「デジタル教科書」の効果的な活用の在り方等に関するガイドライン検討会議(第1回) 議事録

1.日時

平成30年6月8日(金曜日)10時から12時まで

2.場所

文部科学省3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 「デジタル教科書」を使用する際の健康面での留意点について
  2. ガイドラインに盛り込むべき事項について
  3. 「デジタル教科書」の効果的な活用の在り方等に係る調査研究事業について
  4. その他

4.出席者

委員

堀田座長、中川一史座長代理、加藤委員、黒川委員、駒崎委員、佐野委員、柴田委員、中野委員

文部科学省

梶山初等中等教育局教科書課長、春田教科書課課長補佐

オブザーバー

中川哲オブザーバー

5.議事録

【事務局】 ただいまより、第1回「デジタル教科書」の効果的な活用の在り方等に関するガイドライン検討会議を開催させていただきます。本日は、皆様お忙しい中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。また、各委員の先生方におかれましては、この検討会議の委員の御就任をお引き受けいただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は会議の第1回目ですので、座長の御紹介までの間、便宜的に、私、教科書課課長補佐の春田が議事進行を務めさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、配布資料の確認をさせていただきます。本日の配布資料は、議事次第のとおりとなっておりますが、不足等がありましたら事務局までお申し付けください。
 続きまして、会議の開催に当たり、教科書課長の梶山より御挨拶をさせていただきます。
【事務局】 本日はお忙しい中、第1回「デジタル教科書」の効果的な活用の在り方等に関するガイドライン検討会議に御出席いただき、ありがとうございます。
 皆様御承知のように、今国会において、「学校教育法等の一部を改正する法律」が成立いたしました。これを受けまして、来年度から、デジタル教科書を必要に応じて紙の教科書に代えて使用することができるようになりました。
 デジタル教科書の位置付けの検討に当たり、文部科学省においては、調査研究協力者会議を設けるとともに、中央教育審議会でも議論いただきました。また、国会においても議論いただいたところです。これらの議論において、デジタル教科書は、プラスとマイナスの両面を持ち得ることなどから、段階的に導入を進めていくことが適当であるとされました。文部科学省としては、校長や設置者の円滑な導入を支援していくため、ガイドラインを作成し、導入に当たっての留意点や効果的な活用事例を示す予定です。本ガイドラインについては、昨年度から検討を始めておりまして、委託事業として、現状に関する調査を行うとともに、本日御参加いただいている委員の方々に個別にお話を伺わせていただいておりました。委員の方々には、様々な点で個別にお話を伺うということもあるかと思いますが、来年度の導入に間に合うようにガイドラインを作成したいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 簡単ではございますが、私からの挨拶は以上です。よろしくお願い申し上げます。
【事務局】 それでは、続きまして、委員の皆様の御紹介をさせていただきたいと思います。お手元の資料1の別紙を御覧いただければと思います。御出席の皆様について委員の名簿順に御紹介をさせていただければと思います。
 まず、東京学芸大学教育実践研究支援センター情報教育支援部門准教授 加藤委員です。
【加藤委員】 よろしくお願いします。
【事務局】 一般社団法人教科書協会デジタル教科書政策特別委員会委員 黒川委員です。
【黒川委員】 よろしくお願いいたします。
【事務局】 東京都中野区立緑野小学校校長 駒崎委員です。
【駒崎委員】 よろしくお願いします。
【事務局】 北海道札幌市立幌南小学校教頭 佐野委員です。
【佐野委員】 よろしくお願いします。
【事務局】 東京福祉大学教育学部教授 柴田委員です。
【柴田委員】 よろしくお願いします。
【事務局】 放送大学教授 中川一史委員です。
【中川(一)委員】 よろしくお願いします。
【事務局】 慶應義塾大学経済学部教授 中野委員です。
【中野委員】 よろしくお願いします。
【事務局】 東北大学大学院情報科学研究科教授 堀田委員です。
【堀田委員】 よろしくお願いいたします。
【事務局】 堀田委員には、本検討会議の座長をお願いしております。
 また、オブザーバーとして、株式会社Edlog代表取締役社長、中川哲様に御参加いただいております。
【中川(哲)オブザーバー】  よろしくお願いします。
【事務局】 また、本日は御欠席ですが、このほかに明石委員、伊藤委員、白井委員、渡邉委員にも御就任いただいております。
 以後の進行につきましては、座長である堀田委員に司会をお願いしたいと思います。なお、議事に先立ちまして、堀田座長に座長代理の御指名もお願い申し上げます。
 それでは、よろしくお願いいたします。
【堀田座長】 座長を務めさせていただきます堀田です。よろしくお願いいたします。
 早速議事を進めてまいりますが、議論に入る前に幾つか決定しなければならないことがあります。まず、本検討会議の運営につきまして、事務局から説明をお願いいたします。

<事務局より資料2について説明>

【堀田座長】 それでは、本検討会議の運営につきまして、資料2の案のとおりとさせていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【堀田座長】 では、そのように決定させていただきます。
 続きまして、今の資料2の運営規則に基づきますと、第2条第2項にありますように、私が会議にやむを得ず欠席する場合に備えて、座長代理を指名させていただくということとなっております。私としましては、中川一史委員にお願いしたいと考えておりますが、いかがでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【堀田座長】 よろしいでしょうか。それでは、御了承いただいたということで、中川委員、よろしくお願いいたします。お手数ですが、席の移動をお願いいたします。
 では、決定すべき事項も決まったということで、ここから議事に入っていきますが、先立ちまして、私の方から一言御挨拶を申し上げたいと思います。 まず、ICT機器、とりわけ子供たちが使うタブレット端末あるいはパソコン等が学校現場に普及してきています。大人の社会を考えても一人一台、あるいは二台、三台と様々な形のタブレット端末を使って、ネットワークで情報を共有しながらいろいろな人と一緒に仕事を進めていくことは、当たり前のことになっています。子供たちの学習の中でも、対話的な学びを実現するためにも、あるいは外部リソース、様々な考え方、意見を踏まえながら学習していくためにも、そのような整備が進められているところです。
 新しい学習指導要領の実施に向けて、このデジタル教科書についても、随分前から検討が進められてきております。「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議という会議が文部科学省に作られたときには、デジタル教科書というのは鍵括弧で囲まれた言葉でした。当時、世の中でよく言われているデジタル教科書というのは、先生が提示して子供たちに分かりやすく教えるための教材を指すことが一般的でした。検討会議で審議の対象となったデジタル教科書というのは、子供たちが使うタブレット端末の中に入っている、教科書をデジタル化したものです。そういうものをこれから作って、あるいは使っていくときに、どのようなことが課題になるのかということについて検討をしていったということになります。
 教科書というのは、特に義務教育においては子供たち一人一人に、無償給与することになっている、我が国の教育政策の非常に根幹となる部分であり、そして、学力をきちんと保証してきた我が国の歴史的に非常に価値のある政策です。これをデジタル教科書にすることによって、学力がきちんと身に付かなくなってしまうようでは困るといった様々懸念の声があり、その検討会議で検討した結果、紙との併用や、著作権の課題、無償にできるのは今のところ併用の紙の教科書だけで、デジタル教科書は何らかの形で有償にせざるを得ないが、そこの権利関係や価格設定をどうするのかといったことについて随分と議論、検討され、平成28年の6月に中間まとめが出され、12月に最終まとめが出されました。
 それを受けて、民間も含めて様々なシンポジウムなどが行われ、議論も随分進んだところですが、ちょうど先般、デジタル教科書が、紙の教科書と併用することを前提に学校教育法が改正されたところです。大きな方向としては、子供たちが紙の教科書に加えてデジタルの教科書を、情報タブレット端末を使いながら、それを使って学ぶということがより普及する形に向かっております。そういう状況の中で、この今回の会議が立ち上がったということになります。
 今回の会議は、基本的には、効果的な活用の在り方に関するガイドラインを出そうというものです。ですから、デジタル教科書をどのように作るかとか、あるいは価格設定をどうするかとか、そういう話は、このガイドラインの守備範囲では直接的にはありません。むしろ現場の先生あるいは教育委員会の方々がどのような形で導入し、それをどのような授業設計で活用していくとより効果的な、紙の教科書と併用しながらより効果的な授業になるのかということについて、学校現場に向けた指針を明確に打ち出そうというものです。そのため、ここにいらっしゃる委員の方の多くは、各教科教育の御専門の方ということになりますし、あとは実際に導入する側の教育委員会の方、特別支援に造詣のある方、人間工学の分野の方、それから教科書の業界からも代表の方にお越しいただいております。
 国会におけるデジタル教科書の審議等を見ていますと、例えば目が悪くなるのではないかといったような、健康面に配慮して使わないといけないというようなことが多く出た意見です。これは、そのデジタル教科書そのものというよりも、タブレット端末を使って学習することに対する懸念かなと思う部分もあります。しかし、デジタル教科書が、主たる教材である紙の教科書をデジタル化したことによって、それをじっくり何度も見ながら学ぶということになりますと、確かに健康面への配慮は、授業中も家庭学習においても、必要になると思います。そのようなこともこのガイドラインには盛り込んでいきたいと思いますし、効果的な学習を行うために必要な環境整備もこれから大切ですよということをうまく盛り込めればと思います。
 以上のことから、このガイドラインの検討をこれから半年ほど進めていって、私としてはこのガイドラインが出ることにより、学校現場へのICTの整備促進と実践の普及に向かっていければと思います。この会議は、いろいろな意見が出てくると想定されていますので、できるだけ公開して多くの方々に見ていただきながら、御意見を頂きながら進めてまいりたいと思います。
 少し長くなりましたが、私からの御挨拶は以上とさせていただきます。
 では、ここから議事に入りますが、カメラやビデオカメラ等による撮影は、ここまでとさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
 では、デジタル教科書を使用する際の健康面での留意点につきまして、この分野の御専門である柴田委員から資料を準備いただきましたので、プレゼンテーションをいただきたいと思います。では、よろしくお願いいたします。
【柴田委員】 それでは、始めさせていただきます。東京福祉大学の柴田と申します。よろしくお願いいたします。
 効果的なデジタル教科書の活用ということで、今、堀田座長からありましたように、子供たちがデジタル教科書、あるいはICT機器を使っていくときに、もし何らかの心配することがあるのであれば、当然それに配慮していく必要があるだろうと考えています。ただ、私自身は、更に効果的に活用するという意味におきまして、ネガティブなところを払拭するだけではなくて、どれだけ学校の中でデジタル教科書ないしはICT機器を快適に使っていけるのかということを考えております。
 少しだけ私の自己紹介をさせていただきますが、私自身は、人間工学を専門としておりまして、特にディスプレーを見るときの人の視機能に与える影響であるとか、視機能を考えたときに、どのようなディスプレーが適切であるとか、あるいはディスプレーに提示する映像に対してどのような配慮をすれば良いのかということを検討しております。現在、日本人間工学会でも、子供のICT活用委員会というものを設置しておりまして、その中で子供が安全で快適にICT機器を使っていくための検討をしているところです。
 学校でのICT教育の中で使われるデバイスに注目をしますと、大型提示装置や実物投影装置、学習者用コンピュータ、指導者用コンピュータ等があるわけですが、特に児童生徒に配慮をするということで言いますと、児童生徒がデジタル教科書や教材等で直接的に使う学習者用のコンピュータ、例えば、タブレット端末に代表されるようなものの使い方や、それをどう使えば良いのかといったところが一つ重要なところだと考えています。
 私自身、そして先ほど申し上げました日本人間工学会の委員会の方で、一つの視点として、子供たちが使う学習場面に注目をし、その学習場面に応じてどのように使い、そしてどのように健康面に配慮をすれば良いのかということを考えております。スライドに四つほど代表的な学習場面を示しておりますが、デジタル教科書を用いるということを考えますと、左上の「見る・読む」という学習場面がありますし、それから、そこに何かを書き加える、「書く・描く」ということも出てくると思います。そうした視点で考えることが重要だと考えています。
 VDT作業と言われるような、オフィスの中でパソコンを使うということは、人間工学の分野でも80年代ぐらいから検討が行われていますが、オフィス環境と学校環境というものは異なりますので、学校環境の中でどう使っていくのかを考慮するというところが重要だと考えております。
 ここに学校環境衛生基準を抜粋して表示しておりますが、学校の教室環境の一番大きな特徴では、非常に明るい環境が作られているということがあります。教室の運動場に面した窓は、多くの校舎は南向きに作られて明るい環境となるようになっていたり、そうした環境から、午前中よりも午後の方が、教室が明るくなっていたりしております。
 実際に使う環境を考慮していくということが重要であり、その一つの例といたしましては、教室の中でデジタル教科書を使う、つまりタブレット端末というような、デバイスを使うことに注目をいたします。その際、窓の外からの太陽光や蛍光灯の光の映り込みなどが問題として挙げられます。画面への映り込みであるとか、あるいはグレアといったような言い方をします。スライドの写真にあるように、映り込みがあると見にくい状態が発生します。視認性が低下するということから、一点目の心配としては、デジタル教科書のある部分、画面の中で見たい部分、あるいは先生が児童生徒に見せたい部分に、たまたま蛍光灯が映り込んでいたり、太陽光が映り込んでいたりしますと、そこの部分が見えなかったり、見づらかったり、見逃してしまったりするというような心配があるわけです。
 あるいは、二点目といたしましては、例えば児童生徒に予想される良くない反応としては、こうした映り込みがあった場合に、その映り込みを回避するために自分の姿勢を崩して画面を見ようとしてしまうことです。具体的には、例えば、姿勢を前のめりにして画面を見たり、横側からのぞいて画面を見たりすることが予想されます。そこから姿勢が悪くなるような可能性もありますので、配慮が必要だと思います。
 そうした健康面に関する懸念されることに対して、対策として本会議でガイドライン、指針を示していく必要があろうかと思います。このグレアということに注目をしますと、例えば、タブレット端末画面を傾けることがあります。グレアは、児童の目と画面と蛍光灯との相対的な位置関係によって発生しますので、グレアを避けるために画面を傾けるというのは個人での対応の一つになります。あるいは、教室環境、学校環境という面の対応では、照明にルーバーを取り付けるというようなことがあります。光を和らげて直接的な映り込み等を防ぐためです。
 それから、三点目としては、これはICT機器側の対応ということになりますが、アンチグレアフィルムというものがあります。それを貼ることによって光を画面上で拡散をしますので、映り込みを防いだり、あるいは、見づらくなるような状況を回避したりします。先ほども、80年代からVDTにおける労働環境の検討がされているというような話をいたしましたが、その一つの対応策としても、画面にアンチグレアフィルムを貼ったり、あるいはディスプレーそのものに最初からアンチグレアフィルムを装着したりすることによって映り込みを回避するというようなことがなされています。
 先ほどの、グレアを回避するためにタブレット端末を傾けるということは、姿勢を悪くしないための一つの方法であり、あるいは学習を効果的に進めるための一つの良い対策ではあるのですが、私の専門である人間工学というような立場から言いますと、実は決して望ましい方法ではないと考えています。ユーザー自身に対応を求めるのではなくて、本来は、ユーザーが無理なことをしなくても、あるいは何か対策を講じなくても自然にそのデバイスが使えるというような、そういうアプローチが非常に大切だと思っています。しかしながら、いろいろな環境やデバイスの状況等を考えると、傾けずに映り込みのあるまま使うよりは、傾けて使う方が当然良いというようことはあります。
 スライドに、健康面への配慮の必要性の丸2と書かせていただきましたが、これは学びのイノベーション事業の中の成果として発表、公開されているものです。学校の教員、あるいは恐らく保護者の方等も、タブレット端末を使ったデジタル教科書の使用による、ドライアイや目の疲労、視力の低下に対して心配していることを示しています。だからこそ、これからのICT教育を進めるためにも、健康面への配慮が非常に重要なことであるという背景となっております。
 それから、健康面への配慮の必要性の丸3といたしまして、私どもの研究グループがこれまでに取り組んだ研究の成果の一つですが、これは、学校の中でタブレット端末を一人一台台使っている学校に御協力をいただきまして、国内の830名に質問紙調査を行った結果です。何を聞いているかというと、タブレット端末の使いやすさであるとか、それから身体的な疲労に関して調査を行っています。そこからは、一つは、児童の約57%、6割ぐらいが、実際に学校の授業で使っていて、タブレット端末の映り込みが見にくいというように感じていることが分かったり、あるいは、三人に一人が何らかの身体的な疲労を感じているということも分かっております。
 右のイラストにあるのは、代表的な結果ですが、一番多いのは、目の疲労に関してであったり、あるいは、首、肩の疲れというものが児童の回答から出てきたりしております。それから、手首というところが恐らくタブレット端末を使う一つの特徴かなと思いますが、指を使って操作をしたりだとか、あるいはピンチイン、ピンチアウトといったような、拡大、縮小の操作をしたりするので、そうした疲労への懸念というものも出てきます。実際に、世界的にも最近、子供の筋骨格系の訴えが増えきたというようなことも報告されています。
 さらに、これも調査の結果からなのですが、タブレット端末を使うときの方が、紙の教科書を使うときよりも目が疲れると思うかどうかということを聞いています。半数ぐらいがそう思うと答えているわけなのですが、ただ、ここで重要なのは、実際に疲れているかどうか、紙よりも疲れるかどうかということはここでは分かりません。子供自身が疲れると思うかどうかということを聞いているわけです。ですから、ここの結果が一つ示すことは、子供自身も、そうした健康面への配慮の意識があったりだとか、これからの使い方を考えていたりするということを考察しております。
 それから、健康面への配慮の必要性の丸4としては、毎年、学校保健統計調査の結果が公開をされており、これは今年の3月に公開されたときの結果です。毎年メディア等のニュースにもなっておりますが、子供たちの近視が進行しているということが報告されております。図中の緑色のラインが小学校、それから、その上の水色が中学校のデータを示していますが、いずれもこの昨年度の調査のときが、裸眼視力1.0未満の者の割合が過去最高となっております。この近視化の問題は、もちろんICT機器やそうしたディスプレーが出てきたからということが、直接的な原因かどうかは分かりませんが、現代社会において非常に重要視されている課題でもあります。
 少しだけ近視に関して触れたいと思います。もちろん成人の近視ということも非常に問題ではありますが、特に子供たちの近視化傾向に配慮をするということは、一つ重要なポイントだと認識がされています。それはなぜかといいますと、子供たちが発達段階にあり、体も成長している状態にあるからです。眼球自体も成長をしています。そうしたときに、過度に近い距離をずっと長い時間見るような刺激が与えられると、スライドに簡単に図を示しましたが、眼球を横から見たときにラグビーボールのような形に眼球が変形をしていく、と言われております。それによって近視が生じるということが一つ原因として挙げられています。今申し上げましたように、発達段階にあり近視が進みやすい傾向にあるので、その年代のときに近視が進行しないように抑制をする、あるいは予防をするということが一つ大事なポイントでもあります。
 それからもう一つ大事な点は、近視が進んだときに、眼鏡やコンタクト等によって矯正をすれば良いということでは決してなくて、もし近視が強度に進んでいくと、スライドでは「その他の眼の疾患」と書きましたが、例えば最悪の場合には失明に至るようなリスクがあるため、近視を予防し、抑制をすることが良いというように捉えられていることです。
 以上のようなことに対して、先ほども申し上げましたが、学びのイノベーション事業の成果として、「児童生徒の健康に留意してICTを活用するためのガイドブック」というものが既に発行され、公開がされておりますので、恐らくICT機器を使う先生方も御覧になっているところだと思います。その中では、タブレット端末に関する見やすさ、それから、それを見るための児童の姿勢、先ほど申し上げたような点も含まれております。更には、その対策としてどのようにすれば良いのか、タブレット端末を傾けるであるとか、傾けることによって画面そのものも見やすくなるといったことが書かれて、あるいは、近年話題になっているブルーライトや、それに伴う家庭での利用等も含めてこのガイドブックの方には書かれております。
 一方、先ほど冒頭にも、日本人間工学会でも委員会を設置し、検討をしているという話をいたしましたが、その委員会では、スライドにあるようなイラストを作って、児童生徒に、そして学校の先生に分かりやすい形で、安全で快適な使い方を示していくということを検討しております。
 現在、検討を進めておりますポイントを少し紹介したいと思います。まず一つは、教室環境というところなのですが、このあたりは、恐らく児童生徒というよりは、学校の先生が配慮していくポイントだと思っておりますが、それぞれのデバイスに対して、映り込みの防止をする、そのためにカーテンを付けるであるとか、それから、先ほども言いましたが、蛍光灯にルーバーを設置するというのも一つの方法ではあります。それから、画面への映り込みについても、先生自身もそうしたことに配慮をしていく必要もあると思います。それから、今まで教室にはなかった機器を、教室の中に導入していきますので、そうしたことへの安全面への配慮も必要となってきております。また、姿勢も重要です。
 一方で、児童生徒が配慮をしていくというようなところで言いますと、例えば、デジタル教科書をタブレット端末上で見て学習をするということでは、繰り返しになりますが、見やすいということが当然大事になってきますので、そもそも見やすい角度で見るであるとか、それから、映り込みがないような状態を作るであるとかがあります。このあたりは先ほどの教室環境とも関係しますが、児童生徒の座席配置と蛍光灯の位置関係で児童一人一人の状況が変わってきますので、机の場所によっては、タブレット端末をどんな角度に傾けても映り込みがない座席もあったり、あるいは、座席によっては、画面を見やすい30度、40度、45度ぐらいの角度のときにちょうど蛍光灯が映り込んでしまうというようなこともあったりします。そうしたことも、教室環境がオフィスとは違う特有な環境だと捉えて配慮をしていくことが必要かと思います。
 それから、書くということに関しますと、このあたりは技術的な状況等とも関係するところなのですが、学校の中での指導として行われている鉛筆、ペンの正しい持ち方であるとか、書きやすさであるとか、そうしたところに配慮するポイントもあると考えております。
 それから、デジタル教科書の活用という意味で、場合によっては教室以外のところで使うようなこともあるかもしれません。撮影をするときの配慮であるとか、それから教室の中で、グループワークであるとか、グループでのプレゼンをするときであるとか、そうしたときには、自分が見やすいような状況だけではなくて、周りの人たちに見やすいような状況まで配慮していく必要があるかと思います。
 以上のことから、まとめになりますが、デジタル教科書の効果的な活用に関するガイドラインを考える上で、健康面に関することでこんなことを考えております。
 一点目は、先ほどの学びのイノベーション事業での成果によるガイドブックに、非常に重要な点が多くまとめられていますので、基本的にはそれに基づくものが良いだろうと考えております。そして、これからのデジタル教科書を活用していく、タブレット端末を使うということでも、非常に価値のあるガイドブックだと思っています。
 二点目としては、デジタル教科書の使用形態、どのように授業の中で活用していくのか、そうしたことに即して児童生徒、それから教員がどんなことに配慮をすれば良いのかということを簡単に示していく必要があろうかと思っています。
 三点目に「例えば」というように示しましたが、基本的には、姿勢を正しくして、視距離を十分にとるといったようなことをベースとして、画面を快適に見られるようなことを示していくであるといったことが重要だと思います。
 四点目といたしましては、先ほど御紹介しましたが、近視進行の予防・抑制ということは、デジタル教科書の活用ということにとどまらず、非常に重要なグローバルな課題でもありますので、そうしたあたりも踏まえていくと良いと思ってi
ます。
 それから、五点目ですが、学校から保護者に対しての説明であるとか、案内することも大事であろうと思います。場合によっては、保護者の方が過剰に心配をなさっているということもあるかもしれません。学校の中でどのように使っていくのかということを示していくことも、理解を深めていただくことも重要だろうと思います。
 最後にもう一つは、学校の中にいらっしゃる養護教諭の先生とも連携をとることです。デジタル教科書を使う授業の中では、教室の教諭が使うことが多いわけですが、健康面への配慮という意味では、養護教諭とも連携を図り、例えば校内での研修会を行うであるとか、あるいは保健だより、学級だよりのような形で伝えていくであるとか、そういうことがデジタル教科書を効果的に使っていくために必要だろうと考えております。
 以上となります。ありがとうございました。
【堀田座長】 ありがとうございました。専門的見地からの、かなり詳しく実用的な御指摘を頂いたところです。
 柴田委員の御発表につきまして、質問や御意見等を少しとりたいと思います。委員の皆さんにおかれましては、もう少しこの辺を聞いてみたいというようなことについて質疑をと思うのですが、いかがでしょうか。では、中野委員。
【中野委員】 どうもありがとうございます。慶應の中野です。
 先ほどの近視が進んでいくということについてですが、何Dぐらいまで進んでいくとお考えでしょうか。先ほどおっしゃった中で、ずっと進んでいくと、もちろん強度近視になってくると他の眼疾患と関連し、なおかつ失明のおそれがあるということは理解できるのですが、子供たちの場合に、どの程度まで近視が進むというのが今のデータの中で示されているかというのがお分かりになればお教えいただきたいのですが。
【柴田委員】 ありがとうございます。
 最初におっしゃっていた何Dというのは、ディオプターに関するお話ですか。
【中野委員】 そうです。
【柴田委員】 強度近視ということで言いますと、多分10ディオプターくらいとか、先ほどの学校保健統計調査で示されている以上の非常に強い近視のことを言っているわけですが、もちろんそこまでの近視というものが、通常のタブレット端末を使用したり、ディスプレーを見たりすることによって進行するということは、基本的には一般的に考えられていないと思います。
 それから、先ほどの調査結果等からは、1.0未満の近視が進んでいるということが示されておりますが、一つの基準としては、ディスプレーの業界でも視力1.0を基準として見やすさを評価することが多くあります。その1.0の視力で近視化が進んでいるというところが示されており、先生が御質問していただいた、どの程度のディオプター数のところまで進んでいるかといったところは、ここの段階では分かっておりません。
【中野委員】 ありがとうございました。
 近いところを見た時に、近視がどの程度進むかをチェックすることはすごく大切なことなのですが、近いところを見ると失明に至るという危険性を強調しすぎるのは良くないので、きちんとデータの裏付けとともに議論をしていく必要があると思います。近くを見ると失明の可能性があると解釈されてしまうのは、少し行き過ぎかもしれないなと思い質問をさせていただきました。
 それから、その前に説明していただいた、姿勢を正しくして視距離をとることが近視予防であることを考えると、例えば、今のデジタル教科書にあるフォントを変えるとか、フォントのサイズを上げるというような機能を使えば、視距離が確保できるので、近視予防に効果があるというふうに考えてよろしいでしょうか。
【柴田委員】 まず先ほどの件ですが、先生がおっしゃるとおり、非常に極端なことを申し上げましたが、失明に至る可能性というところですね。ただ、それは飽くまでも医学分野の中で、グローバル的にそういう近視化を抑制しようという方向性ということ、リスクをなくすというような話ですので、先ほども申し上げましたが、日常の中でのタブレット端末の利用の中で、そこまで近視化が極度に進むということは、もちろんデータとして検討をしていく必要はありますが、私自身もそこまでの大きなリスクはないというように思います。
 それから、フォントのサイズについて御回答いたします。デジタル教科書の利用に即した配慮、指針、ガイドラインということを先ほど申し上げたのですが、先生におっしゃっていただいたように、文字サイズであるとか、タブレット端末では拡大、縮小ができるというところが非常に大きくて、学習の場面やシーンだけではなくて、デジタル教科書の使い方というか、ユーザビリティも含めて考えることが、非常に大事だと思っています。そういう意味で、紙の教科書のときには、文字が見づらければ目を近付けるということをしてしまったのですが、デジタル教科書の場合には、タブレット端末を使うことで、拡大をすることで、目を近付けるということがなくなる可能性も大いにありますので、非常に効果的な活用ができると思います。
 また、拡大、縮小ということも考えたときに、文字の表示の仕方やフォントの話も含めて、非常に重要なところだと思っております。
【中野委員】 ありがとうございました。
【堀田座長】 ありがとうございました。
 デジタル教科書は、特に何らかの合理的配慮の観点から、文字を大きくしたりできるようになっていますが、一方で、そうやって文字を大きくすることによって、距離をとって健康に配慮しながら学ぶこともできるというふうに前向きに捉えていきたいということだと思います。
 ほかにいかがでしょうか。加藤委員、お願いします。
【加藤委員】 どうもありがとうございました。
 タブレット端末を傾けるところが最善策だろうかというお話がありました。ベストな方法は、ハード側になるのでしょうか。ノーグレアのシートを貼ったり、照明に工夫をしたり、そちら側の方が良いということになりますか。その辺りを少しお聞きしたいです。
【柴田委員】 本当の意味でベストとは何かというところの解を出すのは、なかなか難しい現状があります。というのは、デバイスの特性や性能に依存されているところもあるからです。
 一つ考えなければいけないところは、基本的に、画面に対して直交するように見ると見やすく、それから、平置きにして横の方から見ると画面が見にくいということもありますので、それで傾けることもあります。傾けた結果、先ほども少し申し上げましたが、蛍光灯が映り込んでしまうこともあったり、座席配置によってその状況が異なったり、それから、周りに画面を見せるというような状況のときにも変わってきたりとかしているのです。もちろん、そういうものが、教室環境、ないしはデジタル教科書を表示するデバイスの方で解決されるということが望ましいとは思っていますが、タブレット端末のディスプレーに限らずに多くのそうした技術がまだ良くなっていくということを考えますと、現在の環境と状況の中でどう良く使っていくのかということを示すのが重要かと思います。
【加藤委員】 タブレット端末を傾ける方は、反射防止よりも見やすくするために傾けているじゃないですか。小学生って、筆箱を後ろに置いて教科書を斜めに立てますよね。見やすくするために平置きよりもその方が良い。要するに、姿勢を良くするためにもそちら側に傾けたいのかなという気がしています。ほかの解決方法とのバランスを考えながらガイドラインも作っていったら良いと思いました。ありがとうございました。
【柴田委員】 ありがとうございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。時間も少ないのですが、私から一つだけ良いですか。
 紙の教科書とデジタルの教科書を併用するときの、発光体を見るのと紙を見るのとをあっち行ったりこっち行ったりするということについて、眼球への負荷がどうなのかということを聞きたいというのと、もう一つは、デジタル教科書に期待されるのは、デジタルなので、大きくしたり小さくしたりということは先ほど出ましたが、それに限らず様々なデジタル教材とリンクして、それが動くとか、そういうようなことが期待されると思うのですが、この映像と静止画みたいなことによって、眼球の疲れとか、あるいは3Dによる疲れとか、何かそういうようなことというのは研究されているのでしょうか。お願いします。
【柴田委員】 まず一点目の明るさに関することなのですが、一つ心配されるという意味で言いますと、当然のことながら、現状の多くのディスプレー、液晶にしても有機ELにしても自発光をしておりますので、ディスプレー自体から明るい光が出ているということはあります。ICT機器の使い方という意味で、明るさの調整にも配慮をするということが重要であろうかと思っています。ただ、そのあたりの何か科学的なデータというものは、現状では恐らくまだ多くは出ていなかったりしますので、そうしたところのリサーチもしていくことは重要だと思います。
 ただ、繰り返しになりますが、ディスプレーの使い方という意味で、明るさの調整、自動調光をすれば良いのか、あるいは、明るさの調整までを配慮して使った方が良いのかといったところは、一つのポイントになると思っています。
 それから、二点目の方の拡大、縮小を含めた操作のところなのですが、どの点に関しての御質問でしたでしょうか。
【堀田座長】 動画とか3Dとかを見るというのは、目に負担がかかるものなのですかねということです。
【柴田委員】 基本的には、ディスプレーを見るという意味で、人の目のピント調節反応ということで言いますと、当然のことながらディスプレーそのものを見ていますので、動画を見るからといって視覚疲労が大きくなることはないと思います。ただ、一つ心配するようなことを考えるのであれば、静止画を見るときよりも動画像を見るときの方が興味を持って画面を見るかもしれません。集中して画面を見ることで、例えば一つの可能性ですが、瞬きが減ることによってドライアイにつながってしまう可能性があると思います。ただし、それは非常に長い時間、例えば1時間とか2時間、動画像を見続けるとそういうこともあるかもしれませんが、恐らく学習で使う中での動画の教材という意味で言いますと、数秒であるとか、数分であるとかということになろうかと思いますので、大きな心配はないだろうと考えています。
【堀田座長】 ありがとうございました。
 ほかにないようであれば、先に進みたいと思いますが。
 では、柴田委員、ありがとうございました。
【柴田委員】 ありがとうございました。
【堀田座長】 ここまでの話で、柴田委員からも発表いただいたように、2014年に文部科学省としては、そのICTそのものを活用するときに健康面にどう配慮するかというガイドブックをすでに出していますので、今回私どもがこのガイドラインの中に組み込むのは、それを踏まえた上で、更にデジタル教科書、あるいはそこからリンクするデジタル教材、それを紙の教材と併用して学ぶということについての様々な配慮について加えていくという形になろうかと思っております。関係する部署は、文部科学省内にも健康教育等の部署がありますので、そういうところと連携しながら進めていっていただければと思うところです。
 続きまして、議題の2に入ります。「ガイドラインに盛り込むべき事項について」これから議論してまいります。これにつきましては、今まで、以前の、デジタル教科書をそもそもどうするかについて「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議で議論されたこと、あるいはそれ以降、いろいろなところで、学会や、あるいは民間のシンポジウム等で話題になってきたこと、あるいは国会の審議のプロセスでいろいろ出てきたこと等を踏まえて、加えて、事前に皆さんに個別にヒアリング等もされていますが、そういうような形で、こういうものを盛り込むべきではないかということを文部科学省の方でまずはたたき台を作っていただいておりますので、これにつきまして御説明をいただければと思います。

<事務局より資料4について説明>

【堀田座長】 ありがとうございました。
 様々な観点から御意見が出ているところでありして、私どもとしては、これが部分的に取り上げられて学校現場をいたずらに不安におとしいれてはいけないと思いますので、このガイドラインで、きちんとストーリーを持った形で、より効果的にどのように活用していくかということについて打ち出したいと考えているところです。
 大体30分弱かと思いますが、お時間がありまして、皆さんにこれから御意見を頂くところですが、今回は第1回ですので、是非全ての委員の方に、それぞれの御専門の見地から、あるいはそれぞれのお立場、あるいは御経験から、是非御意見を頂きたいところです。
 どなたからでも、どこからでも結構なのですが、全体としての枠組み、分類の仕方とか章立てがどうかとか、あるいは、ここを一番強調すべきではないか、あるいはこういう言い回しではなくて、こういう言い回しの方が良いのではといったこと、あるいは、こういうところを追加した方が良いのではないかというようなことについて、今回は飽くまで骨子のたたきですので、御意見を頂いて、これから練っていくということにしたいと思います。いかがでしょうか。
 中野委員、お願いします。
【中野委員】 中野です。特別支援の立場から発言します。まず2ページ目のところに、「障害のある児童生徒等に対し、文字の拡大云々」というふうに書いてあります。これは全体に、その後も「学習上の困難の程度を低減させる」というふうに記載していただいているのですが、学習上の困難の程度の低減より以前に、アクセシブルにする、というところを入れていただいた方が良いのかと思います。学習上の困難の低減というのができれば本当は良いのですが、例えば、知的障害の子供たちにとって、これまでの通常の教科書ではアクセスが難しかったところができるようになれば、非常に良いと思います。しかし、簡単には実現できないと思いますので、その前に、これまで、文字が小さくてアクセスできなかったとか、漢字をうまく読むことができなかった子供たちが、音声があることでアクセスできるようになるとか、肢体不自由の子たちが、ページがめくれなかったのに、デジタルになることでページをめくることができるようになるというような、アクセシビリティの部分が、まずあった方が良いと思います。その上で、その他の学習上の困難というものが低減できると位置付けるのが良いと思いました。
 同じところで、障害のある児童生徒等については、紙の教科書に代えてデジタル教科書を使用することができると記載してあるのですが、「代えて」という部分についてお聞きします。現在、紙の教科書は無償になっていますが、障害のある児童生徒等が使用する場合、紙の教科書の代わりにということは、紙の教科書と同様に無償でというような可能性という意味も含んでいるのかどうかを教えていただきたいのですが・・・・・・。無償ではないということですね。現在、無償で給与されている音声教材やPDF版拡大教科書は、デジタル教科書が発行者から発行されても使えるので、それでアクセスすると考えればよろしいですね・・・・・・。分かりました。
 それから、音声教材について記載されていますが、「デイジー教材等」と全部一まとめにしていただいているのですが、既に教科書課ではPDF版拡大図書(教科書)も扱っていただいていますので、そういったところも記載を一緒にしていただけると良いと思いました。
 以上です。
【堀田座長】 ありがとうございます。
 事務局、何かありますか、先ほどの無償云々のところは。
【事務局】 ありがとうございます。
 今御指摘いただいたとおり、まずアクセスを含めてというのは、まさにおっしゃるとおりでございまして、法律上の文言上、学習上の困難の低減と書いておりますが、その趣旨にはもちろん入っている部分です。
 また、無償になるかどうかという部分ですが、今回の法律においては、段階的に導入を進めていくということから紙の教科書を基本とするとしています。そのため、引き続き、紙の教科書を無償給与し、ただ、その使用の形態に関して、障害のある児童生徒等については、そのデジタル教科書を使っていって、最終的に教育課程の全部において使うことも認めるとしています。
 そして、またデイジー教材のほかにも、先生に御協力をいただいているようなPDF版拡大教科書など、そのほかの教材も含めて、今後掲載を検討させていただきたいと思います。
【堀田座長】 ありがとうございました。
 無償のところは、非常に難しい課題で、長期的には無償であるべきだと私自身も個人的には思いますが、現状においては紙との併用で、では予算が2倍になるかといったらならないわけで、このあたりが難しいところです。ただ、デジタル教科書を使っても、紙の教科書を使っていると同じ内容のものを使っているので、紙の教科書には使用義務がありますが、デジタル教科書を使った場合、それに代えて使うということが許されて、障害のある児童生徒等については教育課程の全部において使用できることとされています。デジタルの方が専ら使われるような場面や教科や学年や、何かそういうものが進んでくると、もしかしたらデジタル教科書の方を中心に教科書を考えるという時代が来るかもしれない。ですので、これは、今はまだ最初の段階なのでというような、法律としてもそこまで、ということになります。そういう中で、私どもがどのように学校の先生方に良い使い方をお示しできるか、留意点をお示しできるか、考え方をお示しできるかということが大事かと思っております。
 駒崎先生、お願いします。
【駒崎委員】 現在、学校現場で使われているものは、デジタル教材の方が主で使われていると思います。ガイドラインにおいて、紙の教科書をデジタル化しただけのデジタル教科書と、デジタル教材の使い分け、書き分けが必要なのではないかと考えます。
【堀田座長】 これは飽くまで定義上の問題もあり難しいところなのですが、実際は、多分シームレスにつながるように使うようになれれば一番良いのかなと思います。だから、例えばリンクするかとか、そういうようなことについての技術的な開発や、あるべき姿がこれから後追いで検討されていくと、今のようなことは多分余り気にせずやれば良いのだと思いますが、現状でも紙の教科書と紙のドリルのように、教材と教科書とを使い分けていますが、それと同じようなスキームで先生方に分かりやすく提示する必要はあるかと思いました。ありがとうございます。
 黒川委員、お願いします。
【黒川委員】 私の方は、教科書発行者の立場から少し御意見を申し上げたいと思います。
 今回、我々としては、このデジタル教科書を、どのように使いやすいものとして現場に普及させていくのかというその第一歩、そのためのガイドラインであると考えています。そうした意味で、今回まとめいただいた資料4は大変丁寧に整理されていると思います。
 その上で、まずは、ガイドラインの最初のところで、デジタル教科書というのは、面白そうとか、使ってみたいなと、便利そうだなと感じてもらうことが大切だと思います。それから、子供たちに使わせたらこんな化学反応が起こるかもしれないというような、先生方のやる気を持たせるような、少しでもそうした配慮を冒頭にできたら良いなというのが率直な感想です。わざわざあえてこのデジタルツールを使うことの意義といいますか、そういったものに手を伸ばそうとする気持ちを後押しできるガイドライン、意欲を喚起するようなガイドラインのイメージを持っております。
 その上で、特に自治体様や学校現場に御理解いただきたいことが大きく二つあると思っております。確かにデジタル教科書は教科書そのものであります。でも、これは新たなメディアであるという理解が必要なのかなと思います。それは、指導というソフト面と、整備というハード面に対する両面の理解が必要であると思います。
 一点目は、その児童生徒のための学びのツールであるということ。学校サイドでは、特に指導面において、そこの理解が必要なのかなと思います。現在使われております指導者側から提示するデジタル教材とは異なりまして、児童生徒が使うということは大きな転換点です。教えるという側面もありますが、学びのツールへ転換していることを押さえていただく必要があります。
 それから、デジタル教材との連携、これがないと豊かな授業展開や学びができません。そのための授業設計や授業デザインが最初にあるべきであろうということも先生方に御研究いただきたい、御理解いただきたく思います。
 先ほど、中野先生からはアクセシビリティの観点からの御指摘を頂戴しましたが、このデジタル教科書では、どこまでのことができて、また、できないのか、ということも意識しなければなりません。そのために、デイジー教科書やらUDブラウザ、あるいは拡大教科書なども活用していかなければならないと思います。
 それから、二点目は、活用できる環境を整備するというのは自治体側の話で、ここでの議論ではないのかもしれません。しかし、必要な整備がされていないと、デジタル教科書は使えないということがあります。情報タブレット端末は三クラスに一クラス分という整備計画が示されましたが、その際に一クラスで十台ずつ配付するのではなくて、例えば、活用の際に一クラスで一人一台の体制をきちっととらないと、この趣旨はなかなか伝わらないのではないかなと私は思っております。
 また、細かくなるので簡単に触れるだけにしますが、情報タブレット端末の容量などは非常に大きな課題です。全部の学年や教科のデジタル教科書を一台のタブレット端末に導入するのか。前の学年も使いたいというお話も、今、実際使っていただいて出ています。こういう問題はもう少し先の課題かと思いますが、丁寧に対応しなければならないと思います。
 特に学校、自治体様には、ただ導入するだけではなく、その後の保守管理、特に紙の教科書は1年ごとに内容が更新されていますので、その更新をする必要があることについて理解していただく必要があります。教科書は使用義務がありますので、ここは大事なところだと思っております。
 最後に、アクセシビリティへの配慮等々に関しては、様々な新しい技術や開発の努力が求められます。しかし、多くの方に使っていただくためには、同時に、低廉化の実現という責務を負っていると思います。一方で、限られた市場ということもあり、我々だけでは実現が難しいところもございまして、是非、多くの皆様の御配慮や御支援を賜りたいと思っております。
【堀田座長】 最後、特に言いにくいところをおっしゃったのかなと思いますが、私どもとしても、一番ノウハウをお持ちなのは、実際に教科書を製作したり、流通されている方々だと思いますので、そのノウハウがなくなるようでは困ると思いますので、良い形でこのガイドラインに盛り込んで、良い教科書、良いデジタル教科書が良い活用の仕方になっていくような形にしたいと思います。法整備、いろいろありますが、今の段階でできる精いっぱいのことを方向として出したいと思っております。
 佐野委員、お願いします。
【佐野委員】 札幌市立幌南小学校の佐野です。私の方からは、現場の立場、教科の立場というところからのお話になるかなと思います。
 まず、5の留意点のところに書かれているような内容になると思いますが、効果的な活用方法ということで考えると、主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善、そういうところから考えて、子供が自ら問いを持つことができるように提示時間を想定して使っているだとか、それから、学びの実感を得るための振り返りの時間に使っているだとか、今回の改訂のキーワードなども入れ込んでいくことで一般の先生たちにも資するものになるかなと思います。それから、今ある紙の教科書と一体的なものであるという、そういうメッセージを届けられると思いますので、そういう学習のプロセスなども少し詳しく記載したり、又は限定的にならない程度に示したりしていくこともできると思います。
 それから、先ほどの中野委員の御発言にも関連すると思いますが、現場で子供たちを見ていると、特別支援学級には行かないで普通学級にいる子供たちがすごく多くなっているという実感があります。例えば、そういう子供たちが困っている部分を聞くと、理科とか社会の内容はとっても好きなのだけれども、漢字が読めないだとか、そういうところで教科書の内容が入ってこないというところは確かにあるなと思って見ていました。そういうことを考えると、4ページのところの「ルビがあることで、漢字が読めないことによるつまずきや意欲低下」というところですが、逆に、意欲的に学ぶということを支えるというプラス面で書くということも考えるかと思います。
 以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。
 ほか、こちらはいかがでしょうか。柴田委員、お願いします。
【柴田委員】 私の方から、児童生徒の健康に関する留意点のところなのですが、多くは先ほど時間を頂きましてお話しさせていただいたとおりなのですが、大事なのは、学校の先生たちがどういうところに配慮をすれば良いのか、留意をすれば良いのかといったところを分かりやすく示すということと、実際にデジタル教科書を授業の中で使うときに、授業の中で子供たちの様子をよく見るということです。人間工学では基本的な考え方なのですが、我々は何をしていても基本的には疲労というものが生じて、疲れたときには休憩をとる、休みをとるということがあります。子供たちの様子を見ていて、もし、ふだんと違うような様子が見られたときには、十分に配慮をするであるとか、気を付けるだとか、ICT機器を使うということの視点からも、子供たちを見るということが大事になってくると思います。
 あともう一つは、これもまた先ほど少し申し上げましたが、教室環境ということを考えたときに、座席によっても蛍光灯等の映り込みの状況が違うであるとか、それから、外光も時間帯によって違うであるとか、いろいろな要素があるので、そのあたりも踏まえていくと良いのかなと思っております。
 以上です。
【堀田座長】 書かなければいけないところがたくさん出てきておりますが。
 加藤委員、いかがでしょうか。
【加藤委員】 自分は、一人一台になって初めてデジタル教科書というものの利点が出てくるとは思うのですが、実際の環境はそうはなっていないので、今回のガイドラインでその辺のニュアンスをどう表現していくのか。無くてはできないのかと思わせてしまうと良くないですし、かといって、整備しなくても何とかなるのだと思われても良くないなと思っています。
 あとデジタル教材の方は、授業の流れの中で、ここで使うと良い、この辺りで使うと良いという考え方が多いですよね。でもデジタル教科書だと、どちらかというともう少し長くずっと使えるのが当たり前という考え方もあるかもしれないです。なので、その辺りもいろいろな先生、いろいろな環境にどこまで合わせて書くのかというのが意外と難しいなと思っていて、様々な人に受け入れられるように工夫をしてほしいと思いました。
【堀田座長】 ありがとうございます。
 今の話は、私は個人的には非常に大事だと思っています。紙の教科書の場合でも、授業中にずっとではないかもしれませんが、教科書を開いていると思います。それに対して、資料集などは、教科書から見れば部分的にある部分をもっと深く調べたりするときに使ったり、あるいは調べ学習の資料として使っていると思います。ドリルも定着のときに使われます。だから、教材は使うシーンがはっきりしていて、そのシーンで使用することについて合意を得ているから保護者負担で購入できるということだと思います。それに対して教科書は、学習指導要領等に基づいて検定されていることもあって、やや網羅的に、授業の中の網羅的に、学習のペースや進行、あるいは手順を示すものとして存在しているわけだから、単なるデジタルのコンテンツという話とは少し違う、もう少し踏み込んだ活用の視点を先生方に提供する必要があると思いました。
 オブザーバーの中川委員、いかがでしょうか。
【中川(哲)オブザーバー】 Edlogの中川です。発言の機会を頂きましてありがとうございます。
 私の方から幾つかありまして、ページ数的には順番が不同になるのですが、まず5の丸6の部分で、デジタル教科書を活用した先生方の指導に関する留意というところがあります。そもそも子供たちが紙の教科書や鉛筆や紙のノートや消しゴムを使う際に、その使い方というのは、かなり低学年の段階でスキルを得ていると思いますが、ICTの場合は、教科書をめくるのもまずOSを起動して、それからデジタル教科書を起動して、メーカーごとに違うデジタル教科書の使い方というのを覚えていくという情報活用能力の部分があるかと思います。デジタル教科書を使う最低限の情報活用スキルに関しては、このようなことが想定される、といったことを入れておくと、読まれる先生方は「ああ、子供たちにはこれぐらいのレベルのコンピュータの使い方を覚えてもらえば、デジタル教科書が使えるのだな」ということが分かり、安心して利用できると思います。先生方も持っていただくスキルはこれぐらい必要ですよというのも書くと、安心してそういったスキルを身に付けてから授業に取り組むことができる、というのが一点目です。
 それから、二点目が、さらに戻るのですが、4の丸3部分についてです。ここに追記したいと思われる内容として、デジタル教科書を使うと、ほかの教材と一体的に活用できて効果が出ることがあると思います。また、4の丸3には個別の学習への期待が記載されていますが、これは、デジタル教科書を使用し、その使用履歴や学習履歴をよく分析をすることで上手に使える要素になるかなと思います。この骨子の部分、案の部分には、学習の履歴や記録の活用に関する記載がありませんので、そういった部分も追記していただきたいです。
 それから、最後に、5の丸13に書くべきところだと思いますが、一般的なデジタルにおいては、写真などもコピーがしやすいので、一般的な著作権の知識ということがあるかと思います。より踏み込みますと、デジタル教科書の画面を、例えば画面ショットを撮って、それを教室の中で使う分には恐らく著作権法上も大丈夫だと思うのですが、一つ考えられるケースとしては、例えば、クラウドの学習者用のSNSのようなものを使った場合に、そこを経由した、授業の一環ではあるものの、一旦クラウドに出してしまった著作権が発生し得るようなものに関しては、これから著作権の検討ということもあるかと思います。この2020年の段階で、最新の著作権を考慮して、何をやって良いのか、何をやっていけないのかということも明確にお示しすることで、学校の先生方が安心して、こういう使い方はしても著作権違反にはならないのだということが御理解されるかなというふうに思います。ここは、より具体的に、クラウドを意識したような使い方をした場合にも、やって良いこと、悪いことというのが示されていると良いかなと思います。
 以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。
 では、中川副座長、お願いします。
【中川(一)座長代理】 今後この会議は何回か続くと思うのですが、見せ方の工夫の検討が必要だと感じています。
 例えば、学校で紙の教科書が使われるときに、教科書を使うか使わないかを意識しているのではなくて、今社会科をやっているとか、算数をやっているとか、を当然意識しているわけです。そういう意味では、教科の特質を踏まえたメリットを意識するように記述すること重要です。現時点の案では、個別、協働、一斉、障害のある児童生徒という項目で分かれているのですが、よく読むと、例えば算数の事例や外国語での事例が書いてあります。教育委員会や学校が読むことを想定すると、この教科でどうだというような、項目があっても良いのではないかなと思います。その場合、事例が、私は重複しても良いと思いっています。どういう視点で見るか分からないので、そういう形でも整理されたらいかがかなというのが一点。
 それから、現時点の案では、単独では良いことや機能などが書いてあるのですが、デジタルの良さを最大限強調した形で書いていただきたいなと思います。例えば、「連動」というキーワードで言いたいと思うのですが、書くことと消すことの連動、紙の教科書も当然鉛筆で線を引いて消しゴムで消すことはできますが、デジタル教科書のように、すぐこうじゃないか、ああじゃないか気軽に書き込んで、必要なくなったら消すということを紙の教科書では余りしない気がします。それから、周辺機器との関係が出てきますが、個人と共有の連動、一斉に提示をするところと、個人で書き込むことが本当にぱっとできるわけで、そこの良さというのがあると思います。それから、1、2に関係しますが、リーディングとノートテイキングの連動、教科書を読むということと、書き込んだり、今申し上げた、共有するというような、そういう違いがあると思いますので、その違いは何度も強調しても良いと思っています。そのようなところを今後検討していただければと思います。
 以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。
 ほかにどうしても言いたいことがある方はいらっしゃいますか。では、お願いします。
【中野委員】 中野です。先ほど佐野委員からお話があったのですが、今、インクルーシブ教育がどんどん進んでいます。特に障害のある子供たちにとっては、デジタル教科書は非常にプラスになることなので、それは前向きに書いていただけるとすごく良いと思います。
 それから、黒川委員からお話があった、教材の部分に関してのアクセシビリティは、多分すごく難しい問題をはらんでいると思いますので、どこまでできて、どこが難しいということを明確にした上で、教材のアクセシビリティについてもこのガイドラインの中で触れられていると良いと思いました。
 以上です。
【堀田座長】 ありがとうございます。
 皆様から、いろいろ忌たんのない御意見を頂きまして、まだ多分これからもいろいろ御意見があろうかと思いますが、それは追加であとまた今後頂くとしまして、これは、事務局案は私も少しお手伝いしたのですが、どうしてもいろいろな懸念、心配に対して、そこは大丈夫ですよ、ここも問題ないですよと、どちらかというとネガティブではないように考えてくださいねとは言っているのですが、そもそもあまりポジティブな書き方になってないというのは大きな反省点だと思います。
 黒川委員がおっしゃったように、あるいは、最後に中川副座長もおっしゃったように、もっとこれを使ってこういうふうにやろうよと、こんな効果があるよということが前に出るような形のガイドラインにして、現場を勇気付けるような、教育委員会をどちらかというと導入しようかなという気持ちにしていただくような形のガイドラインに整理していければと思います。
 あと、中川オブザーバーがおっしゃったこととも関係するのですが、情報活用能力の話があります。今度の学習指導要領は、総則にICTの整備のことも書かれましたし、学習の基盤となる資質・能力として、言語能力や問題発見・解決能力と同じように情報活用能力が書き込まれていますので、各教科でこういうデジタル教科書とかを使って学ぶというときの基盤としての情報活用能力というのは、それは当然身に付けておかなければいけないわけで、そのようなことが政策上はもう書かれているのですが、それを改めてここでもきちんと表明して、操作でとまどっているようでは教科の学習になりませんし、逆に、そういう情報活用能力が身についていれば、教科の学習は非常にテンポ良く進むわけですから、そのことを書き込めればなと思いました。
 いずれにしても、佐野委員もおっしゃったように、次の学習指導要領ですでに明確にされていることも多くありますので、その言葉遣いをうまく使って、あのことがここに関係しているのかというようなことを取り込んでいければと思いますし、中川副座長もおっしゃったように、各教科の目線を分かりやすく、教科で順番にこうやって網羅的にやると、ではこの教科はないのかとかいう話になるので、そこは難しいところがありますが、各教科の授業をもっと良くするという観点からも書き込めればと思いました。
 審議は2回目以降も続く内容ですので、事務局に一旦お預けして、そしてまた次のバージョンを出していただくという形で進めてまいりたいと思います。個別には、委員方にいろいろとお尋ねしたりすることがあろうかと思いますが、御協力をいただければと思います。
 では、続きまして、議事の3番にまいります。デジタル教科書の効果的な活用の在り方等に係る調査研究事業が動いておりますので、これについて、まず事務局から委託事業の趣旨を、その後、受託されている三菱総合研究所の方から資料5の説明をお願いいたしたいと思います。よろしくお願いします。
【事務局】 それでは、事務局の方から、簡単にではありますが、事業の趣旨について御説明をしたいと思います。
 昨年度も、別の事業者ではございましたが、デジタル教科書について、その実態の調査を進めてまいりました。今年度に関しましては、株式会社三菱総合研究所に受託をいただきまして、デジタル教科書、現在、学校で使われているようなものに関して調査を進めていただくことになっております。
 この事業の趣旨に関しましては大きく二点あります。一点目は、まさにこの検討会議でガイドラインを検討していくに当たって、それに資するような調査を行っていただくことです。もう一点は、この委託事業の成果として実践事例集案を作っていただくというものです。
 その一点目について、この検討会議でのガイドラインの検討に資するという観点から、この検討会議に参加いただいている委員の方々にもこの調査に同行いただくなどして御協力をいただければと考えている次第です。
 また、二点目の実践事例集について、現在、学校で使われているデジタル教科書の効果的な使用や、留意点のポイント等をより具体的にまとめることができるのではないかと思います。その中で教科別の観点なども、現場の先生方がイメージできるようなものをまとめていけると良いと考えております。
 そういった観点から、この検討会議で御議論いただくガイドラインについては、活用のポイントや留意事項をまとめたものとし、この委託事業の中で作っていただく実践事例集案については、別途、その現場に分かりやすい形でまとめていこうと考えているところです。実践事例集案の作成についても委員の方からは御意見を頂いて今後検討できればと考えています。
 以上です。
【堀田座長】 三菱総合研究所の説明の前に、今事務局から説明があったことは大事なことなので、お諮りしたいと思います。この会議は、ガイドラインの検討会議ですので、ガイドラインは私どもが作成するものの、会議の回数等、限界がありますので、そのガイドラインを作成するのに必要な学校現場の実態の調査や、教科書会社に対する調査などについては受託業者にお願いする。加えて、調査の一環で、現場の先生方に対して望まれるような実践事例集案を受託業者に作っていただくという形にしたいということですが、よろしいですしょうか。ガイドラインは、実践事例が多く書いてあるというものよりも、考え方やノウハウが整理されているもので、具体的な実践事例は、実践事例集の方に記載する形にしたいということなのですが、いかがでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【堀田座長】 では、どこまで書くかという具体的なところは、今後検討していくこととして、方向感としてはそういうふうにしたいと思います。
 では、三菱総合研究所からお願いいたしたいと思います。
【三菱総合研究所】 座長、春田補佐から御説明をいただきましたが、今年度の調査研究事業を弊社で受託をしております。今回、資料5に基づいて、本年の調査計画について御報告をさせていただきます。また、昨年度、株式会社グレートインターナショナルが受託をしていた調査研究事業について、その調査結果を簡単に取りまとめました。そちらの資料につきましても弊社から御報告をいたします。
 それでは、お手元の資料5につきまして、冒頭の事業目的の部分については、既に春田補佐から御説明をいただいたとおりです。
 具体的な調査全体のフローについては、2ページ目にお示しをしております。まず、成果物となる実践事例集案の内容について検討をした上で、調査項目を決めていくことで、調査を効率的に、また短い期間で行うということを検討しております。
 また、ヒアリングに実際に行く前には、文献調査を実施するとともに、昨年度調査の方が小学校及び中学校の調査が中心的になされていますので、こちらの内容を整理いたします。その際、昨年度調査対象へ必要に応じて追加資料の御提出の依頼などを行う可能性もあります。その上で、実際に弊社でもヒアリング調査を行い、実践事例集案の作成を行いたいと思っております。
 それでは、2の事業内容について簡単に御報告いたします。まず、先ほども申し上げましたが、小学校、中学校については、昨年の調査結果の整理を行います。昨年度の調査結果については、別添資料の方で後ほど御説明いたします。
 今年度の調査においては、小学校、中学校だけではなく、高等学校及び特別支援学校及び特別支援学級について具体的な事例収集を行います。今年度の調査では、高校について実際に学校を選定し、調査に伺う予定です。どういった学校に伺うかということについては、今後文部科学省等との協議によって決めてまいりますが、公立、私立、国立の設置形態別や、各教科を考慮いたしまして、バランス良く事例を選定したいと考えています。
 続いて、特別支援教育についてです。こちらについても教科別の事例を集めることは難しいかもしれませんが、教科別や児童生徒の障害の別といったものも考慮いたしまして事例を選定したいと考えています。
 次の3ページです。今回の調査では、留意点とともに、教育委員会や学校がデジタル教科書を導入、運営する方法につきましても実践事例集案の中で触れることを予定しております。こちらの留意点については、例えば、先ほども柴田委員の方から言及をいただきましたが、既にかなりの先行研究、先行の調査研究がありまして、そちらの方をしっかりと精査してまいりたいと考えております。その上で、デジタル教科書導入に際して、特に深掘り調査をすべき点といったものを整理いたしまして、有識者の先生へのヒアリングなどを実施することも予定しております。
 また、教育委員会や学校が具体的にデジタル教科書をどのように導入し、運営するかといった方法については、こちらも先行研究で様々なものがまとまっております。こちらの方を参考にしながら、必要に応じて調査、ヒアリング調査というものを行う予定でおります。
 こうした昨年度調査、それから本年の調査を踏まえまして、実践事例集案を作成することとしております。現段階の構成案について、非常に簡潔ではありますが、4ページに記載しております。こちらについての説明については、先ほどの調査内容を今のところは構成案として載せておりますので、御確認いただければと思います。
 事業のスケジュールとしては、なるべく具体的な調査につきまして、学校の負担感を減らすために、依頼の時期というものを長めにとった上で調査をしたいと考えております。調査先の状況にもよりますが、原則として11月までに調査を終えたいと考えております。
 それでは、別添資料に移りまして、昨年度調査について御報告いたします。
 昨年度は、株式会社グレートインターナショナルによって資料記載の対象に調査が行われました。具体的な対象については省略いたします。
 収集された事例の状況を図1の方にまとめています。「済」と書いてある部分が既に昨年度のうちに実施されているものです。星印をつけているところは、どこまで網羅的に教科別や学校別の事例を載せるかという点で今後の検討が必要にはなりますが、今のところ事例がないものを示しています。
 2ページ目です。昨年度収集された各事例を以下の観点に基づいて教科別に整理をしています。こちらの資料は、参考資料という形で添付させていただきました。星取表の形で各事例と、学習形態別、機能別に記載しております。また、こちらも詳細な点についての説明は省かせていただきます。
 その際に、学習形態別やデジタル教科書とともに使用する機器といった観点から、あらかじめ機能別に整理をして、最終成果物には載せていきたいと考えています。
 最後になりますが、具体例とともに昨年度の調査結果について概観をさせていただければと思います。調査結果のまとめで、まず主な機能別の効果、それを具体例とともにお示ししています。
 まず、デジタル教科書をタブレット端末等で使用することにより可能となることとして、拡大機能があります。この効果としては、児童生徒がその画面に集中できたり、視覚的な変化によって教科書の内容への興味関心を高めたりすることができるといった教員の声が紹介されております。具体例のところの書き振りは、報告書からの抜粋をそのまま掲載しておりますが、視覚的に変化があることで、児童生徒が集中をし、そのことが学習意欲を高めることにつながっているのではないかという教員の感想が見られました。
 続きましては、書き込みの機能です。こちらについては、既に春田補佐の方から御紹介のありましたガイドラインの方にも具体例として抜粋がされていましたが、デジタル教科書への書き込みというのは、紙の教科書に書き込む場合と比較すると抵抗感が低く、このことによって児童生徒自身の思考の整理や、内容の理解を促進するのに役立つといった効果があるという指摘がなされています。
 続きまして、3ページです。デジタル教材と一体的に使用することにより可能となることとしては、動画機能についての調査結果がまとめられております。動画については、視覚に訴えるということで、学習内容をより理解することができるということが指摘されています。具体例の中でも、実際に参観日のスピーチの練習のために、お手本になる動画を見て、協働学習の形でスピーチの練習をすることができたというような事例が紹介されています。
 続きまして、朗読機能です。こちらについては、各児童生徒の学習の進捗、能力に合わせた反復・再生が可能であるということで、個別学習の場面において主に活用されている様子が具体例として挙げられていました。
 そして、三点目ですが、他のICT機器と連携させることでできることについては、電子黒板への投影、そして、スカイメニューやアクティブスクールといった学習管理のためのソフトを活用して、教師の手元で児童生徒の学習管理を行うことができるといった事例について、その効果とともに挙げられていました。
 最後ですが、デジタル教科書の活用状況別の効果についてまとめております。まず、全体的な効果としましては、児童生徒の学習活動が促進された、インタラクティブな活動が促進されて、個々の状況に応じた個別学習・指導が容易になったという効果が見られたという指摘がありました。また、デジタル教科書をデジタル教材と一体的に使用することで、更にその効果が促進されるといった意見も多く報告されております。
 児童生徒側の効果と教員側の効果について記載をしておりますが、児童生徒側の効果としては、学習意欲や授業中の発言、話合い活動が増えたといった教員の感想や、思考のプロセスが可視化され、児童生徒の多様性を尊重した学習や指導が可能となったといった結果が見受けられたようです。
 また、教員側の効果としては、先ほども指摘がありましたが、授業準備作業の負担や板書作業の負担が軽減されたという意見がありました。
 最後に、教科別の活用状況についても御報告いたします。まず、国語ですが、朗読の機能を使いまして、個別学習における朗読活動の積極的な促進が見られたという指摘がありました。
 また、数学・算数については、動画やシミュレーション機能を活用することで、児童生徒の作図活動が支援され、またそれを教員が共有することで指導が容易になったという事例が幾つか見られました。
 外国語、こちらは英語が主ですが、英語の方も朗読機能を活用することで、個別学習におけるリスニング活動が促進され、また、教員側が準備する教具が少なくなったことで負担が減少したといった効果についての指摘がありました。
 以上です。
【堀田座長】 御報告をありがとうございました。
 時間も迫っていますので、もし何かどうしても聞きたい、あるいは追加でこういうことを調べてほしいということがありましたらお願いします。
 また、それについては、追ってメール等で集めるとしまして、一応確認しておきますと、これは昨年度も同様の調査研究事業があり、別の受託業者にいろいろ探索的にやっていただいたところです。今年度受託している三菱総合研究所には、それを踏まえて、不足している部分や、あるいは整理し直し、深掘りをし、それをガイドラインあるいは実践事例集案につなげていくことになります。
 御覧いただいて分かるように、学習者用のデジタル教科書が使えるタブレット端末が十分にそろっている学校で、かつ学習者用のデジタル教科書を今まで教科書会社から購入あるいは何らかの形で、共同研究等で使用している学校が非常に少ないので、全国津々浦々を広く浅く調べるというのは恐らく難しく、経験のある人たちからどうやってノウハウを引き出すかということが調査のポイントになると思いますので、先ほど春田補佐からも少しお話がありましたが、委員の皆様にも調査に同行いただくことがあるかと思いますが、その場合は、是非、先生方の活用のノウハウをうまく引き出すような形で、あるいは克服すべき点も含めてでしょうが、ガイドラインにつながるようなヒアリングをしていただければと思うところです。
 予定の時間となりますので、次回以降のスケジュールについて確認をいたしたいと思います。

<事務局より資料5について説明>

【堀田座長】 ありがとうございました。
 この会議は、デジタル教科書をどのように具体的に導入し、活用し、効果を上げていくかという会議であり、そのために必要な整備の必要性を訴えるものでもあります。紙の教科書の効果的な指導のノウハウをどうやってデジタル教科書にも用いていくかということは大事なことです。教科書の業界の方々にもいろいろと御協力をいただいているところですが、関連の教材業界も含めて、これから皆様の御意見等を挙げていただいて、整理していきたいと思いますので、御協力よろしくお願いします。また、三菱総合研究所においても何とぞよろしくお願いいたします。
 それでは、時間が来ましたので、本日の会議はここまでとさせていただきます。皆様、お疲れさまでございました。

お問合せ先

初等中等教育局教科書課