いじめ防止対策協議会(平成29年度)(第1回) 議事録

1.日時

平成29年6月13日(火曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. いじめ防止対策に係る事例集について
  2. SNSを活用したいじめ等に関する相談体制の構築について
  3. その他

4.出席者

委員

相上委員、愛沢委員、高田委員、齋藤委員、水地委員、鈴木委員、田村委員、針谷委員、笛木委員、村田委員、森田委員、淵本様(森近委員代理)、八並委員、横山委員

文部科学省

藤原初等中等教育局長、瀧本大臣官房審議官、坪田児童生徒課長、松林生徒指導室長、山本専門官

5.議事録

≪議題(一)いじめ防止対策に係る事例集について≫
 ※事務局より資料二を説明。
【委員】   この事例集を作る際に、公立学校が主体となっているようだが、国立大学の附属学校や私立学校など、教育委員会が間に入らない学校の事例を入れておくなど、設置者別という視点を入れた方がいいのではないかと思う。
 次に、資料二のローマ数字一の定義、若しくは同じく二、三にも関わってくるが、校内研修の重要性だ。私も平成二五年以降、生徒指導研修で県や市町村、校内研修にも行っているが、学校の先生方は同法を十分理解されていない。例えば、「いじめ防止対策法第四条は何ですか」という質問をすると、大概は答えられない。また、重大事態のときは被害生徒も学校のいじめ防止基本方針に沿っていろいろなアプローチをしてくるので、基本方針をきちんと読みましたかと質問しても、通常の生徒指導の窓口で対応していくなどの回答だ。むしろ、被害生徒や保護者の方が、同法をよく勉強している。そういう意味では、年度の当初で校内研修をきちんと行い、同法の理解や当該学校での防止策、対応フローについて校内研修が重要だと思う。
 また、代理人の観点である。現状で、被害生徒の法的な代理人として弁護士等が立ち会うケースがある。そのような場合、どのような対応をしていくかも事例として有効ではないかと思う。
【委員】  この事例集を使うためにどう作るのかも、前回の会議から時間があいたので確認させていただきたいと思う。収集方法のところで、各学校から収集するのは実際にいいことだと思うが、そのときにどういう聞き方をするかによって事例の挙がり方が変わってくると思う。実際にヒアリングに行ったりして詳しく聞いた上で、書く側が伝えたいことを盛り込んだ形に書き直すという作業が多分必要になるのではないかと思う。なので、作成していく手順を少し確認させていただければと思う。
 あともう一つは、なかなか簡単ではないと思うが、できればいじめにあったけれども相談したことでこのように解決してもらってよかったと子供自体が言っていることや、いじめをやった側の生徒の、このように反省した、これをいじめだとは思っていなかったなど、
そういった生の声を紹介していただけると臨場感が出てくるのではないかと思う。その収集の仕方を併せて御検討いただければと思う。
【事務局】  収集の方法としては、本日以降事務連絡の形でまず各学校に周知をさせていただく。まず文書で募集をするが、併せて文部科学省から直接職員が今年も二五か所以上都道府県あるいは市町村にいじめの行政説明や研修会を行っているので、研修会が終わった後、教育委員会の方々と話をする中で事前にこの事例集の話もしておいて、具体的にヒアリングして聞き取っていきたいと思っている。
【座長】  もう一点冒頭にあった使い方に関して、見通しをどのように持っているか。
【事務局】  使い方としては、実際に事例集ができた後に、各学校現場に基本方針や重大事態のガイドラインと同じように可能な限り周知をさせていただく。今、委員におっしゃっていただいたように、校内の研修で実際に使って活用していただけるような形にしたいと思う。
【座長】  こういういじめの防止対策は単にサプライ側というか、教育サービスを提供する側だけの問題ではなくて、それを使う側の対応、あるいは児童生徒の声や保護者など、いろいろな声を反映させるのが一つの在り方だろうというのが委員の趣旨である。これはボリュームの問題もあるが、どういう形で収集するかもまだ今提案があったばかりなので、その辺も検討して進めていただきたいと思うが、いかがか。
【事務局】  実は児童生徒の体験談や視点は余りなくて、学校の先生がどのように対応するのか、学校の先生がどう対応したら効果的に対応できるのかという視点で事例集を作成して、校内研修で活用してもらおうというものであったが、おっしゃるとおり児童生徒の目線から気付かせるところ、児童生徒に向けてのものも必要だと思う。そういった視点で収集や作成について、工夫していきたいと思う。
【座長】  ありがとうございます。それから使い方にも関連するが、編集の方針の大きな柱について、もしも意見があれば聞かせていただければと思う。今の提案の項目の案、並びに事例の拾い上げ方をふまえての話である。まだ案の段階であるから、いろいろと皆さんから意見を賜ればいいかと思う。先ほどの委員の発言もあったが、校内研修等を有効に活用する形で出てきている。また「ヒヤリ・ハット」の文字がここの中に現れているが、リスクマネジメントの観点もある意味では一つ大きな柱になってくるかと思っている。人間が扱う事柄である以上、そこには過失もあれば、認識違いもある。あるいは無視、軽視というか、あるいは怠慢も入ってくる。こういうものにいかに備えるかということが、いじめの対応については非常に大事なことである。もちろんいじめる側がいなければ被害は起こらないわけだから、それに対する備えも当然、防止も必要だが、学校が第二の加害者にならないことも非常に大事な視点かと思っている。事例集を考えていくに当たっては、その点の考え方もしっかりと押さえた上で、方針を立てていくのが必要かと思っている。その点も一つ検討しながら、編集に当たっていただきたいと思っている。
【事務局】  今おっしゃっていただいたとおり、事務方としては、この事例集の編集の方針として、学校に対して基本方針やガイドラインや法律などそういったものを示すが、実際には情報だけが流れてきてどのように対応していいか分からないという声がある。学校がうまく対処できるようなものを、事例を通して学んでいただいて実践していただく。学校がうまく対応できることを促すためのものである。
 もう一つ、「ヒヤリ・ハット」やいじめの重大事態で誤った対応をしてしまった事例を書いている。こういったことをすると誤った対応になる、こういったことをすると非常に問題になって、ひいては児童生徒・保護者を傷つけることになることも示しながら、そういうリスクを示していくという二つの視点を考えていた。
【委員】  この全体の流れとしてはこういうことかと思う。いじめの定義、認知のところ、これは昨年もあちこちでヒアリングをされた際、各地からかなり難しい対応のところについて拾ってきたと思う。そういうものをまた今度も拾っていただきたいと思う。
 その中で、資料二のローマ数字一の「いじめの定義・認知」のところに、いじめという言葉を使わずに指導する対処例を入れようとしているのは分かる。二ページ目のローマ数字六の「いじめへの対処」が被害者を徹底的に守り通す対応から始まるように、皆で本当に関わっていくものについての対処がここにはきっと書かれることになると思う。
 そうすると、このいじめの定義、認知のところに出てくる一回きりの事案など、そういう段階でどう対処すべきかという部分のところが飛んでしまう。そこから組織的対応をしたり、早期発見が進んでいくところが飛んでしまうと、実際の現場の先生方としてはその段階でどう対処していくのかが分からなくなってしまうので、そこが分かるように機能的に作れないかという感じがしている。
 そういう意味で、特に認知のところなどでも、いじめという言葉を使わずに指導する対処例が書いてある。いじめかそうでないかという判断、つまり被害者はまだ気付いていないというケースや、SNSを使ったもの、被害者の苦痛を本人が「大丈夫」と言ったときなど、いじめなのかそうでないのかに余り神経を使うのではなく、とにかく端緒から対処につなげていくことが、もれのないように進んでいく好事例だ。そういうものを、例えば組織的対応のところでうまくいかなかったから懲戒処分を受けた事例だけでなくて、そこでうまく拾ってこのように解決できたなど、本当に小さい最初の起こりのところでどう対処するかを、対処の例としてローマ数字の六に入れていただくか、若しくは同じく一の二の認知のあたりで明確にしていただくと、見た方が使いやすいのではないかという感じを持っている。
【委員】  ローマ数字六のいじめへの対処で様々な情報、保護者との情報の共有などが挙げられている。最初にいじめを発見したり、気付いたり、実際にいじめかどうかの調査に入る前の段階から、保護者には御連絡差し上げることになると思う。初期の段階は、子供と保護者と両方の信頼関係を作る入り口のようなものだが、そこでボタンをかけ違いをしてしまうと、子供のために力を合わせるべき保護者と学校サイドが、対立をしてしまった例も少なくはないと思う。最初の連絡から始まって、保護者と子供それぞれの気持ちに寄り添いながら、きちんと信頼関係を作っていく入り口作りがなされた対処事例のようなものを挙げておくことはとても大事かと感じた。
【委員】  まず、率直な感想として申し上げたいのは、このような事例集があれば大変有り難い。研修の資料だけではなくて、例えば校内体制の整備であったり、あるいは様々な場面での対応など、そういったところで大変参考になるかと思う。
 今、学校間ピュアレビューといって、成功例や改善例の共有化といったことが言われている。いじめというのは突発的に、何か予兆があってのことではなくて、急に始まるケースが非常に多いと思う。そういった、もしもの場合の対応ということで非常に参考になる資料かと思う。ただ、本質的なものは共通であっても、小学校、中学校、高校など発達段階に応じた部分で相当なボリュームになると思う。できればまとめていただけると見やすいものになるかと大変期待をしている。
【委員】  まず、今回のこの事例集を作るに当たって、いろいろな角度があると思う。これ駄目、これ駄目という事例集は余りよくないのではないかというイメージがある。今委員からもあったが、このようにやったらうまくいくといった成功事例をしっかりとまず知らしめることが大事なのではないかと思う。これ駄目、これ駄目となるととても萎縮してしまう。「このようにやると、こういう難しい事例もそんなトラブルなくいっていますよ」という形で紹介する方が、現場の先生方に対してはいいのではないか。これは小学校、中学校、高校の先生方の御意見も是非伺いたいと思う。その視点は絶対失ってはいけないのではないかと最初に申し上げたいと思う。
 それから、細かい論点に入る。ローマ数字一の一の定義のところで「大丈夫」と答えたけれども苦痛を受けている事案である。ごまかし笑いだ。これも事例としても非常に多いのかと思う。我々が弁護士のいじめ予防授業にいくと、このごまかし笑いが日本独特の対応の仕方だと思うので、これを子供たちに分からしめる、先生にもそれを分からしめることが非常に重要なことではないかと思う。具体的な事例を出す場合には、ごまかし笑いがあったが本当はこうだったという事例があれば、それの御紹介も是非していただければと思う。
 それから、双方向性の行為、これも現場の先生方からいうと非常に難しいところだ。これをいじめと言うのかどうかは、いろいろなところに行って議論になるところである。ここは丁寧に解説をしていただくのと同時に、ローマ数字六のいじめへの対処のところで、双方向性のいじめについてはどのように対応するのかといったところまでしっかりとペアでやっておかないと、何かそこにずれが生じて現場ではとても困るのではないかという感じがしている。
 それから、定義の最後のところである。文科省の考え方からいうと、けんかはいじめではないということはこれまでの会議でもいろいろ出てきていると思う。では、けんかとは何ぞやがよく分からない。今の子供を見ていると、「けんかと普通に言われているものもほとんど全部いじめです」となるのではないか。けんかを除くというのであれば、どういう場合をけんかなのかを書くのかどうか。弁護士の中では「けんかを除く」というのはおかしいのではないか、けんかもいじめではないのかという議論もいろいろ出てきている。したがって、けんかはどういうことなのかをしっかりと定義していただく、事例を紹介していただくことが大事ではないかと思う。
 次に、ローマ数字四のいじめの未然防止のところである。ここに弁護士等による出張授業を挙げていただき非常にありがとうございます。我々弁護士は各地でいろいろな取組をしている。文科省にも見に来ていただいたところがある。これは是非具体例を紹介していただくことがいいのではないだろうか。「弁護士による出張授業があります」程度だと、具体的に何をやっているのか分からない。各地方でそれぞれ独特のものがあるので何をピックアップするのか難しいところがあるとは思う。例えば、大阪ではロールプレイを入れたいじめの出張授業をやっている、これは非常に好評だ。ほかの地域ではどこまでやっているか分からない、そういう体験型の授業もしていることなどの紹介も是非していただければと思う。
 それからローマ数字六のいじめへの対処のところで、発達上の課題を抱える子供たちへの対処である。発達に課題がある子供たちへの対処は、現場の先生方は非常に苦慮されていると伺っている。ここに対処を入れるのはいいことかもしれない。いろいろ事案を聞いていると、被害を受けた子が発達に課題がある場合に、被害を受けた側の方に問題がある形の対処の仕方をされている例がときどきある。これは一番あってはいけないことではないだろうか。「いじめられる側には何も問題はないのだ」「いじめられて仕方ないことはない」ことが前提にあるにもかかわらず、課題のある子供に対して問題がある形の対処の仕方をされている例がときどき見られる。ここは非常に丁寧に対応していただければと思う。先ほども申し上げた双方向性のいじめの対処のところも、ここでしっかりと挙げていただきたいと思う。
 それから、事例収集に関してである。これは文科省が、第三者調査委員会で調査した結果などもいろいろ収集されていらっしゃると思う。そこの分析も是非しっかりとやっていただければと思っている。弁護士会でもいろいろ聞くが、最初の調査と再調査の結果が違うようなケースも時々見受けられるところがある。そのような場合には、どういうところで問題があったのかがよく見えてくると思うので、調査報告書をしっかりと分析していくことも、非常に大事なことではないかと思う。
 最後に、先ほど委員から弁護士同席の場合が非常に多くなってきているので、それに対する対処方法をあげるべきという話があったが、弁護士が同席の場合を取り上げるのはどうかと思う。弁護士がいようがいまいがやるべき対応は一緒だと思う。もし弁護士が来ることによって対応が変わることになれば、それは学校自体のそもそもの在り方がおかしいのではないかと思う。代理人の有無ではなく、基本的に保護者側、あるいは遺族側にどのように対応すべきかをしっかりと事例として挙げていくのがいいのではないだろうか。
 仮に、代理人同席の場合の事例を挙げるとしたら、先ほど委員も言ったとおり、弁護士は別に対立構造を望んで言っているわけではなく、子供の安心・安全を守るために言っているわけなので、そこで対立関係になるようなことがないように、うまくいった事例などを紹介していただくのがベストのやり方だと思う。
 録音のことだが、録音は当然学校もしていただいていいわけだし、代理人側も当然録音はしていく。それは別にあげあしを取ることではなくて、事実解明はどうなのかを明らかにしていくために対応している。そういう具体例を挙げるのであれば、事前に弁護士会にも相談いただいてうまくいった事例などを紹介させていただければと思っている。
【委員】  法律ができてからいろいろな相談を受けているが、その中の一つに、「大丈夫」と答えただけで、苦痛を受けているとは思わなかったというのがある。どうして「大丈夫」と答えたのかという、そのいじめられている子供達のつらさや惨めさをよく分かってあげないと、その苦痛や惨めさを理解してもらえない人たちに子供たちが相談するとは思えない。だから、その辺りをよく理解してもらいたい。
 それともう一つは、「大丈夫」といっても、人権として考えてそれは不適切だと。あなたがそれをいいと言っても、人間的にはやってはいけないことだということを、小学校、中学校、高校もそうだが、成長する段階で教えていく人権教育が必要だと思う。以前もまずそれは、幼稚園の頃から教えることが必要ではないかということがあった。幼稚園、保育園のレベルからやるかどうかは別にしても、小学校の段階で本人が「大丈夫」「いい」と言ってもやってはいけないことがあることをよく教える必要があると思う。
 もう一つは、実際に相談を受ける中で、中学校に上がっていろいろな力関係の確かめがある。そのとき口げんかをすることなどからトラブルになる。両方が嫌な思いをするのだが、一方がいじめの法律を見て、先に嫌な思いをした、いじめられたと言う。言っていかないと負けだと言っておられる保護者もいる。だから、そのようになって子供が学校に行くのを渋ったときに、すぐ病院に連れて行って診断書をもらって、もうPTSDの可能性があると言ってくる。PTSDにはそのようなことはないけれども、本人が非常に精神的にダメージを受けていると言って、いじめられたことを学校に訴えてこられたり、地域に訴えられたりする方がいる。先ほど委員からあったように、いじめの定義や、どちらが加害者、被害者というレベルではなくて、いじめられた、つらい思いをした、嫌な思いをしたと先に訴えた方が今の法律でいくと被害者になると言った保護者がいる。その辺りのところをどのように対応していくのかも、事例を通して具体的に検討していただけるといいのではないかと思う。
【委員】  このような事例集は校内研修でとても重要だと思うし、現場で使っていきたいと思う。
 ただ、最近はこのいじめの問題に関して、学校を見ていると、校長先生の初期の判断、動き方の良しあしが随分と事例に影響を与えていると思っている。それで、できたら少しボリュームが増えるかもしれないが、特に大きな責任を持っている校長先生が、こういういじめのことに関して何をしっかり学んでどういった対応をしていくのかにふれていただけたらと思う。
 福井県でも、しっ皆で校長の研修を毎年春先に行うようになっている。そこで、使えるような内容等があると、現場の校長に対してこうすればしっかりと子供たちを守れるというメッセージが出せると思うので、考えていただけたら有り難いと思う。
【委員】  この項目で構成されていけば、非常に役に立つのではないかと思う。
しかし、その中で大変重要なところは、今述べられているように校内研修、あるいは対応等についての研修が学校あるいは市町村教委、県という流れの中で、どのように展開されるかということで、そういうところの連携がしっかりと取れていなければ、事例集を作っても先に進まないのではないかと思う。
 そこで、事例集が発刊された場合にはトップである教育長が校長会を開いて、方針がこうだと、それから認知の仕方はこうだと、各学校で教員にしてほしいことを、チャンスを捉えてしっかり伝えていただくことが大事かと思う。
 もっと大切なのは、年度当初のときに、いじめに関する問題点について本年度の方針はこうだと、しっかりと方針を出していただいたらどうかと思う。私もそのようにやってきたのだが、どうもこのところ何かあると第三者委員会にぽっと放り投げているような感じがする。それではなくて、もっとしっかりと考えてどういう手続きでどうなってこうだと、判断材料としてしっかりとつかまえていくことが大事かと思う。そういうことによって、学校は保護者との連携、子供との連携が取れている、子供も学校を安全と見ると思う。
 細かいことについてはまた後の時点でお話していいと思うが、総括的にはそういう流れをしっかりと皆さんにやっていかなければ駄目ではないかと思う。そこで、教育委員会と学校、教職員の流れの中でこれをしっかりと取り上げていただいて、第三者委員会も含めて進めていかれたらどうかと思う。
 これだけの事例集ができることは、学校としても教育に当たるものとしても、非常に歓迎するところである。だから、今出たいろいろな意見がその中にくみ入れられて、いじめの認知の段階やけんかとの違いなど我々が見てもなかなか難しいところがいろいろ出てくるが、一人でも多くの人が理解できるようなものが出てくればいいかと思う次第である。
【委員】  まず、この事例集についてである。学校の中で日々様々なことがリアルタイムに起こっていき一日が終わっていく中で、どうやっていじめを発見していくかがなかなか学校として難しいのが事実である。特に、そういった訴えがあったときに、まずその訴えをどう真摯に受け止めるかという中で、この定義に書かれている行為が1回きりの事案であったり、本人が「大丈夫だ」と言っている事案。それから、特に最も難しいのは、双方向のけんかに近い中で、これがいじめに発展していくケースだが、この辺りの定義に関わるところは是非丁寧に書いていただければ有り難いと思っている。
 学校の先生方も非常に経験の違いがあるし、早期発見するのはまず校長ではないわけだ。どうしても担任であり、指導している先生になる。そういうところは、この事例を通しての研修の中でも伝えていくべきところではあるので、大事であると思う。
 それから、先ほどから話が出ていたが、校長としてこういった訴えがあったときにどう対応していくかという問題については、千差万別である。そこを具体的な防止の基本方針に沿って対応していくときに、校長としてどのようなことをしていかなければいけないかは、この事例集の使われ方の中でも是非明確に書いていただければ有り難いと思う。どの校長も十分にそこは分かってはいるが、具体的な場面に遭遇したときに、すぐに対応していかなければいけないところで温度差が出てくるのが一番難しい。残念ながらそれが実態ではないかと思っている。
 それから、是非期待したいところだが、このいじめの未然防止に係る取組については、ここに書かれている内容を積極的に発信していきたいと思っている。いじめを見つけることや対応方法ばかり考えていると、学校の中で子供たちを見る目が変わってきてしまうのではないかと思う。常にいじめがあるというのではなくて、未然に防いでいくために子供たちの心をどう育てていくか。それから、子供たちがそういったときにどう声を上げていけるかも非常に大事である。特に、道徳は教科化になっていくので、このあたりの指導については、この取組の中で書かれていくことを大きく期待している。
 具体的ないじめの対処方法については、発達の課題を抱えるお子さんが関わるいじめが、昨今どこの学校でも難しい対応になっている。これに双方向のけんかが絡んだりすると、解決策がなかなか難しくなり、小学校から中学校に引きずっていくというケースも出てくる。ここをどう対処していくかは事例を通して学んでいく必要があると思っている。
 最後に、是非お願いしたいことだが、四月当初にこういった事例をもとに研修をしていくことは非常に重要であると考える。四月当初は学校がスタートした時期で大変様々な課題がある中で、この事例をどう効果的に四月当初に扱うか、また四月に扱って終わりではないので、定点的にこういった事例集を扱えるのか、そのあたりもこの中で少し出していただければ有り難いと思っている。
 学校としては、この事例集を十分に活用していくことと、認知の過程の中で子供たちの健全育成も含めて育成していかなければいけないと思っている。大いに期待している。
【委員】  今までのいろいろなお話の中で、校長の役割が非常に大切だと思っている。
 最初にお願いしたいのは、冒頭に他の委員の先生からも出ていたが、私どもの学校は私立学校である。教育委員会の基での組織はない。文科省の下の大きなくくりの中で、いじめ以外のことも含めて、どうしても私立学校のことが忘れられると思う。そのあたりのことはいつも心にとめていただきたいと思っている。
 それから、ある意味で事例集は非常に有り難いと思っている。しかし、私ども私立だけではないと思うが、自分の学校の例を見てもマニュアルを作ることが逆によくないこともある。そうでない方向で作っていただいているのはよく分かっているが、最初のうちは、できたら各学校の校長がしっかりと責任を持って周知徹底していただき、研修に使うなどして活用していかなければ作っていただいたかいがないのではないかと思っている。
 特に、前任校の学校でも、今移った学校でも、教員が自分の体験の中でしか判断せず、これはいじめではないと判断し終わってしまうところがあって、悲しい思い、つらい思いをして心に傷を負っていく子供が現実にいた。早期発見の意味から教師力をもう少しきちんと付けていかなければいけない。教師も人間なので、そういうものにたけている人間とそうでない者がいるのが現実なので、これは校長の責任としてきちんとやらなければならないのではないかと思っている。
 今、免許更新の制度等もあるが、その中にいじめに関しての講座は必ず義務づけるくらいの、あるいは教員免許の中にいじめ対応が必須項目に入るくらいのことがないといけないと思う。それから、先ほど「抱え込み」という言葉が出てきたが、学校の中で、クラスにいじめが起きると、そのクラスの学級経営が悪いような雰囲気がまだあることも聞く。そうではなく、三人以上集まったらいじめは必ずあるので、見つけたらよく見つけた、逆にそれが見つけられない教師は努力が足りないと言うくらいの認識を持つようになるためにも、これから事例集ができたら、各学校で校長が責任を持ってこれを活用する研修会等を開く義務があると思っている。
【委員】  ローマ数字六の対処のところで、発達上の課題を抱える児童生徒の関わるいじめへの対処をかなり丁寧にやっていかないと、なかなか難しいかと思っている。今私の勤めている学校にもいるが、他人とのコミュニケーションをとるときに人の気持ちを考えずにストレートにものを言ってしまう生徒がいる。それに対して周りの子たちはそれなりに理解はしているので、かなりの限界まで我慢をするのだが、限界を超えたところで何かトラブルめいたことが起こると、何だかんだ好きなことを言っていた子が今度はいじめられたとなり、周りの子が指導されるという、何だかよく分からない状態というのは現場の中で結構よく起こることである。そういう形でふだんの生活に課題があるため仕様がないことなのかもしれないが、それはそれで別の対処をしていく必要があると思う。そういう子がいる学校では、ほとんどの学校でそういった状態が起こり得るのではないかと思う。そこら辺のところをどのように判断していくのかが、なかなか難しいとは思っている。
 あと今の委員もおっしゃいましたが、特に若い教員を見ていると、使いやすさを追求してマニュアルという方向に傾きすぎると、もうそれにかなり頼ってしまう。今度の学習指導要領での対話的で深い学びではないが、しっかりと自分で考えて周りの人と話をしながらどのように対処をしていくかをしっかり考えてもらうためにも、マニュアルとしての使い勝手に関しては是非考えていきたいところかと思う。
 あと先ほど委員がおっしゃいましたが、いじめを絶対起こしてはいけないことを、四月当初に教員に向けて校長として話もしていくし、校内研修も行う。大前提として、今どきいじめの話を学校経営方針に出していない校長はいないと思う。全ての学校がそういう方向でやろうとして、いじめが起こってしまうところに根の深さがあると思う。
事例集ができて、それがどういう形で学校で活用できるのか、そのことを考えながらこの事例集がつくられていくと、とても有り難いと思っている。
【委員】  二点、話をする。
第1に、いじめ被害児童生徒や保護者とどのように情報共有をするかという、いじめの情報共有の仕方である。どのタイミングで、どのようなプロセスで情報提供をするのか。いじめ被害生徒側は、調査において何が分かっているか、あるいはどのような状況か知りたいわけだ。先ほど、成功事例をというお話があったが、いじめの被害児童生徒や保護者への情報提供の仕方という点で、うまくいったという事例があると、とても役立つのではないかと思う。
 第二に、配布先である。現職教員研修等での配布は、中期的には限界があると思う。今度、学校の先生になろうという大学生に向けて、全国の教育学部あるいは教職課程をもつ大学に配布する。あるいは、教員免許更新講習で、参考資料として紹介するなどしてはどうだろうか。草の根的だが、中期的な教育効果はあると思う。
【委員】  今いろいろ伺いながら昨年度のことも思い出したりしていた。ガイドラインや基本方針などかなり分厚いものがあって、それと重複してももったいないと思う。この事例集のトーンとしてどのように作っていくのかという文案などを今度示していただけると、具体的に考えていきやすいかと思う。既にガイドラインに書かれているのと同じようなことを事例的に書いても、重複してしまう。そういうことではなくて、ガイドラインを読んだだけでは具体的にどうやったらいいか分からない部分を取り上げることが必要だろうと思う。ガイドラインは項目ごとに、あるいは階層別にどこが何をやると書かれているので、トータルに見たときに、いじめの未然のところから最後のところまで、学校として何をしなければいけないのか、あるいはある局面を見たときに、誰がどういう動き方をしているのかが一つの事例の中に書かれているなど、何か工夫が必要かと思う。事例を読んだだけでは分からない人が出てくる可能性もあるため、それはガイドラインのどこを見ればいいといった、事例の解説が必要になるのかと思う。要するに、事例集だけで完結できるようにしようと私は思っている。実際にはそうではないことが現場に伝わる必要があるのかとも思う。是非その辺りの作り方の工夫をしていただいて、後日協議する時間があるといいのではないかと思った。
【委員】  私どもは学校現場とは一線を画すというPTAの立場なので、この事例集について意見を言わせていただくとすれば、定義のところと認知のところになるかと思う。今、様々な内容のお話が出ていたところではあるが、我々保護者の考えからすると、いじめを考えたときに加害者が悪くて被害者は悪くない、そういったところに短絡的に行きがちだ。いじめ自体は絶対にいいことではないし、加害者がいい、被害者が大変だという意識よりも、まずはこの現状のいじめの中でいじめという行為を認知したときに、どうしていかなければいけないかという元の部分をしっかりと伝えていただきたいと思っている。
 昨日まで加害者だった子が、次の日から被害者になったりという状況も今は出てくる中で、誰がいい、誰が悪いということ以前に、いじめについて皆で意識を上げていくことによって、防止をしていく事例集にする必要があると考えている。
【事務局】  いろいろと建設的な御意見を頂き、ありがたい。各委員の皆様にも団体の方も含めて、作成協力を是非積極的にしていただきたいと思うので、是非とも一緒に作ったという成果物ができればと思っている。
 事例集という名のついたものは世の中数多く出ているが、眠っているものや隅に置かれていて実際使われていないものが多いのは、我々文部科学省もいろいろなものを作っていて感じている。是非使われるものを作りたいと思っている。例えば、逆引きができる、あるいは小学校であれば低中高で多分対応が違うと思うので、設置者別や学年からも索引で引いていけるような使いやすいものにしたいと、それを理想として目指していきたいと思っている。
 いろいろ議論があったが、いろいろなところのいろいろな事例を見ていて、そもそも法律が基本的に読まれているのかと最近不安になってきている。全教職員と全教育委員会事務局職員が読んでほしいものの、読まれていないのではないかと。今回基本的な国の方針の抜本的改訂を皆さんの協力でしたが、これも皆さん読み込んでいるのか、読んでいないのか、調査をしたいぐらいだが、不安に思っている。
 そこを非常に分かりやすい事例集と、いろいろな手立て、アプローチで染み渡らせないといけないということだと思う。あとは全てを読んだ上での前提だが、ある意味重複もありながら、ただ分かりやすいことも重要かと思っている。もっと併せ読んでいただきたいのが我々の願いである。
 あと法律の求めていることで一番大事なことは、組織的に対応することだと思う。組織的に対応したから、寄り合ったからこそいい成果が出た、そこを染み渡らせないといけない。すばらしい方が一人で解決できたという事例、これはたまたま成功したかもしれないが、絶対載せたくないと思う。法律が求める世界をどうここで成功事例として腑に落ちさせていくかが非常に肝腎だ。ベテランの自分でできるという抱え込みの問題や、若い人のマニュアルに頼り過ぎる問題をどうしたらいいのかをクリアにできたらいいと思っている。
 あと一つ、けんかについては、実は昨年大きな議論をしていただいた。結局けんかを定義するのは難しいという結論になって、けんかを除くという項目自体は消してしまい、けんかやふざけ合いであってもいじめがあることを前提に見ていきましょうということになったので、少し上書きをしておきたいと思う。
 あと収集方法として、先生方に協力いただくが、PTAを通じて正にユーザーの立場から何か感じたことを収集いただく、そういうことも必要だし、また我々は御遺族の団体とも今様々なコミュニケーションを取っているので、こういう対応をしてもらったらもっとよかったのにという観点を含めたこともお寄せいただくなど、複眼的、総合的なものにしたいと思っている。
 また今後、御示唆、御指導を頂きながら、正に本当に一緒に作っていきたいと思う。どうぞよろしくお願いいたします。


≪議題(二)SNSを活用したいじめ等に関する相談体制の構築について≫
 ※事務局より資料三を説明。
【座長】  ただいま事務局から説明のあったSNSに関して、この論点ペーパーに沿って一番、二番どちらからでも結構なので、よろしくお願いしたい。
【委員】  まず、別添一の事例についてだが、ここに書かれていることは日常的に結構あり得る状態であることをまず御報告申し上げる。
 そこから出てくる課題になる。まずいじめについては、時間的な部分について長短はあるが、九五%解決に向かう。ただ、こういったネットにさらされている部分については解消できない。人間関係が改善されたとしても結果的には残ってしまう、更に拡散してしまう危険性が多分にある。
 そして、もう一つはこういったケースが、いじめの一つの定義である一定の人間関係ではなく、不特定多数であったり、あるいは全く知らない、つまり一定の人間関係が出てこないような場合においてもあり得る危険性を伴っていることが指摘できる。
 なので、このテーマについて特筆し、特別に扱うことは非常に適切な対応と思う。是非よろしくお願いしたいと思う。
【委員】  二番目のSNSを活用した相談体制に関して、文部科学省では具体的なイメージはお持ちだと思う。どのような操作になるのか。
【事務局】  もう少し具体的なイメージを説明すると、今音声通話については全国で共通ダイヤルを設けている。そこに全国二四時間三六五日、どこの県に住んでいる子がかけてきても、その番号につながれば自動的にそこの住所地の教育委員会に転送される。通常多いケースは、執務時間中は教育委員会に転送されて、土日や夜間については委託先の事業者に転送される、そういう制度である。それのSNSを使った体制ができれば理想的だと考えている。ただ、現実には全ての自治体がSNSを使った相談体制をすぐに構築するのは、なかなか難しいと思う。まずは先進的な自治体に手を挙げて、例えば○○市、ここではSNSを使った相談体制をやりますと開始してもらって、そこでの知見、経験をもとに全国展開を図っていくイメージは持っている。
 もう少し具体的に言うと、子供が電話で相談するのではなくて、チャットで「疲れた」「嫌なことがあった」と言ったら、「どうしたの?」など会話をしていってだんだん悩みを聞き出していくと。聞き出した後には必要に応じて、匿名の場合と匿名でない場合があるが、名前を聞いて取り上げられれば、しっかり教育委員会につなげて学校として対処していくということである。
【委員】  そうすると、二四時間体制でチャット、応答する人がいるということか。
【事務局】  ここも是非委員に御議論いただきたいと思うが、SNSなので、深夜まで子供がそれをやるのはいかがなものかなど、ある程度時間を切るべきではないかという意見も当然あると思っている。ただ一方で、そうしたらやっていない時間帯の場合に、緊急の訴えなどあった場合どう対処するかも含めて議論していただければ幸いである。
【座長】  今の説明に関して、これは恐らく文科省の概算要求に伴うところが出てくるだろうと思っている。試験的に幾つかの地方自治体等で協力を頂く場合、当初は国が十分の十の予算でお願いできればいいのだが、ある一定の期間を過ぎると、それが自治体の自弁の形にならざるを得ないような状況があるとすれば、その事業の位置付けと今後の見通しは大変難しくなり、手を挙げるところが非常に難しくなってくるだろうと思う。とりわけマンパワーに関して、通常の相談室の方々は、退職された方々が非常に多いため、SNSそのものを知らない方もいる。そのためにSNSを活用すると対応がどうしてもうまくいかない面もある。とすると、マンパワーをどう確保し、それを恒常的に事業として継続していけるかどうかも一つの鍵になるかと思う。今答えは非常に難しいかと思うが、その辺りを工夫していただかないと、これは地についた対策、対応策にはなっていかないかと思う。いかがか。
【事務局】  委員のおっしゃるとおりである。今の音声通話の相談だと、電話代については国が全て出している。相談員の人件費については、昼の執務時間中は通常の業務としてやっているので、それは各教育委員会のマンパワーでやっている。夕方五時か六時以降、深夜早朝、土日については相談員の人件費の三分の一を補助している、そういうシステムになっている。
 だから、これは当然財政当局との話なので、確約は申し上げられないが、音声通話の相談ダイヤルと同じような形で、夜間、深夜、土日については、一定の予算要求をする方法は考えられる。だが、当然各教育委員会で一定の負担が生じることは間違いない。
【委員】   子供、学校に行っている。そう考えると、夜間や深夜などの時間帯となると思う。学校が終わった後の夜間対応となると、人件費やセキュリティ対策が問題になる。
 また、緊急性を要する場合、具体的にどのような対応になるのか。この点は、ワーキンググループの議論になると思う。例えば、「殴られ続けて殺されそうだ」あるいは「もう死にたい」・「死ぬ」など言われたときに、受け手がそれを聞いて警察署に連絡するのか。また、相談の受け手の採用条件も考えておかないと、実施する際に難しいと思う。
【事務局】  正に今、委員がおっしゃったところが論点の1つだと思っている。参考までに申し上げると、音声通話の場合も二四時間三六五日でやっている。多くの自治体では民間団体等に夜間の対応を委託している。当然運用マニュアルがあって、本当に緊急のときは教育委員会の職員、幹部職員等に夜中でもかかってきて、そこでどうするかというマニュアルもできている。音声通話の場合と共通する部分があるのではないかと考えているが、どのような相談があるか分からないので、マニュアル等もしっかり作らなければいけないと考えている。
【委員】  重大事態になった場合、開示請求をすればSNSの内容を入手できるのか。
【事務局】  実は、各教育委員会の中で意見も聞いたのだが、SNSでやり取りをしていると、相談に対応した経歴が子供のスマホに残ってしまう、そういう前提で対応していく。そこで慎重にならざるを得ないと言っている教育委員会の方もいる。そこも含めて検討したいと思っている。
 ただ、今の子供たちは電話が苦手で、むしろSNSでいろいろなスタンプを使って自分の気持ちを表しやすい、あるいはネットでのいじめの画面をそのまま送って、「このような悪口を回されました」とぱっと送れるなど利点もあるとは考えている。
【委員】  論点ペーパーの一の(二)にある未然防止のための方策についてである。重大事態は抜きにして、この未然防止のための方策を五点考えてみた。一点目はSNSの中で仲良くなっても実際に会ってはならない、それを避けるという基本的な態度である。それから二点目の方策として、絶対に個人情報を相手に伝えない、これもしっかりと守っていかなければならないと思うし、未然防止のために必要だと思う。それから、三点目はSNSの会話の中では丁寧な会話を心掛けて相手を誹謗中傷しない。四点目はSNSの使い方について事前に十分に学習しておくこと。それから、五点目はこの使用上のルールを家庭でもできればきちんと決めておくことだと思う。
 それから、(三)の解決のための方策については、教員や保護者に相談するのが大事だろうし、二度と会わないようにすることも大事かもしれない。二つ目は不特定多数に広がってしまった情報を回収することが非常に困難であることをしっかりと認識しておくことだと思う。三点目は誹謗中傷したデータを削除したり、送らせてしまった相手に直接会って丁寧に謝罪する必要もあろうかと思う。四点目はトラブル発生に対応する専門の相談窓口を設置する必要もあろうかと思う。五点目はトラブル解決事例集を作成していただければ有り難いし、それを周知することも大事かと思う。それから、方策の六点目としては、トラブルが発生していないかどうか、第三者が監視できる仕組みを作る必要もあるのではないかと思う。これは一の方の問題である。
 それから、二の方である。利点についてはもうお話に出ているように、電話をかけるよりは気軽に相談できるので利用者が広がる可能性は高いわけだ。また、相談内容が文字と記録に残るので情報も蓄積しやすい、こういう利点もある。課題としては、自分のパソコン、スマートフォンを持っていないと相談できない。このような弱点があろうかと思う。それから、もう一つ大きな問題として、なりすまし、いたずら、狂言的なものも出てくる可能性もあるのではないかと考えられる。さらに、課題に対する三番目の対応策としては、相談室などでSNSなどを使用できる機器を気軽に使える環境を作る必要もあろうかと思う。それから、匿名での相談を受け付けず、所属や氏名、メールアドレスなどを明示した上でのみ、受け付けられるというようなことも考えられたらどうかと思う。しかし、それについてはまたいろいろな意見があるだろうから、よく議論していただいて進められたらどうかと思う。
【委員】  私はSNSをやらないので、本当になかなかよく分からないところもある。子供たちの相談をいろいろ受けると、SNSによるいじめはとても多い、相談も結構来ている。そういう意味では、この対応をしっかり考えるということは、非常に重要なことだと改めて今日の統計を見させていただいて思った。
 それで、子供たちの要望として、SNSだったら相談してみようといった声はどれだけ具体的にあるのかを最初に聞いてみたいというのがある。それと、教育委員会、学校の対応事例の四番目にある、子供たち同士でいろいろルールを教え合う、そういうことは非常にいいことかと思う。大人はなかなか分からないところがあるが、子供同士の中でそこをいろいろ議論していくところが、ある意味非常に大きなことなのではないかと、この事例を見て思っている。それから、アカウントの削除でいろいろ対応したことがあるようだ。これは復元ができたり、あるいはすぐ違うアカウントを使ってやるなど、いろいろなパターンがあるように聞いている。これも我々の今ある知識以上のところで実際に行われているのではないかということだから、ワーキンググループをやるときにもその辺をかなりよく分かる専門的な方の声や、場合によっては、子供たちからの声もそこのワーキンググループの中にうまく取り上げられる形をとっていただかないと、結局意味がないことになってしまうところがある。私も非常に興味があるので、是非そこに参加していろいろ勉強したいとは思った。
【委員】 二番のことだが、私が精神保健福祉士として聞いた話だ。
 引きこもりの方やうつ病の方などでなかなか外に出られない方などの場合、Eメールによるメール相談が有効に使われることは結構ある。実際にそれを専門でやっている人たちもいる。この利点としては既に出ているように、匿名でも相談ができることや御自分のペースで相談することができるところがあるだろうと思う。
 これをいじめに置き換えてみたときに、多分利点となることの一つは、自分のことを余り詳しく明かさないで相談してみることができることなので、最初の相談のハードルが下がると思う。しかしチャットのようにその場で即応するのは非常に難しいことだと思う。先ほど紹介したEメールのような相談の場合にも、通常は返信文を作成した上でほかの者がチェックして、これだったら誤解もないだろうと確認をした上で返信するような体制を取っている。その場の即応性の高さを求めるというよりは、匿名性を担保しながら相談のハードルを下げていって、その上でいずれはきちんとした本来の相談のベースに載せていくという、その誘導のところを中心として活用するのが妥当な線ではないかと思う。なのでLINEなどのような、今送ったから返事がすぐ来るとか、もう読まれたのに返事がないなど、そういうことまでは一気にいかない方がいいと思っている。
 あともう1つは、私がいる大学の障害学生支援のところでも実際にあることだが、非常にストレスを抱えやすい方や、ちょっとしたことで自傷行為などに至ってしまうような方が、LINEなどを使って障害学生支援をしている職員に「このようなことがあった」「これがつらかった」などをばあっと書き込む形で、実際にリストカットはしないで済んでいるなど、こういう感情の発散として使っているのも見聞きしている。なので、ちょっとでも外に発散することによって少しストレスが収まる、嫌な気持ちを解消できるなどそういう利点、使い道ももしかするとあると思う。
 ただ、これは先ほども出ていたが、受けた側がとても焦る。自分が中傷されたように思ってしまったり、それから、来たものに正しく応答しないと何かもっと重大なことになってしまうのではないかという焦りをもたらすことになる。その受け手側の教育というか、捉え方も大事にしないといけないと思う。受け手側の対応が守られるような仕組みが作られていかないと、責任を問われるので怖いから返事をしない、あるいは当たり障りのない返事になってしまうなど、結局余り機能しなくなってしまう可能性もあるかと思う。そこら辺はとても難しいと思うので、ワーキンググループを作られるのは大事なことだと思うから、そこでよく議論した方がいいことだと思った。
【委員】  私は実際にそういう相談機関のセンター長をしていて、実際に相談は原則対面で、電話予約でフェイス・トゥ・フェイスでやる。電話の相談もある。最近はそういう相談に一度来られた方々が、LINEなどで相談員に情報を入れてくる。
 そうすると、先ほど委員が言ったように、どう対応するかが大変だ。現実には、「その相談員がいつの時間帯でないといないから、情報を送っても確認できない」ということを相手に理解してもらった上で、その時間帯に対応している。ただ、相談に乗る人たちは、特にそういう病態水準の重い人たちになると「今とにかく死にたい」「今大変」と言ってくる。自殺される方が一番多いのは、例えば夜中の四時などの時間帯だから、その時間帯にとりあえず「今いませんよ」と言えるのかどうかという部分もある。受け手の方がかなり準備をしなければ難しいだろうと思う。それとこちらが返した返答を「このようなことを言っている」とまた拡散されるというのがある。その意図がなくても、そのように取ろうと思えばそう取られたりと、いろいろされると思う。その辺の具体的な相談がかなり重要になると思う。
 それと、今実際に電話でやっていて、その効果がどのくらいあるのか。SNSの利用が高まったから相談が減ったのか、その辺りのところも何かデータがあれば非常に参考になっていいかと思う。電話でのいじめの相談はSNSがあるから減ったのかどうかという部分である。
【事務局】  データについては、次の機会に示したいと思う。平成二八年に子供SOSダイヤルは無料化したので、それ以降かなり件数は増えている。ただ、SNSが増えたことによって電話が減っているのか、そこの分析はできていない。
【委員】  電話の相談については、いじめ等で世間で非常に話題になったときに教育委員会が電話対応されて、それはもう今まで何度も繰り返してこられた経験があるのではないかと僕は思う。そのうちにまた電話相談も減ってくるという経過があったと思うが、僕はSNSは別物ではないかと思う。本当に気軽に送ってくる。それに対してどうこちらが対応するかという部分で、我々もカウンセリングをするときには、フェイス・トゥ・フェイスでやる部分と、電話、チャットなどいろいろな手段を相手に合わせていかないといけないことは自分なりに十分にやる。LINEは本当に「死にたい」など、そのときにさっと簡単な2、3文を送られて、先ほど言われたように「もう切りたくなった」と言われたことに対応するのはかなりこちらのストレスがたまる行為ではあると思っている。
【委員】  委員の意見に付随する形になるが、まず会話というか対話が苦手な生徒が非常に増えているという率直な印象を持っている。特にSNSは、自分の言葉で説明をしなくても例えば写真であったり、あるいは嫌がらせの言葉であったり、要するに「こんな写真を今送られている」「こんな言葉でいじめられている」といった、その画像や言葉自体を直接自分で話さずに相手に示すことができる点では、非常に大きなメリットがあると思っている。
 なので、電話による相談を補完する意味合いも含めて、SNSは相談の窓口をかなり広げるための、非常にいい方法と思っている。委員の言うとおり、課題はたくさんありそうな気はする。ただ、最終的にはどう対応していくかが本来の目的なので、その間口を広げるという点においては非常に効果があると想像する。
【委員】  相談の間口を広げることを検討するのはとても大事なことだと思う。ただ、どう使っていくかの入り口については、ワーキンググループを作っていただいて十分検討してからモデル事業を始めるようなスタンスが大事という気がする。SNSは双方向ですから、それこそやり方によっては相談なのか、もしかしたらいたずらなのかもしれないものも含めて、次々とやり取りしていくものを周りの人が皆見ながらかえって不安になっていくこともあり得るかもしれない。メールであれば一対一でできるかもしれないけれども、相談の中で秘密を守りながらやっていくこととはまた違って、使い方によっては本当に大変な状況が、かえって拡散することも起こり得ると思う。長所短所をじっくりと見極めて、ワーキンググループで丁寧な議論をした上でモデル事業を考えるといった慎重さを持って進めていただきたいと私は思う。
【委員】  このソーシャルネットワークサービスを使った相談体制のところである。まず相談が来たならば、それが本当かどうかもたしかに分からないし、例えば「ここに電話をしてくださいね」「このメールに出してくださいね」のような感じで、いろいろとやろうとせずに、まず相談の入り口という運用をしていただいて。どこまでやるかは難しいかと思う。
 ただ、文字を打つことは今の子供たちは本当にすぐ何でもやる。ふと思ったときに出てきて、「こういうことを受けていますよ」「こんな状況がありますよ」と。緊急対応という部分はまた課題になるかとは思うが、入り口として捉えていただいて、そこからどこかに導いていく流れを明示した中でワーキングの中でも話してもらえるといいのではないかと思う。SNSの中で全てをやろうと思うと、大変なことになってしまうと思う。ただ、当然SNSの利点というのは間違いなくあると思うから、そういうところを意識していただいて議論をしていただけるといいかと思う。
 また、今携帯電話やスマートフォンに関しては保護者の意識も非常に上がってきているので、それぞれにフィルタリングをかけたり、使用時間の制限をしたり、ルール等も作ったりもしている。例えば、夜十時以降は使わない、部屋には持ち込まないなどそういったルールはできやすいところでもある。ただ、そういう部分を持ってしまうとなかなか子供たちが相談できないことも出てしまうと思う。そういう部分と併せて考えていく必要が出てくると思っている。
 もう1点、一番目のSNS上のトラブルの未然防止・解決のための方策についてである。今事例に挙げていただいたように、私たちPTAも様々なことをさせてもらってはいる。それだけではなくて、できるかできないかは分からないのだが、例えばLINEやTwitterなどに投稿する際に、現状は書いて「投稿する」を押せばもう投稿できてしまうが、その前に「投稿」を一回押したときに、「本当にこの文を上げますか」のようなアラートが出るようなことができるといいかと考えている。もちろんなれてきたら子供たちはバンバンいってしまうとは思うが、一旦そこで子供が考えられるようなシステムを構築できていくと、非常に効果的に変わっていくのではないか。すぐにできること、できないことなど様々な状況があるかと思うが、ワーキングの中で先生方を呼んでお話をするところであれば、そういったところにも話を持っていっていただけたらいいと思って、意見として挙げさせていただく。
【委員】  相談を受けるものの立場としては、いじめられた子供たちの窓口としてSNSをどう使うのかがある。それともう一つ、そういうものを使っていじめている子供たちにどう対応するかが、非常に重要ではないかと思う。
 私の経験でいうと、ほかのいじめはいじめるだけのパワーというか、優位性がかなりある。それには学力や体力などいろいろなものがある。ところがこういったいじめの場合にはそういう優位性がなくてもできるというのが一つの特徴ではないかと思っている。今までもスリッパを隠したりなどいろいろなことがあるが、これは本人が集団の中で優位でなくてもできることが1つの特徴である。そこをよく配慮してあげて、そういういじめにならない対応も必要ではないかと印象として思った。
【座長】  委員の皆さん方の今の議論の中で、被害者、それから加害者の対応という点が出されたが、、傍観者の方の情報をどう扱っていくのか、どう吸い上げるのか。そのときに匿名性との関連や、先ほど委員から出されたように、入り口で「本当か?」というような画面の工夫をするなど、いろいろな工夫はしないといけないだろうと思う。同じLINE仲間だけではなくて、ほかからもそういう傍観者の情報は入ってくるだろうと思う。それがいじめ発見、認知につながっていくことと同時に、ある程度抑止効果も期待できるところがあるだろうと思っている。その扱いをどういう具合にするかも、もう一つの論点としてこれから検討していかないといけないだろうと思っている。これは使い方、対象の問題になりますが、お考えおきいただきたいと思っている。
【委員】  これを実際にやる上では、今委員が言ったことがとても使い道があると気付かされた。余りいい表現ではないが、「言い付ける」ということを結構避ける傾向がある。なので、電話だとなかなか難しいが、例えば「何々高校の何年何組でこのようなことが起こっていますよ」のような情報提供の場がメールの中であれば、早期発見や対応について非常に役立たせることができると思う。
 要するに、被害者を想定しながら使い道を設定しようとしているが、もっと広くいろいろな情報を収集するような一つの方法として考えることも可能かと今気付かされた。大きなことではなくても、学校で是非そういったことを作りたいと感じた。
【事務局】  まず、事例集については、本日の議論を踏まえて骨子を見直した上で、各教育委員会等を通じて聞き取りや文書等で具体の事例を収集したいと思っている。また、先ほど議論がありましたユーザーサイド、子供さんの立場からの事例についても、収集方法を考えてやっていきたいと思っている。
 先ほど事務局からもお願いしたように、各委員の先生方からももし参考となるような事例、あるいは示唆があったら、事務局まで連絡いただければ幸いである。事例の集まり状況を踏まえて事例集のイメージを具体化させた上で、第二回のいじめ防止対策協議会を開催して、引き続き事例集について御議論を頂きたいと思う。
 それから、SNSを活用した相談体制の構築についてだが、この後、各委員にワーキンググループへの参加の意向を確認させていただく。ワーキンググループについては、委員の先生方以外に、民間事業者の方や各自治体で試行的な運用をされた方等を呼ぶことも考えている。他の参加者の構成については、座長に一任いただければ幸いである。その上で、ワーキンググループの開催日を調整したいと思っている。また、ワーキンググループの検討結果については、この親会議のいじめ防止対策協議会の場に示して、改めて議論いただきたいと考えている。
【座長】  委員の皆様には、大変貴重な御意見ありがとうございました。


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初等中等教育局児童生徒課