いじめ防止対策協議会(平成30年度)(第2回) 議事要旨

1.日時

平成30年10月29日(月曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. いじめの重大事態に係る調査報告書の分析について
  2. その他

4.出席者

委員

岡野委員,栗原委員,高田委員,佐藤委員,新海委員,水地委員,田村委員,
針谷委員,笛木委員,松谷委員,道永委員,森田委員,横山委員

文部科学省

永山初等中等教育局長,丸山初等中等教育局審議官,大濱児童生徒課長,
松木生徒指導室長,粟野課長補佐,北﨑調査官,星専門官

5.議事要旨

※議事に先立ち,新しい委員の紹介・文部科学省内における人事異動についての報告が行われた。その後,永山初等中等教育局長・座長より挨拶があった。
※事務局より資料の確認があった。

≪議題(2)その他≫
※事務局より「いじめ対策に係る事例集」完成の報告,「平成29年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査権結果について」についての説明があった。

【座長】  ただいま事務局から説明があったが,いじめ対策に係る事例集は皆さん方の御尽力でこういう出版物の形になった。問題行動等調査だが,委員の皆さんから御意見・御質問があればお出しいただきたい。
【委員】   まずはいじめ対策に係る事例集について,この会議で何度も協議をして,その結果がこの冊子になったということで,担当された児童生徒課の皆さんに心から敬意と感謝を申し上げたい。できたものを見ると,簡単なように思うが,これだけのものをまとめるための労力は半端なものではなかったと思う。都道府県教育委員会連合会の会長方が集まる全国レベルの会議の席において,またそれぞれの市町村教育委員会において,そしてまた各学校において十分な活用をされるように,私も呼び掛けてまいりたい。 それから2点目だが,いじめの状況等のグラフ,大変分かりやすいグラフを示していただいた。件数がかなり増えたということで,その増えた原因というか,文部科学省で考察した中身も伺い,なるほどなと思った。私は高等学校の方がよく分からない中で発言をしているが,義務教育の中では今,いじめが大変重要な教育課題だということで叫ばれており,以前と比べると各現場の校長はじめ先生方が本当に真剣な気持ちでこのいじめ対策に当たっているのではないかと思うわけで,その中で件数が増えたということは,各学校の認知する力が向上したからだという文部科学省の考察を伺って,そういう考察をしていること自体ほっとしている。しかし頑張っているにもかかわらず増えているという部分を,やはりもう少し考察すべきではないかと思う。数値がそのまま現在の評価につながってしまうと,現場の意欲という部分でマイナスかなと思う。内容的には本当に重要な,この先起こってもらっては困るという重大案件もあるが,一般的には努力をしているけれども今この結果であると,前よりも先生方の目が肥えてきているという見方も,是非忘れてはならないということを感じた。
【事務局】  いじめの認知が増えることについて,文部科学省として肯定的に評価するという児童生徒課長通知を,三,四年前くらいに出した。全国的に文部科学省のスタンスとして示していて,事あるごとにそのような見解は伝えているので,引き続きその認識を広めたい。
【座長】   単に数値だけで判断するのではなくて,どういじめに対応したのか,その対処の内容,あるいは日頃からの対応の体制,そういうものにも目を向けてもらいながら,さらに子供たちの現実と認知率,これはどうしてもギャップが出てくるが,そのギャップを埋める工夫は引き続き我々も検討するし,現場の方でも対応してもらいたいと思う。
【委員】  41万件というのはかなりの数字だと思うが,これはやはり肯定的な評価をすべきだと思う。それだけ先生方がしっかりと子供たちの関係性を見ようということだと思うし,特に小学校の低学年について,これだけ手広くフォローができているということは評価すべきところだと思う。やはり小学校の低学年はすごく難しいということを先生方から伺って,そこでその意識がちゃんと現場に届いているということなので,これは評価したいと思う。数字だけが先走ってしまい「またこんなに増えているのか」というふうに一般の方は思ってしまうので,そうではないのだということをもっと世間にもどんどん出してもらえればと思う。それからいつも言っているが,やはり入口と出口の問題で,解決がどうかといったところとセットにして報道,あるいは結果をフィードバックしていかないと,数字だけが独り歩きする,というところはしっかりと押さえていく必要がある。それから少し気になるところが数字の問題で,7ページでまだゼロだと言っているところがある。ここは前年度から一応6.1ポイント向上しているとは言いながらも,まだ4分の1の学校についてはいじめがありませんというようなことを言っているので,ここについては引き続きしっかりと取組をしてほしい。文部科学省の見方を徹底していただければと思う。それから全国平均でいつも最下位だと言われているところに佐賀県が出ているが,佐賀県も,2年前からすると倍くらいになっているということで,非常に一生懸命頑張っている。そういう意味では文部科学省の取組が少しずつ現場の方に届いているのではないかといったところなので,引き続き各都道府県の方にもこの状況をフィードバックしてもらえればと思う。それから最後に重大事態が増えているというところが非常に問題視すべきところかもしれないが,これも,被害者側が重大事態だと言い,その疑いがあればそれは重大事態として取り上げる,といったところがしっかりと認識されつつある結果だと思う。この数字だけ見ると,本当に自死事案とか,何か大きな事案が増えているのではないかと誤解されると思うが,そうではなく、いじめ防止対策推進法の精神にのっとった形でやっているということを伝えていくことが大事だと思う。この中でどれだけ重大事態と認定されたのか分からないが,とにかく重大事態として捉えたことはすごく大事なことだと思うし,今まで見逃されていた重大事態をしっかりといじめの枠の中で捉えていると思う。疑いがあるということでスタートしているということであれば,これはしっかりと評価してよろしいところだと思うので,その旨もまた現場の方にフィードバックしてもらえればと思う。
【委員】  最後のページの自殺の状況についてという表の数値の見方について,これは警察庁の調査と文部科学省の調査で,文部科学省の方は学校から報告があったものの合計数ということだと思うが,この自殺した児童生徒が置かれていた状況というところで,いじめの問題というのがマークされているのが,全部で10件となっている。これは学校からの最初の報告の際に,いじめがあったという報告の合計数という見方でよいか。そうすると,この数と,その後被害者の方から重大事態というような申出があった場合とか,そこは別のものと見てよいか。その辺だけ数字の見方を教えてもらえればと思う。
【事務局】  自殺事案の発生直後には,いじめが原因であるということは分からないことがあるが,その後に調査を経て,いじめが原因,あるいは原因の1つであるとわかったものについては,この数字に入れるようにしている。
【委員】  そうすると,後からのものも入れて10件というのが平成29年度の把握ということですね。
【事務局】  そうです。
【委員】  分かりました。
【委員】  13ページのグラフについてだが,各都道府県のいじめに関わる実態がこのグラフのとおりと言うわけにはいかないだろうと思う。文部科学省の方でいじめを認知するための評価の基準が示されていると思うが,どういうものがいじめに当たるのかというものが,調査のレベルで配付されていて,それを見ながらそれぞれの都道府県で集計がされていると思うが,差が激し過ぎるなという気がする。認知する側の力がどうなのかという部分もあるだろうが,ここら辺は文部科学省としてはどのような考察をしているのか。
 それで今後またいろいろな調査がなされると思うが,この差をどのように生かして,これからの調査を行う予定なのかということもお聞かせいただきたい。
【事務局】  都道府県ごとに数字が多かったり少なかったりするという地域差による部分については,必ずしも完全にわかることではないが,幾つかの認知件数の多いところに問い合わせたところ,そういうところでは教育委員会がリードをして認知を高めるための学校に対する取組をしているという事実が伺えた。なので,積極的な取組をすることで認知というのは上がるのだなと思った。各都道府県に私たちの担当者が出掛けていって各教育委員会や学校関係者を集めた周知活動,行政説明というものを行っているし,また,冒頭紹介した事例集の中にも認知について良い取組事例とか,あるいは「ヒヤリ・ハット」事例なども入れているので,こういう具体的な事例も使いながら,さらに認知を高めていく取組をしていきたい。
【委員】  自殺の状況についてということで最後のページになるが,先ほども質問があったが,警察庁と文部科学省で100近いカウントの違いがあるが,この違いの背景と,それから文部科学省と警察庁とで91名違うが,この91名はどのような分類に入るのかという情報があったら教えてもらいたい。
【事務局】  この数字の差というのは毎年出てしまうものだが,お子さんが亡くなったときには必ず警察が,それは事件か事故かということを確認するために全件把握する形になる。なので,自殺した子供の数という意味では,警察庁と厚生労働省の調査が正確なのだが,他方で,それが必ず学校側に伝えられるかというと,そうではないケースがあり,その差が90名となっている。学校と保護者との連携というか,信頼関係を高くして,そういった事案をできるだけ把握したいと思うが,やはり中には家庭の方から学校に対して伝えられないことがあるということで,それがこの数字の差になっている。
【委員】  その90名の中に,警察には事情を説明して,警察の方では自殺と考えているけれども,何らかの事情で学校には言えない,学校には御遺族の意向とかで言っていない中に,いじめの背景があるかなと,これに関してはどのように把握していったらいいのかと思ったのだが。
【事務局】  正直難しい課題で,そもそも自殺したという事実自体が学校側に伝えられていないケースなので,なかなか難しいところはあると思う。
【委員】  今の自殺の件だが,厚生労働省はたしか自殺対策ということで,今年度は分からないが,検討会を持っているはずだ。日本医師会の理事会で常にその報告があったのだが,子供たちの自殺については厚生労働省の方で余り対策がとられていない。これだけの事実を文部科学省で持っているということはすごく大事なことで,件数を把握するだけでなく,その後の対応ということで,是非厚生労働省と情報共有をしてもらえればと思う。 子供の死因の中で自殺が一番多い。とても大事なことだと思うので,よろしくお願いする。
【座長】  では,引き続きそういう努力をお願いします。
【委員】  同じく自殺の20ページだが,この表の一番下から2番目の「不明」が140という,140人死んだけれども理由が分かりませんというのは,ちょっと何とかならないのかなという印象だが,いかがか。
【事務局】  自殺するケースというのは,遺書が残っていないケースが多いと聞いており,そういったケースの中で,要因が分からないというケースがどうしても出てくる事情があると聞いている。これが140という不明の数になっていると承知している。
【委員】  子供が死ねば,家族にとってはとんでもない事態だし,学校にとっては重大な事柄だが,どうもよく分からないということで報告を上げてしまう。その後,多分現場ではいろいろとあると思うが,そこまで追求するとまた何か出てくるかということもあると思うが,今後の検討課題ということで,お願いしたい。
【座長】  この問題もやはり重要な点があるので,引き続き検討を願います。
【委員】  2つ聞きたい。1点は先ほど都道府県で認知件数の格差がかなりあるという話があったが,特に1件も認知されていないところが,学校数で言うと約4分の1あるということだ。それの都道府県格差があるのかどうかということを分析していたら,教えてほしい。もしかすると県によって指導体制等に違いがあるのかなと思って伺う。先にその件を。
【事務局】  その部分については,数字を把握できていない。申し訳ない。
【座長】  それは問題行動等調査の中からは把握できるか。
【事務局】  できない。
【座長】  当然,都道府県のクロスをすれば出てくると思うが,きょう,今ここでなくとも……。やはりそれぞれの対応の問題,取組の仕方というものも関わってくるが。
【事務局】  確認しますが,データがないようだ。
【委員】  もし可能であれば,今後そういった分析もできると,特定の都道府県なり市町村の教育委員会に重点的に認知の仕方等について研修をするなど,対策も取れるかと思うので,今後検討いただきたい。あともう1点は,先ほどから話題になっている自殺というところだが,どういう方がこの調査に答えるのかということと絡む話かと思うが,通常,自殺の理由というのは1つではないと言われている。もちろんお子さんの場合は特にいじめがあって,それ以外には理由がなくてということも考えられなくはないが,先ほども話があった厚生労働省の方で自殺対策について検討している中では,一般的に1つだけではなくて複数の理由が重なって自殺に至ることが多いと言われている。これは,見ると合計数が合うようになっているのだとすれば,1つだけ選んで自殺の理由を出しているのかなと思うが,多少多い。そうすると複数の理由をカウントしているのかなということではあるが,それをだれがどういう形でその自殺の理由と判定したというか,判断したというか,そのあたりのことは分かるか。
【事務局】  児童生徒の自殺が発生した場合には,必ずその背景調査を行うことになっていて,自殺事案が発生した日以降直ちに開始する基本調査,起こったことを基本的に時系列に調べて明らかにしていくということと,あとはその後引き続いて詳細調査が行われることがあるが,その中で自殺の背景要因が明らかになっていくということだ。詳細調査が行われる場合は,弁護士とか精神医学の専門家とか,そういった第三者の参画を得て調査がされることになるし,そういったところでしっかりと要因が分析されたものがここに挙がってくる。ちなみにこの合計数,右の欄にある数字を縦に全部足していくと,250を超える。これは複数要因・複数回答で抽出しているものだ。
【委員】  そうすると,自殺された方に関してはかなり学校側も重く受けとめて分析をするということがわかったが,一方で自殺したかどうかを知らされない生徒が90名ほどいるということだ。けれども,学校に来ていた子が来なくなって,実は死んでいたのだということが学校側に伝わらないまま長期に経過することが,実際にどの程度起こり得ることなのかというのが,ちょっとイメージがわかない。警察庁とのこの数字の違いの意味が,もう少し現場の感覚としてどのように把握し切れないものなのかというのが分かったら,教えてもらいたい。
【事務局】  手元の客観的な数字はないが,一般論としてあり得る状況を説明すると,高等学校の場合,通信制の学校が入っている。通信制の学校については,学校によってもちろん違うが,年に1回とか2回とか,毎月の場合もあるが,定期的にスクーリング,学校に来るという形がある。こういう方が自殺された場合,警察は家族との聞き取りで職業は「学生」,「高校生」と登録される。片や通信制の学校については,授業料が引き落とされていない段階で自動的に退学ということもあるし,あとは「やめます」と親御さんから連絡を受けて,手続きはそのまま終わってしまうということは想定される。だから,九十何人のうちそれが何人なのかということは,警察も高校の中で通信制という内訳は取っていないと思うので,そこは分からないが,一般論としてはそういうことが想定されるし,現場からそういうこともあり得るだろうと聞いている。
【委員】  先ほど来の自殺の状況の表だが,説明を聞くと,複数の要因らしいものを書いているとか,140件も分からないものがあるとか,そういう事実はやむを得ないと思う。この分析をどう生かして使っていくのかという中で,自殺した250人の中で,状況にいじめの問題があった子が10人だけということは,それがメインの要素ではないとしても,この「10」という数字が独り歩きするのは良くないような感じがする。不明が140あるということであるとか,この分析をどう使っていくかという中には,そういった視点で,明確にわかったのが10だけであるというような感じでこの数字を受けとめて検討していくことが必要ではないかと思う。
【委員】  不明と言われたが,私はスクールカウンセラーの立場で言うと,子供が亡くなったときの原因がはっきりすることは本当に難しい。特にいじめがあるかどうかの判断も物すごく難しいし,140名がはっきりしないというのはそんなに不思議ではないと思う。先ほど言ったように,警察庁と文部科学省の数字の違いというところで,その違ったところが事故とか,病気とか,そういう形でカウントされるのかな,どこに分けられるのかなということを思った。事故であれば,また事件であれば,警察がかなり詳しく追及していくと思うが,それがないと分からないというところで,病気ということになるのかなと思ったりもして,その辺の背景が何かあるかなと思い,先ほど質問した。
【事務局】  おっしゃるとおりで,実際問題,親御さんから病気でということで説明を受けることは現場でよくあると聞いている。ただ,「いや,元気でしたよね」というような形で,お子様を亡くされているので,追及的に聞くことは不可能だし,そっとしておいてくださいということで,あくまでも病気だとおっしゃった場合,警察と違って強制的に学校当局が病気かどうかを例えば病院に確認を取るとか,警察に確認をとるということはできない。委員がおっしゃるように病気だと言われた場合に,もちろん信頼関係をしっかり築いて重く受けとめなければいけないし,自殺であれば学校がきちんと調査する義務があるので,そういった意味では懇切丁寧に節目節目で学校当局から御両親に説明して,真実を聞き出そうという努力はするが,最後まで「病気です」とおっしゃった場合には,大変残念ではあるが,真実が伝わらずこの統計の差が出てくる。それが何件かという数字はないが,一般論としては今言ったケースというのは相当考えられる。 【森田座長】  自殺案件については,次の議題の重大事案の中にも含まれてくる課題なので,その体制,調査の在り方も含めて,次の議題でまた意見があれば出してもらえればと思う。一応ここではこの問題行動等調査,それから先ほどの事例集に関する意見は終わります。
【委員】  私は現場の全連小の校長会で来ており,こういう事例集が出たことに対して本当に敬意を表する。ネット上に出たときにはさっと出てきたので,実際にどういう形だったのか分かりにくかったのだが,今こうして手元に取ってみると,一つ一つの事例が非常に分かりやすいし,またこの事例を通して現場が勉強していくという意味では使いやすい工夫が非常にされている。これを教育委員会に配り説明するということだが,具体的にこのように使うといいということも加えてもらい,多くの先生方がこの事例集を活用できるような工夫は是非してもらいたい。
【座長】  これはネットからもダウンロードできるので,最低限,現場の方々に周知するようにお願いする。それでは,早速議事の(1)に移ります。「いじめの重大事態に係る調査報告書の分析について」,事務局から説明します。

≪議題(1)いじめの重大事態に係る調査報告書の分析について≫
※事務局より資料に基づいて説明があった。

【座長】  私の方から流れについて補足をさせていただく。というのは,今の調査報告書の分析に関しては,ここで皆さん方に議論いただき,取りまとめという形で出させていただいた。今の流れで報告の方は課長通知からずっとつながっているが,その前に我々の方でその必要性が出ている。その議論は資料4-2,この冒頭を御覧ください。最初に「制度の概要等」のところだが,いじめ法の第20条,これは重大事案のみならず,いじめに関する調査・分析・検証等の必要性をうたっており,さらにその検証を行うとともに,その成果を普及するという条項がある。それを受けて,ここではいろいろと重大事態について分析いただき,調査結果の分析については協議会の取りまとめにおいて「現状・課題」として「自殺をはじめとする重大な事案については,専門的な調査研究が実施され,再発防止策につなげる仕組みが必要である」とされ,「対応の方向性」として「具体のいじめの重大事態について,各地方公共団体が実施した第三者調査の報告書のデータベース化,分析,研究,再発防止策の提案等が,研究機関等において実施される仕組みの構築を検討する」とされている。また,これを受けて,平成29年3月に改訂された国の基本方針の中では,国は,各地方公共団体によるいじめの重大事態の調査結果の収集・分析について,国立教育政策研究所,各地域,大学等の研究機関,関係学会等と連携して調査研究を実施し,その成果を普及することとされたという流れが,この協議会を中心に続いている。その中で,きょうの重大事態の調査結果の分析というものが位置づけられており,第1回の会議でもワーキングをどうするか,そういうものを作ってはどうかとか,早急にそういうものを取りまとめていく必要があるのではないかというような議論をしているという流れになっている。少し補足をさせていただいた。それでは,ただいまの説明に関して,皆さん方から意見等を頂きたい。論点はどこからでも結構だ。
【委員】  調査報告書の分析は非常に重要だと言った前提として,第三者調査委員会に課題があるのだということからまずスタートしないといけないと思っている。今ある調査報告書をただ分析するだけで果たして正しい方向性へ行くのか,と非常に疑問に思っている。その意味で,今回論点メモに書いてある分析の目的の中で,まずやるべきことは重大事態の調査に係る事務の円滑な実施,いわゆる第三者調査委員会はどうあるべきなのか,第三者調査委員会は何をすべきなのか,そこを明らかにしていくことだ。現実問題として,調査報告書によって被害者側がさらに傷つけられているケースがあるとマスコミ報道にもあるし,文部科学省にも上がってきていると思う。私も担当した事件でこのことを痛感している。このような現状を踏まえると,その部分の分析をまずやるべきではないかと思う。その意味で,再調査になっているケースとか,やり直しをして報告書が出ているケースとかあるが,その報告書には何が問題だったのかというところが大体集約されていると思う。それほど多くない。先ほどの報告を見ても20件くらいだと思うので,まずそこを通して,第三者調査委員会とは何をすべきなのか,どういう点をしていくべきなのか,何をやってしまったから被害者側との信頼関係が構築できずに第三者調査委員会が破綻してしまっているのかというところの分析を,まずするべきだと思う。それと並行して,問題なくうまくいっているケースについては,こういう点がいじめの早期発見については大事だというのは,また別立てでやるべきだと思う。この両立てというか2つに分けて,第三者調査委員会の課題についての分析のグループと,個々の特に問題ないと思われる事案から抽出される再発防止対策等を分析するグループと,2つに分けてやっていくべきではないかと思う。今の第三者調査委員会の課題の分析などについては,専門的な見地が必要だと思う。例えば事実関係の問題とか,自死との関係性をどのように捉えるか,これも子供の特性とか家庭の原因などに踏み込んでいるようなものがあるが,それが逆に言うと被害者側を傷つけているという実態があるので,そのような分析をすべきなのかどうか。要するに自殺の背景調査と同じようなやり方を,このいじめの調査の中でやるべきなのかどうかといったことも議論していく必要があると思う。そこは外部の有識者でのワーキンググループ等でやっていく必要性があるのではないか。これは喫緊の課題だと思うので,早急にスタートすべきだ。
【座長】   議論の順番と言うか,重大事案の全体の調査報告書の分析にも関わるところだと思うので,優先的にまず絞るべき課題を出していただけたら。いかがですか。
【委員】  第三者委員会については,臨床心理士会でも委員を選出するときに委員の方からよく言われるのが,いろいろな事案を見ていて,例えばいじめがあったと結果を出したときに,御遺族の方等がその次の段階の裁判のときにそのことをかなり活用されるのではないかと考えて,やはり安易に発言はできないと,結論も出せないというようなことを言われる。私が弁護士から聞いたところ,これは第三者委員会ということで尋ねたことであって,加害者からも被害者からもその了解がなければ裁判のときの資料として使うことはできないということだった。それは間違いないか。例えば加害者が第三者委員会で言ったことが,それを根拠にして裁判をされて,「あのときこう言ったじゃないか」ということが通用するのかどうかということを。私は通用しないと聞いたのだが,拒否できると聞いたのだが,それは間違いないか。
【事務局】  ただいまの質問の件だが,第三者委員会の調査報告書については,結果的にその後の裁判で加害者側なり被害者側がそれを資料として提出するということは止められないというか,そういうこともあり得るという認識でいる。それで,今の第三者委員会の調査報告書の中で認定された事実が裁判でどう取り扱われるかというのは,もし誤りがあれば訂正していただきたいが,裁判で行われる事実関係の認定と第三者委員会で行われる事実関係の認定は別のものという理解であり,裁判では、別途事実関係の認定が行われるものと考えている。
【委員】  第三者委員会で尋ねられて答える方が,発言したことを将来的に裁判には使わないということの契約を取って話すことがあった場合に,それがどうなるのかなと。また,次に裁判をやるときに,加害者側から聞くときに,以前こういうことを言っているということになるのかどうかということについて専門家から是非アドバイスを頂きたい。
【委員】   結局,それは資料として裁判には出てくることはあると思うが,どのような証拠に基づいて事実が認定されたかというのは,裁判で出てくる証拠によっていろいろ違ってくるから,調査報告書の中ではこういう事実認定をされているが,それがそのまま裁判で事実として認定されるかどうかというのは,また別個のことになると思う。そこのところをもう1回やるのだったら,法廷できちんと証人として陳述してもらい,証拠調べをしなければ分からないということになると思う。第三者委員会の方が「これは裁判には使えません」と言ったとしても,全く拘束力がないと思う。裁判で被害者側の方がどういうふうにそれを使うかということだけだ。だから,この第三者調査委員会の調査報告というのは,被害・加害とか責任追及のものではなく,あくまでも再発防止のためのものなのだということを徹底すべきである。例えば自死と何らかの関連はありますよといった判断をしたからといって,それについて責任を追及されるかどうかというのは,全く別の話なのだということを,もっと法律家に対しても意識してもらわなければいけないところがある。それは法改正とか,文科省が作成する基本方針等によって使い方をどうするかといったところを明らかにしていくことで,少しずつ変えていかなければいけないところだと思う。だから後段の質問に対しては,裁判の証拠としては出てくるけれども,それがどれだけの瑕疵があるかどうかというのは,また別個の問題であると理解いただいた方がいいのではないかと思う。
【委員】  法律的には多分そういうことだと思うが,委員の質問からすると,そういうふうに言ったから答えてしまったのに,それが使われるというのは,要するにだまされたようなことになるのではないかと。そういう事実自体は裁判所で明らかにすることができると思う。その裁判のやり取りの中で,裁判のところには使われないということで話した内容であると言うことは可能だと思うが,だからといってその事実がどうかということを判断するのは,また別の問題になると思う。そうすると,そのことと,そう言うことによって,また次に出てくる紛争,裁判のところには使われないというつもりでお互いが言ったかどうかというところについては,また次に「そういうつもりで言ったのではない」とか言うことというのは生じてしまう。第三者委員会がどう調べていくか,どこまでを匿名で出すのか,どこを実名で出すのかとか,報告書の書き方とか,それを被害者の方,加害者の方とどこまで信頼関係を持って出せるのか,信頼関係が現場ではあったけれども,違う方が違う示唆をするとか,いろいろなことがあるので,そういう意味ではどう書くのかという大変難しい問題が一件一件にある。まさしくやり方をどうやっていくかということをもう少し分析して,どういうことはできるのか,どういうことをするとこういう波及効果があるというところをもう少し分析した上で,それぞれが意識的にやっていかないと,なかなか今のやり方では難しいところがある。それはやはり早急に分析することが必要であるというのが,委員の意見だと思う。ただ,もともとこの分析というのは,同種事案の再発防止ということから実態のこともやっていかなければいけないので,これはやはり両輪でやっていかなければいけないと思う。まさしく調査の在り方というのは,第三者性と,それからできるだけ事実に迫るということから,どういう意見を聞いていくのか。具体的には本当に細かいところからアンケートをするのか,学校の資料はどうするのか,警察の資料はどうするのか,それぞれを具体名でやるのか,それからそういう事務を委員5人でやるのか,事務局はどこが担うのか,教育委員会が担った場合にそれで第三者性があるのか,知事部局とかでやってもらうのか,私立学校のときはどうするのかとか,諸々の問題が各地で出ているので,やはりこれは早急に分析をして,気を付けるべきことというのは今までの蓄積をまとめていく必要性が,喫緊の課題としてあると思う。
【委員】  第三者委員会を進めていくためには,やはり最終的に第三者委員会が開かれて結論が出て,周りの皆さん方が納得すればそれで終わるのだろうが,最終的にはやはり裁判を念頭に置いた形で,調査委員会が開かれなければならないのかなと改めて感じた。要は学校側の立場に立って,あるいは保護者側の立場に立って,それを取り除いた中立性がいかに担保されるのか,客観性がいかに担保されるのかということが,一番大切なのだろうと思う。そのための調査委員会であろうかと思う。だから,裁判も当然念頭に置かねばならないが,それぞれの学校もいろいろな調査をする,教育委員会も教育委員会で徹底的に重大案件については調査をするわけだ。事実関係だとか,教育委員会の考えだとか,校長の考えだとか,いろいろとまとめるときには記述があるわけだが,中立性・客観性を担保するためにはどうしたらいいのかということが,あるいは何をどういうふうに調査することが中立性・客観性が保たれた調査の仕方なのかということが一番大切なのかなと思う。それがあれば,裁判であろうが何であろうが,事実と中立性・客観性は必ず認められていくと感じたが,実際に私は第三者委員会のメンバーになったことがないので,動きがよく分からないが,大変難しい問題だと思った。
【委員】  今の点で,第三者調査委員会は,裁判とかそういうことを意識してやるのは駄目だと思う。あくまでもこれは民事・刑事の責任追及の場ではないのだと,第三者調査委員会の場を責任追及の場として使おうと思ったら,それは違うのだということをしっかりと委員の方が言って,それを被害者・加害者両方に納得させた上で,今言われたように中立公平の立場から被害に遭った子供の尊厳の保持と回復,それから再発防止のために委員会を進めていくのだと,そこの立ち位置をしっかりと示していくことが大事だと思う。今失敗しているケースというのは,その責任追及のことを意識してしまって,いわゆる因果関係があるのかどうかとか,そこのところで最後に「分かりません」ということで逃げてしまっている。だから多くの方が傷ついている。なので,第三者調査委員会は何のためにやるのかということをもう1回改めてやっていかないと,報告書が被害者側を傷つけるためだけの報告書になってしまい、本来の目的を全うできないことになる。そこをしっかり分けて考えていくということをしていないから,同じことがずっと5年間繰り返されているという思いがある。そこを分けていただき,裁判とは別なのだといったところをまず認識していくことが大事だと思う。
【委員】  質問なのだが,不勉強で申し訳ないが,今調査報告書が大分蓄積されてきているということだが,それらが第三者委員会から出た報告書ということか。
【事務局】  調査自体は学校が行うこともできるし,教育委員会に調査組織を立ち上げて行うこともできるし,学校が行う場合であっても第三者性というものを確保するために外部の弁護士の方とかを入れるようにというようなことは書いているので,それを含めて第三者委員会ということであれば,第三者委員会の報告書と言うことはできる。教育委員会のもとに設けられた第三者委員会というものを,それだけを呼ぶとすれば,全てがそういう委員会でなされているということではない。
【委員】  それで今ここで話題になっているのは,調査報告書を数がたまっているから分析して,それをもとに再発防止ができていくといいのではないかというお話がメインですね。その中に,いわゆる第三者委員会の在り方も検討できるような資料が得られると良いのではないかと委員が発言されたという理解でよいか。そうすると,それ以外にも目的が何かあるとしたら,ここで意見を出しておけばいいということか。もう1つ,そもそもは,その報告書自体はなぜ出されているのか。出してもらって集めているのか。
【事務局】  現在我々が第三者委員会の報告書を提出いただくのは,実際には報道で取り扱われたような問題があることが明らかであるようなケースで,我々としてもその問題を把握するために調査報告書を取り寄せると言うか,入手するということはある。個別にそういうものが発生するたびに集めるのではなくて,もう少しシステム化して集めて分析できないかというのが本日お願いしている議論ということになるが,今,システムとしてそういう入手できるようなものがあるかというと,それはないという状況だ。 そもそも第三者委員会の報告というのは何のためにあるかというと,何があったか知りたいという御遺族の思いに応えるという事実認定の部分があるのと,やはり再発防止というものもあると考えている。
【座長】  それでは,先ほどの解釈でよいかどうか,つまり分析をその中に含めて第三者調査委員会の在り方,進め方,体制等を検討するという件だ。よろしいか。
【委員】  調査報告書の分析というのは再発防止のためにいろいろやっていくのだが,その前提として第三者調査委員会の報告書に至るまでの問題がいろいろあるので,そこをしっかりとクリアしていかないといけないと思う。報告書の中にも,問題のある報告書も結構あるので,それを前提に分析してしまうと,間違った方向へ行くのではないかと危惧している。その意味で第三者調査委員会の問題が報告書から見えてくるので,それはまた別立てとして,基礎を支える非常に大事な分析になるのではないかということで提言した。あくまでも一番大事なのは,先ほど申し上げた子供の尊厳の保持と回復と再発防止のためにこの報告書をいろいろ分析していくこと,これが第一義的なところであることは間違いない。だから,今の委員の理解のとおりで結構だ。
【座長】  例えば平成29年度,474件の重大事態の案件があるが,文部科学省の方でどれくらいの調査報告書の蓄積をお持ちか。あるいは,それを収集するシステムとして完全ではないということだが,そのシステムが不十分なところをどういう具合に解決するかということも,事例を集める場合には課題になってくると考えられるので,その点に関していかがお考えか。
【事務局】  今は関心を持った段階で直ちに入手することはしているが,それはシステム化されている状態とは言えないと思う。今日示した論点の中に,どういった調査項目を抽出すべきかというようなものを示している。その中でマクロ分析的なもの,全体でそもそも調査に時間が掛かり過ぎているのではないか,特に2号事案ではというような関心がもしあって,それを調べたいと思ったら,調査の開始時期とか,調査にかかった期間が不登校事案でどれくらいなのかというのを見たいと思って,それを調べようと思ったら,なるべく広くやった方がいいと思う。逆に深く掘り下げて,ある事案でなぜいじめが見過ごされたか,どういう人間関係のもとでどのようにスクールカーストが形成されてといったように掘り下げた事例分析的なものであったら,これは全件というのは初めから難しいと思っていて,むしろその特徴的な事例を幾つかピックアップしてというやり方になるかと思う。したがって,調査分析対象の数というか分量というのは,分析の目的とか,誰に対して分析結果を活用してもらうかというようなところとも結び付く問題かなと思っており,そういう部分を議論いただきたいということで,本日論点を示した。
【委員】  事案の集約の点だが,文部科学省がこれだけ集めていなかったということは,前回聞いて非常にショックだった。総務省の方が資料を集めて六十何件調査しているのに,なぜ文部科学省は全部集めていないのかというのは,やはりおかしいと思う。これだけいじめのことをいろいろ言っているのに,出てきた報告書をなぜ文部科学省が集めていないのか。分析は後でもいいけれども,報告書を集めていないということ自体が大きな問題点だと思う。これはデータベース化の問題とか,あるいは研究をちゃんとしましょうと最初のところでも出されていたので,全件集めるというのは当然のことだと思う。今からでも全て集めるべきである。それをどのように分析するかというのは,またその次の段階だと思う。先ほど事務局の言った1号事案と2号事案の分析の仕方の違いとか,そこはまたいろいろ出てくると思うので,それを集まったものの中からいろいろみんなで手分けしながら作業していくことで見えてくるものがあると思う。是非今から全ての案件を集める,しかもマスキングのないものを集めるということをして頂きたい。文部科学省であればマスキングがないものが取れるのではないか。文書の管理の関係がよく分からないが,マスキングされたものだと,なかなか内容を分析できないと思うので,マスキングを全部外した生の原稿をもらうというところで情報,資料を集めてもらいたい。これはお願いだ。
【座長】   ただいまの意見に関して,事務方はいかがか。
【事務局】  確かに今の状態は,システム化されていないというところが最大の問題で,やはりどのような分析の在り方をするのかという中にマクロ分析的なものが入って,例えば1号・2号で,先ほど例示したような不登校事案というのは時間が掛かり過ぎて,調査報告書が出たときにはもう子供が卒業していたというような事案もあるので,そういうところに問題意識を持って,例えばそういうものについてしっかり把握したいと思えば,やはり言われたとおり全件となるかもしれない。全体的な分析はどれだけの調査期間を要したかという方向に向かった方が良いとは思うが,いずれにしても,そもそもどういう分析が今後システム化された形で求められていくのかということは議論いただきたい。
【座長】 先ほど提案があったように,まず第三者調査委員会の場合にも首長の再調査というのは課題をあぶり出すのには欠かせない1つの資料だろうが,それに関して都道府県教育委員会と市町村教育委員会への文部科学省からの要請と,それに対する努力義務というか,そういうものを根拠付ける法令が何もないわけだ。システム化されていないというのはそこのところで,そこはこれからの課題だろうと思う。ただ,やはり要請を受けて,マスキングをどうするかというのは市町村にとって非常に大きな課題だが,文部科学省との間で守秘義務は完全に守られた段階の中で,報告書のマスキングを取ることは,市町村教育委員会の方では,やはりいまだに抵抗はあるか。実態はどうか。
【委員】  それぞれの都道府県あるいは市町村が持つ情報公開条例の中身,定めによって若干違うと思うし,また,情報公開の関係では何を目的に求めているかということにもよるわけだが,このような会議に使うということがはっきりしていれば,マスキング等々は外した形で大丈夫なのかと思うが,なかなかそこら辺はちょっと難しいところかと思う。
【座長】  そのほかの論点はあるか。今,第三者調査委員会の話と分析,それからその結果を再発防止につなげていく分析体制という問題が出たが。
【委員】  報告書をまとめたときに何らかの形で議論,こういうふうに公表するなり,どうするかというところはあるのだが,それは年度の単位でやっていくということか。それともある程度蓄積された段階でやっていくのか。問題行動調査が出て,その後しばらくしてからやっていくのか,そういったスパンのことというのはどうか。
【事務局】  スパンについては,実際にはやはり大きいのは作業量との兼ね合いだと思う。毎年度やって経年変化を見ていくということが,特にマクロ分析的な部分では重要かと思うが,仮に調査分析をもっと大量な情報量のものでやるということになると,なかなか毎年度は難しいのではないかとなるかもしれないが,いずれにしてもそれは作業量との兼ね合いになると思う。なので,これも論点の1つとしてここで議論いただきたいが,いずれにしても分析の全体像と言うか,分析の進め方をどういう体制のもとで,どのように進めていくかということと密接につながってくる問題だと思うので,その論点についても是非議論いただきたい。
【委員】  受けとめる学校としては,やはり再発防止ということが一番大きいわけで,出てきた報告書は私たちの方でしっかり捉えて,ではこういったことをなくすためにどういう対策を採るかというもう少し小さいレベルのことが報告書の中に入ってくるのだろうと思う。実際に,各学校でこういったことが起きたときに第三者委員会を開くとなると,誰を選んだらいいか,どういう議論を進めたらいいかというところがやはりなかなか難しいという声も聞く。どういう形できちんと進めていくか,再発防止のためにこういう報告書を何らかの形で活用させてもらうというところを間違わない。間違ってしまうと,こういうことを出すことに対してやはりなかなか現場感覚としてはつらい。そのことはよくわかってほしい。なので,報告書を分析して,この内容をあくまで再発防止のために使ってもらいたい。そのために第三者委員会の方法について課題があるのであれば,当然それはそれとしてきちんと究明していくような形というのを是非,そのために作るというところを見失わないでほしい。だから,そのためにマクロになるのかミクロになるのかというので随分違ってくるのではないかなと思った。裁判になったら,学校はその辺は,申し訳ないが,そういう知識を持っていかないとなかなか難しいというのが現実だ。是非その点をお願いする。
【委員】  今の発言も受けて,あと,先ほど文部科学省から出た分析する項目というページに,参考情報として主にこんな記載内容ですというのが列挙されていたと思うが,要は調査報告書自体の中では提言が必ずなされている。もっとこのようにしていたら良かったんじゃないかというように,いじめに遭われてしまった方の被害を無にしないために,次にどう生かすかということが載っていると思うので,そこの部分から一般化させられるような,そういう提言みたいなものを分析する必要があると思う。それはミクロというよりもマクロ的な部分になると思うが,組織的な対応に問題があった場合もあれば,本人の側にも何かいじめられてしまうことの要因があって,そのことをもっと早い段階で何か対応しておけなかったのかという,学校の先生方の対応の問題ということもあるかもしれない。あるいは実際に発見はしていたのだけれどもどういうふうにやっていいか分からなかったというスキルの問題なのかとか,そのあたりについては,できれば少しテーマ別に分析していって,そして共通する項目については何かよそにも一般化させられるように言っていくことが必要だと思う。これはいじめの防止自体に関しての提言になると思うが,それ以外に報告書を見ていても,結局分析する側というのは実際にいじめられた方とか,いじめた方たちに話を聞けるわけではないので,この報告書では十分状況が分からないとか,どうも何か不十分な点が多いのではないかというように感じられるところがあるとすれば,それは報告書の書式の在り方とか,調査の仕方とか,そういうことに対する提言というのも今後必要になってくると思う。先ほどの話を聞いていても,多分調査ということ自体が適切に行われているかどうかが不明なところがあるということなので,いじめが防止できるようにという部分と調査の在り方の部分と,そこは大きく分けた方がいいのかなと思う。あとは重大事態といっても様々な事例があると思うので,もちろんその事例ごとに分析していくということが必要かもしれないが,それは結局報告書の中からしか読み取れない事例分析になるので,それをやることにどの程度意味があるのかという検討が必要かと思う。要は調査報告書自体の,信ぴょう性がないとはもちろん言わないが,その情報が不十分で,偏ったものであれば,それを基にその事例を分析するというのはそもそも難しいことになってしまうので,ミクロというよりは,むしろもう少しマクロ的な分析を中心に考える方が,その報告書を分析するということであれば有意義なのではないかと思った。
【委員】  調査に関しては第三者委員会のガイドラインがあるので,それに沿って各委員会が設置されたときにされると思うが,その内容が先の事案のように,勝手に第三者委員会がいじめの定義を変えたりすると問題かもしれないが,これは周知徹底していけばいいと思う。第三者委員会の委員をやっている人たちからの意見で,いじめの定義がいじめられた方にも問題があるのではないかという世間一般のいじめの概念と,いじめの法律で言われているいじめと,その辺のところが現実的にどうしても少し乖離(かいり)するのではないかと。そういう部分があって,調査をするときに,もうあの子もやられて仕方ない部分があるというようなことを余り明確にすべきではないという意見を言った人がいた。それと,我々が調査をするときには情報収集するときの目的を明確に伝える。そのときに,例えばいろいろな調査をしても,その調査のデータの使い回しをすると,今では完全に倫理に引っ掛かるので,そういうことはできないが,このいじめの重大事態の調査に関しては目的が再発防止と問題の明確化であるので,最初にそのことをかなり丁寧に説明すれば,これは文部科学省が第三者委員会の調査報告書を収集されて使っても,そこに整合性は得られるのではないか,まずいところはないのではないかと思う。それと,第三者委員会の報告書の中で提言があるが,その提言がどのくらい生かされたかのチェックがないと,PDCAにはならないのではないかと思うが,そこのところのチェックをどのようにするのかなと思った。総務省の資料の4-2を見て,私の関連するスクールカウンセラーの部分なども見たが,「え? こんなレベルか」と思った。このことはずっと丁寧に研修等で言っているが,まだこんなことが現実にあるのかということは私自身が非常にびっくりしているが,客観的にこういうことがあるのであれば,それはやはり現場に返していかなければいけないなということは強く思う。
【委員】   提言のところは非常に重要だが,いろいろ自分なりに分析してみると,具体的な事案を通してしっかりと提言されているものと,そうではなく,どこかから文献から引っ張ってきて提言としているようなものとがある。最終的には報告はマクロでまとめなければいけない部分はあるかもしれないが,個々の事案から出てくる具体的な提言というのをどれだけ拾って,それをフィードバックするかということが再発防止を考えるうえで極めて大事ではないかと思う。あくまでも報告書の提言は,例えば亡くなった事案であれば,亡くなったA君が見えなくなる,いなくなるような報告書というのは駄目だと思う。A君をどうやったら救えたのかということを明らかにすることで提言がしっかりと出てくると思う。そういう事例を集積していく中で,全体で何かマクロ的なものが見えてくると思う。そういう方向性でしていかないと,いろいろな提言が出てきているが,これもいい,これもいいということで形式的に挙げていくだけでは駄目だといったところは,大事な視点だと思う。それから極めて重大な論点であると思っているのが,被害を受けた子供の特性とか,その子の問題性みたいなものを聞き取って,そこばかりに焦点を当てるような報告書が結構出てきていることだ。繰り返しになるが,それが被害者側への二次被害,三次被害になってきている。そこのところをどういう形で調査して,どういうふうに提言につなげるかといったところについては,第三者委員会の在り方の問題とも絡むが,まずどのような進め方をしていくのかというところをしっかりリンクさせる必要がある。そこを間違えると,間違った報告書の書き方,調査の仕方みたいなものが出来上がってしまう。間違った方向性を変えていくというのは大変だと思うので,従前議論した両方のワーキンググループをうまくリンクさせながら,双方の両輪で進んでいくような形で進めていってもらいたい。そういう意味で,繰り返しになるが,自死が起きた場合の背景調査のやり方を,そのままいじめの関係の調査のやり方で使っていいのかどうかと疑問に思っている立場なので,そのような意見も参考にしながら,そのやり方ということを進めていただければと思う。
【座長】  それでは,ほかに議論がなければ,そろそろ終わりの時間が近づいた。
【委員】  なかなか難しい議論で,一般の保護者として発言がなかなかできなかったのだが,今学校・行政というところでいじめをどう対策していくかというところだとは思う。私たちはやはり家庭からということで,いろいろな重大事態の例を出してもらい,それをどんな形からでもフィードバックしてもらって,それを学校と家庭と地域ということで,三位一体で子育てをしていくというふうに考えている。それがどういう成果を得られるかというのは,いじめがなくなればそれはいいことであって,それをどう評価するかというのは大変難しい問題かなと思う。できれば今出ている事案だけでも,こういう事案があってこういう対策が取れればよかったねというところが家庭に入るだけで,じゃあ,家でこういうふうに気を付けようという話ができるだけでも,少しでも減るのではないかと考えているので,是非早急に前に進めていってもらいたい。
【座長】   それでは,本日議論いただいた内容を踏まえて,今後の協議会の進め方等について,事務局から説明願います。
【事務局】  調査報告書の分析に関する論点について,様々な意見を頂いたので,本日頂いた意見を整理して,次回引き続き論点について議論いただければと思う。なお,次回の開催については,また日程調整を行った上で,後日連絡したい。
【座長】  次回は大変な作業になるだろうと思うが,整理をしながら,有意義な体制,つまり調査委員会の体制,分析の在り方,分析をどう使っていくか等々に関して,お願いしたい。拙速は避けつつ,やはり現状の中でいろいろと課題を抱えている子供たち悩んでいる子供たちが随分いる。あるいは第三者調査委員会でどういう具合に進めていったらいいのか,その在り方も戸惑っている委員の方々もおられるし,それを扱う都道府県教育委員会あるいは学校現場と,そういうニーズに早く応えていく必要もあると思うので,できるだけ次回には整理してお示しいただきたいと思う。それでは,以上をもって,今年度第2回の会議を閉会します。きょうはとりわけ中身の濃い,深い議論が展開された。会議の進行に御協力いただきありがとう。
―― 了 ――


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