資料3-3 全国的な学力調査に関する専門家会議での主な御意見(第1回・第4回)

全国的な学力調査に関する専門家会議(第1回)における英語調査に関する主な御意見


平成27年6月24日

・英語4技能調査の検討の範囲について、スピーキング、ライティングが入ってくると、いわゆるパフォーマンス・アセスメント系の評価であり、かなりコストと人的パワーがかかる。悉皆でやるとなると、非常に難しい問題が出てくるが、評点者の質の課題も含めて議論するということでよいのか。


・民間の資格・検定団体の試験を利用するという概念も入ってきているが、それとの整合性、切り分けというのはどうなるのか。それを利用して全国的な学力調査をするのか、それとは別になされるのか。


・英語の4技能を調査することは賛成だが、実際、複数年に1回という形でやろうとしても、今のスタイルからすると、3年に一度実施するような形でしか対応は難しいのではないか。そのような運用上の細かな点についても、今後検討すべき事項がある。


・今後、英語が入ってくることは良いことだと思うが、必要な科目が増えるだけ、テストの数を増やしていくというのは大変な話である。そのため、ご意見があったように汎用的な能力を測る問題など、分野、科目を横断したような形でのテスト、つまり国語、数学、英語というのではなく、それらを融合した総合科目のような形でのテストをして、その中で、もし観点として見るのであれば、各科目からの観点、見方というような形でのテストの仕方、テスト問題作成ということもあって良いと思っている。


・英語の調査についても、各技能が想定より伸びていないという結果が出た時に、なぜ伸びていないのか、それらの背景を調べ、変えていかない限りは、結果の向上にはつながらないのではないか。

全国的な学力調査に関する専門家会議(第4回)における英語調査に関する主な御意見


平成27年12月1日

・英語教育は近年、特に都市部では早期教育の対象、比較的豊かな家庭が早期に投資をする対象ともなっていると思うので、もし生徒質問紙を実施するのであれば、幼少期に学校外でどのような英語教育の経験があるのかということを聞くとよいのではないか。学校外のことは、中学校3年生の時点だけではなくて、いつ、どの程度やっていたという視点も必要だと思う。
もう1点、スピーキングについてだが、教員の指導・評価の改善ということで、教員が採点に関わることが検討されているようだが、教員間や学校間の教員の評価の信頼性などはどうやって確認されているのかを伺いたい。


・質問紙は、項目を絞り込んで実施したということもあり、生徒が学校外でいつから英語を学び始めたかという質問項目を設けていない。しかし、平成25年度の全国学力・学習状況調査の質問紙項目の中で、そのような質問を設けたことが1回だけある。御指摘のとおり、小中学校とも、小学校入学前、それから小学校1年生、2年生、3、4年生、5、6年生と分けると、それぞれ10%、20%なり、ばらつきあった。中学生の回答では、小学校入学前に学んだ子どもは11.2%、小1、小2からは11.8%、小3、小4からは18.6%というふうになっている。今、小学校5年生から週1時間、外国語活動を行っているが、実態としては、学校外で英語を学ぶ機会は、かなりばらつきがあり、その分析は、残念ながらフィージビリティ調査では設けていないので、参考にさせていただきたい。2番目の質問については、今回の調査では、教育委員会と学校に「協力」ベースで依頼したため、精緻さという意味では不十分かもしれない。しかし、フィージビリティ調査の段階という意味では、十分ではないかと考えている。


・1点目に関しては、本調査は学力調査であり、学校教育の成果を調べることが目的であるため、今おっしゃったような背景的な情報というのは、とても重要になると考える。2点目の学校間の信頼性、教員の信頼性、データの信頼性については、公平性にも関わると思うので、やはり、とても重要な点である。そのようなことも重要な点としてコントロールできるようにと考えている。


・1点目は、技能統合型問題や即興的な英語表現、スピーキングなどはかなりチャレンジングで、今までの学校教育では確かに難しいところである。しかし、それが活用型の学力だったり、アクティブ・ラーニングだったりすることに近付いてくるので、これは本当にいい方向を出していただいた。どんどん進めていっていただきたい。
2点目、「英語力」という用語があるが、モデル的、構造的に分析するというのはなかなか難しい。しかし、この英語力の中に4技能があり、しかも統合的な技能もあり、態度面もありということが今、明らかになりつつある。そのような態度面とか、日常的に英語に触れるような活動、例えば、辞書を積極的に引くとか、様々な英語の資料に積極的に触れていくというような生活面も含めて、質問紙調査において、4技能だけのテストでは聞けないところを幅広く聞けるような項目が設定できればよい。英語力の概念モデルに基づき、カバーしている点が幅広く分かるような質問紙調査の項目設定が早急にできればよいと思う。大変魅力的な用語で、シンプルだが、今後様々な力を想定していけば、今の英語教育も変えていけるのではないかと期待が持てる用語である。
最後に、障害のある児童生徒は、スピーキングにおいて、緊張感や心配を大変感じると思う。その際に、情緒的な面でのコントロールについての課題がある場合については、緊張感によって不利な条件でスピーキングテストを受けることにならないよう、合理的な配慮の可能性を探っていくことも必要である。


・スピーキングは、英語の教員が評価するという計画であるが、実際に1学年100万人いるわけなので、全部行うとすると、とんでもなく大変な事業になるのではないか。少し原則からは外れることになるのかもしれないが、全部やるか、やらないかという議論にはせずに、実施可能な範囲で、調査対象者をある意味限定する形で、無理なく実施できる範囲を想定して行った方がよいと思う。今は全数でやるということが原則になっているが、それに関しては柔軟に対応した方がよいと思う。


・ワーキンググループにおいて、同じような指摘も頂いているので、その点も含めて検討を進めさせていただく。まずは、4技能の可能性というところを、制約条件100万人というかなり大きな要件だが、頂いた御意見を整理しながら、可能性を少し模索させていただきたい。また、ワーキンググループでも御議論いただきたいと思う。


・「教員がスピーキング等の採点に関わることを通じた教員の指導・評価の改善」というのは、教員の英語の力を付けるというような意味と理解してよいのか。もしそうだとすると、学力調査の結果をもってより良い指導に結び付けるという目的と、教員の英語の技能をこの調査の採点という中で上げようとすることを期待しているというのとでは、少し様子が違うような感じを受ける。もしそうであれば、教員採用であったり、教員養成の方の問題でもあるのではないかと感じる。


・本来スピーキングの評価をする技能、能力というのは、リーディングやリスニング、ライティングのテストを作って、それの採点をするという、その技能の一つと思われ、本来、教職課程で十分に行っておくべきことなんだろうと考える。
そのため、教員の指導・評価の改善は、副次的な目的と捉えるべきであり、主たる目的ではないと思う。しかし、このようなことを通して教員の自覚を高め、評価できるようになり、「生徒が、こういうパフォーマンス、スピーキングの出来具合であれば、このぐらいの成績である」といった判断をする能力、技能を付けるという機会にできれば、なおよいのではないかと考える。
教員全員にトレーニングしてもらうという押し付けというよりも、そのような機会にもなるという肯定的な捉え方をしてもらえないかと考えている。


・目的の一つが、調査結果を学校での指導の改善に生かすということであれば、今の国語と算数・数学の全国学力調査も4月に行い、結果が返されるのが8月と、結構な時間がかかってしまっているわけだが、同じようにこの英語力調査でも、より丁寧な採点などを行えば、それだけ時間が掛かってくると思う。今、6、7月に調査して、10月、11月に返却されていると思うが、これが大規模になれば、それだけ時間が掛かってくるので、なるべく早くフィードバックできるような形の体制というのも考慮しながら、実施方法は検討されるべきではないかと思う。
また、調査回数は、複数年度に一度ということになっているが、前回の経験を生かす際に余りに間が空いてしまうと、フィードバックを早くするということへ生かせない可能性もあると思う。


・理念レベルでの調査の目的の整理の問題と、運用上の問題と二つに分けて考えてみると、平成18年4月に、学力調査の実施に関する報告書が最初に出た時には、義務教育段階の出口の段階にしようというのがあって、基盤的事項に絞った上で、知識に関するAのタイプの問題、それから活用に関するBのタイプの問題という整理があった。
そのような観点から見ると、英語の場合は、4技能はツールとして使えることが前提になっているということがある中で、学校教育の枠内での整合性や、国語、算数・数学、理科の調査の枠組みとの整理がもう少し必要ではないか。
また、指導改善のための結果フィードバックのタイムラインを考えると、実際上の設計の問題が少し分かりにくく、場合によっては、国語、算数・数学と切り離した別の日に行うなど、独自の運用が必要になるのではないか。学校現場の先生からは、質問紙調査も含め丸1日での実施はタフだということを伺うが、調査全体の設計の中にどう統合するかという議論が一方では必要だと思う。


・パフォーマンスアセスメントは評価者の「適格性」の担保が常に必要である。これは、教員免許等とは独立して,学力調査に限って可能であると思う。従って,「教員の英語スキルの向上」も副産物として狙っていることは強調せず,「評価者としての適格性の判断を厳にする」方に重点を置いて説明してはどうか。


・パフォーマンスアセスメントの結果の信頼性は,全国学力・学習状況調査のB問題の採点で行っているような「信頼性・厳密性」は追求しなくても良いと思う。理由の一つとしては、コストがかかりすぎるという点である。また、全国学力・学習状況調査のように,全数というだけでハイステークスになりがちな中,かつ,B問題と同レベルの厳格な採点を目指すと、生徒も教員も委縮し,「使える英語」という目的に対してマイナスの効果を及ぼすのではないか。


・英語の採点は教員の研修効果があると考える。その時間的コストは、実際,どの程度だったのか。データとして示せば判断しやすくなる。

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