主権者教育推進会議(第3回) 議事録

1.日時

平成30年12月26日(水曜日)

2.場所

文部科学省 13F1会議室(東館13階)

3.議事録

【篠原座長】 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第3回目の主権者教育推進会議を開催いたしたいと思います。
 本日も御多忙の中、お集まりいただき、誠にありがとうございます。
 本日は佃委員だけが御欠席と聞いていたのですが、近藤委員も急遽、公務のため来られないということでお二人が欠席で、7人の方に出席いただいております。
 また、この会議につきましては、報道関係者より会場の撮影及び録音の申出があり、これを許可しておりますので、御承知おきください。
 それでは、本日の配付資料について事務局から確認をお願いいたします。
【大内学校教育官】 それでは、本日の配付資料についてですけれども、議事次第にございますとおり資料1から資料4を配付させていただいております。過不足等がございましたら、事務局の方にお申し付けいただければと思います。
【篠原座長】 それでは、議事に入りたいと思います。
 本日は新しい学習指導要領における主権者教育について、事務局から説明を受けた後、前回に引き続き関係団体からのヒアリングを行います。
 まずは、事務局から前回の主な意見について報告をお願いいたします。
【大内学校教育官】 それでは、お手元に資料1を御用意ください。第2回までにおける主な意見等ということで、前回会議で頂戴いたしました御意見のうち主なものだけ紹介させていただきます。
 まず資料1の1ページ目、下から三つ目のところでございますけれども、「自分たちの意見や行動によって世の中を変えることができるという体験や実感を味わって社会に出ていくプロセスが必要」、また、「地方自治を身近な素材として扱うべきではないか」というような御意見を頂戴しております。
 大きな表題としては「主権者意識の涵養」の中でございます。
 それから下から二つ目のところでございますけれども、ちょっと飛びますが、「高校生が住んでいる地域の事柄にいかに目を向けさせていくかが重要」、また、「高校の進路指導やキャリア教育とも絡めて主権者教育を進めていくことが必要」ではないかというような御意見を頂戴しております。
 一番下でございますけれども、「OECDが新しい教育改革の方向性として示しているEducation 2030では、生徒をAgency、つまり変革を促す主体にしていくという視点が書かれている。これからの時代には、その主体の育成に学校教育がより関わっていくべきという方向性であり、その中心的な軸として、この主権者教育が重要」ではないかというような御意見を頂戴いたしました。
 1枚おめくりいただきましてその裏面、2ページ目でございます。上から二つ目でございますけれども、「これからの世界は、個人、すなわちセルフが基盤になる社会であり、そのセルフをパブリック・セルフとプライベート・セルフが支えている。日本人はプライベート・セルフがセルフだと思っているが、実は重要な部分でパブリック・セルフがある」のではないかというような御意見を頂戴いたしました。
 次に、「学習内容や指導方法等」についてでございます。上から三つ目の中点でございますけれども、「主権者教育とは、リベラルアーツによる全人格的な教育の上に、個人の利益と公共の利益とのバランスをどうとっていくのか、人間としてどうあるべきかということを、個人個人が考えていくことではないかと考える」というような御意見。
 その次の中点でございますけれども、「欧米で言うシチズンシップ・エデュケーションは「義務」についても教えている」のではないかと。主権者教育を推進していく上で、そういったことを整理していくべきではないかというような御意見を頂戴いたしました。
 また、その次の中点でございますけれども、「主権者教育について、単に投票すればいいという権利の行使だけで終わらせるのか、市民としての必要な知識を授けるのかということを考えていかなければならない」のではないかというような御意見。
 三つほど飛ばしまして下から二つ目の中点ですけれども、「政治的中立性を確保しなければならないといったことも含めて変えていかないと、主権者教育は本物にならないと思う。ただ、これを変えていくことは相当大変なことだと思う。諸外国が行っている例を、そのままストレートに当てはめるのは、成り立ちからして不可能な部分も相当あるのではないか」というような御意見を頂戴いたしました。
 次に3ページ目でございますけれども、上から三つ目の中点でございます。「例えば租税教育では、税金によって自分たちが生かされている、将来は税金を納められる経済的に独立した大人になりたいというような受け止めはあるが、その先の納めた税金がどのように使われているのかをチェックするというような考えが弱い」のではないかというような御意見。
 その次の中点でございますけれども、「選挙に1票を投じることだけが世の中を変えていくというのは非常に単純な思考であり、主権者として、地域や世の中を変えていく様々な武器を持っていること」、この場合は区長にメールを送る制度でありますとか、陳情、請願を議会に出すというようなことでございますけれども、そういったことを「持っていることを学ぶ教育が不足している」のではないかというような御意見でございます。
 その次の中点でございますけれども、社会科や公民科の先生だけがこうした主権者教育に関わるのではなくて、「学校を挙げて全体として取り組んでいくような試みが必要」ではないかというような御意見を頂戴いたしました。
 次に、「基盤となる資質・能力の育成」についてでございます。上から三つ目の中点でございますけれども、「不特定多数のメディアから情報を整理し、判断する力が必要になるため、リベラルアーツによって基盤となる資質・能力を育むことが重要。その際、議論による教育、自ら能動的に学ぶというような教育が大切」ではないかというような御意見を頂戴しました。
 また、次の中点ですけれども、「様々な情報の中から自分で判断し、ものを決めて行動する力を育成するというのが、主権者教育の一番の大本になる」のではないかというような御意見。
 3ページの一番下でございますけれども、「ネットメディアは、見出しからそのニュースを選ぶと、次からはそれに関連するニュースばかりが表示されるようになるなど、自分が選んでいるようでいて、実は偏りのある情報にしか接していないような仕組みになっていることがある。そういったことに気を付けながら、ネットメディアを前提にしてリテラシーを高めていく必要がある」のではないかというような御意見。
 一方で、その次ですけれども、「活字メディアに対するリテラシー能力の努力も放棄すべきではない」のではないかというような御意見を頂戴しております。
 次に4ページですが、「外部の専門家や関係機関等との連携」ということについてでございます。こちらにつきまして、上から四つ目の中点ですけれども、「政治的な教養を育む教育を進める際に、学校現場では政治的な中立性ということに配慮する必要があるため、リアリティーのある政治又は選挙の教育には、どうしても制限が掛かってくる。」いわゆる候補者のところに教員が生徒を連れて行くようなスウェーデンで行っているような活動というのを御紹介いただいておりましたが、こういった「活動を行うことは現状、日本では難しい」のではないかというような御意見。
 次の中点ですけれども、「似たような考えを持っている同級生同士で話したり、先生と生徒だけで対話したりするのではなく、学校外の人たちと対話しなければ深まらない。このため、主権者教育をするのであれば、学校外の人たちを巻き込んで行う必要がある」というような御意見を頂戴しております。
 次に、「家庭教育との連携」ですけれども、上から三つ目の中点、下から二つ目の中点ですが、「若い人と言われている人の親の世代が、既にネット世代になってきていると。大学生以下だけではなく、その親の世代、40代ぐらいまでも含めて変わっていく必要がある」のではないかというような御意見。
 それから一番下の中点ですが、「海外では、家庭で政治の話を当たり前のようにすると聞くので、親の世代も含めて取り返していく必要がある」のではないかというような御意見。
 5ページでございますけれども、一番上の中点で、「家庭教育は非常に大事。家庭教育を学校教育とどのように連動させながら、主権者教育を進めていくかを考えていく必要がある」のではないかというような御意見を頂戴しております。
 一つ飛びまして「選挙関係」でございます。選挙関係の一番上の中点ですが、「若者に潜在的な政治参加意識があり、投票に行こうという気持ちを持っていると感じている。選挙公報等において、投票に必要な判断材料をそれぞればらばらに示すということではなくて、若者にも分かりやすいような示し方をしないと、具体的な投票行動に結び付かないのではないか」というような御意見。
 それから、次の中点ですが、「争点が明確だと投票率が上がるというのは、主権者教育的にも重要な意味合いがある。政治というのは、争点があって初めて政治になるので、争点が明確であるということは、主権者教育の側の問題であると同時に、政治を創り出していく私たち自身の課題」ではないかというような御意見。
 二つ飛びまして三つ目のところですが、「日本の選挙では禁止されている事項が多く、国際標準からするとオーバースペックではないか」というような御意見を頂戴したところでございます。
 第2回の主な意見として、以上、簡単ですが紹介させていただきました。
【篠原座長】 ありがとうございます。
 では、次に新しい学習指導要領において主権者教育がどのように位置付けられているのか、前回は時間の関係でこの説明ができなかったので、きょうはそれをやっていただきたいと思います。それから、またOECDにおいても議論されているAgencyについて、前回、何人かの先生方から話題になりましたので、これについても事務局から説明をお願いしたいと思います。よろしく。
【大内学校教育官】 それでは、お手元に資料2を御用意ください。学習指導要領における主権者教育の位置付けということで、平成28年12月に学習指導要領の方向性を示す答申として中央教育審議会の答申、お手元の答申が示されたところでございます。この答申につきましては、平成27年6月の公職選挙法の改正以降に出されている答申ですので、18歳への選挙権年齢の引き下げの動きを踏まえた上で、こういった答申が出されているということでございます。この答申の中では、左側に示しておりますとおり学習指導要領の改訂の基本的な方向性ということで、現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力、その一つとして主権者として求められる資質・能力というのが中央教育審議会の答申の中で整理されたところでございます。
 簡単に御覧いただければと思いますが、一つ目の丸のところで、一つは18歳への選挙権年齢の引き下げによって小・中学校からの体系的な主権者教育の充実を図る必要があるのではないかと、これを踏まえて学習指導要領を改訂していくべきではないかという御指摘を頂戴したわけでございます。
 それから2点目でございますけれども、主権者教育については、政治に関わる主体として適切な判断を行うことができるようになるということが求められているわけですが、そのために政治に関わる主体としてだけではなくて、広く国家・社会の形成者としていかに社会と向き合うか、それは例えば経済に関わる主体であるとか、あるいは産業に関わったりしながら社会と関わっていくということができるようになることが前提となるのではないかということで、いわゆる政治に関する内容だけではなくて、それを取り巻く経済あるいは社会との関わり、こういったことも含めて主権者教育として考えるべきではないかというような方向性を頂いております。
 また、その次の丸でございますけれども、こうした主権者として必要な資質・能力の具体的な内容としては、国家・社会の基本原理となる法や決まりについての理解や、政治、経済に関する知識を習得させると。このことは、当然知識に関わることですので重要なわけですが、こういったことのみならず、事実を基に多面的・多角的に考察し、公正に判断する力、あるいは課題の解決に向けて協働的に追究し根拠をもって主張するなどの合意を形成する力、よりよい社会の実現を視野に国家・社会の形成に主体的に参画しようとする力であるというような形で、これまではともすると知識・理解を中心に内容の構成というのが重視されている部分が少なからずあったこともあるわけでございますけれども、そのこと以外に育成する力というのを明確にしましょうというのが、今回の学習指導要領で社会科はもとより全教科にわたって重視されている点でございまして、その中で資質・能力として公正に判断する力、あるいは合意を形成する力、社会に参画しようとする力ということで、主権者として必要な力を整理していくというようなことがございます。
 こうした力については教科横断的な視点で育むことができるよう、教科等間相互の連携を図っていくということで右側に示してありますが、横長の表で大変恐縮なんですけれども、主権者として必要な力を育む教育のイメージということで、今申し上げましたような主権者として必要な資質・能力というのがあって、それを育成するに当たって、例えば基本的な原理となる法や決まり、これは社会科や道徳等で学習します。それから政治や経済に関する内容ということで、社会科や家庭科等です。それから、それ以外に自発的・自治的な活動ということで、特別活動において、例えばよりよい学校づくりへの参画、こういったことを実際に各教科、社会科、家庭科、道徳、それから特別活動、こういった教科を関連付けながら主権者として必要な力を育んでいくということが答申の時点で整理されていたということが一つございます。
 ただ、この中央にある法や決まり、政治や経済、自発的・自治的な活動と、こういった内容の部分はここに示しておりますとおりまだ理解事項として、知識・理解に関する事項として当時整理されておりましたけれども、これが新学習指導要領に落とし込みを行う際に、先ほど申し上げましたように資質・能力をベースにして学習指導要領を整理いたしましたので、2枚目以降になりますけれども、ちょっと細かい記述なんですが、学習指導要領の本則の記述が2枚目以降に付いております。こちらについては、2ページ目が小学校、3ページ目が中学校となっているんですけれども、例えば小学校につきまして、小学校社会科、中央の方にありますが、第3学年から第6学年まで示されています。この中で第3学年では地域、地域といってもここは児童にとっての身近な地域ということで市区町村を対象とするような学習、地域学習。第4学年については都道府県の学習が行われます。第5学年については産業や国土に関する学習が行われまして、第6学年については政治あるいは歴史に関する学習というのが行われるわけでございますけれども、今回、主権者教育に関する部分ということで、例えば内容に関わる部分としては、第3学年の(4)のイの(ア)というところに市が公共施設の整備を進めてきたことを取り上げること。その際、租税の役割に触れることということで、従来ですと第6学年で政治に関する学習というのを行っていたわけですが、第6学年の政治に関する学習の中で租税の役割あるいは納税の義務といったことも含めて学習しているんですけれども、それを第3学年の段階から公共施設の整備と関わらせながら、それに租税、税というものが使われているということを学習するような部分でありますとか、あるいは第4学年において、(3)のアの(ア)、括弧の中ですけれども、県庁や市役所の働きなどを中心に取り上げるというような形で、身近な地域あるいは都道府県に関わる行政の働き、そういったものを段階的に学習しながら第6学年の政治に関する学習につなげていくというような構造になっているところでございます。
 また一方で、先ほど申し上げました今のような知識・理解に関わる内容以外に、いわゆる資質・能力として思考力、判断力、表現力の育成というのも今回重視しているわけでございますけれども、それに関わるものとして、例えば第3学年におきまして(3)のイの(ア)というところで、社会生活を営む上で大切な法や決まりを扱うとともに、地域や自分自身の安全を守るために自分たちにできることなどを考えたり、選択・判断したりできるよう配慮することと示されておりまして、実際に身近な地域の安全に関わることについて、自分たちができること、あるいは地域ができることって何なんだろうかというようなことを考える、選択・判断していくというような学習が小学校の第3学年、第4学年で行われています。第5学年においては産業に関する学習が中心となりますが、例えば(2)のイの括弧の中に示されておりますが、ここは農業や水産業について扱うところなんですが、消費者や生産者の立場などから多角的に考えて、これからの農業などの発展について自分の考えをまとめることができるよう配慮するというような形で、自分事として産業に関わること、あるいはこれからの日本の将来を考えること、こういったことについての学習を行っていくことができるよう学習指導要領の今次の改訂において明記したということがございます。
 更に第6学年でございますけれども、従来の政治に関する学習は第6学年を中心に行われておりました。第6学年におきましては、例えば(1)のアの(ア)、括弧の中で囲われている部分ですけれども、ちょっと飛びますが、国民としての政治への関わり方について多角的に考えて、自分の考えをまとめることができるよう配慮するというような形で、国民としての政治の関わり方、こういったことについて考えさせることを明記したり、あるいは第6学年の一番下の部分ですが、イの(イ)というところで政策の内容や計画から実施までの過程、法令や予算との関わり、こういったものに着目しながら国や地方公共団体の政治の取組を捉え、国民生活における政治の働きを考え、表現するというような形で示されておりまして、内容的な充実を3年生から6年生まで図り、内容の系統性に配慮するとともに、資質・能力、特に思考力、判断力、表現力ということで自分なりに考え、自分たちにできることを考えたり、あるいは選択・判断をする機会というのを繰り返し、繰り返し授業の中で展開できるように学習指導要領に明記したと、こういうような改訂を図ったところでございます。
 引き続きまして2ページ目の隣の部分、特別の教科道徳、それから特別活動に関わるところですが、特別の教科道徳については22の内容項目で示されております。そのうち、例えば主権者教育に関わるものとして、括弧で囲われておりますけども規則の尊重、公平、公正、社会正義、勤労、公共の精神、よりよい学校生活、集団生活の充実に関わる内容として、例えば規則の尊重であれば、第5・6学年で「法や決まりの意義を理解した上で進んでそれらを守り、自他の権利を大切にし、義務を果たす」でありますとか、勤労、公共の精神については、同じく第5・6学年で、「働くことや社会に奉仕することの充実感を味わうとともに、その意義を理解し、公共のために役立つことをすること」というような形で主権者教育に関わる内容としての内容項目が示されているということでございます。
 またこれらを、その隣になりますけれども、特別活動というのは学校や学級における課題を児童生徒が主体的に解決に向けて考え、行動するというような学習活動を行う時間でございますけれども、例えば学級活動の中で、学級や学校における生活づくりへの参画ということで、「学級や学校における生活をよりよくするための課題を見いだし、解決するために話し合い、合意形成を図り、実践すること」というような形で、議論しながら合意形成に至る部分というのを特別活動において実際に学習し、実践しているというような状況でございます。
 また、学級内の組織や役割の自覚ということで、「児童が主体的に組織をつくり、役割を自覚しながら仕事を分担して」いくというような内容でありますとか、(3)のところになりますけれども、一人一人のキャリア形成と自己実現ということで、社会参画意識の醸成であるとか、働くことの意義の理解、こういったことについても特別活動の中で学校あるいは学級の中の課題、そういったものの解決に向けて具体的な実践を通じて行われているということでございます。
 こういった内容について、今回の改訂におきましてはカリキュラム・マネジメントという形で関連する教科を有機的に位置付け、関連付けを図りながら、外部の力もかりながら学校教育を運営していくということで、カリキュラム・マネジメントの考え方ということも今次の改訂において重視している点でございます。
 3ページ目につきましては中学校の部分ですので、基本的には同じ構造になっておりますので少し省略させていただきます。
 それから、4ページ目でございますけれども、こちらは基盤となる資質・能力というのをこの会議の中で委員の皆様、先生方から御意見を頂戴しておりました。特にロジック、論理構成の部分と、メディアリテラシーに関わる部分、あるいは議論のルールといったことについての御意見を頂戴していたわけでございますが、関連する内容として国語科の中で、今次の改訂で明確に位置付けられております。
 例えば、一番上の(1)言葉の特徴や使い方に関する事項ということで、これはロジック、論理構成に関わる内容でございますけれども、例えば小学校の第5・6学年のところで、話や文章の構成や展開について理解する、あるいは中学校の第2学年において、そういった展開についての理解を深めるというようなこと、更に高等学校の論理国語において、「効果的な段落の構造や論の形式など、文章の構成や展開の仕方について理解を深める」というような形で、ロジックに関する内容というものが国語科の中で明確に位置付けられているということでございます。
 また(2)のところ、情報の扱い方に関する事項ということで、こちらは国語科の中で新設させていただいている内容でございます。メディアリテラシーに関する御意見をたくさん頂戴いたしておりましたが、例えば小学校第5・6学年のところで情報と情報との関係に関わる内容として、原因と結果など情報と情報との関係について理解することでありますとか、あるいは第5・6学年の情報の整理に関しては、情報と情報の関連付けの仕方について理解する、中学校の第3学年では具体と抽象の関係について、あるいは情報の信頼性の確かめ方、こういったことについて学習していくと。更に高等学校の現代の国語では、主張と論拠など情報と情報の関係について理解する、あるいは個別の情報と一般化された情報の関係について理解する、推論の仕方、妥当性や信頼性の吟味、こういった内容がメディアリテラシー、情報の扱いに関する内容として、国語科の中で今次の改訂においては新設されているというようなことがございます。
 5ページ目では話すこと・聞くことということで、議論の仕方やルールに関わることでございます。これも小学校第1学年から高等学校まで、各学年ごとにそれぞれ議論の仕方、ルールについて学ぶ内容というのが位置付けられておりまして、例えば小学校の第5・6学年、下の方の欄ですけれども、互いの立場や意図を明確にしながら、考えを広げたりまとめたりするというような内容でありますとか、中学校の第2学年であれば、結論を導くために考えをまとめる、中学校の第3学年になりますと合意形成に向けて考えを広げたり深めたりすると、高校の現代の国語でありますと、オのところですが、表現や進行など話し合いの仕方や結論の出し方を工夫する、こういった形で議論の仕方というような内容というのも位置付いております。国語科については全ての教科の基盤にもなる重要な教科でございますので、こういった内容が国語の中にも位置付けられつつ、関連する教科と連動させながら学習していくという構造になっているということでございます。
 次に6ページでございます。6ページにつきましては総合的な学習の時間。実は、今次の改訂におきましては、高等学校においては総合的な探究の時間ということで、総合的な学習の時間から名称を変更しました。この旧総合的な学習の時間について、探究を重視するということで科目の名称、この時間の名称自体を変更したということでございますが、その中の内容の取扱いで次のようなことが示されております。上の部分、第3の2の(4)というところですが、「探究の過程においては、他者と協働して課題を解決しようとする学習活動や、言語により分析し、まとめたり表現したりするなどの学習活動が行われるようにする」ということで、議論を通じながら、あるいは他者と協働しながら考えを深めていくというような学習活動がこの時間の基本になっているということでございます。その際に、例えば比較する、分類する、関連付けるなどの考えるための技法が自在に活用されるようにすること、ということで、議論を進めるに当たっての考えるための技法というような表現で今次の改訂では示させていただいております。
 これは何かといいますと、その下のところですが、学習指導要領の解説に次のように示されています。2段落目のところですけれども、ここでは学習指導要領において各教科・科目の目標や内容の中に含まれている思考・判断・表現に係る「考えるための技法」につながるものを分析し、概ね中学校段階において活用できると考えられるものを例として整理したと。高等学校においては、こうした「考えるための技法」が自在に活用できるものとして身に付くことが期待されているということで、この下のところ、6ページ目の左側から右側にかけてですけれども、これはあくまでも例示ということでここの解説にも書いてあるんですが、およそ10個ほどの考える際の技法ということで、例えば順序付けるとか比較する、分類する、あるいは多面的に見る・多角的に見るというような物事を考えるときにこういう視点に立って考えてみたらどうなんだろうかというような点を示させていただいておりまして、これは実は、先ほど社会科でも少し御覧になっていただいた多面的・多角的に考察するとか、あるいは事象を比較するとかそういうことを、社会科に限らず理科等でももちろん活用されておりますけれども、そういったいろいろな教科の中での学習でも進められていること、これは総合的な学習の時間の中でも考える技法として今回新たに示させていただいているということがございます。
 ちょっと早くなって申し訳ございません。次は7枚目のところですが、公共についてでございます。公民科の公共につきましては、今のような小・中学校社会科での学習、それから国語科や総合的な学習の時間における学習、道徳、特活での学習などとの関連にも配慮しながら、大きく三つの内容で公共に関して学習内容が構成されています。
 一つは、7ページ目の2のAのところですが、公共の扉ということで、この公共の扉の中で、例えばですけれども(1)のところで公共的な空間を作る私たちということで、社会に参画する自立した主体とは何かということを問いながら、現代社会に生きる人間としての在り方や生き方を探究する活動を行っていくということで、その具体の内容としては7ページの右側になりますけれども、人間は、個人として相互に尊重されるべき存在であるとともに、対話を通して互いの立場を理解し高め合うことのできる社会的な存在であるということ。あるいは自らの価値観を形成するとともに他者の価値観を尊重することができるような存在であるという人間としての存在について理解するというような理解事項と、その下、イの(ア)というところですけれども、思考、判断、表現に関する内容が示されているわけですが、社会に参画する自立した主体とは、孤立して生きるのではなく、地域社会の様々な集団の一員として生き、他者との協働により当事者として国家・社会などの公共的な空間を作る存在であること。このことについて理解した内容を基にしながら、多面的・多角的に考察し、表現するというような内容で構成されているところでございます。
 また(2)公共的な空間における人間としての在り方生き方としては、例えば知識・技能に関する内容、アのところですが、知識・技能に関する内容として、アの(ア)選択・判断の手掛かりとして、行為の結果である個人や社会全体の幸福を重視するというような考え方と、行為の動機となる公正などの義務を重んじる、重視するというような考え方、そういういろいろな考え方が選択・判断する際の基準としてあるんだということを理解しながら、こういった考え方を基にして、ちょっと飛びます、イの(ア)のところですけれども、行為の結果である個人や社会全体の幸福を重視する考え方と、行為の動機となる公正などの義務を重視する考え方、こういうような考え方を活用し、自らも他者も共に納得できる解決方法を見いだすことに向けて、人間としての在り方生き方を多面的・多角的に考察するというような内容を学習することを通して、人間としての在り方生き方に関わる内容というのを扉の部分で学んでいくということでございます。
 また一方で、1枚おめくりいただきまして8ページのところの(3)でございますけれども、公共的な空間における基本的原理ということで、こちらでは知識に関わる内容として、例えばアの(ア)で、各人の意見や利害を公平・公正に調整することなどを通して、人間の尊厳と平等、協働の利益と社会の安定性の確保を共に図ることが、公共的な空間を作る上で必要であるというようなことを理解することでありますとか、(イ)のところですが、人間の尊厳と平等、個人の尊重、民主主義、法の支配、自由・権利と責任・義務など、公共的な空間における基本的原理、日本国憲法に示しているような構成要素でございますけれども、こういったことについて理解するというような理解事項をベースとした上で、イの(ア)に示すような公共的な空間における基本的原理について、個人と社会との関わりにおいて多面的・多角的に考察していくというようなことで、公共の扉において人間としての在り方生き方、あるいは公共的な空間を作る基本的原理、こういったことについての学習を行うこととしています。
 こうした学習をベースにしながら、次のBのところになりますけれども、自立した主体としてよりよい社会の形成に参画するということで、現実社会の諸課題に係る具体的な主題をBの中では設定しまして、他者と協働しながら追究したり解決したりする活動を行うと。この際には、冒頭で御覧になっていただいたような内容として、アの(ア)では法に関すること、(イ)では政治に関すること、次の右側ですが(ウ)については経済に関することなどなどの各主題が示されておりまして、それぞれの中で、例えば法に関してでありますと、アの(ア)の3行目ぐらいからになりますけれども、法や規範に基づいて各人の意見や利害を公平・公正に調整し、権利や自由が保障、実現され、社会の秩序が形成、維持されていくことについて理解する、政治に関しては、これも3行目ぐらいからですけれども、よりよい社会は憲法の下、個人が議論に参加し、意見や利害の対立状況を調整して合意を形成すると、こういうようなことを通して築かれるものであることを理解することでありますとか、(ウ)のところ、経済については、これも例えば、4行目ぐらいから、公正かつ自由な経済活動を行うことを通して資源の効率的な配分あるいは市場経済システムを機能させたり国民福祉の向上に寄与したりする役割を政府が担っていること及びより活発な経済活動と個人の尊重を共に成り立たせることが必要であること、こういったことについて現実の具体的な諸課題についての主題を設定し、これについて議論しながら探究していくという内容で構成されております。
 最後にCのところでは、今のような主題を設定したものを更に持続可能な地域、国家・社会及び国際社会ということで、地域、国あるいは国際社会という桁で探究していくような活動というのが一番最後の項目として位置付けられているところでございます。
 9ページのところですけれども、この科目を実施するに当たっては(3)のところで内容の取扱いに示しておりますとおり、アの科目の内容の特質に応じて、学習のねらいを明確にした上でそれぞれ関係する専門家や関係諸機関などとの連携・協働を積極的に図るというようなことでありますとか、あるいはイのところでキャリア教育充実の観点から、特別活動などと連携し、自立した主体として社会に参画する力を育む機能が求められているというようなこと。
 さらには、9ページの右側の中段、カにおきまして、内容のBについて、(イ)の3行目ぐらいからですが、個人を起点に他者と協働して多面的・多角的に考察、構想するとともに、協働が必要な理由、協働を可能とする条件、協働を阻害する要因、こういったことについて、Bの学習をする際には考察していくというような内容でありますとか、さらには、もう一枚おめくりいただきまして10ページ目ですけれども、(ウ)のところで、(エ)に近いところですが、下から3行目のところで、指導のねらいを明確にした上で、現実の具体的事象を扱ったり、模擬的な活動を行ったりするというようなことが学習指導要領の内容の取扱いにおいて規定されているということでございます。
 この科目の実施に当たりましては、11ページになりますけれども、指導計画の作成と内容の取扱いということで、2の(3)のところで社会的事象については、生徒の考えが深まるよう様々な見解を提示するよう配慮するというようなことであるとか、他方で、特定の事柄を強調し過ぎたり、一面的な見解を十分な配慮なく取り上げたりするなどの偏った取扱いということがないように留意するというようなことも規定されているということでございます。
 最後、12ページ目でございます。特別活動でございますけれども、高等学校における特別活動につきましては、先ほど小学校で見ていただいた内容を、高校生の発達の段階に即して示されているところでございまして、例えば12ページ目の2の(1)ホームルームのところですけれども、アのところで、ホームルームや学校における生活を向上・充実させるための課題を見いだし、解決するために話し合い、合意形成を図るというような内容でありますとか、その下、イのところですけれども、生徒が主体的に組織をつくり、役割を自覚しながら仕事を分担して、協力し、実践すること。さらには12ページの右側ですが、社会参画意識の醸成ということで、社会の一員としての自覚や責任をもち、社会生活を営む上で必要なマナーやルール、働くことや社会に貢献することについて考えて行動することとしており、このようなことをホームルーム活動、小・中学校でいうところの学級活動に当たる部分で行っているところでございます。生徒会活動、学校行事についても関連する記述が盛り込まれているということでございまして、この高等学校に関する学習指導要領につきましては、2022年度、平成34年度、平成とは言わないことになりますが、この年度に入学する生徒から適用されるということでございまして、今まさにその準備に入っているところでございます。
 学習指導要領における主権者教育について、大変長くなりまして申し訳ございません。以上でございます。
【篠原座長】 ありがとうございます。
 では、続いてAgencyについて。
【白井教育課程企画室長】 失礼いたします。教育課程課の白井と申します。資料3に基づきまして、OECDにおけるAgencyに関する議論について御説明させていただきます。私、以前OECDに出向してアナリストとして勤務しており、現在は日本のナショナルコーディネーターとしてこのプロジェクトに関わっております。
 それでは、資料のスライド1番というところでございます。このAgencyがどのような文脈で議論されているのかということをまず御説明させていただきたいと存じます。御案内のように2000年からPISAという国際学力調査が始まってございます。またその後、PIAACという成人を対象にした学力調査も行われてございます。こうした調査を行う際に、OECD側としてはどのような理論的な根拠に基づいてこういった学力を測っているのかということについて説明することが求められます。その理論的根拠として、DeSeCoというプロジェクトがございまして、そちらの方でKey competenciesと言われるものを2003年にOECD側で定義してございます。ただ、このKey competenciesは2003年からもう今は15年たっておりまして、当時なかなか一般的ではなかったAIなども現在は広く普及しているというようなこともございまして、OECD側ではこのKey competenciesを現在のものに新しくアップデートするというプロジェクトを行っております。それがEducation 2030プロジェクトというものでございます。2018年、今年ですけれども、この2030年のLearning Frameworkの概要を、OECDの方で策定しているというところでございます。
 次のスライドの2ページが2003年に作られたKey competenciesの概要でございます。三角形のトライアングルのような図でございますけれども、この際には多様な集団で相互作用する力、自立して行動する力、ツールを使いこなす力というような概ね三つがこれからの子供たちに求められるcompetenciesとして、Key competenciesとして定義されたということでございます。
 ただ、これがスライドの3番にございますようにOECD Learning Framework 2030というところでは更に精緻化されておりまして、特にこれから2030年に向けてWell-Beingを達成していくことが必要である。個人だけじゃなくて社会全体にとってよい状態を達成していくためにどのような力が必要なのかということを検討しまして、この2030年に向けては新しい価値を創造する力、対立やジレンマを調停する力、それから責任ある行動をとる力、こういったことが必要ではないか。そして、それを動かしていく中核的なエンジンとなるのがAgencyという概念ではないかというような議論が行われてございます。
 スライドの4ページにお進みいただきたいと存じます。このAgencyという言葉はなかなか日本語になじみやすい訳がなくて、どのように解するのか難しいところもございます。これまでの議論の背景となった文献などを基にして、あえて日本語にいたしますと、「自ら考え、主体的に行動して、責任をもって社会変革を実現していく力」といったような訳が一番近いのではないかと考えてございます。この中には、例えば将来的な目標を見据える力、ゴールセッティングの力であるとか、批判的な思考力、Critical thinking skill、あるいは現状に疑問を持つ力、こういったことも含まれているんではないかというように指摘されてございます。
 Agencyといいますと、一般的には代理人という言葉になります。確かに代理人、例えば文化庁という組織が文部科学省の下にございますけれども、文化庁の英語訳はAgency of Cultureと言ってございます。この代理人という訳にはその代理、任された中でその人が主体的に動いてその責任を全うしていくという意味が含意されているということでございます。例えばピーター・ドラッカーなども組織の変革を図る際に社員がChange Agentになっていくと、そういうことが必要であるということも指摘しておりまして、まさにここで言っているAgencyというのは、子供たちであれば子供たちの学校の世界、それぞれの地域の世界において子供たちが自ら考えて社会変革していくという意味でのAgency、社会の代理人にとしてのAgencyと理解するのが一番分かりやすいのかなと考えます。
 なお、近い言葉としてオートノミーということがございます。オートノミーですと一般的にはちょっと強過ぎる、自分のことについてはほかの誰にも言われないというような強過ぎる意味があるのかなと思いますので、少し意味としてはAgencyと異なるんじゃないか。また、よく主体性という言葉が使われますけれども、この主体性についても多義的な使われ方があると思いますが、このAgencyについては単に自分が積極的にやる、主体的にやるということだけではなくて、それを超えて社会的な責任を果たしていくという含意があるというところが大きな違いかと存じます。
 スライドの5ページ目です。このAgencyの特徴としてこれまで指摘されているところとしては、Contextualなもの、人や社会における関係性の中で育っていくもの。それからNon-linear、非直線的な性格があること。即ち何か一方向的・直線的にAgencyが育っていくということが決められているものではなくて、様々な往還関係、人と人との関わりの中で育っていくものである。それからこのAgencyはMulti-dimensional、多面的な性格がありまして、道徳的な価値観であるとか、社会参画であるとか創造性、様々なものが必要になってくるということ。それから最後ですけれども、AIによる代替が困難だ、まさに人間として必要になってくるスキルであるということが指摘されてございます。
 次のスライドの6ページにお進みいただきたいと存じます。このAgencyという言葉、少し新しい言葉のように聞こえます。それでは日本の教育の中にこの概念がなかったのかどうかということになりますと、実は、例えば教育基本法にも非常にこのAgencyに合致するような言葉がございます。「公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと」とございまして、まさにこれはAgencyそのものではないかとも考えられるところでございます。
 また、学習指導要領の解説においても、「子供たちが様々な変化に積極的に向き合い、他者と協働して課題を解決していくことや~(中略)~新たな価値につなげていくこと、複雑な状況変化の中で目的を再構築することができるようにする」というように、Agencyにも通じるような考え方が盛り込まれております。
 スライドの7ページ、先ほど大内学校教育官からも説明がございましたけれども、特別活動をはじめとして様々な教科においてもこのAgencyに通じるような考え方が盛り込まれているところでございます。
 スライドの8ページにお進みいただきたいと存じます。このように学習指導要領、教育基本法など、このAgencyに通ずる概念というのは様々あるわけでございますけれども、ただ実際にこのAgencyが日本の学校教育において十分発揮されているかとなりますと、少しこれは別のところがあるかと存じます。例えば漢字の書き取りや計算ドリル、これは子供たちがもう分かっているのにやらなければいけないという実態があったり、あるいは入試があるから勉強しないといけない、勉強そのものというよりは入試という外在的な圧力があったりする。あるいは内申点を上げるために挙手して発言するというようなこと。あるいは生活面ですと、例えば近年でも重いランドセル問題というものがございました。もし子供たちがランドセルが重いという不便があるのであれば、先生と対話してそのルールを変えていくというのが本筋であるのに、ひたすら耐えているというようなことが報道されている。あるいは、よく言われるブラック校則。もし校則に何か問題があるんであれば、これも生徒同士、あるいは先生と対話して変えていく、部活についても同様でございます。現状に満足していればそれでいいのかもしれませんが、仮に疑問や不満があるならば、なぜその現状を変えようとしないのか、そういった部分でまだまだAgencyの発揮が足りない部分があるんじゃないかということがございます。
 このStudent Agency、生徒のAgencyというものが必要になってくるということがございますが、それに加えまして、10ページのところですけれども先生のAgencyということも大変重要視されている概念でございます。昨今の報道等でも先生がなかなか職員室の在り方を変えにくい、部活動の在り方などについても疑問に思っていてもなかなか変えにくいというような御指摘もございます。その意味では、先生方もAgencyを発揮していただく必要がある。
 また、11ページですけれども、このAgencyというのは1人だけで発揮するものではなくて、Co-Agencyといっておりますが、他者と協働してこのAgencyを発揮していくということもこのAgencyの重要な部分というような御議論がされているというところでございます。
 その次には、OECDのこのプロジェクトについて中間報告的な文書がございまして、先般、文部科学省の発行しております初等教育資料、中等教育資料にその日本語訳を構成させていただいておりますので、またこれはお時間のあるときに御参考に見ていただければと存じます。
 こちらからは以上でございます。
【篠原座長】 盛りだくさんのいろいろな説明を頂いたので、これについて皆様方からの御意見、御質問があればお願いいたしたいと思います。学習指導要領の件でも結構ですし、Agencyの件でも結構でございますからどうぞ御意見を。また、第1回目のときにお願いしましたけど、御発言の際には名札を前に立てていただいて、終了後にはまた名札を元に戻していただければありがたいと思います。では、いかがでしょうか。
 どうぞ、小玉委員。
【小玉委員】 どうもありがとうございました。
 二つあって、一つはコメントで一つは質問になるかと思うんですけど、コメントとしては、前半の学習指導要領の今回の改訂で重要なところは、先ほどの話にもありましたように内容ベースから資質・能力ベースに考え方が大きく変わったとされている点に関わります。つまり内容を教えるという形だけではなくて、どういう力を育てたいのかというところをベースにして、初めに内容ありきではないカリキュラムにしていくということで、それを社会科や公共というところに落とし込んだときに、いわゆる理解ということだけではなくて、資質・能力の育成ということでいうと主体の育成、1ページ目の表にありますけれども、政治的主体、経済的主体とその複合的な主体という言葉が出てきます。主体という言葉が頻出するのが今回の学習指導要領の大きな特徴ですけれども、主体を育てるというところにフォーカスしているということ、これは主権者教育的にも非常に重要だと思うんです。そして、その主体というのがどういう主体なのかということを考える際に、後半で御報告いただいたOECD 2030のAgencyというのが非常に重要な視点かなと思います。前回も話が出ましたけれども、白井室長の説明の方で言いますと、今までの主体育成というのは、既存の社会に対して適応する生徒を育成するというところにやや力点があったと思うんですけれども、OECDが考えているのは社会を変えていくのは若い世代の生徒自身であるというところにあります。私たち自身がまだ見えていない将来、Society5.0という言葉もありますけれども、まだ見えていない社会へ臨んでいくときに、社会を変えて創り出していく、変化を生み出す主体を育成するというところにOECD全体が大きくかじを切っているということとの関係で主体というのを位置付け直していく必要性があると思います。
 そう考えますと、OECD 2030で出しているAgencyの議論と、それから学習指導要領で出している主体という概念は結び付けて考える必要があって、そうすることで単なる客体ではない主体を育てるというところが新しい学習指導要領の一番のポイントであり、そのまさにど真ん中に主権者教育が位置付いていくというところが明確になるかと思いますので、確認しつつ議論として深めていければと思います。
 それからもう一点目は質問になるんですけれども、文部科学省が出している重要な文書で主権者教育、政治教育に関わるものとしては、2015年1月に文部科学省が出した「高等学校等における政治的教養の教育と高等学校等の生徒による政治的活動等について(通知)」、これは2015年通知と呼ばれているものですけれども、それまでの1969年の「高等学校における政治的教養と政治的活動について」という通達を廃止して、それに代わるものとして出されているんですけれども、その中にはいろいろ重要なことが書かれていますが、1969年の通達と2015年の通知の決定的な違いは現実の具体的な政治的事象を、69年の方は留意して取り上げてくださいと、取扱注意事項だったんですけれども、2015年の方はそれを取り上げることが重要ですという事項になったというところで、政治を干物扱いしないでちゃんと生もの扱いして、生の生きている政治を取り上げてくださいと言っていて、ここは非常に重要なポイントだと思います。それは本日の報告でいいますと、例えば公共の中の8ページの「B自立した主体としてよりよい社会に参画する私たち」というところで、理解を前提にしながら「自立した主体として解決が求められる具体的な主題を設定し」というところにおそらく当てはまっているんだろうなと思いますし、さらに言えば、10ページの左側にある、Bのイを行っていく上での取扱いとして10ページの一番最初のウというところにあるように、現実の具体的な社会的事象を扱い、模擬的な活動を行う、この模擬的な活動の中には例えば模擬請願であるとか、模擬選挙であるとかそうったものが含まれると思うんですけど、そういうものが入っているということで、恐らく学習指導要領の中にしっかりそこが干物ではなくて生ものの政治を取り上げるということが重要だということが書かれてあると思います。
 ただ、現実に高等学校の先生方がこれを見て取り上げるというところまで行くには、かなりハードルがあるのかなと思います。もう少し何か具体的な素材、たとえば文部科学省と総務省が出した副読本というのはその一つの資料ですけれども、ああいう例示をしてみるというような工夫があってもいいと思いました。注意して読み込まないと10ページのウに行き着かないので、もうちょっと強調するようなやり方であったり、あるいは総合的な探究の時間で出ている、6ページの左側にあるような複数の対象を比較するというやり方を例として示したり、などの工夫がもとめられると思いました。複数の対象を比較するということの中には、例えば政党の意見の比較みたいなものが当然入ってくるわけで、そうしますと、例えば、学校に政党や政治家を呼んで討論会なんかを開くということをカリキュラム・マネジメントの中に入れていくということなどが、研究の素材として提案できるし、そうすれば、学校の現場でもそれを研究してより深い実践に転換、深化していきやすいのかなと思います。そのあたりについてどういうことをお考えかということをお聞きしたいと思います。
【篠原座長】 どうしますか、質問は後でまとめてにしますか、個々にもう行きましょうか。では、大内さん。
【大内学校教育官】 小玉先生、ありがとうございました。
 現実の具体的な事象を扱う際に、特に今回の改訂で、従来はともすると留意しながら慎重に進めてきたところがあるわけですけれども、それを積極的に扱っていこうという場合において、学校の先生方は非常に苦慮しているところもあるでしょうからということで、それをサポートできるような内容、あるいは支援する教材をというような御指摘であったかと思います。本日、この後、大山校長先生にも実際の実践等をプレゼンいただくことにもなりますので、具体のところはそちらに委ねたいと思いますけれども、一つは学習指導要領の解説というのを出しておりまして、この中で、特にBの部分に関しましては、各事項について、現実の諸課題についての主題を設定する、具体的に言いますと問いを立てるというような形での授業展開を想定しており、その問いを、参考として解説の中で幾つか提示しているところでございます。
 また、もう一点御指摘を頂戴いたしておりました総務省さんと協働して作っております主権者教育に関しての副教材では、模擬選挙等、あるいは模擬請願も含めてですけれども、現実の具体的な諸課題に対応する際の実践例も示させていただいておりますので、こういった学習指導要領の解説と副教材の活用、こういったことで実際に高等学校で指導されている先生方をサポートしていけるようにしたいと思っております。
【篠原座長】 よろしいですか。
 ほかに御意見はございませんか。じゃあ、田村先生、どうぞ。
【田村座長代理】 ありがとうございます。ちょっとお伺いして、なるほどなと思うこともあるし、これはどうかなということもございましたので、ちょっとお伺いし、理解を深めさせていただけるとありがたいと思っているんですが、実は今、イギリスが一つの例なんですが、初等中等教育には相当問題が多発していまして、教育改革ということでイギリスは必死になって今やっているわけなんですが、その際に一つの大きなやり方として学校評価というのをやって、それを具体的に使い方を変えていくということで変化を刺激して改善していこうという動きがあるんですが、学校評価の最大のポイントが変革する力なんですね。変革する力があるかどうかを最大のポイントにしているという、そこが非常に新しい考え方だなと、Agencyがどっちが影響しているのか分かりませんけれども、そういう動きがあるということを最近知りまして、非常におもしろいなと思っていたんですが、その際、やはり意味はAgencyをどう受け止めるかということだと思うんです。教育というものがギリシャ哲学でいうところのパイデイア、つまり子育てという意味で教育の原義があるとすれば、その中にはAgency、私は当事者意識という言葉を使っているんですけれども、どうも今の白井室長さんのお話を聞くとなるほどと、それだけでは十分ではないんだということがよく分かりましたが、しかし具体的にはなかなか方向性を決めて当事者意識を発揮するというところまで含めますと、方向性がなかなかつかみ切れないんですね。ですから、Agencyの力をなかなか発揮できないというのは、どういう方向かよく分からないというようなことがその基にあると思うんですが、とにかく、でも変えていこうという気持ちがまずないとどうしようもないんで、それでAgencyという言葉を使ったのかなと思っていたんですが、それをさらに拡大解釈といいますか、方向性までを含めたものをAgencyの定義にしちゃうというそういう考え方でいいのかどうかということが一つの御質問です。
 例えば日本でいうと、大学入試はaptitudeという言い方をしていますよね、aptitudeは日本語に訳すと適性検査ですよね。
 Agencyという言葉とちょっとずれているような気がするんですが、既設の大学の仕組みにどう適応するかということを測るために入試をやるんだという考え方が主流といっていいと思います。センターの考え方も基本はそこから始まっているわけですから。ですから問題を大学の先生が作られていると、高校以下の先生、今回は少し関わっているんですけれども、基本的には高校ではなくて大学の先生が作るという、こういう基本があったわけです。それがどれぐらいAgencyという考え方で払拭されてくるか、それは疑問としてお伺いしたいということです。
 それから、最後にこれはお願いなんですけれども、仮訳というのをなるだけ早くとっていただいて、本当の訳ということで我々が安心して使えるようにしていただけると大変ありがたいというように思います。仮訳ですと、どうもこれを基本にして議論するというのはどうしても腰が引けた話になってしまいますので、英語では議論し切れませんので、どうしても日本語でやらざるを得ませんので、是非ひとつこれはできればと思うんですけど、そんなことをちょっと感じましたので、御意見を頂ければと思います。
【篠原座長】 ありがとうございます。
 じゃあ、白井さん。
【白井教育課程企画室長】 ありがとうございます。田村委員の方から、まず方向性について御指摘を頂きました。このOECDのフレームワーク、3ページのスライドのところにあるものでございますけれども、Agencyを発揮する方向性でありますが、基本的には2030年のWell-Beingを達成していくためにこのAgencyを発揮していくということが基本になってくるかと思います。この教育のフレームワークは各国のカリキュラムに対して何か影響を及ぼすというよりは、各国が自分たちのカリキュラムを見直す際にこういった視点も含めて鏡として使ってほしいということで作られていますので、基本的には日本がこういう視点を踏まえてどういうふうにAgencyを学校教育の中に取り組んでいくのかということを考えていくというのが基本になるかと思っております。ただ、参画する各国を含めて、このWell-Beingの追求ということが、Agencyの方向性として定められているということになります。
 それから先ほど御指摘いただきましたaptitude、大学入試との関係性のところでありますけれども、5ページのスライドでもAgencyの特徴として例えばContextualであるとか、あるいはMulti-dimensionalであるということが指摘されています。そういう意味では大学入試の中で、特に一般選抜のような試験になりますとなかなかこういった部分、Contextualということなのでそれぞれの置かれた立場でどのようなAgencyを発揮していくのかということも変わってくるということがございますし、またAgencyの中でどういう部分、例えば社会参画の部分に着目するのか、道徳性の部分に着目するのかといったようなことについてもまた変わってくるということがございます。なので、例えば共通テストのようなものでは特にaptitudeの方が中心になってくるのかもしれませんが、今の高大接続の議論の中では、特に多面的・多角的に生徒を評価していこうということが基本になってくると思いますので、例えば高校までの学習の履歴、そういったものに着目して、こういった部分についても取り入れていくことは可能なのかなとは考えているところでございます。
 また、仮訳についてでございます。この仮訳については、多分これは最終的に取れることはなくて、これは用語の問題でございますけれども、政府としての公式な文書ということになりますと最終的に日本政府としては日本語を使うということがございますので、通常は外国の文書を訳した場合には仮訳というのも最後まで使うということになってございます。ただ、訳自体は各分野の専門家にも相談した上でしっかりしたものになっていると思いますので、その旨、御理解いただいて御使用いただければと存じます。
 以上でございます。
【篠原座長】 よろしいですか。
【田村座長代理】 ありがとうございます。
【篠原座長】 ほかにございますか。小原委員、どうぞ。
【小原委員】 英語かプログラミングであったと思うんですけども、カリキュラム・マネジメントでこの教育を進めるということとなっています。しかし、例に出てくるのが社会科と国語と特活というように限定されています。カリキュラム・マネジメントというと、まさしく全教科横断的なイメージがあります。それを受ける側からすると、それぞれの教科で何を削らなければいけないのかという問題が出てきます。削るにしても、それぞれ既得権みたいなものがありますから、そう簡単には削ることができません。その辺、現場に混乱を招く表現であるカリキュラム・マネジメントは、主権者教育が大事なものであれば他の教科と同じように教科として立てるかも検討していかないといけないのだと思います。それをせずに内容だけ増えて教科の数は変わらない、しかも時間数も変わらないとなったら何かを犠牲しなければ成り立ちません。スタートの時点でここを考慮しないで議論を進めていくと、最後になって、答申が棚上げになってしまうリスクがあります。
 それからもう一つ、私の勉強不足なのかもしれませんが、主権者教育の主権者というのはどこかできちっと定義されている言葉なんでしょうか。これは英語にはならない言葉です。恐らく主権在民から来たのでしょうが、主権在民そのものが用語としてはなく、文章であるのです。それをこのように表現したということは今後誤解が生じる。というのは、主権というのを辞書で引くと元首、あるいは国王というような意味が通常的に使われています。それに対して主権者という場合は、では、何を意味するのか。英語にならない日本語というのは、これから学校教育をやっていく上で非常に大きな足かせになってきます。例えば既に高等学校に留学してくる生徒も増えてきています。また、それが日本の大学に進んでいきます。主権者教育は国籍が前提になりますから、日本の国籍を持っていない人は対象外かと、はなから授業から外すと、それはそれでまた別の問題が生じてきます。非常に国籍を前提としている教育というのは、ますます国際交流が学校レベルで盛んになる時代においてはよほど気を付けて定義しておかないと、独りよがりの教育論になってしまうので、ここは今後気を付けていかなければならないんではないかなと考えております。
 以上です。
【篠原座長】 いろいろな御指摘を頂きました。主権者に代わる言葉は何かありますか。
【小原委員】 はっきりと「政治教育」とするか、イギリスが使っているシチズンシップから「市民教育」か「国民教育」とするか。「政治教育」、あるいは民主教育であれば国籍は余り前面に出てこないでしょう。「民主教育」、デモクラシー教育とかポリティカルエデュケーションとかであれば、それは各国に共通する教科としても成り立つのではないでしょうか。
【篠原座長】 なるほど、政治教育とかそういう論理を全体にかぶせると、これはまた別の意味のいろいろハレーションも起きかねない、難しいですよね。主権者教育という言葉は、今はもうこれが当たり前のように使われてきているんですけど、言葉のルーツは分かりますか。
【大内学校教育官】 ありがとうございます。
 まず、教育基本法第14条でございますけれども、「政治的教養」という言い方をしておりまして、従来、文部科学省においては「政治的教養の教育」という言い方が一般的であったかと思います。先ほど小玉先生から通知について御紹介いただいておりましたけれども、通知の中でもこういった表現を用いているというところでございます。「主権者教育」につきましては、総務省さんの方の常時啓発事業のあり方等検討会等の報告の中で「主権者」という表現を用いていたということがございまして、今回の副教材の作成に当たりましては、文部科学省と総務省とで協働で作ったということもありましたので、「主権者教育」、「主権者」という表現を使っております。
 なお、国籍の点でございますけれども、一般論として私どもが「主権者教育」という言葉を用いる場合は、権利を行使する主体というような意味でございますので、何かしらの国籍とかそういう形での意味合いをそこに込めているということはございませんで、一般論としての権利を行使する主体というような意味合いになっていると考えてございます。
【小原委員】 英文はないんでしょう。
【大内学校教育官】 英語表記それ自体は文脈に応じて使われるというところがあるかと存じます。
【篠原座長】 どうぞ、田村さん。
【田村座長代理】 「主権者教育」でいいんじゃないかと思うんですね。英語にならない言葉というのは日本語にはいっぱいあるので、例えば、「国際」なんていう言葉は、実は英語にならないんですね。例えば「国際交流基金」というのは英語で言うとThe Japan Foundationなんですよ。日本語で言う国際というのはちょっと特殊な意味があるのは、世界的に地政学的に長年の歴史と伝統の中で日本語では通用する言葉というのができていて、これは英語にはなりようがないんで、「主権者教育」も、はっきり言って市民革命をやったかやらないか分からないというような議論がされるような国で、独特の言葉の表現として「主権者教育」というのが生まれたというのが分かるわけで、これは欧米の思想とはその部分ではなかなか通じない、通じ切れないところがどうしても出てきますので、「主権者教育」という言葉を使うことでむしろ日本独特の状況ですね、よっぽど気を付けていないと言いなりになって、長いものに巻かれろという社会を作ってしまう国なんだと、国柄だったんだということを意識する意味でもこういう言葉を使っていいんじゃないかと私は思います。英語にならないので十分だと思いますね、その点は。
【小原委員】 今まではいいですけども、これから留学生が増えたときに、その子たちに履修させるときに何と表現する、親に対して何と表現する?教育内容に投票が出てきたときに、親は、私はそんなつもりはない、また憲法や法律が、全然違うということで親対応、子供の説得、これは非常に厳しくなる。
【田村座長代理】 むしろ違うことが分かっているのでいいんじゃないですかね。
【小原委員】 いや、だから子供たちを授業から外すのかと。対応が難しくなるのでは?
【田村座長代理】 それを解説すればいいんじゃないですかね、違っているんだと、そういう歴史、流れの中で言葉というのは生まれてくるから、日本ではそういうふうに使っているけど、だから英語にはならないという解説をすることでむしろ理解が深まるんじゃないですかね。
【篠原座長】 この議論を続けるとエンドレスになりかねないので、とりあえず小原委員からそういう提起があったということで、きょうは止めておきたいと思います。
 それから、新しい教科として立てるのかというような話も小原委員からありましたが、この説明はどうでしょうか。
【大内学校教育官】 ありがとうございます。
 新教科につきましては、まず今次の学習指導要領の改訂の前段として、現行の学習指導要領によらない教育課程を編成するような学校を指定する取組をこれまでしておりまして、そういった知見を得ながら新しい教科の設定について議論してきているところでございます。今回の主権者に関わって申し上げると、これまでの検討ということでは、主権者教育だけを取り立てて教科として設置するというような御議論というのは、研究が十分でなかったということがございました。例えば、今議論している主権者教育とまた違う概念で大変恐縮なんですけれども、シチズンシップなど、いろいろな教科との関連付けを図りながらそういう科目を設定するという研究をしている学校というのはございましたけれども、結果、今次の改訂の中では、公民科の教科の中に新たな科目公共を設定するという形での対応をするということになった次第でございます。
【篠原座長】 よろしいですか。
 ほかにございますか。では、植草委員。
【植草委員】 御説明ありがとうございます。
 先ほどの学習指導要領のところでちょっと気になっていたんですけど、小学生、中学生、高校生でそれぞれ教科横断型というような形で取組というのはすごくいいんですけれども、実はすごく気になっているのがいわゆる学校種を超えた連携みたいな、特に小学校の6年生、今回の学習指導要領で今までの小学校6年生の政治的な分野が大分下に、3年生以降に落とされてはいるんですけれども、中心は小学校6年生だと思うんです。6年生から中学校を通して、やがて高校で始まる公共というのが大体高校1年生相当かなと、主権者教育ですから少なくとも2年生までのうちにやっておかなきゃいけない。そういうことを考えると、小・中・高というその続きのところはすごく重要になるんじゃないかなと思います。
 それと、これは先日たまたま私、こういう委員を引き受けたということがありまして、ある学校で、千葉県習志野市なんですが、そこに谷津小学校というのがありまして、そこで公開授業研をやっていました。この小学校へ見に行ったんですけれども、ちょうど小学校6年生で12歳の選挙権という形で、小学校の建て替え、そこから派生して市役所の仕事、市議会、選挙の歴史、そして模擬投票という一連の流れをやっていたんです。私は最後の研究協議のところまでいたんですけれども、もちろん高校の教員で出ているのは私だけで、小・中では中の先生が少しいました。その中でやっぱり出てきているのが、学校間を超えて、例えば模擬投票というのを小学校のうちから繰り返し何回もやっていいんだろうか、小学校でやる、中学校でやる、高校でもやる、それでいいんだろうかとか、あと小学校段階ではどこまでやればいいんだろうか、中学校ではどこまでやればいいだろうか、高校はどういうことをやっているんだろうかと、そういうのがちょっとお互い見えていないところが現実問題としてあります。もちろん学習指導要領等を読み込めばいいんですが、現実はそういう形。特に高校の現場、これから公共が入ってくるんですが、先ほど見ていましたけど、公共の扉というのは非常に小・中学校の道徳との関連性が高いと思います。高校というのは道徳はないんですね。多分公共の扉のところというのは、非常に現場感覚でいうと難しいなという感じがしています。
 ということなので、そういったところで、文部科学省の方で例えば小・中・高をまとめた何か研究指定ですとか、よく特別支援ですとか福祉とかで地域を指定してなんていうことをやっているかと思います。そういうものですとか、あとはやっぱり主権者の学校外のコーディネーター的なもの、こういったものが必要なんじゃないかな、なんていうことも思っています。
 済みません、以上です。
【篠原座長】 お答えになれますか。
【大内学校教育官】 植草先生、ありがとうございました。
 まず、小・中・高をまとめて地域に参画していくような学習をするような学校とかそういうものを指定してはどうかというお話がございました。これは以前も主査などから御指摘いただいておりましたが、今現在、地域を指定し、小学校、中学校、高等学校を対象とした実践協力校というのを設けています。具体的な内容としては、平成29、30年度などの2か年指定になるのですが、例えば平成30年度におきましては、小学校は1校、中学校は3校、高等学校が12校でございます。これらの学校について、今、実社会との接点を重視した課題解決などに取り組んでいるところですので、こういった学校の成果を普及できるような形にしてまいりたいと思っております。
 それから主権者教育の関係で、学校外の方をより学校の中に入っていただくにはコーディネーター役が必要ではないかというような御指摘がございました。これは都道府県によってそういうコーディネーター関係を設けているところもございますし、例えば、消費者教育の関係とかですと、消費者庁において、学校の先生方の負担をできるだけ軽減するという観点や、外部の方ができるだけ入りやすくするという観点から、コーディネーターの配置を進める取組を行っておりますので、そういった取組や都道府県教育委員会の取組を参考にしながら考えていきたいと思っております。
 以上でございます。
【篠原座長】 よろしいですか。
 大内さん、指定校というのは、主権者教育の一種のモデル校みたいなものとは違うんでしょう。
【大内学校教育官】 主権者教育とは銘打っておらず、正式な事業名を申し上げると「実社会との接点を重視した課題解決型学習プログラムに係る実践研究」と言いますが、主権者教育という限定が掛かるというよりはむしろ実社会との接点を重視していますので、先ほど植草先生におっしゃっていただいたように、高等学校の場合、福祉や商業なども入ってくるものとなっています。
【篠原座長】 これはいつからやっているのですか。
【大内学校教育官】 平成27年度から中学校・高等学校をベースに実施しておりまして、その後、平成28年度以降は、小学校にも対象を広げたという状況になっております。
【篠原座長】 分かりました。
 それと、植草委員から御指摘があった小学校からずっと中学、高校の公共までで模擬投票ばかり繰り返すような感じでいいのかという問題提起があったのは、私も全くそう思うんですけども、その辺については何か御見解はありますか。
【大内学校教育官】 この点については、なかなか行政的にこれがという言い方をするのは難しいと思っておりますので、きょうは大山先生にもお越しいただいておりますので、実践を中でどのように扱っていくかというのをプレゼンいただければと思います。
【篠原座長】 ほかに御意見ありますか。松川委員、どうぞ。
【松川委員】 感想めいたことですけども2点、申し上げたいと思います。きょう、改めまして学習指導要領の解説を頂きまして、内容ベースから資質・能力ベースへ、主体を育てるというふうに大きくかじを切っているなということを改めて認識したわけですけれども、特に小学校です。これをまともに読みますと結構高度なことをやるように読み取れるわけですけれども、小学校は2020年からこの新しい学習指導要領の完全実施で、もう移行措置期間に入っています。小学校現場の実態としては英語が教科になるとか、プログラミング学習が入るとか新しい内容が入ってきていて、ここに書かれていることを以前から社会科とかいろいろなことでやっていることといえばそうですけれども、そういう意識で現場が動いているとは思えないんです。前回の御議論でも高校では遅過ぎると、小・中学校で鍛えていくことが大事だということから見ると、この内容をもう少し小学校の先生にアピールする必要があるなと思うわけです。それと同時に、今教員採用試験の倍率が大変下がってきておりまして、東京都でも小学校は2倍を切ったと聞いていますし、新潟県は1.2倍と、岐阜県も2.何倍くらいです。しかも年齢層が非常に若返ってきているわけです。小学校の先生は御承知のように1人で全科をやるわけですので、なかなかこんなふうに理想的にはいくのかなと大変心配であります。いろいろ指導書等々も出ていると思うんですけども、この内容を新しい若い先生方が張り切って前例にとらわれずに取り組んでいただけるような資料集なり、実践事例のようなものを具体的に示していただく必要があるかなというのが1点でございます。
 それからもう一点は、国語のところで新しく情報の取扱いに関する事項というのができたという御説明で、大変結構だと思うんですけれども、前回もお話がありましたが、今や大人、子供を問わずネットで情報をとって、ネットで発信する傾向が強くなってきているわけです。もちろん活字の新聞を使った教育等々もあるんですけれども、もう少しネットを意識した情報の取扱いということを明確に打ち出すべきではないかと思います。先ほどもAIに取ってかわられないAgencyというような話がありましたけれども、今ネットではレコメンド機能というのが非常に発達していまして、何かをやると、その人が今までやった経歴を検索して、買い物なんかでもそうですけど、この人が買いそうなものとか、興味を持ちそうな情報というのを先取りして出してくるようになっているわけです。今後投票行動もネットを使ってやるようになるのか、ならないのか分かりませんけれども、情報の取扱いということについて従来の活字文化に加えて、この部分をかなり強調していく必要があるのではないかと思いますので、よろしくお願いいたします。
 以上です。
【篠原座長】 松川委員の今の御発言は御意見ということでよろしいですか。
【松川委員】 はい。
【篠原座長】 では、次に進めさせていただきたいと思います。
 お待たせいたしました。本日は全国高等学校長協会から都立豊島高等学校長の大山先生にお越しいただきました。大変長時間お待たせして、済みませんでした。
 大山先生は、全国高等学校長協会大学入試対策専門委員もやられ、全国公民科・社会科教育研究会会長も兼ねられているとお聞きしております。主権者教育を担っている高等学校の校長としてのお立場から、20分弱ぐらいの尺で御発表いただきたいと思います。その後、時間も押していますけど若干の質疑応答、意見交換を行いたいと考えております。
 では、大山先生、どうぞよろしくお願い申し上げます。
【大山校長】 ありがとうございます。お時間を頂きます。
 私、専門が、今御紹介いただきましたように公民科でございますので、学校教育における主権者教育の実際ということを、公民科を中心に申し述べたいと思います。また、この3月まで3年間中学校の校長もしておりましたので、小・中学校で私が知る限りの実践についても御紹介できればいいと思っております。
 申し述べたいことは大きく3点です。1点目は主権者教育の具体的な展開ということで、2点目は社会的要請から推進される様々な○○教育というものを統合し、中核となる主権者教育。それから3点目に公民科の必須履修科目公共に期待することということで、大きく3点について申し述べさせていただきます。
 1点目の主権者教育の具体的な展開でございますが、(1)として選挙教育について述べます。御存じのように選挙啓発運動から派生した選挙教育というのは、淵源を遡ると1920年代に当時の東京市長の後藤新平が有権者の拡大を見越して選挙における腐敗や不正が起こるであろうことを予防するために清く正しい1票ということを発想したのが最初でございまして、1935年(昭和10年)に選挙粛正運動という、粛清ではなく粛正ということですけれども、これが大々的に展開されて初めてこのときに尋常小学校の修身で選挙の意義とか選挙の神聖さということについて授業が行われたというのが戦前の例でございます。
 第2次世界大戦後すぐ、もちろんこれが明るく正しい選挙推進連盟とか、現在の明るい選挙推進協会というような形につながっているものなんですけれども、基本的には有権者を対象としていた啓発運動でございますので、これが学校教育の中に入ってきたのがいわゆる選挙教育と呼ばれるものだということを御承知おきください。
 一つ目に申し上げたいのは模擬選挙。これは先ほどから出ている特活や総合的な学習の時間で行われているということがほとんどなんですが、小・中学校では、今は児童会役員とは言わずに児童会代表とか児童代表というらしいんですけれどもその選挙。それから中学校の生徒会役員選挙で立会演説会があり、それから応援演説があって、その後、三、四十年前ぐらいは教室に戻って選挙管理委員が投票用紙を配付して書いて、例えば後ろから集めるみたいな、プライバシーだだ漏れというような状況が形式的にあったりしました。私の記憶ですと、今から30年前ぐらいに生徒会役員を担当していましたときに、生徒がやはり本物の選挙と同じような選挙を役員選挙でやりたいということで、じゃあ、投票箱とかはどうしようかという話になったときに、選管にお願いしたら投票箱は貸すけれども、あとは貴重で高価なものだから貸し出せませんというのが現状でした。ですから、記載台をどうしようかというので、当時の生徒が中学校でやってきたというので出てきた例が、ガスレンジの油はねを受け止めるアルミのコの字に曲がるやつがあったと思うんですけど、あれを幾つか並べて記載台にして投票するなんていう工夫も行われていました。今や、選管が全面的に無償で協力していただけるようになって、実際の投票用紙交換機や記載台、投票箱、計数機を貸し出していただけるようになり、かつ、立会演説会と投票の合間に選管が選挙制度について説明していただくというようなこともできるようになりました。
 今のところ、小・中学生のニーズに合わせた複数の政党と書きましたが、複数の党、例えば老人党であるとか、アニメ党であるとか、野菜党であるとかリンゴ党であるとか、小・中学生のニーズに合わせて、最初は人気投票だったんですけれども、それが次第になぜその党を選んだのかという根拠を明確にして、ワークシートを書かせたりしながら模擬投票をするというようなことが小・中学校に広がりつつあります。
 一方、高等学校なんですけども、高等学校は大きく言うと二つに分かれまして、架空の市や町の複数の候補者に教員や卒業生が扮して立会演説会を行ったり、応援演説を行う。その内容としては社会保障や社会資本、租税や立法に関する、先ほど出ていましたけど分かりやすい対立的な二つの意見あるいは三つの意見というのをそれぞれの候補者が並べて、その候補者の演説を聞いた後に投票するというようなことが実際に行われています。それからその一方で、実際の選挙の候補者に選挙公報に基づいて模擬投票する進学校もございます。その進学校の先生の言っていることをちょっと引きますと、「私がこれまで本物にこだわってきたのは、本物をやらないと実際のところが分からないからです。争点となる課題はたくさんあり、選挙公報を見るとこんなに候補者がいる。自分はどこに投票するのかすごく悩む、そこで悩まないと実際の投票で誰に投票してよいか分からず、行かないとなってしまう。投票に行くことは意味があることを知ってもらいたいということで実際の模擬投票を行っています」ということですが、ただ、これはなかなか進学校じゃないと難しいというところは正直言ってあります。
 その次にこの選管とかNPOがやっていただいている出前授業も、アニメやプレゼンソフトを用いて分かりやすい制度説明をしてくれるようになったおかげで、生徒の間には選挙の制度についての認識は深まりつつあるといったところです。
 まとめますと、実際の選挙、本物の道具を使って疑似体験できることの意義と意味は大きいということがあって、これも実際やってみた教員の意見ですけれども、「私は模擬投票は高校生には幼く、高校の主権者教育で大事なのは政策を議論、判断し、合意形成を図ることだと考えていました。しかし実際に模擬投票の授業を実施すると生徒たちは本物の投票用紙や投票箱に興味を示し、選挙に対する興味関心がとても高まった現実を見ました」というようなことがあって、実際に選管が貸し出してくれるような、幟まで貸し出してくれたり、マスコットキャラクターが出てきたりもするんですけども、そういったようなイベント的なものが生徒の興味、意欲を高めているということは確かにあります。ただ一方で、客体として受動的に投票行為のみを行うイベントでは、継続的に選挙を通じて主権者として国政や地方自治に参画しようとの主体的態度を養うことはなかなか難しい、不可能とちょっと大げさに書きましたけれども、そういったことがあります。
 そこで、(2)として広義の主権者教育というのが出てくるんですけども、幾つかに分けてお示ししました。1点目はリテラシーということで、NIEの手法などを活用して、ここでは新聞記事の例を挙げているんですけども、都立高校では平成27年度から全ての都立高校に新聞5紙を置いて、図書館を活用して新聞を使った授業が図書館で行えるというような、読書活動の推進という意味合いもあるんですけども、そういったことが行われています。
 先ほどから問題になっているように、新聞記事を読むだけじゃなくて、ネットの情報をどういうふうに処理していくかというネットに関するリテラシーというのも今は大変大事になっているんですが、これについてはまた後で申し述べます。
 2番目がディスカッションということです。これは賛否を問う二項対立型、例えば消費税は増税した方がいいのか、現状のままがいいのか、あるいは減税した方がいいのかというような二項対立型のディスカッションを行ったり、問題解決型、例えば所得格差を解消するためにはどのような政策が望ましいかということ、なかなか難しいんですけども、それから提案型、望ましい社会保障の在り方というのはどうだろう、というような感じで進化しているディスカッションのありようが各高等学校で見られるようになってきました。
 三つ目は合意形成です。望ましい社会の在り方について、先哲の政治・社会思想(功利主義、リベラリズム、リバタリアニズム、フェミニズム、共同体主義など)を活用して議論し、合意に至るような授業も次第に行われるようになってきています。
 それから4点目、政策立案なんですけども、例えば少子高齢化をテーマにして子育てしやすい環境づくりについて自分たちのグループの政策を作る、持続可能な社会保障制度について作るというような政策立案提言の試みも見られるようになりました。
 それから、模擬請願ということなんですけども、これについては私も特筆できるような例は余り知らないので、実際は議会の議場を見学しに行ったときに地域の課題について質問や要望を出して、それに答えていただくというようなことをやっているというのは耳には入っております。
 それから最後に模擬議会ですけども、これは各校で実施した地域の活性化策を討論するグループワークの成果を代表グループが実際に議会に行って発表するとか、それから小・中学校では子供たちの質問に市長はじめ執行部が答弁する形式でも実施していると。それから、中学生サミットや高校生サミットとして、青少年健全育成協議会というのが全国レベルで各都市、区ごとにあるんですけれども、そういった方々の協賛でこういう生徒会の役員を集めたりしてこういったことを実施しているという例もあります。
 まとめますと、学校の教育活動、学習活動として一生懸命やっている生徒たちなんですけども、これが大学に行って解放された時点で、解放されたというのは失礼ですけども、そこまで態度が持続しないということが最大の課題で、要するに先ほどから出ているように公民科をはじめとした各教科・科目で他者と協働して自分の見方・考え方を成長させる取組を社会参画の態度形成にいかに架橋させるかというのが課題になっています。
 この課題を解決できる鍵になってくるのが2番目の社会的要請から推進される様々な○○教育ということなんですけども、これは、済みません、何々教育という項目だけ並べておりますので若干説明させていただきます。
 1番目の人権教育は、以前は個別的視点から被差別部落やアイヌ、ハンセン病患者などを取り上げて理解する、体得するというようなところがみそだったんですけども、最近は普遍的視点ということで、理論的に考え、根拠を持って相手に自分の考えを説明し、相手の考えを傾聴する自他尊重の考え方というのが人権教育の中で大きく取り上げられてくるようになりました。このことによって各教科・科目で人権教育的な試みというのができるようになっています。一方で個別的視点を、例えば数学で点字の規則性を見出して、自分の氏名を点字で書いてみるなんていうような個別的視点に立った数学の授業という試みも行われておりまして、人権教育はなかなか盛んになっていて、この普遍的な視点から個別的視点へわたるところで主権者教育との関わりが出てきているのかなと思われます。
 それから2番目の道徳教育なんですけども、道徳教育については公民科の現在の現代社会や倫理を中核的な指導画面として、先哲の思想などを参照しながら人間としての在り方、生き方についての認識を深めさせる取組というのが進んでいます。それから、東京都教育委員会が各都立高等学校に1単位で必ずやらせている「人間と社会」という都独自の学校設定教科があって、これがサブテキストなんですけども、この中にも「主権者としての自覚」という項目がありまして、これはもともと平成19年度から教科「奉仕」というサービスラーニングを学ばせる教科があったんですけども、これに道徳教育を加味して「人間と社会」というふうに科目の名称を変更して、各都立高等学校に義務付けています。こういった形で主権者教育につながるような道徳教育を行っている例もございます。
 3点目、キャリア教育ですけども、キャリア教育についても、適正な職業観や勤労観というような狭いところから、キャリアを広く自分が様々な集団や組織の中で果たす役割と捉えて、自分の能力や適性を見極めて適切な職業観、勤労観を育てる取組というように広くとってまいりましたので、主権者教育とつながってくるところが出てきていると思います。実際に企業を訪問し、課題をもらって解決策を提案し、企業の担当者にもんでもらいながら最終発表を企業担当者の前で行う取組ということも行われています。
 4番目に国際理解教育です。国際理解教育は、文字どおりこれは国際理解教育拠点校というのを置いて、海外の姉妹校に代表生徒が訪問してホームステイをしながら、ここが重要なんですけども、自分が外国の人に紹介したい日本の文化についてミッションを必ず立てて、それを紹介する、相手に理解してもらったり、興味を持ってもらったりするというような試みがあって、これはオリンピック・パラリンピック教育において学校ごとに応援する国を5か国決めて、その国について調べて、大使館の人を呼んで話を聞いたり、いろいろ質問したりするというような試みと併せて、国際理解教育も国際関係の中で主権者として自他を尊重するという大きな試みに伸びつつあるといったところです。
 それから伝統文化理解教育は、日本各地域の高度な技能を、例えば革製品であるとか、提灯であるとか、箸であるとか、江戸指物といったものを、自分の住んでいる地域の技能を誇りに思い、地域貢献意識を高めるという取組が様々に行われていて、結構、主権者教育の中で大切なのはやはり自己有用感とか、自尊感情というのがとても大切なところがあって、先ほどの人権教育と併せてこの伝統文化理解教育もそういう役割を果たしているところがあります。
 それから6番目の消費者教育ですけども、これは悪質商法や適切な消費ということを理解させるという試みから、現在は経済主体としての消費者の自立を促す法について学ぶというように進化していまして、これも主権者教育につながるような形になってきたなと思っています。
 7番目の法教育です。法教育は小・中学校から、例えばごみ出しルールや掃除当番をめぐってのトラブルであるとか、有能なんだけど独裁的な国王がいる王国を仮に考えた場合に、その是非であるとか、自動車事故のトラブルであるとか買い物のトラブルといったような身近な事例から、自他を契約ということを通して相互尊重するような法というのはどういう在り方があるのかというような考え方につながってきています。
 8番目の金融教育ですけども、これは自分との関わりで住宅ローンや自動車購入など人生の節目で生じる出来事、これと金融の働きを関連させて理解するという取組がありましたけれども、現在では起業家精神に関わらせて、様々な金融の働きで何が実現できるのかというのを提案させるような授業に進化しているところです。
 それから、9番目の市民教育は神奈川県の全県立高校で行われている授業で、政治、司法参加、消費者自立、個人内道徳、道徳教育を主にしているシチズンシップ教育なんですけども、これも主権者教育の中核となるような教育かなと考えています。
 それから、済みません、書き忘れたんですけども10番目に租税教育というのがありまして、これは国税庁が中心に進めているんですけども、例えば国や地方の政策の根拠に、どのような財源や税源があるのかというのを考えて候補者を選ぶような模擬選挙を、この租税教育の中でも行っているということがあります。
 それからもう一つ忘れたんですが、環境エネルギー教育というのがありまして、これは持続可能な社会を考えるための基本となる教育で、理科4科目との連携が不可欠になっています。ごみ処理や水再生事業などの施策について理解し、よりよい施策を提案するというようなことを行っています。
 済みません、時間がありませんが、3番目に公民科の必履修科目「公共」に期待することなんですけども、以前、現代社会が始まった頃の生徒のいろいろな課題について理解した後の感想文というのは大体こういうようになっていたんです。「この問題はとても重要だと思う、自分以外の誰か解決してくれる人が出てくれることを切に望む」というふうな他力本願的な課題解決的な立場から自己疎外するような、意欲は高まったけど解決しようとする態度にはならないような生徒が進路多様校を中心に多かったというようなことがあります。これを解決するために出てきたのが「公共」で、大きな課題かなと思っていますけど、中学校で完全に制度やシステムについて理解した上で、この公共という科目では方法的知識や方略的知識というのを習得しようと。つまり、命題として民主社会がどう大切なんだとか、経済的自由がどういうふうに大切なんだということを理解した上で、それを社会的事象に対する見方、考え方を働かせて、どういうふうに解決策を他者と協働して図っていくかということなので、ある意味、高校ではもう事実的知識については余りやりませんよと、要するにそれを前提として、知的基盤がもうあるという前提で様々に考えさせていくという科目なので、そういった難しさはあると思います。
 それから(3)として○○教育を包括、包摂して課題追究につなげる科目の特色があって、そうは書いていないんですけども人権教育、キャリア教育、道徳教育などの観点を含みながら、様々な教科・科目との連携で課題追究学習を行っていくという科目になっています。これがいわば主権者教育のあるべき姿と私は私的に考えていますけども、「課題を多面的・多角的に捉え、自らの意見を形成し、根拠をもって自らの考えを主張して他者を説得し、また合意形成を図る力を育む」ということを新しい教科、「公共」に期待できるのではないかと思いますけれども、一方で先ほどから出ていますように社会に参画する、あるいはアクセスするためのルートやチャンネルというのをどう獲得させるかとか、それからツイッターなどのSNSで「ディスる」というんですけども、批判的なことを書いたり、文句を書いたりすることで私は批判精神を発揮したり、社会参画しているという気になっているような若者の現実というのがあって、こういう子たちのメディアリテラシーをどうしていくのかというのが、今後の高等学校教育における主権者教育の課題だと考えています。
 済みません、延びましたが以上です。
【篠原座長】 ありがとうございます。
 それでは、今の大山先生のお話に対して御意見なり御質問があればどうぞ。
【小玉委員】 どうもありがとうございます。
 いただいた資料で「大学生まで態度が持続しないことが課題」だと書かれてあって、これは結構重要な御指摘だなと思いました。大学にいる者としては責任を痛感する点です。高大接続改革と言われているときの前提として、高等学校までは受験勉強を一生懸命やって疲弊して、大学では何か生き生きと学び始めるみたいな前提をよく私たち、大学にいる者が抱きがちなんですけれども、今現実は若干違っているんじゃないかと思っています。大山先生のお話にあるように、中・高生がかなり生き生きやっている、それを、大学が潰すという現実が一方ではあるような気がしています。高大接続改革で主権者教育を考えたときに、その辺を考えなきゃいけないかなと思うんですけど、何かそれについてお考えがあればという質問です。
 あともう一点、これは提案というか意見なんですけど、高校生の姿というのは大山先生のお話からもかなり出てきているので、是非高校生に実際にこの場に来ていただいて意見を伺うというようなことも御検討いただければいいかなと思います。
【篠原座長】 追ってまた相談いたします。
【小玉委員】 はい。
【篠原座長】 どうぞ、大山先生。
【大山校長】 今、大学入試、大学が変わって高校が変わって、大学入試が変わるという三位一体改革と言われているところがあるんですけど、もともとはやっぱり大学から始まったアクティブ・ラーニングなので、それを今高校や中学でまねしているというか、そういった状況なので、ああいった形の自由闊達な、もう昔のはいまわる社会科と言われた時代じゃない、こんなに生徒が生き生きと主体的に働いている授業というのが非常に増えてきた中で、これはでもやっぱり大学に行って講義、今、大学はどうなんですか、講義型なんですか、やっぱり、そこはよく分からないですけど、私らの頃はマスプロといって大教室で講義をされていてというようなことだったんですけど、今は多分、僕が大学1年の頃からでも何とか演習といってゼミ形式が増えて、結構アクティブなことをいろいろやれて、いまだに大学1年でやったゼミの楽しさというのは忘れられないところがあるので、ああいった形で継続していけば、それが自分のより大人としての意見形成につながるというようなところがあって、ただそれはやっぱり18歳でちょっと上がる選挙率が下がるというのがあって、それは住民票だけの問題なんだろうかというところがあるんですけど、ただ大学ではうまくつながっているような例は、僕の学校の近くに立教があるんですけど、一度見せてもらいましたけけど、なかなかおもしろいゼミをやっているなと拝見いたしました。
【篠原座長】 ありがとうございます。
 ほかに。どうぞ。
【植草委員】 大山先生、ありがとうございました。
 一つ教えていただきたいのがあります。私も校長の立場で、非常に今回いろいろなところで、都立の方でやっていらっしゃることを興味深く、またすごく勉強になるところがありました。
 実はすごく私、気になるのが評価のところなんです。先生のお話にありました○○教育と、これは正直言ってイベント的になってしまうことが非常に多い。あと、個々の生徒については、例えばパフォーマンスについてはルーブリックを使ってというような評価、又はポートフォリオによって生徒が自分の経験というのを外に出す力というのが出てくるかなと思うんですが、今回、特に学習指導要領で協働の力、要するにほかの生徒と一緒になってやる、だからグループ学習とかそういうのが非常に多くなるんじゃないかなと思うんです。そのときに、例えばプレゼン力、つまり非常に人当たりがよくてうまく説明できる子、若しくはそのグループがすごく評価が高くて、例えば無口で分析力がある子とか、資料集めがうまかった子なんていうものへの評価はなかなかしづらい部分があるのかなと思って、私もすごくそこは悩みどころなんです。先生の都立高校をはじめ、いろいろなところでいろいろな御見識があると思うんで、こういう評価をやっているよなんていうのがもしあれば、教えていただけたらありがたいなと思います。
【大山校長】 正直申し上げますと、今都立高校をはじめとして評価についてはかなり厳しい。もうすぐ、もうすぐというかまだ出ていないんですかね、高等学校にもいよいよ観点別評価が入るというようなお話になっているんですけども、各都立高校では今戦々恐々として、今まで目分量的な閾値で5・4・3・2・1を付けていたんですけど、これからは厳密にA・B・Cをやっていなくちゃいけないということで、ほとんどの都立高校教員は中高一貫教育を除いたら多分やっていないと思いますので、今おっしゃったような口頭で発表するのが得意な子、まとめるのが得意な子、そういった一人一人の子を、小学校のような形の評価分析で評点まで行けるのかというようなところがはっきり言って一番痛いところです。今は評価をどうするのかというのは東京都教育委員会を中心にいろいろ研究しているところなんですけども、実際の教員たちにどういうように周知していけるかというのは、今最大の悩みの種です、正直言って、そこまでしか申し上げられません。申し訳ありません。
【篠原座長】 よろしいですか。
 では、大山先生、きょうはお忙しい中、貴重なお話を頂きましてどうもありがとうございました。
 本日予定していた議題はここまででございます。
 最後に1点だけ御報告です。一部の委員の皆様方にはお声掛けをさせていただいておりましたが、主権者教育の先進国事例調査ということで12月5日から11日まで、私と小原委員と事務局とともにドイツ、イギリスを訪問調査してまいりました。次回以降この事例調査について、また御報告させていただきたいと思います。
 それでは、次回の予定などについて事務局から御説明をお願いいたします。
【大内学校教育官】 本日は長時間にわたりありがとうございました。次回、第4回の日程でございますけれども、別途日程調整させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。また、毎回でございますけれども、お気付きのことなどございましたら、メール等で御意見等をお寄せいただければと思います。
 以上でございます。
【篠原座長】 それでは、本日はこれで閉会といたします。委員の皆さん、どうもありがとうございました。どうぞよいお年をお迎えください。

── 了 ──
 

お問合せ先

初等中等教育局教育課程課教育課程総括係

03-5253-4111(代表)(内線)2073