「高校生のための学びの基礎診断」検討ワーキング・グループ(第1回) 議事録

1.日時

平成29年7月12日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省15階 15F特別会議室(東京都千代田区霞が関3丁目2-2)

3.議題

  1. 「高校生のための学びの基礎診断」について
  2. その他

4.出席者

委員

(主査)荒瀬委員
(委員)岡本委員,柴山委員,長塚委員,藤森委員,前川委員,宮本委員

文部科学省

高橋初等中等教育局長,白間大臣官房審議官(初等中等教育局担当),滝波高校教育改革PTリーダー,廣野高校教育改革PT専門官,田中高校教育改革PT専門官,中村高校教育改革PT専門官

5.議事録

   冒頭,高橋初等中等教育局長より挨拶ののち,荒瀬主査及び各委員より挨拶。「高校生のための学びの基礎診断」について,事務局から資料2~7に基づき説明があり,意見交換が行われた。

【事務局】それでは,資料2を御覧いただけますでしょうか。こちらは「高校生のための学びの基礎診断」実施方針(案)でございます。5月16日の高大接続改革の進捗状況についてでは,検討素案という形で公表させていただいたものを(案)という形でまとめているものでございます。こちらの(案)の位置づけにつきましては,大学入学共通テストと33年度の大学入学者選抜の予告,これら3つ併せて案をとった形で公表させていただくという準備で進めてございますが,この3つの公表のタイミングがまだ今ではないということでありますので,(案)でございますけれども,いずれ3つ併せてこの基礎診断の実施方針についても,このような形で公表させていただければと思ってございます。
  内容についてですが,5月16日の検討素案からの主な変更点をかいつまんで御説明させていただければと思います。まず名称でございますけれども,「高校生のための学びの基礎診断」(仮称)としてございましたが,この案をとる段階で「高校生のための学びの基礎診断」という形で名前をつけられないかと考えているところでございます。基本的な考え方については,検討素案の段階から特に変更はございません。2ポツの概要のところでございます。趣旨・目的についても変更ございませんが,(2)の活用の事項を設けさせていただいてございます。もともと高大接続システム改革会議の最終報告の高等学校基礎学力テスト(仮称)につきましても,希望参加方式であるということでございます。その点を確認させていただくという意味合いで記載をしてございます。大もととしては,多面的な評価の推進の取組の一部でございますので,それぞれの判断によって適切なものを判断して活用するということ,また,それぞれの高校,設置者の判断によりまして,多面的な評価推進の観点から測定されたものを使わなければいけないということではなく,他の様々なものも活用していく,そういうものを妨げるものではないということを記載させていただいてございます。
  (3)の認定の枠組みでございます。こちらも検討素案の段階から大きな変更はございません。本検討ワーキング・グループでの議論,検討を踏まえまして,より具体的なものを設定していければというふうに考えてございます。
  4ページでございます。準備スケジュールでございますが,平成30年度中に認定制度の運用を開始することを目指すということにつきましては,検討素案の段階でお示しさせていただいてございましたが,本検討ワーキング・グループでの検討を加えていく中で,本年度,平成29年度中を目途に認定の基準等を策定するということのスケジュール感をここで示させていただいてございます。平成30年度中の認定制度の運用開始でございますので,これまでスケジュールとして設定されておりました平成31年度の試行実施期と言われておりましたけれども,そこでの学校での活用が間に合うような形で準備を進めていきたいということでございます。
  (5)その他も追加させていただいたところでございます。この認定制度を運用開始して,そこで全てフルスタートできるということでは必ずしもないということが一つの考えでもございましたので,確認的ではございますが,運用開始から3年経過後を目途に実施状況について検証を行い,その結果に基づき,次期学習指導要領への対応等の必要な措置を講ずることとするということを書かせていただいてございます。「なお」でございますが,結果の副次的な利用,これは高大接続システム改革会議の最終報告でもございましたけれども,大学入試ですとか就職への活用といったものが例として挙げられてございます。そういったものにつきましては,最終報告でも示されております考え方を踏襲いたしまして,まずは仕組みの着実な定着を図るということをしながら,関係者の意見を踏まえまして,更に検討を進めていくということで触れさせていただいてございます。
  3ポツの調査研究の推進につきましては,こちらは検討の素案となってから変更はございません。
  続きまして,参考資料でつけております検討素案の公表以降,様々な機会を捉えて御意見を頂くことをしてまいりました。その頂いた意見,内容について御紹介させていただければと思います。まず,パブリックコメントを5月16日,検討素案の公表から約1か月間実施をしておりまして,提出件数191件,意見は延べで282件頂いたところでございます。これに加えまして,高校教育関係者,具体的には各校長会との意見交換ですとか教育委員会の担当者の説明会を行いながら意見交換をさせていただいたということ,また,民間活用という方針を出させていただいておりましたので,民間業者の方々との意見交換の場ということで,5月末に民間事業者等説明会をさせていただいたところでございます。そういったパブリックコメントで頂いた御意見,また,対面の形で頂いた御意見なども含めまして,以下2ポツの主な意見でまとめさせていただいてございます。誰からどういう形で頂いたということを明確にはなっておりませんが,御紹介できたらと思っております。
  まず,趣旨・目的に対する意見でございます。まず,趣旨・目的で示したものの構成につきまして,肯定的な意見が2つございます。また,次の3つ目,4つ目ということになりますと,今現在取り組まれているもので十分であるのではないかという御意見も頂いてございます。5つ目,6つ目になりますと,試験を認定するということだけではなく,それがどういうふうに活用されていくことが大事であるという御意見も頂いたところでございますので,そういったところについてもこの検討ワーキングで,御意見を頂ければと思ってございます。下の2つになりますけれども,こういったものが導入されることによって,こういう懸念があるのではないかということも頂いてございます。どういった目的・趣旨で導入するものかについて丁寧な説明をさせていただきながら,進めていきたいと考えているところでございます。おめくりいただきますと,運用に対する意見でございます。まず,情報の取扱いということでまとめさせていただいてございますけれども,どの高校がどういったものを使っているのかということが高校のいわゆるレッテル貼りになるのではないかという御意見がございます。そういった情報の扱いについては慎重にという御意見を頂いたというふうに受けとめてございます。
  結果の活用についてです。大学入試や就職に活用されることについての懸念がある一方で,インセンティブという観点からは活用できた方がよいのではないかという御意見もあったところでございます。また,外部への活用というよりは,高校内部での評価への利用ということで,そういう可能性も残しておいてよいのではないかという御意見も頂いております。
  受検料につきましては,やはり利用者負担という形を念頭に進めているところでございますので,できるだけ低廉にということと,また,負担の分担に対しての理解を得ていくということが重要になってくると考えてございます。
  続きまして,認定の枠組みに対する意見でございます。1つ目でありますが,そういう公的な認定という枠組みによって広く世間に認識してもらえることはメリットであるという御意見を頂いている一方で,どれぐらいの高校が活用するのかが未知数だということ,その分,どれだけの開発にコストをかけて,それがどれだけ受検者が確保できるのかということの見通しが立たない中で,よりよいプログラムの開発は難しいのではないかという御意見も頂いてございます。また,多様な民間の測定ツールということに関しまして,ツール間の競争・競合が起きたときに,結果的に残るのは一部になるのではないかという意見も頂いているところでございますので,そういった点については,制度の設計の段階で,どういう形で意見が集約できるかについても併せて御説明させていただければと考えてございます。その他でまとめてございますけれども,今後の進め方ということでの御意見だと受けとめてございます。受検者のメリット,活用方法,費用負担の問題なども含め慎重に検討するとともに,明確な計画を策定し,速やかに公表していただきたいということ,また,実施内容・運営方法については,制度開始後も連続性を確保しつつ,硬直化を抑止するために継続的に見直す必要があるということでございます。全体の制度設計を詰めていく段階で,こういった御意見に対してお答えができるような検討を進めていきたいと考えてございますので,どうか委員の先生方におかれましても,引き続き御意見を頂きたいと思います。以上でございます。

【藤森委員】先ほどのパブリックコメントの結果の活用についてのところなのですけれども,ここは懸念があるという御意見と,できた方がよいのではないかという御意見と争点になっていますよね。ここに2個ありますけれども,どの程度の割合でコメントとして傾斜,偏りがあるかどうか,これについて教えていただけたらと思います。

【事務局】パブリックコメントで頂いた御意見については,懸念に対する御意見が圧倒的に多くございました。ただ,個別にいろんな場で御意見を頂いている中では,こういったものを使っていくということであれば,どこかで何かに使われるという点も必要なのではないかという御意見があったということですが,件数で言いますと,懸念の件数の方が多くあったところでございます。

【柴山委員】認定の枠組みに対する意見に関連してですが,何となく診断ツールそのものだけを開発しているのがここの制度の眼目になっているような感じがするのですが,恐らく民間企業さんの考え方というのは,その測定ツールも必要だし,その結果をどういうふうに生かすのか,そのためにどういう教材が必要なのか,あるいはその教材の使い方のノウハウも含めての提供というのも視野に入れておられると思いますので,我々が議論していく中では,そのことも含めて議論していかないと,ちょっとこのパブリックコメントにお答えすることにならないのかなと思いました。

【荒瀬主査】ありがとうございました。今のように,御質問のみならず,お考えもお聞かせいただければと思いますが,いかがでしょうか。よろしいですか。当然また後で御意見や御質問等ございましたら御遠慮なくお願いいたします。一つ,最後のパブリックコメントの2枚目やその他のところにも受検者のメリットや費用負担の問題とありますけれども,この費用負担の問題というのは,大学入学共通テストでも余り高くなると困るというのは当然出てきたわけですが,受検者のメリット,これをやることによって生徒にとって何がどれほどメリットになるのかということがやはり明らかになっていかないとどうにもならないわけだと思うのですね。そこのところをしっかりと考えていくことが重要だと思います。これまでの我々の議論の中では,こういう形で学校が変わっていく,それが生徒にとって先ほどの話にもありましたけれども,光を見えるようにしていくということが出ていたわけですので,それをまた改めて各委員のお話の中でも出していただいて考えていただきたいというふうに思います。
  それと,1つ私が質問したいのは,これが導入されると当然のことながら指導要録に記載されていくということになるわけですよね。指導要録の具体はまだわからないわけですけれども,そうなってきたときに,その指導要録に記載されるものは,基本的には調査書のもとになるわけですから,そのあたりのきちっとしたこれからの考え方というものを整理する必要があるのかなと思いました。よろしいでしょうか。ありがとうございました。では,今御説明いただいた内容を基に,本日は「高校生のための学びの基礎診断」の検討ワーキング・グループにおける検討の全体像についてという大変大きな議題になっているわけですけれども,論点を確認しながら共通認識を図っていければと思っています。それで,事務局からの資料について御説明いただくわけですが,先ほども出ていました,高等学校教育が大きく変わろうとしているということがきちっと伝わっていくということが非常に大事だと思いますので,そういった観点での御質問とか御意見を是非頂戴したいと思います。では,御説明をよろしくお願いいたします。

【事務局】それでは,資料3から6に沿いまして御説明をさせていただければと思います。
まず,資料3でございます。こちらは「高校生のための学びの基礎診断」制度のイメージでございます。こちらは実施方針で示しております基本的な考え方を図示化したということでございまして,検討素案と公表した段階からつけさせていただいてございます。大もとに高等学校における基礎学力の定着に向けたPDCAサイクルの構築というものがございます。そういった取組をしていくために,まず高校でのそれぞれの日常的な取組というものがベースになるかということが検討準備グループの論点整理の中でもまとめていただいたところでございます。こちらのオレンジ基調の高校での取組というものをどう進めていくのかということが一つ重要なポイントになってくるかと思ってございます。社会で自立するための必要な基礎学力について各学校がそれぞれの実情を踏まえて目標を設定し,教育課程を編成する。多様な学習活動が高校では展開されてございますので,それに対応して多様な測定ツールを活用しながら,生徒の学習状況を多面的に評価し,指導の工夫・充実を図っていくという中で,様々な測定ツールということを用いておりますけれども,実際には各学校では定期テストを行ったり実力テストを行ったり,また,いろいろな検定なり教材を活用しながら生徒の学習状況というものを確認し,それを踏まえて指導を行っているという取組がベースになろうかと考えてございます。そういった取組をいかに充実していくかというのがPDCAサイクルの構築の中で大きな柱になろうというふうに考えてございます。そういった中で,右側の青基調のところでございますけれども,様々な学習活動の成果を測定するツールという観点で,特に基礎的な学力の定着度合いを見ていくものをどう構築していくかということがこれまでの取組の背景の中にあったわけでございまして,それをどう充実させていくのかというところがございます。今回学びの基礎診断の仕組みとしてお示しさせていただいておりますのが一定の要件に即して民間の試験等を認定する仕組みを創設するということで,学校でのPDCAサイクルを回していくに当たって,成果測定をしていくツールの充実を図っていくことができないかなということが「高校生のための学びの基礎診断」の制度のイメージということでお示しさせていただいてございます。こちらのことが設置要綱の主な検討事項ということで,2つ大きく定めていただいてございます。まず,仕組みづくりをどうしていくのかという観点を一つ目に据えてございますけれども,どういった要件を設定し,どういった観点から確認を行い民間の試験等を認定していくのかというところ,もう一つが先ほど申し上げましたオレンジ基調の部分,こういった学校の取組とリンクさせながらPDCAサイクルの構築を進めていくか,そういった大きく2つの柱で検討ワーキング・グループでは御議論いただきたいと考えているところでございます。まず,学びの基礎診断の枠組みをどの射程まで捉えるかというところでございますけれども,必ずしも高校の取組で用いられている測定ツールといいますか,評価の手法というものは,この青の基調の中の枠にとどまるわけではないというところがあると思いますので,オレンジ基調の部分につきましては,必ずしも基礎診断の認定を受けたものの活用にとらわれることなく,広く様々な多面的な評価を推進する観点から高校の取組を促していく方策についても御議論,御意見を頂ければというふうに考えてございます。これが制度のイメージとして作成した資料の意図でございます。
  おめくりいただきますと,活用方法イメージということで資料をつけさせていただいております。こちらも検討素案公表の段階で,参考資料としてつけさせていただいたものでございます。飽くまで一例ということでございますので,これをこういうふうに使わなければいけないということではございませんが,左側で設置者としての取組,また,高等学校での取組ということで挙げさせていただいてございます。こういったカリキュラム・マネジメントを確立していく中で,どういったものを活用しながら生徒の状況を把握していくのかという活用のイメージ例を挙げさせていただいてございます。また,生徒一人一人の興味・関心を引き出し,自らの学びの質の向上に取り組めるようにするという活用の仕方ということで,イメージ例をつけさせていただいてございます。そういった高等学校での取組に活用できるような,そういった測定ツールというものを充実させていきたいということは,先ほどの資料と重なる部分でございますけれども,その右下のところには,個々の高等学校における学びの基礎診断を用いたPDCAサイクルのイメージ例ということで挙げさせていただいてございます。これまで何のためにこの基礎診断を導入するのか,どういう活用をしていくのかということについてイメージがつかめないという声を頂いてきたところでございますので,飽くまでこれでなければならないということではございませんけれども,こういった中にツールをどう活用していくかということを考えていただけるような,そういった素材として作成しているものでございます。測定ツール自体はチェックの部分に活用するものでございますが,それを踏まえてアクションにどうつなげていくのか,それ以前にチェックの前にプランをどう設定していくのか,アクションをどうしていくのか,そういう一体のものとして,この学びの基礎診断の活用についていろいろな形で情報をお示ししていければというふうに考えているところでございます。
  おめくりいただいて,参考資料でございます。こちらは次期学習指導要領の改訂の方向性ということで,これまでもいろいろな場で出されている資料でございますが,「高校生のための学びの基礎診断」は基礎学力の定着に向けたPDCAサイクルの構築ということで焦点を絞ってございますけれども,大きく捉えれば,次期学習指導要領の方向性の中での何ができるようになるか,何を学ぶか,どのように学ぶか,そういった関連の中で位置づけて取組を進めていきたいということで,参考資料としてつけさせていただいているところでございます。これが「高校生のための学びの基礎診断」制度の全体のイメージということで作成させていただいた資料でございます。
  資料4でございますが,その取組を進めていくために今取り組んでおります事業ということで御紹介をさせていただければと思っております。高校生の基礎学力の定着に向けた学習改善のための研究開発事業,こちらは平成28年度,昨年度から実施をさせていただいている事業でございます。内容については大きく2つのパートがございます。まずは各高等学校におけるPDCAサイクルの取組をどのように構築していくのかということを研究テーマとして取り組んでいただいているというものでございます。基礎学力の定着に向けた計画をつくり,それに基づいて活動を行っていく。それを多面的に評価していく中で,どういう活動をしていくか,そういったことについて実践研究校を指定する形で取り組んでいただいているところでございます。
  もう一つがテストの手法を開発していくという部分でございまして,資料でいいますと,(2)でございます。こちらで昨年度の実施しましたのが試行調査でございまして,実際にCBTで試験をやってみるとか,どういった問題に対してどういう生徒の反応があるだろうかということを検証していくために取り組んできたものでございます。今年度も平成29年度事業といたしまして,実践研究校に引き続き取組をしていただくということと,今年度新規に実践研究校として取り組んでいただく学校を追加させていただいたところでございます。また,テスト手法の開発につきましても,CBTの導入ですとか,様々な評価手法の研究というものは,論点整理にも課題として示していただいているところでございますので,そういったことを取り組んでいく形で進めていきたいということでございます。また,この調査研究を進めていく中でも,こういう観点から取組をしてみてはどうかということはあろうかと思います。そういった点について御助言を頂ければというふうに思っているところと,また,30年度の取組についてもこれからの取組になってまいりますので,その点について御助言を頂ければというふうに考えているところでございます。
  おめくりいただきますと,実践研究校として採択している教育委員会の一覧をつけてございます。1から10までが平成28年度,昨年度から実施いただいているところでございます。11から17が新規で今年度から取り組んでいただいているところでございます。こういった形で,また実践研究校の成果を発信していくということを通じて,PDCAサイクル構築に向けた取組を促していく,そういったものにしていきたいと考えてございますので,こういった観点からの御助言を頂ければと思っております。
  続きまして,資料5でございます。こちらは検討事項の(1)でございます認定の仕組みをどのように構築していくのかということに関連をいたしまして,実施方針では文字で書いているものを少しイメージが湧くような形で図示させていただいたものでございます。こういったイメージを持ちつつ,具体的な基準の設定,また,審査の方法,体制というものを御議論いただければと思っておりますので御用意をさせていただきました。
  1枚目でございます。審査・認定・利用の流れということでまとめさせていただいております。上段の方が事業者等からの申請に対して審査を行う,審査を経て認定を行ったものを一覧化して,高校関係者等へ情報提供をしていくと。その情報提供されたものについて,各高等学校と設置者を含めまして,各校の実情を踏まえて適当な測定ツールを選択して,それを提供する民間事業者に申込み,申込みを受けた事業者が実施・提供を行う,そういう流れを図示化させていただいたところでございます。こちらは主体ごとに色を分けてございまして,それぞれがどういうふうな形でこれを活用していくのか,参画していくのかということをイメージ化させていただいたものでございます。スケジュール感につきましては,丸で具体的にまだ埋められていないところがございますので,実態を踏まえて固めていかなければいけないというふうに思ってございます。下の段につきましては,今後の年度展開ということで想定スケジュールでございます。本年度,平成29年度に実施方針の後,基準の原案等の提示,これを年内目途,基準・審査要項等の策定ということで年度内を目途,これは実施方針で示させていただいているスケジュール感でございます。平成30年度の運用開始ということでございますが,具体的には申請の受付を行い,審査をして,認定を行い,情報提供を行うということが運用の開始というふうに捉えてございます。そういったものを学校においてはどのタイミングで活用していくのかというところが更に下の段にございますけれども,次年度の教育計画というのは,昨年度中に策定されているということが実態でございますので,30年度中に情報提供を受けた認定一覧の中から31年度にどう活用していくのか,そういう判断ができるような形で準備を進めていきたいというところでございます。31年度,32年度からは申請につきましても,年度,年度追加で申請いただき,認定を行っていくというサイクル,また,その年度,年度で各学校の事業計画の中で取り組んでいただく,そういうイメージを考えているところでございます。
  2枚目でございます。認定の仕組みをどのように構築していくのかのイメージでございます。国において示す事項ということで,認定を行うということでございますので,認定の要件,こういったものを認定するということを示していくということで,出題に関すること,結果提供に関すること,実施に関すること,情報開示に関すること,報告に関すること,これにつきましては,具体的な説明はまた次の議題のときにさせていただければと思いますが,どういったものを認定しようとしているのかということを示していくということがございます。それに対してどういう申請をしていただくのか,その手続,そういったものを示していくと。申請いただいたものをどういった観点で見ていくのか,そういったものを示させていただくということが認定部分の設計として行っていくものと捉えてございます。
  審査の流れということで下の方にイメージの一例をつけさせていただいてございます。事業者等から申請いただくということでございますが,基本的には申請いただく内容を確認していくという形を考えてございまして,文部科学省において,実施されている試験等が学習指導要領に対応しているのかを判断する,判定する,評価するというよりは,申請いただいた内容を確認させていただく,そういった審査をイメージしているところでございます。そういう点では教科書の検定とはまた違う形での体制ということで考えてございますが,飽くまでまだイメージの段階でございますので,また御意見,御議論を頂ければというふうに思っております。申請の際に認定を受けようとする試験等が認定要件を満たしていることを示す書類等を提出していただく。その提出いただいた書類と資料等について形式的な要件の確認,また,専門的な事項については審査委員に確認いただいて,最終的に認定の判断を行う,そういった流れを考えているところでございます。
  3ページ目でございます。事後チェックの体制のイメージでございます。実施方針の中でも示させていただいてございますが,事後の確認ということで,フォローアップ,また,効果分析等を行いながら,改善をしていけるサイクルにしていきたいということでございますので,事業概要報告というものをいただくという形がとれないかと考えてございます。その中身につきましては,報告をどういった活用を行っていくのかというところを踏まえて,具体的に固めていく必要があるとは考えてございますけれども,どれぐらいのところが利用したのか,全体傾向としてどういった状況にあるのかということ,また,具体的に出題した問題というものを頂くということをイメージの例として挙げてございます。
  文部科学省といたしましては,そういった報告を実施状況のフォローアップということ,また,効果分析のデータとして,また,情報発信にも使うということを念頭に置きながら,どういった報告を頂くかということについて,更に議論いただきたいと思っております。
  ここで,要検討事項として挙げてございますが,取消しの性格と事後チェックの関係でございます。決してあら探しをして,この基準に反しているからと目を光らせるためにこの事後チェックの報告を頂きたいというわけでは決してございませんが,ただ認定基準に適合しない,また,それに反するということが確認されれば当然取消しということもあるわけでございまして,事後チェックの中でそういうあら探しをする情報を頂くのか,頂かないのかというのは,検討事項かと考えてございます。
  また,国の教育施策に生かすための情報というものとして,どういったことを頂ければいいかということがあろうかと考えてございます。一方で,実施者にとってどこまでのことであれば対応できるのかという許容範囲のこともございますので,そういった観点も重要かと考えてございます。逆に言うと,公にできる情報と報告として出す分には構わないという情報,開示情報と非開示情報の仕分というものもこの中で議論が必要と考えているところでございます。概要報告をどのように設計していくのか,目的を明確にして報告を求める項目・内容を設定していく必要があるだろうということ,また,各実施者が有するデータというのは社会的価値を有する一方で,提供を求める際の負担の軽減にも配慮が必要ではないかということで,論点として挙げさせていただいてございます。
  続きまして,情報提供のイメージでございます。認定された測定ツールを一覧化して情報提供していくということでございます。それを一覧化していったときに,項目を選択していくと,それぞれの試験等がどういうふうに設定されていって,どういうふうなことで実施されるのかというものが一覧として確認できるような,そういう提供ができればと考えてございますが,その内容については,基本的には申請いただいた内容を開示できるようなことを考えておるところでございます。ただ一方で,申請内容のうち非開示とすることが適当な情報というものもあろうかと思いますので,具体的な申請内容を固めていくのと併せて,この件についても御意見を頂ければと考えているところでございます。
  一方で,申請内容以外にも付加することが適当な情報というものはどのようなものがあるのかというところもございます。柴山委員からも御発言いただいたように,測定ツールとしての機能だけではないその他の機能といいますか,そういったものも付加していくのかどうかというところがあるかと考えてございます。そういった情報提供の仕組みを構築した上で,高等学校等へ提供をさせていただくということで,活用を促していけないかというものでございます。論点で挙げさせていただいてございますけれども,情報を伝えればそのまま活用されるというわけでも決してございませんので,どういった形で情報発信というものを行っていくのか,その在り方についても御意見を頂ければというふうに考えているところでございます。
  以上が認定の仕組みをどう構築していくかについて,主な枠組み,論点となるようなところについて全体像としてお示しさせていただいたところでございます。
  続いて資料6でございますが,今後の検討の見通しでございます。7月12日,第1回,本日の開催でございます。この後,認定基準についての大枠の議論をいただければというふうに考えてございますが,第2回以降,認定の基準,また,先ほどお示しした審査,事後チェック,情報提供についても個別の論点ということで御議論いただきたいと思ってございます。12月中に基準原案を公表するというスケジュールの中で逆算して窮屈なスケジュールをお示ししているところも若干心苦しいところでございますが,それぞれの論点に沿いながら考え方を整理していきたいというものでございます。年内を目途に基準原案を公表した後,パブリックコメントを実施いたしまして,年度内に確定した形で発表できないかということで考えているところでございますけれども,日程,議題等につきましては検討の進捗に応じてまた御相談させていただきたいと思ってございますので,大体の見通しとして今の時点でのお示しできるものとして御理解いただければと思います。
  また,こちらの認定の枠組みについて段取りとして示させていただいてございますけれども,認定の枠組みをどうつくるかだけでは,このPDCAのとおり進むものではないということがございますので,この会議において認定の枠組みだけにとどまらない御意見,御議論もいただきたいというふうに考えているところでございます。
全体像については以上でございます。

【荒瀬主査】それでは,ただいまの説明を踏まえつつ,本ワーキング・グループの検討事項でもあります基礎診断の認定の枠組み構築に関する事項,高校生の基礎学力定着に向けたPDCAサイクル構築に向けた測定ツールの活用に関する事項といったような柱で御意見,御質問をいただければと思います。
  我々はこれまでもいろいろと議論してきたわけですけれども,改めてこれらを整理していただいた上で,今までも言ったからもういいということにはしないで,改めて御発言くださるようよろしくお願いいたします。

【宮本委員】この「高校生のための学びの基礎診断」,民間の知見を活用するということなのですけれども,いわゆる英語のものとは全く意味が違うと思うのですよね。英語については,4技能を測ることについては,既存の検定というものをベースとして考えていますけれども,今回のこの基礎診断というのは,新しいものを民間の方の力を借りて作っていくということで,そういう意味では,基本設計のところからやっていくというのが意図だと思うので,そこはやはり同じ民間の活用ということであっても随分性格が違ってくるのだろうと思います。パブリックコメントの中にもありましたけれども,基礎学力を測るツールについても既存のものが今既に幾つかあるわけで,それとこの新しい基礎診断はどこがどう違うのというところが明確に出てこないと,他の測定ツールでもいいということにはなってしまいます。しかし,我々としてはやはりできるだけ多くの学校にこの新しい学びの基礎診断というツールを使って子供たちの学力を伸ばしてもらいたいということなので,そこのところを前に押し出していくということをしていかないといけないのかなと思います。
  それと,スケジュールを見てみますと,かなり窮屈なスケジュールにどうしてもなっていますよね。結局開発をしてもらうということを考えると,開発をする時間というのは余り多くはないわけで,実際に30年度に中身を示して,できれば31年度から使ってもらいたいというわけですけれども,例えば検討するにしても,内容が全部見えてこないと他の既存のものはもう見えているわけですからわかりますけれども,比較をするという検討のための時間というのが結構必要だと思うし,比較をしてもらうためには何をどういう形で公表するのかというところをしっかりしておかないと,ただリストだけもらったところで,これは比較できないし,検討もできないですよね。やはりその辺のところも考えると,まだまだ幾つか詰めていかなければいけないことが多いかなというふうに思います。

【柴山委員】今の宮本委員の御発言と重なるのですけれども,この制度というのは,文科省が共通の大きなプラットフォームを提供して,その中で幾つもの民間の方々に関わっていただき関係し合いながら動いていく制度というふうに理解しています。また,この診断制度にとって,先ほど長塚委員もおっしゃいましたけれども,到達度評価,達成度評価というのがやはりエッセンスだと思います。そのときに必要なのが,これも先ほど前川委員から御発言があった,いわゆるいろいろあるツールを共通して使える品質保証の部分がやはり重要になってくると思います。そのときにそれを国の方でやるのか,民間の中に任せてしまうのか,まだグレーな部分があって,そのあたりをうまく制度設計しておかないと高校で比較検討のしようがありません。共通して,同等の品質のものが提供され,高校によってこれがその高校には使いやすいからこれを使えるという判断ができる,そういう仕組みをどこかで担保しておかないといけないのかなと思い,特に資料5などはその点をどのように担保するのかということを考えておりました。
  それから,資料5のやはり最後のところですけれども,高等学校等への情報提供イメージなのですが,これはPDCAサイクルを議論するときにいつも私申し上げるのですけれども,スポーツの試合に例えると,ルールが試合内容を決めるというところがございまして,このルールをどういうふうにして決めるのかというのがすごく大きいと思います。学力スコアのように数値にしてしまいますと,やはり高等学校で行われている教育の限定された側面しかそこには切り出せないのではないかということで,高校教育が本来もっている豊かさがそこに無理やり収れんされてしまって,良かれと思って始めたものが,結果として全然違う悪影響を及ぼすというふうなこともございます。そのあたりのことも考慮しますと,例えば,この情報提供のときに高校側のいわゆるアセスメントリテラシーを育てていくような何か,具体的には研修になるのかとも考えますけれども,あるいは,この会議の中で扱う分野ではないのかもしれませんが,そのあたりのことも含めて,高校教育全体のことを考えながら,メリット・デメリットのある数値を扱うのだと,そのあたりは配慮として必要なのかなと思いました。以上です。

【藤森委員】柴山委員の御発言に関連するのですけれども,基本としては新学習指導要領でこのたび資質能力というこの表現でもって学力観がなされておりますので,それに対する捉えというか,仕組みの上の大前提として基本的には到達度をはかるということに違いないのですけれども,先ほど冒頭で申し上げましたように,それが単なるスコアで,あなたは何点です,あなたのレベルは幾つですという形だけだとすると,資質能力の資質の部分は一体どういうふうに評価されるのかなということになる気がします。
  したがって,結果的に出てきたその子の持っているある基礎的な学力というものをどういう形式,どういう表現の仕方でフィードバックしていくのか,その問題は非常に大きい気がしていて,特にこの資料5の最後のページの論点で,非開示とすることが適当な情報として云々という論点がございます。これは非常に大きな問題なのですが,先ほどの柴山委員がおっしゃった高校側のアセスメントリテラシー,つまり評価するときの豊かな評価になっていくような,そのための言ってみれば指針となるような,そういう効果をやはり期待したいなというふうに思うのですよね。そうじゃないと何か懸念してしまうのは,一つの業者テストでこれまでやってきたような進路決定,そのためのデータの言ってみれば焼き直しみたいなものだとすると要らないのではないか,何もわざわざ国ですることはないのではないかというふうな声も出るような気がするのですね。この基礎学力診断をするということは,やはり未来ある高校生たちにちょっとイメージで申し訳ないのですけれども,やって自分に対して自分が好きになっていくような,そんなイメージが枠組みの大前提で欲しいなというふうに私は思っています。

【荒瀬主査】大変難しい話になってきたのでありますが,どこまでを全ての高校生につけるべきか,かつて高等学校教育部会で議論したコアとしての基礎学力であると考えるか,それこそ漢字が書けるとか文章が読めるとかいったようなこともあるのでしょうけれども,これまでの議論の中では,教科の力なのか,果たして言語の能力であるのか数的な処理能力であるのかといったような,そういう判断もあったわけですし,そこのところをどういう設定するのかということで,これは後の方の議論である,認定基準の設定というところにも深くかかわる部分かと思いますが,いかがでしょうか。

【前川委員】すみません。ちょっと今のこととは直接関係ないと思いますが,先ほど資料3を見ていてちょっと疑問に思ったのですけれども,高校生はこのテストを何回受けるのかというのがちょっとよくわからなくて,最低1回は受けるということはわかるのですが,2回受けて自分がどれだけ伸びたかをテストの情報を使って知ることができるのかどうかということなのですが,もしそうだとすると,1回目と2回目,同じ問題を使うわけにいきませんから,違う問題を使って点数が伸びて,本当に伸びているのか,余りテストが易しかったから点数が上がっただけなのではないかとか,そういうことも気になります。
  それとあと,A社の50点,B社の50点というのは本当に同じことを指しているのかというのがちょっと気になるということで,A社の1社だけしか試験をつくらないのであればそれでいいのですけれども,この目的としては複数の民間事業者に参加していただくということですから,何かそこのところの点数の比較可能性みたいなものもどこかで担保しなきゃならないという気がしています。それをやはり認定のところでやるしかないのではないかなという気がします。

【荒瀬主査】話は認定のことと深くかかわってきますので,議題を分けてということでありましたが,資料7を含め,それから,先ほどの資料5の2枚目ですね,こういったことも含めてまず御説明いただいた上で御議論いただいた方がよさそうですね。よろしくお願いします。

【事務局】それでは,資料7でございます。こちらは認定の基準をどう設定していくのかということを考えるに当たって,何を要件として設定し,どういったものを審査して,それをどういうふうに確認していくのかということと,あと,一番右端の方に論点ということでつけさせていただいたものでございます。こういったものをたたき台として,一つの課題,論点というのをつくっていけないかということで,本日,第1回の開催に当たりましてお示しさせていただいたものでございます。ですので,たたき台ということで,様々な御意見を頂けると思いますので,それを踏まえてまた整理が必要なものとして受けとめていただければと思います。考え方といたしましては,縦軸にやはり学校で活用するということでございますので,そういった観点からどういったものを求めていくことが最低限必要ではないかということで整理をさせていただいております。
  出題に関することでございます。まず,学習指導要領を踏まえた出題の基本方針を定め,方針に基づき問題が設計されているということでございます。試験等において測定しようとする力とともに,それをどういう問題がそれに対応していくのかということも明らかになっていくことが重要だろうということでございます。結果からどういう課題があり,成果があるのかということがテストのデザインの段階で明らかにされて設計されていることが出題の確認の中で求めていくことではないかということでございます。
  結果提供に関することでございます。そういったデザインがされている出題であるということが前提でございますけれども,学習成果や課題が確認でき,事後の学習活動に資する結果提供がなされるということがあります。そういった提供される結果がどういう評価の考え方でなされているのか,また,そういう分析というものがどういう手法で行われているのかということも明らかになっていくことが必要でないかということで書かせていただいております。
  そして,実施に関することでございます。学校において実施可能ということがございますので,過度に負担がかからない方法で実施がされていることでございます。具体的には,余りにも厳密性が高い形ですと,試験監督ですとか書類とか,そういう結果の管理とかそういうものに負担がかかるということも考えられるということでございます。
  情報開示に関することでございます。学校が選択をするという形での設計を考えてございますので,どういった情報があると学校の判断に資するかどうかという観点から,開示されていく情報としてどのようなものが必要なのか。
  最後は若干毛色が異なりますけれども,報告に関することで,事前に審査をする対象ではございませんけれども,事業概要の報告という形で報告をいただけるということが大きな柱になるのではないかということでございます。
  続いて,そういった要件を確認するために申請の段階でどういったものを求める必要があろうかということでございます。
  出題に関することにつきましては,出題方針,どういう考え方で出題をしようとしているのかということでございます。それに対応する形で,具体的にはこういう問題で具現化されている形が確認できるようなサンプル問題というものを書いてございます。問題と出題方針との対応関係を示すものを併せて頂きたいのと,あとは,全て出題する問題を確認するわけにもいきませんので,サンプル問題,作問の体制,また,工程管理というものをどういうふうに行っているのかということを申請する際に頂くということが考えられるのではないかということでございます。
  結果提供に関することにつきましては,具体的に受検者に返す帳票,学校に対する帳票というものを   ということでございます。
  分析に関することで,採点の方法,体制を示していただくということと,結果表示の方法をどういった方法で行うのか,それの算出方法をどういうふうに考えているのか,また,評価の示し方とその分析方法を示すものがあるのではないかということでございます。
  実施に関することとしては,実施要項という形で,時間はどれぐらいで,CBT,PBTであるのかといった実施方式,いつからいつまで利用できるのかという意味での実施期間,また,受検料,あと標準返却期間,こういう形で実施するということをいただくですとか,あとは学校にはどういうことをしていただくのかということを学校用実施マニュアルのようなものを作成しているか,実施に当たっての支援体制を構築しているのかということを書かせていただきました。
  情報開示に関することといたしましては,まだ事項の例ということでございますので,まだまだ検討が必要でございますけれども,こういったものが必要ということでございます。
  申請において確認するポイント,出題に関することにつきましては,出題方針が学習指導要領を踏まえたものとして作成されているかということが確認のポイントになるのではないかと。あと,出題方針の内容とサンプル問題,方針どおりの問題として確かにつくられているかとか,また,問題とはかろうとしている能力,また,出題の狙いとの間,その関係性についても齟齬がないか,問題の質を保つための体制なのか,そういったことがポイントになるのではないかということでございます。
  結果提供に関することに関しましては,情報提供の工夫ということで,大もとが学習意欲の喚起と考えているところでございます。また,学校としての指導の工夫・充実に資する情報提供の工夫,また,提供される情報,結果・評価,そういったものがどういう形で検証されているのかということが確認のポイントになるのではないかと考えてございます。
  実施に関することにつきましては,学校の実情に応じて実施できる方法であるかという観点,また,学校がどういったところまでをやっていただくのか,こちらではどういったところまでやるのかということが明確にされているのかということでございます。
  情報開示につきましては,取扱いが明確となっているか,恐らく実施要項の中に含まれている部分になろうかと思いますので,一体的に確認していくということを書かせていただいております。
  論点を挙げさせていただいておりますそれぞれについてございますけれども,ポイントは共通してございまして,そういった要件の中に例えば出題に関することであれば,教科・科目,出題範囲,出題形式,そういったものについて具体的な形で,この教科のこの出題範囲でなければならない,出題形式は記述式がどれだけ,選択式がこれだけという形での具体的な要件を設定するかどうか,どういう形でするのかというところが書いてございます。これまで高等学校基礎学力テストで様々御議論いただいていたものがあるわけでございますけれども,今ここであえてそういったところを要件としてどこまで設定するのかというところを論点としている趣旨については,この認定の趣旨等も踏まえて,もう一度確認をできればということでございます。ですので,あえて選択肢ということで,要件とは設定せずに情報開示するという形で学校に選択していただくということも記載しております。こちらは共通性の確保の部分と民間の創意工夫を生かしていくという部分とのバランスにも影響してくる部分だと捉えてございまして,その点について論点ということで挙げさせていただいているところでございます。
  参考資料でつけさせていただいているA4の資料が論点についてイメージを持っていただくために今回つけさせていただいたものでございます。こちらは全ての論点を網羅しているわけではございませんが,特に対象教科・科目,出題範囲についてどう取り扱うのかということの検討に素材として使えるようにということでございます。教科と必履修科目,選択科目という考え方の中で,これまでの議論では,国数英共通必履修科目という範囲から始めるということでございましたので,これを踏襲する形でスタートさせていくというふうに考えているところでございますが,その際でも3教科セットということを踏襲するのか,教科単位でやるのかという考え方もあるところでございます。教科を全般的に網羅しているわけではないけれども,教科の中で確実に育成しようとする資質能力を一部分でも見られるというようなものをどう考えているのかというところが一部領域のものでございます。一方で,共通必履修科目ではございませんけれども,出題の範囲という考え方で,教科ではあるのだけれども,例えば国語総合の範囲の中で出題をおさめるのか,それとも総合の範囲内ということでなければいけないとか,そういう論点もあろうかということで,共通必履修科目以外についても出題範囲とする試験の扱いをどう考えるかということで挙げさせていただいております。
  当然ながら高校生の学びは国数英だけではございませんので,その他の教科ということについてもございます。例えば専門学科におきましては,それぞれ校長会で検定を実施しているですとか,そういった取組を通じて学びの充実を図っていくという取組の例もございますので,そういった教科・科目としての扱いをどうするのかというところがございます。先ほど荒瀬主査からもございましたけれども,国数英という教科の枠を超えた合教科型,そういったものというのも概念的には測定ツールとして活用していくということはあり得るところでございますので,そういったこともどうしていくのかというところがあろうかということで,論点の材料としてつけさせていただいたところでございます。ただ一方で,これまで国数英からスタートさせるというところがございましたので,そこをいきなり外してしまうと,いろんなものがあり得るということになってしまうので,まずはそこからということでは考えているところでございますが,今後の発展ですとか,そういったものを考えていったときに,こういった部分も含めてどう扱うか,基準の設計に際しては,材料としては必要ということで入れさせていただいてございます。

【岡本委員】静かな議論ができて,私は必ずしも静かとは言えないところの議論に関わってきたので,ちょっと頭が混乱していたのですけれども,実際この基礎テストのときにどういう形でフィードバックするのかということですよね。つまり当たり前のことなのかもしれないけれども,段階判定なのか。段階判定をするにしても,採点するときは100点満点でするし,それを使うときには段階判定だけで使うのか等々,細かいことは残っているだろうと思います。私は数学なので,ABCDEで,Nイコール5だと段階判定,Nイコール100だと何点刻みになるのかと。Nが違うだけで単語が違うというのは,どうもなかなかよくわからないのですけれども,それはちょっと冗談として,でも,私一番本質的だと思うのは,資料3の最初に書いてあるとおり,高等学校がそれぞれの生徒を見ながら,学力についてですけれども,学校の目標というのを設定するというのは大前提になっているわけですよね。そうすると,まず高等学校ではこれをして,その上でどう使うかというのも当然含まれてくるだろうというふうに思うのですよね。だから,私としては,例えばある高等学校がこの結果を使って子供たちが先にどんどん勉強できるように授業を直していくのだと,そういう目標を掲げる高校もあるだろうし,いや,もうこれは基礎テストの点を我が県で1番にするのだと,ちょっと変だけれども,そういうこともあるわけで,そうすると,学校において用途が全然違ってしまって,だけれども,恐らく私たちが想定しているのは,やはり最初に言ったみたいにこれを使ってどういうふうに返ってくるかということですよね。
  そうすると,2つのことを申し上げたいのですけれども,これからいろいろ実験校等々でやって,実際に31年度から始まっていったときに,例えばそういう論点を検証できるような形でやはりやっていかないとまずいのではないかと。例えば2種類のテストがあって,それがどのぐらい違うのかというのは,例えば検証している学校でちょっと協力していただいて,相手は母集団が一緒じゃないとやはり検証しにくいので,それは検証のためということでやってみるとか,そうすると,それは要するに対応できていればいいわけですよね。それがオープンになっていればいいし,学校によっては,1年たったらこれだけみんな伸びたということがわかることもひとつだと思います。だから,いろいろ実施が始まってからもそうなのですけれども,やはりそういうことがいろいろ検証できるような柔軟な制度設計をしていただきたいというのが一点です。
  もう一つは,これも資料4に書いてあることなのですけれども,これは将来の検討課題で,これはもちろん31年度から始まっていくのだけれども,5年ぐらいやると34年からかな,高等学校は3年たつと。指導要領の改訂というのが出てきますよね。そうすると,そういう段階でどうするかと。そこではまた当然のことながら出題範囲とか見るところは変わってくると思うのですね。そうすると,作題を変えるのだと。もうそのときにちょっと先の将来のことまでどういう形に,ここにも書いてあるとおり試験のやり方ですよね。CBTにするのかどうするのか,そのためには何が必要なのか,そういうことも含めて,これはこの委員会で検討するものなのかどうなのか,全体設計にかかわることなのか,そこは言えないのですけれども,いわゆる私の好きな言葉で言うと,ある意味でせっかくこういう新しいシステムを入れるときには,ある意味技術革新というか,そういうのも伴ってきて,それでどんどん先に進んでいくというのがやはりいいと思うので,そういうのもちょっとどこかでやはり検討は大事なのですけれども,だから,大方針というのかな,その2点。

【長塚委員】先ほど宮本先生からあった,英語の外部検定利用とは違うということはおっしゃるとおりだなと思ったのですが,方向的には外部検定の認定をするというものと近いということで先ほど発言しました。そして内容的に言えば,全国学調の扱いのような気がしてきました。全国統一のテストではなく,それぞれの民間の力でいろんなものが開発されるということなのですけれども,内容的にと言っている意味は,例えば国数英をそれぞれ50分程度で測定するということは,外部検定,例えば英語を例にして話せばわかりやすいので言いますけれども,数時間かけて4技能を調べる英語の検定とは質的に違うわけですね。ただし,今回も英語について言えば,4技能を踏まえるような基礎力を調べると言っている。結構これ大変だと思うのですよ。特に問題になっているライティングとかスピーキング,ここを含めたような基礎診断をするとなると,時間的に,費用的に様々な問題があるのかなと思いつつも,このテストを通して4技能を調べるというのはとても大事なことだと思います。スピーキングテストについては全国学調の事前調査のようなことをやって,まとめておられたことが非常に印象的なのですけれども,試行的に英語のスピーキング評価をした中学校の先生たちがスピーキングのパフォーマンス評価を初めてやって,非常に勉強になったとか,スピーキングの評価というのは,こういうものになっているとわかったとか述べています。そこがこのテストをやった意味だったと思うのです。つまり,高校でもスピーキングの力を生徒につけるというときに,スピーキングの力というのは,どの程度どういうふうに見るものなのかということがわかるまで現場で指導していることにはならないと言っても過言じゃない。少なくとも統一はされていないような気がするのですよね。少なくとも学びの基礎診断を通して先生たちがかかわるような診断テストの方が有効じゃないかと思います。例えばスピーキングを50分のうちのどの程度やるかわかりませんけれども,その何十人か何百人か受けたうちの幾つかについて,サンプル的にその先生が自分でパフォーマンスが示されているルーブリックに基づいた評価をしてみる。そして,実際には業者の第三者による評価と比較をしてみるというような作業ができたら良いのではないでしょうか。全国学調の方では行われることになっているわけです,百万人規模で今後。
  ところが,高校はないわけですよ。高校はそれぞれの学校のレベルに応じてやっているというのですけれども,到達度をはかるという意味においては,全国学調とある意味似たような物差しを自分たちが持たないと結局ばらばらな評価になってしまいます。民間のテスト会社の方でやってくれれば,それはそれでこういう結果かというだけの話になりそうな気がするのですよね。そこに教員がかかわるかどうか。インターナショナルバカロレアの仕組みが正にそうで,あらかじめ各学校の教員が予測的な評価を出す,それを世界規模のテストの結果で,センターの方で評価して比較されるというふうなことをやって,常に評価というものを教員が研修する。それなしには指導はできないということですよね。それと同じようなことが必要なんじゃないか。学びの基礎診断と言いながら,実は教員による臨床診断のようなものを同時にすることで,自分たちにもその評価軸ができていくことが大事なんじゃないかな。それだったら,次のPDCAに回せていけるのではないかな。カリキュラムを変えるとか,そういうもの以上にその指導の現場におけるヒントというものが必要な気がします。
  なぜこういうことを言っているかというと,次の指導要領の改訂の眼目が資質能力で,パフォーマンス評価が必要だとなっているからです。つまり,英語に限らずということになってくるわけですので,例えばこの学びの基礎診断についても,知識,技能のところだけではなくて,思考力,判断力,表現力も,バランスよく問題を出題するという原案になっていますけれども,その思考力,判断力というところが多少なりとも記述型になってくるとすれば,記述の問題に関して教員があらかじめ資質的な評価をすることができるような,さっき言った英語のスピーキングと同じような意味合いを申し上げているのですけれども,そんな仕組みをつくり上げていくということが必要なんじゃないかと思うわけです。現状においては,現指導要領の中ですから,その中においてそういうことの準備をしていくということが必要でしょう。次の指導要領改訂のときに,いきなりやろうとしてもできませんから,つまり全体像としては,テストをおつくりいただく認定の中身に教員がいかに活用できるか,関わるかというような仕組みを組み込んでいったらいいのではないか。ちょっと長くなりましたけれども,検討してください。

【柴山委員】今の長塚委員の御発言は私もそのとおりだと思います。1つのことを多目的にやっていかないといけないというふうに思います。
  それで,資料7の部分ですけれども,英語4技能の将来的な展開といいますか,可能性を視野に入れたこのたたき台というのは,無理のない,漏れのない,整合性のとれた,当然まだ議論していかないといけないと思いますが,いわば第三者評価的な目で見ると,非常にその関係性を整理してくださているなという感想をもっています。
  その中に測定しようとする力とか学習指導要領というのがキーワードとして入っているわけです。そのことについては,その後ろについている出題範囲等についてのイメージ図,今度は自分が測定ツールを開発する側になったときの視点から申し上げていますが,これは学校教育法の中に思考力,判断力というように言葉としてもう明示されています。言葉として明示されているだけに,逆に学力観に混乱があるのではないかと考えています。どういうことかと言いますと,我々は明治以来ずっと教科教育の中で思考力,判断力と言われているものを実は鍛えられてきたわけです。ところが,法律の中に言葉として書き込まれたものですから,あたかも思考力それのみが取り出せて,あるいは判断力がそれだけを取り出せるというイメージがちょっと先行し過ぎているのかなというふうに思うのです。これは教育心理学とか学習心理学の方ではずっと昔から議論があるのですが,そういった力を文脈依存で身に付けるのか,あるいはそれだけ抽象的に論理力とかみたいなものを身に付けることができるのかという議論と,すごくレレバントなのですね。測定ツールを開発する立場に立ったときには,思考力だけをはかる問題というのはやはり無理だと思うのですね。それは知能検査になってしまいます。やはり明治以来ずっと先人たちが積み上げられてきた日本の教育文化の,これはよき伝統だと思いますので,その伝統の中でマッチした診断ツールというものをつくっていく方が,また,そういうふうなことを頭に置きながらこの制度設計を考えていった方がより高校の現場に使っていただける,高校生たちの役に立つような,そういう制度になってくるのかなと考えております。これもコメントです。

【藤森委員】英語の4技能という問題がありますけれども,これは国語についても同じ課題を抱えていると思うのですね。従前,特に高等学校の場合は先生方の一方的な講義に終始してしまうという形の授業形態がいろいろ批判されていることもありまして,もっと特に言葉を扱う国語の世界では,話す,聞く,書くについてもっともっと高校生が積極的に経験するような,そういう学びの場が確保されていくべきであるという考え方が基本的にあると思うのです。それに水を差すような形になってしまうことはまずいだろうと思います。ただ,難しいだろうなと思いますのは,となると国語でも英語のような4技能的な要素を入れて,そして,先生方に話す,聞く,書くとか,あるいは同じ読むにしてもいろいろ考えて,判断して,そして,自分で言葉にしたものをどういう視点,観点で見てあげることがその子の潜在的なこれまでに培われてきている基礎的な力というものを見てあげることになるのか。それについての言ってみればこちらからの提言のような,その要素が入り得るといいなと思うのですけれども,ただ,そうなると,私の中でも非常にこれは葛藤しているところなのですが,そういう方向を目指せば目指すほど学校裁量でお使いくださいといった場合に,そこまでいろんな形で積極的にこれにかかわって一体どういう見返りというか,見返りという言い方は非常にちょっと雑な言い方ですけれども,先生方自身にあるのかというそれについてのはっきりした成果についての自覚というか,それがどういうふうに担保されるのかという問題がたちふさがっているなということを思いつつ,ただ,心の中では,やはりある種のモチベーションとしてこういう基礎診断の中で,そういう形で子供の言葉の力というのを単にペーパーで,丸バツで漢字の数だけで見るだけではない基礎的な言葉の力というものをはからなければならない,そういう余地があるのだと,それへのこちらからの提言は欲しいなと思うのですよね。でないと,民間のこれまでやってきたものとどこが違うのというふうになる可能性があるのではないのかなと懸念しております。

【柴山委員】すみません,委員の御発言ごとに何かそれにかぶせるような発言をしてしまって。今,アセスメントの開発の状況がどうなっているかといいますと,いわゆるAIとかが進んで,何年先かどうかわからないのですけれども,インタラクティブなシミュレーション型あるいはゲームベースアセスメントというふうにいわれているアセスメントツールというものは,必ず開発されてくると思います。そのときに,今,藤森委員のおっしゃったようなこともそのアセスメントの中である程度は実現可能になっていくとは思います。ただ,現在我々の持っているアセスメント技術,たとえ紙のものをそのままCBTに乗せたとしても,そこまではまだまだ到達していないという段階であります。それにもかかわらず,教育がそのように変わるのだよということがメッセージとしてもう現場には届いていますから,はやくも現場は変わってきています。その少し先をはかれるような,現在の技術水準でも十分はかれるような,そういうふうな出題ということも工夫されながら,更に5年か10年かそれはわからないですけれども,将来の技術の発展も生かせるような,そういうフレキシブルな制度というふうにしておかれると,いいのかなというふうに思います。

【荒瀬主査】今いろいろと御意見,御指摘をいただいたわけでございますけれども,我々はこれまで議論しながら,当然のことながら「高校生のための学びの基礎診断」が,これが学習指導要領の全てであるという認識はもちろんないわけでありますので,かつまた,これさえしていれば高校生が生き生きと光り輝く毎日を送るというふうにも思っているわけではないわけですよね。このデータを一つのデータとして,これももとにして具体的に高等学校がそれぞれ生徒の現状をしっかりと見て,どういう目標設定をして,それに取り組んでいくかということを考えてくださることを促していく。もちろんその際に高校生自身がこの学びの基礎診断を経験することによって,自分自身に対するこれからを考えるようなもとになるとか,あるいは自信につながっていくとか,そういったことになればいいということを考えていますので,飽くまでも今のお話はそういったことを踏まえた上での御発言であるということを改めて確認させていただきたいと思います。
  カリキュラム・マネジメントというのは次期学習指導要領で非常に重要な柱としてみなされていますが,カリキュラム・マネジメントは,現行学習指導要領でも大いに意識すべき取組であるということを,これまでも何度も確認してきました。ですから,基礎診断さえやれば日本の高校教育が100%転換するのだというような,そういう話ではなくて,さっきもお話が出ましたけれども,是非各高等学校に趣旨がきちっとした形で伝わって,それぞれの生徒の現状をどう改善していけるのかを考えて活用していただく必要があるわけです。いかがでしょうか。他に何かございましたら。あるいは今までの話を聞きながら,事務局の方から何か。はい,どうぞ。

【事務局】様々な御意見をいただきまして,ありがとうございます。この資料7をつくっていくとなりますと非常にテクニカルなお話になってしまいますので,そういう観点と,一方で,高校でどう活用していくのかというところを併せて見ていかなくてはならないというところがございます。
  テクニカルな話で申し上げますと,これから測定ツールをいかに充実させていくかというところを目指していく,そういう仕組みとして構築していかなければいけないというところがございます。一方では,必要な測定ツールが実現していくとしても,いつ実現して,それがどういうふうな形で活用されるかというところも見ていかなくてはいけないというところとの両にらみがございます。そういうにらみの中で,スタートの段階で設定する基準として,どこまでの要素は,これは必須となるのか,それとも,こういう要素が必要という目指す姿がある中で,これから伸びてきたものそのときに拾っていくのか,というところもあるかというふうに考えてございまして,まず,そういう点をまた次回以降,具体的な論点としてまた御議論いただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

【藤森委員】漠然とした言い方で申し訳ないのですが,資料7の評価の考え方についての部分で個人的な意見なのですけれども,スコアで出てくると,恐らく劣等感を抱かせるような懸念があると思うのです。これは漠然とした言い方しかできないのですが,基本的に受けたその子たちの励みになるような,つまり肯定的な,ここが駄目だ,そこが駄目じゃなくて,あなたはここに潜在的なよさがあるとか,ここがもっともっと伸び得るとかいうふうな希望を持たせるような評価の在り方は,これは私自身がこれまで見てきた高校生たちを見ていると,どんな子でもやはりいい人間になりたい,伸びたいと思っていますので,そこでその気持ちを後押ししてあげられるようなその形というものを考えられたらいいなと思いました。

【荒瀬主査】それは先生,例えば診断の結果を見て,生徒自身がそれを自分で読み取るというのももちろんあるでしょうけれども,それをもとにして,例えば教科担当の先生だとか担任の先生とかと話し合って,本当にフェース・ツー・フェースで,言葉がけによって生徒を元気づけてあげるというふうな,そういったことも含めてのお話と承ったのですが,それでよろしいでしょうか。

【藤森委員】はい,おっしゃるとおりです。ピグマリオン効果という言葉がありますけれども,やはりこいつは駄目だというふうに思ったところが基礎診断をやってみたら,何だ,こんな潜在能力があるらしいというふうな,その気づきがその先生のその子に対する見方が変わって,その子自身が実際にそれで成長していく,そういう姿があると思うのですよ。

【荒瀬主査】そうなってくると,当然のことながらこの基礎診断は,これまでも我々の会議の中では出ていましたけれども,生徒に対しての質問紙調査といったようなことも重要になります。それで生徒がどんなことを考えているのかとか,毎日の生活をどう振り返っているのかとか,そういったことも含めて検討していく必要があるなと思います。

【柴山委員】今の御発言なのですけれども,ずっと昔に東京の杉並区で,小学校1年生から中学校3年生までの語彙理解力の追跡調査をした経験がございます。それを小学校1年生から中学校3年生まで連続の一つのいわゆる到達度尺度ですね,それに乗せてそのデータを分析していきました。その分析を私が担当したのですけれども,どういうことがわかったかというと,全員子供たちは小学校1年生から中学校3年生まで伸びていきます。学年ごとに輪切りにしてみると,学年集団の中でずっと下の方であっても,でも,ある子だけをずっと時系列で追っていくと,どの子もちゃんと成長しています。やはり人間は必ず成長するものだというふうに思いました。なぜそのような話をしたかといいますと,これが先ほど前川委員がおっしゃった,いつでもどこでも何回でもはかれるといいますか,診断を受けて,それが例えばこの時点で受けて,次の時点で受けると,前の時点よりは伸びているというのが数値で示されれば,少なくとも伸びているという実感が得られる可能性が出てくると思うのです。そのためにも,一つの到達度尺度をきちっとつくっておくというのが基本だろうなというふう考えております。

【長塚委員】到達度をはかるということが最初にあったにしては,到達度という言葉がだんだん薄れたというか,何か技術的に難しいというようなことがあったのか,消えていってしまったような気がしているのですけれども,そこはやはり押さえなきゃいけない。今,柴山先生がおっしゃるように,長い目で変化していくことをはかれるようなことはあるのだということも今,勇気づけられましたので,ここは忘れないで,あと,前川先生がおっしゃったことですが,技術的にテストの会社によって違わない共通の物差しを組み込むことができるようなこと,それはもう欠かせない話だなということを改めて本日御意見を聞いて思ったのですけど。
  また,先ほどお話があった質問紙調査,これは非常に重要だと私も思います。全国学調の話ばかりして恐縮ですが,あちらはそれが非常に重要な意味を持っていて,生徒を勇気づけるためにも,これがないと駄目だと思います。外国の学校ケースで恐縮ですけれども,生徒が一生懸命手を挙げるけれども,それは「先生,僕はわからない。」ということを主張するために堂々と手を挙げるのだと言うのです。でも,日本の生徒はそういうことを余りしない。わからないことについて自分が学びたい,知りたいというような,そういうことを主張することができるようになることは大事なことで,質問紙調査とはいっても,生徒の意欲を引き出すような,わからないけれども,もっと知りたいとか面白がっているとかを褒めるような,そういうことも含めて生徒の気持ちを引き出すようなコメントに繋げたいですね。君はまだ知識の面では劣っているけれども,足りないけれども,非常に学ぶ意欲があってすばらしいとかいうようなコメントを返してあげるような,そういう診断結果を出してあげる必要があるんじゃないかなと思います。特に高校生は,中学までの学調の集団とは違って,輪切りでいわば学校を選ばざるを得ないような状況にあるわけです。高校生の多様化と言うけれども,高等学校ごとに生徒の学びの段階が異なってしまっている,学んだ習得の度合いが異なるという現実があるわけですので,それに輪をかけて,やはり駄目だなんていう思いに打ちひしがれないような,特に基礎診断を必要だなと思っている学校や生徒たちが勇気づけられるような結果が返されるような,モチベーションが上がるような,そういう仕組みを是非お願いしたい。単なるテストの点数の結果が返されるのでは全く従来のものと変わらないのではないかなという思いがいたします。到達度はしっかりはかりながらも,モチベーションを上げていく,非常に難しいですけれども,ここが大事じゃないかなと思います。

【前川委員】今のお話と関係するのですけれども,何か共通の尺度ができたとして,点数が持つ意味というのがあるべきなのですね。それで,英語の民間の試験というのは,いろんな歴史的経緯はあると思いますけれども,今のところはCEFRというヨーロッパ共通の段階に各点数を対応づけるということで一応比較可能になっているというところがあります,一例ということなのですが。それで,この試験は,学びの基礎診断はそのセファールに対応するものがないわけですよね。ですから,新しい指導要領というのは何ができるかという観点で物事を見ていこうということですから,この点数ならこれができる,この点数ならこれができるみたいなことを民間の会社が独自に対応していくような何か物差しができると非常にいいのではないかなという気がしています。それを本来だったらつくるべきなんじゃないかなという気がするのですが,ちょっとこの委員会をつくるというわけにもいかないですけれども,何かそういうのがあれば,点数の意味づけができるのかなという気がしています。以上です。

【宮本委員】やはりこの診断のポイントは,結果をどう次の指導に役立てていくかということなので,それであれば,教員の指導力の向上あるいは学校としての取組ということがすごく大事になってくるわけです。そういう意味では,個々の学校や個々の教員の努力というところだけではなかなか難しいと思います。特に公立学校の場合は,やはり設置者である教育委員会をどう絡めていくのかというところもやはり大きなポイントなのかもしれません。例えば研修の中でこの診断を活用した形で,学力向上にどう活用していくかというのは,検証を行っていくとか,あるいは都道府県のそれぞれが独自の学力向上施策を持って動いているところもたくさんあるわけですから,そういう中にこの診断をどう取り込んでいってもらえるのかとか,そういうようなところも含めて考えていく。できればそれをこの学びの基礎診断を使った学力向上施策あるいは学校の学びの基礎診断を通した教員のいわゆる指導力の向上というところにつながるような,そういうようなものにしていってもらうような働きかけを行っていくということもすごく大事ではないかと思います。

【長塚委員】その点で念のためなのですけれども,この資料3の青囲みのところの実施方法に係る基準・条件等の2ポツ目に「学校に過度な負荷がかからず」とある。この言葉があるので,先ほどから気にはなっていたのですが,確かに余り負担がかかるようなものだったら,もうやらないということになるかもしれないですけれども,負担はかかるということよりも,いわゆる教員にとっての,学校にとってのいわば指導力の向上に期すというようなことがむしろ必要なのであって,それには負担という面もある意味では裏腹かもしれませんが,あるのだろうと思うのですね。負担はあるけれども,実は指導力の方にも貢献してくれるテストであるよというふうなことが必要なのではないかなと思います。最近は教員がいろいろ大変だとかということで,単純に労力を減らすばかりのことを言われていますけれども,やはり教員にとってもこれは必要性を感じるようなテストであるということが一つのポイントにもなっていくのではないかなというふうに思います。

【事務局】おっしゃるとおりでございまして,ここでは,取組自体に負担がかかるかどうかという観点というよりは,学校で実施する以上,これまで試行調査を実施する中でも,CBTでやるとか,実施するのに非常に準備,手間がかかるとか,それに対してどれだけ活用のメリットがあるかというところもありましたので,やり方によっては非常に実施する側,学校にとって非常に負担がかかるようなやり方がないわけではありませんので,そういったものではないやり方ということをここでは挙げさせてもらったところでございます。

【荒瀬主査】表現もポジティブにお願いをしたいと思います。教育改革であるということは,すなわちこれを1つの軸として考えていきましょうということですよね。ですから,そこのところの共通理解で進めていきたいと思います。

【事務局】また次回も御議論をお願いしたいと考えてございます。実施方針の中でも書かせていただいているのですが,一つの測定ツールがカバーできる機能といいますか,役割という意味ではおのずから限界があるだろうというところもございまして,多様な測定ツールが開発,提供されることというのは,正に1つではカバーし切れない機能についても,多様なものがある中で選択して活用できる,そういう形がこの仕組みの設計でできないかというところでございました。先生方からいろいろこういった機能が活用できればということをいただいているものが一つの測定ツールに吸収し切れるのか,それともいろいろなものがある中で,うまく組み合わせていきながらという形なのか,そういったところも含めてまた検討するに当たって資料を作成していきたいと思います。

【荒瀬主査】予定していた時間がまいりました。「高校生のための学びの基礎診断」,(仮称)というのがもうとれているというのと,それから,実施方針案でありますけれども,これはもう既に議論をしてきた検討素案に基づいているということで,これももう御発表いただくときはもちろん文科省として発表されますので,我々の手から離れていきますが,間もなくこれが公表されるということですので,一層具体的に各学校が「高校生のための」というのが,これこそまさしく一番のポイントでありますから,そこのところが生きるような形でいろいろと御理解いただいて進めていただけるように,更によいものにしてまいりたいと思います。
  では,本日の議論はこれまでにしたいと思います。最後に事務局,次回の日程についてお願いします。

【事務局】次回につきましては,8月上旬ということを考えてございまして,先生方には日程の調整の方をさせていただいているところでございます。確定いたしましたら,また正式に御連絡させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

-了-

 

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