全日本中学校長会配付資料

平成28年3月10日

学校図書館有識者会議団体ヒアリング資料

全日本中学校長会長
伊藤 俊典

学校図書館整備等に関する意見・要望等


1.学校図書館の整備について

1.平成28年度までとなっている図書館整備5か年計画(蔵書200億円、新聞15億円等の地方財政措置)について、しっかりと次期計画についても確保・充実させること

《理由》
学校図書の充実につながることであり、重要である。ただし、第3次整備計画(平成19~23年度)と第4次整備計画(平成24~28年度)は同じ予算であり、次期学習指導要領で示されるであろう「主体的・能動的な学習の充実」を考えると、学校図書充実のためさらなる予算の確保が必要と思う。
また、「学校図書館図書標準」達成率は年々上昇しているものの、達成している公立学校の割合は小学校60.3%、中学校50.8%である。さらなる学校図書の充実が必要である。
措置された予算が学校図書予算として適正に処理されることが大切である。


2.現在、同計画においては、新聞配備1紙分が確保されている。今後には、政治的教養(いわゆる「主権者教育」)を育む教育を推進するため、多様な意見に触れる機会を確保できるよう複数紙の配備が望ましいことから、そのための財政措置の充実等を検討すること

《理由》
選挙権が18歳に引き下げられたことにより「主権者教育の充実」が求められている。新聞1紙の配備では比較・検討することが難しく、偏った情報を得ることになりかねない。複数紙の配備、そのための予算措置が必要である。


3.図書標準を満たす学校が増加してきている一方で、学校図書館資料について、ある学校図書館では例えば古い百科事典などが存置され続けてしまっている事情があることに懸念。
資料の新鮮さを保つためには、資料を廃棄するための基準を各学校現場が備えることも重要。学校現場でも検討するが、国でも参考となるものが示されたい。

《理由》
廃棄規準については各学校に任されているところである。各学校では全国学校図書館協議会等の「廃棄規準」を参考に廃棄しているのが現状である。このような「廃棄規準」を参考に、各学校で廃棄規準を作成することが必要である。そのためには文部科学省からも、参考として「廃棄規準」を示すことが必要と考える。
予算で百科事典等が確実に買えるという見通しがあれば廃棄もできるが、十分な予算がなければ廃棄することができず、古いものを使用せざるを得ないのも現状である。百科事典等は、高価なものなので各学校の図書予算に占める割合が高く、百科事典を買うことにより他の一般図書が買えなくなることも考えられ、廃棄できないという現状もある。新たに購入する予算措置が必要である。

2..司書教諭について

1.学校図書館法上、司書教諭について、「学校には、学校図書館の専門的職務を掌らせるため、司書教諭を置かなければならない。」とされていることを考えると、司書教諭が学校図書館の活用の中心となることを考え方の基本にすえる必要があること

《理由》
学級担任、教科指導など一般の教諭と同じ職務を行いながら司書教諭として学校図書館の運営等にあたっているのが現状である。また、校内の事情により、校務分掌で図書担当につけなかったり、生徒会図書委員会の指導にあたれなかったりする現状もある。教科持ち時数の軽減をする、司書教諭は必ず図書業務に当たるなど、各学校で司書教諭が機能するような環境を整えることが必要である。
司書教諭の授業時間数を12時間程度とするなど、校内で図書館教育の活動ができるような体制を整備する必要がある。現状は、何も配慮がないので、実質は司書教諭の仕事はできていない。


2.司書教諭の養成が着実になされるよう、国は引き続き支援を行うこと

《理由》
学校図書館の重要性を考えると、教職課程の中に司書教諭資格を位置付け、教員免許取得の必須単位とするなども検討するべきである。

3.学校司書の資格の在り方、養成の在り方について

1.あくまで教育は教員が担うものであることや、学校司書には、教育や児童生徒の理解(特別支援教育や生徒指導含む)が不可欠であり、資格の検討でもこのことを踏まえること

《理由》
児童生徒にとっては、授業で接する職員は全て先生である。児童生徒の発達や教育目標、学校教育の意義や目標、学習指導要領の内容などは学校に勤務する以上は最低限理解しておくことが必要である。しかし、教員が学校司書に授業を丸投げしたり、学校図書館運営を任せきりにしたり、ということがないように学校司書の役割を明確にしておく必要がある。


2.学校司書の配置は、地方教育行政の現場が主導してきた経緯があることから、実情を踏まえた対応が望ましいこと

《理由》
各自治体により学校司書の配置に差があるのが現状である。「学校図書館支援員」などの名称で、非常勤職員として学校司書に準ずる職務を行っている自治体もある。また、ボランティアを募り、学校図書館運営を行っている学校もある。それぞれの自治体で工夫しているところであり、学校司書配置については各自治体の実情を踏まえた配置、対応が必要と考える。「チーム学校」の一員として、位置付けてほしい。


3.学校司書の資質については資格だけでなく研修もトータルで考えることが重要。地方教育行政の現場が資格と研修の組合せを総合的に考えていけるよう、自治体の取組を尊重すべきこと

《理由》
資格を取得するだけでなく、継続した体系的な研修が必要である。各自治体が資格と研修をトータルで考え、地域の実情にあった研修を工夫するべきである。

4.その他

図書館資料の選定については、学校が組織的・計画的に対応すべきであり、その点を明確にされたい。

《理由》
学校司書の専門性を高めることは重要であるが、一方、図書館資料の選定等は、学校教育活動の一部として行われるものであり、学校司書等だけで判断すべき事項ではない。学校司書の専門性を高める取組は推進しつつも、図書館資料の選定等はこれまでどおり、学校組織として行っていくことが必要であると考える。
この観点からは、学校現場としても、選定基準の明文化や校内組織の明確化に努めていく。こうした取組については誤解が生まれないよう検討を進めていただきたい。


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初等中等教育局児童生徒課