「デジタル教科書」の効果的な活用の在り方等に関するガイドライン検討会議(第3回) 議事録

1.日時

平成30年11月6日(火曜日)16時から18時まで

2.場所

文部科学省3階講堂

3.議題

  1. 学習者用デジタル教科書を使用する際の健康面での留意について
  2. 学習者用デジタル教科書の効果的な活用の在り方等に関するガイドライン素案について
  3. 学校教育法等の一部を改正する法律(平成30年法律第39号)の施行に関する省令案等について
  4. その他

4.出席者

委員

堀田座長、中川座長代理、明石委員、伊藤委員、加藤委員、黒川委員、駒崎委員、佐野委員、柴田委員、白井委員、中野委員、渡邉委員

文部科学省

森友初等中等教育局教科書課長、春田教科書課課長補佐

オブザーバー

中川哲オブザーバー、山縣オブザーバー

5.議事録

【堀田座長】 それでは、定刻より少し早いですが、ただいまから、第3回「デジタル教科書」の効果的な活用の在り方等に関するガイドライン検討会議を開催させていただきます。
 前回に引き続きまして、私、東北大学の堀田が司会を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 渡邉委員は、今回が初めての御出席となりますので、一言御挨拶を頂ければと思います。お願いします。
【渡邉委員】 お茶の水女子大学附属中学校の渡邉光輝と申します。国語科の教諭で、3年前から、教師用、生徒用、学習者用のデジタル教科書を使っております。生徒もすっかり学習者用デジタル教科書の使い方に慣れまして、今ではスムーズに使えるようになっております。私の役割は現場でどのように使われているか、どのような良い使い方があるかをお伝えすることではないかなと思っております。第1回と第2回に出席できなかったので追い付けるか不安ですが、しっかり付いていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
【堀田座長】 ありがとうございます。渡邉委員は、出席は今日が初めてですが、これまでも御助言等を頂いています。
 また、今回からオブザーバーとして山梨大学大学院の山縣教授に御出席をお願いしております。一言御挨拶をお願いいたします。
【山縣オブザーバー】 山梨大学の山縣です。小児科の関係で小児保健協会からICTと子供の健康に関しての委員会をやっており、今日はそちらの関係でオブザーバーとして参加させていただいていると理解しております。どうぞよろしくお願いいたします。
【堀田座長】 ありがとうございます。デジタル教科書を各教科等で用いると、一定の時間、情報端末を使用することになりますので、専門家の医学的見地からいろいろと御助言を頂きたく思っております。
 あわせて、資料1のとおり本会議の実施要綱について、山縣先生オブザーバーを追加する改訂を行っておりますので、よろしくお願いいたします。
 それでは続きまして、配布資料の確認について、事務局よりお願いいたします。
【事務局】 本日の配布資料ですが、議事次第のとおりになっておりますので不足等がありましたらお申し付けください。この他、机上資料として第1回、第2回の会議資料と「児童生徒の健康に留意してICTを活用するためのガイドブック」についても配布させていただいております。よろしくお願いいたします。
【堀田座長】 ありがとうございます。
 それでは、本日の会議の趣旨・目的と、議事の流れについて、事務局よりお願いいたします。
【事務局】 本日の議事については、議事次第にありますとおり(1)から(4)となっております。(1)では学習者用デジタル教科書を使用する際の健康面の留意について資料2に基づいて山縣オブザーバーより御発表いただき、その後、資料3に基づいて事務局より日本医師会、日本眼科医会の提出資料を御説明させていただいた上で、質疑という形になっております。(2)については、ガイドラインの素案について事務局から説明の後、御議論いただければと考えております。(3)では、デジタル教科書に関する法律改正に伴う省令案等について事務局から説明の後、質疑という形にさせていただければと思っております。
 以上です。
【堀田座長】 ありがとうございます。本日も重要な案件が大きく三つありますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、ここから議事に入りますが、カメラ、ビデオカメラ等による撮影はここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。
 それでは、議事の(1)にまいります。学習者用デジタル教科書を使用する際の健康面での留意について、オブザーバーの山縣先生より、資料2についての御説明をお願いいたします。
 よろしくお願いいたします。


<山縣オブザーバーより資料2について説明> 


【堀田座長】 ありがとうございました。医師会においてもしっかりと検討され、啓発活動をされていることがよく分かりました。
 続きまして、事務局から資料3に基づき、他の医師会等からの意見について、御紹介をお願いいたします。


<事務局より資料3について説明>


【堀田座長】 ありがとうございました。
 それでは、審議に移りたいと思います。これはいつも議論になることですが、デジタル教科書が動くのは情報端末の上であり、その情報端末を使うこと自体の懸念と、その上で動いているデジタル教科書を使用するときの懸念をどのように区別しながら検討するか、というところが大切なことです。とはいえ、今日は山縣オブザーバーからも御指摘がありましたが、デジタル教科書を使うことで、学校や家庭で長時間にわたって情報端末を見るということが生じることに対する健康面への配慮などについて、私どもが今検討しているガイドラインに何らかの形で盛り込む必要があると思いますので、今から皆さんの御意見を頂きたいと思います。
 この時間は山縣オブザーバーや事務局への御質問、あるいはガイドラインに載せるべきこと、また現場の先生方の御意見などについて、是非お寄せいただければと思います。いかがでしょうか。では、中川オブザーバー、お願いします。
【中川(哲)オブザーバー】 私がこの分野の専門知識がないので教えていただきたいのですが、資料2の7枚目のスライドの睡眠障害についてです。ブルーライトで覚醒してしまう状態が、使用をやめてからどれぐらい継続するものでしょうか。例えば、夜の10時から11時までの1時間使用した場合に、その後の数十分覚醒して睡眠に障害を及ぼすものなのか、日中に同じく1時間使用しても同じように夜の睡眠に影響を及ぼすものなのか、ということをお伺いしたいです。我々が今議論しているデジタル教科書は、当然日中に使われるものだと考えると、夜にスマートフォンを使用することとは随分状況が異なるのではと思い、御知見があれば教えていただきたく思います。
【堀田座長】 お願いします。
【山縣オブザーバー】  ありがとうございます。まずは、このスライドの7枚目に関しましては、基本的には睡眠時間が短くなることによる問題だと御理解いただければ良いと思います。一方でブルーライトに関して、どの程度サーカディアンリズムを崩し、そして子供の実生活の中で睡眠障害を引き起こすのかといったことに関しては、幾つかの論文はあると思いますが、現状では直前に利用した場合に関するもの思っています。
 以上です。
【堀田座長】 ありがとうございます。
 他にいかがでしょうか。伊藤委員、お願いします。
【伊藤委員】 山縣先生にお聞きしたいのですが、ゲームのようなものももちろんですが、子供たちはネットを学習においてもかなり使用しているというデータも、私が東京都教育委員会にいたときに調べた中ではありました。子供たちにとって、ネットが学習の中で必要なツールになりつつありながらも、一方で、様々な疾病にかかっているということについて、もう少し教えていただけたらと思います。
【山縣オブザーバー】 今、ICTの活用と、子供そのものの発達などに関しては、まだ研究が十分でないというのが現状であります。ただ、以前、テレビの視聴時間と子供の健康に関して、アメリカ小児科学会や日本小児科学会で、1日2時間にしましょうと提言したときのもう一つのキャッチフレーズとして、「それは『セサミストリート』でも」ということがありました。それはたとえ中身が学習するものであっても、要するにテレビなどを見たり使ったりすることに問題があるという提言だったと思います。
【堀田座長】 ありがとうございます。
 他にいかがでしょうか。柴田委員。
【柴田委員】 山縣先生にお教えいただきたいのですが、まずお話しいただいたこと、私も非常に賛同いたします。
 お聞きしたいのは、山縣先生のお考え、あるいは米国小児科学会、日本小児医療保健連合協議会などで、子供たちの発達段階や年齢により、何か特に留意すべき点などについての指針のようなものがありましたら、お教えいただきたいと思います。
【山縣オブザーバー】 ありがとうございます。
 基本的にはまだきちんととしたものはありません。といいますのも、医学における科学的エビデンスが十分でなく、実は、先ほど御紹介した日本小児医療保健連絡協議会からの提言についても、研究者に向けてしっかり研究すべきであるという提言をしている段階であり、ここで申し上げるべきことかどうか分かりませんが、例えば、このような健康問題に関しては、厚生労働省の管轄での研究が多くありますが、それらは、一般的に疾病予防や、それをコントロールするという視点のものですので、それが疾病であるかどうなのかということは一つの非常に大きな要素になります。これまで、ネット利用やゲームをする時間が多い子供たちには様々な問題があって、そういうお子さんたちが小児科を受診することは既に厳然とした事実ではありますが、それらが疾病として分類されていなかったために研究として推進されていなかったという背景があると理解しております。しかし、今回、ICD-10の次の11でこれが入ってきますと、今後、対策としてこのような研究が推進されていくと理解しておりますので、その上でいろいろなエビデンスが出てくるのではないかと思います。
【伊藤委員】 ありがとうございます。
【堀田座長】 他にいかがでしょうか。白井委員、お願いします。
【白井委員】 学校でタブレットパソコンを導入した場合に、学校においてはそれほど長時間使うことはないと思うのですが、それでもやはり学校としては保護者に何か説明をする必要があるのでしょうか。あるいは、どの程度、何をお話しすれば良いのかということを教えていただきたいと思います。
【山縣オブザーバー】 ディスプレイをどれくらい長く見るのかということと健康との関係であり、これは日本医師会からの意見としても出されていますように、どの時間帯であれ、ディスプレイを見ることによって視力障害が生じることを前提に、どれぐらいが適切なのかということについて検討することは、今後の課題だと私は理解しております。
【堀田座長】 白井委員、保護者の懸念や心配は結構あるものですか。
【白井委員】 必ず健康についてはどうなのか、という質問は出ます。
【堀田座長】 出るということですね。ありがとうございました。
 他にいかがでしょうか。中野委員、お願いします。
【中野委員】 まず、障害のある児童生徒に対する影響について、これはどちらにお聞きすれば良いのかというところは定かでないのですが、日本眼科医会からの意見の冒頭にも、デジタル教科書は、「視覚障害をはじめ読み書き困難など、様々な障害のある児童生徒等にとても存在意義の大きいもの」だとまとめていただいております。一方、「1 趣旨」の後段では、目や体への影響に関する話が出てきています。私も研究している経験上で言うと、見えにくいものを見ることは、デジタルデバイスを見ることよりもっと悪い影響を及ぼすかもしれないというところと比較する必要があると思います。具体的に言うと、小さな文字の紙の教科書を見るのと、見やすいデジタルデバイスを見るのと、どちらの方が良いのか、また、読み書き障害のある子供たちからすると、読むことができない漢字の本を読むのと、音声化することができるデジタルデバイスで学習するのとどちらが良いのかということについてのエビデンスがあればお教えいただきたいです。その部分を明確にしていただかないと、特別支援も当然このガイドラインに従って判断していきますので、例えば、見やすくするための配慮であるにも関わらず、デジタルデバイスは視力を低下させるので視覚障害や発達障害等の障害のある子供たちなどは使うべきではないというような結論になってしまって本当に良いのかどうかというところに懸念があるのでお教えいただきたいのですが、いかがでしょうか。
【堀田座長】 山縣先生、何かありますでしょうか。
【山縣オブザーバー】 御質問いただいたことに関してのきちんとしたエビデンスはないと思いますが、少なくとも、今、その子供たちにとって何が大切なのかということを教育の現場で御判断されるということだと感じています。
【中野委員】 そうであれば、エビデンスが明確なところは明確に出していただいて、明確でないところは、ここの点に関しては、今おっしゃったように教育の現場における判断が重要である、とお書きいただけるとより良いと思います。
 それともう一点、「児童生徒の健康に留意してICT を活用するためのガイドブック」の中で少し気になるところがあります。一つは4ページの照明環境の配慮のところです。映り込みの問題は私もずっと感じており、特に最近LEDライトが使われるとハイライトなライトが入ることがありますので、間接照明がとても重要であることは強調していただけると良いと思います。学校の環境整備上は大変かもしれませんが、これは重要なことであると思っています。
 それから、10ページにおいて、教材の色使いとして白地に黒文字か、黒地に白文字かというQ&Aがあります。これは紙とデジタルを見比べたりするときには古くから紙と同じコントラストになる白背景に黒文字が良いと言われておりますが、障害のある子供たちの中にはまぶしさを抱える子供たちがます。この場合のように反転の方が良いケースもあるので、このことについても、先ほどと同じようにそれぞれ見え方等の特性によって、必ずしも白背景に黒文字でなくても良い、と解釈できるよう御配慮いただけると良いと思いました。
 以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。他にいかがでしょうか。
 大人の私たちも、昔に比べたらどうしてもICTに向かっている時間が長くなっている傾向にはあり、VDT障害等いろいろ言われながらも、例えば肩を回してみるなど、できるだけ健康に気を付けながらICTを使うようになってきていると思います。大人がそうである一方で、子供は発達に影響がある可能性があるということが一つの大きな課題だと思いますので、この発達上の課題と、大人と同じように考えれば良いということの区別について、山縣先生、もしよければ最後に一言お願いできますか。
【山縣オブザーバー】 おっしゃるとおりだと思います。残念ながらそのエビデンスは明確ではないのですが、子供は大人のミニチュアではないというのが小児科の教科書の最初に書いてありますように、今後こういった問題をしっかりと研究していくことが必要だと思います。
【堀田座長】 ありがとうございました。
 例えば、喫煙の問題など、大人は法的に許されていても子供は発達の途上なので禁止されているといった話を、学校では生徒指導上あるいは保健領域において学習指導上教えますが、文部科学省においては、そういった観点からもこのことを少し盛り込むことは大事だと思いました。丁寧な御説明を頂きまして、私どもの理解も進んだと思います。
 続いて、時間の関係もございますので、議事の(2)にまいりたいと思います。議事の(2)は「学習者用デジタル教科書の効果的な活用の在り方等に関するガイドライン」、これは私どもが今議論しているガイドラインですが、その素案について、事務局から資料4に基づいて御説明をお願いします。今日は、より詳しくお願いいたします。

<事務局より資料4について説明>

【堀田座長】 ありがとうございました。
 この後、委員の皆様から御意見や改善案を頂くところですが、その前に整理しておきますと、本日は3回目の会議となっております。この会議が設置された際、この会議のミッションとして、どのようにデジタル教科書を活用すれば良いかという点と、そのとき留意すべき点についてはっきりさせるという、この二つが設置時のミッションとして挙がっていました。それについて、第1回の会議で委員の皆様から頂いた御意見を基に論点を整理して、前回の第2回の会議では、骨子案として出していただきました。骨子案について、委員の皆様から御意見を頂き、また実践案を付けていただくとともに、三菱総合研究所に調査いただいて肉付けをしてきました。そして、本日の3回目の会議において、いよいよガイドラインの素案ということで成文化されたものが出てきているということになります。次回の第4回の会議においてこの会議をフィックスしますので、今日皆さんに頂いた御意見、今日からこの後数日の間に頂いた御意見を基に、細かく修正していくということになります。
 これまで、中川座長代理と一緒に事務局と何度もこのことを議論してきましたけど、全体的な印象は、留意点が大事なので多く盛り込んだものの、留意点が多く、マイナスな印象を受ける、といった意見もあります。つまり、学習者用デジタル教科書を活用してより良い授業をする、というところをもう少し膨らませたいという気持ちがあるということです。もしかしたら、書きぶりを変えることでそこは変えられるのかもしれないと思います。
 制度についても説明する必要がありますし、また、この後の議事となっている省令のなど、法令的にもまだ整備途上でもあるので明確な書きぶりが難しかったり、例示が難しかったりする部分も実はたくさんあり、しゃくし定規にならざるを得ないところも若干ありますが、そういう中で皆さんのお知恵を拝借しましてこのガイドラインを少しでも分かりやすいものにしたいという願いがありますので、御協力をよろしくお願いいたします。
 それでは、いかがでしょうか。では、加藤委員、お願いします。
【加藤委員】 先ほどのところにも関係するかもしれませんが、14ページ4.(3)丸2 に記載してある、30センチ以上離すよう指導すること、という書きぶりについてです。先ほどの資料3の最初にも書いてありますが、30センチ離したときに端末が小さいと文字が小さくなって結局見えなくなり、その小さい文字を見ることで疲労が起きる可能性があります。本会議で検討しているのは、デジタル教科書の活用に関するガイドラインであり、環境整備のガイドラインではないのでここに書けるかどうかは別として、単純に30センチ以上離すようにと指導を行うためには、ある程度画面の大きいタブレットを使用しましょうという前提がないと成り立たないのではないかと思いました。その辺りはどうなのかなと。
【堀田座長】 山縣先生、これも多分、学校現場で何を大事にするかを第一義に考えるということになりますでしょうか。
【山縣オブザーバー】 30センチ離しなさいというのは、ディスプレイの機械としてとの関係であって、文字がちゃんと読めたりしないと意味がないわけですから、そこは当然きちんと読めて判別できるようにすることが大切だと思います。
【堀田座長】 なるほど。整備との関係で、この30センチという数字が本当に意味のあるものになるのかどうかということが出てきてしまうことについて、事務局から何かありますか。
【事務局】 例えば30センチといったときに、この距離で30センチです。実際にデジタル教科書を使用するに当たって、スクリーンの大きさなどについて定量的に示すことはなかなか難しいというところが現実かとは思いますが、そういった意味で先ほど留意点の一つとして、17ページ目に4.(6)丸5 として、使用する学習者用デジタル教科書の機能や、その使用に適したICT機器の性能等について確認すること、と記載しています。なので、健康面にも留意しつつ、実際に使えるICT機器を選択いただくことが必要になると思っています。
【堀田座長】 もう少し踏み込むと、今の御意見は非常に大事な御意見だと思うので、ICT機器の性能について確認することについて、健康上の支障が生じないような機器の整備に配慮する、といった形でもう少しだけ踏み込んだような形で書くことができればと思います。ICT機器の整備そのものは本会議のミッションではないですが、デジタル教科書を使用する環境を是非整えてね、というところまでは守備範囲であると思います。加藤委員、このような感じで良いでしょうか。
【加藤委員】 はい。
【堀田座長】 ありがとうございました。他にいかがでしょうか。今日は皆様、必ず1回は御意見を頂きますので、お願いします。伊藤委員、お願いします。
【伊藤委員】 18ページ4.(6)丸6 に、必要な学習者用コンピュータについては、基本的には学校所有ということで、これは公共団体等が整備するものであるとの記載があります。この記載に基づけば、学習者用コンピュータ等が整備されることが前提であり、整備されていないとうまくいかない、ということになると思います。この辺りの補助金的なものも含めて、文部科学省は今後何かしらの施策等と併せながら進めていくという認識でよろしいでしょうか。
【事務局】 今御指摘いただいた部分に関して、まずICTの機器そのものについては、7ページ目に記載させていただいておりますが、新学習指導要領等の実施を見据え、文部科学省としてもICT環境の整備方針や第3期教育振興基本計画において学習者用コンピュータを3クラスに1クラス分程度整備することを目標に掲げており、このため地方交付税措置において整備を促しております。
 一方で、学習者用デジタル教科書に関しての予算については、まだ普及が進んでいない部分もありますので、今後の検討課題であると考えている次第です。
【堀田座長】 ただ、この書き方で補助金が付くのではないかという誤解を生まないために、書きぶりは工夫が要るかもしれません。
 伊藤委員、もし案があったら後でメールでも結構ですので頂ければと思います。一方、書き方によって、ICT機器が廉価になっていずれBYODになり、そうすると私物のコンピュータということになるわけですが、その機器にデジタル教科書を入れることが禁止されているように読めてしまい、その結果BYODが進まなくなることは良くないことですし、また、ここは解釈が難しいところで、教科書会社とのいろいろな調整も必要と思いますし、少し先のことなのでまだ明確には書けないところですが、この辺りの書きぶりは難しいところだと私も思いました。御指摘ありがとうございます。
 他にいかがでしょうか。柴田委員、お願いします。
【柴田委員】 14ページの4.(3)丸2 について二つあります。一つ目は、先ほどの議論にあった30センチ以上離すよう指導することについてです。物の使い方を考える人間工学の観点からも、ディスプレイの大きさなど、現実的なところを考えることが重要だと思います。一方で、今日の議論にも上がったように目の疲労を抑えたり、近視の進行を予防したりするという観点からは、一般的なVDTのガイドラインにおいては40センチ以上とされていることもありますので、画面との距離を30センチ以上十分に離すなど、できるだけ目の緊張状態を和らげるような使い方をすることが大事です。ただ、モバイルということを考えると40センチというのは少し長い距離になることもあるかもしれないので、30センチというのは私も妥当だとは思いますが、いずれにしても、十分な視距離を確保することは大事だと考えています。
 そういう意味で、例えばこの部分の記載を、画面の文字を問題なく見られることを前提とした上で、30センチも十分かといえば十分ではないと思いますので、30センチ以上の十分な視距離を取る、といった表記とすることを検討するのが良いと思います。
 それから二つ目は、同じく、4.(3)丸2 の、二つ目の点の一行目の最後、「学校医とも連携の上」というところです。このガイドラインが学校教員の養護教諭が範疇であれば、あえて書く必要はないかもしれませんが、養護教諭と学校医との連携の上、といった表記にすると、デジタル教科書ないしはタブレット端末を使う上で、より健康面に留意した使い方ができるのではないかと考えています。
 以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。これは他課との調整もあると思いますので、よろしくお願いします。
 書きぶりの代案もいろいろ出していただいていますが、その他に、各教科の観点からのお話も頂ければと思います。明石委員、お願いします。
【明石委員】 7ページ以降、3.(2)として学習者用コンピュータの使用、他のデジタル教材との一体的な使用、それから他のICT機器等との一体的な使用について記載されています。この部分について、現場の先生は、どうやって使うのかな、どうやって使えば良いか、ということを第一に見ると思います。8ページに具体的な学習方法が書いてありますが、これを読んだだけでは現場の先生は一体何のことなのか、どうやって使えば良いのか分からず、附属資料を見ないと何か具体的なものがイメージできず、多分、7、8ページ辺りで「いや、分からないな」と言って終わってしまう感じを受けたので、もう少しこの辺りに「ああ、こんな感じね」とイメージできるような記載があると、先に読み進められるのではないかと思います。
【堀田座長】 具体的にはどうすればいいですか、明石委員。そのような記載があると良いのは分かりますが。
【明石委員】 例えば他のデジタル教材というところに括弧して、こういったもの、といった記載を入れるだけでもイメージが違ってくるだろうと思いました。
【堀田座長】 4ページの図が7ページよりも前にある理由は、今のことを、用語についてできるだけ説明してからこの文章を記載しているということだと思いますが、4ページから7ページまでの間に分からなくなっている可能性は確かにありますので、何か補足したり、附属資料にあるようにといった記載をしたりするなどした方が良いかもしれませんね。確かにそうだと思いました。ありがとうございます。
 佐野委員、お願いします。
【佐野委員】 8ページから記載されている学習方法の具体例の部分について、先ほども言及がありましたが、ガイドラインの性格上、留意点が強く出てくるのは仕方がないのかなとは思いながらも、8ページからの3.(3)の六つの丸において、留意点が強く出ていると思います。ここに、学習者用デジタル教科書は、新学習指導要領が示すような主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善に資するものである、ということが強く出るような記載があれば、そのあとの「個別学習の場面」や「グループ学習の場面」、「一斉学習の場面」においてどのように活用するかというところが生きてきて、9ページ目の3.(3)四つ目の丸に記載されている、「学習者用デジタル教科書を効果的に活用するためには、ICT活用指導力等の教師の指導力が重要であることに留意する」ということも生きてくると思います。
 もう一つは細かいことになりますが、13ページの4.(1)丸4 についてです。文字を手書きする場面はノートの使用を基本とするという留意点が書かれており、「漢字や計算等に関する繰り返し学習等で書くことが大事」であると記載されています。しかし、書くことが大事な場面は漢字や計算等に関する繰り返し学習のみではなく、例えば子供たちの思考を記述し、それを基に発表することや、学びを振り返ることなどもありますので、書くことが大事な場面のイメージが少し膨らむような記載も入れ込んでいくと良いと思いました。
 以上です。
【堀田座長】 具体的な代案は本当に貴重です。ありがとうございます。確かに留意点が前のめりに出ているところもあるので、新学習指導要領に向けた環境整備の一つとして学習者用デジタル教科書の制度改正が行われて、デジタル教科書を活用することにより、新学習指導要領の期待するところを満足する方向になるということをもう少し打ち出したいと思います。ありがとうございます。
 他にいかがでしょうか。渡邉委員、お願いします。
【渡邉委員】 8ページ目の3.(2)の活用例についてです。デジタル教科書と何を組み合わせるかについて、(ア)は学習者用コンピュータ、(イ)はデジタル教材、(ウ)がICT機器、と記載されています。しかし、実際には、子供たちは、これら以外にもコンピュータに入っているソフトウェアやウェブブラウザ、写真を撮る機能などを使用しています。子供たちにとってはデジタル教科書が手元にあるというよりは、手元にタブレットがあるということに意味があります。タブレットにおいて、デジタル教科書を使ったり、ウェブで調べたり、写真を撮ったり、あるいは例えばワードやエクセルといったソフトウェアを活用するということもあります。その辺りについて、デジタル教材と言うと教科書に付随しているデジタル教材というイメージがどうしても付きますが、それが入れられるものなのか、それとも、ソフトウェアの活用になるのでこの中には入れ込むべきではないのか、確認させていただければと思います。
【事務局】 ありがとうございます。事務局の理解といたしましては、これまでの議論において、このガイドラインの主眼はデジタル教科書のガイドラインであるということで、8ページ目の3.(2)の(ア)、(イ)、(ウ)に書いてある範囲がデジタル教科書と一体的に使用する範囲として理解しております。この範囲が一般的なインターネットやタブレット自体の機能ということになると、このガイドラインの範疇からは外れてしまうと思いますが、いかがでしょうか。
【堀田座長】 これは私の意見ですが、実際はそういうものと組み合わせて使うことが多いですよね。この会議は、デジタル教科書を中心に議論しなければならないので、デジタル教科書を中心に書くことになりますが、では、何と組み合わせて活用することが多いかの具体例を、渡邉先生、是非幾つか例で頂ければ、それを基に事務局の方で書ける範囲の書き方で書くことができると思います。ただし、インターネットとなると、全てのツールが組み合わせ可能になってきてしまいますので、とりわけ子供たちが学習の場面で容易に扱うことができ、デジタル教科書と組み合わせることで効果が上がる、タブレットそのものの機能だけではなくて、デジタル教科書と組み合わせることで、より効果が上がるような組合せの例示を頂けると有り難いと思います。続けてどうぞ。
【渡邉委員】 それから、紙の教科書においてもQRコードを付けるという流れになりつつあるので、デジタル教科書でもリンクが張られるという可能性は当然あり得るのでしょうか。そうなると、いかにもデジタルという雰囲気になってくると思うのですが、その辺りを教えていただければと思います。
【事務局】 今御指摘いただいた部分は、次の議事でも取り上げます、デジタル教科書の要件に関連する部分があるかもしれませんが、紙の教科書においてQRコードやURLが記載されているものについては、デジタル教科書においては、それに基づいてウェブに飛ぶといったことは可能性としてあるものと思っております。
【堀田座長】 リンク先については、法的にはデジタル教科書ではないのですが、子供がそのようなことを毎日気にするかというと、紙の教科書の場合でも、子供が教科書と教材を区別して使っているわけでではないと思います。なので、法令上の整理もありますが、これから子供たちから見て学習がどのように便利かという観点からいろいろ決めていくことだと思います。よろしいでしょうか、渡邉委員。
 他にいかがですか。中野委員、お願いします。
【中野委員】 特別支援の立場からお願いいたします。まず、2ページ目の「はじめに」、若しくは、3ページ目の「ガイドラインの趣旨等」に、特別支援に関する言葉が一言入るとうれしいというのを前から申し上げております。「終わりに」には入れていただいているのですが、会議の議論の中ではずっと特別支援のことも考えて、また、デジタル教科書に関しては発行者等にこれまで努力していただいているものと認識していますので、どこかにそういう理念の部分が触れられているとうれしいと思います。これは御検討いただければ、というお願いです。
 それから、5ページ目の2.(3)の一つ目の丸の丸2 についてです。特別支援のことについて書いていただいておりますが、学習者用デジタル教科書の中に教科用特定図書等は入らないという整理になるわけですよね。後ろの部分では音声教材やPDF版拡大教科書等について言及していただいておりますが、ここで言及されないと、音声教材やPDF版拡大教科書等を利用するのが難しい状況が出できてしまう懸念があります。ですので、必ずしも特別支援で学習者用デジタル教科書を使えるわけではないので、そういう場合には、教科用特定図書等で補うことが可能であるということを触れていただけると良いと思います。また、ここだけを読むと教科書発行者が作成しているもの以外は特別支援では使ってはいけないと読み取られてしまう懸念もありますので、表現方法等を御検討いただければと思います。
 それから、11ページ目の3.(3)の「特別な配慮を必要とする児童生徒等の学習上の困難の低減」の部分についてです。これも今の話と全く同じことなのですが、紙に代えて学習者用デジタル教科書を使用できることとなると書いていただいておりますが、音声教材やPDF版拡大教科書等も使用できないと実質上は進歩にならないと思いますので、御検討いただきたいと思います。
 それから14ページ目の4.(3)丸2 です。先ほどから議論になっている30センチ以上離す、という話ですが、これは特別支援でも同じ話がありますので、文言を決めていただく際に、是非、特別支援の観点もお考えいただければと思います。
 最後に、18ページ目の4.(6)丸6 についてです。先ほど自分自身の端末を使用するというBYODの話が出てきましたが、特別支援では、学校で整備されていないために、自分自身の端末を使わざるを得ない状況があります。そうでないと、学習そのものができないというような現状がありますので、座長がおっしゃったように、自分自身の端末を使うことを排除しないような書き方にしていただけると有り難いと思います。
 以上です。
【堀田座長】 いろいろ御指摘いただきましたが、特に「はじめに」のところへの配慮も含めて、特別な支援が必要なお子さんとデジタル教科書というのは非常に親和性の高いものだったと思いますので、このことも含めて書き加えていきたいと思います。
 黒川委員、どうぞ。
【黒川委員】 私の方からは、今の話の流れとは少し違うお話をしたいと思っています。そもそも論で恐縮ですが、デジタル教科書という用語の問題です。今回のガイドラインでは、デジタル教科書が学習者用デジタル教科書と、それほど多くは出てきませんが、指導者用デジタル教科書に分類されていると思います。これまでの経緯の中で、「「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議」の最終まとめでは、学習者用デジタル教科書はデジタル教科書、指導者用デジタル教科書は「指導者用の「デジタル教科書(教材)」といった表現でした。我々、教科書協会の委員会等で最近議論になっていることなのですが、今後、現場の先生にお届けする場合に、指導者用デジタル教科書をデジタル教科書と名付けても良いのかということ、それから、業界でこのカテゴリーを明確化、共通化しておかないと、学習者用と指導者用の区別について現場に混乱を与える可能性が高いと考えている方が多くおりまして、是非、ガイドラインにおいて基本となる指針を示してほしいという声が上がっていることは、一応お伝えしたいと思います。
 実際には、我々もアピールしていくつもりではありますが、現場に商品として下りてくると、指導者用と学習者用の違いが分かりにくくなる可能性が十分あると思っております。いまだ見ぬ学習者用デジタル教科書の授業風景というものを想定しながらこのガイドラインを作っていますので、その点は仕方がない部分はあるとは思いますが、今回、学習者用デジタル教科書と指導者用デジタル教科書という区分けで良いか、確認させていただきたく思います。
 繰り返しになりますが、経験的に学校現場での混乱が想定されるため、発行者はその両者の違いを明確に表示していかなければならないだろうと考えています。そのためには、本ガイドラインの4ページ目の2.(2)の脚注等に、そもそも価格が違いますから、指導者用デジタル教科書は別の商品である旨記載いただければと思います。加えて、紙の教科書との同一性についても記載いただければと思います。なぜなら、指導者用デジタル教科書は、教材ですので、必ずしも紙の教科書と内容が同一ではなく、教材を選択して載せている発行者もあり、様々だからです。また、教科書と教材の著作権法上の相違に関する脚注も記載いただければ参考になると感じた次第です。
 もう一点、先ほどから議論に取り上げられている、ICT環境整備については、16ページ目以降の4.(6)「その他の留意点」の部分につて、どれも大事な内容かとは思いますが、読んでいくと大変難しいので、もう少し平易な表現を用いても良いかと思います。また、丸5 の内容などは、22の脚注において補足されておりますが、せっかくの内容が脚注に潜り込んでしまっている印象も受けますので、一つの項目として独立させても良いと思いました。
 以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。事務局からまた御説明を頂きますが、私なりに答えると、二つ目のことはICTの整備、目次の4.「学習者用デジタル教科書の使用に当たり留意すべき点について」における項目立てとして、デジタル教科書をしっかりと使用できるICT環境整備についての記述があっても良いのではないかということですよね。この会議は、最初から申し上げているとおり、ICT環境整備の会議ではありませんが、デジタル教科書をしっかりと使用できるICT環境を整備することを求めることは、この会議のミッションから見てもぎりぎりのところだと思います。他のことでも、学校のICT環境がプアであることで様々な課題が生じているというところはあると思いますので、これを機に、一つの項目として立てても良いと、私も個人的には思います。関係課との相談も必要かと思いますので、事務局と相談して盛り込めるようにしたいと思います。
 一つ目の点は、これは飽くまで紙の教科書がデジタル化されたものがデジタル教科書というのが法令上の整理です。よって、指導者用デジタル教科書をデジタル教科書の仲間にしてしまうと様々な制約が生じ、自由な教材開発などが妨げられてしまったり、ビジネスにならない可能性もあったりすることを考えると、指導者用デジタル教科書という製品のカテゴリーが学習者用デジタル教科書とは別に、提示教材の工夫されたものであるということが分かるように書く、ということで良いですか。また、学習者用デジタル教科書のこともデジタル教科書と呼んでおり、今は無造作に使われているので、デジタル教科書の分類としては二つある、という整理を改めてきちんと示すとして良いですか。
【黒川委員】 はい。
【堀田座長】 では、事務局から何かあればお願いします。
【事務局】 御指摘ありがとうございます。おっしゃっていただいたとおりデジタル教科書というものが法令上の文言ではないので、実際、通称として、いわゆるデジタル教科書という文言が使われているところです。この会議においても、骨子案の前の段階等においてはデジタル教科書という文言を使っていましたが、現時点で指導者用デジタル教科書をデジタル教科書と呼んでいる事例が多いことから、あえて「学習者用」という文言を付けました。今、座長からも御指摘いただいたとおりですので、分かるように説明を加える必要があると理解いたしました。
【堀田座長】 デジタル教科書という言葉が誤解を生みやすいと思って分けてみたものの、分けたことによって二つともデジタル教科書だと誤解されやすい可能性もあるということもよく分かりましたので、これを踏まえて整理し直したいと思います。ありがとうございます。
 駒崎委員、お願いします。
【駒崎委員】 今の話に関連しますが、今回の制度改正において、学習者用デジタル教科書が紙の教科書に代えて使用することができる、というのが一番大きなところだと思いますので、7ページ以降の3.(2)に記載の、学習方法等の例の中に、紙の教科書を使わずに学習者用デジタル教科書を使用することによって可能な指導の例に関する記述があっても良いのではないかと、現場サイドの目から見ると感じます。そういった例を前面に出してもらえると、現場の教員が、「あっ、こういうことができるようになるんだ」と一番分かると思います。現在の記載内容であると、学習者用デジタル教科書の使い方が、基本的には変わらなくなってしまうと思います。また、皆様も御承知のとおりかと思いますが、学校の机は大体規格のサイズで、机に教科書とノートを乗せて更にタブレットを乗せるというのは非常に難しいことです。もし、教科書もノートも使用せず、タブレットだけで授業ができるとなるとすっきりすると思いますので、その辺りについても書き加えていただくと面白いと感じました。
 それから、留意点が多いのは仕方がないことだ、ということは読んでいて非常に感じます。
 以上です。
【堀田座長】 ありがとうございます。駒崎委員、その具体的な書きぶりのたたき台でも、情報を頂ければ事務局が書けると思いますので、是非、よろしくお願いします。
 中川オブザーバー、お願いします。
【中川(哲)オブザーバー】 6ページ目以降、活用の在り方、つまり、学習者用デジタル教科書のメリットに関する部分が記載されており、10ページ目の「グループ学習の場面」において記載されている、考え方を共有することが、デジタルであるメリットを最大限に生かしているということが説明されていると思っています。
また、今回、著作権法も改正されてデジタルのメリットが十分に発揮できるようになったと思います。しかし、著作権について記載してある、16ページ目においては表題も「留意点」とされており、著作権法が改正されてデジタルが使いやすくなったというニュアンスが余り伝わってこないので、もう少しメリットについてもわかるような書きぶりができるのではないかと思いました。今回、著作権法が改正されたことによるメリットは、グループ学習においてのみではなく、教員が学習者に対してコンテンツを共有できる、ということも強みとしてあると思いますので、一斉学習の場面においてもメリットがあると言えると思います。
 もう一つがデジタル教科書のメリットとして、10ページ目の3.(3)(ウ)などに、にポータビリティについて記載いただくと良いと思います。情報の特性として重さがないので、端末は重いですが、その中に百科事典などのコンテンツを大量に詰めたとしてもグラム数は変わらない、という点があると思います。デジタル教科書の場合、端末の中に小学校であれば6学年分の教材を入れれば、一つの端末において6年生が4年生の教材を振り返って勉強できるといったメリットがありますので、それについても記載しても良いのではないでしょうか。
また、情報の特性のもう一つの部分であり、これまでも何回か申し上げておりますが、学習履歴がしっかりとれてトレースされるという部分が今回は記載されていないような気がしております。冒頭のページと最後のページにおいて、Society5.0とビッグデータなどについて言及されておりますので、学習履歴が蓄積され、それを分析して先生方が個別の指導に役立てることができるという可能性があるとことについては、是非示していただきたいと思います。でないと、冒頭と最後のページにおいて言及されているSociety5.0感が、正直に言うとただブラウジングしているだけで、ほとんど私には感じられないというところがあります。
【堀田座長】 どうですか、事務局。
【事務局】 御意見ありがとうございます。二点頂いている御意見のうちの一つ目ですが、複数学年の教材を蓄積して行き来を自由にできるようにする点については、デジタル教科書のライセンスの関係等もあり、実態上、全学年分を複数年間保持できるかどうかというと、黒川委員から後ほど御意見を頂けると思いますが、難しい部分があるかもしれないという懸念があります。
もう一点、学習履歴については何度も御指摘を頂いた中で、例えば12ページ目の3.(3)(サ)のにおいて現時点では、学習の進捗、習熟の程度を把握するという中で、児童生徒の学習履歴を記録し、学習内容、習熟の程度を把握するといった記載をさせていただいておりますが、少し表現が足りないかもしれませんので、もう少し何か膨らませるなどといった御意見を頂ければ、是非書き込みたいと思っています。
【堀田座長】 ということなので、是非何か追加の書きぶりを御提案いただければと思います。
 黒川委員、何かありますか。
【黒川委員】 今、議論に上がったことは、是非いろいろとやりたいと思うところです。クラウドのサービスを採用し、データをクラウド上において端末から見に行くといった形をとれば、多くのデータを載せられます。しかし、通信環境等が十分に整備されていないため、多くは各端末本体に導入して活用しているのが現状です。2020年代という背景の中では、中川オブザーバーのおっしゃった流れに移行していくと思いますが、2020年度のスタート時点でどこからスタートするかと考えると、なかなか難しいのかなと思っております。また、著作物に関しては、紙の教科書は一生持つことができますが、教科書協会ではいろいろな意見はあるものの、学習者用デジタル教科書は、ユーザーライセンスで1年間使用を基本としたいと考えています。著作物に対しての掲載補償金や商品のコストとの関係など様々あり、複数年間、著作物のデータを制限なく使えるようにすることは難しいと感じます。ですので、中川オブザーバーは著作権法第三十五条を念頭に置かれ、デジタル化のメリットとしてコンテンツの共有ということをおっしゃっていたと思いますが、現時点では、学習者用デジタル教科書は法第三十三条第二項の範囲内でお使いいただくような形を考えています。ですので、段階的に進んでいくものと思っています。
【堀田座長】 これからいろいろ詰めていく必要もありますし、学習者用デジタル教科書を使用しながら現場の環境の変化を見て、また、ビジネスになりそうかどうかも含めてリニューアルしていくような制度設計を検討する必要があると思います。中長期的には中川オブザーバーがおっしゃったようなことが非常に重要ではありますが、「今後こういうことが期待される」といった書き方で書けるものを書く程度が限界かもしれません。
 山縣オブザーバー、どうぞ。
【山縣オブザーバー】 14ページ目の4.(3)の2の二つ目のぽつにおいて、「目や身体への影響が生じないよう、日常観察や学校健診等を通して、学校医と連携の上~」と記載してあります。これを記載していただき、本当にありがとうございます。しかし、もう少し具体的に書かないと、実際には、各学校は何をやれば良いか分からなかったり、各学校に委ねられることにより、対応に差が出たりするのではないかと思います。学校保健安全法の健診などにも関わってくることかもしれませんが、何をチェックし、どのような健診のときに問診するのかといった具体的な提案を、是非、どこかに記載いただければと思います。
 それから、14ページの枠内の「教室の明るさ」に関して、例えば部屋の明るさは、今、教室は300ルクスが基準になっていると思いますが、具体的な数値の話に関して記載した方が良いのではないかと思いました。
 それから、次の15ページ目の一行目に「データ入力などの集中的な作業については連続作業時間が1時間を超えないようにする」とありますが、これは日本眼科医会の提出資料の資料6「近視研究会:学童の近視進行予防7項目」という中に、「1時間したら5分~10分休」むと記載がありますが、1時間使用したら休むというのは、基本的には大人のVDTの基準ですので、本当に子供たちはこの基準で良いのかということに関しては、改めて専門家と、しっかりと情報を共有して、1時間で本当に良いのかということを含めて、実際には授業時間は1時間もないので問題ないのかもしれませんが、ある程度明確にしておいた方が良いと思いました。
 以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。何かありますか。
【事務局】 御指摘ありがとうございます。まず一点目の教室の明るさの部分です。御指摘いただいたとおり、学校環境衛生基準において定められた照度があります。この会議で作成するガイドブックにおいては、その基準をもちろん守っていただいた上で、照明や遮光カーテン等の利用によって、画面への映り込み等に配慮する、といった観点から記載するものと理解しています。
 もう一点目の「連続作業時間が1時間を超えないようにする」という記述については、ガイドブックからの抜粋の仕方が悪かったのかもしれませんが、ガイドブック上では、おっしゃっていただいたように大人のVDTのガイドラインについて記載があり、実際の授業時間は1時間より短いといった記載もありますので、この記載は変更を検討させていただければと考えています。
【堀田座長】 ありがとうございます。柴田委員。
【柴田委員】 先ほど、中川オブザーバーがおっしゃった、タブレットにデジタル教科書のデータを入れられるという議論についてです。これは、人間工学の視点からも、仮に学年をまたがなくても1学年分のデータを入れることができれば、通学時の児童の身体的な疲労を軽減できる可能性があります。もし、この点がデジタル教科書を使うことのメリットとしてあるならば、ガイドラインに記載しても良いと思います。
【堀田座長】 この辺りについては、書ける範囲のことを是非書きましょうか。
【事務局】 ありがとうございます。現時点では、デジタル教科書を段階的に導入する段階にありますので、紙の教科書があった上でデジタル教科書を使うということで、紙の教科書がなくなるわけではない、ということかと思っております。
【堀田座長】 そこが難しいところですね。
 一通り御意見が出たと思いますので、よろしいでしょうか。では、座長代理から一言お願いします。
【中川(一)座長代理】 前回の会議以降、座長や事務局と、今日の会議に向けて打合せしてまいりましたが、今日の会議において委員の皆様より専門的な立場からたくさんの御示唆を頂いたと思います。ガイドラインは文字どおりガイドラインなのですが、受け手に与えるメッセージや印象といったものを想定しながら、バランスや書きぶりについての検討が最後まで必要だと思いました。バランスについては、活用のメリットと留意点がありますが、特に留意点に関する書きぶりについての検討が必要だなと思います。それから、佐野委員がおっしゃっていたと思いますが、知識理解と思考表現のバランスについて、確かに若干、知識理解の話が少し多いのかなと思います。しかし、実際は、デジタル教科書は思考判断、表現にも使えますので、その辺りのメリットをもう少し強調する書きぶりが必要だと思います。例えば、先ほど議論に上がりました12ページ目の3.(3)(サ)についてですが、タイトルが「学習の進捗・習熟の程度を把握する」となっており、どちらかというと知識理解に寄ったタイトルが付いている印象があります。ですので、皆様の御意見を聞きながら、例えば、こういうことの一つ一つを、バランスを見て考えていくというのが最後の調整で必要だと思いました。
 それから二点目は、このガイドラインが独り歩きした場合に、当然分かっている人だけが読むわけではないので、その辺りの想定も最後の調整で必要だと思います。例えば、先ほど黒川委員が言ったような、学習者用と指導者用の誤解をされないような書きぶりの最終チェックや、4ページ目にある図が実際に伝わるのかどうかということの検討、それから著作権法の内容をもっと分かりやすく伝えるにはどうしたら良いかなどについて最終調整をしていくことが必要であると改めて感じました。
 それから三点目は、個人的な意見なのですが、先ほど座長もおっしゃっていたICT環境整備の問題です。当然、この会議において作成するガイドラインはデジタル教科書のガイドラインではありますが、ICT環境整備は切っても切れないものです。ですから、そのことを前提として、今も要所、要所に盛り込まれていますが、整備を促進するということを記載することは、今後の要求のことを考えたときにはやはり必要な要素だと感じています。
今申し上げた三点も含め、最終チェック、調整を行っていきたいと思います。ありがとうございました。
【堀田座長】 ありがとうございました。
 今日は議事の(2)が中心ですので、ガイドライン素案について皆様にたくさん御意見を頂いたところです。ここで確認をしたいと思いますが、今日皆様から御指摘いただいたこととして、資料4の目次における2.の「制度概要」について、明石委員にもおっしゃっていただいたように、現場の先生に本当にこの内容で伝わるのかという観点での見直しが必要かと思っていますので、こちらでも検討を重ねてまいります。
 それから、4.の「留意すべき点」の内容について、後ろ向きにならない表現にした方が良いという、中川座長代理の御指摘がありました。これも表現の工夫が必要と思いますので、これについては委員の皆様、書きぶりについて御提案があれば、是非御提案いただきたいと思います。
委員の皆様には3.の「活用の在り方」の部分についてお願いがあります。委員の皆様の中で各教科の代表として参加いただいている方々においては、各教科の見方や考え方、新しい学習指導要領などを踏まえ、いろいろな形で検討していただいたものが附属資料集に整頓されています。それが各教科の個別な内容ではなく、一般的な部分として記載されているのが3.の「活用の在り方」の内容になりますので、どちらかというと何を使って何をするみたいな書き方になっています。そこで皆様にお願いしたいこととしては、本当に皆様が御担当している教科から見て良いか、ということのチェックです。特に、各教科等の個別のことまでは書けないにしても、新学習指導要領においては、見方、考え方の話や、深い学びの話、対話的な学びの話などについては各教科等共通のことと思いますので、それを再度、各教科等の専門家の観点で確認していただき、書きぶりについて御助言いただければと思います。これらについては、最後に事務局から改めてお願いがあるかもしれませんが、是非近いうちにメール等で御意見を頂いて、それを基に事務局の方で整理していただき、再度皆様に次回の会議で取りまとめるガイドラインの案となる内容をチェックいただくことになると思いますので、よろしくお願いします。たくさんの御意見を頂きましたので事務局は大変ですが、これでまた前に進めそうかなと思います。
 続いて、議事(3)にまいります。「学校教育法等の一部を改正する法律の施行に関する省令案等」について、事務局から資料5に基づいて御説明していただきます。よろしくお願いします。

<事務局より資料5について説明>

【堀田座長】 基本的なこととして、省令や告示に関する基本的なことについて再度説明していただけますか。
【事務局】 申し訳ありません。先ほど、法律に「文部科学大臣の定めるところ」という文言がある旨申し上げました。この「文部科学大臣が定める」ものが文部科学省令であり、文部科学大臣の告示です。法技術的な問題として、省令においてデジタル教科書の要件と事由について定め、デジタル教科書の使用に関する具体的な基準については告示案で定めている、という構成になっているというところです。
【堀田座長】 ということですね、分かりました。このように法令というものは作っていくそうです。
 それを前提に、私たちはこのガイドラインについて、法令上の規定をより具体的にするものとして検討してきたということになります。順番が逆のようになっているのは、この省令や告示における規定をどのようにするか、というのは具体的な検討なしには作れないので、今まで先んじて具体的な検討をずっとやってきたということになります。一方、制度においては法改正がされ、その後に省令と告示が規定されて、それら法令上の規定に関するガイドラインは私たちが検討しているガイドラインということになるので、そこの折り合いをつける必要があります。
 こういった文脈を御理解いただいて、何か御意見あるいは御質問等がありましたら挙手をお願いします。いかがでしょうか。中野委員、お願いします。
【中野委員】 先ほどの議論とも関係しますが、特別支援において、デジタル教科書を補う形で使用されている音声教材やPDF版拡大教科書等を解釈等で入れることができないかどうか、という切実な質問なのですが、いかがでしょうか。
【事務局】 こちらにつきましては、今回は、法律において「紙の教科書の内容を文部科学大臣の定めるところにより記録した」としており、まずは質を担保するために、デジタル教科書は教科書発行者が作成するという制度設計を考えております。ただ、音声教材やPDF版の拡大教科書も含めた教科用特定図書等の重要性についてはもちろん変わることはありませんので、紙の教科書又はデジタル教科書でも補えない部分についてしっかりとその普及を図っていくことは必要だと思っています。
【中野委員】 その際、音声教材やPDF版拡大教科書は既に現場ではかなり使われている一方、デジタル教科書の概念はまだ十分に普及していません。ですので、2019年度からデジタル教科書を使えるようになることに対する期待感は、今かなりあるところかと思います。省令や告示に今回書き込めなくても良いですが、ガイドラインなどでデジタル教科書を補うものとして音声教材などを利用することが可能であるということが現場に分かるように御配慮いただけると有り難いと思います。
【堀田座長】 法令にどこまで書けるかという話と、それを受けたガイドラインにどこまでそのことを説明するかということの使い分けかと思いますが、今の御意見は非常に貴重だと思うので、前向きに検討したいと思います。
 他にいかがでしょうか。佐野委員、お願いします。
【佐野委員】 告示の「各教科等の授業時数の2分の1に満たないこと」の規定の理由について省令又は告示において書けなくても、例えばガイドラインの12ページに、そもそも紙の教科書とデジタル教科書を適切に組み合わせるという趣旨からも、デジタル教科書の使用は2分の1を超えることがないようにする、といった、理由付けが少し分かるように書いてあると、一般の先生が、あっ、健康面なのかな、何なのかなというところが分かると思いながら見ていました。
 以上です。
【堀田座長】 そのように書き足したいと思います。ありがとうございます。
 他にいかがでしょうか。加藤委員、お願いします。
【加藤委員】 今のところに関連した質問なのですが、一部という記載について、数字が示されることで活用すべきところで活用できなくなるのではないか、という懸念もありますので、2分の1という数値にする理由について聞きたいと思いました。
【事務局】 今回デジタル教科書を制度化するに当たっては、段階的に進めていくということが基本的な方針となっております。ですので、まずは紙の教科書を基本としつつ、教育課程の一部においてというところで、まずはその一部を2分の1というところからスタートすることを考えているところでございます。
【加藤委員】 スタートということですか。
【事務局】 そうです。ですので、先ほども議論にありましたが、今後、デジタル教科書が普及し、実証研究されていく中で、デジタル教科書がより効果的に使えるということであれば、こういった基準等について、改めて検討していくことは考えられると思っています。
【堀田座長】 実際、一部ということについて、例えば85%も一部なのかというと、量感からすると一部というよりほぼ全部であると感じますし、そこで我々は、一部という表現に対して2分の1とすることで最大値を確保しているつもりです。ですから、実際に2分の1と規定されることによって、もっと有効な使い方をしたいのに、という意見もあると思いますが、そのときにまた基準等について検討すべきと思いますので、現時点では、今のところの理屈でのマックスの数値として2分の1と考えているということです。
 この辺りは制度を作るプロセスになりますので、一つだけ付け足しておきますと、紙の教科書をなくさないでほしいという意見は、教科書会社の方よりも、むしろ、中央教育審議会に出席されている委員や国会議員からのものが非常に強く、かなり根強くあり、デジタル教科書については反対意見も多かったところです。そのような状況の中で、デジタル教科書の制度化をきちんと進めていくための第一歩として併用制とされる中での最大解釈は2分の1と御理解いただき、佐野委員もおっしゃいまいしたが、ガイドラインにも今のような趣旨がうまく伝わるようにできるだけガイドラインで説明し、本質的なところが見えやすいようにしていきたいと思います。ありがとうございました。
 皆様の御協力で三つ目の議事まで大体議論が終わったと思います。予定の時間の少し前ですけど、少し早く始まりましたのでこの辺りで会議を終了したいと思います。事務局から今後のスケジュールについて御説明いただければと思います。
【事務局】 今後のスケジュールに関する資料はありませんが、既に各委員に日程の調整をお願いさせていただいているとおり、次回は12月18日火曜日を予定しているところです。先ほど座長からもありましたとおり、次回の会議においてガイドラインの案について御議論いただき、次回を最後にすることを予定しております。
【堀田座長】 ありがとうございます。
 そして、法令の改正作業等いろいろありまして全面実施に向かっていきますので、次回の最終回までが非常に重要な期間になりますので、皆様、是非、御意見を多めに、早めに頂ければと思います。
 それでは、本日はここでお開きとしたいと思います。どうもありがとうございました。

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