高校生等への修学支援に関する協力者会議(第7回) 議事録

1.日時

平成29年12月11日(月曜日)10時45分から12時45分

2.場所

文部科学省 16F1会議室

3.議題

  1. 前回の指摘事項について
  2. 委託事業「高校生等への修学支援に関する調査研究事業」中間報告
  3. これまで出てきた論点の整理
  4. その他

4.出席者

委員

大橋弘委員,小河光治委員,小川正人委員,小林雅之委員,柴田悠委員,末冨芳委員,濱中淳子委員(敬称略・五十音順)

文部科学省

髙橋道和初等中等教育局長,下間康行大臣官房審議官,伊藤学司財務課長,塩田剛志高校修学支援室長

5.議事録

【小川座長】  定刻になりましたので、始めさせていただきたいと思います。
 今日で第7回目になりますけれども、高校生等への修学支援に関する協力者会議を始めたいと思います。
 毎度のことですが、御多忙の中、御出席いただきまして、ありがとうございます。
 本日は、委託事業の中間報告を予定しております関係で、大正大学の日下田先生にも御出席いただいております。何か一言、どうぞ。
【日下田助教】  大正大学の日下田と申します。どうぞよろしくお願いします。
【小川座長】  よろしくお願いいたします。後ほど、岩田先生と御一緒に御報告いただく予定になっております。
 また、柴田先生には、本日もWebにて御参加いただいております。よろしくお願いいたします。
【柴田委員】  よろしくお願いいたします。
【小川座長】  それでは、最初に配付資料の確認を、事務局からお願いします。
【塩田室長】  配付資料でございます。
 まず、資料1と、資料2が丸1、丸2と分かれてございます。あとは、資料3。更には、参考資料が1、2、3と用意してございます。机上配付資料として、2点ございます。不備ございましたら、事務局までよろしくお願いいたします。
【小川座長】  よろしいでしょうか。
 それでは、早速議事に入っていきたいと思います。最初の議事は、前回の指摘事項について、塩田室長からよろしくお願いいたします。
【塩田室長】  それでは、前回の指摘事項等を踏まえた資料を御説明させていただきます。まずお手元資料1を御覧いただければと思います。
 資料1で、前回、都道府県別の独自の事業費をお出ししたところ、私学助成全体の数字があった方がいいのではないかという御指摘を頂きました。数字自体はまだ精査できていないのですけれども、まず、そもそも私立高校に対する助成がどうなっているかを、簡単に御説明したのが、1枚目でございます。
 御存じのように、私立高校は、所轄庁が都道府県でございますので、都道府県が助成を実施するのが基本でございます。そのために、国は、経常費助成費補助金を出している、また地方交付税を出していることになってございます。
 経常費助成費補助金につきましては、都道府県が実施した私学助成の一部を補助する、更には、定員内実員数に応じて配分する一般補助と、特別補助の2種類あるということでございます。
 一般補助、特別補助、次のページにもう少し詳しく書いてございます。次のページ、最初の丸が一般補助で、これは先ほど申し上げたとおりです。2つ目の特別補助については、青い2つ目でございます、丸1で、ICTを活用した教育の推進と外部人材の活用といったことに応じて配付する分ですとか、子育て支援で行うものについて配付する分について特別補助がなされてございます。
 また、机上配付資料で、「平成28年度都道府県別の私学助成一般補助」という1枚紙がございまして、これが一般補助についての金額でございます。左側の数字は、事業に要する経費で、合計は3,500億ぐらいで、そのうち国庫補助金が500億ぐらいといった内訳になってございます。生徒1人当たり単価に直しますと、右側となってございます。この辺の数字は、もう少し私どもで調査して、また改めて出し直しをしたいと思ってございます。
 また資料1に戻っていただきまして、資料1の5ページでございます。まず所得の低い世帯ほど大学の進学率が低いといったデータがあるということでございます。更には、学歴別の生涯賃金で、大学・大学院を出た方と高校卒の方では、生涯賃金で7,500万ぐらいの差があるといったデータがございます。
 次の6ページ、7ページ以降は、それに関連いたしますけれども、所得階層別の学習費総額の推移でございまして、7ページは総額でございます。公立、私立、全体的に私立の方が高いのですけれども、いずれにせよ所得が高い階層ほど教育費に関する支出が多いことが見てとれるかと思います。
 あとは同じようなデータがずっと並んでおりますので、割愛いたしまして、11ページ、12ページを御覧いただければと思います。こちらについては、以前この会議で、厚労省が生活保護世帯の調査をするが、どういった調査か御存じですかという御質問があったかと思います。それについての御紹介でございます。
 また、「調査の趣旨」で、生活保護世帯の子供の大学等への進学を含めた自立支援を検討する上で必要な基礎資料を得る。そのために、調査対象ということで、世帯分離を行っている者を対象といたしまして、丸1、丸2、丸3といった調査を、現在されてございます。まだ結果は取りまとまっていないということだそうですので、取りまとまり次第、こちらの会議でも御紹介したいと思ってございます。
 続きまして、参考資料2を見ていただければと思うのですけれども、参考資料2は、先週の金曜日に閣議決定をされました、政策パッケージの該当部分の抜粋でございます。
 最初は、総論的な考え方を書いてございまして、4ポツ「私立高等学校の授業料の実質無償化」でございます。これにつきましては、公明党が年収590万未満世帯について公約を掲げられておりましたけれども、それをなぞるような内容になってございます。590万未満世帯を対象とした授業料の実質無償化(就学支援金の拡充)については、消費税使途変更による現行制度・予算の見直しにより活用が可能となる財源をまず確保する。
 それで、その括弧書きの部分が、机上配付で、この若干色が付いた1枚紙です。この括弧書きに丸1、丸2、丸3と書いているのは、この赤い部分でございます。この赤い部分についての財源を確保することが、まずうたわれてございます。
 次に、閣議部分決定については、後段の「その上で」となっているのが、この緑の部分でございまして、消費税使途変更後の2020年度までに、政府全体として安定的な財源を確保しつつ、年収590万未満世帯を対象とした私立高校の授業料の実質無償化を実現するとなっておりまして、この緑色の部分についても、政府全体として、予算を引き続き確保して、2020年までに実現するのだということが閣議決定されたということでございます。
 これにつきましては、まだ金曜日に閣議決定されたばかりですので、ここの協力者会議で、来週に中間報告的な案を御審議いただくことを予定しておりますが、その中に何らかの形で書き込んでいきたいと考えてございますので、それはまた次回御確認いただければと考えてございます。
 続きましては、参考資料2の次のページに、これは参考までに、高等教育関係部分についてもお付けしてございます。
 3ポツ「高等教育の無償化」でございます。基本的考え方のところで、第3段落目辺りを御覧いただければと思うのですけれども、最終学歴によって平均賃金に差があることは厳然たる事実である、また貧しい家庭の子供たちほど大学への進学率が低い、これもまた事実と。貧困連鎖を断ち切り、格差の固定化を防ぐため、どんな貧しい家庭に育っても、意欲さえあれば、専修学校、大学に進学できる社会へと改革するということで、こういった問題意識が示されている。
 具体的内容といたしましては、「第一に」と書いてございます、授業料の減免措置で、住民税非課税世帯の子供たちに対しては、国立大学の場合は、その授業料を免除する。また私立大学の場合は、国立大学の授業料に加えて、私立大学の平均授業料の水準を勘案した一定額を加算した額までの対応を図る。1年生は、入学金についても免除する。
 第2に、給付型奨学金については、学生が学業に専念できるようにするため、学生生活を送るのに必要な生活費を賄えるような措置を講じるという規定になっています。
 第3段落では、支援の崖・谷間が生じないよう、住民税・非課税の子供たちに対する支援措置に準じた支援を段階的に行い、給付額の段差をなだらかにするといった規定が、高等教育部分になっておりまして、実施時期につきましては、3ページに書いてございます。「実施時期」、2020年4月から実施するのだと。上記で具体的に定まっていない詳細部分については、検討を継続し、来年夏までに一定の結論を得るという記載ぶりになってございます。
 あと、続きまして、最後に、参考資料3を御覧いただければと思います。これは、前回も御説明いたしましたけれども、就学支援金に関する施行令の一部改正があったということでございます。
 これは、技術的な改正でございまして、御存じのように、現在市町村民税の取得割額を用いて所得の判定をしているのですが、2ポツにございますように、来年から、政令指定都市ですと、政令市に限っては、市町村民税8パーセント、道府県民税が2パーセントで、その割合が変わります。よって、従来どおりの市町村民税の所得割で見ようとすると、政令市だけ違ってくる事態が発生してしまうので、この3ポツ「対応」に書いてございますように、道府県民税と市町村民税を足した10パーセント、これを基準として今後見ていく形にするという政令改正をしておりますので、御紹介させていただきます。
 説明は、以上でございます。
【小川座長】  ありがとうございました。
 もう1つ、続いて、この協力者会議のテーマに関わることですので、小河委員から、あすのば活動に関する御報告があるということです。これは、参考資料1でよろしいでしょうか。よろしくお願いします。
【小河委員】  ありがとうございます。お時間を頂き、重ね重ね御礼を申し上げます。
 私どもの団体、末冨先生にも理事をしていただいておりますが、今月3日に全国集会を開かせていただきました。
 その場で、私ども理事評議員のみならず、アドバイザーの方、全国各地で子供の貧困に関わってらっしゃる、先駆的な活動をしてらっしゃる、あるいは研究者の方々にも入っていただいているのですが、そういう方々の御意見、私どもの理事の半分が学生なので、学生らも含めた意見も取りまとめまして、今お手元にあります参考資料1でございますが、緊急5大提言と、それ以外の項目についてもいろいろな分野にわたって提言を取りまとめさせていただきました。また、学生も、学生たちの思いということで付けさせていただいています。
 それで、今回この会議に関連する分野で申しますと、緊急提言の2番目、まさに今御報告がありましたけれども、私立高校の授業料の無償化、これは各都道府県格差があるので、全国一律に改めてほしい。これは、もう既に今の御報告のとおりで、かなり前向きに御検討いただいていることを喜んでおります。
 あと、奨学給付金に関しましても、これはもう既に議論を、皆さんしていただいているとおりですが、第一子と第二子の格差をなくしてほしい。
 それから、入学のときにも、更に住民税非課税世帯、費用が掛かる、支援がないということですので、山梨県が5万円の支援制度を作っていることに準じて、こういう制度を申請してほしいことを要望させていただいております。
 ちなみに、その後ろに「あすのば新聞」というものがあります。うちのニュースレターですが、当日は、ちょうどこの新聞の2ページを見ていただくと、本当に各党お忙しいのですけれども、自民党、今総理補佐官をされていらっしゃる薗浦健太郎議員をはじめ、与野党超党派で先生方お集まりいただきました。薗浦先生もはじめ、そもそも子供の貧困対策法を制定するときに、各党の代表として走り回っていただいた先生方を中心にして御臨席いただき、また総理から、あるいは子供の貧困対策議連の会長である田村先生、厚労副大臣の牧原先生からも祝電メッセージなどを頂いております。
 この中で、今回田村先生御臨席いただけなかったのですが、議連の幹事長を希望の党の長島先生がされてらっしゃるのですけれども、長島先生は、この5項目について議連の中で是非議論をしたいというお話を頂きました。早速議連でも、まだ日時決まっていないのですが、この提案につい議連の総会で議論をしていただくというお話を頂いております。
 以上でございます。ありがとうございます。
【小川座長】  ありがとうございます。
 それでは、事務局からの説明と、今の小河委員からの参考資料1に基づく説明に関わって、皆様から何か御質問とか確認する点があれば、お願いいたします。
 議論については、最後にまた一括して時間を取りたいと思いますので、ここではできれば確認事項とか質問事項に限っていただければと思います。何かございますか。
 それでは、末冨委員、どうぞ。
【末冨委員】  日本大学の末冨です。
 こちらの机上配付資料です。私も、12月8日の政策、新しい経済社会パッケージを見て分からなかったのですが、まず急ぎ確保される部分が、赤いラインの、現行制度予算の見直しとなっているのですけれども、この部分は、まさかとは思いますが、今子供に関わっている予算の組替えということではないだろうかと心配しておりますので、この点について、今御存じのことをお教えいただければと思います。
【小川座長】  塩田室長、よろしいですか。
【塩田室長】  そこは、大丈夫なようになっておりまして。
 閣議決定分を見ていただけると、参考資料2、4ポツの2行目で「消費税使途変更による、現行制度・予算の見直しにより活用が可能となる財源をまず確保する」となっている。
 すごくこれは分かりにくいので、何を言っているのかということだと思うのですけれども、これは、現行の一般予算を使って今やっている事業がございまして、その事業が消費税財源で置き替わることが予定されております。そうすると、消費税財源が置き替わるので、一般予算を使っていた分が浮くわけなのですね。その浮いたお金を使ってここをやろうというのが、最初の書いているところでございますので、御懸念は多分大丈夫だと思います。
【末冨委員】  ありがとうございます。
【小川座長】  ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。小林委員、どうぞ。
【小林委員】  今の御説明について確認ですけれども、確かに2兆円分についてはそう聞いていますが、私立高校の、例の補助については、別となっていたと思うのですけれども。
 それは、ですから、消費税とかとは、企業等からの3,000億ではなくてという話だと思うのですが。政府内のほかの予算を使うと聞いているのですが、間違いないですか。
【塩田室長】  就学支援金については、もう消費税財源は入れないという方向になっておりまして、この赤字分については、先ほど申し上げましたように、別のところが、消費税に置き替わる部分を使って、まず赤を埋めるということです。この緑の部分は、今後引き続き政府全体で、やっていきましょうということが書かれてございます。
【小川座長】  よろしいですか。
【小林委員】  はい。
【小川座長】  ほかに、よろしいでしょうか。
 柴田委員、よろしいですか。
【柴田委員】  大丈夫です。ありがとうございます。
【小川座長】  では、なければ、議題1については、これで終わらせていただきたいと思います。
 それでは、次の議題2、委託事業に関する中間報告に入っていきたいと思います。
 委託事業については、本当に短時間な中、委託者の先生方に大変御尽力いただきまして、中間報告をまとめていただくことになりました。今日は、岩田先生、日下田先生から、御説明お願いできればと思います。よろしくお願いいたします。
【岩田教授】  それでは、私と日下田と2人で、委託事業の、今までに明らかになった範囲での成果を、御報告させていただきたいと思います。
 今回の委託事業、大きく分けて2本立てになっておりまして、1本が全国の高校調査。これについては、私が最初に御報告申し上げます。もう1つは、保護者に対しますWeb調査でございます。こちらは、日下田先生と国立政策研究所の濱中先生の2人が中心になって、随分苦労していただきまして、何とか間に合ったみたいですので、その報告を次にさせていただきたいと思います。
 では、まず配付資料の順番どおりに、まず丸1で、私から報告したいと思います。高校アンケート調査概要、「暫定版」と書いてありますのは、後での説明でお分かりいただけるかと思います。
 まず1番目、表1が、どのような学校からどれぐらいのサンプルが集まったのかの概要を示したものでございます。12月2日回収分までのもので、今とりあえずの集計になっております。ただ、せっかく送って、苦労して時間を掛けて送ってきていただいたのを、後で遅れてきたからと捨てるのも非常に忍びないものでございますから、今上がった分に加えて、12月10日までは一応待ちまして、最終的にはそれを加える予定でおります。現段階で遅れてきたものの数から見ますと、あともう十数件増えるだろうと思っております。
 2番目といたしまして、特別支援学校へもアンケートが配布されたのでございますけれども、ここには就学奨励費という国の補助がなされていて、普通の高校で支給されている修学支援金制度の対象外となっていると伺いました。それでももらっている生徒がいるのは確認できたのですが、前者の支給対象の生徒が多いといたしますと、解析結果がゆがむ可能性がありますので、問合せで私のところに来たのに関しましては、事情を斟酌して、アンケートにはお答えいただかなくて結構ですと回答しております。この学校種からは2件ばかり回答が寄せられておりますけれども、これらは除外させていただきたいと思います。
 それと、3番目に、高専には一応配布いたしております。。また、高等専修学校には配らない予定だったのですけれども、教育委員会が配った県がありまして、それについても一応サンプルといたしましては、全部で10校くらいしかありませんが、一応確保できたということでございます。
 高校数は、課程別に見ますと5,500くらいあるかと思いますので、高校に関しましては、回収率は大体6割を、一応何とか確保することができました。
 4番目、これは半分以上言い訳になって大変恐縮でございますが、数値の直接入力をお願いした記入があります。想定外の回答がいっぱいありまして、数値しか入れて欲しくないところに文字で注釈を付けてくださるところが相当の数にのぼりました。今データクリーニングを進めている最中でございますけれども、余りにも膨大で、今回間に合わなかった関係で、プルダウン方式で、これはもうチェックしましたが、間違いありませんので、そちらの回答項目に限って、今回の中間報告では報告させていただくことをお許しいただけたらと思います。
 分析時間の関係で、今回は高等学校について、それもクロス表までなかなか時間が取れませんでしたので、単純集計結果の報告にとどめさせていただくこと、これもお許しください。
 以下、幾つか図表が出てきますけれども、図4を除きまして、全て無回答を除いた数字になっております。
 それでは、早速解析結果の報告に移らせていただきたいと思います。
 図1は、各高校がどういう方法で、就学支援金や奨学給付金を、生徒及び保護者に案内して、周知徹底を図っているのかをまとめたグラフでございます。左右で就学支援金や奨学給付金につきまして同じ項目が並ぶ配置になっております。その関係で、図の数字が細かくなり過ぎましたことをお許しいただければと思います。
 主だった知見は、次のページに文章の形で幾つかまとめてあります。
 まず、就学支援金につきましては、ほとんど全ての高校が、全生徒に文書で配布・案内する形で周知している。特に国公立高校では、入学前に書類を配布して案内している学校も9割を超えております。ただし、私立は、このような形での周知は少ないという結果が出ております。
 しかし、私立の場合は、入学前に書類を配布するのではなくて、ホームページを使ってそちらを見てくださいという感じの周知をしている学校が多いことも分かりました。これらの周知方法にどのような関係がみられるのかについてのクロスは、今後出す予定です。
 それから、私立高校では、学校で独自の説明資料を配布、作成して案内している学校が、国公立高校の約1.8倍に上ります。そういう工夫をなさっているところは、私学に結構多いということでございます。
 3番目に移ります。奨学給付金についての周知は、今回質問に取り上げた、図の中に示されている手段に限っての話になりますけれども、いずれも就学支援金よりも圧倒的に周知の仕方が徹底していない様子が窺われます。
 特に「受給資格者のみに案内配付している」、それから、「全生徒に案内を文書で配布・案内している」、要するに、何らかの形で、対象者全員に文書の形での案内をしているところは、6割にとどまります。こういう文書によらない方法によって周知している高校が、どういう手段で周知を図っているのかは、もうちょっと緻密に分析を進めていきたいと思います。今わかっているのは、この段階でございます。
 引き続き、4ページに移りたいと思います。次は、申込書類、例えば、それは辞退申出書を含む書類になりますけれども、それらを出さなかった生徒を、学校側がどれぐらい掌握しよう、と言うか、出させるように努力しているのかをまとめた図でございます。
 それが左側の図になりますが、左側の図を見ていただきますと、就学支援金につきましては、辞退申込書を含む申込書類を出さなかった生徒に対しては、国公立、私立高校ともに、5割を超える、約55パーセントの学校が、ほとんど全員分がそろうまで、相当の努力をなさっている。
 ただ、これについては後で、事務負担の問題と絡めまして、もう一度立ち返りたいと思います。
 ただし、国公立大学では、ほとんど全校が大なり小なりの督促を行っている実態が浮かび上がってきましたけれども、それに対しまして、私立高校では、全く督促を行っていないと答えた学校が、約1割存在いたします。これがどういう高校かは、調べてみないと分からないのですが、前の協力者会議で、奨学給付金の受給資格者の補足、私立高校で随分低いという報告がありましたけれども、そういう不熱心さに欠けるところがあるとしたら、それも影響しているのではないかとの予想も可能です。
 実は、その点に関しまして、インタビュー調査である私立高校へ行きましたら、うちは熱心にやっていますが、私学によっては随分温度差があって、熱心さにかけるところもあると聞いております。そのような意見は自分のところを良く言うために言っている可能性もありますから、何とも言えませんけれども、もうちょっと解析して、そこら辺は明らかにしていきたいと思います。
 それから、奨学給付金についての督促は、就学支援金より幾分落ちます。これは、恐らく在地主義でやっていることが影響している可能性もあるかとは思いますが、一応事実としてはそういうことになっております。
 それで、これも私学の方で、補足者、補足率が低いということに関しまして、私立高校の補足への熱意は、国公立高校に比べて、わずかとは言え劣るところが、補足に影響している可能性があるのではないかというのが、今段階の仮説でございます。
 右側は、どういう人たちが中心になって督促を行っているかという図でございます。ほとんどが事務職員で、教員が加わることも多少ある形で行っているという傾向が出ております。これも、後でまたちょっとだけ触れます。
 続きまして、5ページ目に移りたいと思います。次は、奨学給付金につきまして、その対象者をどれぐらい把握しているかを聞きました。奨学給付金の支給対象者については、これは、県外出身者が多分私学の方で多いということもあるかと思いますので、私立高校における補足率が悪いという傾向が出ております。その補足率の悪さというのが、多分これも私立高校における奨学給付金受給者の少なさに影響を及ぼしている可能性が高いのではないかと考えます。
 これは注意点になるのですが、受給者数を把握していないと答えた高校の中には、県教委レベルで把握しているけれども、その情報を高校にどうも下ろしてないという県があるみたいです。というのは、これは高校からの問合せで分かったことですが、県は把握しているはずだけど、うちは知らされていないので、どう答えたらいいかという質問が来ました。果たしてそれでいいのかどうかは、つまり高校レベルまで情報を開示する必要があるのかどうかということは、この委員会で御検討いただければと思います。私は、高校としてはその種の情報は持っておいた方がいいのではないかという気はしますけれども、プライバシーの問題もありますので、御判断はお任せいたします。
 在地主義によって、個人レベルの申請になるために、県外出身者についての給付状況を把握しない高校は、約3割に上りました。これは、最低でもという数字だと思ってください。実は回答していない高校のなかには、実際にはここに入ってくるところが結構あると予想しております。こういう状況を何とか改善していく必要があるのかどうかも、この委員会で検討していただければと思います。
 次に、6ページ目。これは、ひょっとしたら、この委員会ではそれほど関係ない話になるかもしれません。いつ就学支援金を生徒に還付しているのかを見てみました。そうすると、8割の高校が、高校に就学支援金が支払われてから生徒に還付しています。私学自体もいろいろな財政事情があって、先に払うのが、難しいのはよく分かりますけれども、生徒の立場からしたら、入学した時から少しでも楽にしてほしいということがあるのではないかという感想を持ちました。これも、どう解釈、解釈と言うか、どういう方向性がいいのかの、御判断はお任せいたします。
 次に、これが、多分本題になるかと思います。就学支援金と奨学給付金の効果についてです。
 まず全体を見ますと、就学支援金と奨学給付金では、この3ページを通しまして、同じ項目について、就学支援金の方が効果は大きいと感じている高校が非常に多いのが、第1点になります。あとは、奨学給付金の方で効果が少ないということを除けば、それほど傾向に変わりはございませんでした。
 まず、「生徒のアルバイトが減少」したかどうか。更に「高校卒業後の高等教育進学希望者が増加」したかどうか。これにつきましては分からないと答えた高校が、7~8割に達しました。特にアルバイトに関しましては、もともとアルバイトはうちの高校では禁止している、だから、今回この制度ができたから少なくなったかどうかは答えられないという問合せもありましたので、これは「分からない」に入っております。そういう事情もありまして、比較できないということでの「分からない」が、非常に多かったことになります。
 ただ、「分からない」を除いてみますと、効果ありと効果なしでは、以上の項目につきましては、効果なしの比率の方が多い傾向がみられます。
 それに対しまして、評価が高かったのが、「家計への負担軽減」でございます。これは奨学給付金、就学支援金とも約9割に達します。これは、我々が効果として質問した中では、最も高い項目になっております。
 また私立高校を中心として、「経済的理由による高校を中退・長期欠席者の予防・減少への効果」は、就学支援金と奨学給付金の両方に同じ質問として聞いた項目に限れば、全体でみると2番目に高い。ただし、共通項目としてではなく単独で聞いたものがありますので、それらを含めますと私立高校では3番目に高い。これは、前にここの協力者会議でも、全体で中退・長期が減っているというマクロデータが出たかと思いますけれども、それが高校の実感としても裏付けられていることになるかと思います。
 ただし、ある高校でのインタビューの結果、ちょうど景気がよくなったときに重なるので、ほんとうにそれが今回の経済支援の効果と一致するのかどうかは、ペンディングとして見ているという意見があったことだけ、一応付け加えておきます。
 引き続き、8ページに移りたいと思います。「低所得世帯の生徒の学校選択の幅の充実」は、全高校の中で3番目に評価されている項目でございます。これへの評価は、特に私立高校では、国公立高校の約2.5倍の、7割超が評価をしております。私立では、次のページに、「貴校志願者が増加しましたか」という項目があります。私学では、それが高くなったという高校が多いわけです。そのことを反映してと思われますけれども、私立高校で非常に高くなっておりまして、私立高校ではこれが2番目に高い効果として挙げている項目になっております。
 「生徒の学業に取り組む姿勢の改善」、「部活や課外活動の参加率の上昇」、「学習塾などの学校外教育の利用の上昇」・効果については、「分からない」とする高校が、約6~7割に達しました。こちらも、効果ありかなしかの2分法で見ますと、効果なしの方が多かったわけでございます。先ほどの、「生徒のアルバイトの減少」、「高校卒業後の高等教育進学希望者の増加」と、効果の評価では一括りにされるということでございます。
  次のページが、奨学給付金と就学支援金で共通していない項目、それぞれ別立てで聞いた項目でございます。奨学給付金に対します評価の中では、「学校への納付金の未納、滞納が減少」したというのが2番目に高い効果として、6割前後の高校から評価されております。特に、国公立高校での評価が高くなっております。これは、後に図10で見ますけれども、国公立高校は、滞納金の延滞問題、非常に悩んでいる様相が、後でも補足しますが、ここからも浮かび上がってきます。
 また、「修学旅行や学校行事への参加率の上昇」、それから、「生徒が新しい制服、通学カバン、更には学校用品をそろえられるようになった」効果というのが、4分の1から3分の1ぐらいの高校から評価されております。そういった効果があったとする学校は、国公立高校より私立高校で多い傾向が見られますけれども、逆に効果なしと答えている学校も、私立高校の方が多いわけでございます。私立高校の場合は、経済的に恵まれない家庭出身の生徒が比較的多い学校とそうでない学校の格差が、国公立高校より広いことを反映しているのではないかと、今のところは見ております。
 就学支援金への評価といたしましては、「貴校志願者の増加」効果があったとする私立高校が、4割を超えております。こういった面では、就学支援金には多大な私学助成効果を持っていることは明らかかと思います。
 2番目といたしまして、10ページの図7、をみていきたいと思います。修学支援制度へどういう意見を持っているか、どういう不満を持っているかという項目をまとめたものでございます。
 突出しておりますのは、「高校の事務負担が大きい」、「保護者や対象者に必要な情報が届いていない」、「保護者や対象者にとって制度が分かりにくい」といった修学支援制度への不満です。これらの不満は、いずれも私立高校より国公立高校で高くなっております。
 その中でも最大のものは、予想されましたとおり、「高校の事務負担が大きい」でございます。就学支援金に関しましては、国公立高校、私立高校ともに9割以上、奨学給付金に対しましても高校全体の4分の3以上の高校が、それに対する不満を述べております。
 同様に、「保護者や対象者にとって制度が分かりにくい」といった指摘も、高校全体の約7割に達しております。恐らくそれも一因となって、「保護者や対象者に必要な情報が届いていない」ことになるのでしょうけれども、そういった指摘も4割に達しております。半分以下にすぎないと見ることもできるかもしれませんけれども、これら3点は、大きな制度的課題になるのではないかと推測いたします。
 3番目といたしまして、就学支援金に対しましては、「所得制限によって、高所得家庭からの不満が寄せられた経験のある」高校が、国公立高校、私立高校ともに約2割存在しております。そのためもあってか、「低所得世帯の生徒への支援を拡充するより、まずは所得制限をなくして全生徒を対象にすべきだ」という意見に賛成する学校が、高校全体の約7割に達しました。ただし、この意見への「支持」は、国公立高校で、約8割に及びます。これに対しまして、私立高校では半分弱にしか過ぎません。ですから、低所得世帯の生徒への支援拡充を、私立高校では求める声が多いことになるかと思います。
 この傾向は、図6-2、図6-3で、修学支援金は、「低所得世帯の生徒の学校選択の幅の充実効果を持って」いて、それで「貴校志願者の増加」効果があったとの指摘が私立高校で多かったわけでございますけれども、そういう効果があったという声と、基本的にはつじつまは合っていると考えるわけでございます。要するに、私立高校では、低所得世帯の生徒を顧客にしている高校の多い可能性が、ここから示唆されるのではないかと思われます。
 ところが、ここでつじつまが合わないという言い方でもいいかと思うのですが、逆に奨学給付金について言いますと、就学支援金の場合とは逆に、「所得制限を緩やかにして、それで給付対象者を増やすべきだ」という意見への支持は、国公立高校、私立高校とも約4分の1にとどまるわけでございます。ほとんどが、それに反対だということでございます。その一方で、「給付額をもっと増やした方がいい」という意見への支持は、国公立高校では8割に達し、私立高校でも6割5分の支持を集めております。
 つまり、就学支援金の方は広く浅く、奨学給付金は狭く深くする方向での充実を希望する高校が多いことが窺われます。ただし、限られた財源の中で、どちらを優先した方がいいのかについては今回のアンケートでそれを総合した政策については聞いていませんので、高校が、どちらを実際にやってほしいのかということまでは、分かりません。
 それから、第1子、第2子問題です。第1子への支援を引き上げるべきだという意見については、多少反対が多い傾向は見られますが、ほぼ拮抗しております。だから、真っ二つに意見が分かれていると考えても差し支えないかと思います。
 次に、事務負担感の問題との関係で、ちょっとだけクロス集計を行ってみました。図8は、奨学給付金については、申込書類を出さなかった生徒へどれぐらい学校が督促を徹底しているか、その度合いと、それから、高校がどの程度事務負担感を感じているかということを見たものでございます。図8の右側の図については、ほとんど差が見られません。しかし、左側の就学支援金につきましては、徹底して督促を行っている高校ほど、高校の事務負担感が非常に大きい傾向が見られます。要するに、申込書類をなるべく出させるようにする努力は、高校の事務負担感を10パーセント程度上乗せしているとも言えるわけでございます。
 これもインタビューの話になりますけれども、ある大阪の高校は、生徒さんの中に住所を転々としている人がいて、どこに課税証明書書類を取りに行けばいいか分からなかったので、先生が一緒になって探しに探して、ついに高野山まで同道して取りに行ったというお話まで伺っております。
 このように非常に熱心な高校がありますが、熱心なことをやるほど負担が大きくなっていることが窺えるかと思います。ですから、政策としては、多分徹底した方がいいのでしょうけれども、それへの手当をしていかないと、まじめにやっている人たちに負担が集中するという気はしないではございません。
 つぎに図9です。就学支援金について、申込書類を出さなかった生徒への督促を誰が行っているのかと事務負担との関係を見てみました。そうすると、事務職員だけが行っている場合は、それを教員だけが担当している場合及び教員が補佐している場合に比べて、5パーセントから10パーセント、高校の事務負担感が多くなっております。これは、回答してきた人はほとんど事務の方が多いわけでございまして、自分の負担を考えるとそうなるということだと思います。ただし、教員が補佐している場合には、恐らくその事務の人の負担感が減っている分だけ、教員の負担感が増加しているのではないかと推測するわけでございます。
 最後は、これもここの委員会とは直接関係のない話かもしれませんが、一応御報告だけいたしておきます。図10は、奨学給付金の代理受給をどの程度の高校がしているかを見たものでございます。私立高校より国公立高校の間での浸透が進んでいることがお分かりいただけるかと思います。更に、今後の導入を検討している高校も、私立よりも国公立高校で圧倒的に多い傾向が見られます。
 先ほど申し上げましたように、これも高校からの問合せで、問合せと言うよりも半分愚痴というか意見として書いてくださった高校があったのです。この滞納問題は深刻で、非常に悩んでいますという声が、寄せられておりまして、ここからも、納付金の滞納に相当悩まされている高校が多いのだという実態が浮かび上がってくるかと思います。
 ただし、代理受給自体の実施率、およびその導入を検討している学校は少ないわけですけれども、納付金の滞納の有無にかかわらず実施している学校が、私立高校には非常に多い傾向も見られました。
 取り急ぎで、それも十分な解析ではありませんでしたが、高校調査については、これで報告を終えさせていただきたいと思います。
【小川座長】  はい。
 では、引き続きよろしいですか。
【日下田助教】  資料2の丸2を御覧ください。タイトルは「保護者調査の結果について(中間報告)」という資料です。
 この報告の目的は、こちらに書いてあるとおり結果を申し述べることです。インターネットで調査を行いましたので、幾つかデータの取得上の問題点が確認されています。そういった問題点について確認した上で、問題点を含んだ上での中間的な報告であるという前提でお聞きいただければと思います。
 まず1(1)で、目的を説明します。文部科学省のWebサイトを参考にしています。今回の就学支援金の新制度によって、第1に、私立高校生がいた世帯の教育費負担は減りましたか、第2に、新制度の導入により低所得世帯の教育費負担は減りましたか、主にこの2点を明らかにするために調査を設計いたしました。ちなみに新制度とか旧制度という言葉づかいは、文部科学省のWebサイトを参考にしております。
 ところが、今回のWeb調査は一時点の調査でございまして、具体的に何円教育費負担が減りましたかと、こういう金額を具体的に調査することは、現実的にできないわけでございます。追跡調査をしていないためです。ですので、今回のWeb調査は教育費の主観的な負担感を調査するものであるという限界が、出てまいります。
 括弧2ですけれども、「差の差」分析を行いたいという考えを持って調査を設計いたしました。「差の差」分析とは一体何ですかという説明をするために、この図を描きました。低所得世帯以外の保護者、C、Dという座標を御覧ください。第1子が高校に入学した頃から第2子が高校に入学した頃に比べて、教育費の負担感が、新制度の施行に伴って減っていれば望ましいわけですね。
 そして、介入群を御覧ください。線分ABの傾きが、線分CDの傾きよりも急であれば望ましいわけですね。低所得世帯の保護者の方が、より一層負担感が減りましたという仮説が支持されるのかどうかという分析をしたいと考えております。
 ただ、本日の中間報告は「差の差」分析に踏み込まず、基本的な分析にとどまっているということでございます。
 更には、1(2)で御紹介している「差の差」分析には、幾つかの仮定が必要です。その仮定が現実的に妥当な意味を持つのかどうか、そういった検討も不可欠です。
 2ページにまいります。2ページでは、保護者調査の概要を説明します。母集団は、こちらに書いてある人たちでございます。丸1、丸2、丸3、丸4というタイプの子供を持つ人が、母集団です。
 ここでWeb調査の限界が1つございまして、丸1番の高校3年生の子供を持つ保護者に、どういう訳か大きな偏りが生じているようであります。こういった原因が定かでありませんので、解決策も今のところよく分かりません。そういった課題がある上での報告になってしまうことが限界であります。
 2(2)、(3)は、そのままお読みいただければと思います。
 そして、2(4)です。矛盾のある回答がかなり多数発生しております。こういった矛盾のある回答を処理するデータクリーニングという手続を経て、2(3)にありますように3,863人が分析の対象になりました。
 2(5)が、データの偏りの評価でございます。先ほど口頭で補足いたしましたけれども、2の(1)に関わりまして、まず指摘する必要があるのが、丸1番「高校3年生の子供」がどうも多すぎるのではないかという偏りがあることです。
 その偏りがありながらも、不思議なことがあります。3ページを御覧ください。3ページを御覧いただきますと、「私立大学生のいる世帯の家計」という表がございます。保護者調査において、私立大学生のいる世帯の家計を抽出いたしますと、収入の平均値が859万円となります。少しデータが古いですが、3年前の全国消費実態調査で同種の世帯を取り出しますと、平均値が868万円になるのですね。Web調査という方法で行った保護者調査は回答者を無作為抽出したわけでもないのに、、収入の平均値が3年前の全国消費実態調査に基づく収入の平均値にほとんど一致しているという事実が分かります。更には、持ち家率についても、ほとんど一致するのですね。
 ところが、家庭の預貯金の平均値は、大きくずれます。これが一体なぜかですけれども、家庭の預貯金は、注5にも書きましたが、保護者調査では有価証券を含む家庭の預貯金額を尋ねているのですね。逆に言うと、有価証券以外のものは、回答に反映されていないかもしれない。他方、全国消費実態調査では、生命保険とか社内預金とかというものも細かく尋ねておりますので、同じものを尋ねていないということがございます。ですので、家庭の預貯金の平均値は、御参考という位置付けがよろしいかと思います。
 保護者調査の対象者は無作為抽出されていないにも関わらず、更には高校3年生に多く偏っているにも関わらず、持ち家率と年間収入の平均値が、母集団の平均値に概ね一致することが確認できました。
 表2についても、同じことが読み取れます。国公立の大学生についても、ほとんど全国消費実態調査と同じような結果になっていることが確認できました。
 ところが、サンプルに偏りがないとは言えません。4ページを御覧ください。このサンプルには、平成29年3月に高校を卒業した人の保護者が含まれています。そもそも平成29年3月高校卒業者数が想定よりも大分少なかったという偏りがあるわけでございますが、その少なかった人たちの大学進学率を計算いたしますと、66.2パーセントになります。これは、高い値です。サンプルにはこうした偏りもあるということでございます。
 サンプルは、家計の指標については、それほど偏っていないようだが、ほかの点については偏りがあるということです。この大学進学率や家計指標の偏りの有無については、過去のWeb調査でも同種の傾向が確認されているようでして、その意味では、従前と同じようなデータになっているかもしれません。しかし、それが望ましいかどうかは分からないところであります。
 3では、基本的な分析の結果を報告します。1ページの冒頭でお話した「差の差」分析にいきなり着手するのではなく、まず基本的な分析をしたいと考えたためです。
 子供が私立高校に通った家庭の保護者と公立高校に通った家庭の保護者との間に、高校教育費の負担感に違いがありますかというところですね。これが、そもそも、この調査の主たる目的、2つの目的のうちの1つでございました。
 その負担感は、お子さんが高校に在学中に、お子さん1人に掛かる学費、授業料云々について、どの程度負担を感じましたかと、保護者調査では5つの選択肢でもって回答をお願いしています。
 このとき、回答者の家族構成が多様であることに注意が必要です。更には、高校教育費の負担感は、何番目に生まれた子供に注目するのかによって異なると予想されます。また、その子供にかかる高校教育費の負担感も、その他の子供の年齢や在学状況によって異なると予想されます。こういった全てのパターンを網羅することは、今回の中間報告ではできません。ですので、まずは長子、すなわち1番目に生まれた子の教育費負担感のみに焦点を当てまして、子供の人数別に分析を行いました。
 その結果が、5ページに出てまいります。5ページでは、子供数が1人の保護者のみ、ピックアップしております。
 表4を御覧ください。子供数が1人の保護者の長子の高校教育費の負担感は、何によって決まっていますかという分析でございます。たくさん数字が出てまいりますが、大事なところは、表4の下の文章に書きました。
 表4及び後掲の表5及び表6の含意を、以下の観点に留意して検討することができます。まず丸1番、新制度の導入により、私立高校生がいた世帯の教育費負担感は減りましたか。これは、長子が私立高校ダミーの係数に注目します。具体的には、表4で申しますと1行目、0.784という数字でございます。そして、交互作用項、長子が私立高校ダミー×長子が新制度の対象ダミーの係数に注目します。これは表4の数字で申し上げますと、マイナス0.013という数字でございます。1行目の0.784という係数、そして中ほどのマイナス0.013という係数。これらの数字を比較して丸1が支持されるかどうかを読み取ということでございます。
 長子が私立高校ですと負担感が0.784高いということです。5つの選択肢で回答を要求して、国公立の生徒に比べて0.784、ざっくり言えば0.8、負担感が重たいということです。これは、結構なボリューム感であろうと思われます。しかしながら、マイナス0.013という数字を見ます。長子が新制度の対象であった場合、そういった0.784という負担感がどれだけ減りますかという点を読み取ります。その減り幅は、マイナス0.013です。0.784に比べると非常に小さな値になっておりますので、あまり減っていないらしいということです。しかも交互作用項の有意確率が非常に高い。有意確率は0.05が1つの基準でございます。有意確率が0.951ですので、ほとんど当てになりません。子供数が1人の場合、私立高校に入学した人、しかも新制度の下で入学した人の負担感が軽いということは、表4からは読み取れないようです。
 表4の下の丸2番に戻ります。「新制度の導入によって低所得世帯の教育負担は減りましたか」ということです。はじめに世帯年収の各ダミー変数の係数に注目します。具体的には表4で申し上げますと、世帯年収ダミー「300万円未満」という行に0.618という数字がございます。これは世帯年数が900万円以上の人に比べて、300万円未満の人は負担感が0.618高いという読み方をします。次に、交互作用項、すなわち各世帯年収300万円未満各ダミー×長子が新制度の対象ダミーの係数に注目します。具体的にはマイナス0.320という数字がございます。マイナス0.320とプラス0.618の関係性を見ていくということです。
 そういたしますと、年収が300万円未満の人は負担感が0.618高いのですが、長子が新制度の下で高校入学をしていると、負担感がマイナス0.320減ると一見読めそうです。しかしながら、交互作用項の有意確率が非常に高いです。本当に負担感が減ったかどうか、よく分かりません。負担感は減っていないかもしれないということが、子供数が1人の場合の暫定的な結果です。この暫定的な結果は、先ほど申し上げたようなWeb調査のサンプリングに由来する幾つかの問題があるという前提に基づいているという点には、御留意ください。
 そして、6ページにまいります。子供が2人の場合です。今回のサンプルでは子供が2人の保護者が2千人強いまして、今回のサンプルの中では一番多い人たちです。その意味で代表的な人たちであります。その代表的な人たち、子供数が2人の場合で申しますと、先ほどの子供数が1人のケースとは少し違った感じがいたします。
 まず、長子が私立高校ダミーというところを見ますと、係数が1.110となっております。これは結構高い数字だと思います。子供が国公立に行った保護者に比べて、子供が私立に行った保護者の方が、選択肢の中から選ぶ丸が1個隣にずれているということです。これはかなり大きな違いであろうかと思います。
 新制度の下で長子が高校に入った場合、どうなるでしょうか。中ほどの行を御覧ください。長子が私立高校ダミー×長子が新制度の対象ダミーという行があります。係数がマイナス0.301です。しかも、有意確率は0.002です。これは統計的に有意です。マイナス0.301と1行目の1.110を比べますと、次のことが読み取れます。長子が私立高校に入るとたしかに負担感は重たい。けれども、長子が新制度の下で高校に入っていると。つまり、負担感がマイナス0.3であると。つまり負担感が少し減るということが読み取れます。つまり、子供数が2人の場合、私立高校に新制度の下で入ると、少し負担感が軽くなっているかもしれないことが読み取れます。
 では、年収についてはどうでしょうか。世帯年収ダミーの300万円未満という行を御覧ください。回帰係数が0.572という数字になっております。900万円以上の年収の人に比べて、300万円未満の年収の人は負担感が0.572高いということであります。
 長子が新制度の下で高校に入った場合、どうなるか。そ世帯年収300万円未満×長子が新制度の対象ダミーという行を御覧ください。、マイナス0.287という係数があります。負担感は減っているかもしれない。しかし、にかかるその係数の有意確率は少し高めです。ここが微妙なところです。
 世帯年収300万円未満の人には何も影響がなかったとすれば、中所得の世帯にも影響がなかったのかといえば、実はそうでもないようです。世帯年収ダミーが300万円~600万円未満という行を御覧ください。係数の値が0.450つまり、世帯年収が900万円以上の人に比べて、世帯年収が300万円~600万円の人は、負担感が0.450重たいということです。
 これが、長子が新制度の下で高校入学すると、負担感はどうなるか。世帯年収300万円~600万円未満ダミー×長子が新制度の対象ダミーの行を御覧ください。係数はマイナス0.302、しかも有意確率は0.013。これは統計的に有意です。
 したがいまして、世帯年収が300万円~600万円の場合、新制度の下で高校に入った子供の保護者については、負担感が下がっているらしいということが読み取れます。同じことが世帯年収600万円~900万円の場合にも当てはまります。これがどういう意味を持つのかが、少し難しいところでございます。世帯300万円未満という人たちについては、顕著な効果がないかもしれないが、300万円以上900万円未満になると効果があるとすれば、果たしてこれは一体何を意味しているのかということです。
 7ページにまいります。子供数が3人以上の場合です。子供数が4人や5人という回答者もいますが、100人ちょっとしかおりませんので、集約しました。子供数が3人以上の場合が表6でございます。
 基本的には表5と似たような結果になってくると思われます。長子が私立高校ダミーの係数は0.917です。私立高校に入ると負担は重たい。それが、長子が新制度の下で高校に入るとどうか。長子が私立高校ダミー×長子が新制度の対象ダミーという行を御覧ください。係数はマイナス0.136です。負担感は多少減るのかもしれませんが、有意確率は0.388。これは統計的に有意ではありません。子供数が3人以上になるとそれほど負担感の減少はないようであるということです。
 これらの分析の結果から言えそうなことは、子供数が2人の保護者に対しては、何らかの効果があったかもしれないということ、子供数が1人あるいは3人以上の場合は、それほどでもないかもしれないということです。ただし、そのそれらの結果が真に妥当であるかどうか。分析結果は、先ほど申し上げたWeb調査の性質に由来するサンプリングの偏りを精査した上で、最終的に評価する必要があると考えております。
 私からは、以上になります。
【小川座長】  ありがとうございました。興味深いデータがいろいろあります。
 時間も考えながら意見交換しないとだめなのですが、調査の性格からして違うので、最初岩田さんの報告から質問、意見交換してみたいと思います。それが終わった後に、後半の日下田先生の報告についての質疑応答、確認等やりたいと思います。
 それでは、濱中委員、どうぞ。
【濱中委員】  御報告ありがとうございました。調査は本当に大変だったと思います。多分これからも回収作業等大変かと存じますが、興味深い知見が抽出されているかと存じます。そうしたなか、1点教えてください。 11ページ目の(4)についてです。奨学給付金に関して、この委員会でも第1子と第2子の支給金額の差については議題に挙がってきました。第1子の支援を引き上げるべきだという点が指摘されてきたわけなのですが、この調査の結果によると、高校側の賛否は拮抗しているようです。これは一体どうしてなのか。本日委員会の冒頭で紹介された「あすのば」の提言の中でも、第1子への支援引き上げのことが触れられていました。どうして、このような結果が出てきたのか。訪問調査などもされていらっしゃいますので、そのご経験も含め、どういう解釈が可能なのか教えていただきたいのですが。
【小川座長】  岩田先生。
【岩田教授】  本当は、その点に関しましては、今回の調査に加わっている一部の先生方からも指摘がありましたが、高校にこういう評価をしていただくのが適切かどうかという問題はあります。それにつきましてはウェブ調査で、実際に保護者の意見としての方が多分正確を期すことになるかと思います。ただし、幾つかの高校からの問い合わせをもとにしますと、一般論で答えようとして、高校側としては答えを差し控えたいというところがございました。一般論ではなくて、貴校の生徒を見ていて、それに合ったような形で自分の高校のことしか考えなくてよいですよと答えました。いずれにせよ、そのような問題があることを踏まえて、数字をみていく必要があるかと思います。
 ただ、実はあとの自由記述で幾つか文科省が「なぜそう思いますか」という項目を大量にお入れになりましたが、この質問だけ「なぜそう思うか」が抜けております。ほかのところでいろいろ解析しながら、見ていきたいと思います。
 末冨先生、インタビューの結果、1子と2子とあまり私は印象に残っていないのですが、何かその辺に関します意見はありましたでしょうか。
【末冨委員】  いえ、特には1子だから、2子だからとは金額ではおっしゃっていなかったとは思います。私もこのデータの解釈をどう考えればいいのかは、考えながら聞いていました。
【岩田教授】  もう少し解析しながら、何かヒントが出てくれば報告書に書かせていただくということで御容赦ください。
【濱中委員】  分かりました。今おっしゃられたことが多分そのとおりだろうと思います。判断しにくいことが聞かれた場合、回答の分布は大体拮抗します。多分その結果かと思いながら伺っておりました。ありがとうございます。
【小川座長】  ありがとうございました。ほかに。
【岩田教授】  これは多分どれくらい就職率が多いか、どれくらい低所得者の生徒がいらっしゃるかのデータを取ってありますので、その辺の解析をしていくうちにひょっとしたら出てくるという気はしております。
【小川座長】  ほかに。文科省の事務局からも確認したいことがあれば、せっかくの機会ですのでどうぞ。
【伊藤課長】  すみません。1点だけ教えていただけますか、岩田先生。
 先ほど回答者は事務職員が多いという話でした。今回校長が回答したのか、教頭が回答したのか、事務長が回答したのか、教諭が回答したのかのような部分の数字は分かりますか。
【岩田教授】  全てのアンケートについては分かりかねます。今回の調査について、私への問い合わせが全部で二百数件来ております。それに全部回答したわけですが、その回答のときにどこの高校のどなたがどういう質問したかという一覧表を作ってあります。それを見ますと、一番多いのは事務長でもなくて、担当の事務職員の方が圧倒的多数です。事務長がお答えになったのが数件、それから、教頭先生がお答えになったのが数件という感じになります。ですから、ほとんどは現場の事務の人です。特に何人ぐらいそれぞれの支援金も受け取っている生徒がいるか、卒業後の進路状況などのように、担当の事務の人の方が答えやすい項目が多かったからだと思います。そういう状況でございます。
【伊藤課長】  ありがとうございました。
【小川座長】  ほかにいかがですか。
 柴田委員から何か確認、御質問ございますか。
【柴田委員】  岩田先生からの報告に関しては、今のところありません。後半の方でありますのでまた後で。
【小川座長】  はい、分かりました。
 では、私から少し確認です。9ページの奨学給付金に関わって給付金の滞納問題の話が出ています。これと13ページの代理受給、この相関はこれから分析しますよね。
【岩田教授】  はい、そうです。
【小川座長】  ただ、データ的に見て何かこの辺、相関はありそうですか。
【岩田教授】  恐らくあるのではないかと予想しております。とにかく、公立高校で払ってくれないことが相当問題になっている実態が浮かび上がってきました。それで、検討しているところが多いのではないかと。大阪がうらやましいという話は随分聞きました。
【小川座長】  では、相関の作業はしてくれるのですね。
【岩田教授】  これはクロスを取ればすぐ分かるかと思いますので、それは行いたいと思います。
【小川座長】  では、大橋委員。
【大橋委員】  3点だけです。全部ここにないことかもしれません。今後の話かもしれません。
 1点目は、9ページ目の(2)です。私立高校にも非常に大きな分散があると。つまり、恵まれているところと恵まれていないところがあって、ここの辺りでリスポンスが違う可能性もあるかという感じがしています。これは私立高校の中でどういう基準で分けられるのか分からないですが、カテゴライズを2つぐらい作って、どう違うかを見ていただくことは可能ですか。
【岩田教授】  その問題から1つお答えしてよろしいですか。当然考えております。冒頭で申し上げましたように、数値データが今全く使えない状況ですから、今回そこまでの分析に踏み込めませんでした。例えば、奨学給付金の給付者数や生徒全体のうち何割もらっているか。それからどれくらい就職者がいる高校であるかが、数値としてこちら側では取ってあります。どの資料が一番いいかはこれから検討いたします。その辺で私学を分けることができるのではないかと考えております。
【大橋委員】  5ページ目の(2)ですが、教育委員会が把握しているのかどうか。教育委員会が把握している場合に高校にその情報を返しているかどうかがあると思います。これで差がどうかと見ていただくことは可能でしょうか。
【岩田教授】  県単位で、要するにどこの県が高校まで下ろしていないかということは、今回の調査では取っておりません。何らかの形で分かるのであれば、県をそれでカテゴライズして、要するに今回の報告では県別の分析は一切入っていないのですがそれも大きな課題だとは思っております。それに合わせて分析することは可能だと思います。
【大橋委員】  また、同じ県でも私学と国公立で少し対応が違う可能性もありますよね。
【岩田教授】  そうですね。ただ、これは自分のところでは把握していないかどうかは分かります。だから、県によっては一部の高校には教育委員会が下ろしていたりということもあると思われます。下ろしている高校と下ろしていない高校と推測されるところの分析は、県レベルで全体として下ろしているかどうかは別にして解析はできるかと思います。
【大橋委員】  最後です。今回設置者の中でも国公立と私学について見ていただいています。課程別や通信などあると思いますが、ここの辺りも分析はされますか。
【岩田教授】  定時制と通信制、それから全日制別は分析する予定でございます。ただ、課程といいましても、例えば商業科などまでは少し大変になりますので、差し控えようと考えております。
【小川座長】  では、どうぞ。
【小河委員】  ありがとうございます。この就学支援金ですが、これは各都道府県が独自で上乗せしている部分があります。これはすいません、私の確認不足かもしれません。これは聞いているときには飽くまでも国のものだと前提にして聞いているのか、各都道府県、要するに現場の先生方は国から出ているものと都道府県が独自でやっているものと区別がついているのかどうかは、どうでしょうか。
【岩田教授】  少しお待ちください。
【末冨委員】  岩田先生が探していらっしゃる間に、私が。大阪のインタビュー調査では、大阪府独自の私立高校無償化をしているので、私立高校からは府の制度を説明していますという御回答でした。ですので、恐らく、こちらの回答の方々も、特に私立は上乗せがある県は上乗せ分も含めての仕組みだと理解されている可能性は大きいと思います。
【岩田教授】  調査票のかがみの部分で制度の説明はしているはずですが、回答は数値のところも見ましても恐らく、上乗せ分全部を含めた回答になっているはずでございます。
【小河委員】  そうすると、当然格差が出てくると。都道府県によっての制度の厚みでの格差が出てくると。
【岩田教授】  そうです。おっしゃるとおりです。
【小川座長】  ほかに。では、なければ、ここは岩田先生から御報告いただいた内容の確認、質疑応答についてはここで一旦終わらせていただきます。
 今度は、日下田先生から御報告いただいた内容についていかがでしょうか。
 では、濱中委員、どうぞ。
【濱中委員】  まず幾つか基本的なことから教えていただきたいのですが、データに関してデータクリーニングを行った結果、有効回答者数が3,863まで減ったということで、これは結局500人近くの回答を切っていることになります。これは結構な規模で、一体どうしてこれほどのことが起きたのか。調査設計上のことだったのか、どうなのか。そのあたりを教えていただきたいのが1点目です。
 2点目は、年間収入についてです。今回のデータについて、年収の回答がどのようなものだったのか、平均値については提示していただきました。ただ、大体の分布がどれぐらいになっているのかが見えないと、結果もどのように読めばいいのか分からないので、それを教えていただきたいです。具体的には、例えば5ページ以降で使われている世帯年収ダミーに関しましても、300万円未満、300~600、600~900、900万円以上がどのように分布しているのか。300万円未満ダミーが有意でないなど、そういった結果もサンプル数が少ないから有意になっていないだけなのか、今回の支援額では負担感を減らすことができないからなのか、その辺の判断がつかないので、教えていただければと思います。同時に分布に関してもう1つお聞きしたいのですが、負担感を5段階尺度で聞いていらっしゃいます。これに関しても、もし分布がすぐ出てくるようであれば、教えていただきたいと思います。
【小川座長】  お願いします。
【日下田助教】  まず、1点目の御質問についてです。なぜ500人ぐらい回答者数は減ってしまったのかです。2ページ目の(4)のデータクリーニングを御覧ください。この丸1番と丸2番が結構引っかかります。NTTコムだけでは数を確保できないので、提携会社も使いますと。そうすると、提携会社とNTTコムの二重に回答してしまう人が現れる。あるいは、提携会社のモニターの中で、例えばお父さんも回答して、お母さんも回答してというケースも現れます。これらは統計分析上の前提を満たさないので、データクリーニングを行う。その結果、有効回答者数がそうした数字になったわけです。
 そして、年収の分布です。例えば、3ページの表1を御覧ください。私立の大学生では859万などの数字が出てまいります。分布のグラフを持ってくればよかったのですが、それを確認いたしますと、通常のよくある左側に山が来て、右に長く引いていくという形状をしています。。通常よく期待されるような所得の分布になっていたはずです。
 そして、例えば5ページの表4にありますような各年収ダミーの分布です。すいません。細かい数字が今記憶にないので、正確に申し上げられませんが、300万円未満の人は御指摘のように少なかったと思います。なぜこういったダミー変数の設定の仕方を採用したかと申しますと、生活保護の基準あるいは年収が九百何十万以上の保護者は子供の高校の授業料を払っているなど、そういったことを念頭におきましてこういったダミー変数の設定をしております。ただ、そういった生活保護の基準なども家族の状況によって、あるいは住んでいる場所によっても細かく違います。あくまでもざっくりと設定したところ、こうなったわけです。300万円未満の人は少し少なめになっていることは事実です。
 しかしながら、6ページの表5を見ていただきますと、下から3行目の「n」が有効回答数です。2,201人です。これは統計分析には十分なサイズかと思います。サイズ感では特別問題ではないかもしれない。むしろ、問題があるとするならば、本当にランダムサンプリングになっているのですかというところではないかと考えています。
【濱中委員】  負担感は?
【日下田助教】  負担感はすみません。今、分布を持ってきておりませんので、後日報告することにさせてください。
【小川座長】  では、それでいいですか。
【濱中委員】  はい。
【小川座長】  それと、柴田委員、何か御質問があったということなのでどうぞ。
【柴田委員】  ありがとうございます。分析結果はかなり理解できるもので、よく傾向が出ていると思いました。そもそもの被説明変数ですが、今回は主観的な負担感ですが、岩田先生の御報告からは負担感以外にも効果があるだろうと当事者、学校側が答えていたものとして中退の減少です。あとは、学業成績が良好になると。その負担感以外の2点についても今後分析が可能なのかどうか。予定しているかどうかをお聞かせいただけますでしょうか。
【日下田助教】  ありがとうございます。
 まず、回答者の子供が高校を卒業したのか、それとも中退したのかというデータは確認できます。しかし、成績については確認できません。これは回答者が基本的にはお父さんかお母さんなので、子供の成績を質問するのは少し難しいであろうという判断の結果です。中退したかどうかについては質問していますので、着手できると思います。
 さらには、高校教育費の負担の在り方についての政策について「賛成ですか」、「反対ですか」という形で、政策に対する賛否を主観的に尋ねる質問もしております。そういった質問については、被説明変数を入れ替える形で同種の分析が可能であると考えております。
【柴田委員】  ありがとうございます。学業の姿勢については、質問はあったのでしょうか。
【日下田助教】  子供の学業の姿勢を保護者に尋ねる質問は、ないです。
【柴田委員】  分かりました。特に中退の問題が一番重要かと思いますので、そこがきちんとデータであることで安心いたしました。ありがとうございます。
【小川座長】  では、ほかにどうでしょうか。全体を通じてもう一度何か確認したいこと、御質問があればいかがでしょうか。
 今日は、本当に時間がない中での単純集計のご報告でしたので、これから本格的にさらに踏み込んで分析していただけると思いますが、そのご報告は年明けになりますか、塩田室長。
【塩田室長】  最終報告は年度内にまとめますので、それまでに分析を間に合わせていただいて、反映できればと。
【小川座長】  そうですね。では、今日はこのぐらいでよろしいですか。 では、本当に今日はお忙しい中ありがとうございました。また、もう一度この場で最終的な分析を御報告いただくことになると思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、最後残り30分ほどしかありません。資料3に基づいて、これまで出てきた論点の整理を事務局から報告していただいた後、少し意見交換したいと思います。
 では、よろしくお願いします。
【塩田室長】  それでは、資料3でございます。追記した部分が赤字になっておりますので、そこを中心に御説明させていただきます。
 3ページでございます。関連データで先ほど御説明しましたが、低所得の世帯ほど進学率が低くて、学歴別の生涯賃金に差があることをまず記載させていただいております。
 ページをめくっていただいて、4ページでございます。都道府県団体アンケートの評価の仕方です。前回の委員会の中で、1位、2位、3位の内訳についても考慮した書き方をすべきだという御意見を頂いていましたので、その辺を配慮した書きぶりにさせていただいております。
 続きまして、枠囲いの中でございます。前回、経済効果の観点からは低所得の方が高いことについての書きぶり、又は根拠について御質問がありました。根拠につきましては、先ほど来御説明しているようなデータと思っております。書きぶりにつきましては、柴田委員とも御相談させていただきまして、このような書きぶりに案としては書かせていただいております。
 続きまして、5ページでございます。ここにつきまして、都道府県と連携してしっかりとよりよい制度にしていくことが重要だという御意見が、前回会議であったと思いますのでそれを書いています。また、入学時の費用負担についても、ここが重いという御指摘がありました。入学時の費用負担を含めて、ここは基本的には都道府県がということで、現状でも入学金の費用負担をしていただいているという面があります。また、仮に国が就学支援金を更に拡充させた場合には、その拡充した部分について都道府県の財政負担が軽くなると、そういったことにもなります。そういった部分も活用していただきながら、入学時の費用負担を都道府県で充実していただくのはどうかというのが、この今の案になっております。
 続きまして、多子世帯の支援が重要と特出しして書くべきだという御意見を頂きましたので、それを書いているのが次の丸です。最後の丸が、制度理念やA規約、附帯決議を踏まえますと、将来的には全ての生徒を支援対象とすることを検討すべきと追記させていただきました。
 続きまして、6ページでございます。6ページは、基本的に前回と書いていることは変わらないですが、表現ぶりを変えております。判定基準を市町村民税取得割額から課税所得に変えます。その変える理由として税額控除、例えばふるさと納税等を受けている者などが判定上有利になっていることもありますので、公平性の観点から課税所得に変えると書いているのが1点目です。
 2点目でございます。これは年少扶養控除の廃止で、15歳より小さい御家庭については判定に反映されないことがあります。家族構成を考慮する工夫を検討すべきではないかと書かせていただきました。
 続きまして、7ページでございます。これは超過部分についての対応でございます。ここについてもしっかりと書くべきとの御意見を頂きましたので、まずは一方で36月という、法律上の建て付けは36月と限定しております。ほかの生徒との均衡の観点もございます。そういった均衡の観点も踏まえつつ、支援対象の見直しを検討してみたらどうかという書きぶりにしております。
 続きまして、9ページでございます。奨学給付金に移っております。こちらは先ほどデータで御説明した学校外活動費は、公立私立ともに所得の高い階層は高くなっていることと、また高大接続改革の推進で新しく入試の在り方が変わってまいります。今後受験料負担の増加が見込まれることを追記しております。
 10ページでございます。これも先ほどと同じです。都道府県関係団体アンケートの結果の解釈の仕方を1位、2位、3位とありますので、それも踏まえた書きぶりに変えさせていただいています。
 続きまして、11ページの情報ギャップ問題、これは在校地、在住地、先ほど来御指摘がある問題でございます。案といたしましては、情報ギャップ問題への対応の観点からは在校地主義が望ましいと。これは前回御指摘いただいたところを書いております。ただ、一方で県費負担の問題から、半数の都道府県が在住地主義を希望している現状もございます。ここに書いてあるのは在住地主義としつつも、保護者が理解しやすい書類やネーミングの在り方等の工夫を検討するとともに、中学校段階から効果的な周知方法について検討して、情報ギャップ問題の解消を目指すべきではないかという書きぶりを案として記載させていただいております。
 最後に、12ページでございます。マイナンバーに対応した事務処理システムを導入予定でございます。これを導入いたしますれば、就学支援金に関する事務処理はかなり軽減されると見込んでおりますが、給付金についても、そのシステムを使って事務負担の軽減につなげられないかという御指摘を頂きました。それについても、ここに書いておりますように工夫を検討すべきという記載を追記させていただいております。
 説明は以上でございます。
【小川座長】  ありがとうございました。今、資料3のこれまで議論してきた主な論点についての議論の整理ですが、これは最終的にはこの協力者会議の最終報告のベースになるものですので、御検討をよろしくお願いいたします。
 前回の議論を踏まえて、特に、今日また御意見を頂きたいのは、各柱のまとめのところで記載している括弧の中の協力者会議の提言の主な柱です。これを前回の議論を踏まえてかなり今回加筆している部分も多いですので、その点に関わって少し今日御意見を頂ければ思います。時間もないのですが、就学支援金と給付金は性格が違いますので2つに分けて、最初就学支援金に関わる内容について、皆さんから御意見を頂ければと思います。9ページまでです。その後、給付金の方に移っていきたいと思います。いかがでしょうか。
【末冨委員】  よろしいですか。
【小川座長】  末冨委員、どうぞ。
【末冨委員】  赤字ではないところで改めて見直して、少し書きぶりがどうかと思っているのが7ページです。事務負担の軽減、その他のところで、今日の高校調査からも出てきたのですが、教員の負担と事務職員の負担がそれぞれ多分相当のものになっているであろうとはある程度把握できます。
 そのときに、7ページの(4)の丸2の3つ目です。「提出書類作成が困難といった場合、スクールソーシャルワーカーとの連携により支援すべき」と書いてあります。これは飽くまで公立を前提とした話でして、私立の方は高校によってスクールソーシャルワーカーの配置は様々であることや、決してスクールソーシャルワーカーのような職に理解がある学校ばかりではないことを考えると、私立への支援体制あるいは私立高校が高校生に対してより手厚い支援体制を行えるような措置も必要なのではないかと考えています。
 特に、その懸念が強まったのは、今日の岩田先生が御報告いただいた資料の図2です。学校としての対応で、辞退申出書を含んで就学支援金の督促を行っていない学校は私立に多発しています。それは私立高校の恐らく、高校生の支援体制の格差がそのまま反映されていて、私立高校の中には「いないだろう」という思い込みの元で事務をしている学校がある可能性はかなり高いと思われます。それは高校生へのケアの質としては決していい状態ではないと判断しています。
 ですので、単純に「スクールソーシャルワーカーがすべき」ではなく、高校生全体への特に経済面、在学中だけではなく恐らく進学経費も含めて当事者の悩みは深いです。そういった高校生の支援体制も含めて事務負担と考え、教職員プラス専門職ですね。「スクールソーシャルワーカー等による支援対象を手厚く行うべきである」というような文言を付け加えていただくことが重要と思っております。
 併せて、そもそも私はこの就学支援制度という仕組みは何のための仕組みだろうと思っておりましたところ参考資料2に目がとまりました。今日12月8日の閣議決定後の報道と改めてこの紙面で見て思ったのが、この仕組みは質の高い教育のための就学支援金制度だったのかと改めて確認しました。では、質の高い教育とは何ですかというときに、恐らく、この協力者会議として質の高さとは何かと考えなければいけない。
 そのときに、私が今申し上げたように、高校生が学校を通じて必要な支援につながれていて、それが高校生に効果的に利用できているかどうかは、質の高い教育の基準として非常に大事だろうと思います。先ほど申し上げた事務負担の軽減は高校サイドの目線に立ったものです。そうではなくて、高校生やその保護者に対して必要な支援が十分の届く体制が、恐らくこの協力者会議として考えなければいけない質の高い教育と、個人としては考えます。
 少なくとも、この部分に下線が引いてあるのは、とても意味のあることだと思っています。では、高校就学支援金制度における質の高さとは何ですかということについては、意識しながらこちらの論点整理の最終ゴールを整理していかなければいけないと考えます。
 取りとめもなくなりましたが、要するに、7ページの書きぶりを教員や事務職員の負担、それから、スクールソーシャルワーカーと必ずしも配置しない私立高校等への支援策や、あるいはマネジメントの改善策を含めて少し書き加えていただければということです。
 以上です。
【小川座長】  ありがとうございました。
 塩田室長、確認です。今日、報告頂いた委託研究の内容ですが、限られたデータですが、いろいろな成果や課題というのは見えるような報告なので、ここで出た成果についてはこの協力者会議の最終報告案に組み込んでいきますよね。
【塩田室長】  おっしゃるとおりです。今考えておりますのは、次回21日に中間報告的なものを御検討いただこうと思っております。その際にも、本日御発表いただいた内容は、盛り込めるものは盛り込んだものをまずは中間報告としてまとめた上で、更に最終報告の段階では、最終的な結果をまた反映したものを取り込んでいきたいと思っています。
【小川座長】  分かりました。そういうことのようですので、今の末冨委員の発言を含めて、ほかに今日の中間報告の内容も考慮していただいて、何かあればよろしくお願いいたします。
【岩田教授】  今の点に関してよろしいですか。
【小川座長】  どうぞ。
【岩田教授】  我々の調査で、数値としてスクールソーシャルワーカーが週何日ぐらい来ているかというデータを取ってあります。先ほど申し上げましたように、そこがとにかく年何回という記入ばかりでして、まだ集計できていません。
 末冨先生がおっしゃるように、ソーシャルワーカーとの連携は私は大切だと思いますが、これを増やすことは、文科省はお考えでしょうか。
 そうしないと、幾つかの高校を回りながら随時来ているという高校が多い中で、それに対応しようと思うと、私はこれは随分大変な負担になると思います。事務の負担を減らすために、ソーシャルワーカーに押し付けておけばというのでは、今度はソーシャルワーカーの人から「負担が大きい」という声が出かねません。そこらへんを含めて考えていただかないと、どれくらいの実績で配置されているかという点につきましては、我々でもきちんとデータを出しますが、以上の点を念頭に置いていただければということだけ1点、気になりました。
【小川座長】  スクールソーシャルワーカーの配置は、今、「働き方改革」のところでも重点課題として文部科学省の方で頑張ってもらっています。
 当事者の伊藤課長がいらっしゃるので、何かございますか。
【伊藤課長】  ただいま小川先生からお話がありましたが、スクールソーシャルワーカーの充実はもちろん目指しております。ただし、実際にはスクールソーシャルワーカーは地域の中で小中学校を中心に回っていく形です。高校についても学校の要請に応じて対応する枠組みにしている都道府県は多うございますが、小中学校中心に回っているという状況でございますし、まずは、私どもはそこの配置がより重要であると進めております。
 もう一方で、ではスクールソーシャルワーカーを抜本的に更に高校まで含めて長中期的に増やせるのか。それを実現するために、必要額を支援金から引くのかという限られた予算の中での優先順位の問題もございます。そこのバランスは今後の課題でございますが、慎重に考えなければいけないと思っております。こちらの支援額も増やす、こちらの人も増やす、あれも増やす、これも増やすというのは、現実には大変難しい問題だと思っております。
 もう一方では、小川先生に中教審で御議論いただいておりますが、新たなことを学校に求めるのであれば、では何をやめるのかということを学校全体として議論をトータルで見てしていかなければいけないということもあります。ここの議論はここの議論として、しっかり御議論いただきたいと思っておりますが、全体として政策に昇華させる中では、そのバランスも考えていかなければいけない大変難しい課題だと思っております。
【小川座長】  よろしいですか。ほかに……。
 では、小林委員、そして、大橋委員で。
【小林委員】  2点です。情報ギャップの問題について触れられたので、先にそちらの方を少し補足していただきたいと思います。私もこの書き方ではマイナンバーに対応するからという話になってしまっていて、この問題はかなり深刻なので、マイナンバーができれば解決する分はかなりあります。それまではかなり問題があることなので、その辺をどう考えるかを検討課題として入れていただきたいです。
 特に、国の支援という観点から言いますと、就学支援金に関しては、ある程度事務の方で支援が出てきていますが、奨学給付金については、事務に対してという意味ですが余り国の支援がないという状況になっているようです。その辺をもう少し、特に今回の調査結果でもはっきり出てきたのは、就学支援金については、かなり高校は頑張っていただいていますが、奨学給付金まで手が回っていないです。その辺りのことはもう少しここに入れていただいて、情報ギャップの問題はかなり深刻で、先ほど岩田先生からいろいろ具体例もありましたが、本当にぎりぎりまで努力してやっているところと、あまりたいしてやっていないところの差が本当に出てきてしまいます。これをクロス集計で出せばもっとはっきり出てきます。その辺りを含めて、ですから、この問題は情報ギャップに対応することをマイナンバーで片付けるのはどうかというのが1点です。
 それから、もう1点は、これは私も「新しい経済政策パッケージ」を見て今気がつきました。大学は入学金についての免除があります。家計負担の急変についても対応することが書かれています。高校は入学金については、特に触れていないのです。これは先ほどの質問にも関わるのですが、入学金、要するに日本の高等教育の場合には圧倒的にそうですが、初年次の学納金が重過ぎる。高校の場合にも同じようなことは、程度は低いですが実はありますので、それについて国の支援は全くないということでいいですか。今回の「新しい経済政策パッケージ」で、まずそれを確認したいのですが。
【塩田室長】  今回の経済政策パッケージは、就学支援金の拡充に留まっております。高校の入学金については対象外になっております。就学支援金はあくまでも授業料支援ということで法律上の規定になっております。就学支援金は、幾ら拡充しても入学金には届かないというつくりになっております。
【小林委員】  分かりました。そうしましたら、5ページのところで、「入学時の費用負担を含め支援の充実を図ることが重要ではないか」という疑問形で弱くなっていますが、私としてはもう少し強く書いて欲しいのですが、ということです。
【小川座長】  5ページは、これは国が主体ではなくて、都道府県に頑張って欲しいという趣旨の記述になっているので。
【小林委員】  難しいですね。
【小川座長】  なかなかその辺は難しいところかと思います。
 では、大橋委員、どうぞ。
【大橋委員】  2点あります。1点目は今小林先生からあった4ページ目の赤字です。私が休んだ回があるかもしれませんが、今回余り高校教育の中身自体には特段議論していない認識でいます。高校教育の位置付けを考えてみると、そこから先の多様な進路が多分確保されることがとても重要だと思います。そのためにも高校教育をしっかり終えてもらうのが、その先の人生の選択にもつながることだと思います。
 ここで書かれている内容は、高校というのは大学に進学するためと読めるところが気になっています。生涯年収まで書いていただいていますが、ただ実際平均値で御覧になっているとこうなっているのかもしれません。ただ、これはかなりのバリアスがあると思います。
 つまり、高校卒業の人がすべからく大卒の人よりも年収が低いかというと、決してそのようなことはないはずです。また、本来高校からその地域の地元の企業に就職されたり、あるいは農業をやられたり、工業をやられたりという道を私は閉ざすべきではないと思います。そうすると、ここで書かれている赤字の部分は少し強すぎるかなと。逆に言うと、高校から就職する人の意識を消失させしているのではないかと気になっています。そこの辺りをもう少し多様な本当は選択肢の中から大学を選ぶ人は選んでいただいていいのですが、そのような観点があってもいいかと思いますがどうでしょうかということが1点です。
 2点目は、先ほど末冨委員がおっしゃった今回費用負担の話をしているわけですが、教育の質の話が重要だと思います。質とおっしゃっている、たしかに質と書いてありますが。そこの部分の議論と費用負担の話は、本当はセットで議論されるべきという感じはしています。ここは、質というか、もう少し包摂的な概念も入った質だと思います。単に成績がいいからというだけではないと思いますが。あと、それについて国がお金を出すわけですから、高校に対する国の関与をどうするのかも本当は包括的に考える場というか、機会にこの制度がなるといいという思いを持っています。2点です。
【小川座長】  非常に重要な視点ですが、これはどう書き込むかは知恵が必要ですね。
 小林委員、どうぞ。
【小林委員】  大橋委員のおっしゃるとおりですが、この書き方だとたしかに進学のことだけしか考えていないというのはそのとおりです。就職のことも考える必要があるということと、大体こういうときに大学だけで専門学校のことが忘れられています。所得の低い人というのは専門学校進学希望が非常に高いです。ですから、もう少し全体を見回して多様な進路の中でただ大学に行きたくても進学できていない人がいます。そういう人についてはこういうことが当てはまると、そういう位置付けになると思います。
【小川座長】  ありがとうございました。では、どうぞ。
【小河委員】  小河です。今大橋委員、小林委員が御指摘されたこと、本当にそのとおりだと思いますので、是非多様な進路を入れていただきたいことが1点です。
 それから、先ほど大橋委員がおっしゃられたように、まず確実に高校を卒業することのためにも、今回7ページに超過部分を入れていただいたことはとても有り難いのですが、もう少しどうしてかというところも、まず最低限高校を出てもらうと。1回高校を中退してしまった人への支援だけではなくて、この就学支援が続けば高校を辞めずにすむような子供たちをきちんと拾っていくと、明確にしていただける方がより有り難いのではないか、説得力があるのではないかと考えます。
【小川座長】  ありがとうございます。時間もないので、就学支援金プラス最後の給付金も含めて議論したいと思います。どうぞ。
【濱中委員】  今の話の流れのなかで恐縮なのですが、9ページ目の最後の赤印のところで付け加えていただいた点、「高大接続改革の推進に伴い受験料負担の増加が見込まれる」という表現についてです実際この受験料負担をどれだけ軽減するかについては、省内でも方法を探っているはずです。受験料の額は進学における大きな障壁になり得ますので、増加に関してはできるだけないように求めるなど、そのような表現へとしていただければと思います。【小川座長】  分かりました。給付金を含めていかがでしょう。どうぞ。
【小河委員】  小河ですが、いつも同じことを申し上げております。先ほど小林委員からもお話がありましたが、本当に入学するときにお金がかかると。もちろん、私立の奨学金給付については、言及していただいたことは有り難いのですが、更に先ほど大橋委員がおっしゃられたように踏み込んでいただきたいです。奨学給付金のときに私どもの提言にも出しましたように、入学のときの増額も是非検討を入れていただきたいと強く思っております。
【小川座長】  柴田委員、全体を通じて何かございますか。
【柴田委員】  特にございません。
【小川座長】  いいですか。
【柴田委員】  はい。
【小川座長】  では、よろしいでしょうか。
 では、末冨さん、どうぞ。
【末冨委員】  濱中委員もおっしゃられましたが、この高大接続改革については、小河委員から最初に資料提示がありました「あすのば」の全国集会でも、当事者の若者たちが非常に心配していることです。
 高大接続改革が進むと、例えば受験料もそうですが高校のときの学習歴や活動歴が重視されてしまいます。これは私も新しい指導要領の最初から心配していました。かなり格差拡大につながってしまいます。家計が豊かでいろいろな体験や留学等の機会が得られる子とそうではない人生を歩む子との学習歴の違いが歴然としてしまうこともあります。
 この協力者会議の範疇ではないかもしれないですが、あえて書いていただきたいのは、高校時代の学習歴の格差をなるべく縮減していくような高校教育の質の改革についても検討することが重要であると考えております。趣旨からは外れるかもしれないですが、あえてお願いしたいということで繰り返して終わらせていただきます。
【小川座長】  ありがとうございました。
 では、時間も来てしまいましたので、今日頂いた意見はまたこの論点の整理のところに組み込んでいただいて、次回に再度また意見交換したいと思います。
 それでは、時間が来ましたので、これで今日の会議を終わりたいと思います。
 最後に、次回の会合の予定をお願いいたします。
【塩田室長】  次回は12月21日12時半からを予定しております。お昼の時間帯となって大変恐縮でございますが、お時間の確保をどうぞよろしくお願いいたします。
【小川座長】  それでは、今日の会議をこれで閉会いたします。ありがとうございました。
 柴田委員、ありがとうございました。
【柴田委員】  ありがとうございました。

―― 了 ――

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