主権者教育推進会議(第4回) 議事録

1.日時

平成31年2月25日(月曜日)

2.場所

旧文部省庁舎2階 文化庁特別会議室

3.議事録

【篠原座長】 定刻前ですけれども、藤原事務次官も公務がおありのようなので、早めですけれども始めさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
 ただいまから、第4回主権者教育推進会議を開催いたします。本日も御多忙の中、お集まりいただき誠にありがとうございます。
 本日は小玉委員、近藤委員、佃委員、松川委員が御欠席となっており、5名の委員の皆さんに御出席をいただいております。
 また、本会議につきましては、報道関係者の会場の撮影及び録音の申し出があり、これを許可しておりますので、御承知おきください。
 それでは、本日の配付資料について、事務局から確認をお願いします。
【大内学校教育官】 おはようございます。本日の配付資料でございますけれども、議事次第にございますとおり資料1から資料4を配付させていただいております。過不足等ございましたら、事務局にお申し付けください。
【篠原座長】 それでは、議事に入ります。
 まずは本会議の検討事項について資料1のとおり追加いただきましたので、御報告します。
 これまでの皆様方の御議論を踏まえると、子供たちの主権者意識を涵養するためには、学校内における教育とともに、家庭教育や地域との連携が重要であるとの御意見を多くいただきました。このため、家庭や地域における取組に関して、検討事項を増やしていただくことにしました。
 また、検討内容が広がりましたので、初等中等教育局だけでなく、総合教育政策局にも事務局に加わっていただき、二つの局にまたがる内容を議論いたしますので、事務次官の会議として位置付けることになりました。 これまでは、どういう位置づけでしたか。
【大内学校教育官】 初等中等教育局長の会議です。
【篠原座長】 このことについて、事務局より説明をお願いします。
【大内学校教育官】 失礼いたします。それでは、お手元の資料1を御覧ください。今ほど座長の方から御説明ありましたとおり、これまでの御意見を踏まえまして、この本会議の2、検討事項といたしまして(3)を追加をいたしました。具体的には、「家庭や地域における取組の支援の在り方について」ということで、本検討事項につきましては総合教育政策局に関わる事項でございますので、御検討いただく内容が広がり、二つの局にまたがる内容を議論するということから、事務次官の会議として位置付けをしたということでございます。
 資料1につきましては以上でございます。
【篠原座長】 それでは、公務多忙の中、藤原事務次官に御出席いただいていますので、一言、御挨拶を頂きます。
【藤原事務次官】 おはようございます。事務次官の藤原でございます。
 この主権者教育推進会議は、昨年から既に3回開催されてきたということでございますが、今、座長からもお話しありましたとおり、検討の幅が広がり、従来、初等中等教育局長裁定のこの検討会だったんですが、さらに家庭・地域における取組についても、より幅広く議論していくということでございます。
 特にもともと主権者教育、非常に重要な課題でございますが、昨今は憲法改正の議論もいよいよ高まってきているという中で、いわゆる主権者教育の在り方が問われているということでございますので、こういった形で、学校教育だけではなくて、地域、あるいは家庭における取組の在り方を御議論いただくのは非常に時宜にかなったものかなということでございますので、今回から初中局だけではなくて、総合教育政策局も含めて対応させていただくということで、従来の初中局長裁定を事務次官裁定に格上げしたということでございます。
 引き続き、先生方の議論をよろしくお願いできればと思いまして、簡単ではございますが、私からの御挨拶といたします。どうぞよろしくお願いいたします。
【篠原座長】 ありがとうございます。
 それでは、本日は新しく検討事項に加えた家庭や地域における主権者教育の取組について、事務局より御説明いただいた後、意見交換をしていただく予定です。また、その後、昨年12月に行った海外調査についての報告も行いたいと思います。
 まずは事務局から、前回の主な意見について報告をお願いいたします。
【大内学校教育官】 それでは、お手元の資料2を御覧ください。前回、第3回に頂いた御意見のうち主なものということで御紹介をさせていただきます。
 まず初めに、墨付きの括弧で示されておりますけれども、「主権者意識の涵養」の点からということでございまして、こちらにつきましては、1枚、おめくりをいただきました2ページ目になります。2ページ目の上から三つ目の中点でございますけれども、社会を変えていくのは若い世代の生徒自身であるという、OECD 2030におけるAgencyについて、前回、御説明をした上で御意見頂戴したのですが、OECD 2030におけるAgencyの議論と、学習指導要領にある「主体」という概念は結び付けて考える必要があるのではないかと。そのようにすることで、単なる客体ではない主体を育てるというところが新しい学習指導要領のポイントであり、主権者教育が位置付いていくことが明確になると思うというような御意見を頂戴しております。
 また、その次のところでございますけれども、「学習内容や指導方法等」の柱でございますが、同じく2ページ目の一番下でございます。小・中・高の学校種を超えた連携が重要になると思うと。公開授業を御覧になったということでの御意見でございましたけれども、その研究協議の際に、模擬投票をやっているとの例を御紹介頂きましたが、その際に小学校でどこまでやるんだ、中学校ではどこまで、高校でどういったことまでやっていくのかというようなことを、小・中・高を通じてお互い共有するなどしていく必要があるのではないかとの御意見でございます。
 このため、例えばということで、小・中・高等学校まとめた研究指定でありますとか、あるいは学校外のコーディネーター、こういったものの活用が必要ではないかというような御意見を頂戴しております。
 またその次でございますけれども、3ページ目の一番上の中点になります。高校よりも前の小・中学校段階で鍛えていくことが重要である、大事ではないかというような御意見でございます。小学校の先生にもっとアピールする必要があると思うということで、新しい、若い先生方に取り組んでいただけるような資料集であるとか、実践事例のようなものを具体的に示してはどうかというような御意見も頂戴しております。
 同じく3ページ目の下の方になります。「基盤となる資質・能力の育成」の柱でございますけれども、1枚おめくりいただきまして4ページ目の中段の方になります。墨付き括弧で「外部の専門家や関係機関等との連携」がございますが、そこから二つ遡っていただいた中点でございますけれども、大人、子供を問わずネットで情報を収集しネットで発信するということが多くなってきているため、もう少しネットを意識した情報の取り扱い方について打ち出してはどうかというような御意見を頂戴したところでございます。
 前回の主な意見につきましては以上でございます。
【篠原座長】 ありがとうございました。
 では、次に、家庭や地域における主権者教育の取組について、総合教育政策局から御説明をお願いいたします。
【中野地域学習推進課長】 お手元、資料3を御覧いただければと思います。今回、家庭や地域についてもしっかり取り組んでいただく必要があるだろうということで、御議論のスタートといたしまして、参考の資料を御用意しております。
 まず、おめくりいただきまして、1枚目のスライドですけれども、「家庭や地域における主権者教育の文部科学省の取組」と書いている部分でございます。こちらは、主権者教育の推進に関する検討チーム、こちら、27年の公職選挙法改正を踏まえまして、当時、義家文部科学副大臣の下に省内に置いたチームでございますが、こちらが28年3月に中間まとめを取りまとめております。その中で、「学校、家庭、地域の連携・協働による子供たちの社会参画の機会の充実」といたしまして、1 地域住民参加型の多様な活動の実施や地域の多様な人材を構成員としたネットワークの構築ですとか、2 といたしまして、これ、主に家庭ですけれども、「子供の生活習慣づくりの推進」などが言われているところでございます。
 具体的には、四角で囲んでおりますが、1 の方では、例えば身近な社会の課題などを知り、地域の構成員の一人としての意識を育むために、学校だけでなくということで、子供が地域行事などについて単なる参加者ではなく主権者の一人として参画し、主体的に関わる機会などを意図的に創出していくことが必要であるということ。それから、2 の生活習慣づくりにおきましても、基本的な生活習慣や社会的なマナーを習得し自立心を養うことができるよう、必要な家庭教育環境の整備を進めるということで、また、子供たちが構成員としてお手伝いなどの役割を担い、家族の一員として主体的に家庭生活に参画する取組を進めるということが言われているということでございます。
 これも踏まえまして、「現在の文部科学省の取組」でございますが、関係の予算の資料も付けております。一つには、「地域学校協働活動の推進」ということで、地域の様々な関係者の方に参画をいただいて、地域学校協働本部を整備し、それをコーディネートする推進員を配置することで、地域と学校が連携・協働し、地域全体で子供たちの成長を支え、地域を創出する多様な活動を推進しているということが1点でございます。
 また、家庭教育の関係では、3ページに資料も載せておりますけれども、これも家庭教育支援チームということで、地域の方々に参画いただいてチームを構成し、家庭教育に関する学習講座の提供や相談対応などを行っているということでございます。
 2ページ、3ページ目がその関連の資料でございます。
 4ページに行きまして、4ページ以下、家庭・地域での取組の事例を何点か紹介をさせていただいております。4ページが狛江市の事例でございますが、こちらは行政主導で、「狛江市総合的な主権者教育計画」というものを30年3月に策定をされているということでございますが、その中で、例えば表の中で星の3というところですけれども、「親子で選挙に来てもらう啓発」ですとか、下ほどの星の1のところですけれども、「親子参加の選挙まなび講座」といったような形で、親子での取組ということも推進しているということでございます。
 それから、おめくりいただきまして5ページをお開きください。こちらも家庭教育の事例でございますが、こちらは秋田県の事例でございますが、家庭教育支援ガイドブックというのを県として作成されています。これは主権者教育に限ったものではないのですけれども、「家族を笑顔にする10のヒント」ということで、例えば左側の真ん中ほど、「そこぢから」の「ぢ」ですけれども、「小さな役割から始めよう!」ということで、家族みんなが一人一役という、子供が家庭で役割を持つというようなことを推進していると。それから、その斜め下のところですけれども、「わが家で話し合おう!プラス1」ということで、子供も含めて家族のルールというか、大切にしたいことをみんなで話し合っていきましょうというようなことを推進しているところでございます。
 それから、6ページ目、事例の三つ目ですけれども、埼玉県三郷市の保護者を対象とした取組でございます。これは乳幼児を持つ保護者を対象に、「親の学習」講座として、乳幼児からしつけやマナー、生活習慣などを意識づけさせるなど、保護者の学習機会を提供しているということで、生活習慣といったことでございます。取組として、下の方の写真ですけれども、小学校の一斉学校公開日を活用しまして学習講座を実施するということで、「社会のマナーやルールは家庭から」といったようなことを話し合っていただくというような取組でございます。
 7ページを御覧ください。済みません、2つ事例を載せておりますけれども、子供同伴の投票を推進する中で、子供に関心を持っていただこうということでございまして、左側は須坂市選挙管理委員会の事例、右側は小諸市の事例でございます。
 例えば小諸市ですと、「家族みんなで投票に行こう」キャンペーンということで、保育園、幼稚園、小・中学校で、事前にクイズ応募用チラシを配布いたしまして、投票所に専用の応募箱を置いて、お父さん、お母さんと一緒に来た子供たちに入れていただくというようなことを取り組んでいるということでございます。
 それから、8ページは、PTAが中心となった取組として2例、出ております。「家庭教育宣言」等ということですけれども、左側の福岡県PTA連合会につきましては、連合会として「家庭教育宣言」ということを実施しているということでございます。失礼しました。福岡県の方は、各家庭において親子で相談して「家庭教育宣言」ということで、努力目標を作っていきましょう、子供たちにも一緒に考えてもらいましょうという教材のようなものでございまして、右側の戸田市の方は、連合会としての「家庭教育宣言」ということで、ルールを守る心を育む等々の宣言を採択しているということでございます。失礼しました。
 9ページでございますが、8番目の事例といたしまして、高等学校における地域学校協働活動の一環として、これは可児市ですけれども、市議会にも参画いただいて、地域課題懇談会等を実施しているという事例でございます。主権者教育の一環として、市の職員の方ですとか、市議会議委員の方、または商工会議所等をつなぐNPOの協力も得て、高校の生徒が市議会議委員と討議をしたり、議会で話をしたりするという取組を推進されているということでございまして、具体的に大人と子供で話し合う、議員さんも含めて話し合う地域課題懇談会を実施しているというようなことでございます。
 以上が事例でございまして、10ページ目は、先ほどの資料2の抜粋のようなものでございますが、これまでの本推進会議において御意見頂きました中で、特に家庭や地域における主権者教育ということでの御意見を抜粋しているものでございます。一つ目に社会の動きにどう関心を持たせるか、家庭とも連携して取り組んでいくことが重要であるということ、それから学校では教材の配布をしていただいているわけですけれども、そういったことを家庭は意外と知らない、家庭において話題にしてもらい、学校の取組を後押ししてもらうためにも、子供が受けている授業を保護者に知ってもらう必要があるといった御意見がございました。また、保護者と一緒に選挙に行くというようなことで、子供の将来的な投票行動につながるということ。
 それから、四つ目は、親の世代も既にネット世代になっているということで、親の世代、40代ぐらいまでも含めて変わっていく必要があるといった御意見でございます。五つ目は、海外では家庭での政治の話を当たり前のようにすると聞くので、親の世代も含めて理解していく必要があるいうこと。最後に、家庭教育は非常に大事であって、家庭教育を学校教育とどのように連動させながら主権者教育を進めていくかを考える必要があるといった御意見を頂いているところでございます。
 資料の説明は以上でございます。
【篠原座長】 ありがとうございます。
 今、いろいろな事例の紹介もありましたが、皆様方からの御意見ございましたら出していただきたいと思います。
 人数が少ないですので、別に名札を立てなくて結構でございます。どうぞ随時、御意見をお述べいただきたいと思います。よろしくお願いします。
【植草委員】 御説明ありがとうございます。千葉県の実籾高校校長の植草と申します。
 今、挙げていただきました資料3の第1番目の地域学校協働活動推進事業について、ちょっと気になった点だけお話しさせていただければと思います。
 こういう事業、以前からやられているというのはすごく承知しているんですけれども、ここで見ていただくと分かるように、小・中というくくりなんです。ここに高校が入ってくるというのが余りない。実は本校の方が、近隣の小・中・高と6校PTAというのがありまして、これはもともと近隣の中学校が主体になっているんですけれども、小学校3校、中学校1校、高校が本校と近くの習志野高校というところ、全部で6校のPTAが学期に1回集まる。教員とそれぞれPの代表の方が集まる。これが意外にやはり高校現場から小学校から見えてくる、または小学校の方から高校が見えてくるというので、有益なんじゃないかなという感じがしています。
 ですから、今回の主権者教育だけじゃないと思うんですけれども、そういう形で、どうしても義務制の小・中の枠組みということで文科省の施策とか、出てくることが多いんですけれども、主権者教育なんかは、何回もお話ししているように、やはり高をそこの中に絡めるというのはすごく大きなポイントなんじゃないかなという感じがしました。
 ちょっと意見という感じです。以上です。
【篠原座長】 ありがとうございます。
 ほかにございますか。
【田村座長代理】 資料の御説明ありがとうございました。
 私どもの学校で実際にやったことをちょっと御紹介させていただきますが、実は中3で社会科でこの問題を取り上げて、教科の中でやるわけです。うちの学校の場合には、中学校で政党を作りまして、6つぐらいの政党ができるんですが、その政党には総裁とかそういうのを全部決めて、意見を言って、校内でいろいろなテーマについての議論をして、当選して、総理大臣になって的なことを学内で模擬でやっているわけです。
 そうしましたら、高大連携の中で、慶應と、それから国立のもう一つ、二つの学校の先生がその活動に注目しまして、実は渋谷区をどうしようかというテーマをその二つの大学が、区長と直接懇談会みたいなことの中で議論していたんです。うちの学校は渋谷区にありますから、渋谷区の区長とそれを結び付けて、渋谷区をどうしようかということをテーマにした生徒活動をさせて、それを区長と連携とりながらまとめて議論をしようということで、それがこの間、行われました。
 中心になった大学の先生は慶應のデザイン思考とかシステム思考を専門にしておられる教授さんなんですが、お名前をど忘れしました。その人が中心になって、区との連携をとってくれたんです。そういうことを今後も続けていくわけですが、全体的にやはり間違いなく学校は小・中・高というようなところではなくて、大学まで含めて実はつながって動いているし、それから社会という意味で言えば、渋谷区の場合は区長さんがそれに乗って、そういう活動を生かしているという実態があるわけです。
 ですから、この会議がきっかけになって初中等教育政策、総合施策が連携されるという形になったんですけれども、よく考えてみると、ほかのことも全部、こういうことを、今、社会では起き出しているんだという感じがしましたので、そういう視野を一つ広げていただいて、所管の分野に限らずいろいろな連携を展開していくと、学校関係者としては生徒にすごいプラスになると。日常的に渋谷区、区役所がすぐそばだし、年中、渋谷の駅を通っている生徒たちですから、それが実際の自分の住んでいるところとは違うけれども、学校に通うところで、その地域のいろいろな問題を取り上げて議論するという機会が得られたということがありましたので、御紹介をさせていただきました。
 包括的に見るという姿勢をこの問題は求められているんだなというふうに思っております。よろしくどうぞお願いしたいと思います。
【篠原座長】 ありがとうございます。
 ほかにございますか。
【小原委員】 これ、地域と学校との協働で教育を進めていくということに関して、一つ、我々が考えなければいけないことがあります。一つは、小学校、中学校は、たしか市の教育委員会の管轄ですね。高等学校が県ということで、管轄する部署が違うことから起きてくる、教育内容のつながりというのはそこに断絶が起きてくるという懸念が一つあります。例えば東京都ですと、東京都の教育委員会が言うことと市町村で教育委員会がやっていることは、どうもうまく調整されていないというところがあるので、もしこれを小学校、中学校、高等学校として続けてやるんであれば、今言った管轄部署、逆に言えば既得権をどう打破していくかということにつながっていきますので、そこを抜きにして、ああせい、こうせいということは、結局、長続きしないことになるんではないかなという懸念を抱いております。
【篠原座長】 ありがとうございます。
 ほかにございますか。
【植草委員】 済みません、さっき言い忘れたところで。
 今度、家庭との連携のところで、第1回の会議のときにちょっと御紹介させていただいたんですけれども、昨年、高等学校の方のPTA連合大会佐賀大会というのがありまして、佐賀県の方で8月にあったんですが、そこの中で、初めて主権者について分科会で取り上げてくれたんです。そのときに、佐賀東高校というところの演劇部が、生徒会選挙と町の町長選挙を絡めて演劇をやってくれた。これ、非常にすぐれたもので、当然、全国のPTAの方がそれを見ている。当然、周りのお父さん、お母さんの反応というのはすごくよかったので、何かしらそういう題材、例えば生徒が活動するところを、主権者の関係する活動等を、やはり親御さんが見るということによって、単に選挙に連れていくというだけじゃなくて、主権者の生徒がアウトプットしている部分を保護者が見るというところにも、すごく家庭との連携というのがあるんじゃないかなというふうに思いました。
 ちょっと忘れていた話です。以上です。
【篠原座長】 ありがとうございます。
【田村座長代理】 済みません。先ほど名前をど忘れしたということで失礼したんですが、神武という慶應大学の先生でした。
【篠原座長】 コウタケ先生。
【田村座長代理】 神武さんという、神武天皇の神武と書くんです。おもしろい先生ですが、まさに高・大連携の中でそういう活動をやってくれて地域と結び付けてくれたという、そういう意味でおもしろい活動だなと思って見ているんですが、生かしていただけるとありがたいと思います。
【篠原座長】 ありがとうございます。
【寺本委員】 先ほどからいろいろ御紹介ある中で、同様な取組が例えば地域の中での小・中学校、これは公立、私立、国立を問わず、たまたま私自身が住んでいるところが9校種、9学校あるんです。というのは、公立の小学校、中学校が3校になります。そして、愛教大の附属の幼・小・中がありまして、それ以外に私学の中学、高校、それからもう一つの私学の高校ということで、9の学校があるんです。
 学校の多い地域で多くの子供たちが学校に通ったり、保護者の方も通るので、みんなさわやかに元気よくあいさつをする道にしていきましょう、そういう学校環境、地域の環境にしましょうという思いを込めて、さわやかスクールロード、通称SSRという団体を作って、年に1回集まり、学校の校長、教頭、またPTAの関係者等が集まっていろいろなお話をしています。活動内容としては、あいさつ活動や道路をきれいにしようということで、地域の道路や学区の清掃等にそれぞれの学校の子供たちや、先生が出て、一緒に地域清掃活動をやっています。そのことによって、地域をより知ることになりますし、横のつながりができたりしています。
 特に高校生の子供たちは、地域に僕らはあと何ができるんだろう、プラスアルファで何ができるんだろうという思いがすごく出てきています。毎年、顔を見る子がいて、ちゃんとこういう地域の活動に子供たちが自主的に、主体的に出てくるという、こういうことが主体的な発想や主権者教育につながっていくんだなということを実感しています。
 また学区の方、小学校区の方の活動でも、夏祭りとか、いわゆる盆踊りとかいうのも含めて、子供たちが、学区の方々が準備された中で遊ぶとか、動くとかいうんではなくて、活動の中身自体を一緒に考えていきましょうということを、今、やっています。子供たちに学区の盆踊りのポスターを描いてもらって、そのポスターを印刷し学区内各所に張っています。自分の描いたポスターが選ばれまた学区の場で表彰されるという主体的な参加や、さらには司会も子供たちにやらせてみようというような活動も進めていますし、地域以外の人にもその活動に入ってもらい、多くの人が関わる楽しいイベントにしていただいています。
 学区以外の方との交流の場もできるので、いろいろと発想が豊かになり、次はこうしたい、ああしたいという、本当に主体的な考え方がどんどん生まれてきているので、そういう意味では、やはりいろいろな場面に子供たちを参画をさせて、考えていることを具体的にやれるような状況を作ってあげて、さらに次年度以降、こんなふうにしたいという過程までつながっていく。こういった一つ一つが主権者教育に資するんではないかなというふうに思いますし、それを見ている保護者や大人も、こういう活動をさせることによって、子供たちが自主的、主体的に動くということなんだなというのを学ぶ機会になっています。そんな事例をちょっと紹介しながら、きょう、御紹介いただいた文科省さんの中間まとめも含めて、やれるところをやれるところからということで、きっとこれが間接的に、大事な家庭教育だとか大人の学びにつながっていくんじゃないかなと、こんなふうに思っています。
【篠原座長】 ありがとうございます。
 一通り、ご意見を頂いていますけれども、ほかにございますか。
 中野さんの方から、何かコメントがあればどうぞ。
【中野地域学習推進課長】 ありがとうございました。
 地域学校協働活動、高等学校にも必要だ、おっしゃるとおりでございまして、現状、教育振興基本計画でも、全ての小・中学校区でということで、小・中学校を念頭に置いた目標にはしているんですけれども、高等学校の方にも進めていきたいということで取り組んでおります。
 また、とりわけ開かれた教育課程ということで、高等学校の方も地域にしっかりということがございますので、初等中等教育局の方になりますけれども、来年度、地域の取組ということも予算も付けておりますし、また地域学校協働活動と両輪になります学校運営協議会、コミスクの方も、これは全ての公立学校に学校運営協議会を置くという目標を立てておりまして、小・中・高なんですけれども、こちらもやはり小・中の方が進んでいて、高校の方、かなり最近、伸びてはいるんですけれども、これからということもございますので、高等学校、それから特別支援学校も県立でこれから進めていかなきゃいけないということで調査研究などもしているところでございます。
 高等学校で地域学校協働活動をしていただいている事例の横展開などもしているんですけれども、高等学校ということで、地域の方に入っていただいていろいろなキャリア教育、主権者教育も含めてやっていただいている部分もありますし、また小・中の地域学校協働活動とも連携する形で、例えば小学生の地域町歩きで、地域のいろいろな方にお話を聞いてという取組に地元の高校生にも参加していただいて、小学生からすると高校生、本当に身近なお兄さん、お姉さんになりますけれども、高校生にはそれを資料にしていただく、パワーポイントですとか、あと動画を作っていただくというような取組ですとか、一例ですけれども、地域の小学校、中学校とも連携した形での高校の地域学校協働活動というのも進めていきたいと考えております。
【篠原座長】 ありがとうございます。
 ほかにございますか。
 私の意見を申し上げると、地域というのは、例えば公立学校と私立の学校では捉え方が少し違うのかなと。つまり、私立の生徒たちは、それぞれ地域はまとまっていませんので、いろいろな地域から通っている。そうすると、私立は学校を中心とした地域になるのかと思う。公立の場合は、やはり住んでいる住居のところが全体としての地域として捉えたい。地域というのは、通っている学校の形態によって、若干、若干ではなくてかなり捉え方が違うのかなという印象を一つ持ちました。
 それから、小・中・高、場合によっては大学まで連携という、田村先生や植草さんのおっしゃったこと、大変大事なポイントだと私も思います。どちらかというと、私立の場合、一貫校が多いんですけれども、一貫校の方がこういう取組はしやすいところがありますね。学校の一つの学園形態、経営形態として一貫していますから。その辺は、小原さん、どうなんでしょうか。むしろ、そういう連携では私立の方がやりやすいんじゃないかなと。
【小原委員】 確かに理屈ではそうはいくんですけれども、実際は厳しいものがあります。例えばうちが小・中一貫で校舎共有とやったときに、小学生用の廊下、中学生用の廊下、入り口、出口別々、職員室、保健室、全部別にしろと言うんです。根拠は何ですかと聞いたらば、小学生と中学生は一緒にいると危険が生じるということが根拠で、別々に作らざるを得ないんです。ですから、もし小学生が中学校に行って授業するとしたとしても現状の校舎の設置基準からすると無理ですし、中学生が小学校に来た場合にも同じことが起きてくる。実際、小・中一貫とか合同でというのはできないような仕組みになっているんです。
 それ、当然、私、反論で持っていったのは、電車はどうなっているんだと。小人、大人で運賃、分けているけれども、階段は別々かと。乗車口は別々かと。そうしたら、それは別だろうと。要するに、全く学校だけが日本という国の中でガラパゴスみたいになっていて、そこでもう別々ですから、ここで小・中一緒にやりましょうといっても、おそらく設置基準上は厳しいことになる。
 校舎の中でできないということになると、外だというと、誰が責任をとるんだと、またここで新たな問題が出てくるんです。私学の場合、それは特に顕著になってきますし、地域と協働しましょうといっても、地方自治体と私学が必ずしも仲よくやっていけるような環境にあるかというと、決してそんなことはないわけです。
 一つの例にしかならないんですけれども、本学の場合は、もう町田市と30何年間、けんかし続けてきたというようなことで、決して一緒になってどうのということはないです。何か協力といったときは、私学から何かを奪い取ろうということで一緒にやりましょうというふうに言ってきますけれども、それ以外では一切ないと。そこが非常に難しいですし、高等学校は高等学校で、もう既に大学を見ていますから、大学入試にどれだけ役に立つのと、入試にプラスになるのかとか、あるいはAOにプラスなのか、この辺が小・中・高連携の活動になってくると、現実問題として解決しなければならないことです。
 あわせて、教員養成に関わってくるんです。これ、誰がこれをやるのかというと、学校側からすれば教員が出ていかなければいけないし、教員が、それ、知らないと、どうやっていいか分からないということですから、今後、教員養成と採用と研修を一体で考えていかなければいけないので、ここでやろうとしていることと、教員養成の中身から研修の中身にも考えを及ばして進めていく必要があると考えています。
【篠原座長】 小原さんのところは中学ですか。結構、主権者教育、熱心にやられている先生、いますよね。
【小原委員】 高等学校ね。
【篠原座長】 高等学校ですね。小・中の方と少し連携して、何か良い仕組みができないでしょうか。僕はやはり小・中の頃からの意識が大事だと思うので。
【植草委員】 今のお話に関係するのか、私が今の千葉県の県立高校の校長なんですけれども、その以前が千葉市の方の稲毛高校というところの校長をやっていました。千葉市の市立高校ですから、まず生徒は、普通科については、もう全部、千葉市内から。それと、この学校は附属中学校、公立で持っていまして、今、いわゆるそのまま附属中から来た子は高校の方に上がっていきます。ですから、高校としてはちょっと、いわゆる公立高校としては少し特殊な学校かなと思うんですけれども、今、お話しあった主権者教育みたいなもの、確かに中・高連続しているとやりやすいです。そこはそれで、しかも千葉市立ということで2校しかありませんから、かなり千葉市がバックアップしてくれて非常にやりやすかったところはあります。
 ただ、今、本校の方の県立になって、地域のところで、ただ、アプローチしていくと、結構、乗ってくれるんです。本校、今、習志野市というところなんですけれども、習志野市在住の生徒が2割しかいない。その中で習志野市と連携してという形でやっているんですけれども、この間も16の市町部局の方から出前授業ということで協力してくれたり、今度の選挙、4月にあるんですけれども、そこの投票事務を、本校の生徒を駆り出してやるということで、希望をとったら70人ぐらいの生徒が、習志野市内の各投票所へ行って選挙事務をやる。そういう形で、結構、高校と、地域に出ていくといろいろやはりやってくれるんだなというところはあります。そんな感じがしています。
【篠原座長】 ケースバイケースというか、地域の状況によって違うでしょう。
 田村先生、最近、公立、都立などでも中・高一貫校というのは増えていますね。そういう意味では、こういう流れの中でやりやすくなっているのかなと思うのですが、いかがでしょうか。
【田村座長代理】 植草先生がおっしゃったように、中・高一貫だと非常にやりやすいというところはあります。というのは、教科書的に言うと、中3でやるんです。中3ですと、もう生徒活動その他が、実際、教科の中に入ってきますから、それをいろいろな機会に実践していくという、こういう形で言うと、直接的には高校とつながって活動が展開できるということで、中学3年生、つながっていないと高校受験のための勉強が中心になっちゃいますから、その分がかなり大変だという。
 うちの学校の場合にはそういうことで、中3ではそういう生徒活動みたいなことを生徒がやっていたわけです。それを、たまたま私のところは渋谷にあるものですから、オリンピックを迎えるというんで、区が渋谷区をどういうふうに魅力的にするかというんで、いろいろな活動をしているんです。それは、誰にそういうのを頼むかというと、大学の先生に頼むんです。決して地元の生徒には言ってこないんです。
 大学の先生が、たまたまその慶應の神武さんというちょっと有名な先生なんですけれども、その人に頼んで、その人がたまたま高・大連携でうちの学校に来ていたんです。それで、その生徒活動を見て、これは渋谷区の魅力を提案するのに、中学生のそういう生徒活動を活用するということができないだろうかという相談がありまして、我々、それはいいやということで、そうしたら区長も大喜びで、学校に来たり、こっちから区へ行ったりして、議論をしながら、中学校3年生の目で見た渋谷区の魅力の開発ということを生徒活動でやったんです。
 だから、自分たちが通っている渋谷区の駅とか原宿とか、そういうところの実際の展示や何かに生きてくるわけです。区長がこれでいこうと決めていきますから。それを、もう2年ぐらいやっていますかね。オリンピックを迎えるんで、今、これからいよいよいろいろなことがあるんだろうと思うんですけれども。
 これは、私どもの立場、中・高の活動でもってそういうことがあったということを御報告しているんですけれども、おそらく大学にはいろいろな形で地域の人が相談に行くんですね。高校以下には大体来ないです。だから、大学を活用するといいんじゃないかというふうに思うんです。直接的にはなかなか、こっちから出ていかないと、どうでしょう、中・高には地域の長というのは言ってこないですね。文部省に遠慮しているのかどうか、分からないんですけれども。ですから、むしろ大学を活用されると、こういった学校、年齢、テリトリーを越えた活動というのは、やはり大学を使うのが一番やりやすいんじゃないかなと思ったので、今、申し上げてみたわけです。
 実際に種はいっぱいあるわけですから、それをどう活用するかということだと思いますので。
【篠原座長】 ありがとうございます。
 今、品川区でしたか、区民だよりを題材にして勉強したりしている。要するに、僕は主権者教育というのを考えたときに、選挙、投票という話にすぐなるのですが、まず社会に対してどう関心を持たせるかというところが第一歩だと思っています。そういう意味では身近な行政とのタイアップというのは、すごく意味があるんじゃないか。子供たちはやはり身近な問題に一番興味を持ちやすいんじゃないかと思う。主権者教育の第一歩になるという意味で、そういう取組をどんどん全国的にいろいろなところでやってもらえればいいと感じている。
 あと、問題は、寺本さん、家庭ですね。地域との連携はいいんですけれども、家庭の役割。ここがもう一つ、先ほど中野さんからの御説明もいろいろありましたが、もう一つクリアじゃないんですね。PTA連合会の取組も、一部、紹介がありますが、PTAが一つ頑張ってもらわないといけないなと。御承知の例示、ありますか、PTA連合会として、あるいは地域のPTAとして取り組んでいる例示について教えてください。
【寺本委員】 私たちの全国から集まる会長方の中の一つの委員会で私も主権者教育についてということでちょっとお話をさせていただいて、今、取組中なのです。中間まとめも出ていないんですけれども、PTAだとか、また地域との連携とか、行政との連携をしながらの主権者教育というのについての状況が5月以降に、多分、出てくると思うので、そこで分かった部分についてはお話をさせていただきたいと思いますが。
 ここに御紹介いただいたもの以外でも、例えば教育委員会等が、直接ではないにしても、例えば議会の関係で子供議会だとか、子供市会だとかで主権者教育の現場を知るとか、理事者とのお話をするというのもあったり、ほかにもいろいろありました。また、地域の中で自分たちが発案したことなどを伝えたことが形になっているというのもありましたので、また今度、御紹介をさせていただければと思っています。
【篠原座長】 ありがとうございます。
 ほかにございますか。このテーマについてはよろしいでしょうか。
 では、次に移らせていただきます。次に、諸外国における主権者教育についてというテーマです。一部の委員の皆様にお声がけをさせていただいておりましたけれども、主権者教育の先進国事例調査ということで、昨年12月5日から11日まで、小原委員と事務局とともにドイツ、イギリスを訪問調査してまいりました。事務局より、その報告をまずお願いいたします。
【松永教育課程課長】 お手元の資料4でございます。ドイツにつきましては、篠原座長と小原委員、またイギリスにつきましては篠原座長が訪問されまして、その内容を事務局でまとめさせていただきましたので、報告いたします。
 まず、資料4の1ページ目でございます。ドイツ、ボンにございますベートーベン・ギムナジウムという学校でございます。このギムナジウムというのは、主に大学進学を希望する生徒が進む中等教育機関でございます。そこで、校長先生と、また政治教育の担当の先生と意見交換、説明を受けてまいりました。
 まず、カリキュラムについては、そこにありますとおり、ドイツでは主に政治という形での教育になっております。その下、選挙、投票率等ということでございます。ドイツでも日本と同じように、思考力、判断力等からなるコンピテンシーを育成するのが大きなテーマと。また、国政選挙があるたびに、並行して学校でジュニア・エレクションというものを実施をしているということでございました。その参加する学校には、政治教育センターから教材が与えられるということでございました。
 丸一つ飛びまして、ドイツでは、アクティブな市民を育成することを目指していると。2行飛びまして、自分たちが社会の一員であるという意識を高めるのに政治教育は大切だと考えているというお話がございました。
 この学校では、高校2年生に当たる生徒の政治経済の授業を視察をさせていただきました。ここでは、学校の劣悪な施設・設備を表す絵を示しまして、これをもとに国の予算をどのように使うべきかといったテーマで、生徒によるディベートが行われました。生徒はあらかじめ準備をしてディベートに臨んでおりました。非常に活発な授業でございまして、1人の生徒が話している間にも次々と手が挙がりまして、活発な意見交換が行われておりました。その中では、生徒の間で議論が白熱するような場面もございましたけれども、その際には先生がファシリテーターというような形でうまくまとめる様子が見てとれました。
 その授業を拝見した後に御説明を頂いたわけでございますけれども、二つ目、指導方法というところでございます。近年、ドイツでは、教師が一方的に指導する形態の授業から、オープンなという言い方をされておりましたが、形態での授業に移行していると。小・中学校の段階から一つのテーマについて子供が話し合うという訓練をしているということでございます。
 次の丸で、ディベートの技能の育成につきましては、5年生のところでは5分間、1対1というところから始めて、徐々に時間と人数を段階的に増やしていくと。他者の意見を受け入れるためには、ロールプレーから始めることが必要だと考えるということでございました。先ほど申し上げました授業の中でも、非常にディベートについてのスキルといいますか、ルールといいますか、そういったものが守られていたという印象を受けました。
 政治的中立性についてでございます。教師が必要と考えれば、政治家を教室に呼ぶことはあるということでございました。その際にも、ドイツにおけますボイテルスバッハ・コンセンサス、少し申し上げますと、これ、法的拘束力はございませんけれども、ドイツでの政治教育の基本原則とされているものでございまして、三つございまして、一つが教師が自らの見解をもって生徒を圧倒してはいけないという圧倒の禁止の原則と言われるもの、二つ目が論争性の原則というもので、学問・政治の世界で論争されている場合は、授業においても論争があるとして扱うということ、生徒志向の原則、三つ目でございます。生徒志向の原則として、生徒が自らの関心・利害に基づいて効果的に政治に参加できるよう、必要な能力の獲得を促すという、このボイテルスバッハ・コンセンサスというのがございますけれども、政治的中立性についてのその部分が非常に重要だということでございます。
 ある年にある政党から政治家を呼んだとしたら、例えば翌年は別の政党から呼ぶというように、同じ政党からずっと呼んではいけないということと、政治家は絶対に教室で選挙運動をしてはいけないという形で、政治的中立性を保っているというお話でございました。
 続いて、教員の研修についてでございますけれども、二つ目の丸にありますように、非常に時間と金と労力が必要であって、政治教育が大切だということを、学校全体として認識し努力することができなければ成功しないだろうと。ドイツも、いまだ最善の状態にはないという認識でございました。
 続いて、家庭・地域との連携についてでございますが、この学校では、1年に2回、社会科の授業の中で、教師、生徒の代表、親の代表が、これまでの授業の課題や改善点について話し合う機会を持っていると。家庭教育については、以前に比べて家庭でのコミュニケーションの機会が減っており、家庭で政治について話す機会は減っているんではないかというお話でございました。
 続きまして、3ページでございます。こちら、同じくボンにございます連邦の政治教育センターというところの訪問でございます。ここではコミュニケーション室長からお話を伺いました。ここでは政治教育について、連邦と内務省と家庭・高齢者・女性・青少年省という省庁がございまして、そこが一つのプレーヤーだと。この連邦の政治教育センターも、内務省の所管の機関でございます。
 教育・研究省については、この主権者教育、直接的には関わっていないということでございます。これ、教育については、ドイツでは各州が非常に大きな権限を持っているということで、連邦が関与できないことになっているというのが一つの理由だということでございます。
 政治教育のプレーヤーとして、二つ目は各州でございます。先ほど申し上げましたように、ドイツでは各州がそれぞれの教育について、教育内容を含めて定めておりまして、その内容も州ごとに異なるということでございます。
 政治教育のプレーヤー、三つ目はNGOということで、様々なNGOも活動をしているということでございました。
 続きまして、教材でございますけれども、この連邦政治教育センターが、学校で使用する政治教育の副教材を作成をしております。教科書については、各州が独自の教科書を作成することになっているということでございました。この教材につきましては、連邦政治教育センターに書店、本屋さんがありまして、そこで、特に政治ということだけでなく、歴史でありますとか、各国の政治、あるいは政治史といったようなものについての副教材も販売をされておりました。
 続きまして、家庭や地域との連携でございます。政治教育の文脈では、家庭は余りこれまでクローズアップされてこなかったと。なぜなら、国家が家庭に干渉してはいけないという大戦時代の苦い教訓があるからであると。しかし、現在では何らかの形で家庭において政治について話し合われるよう、国として関わっていくことも必要なのではないかという意見も出てきているということ。
 また、この連邦政治教育センターでは、YouTubeでこのセンターのサービスについて周知をするほか、WAHL-O-MATという、これ、アプリでございますが、使用者、生徒が様々な分野の質問に対して「はい」か「いいえ」を選択していくと、自分の考えに最も近い政党が表示されるというアプリを開発をして、非常に多くのアクセスがあるということでございました。
 続いて、学習内容についてでございます。学習内容については、政治教育は生活のあらゆる分野にわたっていると考えていて、例えば討論すること、歴史や国際社会などの分野についての学習も政治教育に含まれると考えるというお話がございました。
 また、2行飛びまして、子供の頃に政治に関心を持っていると、その後に人生においても政治に関心を持ちやすく、選挙権を得て初めての選挙に行った人は、その後も行き続ける傾向にあるという調査結果が出ていることから、子供に対する政治教育に力を入れていきたいと思っているというお話もございました。
 続いて、政治的中立性についてでございます。州によって政治教育への取組の熱心さに差があるということでございまして、この連邦政治教育センターは、各州に対して何かをするよう強制することはできないけれども、出版物を提供しているということでございます。この出版物につきましては、センターが独自の編集部を持ちまして、その出版物を監督、鑑査する機関として三つ、1 から3 にあるようなものがあるということでございました。中でも、1 にありますように、連邦議会に議席を持つ全ての政党の議員による委員会が、この連邦政治教育センターの出版する出版物の中で、特に問題になったものについては審査をするという取組をしているということでございました。
 この連邦議会に議席を持つ全ての政党の議員による委員会につきまして、全ての政党が参加をしているわけでございますけれども、中には政治教育に対して懐疑的な政党もあるということで、ウェブサイト上に掲示板といいますか、そういったものを作って、自分たちの政党に対して批判的な意見を言っている教師を通報してくれというような呼びかけをしているというようなこともあって、これが教師への中傷につながっているという問題も出てきているというお話がございました。
 次の丸でございますけれども、中ほど以降でございます。政治的中立性の担保に関して、現場の教育は各週の教育法にのっとって、教師の服務態度については教師に関する規律にのっとって実施されているということでございました。
 1つ飛びまして新聞の活用についてでございます。ここではEurotopicsというウェブサイトの紹介がありました。これは1つのテーマについてヨーロッパ諸国の複数の新聞記事を比較して、見解の違いが読めるようになっているというサイトでございまして、州によっては学校で使用されている例もあるということでございました。
 以上がドイツの2機関についてでございます。
 続きまして、イギリスでございます。資料5ページに移ります。まずロンドンの国の教育省でございました。シティズンシップの担当からお話を伺いました。
 まずカリキュラムについてでございますけれども、英国ではシティズンシップ教育という形でナショナル・カリキュラム、国のカリキュラムの基準で定められておりますけれども、現在では、公立学校の中でもより自由度の高いアカデミーというものが増えておりまして、全体の6割に至っているというお話でございました。必ずしもこのナショナル・カリキュラムに縛られない学校も相当程度出てきているということでございます。
 次の段落でございますけれども、イギリスでは2014年にナショナル・カリキュラムを改訂しまして、従来のスキルベースから知識ベースの内容に変わって、知識の習得に重点が置かれることとなった。従来の授業では、1つの社会問題やテーマに焦点を当て過ぎる傾向があったけれども、子供たちに個々のテーマについて考えるための知識が備わっていないことが問題となりまして、知識ベースの方向に向かったということでございました。
 また、GCSE、中等教育修了の一般資格試験でございますが、この中でシティズンシップ教育は科目の一つではございますけれども、選択する生徒が減っており、関心が薄れていると思われるというお話もございました。
 丸1つ飛びまして、シティズンシップ教育の導入前から、子供たちに社会的・道徳的責任感、地域社会への参画、政治的リテラシーの3つの能力を育成すべきという議論があって、労働党、ブレア政権の際に、特に政治に関心を持った若者を育成したいという考えがあって、このシティズンシップ教育が導入されたということでございました。
 また1つ飛びまして、教育省が学校における教育課程の実施、このシティズンシップ教育の実施についてきちんと管理をしていないということについては多くの批判がある。また、シティズンシップ教育を教える教師に特別な資格や知識がないことも批判を受けているというお話もございました。
 一番下の丸でございますが、現在は「英国民としての価値観を重視する」というのが、イギリスにおける教育の一つのテーマとなっているということでございました。これは後ほどまた御紹介させていただきたいと思います。
 学校での政治的中立性について完全に担保されるかどうかは、教育省としては把握してないけれども、現場ではそのように努めていると思うというお話でございました。
 研修については、教員研修のモデルが統一されておらず、政府としては研修は実施していない。国全体として、教師の不足が課題であるという中にありまして、数学、外国語、科学等については、国の中で今優先順位が高いということで、国から教師としての派遣をしていますけれども、シティズンシップについては優先順位が低いため、シティズンシップ教育の教員不足についての補充というものは行っていないというお話でございました。
 教材についてでございます。教材、これはシティズンシップ教育に限らずでございますが、民間団体が教師のニーズに合った教材を作成している。ただ、国として何か記載してほしい方向性が明確である場合には、民間の団体に資金を提供し、国の趣旨に沿った教材を作成してもらうこともあるということでございます。
 また、指導方法についてでございますけれども、政権が変わったことによりまして、導入当初とは変わってきているんではないか。従来は、子供たちにはできるだけ地域の活動に参加といった実践を通じて学ばせるという考え方であったけれども、今では必ずしも実践は重視しておらず、先ほど申し上げましたような、知識を重視する方向に移っているというお話でございました。
 また、選挙、投票率との関係につきまして、シティズンシップ教育と投票率向上、特にこの投票率の向上ということを目的としているわけではないというお話でございました。
 また家庭や地域との連携ということにつきましては、地域統合の担当省庁と協力して取り組んでいる。シティズンシップ教育に限らず、貧困地域に対して特に手厚く支援をしている。
 新聞の活用については、特に新聞を活用することは、国としてはしていないということでございました。
 以上、教育省についてでございます。
 7ページに移らせていただきまして、シティズンシップ教育協会(ACT)という機関を訪問いたしました。この機関でございますが、最初の丸にございますように、シティズンシップ教育を担当する教師同士のネットワーク形成、あるいは研修、会議の開催、ジャーナルの刊行、教材の作成や事例調査を行うという団体でございます。シティズンシップ教育がカリキュラムに導入された当初は、中央政府からの財政援助がありましたけれども、今では政府からの資金がない状況だというお話でございました。
 カリキュラムについてでございますが、このACTの認識としましては、初めの10年間は、シティズンシップ教育の専門家やシティズンシップ教育を大学の入試の科目として選択する生徒が増えるなど、成長期にありましたけれども、それからの8年間は逆流、逆行している認識だということでございました。政府の優先項目が、どちらかといいますと理数といったものに変わって、シティズンシップ教育に掛けられる予算も減っているというお話でございました。
 また、今政府が最も重視しているのは、先ほど申し上げましたけれども、「英国民としての価値観」というものでございまして、その理由は、テロの防止の必要があるということでございました。シティズンシップ教育というよりも、英国民としての普遍的な価値観について教えていくことが、今求められているという認識であって、その中では、国粋主義的になってしまう傾向があるので、このACTについてはそのような傾向に歯止めを掛けるように働き掛けているというお話でございました。
 その関連で、次の丸でございますけれども、ACTとしては、批判的思考を持ち民主主義的な市民を育てることができるよう支援をしている。具体的には、若者向けの新聞社と協力して、地域社会の変革に積極的に取り組んだ子供の表彰を行っているということでございました。
 一番下の丸でございますけれども、私どもの方から新しい学習指導要領の内容をはじめまして、日本の主権者教育の方向性、現在の取組について説明をしたところ、共感を得られまして、ディスカッションを重視する日本の方向性は、イギリスのシティズンシップ教育が戻ってくるべき方向だと思うというお話がございました。
 ACTとしては、今の国のカリキュラムの内容は不十分だと考えている。他方、今では積極的に子供たちに教えることで知識が培われるということで、バランスはその面では取れてきたんではないかといお話もございました。
 また選挙、投票率等について、Brexit、イギリスのEUからの離脱を問う国民投票では、若者の投票率が高くなかったとありましたけれども、ただそれは選挙の種類によるものであって、ほかの選挙では多くの若者が参加した例もあるということでございます。
 下3行でございますけれども、今の20代(シティズンシップ教育を学校で受けてきた世代)は、ボランティアや政治に対して積極的に取り組んでいるという調査研究もあるということで、評価をしておりました。
 以上、ACTについてでございます。
 最後の訪問先でございますが、9ページでございます。ロンドンのシドニー・ラッセルスクールという学校を訪問いたしました。この学校は、イギリスで最も大きな学校の一つであるということでございまして、学校のある地域としましては貧困世帯が多い地区でございます。ただ、その中にありましても、Ofsted、イギリスの教育水準局という学校の監査を行っている機関でございますが、そこからはこの学校に対して「卓越している」という評価が出ているということでございました。
 カリキュラムについては、先ほども申し上げました、必ずしもナショナル・カリキュラムに縛られない、この学校はアカデミーということでございますけれども、このOfstedの監査等を考えた際に、実際にはナショナル・カリキュラムに準拠した教育を行うということでございました。
 少し飛びまして、ページの下の方でございますが、シティズンシップ教育の担当教師からの説明というところに移らせていただきますが、シティズンシップ教育は全ての科目の中で教えている認識である。またディスカッションやテストを指導方法としては行って、子供がみずから考えることができるよう、討論を多く入れている。またシティズンシップ教育専用の教室を設けていて、そのための教材をそこに常備しているということもございました。
 学習内容については、例えば国会議事堂の機能について学ぶものでは、国会議事堂の中の各部署のロゴを作成する、それぞれのところがどういうことを仕事としてやっていてということを基に、ロゴを作成するといった取組も行いましたということでございました。
 10ページでございます。学習評価についてでございますけれども、高学年の生徒に対してはテストでの得点でグレードに分けまして、点を取っていくと次のグレードに進むという取組をしているということでございますが、低学年の子供の評価については、教師が子供のノートを見て星を付ける。いずれにしても評価は難しくて、テストや宿題の得点を単純に足し上げるだけでは不十分だということでございました。
 家庭や地域との連携についてでございました。先ほど申し上げましたように、この学校があります地域は貧困家庭が非常に多いこともあって、本校の子供については問題のある家庭が多く、家庭が余り大きな役割をこの分野では果たしていないという認識であるということでございました。
 最後に、この学校の15歳から16歳に当たる生徒との会談がございました。シティズンシップ教育を受けている実感があるかという質問に対しましては、あると。授業の前に先生から、きょうのニュースでは何をやっていたか、どのニュースについてどう考えるかということをよく聞かれるので、生徒同士での意見交換にもつながっているし、もっと調べてみようとも思うという話もございました。
 飛びまして、Brexitについてでございますけれども、Brexitの投票に行かなかった若者も多かったということだけれども、それはなぜと思うかという質問に対しまして、若者が政治にもっと関わらされていれば、より多くの若者が選挙に行ったと思う。自分もこの学校に入るまではきちんと政治について学んでこなかったし関心もなかった。しかし今は政治について学び、関心を抱いているという話もございました。
 またさらに、これからは選挙に行こうと考えるかということにつきましては、そう思う。学校の授業では、社会問題について自分で調べるだけでなく、ほかの人にも説明することが求められているという話もございました。
 校長に対しまして、シティズンシップ教育の成果を実感しているかという質問に対しましては、校長としてはまだまだ取り組むべきことは多いと感じている。この校長先生としては、教える内容を学校独自に定める自由が制限されているという認識だということでございました。
 最後、11ページ、政治的中立性についてでございます。各政党の代表や候補者を教室に呼ぶことがあるかということについて、上の学年では授業に各政党の関係者を呼ぶこともあるということでございました。また政治家等から話を聞いたりする取組も行っている。ただ、この学校の教員について言えば、政治家を呼んで話を聞くよりも、模擬選挙が最も効果的だと考えているということでございました。
 また、中立性については、先生は教室でみずからの政治的な考えを表明してはいけないことになっているけれども、授業の後には生徒は先生と自由に議論することができて、その際には先生も一人の人間として普通に意見を話してくれるという、生徒からの話もありました。
 以上でございます。
【篠原座長】 ありがとうございます。私からも感想をお伝えしたいと思うんですけれども、イギリスもドイツも全般的にはやはり主権者教育という考え方が根付いているという感じをまず持ちました。ただその現状ということで比べると、イギリスは少しモメンタムが弱くなっているなという印象でございます。
 それは先ほど松永課長からもお話があったように、自由度の高いアカデミーという学校が6割ぐらいですか、増えてきているということも一つあると思うし、そしてもう一つは、ブレア労働党政権から保守党政権への政権交代、これがかなり影響しているのかなと思う。ブレア政権のときにアクセルを踏んだ、シティズンシップ教育と銘打った教育でございましたから、政権交代に伴う影響というのはあるのかなという感じを現地に行って感じました。
 ドイツの方は、私の印象ではボイテルスバッハ・コンセンサスという原則の下に、着実に行われているんではないかなと。特に学校の授業を参観すると、ここにも出ていますが、非常に活発で、俺に言わせろ、俺に言わせろと、全員の手が挙がるんです。その後ディベートで二派に分かれて、国のファイナンスについて議論している姿を見て、いや、これはもう本当に、こういう教育を日本の各教室で見るのが当たり前のように行われるといいなと実感いたしました。主権者教育という面でもドイツについては、今後も注目する必要があると思っているんです。
 ただ、教育の政策の権限が州に落とされていますので、連邦政府の教育センターはあるけれども、なかなかそのとおりには州が動いてくれない、こういうもどかしさみたいなのがあるようにお聞きしました。
 例えば今連邦政府は、IT教育をもっともっと進めなきゃいけない、ドイツは後れているという認識で各州にそれを要請しているようですけど、各州は、教育の中身については我が州の権限だ、連邦政府に言われることではないということで、なかなかうまくスムーズに流れていないという話も聞きましたし、そういう意味では、ドイツも国レベルだけで見ていると、ちょっと違うのかなと思う。
 でも、全部の州を我々が見るわけにもいかないので、国レベルで見たんですけれども、州レベルでもう少し分析してみないと、本当のところ主権者教育がどこまで進んでいるのかというのは分からないという面が、あるのではないかなという感じがしました。
 それから政治的中立性の問題、これはどこの国もやっぱり悩んでいるなと。特にドイツも超党派の委員会を作っておりますけれども、なかなかそれが全体で中立性を担保するというところまでいっていませんし、そういう機能を持たせていないです。ドイツに行く前は、既にそういう機能も持たせているのかと思っていたんですけど、むしろ出版物とか副教材とか、そういうもののチェックを一部超党派でやっていると。なるほどなと思って、どこの国もこの政治的中立性の担保をどうするのかというところには悩み、結論が出ていないような感じを受けました。
 以上でございます。
 小原先生、どうぞ。
【小原委員】 ドイツで最初に印象を強く受けたのが、はっきりと政治教育と、政治を前面に出しているという点でした。これは東西冷戦のこと、あるいはさらにさかのぼって、第一次・第二次世界大戦を経て今日に至ったという中で、はっきりとした政治教育をしなければいけないという環境にあったからではないかなと感じております。
 また、私も実際受けた結果からすると、歴史の授業の中で、やはり政治的な判断を問うことが多かったというような気がいたします。一つには、彼らが勉強しなければいけない歴史が非常に短いということと、それから今ある政治体制を、ある意味肯定しなければいけないということもあったんでしょうけれども、その歴史の授業の中で、あのときの大統領はこういう決断をしたんだけれども、よかったのか、悪かったんだろうか、それぞれ知識を集めてディベートしたこともありますし、その自分の意見をレポートに書くという授業がありました。もともとそういう土壌がドイツにはあったのかなという気がいたしました。
 また、ここでもレポートにもあったように、大学進学にはその科目が必修ということになっていることからすると、これは高等学校、いわゆる中等教育でやることが高等教育につながっているというのが一つあるんではないかなという気がいたします。
 逆に言えば、高等学校、あるいは中学校からやる教育に学的根拠を持たせるには、大学につながる教科でなければならないのではないかなという感想を私自身持ちました。したがって、科目もはっきりと政治、あるいは政治科学とした方が、日本の場合はいいんではないかなというような感を改めて強くした次第です。
【篠原座長】 ありがとうございます。では、この報告を受けて、皆さん方の御意見を承れればと思います。どうぞよろしくお願いします。御質問でも結構です。
 先ほど僕は、イギリスは勢いが少し低下して、メルトダウンまでいかないけれども、モメンタムも少し弱くなっているかなということを申し上げましたけれども、僕はこの学校、シドニー・ラッセルスクールの校長の話というのはすごく印象的でした。非常に話がクリアで。女性の校長でしたけれども。
 校庭に出て一番びっくりしたのは、壁がありました。民主主義の壁みたいなのが校庭にあって、誰でも、学校に登校するときでも下校するときでも、いつでもそこに立って自分で民主主義について発言、発表ができる、そういう壁を作っているんです。そういうのはさすが根付いているなという感じがしました。自分の意見をちゃんとそこで言えると。赤色の民主主義の壁みたいなものから、そんな印象を持ちました。さすがだなと思いました。
 どうぞ。
【植草委員】 済みません。じゃ、ちょっと質問というか、政治的中立性のところで、教師側はやっぱり政治的中立性を守らなきゃいけないということはかなり担保されている、どちらの国もあるかなという感じがしました。ドイツの方が非常に進んでいるなという感じがします。生徒の方が例えば各政党で活動するような場合、生徒が校内で政党に属したような活動をする場合どうなのかなというのが両国でどうだか。
 というのは、2016年にたまたまちょっと私は前の学校の関係で、テキサスの方の姉妹校に行きまして、ちょうど例の大統領選挙のときだった。そのときにやっぱり政治の授業を見せてもらって、アメリカというのは選挙制度が日本とは全然違うところがあるんですけど、教員はやっぱり政治的中立性をかなり守るように言われているんですが、生徒の活動は、民主党的な活動、共和的な活動は校内でしてもいいんだと。実際に政治の教室に行ってみると、様々な集会を案内するものとかが張ってあるんです。そういうのが結構あって、アメリカってそういうところがあるんだなという感じがしました。
 ということで、ドイツとイギリスの生徒の政治的中立性というのはどんな感じだったでしょうか。
【篠原座長】 どうぞ。
【松永教育課程課長】 済みません、今回は特に生徒側の生徒会活動等についてのお話は伺ってきておりません。少し調べまして、また整理をしていきたいと思います。
【篠原座長】 日本の場合は縛りが掛かっているんでしょう。どうですか。
【大内学校教育官】 失礼いたします。日本の場合ですと、先般、第3回のときですか、御議論にもなりましたけれども、高校生の政治的教養を育む教育と併せて、政治的活動についての取り扱いについての通知を、平成27年のときに発出しておりまして、その中では、いわゆる学校内における生徒の政治的活動というのは、基本的には制限されているという状況でございます。
 ただ他方で、選挙権を有することになりましたので、これに関わりまして、家庭の理解の下で、放課後や休業日等において、学校外において政治的活動を行うことは、今回の通知において認められているという状況でございますので、学校内では制限が掛かっているという状況でございます。
【篠原座長】 前よりも大分規制は緩くなっているんですよね、学校外は。条件付きだけれども。
【大内学校教育官】 はい。放課後や休日等に学校の構外でという形になると思います。
【篠原座長】 ほかにいかがでしょうか。田村先生も海外の状況には通じていらっしゃるんでしょうけど、何か御意見ありましたら。
【田村座長代理】 お伺いしながらちょっと気になったので、どうだったかなと思ってお伺いさせていただくのは、やっぱりイギリスなんです。イギリスは今、いわゆる学校改革というか、教育改革が緊急の事態ということで、実は私どものブリティッシュ・スクールを東京で経営しているものですから、直接Ofstedの話と、その委員の人なんかの話をする機会もあるので、一番気にしているところは、要するに働き方改革なんです。教員がやる仕事を明確に決めて、それ以外は教員はやるなという指示を出そうとしている。その中にシティズンシップ教育に関わることがどう関わっていくのかというのは、かなり議論されているので、その辺は何か具体的な話をお聞きになられたかなと。
 そういうことはまだ進んでいませんですか。今Ofsted、あるいは政府のレベルで議論されていると聞いているんですが、具体的にまだなっていないんでしょうか。学校にはそれが。日本もそうなんです。要するにこれは残業の問題なんです。防ぐためにイギリスはもう教員の仕事を決めちゃって、それ以後は全部やらせない、やっても執務時間に入れない、こういう方向性を考えているみたいなんです。その辺のところを何かお聞きになられたことはありますか。
【篠原座長】 余り聞いていないと思いますが、松永さん、いかがでしょうか。
【松永教育課程課長】 今回、教育省なりからお話を伺う中では、その教師の働き方改革といったような関係でのお話はございませんでしたが、一つ先ほども御紹介しましたように、指導の仕方として、実践的ないろんなものを取り入れるという方向から、何か知識を教えていく授業の方向に移っているという面では、そういった点もあるのかなという印象は受けましたけれども、具体的にはお話はございませんでした。
【篠原座長】 ほかにいかがですか。どうぞ。
【寺本委員】 シティズンシップ教育という部屋があるような学校もあるというお話でしたよね。シティズンシップ教育を行うような場所があるみたいな。日本にはないわけですけれども、ほかの教科の中でシティズンシップ方向を取り入れた授業を行うとか、そういったことがあったのか、なかったのかというのはどんな感じでしたか。例えば社会の教科の中でシティズンシップ教育について触れていくとか、例えば全然教科は違うふうに思いますが、国語だとか数学の中に入ってくるとか、日常的にそういうものが入ってくるのかどうかという話です。
【篠原座長】 それはイギリスの学校では広範にやっていたような感じがします。どうですか。
【松永教育課程課長】 具体的にどの教科でどのような活動をというのは直ちには。
【篠原座長】 シティズンシップ教育ということを切り出して云々だけではなくて、各教科の中でずっとならしているという感じは、僕はしました。いかがでしょうか。
【松永教育課程課長】 済みません、具体的にどういう活動というところはちょっと今、拝見した中では思い浮かばないんですけれども、お話としては全ての学校教育全体といいますか、全ての科目の中で、シティズンシップということについて育成していくのは、その学校の考え方だということは、明確に校長もおっしゃっておられました。
【寺本委員】 ありがとうございます。あと、家庭の教育の関係で、youtubeなんかに出したりとかというお話がありましたが、これはいわゆる保護者の方が見られるのも相当多いんでしょうか、どうなんでしょうか。
【篠原座長】 どうですか。そこまで確認していないかもしれないですね。
【松永教育課程課長】 そうですね。ドイツの連邦政治教育センターで、youtubeでそのセンターのサービスについての周知ということについて、今回はそのサービスの利用者についてまでは伺えていません。
【寺本委員】 ありがとうございます。
【篠原座長】 ほかにいかがですか。
 先ほども申し上げたように、政治的中立性をどう確保しているのかということについて、僕はドイツの例というのは非常に注目していたんですけれども、日本で考えていたほど、その超党派の委員会というものが大きな権限を持っているわけではなかった。そこが全部中立性の担保の元締めみたいになっているのかなと行く前は思っていたんですが、そういう機能まではどうも持っていない。出版物とか副教材とかそういうもののチェックをやっている。これも大事なんですけど。
 そうすることで、ここにもあるように、政党の一部は政治的中立性の問題を取り上げて、いろいろやっているといいますから、日本と似ているところもあるのかなと。政治的中立性をどう担保させていくかというのは、我々のここだけで結論が出る問題じゃないんですけれども、主権者教育を進める上では避けて通れない課題かなと改めて感じました。どうですか、小原先生。
【小原委員】 家庭を巻き込むということからすると、どうしても教員も若干偏らざるを得なくなる嫌いはあると思うんです。ただ、自分のそういう政治的な個人的な志向を、個人情報としてシャットアウトする教員もいると思うんです。それはもう中立的にいろいろ教育していくことができる。いわゆる公務とプライベートをはっきり分けているという先生もいるでしょうし、そこを若干混合してしまっているという問題が出てくると考えられます。これはある程度教員養成の段階で、きちっとただしておく必要が今後出てくるんじゃないかなという気がいたします。
【篠原座長】 どうぞ。
【植草委員】 ちょっと話がそれちゃうかもしれないですけど、ドイツのボイテルスバッハは、実はちょっとうらやましいなというところがあります。というのは、日本ではやっぱり政治をどこまでやっていいかということで、公民科の教員とか関わる教員が、ちょっと疑心暗鬼になっているところがあるんです。何をどこまでやっていいか分からない。
 それと、余りこの原則がないので、聞くところによると県単位でも大分温度差があるような感じがします。この間たまたまある県の先生と話をする機会があって、その県はもともと自由民権運動が盛んだったところの県なんですけれども、そこまでやれるんですか、ちょっとほかでは難しくないですかという話をしました。そうすると、よくそう言われますみたいな。ですからその原理原則みたいなものというのは、なかなか日本でも難しいのかもしれないけど、これがあると、結構やりやすいかなというのはちょっと漠然と思いました。
 以上です。
【篠原座長】 日本の場合、ボイテルスバッハ・コンセンサスとかイギリスのクリック・レポートのアプローチとか、そういう銘打ったものはないんですが、しかし松永さん、法律上は教育の中立性というのは担保されているわけでしょう。どういう規定になっていますか。政治的中立性の問題について、法律上ですけれども。
【松永教育課程課長】 先ほど御紹介をした平成27年の「高等学校における政治的教養と政治的活動について」の通知の中で、その取り上げ方につきましては、「教員は個人的な主義主張を述べることは避け、公正かつ中立な立場で生徒を指導する」ということを述べております。また「指導が全体として特定の政治上の主義等を支持、反対することとならないよう、また、学校の内外を問わず教員が地位を利用した結果とならないようにすること」というのが、今、我が国における政治教育の取り上げ方についての通知の内容でございます。
【篠原座長】 その前の教育基本法を含めた法律上の規定は何かありませんか。
【清水総合教育政策局長】 教育基本法の条文としては2つ、1項、2項がありまして、1項では、「良識ある公民たるに必要な政治的教養は、教育上これを尊重しなければならない」と。こちらは積極的にということでございますが、ただ第2項でもって、「法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない」という形で。
【篠原座長】 これは教育基本法ですか。
【清水総合教育政策局長】 教育基本法です。現行の教育基本法でもこの政治教育の条文は、今の1項、2項という体制で、2項の方でそういう政治的活動としては学校全体として禁じられているところです。
【篠原座長】 これは先ほど言ったように難しい問題なんですけれども、イギリスやドイツにおけるようなそういう中立性の大原則、これを日本でも作る必要があるのかないのか、今の教育基本法や高等学校の通知で十分なのか、その辺も今後の一つのテーマというか、議論ですよね。
 田村先生、どうお考えになりますか。
【田村座長代理】 すごく難しいと思うんですけれども、日本の教育の中立性というのは、やっぱり歴史というか、ちょっと過激な活動で、過去に学生中心でああいうことが起きちゃったものですから、現場もすっかり萎縮しちゃっているというのが今でも影響を受けている。もうちょっと伸び伸びとやれるといいと思うんですけど、ああいうことがあるともうなかなかそれは気にしちゃってということになってしまいますので、難しいですよね。
【篠原座長】 学校で主権者教育をどんどん深めていけばいくほど、この政治的中立性の問題というのはやっぱり非常にリンケージしてくると思うので、政治的中立性をしっかり守った上で主権者教育を展開してもらうというのが本来の趣旨ですから、これをどういうふうに担保していくかというのも、またいずれ機会があれば、皆さん方の御意見も聞きながら、考えてみたいと思っておりますので、よろしくお願いします。
 もうよろしいですか。本日はこのあたりで終了にさせていただきたいと思います。
 あとは事務局からどうぞ。
【大内学校教育官】 本日も貴重な御意見を頂戴しましてありがとうございました。
次回、第5回になりますけれども、日程等につきましては別途調整の上、御案内させていただきたいと思っております。また、お気付きのことがございましたら、毎回のことで恐縮でございますけれども、事務局の方へメール等で御意見等をお寄せいただければと思っております。
 以上でございます。
【篠原座長】 それでは、本日はこれにて終了させていただきたいと思います。ありがとうございました。

── 了 ──
 

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初等中等教育局教育課程課教育課程総括係

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