「全国学力・学習状況調査」の個票データ等の貸与に関する有識者会議(第3回) 議事要旨

1.日時

令和元年7月3日(水曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

経済産業省 別館232会議室

3.議題

  1. 平成30年度データ貸与実績報告
  2. ガイドラインの改定について
  3. その他

4.出席者

委員

柴山座長、貞広委員、新海委員、浜野委員、針谷委員、三田村委員

5.議事要旨

議事1:平成30年度データ貸与実績報告

・事務局より、資料1に基づき、平成30年度の貸与実績について報告された。

議事2:ガイドラインの改定について

・資料2-1、2-2、2-3a、2-3bに基づき、事務局より説明の後、意見交換が行われた。主な意見は以下の通り。

【座長】
  現在、個票データの学校コードなどが、研究者の方に全部貸し出し可能となる方向でガイドラインの改定が進んでいる。研究者自身は、個別のコードや自治体の状況にはあまり関心がなく、別のデータと個票データを照合する際の鍵としての情報が必要。要するに、別のデータベースと結合したら、個別情報は取ってしまってもあとの研究が進められる、その研究結果で個別の自治体の名前が出てくることはないという作りになっているということでよろしいか。

【事務局】
  現行のガイドライン上は、計量的な分析をする際に複数のデータをつなぎ合わせるためにコードが必要だということに加えて、個別の学校や設置管理者名の公表を前提とした研究もできるような形に整理されており、教育委員会や学校が心配されていたところだと思う。今回の改定によって、そうした個別の研究は国からデータを貸し出ししなくても、個別の設置者等からお借り頂ければいいと切り分けをさせていただき、国からお貸しする方は、計量的な分析で、学校名、設置者名が出ないものを対象に貸し出しをしていくという整理をさせていただいた。

【座長】
  研究者側から見ると、例えば宮城県のデータを使って宮城県のことだけに関して研究をやりたいというときには、宮城県から許可と承諾を得て、宮城県のためのデータ解析をやり、国からのデータとは切り離してやっていくという理解でよろしいか。

【事務局】
  その通りである。

【委員】
  設置管理者名の公表は認めないと言っているが、都道府県の個別の名前を出してデータ分析の結果を公開することは可能なのか。

【事務局】
  そこは現行のガイドライン上も基本的には可能である。 
   ただ、審査基準の中で序列化や過度な競争につながらないように、という点で審査を頂くべき事項だということである。

【座長】
  H30年度11月の審査でどのような序列化ができるのか、そのあたりの読みが大変だった。数値やデータがあると序列化につながると、そこまで可能性としてこちらが判断してよいのかという点も難しかった。新しいガイドラインでも、序列化や過度な競争が起こらないようにと規定をかけているので、それで対応はできると思うが、序列化に繋がることも可能性としてはある。

【委員】
  その点でまさに登場人物全てを性善説で見て交通整理をしていただいたガイドラインで、研究者として申請したいと思えるようになった。研究に資する形になったと思うが、研究者がそうとは思わないで公開した分析結果が何らかの序列化につながりかねないということまでここで検討して審査の基準の一つにするのか、もしくはそれはあくまでも研究者がそうではない分析結果を出すつもりなのでそれで良いとするのか、その先の読みをどこまでやるのかというのは難しい。

【座長】
  だからこそ、有識者会議の意見を申し上げるという立て付けになっているのだと思う。やはりそれは研究者倫理の問題に関わってくるので、ケース・バイ・ケースで判断していくしかないのかという気がする。

【委員】
  必ずしも分析のプロセスに序列化を伴わなくてもできる。通常はそういう研究手法でやる方は少ないのではないかと思われる。

【委員】
  研究発表されるであろう中身が、ガイドラインの目的に合ったもので、どう見ても序列化が表面化しないという視点を持って、我々がこの会議の中で結論を出していけばよい。貸与を許可するのであれば、発表されるものがどんな形で発表されるかということを、我々がある程度分かった上で判断する責任があると思う。
  今回若しくは前回のガイドライン等々も含めて、都道府県の教育委員会や現場の反応はどうなのだろうか。ガイドラインの目的等々は読んでいただければ誰もが分かるわけだが、結果的にこれは違うだろうということになってしまうと、この制度そのものが消えてしまうことにもつながりかねないと思うのでそんな感想を持った。

【事務局】  
  都道府県に対しては、改正の内容を説明するのはこの後で考えているので、正直分からないところはある。現状で言うと、設置管理者名、学校名の貸与を許可する、しないは、都道府県単位でもかなり濃淡があるので、都道府県によって意見がいろいろあると感じている。
  併せて参考に申し上げると、現状、文部科学省として公表している全国学力・学習状況調査の結果の資料の大部分が実は都道府県別の資料になっていて、既に都道府県単位でのデータとしてはかなり詳細なものを公表させていただいている。実施要領にも書いているのだが、基本的に国の初等中等教育行政においては、設置者管理主義ではあるが、都道府県で教員の給与負担を担っていたり、人事管理を行っていたりするということもあり、ある程度都道府県単位で見ていくことを全国学調の初めから趣旨にして情報も提供しているという経緯がある。ただ、申し上げているとおり、不要な序列化や競争は排除していかなければいけないので、そのバランスを審査委員会の方で見ていただくという立て付けでやらせていただけないかと考えている。

【委員】
  これから都道府県への説明があるということだが、都道府県の教育委員会の主担当方は、そこが一番心配する部分だと思うので、安心できるような形で説明をしていただきたい。
  それから、罰則規定について。漏えい、紛失等々の場合について、今後、貸し出しを禁止するという罰則では軽過ぎはしないかと心配。絶対に漏らせないという罰則は作れないものか。

【事務局】
  現行ガイドライン上、違反があった場合には、貸出が一定期間禁止になるのと合わせて、申出者、利用者氏名、所属機関名も公表できるとしている。こちらの規定は、絶対しないという予防のための規定と理解している。なおかつ、今回、以後一切貸し出し禁止という規定を新設するが、これは類を見ない厳しい規定かと考えている。

【委員】
  この罰則はかなり厳しいと思う。不名誉なことで自分の氏名や所属機関名が公表されるというのは、研究者として致命的なこと。恐らく考え得る最も厳しい罰則規定になっているのではないか。

【委員】
  非常に整理されて分かりやすくなり、使いやすくなった。これを読めばより研究が進む気持ちになると思った。まず、言葉をしっかり定義していただいたので分かりやすくなった。また、このデータ貸与が必要だということを現場の先生たちがまず分からないと、過剰に反応してしまって、過度な序列にならないかといった危惧を常に持ってしまう。出た結果が、研究者はそのつもりではないけれども、また少し違った見方をされて、それらが学校の方に戻ってくるということはあってほしくない。そういう意味で、そのあたりを確実に規定していただいているので非常にありがたいと思った。
  それから、罰則については、私も少し懸念を抱いた。現場の者が情報をなくした場合には、非常に厳しい罰則がある。今回の改定も、研究者としてはという括りの中での御説明を頂かないと、現場との温度差が生まれてしまう。過度に厳しくし過ぎると、このデータを活用していい結果を出そうという動きの歯止めになってしまう。それも違うので、そのあたりも現場サイドにも説明していただきたいと思う。
  やはり、どこに貸し出すかという審査が非常に重大になってくる。これらの条件をきちんと満たしていれば、基本的には審査を通していけるというものであってほしい。現場の人間なので、どうしても現場の主観が入ってしまうが、感覚的なものでなく客観的に見てデータが使われることのよさを感じられるようにしたいと思う。
 最後に確認したいのは、文科省が行うのは貸与期間の最初と最後のチェックで、貸与期間中は研究者に任せてやっていくということか。

【事務局】
  規定の中に文部科学省による実地監査というのがある。必要に応じて文部科学省から研究の場に立ち入って、安全管理等されているかどうか監査できる規定がある。

【委員】
  今は件数が少ないが、これがだんだん増えてきて非常にいい研究になってきたときに、そこがずさんになっていってしまうとどうなのかと危惧をした。是非よろしくお願いしたい。

【委員】
  全面的にほぼ異論はないのだが、1か所引っかかるのは、公表の際の確認が削除された部分である。このデータを利用する研究者の側には意図はなくとも、それを二次利用する人たちの利用方法によっては、その断片が組み合わせされて、結果的に序列化だとかということが起こり得るのではないか。公表する段階でその公表が違った視点から切り取りをされて、結果的に序列化につながらないかというところを、別の目でチェックする必要はないのか。

【座長】
  難しいところだ。生物学などの研究で、最先端の研究をやったら、その研究が毒物に使えるか、というところまでチェックを入れるかどうかという話と一緒になってくる。御懸念はすごく分かるし、その可能性は実際あることも理解はできるのだが、どこまでそれを法的に管理できるかというと、難しい。むしろ二次データを全部集めてきて、それをくっつけて何かをしようとしたら、その人の研究倫理や企業倫理に関わってくる問題になってくる気がする。

【委員】
  その倫理観というのは、それぞれの団体によってまた違う。私たちの倫理では否なのだけれども、一方の立場では使命だというふうになってしまう。

【座長】
  それは有識者会議の範囲から離れたというか、我々ではそこまでは責任を持てないというのが正直なところ。

【事務局】
  現状の規定では、今、論点になっている過度な序列等にきちんと配慮しているか、個人情報保護の観点から守るべきことが守られているかという点について、申出者の方からきちんと配慮した上で公表資料を作りましたという御報告をしていただき、その報告内容を文部科学省が確認するという形である。もしここの懸念が強いということであれば、現行の規定に既にあるものなので、これはこれで削除しないで残すという形にもできる。今回貸与しているものもまだ公表に至っておらず、この規定の適用がない状況であるので、まずは一旦適用してみて、その実施状況をこちらの審査委員会でも見ていただいた上で、今後どういう形にやっていくかということを御検討頂くことも一案かと思っている。

【委員】
  研究は、統計的にその変数と変数の間の関係を検討するというものがほとんどだと思う。個別の自治体や学校の情報が出たり、序列につながったりということは、少なくともこれまでに出ている研究計画ではあまり心配はないのかなと認識している。ガイドラインでも序列化、過度な競争は避けるということがあるし、審査のときもそれを配慮するし、研究者も倫理としてそれを持つという二重、三重のチェックがかかっているというのが現状だと思う。それに加えて公表時に更に確認を取るかどうかというのは、この委員会の役割を超えているような気はする。

【座長】
  入試データなどだと、個別のデータが並んでいる中で、自分の得点は何点だ、それは全体の第何位だとかというところにどうしても関心があって、それが序列化になる。ただ、統計を扱っている人間から言うとそうではなくて、変数の関係がどうであるか(例えば、国語と社会の関係は強い、理科と算数の関係は強い)というところに関心がある。通常の研究者の方は、そちらの情報しか出さないと思うので、序列化というのはほとんど情報としては出てこないと見ている。

【委員】
  例えばこの全国学力・学習状況調査で、生徒の生活と学力をリンクさせて分析というのがある。ほとんどの研究はこういうことなのだと思う。何々都道府県が何番でという数値は結果としては表れないのだと思う。ただ、それは1件1件を見ていない状態であり、これからどういうものが申請されるかが分からない。だからある程度の想定はしておいたほうが良いのではないか。

【座長】
  研究者から言うと、可能性としては、かなり低いがゼロではない。確かに、公開されたものをちゃんと届けてもらうぐらいのチェックは入れておいた方がいいかなという気はする。

【委員】
  まず大丈夫だろうと私も思うが、ブレーキを掛けられるのであれば、ブレーキを掛けておきましょうと思う気持ちもある。

【座長】
  貴重な意見だと思う。学校、自治体、児童生徒たちが優先であるので、その辺は有識者会議でも共有していきたい。  
  これまで幾つか御意見をちょうだいしたので、この後の取り扱いについては一任させていただき文科省サイドといろいろ協議しながら、漏れのないようなガイドラインにしていきたいと思う。

議事3:その他

・事務局より、資料3に基づき、ガイドライン改定及び個票データ等貸与の今後のスケジュールについて説明された。

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総合教育政策局参事官(調査企画担当)付学力調査室

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