資料1 学校図書館の整備充実に関する審議のまとめ(素案)

< 目次 >

はじめに


1. 学校図書館に関する基本的な考え方について


2. 学校図書館の現状と課題、改善の方向性について


3. 学校図書館のガイドライン(仮称)について


4. 学校司書の資格・養成の在り方について


5. 今後求められる取組について


はじめに

 学校図書館について近年様々な制度改正や施策が展開されており、その充実に向けた取組が行われている。

 平成9年の学校図書館法の一部改正により、平成15年4月から12学級以上の学校に司書教諭が必置されることになるとともに、平成13年には子どもの読書活動の推進に関する法律が、平成17年には文字・活字文化振興法がそれぞれ成立した。
  また、平成24年度からは、第4次学校図書館図書整備5か年計画として、学校図書館の図書整備に必要な経費について、単年度約200億円、総額約1,000億円、学校図書館への新聞配備に要する経費について、単年度約15億円、総額約75億円の地方財政措置が講じられるとともに、学校司書の配置に係る経費についても、平成24年度以降、毎年度約150億円の地方財政措置が講じられている。
さらには、平成26年に学校図書館法の一部改正が行われ、専ら学校図書館の職務に従事する職員として、学校司書の法制化がなされるとともに、学校司書への研修等の実施について規定された。加えて、附則第2項において、「国は、学校司書の職務の内容が専門的知識及び技能を必要とするものであることに鑑み、・・・(略)・・・学校司書としての資格の在り方、その養成の在り方等について検討を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」と規定された。

 また、学校図書館に求められる役割として、近年では、読書活動の推進のために利活用されることに加え、調べ学習やNIE(Newspaper in Education)、また、各教科等の様々な授業で活用されることにより、学校における言語活動や探究活動の場となり、「アクティブ・ラーニング」を支援していく役割が一層期待されている。

 これらを踏まえ、本協力者会議は、学校図書館の運営に係る基本的な視点や、学校司書の資格・養成等の在り方について一定の指針を得るために、平成27年6月に設置され、これまで関係団体等からのヒアリングを実施するなど、○回にわたり議論を重ねてきた。また、平成28年5月には学校司書の資格・養成等の在り方について審議を深めるため、本協力者会議の下に「学校司書の資格・養成等に関する作業部会」を設置し、審議を行った。

 今後、本報告により、教育委員会や大学、学校をはじめ学校図書館関係者の間で、望ましい学校図書館の在り方の共通理解が図られ、学校図書館の整備充実が一層推進されることを期待したい。


1. 学校図書館に関する基本的な考え方について

○ 学校図書館は、学校図書館法(昭和28年法律第185号)において、学校教育において欠くことのできない基礎的な設備であり(第1条)、その目的は、学校の教育課程の展開に寄与するとともに児童生徒の健全な教養を育成すること(第2条)とされ、学校に設けなければならない(第3条)とされている。

○ また、学校教育法においては、義務教育の目標として読書に親しませること(第21条第5号)が規定されているとともに、いわゆる学力の三要素として、基礎的な知識及び技能の習得、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力の育成、主体的に学習に取り組む態度の養成(第30条第2項等)が規定されており、学校図書館は読書を通した豊かな心の育成とともに、確かな学力の育成の基盤となる重要な機能を有している。

○ このように、学校図書館が育てる力は、児童生徒の「生きる力」の育成に資するものであり、さらには、生涯にわたる学習の基盤形成につながるものである。

○ さらに、学校図書館法においては、学校図書館が児童生徒や教員の利用に供するものであることが明示された上で、その方法として、以下の例が挙げられている(第4条第1項)。
・ 図書館資料を収集し、児童生徒及び教員の利用に供すること。
・ 図書館資料の分類排列を適切にし、及びその目録を整備すること。
・ 読書会、研究会、鑑賞会、映写会、資料展示会等を行うこと。
・ 図書館資料の利用その他学校図書館の利用に関し、児童生徒に対し指導を行うこと。
・ 他の学校の学校図書館、図書館、博物館、公民館等と緊密に連絡し、及び協力すること。

○ 学校は、これらの方法を講じることで、学校図書館に期待されている、児童生徒の想像力を培い、学習に対する興味・関心等を呼び起こし、豊かな心や人間性、教養、創造力等を育む自由な読書活動や読書指導の場である「読書センター」としての機能と、児童生徒の自発的・主体的・協働的な学習活動を支援したり、授業の内容を豊かにしてその理解を深めたりするとともに、児童生徒や教職員の情報ニーズに対応したり、児童生徒の情報の収集・選択・活用能力を育成したりする「学習センター」及び「情報センター」としての機能を、学校図書館が最大限に発揮できるようにすることが重要である。

○ また、現在、中央教育審議会において次期学習指導要領に向けた審議が行われており、その「論点整理」(注1) において、児童生徒が「どのように学ぶか」について、主体的・対話的な深い学びという「アクティブ・ラーニング」の3つの視点からの学習・指導方法の改善が求められている。学校図書館の図書館資料等を有効に利活用することは、問題発見・解決のために必要な資料・情報の収集・提供・選択等を通じて、授業内容を深め、児童生徒の理解をより豊かにするものであり、アクティブ・ラーニングの視点からも重要である。

○ さらに、今後一層進展する情報化社会においては、学校図書館における従来の利用指導をさらに進め、学校図書館の活用を通した情報活用能力の育成が求められている。学校図書館の活用を通じて、適切かつ主体的に情報を活用する能力とともに、推論する力や課題解決能力などの教科横断的で基盤的な力を育成することが期待されている。

○ このような学校図書館の機能を最大限に発揮できるようにするためには、学校図書館の運営に当たる専門的人材の配置やその資質能力の向上を図るとともに、学校図書館における図書館資料の充実の双方を図ることが極めて重要である。

○ また、義務教育を行う学校である小・中学校等はもとより、いまや98%の進学率となった高等学校や特別支援学校における学校図書館の整備充実も重要な課題である。


2. 学校図書館の現状と課題、改善の方向性について

(1)現状と課題

○ 学校図書館の利活用の状況は、日常的に学校図書館を活用している学校や地域もある一方で、学校図書館の活用が十分でない学校や地域もあるなど、学校間、地域間の格差が大きい。

○ 学校図書館の運営にあたる人材の面では、学校図書館が十分にその機能を発揮するために、司書教諭と学校司書が、それぞれに求められる役割・職務(注5)に基づき、連携・協力を特に密にしつつ、協働して管理運営にあたることが重要である。

○ 学校司書については、近年、各地方公共団体等において配置の充実が進められてきている。学校司書を配置する小学校は、平成18年度から26年度までの8年間で32.9%から54.4%へ、中学校でも35.2%から53.1%へとそれぞれ増加 (注2)しており、厳しい財政状況の中でもその必要性が強く認識されていることがうかがえる。

○ 平成26年5月現在、全国の小・中・高等学校における学校司書の人数は約2万人以上に上っており、これは今後も増加していくことが見込まれるが、学校司書が保有する資格や知識・技能等の状況はそれぞれ異なっており、改正学校図書館法の附則を踏まえ、学校司書の資格・養成等の在り方についての検討と専門的知識・技能等の水準の確保に向けた取組が必要である。

○ 図書館資料の面では、学校図書館図書標準の達成学校数の割合は増加したものの、依然として図書標準を達成している学校の割合は小学校で60.3%、中学校で50.0%(注3) にとどまっている。また、社会状況の変化や学問の進展により利用価値が低下した図書がそのまま置かれていたりする状況も一部にあり、適切な廃棄・更新を行うことが必要である。

○ さらに、これからの学校教育を考えた際、「アクティブ・ラーニング」の視点からの不断の授業改善のほか、小学校における英語教育、特別支援教育や外国人児童生徒に対する対応、主権者教育の推進など、学校教育への新たなニーズに図書館資料の観点からも応える必要がある。

○ 学校図書館における新聞の配備状況(注4) については、配備している学校の割合は、平成22年度から26年度までの4年間で16.9%から36.7%へ、中学校でも14.5%から31.8%へとそれぞれ増加しており、高等学校では90.0%で横ばいである。新聞の数については平均で、小学校では1.3紙、中学校では1.7紙、高等学校では2.8紙となっている(平成26年度現在)。

(2)改善の方向性

○ 上述のとおり、学校図書館は学校教育にとって非常に重要な機能を担っており、全国的な教育水準の維持・向上に向けて、学校図書館がその機能を十分に発揮できるよう、改善を図っていく必要がある。このため、本調査研究協力者会議では、以下の3つの取組みを行うべきであると考える。

1 本調査研究協力者会議では、図書館資料の整備の在り方や学校司書となる要件等、学校図書館の運営上の重要な事項について、教育委員会や学校等にとって参考となるよう、「学校図書館のガイドライン(仮称)」を定めることが必要であると考え、本ガイドラインの作成に向けた検討を行い、その結果を3.としてとりまとめる。

2 改正学校図書館法の附則を踏まえ、学校司書の職務の内容が専門的知識及び技能を必要とするものであることに鑑み、「学校司書の資格・養成等の在り方に関する作業部会」の検討を踏まえ、その結果を4.としてとりまとめる。

3 さらに、今後、国、教育委員会等において、学校図書館の充実に向けた一層の取組を求める必要があると考えており、このような今後求められる取組について、5.としてとりまとめる。


3. 学校図書館のガイドライン(仮称)について

○ 学校図書館の基準については、昭和34年に文部省(当時)が定めた「学校図書館基準」があった。時代の進展や状況の変化を踏まえ、今般、学校図書館の整備充実を図るため、学校図書館の運営上の重要な事項について、教育委員会や学校等にとって参考となるよう、学校図書館のガイドライン(仮称)を定める必要がある。同ガイドラインは以下の構成とする。


(1)学校図書館の目的・機能
(2)学校図書館の運営
(3)学校図書館の利活用
(4)学校図書館に携わる教職員等
(5)学校図書館における図書館資料
(6)学校図書館の施設
(7)学校図書館の評価


(1)学校図書館の目的・機能

○ 学校図書館は、学校図書館法に規定されているように、学校教育において欠くことのできない基礎的な設備であり、図書館資料を収集・整理・保存し、児童生徒及び教職員の利用に供することによって、学校の教育課程の展開に寄与するとともに児童生徒の健全な教養を育成することを目的としている。

○ 学校図書館は、児童生徒の読書活動や児童生徒への読書指導の場である「読書センター」としての機能と、児童生徒の学習活動を支援したり、授業の内容を豊かにしてその理解を深めたりするとともに、児童生徒や教職員の情報ニーズに対応したり、児童生徒の情報の収集・選択・活用能力を育成したりする「学習センター」及び「情報センター」としての機能を有している。

(2)学校図書館の運営

○ 校長は学校図書館の館長としての役割も担っており、校長のリーダーシップの下、学校は学校種、規模、児童生徒や地域の特性なども踏まえ、学校図書館の運営計画を定めることが望ましい。学校図書館の運営は、同計画等に基づき、教職員の連携の下、計画的・組織的になされることが望ましい。例えば、教育委員会が校長を学校図書館の館長として指名することも考えられる。

○ 学校は、必要に応じて、学校図書館に関する校内組織等を設けて、学校図書館の円滑な運営を図ることが望ましい。

○ 学校図書館は、可能な限り教職員や児童生徒が最大限自由に利活用できるよう、また、学級になじめない子供の居場所となりうること等も踏まえ、児童生徒の登校時から下校時までの開館に努めることが望ましい。また、長期休業日等にも学校図書館を開館し、児童生徒に読書や学習の場を提供することも有効である。

○ 学校図書館は、他の学校の学校図書館、公共図書館(学校図書館支援センターを含む)、博物館、公民館等の密接に連携を図り、協力することが望ましい。

(3)学校図書館の利活用

○ 学校図書館は、児童生徒が興味・関心等に応じて、自発的・主体的に読書を行う場であることが望ましい。このため、学校図書館は、児童生徒が落ち着いて読書を行うことができる、安らぎのある環境に整えておくことが望ましい。

○ 学校は、学習指導要領等を踏まえ、各教科等において、学校図書館を計画的に利活用し、児童生徒の主体的・意欲的な学習活動や読書活動を充実することが必要である。その際、各教科等を横断的に捉え、学校図書館の利活用を基にした情報活用能力を学校全体として計画的かつ体系的に指導することが望ましい。

○ 学校図書館は、児童生徒の家庭など学校外での読書活動を支援するため、図書等の館外貸出を積極的に行うことが望ましい。

(4)学校図書館に携わる教職員等

○ 学校図書館の運営に関わる主な教職員としては、校長等の管理職、司書教諭や一般の教員(教諭等)、学校司書等がおり、学校図書館がその機能を十分に発揮するためには、各者がそれぞれの立場で求められている役割を果たした上で、互いに連携・協力し、組織的に取り組むことが重要である。

○ 校長は、学校教育における学校図書館の積極的な利活用に関して学校経営方針・計画に盛り込み、その方針を教職員に対し明示することや、学校図書館の運営・活用・評価に関してリーダーシップを強く発揮することが期待される。

○ 学校図書館がその機能を十分に発揮するためには、司書教諭と学校司書が、それぞれに求められる役割・職務 に基づき、連携・協力を特に密にしつつ、協働して学校図書館の運営にあたることが重要である。具体的な職務分担については、各学校におけるそれぞれの配置状況等の実情や学校全体の校務のバランス等を考慮した柔軟な対応も必要となる。

○ 司書教諭は、学校図書館の専門的職務をつかさどり、学校図書館の運営に関する総括、学校経営方針・計画等に基づいた学校図書館を活用した教育活動の企画・実施、年間読書指導計画・年間情報活用指導計画の立案等に従事する。また、司書教諭は、学校図書館を活用した授業を実践するとともに、学校図書館を活用した授業における教育指導法や情報活用能力の育成等について積極的に他の教員に助言することが期待される。

○ 学校司書は、学校図書館を運営していくために必要な専門的・技術的職務に従事するとともに、学校図書館を活用した授業やその他の教育活動を司書教諭や教員と共に進める。具体的には1 児童生徒や教員に対する「間接的支援」に関する職務、2 児童生徒や教員に対する「直接的支援」に関する職務、3 教育目標を達成するための「教育指導への支援」に関する職務という3つの観点に分けられる。

○  また、学校司書がその役割を果たすとともに、学校図書館の利活用が教育課程の展開に寄与するかたちで進むようにするためには、学校司書が職員会議等に参加し、学校の教育活動全体の状況も把握した上で職務に当たることも有効である。

○ また、学校や地域の状況も踏まえ、地域のボランティアの方々の協力を得て、学校図書館の支援を行ってもらうことも有効である。

(5)学校図書館における図書館資料

1 図書館資料の種類

○ 学校図書館の図書館資料には、図書、雑誌、新聞、視聴覚資料(CD、DVD等)、電子資料(CD-ROM、ネットワーク情報資源(ネットワークを介して得られる情報コンテンツ)等)等が含まれる。

○ 学校図書館が「読書センター」、「学習センター」、「情報センター」としての機能を発揮できるよう、学校図書館の図書館資料は、児童生徒の発達段階等を踏まえ、教育課程の展開に寄与するとともに、児童生徒の健全な教養の育成に資する資料構成とすることが望ましい。

○ 選挙権年齢の引下げ等(注6) に伴い、児童生徒が現実社会の諸課題について多面的・多角的に考察し、公正に判断する力等を身につけることが一層重要になっており、このような観点から、新聞を教育に活用するために複数紙の配備が必要である。

○ 小学校英語を含め、とりわけ外国語教育においては特に音声等の教材に、理科等の他の教科においては動画等の教材に学習上の効果が見込まれることから、教育課程の展開に寄与するデジタル教材を図書館資料として充実することが必要である。

○ 障害のある児童生徒の自立や社会参画に向けた主体的な取組を支援する特別支援教育の観点から、在籍する児童生徒の状況に応じた様々な形態の図書館資料を充実することも必要である。


2 図書館資料の選定・提供

○ 図書館資料の選定が適切に行われるよう、各学校において、明文化された選定の基準を定めるとともに、基準に沿った選定を組織的・計画的に行うことが望ましい。

○ また、図書館資料の選定等は学校の教育活動の一部として行われるものであり、基準に沿った図書選定を行うための校内組織を整備し、学校組織として選定等を行うことが望ましい。

○ 教育課程の展開に寄与するという観点から、文学(読み物)ばかりではなく、自然科学や社会科学等の分野の図書館資料の割合を高めるなど、児童生徒及び教職員のニーズに応じた偏りのない調和のとれた蔵書構成となるよう選定することが望ましい。

○ 学校図書館は、必要に応じて、公共図書館(学校図書館支援センターを含む)や他の学校の学校図書館から相互貸借を行うとともに、インターネット等も活用して資料を収集・提供するも有効である。


3 図書館資料の整理・配架

○ 図書館資料は、児童生徒及び教職員がこれを有効に利活用できるように原則として日本十進分類法(NDC)により整理し、開架式により、配架することが望ましい。

○ 図書館資料の整理のために、目録を整備し、蔵書のデータベース化を図り、貸出・返却手続き及び統計作業等を迅速に行えるようにすることが望ましい。また、地域内の学校図書館において同一のシステムを導入し、ネットワーク化を図ることが望ましい。

○ 館内のサインや書架の見出しを設置するなど、児童生徒が自ら資料を探すことができるように配慮・工夫することや、季節や学習内容に応じた掲示・展示やコーナーの設定などにより、児童生徒の読書意欲の喚起、調べ学習や探求的な学習に資するように配慮・工夫することなども有効である。また、学校図書館に、模型や実物、児童生徒の作品等の学習成果物を掲示することも有効である。

○ また、児童生徒が気軽に読書活動できるよう、各学級に図書館資料の一部を学級文庫として設置することも有効である。なお、学級文庫の図書も学校図書館の図書館資料に含まれるものであり、学校図書館運営の一環として管理することが望ましい。

4 図書館資料の廃棄・更新

○ 学校図書館には、刊行後時間の経過とともに誤った情報を提供することが明白になった図書や、汚損や破損により修理が不可能となり利用できなくなった図書等が配架されている例もあるが、児童生徒にとっては最新の正しい知識に触れる環境が適切である。

○ このため、図書館資料の廃棄と更新が適切に行われるよう、各学校等において、明文化された廃棄の基準を定めるとともに、基準に沿った廃棄・更新を組織的・計画的に行うことが望ましい。

○ なお、廃棄と更新を進めるに当たって、貴重な資料が失われないようにするために、学校図書館での利用・保存が困難な貴重な資料については、公共図書館に移管することも考えられる。


(6)学校図書館の施設

○ 文部科学省では、学校施設について、学校教育を進める上で必要な施設機能を確保するために、計画及び設計における留意事項を学校種ごとに「学校施設整備指針」 (注7)として示している。この学校施設整備指針において、学校図書館の施設についても定められており、学校図書館の施設については、学校施設整備指針に沿って整備されることが望ましい。




【参考】小学校施設整備指針(抜粋)
第1章 総則
第2節 学校施設整備の課題への対応
第1 子供たちの主体的な活動を支援する施設整備
2 情報環境の充実
(1) 児童の主体的な活動及び自らの意志で学ぶことを支え、高度情報通信ネットワーク社会において生きる力を育てる教育環境の整備や、校務情報化の推進に資するため、校内の情報ネットワークの整備やコンピュータ、プロジェクタ等の情報機器の導入への対応について、積極的に計画することが重要である。
第2 安全でゆとりと潤いのある施設整備
5 施設のバリアフリー対応
(1) 障害のある児童、教職員等が安全かつ円滑に学校生活を送ることができるように、障害の状態や特性、ニーズに応じた計画とすることが重要である。その際、スロープ、手すり、便所、出入口、エレベーター等の計画に配慮することが重要である。

第3章 平面計画
8 図書室
(1) 利用する集団の規模等に対して十分な広さの空間を確保するとともに、各教科における学習活動等において効果的に活用することができるよう普通教室等からの利用のしやすさを考慮しつつ、児童の活動範囲の中心的な位置に計画することが重要である。
(2) 図書、コンピュータ、視聴覚教育メディアその他学習に必要な教材等を配備した学習・メディアセンターとして計画することも有効である。
(3) 学習・研究成果の展示のできる空間を計画することも有効である。

第4章 各室計画
15 図書室
(1) 多様な学習活動に対応することができるよう面積、形状等を計画することが重要である。
(2) 1学級相当以上の机及び椅子を配置し、かつ、児童数等に応じた図書室用の家具等を利用しやすいよう配列することのできる面積、形状等とすることが重要である。
(3) 児童の様々な学習を支援する学習センター的な機能、必要な情報を収集・選択・活用し、その能力を育成する情報センター的な機能、学校における心のオアシスとなり、日々の生活の中で児童がくつろぎ、自発的に読書を楽しむ読書センター的な機能について計画することが重要である。
(4) 司書教諭、図書委員等が図書その他の資料の整理、修理等を行うための空間を確保することが望ましい。
(5) 資料の展示、掲示等のための設備を設けることのできる空間を確保することも有効である。
(6) 図書を分散して配置する場合は、役割分担を明確にし、相互の連携に十分留意して計画することが重要である。



(7)学校図書館の評価

○ 学校図書館の運営の改善のため、学校図書館の評価を組織的に行い、評価結果に基づき、PDCAサイクルの中で運営の改善を図ることが望ましい。また、評価にあたっては、学校運営協議会(コミュニティ・スクール)の活用等、外部の視点を入れるとともに、評価結果は公表に努めることも重要である。

○ 評価は、図書館資料の状況(蔵書冊数、更新状況等)、学校図書館の利活用の状況(授業での活用状況、開館状況等)、児童生徒の状況(利用状況、貸出冊数、読書に対する関心・意欲・態度等)について行われることが望ましい。評価にあたっては、アウトプット(学校目線の成果)・アウトカム(児童生徒目線の成果) (注8)の観点から行うことが望ましい。


4. 学校司書の資格・養成の在り方について

○ 本項目については、「学校司書の資格・養成等の在り方に関する作業部会」において検討中である。


5.  今後求められる取組について

(1) 国に求められる取組

○ 国においては、全国的な教育水準の確保のために都道府県教育委員会等に必要な指導・助言を行う立場から、学校図書館の充実についての役割を担っていくことが求められる。特に、3. で述べたように、「学校図書館のガイドライン(仮称)」を定めることが必要である。

○ また、文部科学省において、都道府県・指定都市教育委員会の学校図書館担当指導主事を対象に、学校図書館のガイドライン(仮称)の普及に向けて、国の施策の説明、優れた取組に関する情報提供、研究協議等を行う連絡協議会を企画・実施することが期待される。

○ 文部科学省においては、都道府県・指定都市教育委員会の学校図書館担当指導主事や司書教諭、学校司書等がその職務を担う際に、参考となるよう、学校図書館に関する研修資料等を作成することも期待される。

(2)教育委員会等に求められる取組
○ 教育委員会において、今後定められる「学校図書館のガイドライン(仮称)」を踏まえ、学校図書館の充実に向けた施策を推進することが期待される。特に、図書館資料の面では、学校図書標準を達成していない学校への達成に向けた支援や、廃棄・更新についての支援等が重要である。

○ また、教育委員会においては、学校図書館法における司書教諭の配置に関する規定を踏まえ、12学級以上の学校に必ず司書教諭を配置することはもちろん、司書教諭が学校図書館に関する業務により専念できるよう、担当授業時間数の軽減も含めた校務分掌上の工夫に取り組むとともに、11学級以下の学校における配置の推進にも積極的に取り組むことが望まれる。

○ 学校司書の配置については、職務が十分に果たせるよう、その充実に向けた取組とともに、学校司書の職務の特性から、継続的な勤務に基づく知識や経験の蓄積が求められることを踏まえ、その配置や支援を継続して行うことが期待される。

○ さらに、教育委員会においては、司書教諭、学校司書を対象とした研修を実施するなど、その資質能力の向上を図ることが求められる。また、校長等の管理職を対象として、学校図書館の重要性等について、理解を促進することが求められる。

○ 近年、公共図書館を学校図書館支援センターとして位置づける事例もあり、学校図書館と公共図書館等との連携・協力により、公共図書館資料の学校への貸出、公共図書館司書等による学校への訪問、学校図書館におけるレファレンスサービス等への協力等を進めていくことも、学校図書館の機能の向上に役立つと考えられる。
○ また、地方公共団体によっては、学校司書を配置する方策として、公共図書館や民間業者から職員を派遣している事例もある。学校図書館法に規定されている学校司書として想定されている者は、学校設置者が雇用する職員である。教職員が校長の指揮監督下で勤務するのに対して、派遣職員は公共図書館長あるいは派遣会社代表者の指揮監督下で勤務している。派遣職員が学校図書館に適切に携わるためには契約内容を十分に検討し、学校等との事前の協議・調整等が十分に行われることが重要である。

○ なお、上記の内容は主に公立学校を念頭に置いたものとなっているが、国私立学校においても、それぞれの設置者で取り組むことや教育委員会における取組と連携・協力すること等により、その学校図書館の充実に取り組むことが求められる。



(注1)中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会教育課程企画特別部会 論点整理(平成27年8月26日)
(注2)「学校図書館の現状に関する調査」(文部科学省)
(注3)「学校図書館の現状に関する調査」(文部科学省)平成25年度末現在、公立学校。
(注4)「学校図書館の現状に関する調査」(文部科学省)、公立学校。
(注5)司書教諭と学校司書の職務や役割分担については、文部科学省調査研究協力者会議の「これからの学校図書館担当職員に求められる役割・職務及びその資質能力の向上方策等について」(報告)平成26年3月を参照。
(注6)平成27年に公職選挙法等の一部改正が行われ、選挙権年齢が引下げられた。
(注7)直近では、義務教育学校制度の創設や学校施設と他の公共施設等との複合化に取り組む地方公共団体の増加など近年の社会変化に対応するため、「学校施設の在り方に関する調査研究協力者会議」における検討を踏まえ、全ての校種の学校施設整備指針が平成28年3月に改訂されている。
(注8)[評価項目の例]
(アウトプット)学校図書館を活用した授業の実施状況、学校図書館の開館状況、図書の貸出冊数等
(アウトカム)読書習慣の確立(不読率の低下、読書が好きな児童生徒の増加、学校図書館の利用者数)等

お問合せ先

文部科学省初等中等教育局児童生徒課

(文部科学省初等中等教育局児童生徒課)