○ 学校司書の職務の内容は専門的知識及び技能を必要とするものである。現在、学校司書が採用時点で有していた資格は図書館法上の司書が54.5%、司書教諭が13.7%である。地方公共団体が学校司書を採用する際の採用条件は、図書館法上の司書を採用条件としている地方公共団体が58.8%、司書教諭を採用条件としている地方公共団体が15.0%である(注1)。
○ 関係団体からのヒアリング(注2)において、学校司書の職務内容が専門性を必要とするものであるため、大学における養成が必要であるとの意見が多数示された。これらを踏まえ、学校司書の養成の在り方については、現行の司書や司書教諭の養成と同様に大学及び短期大学において担うことが適当であると考えられる。
○ このため、本作業部会では、学校司書の養成に関して、大学等のモデルカリキュラムとして、望ましい科目、単位数等を示すこととする。このモデルカリキュラムの履修については大学等が履修証明を行うことが考えられる。
○ このモデルカリキュラムについては、学校司書が学校図書館で職務を遂行するにあたって、履修していることが望ましいものとする。
なお、学校司書の採用については、任命権者である地方公共団体や学校法人等の権限であり、地方分権の観点から、モデルカリキュラムの履修の義務づけを行うことは適切ではないと考えられる。
○ また、学校司書の養成は、大学等における教育に加えて、地方公共団体等による研修の実施など採用後の資質能力の向上のための取組も重要である。
(注1)「学校図書館の現状に関する調査」(文部科学省)平成26年5月現在、公立学校
(注2)「学校図書館の整備充実に関する調査研究協力者会議」第2回~第4回
○ モデルカリキュラムは、学校司書が学校図書館において職務を遂行するための基礎的な知識・技能を習得するためのものとして、その後、さらに専門的な知識・技能を身につけていくことを期待し、学校司書の職務の遂行にあたっての必要最小限のものとする。
○ 学校司書に必要な資質・能力は、モデルカリキュラムを履修した後、学校図書館における業務経験や研修及びその他の学習機会等による学習等を通じて、徐々に形成されていくものであり、モデルカリキュラムはそのための基盤を構築するものとする。
○ 平成26年報告書(注3)では学校司書の職務として、間接的支援に関する職務、直接的支援に関する職務、教育指導への支援に関する職務が示されており、このような職務に従事する学校司書に求められる専門性として、1 学校図書館の「運営・管理」に関する職務に携わるための知識・技能と、2 児童生徒に対する「教育」に関する職務に携わるための知識・技能が掲げられている。モデルカリキュラムはこれらの学校司書に求められる知識・技能の習得のために必要不可欠な科目で構成することとする。
○ 単位数については、養成を担う大学等と履修しようとする学生等の双方にとって過度な負担とならないよう配慮することが必要であり、司書資格が24単位とされていることを踏まえ、学校司書についても原則として24単位で構成することとする(注4)。
○ このような考え方から、全て必修科目で構成することが適切である。なお、大学等においては、学校司書の養成にあたって、必要に応じてこのモデルカリキュラム以外の科目を開講し、学生等に履修を求めることも可能であり、より専門性を高めるために各大学によるモデルカリキュラム以外の科目の開講も期待したい。
○ モデルカリキュラムの検討にあたっては、まず、学校司書の職務から求められる専門的な知識・技能を整理し、それらの知識・技能を習得できる科目の構成とすることが必要である。
○ 学校司書の職務から求められる専門的な知識・技能については、平成26年報告書を踏まえ、1 学校図書館の運営・管理・サービスに関する職務に携わるための知識・技能と、2 児童生徒に対する教育支援に関する職務に携わるための知識・技能とに整理することができる。
○ 学校司書が学校図書館の運営・管理・サービスに関する職務に携わるためには、以下のような専門的事項に係る知識・技能を習得することが求められる。
・学校における学校図書館の意義に関すること
・情報や資料の種類や性質に関すること
・図書館資料の選択・組織化及びコレクション形成・管理に関すること
・情報機器やネットワーク、情報検索に関すること
・児童生徒及び教職員に対する学校図書館サービスに関すること
・学校図書館の施設・設備の管理に関すること
・著作権や個人情報等の関係法令に関すること
○ また、学校司書が児童生徒に対する教育支援に関する職務に携わるためには、以下のような専門的事項に係る知識・技能を習得することが求められる。
・児童生徒の発達に関すること
・学校教育の意義や目標・学校経営方針に関すること
・学習指導要領に基づく各教科等における教育内容等に関すること
・学校図書館を利活用した授業における学習活動への支援に関すること
・発達の段階に応じた読書活動への支援に関すること
・校務や学校における諸活動に関すること
○ モデルカリキュラムの科目の検討にあたっては、モデルカリキュラムを構成する科目を履修することにより、学生等が上記のような学校司書に求められる専門的な知識・技能を総体として習得することができるような科目の構成とすることが適切である。
○ また、上記のような知識・技能には、司書教諭の科目、司書資格の科目、教職課程の科目の内容と重なる部分もあるため、科目の検討にあたっては、大学等における開講の可能性や学生等の履修の可能性等も勘案し、これらの科目を一部活用することとし、これらの科目では習得できない知識・技能については学校司書の独自の科目を設定する。
○ このようなことから、科目は、1 学校図書館の運営・管理・サービスに関する科目と、2 児童生徒に対する教育支援に関する科目から構成することとする。
○ 学校図書館の運営・管理・サービスに関する職務に携わるための知識・技能については、それぞれ以下の科目で履修することとする。
・学校における学校図書館の意義に関すること及び学校図書館の施設・設備の管理に関することは「学校経営と学校図書館」において履修することとする。
・情報や資料の種類や性質に関すること及び図書館資料の選択・組織化及びコレクション形成・管理に関することは「図書館情報資源概論」、「情報資源組織論」及び「情報資源組織演習」において履修することとする。
・情報機器やネットワーク、情報検索に関することは「図書館情報技術論」において履修することとする。
・児童生徒及び教職員に対する学校図書館サービスに関すること及び著作権や個人情報等の関係法令に関することは「学校図書館サービス論」及び「学校図書館情報サービス論」において履修することとする。
○ 上記の「学校図書館サービス論」は、学校司書の独自の科目であり、科目のねらいは、学校図書館における児童生徒及び教職員へのサービスの考え方や各種サービス活動の基本についての理解を図ることである。その内容については、別紙のとおりである。
また、「学校図書館情報サービス論」は、学校司書の独自の科目であり、科目のねらいは、情報サービスの種類や各種情報源の種類と特性を理解し、児童生徒に資料・情報を適切に提供できる能力の育成を図ることである。その内容については、別紙のとおりである。
○ なお、「学校図書館サービス論」及び「学校図書館情報サービス論」は司書資格の科目の選択科目「図書館基礎特論」又は「図書館サービス特論」として、開講することも可能である。ただし、単位数はそれぞれ2単位であることに留意する必要がある。
○ 児童生徒に対する「教育」に関する職務に携わるための知識・技能については、それぞれ以下の科目で履修することとする。
・児童生徒の発達に関することは教職課程の「教育の基礎理論に関する科目」のうち、幼児、児童及び生徒の心身の発達及び学習の過程を含んでいる科目(例:教育心理等)において履修することとする。
・学校教育の意義や目標に関することは、教職課程の「教育の基礎理論に関する科目」のうち、教育の理念並びに教育に関する歴史及び思想を含んでいる科目(例:教育原理等)において履修することとする。
・学習指導要領に基づく各教科等における教育内容等に関することは教職課程の「教育課程及び指導法に関する科目」のうち、教育課程の意義及び編成の方法を含んでいる科目(例:教育課程論等)において履修することとする。
・これらを含めて、教職課程の「教職に関する科目」から6単位以上を履修することとする。
・学校経営方針に関することは「学校経営と学校図書館」において履修することとする。
・学校図書館を利活用した授業における学習活動への支援に関することは「学習指導と学校図書館」において履修することとする。
・発達の段階に応じた読書活動の支援に関することは「読書と豊かな人間性」において履修することとする。
・なお、校務や学校における諸活動に関することは、実際に勤務する学校により様々であることからモデルカリキュラムには含めないこととする。
○ このように、学校司書の職務から求められる専門的な知識・技能を整理し、それらの知識・技能を習得できる科目から構成される学校司書のモデルカリキュラムは、別紙のとおりとなる。
○ なお、モデルカリキュラムには、現状を踏まえ、実習を設定していないが、学校図書館実習は、学生等が児童生徒や教職員と接し、学校司書としての職務を経験する効果的な機会であるため、実情に応じて大学等において開講されることを期待したい。
○ 学校図書館実習では、モデルカリキュラムでの学習で得た知識・技術をもとに、事前・事後学習の指導を受けつつ、学校図書館における業務を経験することが考えられる。なお、学校図書館実習を実施するために、教育委員会等と大学の間で、相互に協力的な連携関係を結ぶことも考えられる。
○ なお、司書教諭の科目、司書資格の科目、教職課程の科目と同様に、大学等において開講する科目名については、モデルカリキュラムの科目名ではなくても差し支えないものであるとともに、大学等の事情により、科目を統合・分割することも差し支えないものである。
○ モデルカリキュラムは実際に大学等で開講されるとともに、学生等に履修されることが重要であるため、大学等に対してモデルカリキュラムを周知するとともに、モデルカリキュラムの開講や学生等への履修証明の実施等について依頼し、モデルカリキュラムの普及を図る必要がある。
○ また、(3)のとおり、学校司書のモデルカリキュラムには、司書教諭の科目、司書資格の科目、教職課程の科目が含まれるため、これらの科目を開講している大学等に対して、これらの科目が学校司書のモデルカリキュラムにも含まれることについて周知を図る必要がある。
○ 地方公共団体等に対しても、モデルカリキュラムを周知し、モデルカリキュラム履修者である学校司書の増加を促進する必要がある。
○ さらに、大学等におけるモデルカリキュラムの開講状況等や地方公共団体におけるモデルカリキュラム履修者の学校司書としての採用状況等を公表することにより、モデルカリキュラムの普及を促進することも有効である。
○ モデルカリキュラムの改善については、今後、関係学会や関係団体等において更なる改善に向けた議論が深められることを期待するとともに、大学等における開講状況や学生等の履修状況等も踏まえ、一定期間経過後に改めて改善に向けた検討を行うことが適切である。
(注3)「これからの学校図書館担当職員に求められる役割・職務及びその資質能力の向上方策等について(報告)」平成26年3月 文部科学省調査研究協力者会議
(注4)教職課程の科目については、国において授業科目による単位数を定めていないため、各大学又は短期大学において単位数が異なることが想定される。
○ 平成26年の学校図書館法の一部改正により、国及び地方公共団体は、学校司書の資質の向上を図るため、研修の実施その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならないと定められた。
○ 教育委員会においては、学校司書の資質向上を図るため、それぞれの教育目標や基本方針、地域の状況等を踏まえつつ、意図的・計画的に研修の機会を設定することが求められる。
○ 研修の実効性を高めるためには、初めて学校司書として勤務することになった者の知識・技能に応じた初任者向けの研修、継続的に自己の知識・技能を更新して業務の質を高めていくために必要な研修等、職務経験や能力に応じて研修内容の構成を工夫して設定することが必要となる。
○ また、学校司書のみを対象とする研修のほか、学校司書が司書教諭等とともに受講できる、広く学校図書館関係教職員を対象とした研修の企画・実施は、司書教諭と学校司書の業務の相互理解や連携促進に効果が期待できるほか、学校司書が広く学校教育に対する理解を深めることができるという観点からも有効である。
○ さらに、学校司書が日常的に手元に置き、必要に応じて参照することができるような業務の手引やマニュアルを学校司書に期待する業務に応じて作成することも、複数の教育委員会で取り組まれている有効な手段である。
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科目名 |
司書教諭 |
司書 |
教職課程 |
単位数 |
学校図書館の運営・管理・サービスに関する科目 |
学校経営と学校図書館 |
○ |
|
|
2 |
図書館情報技術論 |
|
○ |
|
2 |
|
図書館情報資源概論 |
|
○ |
|
2 |
|
情報資源組織論 |
|
○ |
|
2 |
|
情報資源組織演習 |
|
○ |
|
2 |
|
学校図書館サービス論 |
|
|
|
2 |
|
学校図書館情報サービス論 |
|
|
|
2 |
|
児童生徒に対する教育支援に関する科目 |
教職に関する科目 |
|
|
○ |
6 |
学習指導と学校図書館 |
○ |
|
|
2 |
|
読書と豊かな人間性 |
○ |
|
|
2 |
(計24単位)
|
科目名 |
ねらい |
内容 |
学校図書館の運営・管理・サービスに関する科目 |
学校経営と学校図書館 |
学校図書館の教育的意義や経営など全般的事項についての理解を図る。 |
1)学校図書館の理念と教育的意義 |
図書館情報技術論 |
図書館業務に必要な基礎的な情報技術を修得するために、コンピュータ等の基礎、図書館業務システム、データベース、検索エンジン、電子資料、コンピュータシステム等について解説し、必要に応じて演習を行う。 |
1)コンピュータとネットワークの基礎 |
|
図書館情報資源概論 |
印刷資料・非印刷資料・電子資料とネットワーク情報資源からなる図書館情報資源について、類型と特質、歴史、生産、流通、選択、収集、保存、図書館業務に必要な情報資源に関する知識等の基本を解説する。 |
1)印刷資料・非印刷資料の類型と特質(図書・雑誌・新聞、主要な一次・二次資料、資料の歴史を含む) |
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情報資源組織論 |
印刷資料・非印刷資料・電子資料とネットワーク情報資源からなる図書館情報資源の組織化の理論と技術について、書誌コントロール、書誌記述法、主題分析、メタデータ、書誌データの活用法等を解説する。 |
1)情報資源組織化の意義と理論 |
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情報資源組織演習 |
多様な情報資源に関する書誌データの作成、主題分析、分類作業、統制語彙の適用、メタデータの作成等の演習を通して、情報資源組織業務について実践的な能力を養成する。 |
1)書誌データ作成の実際 |
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学校図書館サービス論 |
|
|
|
学校図書館情報サービス論 |
|
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児童生徒に対する教育支援に関する科目 |
学習指導と学校図書館 |
学習指導における学校図書館メディア活用についての理解を図る。 |
1)教育課程と学校図書館 |
読書と豊かな人間性 |
児童生徒の発達段階に応じた読書教育の理念と方法の理解を図る。 |
1)読書の意義と目的 |
|
教職に関する科目 |
文部科学省初等中等教育局児童生徒課