はい。よろしくお願いします。
【濱田神奈川県教育委員会高校教育課長】 裁判員裁判の模擬裁判といったようなことですけれども、実際にその立場になると非常に難しい立場になるだろうなと。ただ確率から考えると、学校の中にいる生徒の中の誰かがもしかしたら将来卒業後、長く生きている中では誰かしらがその立場になる可能性はあるというのが実際のところかと思います。
 そのためにということではないんですけれども、裁判員裁判というのはそもそもどういうものなのかということを子供たちが理解しておくということはやはり必要なことだと思っていますので、それで、例えば先ほど事例を紹介させていただきましたけれども、弁護士の方に来ていただいて、裁判員裁判とはどういうものなのかというようなことを解説していただいて、実は弁護士会の方でシナリオを作っていただいていまして、実際の裁判例を基にした架空のものですけれども、その裁判のシナリオに基づいて子供たちが役割を分担しながら体験していく。そして最後はグループの中で裁判員になって、この事例は果たして有罪なのか、有罪ではないのかといったようなことについて探究する。
 要は論理的に物事を考えていく。そうしたことにつながるものだとも考えていますので、司法というものがどういうものなのかという理解と、論理的に物事を考えていく。そうした力を育成する取組として進めてもらっているところです。
 では、2つ目については越藤の方から。
【越藤神奈川県教育委員会高校教育課指導主事】 それでは、「公共」のAの具体的事例についてお答えします。
 具体的な事例は本当にたくさんあるんですけれども、幸いにして学習指導要領の解説に具体的な授業例がたくさん載っておりますので、それを実際にやっている学校が多くあります。
 1つ例を挙げさせていただくと、「囚人のジレンマ」というものが例としてあります。2人の囚人に対して、何かを認めればあなたの罪は軽くするよとしたときに、どのような対応をするかということを実際の生徒に体験していただいて、どうしてそういう判断をしたのか等を追求する授業をやられている先生がございます。
 ほかにも、トロッコが走っていて、そのままだと5人の方が亡くなってしまう可能性が高い。けれども、スイッチを切り替えると2人で被害が済む。このときにあなたはスイッチを切り替えるべきでしょうかであるとか、いわゆる思考実験という形で多くの学校で実践例をやっていただいており、実際に生徒の反応も非常によくて、もう本当に深く考えて、いろいろな物事を考える力が付いたと生徒自身もおっしゃっております。
 以上です。
【小原委員】 すみません。今のに付け加えて、思考実験があの中ですごく多いと思われます。その後とのつながりはどうなるのか。思考実験は確かに今お話があったように、生徒はすごく乗ると思います。しかし、その後の部分への橋渡しが難しいのではないでしょうか。
【越藤神奈川県教育委員会高校教育課指導主事】 ありがとうございます。実際に思考実験というのは、現実社会の事例として結び付けるというような活動をされている先進的な学校もございます。
 例えば「囚人のジレンマ」とは多少違うんですけれども、公共の福祉を学習するときに、ここを開発するときにこういうマイナス面とこういうプラス面がある。そのときにあなたならばどういう判断をされますかといった実践事例を、具体的な社会的な事象を活用して実践されている先生もいらっしゃる。それは、その前の思考実験でトレーニングをしたからこそ、実際の事例になったときに生徒が深く考えることができるようになっていると学校としては考えております。
 以上です。
【篠原座長】 はい、ありがとうございます。
【篠原座長】 それでは、私から幾つか。今日はお話、どうもありがとうございました。大変すばらしい取組を両自治体ともやっていただいて、これがどんどん子供たちの今後に生きてくるといいなという感じを持ちました。
 神奈川の場合、特に県としてのくくりがあるので、小・中・高の連携というのはある面では品川区よりやりやすいんだろうと思うんですね。品川区は、やはりそこでテンポラリーというか、ちょっとお願いをしたりして高校から来てもらったり、そういうやはり工夫というかエネルギーが要るでしょうけれども、神奈川の場合、さっきの話を聞いてもちゃんと流れが作れると。特に小学校の段階と中学の段階と高校の段階で、それぞれ主権者教育のウエートの置き方をそれぞれ変えていっているというのは大変すばらしい。その流れがきちんとつながっていくということの意味合いというのは、大変大きいと思うんです。
 是非そういう形で今後も継続してやっていただきたいと思うんですけれども、1つ質問、両方の自治体にお聞きしたいんですけれども、これまでそれぞれの取組というのは、大分前からやられていますよね。その効果みたいなものをファクトとして実証できるようなデータとか何かありますか。それが1点。
 2つ目は、学校だけでは主権者教育というのはなかなかカバーできないと思うんです。やはりもう一つ、家庭、地域の役割、特に家庭の役割というのは僕は非常に大きいと思っているんです。そういう家庭との連携というのは、何か施策としてやられているかどうか。これが2点目ですね。
 3点目は、この主権者教育は、最後は政治の話、選挙の話に行っちゃうんですけれども、その場合に、やはり教育現場での政治的中立性の担保の問題というのがあります。文部科学省からも通達が行っていると思いますけれども、この辺をどのように担保されているか。あるいはこれまでにこういうクレームがあった、こういう異議申し立てがあったとか、そういう例がありましたら教えていただきたい。
 以上でございます。
 まず、品川区の方から。
【大関品川区教育委員会事務局教育総合支援センター長】 3点御質問を頂きました。
 まず1点目の効果の測定が具体的に何かという部分でございますが、主権者教育自体において、このように変容したという形は、正直申し上げて今の段階ではまだ持ち合わせてございません。ただ一つ言えるのは、例えば先ほど御紹介したような、実際に子供たちが自分のまちのことについて意見を交わして、大学生がマニフェストを出してくれて選挙をしたんだということを家庭で話題にする。家族と食事の時間のときに、今日学校でこういうことをやった、先週こういうことをやったらこんな候補者が出てくれたよという部分を子供たちが話すことが、きっと大人への刺激にもなっているのではないかと思っているんですが、その部分までのアンケート調査などはまだできておりません。
【篠原座長】 本当にそういう話をみんなやっていればいいと思うんですけれどもね。
【大関品川区教育委員会事務局教育総合支援センター長】 はい、そうですね。まだ取組を始める今後の課題と考えております。
 また、家庭との連携の2点目にございますが、様々な形で家庭にやはり投げ掛けるために、教育委員会としては家庭教育ハンドブックを各家庭に配布いたしまして、これは様々な部分で、親御さんには子供に例えばこんなことを聞いてください、学校の生活、あるいは普段の友達との過ごし方を含めて、親御さんにはこういった会話を子供に投げ掛けてくださいというお願いを呼び掛けるようなハンドブックを全家庭に配布しております。
 また、3点目の中立性ですが、やはり区内でも私立の中学・高校では、実際に品川区議会の協力を得て請願のような形を、模擬請願というのですか、やられた例も耳にしてございます。またある会派からは、品川の区立学校で中学生にやったらどうだという御提案を頂いたこともございますが、やはり教員側の立場として、教育公務員として中立にしっかりやっていくという部分においてまだまだ不安が多いというのが、公立学校段階の課題というふうに認識しております。
【篠原座長】 ありがとうございました。
 それでは、神奈川県。
【濱田神奈川県教育委員会高校教育課長】 効果ということですが、非常にこれは難しいなと思っています。例えば平成28年に行われました参議院議員通常選挙では、神奈川県の18歳年齢の投票率は全国で2位だったというのはあるんですが、果たしてそれがこの取組の結果として表れたものなのか、県立高校生が全てではございませんので、そういった意味での、これをしたことによって数値的に何か明確にというのが、今まだしっかりとしたものを持ち合わせていないというところがあるかと思います。
【篠原座長】 19歳になって、例えば2017年の衆議院選挙のときというのは、全部じゃないですけれども、彼らにしたら19歳になった。18歳で投票した人。そのときの投票率はどうですか。
【濱田神奈川県教育委員会高校教育課長】 そのときは、実はその前年の平成28年より数値的には下がっています。
【篠原座長】 いや、どこも下がっているんですけれども、どれぐらい下がっていますか。
【越藤神奈川県教育委員会高校教育課指導主事】 結構下がっていますね。
【濱田神奈川県教育委員会高校教育課長】 そうです。はい。
【篠原座長】 全国的には51%から33%に落ちているんですよ。18年から19年に。だから、ずっとおっしゃっていたような教育がしっかりやられれば、19歳で落ちないはずなんですよ。それがやはり相当落ちているんですね。だから神奈川の場合、どうなのかなっていうのをお聞きしたい。
【濱田神奈川県教育委員会高校教育課長】 やはり数値的には、10ポイント近く落ちていると思いますけれども、他県と比べて落ち方が小さいのかどうか、そこまでは分析していないので、すみません、分かりませんけれども。
【篠原座長】 はい、分かりました。
【濱田神奈川県教育委員会高校教育課長】 あと、家庭等との連携については、例えば模擬投票をしますよというようなことについては、もちろん御家庭にも周知をさせていただいておりますので、御家庭でそれを踏まえてお話しいただけていればありがたいなというところであります。
 あと、政治的な中立性につきましては、今現在のこの指導用参考資料の中にも、例えば模擬投票を実施する際の実施に係るQ&Aというのを定めていまして、学校は必ずこの範囲の中で実施するということにしております。そうしたことの中で、今まで特にクレーム等を受けたことはございません。
 また、今年度中にマニュアルをまた新たに作っていくことも今検討しているところでございますので、更にその取組をしっかりとしていきたいと考えています。
 以上でございます。
【篠原座長】 ありがとうございます。教育現場で何か萎縮みたいな雰囲気はありますか。また何か批判されたらかなわないなとかいう教員の方々の間の空気というのは、何かそういうのはありますか。余りありませんか。
【越藤神奈川県教育委員会高校教育課指導主事】 空気は何とも言えないですけれども。
【濱田神奈川県教育委員会高校教育課長】 余りそれが何か明確なものがあるという感じではないと思いますけれども。
【篠原座長】 そうですか。品川区はどうですか。
【大関品川区教育委員会事務局教育総合支援センター長】 まだそこまで感じるよりも、まず学校の管理職側が様々な考えを持っている教員を踏まえて学校経営するときに、根拠となる部分をしっかりと持って、基準を持った上で取り組まないと不安なのかなと考えております。
【篠原座長】 だんだん時間も迫ってきましたけれども、あと、どうしてもという方がいらっしゃれば。よろしいですか。大丈夫ですか。
 それでは、丁度時間も来ましたので、本日予定していた議題はここまでとさせていただきます。
 今日は本当にありがとうございました。両関係者の方、わざわざおいでいただいて、大変すばらしいお話を頂きました。本当に参考になりました。ありがとうございました。
 最後に、次回の予定などについて、事務局から御説明をお願いいたします。
【大内主任学校教育官】 次回、第7回になりますけれども、日程につきましては調整の上、改めて御連絡させていただきたいと思います。また、お気付きのことなどございましたら、事務局の方にメール等によりまして御意見等お寄せいただければと思います。
 以上でございます。
【篠原座長】 はい。それでは、これで本日は閉じさせていただきます。
 どうもありがとうございました。

── 了 ──
 

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