小学校段階における論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議(第2回) 議事録

1.日時

平成28年5月19日(木曜日) 10時00分~12時00分(開場9時30分)

2.場所

中央合同庁舎第7号館東館 文部科学省3階講堂

3.議題

  1. 委員からのヒアリング
  2. 意見交換
  3. その他

4.議事録

【天笠主査代理】    おはようございます。定刻になりましたので、ただいまより小学校段階における論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議第2回目を開催いたします。本日は御多忙の中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
  なお、本日、報道関係者より冒頭のカメラ撮影を行いたい旨申出があり、許可いたしておりますので、御承知おきください。
  まず最初に、事務局から配布資料等について確認をお願いいたします。
【大杉教育課程企画室長】    それでは配布資料の確認をさせていただきます。タブレットの方を御覧いただければと思います。前回資料もタブレットの方に載せておりますけれども、第2回の方をタップしていただきますと、本日の資料がございます。議事次第を丸1、お開きいただきますと、資料の1ということで、全体の取りまとめに向けたイメージ、そして参考資料、それから本日御発表いただきます先生方の発表資料も、丸5、丸6、丸7、丸8という形で載せさせていただいております。不足等ございましたら事務局までお申し付けいただければと思います。以上です。
【天笠主査代理】    それでは本日の議事ですが、プログラミング教育に関するヒアリングとしまして、4名の委員の皆様に御発表をお願いしております。
  なお、カメラ撮影につきましては、ここまでということにさせていただきます。
  これより、次第の順に御発表を頂きたいと思います。その後、まとめとして、質疑応答と意見の交換の時間を取りたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
  それではまず、新井委員から発表をお願いしたいと思います。新井委員、よろしくお願いいたします。
【新井委員】    おはようございます。ただいま御紹介にあずかりました新井紀子でございます。国立情報学研究所の社会共有知研究センターのセンター長をしておりまして、本日は、「AIが大学入試を突破する時代に求められる人材育成」ということで、お話をさせていただければと思います。
  私ども研究所は、2011年から「ロボットは東大に入れるか」という人口知能プロジェクトをしておりますけれども、これは単に技術として東大を突破するようなAIを作るということを目指してやっているというわけではございません。この概要は、今、ディープ・ラーニング等、大変急速に発展をしておりますけれども、現在及び近未来のAI技術・ロボット技術が導入されることで、2030年の社会がどのように変化するかを科学的に明確化することを目的に、大学入試をベンチマークとして、我が国における学際的な知識・先端技術を集積し、これまで蓄積された人工知能の各要素技術の精度を高めて、2016年、今年ですけれども、センター入試で高得点、2021年に東大入試突破を目指しているというプロジェクトで、どうして大学入試を使ったかというと、これがホワイトカラーのスクリーニング機能として日本では広く使われているものですから、これの各要素、単に数学で何点取ったということではなくて、数学のどの分野のどのようなタイプの技能、あるいは英語のどの分野のどのタイプの技能というのがAIで代替されるかということを見ることによって、ホワイトカラーのどのようなタイプの職種が、機械代替、2030年までになされるかということを正確に見極めることができると考えて、このようなプロジェクトを世界に先駆けて一番最初に始めたというプロジェクトでございます。
  今現在の人口知能は、多くは検索とクラスタリングと最適化という三つを、ビッグデータに基づいてやっています。例えば2011年にIBMのWatsonという人口知能がJeopardy Challengeでチャンピオン2名を破ったというのは大変有名なニュースですけれども、これはどうやって行ったかというと、Jeopardyの問題というのは非常に傾向がありまして、「モーツァルトの最後の、そして多分、最も力強い交響曲は、この惑星と同じ名前をしている」のように、一番最後が「This何々」で終わっているという問題の特徴があります。「This何々」で聞けるようなものというのは、固有名詞を当てる問題です。ですので、主には検索の問題として考えることができて、ですので、人工知能にとっては得意だったわけです。
  この問題をどうやって解くかというと、モーツァルト、ラスト、シンフォニーで検索をいたしますと、ウィキペディアのこの項目が、ランキングモデルでトップに挙がってきます。そういう中で、別にWatsonも東ロボくんもSiriも、これを言語として読解して理解ができるわけではありません。記号列として検索をしまして、モーツァルト、シンフォニー、ラストといった単語が、あの辺りで集中して起こっているということを認識します。これは共起といいますが、この共起している中で、プラネットのカテゴリーに入っている単語はどれかということを調べると、ジュピターだけが該当することが分かりますので、答えはジュピターである蓋然性が高いとして答えるのが、主に検索に基づくタイプの人工知能の仕組みです。
  この方法だけですと、なかなかセンター入試ですと5割ぐらいしか正答が出ません。それに対して、昨年、これは日本ユニシスのチームがやったんですけれども、それに加えてNIIが提案した新しい理論的枠組みの機能を搭載することによって、センター模試等で大体76点を獲得しまして、偏差値66.5を達成したということがございました。
  同じように国語なんですけれども、国語は当然、文章は読むことはできません。読んで理解をする、読解をするということはできませんので、傍線部の問題というのが一番センターでは多いんですけれども、傍線が出てくる箇所、段落及びその前の段落の中で、アが何回、イが何回、ウが何回という、記号がどのように出てきているかということのパラメータを取りまして、それで選択肢の中から一番ベクトルとして似ているものを選ぶということをして、大体正答率50%を、今、達成している状況です。
  数学は機械翻訳の手法を使うわけなんですけれども、今ある検索型の機械翻訳ではなく、古いタイプですけれども、きちんと一語一語理解をするという機械翻訳の手法を使いまして、機械が理解できる言語に翻訳を自動的にいたしまして、それで後ろの数式処理と組み合わせて答えを出すということをいたしまして、東大模試等で合格点相当を達成するような答案出力、答えだけではなくて答案出力ができるように、今、なっております。
  昨年、進研マーク模試6月というのに、全国40万人の高校3年生と同じ問題をAIが挑戦をいたしまして、数学の場合、実はまだ、日本語で書かれている問題をきちんと理解するというところが、かなりつまずきます。まだ自然言語処理、そこまで達していないので、数学はこれはEnd to Endではなくて、ある程度補助輪が付いている状態だと理解していただきたいんですが、世界史は完全にEnd to Endで、画像の認識も、グーグルのフォトみたいな形で検索をしたり何かして画像認識もして、世界史はあのぐらいの程度の点数が出ておりまして、全体として偏差値が57.8に達しております。つまり、今、私どもが開発している東ロボくんというAIは、高校3年生の中で上位20%以内に入っているという状況になっております。ですから、クラスでよくできるなと思うような子になっていると。
  こうなりますと、別に東大に入るか入らないかは余り労働市場的には重要な問題ではなくて、正規分布している労働の技術の山があったときに、真ん中の主なバルクのところが、AIにかなり代替をされると。そうすると人間に残されるのは、高度知的労働、肉体労働と、教育を要しない低賃金労働、例えばコンピューターの下処理みたいなことですけれども、これらに分離される可能性が高いと。日本は労働法が割合厳しいので、なかなかレイオフがありませんけれども、アメリカでは実際にそのようになって格差が広がっているということが起こっていると考えることができます。
  私は本日、主にお話をしたいのは、こういうことです。先ほどから私ども、あるいはアメリカ、欧米の巨大企業が行っている人工知能というのは、実は検索とかクラスタリングということ、あるいはパラメータを見て、これが多分近いだろうということをやっているだけであって、文章を読解することはできない、意味を理解することはできないと、繰り返し申し上げてきました。
  例えばSiriに「この近所のおいしいイタリアンレストランは?」と言ったときも、「この近所のまずいイタリアンレストランは?」と聞いたときも、「この近所のイタリアン以外のレストランは?」と聞いたときも、同じ検索結果を戻します。つまり、きちんと読んでいないんですね。多分、「近所」と「イタリアン」しか取っていないで検索結果を返しているということが分かります。ですから、「ではなく」とか「のときに」とかというようなところを、きちんと読めていないということになります。
  では、どうしてそのように意味が分かっているはずの高校生が、意味が分かっていないAIに敗れたのかということを、私どもの研究所では中高校生の協力を得て、教科書を中高校生は読めているのかという調査を行いました。
  これは埼玉県のとある教育委員会に御協力を頂きまして、その市内の全ての中学校でタブレットで調査を行ったり、埼玉県の、これは受験を経ている中高一貫校で紙面で調査を行ったり、東京都の、その学区の中では上位の、100%進学するような普通高校で紙面で調査をしたりいたしました。中高の検定済みの教科書、ただし国語と英語は除きます。そこから文章を抜粋し、自然言語処理や認知科学、教育工学の研究者が大学院生と教員をトレーニングした上で作問した問題を使っております。今回、まだ1,000人ぐらいしかデータが取れていないんですけれども、今年度中に7,000人規模で追加調査を実施する予定です。
  例えばこちらの問題、これは中学校の社会科の、「新しい社会」というので出ている問題です。「オーストリア、次いでチェコスロバキア西部を併合したドイツは、それまで対立していたソ連と独ソ不可侵条約を結んだ上で、1939年9月、ポーランドに侵攻した」。ポーランドに侵攻したのは何でしょう。
  これは答えがここに書いてありますから、暗記する必要はありません。知識には依存しない問題です。文章を読めれば解けるはずなんですけれども、これ、答えはドイツですが、中学生で83%、高校生は進学校ですと、全員がこれは大体読めます。なんですが、中身をよく見てみると、実は中高一貫校ではない、受験を経ていない公立の中学校では、四人に一人がこの文章が読めていないことが分かりました。75%の正答率です。
  次、「Alexは男性にも女性にも使われる名前で、女性の名Alexandraの愛称であるが、男性の名Alexanderの愛称でもある」。Alexandraの愛称は?  これはもうほとんど明快だと思いますけれども、Alex。これ、どれぐらいの正答率だとお思いになりますか。中学生53%。53%しか分からない。Alexandraの愛称は女性であるとか選んでいる。進学校でも2割、答えることができていないという状況です。
  こちら、高校生の生物基礎ですね。生物は、最も最近の10年間で指導要領が変わって、内容が増えてという大きな改革があった科目ですけれども、それの19ページ。ですから、高校入ったら全員が習う19ページ、冒頭のところですから、中学生が高校に入ってすぐ目にする文章です。「アミラーゼという酵素はグルコースがつながってできたデンプンを分解するが、同じグルコースからできていても、形が違うセルロースは分解できない」。セルロースは何と形が違うとこの文では書いてありますかということなんですが、答えはデンプンです。
  これはどれぐらい読めているかというと、これぐらいなんですね。4択なのに14%しか読めていない。進学校の高校生でも、3年生であっても33%ぐらいしか読めていない。全部見ると、こういう感じなんですね。公立の中学校だと9%しか読めていない。4択よりずっと低いんですね。
  どうしてこういうことになるかというと、これなんです。うちの東ロボくんにしても、全く同じ結果になるんです。どういうことかというと、キーワードだけを抜いていくと、グルコースが一番近そうだと思うんですね。形が違うセルロースというのに一番近いキーワードがグルコースなので、グルコースを選ぶ。あるいは、文頭の名詞を持ってくると係り受け先になる可能性が高いので、アミラーゼを選ぶ。これは意味が分かっていない人工知能の動きとほとんど同じです。ですから多分、意味が分かって教科書が読めていないと、今の段階で、まだデータが少ないので、これは仮説ですけれども、多分、読めていないと思っています。
  本当はこのように分かってほしいですよね。アミラーゼという酵素はとあるから、これで酵素の一種なんだなと。グルコースがつながってできたデンプンを分解するけれども、グルコースがつながってできたセルロースは形が違うので分解できない。この絵が描けていれば分かるんです。本当はアクティブ・ラーニングはこれぐらいにした方がいいんですね。これで本当に読めているかを確認する。それは一人一人確認することができて、時間がそれほどかからないアクティブ・ラーニング、このようにすると、文章が読めているかどうかが検討できるかと思います。
  例えばこの問題、この絵を描くということが全然できていない。絵を描くというのは、意味として表象するということですね。文字で書かれている記号列を意味として理解して表象するということが、実は非常に苦手だということが、次の問題から分かります。
  「原点Oと点(1,1)を通る円がx軸と接している」。書いて下さいと言っているんじゃなくて、チェックしてくださいと言っているだけなので。BとCはx軸と接していません。Dは(1,1)を通っていません。ですからAだけが正解なんですけれども、入試を経ている中高一貫校で半分以下ですね。進学校の高校で63%です。
  じゃあ、もっと簡単な問題。「原点Oを通る円がある」。これ、どれぐらいだと思いますか。これ、公立中学校で聞いていないんですね。今年聞きます。入試を経ている一貫校で64%なので、多分、公立中学校では20%を切ると思います。そのぐらいですね。
  数学だけじゃありません。例えば物理の問題。これは物理の、波に関しての冒頭の定義文です。「波形の最も高いところを山、最も低いところを谷と呼ぶ。変位の最大値を振幅といい、振動の大きさを表す。つまり、山の高さ(谷の深さ)が振幅である。また、一つの山から次の山までの距離、あるいは一つの谷から次の谷までの距離を波長と呼ぶ」。非常にシンプルな文章です。
  これからどの絵が正しいですかという選ぶ問題です。引っ掛けはありません。CとDは波長と振幅が逆になっていますので、AとBが答えなんですけれども、これぐらいしかできないんですね。読めない。そうすると、この後、教科書を与えようと何しようと、もうこの後、入っていかない。反転授業は無理です。予習をしてきなさいと言っても、日本語が読めないんですから、この教科書の文が読めないんですから無理です。
  この東ロボから見えてきたことをまとめます。近未来のAIにとって、「意味を理解すること」は非常に難しい。特に言葉の意味を理解することはできないだろうと思います。だから例えば銀行の与信審査みたいなことはAIに代替可能だけれども、窓口の業務や教育は、AIでは本質的に代替はできないだろうと思います。近未来のロボットも、「一期一会の問題解決」はできないでしょう。ですから介護・保育・災害救助は、ロボット代替は難しいでしょう。
  でも高校生の8割がAIに敗れた理由は、人間も、教科書や、あるいは入試の問題程度の説明文の意味を理解できていないからだと思います。これが実は、A問題は、うちの東ロボくんにとってもWatsonにとっても簡単です。でもB問題は、うちのロボットやWatsonやSiriには難しい。なぜなら問題文が長く、それを正確に読解する能力が問われるからです。ですが、多分、A問題が解けてB問題ができないのは、人間もAIも同じ理由かもしれません。ですが、これはできなくていい能力でしょうか。いいえ、違います。
  説明文、例えばマニュアル、ビジネス文書、仕様書等の理解は、ホワイトカラーの生産性向上のために最重要の能力です。あるいは、もちろん、論理的な説明文の読解力は、プログラミングの前提となる仕様の記述。仕様というのは、どういうものを作りますという説明文のことです。どういうものを作ってください、どういうものを作ります、この仕様の記述、仕様の読解にも不可欠です。
  ですから、中高校生が説明文を読めないまま、AIに劣ったようなAIに似た問題解決をしている場合、2030年は、労働力は不足しているにもかかわらず、需要と供給が労働でマッチしないので失業も同時に起こるという、大変深刻なことが起こるだろうと思っています。
  ですから私は、中学校の教育目標というのは、だから今回、残念ながら、「教科書が読める」というのは、最低限よりまだ下だと思っていたわけですね。「教科書が分かってできる」が最低限だと思っていたのに、「教科書が読める」ができていない子がこれだけいるということが分かりましたから、「教科書を読解できること」に設定して、それをきちんと確認するというプロセスが必要だと思っています。
  小学校で英語やプログラミングを行う前に、その前提として必要な読解力を磨くことに注力すべきではないかということで、私のプレゼンを終わらせていただきます。ありがとうございました。
【天笠主査代理】    どうもありがとうございました。それでは続きまして、上野委員から御発表をお願いいたします。上野委員、どうぞよろしくお願いいたします。
【上野委員】    よろしくお願いします。株式会社CA Tech Kidsという会社で代表を務めております上野と申します。今日はプログラミング教育の必要な理由というところ、さんざん議論もされてきましたけれども、私なりのところと、あとは、公教育において、どういう狙いでどういう実践を重ねていったらいいのかというところ、試案でございますけれども、発表させていただければと思います。
  当社はサイバーエージェントという名前のIT企業でございまして、インターネットを使った様々なサービスを提供しているIT企業なんですけれども、私はその中で、CA Tech Kidsという名前の子会社の代表をしております。このCA Tech Kidsのビジネスといいますか、仕事は、小学生を対象にしたプログラミングの教室ですとかワークショップを運営しております。2013年に設立しまして、ちょうど丸3年になるんですけれども、今、国内で教室が八つありまして、大体750人ぐらいの生徒さんが通っております。最近、プログラミングが新しい習い事として注目だみたいな、ちょっとしたブームみたいなところもありますけれども、正にそこのところをやらせていただいております。
  まず、プログラミング教育が必要だというところをいろいろな先生方からも御発表ありましたが、ITがどんどん普遍化してきて、身の回りのほとんどのものがコンピューターで制御されているということは、もはや説明が不要かと思います。その中で、社会がどんどん便利になる、経済もどんどん発展していくという中で、テクノロジーを使わずしてこれ以上の成長を遂げていくことは難しいということで、何らかの形でテクノロジーを活用していくというのはこれからも必須になってくるということも、誰も異論はないところかなと思います。
  先ほども大変示唆的な御発表ありましたし、前回も松尾先生の大変勉強になる御発表がありましたが、技術革新、特に人工知能の発達によって、いろいろな仕事がコンピューターに代替されるということも言われております。人工知能だけでなく、特にそこの機械と合わさって物理的なロボットが動くというところも合わさってくると、本当に人間のやる仕事、なくなるんじゃないかということも言われております。
  そうなったとき、先ほどの新井先生のお話の中にもありましたけれども、人工知能が社会の中で普遍的になったときに、人間はどうすればいいのかというところなんですが、一つ最も望ましいのは、そういう人工知能を作ってどんどん社会を便利にしていく、そういう側に立てるということは、最も望ましいケースだと思います。たとえそうでなくても、AIの有用性が分かって、どういうケースで活用すればいいのかということが分かる人であれば、AIとともに働く人として、ビジネスですとか社会の中で生きていけるのではないかと思います。
  一方で、たとえAIですとかそういった情報処理的なことが分からなくても、人間としての付加価値で勝負していく。例えば高級ホテルの接客ですとか、先ほどは災害なんかも代替不可能だというお話がありましたけれども、人間にしかできないことというのも引き続きあるということで、じゃあそこの領域で勝負していこうというのも一つの選択肢だと思います。
  問題は、結局この1、2、3のどれでも勝負できない人というのは必ず出てくると思います。結局AIに代替されてしまって、かつ、人間としての付加価値、例えば高いコミュニケーション能力による接客とかそういうこともできないとなると、その人たちは一体何をやって御飯を食べていけばいいのかということになってまいります。
  ここのラインというのは非常に大きなものがあると思っていまして、未来を生きる子供たちに生きる力を与えるという趣旨の義務教育の趣旨から考えると、この死守しなければいけないラインより下に子供たちを行かせないということが、一番大きな目的になるんじゃないかと思っております。
  こちらの資料は、経済産業省から発表されている第4次産業革命と言われる時代が来るという中で、現状を放置すればどうなるかということなんですけれども、高い、先ほどの図で言いますと1番、AIを作れるような人たちというのは、このままだと外資系企業にどんどん持っていかれるだろうと。中間層も、そういった学問をしている人がいないわけですので、どんどん減っていくだろうと。そして多くの仕事がAIに代替されるような単純作業、そしてそれらは低賃金になっていくだろうということで、かなり悲惨なストーリーですけれども、特にこの左下のゾーンというのは、第4次産業革命時代の新しい格差と言っても差し支えないのではないかと思います。
  一方で、じゃあ改革したケース、第4次産業革命に向けて手を打ったケースはどうなるかというと、そういったAIを作れるような高度な専門的な技術を持った人たちが、逆に海外から集まってくるぐらい、そしてそういったAIを使ったビジネスですとか、あるいは人間としての付加価値を大いに発揮するような人たちが、たくさん活躍していると。中間層が大きく増えていると思いますけれども、こういう状況が目指すべき理想ではないかという形で、経産省の方でまとめられたものになります。
  ここに対して教育がするべきことというのは、このゾーンを生まないと。この右下の新しい格差のゾーンに、なるべく子供たちを将来行かせないようにしなければいけない。願わくば、こちらをどんどん増やしていってあげると。そのために学校では何をすべきかということが、この会合での最も議論すべきポイントなんじゃないかと私は考えております。
  そうなると結局のところ、じゃあどういう能力を身に付けるのかということなんですけれども、ワード、エクセル、パワーポイントですとかグーグルドックスですとか、そういう便利なツール、アプリケーションを使いこなすというだけでは不十分というのは、もう誰しもが分かることでして、そういうことではなくて、そういったものを作り出せるような技術力ですとか、あるいは理解といったものが必要になってくると思います。
  そういった議論はかねがねされてきたわけなんですけれども、最近、この必修化のニュースも出て、世の中の反論、反響を見ていますと、結構反対という人もいるようなんですね。そういった反対の意見を見てみると、例えばプログラミング言語というのはドッグイヤーであって、テクノロジーというのもドッグイヤーであって、今教えたものなんか、どうせ古くなるから意味ないよというお話ですとか、プログラミングという作業自体がコンピューターがやるようになるので、人間が勉強しても意味ないよというお話ですとか、あるいは、エンジニアが足りない足りないと言うけれども、どうせ例えばオフショア開発で海外にアウトソースしたり、一過性のものなので、今、それを目標にしてやっても意味ないよというような反駁というのは、たくさん見受けられます。
  これに対して、この一つ一つの反駁というのは実は全て妥当でして、一個一個見るとそのとおりなんですけれども、これらの反駁というのは、私はプログラミング教育の狙いをまず勘違いされていると思っています。今回、プログラミング教育という言葉で育もうとしている能力は、職能としてプログラミングができる、コーディングができる、ホームページが作れるという能力ではなくて、そういうホームページを作る能力を身に付けて、将来はホームページのエンジニアになろうと、そういう話ではなくて、先ほど来ありますように、不透明な来たるべき未来社会の中で、どういう人材であれば生き残っていけるのかと。その能力の中の一部を構成するものとして、コンピューターへの深い理解ですとか、それらを制御することができる能力というものが必要になってくると思っております。
  これは引用風に見えるんですが、私が書いた文章なんですけれども、私が考えているところでは、ITを武器として使いこなせると。その上で、自分がやりたいこと、社会のために実現すべきこと、そういったことを自分で考えて、自分で実現できる、そういう人材が理想的な像なのではないかなと思っております。
  いろいろと必要な資質・能力というのはあると思うんですけれども、例えば課題発見能力とかチャレンジ精神、主体性、論理的思考能力、粘り強さとかコミュニケーション能力、いろいろありますが、これらが全てプログラミング教育で解決されるということは全く申し上げるつもりはなくて、これらの能力と等しく重要なものとして、コンピューターへの深い理解とか、コンピューターを活用していく意思みたいなものですとか、あるいはその技術力というものが必要になってくるのではないかと思っております。
  そうはいっても、小さな子供たちにまず最初に教えるべきことというのは、とにかくコンピューターってすごいなとか、コンピューターを使えばこんなこともできるんだなということを、まずはお教えしていくべきなんじゃないかなと思っています。当社も、小学生のお子さん、年間1万人ぐらいいらっしゃるので、様子を見ていると、大体動画サービスで動画を見ているか、ゲームをしているかの、ほぼどっちかなんですね。それはそれで楽しいことなんですけれども、コンピューターって、そのためだけの道具じゃないんだよと。もっと創造的に活用して、自分で何かを作り出すことができるんだよということを、まずはスタート地点としてお教えするべきなんじゃないかなと思っております。
  これは当社の取組の事例なんですけれども、当社では、このような流れで考えて取り組んでおります。まずは子供たちにITの楽しさをお教えするというところで、プログラミングを学習する動機を持ってもらうというフェーズ。そして、もっとやりたいというお子さんに、しっかりと継続的な学習の機会を設けていく。そして、すごくおできになるお子さんとか意欲があるお子さんに対して、更に挑戦のステップを与えるというフェーズで分けております。これに対して当社の方では、体験のワークショップ、通っていただけるスクール、できるお子さん向けの奨学金制度というような形で、機会をデザインしております。
  今まで、全国16都府県で大体1万3,000名ぐらいのお子さんにワークショップを体験いただいたりですとか、今、毎週もしくは隔週でスクールの方に通っているお子さんが750人おりまして、3年前の10倍ですけれども、そういった継続的な学習に取り組んでいる小学生も中にはおります。あるいは、すごく意欲の高いお子さんで、スポンサーから資金を出していただいて、無償でプログラミングを学んでいると、そういったお子さんも中にはいらっしゃいます。
  こういったプロセスを経ていたお子さんの中には、非常に高いレベルに達しているお子さんもいまして、例えば今映っている彼女は、小学校4年生のときに初めて体験にお越しになって、今はもう中学校1年生になったんですけれども、iPhoneのアプリを自分で開発して、ストアでダウンロードまでできるようにしております。元素記号、水兵リーベ僕の船という、語呂合わせで覚えていたものを、もっと視覚的にパズルとかかるたとか、目に見えやすく、楽しく覚えられないかという発想でiPhoneアプリを作って、自分でリリースしているというものになります。あるいは、どんどん興味の幅を広げて、例えばドローンをプログラミングで操ってみたりとか、そういった取組がコンテストなんかでも評価をしていただいたりという形で、小学校4年生という非常に小さい段階にもかかわらず、興味・関心がうまくフィットして、そして継続的な学習機会がうまくフィットして、非常に伸びているといいますか、期待が持てる成長をされております。
  あるいは、こちらのケースも、小学校5年生、今はもう中1になりましたが、男の子ですけれども、彼も小4の夏、最初に当社のワークショップにお越しになりまして、その前には、お母さんからレゴのロボットを買ってもらっていたと。皆さん御存じのスクラッチというソフトからまず始めまして、徐々に興味・関心がiPhoneアプリとかサーバサイドとか難しい方に移っていきまして、昨年は経済産業大臣賞を頂くまでに成長するといったこともありました。
  こういったところから見るに、しかるべき機会が与えられて、子供たちの興味・関心・意欲があれば、伸びる子は幾らでも伸びるということが言えるのではないかと思います。ただ、今回は公教育での議論になりますので、じゃあ全員が全員、このようになれるか、このようにする必要があるかというと、全くもってそうではないと思います。前回も委員の方おっしゃっておりましたけれども、別に英語の授業を受けた人全員が通訳になるわけではありませんし、体育の授業を受けた全員がスポーツ選手になるわけではないということと同じように、プログラミングあるいはコンピューターの授業を受けた人が、全員その専門家になる必要はないと思います。ですので、小学校段階では、興味・関心の種をまいていくということが一番重要なのではないかと考えております。
  先ほどの、当社で行っている、楽しい、もっとやりたい、極めたいという3段階があったんですが、それに近しい形で、公教育でこういう形ではどうかというものを少し考えてみたんですけれども、まずは楽しさに気付くための学びを小学校段階で、そして徐々に意味が分かってくるというところを中学校の段階で、そして望む高校生に対しては、それがどんどん理解できるだけじゃなくて、使いこなせるようになるという形で、段階を踏んで公教育ではやってはどうかと思っております。
  もちろん中には、プログラミングじゃなくて美術の方が好きだとか、プログラミングじゃなくて歴史の方が好きだというお子さんが出てくる。当然ですけれども、それでいいと考えておりまして、全員にまずは種をまくと。そして、その種からどれぐらい芽が出てくるか。で、出てきた芽をしっかり大きな木に育てていくというところのストーリーを、しっかり描いておくというのが大事なのではないかなと考えております。
  まずは小学校・中学校段階、義務教育と言われるラインでは、少なくとも基礎的なことが分かるというところまで持っていければ十分なのではないかなと。先ほど申し上げた第4次産業革命の格差の死守ラインより下には行かないんじゃないかなと思っております。
  当社の方でも小学校で出張授業などもやっておりまして、例えばスクラッチ、きょう本当は実演してお見せしようと思ったんですが、時間がないのでやめさせていただくんですけれども、例えばスクラッチを使って猫を歩かせてみたり、あるいはその猫を自動でストップするように条件分岐を使ってみたりという形で、こういった学習指導案なども作りながら、学校の先生にも御理解いただきやすいように、また、我々のような企業がいなくなっても授業を続けられるように、御支援をさせていただいております。
  実際にそういった授業を受けたお子さんの中には、非常に良い感想を書いてくれておりまして、例えば、いつもはゲームをしている側だったけれども、それが自分で作れるということが分かったし、それというのは楽しいということが分かった。ITに興味・関心が湧いていて、それを活用していく意思というのが明確に見て取れるかなと思います。
  あるいは、もし何なら何々だ、これはスクラッチの中にある条件分岐のブロックなんですけれども、これを身の回りで見付けてみたいと。スクラッチを使って、例えば自動ドアとか自動改札とか、そういったものも同じような理屈でプログラミング制御されているんだよというお話を授業の中でしたところ、プログラミングというのはパソコンの中だけじゃないんだなと、社会の身の回りにもいろいろなところにあるんだなという感想を書いてくれております。
  また、定量的なところでも、興味・関心の度合いですとか理解の度合いというのは、明確に上がっているということが見て取れます。
  最後なんですけれども、今日頂いていたお題として、学校の中での学びと外での学びをどう接続するべきかというところに関して少しだけお話できればと思うんですが、左側は学校内でして、先ほど御覧いただいた、楽しさに気付く、理解する、使いこなすという3段階を小・中・高でやっていったらどうかというところなんですけれども、非常に興味の強いお子さん、あるいは能力・資質のあるお子さんというのは、別に中・高を待つ必要はなく、小学校段階からハイレベルな学びの機会を得られるべきだと考えております。
  そういったところは、例えば当社のような民間のスクールですとか、NPOさんですとか、地元の高等教育機関が提供しているワークショップとか、そういったところに積極的に誘導していくことで、小学校の段階で、もっとやりたい、極めたいという高いフェーズにいざなっていくということが非常に重要なのではないかなと思っております。ですので、今は民間企業、NPOが、それぞれの考えに基づいて、言わば勝手にやっているわけですけれども、うまくここを接続することで、早い段階で、やる気・資質がある人を引き上げていくということも可能になるのではないかなと思っています。
  一つ事例を御紹介させていただきますと、当社は沖縄にも支社がありまして、いろいろ活動しているんですけれども、まず、これは学校内の取組になります。沖縄の小学校に伺って、プログラミングの授業をすると。これは地元の大学に協力をしてもらっていまして、琉球大ですとか沖縄工業高等専門学校の学生さんが、当社のスタッフと一緒に講師になって、小学校に伺うと。そして1時間2時間の体験の授業をやると。正に種をまいているわけなんですけれども、ここですごく刺さる子というのがやっぱりおりまして、ただ、当社のスクール、変な話、月1万円とかしますので、誰でも通えるというわけではないんですね。そうなったときに、じゃあお金ない子は学べないのかということではなくて、地元の企業の方に協賛金を出していただいて、そのお金でプログラミングを無償で学ぶという奨学金制度みたいなものを作りまして、種をまいて、そこから芽が出そうなお子さんというのを、人数はどうしても限られてしまいますけれども、学校外での学びにいざなうという仕組みを試みとして始めております。
  全体像としては、このような形です。今、既に着手しているところは緑色なんですけれども、何か地方も含めて、こういう有機的なつながりというのを構築できないかと考えております。
  すみません、時間が大変オーバーしてしまって、大変恐縮なんですが、これから時代が大きく変わってくるという中で、子供たちはまだそのことを、多くの場合、知らないわけでございますので、その子供たちの未来を考えて、どういう仕組みを作っていくべきかということを、是非皆さんで議論できればなと考えております。
  以上でございます。どうもありがとうございました。
【天笠主査代理】    どうもありがとうございました。それでは続きまして、中川委員から発表をお願いします。よろしくお願いします。
【中川委員】    おはようございます。私はマイクロソフトの中川と申します。マイクロソフトは、御存じの方もいらっしゃるかもしれませんけれども、ウインドウズやオフィスといったコンピューターのソフトを開発・販売している会社でございます。それ以外にも、実はクラウドのサービスであったりとか、今日に関連するところで言うと、ビジュアルスタジオというプログラミングツールを、これはプロフェッショナル向けですけれども、提供しておりまして、あとは最近は、もともとはゲームなんですけれども、マインクラフトという子供たちに非常に人気のあるゲームがありまして、この中にアドオンを追加してプログラミング学習をするという機能を提供しておりますけれども、こういった製品のラインナップも持っております。
  私自身は、今はビジネスマネジメントという会社の中の営業組織の変革を担当しているんですけれども、もともとはプログラマーでございまして、プログラマーをやった後に、マーケティングをやって、セールスをやって、それから今、社内の仕事をやっているという経歴になります。
  マイクロソフトはグローバルで展開をしている会社ですので、実は入社したときはほとんど周りは日本人で、私も上司は日本人だったんですが、そのうち上司がアメリカ人になったり、ポルトガル人になったり、イギリス人になったり、今はスペイン人なんですけれども、非常にいろいろな方とお仕事をする機会というのに恵まれている環境におります。
  こういった背景と提供しているいろいろなサービスや製品を踏まえて、社会で求められる力とプログラミング教育ということについて、今日は少しお話をさせていただこうと思います。皆さんにお配りしている資料と、前の表示している資料が少しだけ違いますので、どうぞ前の方を御覧いただければと思います。
  まず、どういった人材を育成したり、社会で求められる人材像というのを描くかというのを考える上で、今の現状がどういう現状なのかというのはとても重要だと思うんですけれども、よくプレゼンテーションで話をさせていただくんですが、コロラドの高校の先生がプレゼンテーションをされた有名なお話で、皆さんも御存じかもしれないんですけれども、世の中で利用者が5,000万人に達した期間で、それぞれのプロダクト、どれぐらいの時間がかかったと思いますか。例えばラジオで言うと、これは38年かかっているんですね。テレビが5,000万人のユーザーを獲得するには13年かかっているんですが、ここから面白い話が、iPodという優秀ないい製品がありますよね。アップルさんの製品ですけれども、あれが実は3年なんです。フェイスブックって皆さんお使いですかね。フェイスブックというSNSのサービスがありますけれども、あれは実は9か月で1億人のユーザーを獲得しているんですね。
  ここから言えることって何かというと、昔は、例えばテレビ、ブラウン管からプラズマから液晶と、技術は移ってきましたけれども、そういった技術を取得していると、非常に長い期間、それを使ってお仕事ができるというところなんですけれども、今はどんどんプロダクトライフサイクルが速くなっていまして、技術もどんどんと陳腐化して、新しいものをどんどん組み込まなきゃいけなくなってくるというのと、それから組合せでいろいろなものを創意工夫で生み出していって、割と短い期間でものが作れるようになってきているという状況です。
  これは作り手側の論理ですけれども、消費者側の論理で言いますと、非常に短い期間で、フェイスブックが9か月で1億人を超えるということは、フェイスブックというのがあるよというのを、例えばこれを全世界でテレビ広告をやるなんていうと、とんでもない金額なんですが、フェイスブックはテレビCMをやっていなくて、それぐらいユーザーを短い期間で獲得できるというのはどういうことかというと、情報が氾濫しているということなんですね。これはインターネット前と後で、大きく世界が変わってきているということを意味しています。
  私は企業に勤めておりますので、企業の中のお話で言いますと、インターネットがこれだけ普及する前は、基本的には情報というのは不足をしている状態。私も20年ほど前にIT業界に入ったときに、UNIXのシステムをお客様に入れていたとき、非常にインターネットに接続される方、まだ少なかったですけれども、ルーターを導入するとき、お客様は余り情報をお持ちじゃなかったんですね。専門の教育を受けた我々のような人間が説明をして、お客様に導入をしてさしあげると。正直、お客様はよく分かっていらっしゃらなかったという状態でした。
  こういったケースの場合には、お客様はそんなに情報早くないですので、我々プロが1回仕入れた情報というのは長く提供できるわけで、組織を短い期間でどんどん変えていく必要は余りないわけです。特に、私はITですけれども、製造生産現場なんかに行きますと、同じラインで作業をするということが長くなりますから、そのライン作業の中で、個人の生産性を上げていったり、計画性を重視していったり、効率を上げていったりということが求められる。
  一方、現在や未来というのは情報が非常にたくさんありますし、個人の持っているスキル、スキルというのは、ものを作ったり仕事をするためのという意味ですけれども、長く使えるというよりも、非常に短い期間で行っていかないといけないし、また、一人で生産性を上げるというよりも、チームで生産性を上げるということの方が大事になってきます。データもたくさんありますので、仮説検証といったことも非常に重要になってくるというのが現在の働き方です。
  こんな状況の中で、私も会社の中で、外部から弊社に入りたいと言って来ていただく方の面接をたくさん行いますけれども、我々が採用する人材というのは、考える力、生み出す力の非常に強い人材というのを採ろうとします。よく検索の技術なんていう話をしますが、子供たち、私も学校の現場によくお邪魔するんですけれども、検索ってとても上手なんですね。検索キーワード、大人だと余り想像力がなくて、少ないキーワードで検索をかけたりするのが、子供たちは非常に検索キーワードを上手に使って、欲しい情報というのをすぐに得てくるんですけれども、この情報を見るだけでは駄目で、これを本当に正しいのとか、どう使えるのと考えていく力というものを持っているのかというのが大事に思うポイントの一つで、もう一つが、世の中にはルールというのが存在しますが、そのルールというのを押さえて、そのルールの上を行くと。ルールを逸脱すると、これはNGなんですけれども、逸脱しないで、ルールをよく理解して上手に使っていくと。頼まれたことだけやるような方というのは、余り面接では欲しい人材とは感じないということが、社会の今の多くの企業で、恐らく背景としてあるのではないでしょうか。
  これからの社会をどのように見ていくかと考えたときには、クラウドのマーケットというのは5倍に膨れ上がっていますし、デバイス、持っている端末の数というのも、2014年段階で、もう一人3台持っていると言われています。ソーシャルアプリケーションも非常に豊富になってきていまして、フェイスブックに関しては、もう10億ユーザーを突破したという話があります。プラットフォームが大きくなって、ユーザーが持っている端末数が増えて、ソーシャルアプリとかで情報量がたくさん行き交うようになるとどうなるかというと、データ爆発が起こります。
  実は全世界にあるデータの90%が、ここ最近2年以内に生成されたデータと言われているぐらい、データというのは大変爆発していて、ここから2020年、ポイントになってくるんですけれども、に向けては、インターネットに接続する端末は、いろいろな調査会社がレポートを出されていますけれども、少なめに見ても30億個で、一番多い予測だと10兆個。この一番多いのはマイクロソフトが予測した数なんですけれども、非常に多くのデバイスがインターネットにつながっていくと。すると更にそのデバイスが情報をどんどん吐いて、クラウド上にたまっていって、データがどんどん大きくなっていくと。
  こういう状況の中で、先ほどからお話が何度も出ていますけれども、人工知能のようなものが出てきて、人間の仕事を奪うんじゃないかと。人工知能もディープ・ラーニングの世界では、サンプルのデータがどんどん増えていって、それを深く学習していくという機能がありますので、先週の松尾先生のプレゼンテーションにもありましたように、非常に高度な分野の仕事も、将来人間がしなくなる可能性があるということが言われています。
  一方、実はこれはアメリカの労働統計局が出している数字なんですけれども、こういったクラウドだったりとかIoTといった新しい分野によって、620万個の新しい仕事が生まれるという統計データが出されていました。このうちの51%はIT関連のお仕事だということを、統計データでは言われています。
  今日は小学校段階ということなんですが、大学のデータを持ってきまして、同じくアメリカで、実は理科系の人材、理数系の職業のスキルギャップについて分析をされまして、理科系の学生に対して求人が出ているものを全体の100%とした場合に、その中のコンピューティング、コンピューターサイエンスのスキルが欲しいですよと企業側が言っているのが、全体の60%を占めているんですね。一方、コンピューターサイエンスの学位を取得して大学を卒業する学生は全体の2%と、スキルギャップが起きていると。コンピューターサイエンスの学位を持った人をもっと育成しないといけないと、これはアメリカもイギリスも考えているようです。
  では、コンピューターサイエンスの学位を持った人というのはどんな人で、社会に出たらどんなことをするのかというのを整理しますと、まずコンピューターと一言に言いましても、コンピューターを作る、動かすの中にも更に三つぐらいの分類がありまして、まず我々のように、プラットフォームを作るというコンピューターの技術者が一番最初にいます。実は2番目以降の方が最も多いんですけれども、そのプラットフォームを使ってアプリケーションを作る、ユーザーが求めている便利なサービスをコンピューターを使って作るというエンジニア、これが一番多いんですけれども、三つ目が、出てくるデータを加工したり処理する、これはデータサイエンティストとかそういったカテゴリーの方になりますけれども、という三つの職種が、大きくカテゴリーにできると。
  ここに従事する人材を育成したいと考えるのが我々の考えなんですけれども、当然、そういった職種に就くために行うコンピューターの勉強を通じて、実は、その方が本当にIT業界に就職しなくても、賢い使い手になれるとも考えています。例えばコンピューターサイエンスを学ぶことによって、抽象化とか最適化とか自動化といった概念を理解して、そういうことをしたいんだということを開発者に伝えることができる。隠れたユーザーニーズを見付けたりとか、データの中に潜む真実というのを発見したりすることができる。
  先週、松尾先生がプレゼンテーションされ、質疑応答の際に私がさせていただいた質問に松尾先生がお答えいただいたのは、全員プログラマーになる必要はないけれども、例えば法律の世界で言うと、法律をしっかり理解している方が弁護士と話した方が生産的ですよねということをおっしゃいました。同じように、コンピューターをよく理解している方がコンピューター屋とお話をして新しいインダストリーを作っていくということも、十分有効なことではないかなと思います。これをコンピューテーショナル・シンキングという考え方で分類されていて、アメリカの方ではよくお話をされていらっしゃいます。
  実際に、もう今の段階で産業とITがどういう関わりを持っているのかというのを、今、本当にやられている事例で一つ紹介します。これは農業とITなんですけれども、私の友人の会社がやっているプロジェクトなんですが、実はドローンを農地に飛ばして写真を撮ります。ドローンはカメラを積んでいますので、そのカメラの画像を、昨日、今日と、毎日毎日写真を撮っていって、写真を撮った領域というのを画像比較をするんですね。コンピューターの画像はRGBという3色の色を数値化して表現するんですけれども、これを比較をすることで、赤みが強くなっているところは虫に食われているんじゃないか、害虫被害に遭っているんじゃないかというのを見つけることができると。
  これを、従来であれば、農業の経験豊富な農夫さんが現場に行って葉っぱを見て、ここは虫にやられているなとか、やばいなというので、農薬まいたりというのをされるんですけれども、それも大変なので、機械でバーッと全体的に農薬をまいてしまうということをするんですが、このプロジェクトでは、ピンポイントでどこが害虫の被害を受けているのかというのを見て、そこに対して農薬の集中散布を行うということをやっているという事例でございます。従来であれば、農業というとITととても遠そうなイメージがあったんですけれども、今は農業とITというのは非常に近い関係にあるという事例でした。
  こういったことを大人になってからするために小学校の段階でどんなことができるのかなということの一つに、我々が行った実証研究の中で、渋谷区の猿楽小学校というところで、マインクラフトのプログラミングの機能を使って10時間授業をさせていただいたという事例があります。本当はビデオを御覧いただきたかったんですが、技術的な問題でビデオはきょう御覧いただけませんので、簡単に概要を紹介すると、これは4×3のブロックを作ってくださいという課題を子供たちに与えて、マインクラフトの中で、コンピュータークラフトという、緑のタートル、亀なんですけれども、これがコンピューターです。これにプログラミングを行って、自分が手でブロックを積み上げるのではなくて、この亀にブロックを積み上げてくださいと言って出した課題です。
  すると、課題は一番右上の緑の4×3の課題なんですけれども、子供たちは、このタートルを使って、ずっと壁を作っていくわけです。このタートルには、実は前にしか働きかけできませんと。左右に向くことはできるけれども、横に移動できないし、横にブロックは積めませんという制約があります。これはルールですね。まずこのルールをちゃんと理解してもらって、これもドキュメントで渡すので、さっきの新井先生のお話のとおり、これが読めないとそもそもできないんですけれども、ちゃんとドキュメントを渡して、余り細かく解説しないで、子供たちに考えながら体験してもらいながらルールを理解してもらいます。
  そしてやるのが、ほとんどの子供が、この下左側の表面的模倣思考と書いた部分なんですが、目の前にブロック、4×3なので、右上と左真ん中にあるブロックの形、全く同じですよね。前に行って積むわけです。亀は前にしか動けませんので、横に積もうと思うと、一度右へ向いて、前へ進んで、左へ向いてブロックを積むと。これをループでぐるぐる回すわけです。正解なんですけれども、コンピューター屋としては、これは非常にコストが高いんですね。
  コンピューターは横に移動できないという制約がありますから、この場合、我々プロのプログラマーはどうするかというと、この壁の向きって制約されていますかと聞くんですね。どっち向きでもいいですかということであれば、前に三つ、縦に積んで、下りて後ろに下がってというと、左右の旋回をするという動きをしなくて済むと。
  実際、コンピューターに与える命令の数を数えますと、この左側のまっすぐ目の前に壁を作ったケースだと、60回、コンピューターに命令が送られます。一方、この右側の縦に壁を作るケースだと、左右の旋回がない分、36回の命令で実行ができると。これをハッキングとかというような言い方をしますけれども、こういうルールや制約を理解して、それを超えて、どうやって最適なアクション、非常に簡単な例ですけれども、というような思考を我々は求めたいなと思って、いろいろ事業をやってきておりました。
  このマインクラフトはそもそもゲームで、多くの、実際、この小学校でも、80%以上の子供がこのゲーム自体はやったことがあるという状況でしたので、非常に好奇心がある状態からスタートして、「何、新機能?」と言ってすごく食い付きが良くて、よく勉強していただいたのと、そこから本当にそのやり方でいいのというのを、こういうケースをたくさん御提供して考えてもらう。
  実はマインクラフトのいいところは、これを仮想の空間で、40人の子供が一気にログインしたアバターを使って、友達が仮想空間の中にいるわけですね。ですので、議論したりとか協力したりということができます。ものを作っていく、バーチャルの世界のレゴのようなものですので、非常にコストが掛からないでブロックで遊べるということで、創造性が出てくるようなことがあるんだと考えています。
  あとはコンピューテーショナル・シンキングで、しっかりと考えていったりとか、処理を並行に行っていったりということができるんですが、マインクラフト、弱点があって、仮想世界での取組になりますので、外部のデータを取り込んで統計処理をしたりとかというアクションというのは結構苦手なんですね。プログラミングツールはそれぞれ様々いろいろな特徴がありますので、例えば統計処理やりたいんだったら、私だったらパイソン使うなとか、テキストプログラミングをやるんだったら、例えばドリトルを使うなとか、いろいろなツールによって得意・不得意がありますので、こういったものも、小学校段階において、どういうスキルを得るためにどのツールを使うのが適切なのかというのもよくよく慎重にしながら、学校現場に情報提供しながら、ツールを使って採択していただきたいなと思っております。
  プレゼンテーションは、以上でございます。どうもありがとうございました。
【天笠主査代理】    どうもありがとうございました。続きまして、礒津委員から御発表をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【礒津委員】    ソニー・グローバルエデュケーションの礒津です。どうぞよろしくお願いいたします。私の方からは、本日お題として頂いていた、日本の強みを生かしたプログラミング教育ということで発表させていただきたいと思います。
  初めに簡単に弊社の紹介なんですけれども、ソニーグループの子会社として昨年設立されたもので、ビジョンとしては300年先の未来を創る教育ということで、ソニーもこれまで、僭越ながら日本のイノベーションを牽引してきたと自負しておりますので、将来のイノベーターを育成するような教育をやっていきたいと考えまして、こういった会社を運営しております。
  私自身は現在は代表として会社を経営しておりますが、もともとはソニー・コンピューターサイエンス研究所というところでコンピューターサイエンスの研究者をしていたりとか、その前はソニー本体側の情報系の研究所でコンピューターサイエンスをやっておりましたので、学生時代から一貫して、割とコンピューターサイエンスの部分をかなり注力してやってきたという感じです。
  日本の強みなんですけれども、ここにいらっしゃる皆さんは恐らく日本の教育を受けてきた方が多いと思うので、余り感じられないかもしれないんですけれども、実は算数・思考力というのが、日本を代表するような大きな科目体系というか、科目になっていると感じているところです。例えば算数オリンピックや中学受験といった、ある意味、日本独特の文化ではあるんですけれども、非常に良質な算数問題がこれまで供給されてきたというものがあったりとか、あるいは、子供から大人まで、算数を単なる教育だけではなくてパズルとして楽しむような、娯楽として考えるような文化があるということで、これは本当に江戸時代ぐらいから脈々と受け継がれていて、非常に日本の良い文化だと考えております。
  こういった日本の強みを生かして、弊社としては、Global Math Challenge、世界算数という名前の世界最大級のオンライン算数コンテストみたいなものをやっておりまして、これは定期的に開催しているものなんですが、これまで3回開催しています。全世界で、おかげさまで、延べ人数ですけれども、17万人ぐらい参加していただいたような、非常に珍しい算数のテストになっておりまして、残念ながら我々の努力不足もあって、日本のユーザーというか、受験者が若干少ないんですけれども、中国などでは非常に大きくブレークしているサービスになっていまして、現時点で登録ユーザー30万人を超えているという内容になっています。
  どうしてこういった日本の算数問題が非常に海外でウケているのかと申し上げると、我々、今回は、算数オリンピック委員会の方で、非常に良い問題、かれこれ25年ぐらい歴史のある委員会ですので、非常にいい問題を持っていて、彼らから問題を提供していただいて、それを我々なりに翻訳したりしながら、イラストを付けたりしながら、海外に展開したという形です。恐らく本当に、日本でいるとよく見るような問題ではあるんですけれども、海外に展開してみると、こういった問題が非常に面白いと。海外で算数の問題で面白いと言えるものはなかなかありませんので、これは日本特有の文化というか、面白い現象かなと考えております。
  実際に海外の方から様々なアンケートを頂いているんですけれども、全世界で大体1万件ぐらいのこういった自由記述のアンケートが集まりまして、ちょっと面白いところとしては、算数のテストなんですけれども、誰でも受けられるということで、全体の大体30%から30%強が大人の受験者ということで、こういった算数テストはなかなか面白いんじゃないかと感じているところです。
  こちらにあります、ちょっと小さい字で見にくいんですけれども、中国なんかでは、こういった大会を中国のあらゆる学校に広めるべきだとか、非常にいい意見を頂いておりまして、こういった好反応もあって、現在、中国の文部科学省に相当する教育部の方とは、次世代数学教育の共同研究をやろうということで、今、進めていたりもします。
  それ以外にも、インド、アメリカ、様々な国からフィードバックがあったんですけれども、皆さん共通して言っているのは、学校中に広めたいとか、ほかの友達にも是非受けてほしいとか、そういった非常に良いフィードバックでして、我々もこれがかなり自信になっていて、更に次の大会で、より大々的に海外にはプロモーションしていこうと考えているところです。
  日本の算数問題ですけれども、本当に非常に海外で評価されていまして、こちらの左側が、御覧になった方もいらっしゃるかもしれないんですけれども、シンガポールの学校の算数問題ということで、一時ネットで、去年ぐらいですか、話題になった内容になっています。これについていろいろ諸説あるんですけれども、最終的に調べてみると、現地の数学オリンピック、対象年齢高校生ぐらいのもので出題されたらしく、なかなか面白い問題なんですけれども、実は元をたどってみると、算数オリンピックが8年前に作った問題なんですね。算数オリンピックはかなりユニーク性を重視していまして、他から引用することはほとんどないので、恐らく算数オリンピックのオリジナルだと思うんですけれども、こういった算数オリンピックの問題が海外でも使われているのは非常に興味深い現象です。
  ただ、算数オリンピックの問題はあくまでも対象年齢が小学生ですので、そういった小学生向けの日本の問題が、海外では高校生でも使われるような問題になっているというのも、改めて日本の算数が評価されている証左になっているかなと私は感じているところです。
  こういった算数の良さを生かして、是非プログラミング教育を日本らしいものとして導入していきたいと私も考えておりまして、そちらの簡単な御提案なんですけれども、改めて申し上げるまでもないんですけれども、プログラミング教育の本質が何であるかというと、御存じのとおり、コーディングというよりは、プログラミング的思考、先ほどもありましたが、コンピューテーショナル・シンキングと言われているところがプログラミング教育の本質ではないかと考えておりまして、この部分を強めるのが、プログラミング教育のあるべき姿だと感じているところです。
  そのコンピューテーショナル・シンキングなんですけれども、CTと海外では略されていますけれども、なかなか的確な日本語訳がないのですが、今日のところはプログラミング的思考ということでお話しさせていただきたいんですが、コンピューテーショナル・シンキング自体は、コンピューターを活用して課題を解決する方法論ですね。決してコンピューターのように考えることではありません。海外ではかなり厳密に分類されていたりもするんですけれども、いろいろな分類がある中で、ここに挙げている色が付いている四つぐらいに大体収束するかなと思っていまして、人によっては五つだったり六つだったりするんですけれども、大体四つ五つに分類されるようなものです。
  例えば物事を分解するとか、問題の法則を発見するとか、問題の余計な部分を切り落として抽象化するとか、あるいは最後にアルゴリズムをデザインするとかといった、こういった考え方の方法論、そういったものをできるだけコンピューターを使えるような形で論理的に考えていこうというのが、このコンピューテーショナル・シンキングで、これ、四つのコンセプト、五つのコンセプトみたいな形で呼ばれているものです。
  これとGlobal Math Challenge、日本の算数がどう関係するのかというところなんですけれども、例えばこちらが我々が出題している世界算数の第2回の問題でして、小学校2年生向けの問題となっているんですが、一瞬見ると、時計の時間を判別するもので、ちょっと難しいように見えるんですけれども、大人の方であれば、大体ちょっと考えればすぐに分かるような問題です。
  ただ、これだけ見ても、なかなか小学生は分かりづらいので、皆さん一生懸命考えてくださるんですが、こちらの我々が作っている解説を上から眺めてみると、実はこの問題を解くに当たって、コンピューテーショナル・シンキング、プログラミング的考え方を完全に当てはめているという状況になっていまして、最初に問題を見たときに物事を分解して、それから一部要らない部分をアブストラクションで抽象化して、最後にアルゴリズムを作って問題を解くという形になっていまして、海外でもこういったGlobal Math Challenge、世界算数の問題が評判のいい理由の一つとしては、この問題自体がコンピューテーショナル・シンキングの考え方を導入しているということが、一つ言えるんじゃないかと考えております。
  これだけですと我々の問題ということであれなので、例えば開成中学の入試問題なんかを引っ張ってきたんですけれども、こういった問題が今年出題されたようなんですが、こちらもよくよく分解してみると、解答を出す過程で正にコンピューテーショナル・シンキングを使っているということになっています。上の方にアブストラクションが外れちゃっているんですけれども、言ってみれば問題自体が既に抽象化されている問題なので、その部分はスキップして、残りのコンピューテーショナル・シンキングのコンセプトを使ってこの問題を解くといった流れになっています。
  これはまだ我々の方でも正式な結論は出ていないんですけれども、どうやら海外で面白いと言われる算数問題は、面白ければ面白いほど、CT、コンピューテーショナル・シンキングの考え方を見事にうまく当てはめているような問題が多いのではないかという仮説を持っていまして、今、その辺りを重点的に研究調査している段階にあります。
  ということで、少しまとめますと、いわゆるコンピューテーショナル・シンキング、プログラミング的思考というのは、日本の算数では、ある意味、既に内包されていまして、これ自体がプログラミング科目と言ってもいいんじゃないかというのが我々の結論です。あくまでも学校段階で学習指導要領の中で言ってしまうと、どうしても算数の中でもちょっと難しめの部類に入ってしまうので、算数の範囲内ではあるんですが、論理も加わってきて少し難しいので、算数と論理ということで、これも我々独自の用語で内部では使っているんですけれども、算論という言い方をしていまして、こういった算論的な考え方が、非常に将来のプログラミングだったり、あるいは数学にも役に立つということで、一部算数から数学にジャンプするときに、皆さん挫折してしまう人が多いという話は聞いていますけれども、こういった算論的な考え方をすることで、コンピューターサイエンスの導入としても使えますし、数学にもスムーズに行くんじゃないかということで、我々としては、こういった算数の中でちょっとした工夫をすることで、うまくプログラミングにつなげていくことができるんじゃないかと考えているところです。
  そしてもう一つが、日本の強みとして、ロボット・ものづくりということを挙げさせていただきたいと思います。こちらは先週、松尾先生の御発表にもありましたが、日本の産業界の強みと言えば、ロボットというのは一つ挙げられると思います。我々ソニーとしても、これまで娯楽ロボット、エンターテインメントロボットみたいなものを作ってきましたし、産業界のロボットの強さというのは、本当に言うまでもなく非常に日本はトップクラスだと思うので、こういったロボットの強みを日本の教育でも初等段階から少しずつ入れていくのが、非常に日本の国際競争力にとっては強いんじゃないかと考えているところです。
  少し手前みそなんですけれども、弊社で開発している商品の簡単な紹介をさせていただきたいんですけれども、KOOVという名前で、ブロックを使ったロボットプログラミングキットを、今、開発中でして、今年中には発売する方向で、今、準備を進めているところです。このブロックを使ってロボットを作るというところなんですけれども、教材としてのメリットは、いわゆるティンカリングと言われている、手探りをしながら試行錯誤、トライ・アンド・エラーしながら自分なりにいろいろなロボットを作っていって課題に対処するみたいな、そういった手触りで試行錯誤する過程が非常に教育効果が高いということで、このブロックを使ったロボットというのは、レゴさんなんかもそうですけれども、海外でも高い評価受けているところになります。
  実際にまだ開発中のものもあるので、なかなかお見せできるものがないんですけれども、こういった形でブロックを組み合わせて、いろいろな犬だったりワニだったり、いろいろな形を作るんですが、ブロック自体は、よく見るブロックではなくて、ちょっと色味がクリアな色で、カラフルな感じになっていまして、世の中でロボット教材というと、どうしても男の子向けということで評判が高いみたいなんですけれども、我々は今回、アメリカで3月にこういったロボットを簡単に発表させていただいたんですが、このロボットを見た現地の先生だったり保護者の方の感想としては、女の子でも楽しめるロボット教材に仕上がっていますね、ジェンダーニュートラルですねみたいなことを言っていただいて、それが非常に我々にとっては励みになったんですが、ロボットといっても、あくまでも男の子向けのものではなくて、これからは万人が使うような、将来ロボットと一緒に生活するようなときが来ると、いろいろな人になじむようなロボットというのが必要になってくるので、そういった意味で、この教材を女の子向け、男の子向け、大人でも使えるような形に仕上げて、万人が使えるような教材に仕上げていくというのが我々の使命かなと考えているところです。
  今日は余りお見せできないんですが、実際にブロックの組合せ、非常に少ないブロック、7種類のブロックなんですけれども、これらを組み合わせると本当にいろいろな造形が作れるということで、子供たちの創造性を発揮させるには、このロボットという教材は非常に優れているなと感じているところです。
  このロボット、ハードウエアだけではなくて、サービス側も並行して開発しておりまして、例えばロボットレシピみたいな考え方を導入して、誰でもある意味、ブロックを使って、プラモデルを組み立てるようにロボットを作れるようにしています。その組み立てた後はプログラムを作って、そのロボットを動かすルールを作るという形になっていまして、あくまでもお手本を見ながら作れるということで、ある意味、誰でもと言ったら言い過ぎですけれども、小学生段階でも簡単に導入していただける教材になっています。
  それ以外にも、小さい子でも使えるようにもなっているんですが、学習コースみたいなものを設けていまして、ロボットを作る過程でロボットの動きの仕組みを学んだりとか、あるいはプログラミングの仕方を学べるようなコース体系を作っていて、これなんかも非常にサービスとしての強みにつながっていて、ロボットとネットワーク、サービスを組み合わせた一つのトータルソリューションとして新しい教材というのを我々の方で準備しているという段階でありまして、高学年になってくると、余りそういったものを見なくても、自分でロボットを組み立てて、自分でプログラムを書くみたいなこともできるような子がどんどん多くなってくるので、そういった意味でも発展的な教材にうまくなっているんじゃないかと考えているところです。
  ということを踏まえまして、ロボットとプログラミング教育ということで、日本の強みを生かして、単なるプログラミング教育を、ロボットという付加を付けることで非常に魅力的なものにしていくという御提案なんですけれども、このKOOVの方では、実はもう既に小学生向けのカリキュラムということで準備しているものがありまして、これはワールドワイドに販売するものなので、日本だけに特化しているものではないんですが、世界的ないろいろな文化だったり背景も考慮しながら、世界中で使えるような、今、教材に仕上げているところです。
  主には、情報技術、コンピューターサイエンス、デジタルリテラシーを体系的に学べるような教材にしていこうということで、例えば小学校1年生、2年生の段階では、余りプログラミングというよりは、プログラムをそのまま本当に動かすと。ありもののプログラムをこちらのロボットにロードして、そのまま動かすみたいなことをやっていって、その中でプログラムをざっと見て、このプログラムはどういう動きをしているのかというのを学んでいただいて、ロボットとプログラミングの関係を学ぶというのが、恐らく最初の低学年のうちのやり方ですね。
  それから徐々に、3年生、4年生になってくると、プログラミングの基本みたいなところで、例えば順次、分岐、反復というのはプログラミングでよくある3要素なんですけれども、こういった流れをうまく学びながらロボットを動かすことで、プログラミングとはどうあるべきかというのを徐々に学んでいって、高学年になってくると、本当に一から作れる子というのが増えてくると思うので、本当に創造性を発揮して様々なロボットを作るという形になってくるかなと思っております。
  こういったカリキュラム体系を、我々現在、しっかり整備しているところで、あくまでも民間用に作っているところではあるんですけれども、コストの問題だったり、いろいろな問題が解決すれば、公教育、学校教育にもうまく取り入れられるようなものになると考えておりますので、我々民間側の努力として、まずはコストダウンであったり、カリキュラムの整備であったりを、今現在はしっかり進めているという状況になります。
  ロボット教材のメリットは、改めて申し上げるまでもないかもしれないんですけれども、正解のない課題に対して実際に手を動かして自分で工夫するということで、本当にグループワークであったりアクティブ・ラーニングみたいなところとの相性が非常に良いかなと思っています。本当に十人十色でそれぞれが新しい形のロボットを作れるみたいなところがあるので、そういった面白さはこういった教材独特かなと感じているところです。
  それと、センサー、アクチュエーターを通して、いわゆる動かすということを学んでいただきたいなと思っていまして、どうしてもプログラミングを画面上だけでやってしまうと閉じこもった世界になりがちなんですけれども、動くものを見ることで子供たちが興味を持って、かつ、みんなでわいわいコラボレーションしながら新しいものを作るみたいな、そういったことができるんじゃないかと考えているところです。
  私自身は小学生ぐらいからプログラミングを始めて、かれこれ趣味も含めると30年以上ソフトウェアを書いているんですけれども、昔は本当に黒い画面に緑の文字が何文字か出るだけで、プログラミングして大変興奮したんですね。私の小学生の娘に同じことをすると、全く反応がないというか、もう今の子供たちはスマホに慣れてしまって、プログラミングで少しアニメーションが動くだけでは、感動が少し足りないような気がしているんですね。
  今回、ロボットを使ったワークショップみたいなものを実験的にいくつかやってみると、ロボットの動きというのは非常に驚きがあって、今どきのいろいろな刺激に慣れてしまっている子供でも、ロボットが動くことによる興奮というのはかなり特別なものがあるようで、そういったところからも、好奇心を育てるという観点では、こういったタンジブルな動くものをしっかり子供たちにも与えるというのは、一つあるべき姿かなと感じ始めたところです。
  ということで、最後になりますけれども、小学校段階でのプログラミング教育の御提案ということで、我々なりに考えたものなんですけれども、プログラミング教育といっても、一番大切なのは、先ほどもありましたけれども、ITの活用力を育てるような新しい形のプログラミング教育ですね。プログラミング的思考という考え方で、こちらにありますように、本当に全ての科目に適用できるようなものなので、特別に一つプログラミングという科目を作る必要もなく、少しずつ既存教科に組み入れることが十分できるんじゃないかと考えているところです。特にロボットみたいなのがもし導入できるとなると、図画工作であったり理科みたいなところにもロボットを使った学習ができるようになるので、更に幅が広がるんじゃないかと考えております。
  繰り返しになりますけれども、大切なのは、ロボットやコーディングも大切なんですけれども、IT、デジタルリテラシーの知識・経験をしっかり小学生段階から取り入れることで、その後のプログラミング教育が更に発展的になるというのがありますので、恐らく小学校段階では、例えば総合的な学習の時間の中でIT、デジタルリテラシーをしっかり学んで、あとは一部コーディングの基本なんかを学んで、それより専門的なものは中学・高校以降でやっていくという流れをうまく作るための基礎を、しっかり小学校段階で取り入れるのがいいんじゃないかと考えております。
  私の発表は以上です。ありがとうございました。
【天笠主査代理】    どうもありがとうございました。以上4名の委員の方からの御発表を踏まえまして、御質問のある方、お願いできればと思います。それで時間も大変限られておりますので、お一人、今、もしという方があったら、名札を立てていただければと思います。その方に限って御質問をお願いしたいと思います。
  それで、それぞれ委員の方から御質問をお願いしまして、あと、受けていただいて応答するという、そういう形を取らせていただきたいと思いますので、今のこの場面で何か御発表に対して御質問のある方いらっしゃいましたら、お願いをしたいと思います。
  今のところ意思表示されているのは石戸委員のみですけれども、よろしいですか。ほかの委員の方。
  ということで、それでは石戸委員、お願いいたします。
【石戸委員】    迷ったんですが、せっかくなので質問しようかなと思いまして立てました。皆さん、非常に興味深く刺激的なプレゼンテーション、どうもありがとうございました。前回からも感じていたところでもあるんですけれども、先ほど上野委員からも、前回の会合を踏まえて、ネットでもいろいろな意見が出ているという話がありましたけれども、プログラミング教育というのは学校で何を指しているのかというののイメージというのが、この中でも結構いろいろと振れ幅が大きいのかなと感じますし、プログラミング教育と世の中で発信されたときに、皆様が受け止めるイメージというのも随分とたまに偏ったものもあるのかなと思いますと、それをきっちりと定義をして発信していくということが大事なのかなと思いました。
  私たち自身も、先日、発表の機会を頂きまして、お話しさせていただいたとおり、コンピューターを使わないプログラミング教育というのに、今、取り組んでおりまして、そういうことも含めての質問なんですけれども、私、新井先生のプレゼンに非常に面白く感銘を受けまして、先ほどから、この先生のプレゼンとプログラミング教育の接続ってどのように考えていけばいいのかなということが、ずっと頭の中でぐるぐるしていたんですね。
  今、私たちもコンピューターを使わないプログラミングも実践しているという話をしたんですけれども、先日、イギリスのナショナルカリキュラム、イギリスは必修にしましたので、ナショナルカリキュラムを作っている方々にお話をしたときに、イギリスって1年生は5歳なので、じゃあ5歳の子に何をしているんですかと聞いたんですよね。そしたら例えばというので話されたのが、子供たちに先生にサンドイッチを作らせるんですと言っていたんですよ。初めにパンを置いて、次に例えば、私たちもそういうことをやっているので、すごくなんとなくイメージがつくんですけれども、丸い何色のハムを置いてとか、きちんと指示をしていくとサンドイッチが出来上がるとか、そういうことをやっているんだろうなと思うんですけれども、私たちもそういうことをやっているので、非常にそういうのもアルゴリズムでプログラミング教育の一環だと思っているんですけれども、先ほど新井先生のお話の中で、読解ができないときに、アクティブ・ラーニングで文章を分解して理解をしていくというアクティブ・ラーニングの事例をお話しいただいたかと思うんですけれども、逆に今のサンドイッチを作る話みたいに、プログラミング教育といいますか、アルゴリズムを考えていくという教育を通じて、自らが論理的に文章を構築していくということをやっていくことによって、結果として読解力が身に付くという展開というのもあり得るんじゃないかなと思いまして、そこに何か接続があるのかなと思ったんですけれども、いかがでしょうか。
【天笠主査代理】    ということで、お願いできればと思うんですけれども、他の委員の方、重ねてですけれども、よろしいですね。
  それでは、今の御質問等々に対しまして、お願いいたします。
【新井委員】    御質問ありがとうございました。今、石戸さんがおっしゃったことに大変共感をします。私は世田谷区で、かつて特区で、教科「日本語」というのの教科書の作成をお手伝いいたしました。そのときに、論理的思考力というか、ある意味、私もコンピューターを使わないプログラミング教育ということを意識をいたしまして、一番最初に何をさせたかというと、うちから学校までの道順を箇条書きで書いてみよう。絵をまず描いて、それで箇条書きに、どこまで行ったら右に曲がるとか左に曲がるとか、何メートル行って、どこになったらこうするみたいなことを書かせるというようなことであるとか、ゲームのルールを書いてみよう。マルバツというゲームがありますけれども、それを書こうと。
  でも、これはすごく難しくて、5,6年生でもなかなかできないので、みんなでまず幾つか挙げてみて、マルと書くみたいなことを言ったときに、どこにマルを書くんですかとか、順番に書くと言ったら、一人の人が順番に書いていいですかみたいな、そういうデバッグだと思うんですけれども、デバッグをしながら、みんなでマルバツのルールを書くとか、そういうようなことが、実はプログラミング教育に相当している。
  あるいは、ヤギと狼と船頭が一緒に川を渡る。ヤギは狼に食べられちゃうとか、何かそういうことがあるわけですけれども、そういう制約条件の中でどうやって川を渡したらいいかというようなこともプログラミング教育ですし、最も重要なのは、算数の中では、いくつかアルゴリズムが系統的に埋め込まれています。例えば足し算の筆算、かけ算の筆算、割り算の筆算みたいなのがあって、一番最後、テイラー展開までで、大体初等関数のアルゴリズムが完成するわけなんですけれども、今だと大体教え込みになっていて、何でかけ算の筆算をこうやって縦に書いて、こうやって順番にずらしていって、足したら答えが出るのかなみたいなことは、教える段階では到底無理なんですけれども、例えば6年生ぐらいで、どうしてそのようにしたらかけ算の答えが出るのかみたいなことをやることで、アルゴリズム教育というのは十分にできるし、仕様の教育もできると思っています。
  先ほどのアミラーゼの図のようなものというのも、もちろん先ほど礒津委員がおっしゃっていたようなことができたらすばらしいんですけれども、あの文章を読んで意味が分かる子というのが、多分、普通の公立の中学校で1割を切ると思います。ですから、あれが読めるというところまで持ってくることがまず重要で、あれを解くというのは、かなり少数のお子さんしかできないだろうなという目途を誰も持っていないということが、今、大変問題だと。
  だから、どのお話も大変導入するのはすばらしいんだけれども、一番最初の第一歩が多分できないので、できないというのは変な言い方ですけれども、まず読めないとか、そうすると結局、やらせるということになってしまって、やらせて成功体験を持たせるだけで、ああ、できたみたいにそろえるということが、本当にプログラミング教育に資する教育なのかということに疑問がある。そういうようなことがありますから、先ほどのサンドイッチを作るというのは、小学校の1年生段階等で大変効果的なプログラミング教育だと共感をいたしました。
  以上です。
【天笠主査代理】    どうもありがとうございました。それでは次に、資料1の取りまとめに向けてのイメージについて、事務局から説明をお願いします。
【大杉教育課程企画室長】    失礼いたします。それでは資料の1を御覧いただければと思います。委員の先生方からプレゼンいただいた内容、それから、まだまだ十分ではございませんけれども、会議の中で御発言いただいた内容を、どのような方向性で取りまとめていくかということで、事務局の方で少したたき台を作らせていただいたものでございます。タブレットの中にも入ってございますけれども、お手元の紙ベースの資料もございますので、御都合の良い方を御覧いただければと思います。
  資料の1でございますけれども、プログラミング教育、先ほど石戸先生からもございましたけれども、世の中、様々関心を集めていただいて、一方で、ひたすらコーディングをしなければいけないのではないかというようなことが、少し加熱してしまうのではないかという恐れもあるところでございます。プログラミング教育の位置付け、プログラミング教育とは何なのか、小学校教育全体の中でどのような位置付けを得ていくのか、そういったことをしっかりと位置付けていく必要があると考えております。
  そういう意味では、この紙で申しますと、小学校教育におけるプログラミング教育の具体的なイメージというのは2枚目からなわけでございますけれども、それを語る前提といたしまして、次期学習指導要領の方向性も踏まえまして、また、プログラミング教育のみならず、教育課程全体が何を実現しようとしているのか、そういった位置付けの中でプログラミング教育の在り方をまとめていきたい、そういうことで、この2枚紙としてたたき台を作らせていただいているところでございます。
  まず一つ目は、今言われる第4次産業革命ということが様々な場面で言われているわけでございまして、その中で、学校で学ぶことがしっかりと役立っていくのかという、ある意味、少し不安のようなものもあるようなところでございます。そうした第4次産業革命と言われるものが、一体どういう示唆を教育に与えるのか、そういったことをしっかりと整理をしておく必要があるのではないかということでございます。
  (1)学ぶことの意義の再発見ということでございますけれども、ディープ・ラーニング革命ということを、教育界から見てどのようなことを考えていくべきなのか。人はどのように学ぶのかということの再検証でもあるということではないか。そうした中で、学校教育が、学校で教える学習内容の本質に迫れているような効果的な学びとなっているのかどうか。習得・活用・探究ということを目指しているということは、こうした本質に迫るということで、日本の学校教育の良さでもあるわけでございますけれども、一方で新井先生が御指摘いただいたように、その習得の部分、ここにも本当に課題がないのかどうか、そうしたこともしっかりと踏まえていく必要がある。そうした学びの全体像ということを、改めて我々はしっかりと考えていく必要があるということを迫られているということではないかということ。
  そして二つ目でございますけれども、人間として求められる力の再確認ということでございまして、世の中でのコンピューターとの関わりということはもちろんでございますけれども、それを超えて、第1回目の松尾先生のプレゼンにもございましたけれども、社会をどのようにデザインしていくのかということを、人間がしっかりと考えていくということ。そうした中で、身に付ける力ということをしっかりと再確認していく必要があるということでございます。
  また、次世代の学校の在り方ということでございます。効果的な教育のためにICTの活用を進めていくということが重要でございますが、一方で、ノートやタブレットや電子黒板、机の上に様々なツールが並んで、その中で思考が止まってしまうような状況であってはいけないということでございます。授業力の向上にしっかりと効果が上がるようなICTの活用の在り方、それを踏まえた次世代の学校の在り方を考えていく必要があるということでございます。
  二つ目は、「社会に開かれた教育課程」が育む、次世代に求められる資質・能力とはということでございます。一つ目に、複雑な事象の中からしっかりと情報を読み取っていく力ということが重要であるということ。第1回目にも御紹介申し上げましたが、言語能力の育成ということが極めて重要であるということ。論理的・創造的思考、感性・情緒・コミュニケーションという、それぞれの側面からしっかりと育んでいく必要があるということ。特に小学校段階、国語は毎日、高学年では1,000時間を超える国語の時間というものがございますので、こうしたものをしっかりと言語能力の活用という面から再検証していくということ。また、数学的思考、数式や図等でしっかりと読み解いて表現していくということも必要であるということ。
  それから、そうしたことを踏まえながら、論理的・創造的に思考して課題を発見・解決し、新たな価値を創造していくということ。これは画期的なイノベーションを起こすということだけではなくて、自分なりに試行錯誤して考えを深めて、より良くしていくということでございますけれども、こうしたこと。
  この(1)と(2)が、本日御発表もありましたコンピューテーショナル・シンキングということも含めてということでございますけれども、こうしたことの必要性。また、そういったプロセスの中で、情報技術を主体的に手段としてしっかりと使いこなせるようにしていくということでございます。
  そして(4)でございますけれども、資質・能力の三つの柱と次期学習指導要領の姿ということでございます。こうした資質・能力の育成、あるいは今後の職業の在り方の変化ということには、プログラミング教育のみで対応していくということではなく、教育課程全体で対応していくということでございます。
  同じ資料の1の一番最後に、学習指導要領改訂の方向性ということで、第1回目に解説させていただいたペーパーを1枚付けさせていただいております。一番上に、何ができるようになるかということ、生きて働く知識・技能の習得、未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力、学びを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力・人間性、こうしたことを、全ての教科、教育課程全体を通じて育成していくというための改訂を行っているところでございます。
  そのために、右下の、どのように学ぶか、深い学び、対話的な学び、主体的な学びという視点から授業改善をしていく。これは教育課程全体、全ての教科において実施していくことでございますけれども、こうした姿を描きながら、その中でプログラミング教育というものをどのように位置付けていくのかということでございます。
  1枚目にお戻りいただきまして、3ポツ、学校教育におけるプログラミング教育の在るべき姿とはということでございます。まずその前提として、コンピューターと人間の関係に関する展望を、ある程度整理いただければと考えてございます。人間の生活をいろいろ便利にしていくということの一方で、子供たちが動画やゲームで映像等で情報を取得していく。意味を吟味することなく、受け身の情報収集ということになっていってしまわないか。ビジュアルイメージの中で、読むことが軽視されてしまうという恐れはないかどうか。コンピューターのメリットということをしっかりと主体的に活用し、能動的に関わっていくということにつなげていく必要があるのではないか。
  また一方で、プログラミング言語につきましては、時代に応じての変化というものが当然予想されるわけでございますので、こうしたことも見据えながら、学校教育は何を考えていくべきかということを整理いただければと思っております。
  そして(2)でございますけれども、そうしたことを踏まえて、学校教育として実施するプログラミング教育の意義でございます。なぜ学ぶのか、単に動いて楽しかったということを超えて、自分で作れたり、身の回りにあるということ、社会の中での意義を気付いたりということに、しっかりと学習成果としてつないでいくということのためには、どのようなことを考えればいいのかということ。
  (3)は、発達の段階に即した資質・能力の育成ということでございます。中学校段階で、技術・家庭科の技術分野におきまして、今回、制御ということに加えて、コンテンツのプログラミングも新たに導入される見込みでございます。技術分野におきましては、社会と技術の関わりの中で技術の役割を見いだす、そして制御条件下で様々なことを最適化して解決していく、こうしたことのためにプログラミングを学習内容として生かしていくということ。
  また、高等学校段階では、情報科の中でプログラミングを学びます。情報科におきましては、世の中を、情報、あるいはその関わりと視点で捉えて問題解決をしていくために必要な力を育んでいくわけでございますけれども、こうしたことの中でプログラミングということを学んでいくということでございます。
  こうした中学校段階の学び、高校段階での学びにつなげていく視点から、小学校段階のプログラミング教育の在り方ということを考えていく。また、そうした学習が、様々な能力の育成とのつながりということも考えていく必要があるということでございます。
  2ページ目でございます。小学校教育における、それでは具体的にプログラミング教育の在り方ということでございます。各教科とのつながり、総合的な学習の時間の活用の方法など、既に様々御提言を頂いておりますけれども、具体的にどのような在り方が考えられるのか。特に身近なところでプログラミングが生かされているということ、自分の思いで活用できるものであるということ、自分がどうしたらいいか、どう改善できるかというような思いを大事にしながら実施していくということの在り方。
  そして(2)でございますけれども、各小学校の実情を踏まえた柔軟な教育内容の在り方ということで、地域における、例えば民間の方々の協力を得られる得られないという条件の違い、様々な子供たちを取り巻く条件の違い、ICT環境の整備状況の違い、そうしたことを踏まえた様々な柔軟な教育内容の在り方ということの選択肢を、少し提示していく必要があるのではないかということ。
  また、学校段階で触れたことによって、どんどんもっと学習してみたいと興味を持った子供たちのために、(3)学校外の学習機会とのつながり、これをしっかりと付けていく必要があるのではないかということでございます。
  それから5ポツが、そのために必要な条件とはということでございまして、ICT環境、これは様々でございます。一人1台、タブレット、コンピューターという環境もあれば、まだまだそこまで追い付いていないという状況がございますので、最低限必要な環境ということをどのように考えていくのか、そしてそれをどのように実現していくか。
  効果的なプログラミング教育を実現する教材の開発、これは学校教育で実施する場合には、コストということもしっかり考えていかなければならないわけでございますけれども、こうしたこと。あるいは先生方の研修の在り方、社会との連携・協働の在り方ということで、事務局として少し項目的にたたき台を作らせていただいたところでございます。
  本日は、この構造がこれでいいかどうかということも含めまして、御意見を賜れれば有り難く存じます。以上です。
【天笠主査代理】    どうもありがとうございました。それでは、今、御説明いただきました資料を踏まえまして、皆様方から御意見、自由に議論をお願いできればと思います。
  そのお願いをする前に、皆さんにお諮りをさせていただきたいんですけれども、今日の予定は12時で終了させていただくという御案内かと思います。それぞれ御予定入れていただいているんじゃないかと思うんですけれども、先ほど来の委員のそれぞれのプレゼンテーションが、皆さんそれぞれ熱が入りまして、それぞれ着実に時間が重ねられているという現状があります。恐れ入りますけれども、10分ほど延長させていただきまして、12時10分を終了の目途ということにさせていただくということで御了解いただけますでしょうか。
  申し訳ございませんけれども、そういうことで、改めまして、この資料1についてということで、それぞれの委員の方、お気付きの点、発言がありましたら、お願いします。
  また、発言の仕方につきましては、今、既に利根川委員、名札を立てていただいて、どうぞそのままにしておいていただいて結構ですので、それぞれ委員の方、名札を立てていただければと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
  それでは、まず利根川委員からお願いいたします。
【利根川委員】    すみません、先走ってしまい、恐れ入ります。この5点まとめていただいている中で、3点ほど私が気になったところを話しさせていただきます。
  まず1点目が、1の(1)か(3)辺りになるところですね。第4次産業革命において、次の世代に向けての学校の在り方という中で、3ページ目の左下と相反するところがあるんですけれども、何か新しい形で新しいことをやりましょうというのが本会議の趣旨であるかと思うんですけれども、そうなったときに、何かと置き換えてやるというところを踏み込まないと、学校の現場の先生は非常に多忙で、これ以上、単純にプログラミングを増やしましょうと言うと、学校の先生、対応できないですよという声、我々もよく聞きますので、厳しいかなとは思うんですけれども、そこについて、改めて何らかほかの内容と代替してというところが可能なのかなというのが1点目でございます。
  2点目が4の(1)のところですね。これ、先週の私の発表でも申し上げさせていただいたんですけれども、プログラミングですとかコンピューテーショナル・シンキングといったところについて、一つの領域というところかなというのが、多くの、特にIT関係で正にそれを実感を持ってやっている委員の方からの意見として多く出ていたかと思いますので、それをほかの教科の単元の中で学ぶのではなくて、コーディングをしてプログラミングスキルを身に付けるという意味ではないんですけれども、プログラミングを一つの単元として必ず必修されるというところをちゃんと目指すのが必要かなというのを、私以降の発表の方も聞いて思いました。これは、作文をする前に止め、はね、払いとかを学んで、文字を書けるようになってから作文に入るように、そういった順番が必要かなというところです。
  3点目が5の(2)のところの御説明で、室長から口頭ではおっしゃっていたんですけれども、教材の開発に加えて、指導者の体系的な育成というところも、この2020年までに向けてのチャレンジングなところかと思いますので、よろしければ、是非指導者の育成というところも一つの項目に立てていただくとよろしいんじゃないかなと思いました。
  以上です。
【天笠主査代理】    どうもありがとうございました。
  隅井委員、お願いします。
【隅井委員】    1回目も含めまして、今日もいろいろな委員の方からプレゼンを聞かせていただきまして、非常に印象深く拝聴いたしました。今、事務局の方から御提示がありました、この取りまとめのイメージにつきましては、大枠については私は余り異論はございませんが、一番最初にある、第4次産業革命は教育に何をもたらすのかという、この辺りのところが、多分、ここにいらっしゃる各委員の皆さん方も、それぞれいろいろなイメージをお持ちで、ここが共通になるのかならないかというところ、同じ理解になるのかならないかというところは、非常に今後の議論の中で大きなポイントなんじゃないかなと思います。
  きょう各委員の方から頂いたプレゼンの中でも、私どもは音楽を専門にしているところですので、プログラミングの世界とはちょっと違うんですけれども、でも皆様方が主張なさっている部分というのは、音楽に照らし合わせても非常に共通の部分が多いなという印象を受けておりまして、そういうプログラミングという、例えばコーディングですとか、何かアプリケーションを作るとか、そういうものとはちょっと違う分野も含めて、この第4次産業革命にどう対応していくのかということをしっかり議論をして、それに対する対策を講じていくという、その辺りの検討というのが今回の必要な部分なんじゃないかなと思いました。
  新井委員の方からお話がありましたように、認識するということと理解することは違うというお話がありましたけれども、音楽についても最初はまねるというところから始まるんですけれども、まねる人たちは非常にまねることを一生懸命になるので、そこから理解をするということに跳ね上がるためには結構ハードルが大きいです。そのハードルをどうやって越えていくかというのは、多分、音楽もプログラミングも文学でも芸術でも、みんな同じなんじゃないかなと思いますので、そういう視点でいろいろな議論がなされるといいのではないかなと思いました。
  以上です。
【天笠主査代理】    どうもありがとうございました。
  小川委員、お願いいたします。
【小川委員】    戸部小学校の小川と申します。小学校教員の立場からちょっとお話をさせていただければ有り難いなと思っているのですが、このレジュメの中の4の(1)の、小学校教育における具体的な実施の在り方という部分で、先ほど利根川委員からもお話があったと思うんですが、今現在の学習指導要領の中で、プログラミングの基礎・基本をどこかで時間を取ってというのは結構現実的に難しくて、話題の中で、総合的な学習の時間がフィールドとして活用できるのではないかという部分で何度か提案がある中でも、実際にコーディングの基礎の知識の部分だとか技術の部分を、総合的な学習の時間で例えば4時間取ったりとかというのは、本来の、今、私たちが現場でやっている、実社会で子供たちが生きていく力を身に付けるという部分の総合的な学習の時間の目標とはちょっと外れてしまっていて、それを4時間取るというのは、今現在の学校教育の中では行っていないのが実情です。それは目標と異なるからと考えております。
  実際にじゃあどうやって具体的に実施をできるかなと、僕も今回を迎えるまでに考えまして、大きく二つ、総合的な学習だったらできるんじゃないかなと考えています。一つは、学習課題を情報という部分で、身近な情報環境の変化だとか自分たちの生活の関わりという形で学習課題を設定して、そしてその学習対象として、スクラッチなどのプログラミングソフトを使いながら問題を解決していくというのが一つで、あともう一つは、本当にオーソドックスな総合的な学習の時間では、フィールドを地域として、地域の問題を解決しながら、最後にアウトプットの形として、プログラミングのソフトを使ったりして自分たちが考えたりまとめたりしたことを発表していくという形の、その二つが、今、本当に、代替ではないですが、もし今、じゃあすぐに何か学校現場でできると考えましたら、総合ではそんな二つの形ができるのかなと考えております。
  以上です。
【天笠主査代理】    どうもありがとうございました。
  新井委員、お願いできますか。よろしくお願いします。
【新井委員】    大きくは2点で、その前にちょっと一言。ディープ・ラーニング革命とかフィンテック革命みたいなものは、多分バズワードで、余り長く続かない言葉かと思いますから、こういう委員会の資料には余りお使いになられない方がよろしいかと思います。
  では、2点申し上げます。今、小川委員からも少し御懸念がありましたけれども、時間数のことをどのように、例えばやるとしても見繕うかということがあるかと思うんですね。それを今までの指導要領の改訂では、何か新しいものを入れるときに、総合的な学習の時間が典型的ですけれども、全体のほかの科目から広く薄く時間を取り上げて、それでもって新しいことをすると。それで内容をどんどん増やしていった結果、本日、私、発表させていただきましたけれども、基礎・基本である読解というものの屋台骨のところが崩壊しているという現状が出ているのではないかと思うわけですね。
  ですので、時間数をどのように工面するかということに関して、実施可能なやり方というのをきちんと検討しなければいけないと思います。実施可能なやり方というのは二つしかなくて、一つはスクラップ・アンド・ビルドで、今やっている内容の中から、これはもう時代的に必要はないのではないかというところをスクラップするという方法で、もう一つは読み替えです。読み替えというのは、先ほど例えば算数の中でもアルゴリズム的な考え方があるとか、家庭科の中でもそういう考え方があるとか、理科の実験でもそういう考え方があるというところを全部洗い出して、それを体系的にまとめ上げて、それをプログラミング的教育というか、プログラミングの基盤となる教育ということで位置付けるというのが一つの考え方で、その二つから選択をしなければならないと思いますので、そこの検討が必要だろうと思います。
  二つ目は、4の(2)とか(1)に関係しますが、この実情を踏まえたというのは、多くの場合、例えばICT環境が整っているかというような、環境側の方の実情を見がちなんですけれども、本日発表しましたように、多分、中学生であれだけ読めていないので、小学生は、プログラミング教育と多くの大人がイメージするような、スクラッチも含めてですけれども、前提となる、例えばこのようにやりましょうという手順書とか、何か書いてあるものを、意味を理解して実行できるというところが、もしかしたら難しいかもしれない。そこのところは、だからやってみたいとか、やったら楽しかったとか、できてうれしかったとか、そういうことだけではなくて、公教育で全員にさせるということになると、意欲がないお子さんにもさせるということにもなりますし、能力が十分でない、そこの前提にたどり着いていないお子さんもたくさんいらっしゃいますから、そこのところを全体的に実施可能である前提が成り立っているのかということに関しての調査を科学的に実施する必要があると思います。
  以上でございます。
【天笠主査代理】    どうもありがとうございました。
  上野委員、お願いいたします。
【上野委員】    ありがとうございます。私もおおむね異論はございませんで、1点だけ、2番のどういう資質・能力を育むべきかというところで、(1)情報を読み解く、(2)論理的・創造的に思考して課題を発見・解決し、新たな価値を創造する、(3)情報技術を手段として使いこなすとあるんですけれども、これがそれぞれ、当然ながら違う能力を指していると思いますので、したがって、4番の小学校教育におけるプログラミング教育の在り方、(1)の具体的な実施の在り方に関しても、この育むべき能力(1)(2)(3)とそぐう形で、多様な形になると思っております。
  私の理解では、きょう新井先生が強調された情報を読み解く力ですとか、そういったものは既存の教科教育の中で非常にもっと重視していくべきことですし、一方で利根川委員が強調されたコンピューターはコンピューターとして教えるというところは、(3)のところに当たってくると思いますので、その辺りをしっかり整理といいますか、対応させて、育むべき資質・能力と、あとはそれをどうやってやるのかというところが、能力を三つ挙げてHowのところが一つになっているというようなことがないように留意した方がよろしいのかなということを思いました。
  以上でございます。
【天笠主査代理】    どうもありがとうございました。
  続きまして、石戸委員、お願いします。
【石戸委員】    先ほど来出ている時間数のこととも関係するのかもしれないんですけれども、前回、私がプレゼンさせていただいた内容というのは、プログラミングを学ぶというよりは、プログラミングで学ぶということで、教科の中にどのようにプログラミングというのを入れていくかというお話をさせていただいたと思うんですけれども、その一方で、先ほど利根川委員からもありましたとおり、前回、他の委員からも御発言ありましたけれども、プログラミングの教科を作るべきではないかという御意見もあったかなと思います。それはプログラミングを学ぶということですね。
  それは随分と議論が変わってくるお話かなと思いますので、私、初めに報道が出たときに、教科科目の中で出てくるという報道が出たので、それの議論なのかなと思ったんですけれども、そうではない議論もあり得る、利根川委員がおっしゃっていたみたいに、教科を別途作るというみたいな議論もあり得るんだとするならば、また何か議論する内容が変わってくるのかなと思いましたので、そしたら何か、どっちなんだろうと。これは意見というよりかは、どっちなんだろうというところというのは、ちょっと気になる疑問点として挙げさせていただければと思います。私としては、プログラミングで学ぶというスタンスで取り組んできたし、取り組んでいきたいなとは思っています。
【天笠主査代理】    どうもありがとうございました。
  清水委員、お願いいたします。
【清水委員】    今日も面白いというか、関心のある興味深い情報をたくさん頂いて、ありがとうございます。私は算数・数学教育をフィールドとしておりますので、その経験を基に、いくつか、二つぐらいお話をさせていただきたいと思います。
  一つは、前回のときに配布されました有識者会議の設置の趣旨についてのメモの中で、プログラミング教育については、この資料1の冒頭にありますように、1行目の論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成という大変広い視点からの整理と、それからコーディング、プログラム言語の方に寄り添った二つを例示されておりますけれども、きょうの皆さんのお話をお伺いしていますと、例えば礒津委員からも御指摘がありましたように、プログラミング思考とかコンピューテーショナル・シンキング、これをこの二つの間に入れるべきではないかと。構造としてはですね。
  そのように考えると、先ほど来話題になっておりましたけれども、コンピューテーショナル・シンキング、プログラミング思考の中には、例えば算数で言いますと、いろいろなアルゴリズムを取り上げています。その扱い方とか指導の方法については改善の余地はたくさん指摘されておりますけれども、それらについて多くの先生が、プログラミング教育の文脈で理解できているかどうか。これが小学校は大変重要な問題だろうと思うんですね。
  ですから、一番上の論理的思考とか創造性、問題解決に関わることは、今日の資料でいきますと、大きな2番の(4)で、かなり今までのことを踏まえて精緻化され、構造化されていると思いますので、それがまず前提にあると。
  それからその次には、それを一定のコンピューターとかIT環境に置いたときに、それを具体的にその眼鏡で見るとどういうことになるのか。例えばアルゴリズムなんかについて例示して話をしていただくと、今までさらっと過ごしていたところに、少し意識化というか、注意を向ければ改善の可能性が出てくるということであれば、先生方も頑張ってやっていただけるんじゃないかと。
  また、結果、算数についての学びの、ある意味での深い学びの実現にも寄与していくんだろうと思いますので、是非コンピューター教育について、先ほど御質問もありましたけれども、大きな前提と、一番先っぽのところと、その真ん中を埋めるところで、例えばプログラミング思考、あるいはコンピューテーショナル・シンキングということで入れていただいて、その眼鏡で見ると、各教科、いろいろな形で散らばっていると。それを見落としてきたことを意識してちゃんとやりましょうという雰囲気にしていただくとなると、2番の(1)(2)(3)(4)の順番が、できれば(4)が最初かなと。その後に今のプログラミング思考に関わることについての状況があって、それを(4)の三本柱で見るとこういうことになるんですということが整理されて、それを踏まえて小・中・高全体のプログラミング教育の在り方、構造が示されて、小学校では特にここが重点的になされるべきという感じで4の方につながっていくと、大変分かりやすくて、先生方も腰を落ち着かせて対応できるんじゃないかと思っています。
  先ほど御心配いただいたように、ただでさえ内容が多いので、そこにうまく重ねて効果的に対応するためには、そのサービスは必要かなと思います。ちょっと長くなりました。ありがとうございました。
【天笠主査代理】    どうもありがとうございました。
  それでは次に、中川委員、奈須委員、それから兼宗委員ということでお願いしたいと思うんですけれども、時間的に言うと、ほぼそのぐらいで先ほど申し上げた時間になるかと思いますので、他の委員、よろしいですか。今、名札が立っている方でということで終わりにさせていただきたいと思いますので、まず中川委員からお願いいたします。
【中川委員】    4番目の(1)と(2)に関係するところなんですけれども、時間数の問題が話に出ていましたが、リアリティーと、それからコンピューターというのが、そもそも学問として成立したというよりも、いろいろなものを組み合わせてできたものでございますので、例えば先ほど新井先生の中にもありましたけれども、算数や数学のアルゴリズムというところを、コンピューターでどうやってやる。
  例えばパイソンという言語がありますけれども、あれは統計の関数をたくさん積んでいるんですね。統計の授業で統計を学んだ後に、それを使ってじゃあ計算してみましょうというのをパイソンを使ったプログラミングをやれば、これは多分、高校の話だと思うんですけれども、非常に身に付くかなと思っていまして、教科の中に溶け込ませるというのはリアリティーもあるし、相互のシナジーも出るんじゃないかなと思います。
  とりわけ国語の読解力は私も共感するところで、仕様とか言語の使い方を大体ドキュメントで教わるものですから、絵とか人からは大体教わらないんですね。私のプログラマーとしての経験は、知らない言語を突然来週やってくださいと言われて、マニュアルを読み込んで、トライ・アンド・エラーをしながら習得していくという形になりますので、国語の読解能力というのは非常に重要になってくるなと考えます。
  というように教科に溶け込ませたときに、一つだけ溶け込まないのではないかなと考えているものが、コンピューターそのものの理解というところがありまして、これは教科「情報」の中に溶け込ませるというか、本質的な部分にもなるんですけれども、コンピューターの特性というのは、非常にシンプルな命令しかできない、けれどもそれを大量に組み合わせていくことで複雑なことをする。大量に組み合わせるバックグラウンドには、高速に処理できるという特性があったりとか、あとはこれがネットワークにつながって、これもシンプルなことを高速に処理しているんですけれども、距離を超えてしまうとかという、いくつかのコンピューターの特性がありますので、これは他の教科の中になかなか溶け込みづらい、「情報」の部分の中でしっかり入れ込むのか、小学校段階における情報教科をどのように取り扱うのかというところに、非常に重要なポイントかなと考えております。
  あと最後に、この場でお話しするべき話かどうか分からないですけれども、4の(3)の学校外での取組というところに関しては、昨日、とある校長先生とお話をしたときに、マインクラフトプログラミングクラブというのを立ち上げようと思っているんです、そしたら生徒が殺到してきてと。私、顧問やりましょうかと冗談で言っていたんですけれども、ひょっとしたら、今の制度を私よく存じ上げないんですけれども、学校にプログラマーが外部顧問みたいな形で、サッカーの得意な人がよく学校に行って指導されるとかありますけれども、外部顧問みたいなものを少しコミュニティー化していったりとかというなのをもし制度化できれば、少ない学校のカリキュラムの中だけではなくて、外で楽しみながら、やりたい子供たちがプログラミングをできる環境というのができるかなと思いました。
  以上です。
【天笠主査代理】    続きまして、奈須委員、お願いいたします。
【奈須委員】    私も先ほど清水先生がおっしゃったことに感覚はとても近くて、論理的思考力や創造力、問題を解決する能力というのは、在来の教科等でもやってきたことなわけですけれども、第4次産業革命が起こってくるとか、プログラミング教育ということが入ってくることによって、従来僕らがイメージしてきた論理的思考力や創造性、問題解決力ということのニュアンスとか強調点とか重要度が変わってきたり、その構造化の筋道が変わってきたりするということが、多分一番大事なのかなと思っています。だから算数・数学の中でもやってきたし、国語の中でもやってきたし、あるいは情報、コンピューターというのは社会科の5年生でも実はやっているはずなんですけれども、だけどそれが、そういう文脈でやれていないということなんだろうと思うんですね。
  だから現在進行中の社会の変革、子供たちが直面する事態を想定して、あるいは人材像を想定して、在来の小学校の教科内容や、そこで育成してきた資質・能力というものを、位置付け直したり再構造化したり、あるいは再構造化されたということが子供にも教師にも見えるように、もっと明示化していくということが多分大事。つながってくるということが大事で、ばらばら学んだけれども、つながっていないので使えないという話だと思うんですね。だからそれはこのようにつながっていて、このように使えるんだということを教科横断的にやって、それは今回、カリキュラム・マネジメントということも出ていますので、カリマネの一つの軸になってくるということでいいのかなと思っています。
  また、プログラミング教育というのは、もう一つはツールを提供してくれるということが大きいと思います。ただ学ぶのではなくて、それを実際に実行してみるとか、目の前で動いてみるとか、あるいはトライ・アンド・エラーができるとか、協働的にやれるとかという、ツールの側面は、これは教育方法の変革においては、僕らにとってはとても重要なことだと思っています。
  また、それをすることが、結果的にプログラミングということに向かっていろいろな学びがまとめられてくるというか、統括されてくるということにもなるので、内容を増やすということではなくて、一つは、これまでやってきたものがそれでいいのかということをこの視座で問い直すとか、再整理するとか、軽重を見直すとか、あるいはきっと構造化するんですよね。もう一つは方法が変わってくるということなのかなと思っています。
  そのことはほかにもあって、例えば先ほどの新井先生のお話、とても大事な話だと思ったんですけれども、国語教育も、このところの変化に伴って変わってきた。例えば20年指導要領で小学校には引用というのが入りましたけれども、ということは、この国では引用が入っていなかったんですね。引用ということをちゃんとやらずに、ずっと国語教育をやってきたんですよ。それは昨今の情報とか論理とか、あと著作権とかいう問題が出てくる中で、それはちゃんとやろうという話になって、今はちゃんとやっていますけれども、だから、そういう社会の変化によって、教科の何がより大事であるかということが変わってきたり、ちょっと厳しい言い方で言えば、うかうかしていたものが、指摘されることによってちゃんと入って、つまり、教科というのは固定していないという感覚が大事だと思うんですね。教科というのは固定しているものではなくて、もちろん固定している部分というか、安定な部分はありますけれども、でもそれは、こういう機会を持って、再度見直し、今回の指導要領もそうですけれども、学ぶ子供にとってどんな意味があるかということでやっているというのが、今回の指導要領の一番大事なところですけれども、その学ぶ子供が今後生きる文脈が、第4次産業革命であり、プログラミング教育だと。だったら、学ぶ子供に向けて、教科もどう変わっていくのかということが大事なんだろうと思います。
  以上です。
【天笠主査代理】    どうもありがとうございました。
  それでは、お願いします。
【兼宗委員】    兼宗と申します。よろしくお願いします。大学で工学系の教育をやっておりますので、その立場から中学校・高校の方のプログラム教育はよく関わっているんですが、小学校の方で行われるということで、大変期待とか心配というか、いろいろな気持ちがあります。
  その中で、幾つかお願いという形になるわけですけれども、まだ2回目で、余り深まっていないわけですけれども、是非お願いとしては、コンピューターのプログラムをすることで学べることはたくさんあると思うんですが、さっきから出ていますように、コンピューターの仕組みですね。どんなものかというのを是非理解できるような形に結び付けられるといいかなと思っております。
  理由としましては、小学校段階から、もう既に携帯とかスマートフォン等でSNSとかネットワークに接するということが行われていますけれども、何をしてはいけないとかということをいちいち説明していくというよりは、仕組みが分かると自分で危険性とか有効性に気付けるという部分があると思っておりまして、我々が使うツールとコンピューターというツールの仕組み、かなり異なっていると思います。ただ、その違いが、プログラムというものを体験することによって、かなり自分で気付けるのではないかという部分に期待をしております。
  その意味では、プログラミングを教える、そして嫌いにさせるということは避けていただいて、先ほどもありましたけれども、プログラムで学ぶという形で自然といろいろなものを体験する中で、いろいろなアプリケーションとかコミュニケーションツールの裏側の仕組みはこうなんだなと、子供が自分たちで気付いていけるという形になると、小学校段階ではかなり効果があるのではないかと思いました。
  また、プログラミングに関しては、中学校で本格的に計測制御を超えて幅広いプログラミングということがありましたので、小学校段階で足並みがどの程度そろって中学校に上がれるのかということは、かなり個人的には心配になりますので、次回、その辺りも含めて議論していただければと思います。
  以上です。
【天笠主査代理】    それでは、本日はここまでということにさせていただきたいと思います。ただいまそれぞれの委員の方から出されました意見等々、その趣旨を整理していただくよう、事務局の方にはお願いしたいと思います。
  それから委員の皆様には、限られた時間でしたので、御意見、お気付きの点等々、事務局にお送りいただければと思います。
  それで今後のスケジュールについてなんですけれども、次回の有識者会議は議論の取りまとめに入らせていただきたいと思います。つきましては取りまとめの方向性等について、事務局は事前に委員の皆さんに御意見を頂き、ある程度それを反映した形の資料を準備させていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
  そういうことも含めまして、中教審の議論と、今、並行して進行中ということで、その中教審に議論を引き継ぐ都合上、非常にタイトなスケジュールになっていることは申し上げているとおりでありますけれども、議論の状況次第ではありますけれども、検討すべき事項が残るようであれば、次回が予定しています第3回でありますけれども、更に4回目ということを開催ということも考えておりますし、御意見が整うようであれば、次回の有識者会議をまとめというように考え、議論の取りまとめをさせていただきたいと考えておりますので、その旨、御了解いただければと思います。
  そういうことも含めまして、次回の予定につきまして、事務局から説明をお願いいたします。
【大杉教育課程企画室長】    次回の日程、6月3日金曜日に開催をさせていただきます。時間、場所については、追って御連絡させていただきます。
  主査から御指示いただきましたとおり、事務局として、少し事前に様々御意見を頂けるよう、たたき台を送付し、御意見をフィードバックしていただくような形で段取りを進めたいと思います。また、本日言い尽くせなかった御意見等、事務局までお寄せいただければと思います。
  どうぞよろしくお願いいたします。
【天笠主査代理】    どうもありがとうございました。それでは、ここで本日の会議を終了させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

――  了  ――


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