小学校段階における論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議(第1回) 議事録

1.日時

平成28年5月13日(金曜日)13時30分~16時00分(開場13時00分)

2.場所

中央合同庁舎第7号館東館 文部科学省3階講堂

3.議題

  1. 有識者会議主査の選任等について
  2. 委員等からのヒアリング(松尾豊 東京大学大学院工学系研究科特任准教授及び各委員からヒアリング)
  3. 意見交換
  4. その他

4.議事録

【大杉教育課程企画室長】    それでは、ただいまより小学校段階における論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議の第1回を開催させて頂きます。
  本日、御多忙の中、御出席頂きまして、ありがとうございます。初回でございますので、主査選任までの間、事務局において議事を進めさせて頂きますので、よろしくお願いいたします。
  配布資料でございますけれども、このタブレットの方に入れさせて頂いております。第1回資料というところをタップして頂きますと、議事次第、座席表、それから設置要綱、委員名簿、公開の取扱いについて、それから事務局からの検討状況の発表資料が資料4。それから、本日御発表頂きます資料を7、8、9、10という形で入れさせて頂いておりますので、よろしくお願いいたします。御不明な点や機器の不具合等がございましたら、事務局までお申し付け頂ければと存じます。
  それでは、委員の皆様の御紹介をさせて頂きます。資料2として委員名簿がございます。本日は御発表の関係もございますので、少し座席の方は調整をさせて頂いておりますけれども、名簿の順に御紹介をさせて頂きます。
  天笠茂委員でございます。
【天笠委員】    天笠です。どうぞよろしくお願いいたします。
【大杉教育課程企画室長】    伊佐山元委員でございます。
【伊佐山委員】    伊佐山です。よろしくお願いします。
【大杉教育課程企画室長】    石戸奈々子委員でございます。
【石戸委員】    よろしくお願いいたします。
【大杉教育課程企画室長】    礒津政明委員でございます。
【礒津委員】    よろしくお願いいたします。
【大杉教育課程企画室長】    上野朝大委員でございます。
【上野委員】    よろしくお願いいたします。
【大杉教育課程企画室長】    小川雅裕委員でございます。
【小川委員】    よろしくお願いします。
【大杉教育課程企画室長】    兼宗進委員でございます。
【兼宗委員】    よろしくお願いします。
【大杉教育課程企画室長】    隅井淳一委員でございます。
【隅井委員】    よろしくお願いいたします。
【大杉教育課程企画室長】    利根川裕太委員でございます。
【利根川委員】    よろしくお願いいたします。
【大杉教育課程企画室長】    中川哲委員でございます。
【中川委員】    中川です。よろしくお願いします。
【大杉教育課程企画室長】    中下美華委員でございます。
【中下委員】    どうぞよろしくお願いいたします。
【大杉教育課程企画室長】    堀田龍也委員でございます。
【堀田委員】    よろしくお願いいたします。
【大杉教育課程企画室長】    また、本日算数・数学ワーキングの関係で、清水静海委員が遅れて御出席でございます。
  また、本日御欠席の新井紀子委員、奈須正裕委員、無藤隆委員も本会議の委員に就任されてございます。委員の御紹介は以上でございます。
  また、本日、東京大学大学院工学系研究科特任准教授の松尾豊先生にもお越しを頂いております。
【松尾東大院特任准教授】    よろしくお願いします。
【大杉教育課程企画室長】    続きまして、文科省側でございます。小松初等中等教育局長でございます。
【小松初等中等教育局長】    小松でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【大杉教育課程企画室長】    浅田大臣官房審議官(初等中等教育局担当)でございます。
【浅田大臣官房審議官】    浅田です。よろしくお願いいたします。
【大杉教育課程企画室長】    合田教育課程課長でございます。
【合田教育課程課長】    合田でございます。よろしくお願いいたします。
【大杉教育課程企画室長】    新津情報教育振興室長でございます。
【新津情報教育振興室長】    よろしくお願いいたします。
【大杉教育課程企画室長】    鳴川教科調査官でございます。
【鳴川教科調査官】    よろしくお願いします。
【大杉教育課程企画室長】    岡田教科調査官でございます。
【岡田教科調査官】    よろしくお願いいたします。
【大杉教育課程企画室長】    度會教育課程企画室企画係長でございます。
【度會教育課程企画室係長】    よろしくお願いします。
【大杉教育課程企画室長】    それから、私、教育課程企画室長の大杉です。どうぞよろしくお願いいたします。
  それでは、主査の選任でございます。本有識者会議の主査につきましては、大変僭越(せんえつ)でございますけれども、事務局といたしまして中教審教育課程部会情報ワーキングの主査を務められ、情報教育に造詣の深い東北大学大学院情報科学研究科教授でおられます堀田先生にお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  よろしくお願いいたします。
  それでは、これからの進行は堀田主査にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【堀田主査】    主査に選任して頂きました堀田でございます。委員の皆様、どうぞよろしくお願いいたします。
  それでは、次に主査代理の選任に移らせて頂きます。私がやむを得ず会議を欠席する場合に備えまして、主査代理としましては、中教審の教育課程部会小学校部会の主査を務められていらっしゃって、広く学校教育に造詣の深い天笠先生にお願いしたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  ありがとうございます。それでは、天笠先生、よろしくお願いいたします。
【天笠主査代理】    よろしくお願いします。
【堀田主査】    それでは、早速議事に入りたいと思います。
  まずは本会議の公開の取扱いについて定めたいと思います。内容について、事務局より御説明をお願いいたします。
【大杉教育課程企画室長】    それでは、タブレット上にございます資料3の案を御覧頂きたいと思います。本会議は、検討の円滑な実施に影響が生じるものとして、本会議において非公開とすることが適当と認める場合を除き、原則公開として頂いてはどうかと考えております。
  また、会議資料につきましては、検討の円滑な実施に影響が生じるものとして本会議において非公開とすることが適当であると認める資料を除きまして、可能な限り公開とすること。議事要旨を作成、公開すること。その他、会議の傍聴や取材に関する取扱いについて定めて頂ければというふうに考えております。よろしくお願いいたします。
【堀田主査】    御説明頂きました会議の公開の取扱いの案につきまして、お諮りしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  それでは、御承諾頂いたということで、公開ということで進めさせて頂きたいと思います。
  それでは、公開となりましたので、ここで報道関係者、一般傍聴者の入室を許可することにいたします。
  なお、本日、報道関係者よりカメラ撮影を行いたい旨の申出がありまして許可しておりますので、御承知おきください。
(報道関係者・一般傍聴者入室)
【堀田主査】    それでは、傍聴者の入室が一段落したところで、議事に戻りたいと思います。
  まず初めに、小松初等中等教育局長より御挨拶をお願いいたします。
【小松初等中等教育局長】    失礼いたします。第1回でございますので、最初にごく簡単に趣旨を御説明させて頂いて、挨拶に代えさせて頂きたいと思いますが、その前にまず、委員の皆様方におかれましては、非常に御多用の皆様方でございますけども、委員をお引き受け頂きまして、また本日もお越し頂きまして、誠にありがとうございます。お礼申し上げます。
  それで、学校教育、特に小学校教育につきましては、今、学校教育全体として教育課程の改訂作業をやっているわけですけれども、元に戻って申し上げますと、学校そのものは教育基本法や学校教育法に基づいて教育を行う施設でございます。その目的というのを見ましたときに、1つは、個人個人としての能力を伸ばしていくということ、それからもう一つは、社会の一員として協力しながらやっていくという能力、この2つが掲げられているわけでございます。
  後者の方につきましては、国家社会の形成者として必要とされる基本的な資質というふうに、より具体的に私たちの社会をどうしていくかということを考え、行動していく力、その基礎的なものを小学校で教育していくという、そういう施設でございます。
  現在、中教審におきましては、こうしたいわば基本というのを踏まえながら、では、そのためにどうすればいいかというと、急速な情報化やグローバル化といった、その変化をどう受け止めて、新しい時代を生きる子供たちに何を準備しなければいけないのか。この辺がずっと議論になって、もう1年半ぐらいいろんな形で議論をしております。
  そのうちの、特に情報化の進展を中心にいたしまして、例えば進化した人工知能が生活の様々な場面で活用され、あるいは身近なものの働きがインターネット経由で最適化されたりする。今、盛んに話題になっておりますけれども、そういった予測がなされております。その中で、子供たちが基礎的な力を付け、また自信を持って、先ほど申し上げましたように、自分の人生を切り拓(ひら)いたり、あるいはよりよい社会を創ったりしていくのに力を合わせていくと、そういったことが必要である。
  こういった中で、近年、学校内外でも、実はプログラミング教育についてはいろいろな実施が進められつつあります。学校と民間が連携をした意欲的な取組も広がってきておりまして、私ども政府レベルでも、発達の段階に即した形でプログラミング教育の必修化を検討しようということになったわけでございます。
  一方で、しからば小学校段階ではプログラミング教育の意義は一体どういうもので、その時点で育んでおく力というのは一体何だろうかというようなこと。あるいは、それの効果的な実施のためにはどうしたらいいのか、教材とか指導体制とか、実際にはいろいろとこなさなければいけない課題がいっぱい出てまいるわけでございます。
  そこで、こうした点をまずは分かりやすく整理をして、日本の小学校教育の世界的にも高く評価されているいい点は生かしながら、次世代に必要な資質・能力をバランスよく育んでいくために、どういうふうに整理したらいいのだろうか。これが御検討頂きたい点でございます。
  ただ、今年度の終わり、来年の春までには学習指導要領の改訂までもっていかなければいけませんし、全体の中でのプログラミング教育、必修化するかどうか、そういったようなことについては議論が進んでいるわけでございますので、限られた時間の中でフィードバックをしていくといたしますと、膨大な御議論を全部ここでして頂くというわけにもなかなかいかないかと思うのですけれども、私どもといたしましては、今、御説明したようなことを前提として、小学校段階で育成すべき資質・能力、それから効果的なプログラミング教育の在り方、あるいはそのために必要な条件整備、こういった点について主だった事柄を整理して頂ければと考えております。お忙しい皆さんに申し訳ないんですが、フィードバックして、また中教審でやってもらうとすると、来月ということになりますが、今年の6月にかけて、ちょっと集中的に御議論を頂いて、その整理されたものをまた中教審に引き継いでいくというような形にさせて頂きたいというふうに考えているわけでございます。
  皆様方の御知見、御経験等を踏まえ、是非様々な観点から率直に御意見を頂いていきたいというふうに考えますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。
  以上で説明を終わらせて頂きます。
【堀田主査】    ありがとうございました。
  次に、本日は最初の会議ですので、主査として私からも一言御挨拶を申し上げます。続いて、主査代理の天笠委員からも一言御挨拶を頂きたいと思います。挨拶ですので、ちょっと立たせて頂きます。
  主査を拝命いたしました、東北大学の堀田でございます。これは、情報社会における教育の在り方として非常に重要な会議の大切なお役目を頂いたと考えております。精いっぱい取りまとめに尽力したいと思います。
  情報教育の分野の政策には幾つかお手伝いを差し上げてきたんですが、これまでは、情報教育は基本的に情報や情報手段の賢い使い手をイメージして教育の在り方を考えてまいりました。情報手段というのは、コンピューター、インターネット、そういうものですが、そこに限らず、私たちのもとにやってくる情報をどういうふうに子供たちが読解し、活用し、発信していくかということを情報教育の主眼に置いてきたわけでございます。
  一方で、これからの時代、今のことは重要だとしても、更に情報社会を創っていく側の創り手としての教育をもう少し強く出していかなければいけないんじゃないかというのが私の考えでございます。
  それは、今日この後、松尾先生にお話を頂くことになると思うんですけども、人工知能が有効に活用され、より高度な社会になっていくということが想定されている以上、今までのように人を支えるシステムがこれからもっと出てくると思いますし、その仕組みが分からないまま使っている、あるいは使われてしまうということのないように、人間の側の教育をしっかりとやっていかなければいけない、そういう時代なのかと思っております。
  これまでプログラミングというのは、どちらかというと専門的な教育だというふうにみなされてきたと思うんですが、もちろん専門性は学校段階が上がった段階では当然必要だとしても、せめて小学校の段階で、その入り口部分をどういうふうに体験的に行っていくことができるかということの検討が、私どものこの会議のミッションだというふうに理解しております。ですので、どういう場面で、どういうふうに行っていくことが現実として可能なのかということについて具体的な検討を進めてまいりたいと思います。皆様、御協力をよろしくお願いいたします。
  それでは、天笠主査代理、お願いいたします。
【天笠主査代理】    引き続きまして、主査代理を引き受けさせて頂きました天笠から御挨拶をさせて頂きたいと思います。
  先ほど小松局からの話もありましたように、現在、学習指導要領改訂の話が進んでおります。それで、私も小学校部会等々で、その検討の一員として加わらせて頂いております。その関わり等々で、今この場に立たせて頂いているんではないかと思っております。
  皆様も御承知のとおり、我が国の義務教育は、ある意味では世界に大変誇るべき一つではないかと私は認識しております。とりわけ小学校教育は、その中でも一番しっかりとした、また歴史のある、そういう伝統等々を築きながら、今あるんではないかと思っております。
  そういう小学校の教育課程について、それぞれの時代の課題を引き受けながら、それぞれそこで先人が検討し、知見を重ねながら今があるわけでありますけれども、このたびは、頂きましたこのテーマをどう受け止めて、どうそこから知見を集積していくかということが私どもの引き受けなければいけない役割ではないか。すなわち、情報化が進展する中で次代にどういう資質・能力を育てる、ついては、そのためにどんな知見をこの場で集積していったらいいかどうか。皆様方のそれぞれの御知見をここで開示して頂き、それらを一つ一つ重ねて、さらなる発展に向けていければいいかなと。及ばずながら、そういうところで役割を引き受けさせて頂ければと思いますし、皆さんの御協力とともに、一緒に進めていければと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【堀田主査】    ありがとうございました。
  それでは、本日は東京大学大学院特任准教授の松尾先生及び委員の皆様のうちの数名の方々にヒアリングを行います。ヒアリングの内容は、プログラミング教育に関する御発表としてお願いしているわけですが、次第の順番で続けて御発表頂きまして、最後にまとめて質疑応答と意見交換の時間をお願いしたいというふうに考えております。
  それでは、早速、恐縮ですが、松尾先生から御発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【松尾東大院特任准教授】    東京大学の松尾と申します。人工知能の話をさせて頂きます。恐らく人工知能の技術がこの先どういうふうに変わっていくのか、社会に対してどういう影響を与えるのかということが、今後の教育の在り方にも大きな影響があるということでお話しさせて頂くものだと思っております。
  今、人工知能がブームになってきておりまして、国全体でもこの技術を進めていこうという動きになっておりますが、歴史的に見ると3回目のブームでして、1956年から人工知能の研究がされておりますので、今年でちょうど60年、そういう分野です。この60年の間にブームが来ては冬の時代が来るというのを繰り返しておりまして、今回が3回目のブームということになります。
  この3回目のブームで一体何ができるようになったのかというと、いろいろあります。よく出てくるキーワードとしてはワトソンですとかSiri、Pepper、将棋の電王戦、あるいは先日のアルファ碁、それから自動運転等々、そういった技術をよく耳にするわけですけれども、技術的な大きなブレークスルーというのは実はそれほど多くなくて、技術的に大きなブレークスルーが起こっているのはディープラーニングというところです。僕は、これをディープラーニング革命というふうに言っていますが、実はそれ以外のところというのは昔から少しずつ良くなっているだけなので、それほど大きなイノベーションが今起こっているわけではない。
  ところが、このディープラーニングの部分だけは非常に大きなイノベーションが起こっています。それは何なのかというと、一言で言うと認識ができるようになった。コンピューターに認識ができるようになったということなんです。例えばインターネットを使っていると、たまにログインに失敗すると変な数字、アルファベットみたいなのが出てきて入力しろ、ゆがんだ数字みたいなのが出てきて入力しろと言われることがあると思うんです。あれは何であるかというと、人間判定装置なんです。つまり、ログインしようとしているのが人間なのか、プログラムなのかというのを判定するために、要するにスパムを防ぐためにああいうゆがんだ数字を入力させる。
  つまり、それはどういうことかというと、人間にはあのタスクは非常に簡単なんです。ところが、コンピューターにはできないです。どんなハッカーでも、ああいうゆがんだ数字を読み取って自動で入力するというのができなかったので、人間判定装置として機能している。つまり、認識するというのが人間には非常に簡単なのに、コンピューターには全然できなかったわけです。
  今でも、監視カメラ、いろんなビル、街角に監視カメラがありますけれども、監視カメラで監視しているのは人間なんです、後ろにいるのは人間なんですね。あるいは、何かあったときに巻き戻して見るわけです。つまり、監視カメラを見て、変なことが起こっているかという認識をするのは、今、人間しかできないんです。コンピューターができて以来、100年近くの間ずっとそうだったんです。ところが、それが今変わってきたんです。ディープラーニングでコンピューターが認識できるようになったというのが、僕は唯一と言ってもいいと思うんですけれども、ここが変わったということなんです。
  そうすると、何が起こるかというと、運動の習熟、言葉の意味理解ということが起こっていくんですけれども、少しお話ししますと、今、犬、猫、オオカミ、人が見て分かりますよね。ところが、これをコンピューターにやらせようとするとすごく難しい。なぜ難しいかというと、例えばこの3つを見分けたいときに、目の形が違うなとか、耳の形が違うなということで、例えば目が丸ければ猫でしょう。目が長くて耳が垂れていれば犬で、耳がとがっていればオオカミでしょうというようにすると判定できる気がします。
  ところが、こういうのがいて、目が長くて耳がとがっているんだけれども、オオカミじゃなくて犬です。シベリアンハスキーですけれども、何となくオオカミのところを見るとオオカミっぽくて、犬を見ると犬っぽいと思うんですけども、何でオオカミはオオカミっぽく見えて、犬は犬っぽく見えるのかというのを、ちゃんと述べられる人はいないと思うんです。すごく難しい。つまり、どこに注目するかというのを人間が見つけている限り、幾らやっても画像認識、認識というのはうまくいかなかったんです。
  ところが、このディープラーニングの技術で、どこに目をつければいいかという自体を自動的に学習できるようになってきて、画像認識の精度がすごい勢いで今上がっています。2012年にブレークスルーがあったんですけれども、それ以来、右側にある数字は小さい方がいいんですけれども、人間のエラー率、間違い率というのが5.1%なんです。それに対して、この数字がどんどん下がってきて、昨年2月の時点でコンピューターの画像認識のエラー率というのが4.9%。そして、最新だと3.6%。つまり、認識するというのが人間の能力をもう超えているわけです。
  そうすると、次に何が起こるかというと、今度、運動の習熟というのができるようになるんです。機械とかロボットが何回も繰り返しやっているうちに上手にできるようになるということが起こります。これはどういうことかというと、人間でもサッカーボールを蹴っていると、だんだん上手に蹴れるようになるんです。ゴルフボールを打っているうちに、だんだん上手に打てるようになる。どうしてかというと、たまたま上手に打てたら、今のは上手に打てたなと思って、そのやり方を繰り返すんです。つまり、報酬が与えられると、その前にやった行動を強化するという仕組みで学習される。
  強化学習というふうに言いますけれども、今までも強化学習の仕組みはあったんですけれども、コンピューターにとって目が見えていなかったんです。こういう状況では、こういう蹴り方をした方がいい、こういう打ち方をした方がいい、こういう状況というのを認識できていなかったんです。したがって、強化学習を使ってもうまくいかなかったんです。ところが、認識の精度が上がると、強化学習を使うと、ロボットが例えばレゴを組み立てているうちに組み立て方が上手になるとか、畳み方が上手になるとか、そういうことが起こっているんです。
  今まで行動が熟練するというのは、ロボット、機械にはできないとされていたわけです。ところが、それが今変わりつつある。そうするとロボットも、人間が上達するようにどんどん上達する。上達した結果としての製品を売ればいいということに変わってくるわけです。
  ロボットが何回も試行錯誤しているうちに上手におもちゃの部品を組み付けられるようになったり、それから自動運転、運転の仕方が最初は下手なんですけども、何度も試行錯誤しながら上達してきたりするということが現実に今起こっています。
  次に何が起こるかというと、言葉の意味理解ができるんです。今の人工知能というのは、基本的には言葉の意味理解ができていません。Google翻訳なんかで翻訳できるように一見見えますけれども、あれは何をやっているかというと、日本語のある文字列が英語のある文字列に置き換わる確率というのを計算して、それが一番高いものを選んでいるだけなので、言葉を聞いて、その意味が分かって訳しているわけじゃないんです。ですから、非常に変な文がたまに訳されて出てくるわけです。
  ところが、言葉の意味理解をするというのはどういうことかというと、言葉を聞いてイメージを思い浮かべる、あるいはイメージを言葉にして表現する。僕は、言葉の意味理解というのは言葉とイメージの相互変換能力だというふうに思っています。それが一部できるようになりつつあります。
  例えば左上の写真、男の人がギターを弾(ひ)いていますけれども、この写真を入力すると、man in black shirt is playing guitarという文が生成されるという仕組みがもうできているんです。
  左下、女の子がジャンプしているんですけれども、これを入れると、girl in pink dress is jumping in airという文が生成される。つまり、写真を見て、それをディスクライブすることができるという技術があります。
  一方で、昨年末にこの逆ができるようになってきていまして、例えば左上ですけれども、A very large commercial plane flying in blue skiesという文を入れると絵が出てくるんです。飛行機が空を飛んでいるっぽい絵が出てくるんです。そのblue skiesをrainy skiesに変えると、雨の中を飛んでいるような絵になるんです。
  左下、象が砂漠を歩いているというと、それっぽい絵が出てきますし、野原を歩いているというと、それっぽい絵が出てくる。これは、画像を検索しているんじゃなくて描いているんです。ですから、現実にあり得ないような絵も描くことができて、例えば一番右のA stop sign flying in blue skies、止まれ標識が空を飛んでいることなんかあるはずないんですけれども、そういう文を入れると、本当に止まれ標識が空を飛んでいるかのような絵を描くことができるんです。
  これは、つまり我々が子供のときに、お話を聞きながら、その情景を頭の中で思い浮かべたということと同じようなことができるようになっている。そうすると、この技術を進化させていくことで、コンピューターが言葉の意味を理解して翻訳する、要約する、こういうことができるようになるはずなんです。
  この変化がかなり早い段階で起こるだろうと思って、2030年ぐらいまでに起こるんじゃないかということを予想したのが2年近く前です。当時、論文で出ていたところ、技術的に実現されていた部分を赤の三角で書いています。ところが、これがどんどん進んできて、もう5番あたりまで来ているんです。この赤のところが5番あたりまで来ちゃっている、すごい勢いで進んでいます。つまり、認識をするということは、今までコンピューターは非常に苦手だったんですけれども、そこを乗り越えたので、その後の進化は非常に速いんです。
  そうすると、その先は一体何だろうと考えると、ここら辺は難しいんですけれども、例えば数的な操作ができるようになる。対象のモデル化、理解ができるようになる。あるいは意識・自己・再帰、こういうのに関わるような技術もできるかもしれないというふうに思います。このぐらいすごく速いスピードで起こっているということです。
  人工知能という言葉はよく聞かれますけれども、今回の人工知能というのは実は2階建てだというふうに僕は思っています。1階部分はデジタル革命、つまり、情報技術というのはすごいですよ、データというのは重要ですよということを人工知能という擬人化によって多くの人が理解し、考えられるようになってきたということです。これは、シリコンバレーではもう10年も20年も前から起こっていることなので、今更という感じではあるんですけども、社会全体にとっては非常に重要なことなので、デジタル革命が本当に起こっているということは一つ重要なことだと思います。
  もう一つ、2階部分がディープラーニング革命で、ここは、本当に最先端の技術によって認識というのがコンピューターでできるようになりました。その先に運動の習熟、あるいは言語の意味理解という非常に本質的なブレークスルーが待っていますよという世界です。
  このディープラーニング革命というのは日本にとって相性が非常にいいというふうに僕は思っていまして、認識の技術というのは、例えばカメラの技術ですね。こういうカメラ、イメージセンサーというのは、日本は非常に強いです。それから、認識した上で上手に動けるというのはロボット、あるいは機械の技術ですから、これも日本は強いです。例えば自動運転の車だけじゃなくて、産業用ロボット、それから農業用の機械、建設用の機械、こういうのも全部、日本は強いわけですね。そうすると、そういう企業がどんどん伸びていくことによって、日本経済、再び力を取り戻すことができるんじゃないか。
  あるいは社会問題に焦点を当てると、今、日本で困っている問題の多くが認識、あるいは運動をするのに人手が足りないということなので、例えば農業分野にこういう習熟したロボット、上手になったロボットを適用すると休耕地が耕せ、除草・防除ができ、農家の方の収入が上がるかもしれない。
  それから、介護分野に適用すると介助も楽になりますし、高齢者の方もより自立した生活ができるかもしれない。廃炉の作業もできるはずですし、防災もできる。こういった技術を海外に展開していくことで、新たな輸出産業になるんじゃないかというふうに思っています。
  大ざっぱには、地方で労働力が不足しているので、地方で技術を育て、それを海外に展開するということだと思います。
  ここから少し社会の話になってきますけれども、こういった技術を背景にすると、例えば自動運転一つをとって考えても、倫理とか社会制度の議論をきちんとしていかないといけない。事故が起こったときに責任は誰が持つのか。それから、人工知能を悪用すること、犯罪に使ったり、軍事利用したり、こういう可能性について、我々はどう考えていくのか。
  それから、人工知能が知財を生み出す場合、作詞、作曲したり、絵を描いたり、あるいは発明したりといった場合に、その権利はどうなるのか。
  それから、認識ができるようになると監視カメラの能力が非常に上がりますから、事故とか犯罪が非常に減る社会が来ると僕は思います。一方で、ずっと監視カメラに見られているのは嫌だなと感じる人も多くいるはずで、ということは、人は本来見られない権利というのを持っているんじゃないかとか、そういった議論も必要になってくると思います。
  よく映画で人工知能が人間を襲うというようなものがあります。先日も、マイクロソフトのTayというのがヒトラーを礼賛するような発言をしたというので話題になっていましたけれども、僕は、基本的にはこういうことはないと。それは、知能と生命の混同だというふうに思っています。
  知能というのは、目的が与えられたときに、それを達成する手段のことを指している。目的解決の力、問題解決の力を指しているというふうに思っていまして、一方で生命というのは目的を持っている。それは、例えば自分を守りたいとか、子孫を残したいとか、仲間を助けたい、こういう生命としての目的を持っている。人間は生命プラス知能ですから、生命としての目的を高い知能を使って達成しているということだと思うんです。人工知能の技術というのは知能の技術ですから、問題解決の力が上がるということです。
  そうすると、どういう目的に使うかということの方が重要になってきて、それは悪用であり、犯罪、あるいは軍事利用、悪い人が悪い目的で使うということをどうやって防いでいくかということが必要になります。
  悪い人が悪い目的で使うのはよくないというのは当たり前なんですけれども、実はそんな単純な話ではなくて、例えば自動運転が事故を起こした場合どうするのかといったときに、僕がよく答えるのは、事故を起こすのが嫌なんだったら、じゃ、制限速度を時速10キロにすればいいじゃないか、そうすれば誰も死にませんよ。ところが、制限速度10キロの自動運転車は誰も乗りたくないと思うんですね。
  つまり、それは、安全性と利便性ということがトレードオフになっていて、どっちかを上げると、どっちかが下がるという関係の中のどこを選択するんですかという問題を我々は解かないといけない。今までは、時速60キロにしましょう、あとは安全運転をしましょうということで、何となくその問題をごまかしてきたところがあると思うんですけれども、そうじゃなくて、これが自動運転になると、制限速度を10キロにしてもいいし、60キロにしてもいいし、それこそ300キロにしてもいいわけです。この中のどれを選択するのか。つまり、人の命と経済の効率、どちらをどのぐらい優先させればとるのかという非常に難しい問題を我々が社会で決めていかないといけない。
  それは、詰まるところ、我々はどういう社会を創りたいのか。幸せで持続可能な社会とは一体何なのかということ自体を議論していく必要があるというふうに思います。
  職業の変化についてもいろいろ言われて、人の職業がなくなるんじゃないかとか言われるんですけれども、基本的には、先ほどお話ししたように、問題解決の力が上がるということだと僕は思います。特に認識系とか運動の習熟というあたりで変化が一番大きいと思います。
  そうすると、どういう能力が重要になってくるのかというと、ますます対人間のコミュニケーション能力というのが重要になってくるというふうに僕は思います。恐らく低付加価値のサービスはロボットとか機械がやるはずだと思うんですけれども、高付加価値のサービスというのは人間がやり続けるというふうに僕は思います。今でもカフェに行って200円とか300円でコーヒーを頼むと、カフェの店員さんは後ろでボタンを押しているわけですね。お客さんが自分でボタンを押せばいいように思うんですけれども、やっぱり店員さんが出してくれるのがうれしいわけですね。ホテルでもレストランでも、高いところに行けば行くほど人がたくさん入る。
  つまり、人間というのは社会的な動物なんで、人が何かやってくれるというのは非常にうれしい。これは、長い進化の過程でできてきたものなんで、そんな簡単には変わらないというふうに僕は思います。
  それから、目的をどういうふうに設定するか。つまり、自動運転であれば、経済の効率と安全性をどういうふうにバランスさせるのか、あるいは、いろんな意見がある人の意見をどうやってまとめるのか。こういったものをやる仕事も非常に重要になってくるというふうに思います。
  それから、センサー・創造性と書いているのは、要するに人工知能ができるといっても、与えられた目的に対して、それを達成するような手段がどんどんパワーアップしていきますよということであって、生命に由来するものというのは長い進化の過程でできているので、そんなに簡単にまねできるものじゃないですね。つまり、おいしいとか、きれいとか、そういった感覚というのはコンピューターで代替するのは非常に難しいというか、ほぼ不可能だというふうに思っています。
  そう考えると、センサーとしての人間、あるいは価値観を判断するセンサーとしての人間の役割というのは非常に大事になる。更に、それを分かった上で新しいものを創り出す創造性というのは人間にしかできないことなんだと僕は思います。
  あと、僕が一番重要だと思っているのが、こういった人工知能が使われる社会が来る上で、日本がこういった技術のプロバイダーになれるのか、ユーザーで終わるのかというのは国全体にとって非常に大きな差だと思っていまして、正にこの10年、20年で、我々、検索エンジンを使うようになり、ソーシャルメディアを使うようになり、生活が非常に便利になったと思うんですけれども、それの技術を提供しているのはシリコンバレーの会社なので、日本の経済にはほとんどいい影響がおりてきていないということだと思うんです。
  この人工知能・ロボットが社会を大きく変えていく、そういう技術、それから、製品、サービスを日本が主体になって作ることができれば、日本経済というのは非常に強くなると思いますし、それを単なるユーザーになるんであれば、社会全体としては便利になるかもしれないですけれども、経済は非常に縮小していくんだろうというふうに思います。
  したがって、こういう数理能力、プログラミング能力、ハードウェア構成能力、こういったあたりは非常に重要なんじゃないかなというふうに僕は思っています。
  以上なんですけれども、まとめますと、ディープラーニング革命というのは、認識、運動の習熟、言語の意味理解、こういう変化が起こっていくということです。こういう技術を創り出せる人間が重要になりますので、日本がこういう技術を提供できるような国になっていくということは非常に重要じゃないかというふうに思います。
  一方で、目的の設定ができる人間、いろんな価値観をバランスさせるという能力は、今後、人間全体にとって非常に重要になってくるというふうに思います。
  最後に、問い掛けなんですけれども、恐らくディープラーニング革命、技術の進展によって、僕の予想では10年から15年ぐらいで自動翻訳ができちゃうんですね。そうすると、ドラえもんで翻訳コンニャクという道具がありましたけれども、日本語でしゃべると英語になって出てくる、あるいは英語で聞いても日本語で聞こえるという技術ができちゃうとしたときに、日本の社会全体にとって相当大きなインパクトがあると僕は思うんです。
  例えば優秀な学生も、東大に行くんじゃなくてアメリカの大学に行くというハードルを非常に低くできてしまうかもしれない。それから、僕が今日、もう仕事を辞めたいと思ったときに、明日からパリで仕事をするということもできるかもしれない。人材の流動性が非常に高まると思いますし、それが故に日本固有の文化とは何かとか、日本人の強さとは何か、そういったものも改めて問われるんじゃないかなというふうに思います。
  ここに対する答えを僕は持っていないんですけれども、この自動翻訳が来た後の世界というのを想定して国の政策を作っているところはほとんどないと思うので、これは非常に重要なことだと僕は思いますので、是非議論する際にも参考にして頂ければというふうに思います。
  以上です。ありがとうございました。(拍手)
【堀田主査】    松尾先生、ありがとうございました。このままプレゼンテーションを続けると先ほどお伝えしたんですが、松尾先生、15時半に御退室ということで伺っていますので、大変恐縮なんですけれども、まず松尾先生への質疑応答については、今、この場でお願いしたいというふうに考えているところでございます。時間は、そんな十分にはないんですけども、せっかくお話を頂きましたので、いろいろ質問やそういうことができればと思うんですが、委員の皆さん、いかがでしょうか。
  兼宗委員、どうぞ。
【兼宗委員】    兼宗と申します。大変面白いお話をありがとうございました。私は、工学部の方、大学の方で教えているので、ディープラーニングの進化というのは非常に期待をしておるんですけれども、逆に小学校から高等学校までというのを考えたときに、AIの仕組みを作るのは一部の技術者かもしれませんけれども、今のお話で様々な社会的な影響を含めてあるというお話なんですが、教育面ではどういったことを準備されたらいいかというお話を頂ければ幸いです。
【松尾東大院特任准教授】    ありがとうございます。小学校、中学校というあたりは、僕、正直なところ、20年先の小学生、中学生が何を勉強したらいいかは分からないんですけれども、少なくとも今の小学生、中学生、あるいは今後10年、15年ぐらいまでの小学生、中学生というのは、まず間違いなく、人工知能とか、ロボットが活用される社会になったときに、それを使いこなせる側の人間になるための教育というのが多分重要なんだろうというふうに思います。それから先の話は、本当に人間性とかになっちゃうのかもしれなくて、その先はちょっと分からないんですけども、少なくとも、そういう時間の範囲の中では、そうだというふうに思っています。
【堀田主査】    ありがとうございました。
  ほかに委員の皆さん、いかがでしょうか。余りないチャンスですので是非。じゃ、どうぞ。
【伊佐山委員】    今回、テーマは小学校でのプログラミングというピンポイントで、そもそもプログラミングを小学校で持ち出すのかという、そもそも論もあるんですけれども、正に人工知能みたいなものが一般的になったときに困らないようなベーシックなスキルを身に付けましょうという中で、今回、もしプログラミングというのをとったときに、プログラミングも言語自体、はやり廃りがあるので、特定のものだけを学ぶのがいいのかという問題もあると私も感じていて、ちゃんと学校のカリキュラムとして技術的な適応力を考えるときに、松尾先生の場合、多分、大学生が相手だと思うんですけれども、小学校時点でこれならやってもいいかな、こういう授業だったらありかなとか、こういうツールは使わせてもいいんじゃないかみたいな、もし具体的な御意見があれば伺いたいと思います。
【松尾東大院特任准教授】    ありがとうございます。僕も実は小学校4年生ぐらいのときに親にポケコンというポケットコンピューターという小さいのを買ってもらいまして、プログラミングって全然分かっていなかったんですけども、書いてあるとおりやったら何か動いて、こんな面白い世界があるんだと思って、当時、BASICだったんですけども、自分でどんどんやってという経験があって、ただ、やっぱり、そういう取っかかりというのは与えられないとなかなか難しいと思いますし、それから、今のプログラミング言語って、どうしても最初のところが一番大変で、面白さが分かってくるとどんどん進めるんだけどもというところがあると思っていまして、やっぱり最初の入り口をできるだけ簡単にしてあげる。プログラミング的な考え方を身に付けるというのを、非常に簡単なやり方でやることが重要なんじゃないかなというふうに思います。
【堀田主査】    ありがとうございます。
  利根川委員、どうぞ。
【利根川委員】    貴重なお話ありがとうございました。私、この間、ディープラーニングのチュートリアルみたいなのをやってみて非常に楽しいなと思っていたところで。
  このディープラーニング、ただ、学習は大分先の段階になるかなと思っていまして、それまでにプログラミングですとか、データベース的な部分ですとか、数学的な部分、いろいろ必要な要素があるかなと思うんですけれども、そういったものを列挙頂けると、ここにいる皆さんがどういうのが必要条件になって、初めてこの世界に届くかなというのが分かるので、もしよろしければお願いいたします。
【松尾東大院特任准教授】    ありがとうございます。ディープラーニングに特化して言いますと、基本的には数理的な能力、プログラミング能力、ハードウェア能力という3つだと思います。
  Webのプログラマー、すごくいいWebサービスを作れるような技術者というのは、実は数理的な能力、そんなに必要なくて、むしろ、デザイン的なセンスや、ユーザーの挙動を考えるようなセンスという方が重要だと思うんですけれども、ディープラーニングの場合は、実はそっちよりも、むしろ数理的なバックグラウンドの方が重要で、中は最適化問題なんですね。なので、線形代数とか、微分積分とか、そういったあたりをきちんと分かっていること、かつプログラムができること。それから、若干のハードウェア的、例えばGPUというプロセッサーを使うんですけれども、そういった周りの技術、あるいはロボットとか機械のモーション系の技術が分かる、そういうスキルセットになるかなというふうに思います。
【堀田主査】    ありがとうございました。
  上野委員、どうぞ。
【上野委員】    ありがとうございます。CA Tech Kidsの上野と申します。
  人工知能が社会の中で普通になってきたときに、人間が取り得る選択肢として作り手になるということか、若しくは人工知能と共存する中で人間らしい付加価値を出していくかというAかBかということだと思うんですけれども、願わくばAの割合が多い方が国としても発展していくかと思うんですが、そういう意味で、現状、日本の企業ですとか研究界というのは人工知能の中でどれぐらいのプレゼンスといいますか、存在感が示せているんでしょうか。
【松尾東大院特任准教授】    ありがとうございます。正にAになる、前者になるというのがすごく重要だと思います。正直なところ、ディープラーニングという技術に関する研究開発では日本はかなり遅れています。今、国全体でも予算を付けて前に進めていこうとしていますけれども、この世界、速くて、やはり2、3年の差は幾ら走っても埋まらないというか、広がっていくかもしれないというような状況だと思います。
  ただ、面白いのが、先ほどお話ししたように認識・運動・言語という順番で進んでいくんですね。そうしたときに、次に重要なのは運動なんですけども、ここは日本企業が結構押さえていて、自動車もそうですし、産業ロボットもそうですし、機械系というのは日本が強いので、どうしても海外のディープラーニング研究者、運動系になると苦手意識がすごく強くて、それ、なかなかやり切れていないんですね。
  したがって、僕は、この運動系の技術進化の間にうまく逆転することが可能なんじゃないかなというふうに思っています。
【上野委員】    ありがとうございます。
【堀田主査】    ありがとうございました。
  ほかにいかがでしょうか。では、中川委員、最後にいたします。
【中川委員】    マイクロソフトの中川です。どうもお世話になります。
  プログラミングを小学校とかの教育に持ち込んだときに、我々ITの立場からするとクラウド、AIが新たなITに関連するような職業を生み出すというところを強く感じていまして、なので、プロのプログラマーを育成するということも経済を牽引(けんいん)する、社会人を育成するという意味ではすごく意味があると感じる一方で、先ほど別の委員の方からもありましたように、特定のプログラミング言語をマスターしてプロフェッショナルになるというのは、多分、大学でやればいい話で、かつディープラーニングの世界になってくると、ひょっとするとコードはコンピューターが書いてくれるかもしれないというような話もあって、自動翻訳のシステムを英語の先生にお見せしたときに、英語の勉強をしなくてもよくなるかもしれないですね、それやるより別の勉強をした方が、機械に任せた方がとおっしゃられて、何も言えなくなったことがあったんですけれども、小学校でプログラミングを勉強してもらうときに、未来のプログラマーになることに割と大きな比重を置いてするべきなのか。今の子供ですから10年後、15年後の範囲だと思うんですけれども、それとも、いわゆるコンピュテーショナルシンキングのおっしゃられたような部分を非常に強く意識するべきなのか、先生はどうお考えでしょうか。
【松尾東大院特任准教授】    ありがとうございます。僕のイメージでは、もちろんプログラミング言語というのははやり廃りがありますし、本当に細かいプログラミングのところは機械でできるようになるのかもしれなくて、むしろ、どういうシステム、プログラムを作ったらいいのかというのを判断する部分だと思うんですね。そのときに、例えば弁護士さん、法務の話と若干近いと思うんですけれども、全員、弁護士という専門家になりますかというと、そんなことないと思うんですけれども、やっぱり世の中にはいろんな法律的な問題があるわけだから、弁護士に相談できるぐらいの法律知識はちゃんと持っておかないといけないということだと思うんですね。
  ですから、本当に優れたプログラマーをたくさん量産するというよりは、プログラマーの方がどういうことをやってプログラムを作っているのかというのを理解した上で、それに適切な仕事を任せられるということだと思うんです。今だと、そこが分かっていないので、めちゃくちゃなことを言ったり、新しい技術が出てきても、これをプログラム的にどう使うのかというのが想像できなかったりすると思うので、そういうところなのかなというふうに思います。
【中川委員】    ありがとうございます。
【堀田主査】    ありがとうございました。実は僕も聞きたいことが1つあったんですけど、今の話と重なっていまして、少しだけお伝えすると、今はコンピューターに何か頼んでやってもらっているので、Siriなんかそうですよね。面白いなと思うんですけれど、そのうち、どれがコンピューターがやっていることで、どれが人がやっていることか分からなくなるような気がしていて、それを私は、今ちょっと怖いなと思うんですけど、これから育ってくる子供たちに、このあたりはどういうふうに教えておけばいいのかということについての先生の御見解を伺っておきたいんですけど。
【松尾東大院特任准教授】    そうですね、今だとクラウドソーシングみたいなのもあって、クラウドソーシングを呼び出すこと自体をプログラムからやるとかなると、プログラムで使っているんだけど、裏で人が働いているとか、そういう状況もあるにはあるというふうに思います。
  ただ、今の時点だと、やっぱりプログラムでできることと人ができることというのは、先ほどの認識というのが関係するかどうかとか、そういう意味で仕事の質が大分違う面があるとは思いますが、そこもだんだんコンピューターの側の技術が上がってくるので、そんなに違いはなくなってくるのかなというふうにも思います。
  そうであるからこそ、やっぱり人の側は、逆に付加価値のある仕事って何なのかというのをどんどん追求していかないといけないと思いますし、社会全体として考えると。ある仕事を人間がやるのとコンピューターがやるのと本当にどっちがいいのというのを純粋に比較できるというふうになってくるので、より本質的な能力とか考え方が求められるということかなというふうに思います。
【堀田主査】    大変示唆的なお話をありがとうございました。ちょっとお時間の関係もありますので、ここまでとさせて頂きます。どうもありがとうございました。
  続きまして、これから次々にまた御発表頂くんですが、時間が非常にタイトでございまして、今日は2時間半とってありますけども、さほど時間はありませんので、少しでも短めにお願いしたいと思います。
  まずは教育課程の改善に向けた検討状況ということで、事務局から御説明を頂きます。お願いいたします。
【大杉教育課程企画室長】    失礼いたします。高いところから大変恐縮なんですけれども、現在、冒頭に主査からも御紹介頂きましたとおり、学習指導要領の改訂に向けた検討が進んでおります。先ほど松尾先生からも御発表頂いたような社会的変化ということを踏まえながら、今後の教育どうあるべきかという議論を幼稚園、小学校、中学校、高等学校、また全ての教科にわたって開始しておりますので、その状況を踏まえて頂きながら今後の議論を進めて頂ければと思っております。
  まず、簡単なスケジュールでございますけれども、26年11月に大臣から中教審に対して諮問をさせて頂き、現在、議論が進んでおります。企画特別部会というところが司令塔的な役割で、全体的な議論を進めておりますけれども、ここが昨年の8月に論点整理という全体的な議論の取りまとめを行ったところでございます。
  それを踏まえて、現在、教科等別・学校種別に議論が進んでおりまして、今年度中に中教審として答申をお取りまとめ頂き、小学校、中学校の改訂を行っていくという、今年が勝負の年というような形でおまとめを頂いているところでございます。
  これが組織図でございまして、こういった形で延べ500人ぐらいの先生方、既に審議時間が300時間近くになっておりますけれども、御協力頂きながら進めているところでございます。
  これまでの改訂の流れと少し違うのは、教科別の議論を行って答申という流れではなくて、途中段階に赤字で右側にございますような論点整理というのを出させて頂いており、ここにおいて今後の社会の在り方、2030年に向けた教育の在り方、こうしたことを共通理解しながら進めているところでございます。
  その共通の理解の一つがグローバル化、情報化等の社会的変化の中で、子供たちに予測できない未来にも対応しながら未来を創っていける力を育んでいこうということ。みずから問いを見出し、いろいろな人と協働しながら解決して、社会をよりよくしていくための力を共通に育んでいこうという議論を全ての教科・学校種でして頂いているところでございます。
  特に情報化の進展という中で、例えば人工知能の進化で人間の職業の在り方というのは変わっていくんじゃないか。あるいは今、学校で教えられていることは時代が変化すると役に立たなくなるんじゃないかというような、いろんな不安もあるところでございます。
  そうした不安を乗り越えて、未来の創り手となるために必要な知識や力が学校教育を通じてしっかり育まれるのだということを明示していけるような学習指導要領ということを目指しているところでございます。
  真ん中辺りの四角囲みは少し手前みそなところもございますけれども、そうした人工知能の進化の中で様々な認識から概念を獲得していく過程でありますとか、様々な試行錯誤をして習熟していく過程ということの強みというのは、ある意味、人間の学習の強みということでもあるということ。こうした学ぶという営みのすばらしさを再認識しながら、学校教育をよりよく進化させていこうということでございます。
  その中で、これからの時代に求められる力とは何か、それを育む学習課程の在り方とは何かということの議論をさせて頂いているところでございます。
  その中では、ここに何を学ぶか、どのように学ぶか、何ができるようになるかということでございますけれども、ともすると学習指導要領の改訂というのは何を学ぶかの見直しだけに注目が集まりがちではございますけれども、これを越えて、それをどのように学び、どのような力として身に付けるのか。ここをしっかり考えていこうというのが今回の改訂でございます。
  何を学ぶかの中では、例えば育むべき資質・能力に基づき学習内容をしっかりと見えやすくしていく、教育目標などもそれに合わせる形で変えていくということ。また、高等学校では「公共(仮称)」という科目も考えられてございまして、例えば様々な思考のジレンマということですね。先ほど利便性をとるのか、あるいは安全性をとるのかという自動運転の話もございましたけれども、こういうようなジレンマというものを合意形成しながら解決していく。そのために必要な力を育む「公共(仮称)」という新科目の在り方も議論をされているところでございます。
  また、そうした力を身に付けるためには学び方にも光を当てていく必要があるのではないかということで、深い学び、対話的な学び、主体的な学びということを実現していくということ。
  そうしたことを通じて、一番上にございますような資質・能力、生きて働く知識・技能、未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力、学びを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力、人間性、これを全ての教科で目指していこうという議論をさせて頂いております。
  その中で、活動主義のようなもので知識がないがしろにされるのではないかというような御懸念も少しございましたことから、先日、大臣の方から教育の強靱化ということでメッセージを発信させて頂いております。知識の量というものもしっかりと確保しながら学び方の質を上げていく、そうした改善ということを目指しているところでございます。
  具体的にどのようなことをやっているかと申しますと、これは、国語科と外国語科に関連してですけれども、言語の力、全ての学習の基盤となりますけれども、言語の力というものの要素をしっかりとまず分析していくということ。テクストを理解して、それに基づき表現していく過程の中で、人間にどのような力が求められているのかということを、このような分析をした上で各教科の見直しに生かしていくということ。
  また、こうしたことを踏まえた上で、これは言語能力の例でございますけれども、全ての教科において必要な知識・技能、思考力・判断力・表現力、学びに向かう力、人間性ということの整理を行った上で教育内容の見直しというものを行っております。
  例えば言語の力で言えば、言葉の働きなどという知識・技能、また、そういったことを使いながら創造的思考、論理的思考、感性・情緒の側面、他者とのコミュニケーションの側面ということで言語の役割を捉えながら、物事を理解したり、考えを形成したりしていく力。また、一番右側の学びに向かう力、人間性のところでは、言葉が持つ力というものを信頼しながら、言葉によって社会をよりよくしていこうというような人間性。こうしたものをセットでしっかり育んでいくための改革を行うということでございます。
  また、そういう中では情報活用能力ということも非常に重要になってまいります。情報活用能力、情報を活用して新たな価値を創造していくということと、そういったプロセスの中でICTを活用できる力を育んでいくということと、次世代の学校の在り方、ICTの環境整備などを含めて、こういったものをしっかりと両輪でやっていく。そのためには、文科省だけではなく、経産省や総務省とも連携しながら官民連携した形で、そういった学びを支えていく体制づくり、こういったことについても検討させて頂いているところでございます。
  具体的に情報活用能力につきましては、もちろん幼児期の学びもつながっていくわけでございますけれども、小学校、中学校、高等学校、このような段階をイメージしながら学びを進めていくということ。その中で中学校は、技術・家庭科の技術が、高等学校においては情報科という科目が中核になりながらということでございますけれども、小学校段階においては、むしろ、各教科の学びをうまくつなぎ合わせることで、様々な場面で情報活用能力が生かされる、そうしたことをしっかりと確立していく。そのためには情報手段の基本的な操作ということもしっかりやっていく必要がありますし、今回、この会議でプログラミング教育について、どのような方向性が考えられるかということを御議論頂きたいというふうに考えているところでございます。
  また、先ほど全ての教科においてと申しましたように、学習の様々な場面でICTを活用していく。特定の教科だけではなくて全ての教科において、こういったICTの活用場面というものを考えたりということも検討して頂いているところでございます。
  諸外国のナショナルカリキュラムの状況ということで載せさせて頂いてございます。例えばイングランドの例でございますけれども、Computingという科目を設けたり、韓国においても実科という科目の中で実施したりということがございます。また、フィンランドのように、一方で特定の教科を設けずに教科横断的に実施しているという例もあるところでございます。
  よく英国の例が取り上げられるわけでございますけれども、このナショナルカリキュラムの位置付けの違いということも少し踏まえて考えていく必要があるかと思います。ある意味、ガイドライン的な部分がございますので、そうしますと、ガイドラインで定めながら実際の様々な条件整備も同時並行で行うということが可能なわけですけれども、日本の学習指導要領というものは全国津々浦々で同時に実現していくことが必要になってまいりますので、様々な条件整備や教科書の発行ということをしっかりとセットで考えながら、学習指導要領の記載を考えていく必要があるということは少し踏まえて頂く必要があるかというふうに思っております。
  こうした状況であるということを踏まえながら、是非活発な御議論を頂ければと思っております。
  上に書いてございますのが設置要綱に記載しております検討をお願いしたい事項ということでございますけれども、より具体的に見てまいりますと、例えば学校教育として実施するプログラミング教育の意義とはどういうことなのか、これを現場の先生方に分かりやすく伝えていく必要がある。それから、子供たちにどこまでの力を育むことを目指して何を実施すべきなのか。それから、技術が変化しても生かせる能力とはどういうことなのか。どのようにどの教科で実施するのか。この際にはICT環境の整備状況ということも学校によって様々でございます。また、子供たちの姿、地域の状況ということも踏まえながら実施していく。そういった柔軟なやり方ということも念頭に置いて頂く必要があるのではないかということ。
  また、ICT環境の整備、様々な外部リソースを活用させて頂くための在り方、教材開発の在り方。また、興味のある子がどんどん学んでいけるような社会教育との接続ということも是非御意見を頂ければというふうに考えておりますので、よろしくお願いいたします。
  事務局からは以上です。
【堀田主査】    ありがとうございました。
  では、続けてどんどん行きたいと思いますので、石戸委員、準備をお願いいたします。
  この時間を使いましてお伝えしておきますが、今、最後に出たスライドは、委員の皆様には机上配付されていますが、これの下に書いてある8個の黒ポチですね。これが論点といったらいいでしょうか、整理が必要なポイントというふうに考えられておりますので、その点、よろしくお願いいたします。
  では、準備ができましたら、石戸先生、お願いいたします。
【石戸委員】    今、御紹介頂きました石戸奈々子と申します。私、大学のとき、ロボット工学を専攻していたんですけど、先ほど松尾先生の話を伺って、この10年でどれだけ進歩したのかということに非常に驚愕する思いをしたんですけども、本日は、私がこれまで実践してきたCANVASという団体を通じて、デジタル時代の子供たちの創造的な学びの場を創るということに関して、文部科学省の事務局の皆さんからプログラミング以外の部分の話とプログラミング教育の実践の2つについてお話をというお題を頂きましたので、その2点について実践ベースでお話しさせて頂ければと思っています。
  今申し上げましたとおり、今から14年前に、私は、NPO法人のCANVASという団体を設立しまして、デジタル時代の子供たちの創造的な学びの場を産官学連携で推進するというような活動を行っております。設立の当初は、総務省のIT系の支援を受けて設立いたしました。堀田先生の御協力を頂いていますけども、兼宗先生も。このようなメンバーで運営をしてまいりました。
  これまでもさんざんいろんなところで言われているところではありますけども、私たちは、これからを生きる子供たちに必要な力は何かというふうに考えると、それは世界中の多様な価値観の人と協働して新しい価値を創り出す力、言い換えるならば、コンピューターには決して代替的できない力としての創る力とコミュニケーション力だというふうに考えています。
  先日、知識と思考力の双方をバランスよくというふうに大臣からお話がありましたけれども、正に知識の記憶、暗記、それにプラスして思考創造型の学びというのを、これまでみたいに学校だけとか、家庭だけに任せるのではなくて、学校も、家庭も、地域も、ミュージアムも、企業も、全ての立場の大人が手を取り合って創り出していく、そんな環境を創りたいという思いで設立いたしました。
  新しいテクノロジーを活用した主体的で、協働的で、そして、創造的な学びの場としてのワークショップを、これまで35万人の子供たちに提供してきました。
  御覧頂いているのは、毎年1回開催しているワークショップコレクションというイベントなんですけれども、子供たちが作りながら学ぶワークショップのカリキュラムを一堂に集めた博覧会イベントでして、約150のワークショップが一堂に集まって、2日間で10万人の子供たちが集まってきてくれています。このワークショップコレクションの参加人数をもとに、2010年の政府の知財計画においても創作系ワークショップの参加目標として年間35万人というのが記載されたことがあります。
  設立当初初めて開催したときには500人の来場だったんですけども、それが10万人に広がっていっている。つまり200倍ですかね、計算が間違えていなければ。というふうに広がってきていまして、保護者の方々の間からも、こういう活動に対する需要が年々高まっているのを実感しているところです。
  御覧頂いているとおり、カリキュラム自体はデジタルだけではないんですね。造形だったり、サイエンスだったり、身体を活用したものであったり、分野は様々でして、大人が区切った分野とは関係なく子供たちが作る、創造するということを大切にしたものです。作りながら総合的に学ぶカリキュラムというのを提供しておりまして、そのようなワークショップカリキュラムをパッケージ化して、これまでも学童とか、児童館とか、保育園とか、商業施設、文化施設、大学など、様々なところに導入しています。
  設立当初から、本当は学校の現場の中でやりたかったんですけども、それは私が非常に若くて甘かったんですけども、どの学校に行っても、できたばかりのNPOがと言われたりとか、うちだけ目立つわけにはいかないんですというふうに言われまして、一切の歓迎を受けず入れなかったわけなんですけども、であれば、外で始めようかなと。CANVASの設立当時、私自身が世界十数か国の子供の社会教育の現場を見て回っておりまして、そこで余りにも多様で、そして多種類のカリキュラムが行われていること。そして、その地域での学びと学校の学びが非常に密につながっているということに感銘を受けましたので、では学校の外から始めて学校とつながっていく、そんなことができないかなというふうに思いまして学校の外で始めました。
  例えば、これは、子供が作った作品ですけども、自分の地域を紹介する映像を作ろうということで、これは、経済産業省の地域振興の予算を頂きまして推進していたプロジェクトですけども、県、市、教育委員会、大学、メディア、観光連盟、ミュージアム、そういう地域の様々なセクターの方々が集まるコンソーシアムを作って、そういう方々の支援の下、子供たちが地域において創作活動をしていく、そんなような体制づくりというのも、これまでいろいろな地域で展開してきました。
  大学が、大学生が単位になる形でゼミ生を派遣してくれたりですとか、教育委員会が教職員の研修の場として位置付けてくれて全学校に呼び掛けてくれたり、そのような地域の協力を基に展開をしてきています。
  ほかにもユネスコと連携して、本部のあるパリで海外の子供たちと一緒にデジタルを使ってつながりながらアニメを作っていく。そんなことを行ったりとか、地域の子供たちがブログとか、ポットキャストとか、映像を通じて地域の情報を発信していく。子供たちがICTを活用して情報やコンテンツを作り発信していく、そんな活動を行っています。
  これまでずっと14年間行ってきたんですけど、頑張っても35万人しか行かないなということで、やはり学校に入れるといいなというふうに思っていたんですけども、私自身は、教育の情報化というのがきっかけとなって、こういう活動が学校に入れればいいなというふうに思っておりまして、デジタル教科書教材協議会、DiTTと言われる組織も立ち上げて、それも推進しているんですが、今日は、それに関しては割愛させて頂きます。
  ちょっと上下が切れているんですけども、全体的にデジタル以外で言うと、例えば無形のものを協働で創ることによって、子供たちに新しい観点を提供するようなプログラムを提供したりですとか、各人の興味に基づいて構造物を造っていくようなカリキュラムを行ったり、漢字を作るということで、自分自身が漢字を作るという行為を通じて漢字の成り立ちについて理解をしたり、若しくは漢字そのものに興味を持ったり、そんなカリキュラムも提供しています。
  カリキュラムを作るときの私たちが大事にしているポイントというのが、こうやってあるわけなんですけれども、これは、今日は割愛させて頂きます。配付資料として本を置かせて頂いたので、そちらを御覧頂ければというふうに思っています。
  これまで14年の活動の中で、カリキュラムの一つとしてプログラミングというのも設立当時からずっと取り組んできたんです。といいますのも、私、CANVASの設立の前にMITのメディアラボというところにおりまして、そこでScratch、子供向けの言語を開発したシーモア・パパート先生ですとか、ミッチェル・レズニック先生の活動に非常に影響を受けて、それが元になってCANVASというのを立ち上げたというのがありますので、その流れから当時からずっと活動を行っていました。
  プログラミングといってもプログラミングを学ぶのではなく、「プログラミングで学ぶ」という言い方をずっとしておりまして、プログラミングを通じて論理的に考えて、問題を解決する力ですとか、他者と協力して新しいものを生み出す力を身に付けてもらいたいと思って実践をしています。
  先ほどからプログラマーを育成するとか、そういう話もありましたけども、私たちとしては、国語を学んでもみんなが作家になるわけではない、音楽を学んでもみんながミュージシャンになるわけではない。それと同じように、プログラマー育成という観点ではなく、基礎教養としてのプログラミングというのを子供たちに提供したいというふうに思っています。
  今御覧頂いていた映像は、地名が入っていると思うんですけども、3.11のときに被災地からの要請を受けて、被災地で子供向けのプログラミングのワークショップを提供したときの様子です。一夏で700人の子供たちに提供してきました。子供たちにワークショップを提供するだけではなくて、地元のNPOなんかと連携をしながら、その方々に研修をして、地域で自発的に運営できるような体制づくりというのに取り組んできました。
  先ほど御説明ありましたとおり、そのところに国内外においてプログラミングの教育が盛り上がり始めました。それは、皆さん、御存じのことかと思いますので割愛しますけども、設立当初から私たちは、プログラミング教育の重要性というのは活動の一環として訴えてきたわけなんですけども、一番人気がないカリキュラムでした。とにかく子供たちからも、保護者からも全然理解が得られないのがプログラミングでした。
  というのも、当時はパソコン、携帯、ネットが普及する、正にデジタル化の段階で、なかなか次のステージに行っていなかったからだと思うんですね。その後、スマホやソーシャルというのが普及し始めて、いよいよスマート化の次の段階、正にIoTの時代になってきて、身の回りのものが全てコンピューター化するということが認知されるようになりました。今まで保護者や子供にとってちょっと距離があるコンピューターが身近になってきた。それというのがプログラミング教育の必然性が認められ始めた理由じゃないかなというふうに思っています。
  やっと世の中でそういう機運が起きてきたのであれば、改めて日本中の子供たちにプログラミング教育を届けていくプロジェトをスタートしようではないかということで始めたのがPEG、programming education gatheringというものでした。
  被災地での活動がGoogleさんにすごく評価頂きまして、それを日本全国に広げるためのプロジェクトの立ち上げの支援をしてくださるというお話を頂きまして、エリック・シュミット会長まで駆け付けてくれて、光栄なことに2人で共同記者会見をして、全ての子供たちにプログラミングで学ぶ環境を産官学連携で創る、そのためのプラットフォームのプロジェクトとしてPEGというのを始めました。
  PEGってどんな機能になっているの、プラットフォームってどんな機能になっているのといいますと、この6個のことを行っています。カリキュラムの開発、事業支援、ワークショップの実施、指導者研修の実施、器材整備サポート、地域コミュニティーづくり、カリキュラムやノウハウの共有ということです。先生方と一緒に授業案を開発して、実際に子供たちに授業やワークショップを展開しています。
  初めに、1年間で2万5,000人という目標を立てましたので、それに基づいて活動しているんですけれども、おかげさまで、こういうような120の団体から協力を頂きまして目標を達成しているところであります。皆さんに本当に御協力頂いています。
  また、実際に子供たちに届けるだけではなくて、指導者の研修等を行っています。これも1年間に1,000人という目標を立てて、実際に目標を達成しているところです。併せて、ツールの提供ということで、環境に合わせた様々なツールを提供しています。Raspberry Piなどは5,000台を学校に配布しました。
  今、いろんな全国の学校とか、自治体とか、教育委員会とか、首長さんじきじきだったり問い合わせがあるんですけども、器材の貸し出しや使い方のレクチャーのニーズが案外高いんだなというのを実感しているところであります。
  また、地域で展開するに当たってどうやってこれから広げていくのというのは、常に課題として挙がると思いますけども、地域の子供たちのプログラミング教育を支えるコミュニティーづくりというのにも力を入れています。programming education gathering、gatheringというのを大事にしていまして、学校も、ミュージアムも、NPOも、家庭も、地域も、企業も、自治体も、みんなで支え合う地域のコミュニティーというのを創っています。おかげさまで愛知gatheringとか、横須賀gatheringとか、北九州gatheringとか、既に15の地域でgathering活動が始まっていまして、熱心に活動に取り組んでいます。
  その中でも北九州ですとか愛知なんかは、プログラミングで集まったコミュニティーがほかの活動にも発展していっていまして、地域活性化につながった、そんなお声も頂いているところです。
  そして、一番大事なのは、ばらばらになっていたカリキュラムやノウハウを一堂に集約・発信をするという機能かなというふうに思っておりまして、オンラインでの知見の共有というのに取り組んでいるところであります。
  私たちが取り組んでいるところというのは、基本的にリソースが余りない中で、環境に合わせて工夫しながら実施している事例ということになるかなというふうに思います。常に実体験とのつながりを大事にしながら、各学校、若しくは教育現場のICT環境に応じたカリキュラムの提供というのを行ってきました。
  14年間の間でいろんな活動をしてきたんですけど、とりあえず私たちは、これは絶対に課題だろう、この課題に対して答える活動を行いたいというふうに思って、PEGでは取り組んでいるところです。
  カリキュラムはどうするのということに関して言うと、コンピューターの理解を深めるプログラミングであったり、課題解決型のプログラミングであったり、教科科目の理解を深めるプログラミングであったり、物づくりを行うためのプログラミングであったり、様々なカリキュラムを提供しています。
  今回は必修化という話ですので、ちょっと一例としましては品川区の公立の小学校、京陽小学校というところでは、全校生徒350人に1人1台、Raspberry Piを配り、全教科科目の中でプログラミングを導入しています。理科のゴムの力を調べるシミュレーションを創ってみたり、算数ですと素数を見つけようというプログラミングを書いてみたり、国語の時間では同音異義語クイズを作ってみようというようなプログラムを行ってみたり、全部全て先生方がカリキュラムを作って子供たちに指導しているわけですけども、先生方からは、子供たちの教科科目に対する理解が深まり、知識の活用能力が身に付いたというお声を頂いています。
  もちろん、今御紹介した以外にも、図工の時間ではプロジェクションマッピングで芝居をしたり、音楽で作曲をしたり、市民科で課題解決をしたり、このような授業を行っています。
  もちろん教科科目だけではなくて、ちょっと上の方が切れちゃっていますけども、ロボット作りとか、ゲーム作りとか、センサー、3Dプリンター、ドローンなんかも活用しながらいろんなカリキュラムを用意しています。
  今回は学校教育の中でという話だと思いますけども、私たちは、実は学校教育だけではなくて、学校でも授業だけではなく部活、クラブだったり、放課後の時間であったり、若しくは地域の図書館、ミュージアム、児童館であったり、様々な場所を使ってプログラム教育を推進してきました。
  ただ、これらは連続性がないわけではなくて、例えば墨田区はクラブ活動から昨年度導入したんですけども、本年度は、正式に総合的な学習の時間でプログラム教育が導入されるに至りました。
  横須賀市も、市長から是非学校教育の中でというお話を頂きまして、現在は課外活動してワークショップとして提供しているんですけども、行く行くは学校の中でという、いわゆる初めのファーストステップとして入れています。
  また、新潟県の三条市は、青年会議所のメンバーに研修をしたところ、彼らは、まずファーストステップとして土曜学習応援団を目指しているという話を頂いていまして、ステップ・バイ・ステップで授業に入れていくというようなやり方をとっています。
  ツールの説明も要らないと思いますけど、先ほど申し上げましたとおり、様々用意して、使い方を含めて提供していますし、また、必ずしもコンピューターが必要なわけではないんです。全く器材がないというところには人間プログラミング、コンピューターは使わないアルゴリズムの考え方を伝えていく、そんなカリキュラムも提供しています。
  必ず課題として上がるのは、誰が教えるのという話なんですけども、京陽小学校みたいに先生が先生になる場合もあれば、講師を派遣する場合もあれば、最近は、プログラミングが得意な子供たちがいますので、子供たちに授業をやってもらおうよみたいな実践をしたり、gatheringの地域のコミュニティーが支援したり、最近力を入れているのはセールポンさんとか、今日も中川さんいらっしゃっていますけども、マイクロソフトさんに御支援頂きまして、IT企業の方々に先生を派遣して頂く、技術者を派遣して頂くということに力を入れています。
  また、必ずしも遠方には行けませんので、スカイプを通じて教えるとどうなるのかということも、つい先日も実験をしてきたところです。
  私たちとしては、全ての子供たちにというのを今年度の改めての次の目標というふうにしていまして、特になかなか届けにくい地域の子供たち、それから特別支援学級の子供たち、それから、どうしても参加者数が少ない女の子たちに届けたいなということで、今年度、いろんなプロジェクトを推進しているところなんですけども、全ての子供たちと考えると、当然、公教育の中に入っていくのが一番ありがたいなというふうに思っているところです。
  それに当たって私からのお願いといいますか、先ほど申し上げた課題に関しては全て解決していかなくてはいけないと思うんですが、それに付随して、やはり環境整備という観点から、教育の情報化の推進というのをセットで是非推進をお願いしたいということと、公教育の中での推進に当たっても是非民間の力を活用して頂きたいなという2つ、この場でお願いをしたいなと思います。
  先ほど松尾先生から仕事がなくなるというお話がありましたけども、それは、いろんな保護者の方も気にしている話なんですよね。何%かと論文によって違いますけど、50%とか65%とか、その仕事がなくなるのであれば、今の子供たちは、その分の仕事を創り出す力というのが求められているわけです。
  私は、たくさんの子供たちに触れて、最近の子供たちは、自分たちの力をテクノロジーが拡張してくれるということを本当に理解している子供たちが多いなというふうに思います。
  スライドで幾つか、ITを使って活躍している子供たちをお見せしていきたいと思うんですけども、本当に子供たちはコンピューターを使う、ICTを使うことによって、世界中の地にアクセスできたり、世界中の人に自分のアイデアを発信できたり、3Dプリンターなんかを使ってアイデアを形にできたり、世界中の人とコラボレーションできたり、自分の力の拡張ということを存分に活用している子たちがたくさん出てきています。
  コンピューターが他の領域と違うのは何かと考えると、コンピューターがパソコンを超えてあらゆるもの、分野、環境に溶け込んで、定着して、それらを仕切るものになっているということだと思うんですよね。御飯を炊くときも、洗濯をするときも、テレビを見るときも、お金をおろすときも、コンピューターやネットが必ず入ってくるわけです。つまり、生活、社会、文化、経済、全てをコンピューターが支える社会というのが今の社会で、そして、それらは全てプログラミングによって生まれているものじゃないかなと思います。よって、その基本的なメカニズムを習得しているということは、国語、算数と同じように、これからどんな人生を送るにしても、必要な基礎能力なのではないかなというふうに考えています。
  コンピューターに関する原理的な理解があるかないかによって、これから社会で生活していくに当たって、向かい合うトラブルに対しての対処能力というのが大きく変わってくるのではないか。そう考えると、私たちは、読み書き、そろばん、プログラミングというような、基礎教養としてのプログラミングというのを子供たちに提供していきたいなというふうに思っています。
  先日、マイクロソフトさんが主催されて世界中のプログラミング教育――正確にはCSエデュケーションです――に関わる方々が集まるカンファレンスに参加させて頂きました。私は、先ほどのイギリスのナショナルカリキュラムのコンピューティングの作成に関わった方とパネルで一緒だったんですけども、そのときに、日本はうらやましいと言われたんですね。何でと聞いたら、僕たちは18か月で準備しなきゃいけなかったけど、日本は2020年までに4年もあるでしょう。それだけ準備ができるんでしょうと言われて、何かうれしいような、悲しいような、ちょっと微妙な感じだったんですけども、私としては、14年間準備をしてきたというような気持ちでもありまして、ようやく最近になって、たくさんのプログラミング教育を推進する企業や団体が生まれました。私たちとしては、そういう世界をずっと思い描いて活動してきたので、非常にうれしい状況になったなというふうに思っています。
  これからも私たちは実践に取り組んでいくんですけど、大事なことは、それら活動が更に発展するように一丸となって取り組むということじゃないかなというふうに思っていまして、ばらばらの活動を一つにまとめていく。これからもPEGが、そのプラットフォームとしての機能をしっかりと強化して、環境の整備に尽力できればいいなというふうに思っておりますので、これから、どうぞよろしくお願いいたします。
  以上です。(拍手)
【堀田主査】    ありがとうございました。
  続いて、利根川委員、御準備お願いいたします。
【利根川委員】    こんにちは。みんなのコード代表の利根川と申します。今日初めての方も多いかと思いますが、委員拝命しましたので、15分ほどお話しさせて頂ければと思います。
  今日お話しさせて頂く事項1でございます。まず、我々、何者なのかというところと、社会の中でプログラミングがどのように生かされているのか。そして、なぜ、それが小学校段階から必要なのか。また、実際やるときに当たっての具体的な御提案と、最後、補足になりますが、プログラミングだけでなく、アナログとの関連性もお話しさせて頂ければと思います。
  我々が何者なのかというところでございます。法人の概要と我々がやっているプログラミングの普及啓蒙活動、そして、学校への支援という3点でお話しさせて頂きます。
  まず、法人の概要でございます。我々、非営利法人、一般社団法人みんなのコードと申します。ミッションとしては公教育のプログラミング必修化の推進という、正に、この会議でのトピックとなっているところについて目標にしている団体でございます。実は設立からまだ1年たっておりませんで、石戸先生とかから言うとまだ1年生というところでございます。
  組織としましては、私が代表であるほかは、学校の先生ですとか、IT系の企業のボランティアの方を中心に構成されております。
  やっていることは、右下に3つ書いておりまして、今日、正にこのような場を頂いている政策の御提言として、全国2万1,000校を変えていくという取組と、先進的にやりたいという学校さんの教育を御支援するという部分。また、社会全般について、プログラミング教育の盛り上がりを創っていくという3層の活動を行っております。
  まず、世の中に対して一番広く行っている活動です。プログラミング教育の普及啓蒙活動としまして、Hour of Codeという活動の日本の国内の事務局をしております。これは、アメリカのNPOのCode.orgというのが呼び掛けているキャンペーンでございまして、その画面、右下にあるんですけども、いわゆるビジュアルプログラミングの教材でございます。その際、子供になじみ深いキャラクターを使って、ブロックのプログラミングによってチュートリアル型、ドリル型で学習していくというキャンペーンでございます。
  全世界で累計2億人以上が参画しておりまして、世界的なIT企業、アメリカ系が中心ではあるんですけれども、世界中で支援していて、実際、オバマさんとかもプログラミングにチャレンジしたりしております。
  日本国内での展開、つい先週になるのですが、こどもの日に1万人プログラミングをしましょうというのを呼び掛けました。結果的に1万2,633名の方に品川のマイクロソフトさんからお借りしてやったメーンの会場と、全国各地の拠点と御自宅含めて御参加頂きまして、日本国内の様々なIT系を中心とした企業の御支援を頂いております。
  この狙いといたしましては、まだプログラミング、子供に対してやるのって何だっけとか、やっぱり言語なんて変わるから、そんなのまだやんなくていいよとか、触ってもいないのに何でこれやるんだっけみたいな声が正直多いかなと思っていまして、まず、世の中の多くの人に実際、実感してもらう、体感してもらう、そういった目標でやっております。
  子供がこんなに集中する姿、初めて見ましたとか、うちの子、なかなか集中が続かないはずなのにですとか、ビジュアルプログラミングってゲームみたいだと思っていたんですけれども、裏ではちゃんとコードが作られているのと同等で、プログラミングの考えの基礎としてはこれがいいよねとか、そういったお声を頂いております。
  当日の様子です。左上なんかは、先ほど石戸さんのスライドにもありましたけれども、小学生のプログラマーが初めてプログラミングする子に教えるみたいな絵ですとか、先ほどお見せした画面以外もIchigoJamとか、DeNAさんの開発する教材とか、様々な教材を通じて一緒に盛り上がりましょうという取組でございます。
  次、学校での取組です。これ、横浜の私立の精華小学校というところでの実践になります。3、4年生の総合的な学習の時間、3時間頂きまして、1時間目が我々の方で御指導して、2、3時間目は学校の先生が指導するというハイブリッド型でやっております。実は2、3時間目の方でプログラミングそのものをやるんですけれども、そっちを学校の先生にやって頂いて、プログラミングの前段階の1時間目を我々の方でやっております。
  どんな感じかといいますと、1時間目の方です。ちょっと見えにくいかもしれないんですけれども、1時間目の目標としては、プログラミング学習へ興味を持ってもらうというところでやっていまして、子供たちにプログラミングって何と聞いた後に、自分たちのプログラミングが生活でどのように役立っているのか列挙してくださいとやると、意外と、5分、10分で20個ぐらい挙がって、電子レンジ、エアコン、洗濯機、3DS、カメラとか、いろんなところで役立っているなというのを子供が、まず自分のこととして考えてもらう。
  その上で、1個の製品とか、サービスとか、システム等、プログラミングってまだ遠くて、1個のシステムをピックアップして、その上でどういう機能があるかなというふうに問題を分解して、次の段階のプログラミングにより近付けていくということをやっております。
  その上で、実際にプログラミングするときに、教室に1個ぐらいなんですけれども、ロボを用意しまして、実際、これをテキストプログラミングを見せた後、動かします。その上でビジュアルプログラミングで、右上がその画面で、左側がその様子なんですけれども、子供たちに音読とかしてもらうんです。前に進む、右に曲がる、それが繰り返しのブロックの中に入っているから、もう一回、前に進む、右に曲がるだよねみたいな形でやって、子供たちに、こんなふうにやるんだというイメージをつかんでもらう。その上で、実際にロボットが動くことによって、子供たち、これやってみたいというふうに盛り上がったところで、1時間目が終わるというような取組をやっております。
  2、3時間目は、先ほどお見せした右下の教材を学校の先生が見守りながら、子供たちが自立してドリル型で進めていくというような授業を実施しました。
  先ほどのは私立の総合的な学習の時間で時間をしっかりもらった事例でして、そのほかにも公立の学校等でもやって頂いて、これなんかですと、前でやっているのが学校の先生で、プログラミングは未経験であったんですけれども、我々の方は、その方への事前のトレーニングと、当日、あくまでサポート役で、こういった教材ですとか、事前トレーニングによれば、仮に未経験だったとしても指導できるというような先生も出てきております。
  そのほか、指導者の研修会ですとか、ちょっとPEGさんとかぶるので詳細は余り話しませんが、また、今、必修化の動き等を受けて、学校の先生方も早くやりたいんだけど、どうしたらいいか困っているというところもあるので、研修会とかですと我々からの発表が中心になるんですけれども、相互の学習の場として、この夏、研究大会、学会みたいなものを、主に小学校の先生を対象で行うなどをやっております。
  2つ目のトピックになります。社会の中でどのようにプログラミングが活用されているのかという点について、僭越(せんえつ)ながら改めてお話しさせて頂こうと思います。
  このときに、過去10年、この先10年、その更に先の10年で、我々はいつもお話ししておりまして、これまでの10年というのが、ここに書いたようなWebサービスとか、デバイスとか、10年前にはなかったものが全て行き渡っています。象徴的なのは、大杉室長がYouTubeで教育課程を説明しているというのは、多分、10年前の人に言っても誰も信じてくれなかったんじゃないかなと思ったりするんですけれども、こういったITのサービスが行き渡って、過去10年でほかの業界の3倍ぐらい伸びているというのが過去10年です。
  この先の10年、何が起こっていくのというと、右側に例えば自動運転の車が市販されますとか、サッカーの岡田元代表のチームですが、選手の練習と試合のパフォーマンスをITで解析して、練習の最適化をかけてみたり、右側の写真は、回転寿司のスシローさんというところなんですけれども、お皿にICチップを入れて、単に生産するだけではなくて、お客さんが今、何人来ているかを受付でタブレットで登録しておいて、流れているおすしの量と過去のデータでクラウドで計算して、この画面のところに1分後にどんなすしを幾つ握るという最適化をかけているんですね。そうすると、要はおすしの廃棄が減りますので、ITによってよりおいしいすしネタを仕入れることができるので、ITですしがおいしくなる。各地の学校の先生とか、何となくやった方がよさそうなんだけれども、自分ところの学校の子供に関係あるんだっけというと、あらゆる業種で、あらゆる業態で、こういうのが関係してくるというようになっているので、IT以外の業界でのITの活用が進んでいくというのが、今正に起こって、この先10年広がっていくところかなと考えております。
  その上で、その更に先の10年、10年から20年後、多分、そこが今、これからの子供たちに義務教育としてプログラミングが必要になる理由かと思うんですが、先ほど松尾先生からもありましたように、日本の場合だと49%ぐらいの仕事が機械によって置き換え可能かなというふうに言われております。1学級で言うと35人のうち17人相当の仕事がなくなるというと、学校の先生、人ごとじゃないなというふうに思って頂けています。
  一方で、新しく出てくる仕事に対して共通スキルとしてのプログラミングが必要になるんではないかなというのを我々は申し上げております。どういう仕事が出てくるのかというのを具体的に挙げるのはなかなか難しいんですけれども、例えば、ここ数年の話で言いますと、もともとデザイナーという職業があったと思うんですけれども、Webデザイナーという仕事が最近だと明確な領域になっております。そういった方においては、やはりコンピューターの仕組みというのを分かっている、プラスデザインの知識ということによって一つの仕事が成り立っているということですので、共通のスキルとしてコンピューター、プログラミングが分かっているという仕事が今後ますます出てくるのではないかなというふうに考えております。
  もう一つ、例えの話になってしまうんですけれども、今、日本の教育指導で3年生から理科で電気の話が入っているかと思います。それによって社会で広く使われている技術を科学的に理解するというのが背景としてあるかなと考えておるんですけれども、先ほど申しましたように、ありとあらゆる生活の場面で、コンピューターが活用されているときに、その動作の原理を分かっているというのは、21世紀を生きる社会の一構成員として子供に必要ではないかというふうに考えております。
  もう少しかみ砕いて言うと、私自身、1年少し前までエンジニアをしていて、ぱっと簡単なプログラミングを書くと、「利根川さん、すごいですね、魔法使いみたいですね」というんですね。ただ、これは魔法ではなくて、科学なんですよね。けれども、例えば電気って、19世紀の人からしたら魔法にしか見えなかったはずなんですが、これは魔法ではなくて科学ですというのを20世紀の学校、日本の教育ではちゃんと教えているので、誰も電気のスイッチを付けても魔法だと思わない。それと同じように、この先、コンピューターによっていろんなことができていくという中で、その仕組みを科学的に理解するというのが、公教育、全ての子供に対して必要なんではないかなというふうに考えております。
  続いて、我々からの御提案というところになります。ちょっと中教審の論点整理と相入れないところもあるかもしれないんですけれども、まずは、どういった形が理想かなというのを考えての御提案というところになります。
  今、小学校、いろいろな教科とかある中で、各教科の中での学習に話が行きがちではあるんですけれども、我々としては、プログラミングの基礎という形で、総合的な学習の時間が現実的かなと思うんですけれども、プログラミング、先ほどの横浜の事例でありましたように、世の中でどういうふうに役立っているのか、プラスどういうふうな基礎的な考え方なのかというのを3時間から4時間程度かなと思うんですけれども、やった上で、各教科の中で実際に手を動かして課題解決やクリエイティビティを育んでいくというのを、ちゃんと2つを分けて、両方を必ず学ぶという形が理想でないかなというふうに考えております。
  これは、私も含めて、実際エンジニアをしている人の感覚からすると、いきなり課題解決とか、創造とかに入ろうとすると、コンピューターを正しく、適切に使わないみたいなところもあって、例えば繰り返し分を使わずに同じ命令を20個並べるみたいな話にどうしてもなりがちなところもあるので、やはりコンピューターはコンピューターとして学ぶ、その上で各教科の学習を深めるところにおいては、そこでコンピューター、プログラミングの考え方がすっと使えるという形でできるといいんではないかなというふうに思っております。このあたりについては、教育課程の先生などの意見を是非頂きたいなというところでございます。
  このところがカリキュラムでございまして、そのほか、教材と体制についてお話しさせて頂きたいと思います。
  プログラミング教材、いろいろなソフトウェアの教材あるかと思うんですけれども、右上の方のマップで御説明させて頂きたいと思います。左の方にブロックプログラミング、テキストプログラミングという軸を置いております。上の方にチュートリアル(ドリル)型と自由形というふうに置いております。ビジュアルなのか、テキストなのかというのは黒い画面に打ち込む、いわゆるよく思い浮かべるのがテキストの方で、ブロックを並べる、先ほどお見せした画面ですとか、Scratchとか、そういったものがビジュアルになります。その上で、上と下の比較で言うと、小学生の発達段階とか、理解とかを考えると、上のビジュアルプログラミングの方がシンタックス、過去が釣り合っていないとか、一文字打ち間違って動かないとか、そういうのがないので、現実的かなと。
  また、右か左かという軸ですね。これ、どちらかというと子供の軸というよりも指導者側の軸に左右されるかなと思うんですが、自由型ですと、指導する側が一人一人の子供に割く時間が増える傾向にあります。できることが自由なので、画面と紙のテキストを別に指定してあげて、こういうふうにやっていくんだよと、ゆっくり進めていくという形になります。チュートリアル型ですと、1個ずつ進んでいくと、その画面に指示が出て、その課題を解決して進んでいくという形ですので、指導者の容易度という意味でも左の方がいいかなと。
  本来的に、なるべく右下の方に進んでいけるようにがあるべき姿。その上で、現実的なところとして、どこまで左上のところに行かなきゃいけないのかというのを、様々な各地の実験とかを踏まえて決めていくのがいいかなというふうに考えております。
  先ほど申し上げましたプログラミングの基礎と実習という意味では、我々からの御提案という意味では、左上のチュートリアル型でビジュアルの導入の教材があった上で、各科目での実習については、チュートリアル型ないし自由に子供が組み換えられる自由型の教材がそれぞれ具体的にあると、学校の先生もやりやすいかなというふうに考えております。
  最後、体制についての御提案です。まず、子供についての観点で言いますと、直近のこの会のような議論を見ておりますと、プログラミングにおける効果として共同学習というのを聞いております。これももちろん大事なんですけれども、共同学習になりますと、グループの中でプログラミングの理解に時間が掛かる子供が、何もしないまま時間が終わってしまうというのがあるので、是非個別の学習も必ずやるというのが必要かなと。その場合、各学校に1学級分の端末を整備するのが必要でないかなというところでございます。
  また、指導者のところも、これは、我々から御提案するまでもないかもしれないですけれども、英語教育の際にリーダーと中核教員とそれぞれの教員というような形で、体系的に育成したような形がプログラミングにおいても、むしろ英語よりもプログラミングの方がやっていない先生が99%以上かと思いますので、体制的にやる必要があるかなというふうに考えております。
  最後、補足ではございますが、プログラミングにおいてもアナログとの併用が大事だよというところでございまして、これは、私の前職になるんですけれども、実際、エンジニアがシステムとか、データベースをどのように設計しようかというのをホワイトボードにチームでディスカッションしてみたり、プロジェクトの進みぐあいを、このような看板で整理してみたり、実際、お子さんの学習においても、右側が先ほど申し上げましたような音読の形ですし、左側が升目を進んでいくというプログラミングにおいて、画面で思考するよりも、柔軟に試せる方眼紙とブロック人形とかであらかじめシミュレーションをするという形もありますので、単純にデジタルの時代だからといって、こういったアナログの考えも必要ですというのを最後に付け加えさせて頂きたいと思います。
  以上です。ありがとうございました。(拍手)
【堀田主査】    ありがとうございました。
  続いて、隅井委員からの御発表をお願いいたします。
  この間に中教審の算数・数学のワーキングが終わりまして、清水委員と笠井教科調査官がお見えになっております。ちょっと続けさせて頂きますね。
  では、お願いします。
【隅井委員】    御紹介頂きました隅井でございます。こういうタイトルで今からちょっとお話しさせて頂きますけれども、私どもプログラミング教育ということを銘打っていろいろな活動をしているわけではございませんが、我々の活動の中でいろいろな経験をさせて頂いておりますけれども、その中で、今日、この会議でいろいろ議論されていくプログラミングという考え方とか、そういったものが我々の活動の中にちょっと潜んでいるというような、そういうひらめきといいますか、ありまして、その内容をちょっと御説明させて頂きたいというふうに思います。
  我々、音楽の企業ですので、音楽創作ということをいろいろな場面で、いろいろな方々に提案しております。例えば音楽創作とプログラミングというのはどういう関係にあるのかというのは、これからちょっと御説明をして、皆さん、ぴんとこられるかどうかというのは分かりませんが、例えば歌詞があります。歌詞をどういうふうなリズムで表現するかというポイントが出てきます。そして、この歌詞とリズムをどういう音程で音にするか、曲にするか。それにどういう和音を付けていくのか。こういうプロセスが創作で必ずみんながやらなくてはいけないポイント、項目になります。
  この4つの項目を、じゃあ、どういう曲にするのか、さびから始めるのか、メロディー先に出すのか、イントロどれぐらいの長さにするのか、そういう構成を考えます。そして、今、歌詞からスタートしましたけれども、メロディーからスタートする人もいます。メロディー、コード進行からスタートする人もいて、最後に歌詞を付けるという人もいます。では、何から始めるの、それもみんな考えなくてはいけないです。
  そして、創ったものを音に変えていく、そういう過程の中で、この音程だよとか、この長さだよ、強弱はどうやって付けるんだ、進行はどうするの、1括弧リピートしたら、戻ってきたら、今度は2括弧で行きます。ダルセーニョが出てきたら、セーニョに戻ります。これ、上の方にあるSに米マークみたいなものが付いているものですけども、そして、コーダのマークが来たらコーダに飛んでいきます。こういうような進行も考えなくてはいけないです。これってBASICとか、コンピューターの言語で言うリピートとか、何々が来たらこうしなさい、そういうものとほぼ同じような考え方で表現をしていきます。
  我々は、こういうものを楽譜に書き起こして、それを演奏者の方にお伝えするわけですけれども、言ってみれば、この曲のソースコードが楽譜みたいなものです。この楽譜に埋め込まれた演奏のための情報、こういったもので創作者の意図を奏者に伝達する手段として使っているわけです。ですので、偉大な作曲家もみんな、このプロセスをやっています。
  このプロセスがベートベンの時代はペンと紙でした。その後、音を固定するという技術ができました。レコードにする、CDにする。更にコンピューターが出てきます。でも、このコンピューターは子供には扱えないですよね。1984年ぐらいですか、MSXという標準規格のコンピューターが出てきて、定価5万9,800円、これで音楽ができるようになりました、誰でもできるようになりました。そして、MIDIという新しい規格ができて楽器とつながるようになりました。
  今ではコンピューターを使って、いろいろなインターフェースを使いながら、録音もできる、音の修正もできる。楽譜ですら、ブラウザだけ、インターネットコネクションさえあれば何のソフトもなく楽譜を作ることもできます。こういうふうに作業の手段はどんどん変わっていくわけですけれども、創作のプロセスとしてやっていること自体は何も変わっていません。
  この楽譜を見た奏者、何をするか。作曲者が意図したことを表現できるように、まずわざを磨きます。でも、わざだけ磨いていても表現はきちっとできないので、解釈をしようとします。どうしてこういうメロディーになったのか、どうしてこういう和声なのか、この作者はどういうときにこの曲を書いたのか、その時代の文化は何なのか、何を食べていたのか、そんなことを考えながら、いかに表現するかということを奏者は考えます。
  ただ、こういうことをやっていく中でいろいろな発想が出てきます。私だったらこうした方がいいんじゃない、私だったらこうするよ。それをいろいろな形で変化を付けてみます。変化の結果をいろいろ考えます。そうすることによって、奏者だった人もある意味創作者に変わる、そういうタイミングが来ます。もちろん奏者をずっとやり続ける方もいるし、奏者から幅を広げて創作者になる方もいます。
  先ほどお話ししたようにコンピューターとか、いろいろなツールができてくると、もうそんなわざなんかどうでもいいよと。実はここにちょっと飛んでいるクリエーターの写真が出るはずだったんですけど、いろんなツールを使って、わざがなくてもできるようになってしまったわけです。でも、そういう人たちも、もっともっと表現を深くしていこうとすると、アナリーゼであったりとか、コンピューターを操る技巧、そういったものを学びたくなってしまうんです。そういったことで、今度はコンピューターをいかに操るかということで、違う意味の演奏者になる、そんな時代がやってきています。
  今お話ししたような創作のプロセスというところがアイデアがあり、ストーリーがあり、メッセージがあり、私たち、こんなことを伝えたいんだ、そういうものを歌詞、メロディー、リズム、和音、それから曲の構成、これをどういうふうに組み上げていくかということをしっかりと考えて、そして、曲を創る段取りをどうしよう、まず何から録音しよう、どんな形で録音しよう、どんな形でお客さんに聞いてもらおう、表現しよう。お客さんの反応がこう来たら、こういうふうに返してみようかなとか、そのリアクションを考えてみる。言ってしまえばステージを作るみたいな、そんなことまで幅広くなります。
  こういう音楽創作のプロセスを小学校でやってみたらどうなるのかというようなことを、我々、去年一年間、いろいろなところで、現場の御協力を頂いて取り組んできました。つくば市の春日小学校で行いましたのは2年生と6年生の協働学習の中で、2年生が手作りのおもちゃを作ります、工作の時間だったそうです。2年生の要望、このおもちゃって、こういうおもちゃなんだよね、ここがポイントなんだよという要望を6年生がしっかりヒアリングして、おもちゃのPRソングを創ります。そして最後、保護者もいらっしゃっている学校公開日に2年生、6年生、発表します、歌います。
  これは、まさしく先ほどお話ししたような歌詞を創ろう、メロディーを創ろう、更にそれをどうやって精度を上げていくか、表現力を上げていくかというブラッシュアップをして、最後は発表するということです。
  ここで、ちょっと出来上がった歌を一曲、短いですが、聞いて頂きましょう。
(映像上映)
【隅井委員】    これはお化けとゴム鉄砲というタイトルなんですけれども、ゴム鉄砲がどういうもので、どういう遊び方をするかというのがすごくうまく表現されていると思います。
  次の例は、小学校2校、2つの学校で6年生が学級歌を創る、それを生徒たちみんなで歌う。遠隔授業のシステムを使って、2校双方で学級歌を披露し合う、そういう試みをやらせて頂きました。これも歌詞を創る、それからメロディーを創る、そしてみんなで歌う、最終的には交流をする。こんなプロセスを5時間ぐらいの音楽の授業を使ってやらせて頂きました。
  この創作、先ほど聞いて頂いた曲を創るためのツールとしては、私どもから直感的に使えるツールを御提供しています。これはVOCALOIDという技術を使ったものなんですけれども、操作性、非常に直感的なインターフェースで、音楽的な要素とか余り知らなくても使える、そして歌詞が入る。歌詞とメロディーの組み合わせというのは、いろんなバリエーションを増やすんですよね。表現力も上がります。メロディーだけよりは格段に変わります。それと言葉、日本語に合うメロディーって、実はあります。英語に合うメロディーもあるし、ブラジル、ポルトガル語に合うメロディーというのもあります。実際、歌詞を入れ、メロディーを入れ、直感的なインターフェースの中で探っていきながら試行錯誤ができます。
  ここは我々の宣伝文句ですけれども、このICT機器に指示をして歌わせる。歌わせるということは、欧米でもいろいろな音楽系のソフトがありますけれども、余りなかったもので、歌詞と相まって曲を創れるというツールとして、我々としては非常に強いアピールをしているところです。
  我々がこういう音楽創作を通して期待するのは、先ほど幾つかゴールの設定がありましたけれども、交流をする、歌う、単に創るというところもありますけれども、いろいろな目標設定ができて、様々なアクションを組み合わせることができます。
  更に協働学習、大体、4人1組のグループでやることが多かったんですけれども、中にはすごくリズム感のいい子、メロディーを創るのが好きな子、歌詞を創るのにたけている子、いろいろいるわけです。そういった個々の個性を生かしながら協働学習ができる。そして、大人になってもフォークギター一本で曲を創ってみようというときにも、このプロセスはずっと使えます。
  そして、音楽を創る、ステージを作る、人に聴いてもらう、そういうプロセスを一緒にやることで、いろいろなことに興味が湧いてきます。例えばステージで照明をします。この曲に合わせてどんな色を使うんだろう。そういうことを考え始めると、そっちの道にどんどん深く行ってみたい、そんなこともあります。最近の音楽学校、専門学校とかに入られる生徒さんで、演奏技量だけを学びたいという人はかけらしかいません。みんな、映像だったり、照明だったり、音楽ビジネスだったりとか、創作というところから発展していろんな分野に興味を持って、そこを深めようとしています。
  こういうことを我々としては、小学校段階から、今御説明したようなことの発端となるようなことを御提案していきたいなというふうに思っておりますが、短い期間でありますけれども、我々がやらせて頂いた中での課題としては、やはり指導者の育成というのはかなり大きな比重だなというふうに思っております。
  それと、先ほどもちょっと話したように歌詞との絡みとか、それから内容を理解するということで、音楽、メロディー、音符、そういったものだけではなくて、幅広いものを組み込んだ指導案、そういったものが必要になってくるだろうなというふうに思います。
  そして、音楽創作の場合というか、芸術系のものはみんなそうかと思いますけれども、基本的に答えがありません。答えがないものに対して子供たち、いろいろなやり方を考えます。でも、これやっちゃ駄目、あれやっちゃ駄目、これしかできないというふうなことになると、ある意味、子供の可能性を潰してしまう部分もありますので、そういったものをどういうふうに柔軟性を持って受け入れていけるか、そこにどうやってICTを活用するかというところは、今後大きなポイントになるんじゃないかなというふうに思います。
  そして、最後、今までもいろいろ話題に出ていますけれども、環境整備をどうするか。このあたりというのは、音楽室の中だけで行われていることでもありませんし、卒業式は体育館で、講堂で歌を歌うわけですから、そういったところとの連携みたいなものを学校の中では必要になってくるだろうなというふうに思います。
  これは、私どもの商品、1990年代ぐらいに発売していた商品なんですが、実はこの頃、教育現場にはPCがどんどん入り始めた時期です。パソコンが入り始めて、学校にどさっと40台とか、PC教室とかできたときです。このときに、音楽というのはPCと結構親和性が高いと言われて導入が進みました。しかし、残念なことに様々な要因がありまして、90年代後半にはだんだん衰退の道をたどっていきます。
  それは、いろいろ理由はあるんで、ここではお話はしませんけれども、先ほどからお話ししているように、本質的に音楽を創るということは、物を考えて、みんなで創り上げていく、そこ自体は変わっていませんので、今、いろいろな環境が整い、ネットが整い、子供たちもリテラシーが高まり、そんな中で学校の生活の中で不可欠な音楽というものを通して創作、歌うだけじゃない、リコーダーを吹くだけじゃない、創るということにも関わるということで、更にいろいろな創造性なり、プログラミング的な考え方であり、物を創るための段取りをどう考えればいいのか、こんなことを是非ICTを使って、今までの紙とペンではできなかったことが今はできるわけですから、そういうICTの力を使って、音楽プラスプログラミング的な考え方、こういったものを具現化して、新しい世代を担う子供たちのために何か協力できればよいかなというふうに思っております。
  以上、ありがとうございました。(拍手)
【堀田主査】    ありがとうございました。
  続きまして、最後のプレゼンテーションになりますが、伊佐山委員から御発表頂きます。
【伊佐山委員】    最後のプレゼントとなります、伊佐山と申します。私のテーマは、このタイトルにありますように、シリコンバレーから見る日本の教育についてということで、私は、ふだんはシリコンバレーというところに住んでおりまして、ちょうど昨日、東京に参ったばかりでございます。
  私は、実はほかのメンバーと違って、ふだんやっている仕事はプログラマーではなくて、イノベーターを育成するという仕事をやっておりまして、どちらかというとソフトウェアという世界よりは、社会の問題を見つけて、それを解決するにはどういうことをやったらいいかというような人間を育てようということで、今、日本とアメリカを行ったり来たりしながら、いわゆるイノベーションで社会問題を解決しようと、そういった運動をやっております。
  そんな私が今日、なぜこの場に来たのかということを考えていたんですけれども、多分幾つかポイントがあると思っておりまして、私は2001年から、今日も何度か松尾先生のキーワードにも出てきましたけれども、シリコンバレーのいろんな技術が世界を変えていると。正に、そのシリコンバレーの環境に私も15年前に渡りまして、4人の子供、4人とも小学校を経験しております。皆、公立校に行かせたので、そういう意味ではシリコンバレーの公立ではどういう教育がなされているのかということを共有できるんではないかと思います。
  あと、こんな偉そうなことを言うと妻に怒られてしまうんですけれども、地元の学校の先生と世間話することも多くて、そういった先生たちが20年、30年、40年、シリコンバレーという土地の変化をどういうふうに見ているのか。その変化している中で、子供たちの教育はどうあるべきかという議論もかなり活発に行っておりますので、そこでの示唆も共有できたらと思っております。
  私自身は、正に日本の義務教育、小・中・高と受験、受験、受験と、大学も受験ということで、日本の教育システムで育ったわけですけれども、私の子供は幸いアメリカという違う環境で育ってきたので、私としては半分実験のような気持ちで、子供がどう育つんだろうということを見ながら、この15年間、シリコンバレーで生活したという経緯がございます。
  あと、もう一つは当然、そこの住民として15年生活しておりまして、それこそ近所に、亡くなる前はスティーブ・ジョブズさんが犬の散歩をしていたりとか、いわゆる日本でよくITの有名人が町中を闊歩しているような、非常にのどかな自然あふれる地域なんですけれども、では、そういった家庭ではどういう教育をしているんだろうかということも一部共有できたらなと思います。
  これも幾つかポイントで出ていましたけれども、今はやりのダイバーシティというやつです。日本だとどうしても意識できないのは民族だとか、宗教だとか、肌の色が違う方だとか、そういう社会での教育というのはどういうふうになっているのか。では、そういう世の中だということを日本でどうやって少しでも実感するのかということもポイントじゃないかなと思っております。
  あと、今日のテーマでもある、いわゆるプログラミングというのはアメリカではSTEM、Science、Technology、Engineering、Mathematicsということで、いわゆる理系科目です。これをSTEMというふうに言いますけれども、これをアメリカでも強化しようという動きがあります。ただ、このSTEM強化というのは結構前から始まっているんですけれども、その弊害というのも当然、足元出ておりまして、何でもかんでもIT教育、プログラミング教育というのが万能じゃないという地元での反応もありますので、そういったことも含めて、今日は簡単にプレゼンさせて頂きます。
  そもそも小学校でのプログラミング教育が必要なんですかということで、こんな風景が、皆さん、シリコンバレーに行くと、毎日のように学校に行くとあるんだろうと。だからこそシリコンバレーからすごいプログラマーが出てきて世の中を変えているんじゃないかという大きな誤解をしている方がよくいるんですけれども、実際はどっちかというと、こういうイメージで、ほとんどの小学校で行われているITというのは遊びで始まっています。これは、我が家の子供たちがいじっていた遊びの一部ですけれども、MINECRAFTというデジタル版レゴといいますか、パソコンの中でレゴを作ったり、世界を創ったりするようなゲームだったり、幾つか出ますが、Scratchとか、あとはオンラインの学習ができるKhan Academyとか、こういうMINDSTORMSみたいなロボットを動かすとか、あと、圧倒的に強いのはiPad、タブレットです。タブレットを使って英語の勉強をしたり、算数の勉強をしたりということで、実際、プログラミングというものに合うようなものというのは、親がスタンフォード大学のコンピューターサイエンスの教授だとか、そういう子供以外は、ほとんどの子供は、私の実感としてはプログラミングなどというのはやっていないというのが実態でございます。
  これ、昨日飛行機に乗る前に私の部下が文科省で話すなら、ちょうど面白い記事が出たぞということで共有していました。Please don't learn to codeと書いてありますね。コーディングなんかやらなくていいぞという結構衝撃なタイトルなわけですけれども、これ、本当に2日前の記事なんで検索すれば出てきますが、ここに書いてある趣旨は、別にプログラミング教育を否定しているわけではなくて、プログラミングをやれば万能なんじゃないかとか、プログラミングができないと人間じゃないみたいな雰囲気が若干シリコンバレーにもあったことがあって、この著者は、自分は一生懸命C言語を勉強したんですけれども、最近、iPhoneで重用されているのはSwiftという新しい言語で、結局ゼロから勉強しなきゃいけなかった。だから、特定の言語を小学校とか中学校の時点で教え込む意味というのはないとは言わないんだけれども、そこに盲目的に突っ込んでいくのは危険だぞということが、ここの寄稿にはされていたということです。
  実際、彼が言っていることは一理ありまして、アメリカでも逆にビル・ゲイツとか、それこそスティーブ・ジョブズとか、彼らって子供には意外とコーディングって早いうちにやらせていないんです。コーディングというのは、どちらかというと高校生ぐらいから、興味を持ったらやればいいと。コーディングできないと人間じゃないみたいな、そんなことないんだぞというのがシリコンバレーである程度インテリな家庭での会話であって、何となく日本だとコーディングをやらないと駄目なんじゃないかとか、世界に遅れるんじゃないかというような雰囲気を僕は感じているんですけれども、そこまでコーディング、絶対じゃないなというのが私のポイントです。すいません、何人かの委員の皆様には真逆のことを言っているんですけれども。
  簡単に整理しますと、小学校でのプログラミング教育というのは、私はしょせん一人の親で、4人の子供しか見ていないわけですけれども、どういうふうに映っているかというと、先ほどのスライドにもありましたが、カリフォルニア州、いわゆるシリコンバレーがあるアメリカで最も技術が進んでいて、世の中を変えていると思われているところですら、義務教育には全くなっていないです。ちなみに中学でも義務教育ではない。高校でも義務教育ではない、高校でも選択科目です。つまり、パソコンは小・中・高一切やらずに、別に大学に行く人もいますし、就職する人もいる。この瞬間が、皆さんはすごくクールで、最先端だと思っている実際のシリコンバレーの公立学校の教育なので、それを考えて、この議論をしないとちょっとおかしなことになってしまうというふうに思っています。
  ただ、プログラミングというのは確かに義務化はされていないんですけれども、先ほど申し上げたようにパソコンとかタブレットというのは、もう学校の当たり前のインフラとしてあるわけです。日本の学校、私、最新の事情は分かりませんけれども、もしパソコンがまだ十分に行き渡ってないとか、タブレットがないのであれば、そこは国の予算を使って、もっともっとアクセスができるようにするとか、あと、アメリカの公立校がよくやるのは、会社とかはタブレットとかパソコンをどんどん新しくしてしまうので、ドネーションしてくださいという形で、地元の学校に企業とか個人がドネーションして、それが教材として使われるというようなことはすごく行われています。
  3点目、Microsoft Office、いわゆるWord、Excel、Powerpoint、あとはGoogle、最近はMaicrosoftじゃなくて、ほとんどGoogleで、Googleドキュメントとか、Googleスプレッドシートとか、Googleスライドみたいのがあるわけですけれども、これは猛烈に使っています。実は昨日来て、今日も朝4時ぐらいに起きてしまったんですが、ちょうど中学生の息子が来週学校でプレゼンテーションしなきゃいけないとスライドを作っていたんで、私もそのスライドに同時に入って、一緒に文字を直しながら作業するということがクラウドだとできます。
  そういった風景は、本当に小学校2年生、3年生ぐらいから始まっていまして、プログラミングではないんですけれども、もうコンピューターもクラウドのシステムを使うということが生活の一部になっているということは、恐らくプログラミング教育をするときのハードルをすごく下げているんじゃないかなというふうに思っています。
  もう一つ面白いのは、そういう真面目なのもやるんですけど、アメリカの小学生って検索技術が異常にたけているんです。多分、大人よりよほど器用に自分の欲しいものを見つけてくる力がありまして、特にYouTubeとか動画のものを探すのは天才です。違法動画とかは天才的に探してくるので、やっぱりツールを使って自分が面白いと思ったものを徹底的に探す力は、多分、大人より強いんじゃないかなというふうに思っています。
  つまり、IT、プログラミングというと物すごく難しくて、親もショックになっちゃうわけですけれども、私からすると、ITというのはエンターテインメントなんだ、面白くなきゃいけないんだというすり込みをするのが、実は小学校時代では一番大事なんではないかなというふうに個人的には思っています。
  私もいろんな大学の先生とか、子供を持つ親と話すんですけれども、大体の人は、プログラミングというのは本格的にやるのは、ちゃんとロジック、数学の力とか、クリエイティビティ、基礎的な学力が付いた後、中高生からで十分じゃないのと。でも、まだ地元の高校、義務になっていないよねみたいな話なので、余り拙速にプログラミング、プログラミングというふうに飛び付くのがいいのかどうかというのは慎重に議論した方がいいんではないかなというふうに思っております。
  プログラミングじゃなくて、もうちょっと広義にIT教育ということを考えると、ここは日米で差がかなりあるんではないかなというふうに感じています。特に、先ほど申しましたようにITの機器とか、クラウドのサービスを利用する、そういうリテラシーというのは、日本で言う九九、誰でも使えるようになっていますし、もう生活のツールとして必要だという位置付けになっております。
  私、すごく面白いなと思ったのは、プログラミングすごい、IT機器すごい、便利便利というところをすごく強調して、いろんな学校が教えるんですけれども、意外とマナーとかルールを教えていないケースが多いんではないかなと思います。これは、アメリカだと小学校2年生ぐらいから相当徹底していて、つまり、Googleで検索しても、そこに書いてあることは全部本当じゃないぞというようなことを先生が結構きつく言いますし、インターネットでWebブラウジングすると銀行口座の番号を入れろとか、自分の名前を入れろというのがぽんとポップアップしたときに、あなたはどうしますかというような教育をかなり低学年からやっています。
  つまり、インターネットの情報というのは安易に飛び付くな、いろんな意味での落とし穴もあるのがインターネットというインフラであり、そこに書いてあるものは絶対でもなければ、最後は自分で考える力を付けなきゃいけないんだよということで、ルールについてはかなりうるさいんです。
  この間も、ちょうどある人物について検索してみろということで、図書館に集まって子供たちがパソコンを使ってぱっと検索するんです。この人は何年に生まれたんですかというと、ぱぱっとやって、ウィキペディアを見て何年何月生まれと。学生がみんな、そうだそうだと言ったわけです。そうすると、その先生が図書館からぱっと本を出してきて、これは本人が書いた自伝なわけです。自伝に書いてある生年月日というのは、ウィキペディアに書いてある生年月日と違ったわけです。彼は、どっちが正しいと思うかともう一回問頂すと、結局、ウィキペディアが間違っていたよということになるわけです。
  子供というのは、やっぱり便利なものに飛び付いてしまうんですけれども、もしかしたら我々かもしれないですが、結局、インターネットに書かれているのは絶対じゃないという当たり前のことを意外と忘れていて、そういったことは、本当は古くさい図書館とか、本の中に真実が隠されていたりするわけですね。
  そういったルールとか、デジタルなものを使いこなすこと、デジタルなものとアナログなものをどうやって使い分けるかということは、低学年から徹底して、先生だったり、両親が教えるというのは非常に大事なんじゃないかなというふうに考えています。
  3つ目も、今日みたいに教育課程とか、学習指導要領というと物すごくしっかりしたものを多分、日本の政府とかは作りたがるわけですけれども、ITというのはどんどん陳腐化してしまいます。つまり、今、一番頭がいい人をここに集めて議論したところで、しょせん半年後には変わってしまいますので、ITなんていうのは新しいものを是々非々でどんどん導入して、駄目なものは捨てていく、そういう発想でやらない限りは全く意味がないというのが私の私見になります。
  この後のところは、松尾先生も、皆さん言っていましたけれども、やっぱりデジタル全盛の時代であるからこそアナログ感覚というのを磨かないと、コンピューターに振り回される人生が待っているわけです。
  最後のまとめにあるように、今、人間教育重視という非常にナイーブな言葉を使っていますけれども、情操教育、これ、英語になかなか訳せなくて難しいんですけど、日本で言う情操教育の重要性、社会脳、どうやって認知症と関係を作っていくのか。あと、幸福論、最近、アメリカですとハピネスとか、ウェルネスとか、幸福に対してどういうふうに考えるかという議論が発達しているんですけれども、これは全てITによる合理化社会の反動だというふうに思っています。
  「地元大学」と書いたんですけど、具体的に言うとスタンフォード大学なわけですけれども、学長が今年ちょうど代わったのですが、みんな理系で、コンピューターサイエンスばかりで、あたかもプログラミングできないと就職できないとあおって、あげくの果てにプログラミングできるやつは大企業に行かないで、みんなベンチャーを興せ、Google見てみろ、フェイスブック見てみろという、物すごく短絡的な思考が強かった。いまだに強いんですけれども、強くなったわけです。
  そうしたところ、地元の有識者から猛烈な反発を食らって、そもそもみんながみんなアントレプレナー、いわゆる起業家になってGoogleを作るのが大学の使命なのかという、そもそも論をかなり突き付けて、要はこれから哲学を勉強しようとしている人、英国文学を研究している人、彼の行き場をどうするんだという議論をかなり問い詰めたわけです。
  学長、ヘネシーというのは、もともと経営企業者で大金持ちで、かつGoogleにも投資してGoogleの役員もやっていて、また大金持ちになっちゃった人なんですけれども、そのとき、彼は答えがなかったわけです。
  ここは一歩引いて、そもそも学問って何なのかということをちゃんと考えた上でカリキュラムをデザインしないと、結局、すごいと思われているスタンフォード大学でも、今、そういうバックファイアが起こっているというわけなので、ここは安易に決められる話でもないなというふうに最近感じております。
  これもいろんな議論が出ましたけれども、これからの社会というのは本当にテクノロジー、ロボットと人間がどんどん共生しなきゃいけない時代ですので、それに合ったスキルを身に付けなきゃいけないということは確実だと思います。ここのチャートもありましたけれども、第4次産業革命が起こると仕事の内容も変わりますし、社会がどんどん変わる。ということは、今まで30年、40年続いた、余り変わっていない教育システムで育つ子供たちというのは本当にかわいそうな世界が待っているかもしれないので、そういう意味では、今回の学習指導要領変更というのは非常に大きな意義を持っているんではないかなというふうに感じております。
  では、これからの小学校教育どうしたらいいんだろうかということですが、これはもう非常にうがった、私から見た一つの結論ですけれども、繰り返し申し上げましたように、ITというのはしょせんツールの一つであって、そんなに大騒ぎするような話ではないということが1点目になります。
  むしろ、これも松尾先生の資料にありましたけれども、予見不能性の社会に対応する能力、いわゆるアダプタビリティ、どんどん世の中が変わることに対応していくような、そういう基礎的なスキルが多分小さいときには大事なんじゃないか。日本というのは正解があって、それを導き出すという教育が圧倒的に強いですけれども、アメリカの場合は公立校に行くとほとんど答えのない問題ばかり先生は投げているんです。銃規制どう思う。日本人は、銃は悪いに決まっているというふうにみんな思うんですけれども、アメリカの公立校で銃どうだというと、多分、クラスの半分は銃はあった方がいいと子供が真面目に言うわけです。その理屈も意外と通っていたりするわけです。
  例えば核兵器はどう思うか。日本人からしたら核兵器けしからんというふうに思うわけですけれども、アメリカで核兵器どうかというと、多分、クラスの半分は核兵器はあった方が世界は平和になるというふうに真面目に小学校3年生が言うわけです。
  つまり、答えがないものを常に議論するようなことを小さいときから習慣として身に付けないと、この予見不能性の高い社会ではなかなか生き延びていけないんじゃないかと私は思っていて、こういったことはもっともっと日本の小学校教育には取り込んでいいんじゃないかなというふうに思っています。
  あともう一つは、この2番目に関して言うと、もっともっと実践する。予見不能性が高いということは答えがでませんので、100の議論より1つの実践とかよく言いますけれども、とにかくやってみて、失敗をどう思ったのかというところを重視するような教育プロセスに変えていくというのが大事なんじゃないかなと思います。
  その意味では、プログラミングというのは、向かっていくゴールに対して1つの完全な正解があるわけではないんで、もしかしたら、そういう観点ではいろんな考え方があって、いろんな解の出し方があるというツールとしては面白いのかなということを考えています。
  3点目、これは正直、海外に住んで日本を見ると一番残念に思うところですけれども、島国で、町の中をどこ見ても髪が黒くて、同じような言葉をしゃべっている人しかしない。ダイバーシティ、ダイバーシティといっても、できることというのは英語教育ぐらいしかないなというのは一つ日本の制約ではあると思うんですけれども、英語教育は当然大事なんですけれども、インターナショナルな、特に異文化を理解するということと、あと、日本の文化をきちんと理解するというベーシックなことをちゃんとやるということは欠かせないんじゃないかなというふうに思います。
  特にカリフォルニア州というのは移民が非常に多いので、お互いの文化というか、宗教を理解し合いましょうということで、よくインターナショナルフェアと称して、それぞれの国から来た人がそれぞれの食事を出し合ったり、文化を交換するということをするわけですけれども、日本ではもっともっと海外とのコミュニケーション、先ほども出ていましたけども、スカイプを利用して海外の人と意見交換するとか、英語で話すとか、そういった場というのはもっともっとあっていいんじゃないかなというふうに考えています。
  最後、これもまた繰り返しになりますが、アナログ感覚の重視、これもいろんな方がもう言っていますけれども、やはり本物を触って、見て、体験するということをしっかりやらないと、これは小さいときにちゃんとやっておかないと、年をとればとるほど、みんなサボるようになりますから。プログラミング、ITの世界に入る前に、自分の周りの自然とか、人とのつながりみたいなものを、正にこれは今までの日本の学校教育がちゃんとやってきたことですけれども、そういったものも再評価して、しっかりと教育の中に組み込んでほしいなというふうに思っています。
  アナログ感覚という意味で、この間一つ面白いなと思ったのは、例えば今、アメリカで歴史の勉強をするときに、日本だと1100年こういうことがありました、以上で終わっちゃうわけですけれども、アメリカはシミュレーションデーと称して、そのときの時代の格好をして一日学校で過ごすということをやるんです。この間見た事例は、何と3日間、その時代にとれる食料と現代の料理器具を一切使わずに、3日間サバイブしろということでキャンプに出ていって、正に火を自分でおこして、格好も中世の格好をして、野原で3日間、それこそ建物もない、テントもない、野原で本当に寝るということを子供にやらせるという極端なこともやっていました。
  これはシミュレーションと称して、昔の人ってどういう生活をしていたんだろう、どういう環境で育ったんだろう、どういう環境で社会活動をしていたんだろうということを学校の同級生を通じて体験するようなことをするんですけれども、こういったことをハイテク、ハイテクと言われているシリコンバレーが真面目にやっているところを見ると、僕からするとちょっと面白いなというふうに個人的に思っています。
  最後、教える人の問題というのは、ほかの委員の方にも出ていましたけれども、挙がっていなかったところで幾つか言うと、私からするともっともっと親の協力とか、アメリカですとエンジニアリングの仕事をやっている親というのは、数学を教えたりとか、プログラミングを教えるには最高の教師だと思うんですね。というか、これから日本を考えると、定年を過ぎた人とかも活用できるんじゃないかなと思います。
  これを言うと、日本はモンスターペアレントが大変だから、親なんか出てきちゃいかんというんですけど、冷静に考えると、社会に出たらモンスターだらけなわけですから、学校でモンスターペアレントで大騒ぎしている分にはもうどうしようもないわけです。世界に出たら、もうとんでもない化け物ばかりいるわけですよ。だから、そこは、もっともっといろんな社会の人を総動員して教育で必要なピースというのは補完していくべきじゃないかなというふうに思っております。
  もう最後のスライドですけれども、やはり私からすれば、小学校教育というのは勉強するって楽しいんだということさえ分かれば、以上終わりじゃないかなというふうに個人的には思っておりまして、あえてそれ以上を加えれば、正に英語教育というのは、別に英語をぺらぺらになることではなくて、日本というのは世界の中の日本なんだよということを理解することであり、もう一つは、これだけ自然があふれている国というのはなかなかないわけですから、やっぱりいろんな人とつながったり、自然とつながって、日本の役割、自分の日本人としての役割ということをしっかりと考えられる頭を持つということが、小学校の間ではやるべき本来の教育ではないかというふうに私は思っておりますので、そういう意味では、プログラミング含め、これからどんどん新しい技術が出てきますけれども、出てくるたびに、またアメリカ人にやられそうと大騒ぎする必要はほとんどないというふうに私は思っていますし、多分、今日ここにいる委員の皆様も、果たしてこの中で何人がシリコンバレーの教育とか、プログラミングやったことがあるんでしょうかといったら、そんなにいないんじゃないかなというふうに個人的には思うんですね。
  だから、もっともっと現場を見て、冷静な評価、日本では何をすべきかということを少し考えることも必要なんではないかというふうに思います。
  以上をもちまして、プレゼンテーションとさせて頂きます。ありがとうございました。(拍手)
【堀田主査】    ありがとうございました。
  大変申し訳ありませんが、カメラ撮影はここまでとさせて頂きますので、御協力をよろしくお願いいたします。
  今、6名の方の御発表を聞いてきたんですけども、終わる時間の予定時間は4時でございまして、討議の後、4時に終わる予定だったんですけど、もう4時を過ぎております。事務局とちょっと相談したんですけども、大変恐縮なんですが、せっかくの機会ですので、少しだけ時間を延長させて頂きまして、どうしても今日、皆さんのプレゼンテーションにつなげてお話をしておきたいという方の御意見を少し拾っておきたいなというふうに考えているところでございます。大変恐縮ですが、御協力をよろしくお願いいたします。
  今の6名の御発表と机上に配付させて頂いている、先ほど大杉室長から出た8個の今後整理が必要なポイント、これを踏まえて、どこからでも結構ですので、皆さんから御意見を頂きたいと思います。
  お考え頂いている間に少し私の方でつなぎますが、今いろいろと御紹介頂いたすばらしいプレゼンテーションの中には、プログラミング教育そのものをどういうふうにしていけばいいかという具体的な方法、体制の話もありましたし、必ずしもプログラミングそのものではないんだけども、プログラミングにつながっていくような学習活動、あるいは学習のイメージ、これも実はこういうふうに考えればプログラミングに似ていますよねというようなお話ですね。こういうものを各教科等の中にうまく見つけていって、マッピングしていくというようなことも考えられるんではないかというようなこと。
  あるいは、そもそももっとICTを使った学習をいろいろ子供たちにやらせることの方が、まずは急ぐべきではないかというようなこと。そこで、情報モラルや情報セキュリティーのようなことを体験的に学んでいくことが必要だというような御意見。それらを行うことができるような条件整備を各学校がどういうふうに確実にやっていくのかという話。このような様々な現実的な課題についてプレゼンテーションを頂いたところでございます。
  どうでしょうか、御意見。大して時間は作れないんですけども、まだ発言していらっしゃらない方もいらっしゃいますので、幾つか御意見を頂ければと思うところですが、特に現場の先生もいらっしゃいますので、では、小川委員。
【小川委員】    横浜市にある公立の小学校、戸部小学校の小川と申します。本日いろいろとプレゼンテーションを聞かせ頂いて、横浜市にある戸部小学校ってみなとみらいにあるんですが、その小学校でも学校にあるタブレットの台数は10台が実際の現実です。パソコンは、みんなで使えるのは2人に1台程度というのが1つの部屋に準備されているというのが現状です。
  その中でもWi-Fiがクラスにだんだんと普及してきたりというふうなことで、ICTの機器が問題解決を助けるものとして、今現在、活用されつつあります。先ほど石戸さんの発表の中でプログラミングでというお話が僕もすごく共感できまして、小学校でいきなりプログラミングを教えるというのはすごく違和感がありまして、特に総合的な学習の時間がかなりフィールドとして考えられるかなというふうに思っているんですが、どうしても導入するときにはイベント的であったり、一方的に教示されてしまって、子供の主体性が育まれないという部分が大きくなってしまうかなと思っています。
  総合的な学習の時間では、子供たちがなるべく実生活で本当に解決しなければならない問題の中でプログラミングが使えるというのが僕の中では理想かなというふうに、今お話を聞かせて頂いて感じたんですが、そんなふうにイベント的でも、教師主導でもなくて、たくさん実践されてきて、実際に子供たちが手の届きそうな段階で、子供たちが問題解決できそうな課題というか、プログラミングを生かしていって自然と子供たちが身に付けていけるような課題を、僕自身もここに参加させて頂きながら探っていきたいなと思っているんですが、石戸さんがたくさん経験されてきた中で、実生活にかなり密着しているような課題というのは今までありましたでしょうか。是非教えて頂ければありがたいと思います。
【堀田主査】    質疑応答みたいになってきましたので、意見を是非皆さんお願いします。一応、せっかくですから、どうぞ、石戸さん。
【石戸委員】    総合的な学習の時間や課外活動において課題解決型の学びの中でプログラミングをというのは複数取り組んでいて、おっしゃるとおり、正直言うと大人目線の課題というのもあるんですよ。例えば先ほど御紹介した小学校では、ロボットを使って、自分が考えている世の中でもっとよりよくできるような課題を自分で発見してやってみようとか。そういうのは、正直、発表した子なんかは、物の運搬において、長距離トラックなんかの事故を踏まえるとドローンが運んでくれた方が便利だよねみたいなことを考えて、それを実際にデモしたりとか、私が言いたかったのは、1つは、ちょっと遠い課題だったとしても、自分で課題を設定したときに自分事として考えられるケースがあるのかなというのが1点目と、2点目で、もう少し自分の生活に近いことということで言うと、これは学校外で行ったワークショップですけれども、身の回りのもの、生活をより楽しく豊かにするにはどうすればいいかということで、例えばごみ箱に装置が付いていて、センサーで反応したら、もっと自分で片付けられるんじゃないかとか、あと、自分の生活をより豊かにするために物を動かすようなものを入れていったら、どうなるかみたいなことでやったりすると、子供たちはすごく楽しそうにいろんなことをデザインして、プログラミングに落としていっていることはあるかなというふうに思います。
【小川委員】    ありがとうございます。
【堀田主査】    ありがとうございました。
  ほかの委員。上野委員、お願いします。
【上野委員】    ありがとうございます。2点ありまして、1点目が教科の中でプログラミングを手段として使って学習していくのか、あるいはプログラミング、利根川委員のお言葉をかりると、コンピューターはコンピューターとして先に教えた方がいいのかという議論なんですけれども、私は、どちらかというと利根川委員に賛成でして、まずは段階として量の多寡とか、時間の長さというのは別として、コンピューターはコンピューターとして教えるというプロセスは必ず必要なんじゃないかと思っております。
  例えば風とゴムの例とかあったんですけれども、各教科の中でプログラミング学習を入れていくというのは非常にハードルが高い、先生にとっても、生徒にとってもハードルが高いことだと思っていまして、品川の京陽小の例というのはすごくすばらしいというか、理想の姿だと思うんですけれども、やっぱりCANVASさんのような力強い団体さんが寄り添ってくださってできているということがあると思いますので、今後、普遍的に全国各地でやっていくとなったときに、どこまで再現可能なのかというのは、やっぱり若干の疑問があるのかなというふうに思っております。
  なので、応用をする前に、やっぱり基礎というのはどうしても必要になるであろうと考えておりまして、そうなるとコンピューターはコンピューターとして体験的に教えていくということがまず必要なんじゃないかなと思っています。
  ただ一方で、例えば小・中、そういったコンピューターのことを学んできた子供たちが高校の段階で数学のシミュレーションをプログラミングでやるとか、設計をプログラミングでやるとか、そういうことは本来のあるべき姿かなというふうに思います。
  2点目、コーディングスキル、例えばドントランコーディングというのがありましたけれども、コーディングスキルが重要なわけではないというのは、おっしゃるとおり非常に重要な点だと思っていまして、職能スキルを教えるための教育じゃないんだということは強調した方がいいのかなと思いました。
  以上でございます。
【堀田主査】    ありがとうございました。プログラミングそのものをどう理解させるかということについては、教科から少し離して教えた方がいいかもしれないというようなことや、コーディングそのものが目的化しないようにしなきゃいけないというようなことだと思いました。
  ほかの委員の方、何か。時間の関係もありますので、立てて頂くというふうにしたいと思います。
  では、どうぞ先に。
【礒津委員】    ソニーの礒津です。先ほど伊佐山さんのお話にもあったんですけれども、やはり小学校時代からのプログラミング教育というのが必ずしも必要ではないということに関しては、私も非常に賛成しておりまして、というのも、私も小さい頃からプログラミングをやっておりまして、学生時代の専門はコンピューターサイエンスなんですけども、小学校2年生ぐらいからプログラミングを始めて、かれこれ30年ぐらいやっているんですけども、その経験をもってしても、必ずしも小学生時代にコーディングをすることがよいことではないようなことは感じているところです。
  それが直接プログラミング教育にはならないということではなくて、やはりプログラミング教育というのはコーディングとは完全に切り離して考えるべきで、コンピューター的な考え方、最近ではコンピュテーショナルシンキングと言われていますけれども、そういった問題解決の基本的なやり方みたいなものは小さいうちからしっかり学んでおくべきだというふうに考えておりますので、来週ちょっと発表させて頂くんですが、日本の算数教育というのは、実はコンピュテーショナルシンキングを正に具現化しているような、世界でも非常にユニークな科目になっていまして、そういった切り口から日本らしいプログラミング教育というのを、コーディングを抜きにして考えていくのも非常に面白いんではないかというふうに考えているところです。
【堀田主査】    ありがとうございました。
  中下委員、どうぞ。
【中下委員】    先ほどから皆様のいろいろなお話を伺いまして、私は実際に4月、教育指導計画を学校の中で先生方と作ってきています。実際にどんなふうに子供たちに例えばプログラミング学習として取り入れていけるのかなということを考えながら拝聴していたんですけれども、最初の松尾先生のお話の中に目的をきちんと設定していくことが大事であるというお話があったことに大変共感を持っています。
  今、子供たちは、各教科を学ぶわけですけれども、その中で、この時間でなぜこれを学ぶのかとか、その教科の単元や題材で何を自分たちは身に付けるのかということを意識した上で学習を進めているんですね。つまり、子供たちなりにきちんと目標を設定して、学習したことを自分たちできちんと評価する、そういう学習スタイルの中で体験や実感を伴い、アナログ感覚というふうにありましたけれども、これができたとか、これを自分で考え出したとか、これを実際にやってみたら面白かったよとか、難しかったよと、そういう感覚を実際に伴いながら身に付けていくことがたくさんあると思うんです。
  そういった体験というのは、やっぱり小学校教育の中ではとても大切で、実はそれが学習指導要領の各教科の目標にきちんと落とし込まれていて、今後更に議論されていくとは思うんですけれども、その中で教科の目標にしっかり照らし合わせながら、こういったプログラミング教育というのを体験、実感を伴った上で取り入れていくというバランス的なところはとても大切で、入れること自体が目的化してしまうと、先ほどアクティブ・ラーニングにありました本当の子供たちの深い学び、主体的な学び、対話的な学び、そのあたりが実現されるかどうかというところにも非常に関わってくる大事な部分ではないかなというふうに考えます。
  以上です。
【堀田主査】    ありがとうございました。
  他にいかがでしょうか。では、最後にしたいと思います。清水委員、お願いいたします。
【清水委員】    最後で申し訳ありません。途中、別の会と合同で後半だけ参加をさせて頂きましたけれども、算数・数学を専門にしております清水でございます。よろしくお願いします。
  いろいろ考えるきっかけを頂きまして、大変ありがたく思っています。1つは、後半の方でプログラミングについていろんな実践とか、お仕事をされている中で、子供たちが自分のこととして関わる機会が増えているといいますか、よくあると。算数の学びからすると、私どもは、そのように算数に取り組んで頂きたいと思っているのですけれども、現実にはなかなか難しい状況がありますので、全てプログラミングのアイデアでうまくいくとは限りませんけれども、何かうまい場面とか素材によって、算数の学びの入り口とか、あるいは学んだことを学び直すきっかけとして幾つかの機会を生かせる可能性があるのかなと。私もこの道の専門家ではありませんので、抱えている算数の課題の解決にどんな形で関われるのかなということを思いました。
  それから、2つ目は、中学校で言うと証明なんですけれども、小学校でも説明というのが大変重視されています。今までは説明にしても、証明にしても、模範的なものを見せて、こうしましょうと。覚えてまねをするということでしたけれども、それだとできないんですね。やっぱり説明をするときには構想を練って、順序が決まって、分かりやすく整理されるわけで、思考自体が説明された、その順番でできているわけではない。となると、うまい説明、証明ができるためのプロセスをどう記述するかというのは大変重要な課題といいますか、算数でも数学でも課題になっていまして、その辺のところの一つの切り口として算数の学習が支えるのかどうなのか、その辺はよく分かりませんけれども、関わりは考えられるのかなということ。2点申し上げました。ありがとうございました。
【堀田主査】    ありがとうございました。
  天笠主査代理、お願いします。
【天笠主査代理】    もし松尾先生がいらっしゃったら御質問させて頂こうかなと思った1点は、人の心を察する、そういうことの技術革新がもう目の前に来ているのか、あるいは先ほどの御説明でいくと既にクリアした技術になっているのかどうなのか。何を申し上げたいかというと、技術的な日進月歩の社会というのが非常に速いスピードで展開されている。ある意味でいうと我々、そこになかなか追い付いていけないようなところがあり、あるいは我々は我々としての世界であったと思うところが遅れたものになってしまっていて、そこで新たに考えざるを得ないというところがあり、そのような状況が変化の激しい社会の中で今議論することの意味なのかなと、そういうふうに認識をしているわけであります。
  そういう点では、その分野における変化のスピードとか、速度に、我々は、ある意味でいうとかなりアンテナを張って、その動静をしっかりと認識しておくことが必要なんじゃないかというふうに思っております。
  片や、その変化に小学校の教育課程というのは、もう一段、あるいはもう二段、三段、ある意味でいうと考え方とか、対応の仕方というのは、我々が知恵を絞らないといけないんではないか。要するに下手をすると変化に振り回される、あるいは変化に対応したつもりだったのが、実はものすごく遅れたことにならざるを得ないようなことになってしまう。そういうあたりのところについて、かなり気を付けなくてはいけないんじゃないかということで、ついては、やはり我々は変化するという、この変化に能動的、主体的に対応する人を育ていくかどうなのか。その基礎としての小学校教育の在り方というところ、これこそ、  変化の時代にどう生きていくのかどうなのかということを問い掛けたところに戻って、ある意味でいうと論点整理が核心の部分じゃないかというふうに思いますので、そことの関係の中で、このテーマをしっかりと位置付けて、そして、その方向性を出していくということが我々に問われているんではないかなと、そんなふうに思いました。
  いずれにしましても、それぞれの委員の方々の御発表、大変示唆的で、また、それが次への会議に非常に生かされる、そういう発表ではなかったかなというふうに受け止めさせて頂きました。どうもありがとうございました。
【堀田主査】    ありがとうございました。
  私、主査ですが、主査としましても、今の天笠先生がおっしゃったように、学習指導要領って一度決まるとほぼ10年使うものだと考えると、技術革新の速度とは決定的に合わないんですけど、しかしながら、しばしば書き換えて現場が付いてこられるのかとか、体制が付いてこられるのかというのも、また現実的には難しい。そうすると、余り細かく書き込むことは難しいかもしれないなと。それよりは、むしろ学習指導要領の外に置いておいて、柔軟にそれを取り込む仕組みを記述するということの方がよいかもしれないと思いながら、今日は聞きました。
  これはあくまで感想ですけども、いずれにしても、プログラミング教育というのが特にマスコミを騒がせますけども、小学校でやらなきゃいけないときの本質というのは一体何なのかというのをITの世界で御活躍されている皆さんが、実は結構、プログラミングじゃないところが重要なんですよということをたくさんおっしゃったので、その部分は、正に今、中教審で議論されている内容とほぼ重なっていますので、今までの中教審の議論の上に、このITの、特にプログラミング教育に必要な部分をどうやって取り込んでいくかということを、細か過ぎない桁で検討していくのがこれから大事かなというふうに思った次第でございます。
  様々な御意見、プレゼンテーションも頂いたんですけども、既に時間を超過しておりますので、本日は、このあたりまでとしたいと思っているんですが、限られた時間でございましたし、まだ委員の中には言い足りないこともいろいろあろうかと思うんですけども、事務局で今日の御意見、あるいは今日のプレゼンテーションも含めて、論点ごとに趣旨を整理して頂きたいと思っておりますので、是非委員の皆さんの御意見をいま一度、プラスアルファも含めて事務局にお寄せ頂ければと思います。どういうふうに送ってくれとかいうのは、事務局からまた言って頂ければと思うわけですが、本日予定しておりました議題はここまでですので、次回のことにつきまして、事務局から御説明をお願いいたします。
【大杉教育課程企画室長】    大変長時間にわたり、ありがとうございました。次回、5月19日木曜日10時から、本日と同じ場所で開催させて頂きます。
  時間の関係で言い尽くせなかった御意見等、いつも御連絡をとらせて頂いているメール宛て、形式は問いませんので、事務局までお送り頂ければと思います。ありがとうございます。
【堀田主査】    ありがとうございました。
  それでは、これで本日の有識者会議を終了させて頂きます。時間が延びてしまった進行の不手際をおわびいたします。どうもありがとうございました。

――  了  ――

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初等中等教育局教育課程課教育課程企画室企画係