「高等学校における政治的教養と政治的活動について」(昭和44年文部省初等中等教育局長通知)の見直しに係る関係団体ヒアリング(第1回) 議事録

1.日時

平成27年10月5日(月曜日)16時30分~18時30分

2.場所

文部科学省15階 15F特別会議室

3.議題

  1. 通知の見直し案について(文部科学省より説明)
  2. 関係団体からのヒアリング
  3. 意見交換

4.議事録

【坪田児童生徒課長】  それでは定刻となりましたので,ただいまから「高等学校における政治的教養と政治的活動について」――昭和44年文部省初等中等教育局長通知でございますが――の見直しに係る関係団体ヒアリングを実施したいと思います。
 本ヒアリングは報道関係者に公開して実施することとしております。また後日,議事録を文部科学省のホームページに公開することを,あらかじめ御承知おき願います。
 本日御出席いただく関係団体・有識者につきましては,資料1を御覧ください。なお,早稲田大学政治経済学術院の田中教授におかれては遅れての御出席となっております。そして急きょですけれども,独立行政法人大学評価・学位授与機構の顧問でございます木村孟氏につきましては,御体調を崩されたということで御欠席の連絡を受けております。
 ここで,本会合に先立ちまして,小松初等中等教育局長から一言挨拶を申し述べたいと思います。よろしくお願いします。
【小松初等中等教育局長】  皆様,本日はお忙しい中御参集いただきまして誠にありがとうございます。
 御挨拶ということでございますけれども,若干の背景を説明させていただきまして,御挨拶に代えさせていただきたいと思います。
 まず,先般,閉会をいたしました通常国会において,公職選挙法の改正がなされまして,その中で公職の選挙の選挙権を有する者の年齢について,年齢満18歳以上とし,それから選挙運動をすることができない者の年齢について,18歳未満に改めるという改正が行われておりまして,これが公布日から1年後,来年の6月19日に施行され,施行日後初めての衆議院議員総選挙,参議院議員通常選挙の公示日以後に期日を公示又は告示される選挙から適用されることになっているわけでございます。
 来年は参議院議員通常選挙の年でございますので,少なくとも,その選挙においては,これまで選挙権を持たなかった満18年以上の方が選挙権を有することになります。したがいまして,現在在籍される高校3年生の方は皆さん,それから現在高校2年生の方は選挙時点で18歳になっておられる方については,高校在学中に有権者となることとなります。
 そこで,私どもといたしましては,高校生に対する政治への参加意識を高めるための指導の充実,それから高校生の政治的活動に係る考え方の整理等の対応が重要となっておりまして,このことは国会審議の中でも指摘されてまいったところでございます。
 そこで,文部科学省における対応といたしまして,まず当面の対応として,高校生向け副教材と,それから先生方用の教師用指導資料の作成を進めまして,これらにつきましては9月29日にその内容をホームページ上に公開いたしまして,学校現場で活用していただけるようにいたしております。
 それから,少し先になりますが,次期学習指導要領の見直しの検討の中で,社会的・職業的な自立や主体的な社会参画に必要な選択・判断の基準を形成して,課題の解決に必要な力を身に付ける新科目を,高校に設置することなどについても検討を進めているわけでございます。
 これらの状況の全体の中で,高等学校における政治的活動の制限等について指針を示してまいりました昭和44年の文部省初等中等教育局長通知「高等学校における政治的教養と政治的活動について」についても,見直しを検討してまいったという全体像でございます。
 この通知の見直しに当たりましては,まず,高等学校における政治的教養の教育の充実を図っていくに当たっては,教育基本法等にのっとり指導に当たる先生方の政治的中立性に留意しつつ,模擬選挙,模擬議会,あるいはディベートといった教育効果が期待されるより実践的な教育が必要であることを強調するとともに,今回の公職選挙法等に関する必要な知識の指導を行うことが必要だということを周知したいと考えております。
 それからもう一つ,高校生の政治的活動の在り方については,基本的な考え方として,まず公職選挙法等の改正によりまして18歳になられた高校3年生が投票や選挙運動を行えるようになることを踏まえた対応が必要であるということ,それから高等学校が,学校教育法や学習指導要領において教育の目標や内容が定められた生徒の教育を目的とする公的な施設であることを踏まえて,生徒の活動が学校教育活動の一環として行われる場合,学校の構内で行われる場合,あるいは学校外で行われる場合といったそれぞれの場合において,必要な配慮等をどう考えるべきか,こういったことをお示しする必要があるという観点から,総合的に検討してまいりました。以上の検討を踏まえ,本日,文部科学省の案をお示しするということにしたところでございます。
 基本的には,行政通知として,全国の学校等に対しまして,法的,また教育上の配慮の観点から必要な事項を整理しお示しするものでございますので,文部科学省の判断と責任においてお示しする必要があるものでございますけれども,選挙権年齢の引下げは70年ぶりの大きな政治の仕組みの見直しとも言うことができ,政治的教養の教育の一層の充実を図ることへの社会的期待が大きいこと,それから高等学校において選挙権を有する18歳以上の生徒さんと選挙権を有しない生徒さんが混在すること等を踏まえて,学校現場への影響も様々に考えられることから,文部科学省としての案の確定に先立ちまして,学校教育に関わる関係者の方々から,有識者の方々も交えてお考えを聴取することにさせていただいた次第でございます。
 関係団体の皆様の御意見を賜りますとともに,御一緒にお集まりいただきました有識者の皆様からも忌たんのない御意見を賜れれば大変有り難く存じます。
 私ども,皆様から頂戴した御意見を踏まえて通知を確定させていきたいと思っておりますので,どうぞよろしくお願いを申し上げます。
【坪田児童生徒課長】  それでは,撮影はここまでにしたいと思います。御退室をよろしくお願いいたします。
 次に,本日お配りしております資料について御確認をいただきたいと思います。
 まず資料1は,本日の出席者の一覧でございます。次,資料2-1は,新たな通知案を簡単に説明したものとなっています。資料2-2は,新たな通知案の全文でございます。続いて,資料3は,本日御出席いただいている関係団体の方からの提出資料になります。順に,資料3-1は全国都道府県教育長協議会様,資料3-2は全国高等学校長協会様,資料3-3は日本私立中学高等学校連合会様,資料3-4は全国高等学校PTA連合会様から御提出いただいた資料です。最後に資料4は,現行の通知,すなわち,昭和44年に文部省より発出した通知でございます。
 本日お配りした資料につきましては,ヒアリング終了後ホームページにて公開させていただきます。
 続いて,本日の議事について説明いたします。
 まず,1つ目の議題として,当省で作成した新通知の案文について,事務局より説明させていただきます。
 その後,2つ目の議題として,4つの学校関係団体の代表の方々から,各団体の御意見をそれぞれ10分程度で頂戴したいと思います。
 それに続きまして,皆様で御議論いただくことを予定しております。
 それでは,議事に入ります。
 まず,当省で作成した通知案文につきまして,昭和44年当時の状況や,今日的な状況も踏まえた昭和44年通知との異同も含め,御説明させていただきます。
【中安児童生徒課課長補佐】  事務局でございます。御説明申し上げます。
 昭和44年の10月31日,当時の初等中等教育局長名で「高等学校における政治的教養と政治的活動について」との通知を発出いたしました。
 昭和44年は,その年の年初の,東京大学の入学者選抜が行われなかった年でありまして,当時の記録によりますと,「大学紛争を契機に一部の高校生が暴力的な政治活動に走る現象が生じ,昭和44年にはこのような事例が全国的に多発した」との記録がある年となっております。昭和44年の通知の冒頭に「最近,一部の高等学校生徒の間に,違法又は暴力的な政治的活動に参加したり,授業妨害や学校封鎖などを行ったりする事例が発生しているのは遺憾なことである」とされております。このような背景の下,当時,都道府県教育長協議会や,全国高等学校長協会,高等学校PTA等の要望があり,その協力を得て検討し示されたものが,この昭和44年通知になっております。
 この昭和44年通知は,政治的教養の教育の充実に関する部分と,高校生の政治的活動に関する部分から構成されております。
 政治的教養の教育に関する部分としましては,教育基本法に規定する,良識ある公民として必要な政治的教養は,教育上尊重されなければならないということは,国家・社会の有為な形成者として必要な資質の育成を目的とする学校教育においても,当然要請されていることであり,日本国憲法の下における議会制民主主義を尊重し,推進しようとする国民を育成するに当たって欠くことのできないものであること,一方で,同じく教育基本法に規定されているとおり,政治的教養の教育は,特定の政党を支持し,又はこれに反対するための政治教育やその他の政治的活動とはしゅん別すること等を示した上で,高等学校における政治的教養の教育のねらいや,現実の具体的な政治的事象の取扱いについての留意事項等を示しております。
 また,生徒の政治的活動につきましては,当時,一部の高等学校生徒の間に,違法又は暴力的な政治的活動に参加したり,授業妨害や学校封鎖などを行ったりする事例が発生していることは遺憾であると述べた上で,当面しているこのような事例に適切に対処する観点から,生徒は未成年者であり,選挙権等の参政権が与えられていないこと等の,生徒の政治的活動が望ましくない理由を述べ,生徒の政治的活動について,学校内では制限,禁止,学校外でも望ましくないとして生徒を指導することを各学校に対し求めてきたものとなります。
 文部科学省といたしましては,この昭和44年通知の見直しを検討してまいりました。この通知は,今し方述べてまいりましたとおり,当時の時代背景や,投票年齢は20歳以上であることを前提にしたものですので,先ほど閉会となりました通常国会において,「公職選挙法等の一部を改正する法律」が成立し,選挙権年齢が18歳以上に引き下げられたこと等を踏まえ,通知の内容について一定の見直しが必要と判断し,検討を行ってきたものでございます。
 通知の内容についてでございます。まずは概要をまとめました1枚の紙において,要点を示させていただいております。
 資料2-1を御覧下さい。まず,政治的教養の教育の関係ですけれども,授業において,現実の具体的な政治的事象を取り扱うことや,模擬選挙や模擬議会など現実の政治を素材とした実践的な教育活動を積極的に行うことを明確化しました。また,その際の留意事項として,以下の内容を整理しています。すなわち,学習指導要領に基づき,校長を中心に学校としての指導計画を立てること。一つの結論よりも結論に至るまでの冷静で理性的な議論の過程が重要であること。授業に当たって,教員は個人的な主義主張を述べることは避け,公正かつ中立的な立場で生徒を指導すること。また,学校の内外を問わず教員としての地位を利用して特定の政治的立場に立って生徒と接することのないように留意すること等でございます。
 また,生徒の政治的活動等の関係ですが,政治的教養の教育において具体的な政治的事象を扱うことと,生徒が具体的な政治的活動等を行うことは区別する必要があると考えております。
 公職選挙法等の改正を踏まえれば,高校生が,国家・社会の形成に主体的に参加していくことが期待されます。他方,高等学校が教育を目的とする施設であること等を踏まえると,高校生の政治的活動等は必要かつ合理的な範囲内で制約を受けることとなります。
 具体的な内容ですが,学校の教育活動として,生徒が政治的活動等を行うことは,教育基本法第14条第2項に基づき,禁止することが必要であること,放課後や休日等であっても,学校の構内においては,学校施設の物的管理の上での支障等が生じないよう,制限又は禁止することが必要であること,放課後や休日等に,学校の構外で行われる政治的活動については,違法なもの等は禁止されるほか,学業や生活に支障があると認められる場合などは,禁止することを含め,適切な指導が求められること。また,満18歳以上の生徒の選挙運動は尊重することとなることや,生徒の政治的活動等は,家庭の理解の下,生徒が判断し行うものであることに留意する必要があること等をお示しすることとしております。
 そのほか,インターネットの特性を踏まえた指導の必要性や,学校・家庭・地域の連携の重要性についてもお示しすることとしております。
 続きまして,通知案の具体的な案文に即して説明を続けさせていただきます。資料は2-2になります。
 まず,前文の冒頭の段落ですが,通知の見直しの背景にある事情といたしまして,「日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律」の成立,また「公職選挙法等の一部を改正する法律」の成立により,18歳以上の者が,国民投票の投票権や選挙権を有することとなることをお示ししております。
 昭和44年通知は,その冒頭において「違法・暴力的な政治的活動への参加や授業妨害,学校封鎖の事例が発生していることは遺憾」としておりますが,これは当時の時代背景ということで,今回の通知案には記述しておりません。
 第三段落ですが,こちらは,政治的教養の教育の充実についてでございます。「改正法により選挙権年齢の引下げが行われたことなどを契機に,習得した知識を活用し,主体的な選択・判断を行い,他者と協働しながら様々な課題を解決していくという国家・社会の形成者としての資質や能力を育むことが,より一層求められ」ていること,また「このため,議会制民主主義など民主主義の意義,政策形成の仕組みや選挙の仕組みなどの政治や選挙の理解に加えて現実の具体的な政治的事象も取り扱い,生徒が有権者として自らの判断で権利を行使することができるよう,具体的かつ実践的な指導を行うことが重要」であることを示しております。
 他方,次の段落におきましては,「現実の具体的な政治的事象を扱いながら政治的教養の教育を行うことと,高等学校等の生徒が,実際に,特定の政党等に対する援助,助長や圧迫等になるような具体的な活動を行うことは,区別して考える必要」があることを述べております。
 こうしたことを踏まえました留意事項を2ページ目以降に述べております。
 第1からが政治的教養の教育でございまして,3ページ目の第2までに及んでおります。
 2ページ目の第1でございますが,教育基本法第14条第1項において,「良識ある公民として必要な政治的教養は,教育上尊重されなければならない」とされていること。また,このような政治的教養の教育を行うに当たっては,教育基本法第14条第2項において,「特定の政党を支持し,又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動」は禁止されていることに留意することが必要であることを示しております。
 2ページ目の第2でございますが,政治的教養の教育に関する留意事項を示しております。
 まず1つ目のポツでございますが,「政治的教養の教育は,学習指導要領に基づいて,校長を中心に学校として指導のねらいを明確にし,系統的,計画的な指導計画を立てて実施すること。教科においては公民科での指導が中心となるが,総合的な学習の時間や特別活動におけるホームルーム活動,生徒会活動,学校行事なども活用して適切な指導を行うこと。指導に当たっては,教員は個人的な主義主張を述べることは避け,公正かつ中立な立場で生徒を指導すること」としております。
 2ポツですが,「政治的教養の教育を行うに当たっては,議会制民主主義など民主主義の意義,政策形成の仕組みや選挙の仕組みなどの政治や選挙の理解はもとより,根拠に基づいて判断する力,討論等を通じて自己の意見を正しく表明する力,他人の意見に十分耳を傾け,これを尊重するという態度とともに異なる意見を調整し合意を形成していく力を身に付けさせること」とし,政治的教養の教育を行うに当たってのねらいを整理しております。
 3ポツですが,「指導に当たっては,学校が政治的中立性を確保しつつ,現実の具体的な政治的事象も取り扱い,生徒が有権者として自らの判断で権利を行使することができるよう,より一層具体的かつ実践的な指導を行うこと」を明確にしつつ,「生徒が自分の意見を持ちながら,異なる意見や対立する意見を理解し,議論を交わすことを通して,自分の意見を批判的に検討し,吟味していくことが重要であるので,学校における政治的事象の指導においては,一つの結論を出すよりも結論に至る冷静で理性的な議論の過程が重要であることを理解させること」を併せてお示ししております。さらに,「多様な見方や考え方のできる事柄,未確定な事柄,現実の利害等の対立のある事柄等を取り上げる場合には,生徒の考えや議論が深まるよう様々な見解を提示することなどが重要であること。その際,特定の事柄を強調しすぎたり,一面的な見解を十分な配慮なく取り上げたりするなど,特定の見方や考え方に偏った取扱いにより,生徒が主体的に考え,判断することを妨げることのないよう留意すること」をお示しし,併せて「補助教材の適切な取扱いに関し,同様の観点から発出されました平成27年3月4日初等中等教育局長通知『学校における補助教材の適正な取扱いについて』にも留意すること」をお示ししています。
 4ポツでございますが,これは特に昭和44年通知にはなかった事柄といたしまして,「選挙管理委員会との連携などにより,具体的な投票方法など実際の選挙の際に必要となる知識を得たり,模擬選挙や模擬議会など現実の政治を素材とした実践的な教育活動を通して理解を深めたりすることができるよう指導すること」を明確にしつつ,「多様な見解があることを生徒に理解させることなどにより,指導が全体として特定の政治上の主義若しくは施策又は特定の政党や政治的団体等を支持し,又は反対することとならないよう留意すること」を併せてお示ししています。
 5ポツは,指導に当たる教員に求められる政治的中立性について示したものであり,「教員は,公職選挙法第137条及び日本国憲法の改正手続に関する法律第103条第2項に基づきその地位を利用した選挙運動及び国民投票運動が禁止されており,また,その言動が生徒の人格形成に与える影響が極めて大きいことに留意し,学校の内外を問わずその地位を利用して特定の政治的立場に立って生徒に接することのないよう,また不用意に地位を利用した結果とならないようにすること」を示しております。
 3ページ目の第3は,高等学校等の生徒の政治的活動等についてお示しをしたものです。
 最初の段落では,「改正法により,今後は,高等学校等の生徒が,国家・社会の形成に主体的に参画していくことがより一層期待される」ことを示しております。
 他方で,関係法令や裁判例等を踏まえつつ「学校は,教育基本法第14条第2項に基づき,政治的中立性を確保することが求められていること,高等学校等は,学校教育法第50条及び第51条並びに学習指導要領に定める目的・目標等を達成するべく生徒を教育する公的な施設であること,3として高等学校等の校長は,各学校の設置目的を達成するために必要な事項について,必要かつ合理的な範囲内で,在学する生徒を規律する包括的な権能を有するとされていることなどに鑑みると,高等学校等の生徒による政治的活動等は,無制限に認められるものではなく,必要かつ合理的な範囲内で制約を受けるものと解される」と整理しております。
 その下のなお書き以降は,本通知における用語の定義等を示したものになります。
 4ページ目でございますけれども,申し述べましたような考え方を踏まえて,学校の構内外等,場面や状況に応じた考え方を整理したものです。
 1ポツは学校の教育活動についてですが,「教科・科目等の授業のみならず,生徒会活動,部活動等の授業以外の教育活動も学校の教育活動の一環であり,生徒がその本来の目的を逸脱し,教育活動の場を利用して選挙運動や政治的活動を行うことについて,教育基本法第14条第2項に基づき政治的中立性が確保されるよう,高等学校は,これを禁止することが必要であること」としております。
 2ポツは放課後や休日等における学校の構外におけるものですが,「放課後や休日等であっても,学校の構内での選挙運動や政治的活動については,学校施設の物的管理の上での支障,他の生徒の日常の学習活動等への支障,その他学校の政治的中立性の確保等の観点から教育を円滑に実施する上での支障が生じないよう,高等学校等は,これを制限又は禁止することが必要であること」としております。
 3ポツは放課後や休日等における学校の構外におけるものですが,これは場合分けをしてお示ししております。
 まず(1)は,「放課後や休日等において学校の構外で生徒が行う選挙運動や政治的活動については,違法なもの,暴力的なもの,違法若しくは暴力的な政治的活動等になるおそれが高いものと認められる場合には,高等学校は,これを制限又は禁止することが必要であること」をお示しした上で,「生徒が政治的活動等に熱中するあまり,学業や生活などに支障があると認められる場合,他の生徒の学業や生活などに支障があると認められる場合,又は生徒間における政治的対立が生じるなどして学校教育の円滑な実施に支障があると認められる場合には,高等学校等は,これを禁止することを含め,適切に指導を行うことが求められること」としています。
 (2)ですが,こちらは選挙運動に関しまして,「満18歳以上の生徒が選挙運動をできるようになったことに伴い,高等学校等は,これを尊重することとなるが,その際,生徒が公職選挙法等の法令に違反することがないよう,高等学校等は,生徒に対し,選挙運動は18歳の誕生日の前日以降可能となることなど公職選挙法上特に気を付けるべき事項などについて周知すること」をお示ししております。
 (3)ですが,これは(1)及び(2)において,学校としての具体的な指導が求められる留意事項を示した上で,一般的な留意事項として「放課後や休日等において学校の構外で行われる選挙運動や政治的活動は,家庭の理解の下,生徒が判断し,行うものであるが,その際,生徒の政治的教養が適切に育まれるよう,学校・家庭・地域が十分連携することが望ましいこと」を示しています。
 次に,第4として,昭和44年当時になかったものとして,インターネットについて触れています。内容としては,「インターネットを利用した選挙運動や政治的活動については,様々な意見・考え方についての情報発信や情報共有などの観点から利便性,有用性が認められる一方で,送られてきた選挙運動用の電子メールを他人に転送するなどの公職選挙法上認められていない選挙運動を生徒が行ってしまうといった問題が生じ得ることから,政治的教養の教育や高等学校等の生徒による政治的活動等に係る指導を行うに当たっては,こうしたインターネットの特性についても十分留意すること」としています。
 最後に,家庭や地域の関係団体等との連携・協力について触れております。すなわち,「本通知の趣旨にのっとり,現実の政治を素材とした実践的な教育活動をより一層充実させるとともに,高等学校等の生徒による政治的活動等に関して指導するに当たっては,学校としての方針を保護者やPTA等に十分説明し,共有すること等を通じ,家庭や地域の関係団体等との連携・協力を図ること」としております。
 以上が,文部科学省として検討してまいりました案についての御説明となります。
【坪田児童生徒課長】  議論の時間は後ほどまとめて設けたいと思いますが,ただいまの説明の中で特に不明な点,これから各団体から御意見を頂く,その前提として確認したい点が今ございましたら,御質問いただければと思います。よろしいでしょうか。
 それでは続きまして,学校関係団体の代表の方々から,各団体の御意見をそれぞれ10分程度で頂戴したいと思います。代表の方々の御発言の順番でございますけれども,まず全国都道府県教育長協議会の中井会長から御意見を頂戴したいと思います。全国都道府県教育長協議会から頂戴した意見書は資料3-1でございます。
 それでは中井会長,よろしくお願いいたします。
【中井会長】  全国都道府県教育長協議会の会長をしております,東京都教育長の中井でございます。
 別添の8月4日に発出しております協議会の意見書につきましては,その内容はいろいろ不明な点もあるということで,早い段階で文科省さんの方から通知を出していただければと。あわせて,補助教材等学校現場にとって有用な資料の早い段階での公表をお願いできればというようなことが趣旨でございますが,この件につきましては生徒用の副教材として,教師用の指導資料につきまして,せんだってホームページで公表いただき,大変ありがとうございました。また,今日の通知につきましても御説明を頂いたということで,今後,私どもといたしましては,これを踏まえて学校現場で混乱のないよう迅速な取組を進めさせていただきたいと考えているところでございます。
 本日御説明をいただきました通知についてでございますが,私どもといたしましては,基本的に,この通知について異論を唱えるところはございません。
 政治的教養の教育につきましては,選挙権年齢が18歳以上に引き下げられたというようなことからすれば,現実の具体的な政治的事象を取り扱う,あるいは模擬投票,模擬議会等を行って,実践的な授業を行っていくということについては,当然のことかと考えているわけでございます。
 またあわせて,ここにも規定されている教員としての公正,中立な立場での指導というのも当然のことでございますので,そういったことで今後,具体的な取組を進めていきたいと考えているわけでございますが,学校現場からは,やはり学校教員としての中立性の確保と,より具体的な現実の政治事象を扱うことの難しさを指摘する声も上がっているのも事実でございます。
 そういう面で,今回の通知が早い段階で出されたということ,そしてまた教員用の指導資料も出されたということについては大変感謝申し上げるわけでございます。教員用の指導資料も非常に丁寧に,詳細にわたって記述を頂いておりますので,大変参考になるところでございます。
 しかしながら,それでも,やはり個々の今後出てくる事象においては,判断が学校現場でなかなかつきにくいというような事柄もあろうかと思いますので,またその辺につきましては文科省さんの方に一つ一つ御照会もさせていただいて,遺漏のないように取り組ませていただければと思うわけでございます。
 それから,高校生の政治的活動についてでございます。44年通知と大分様相が変わってくるわけでございますが,これも現在の社会状況,そして選挙権年齢が18歳以上になったということからすれば当然,妥当なものであると考えるわけでございます。
 こちらについても,やはり個々の具体的なところでは,更に詳細なところで明確にしていかなければならないところもあるのかなという声が出ております。
 1つ例を挙げさせていただければ,放課後,休日等の学校構内での選挙運動,政治的活動についてでございます。これについて制限又は禁止することが必要であるとなっておりますが,具体的にどこまでが禁止で,どういう状態なら一定の制限を掛けるのかというところあたりが非常に,こうだという基準,今ないわけでございますし,我々が想定を巡らせても,なかなか判断つきにくいなというところがあって,このあたりは,より詳細な基準等が示されると有り難いと思うわけでございます。
 いずれにいたしましても,これから早急に取り組んでいかなければ,今の高校3年生は,もう来年3月卒業してしまいますし,来年夏には参議院選挙があるということから,早急な準備と取組が必要ということかと思います。そういう中では,個々のことについての照会をさせていただいて,それに御回答いただくということ以外にも,説明会とか,研修会とか,そのようなことをやっていただければ,より効率的に迅速に準備が進められるのではないかと考えるところでございます。
 そういうことで,今後ともよろしくお願い申し上げたいと思います。
 私からは以上でございます。
【坪田児童生徒課長】  ありがとうございました。
 続きまして,全国高等学校長協会の宮本会長から御意見を頂戴いただければと思います。頂戴した御意見書は,資料3-2でございます。宮本会長,よろしくお願いします。
【宮本会長】  全国高等学校長協会の宮本でございます。
 私ども,7月31日付けで44年通知等に関する見解という形で資料を出させていただきました。中身は読んでいただければお分かりのとおりでございますけれども,今回の改定に当たって,私どもとしては大きく3点要望しているわけで,1点目は,学校現場の現実に即した指針を是非示していただきたい。特に高等学校は,教育基本法や学校教育法等の法令に基づく教育を行う公的機関でありますので,学校内で生徒相互及び教員と生徒との間に政治的な混乱が持ち込まれないようにする必要がありますので,これについては是非,引き続き堅持をお願いしたいと思います。
 また,2番目の学校現場に明確な指針をというところで,具体的に学校で,どういう方向で,この新しい政治的教養を育む教育を進めていいのかということについての指針をお示しいただきたい。また,しっかりと周知徹底をお願いしたいという,この3点を見解としてお出しをさせていただきました。
 これに基づいて,今回新たに出されます通知の案について,今から若干意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず通知全般につきましては,教育基本法と基本的な法令を踏まえて作成されたものでありまして,妥当な内容だと考えます。ただ,この通知文という形式上,やむを得ないことなのですが,どうしても読んでいきますと,留意事項や禁止事項に目が行きがちであるということで,通知の趣旨をどう伝えていくのかということが,非常に難しいのかなと思っています。
 前回の通知と今回の通知の一番大きな違いは,最初に小松局長の御挨拶にもあったように,今回は選挙権年齢を引き下げるということが,そもそも通知の改定の発端であります。将来の我が国を担う若者たちの政治に対する関心や理解を深めて,選挙へ行くことをはじめ主体的に社会参画をさせていくということ,これがこの法改正の趣旨だと思っていますので,これを具体的に学校の中でどう生かしていくのか。つまり,今まで以上に公民としての資質を育むということ,これがまずあって,そしてそれを行う上での留意事項という形で通知の役割があるということで,通知だけが前に行ってしまうと本来の趣旨が隠れてしまうと思いますので,是非そこのところは,よろしくお願いをしたいと思います。
 その上で今回,先般出されました資料集,補助資料ですが,大変よくできていると思います。それを踏まえて1点指摘をさせていただきますが,今回この通知の2ページ目の第2というところで,政治的教養の教育に関する指導上の留意事項が書かれておりますが,この2番目の後段のところです。政治的教養を行うに当たって,こういう力を身に付けさせるということで,ここでは3つの力を身に付けさせることと書いてあります。
 ところが,この副教材の教師用資料の7ページのところには,同じように,どういう力を身に付けさせるのかということで,具体的に4つの力を書いています。
 1つは論理的思考力(とりわけ根拠をもって主張し他者を説得する力)。2つ目が現実社会の諸課題について多面的・多角的に考察し,公正に判断する力。3つ目が現実社会の諸課題を見いだし,協働的に追究し解決(合意形成や意思決定)する力。そして4つ目は,公共的な事柄に自ら参画しようとする意欲や態度ですね。この4つと,この今通知に書かれている2の2が完全に同じものかというと,そうでないような気がするんですね。
 むしろ私は,この副教材に書かれている4つの力,ここをもっと前面に出した方がいいのではないか。これ,とても分かりやすいと思いますし,実際にこの副教材の教師用の指導書の中では何回もこの4つの力が出てきます。こういう力を育てなさいということが非常に分かりやすく書いてありますので,それに比べると,今書かれている第2の2のところは,少しぼやけているような気がしてしまいます。
 やはり,さっき言いましたように,こういう力を付けてほしいということを全面的に出していただくためには,少しここのところはお考えいただいてもよろしいのかなと思っています。
 それから,高等学校等の生徒の政治的活動等というところについては,これはこの形でよろしいのかなと思うのですけれども,やはり先ほど中井会長もお話しになりましたように,4ページの3,放課後や休日等において学校の構外で行われる選挙運動や活動についてという留意点の(1)ですね。この上から3行のところです。
 例えば違法なもの,暴力的なもの,違法若しくは暴力的な政治的活動等になるおそれが高いもの。これ具体的にどういうことをイメージされているのかは私ども,なかなかイメージがつきにくいということと,それから,その文章の最後のところで,認められる場合には制限又は禁止することが必要であること。確かに文言としてはこうなのでしょうけれども,具体的に,じゃあ実際どう扱っていくのかということが,非常に学校としては難しいと思います。
 特に今,実際の言動を見てみると,子供の構外の活動とか,子供たちの動きというのは,昔以上に把握しにくくなってきています。例えば子供の人間関係でも,昔は目に見えて,この子とこの子が仲がいいとか,この子とこの子がこういう活動をしていると見えましたけれども,最近は本当にラインとかメールとか,いろんなものがあって,なかなか子供の実際の動き,特に構外の動きというのは,非常に学校として把握するのが現実問題として難しい状況にあります。
 ですから,通知としてはこういう文言なのでしょうけれども,実際にこれを学校で行っていくことは非常に難しいところがあるというのが正直な気持ちであります。
 最初にも申しましたように,この通知の選挙権年齢の引下げの趣旨ということを前面に出していただいて,今まで以上に各学校で組織的に公民としての資質を育む教育を行うという,こちらを是非前面に出していただきたいと思います。そうでなければ結局,学校や教員が後ろ向きになってしまって,本来の趣旨がなかなか生かせないとなっては,困ると思います。今後,この通知,それから補助資料等を含めた啓発の仕方,あるいは研修の仕方,そこのところを是非工夫をしていただいて,せっかくのこの改正が本当に子供たちにとっても良いものになるように,是非お願いをしたいと思います。
 私の方からは以上でございます。
【坪田児童生徒課長】  ありがとうございました。
 それでは続きまして,日本私立中学高等学校連合会,吉田会長の御意見を頂戴させていただければと思います。連合会から頂戴した意見書は資料3-3でございます。それでは吉田会長,よろしくお願いいたします。
【吉田会長】  ありがとうございます。私どもの考え方につきましては,この資料にお出しさせていただきました。そういった意味では,この高校生の政治的活動等につきまして,基本的には今回の通知は,私どもの願いというか,思いをかなりの部分で達成させていただいたものと思っております。
 ただ実際にこの通知自体が,具体性ということで言いますと,先ほど来,中井教育長,そして宮本会長からもお話がありましたように,ケース・バイ・ケースというか,その時々で,まだまだ時間がないために,いろいろなことが起きてくることと思いますので,その辺のところでの御留意をお願いしたいと思っております。
 そこで,今一番基本的に問題になってくるだろうということは何かといいますと,私ども高等学校教育は,3年間という所定の期間の中で,生徒に教育を行っております。その教育は,民法で未成年とされて,義務教育の延長としての,より高度な学力を身に付けさせるということはもちろんでございますけれども,それとともに,いまだ判断力,責任能力等がない子供たちに対して社会性を身に付けさせるという部分がございます。しかしながら,今回のこの選挙権を得たことによって,実は,しっかりとした判断力を持っている者ということになります。つまりは,未成年者と今までの未成年者,保護者,法定代理人に保護されている立場,そして判断等についても保護されている立場から,選挙権だけが一種独立の責任能力を持たされたという部分について,これをしっかりと高等学校として教育することには若干,時間的に短いという不安がございます。
 と申しますのも,今回,国民投票が平成30年からですか。4年間の準備期間があって30年6月だったと思いますけれども。国民投票についてはそうですが,この選挙権については,この1年間,更にその1年間の中で,今もう既に数か月経過して,ここで初めて通知が出,副読本を出していただきました。副読本の内容等についても,かなり,この短い期間で,いいものを作っていただいたことは感謝申し上げますけれども,しかし,これを周知して子供たちに実施するということについては,そう簡単ではないと判断しています。
 そして,高等学校の立場としては,やはり依然として,その所定期間の生徒であるわけですから,17歳と18歳,未成年者と選挙権を有した者が同居するといいましても,やはり所定の教育を実施する対象であることは間違いないわけですので,この混在ということに対しての教育の仕方の難しさ。そして,先ほど来通達にあるような18歳未満の生徒,18歳以上の生徒という,この区分け,大変難しいものと思っています。
 また教科の中でも,公民で扱うということにしましても,例えば今,政治・経済,高校1年生でやっている学校があったとすれば,そういう学校については高校3年生では,もうその授業がありません。そうすると,どこでそれを組み入れていくのか。特に今,実際の,現状の教育課程においては,子供たちは,もう目いっぱいです。そこに新たに,この模擬選挙等をやる時間等をどうやってとっていったら良いのか。そこにおいては,我々にとって,非常に時間がないということが一言で言える言葉だと思います。
 各学校にとりましても,やはり,その不安がございます。そして,それとともに,やはり教員の中立性という問題につきましても大変難しく思っております。
 例えばの話が,生徒にとことん討論をさせ結論を導かないでも,そういった討論の経過,まさに今,教育再生実行会議で言われているアクティブ・ラーニングのような形で,この授業をやっていくということがあるわけですけれども,子供たちの考え方がどこまで進むのか。そして特に,この政治的教養教育というのは,私もとても大切だと思います。ただ大切ですが,今までが自分たちが主権者という教育は受けてきていません。やはり高校生だけでなく,この主権者教育というものを小学校,中学校の段階からしっかりとさせていただくことが,一つ大きな問題になってくるのではないかと思います。そういった意味でも,次期の学習指導要領改訂に伴いましては,是非この部分も一緒に考えていただければと思っています。
 そして,私どもがもう一つ心配しておりますのは,学校で教育をするといっても,今回,全国教育長会議の御意見書にも,それからPTA連合会の御意見にもありましたけど,やはり家庭における主権者教育というものも是非していただきたい。学校だけでは,とても難しいと思っております。一番身近な主権者である御両親,保護者,そういった方々と,やはり家庭における,そういう政治的教養教育というものもしていただかなければいけないのではないかと思います。
 そういう意味では学校と,そして御家庭と地域社会が連携してという今回のこの考え方はすばらしいと思いますが,更にそれを充実させていただきたい。そして,副教材の7ページにございますように,政治とは自分で判断することが基本ですので,課題を多面的・多角的に考え自分なりの考えを作っていく力も必要と。そして,そういう意味でも,高校において政治的教養を育み,その成果を生かして,有権者として政治に参加してくださいとあるわけですけれども,ここではっきりと自分で判断することが基本,つまり判断力と,やはり言っているわけでございますので,これについては,未成年者と,それと有権者という部分の違い,そういったことも含めて是非,御家庭も御一緒に協力していただきたい,そういう思いでございます。
 また私立学校,そして生徒も,みんなそれぞれ一人一人,多種多様でございます。そういう中で,急に決まったこの規則について,どうやって,いろいろな問題を解決していくか。先ほど来のお話にもございますけど,そういう中で是非お願いしたいのは,一つ一つのことで大騒ぎをしないで,じっくりと,いろんなことがあって初めてきちんとしたものになるという,これは我々教育の基本だと思っていますが,それを認めていただくこと。
 それともう一つ,これは余計なことかもしれませんけれども,今回のこの副読本は,総務省との共著だと思います。是非,文科省は教育の部分かもしれませんが,総務省の方でも,大人に対して,この未成年者に対する政治活動についてのしっかりとした訴えをしていただきたい。そして地域社会や大人が,本当にこの未成年者でも主権者である高校生,そして大学生,18歳から20歳の子供たちを,しっかりと支えていただけるようなサポートをお願いしたいと思います。
 とりあえず以上でございます。
【坪田児童生徒課長】  ありがとうございました。
 それでは団体の最後になりますが,全国高等学校PTA連合会の佐野会長の御意見を頂戴させていただければと思います。PTA連合会から頂戴した意見書は資料3-4でございます。佐野会長,よろしくお願いいたします。
【佐野会長】  ありがとうございます。私どもが出しました意見書の趣旨からしますと,今回の通知は大変大きく評価をさせていただいているところです。
 昭和44年通知も,当時は教育基本法の第8条,現在は14条でしょうけれども,政治的教養を育むことが尊重されるべきというのが実は第1項で,政治活動に関しては第2項なんですね。ですから,本来は政治的教養教育を推進していこうという,それが第一であるところなわけで,昭和44年通知を背景にしますと,まさしくここに書かれているような違法又は暴力的な政治的活動ですとか授業妨害や学校封鎖,これは刑法で処罰されるべきものであって,そこのところが大きく取り上げられていた時代と大きく変わってきているという時代認識が一つ必要なんだろうと思います。
 そしてまた今後も,こういう,いわゆる違法,刑法で処罰されるべきものは徹底的にそれを排除するという姿勢は必要だと考えているところであります。
 そして,大変不幸なことには,昭和44年といいますと,現在の60代前半の方たちは,それ以降,中立という言葉が独り歩きをして,中立ということが触れてはならないもの,避けるものということで,はっきり言いますと,学校教育の中で政治的教養を育むような学習をしてこなかったという方たちが今の60代前半以降の人たちだと思います。私も含めて。そういうことが社会的課題への関心の薄さ,あるいは政治参画への関与度の低さというところに実は表れてきているのではないかと,そういう問題意識を持っております。そういう意味で,今回の新しい通知が出て,昭和44年通知は,それと同時に廃止をされると。この大きな動きに関しては大変喜ばしいことだと考えているところであります。
 一方で,先ほど来お話がありましたが,今回の通知,特に学校における政治活動のところで,どうしても目が行くのは,制限又は禁止,あるいは禁止することを含め適切な指導というところだろうと思います。この言葉については非常に慎重に皆さん,捉えられると思うんです。
 そのときに,実は3ページの第3,高等学校等の生徒の政治的活動等の2段落目の最後の方にあります,この「必要かつ合理的な範囲内で」というところが強調されるべきで,これを基にして推進をする。必要ではない,合理的ではないと思われるような制限あるいは禁止を加えないということを,私自身は基本的な合意といいますか,基本的な意識として持つべきではないかなと思っているところでございます。
 それと,もう一つは,先ほど来いろいろお話がありました,私も44年通知の弊害ということを話しましたけれども,やはり高校生の政治的教養,政治教育だけではなくて,これを機会に社会人,私たち大人が政治的教養を身に付けるいい機会になればと。そういう意味では,先ほど家庭との連携の話がありましたが,この副読本を高校生と一緒に親が読むというような活動を,高校のPTA連合会としては,やはり訴えていかなければいけないだろうと思っておりますし,それから学校でこういうことが行われているということをきちんと理解をして,それを促進させるような協力をしていくことも家庭として非常に大事なことになってくるだろうと考えております。
 更に一歩進んで,政治的な活動というのは何も選挙での投票だけではなくて,やっぱり主権者,あるいは市民としてやるべきことは社会参加。社会の課題を身近に感じる,それに関して考える,そして,それに関して参加をしていくことが必要でしょうから,高校生たち,あるいはもっと前の小学生,中学生たちを,その地域社会の活動に参加をさせて,地域社会の課題を実感させて,それを考える機会を設けさせてあげるというのもPTAとしての役割だろうと思っております。
 私どもの意見書にも書いておりますが,先ほど吉田先生からもありましたが,今,学校現場は物すごくいろんな課題があって,非常にタイトな状況ですから,この主権者教育等も全て学校にお任せというのはとても無理があると思います。大人の主権者教育ということも含めて,やはりPTA等が中心になって,家庭あるいは地域社会に広げてあげる,そこがサポートしてあげる,そこが一緒にやることをやらなければいけないということで非常に責任も感じているところでございます。
 以上です。
【坪田児童生徒課長】  ありがとうございました。
 関係団体の皆様,御発言ありがとうございました。これまでの事務局の説明と関係団体の皆様の御意見を踏まえまして,新通知の在り方について,これから意見交換をさせていただければと思います。ここからは有識者の先生方も交えまして,御議論を深められればと思います。御発言のある方は挙手等でお示しいただければと思います。いかがでしょうか。
 それでは,最初口火を切っていただくということで,林先生,いかがでしょうか。
【林氏】  林です。よろしくお願いいたします。
 昭和44年の社会状況と比べれば,今回18歳に下がった中で,通知の件,いろいろと苦労されて作ってきた文書なんだなと思っています。また今までのお話の中でも,いや,そもそも,まだ主権者教育充実していないところで間に合うのかどうかという懸念は非常にある中で,私自身としては,やはりそこは教育が先か,制度が先かとかというところの中では,選挙権年齢が下がらなければ,こういう議論は,こういうふうに出てこなかった。44年通知のことも,実は学校現場で余り知られていなかったんじゃないかなと思う中では,そういう意味では,今回の18歳選挙権というのは,劇薬とまでは言わないですけど,すごくインパクトがあり,いろんな意味で,今を生きていて,これからの社会を生きていく高校生世代に対する主権者教育の在り方,またその必要性,そして今,お話にもありましたように大人自身の主権者教育とか,主権者意識の在り方をすごく問うものに今なっているのではないかなと感じています。
 その中で,私,今の,この間の議論の中で,もう少しお聞きしたいなと思ってはいるところなんですけれども,この今回の通知の中の3ページの第3,高等学校等の生徒の政治的活動等の下の方に,政治的活動とはどういうものなのかというのが1つは具体的に書かれています。
 また,その中で,第2の政治教養の教育に関する指導上の留意事項の中にも,より一層具体的かつ実践的な指導を行うことともありますし,また副教材でも議員を学校に呼ぶこと等については問題がないというようなことが書かれているわけですね。
 そういう意味では逆に,もっと生徒自身が議員事務所を訪問したりとか,質問状を送付したりというようなこと,ある意味,職業体験の一つの行き先として議員の事務所をということも今後はあり得るのかどうか。その辺はどのようにお考えになっているのか。具体的にどこまでが実際できるのかというところを,お聞きしたいと思っています。
【合田教育課程課長】  教育課程課長でございます。御質問ありがとうございました。先ほど林先生がおっしゃったのは,お手元の資料の中で,教師用指導資料の方でございます。活用のための指導資料と打ったものでございますが,それの88ページを御覧いただければと思っております。
 教師用指導資料の88ページに問いの5,Q5というのがございまして,先ほど林先生がおっしゃいましたように,国会議員とか首長,地方議会の議員などを学校に招くことはどのように考えればいいですかということがございます。この答えの方にございますように,現実の立法等に関わっている方々の協力を得ることは,具体的なイメージを生徒が持つことにつながる。その際,生徒に対して,多様な見方や考え方があることを理解させるように,必要に応じ事前や事後の指導が必要であると。それから学校側も政治家の方々との事前打合せにおいて,こういった趣旨をしっかりとお伝えをするということなどによって,政治家等から具体的な投票行動や支持の呼び掛けが行われないよう配慮することが必要です。
 それから地域・保護者の理解を得ること。それから,更に議員等を招く場合には,学校の政治的中立を確保するために,議会事務局等との連携,複数の会派を招くことも含めて御検討いただくというようなことが書かれているところでございます。
 先ほどお話がございましたインターンシップの件でございますけれども,これは学校の取組もステップ・バイ・ステップかなと思っておりまして,むしろ実際に今回の補助教材でも取り扱いましたように模擬請願のような形で,議会事務局と連携しながら,子供たちの声を具体的にどう議員や議会事務局と向き合うかという取組の中で,今申し上げた88ページのようなポイントに留意しながら取り組んでいただいている例もあり,このような実践的教育活動の蓄積が大事だと思っております。
 なお,これは林先生御案内のとおり,一般的にインターンシップ等というのは高等学校でかなり取り組まれてございまして,そういった取組の中の一つとして,御指摘のような例も当然考えられるところでございますけれども,その場合には,今88ページに見ていただいたように,学校の事前,事後の指導でありますとか,あるいはその政治家の先生方との十分なコミュニケーションですとか,それから生徒自身への指導といったことも欠かせないのではないかと思っています。
 今,抽象的に申し上げましたけれども,私どもとしては,むしろ,これからそういった議論,あるいはそういった実践ですね。いろいろお取組があろうかと思っております。その中で,こういう成果が上がった,あるいはこういう課題があったということがいろいろ出てくると思いますので,それをしっかり受け止めまして,先ほどの宮本会長,あるいは中井会長からもございましたように,むしろ,そういうことをしっかり踏まえた上で,よくよく,また学校現場にフィードバックさせていただいて,質の高い政治参加,実践教育をしていきたいと考えております。
 以上でございます。
【林氏】  今の話の中で模擬請願という話があったんですが,そこでもう少しお聞きしたいのが,そこが,むしろ模擬請願ではなくて,それを実際に請願をしていくということまでができるのかどうか。
 例えば学費の値下げの問題だったり,エアコンの設置の問題だったり,あるいは今回も神奈川県の県立高校で30か40校ぐらい統廃合の問題とかありますけれども,生徒自身が学校生活に関わることに関してです。学校生活の改善向上を生徒会役員がということが副教材の7ページにも書かれていますけれども,実際にそういう活動を行うことは,この通知の3ページの政治的活動に触れることなのか。それは学校ではやらないことになっていますけれども,そういったことができるのか,できないのか,やってはいけないのか。その辺はどうなんでしょうか。
【合田教育課程課長】  通知の中にもございましたけれども,学校教育のカリキュラムの中で政治的教養を育むための教育と,それから具体的な政治活動とは,やはり別だと思っております。今回,副教材でもお示しをさせていただきましたように,これはあくまでも模擬選挙であり,模擬議会であり,模擬請願であるということでございまして,議会の事務局の方々が非常に熱心にそれを聞いていただいたり,議長や副議長とつないでいただいてディスカッションしたりというのは子供たち,高校生にとって大変貴重な機会だと思っておりますけれども,そのことと実際に学校の外で,子供たちが自分なりに調べて実際の請願を行うということは別の問題だろうと思っています。
【林氏】  ただ,その学校生活に関わることを自分たちのものとして出すわけですよね。それは学校外のこととはいえ,でも生徒会活動とか生徒会として,学校生活の改善を求めるということは非常に意味があることだと私は思っているんですね。それが,ただ,この政治的活動だからやってはいけないとなってしまうと,それを萎縮させることにつながるのではないかなと思うんですけれども。
【合田教育課程課長】  その点については先ほど申し上げましたように,テーマは何であれ,学校で行いますのは政治的な教養を高めるための教育でございまして,それはあくまでも模擬かと存じます。もちろん高校生たちが有志の中で,自分たちで議論して,こういうことを正式に自分たちの声として届けようじゃないかということは当然あり得ると思いますけれども,それは学校がカリキュラムとして校長中心に学校教育活動として行うものとは分けて考えるべきだと考えてございます。
【林氏】  ただ,生徒会活動は学校教育活動の中なんですよね。ここの書き方ですと,そう読めるのですが。
【合田教育課程課長】  生徒会活動は学校教育の中でございます。
【林氏】  ですから,生徒会がエアコン設置だったりとかを求めるという活動をすることは政治的活動になるのでしょうか。
【合田教育課程課長】  具体的な対応にもよりますけれども,まず生徒会として,もし意見を言うのであれば,それはまず学校におっしゃるべきだと思います。その上で,これを是非議会に請願したいというのであれば,それは生徒会ではなくて,子供たちの有志として行うべきではないかなと考えております。
【林氏】  つまりそれは,生徒を代表とした生徒会として行ってはいけないということなんですか。
【合田教育課程課長】  生徒会活動としては。
【林氏】  行ってはいけない,ということですね。
【合田教育課程課長】  ないというふうに理解してございます。
【土井氏】  よろしいですか。学校内で教育課程としておやりになるということになると,生徒会であったとしても,様々な考え方の生徒たちがいるわけで,そこで多数決をとって全体の意思として請願をやれるかどうかというと,やっぱり限界があるだろうと思います。学校内でいろんな意見をまとめること自体はあり得る話でしょうけれども,やはり対外的に意思表明をしていく場合には,集団と集団の構成員の自由との関係が常に問題になるところです。とりわけ,公立学校の場合は,その辺の配慮が必要だと思いますので,両者の区別は合理的なのではないかと私は思います。
【坪田児童生徒課長】  ありがとうございます。ただいまの関連でも,また別の視点からでも,お願いできますでしょうか。田中先生,いかがでしょうか。
【田中氏】  ありがとうございます。拝見していて,それから各団体の長の方の御意見を聞いていて,非常に大切なことをおっしゃっていると思っておりました。
 一,二点,ちょっと意見を申し上げたいと思うことがございます。まず,宮本先生がおっしゃっていた,本日,文部科学省が御用意された文章で,ページでいうと2ページ目の「記」とあるところの,第2の2ポツのところについておっしゃっていて,「政治的教養の教育を行うに当たっては」というところの文章と,それからこちらの副教材の教師用の指導要領の7ページのところには一致していないという御指摘についてです。7ページ目の御指摘は確かに重要なことだと思っています。論理的思考とか,多角的・多面的な考察力,判断力,それから合意形成・意思決定するという協働の力,そして公共に参画しようとする意欲,能力は非常に重要です。
 ただ,実は,この4つの能力だけでは,恐らく政治参加のモチベーションは上がらないと思っています。政治参加するにはこの能力が必要でありますし,政治を生かすにはこの能力必要なのですが,これは目的というか,教育で育むべき,宮本先生がおっしゃっていた公民としての役割を育むということが一番大事だと。おっしゃるとおりで,この4つが最も大事だと思うのですが,生徒たちが,なぜこれを育んだときに,自分たちが政治参加する必要があるのかというところのモチベーションを高める記述が必要だと思っています。それが,つまり目標の方が,この2ポツにあると思っています。
 まだ私の文言の検討が不十分かもしれないのですけれども,議会制民主主義など民主主義の意義と述べているのは当然なんですね。民主主義というのは主権在民とか,言論の自由とか,一票の平等性とかいうことですけれども,その次の政策形成過程の仕組みを理解するということは,実は国民のニーズが選挙を通して自治体や国の政策の形成に反映していく,そのメカニズムが分からなければ,子供たちというか,大人もそうなんですが,投票参加する意味がないわけですね。幾らこれだけ,4つの能力を持っていても,自分が行かなくてもいいじゃないかと。政治は違うところで決まっているんだと思えば,もうそれまでなので。国民が我々の声が政治を変えるとか,政策を変えると思うことが大事なので。この4つの能力を持っている上に,その能力を使う目的の記述が必要だと思います。
 そこがつながっていないという御指摘はおっしゃるとおりで,2ポツ以外に,この4つの能力を持った上で,こういう意識を持たせることが必要なのかもしれません。ただ,2ポツは,やっぱり重要でありまして,そのメカニズムという,政策形成というものが国民の意見を反映するのが民主主義の根幹であり,選挙は,その場合に最もフォーマルで制度化されたルーツである,チャンネルである,その経路であるということが理解されていないと,やっぱり政治は自分たちのものじゃないと思ってしまうと思っておりますので,ここはそれぞれ重要だと思っています。
 その点で,あと2点だけ申し上げますと,副教材をさっと見させていただいているので,まだ十分には吟味できていないんですが,もう少し必要なところがあると思います。というのは,今申し上げた,やはり模擬選挙とか選挙の仕組みとかも重要ですし,それから議会の審議過程も出ておりますが,この議会の本会議がどうなってとか,議長がどうするとかいうところは,実は大学の政策形成過程,国会の立法過程か何かで教えてもいいような内容なので。高校生,中学生,特に高校生に教えるときには,どういう議会の流れかということよりも,どういうふうに国民とか市民,住民の意見が地方自治体において,若しくは国において政策に反映し得るのか,どういう人が,その代表となったときに,何が起こるのかということを教えるべきだと思います。
 例えば国民とか住民の意見を誰が反映するのかというと,代議員ですよね。その議会に選ばれた代議員である。代理制民主主義ではそういうことになると。その人たちが,そうすると,ある利益を代表する方たちばかりが議会に選ばれてくれば,当然それ以外の方たちの意見は細くなってしまう。ですから,地方自治体においても,そういうことが当然あるということなんだと。そういうことを,やっぱり,その仕組みの理解が,まだ副教材でも不十分ではないかという気がいたしました。
 模擬選挙とか議会にいきなり飛んでいるところがありまして,その間にあるべき国民と政策とのつながりが理解される必要があろうかと思っています。
 最後に1点だけ。今,文部科学省が用意してくださいました,この文章,よくできていると思いますが。資料2-2の2ページ目の,先ほど申し上げた第2の2ポツの次の3ポツなのですけれども。文章でちょっと分かりにくいところがあると思うのは,3ポツの第2段落。「また,現実の具体的な政治的事象については,種々の見解があり,一つの見解が絶対的に正しく,ほかのものは誤りであると判断することは困難である」の箇所ですが,「困難である」の後に,「ばかりでなく,一般的に政治は意見や信念,利害の対立状況から発生するものである」で切れていますが,どうも意味がつながらないと思います。
 というのは,「一般に政治的な意見や信念,利害の対立状況から発生するものである」から,「そのため,生徒が自分の意見を持ちながら」につながるべきです。一般的な政治は利害の対立があるのだということを述べ,それだから,生徒は自分の意見を持ちながら,異なる意見や対立する意見を理解し,議論を交わすことを通して,というところにならなければならない。としますと,「これは困難である」で一度切っていただいた方がいいと思います。「また,現実の具体的な政治的事象については,種々の見解があり,一つの見解が絶対的に正しく,他のものは誤りであると断定することは困難である。」で一度切り,「ばかりでなく」は取っていただいて,「一般に政治は意見や信念,利害の対立状況から発生するものであるから,そのため,生徒が自分の意見を持ちながら,異なる意見や対立する意見を理解し,議論を交わすことを通して,自分の意見を批判的に検討し,吟味していくことが重要である。」で切っていただく。つまり「重要であるので」の「ので」を削除していただく。その後に「したがって,」の接続詞を入れ,「したがって,学校における政治的事象の指導においては,一つの結論を出すよりも結論に至るまでの冷静で理性的な議論の過程が重要であることを理解させること」とすべきだと思います。
 つまり,「一般に政治は意見や信念,利害の対立状況から」で始まる文章は,「発生するものであるから」とつながりまして,「そのため,」を削除し,「生徒が自分の意見を持ちながら,・・・吟味していくことが重要である。」で切っていただくと,ここが意見対立ということだから,どういうことが必要かを述べている。その次の文章は,「したがって,」という接続詞を入れていただいて,「学校における政治的事象の指導においては,・・・理解させること。」とつなげれば,どういうふうに議論しなければならないかのプロセスを述べることになります。この段落,3つの文章に分かれるべきだと思います。
 そうしませんと,これ論理的につながらないんですね。こうだから,こういうことが必要で,こういうことをするから,こういう過程が必要だということを言わないと,教諭の先生方におわかりいただけなく,どうもならないような気がします。ここはその方が,論理的に理解できると思います。
 以上でございます。
【坪田児童生徒課長】  ありがとうございます。今の関連でも,また別の観点からでも,いかがでしょうか。生徒指導の全般の関係から森田先生,お願いします。
【森田氏】  様々な御意見をこれまで頂戴して,この全体の通知文の中に,これらの論点がかなり丁寧に盛り込まれていますが,これはあくまでも通知文ですので,全ての問題点を盛り込むことは不可能なことです。ともあれ,この立て付けが,1つは今の教育基本法の第14条の1項,これをまず第一義的に優先して,そして,それに伴う様々な留意点,弊害等に対して,どう対処するかという立て付けになっています。通知文といいますと,どうしても2項の方に目が行ってしまうという御意見がございましたけれども,私は,この立て付けは大事だろうと思いますし,これはこのままでいいと思っております。
 通知文の趣旨は1項にあるという点に十分留意していただいて,メディアの方々もきょう御参席ですけれども,余りにも第2項が優先されているかのような読み方はしないでいただきたい。昭和44年の通知文の方の禁止事項を念頭に思い浮かべがちになりますが,これはあくまでも廃棄されるものでございまして,新たにこの時点で,18歳に選挙年齢が下がってきたということを踏まえて,教育としてどう捉えるかというところで,第一義的に政治的な教養というものを身に付けることを優先させながらやっていく,その通知文だという位置付けをしっかりと共通認識として持っておかなければなりません。ここから誤解が始まると,今回の通知文の趣旨と全体構成が歪められて曲解されてしまいかねません。
 ただ,さはさりながら,先ほど御意見ございましたように,中井会長からも,あるいは宮本会長からもございましたように,いろいろ想定はするんだけれども,いろいろな事態が生じ,今後,判断がつかないような事態が様々に出てくる可能性はございます。そのあたりについても予測しながら,丁寧に指導資料も作っていただいておりますけれども,まだ,更に細部には,いろいろと現実には出てくるだろうと思います。もちろん文部科学省としては,いろいろと照会が来て,お答えになっていかれますでしょう。次回の選挙に間に合うかどうかは分からないけれども,実際に現場の指導に当たる教師としては,あるいは校長としては,ある一定の段階で,それをどうしていけばいいのかをある程度集約していただき,何かQ&Aのような形で整理していただくということもあり得るかなと思います。
 それでないと,やはり現場では混乱が生じてまいります。先ほどの,土井先生と,それから林先生のやりとりにも現れてきていますように,なかなかなかなか専門家の間でも解釈の上では難しい問題が生じてまいります。この点については,合田課長が答えられましたけれども,政治活動を構外と構内と,きっちりと分けておくということはしなきゃいけないだろうと私も思っていますが,そういう点も含めて今後とも非常に微妙な点が出てくることが大いに予想されます。
 例示で林先生が提示されました統廃合という問題になってまいりますと,行政決定に関するいろんな異議申立てを自分たちの問題としてどう捉え,どう行動するのかという問題が絡まってまいります。しかし,個々人の利害を多数決原理で一挙に全てを押し潰してしまうということは,個々人の素養やそれぞれなりの判断力を育むという学校教育の道義にもとることですので,それに賛成の意見も反対の意見もあっていいわけです。生徒会活動といえども,それを一律に網を掛けて決定し,全員の意思として表明させてしまうということは,ちょっとこれは問題がある,教育として弊害が生じると私も思っております。
 ただ,そういう指導資料を,Q&Aのような形で,やっぱり,いろんなケースを,これから照会がありましょうから,まとめて現場へ返していくということは,ひとつよろしくお願いしたいと思います。
 その際に,中井会長が御提案されたように研修会,説明会等も,やっぱり開いていただかなきゃいけませんが,全国津々浦々,なかなかそれは浸透が難しいだろうと思いますので,是非とも,Q&Aの作成・配布を行っていただきたい。やっぱり現場が混乱したり,判断に迷ったり誤ったりした結果,いろいろな外部の方とのトラブルといいますか,そういうものに教育現場がいたずらにかき回されることは非常に憂慮すべきことでございますので,その点は,しっかりと対応していただきたいというのが一つのお願いでございます。
 それからもう1点は,吉田会長がおっしゃったんですが,やはり小中でも政治的な素養に関する教育は行っていくべきだろうと私も考えます。今回の通知文は,高等学校の生徒というものを対象にしておりますが,次回の選挙という緊急の事態に備えなければなりませんので,新たな次期学習指導要領の実施を待ってからでは間に合いません。次期学習指導要領の検討を拝見していますと,公民としての資質の育成ということがかなり入り込んでくることが予想されます。そこでは,公共の担い手としての公民の資質や能力の育成をどう図っていくのかということに重点を置いていますが,その実施は,かなり先のことになります。
 なお,政治的教養を育むにあたって考慮しておくべきことは,そもそも義務教育というのは,主権者教育をある程度そこで完成させ,公民としての資質の育成についても完成させて,そして社会へ出していく,あるいは高等学校へ進ませるべく制度設計されるべきものだと思われます。だから,高等学校へ通っている人たちだけが,主権者教育や選挙に関わる素養について教育を受けていくというのじゃなくて,公民としての資質と,それから主権者教育は義務教育段階で完成させていくべきものだと思っております。小学校なら小学校なりに,また,発達年齢段階がございますので,中学校は中学校なりに,次期の学習指導要領を待つのではなく,今の時数の中で,どういう具合にそれを潜り込ませていくのかを検討していくことが必要だと思います。総合的な学習の時間もございますし,生活科,社会科,道徳,公民,特別活動や体験活動など,いろんな場面がございますので,そこのところへ潜り込ませていくことも新たに試行していただきながら,そして18歳へつないでいくということが必要じゃなかろうかと思っております。
【坪田児童生徒課長】  ありがとうございます。
 これまでのところのいろいろな点について,法的な面から石津先生,土井先生から順次,御発言いただければと思うんですけど,いかがでしょうか。
【石津氏】  この第3の3の放課後,休日等における政治活動の規制のところですけれども,これは違法なもの,暴力的なものは当然禁止できるし,そのおそれが高いものも禁止ないし制限ができるとなっていますが,これは余り異論がないと思います。
 問題は,その次のところで,そういうものでなくても学業に支障がある場合にも,禁止することを含め適切に指導,こうなっているんですね。従前の最高裁判例からいえば,これが間違っているとは考えません。確かに,禁止できる場合があるだろうと思います。ただ,禁止するには,その必要性,合理性を基礎付ける具体的な事情,事実が必要なわけでして,それは少なくとも現状では容易に想定しにくい,ごく例外的な場合なんだろうと考えます。
 そうすると,この部分が要るかどうかということと,この趣旨を入れるにしても,もう少し限定的な表現にすることも考えるべきでしょう。先ほど佐野会長から制限,禁止は合理的,必要な範囲というのが大前提だろうとお話があった。まさにそのとおりだと思うので,必要かつ合理的な制限を加えることができると,表現はいろいろ工夫が要るのかもしれませんが,そういうふうに,もう少し緩和した表現にした方が実情に合うし,将来的にもまた事態に即応できるんじゃないかなと考えております。
【土井氏】  それでは,私の方から申し上げます。全体として,よく御検討いただいていると思います。基本的に,この方向が適切ではないかと私も考えます。
 問題の基本は,18歳になった高校生たちを私たち大人の仲間に迎え入れること,これから仲間として一緒にやっていこうということにあるんだと思います。
 確かに大人になることは,重い責任を負うことではありますけれど,例えば,この通知の解釈,運用において,余りに厳格にし過ぎてぎくしゃくしてしまいますと,そんなに私たちを大人として迎えるのが嫌なのかと,かえって逆効果になってしまいますので,そのあたりは実施の段階で十分御配慮いただけるものだと思っております。
 その上で1点意見を申し上げますと,今,石津先生がおっしゃった点と同じ4ページ目の3ポツのところでございます。この放課後や休日等における学校外での政治的活動等につきましては,順序前後しますが,原則は(3)で,学校外で行われる選挙運動や政治的活動は,家庭の理解の下,生徒が判断し,行うものであるというのが原則です。その上で政治活動が違法なものであったり暴力的なものであったりする場合,あるいは本人や他の生徒の学業に支障が認められる場合等に適切な指導を行う,そういう構成になっているんだと思います。
 ただ,とりわけ国公立の高校の場合には,これらの支障が生じる危険を抽象的に判断してしまいますと,事前に学校外での政治的活動を一律に禁止してしまうことになりかねず,これはやっぱり少し問題がある場合が出てこようかと思います。
 したがって,例えば政治的活動に深く関わる余り学校を欠席しがちになっているとか,家庭での学習課題を行わなくなったりしているというような問題となる教育上の支障を具体的に御判断していただく必要がありますし,また,とるべき指導の内容も,一部の制限から禁止まで,それぞれの問題状況を踏まえて,弊害に対してバランスのあるものにしていただく必要があるんだと思います。
 ここでは学校に対して政治的活動の取締りを求めているわけでは決してなく,指導という言葉が用いられているのも,具体的な対応を想定していただいているからだろうと私は理解しています。
 他方,石津先生もおっしゃったように,とりわけ私立の学校につきましては最高裁の判決がございまして,建学の精神等々を配慮して,学校側が政治的活動を禁止・制限する措置を講ずることを認めております。そのあたりについては,やはり国公立あるいは私立という設置者の種別によっても対応が異なるところですので,どうしても通知においては,相当程度,幅を持たせる形で記載するほかはありません。しかし同時に,今申し上げたように学校の設置者の種別だとか,問題となる事案に応じた適切な対応を求めるものでなければならないというのが原則だと思います。
 原案は,「これを禁止することを含め」という文言が含まれていますので,読みようによっては,学校外での政治的活動を禁止することが一般的に認められるかのように受け止められるおそれもあります。これは本来の趣旨ではないと思いますので,その点,誤解が起きないように,少し表現の工夫等をしていただければと思います。
 以上です。
【坪田児童生徒課長】  ありがとうございました。
 その他いかがでしょうか。どうぞ,2回目の発言でも御自由に。田中先生,お願いします。
【田中氏】  簡単なことなんですけれども。この今回の新しい通達に対して,やっぱり政治家の方たち,メディアの方もそうかもしれないんですけれども,比較的関心が党派的な対立のところに行っているように思えるんですね。その政治家の方たちが注文をつけられる場合でも,これは我が党にとって不利ではないかとか,こういうことをする人が出てきたら,うちの党が困るんじゃないかという,何かそういう御心配がすごく多いように思っていまして。
 ただ,今,土井先生も,先生方皆さんがおっしゃっているとおり,今回のこの議論は,やっぱり18歳以上の若者に政治参加をしてもらう,参政権を与えるということで,政治というものをもっと真剣に考えてもらうというところにありますので,党派的対立が政治の本質だという物の見方,ステレオタイプの物の見方から我々,脱却しなければならないと思っていまして,何が政治の本質かということを教えることが大切だと思う。それはまさに政治というのは意思決定である,組織であれ,自治体であれ,国であれ,国際機関であれ,意思決定がまさに政治の本質であることを教えていただきたい。意見が違う方たちが党派を組むということはあるわけですけれども,その場合には,もう先生方もおっしゃっているように,互いの意見を尊重して議論をした上で調整するというのが民主主義のルールなわけですので,やっぱり大事なところは意思決定である。個々の人々の利益や利害を反映した形で意思決定する。それが政策になるわけですが,そのことが政治なんだということを,この若い人たちに理解してもらうところが大事なんだと思うんですね。
 現実の政治に携わっている方は,そんな悠長なことは言っていられないとお思いなんでしょうけれども,我々としては,やはり,その「政治の本質は意思決定だ」というメッセージは大事にしていただきたいなとは思っております。
【吉田会長】  すみません。このお話に関して私どもは何ら異論ないですけれども,ただ基本的には,高等学校までの教育の中で,今回のこの選挙制度によって,18歳以上と18歳未満という区別が初めてつきました。今までは本当に高校3年生ということであって,44年通達では定時制等で,もし成人していても,それは高等学校の教育の中でという,ごく一部の人ということになってきたわけですけれども,高校3年生の3月ということを考えれば,もう高校3年生全員が有権者になるわけです。
 ですから,そういう意味でも,今後,未成年者の成人年齢の問題とか,飲酒・喫煙の問題とかも含めて,何もこの18歳にこだわらないで,学校教育という日本で今まで,この6・3・3制というと,これを変えなくてはいけないのかもしれませんけれども,高等学校教育が順調に上がれば18歳で終わる。そういう中で,全てを18歳ということに持っていくだけでなく,例えば19歳にしていただくとか,若しくは修学年を1年早めるとか。そういう意味でも,もう少し学校教育の在り方というものも含めて御検討いただければと思っておりますので,それだけ付言させていただきます。
【坪田児童生徒課長】  林先生,お願いします。
【林氏】  先ほどの田中先生の意思決定するのがすごく大事だというのは,本当にまさにそのとおりだと思っていまして,学校教育の場でも,やっぱり子供たち,生徒自身が,どこまで意思決定することができるのかなと思っているんですね。先ほど生徒会活動という話をしましたが,私はやはり,すごく大事なことだなと受け止めています。そこの学校で生活している生徒たちが,自分たちはどう思っているのかをまとめていくということはすごく大事なことです。副読本も若干,その生徒会活動のことは書いてありますが,学校の中で,やはり生徒自身が自分たちの考えを述べて,参加をして,変えていく,又は新しいものを生み出していくということを,どこまで後押ししようとしているのか。教育という場での話は出てきているのですけれども,生徒会活動をより活発化させようとか,昔で言う自治活動みたいなものがという部分が,この文章で生徒会活動が逸脱するかどうかはともかくとして,何かそこで主義主張とかという言い方によって萎縮してしまわないようにしていただきたいなとは私は思っています。
 この夏休みに多くの高校生といろいろと会話をしていたんですけれども,「生徒会役員どうやって決まっているの」と質問すると,「いや,政策よりも物まねがうまい人で決まっちゃうよ」というような状況が現実としてありました。いや,だからこそ生徒会役員になっても何も変わらないでしょうというふうに,やはり,なっているわけです。学校の中での民主主義というものが,どこまで現実のものとして教えられているのか。結局,言っても変わらないんだったら,やっても仕方がないよねとか,AO入試とか分からないですけど,その入試のために生徒会役員になってポイント稼ぐみたいな,何か本末転倒なところがある中で,そういう意識は学校の中で,そうやって生徒自身が,本当に民主主義というものを感じられる場が作れているのかどうか。それを今回の主権者教育というところの中で,やはり,そこを意識させていかなければ意味がないと考えています。
 それはまた一方で,公立学校の中でも,そもそも職員会議は手を挙げてはいけないとか何とかって,大人の方の問題もいろいろとあるとは思うんですけれども,そこはもっと前向きにとらえて。これから社会を担っていく君たちが,もっと考えて,参加して,変えていかなくちゃいけないんだよというメッセージを発しながら,それを後押しするようなことを是非,文科省からも各教育委員会,学校現場の先生に言っていただきたいなと非常に思っています。
【坪田児童生徒課長】  ありがとうございます。
 ほか,いかがでしょう。宮本先生,今の全体の議論を踏まえて,学校としてございますか。
【宮本会長】  生徒会活動というのは,特別活動の中の一つで,それぞれ学校の状況によって随分変わってはいると思うのですけれども。その学校の構成員である生徒が自分たちの意見を述べるとか,どこまでできるかは別ですけれども,自治活動みたいなものを大事にしている学校は多いと思います。そういうことというのは,例えば今回,この副教材の中で,話合いとか,ディベートとか,あるいは身近な課題について学ぶとか,そういうことが進んでいけば活性化すると思います。身近ということでは,一番身近なのは自分の学校の中のことですから,当然そういうところにも目も向いてくると思うし,結果的には,回り回って,生徒会活動などが不活発な学校も活発になっていくのかなと思うし,指導の中で,そういうことも含めて,いろんなものに関心を持つという意識を育てていくということが進んでいけば,今,林先生がおっしゃっているような状況も改善されてくるのかなと思いますし,学校としても当然,これはこのことだけとして,切り分けて政治的教養を教えるということではありませんので。このことを通して,やはり,いろんなものに関心を子供たちが持つ。あるいは自分の意志をしっかり持って判断するという力を育てていく。これは,やはり政治的教養だけではなくて,本当にこれからの社会で求められる力ですから,そういうことにもつながっていくように,是非していきたいと思っています。
【坪田児童生徒課長】  ありがとうございました。お願いします。
【土井氏】  先ほど法的な話を少し申し上げましたけれども,法的な問題等を考えたりしますと,どうしても厳密に,こういう場合はどうするのかといったマニュアルを作っていただきたいと,現場がお思いになるのは,お気持ちとしては分かるんですけれども,それはなかなか難しく,やっぱり基本的な考え方が重要だと思うんです。
 生徒たちの政治的活動の自由に関する取扱いの部分は,やはり先ほども申し上げましたように,基本は教育の問題であって,学校に取締りを求めているわけではないというのが原則だと思います。なので,学校が高圧的に何かをする必要があるというのは,よほど暴力行為で誰かを害しようとしているといった事態の場合で,それ以外は,対話を通じて,いろいろと指導されるのが原則だとお考えいただくのが一番良いと思います。
 それでも,本当に危ない事態になっているというときには,今日も弁護士の先生がおられますけど,法律家に御相談になるなり,教育委員会に御相談になるなり,そういう形で対応されるのが,原則なんだろうと思います。
 あともう一つは,教育の中立性の問題ですけれども,基本は,ここの通知に出ていますけれど,具体的には先生方の自治というか,自律というか,教員相互間の中でコンセンサスを作っていかれながら,問題があれば互いに指摘をされて改善されていくのが原則だと思います。実際に身近にお互いを知っておられるのは先生方ですので,校長先生を中心に学校全体として,こういう方向できっちりやっていこうとお決めになって,積み重ねていかれるのが原則です。その上で,先生方が見られても,これは問題が多いということになれば,その次に法的問題になっていくということになります。最初から法的問題だとしてぴりぴりされると逆効果になりますから,そこのところは,今申し上げたような基本原則を前提にしてもらうのが,やはり大事ではないかと思います。
【石津氏】  土井先生がおっしゃるとおりだと私も思うんですね。学校内の問題なので,まさに教育の問題ですから,先生方が教育的にどう考えるのかというのが,まず出発点でしてね。
 その上で法的に,そこまでは駄目でしょうとか,それはできるでしょうという法的な判断になるわけで,まず教育の問題だろうと考えます。それは多分,通常はそうされているんじゃないかとは思いますけどね。
【坪田児童生徒課長】  そろそろ皆さん,頂いた時間も迫っているわけでございますけれども,いかがでしょうか。まだ残された論点や,特に御指摘などございましたらと思いますけども,よろしいでしょうか。
 それでは,どうでしょう。局長の方からお願いします。
【小松初等中等教育局長】  それでは,大体御意見等も頂きましたので,このあたりということになろうかと思うのでございますけれども,まず本日はいろいろな御意見を頂き,ありがとうございました。教育に関する行政通知の特色でございますけれども,一つのある事柄の取扱いに限定して,この通知に関わる全てのことが論じられるわけではなくて,特に最後の方に出ましたように,教育の在り方とか,それから学校現場でそれぞれどうお考えになるかということと,あるいはこの公選法の改正以外の全体の教育の実施の仕方と密接に絡むことでございます。
 そのことを受け止めて,様々頂いた御意見をきちっと反映するようにいたしたいと思います。これが1点でございます。
 もう1点は,お話伺っておりまして,行政通知には幾つかの特色とか,限界とか,そういったものも正直言ってございます。非常にオールマイティーのように受け取られると,おっしゃるとおり,誤解や必要のない萎縮とか,そういったことにつながるという点もございます。その点について少し申し上げますと,まず私どもの行政は法令,一方で教育基本法や学校教育法,あるいはそれに基づく学習指導要領というものにきっちりとのっとって行われる,そのためにはどうしたらいいかということを示さなければいけませんので,一般的な教育論ではなくて,具体的にある法令をどのように運用していくかの留意点みたいなものを述べるという世界となります。
 もう一方で,今回は公選法等に基づく変化への対応ということでございますので,この公選法などの世界では教育法規とは別途,政治に関してどういうふうに法的に位置付けるかということがありますので,学校といえども,それには従わなければいけない。そうすると,その部分についての留意点みたいなものは,できるだけ整理して,関係省庁ともしっかり連携をして,お示しをしないと,逆に学校の方で危なくてできないということも起こりますので,そういった公選法等の世界。こういった幾つかの法体系の間で,留意点等を示すということが行政通知の機能かと思いますので,そういった観点で整理をしたいと思っております。
 そのことに関連をいたしまして,本日の御意見でも出て,非常によく分かりますのは,片方で一律に何か示したりすると,どうしてもそこに目が行って,それが過剰に働いて,制限的に働くおそれがあると。それは本末転倒になる。この点は心しなければいけないと思います。
 他方で,本日でも,やはり中にありましたように,これだけではなかなか不安も,初めてであるので,もう少し細かく具体的に示せる余地はないかという御希望もたくさんあるわけでございます。
 この2つは,うまく調整しながら対応していかなきゃいけない。このためには通知で全てを解決したり,全てを明らかにしたりすることはできなくて,今日盛んに御意見を頂きましたように,通知のほかにも説明会とか,Q&Aを考えるとか,そういったことを組み合わせて,今回の法改正の趣旨が積極的に生きるような形へ持っていく必要があるだろうと考えます。
 それから,これも終わりの方で出てきた御意見でございますが,法規によれば,教育課程の編成者はそれぞれの学校であり編成の際のナショナル・ミニマム・スタンダードを定めたりすることが国の機能でありまして,その教育課程や指導計画というものを作っていくのは学校でございます。それが校長先生のリーダーシップの下に責任を持って行われるということでございます。
 学校が考えていく上でのよすがとして通知が扱われるということが必要だと思いますので,こういった点について誤解がないように,また私どもとしても,よくメッセージを出していきたいと思います。
 それから,これも今日の御意見の中でございましたが,学校だけで,これら全て行われるわけではなくて,家庭,地域,あるいは地域を超えた社会,マスメディアの皆様なんかも関係するかもしれませんが,そういったものとの連携の中で,学校が責任を果たしていくということが必要でございます。その責任範囲や,その限界も常に考えながら行動しなければならないというのが,現実の学校の皆さんのお立場でございます。
 そういった中では,やや漠然とした概念かもしれませんが,社会通念や,いわゆるコモンセンスといったものも求められてくるかと思います。これを踏まえて,先ほどの教材,指導資料,説明会,このあたりを組み合わせて,私ども対応していかなければいけないと思います。Q&Aなども考えますが,Q&Aなども余り細かく示せば,これまた通知以外の参考資料であるにもかかわらず,それが全部,金科玉条になっては現場が動けないと思います。しかし,個別の事案で,これは明らかに知識として知っておいた方がいいというものがあれば,それは事例に即してきちっと言う必要がある。このあたりを組み合わせて,私ども対応していかなければいけないと思います。
 通知につきましては,その位置付けを考えながら,本日頂いた御意見を基に,最終的に責任を持って確定をしていきたいと思いますけれども,その後の政治的教養の充実等につきましては,この通知に限らず,いろいろ御意見や御指導や,あるいはこんなことがあるぞというお教えを賜って取り組んでまいりたいと思いますので,引き続き,どうぞよろしくお願いを申し上げます。
 どうもありがとうございました。
【坪田児童生徒課長】  それでは,これをもちまして,本日のヒアリングを終了いたします。
 御多用中,御出席いただき,長時間どうもありがとうございました。

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課

03-5253-4111(内線3054)