「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議(第7回) 議事録

1.日時

平成28年4月22日(金曜日) 10時~12時

2.場所

3F1特別会議室

3.議題

  1. 中間まとめに向けた論点の整理について
  2. その他

4.出席者

委員

堀田座長、天笠座長代理、井上委員、尾上委員、金子委員、黒川委員、神山委員、近藤委員、高梨委員、中川委員、東原委員、福田孝義委員、福田純子委員、毛利委員、山内委員

文部科学省

浅田大臣官房審議官、望月初等中等教育局教科書課長、村尾教科書課教科書企画官、宇高教科書課課長補佐、磯生涯学習政策局情報教育課長、新津情報教育課長情報教育振興室長

5.議事録

【堀田座長】おはようございます。それでは定刻となりましたので、ただいまから、「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議の第7回会議を開催させていただきます。皆様お忙しい中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
前回の検討会議以降、2月でしたでしょうか、委員の皆様に、論点整理に向けた課題の整理について意見交換をさせていただきました。そこでの意見交換の内容も踏まえた上で、本日は中間まとめに向けた論点の整理について議論を行いたいと考えております。
なお、本日は若江委員が所用により欠席でございます。

議事に入ります前に、事務局より資料の確認をお願いいたします。

【事務局】では、まず、配付資料の確認をさせていただきます。

本日の配付資料といたしましては、資料1として、中間まとめに向けた論点の整理について、資料2として、今後のスケジュールを配付しております。

また、参考資料1として、前回第6回の議事録を配付させていただいておりますけれども、こちらは既に委員の先生方には御確認いただいておりますので、特段問題なければ、また文部科学省のホームページで掲載させていただきますので御了承ください。

参考資料2として、この4月1日で委員の先生方の御所属の変更等もございましたので、改めて委員名簿を配付させていただいております。誤り等ございましたら、申し訳ありませんが、事務局にお申し出ください。

そのほか、机上に第6回までの会議の配付資料をまとめております。こちらは毎回ではございますけれども、会議終了後、そのまま机上に置いて帰っていただければと思います。

加えて今回、近藤先生から、先端科学技術研究センターで実施されておりますDO-ITJapan2015年度の報告書を頂いております。

配付資料は以上です。過不足等ございましたら、事務局にお申し出ください。

【堀田座長】ありがとうございました。

先ほど言い忘れましたが、今回は報道機関より写真撮影等の希望を頂いていますので、議事の冒頭のみ、これを許可しております。よろしくお願いいたします。

それでは、せっかくですので近藤先生、報告書につきまして、何か補足がございましたらよろしくお願いいたします。

【近藤委員】お時間下さり、ありがとうございます。私ども東京大学の先端研で、今年でちょうど10年目になるんですけれども、2007年から実施しております、障害のある子供たちに対して様々なテクノロジーを提供して、彼らが高等教育に進学したり、その後の就労へ移行したりということを支援しているプロジェクトについての昨年度の報告書をお届けしましたので、是非内容について御笑覧いただけましたら幸いです。

【堀田座長】ありがとうございます。このような障害のあるお子さんに対してデジタルがどういうふうに役に立つかということは、非常に重要な観点でございますので、参考にさせていただきたいと思います。資料提供をありがとうございました。

それでは、早速議事を進めてまいります。今日は中間まとめに向けた論点の整理について、まず事務局より御説明をお願いいたします。

【事務局】事務局から論点整理の説明をさせていただきますので、カメラ、写真等ここまでとさせていただきたいと思います。

【堀田座長】ありがとうございました。

(報道退室)

【事務局】それでは、資料1の説明をさせていただきます。資料1は、中間まとめに向けた論点の整理とさせていただいておりますけれども、これまでの第1回から第6回までの検討会議、前回の委員間の意見交換の場、若しくは学校訪問の際の意見交換の場等の議論を踏まえて作成させていただきました。

最初に、教科書の基本的な役割として、児童生徒の基礎的・基本的な教育内容の履修を保障することにあるということを、本検討会議においては確認したと。その役割を果たすために、学校教育法に規定されている教科書の使用義務というものを、教科書として最低限有すべき意義であると捉えた上で、検討をこれまで行っていただいておりました。

それを前提とした上で、この検討会議においては、戦後来使用され続けてきた紙の教科書の意義、また、ICTの活用による児童生徒の学習面における有用性や将来的な可能性を最大限考慮した上で、それにより享受することができる便益について、広く国民の理解を得ることが不可欠であると。そのために、本検討会議において御検討いただきたい事項、方向性を示していただきたい事項としては、おおむね以下のとおり論点としては整理できるのではないかということで、資料を作成させていただいております。

大きく6つの項目に分かれておりまして、デジタル教科書の定義について。デジタル教科書の使用による効果・影響について。3つ目がデジタル教科書の使用形態について。4つ目が、3ページ目になりますけれども、デジタル教科書の範囲・内容について。デジタル教科書の各法律上の位置付けについて。最後はデジタル教科書の使用環境についてという、6つの事項に分けさせていただいております。

順に御説明させていただきますけれども、デジタル教科書の定義についてというところでございますが、平成23年4月に文部科学省で教育の情報化ビジョンというものを取りまとめております。そこにおいては、いわゆる「デジタル教科書」について、「デジタル機器や情報端末向け教材のうち、紙の教科書の内容とそれを閲覧するためのソフトウェアに加え、編集、移動、追加、削除などの基本機能を最低限備えるもの」と定義されております。

一方で、現在発行者から販売されております指導者用若しくは学習者用の、かぎが付いておりますが、「デジタル教科書」につきましては、教科書紙面の内容に加えて、多種多様なデジタル教材が掲載されております。その内容については、何を掲載するかについては基本的には発行者の裁量に委ねられているのが現状でございます。

ただ、冒頭申し上げましたように、教科書とする以上は使用義務というものが課されているものであるべきであるため、この検討会議においては、デジタル媒体により制作され、その使用により教科書の使用義務を履行したことになるものを、デジタル教科書として位置付けることが適当であろうとさせていただいております。

これまでの第6回までの議論においては、デジタル版教科書というものを便宜的に設けさせていただいておりました。このデジタル版教科書というのは、学習者用デジタル教科書のうち、教科書として位置付けることが適当と考えられるものをいうと便宜的に定義させていただいておりましたけれども、先ほど御説明さしあげた内容と関連しますが、デジタル教科書というものと、デジタル版教科書というものの定義というのは、実質的には同義になろうと考えております。このため、デジタル版教科書という言葉を、今後はデジタル教科書という言葉に置き換えて、この論点整理を作成させていただいております。

2つ目の、デジタル教科書の使用による効果・影響についてでございますけれども、これまでの検討、若しくは様々な方のヒアリングにおいては、児童生徒の学びの充実を図ることができるといった意見があった一方で、逆に書く力や考える力の育成につながらないのではないかという意見もございました。また、必ずしもデジタル教科書固有の話ではございませんけれども、健康への影響についても、顕著な変化は確認されないというアンケート結果がある一方で、長時間使用することによって依存症等につながるおそれがあるといった意見もあったほか、視力や脳の発達など、健康への影響に対する保護者等の不安も大きいという意見もございました。

ただ、現行制度におきましては、教科書制度というものが、教科書は紙媒体であることを前提に構成されておりますので、デジタル教科書を教科書、主たる教材として使用することはできず、これらの意見について、客観的・定量的な検証を行うことは困難だと。それでは、どのように対応していけばよいかということで、四角囲みの中に入りますけれども、導入に当たってはこれまでに得られた知見を踏まえて、デジタル教科書の使用により教育効果が見込まれ、かつ、健康への影響が少ないと考えられる形での導入を進めるとともに、より実践的な調査研究を継続的に実施することが必要であろうと書かせていただいております。

デジタル教科書の使用形態についてでございますけれども、客観的な効果・影響の検証を行うことは困難であること、また学習内容によって、使用により得られる効果といったものには差異があるだろうということを踏まえますと、デジタル教科書の使用というのは、紙の教科書と併用ということを前提とすることが適当ではないかとさせていただいております。

ただ、一言で併用と申し上げましても、様々な形が考えられます。大きく分けますと、1番目として、紙の教科書を主たる教材として使用し、必要に応じて副教材としてのみデジタル教科書を使用する形態。こちらは現行制度のかぎ括弧付きの「デジタル教科書」の位置付けと同じでございます。

2番目といたしましては、紙の教科書を主たる教材として使用することを基本としつつ、学習内容に応じて教科の一部、例えば特定の単元とかの学習に当たって、デジタル教科書を紙の教科書に代えて使用する。

3つ目が、デジタル教科書を主たる教材として使用して、必要に応じて副教材としてのみ紙の教科書を使用するという形態。

ということが考えられると思っております。そこで、いずれの考え方までを許容するかということになりますと、教科書の基本的な意義といたしましては、基礎的・基本的な教育内容の履修を保障することが不可欠であると考えますと、3つ目のデジタル教科書を主たる教材として使うパターンというのは、少なくともデジタル教科書の使用による効果・影響に関する調査研究の結果というものを踏まえる必要があるのではないか。

ただ、一方で2番目につきまして、併用することを前提としておりますので、紙の教科書により、基礎的・基本的な教育内容の履修が保障されていることに鑑みますと、これについては許容した上で、紙の教科書に代えてデジタル教科書を使用することにより、教科書の使用義務の履行を一部認めることとすることが適当ではないか。ただ、一部というときに、どの程度まで認めるかにつきましては、最終的には教育委員会等の判断によるということがあるにしても、先進事例の成果や知見、若しくは導入後における調査研究の結果等を踏まえて、国において一定の考え方を示した上で、段階的に進めていく形が望ましいであろうということを書かせていただいております。

次のページに参りますけれども、学校段階又は発達段階の特性への配慮ということで、学校段階若しくは発達段階によって、併用の取扱いについて差異を設けるべきか否かということでございます。こちらは特に高校を念頭に置いていますけれども、まず基本的には、義務教育段階と高等学校段階において教科書が持つ意義というのは変わるものではないであろうと。そのため、基本的にはデジタル教科書の取扱いについても差異を設けることは適当ではないとも考えられますけれども、一方で高等学校においては、義務教育ではないということもございまして、教科書というのは有償となっております。そうしますと、紙の教科書、デジタル教科書を併用するとした場合には、双方が私費負担という形になります。

また、高等学校の場合、既に必修教科として情報科という教科が設けられておりまして、生徒が一定程度ICTに、機器も含めて親しんでいるだろうということを踏まえますと、紙の教科書との選択制とすることも考えられはすると思います。

一方で、先ほど来申し上げておりますけれども、デジタル教科書のみを使用することによって、基礎的・基本的な教育内容の履修を保障することが可能かどうかにつきましては、その調査研究というのがまだ十分に行われていないというのも事実であると考えております。このため、少なくとも当面においては高校段階においても紙の教科書との併用とすることが適当ではないかという形にさせていただいております。

これらについて、中長期的視点に立った場合どうかということについて項目を設けておりますけれども、これはこの場、この検討会議において、今すぐどうこうという話ではありません。調査研究の結果であることや、また各地域若しくは学校における実践活動を踏まえて、改めて検討すべきものであるとは思いますけれども、いろいろな、例えば次期学習指導要領に向けた議論、若しくは情報化の流れ、若しくは技術革新といったものを踏まえまして、学校段階を問わず、将来的に紙の教科書、デジタル教科書の選択制というのを、採る選択肢としては排除すべきではないのではないかと書かせていただいております。

次の項目に行かせていただきますと、デジタル教科書の範囲・内容についてというところでございます。教科書の最も重要な役割は、繰り返し申し上げますけれども、基礎的・基本的な教育内容の履修を保障することでございますので、原則として、その内容の全てについて学習する必要がある。そして、その質を担保するために検定が行われていることを考えますと、紙の教科書とデジタル教科書の内容というのは、基本的には同一であるべきと考えてよいか。

その際、デジタル教科書というのは紙ではございませんので、その特有の機能として、写真や画像の拡大、文字の色の変更、音声の読み上げ、リフロー機能によるレイアウトの一部変更といったことも可能になることが想定されます。ただ、これらの機能を用いた場合であっても、学習内容としては検定を経た紙の教科書と同一であるということを考えますと、デジタル教科書について改めて検定を経るということは必要ないと考えてよいか。

これにつきましては、紙の教科書の併用というものを前提とする場合には、デジタル教科書については改めて検定を経る必要はないのではないか。ただ、紙の教科書とデジタル教科書の内容の同一性といったものについては、発行者の責任において担保されるべきであろうと書かせていただいております。

ただ、これは飽くまで併用を前提とする場合でございますので、仮に将来的に紙の教科書との選択制といったものが導入されるとした場合には、デジタル教科書の検定の在り方についても併せて検討が必要であろうと書かせていただいております。

動画や音声、紙の教科書には含まれないコンテンツの取扱いでございますけれども、これまでの検討若しくは各ヒアリングにおける意見においても、英語の音声教材等については、教科書の役割を果たす意味でも必要性が高いといった意見があった一方で、動画や音声について、現行の方法による検定によって質を担保することは物理的に困難であろうといった意見がございました。

また、この検討会議は「デジタル教科書」の位置付けの御検討を頂く会議でございますけれども、動画・音声等の必要性の有無といったことについては、紙の教科書を使用する児童生徒についても同様であろうということを考え合わせた上で、これらのコンテンツをどう取り扱うべきかという論点につきましては、次期学習指導要領に向けて検討が行われております小学校英語の教科化を含めました、とりわけ外国語活動においては、音声等の教材に学習上の効果が見込まれるであろうという意見が多くある一方で、現行の検定の方法によって質を担保することは物理的に困難であろうと。

また、音声や動画、デジタル一般に言えることでございますけれども、日進月歩での技術の進歩が見込まれていることを考え合わせますと、検定を経ることというのは必ずしも適当ではないとも考えられることから、動画・音声等については、基本的には検定を経ることを要しない教材という位置付けとしてはどうか。ただ、動画・音声等を含め、紙の教科書へのURL若しくはQRコードといったものの掲載の在り方について、関係の審議会における審議を踏まえた上で、また対応を考えるべきだろうという形にさせていただいております。

教科ごとの特性への配慮という項目についてでございますけれども、デジタル教科書の導入若しくは使用に当たって、各教科又は単元等の学習内容の特性に配慮すべきといった意見がございました。これは、例えば各地域における先進事例の成果・知見を踏まえた上で、導入といったものを一部の教科若しくは一部の単元に限定する、若しくは使用方法に差異を設けるといった措置を講じるべきかどうかという論点でございます。

こちらにつきましては、デジタル教科書というのは先ほど申し上げましたように、今は教科書としては使用することができません。また、その普及も進んでいない状況がございますので、この検討会議において教科や単元ごとに検討するというのは、事実上困難であろうと考えております。ただ、困難であるからといって何もしないというわけにはいかないということで、導入前後を問わずでしょうけれども、調査研究の結果を踏まえて、学習内容の特性若しくは各発行者の創意工夫を生かすために、デジタル教科書の取扱い指針若しくはガイドラインといったものの策定が必要であろうといったことを書かせていただいております。

その次の論点が、少し細かい論点にはなるんですけれども、学習内容に応じて紙の教科書とデジタル教科書を使い分ける使用形態を想定した場合には、デジタル教科書というものが必ずしも紙の教科書の内容全てが含まれている必要はないのではないか。例えば、紙の教科書の内容の一部、特定の単元のみのデジタル教科書といったものを認めるべきかどうかという論点ですけれども、そういった特定の単元のみを抜き出したものについても、デジタル教材としてはあり得るものと考えております。ただ、デジタル教科書として位置付ける以上は、紙の教科書の内容を不足なく取り上げているものとすべきであろうと記載させていただいております。

構成要素といたしましては、大きく分けますと、コンテンツ、ビューア、ハードウエアという構成が考えられるんですけれども、ビューア若しくはハードウエアといったものについては、デジタル教科書の使用以外にも用いられることが想定されていること。また、紙とデジタルの関係については、同一の内容を紙面に掲載するか、若しくは電磁的記録として記録するかの違いがあるにすぎないと捉えれば、コンテンツ、ビューア、ハードウエアのうち、構成要素としてはコンテンツのみと考えてよいか。

また、児童生徒にとって使用しやすいものとなるよう、既存の発行者若しくは教材会社というのはもちろん中心的な役割を果たすべきであると考えておりますけれども、それ以外にもIT関連企業を含め、広く参画を促進して、より多様で質の高いデジタル教材の開発・普及というのを図るべき。そのためには、コンテンツのほか、ビューア等についても規格や機能の標準化が必要と考えてよいかということにつきましては、まず構成要素といたしましてはコンテンツのみとした上で、デジタル教科書を使用するためのビューア等の規格・機能の標準化については、今後、国、発行者、若しくはほかの関連企業も含めて連携した上で、取組を進めていくべきであろう。

その次が、教科用特定図書等との関係、障害のある児童生徒に対する配慮という項目でございますけれども、デジタル教科書の導入に当たって、障害のある児童生徒に対して、どう配慮を行うか。特に、デジタル教科書と教科書バリアフリー法に規定する教科用特定図書等との関係をどう考えるかという論点でございますけれども、デジタル教科書においても、技術的には音声読み上げは可能となると考えております。その意味においては、音声教材等の教科用特定図書等の機能を一部包含することになるんですが、その結果、現在教科用特定図書等を使用している児童生徒が、デジタル教科書を使用することも考えられることになります。

ただ、デジタル教科書では、個々の障害の内容や程度に対応し切れないことも想定されるのも事実でございます。このため、本年4月に全面施行されました障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の趣旨等を踏まえますと、音声教材等の教科用特定図書等については一層の充実を図るべきではないかといったことを書かせていただいております。

その次がデジタル教材というところでございますが、デジタル教科書を使用することのメリットの一つとして、関連するデジタル教材というものと一体的に使用することができるといったことが挙げられております。その他のデジタル教材について、学習上の質といったものをどのように担保するかという論点でございます。

原則的には教育委員会等が、発達段階・学校段階若しくは学習内容に応じて、デジタル教材の内容を十分に吟味した上で、使用を決定すべきであろうと。そもそも民間主体というのが認定等を行う仕組みといったものも考えられますけれども、いずれにしても、責任というのは教育委員会等が持つ必要があるのではないか。このため、教育委員会等が、その主体的な判断でデジタル教科書と一体的に使用するデジタル教材を選定できるような仕組みが望まれるであろう。

その上で、例えば教育委員会や学校のサーバーに質が担保された優良なデジタル教材を保存して、イントラネット等を通じて域内若しくは学校内で共有する仕組みといったことも検討されるべきであろう。

加えて、こういった論点を考えるに当たっては、コンテンツ若しくはビューアの規格や機能の標準化を図ることによって、今の発行者若しくは今の教材会社以外の主体が積極的に参画することを促進すべきであろうと書かせていただいております。

デジタル教科書の各法律上の位置付けというところでございますけれども、デジタル教科書の制作者として、今、紙の教科書を発行している発行者のみとすべきか、それとも、それ以外の主体が紙の教科書の内容を基にデジタル教科書を制作することを認めるべきか否かという論点でございますけれども、質の高いデジタル教科書を実現するためには、例えばIT関連企業等の知見を活用することも重要であろうと考えております。

一方で、デジタル教科書については、先ほど申し上げましたように個別に検定を経ないということにするのであれば、紙の教科書との内容の同一性については、発行者において責任を負うべきであろうと。その責任の下で、ほかの関連企業等との連携といったものを模索すべきではないかということを書かせていただいております。

次は、デジタル教科書の費用負担の在り方ということでございますけれども、紙の教科書との併用制ということを前提にした場合に、現在、無償給与、無償措置されている紙の教科書に加えて、デジタル教科書というものも無償措置の対象とすることは一般的には困難であろうと考えております。一方で、デジタル教科書の費用負担というものが、教材費という形で保護者負担となる可能性も否定はできないということから、デジタル教科書の使用に際しては、経済的格差による影響を生じさせないよう、特に低所得者世帯等に対する支援をどう考えるべきかと。

これにつきましては、教科書の役割というものが、基礎的・基本的な教育内容の履修を保障することである以上は、その費用は無償であることが望ましいというのは言うまでもないと。ただ、その一方で、双方の無償措置といったものは、少なくとも短期的には難しいであろうと。このため、導入に際しては、保護者負担の軽減に向けた検討が必要であると。また、中長期的には無償措置法に基づく無償措置の対象とすることも検討すべきであろうといった形とさせていただいております。

その次は、著作権の権利制限の在り方でございますけれども、これまで申し上げたデジタル教科書の制作若しくは配信による供給といったことを考えますと、著作権法との関係が問題となります。より質の高いデジタル教科書を実現して、児童生徒の学びの充実に資するためには、紙の教科書と同様に、デジタル教科書に係る著作権の権利制限規定が必要となると考えてよいかという論点でございますけれども、デジタル教科書について、教科書の使用義務というのを一部認めることを含めて、学校教育法に規定する紙の教科書と同様の位置付けとするのであれば、公共性の観点からも、基本的にデジタル教科書というのは紙の教科書と変わらないであろう。

このため、デジタル教科書の円滑な導入を図るためにも、関連する著作権法の規定の見直しを行うことについて、今後、関係の審議会において審議が行われることが適当であろうと書かせていただいております。

最後は使用環境についてでございますけれども、まず、情報端末についてでございますが、デジタル教科書の導入はいつにするかという議論はあるんですけれども、仮に次期学習指導要領の実施が検討されております平成32年度といったものを想定した場合に、必ずしも全ての児童生徒に対して1人1台の情報端末が整備されているとは限らないことを、どう考えるかということでございます。

仮に情報端末が整備されている場合であっても、考え方として、学校の備品とすべきか、児童生徒の所有とすべきか、また、学校の備品とすべき場合には、学校のみの使用とすべきか、若しくは家庭への持ち帰りというのを認めるべきか、また、学校のみの使用であった場合にも、一人一人の児童生徒の専用のものとすべきなのか、それとも特定の教科若しくは特定の授業において共有に、クラス単位で1人1台はあるんですけれども、いろいろなクラスが使うような共有使用とすべきかという論点でございます。

こちらにつきましては、将来的に紙の教科書とデジタル教科書の選択制といったものが導入される場合には、学校・家庭を通じて1人1台の情報端末の整備が前提であるべきであると考えておりますけれども、紙の教科書との併用を前提にする場合には、先ほど申し上げたいずれの形態であっても、各自治体若しくは学校の実態に応じても、使用を認めるべきではないかといったことを書かせていただいております。

ネットワーク環境についてでございますけれども、こちらにつきましても、導入時点において必ずしも全ての学校においてネットワーク環境が整備されているとは限らないことをどう考えるか。また、こちらにつきましては、家庭におけるネットワーク環境の整備といったことが、学校よりも更に差異が生じる可能性があることというのをどう考えるかという論点でございますけれども、デジタル教科書を導入する場合には、それが紙の教科書との併用であれ、導入形態に応じてネットワーク環境の整備は前提とすべきであろうと。

ただ、宿題や家庭学習、家庭におけるデジタル教科書の使用については、家庭にネットワーク環境が整備されていない児童生徒といったものにも配慮した形態が必要であり、これは学校・家庭を通じてでございますけれども、デジタル教科書の使用に当たっては、インターネットへの接続管理若しくはフィルタリング等によって、有害情報対策は徹底すべきであろうと書かせていただいております。

その次が採択についてでございますけれども、紙の教科書との併用を前提にした場合に、採択する紙の教科書とデジタル教科書の関係をどう考えるかという論点につきましては、学習内容に応じて紙の教科書とデジタル教科書を使い分けるという併用の在り方に鑑みますと、デジタル教科書というものは、紙の教科書と同じ発行者が制作したものであるべきであろう。

ただ、デジタル教科書を仮に副教材として使用する場合には、紙の教科書とは別の発行者が制作するデジタル教科書というものを副教材として使用することは許容されるであろう。ただ、その場合には、学習効果を高めることができるよう、デジタル教科書の活用方法に十分な工夫が必要でしょうし、児童生徒の学習上の負担といったことにも留意することが必要であろうと書かせていただいております。

供給方法につきましては、大きく分けると恐らくこの3つぐらいが考えられるだろうと。1つ目は、DVDなどの記録媒体に記録されたデジタル教科書を供給する形。2つ目が制作者から教育委員会なり学校のサーバーに配信した上で、そのサーバーから各児童生徒若しくは端末にデジタル教科書をダウンロードする形。3つ目が、制作者から各端末にデジタル教科書を配信する形。この3つを当面若しくは中長期的に考えて、いずれの考え方を基本とすることが適当かということでございますけれども、こちらにつきましては、今後の技術革新等を考えたときに、2とか3の方法が主流となる可能性はもちろん否定はできないんですけれども、いずれにいたしましても、供給というのが確保される限りにおいては、個人情報の取扱いに留意した上で、1から3のいずれの形も認めるべきであろうと書かせていただいております。

最後は定価というところでございますけれども、紙の教科書は今、定価という形になっておりますが、デジタル教科書は定価というのは設定できない形になっております。ただ、定価は設定できないですけれども、その費用負担というのが教材費という形で保護者負担となる可能性も否定はできないことを考えますと、いろいろな規格・機能の標準化等を通じて、少なくとも紙の教科書の内容と同一の部分、こちらをデジタル教科書と呼びますけれども、そこの価格については可能な限り低廉に抑えることが必要であろうといった形に書かせていただいております。

以上です。

【堀田座長】ありがとうございました。詳細な御説明を頂きまして、しばらく会議は日程が空きましたが、その間に皆さんから頂いた御意見を、ほぼ網羅的に取り入れていただいていますし、整理をされていると私としては考えております。この論点の整理を基に、次回には中間まとめ、成文したものを検討していきたいと考えておりますので、この論点の整理に書かれている書かれ方や、あるいは書き損なっているような部分について、皆さんから、それぞれのお立場から御指摘を頂いた上で、中間まとめに進めていきたいと考えております。

一応、確認ですけれども、私どもの会議でまだ何かが決定したということはないにしても、ほぼ合意が得られていることとしては、教科書のこれまで果たしてきた重要な役割というのは、ちゃんと保障していこうと。そのために、使用義務とか検定とか、そういうことの制度については、これからも少なくとも当面、ある程度従っていこうと。そのため、紙の教科書と併用するということを前提に、まずは進め始めようということですね。

その上でどういうふうに進めていくかについて、様々な関係する部分、「デジタル教科書」そのものではないにしても、教材の問題とか、使用環境の問題とか、今日ここには触れられていませんが、教員養成の問題とか、様々な問題が実はつながっております。そういうことについて、様々な検討課題をしかるべき形で提示するのが私どもの検討会議の役割と考えていますので、そういう観点から、皆さんから今日、御意見を頂ければと思うところでございます。

1時間ほどありますので、前からというふうにはしませんので、どこからでも結構ですので、それぞれ御意見を是非、一言以上頂ければと思うところでございます。どなたからでも結構ですが、いかがでしょうか。

では、山内委員。

【山内委員】東京国際大学の山内と申します。非常に多岐な項目にわたりまして、また方面にわたって、いろいろな配慮を持って整理されていると思います。

一つ確認したいところがございます。4ページ目になります。4ページ目の「動画・音声等、紙の教科書には含まれないコンテンツの取扱い」という部分です。そこの枠囲いの中の下から3行目のところに、アンダーラインの部分があります。「動画・音声等については、基本的には検定を経ることを要しない教材としつつ、それらを含め、紙の教科書へのURL/QRコード等の掲載の在り方についての関係の審議会等における審議を踏まえた対応が必要」であるということですけれども、これは小学校英語とかを前提にして、外国語において音声を重視というのは、私は英語教育が専門ですので非常に有り難いのですが、ここで紙の教科書へのURLとかQRコードを付けた場合に、例えばURLを付けた場合、そこにジャンプをする。ジャンプをした先が、既になくなってしまったとか、そういう可能性もあったりするかなと。

そういうのを避けるためには、いわゆる教科書会社がURLを作るということになるのかもしれませんけれども、そうしますと、そのURLにジャンプして、そこに音声とかがあると。そうした場合に、いわゆる副教材的になるのかもしれませんけれども、そこまでチェックするのかどうか。前に、ピーターラビットはイギリス文学の作品なので、アメリカ英語ではおかしいということをお話ししたわけですけれども、そういうところまでチェックをやるかどうかということとかが、ここの文面ではまだいま一つはっきりしていないような気がいたします。

また、紙の教科書へのURL/QRコード等の掲載とありますが、教科書の中に掲載するのか、あるいは何か別冊のような形で掲載するのか、そういうところも必要なのかなという気がいたします。それによって、恐らく検定の時間とか労力なども、かなり違ったものになってくるのではないかなと思います。

それから2点目。最後のところに定価というのがございます。定価の下から2行目のところに、紙の教科書の内容と同一の部分については価格を可能な限り抑えるということですけれども、この文面で、紙の教科書の内容と同一の部分についてはとありますが、同一でない部分というのはあるのかどうか。こういう書き方ですと、同一でない部分というのがあって、それが音声とか動画なのかなという読み方をする人も出てくるのではないかなと。そこの部分が疑問に思いました。

3点目です。今現在こういう形で、紙の教科書と併用するということで具体的な答申が出てきているわけですけれども、この答申を見て、具体的なイメージとしてデジタル教科書というのがどんなふうに思い起こされるのかということを考えてみますと、一方では教科書の紙の内容をただ単にPDFにしたような、非常に単純で廉価なデジタル教科書というのが考えられると思います。もう一方の反対側には、教師用のデジタル教科書と言われているような様々なコンテンツが取り入れられているものがあると思います。

このPDF版、そして教師用のデジタル教科書という両極端がある中で、今度平成32年に、教科書のデジタル化が本当に実施されるかどうか分かりませんが、それを想定した場合にどういうイメージになるのかというのが、この答申でどのくらいまでイメージしてもらえるのか。PDFを更に統一的なビューアを付けたようなものになるのか。そこら辺がもう少しはっきりすると、より多くの人たちが納得していただけると思いますし、また議論も進んでくるのではないかなと思いました。

以上です。

【堀田座長】事務局、お願いします。

【事務局】まず、1点目の御質問については、議論いただければというところもありますが、基本的に動画や音声というものについて、これまでの御意見の中でも、質はやはり担保する必要があり、紙については教科書検定を行っている。一方で、可変性があるところや日進月歩でも変わってくるところについて、物理的にも、発行者の方でも検定意見が付いて修正をしていくのがなかなか難しいということを、どうそのバランスをとって考えるのかということだと思います。

その際に、今現在ここで記載をさせていただいておりますのは、文字情報の部分については、検定を経たものがそのままデジタル教科書に載ってくるということで、改めて検定を経る必要はないということで書かせていただいておりますけれども、動画や音声というものについては、その内容について、可変性もあるものであるので、検定は難しい。したがって、デジタル教科書の一部ではなく、デジタル教材という形にならざるを得ないのではないかというのが、この論点の整理の中で示しております。

一方で、動画や音声について、質をどうやって担保するかというところが非常に大きなところでございまして、そこは教育委員会等が内容についてしっかりと確認をするということが、現在の論点の整理の中で示しております。一方で、デジタル教科書が全ての自治体あるいは教科によってそろえられるかどうかというのは、かなり未知数でございます。一方で、紙しか使わない子供たちあるいは自治体というのも、当面は多いということも考えられます。

小学校英語あるいは外国語の学習などは、とりわけ4技能を学ぶということが学習指導で定められておりますので、それは教科書上もできる限り、教科書で学ぶことができるということが必要であろうということは、論をまたないということかと思いますけれども、そのために、紙の教科書においてもURLあるいはQRコードといったことによって、何らかの音声を学習することができるということが必要であり、そのときに、その教科書に書かれているQRコードあるいはURLというものを、全く内容の面でチェックしなくてもいいのかどうかという点については、検定審において御意見をしっかりと頂く必要があるのではないかと考えてございます。

現在、例えば社会科の教科書あるいは理科の教科書においても実際、公的機関などのURLなどに照会するようなものがございまして、あるいは一部の教科書でも、インターネットにつなぐとこういうことが見られるということがございますけれども、その観点では、少なくとも自社の宣伝になったり、あるいは特定の商品を助長したり、あるいは他の商品の非難にならないようにという観点では見ております。しかし、これは新しい問題でございますので、どういった観点で、紙の教科書に掲載する以上は、検定という観点でのことから最低限の質を担保すべきかなどについて、関係の審議会における審議を踏まえた対応が必要というふうになっているところでございます。

2点目でございます。少なくとも紙の教科書の内容と同一の部分について、ここでデジタル教科書の部分については、紙の教科書との同一性を担保した上で、それに一部代えて使用義務を果たすことができるということになるわけでございますが、その部分については、一方で併用であって、紙しか使わない子供と、デジタル教科書も使う子供というのが当面出てくるという中においては、費用負担とかもありますけれども、紙の教科書が無償措置である以上、デジタル教科書について一部の児童生徒に対してだけ、併せて無償にするということは、公平性の観点からもなかなかできないということでございます。

そういう観点も含めて、デジタル教科書の費用負担をするということが大変なのかと思いますけれども、そういう意味では、この同一性の部分というのは、まさにデジタル教科書の部分については、少なくとも価格を低廉に抑え、さらにはデジタル教材の部分も低廉な方が望ましいと考えてございます。

3点目でございます。併用の具体的なイメージということでございますが、これは、基本的には教科書としては基礎・基本的な内容をしっかりと学習する唯一の主たる教材でございますので、デジタル教科書についても紙の教科書と同一のものはしっかりと学んだ上で、質が担保されたデジタル教材という部分について、どの程度のものとするか、あるいは先ほどのビューア、コンテンツについての規格・機能・内容の標準化といったものが、子供たちが使う主たる教材としての使いやすい形での標準化が、更に検討が必要ではないかと考えてございます。

ですから、何でもかんでも教師用の指導書みたいに、子供たちが使うものにいろいろな教材を加えていけばいいというものではないのではないかと考えてございます。一方で、せっかくデジタルのいろいろな多機能ということも含めて、教材とする部分については質を担保した上で、ある一定の教科書にない部分というのも認められていくという、その辺のバランスの中で、教科書としての一体性と質の担保ということを考え合わせた上でのさらなる検討も必要ではないかと考えてございます。

【堀田座長】ありがとうございます。

今の話は非常に重要な話で、特にリンク先の検定のところは技術的な問題と、せっかく技術が進むのに、それをある時点の古い技術で検定して、それしか許さないということが本当に発展に寄与するのかという観点もあるので、いずれにしても、この点は検定審にしっかりと審議していただくために、私どもとしては考え方や課題を明示するところにとどめてはどうかということでございます。

天笠委員お願いします。

【天笠座長代理】失礼します。中座せざるを得ないことで、大変申し訳ございませんけれども、ここで発言をさせていただきます。短く5つ、申し上げさせていただきたいと思います。

まず、1つ目なんですけれども、6つの柱という、確かにそういう構成なんですけれども、その前に数行書かれておりますが、俗にこれを「はじめに」とでも申し上げさせていただきますと、私は本来的にはここの部分は、かなり書き込まなくちゃいけない部分ではないかと思っております。ただ、この専門家会議の委員のそれからするならば、一方においては余りそこら辺のところを書き込むということよりも、むしろここのところはこういう形で限定して、飽くまでもこれは、この部会の専門家委員の意見をいかに述べるための最初のところだという、そういう処理の仕方もあるんじゃないかと思います。

したがいまして、これがまさにこの検討会議の委員の意見の分布を整理するためのレポートだという意味においては、こういう扱い方でよろしいのかなと思います。その上で、これは今後対外的に出るというふうになるわけで、例えばこの省内の中での各種委員会にこれを提起していくとか、さらには国民の皆さんにこの会議の意見を言うというと、このあたりのところのこれでいくと、なぜこういうことを我々は議論して、それなりの見解を示すのかとか、そういうことについての説明がかなり必要なところになってくるかと思いますし、やや大上段に構えるならば、文明論的な見解とか、そういうものだって必要になってくると思うんですけれども、ただ、飽くまでもそうすると我々の完全に守備範囲を超えざるを得ない。

もっと広いブロードの、例えば中教審の総会等々のレベルで話をするとか、そういう話にもつながってくるわけですけれども、あえてそういうところにも、この委員会が問題提起をするということになったときには、ここの部分というのは非常に私は重要なことになってきて、ここに何を書き込むかということですけれども、例えばここに戦後来という言葉もありますが、紙の教科書というのは別に戦後から始まったわけじゃなくて、綿々と、それこそ戦前のもあるわけで、例えばそういうことなんかは議論が始まりますと多岐にわたっているわけで、それはそれとしまして、以下のことを我々としては伝えたいんだという趣旨のことを踏まえた上で、ここの部分についてのそれの扱いというんでしょうか、記述の仕方というのは、ひとつまだ検討すべき余地のあるところかなというのが1つ目であります。

それから2つ目は、次は併用の部分ですけれども、既に併用ということについて、そういう方向性というのが大切というか、その方向だなと私は個人的には思って、この場でも何度か発言をさせていただいております。そのときの、併用ということがどういう意味を持つのかどうなのかということで、恐らく委員の方々は立場がきっと分かれるんじゃないかと推察はしておりますけれども、要するに、過渡期的な措置としての併用という押さえ方も当然あるかと思いますけれども、私は過渡期的措置ということよりも、むしろまさに紙とデジタル、アナログとデジタルが共存するとか併用するということの方が、21世紀のこの国の文化に非常に沿った姿なんじゃないかと個人的には思っております。

要するに、大きな転換期であって、従来のアナログからデジタルに変わっていく今は過渡期的な位置付けだとか、いろいろな立場、考え方があり得ると思うんですけれども、私は象徴的に、この教科書において今、表れていることというのが、そういう意味でいうと、大きなある種の転換点になっていこうという一つの場面だと思うんですけれども、ただ、その姿というのは、私自身としては併用という姿を豊かにしていくのが、この国の在り方ではないかと思っております。

ですから、いずれデジタルに取り掛かる意味での併用ではなくて、両者が豊かに互いに連動していくような意味におけるということの意味、そういう意義を、私の立場からは申し上げさせていただきたいなと思っております。

それから、3つ目についてなんですけれども、それは教科書ごとの特性についてということで発言させていただきました。確かにここに書かれていますように、現状からすると、そういうことについて見解を提起するには、余りにもデータの不足だということ。あるいは、今後に多くの課題を言わなければいけないという、この立場はよく分かるところであります。

ただ、単元についてはともかくとして、教科の特性ということについては、もう少し目くばせを私はできるんじゃないかと思っております。何よりも御承知のとおり、この国は学習指導要領の改訂等々の場合には、教科ごとから入っていくという特性を持っていますので、デジタルについても今後、その方向性を是とするならば、恐らく教科との関係というのは非常に関わる姿になってくるんじゃないかと想定をしております。そういう意味において、教科のことについては、もう少しこの辺のところについては言及をしていく必要があるんじゃないかと思っております。

それから、4つ目としては、こういうデジタルの導入が学習にどういう変化をもたらすのかとか、そういうことについての言及、あるいはこれまでの課題をどう乗り越えていこうと考えているのかということについては、折々に委員の方から様々な御発言が、この中にもこの間、あるわけですけれども、そういうことについての言及が、先ほどの「はじめに」というところになるのかもしれませんけれども、あるいは途中のところに必要になるかもしれませんが、そういうことというのが、これから多くの人にこのレポートを見ていただくに当たっては大切になってくるのかなと思っております。

最後に申し上げたいのが、既に言及はされているんですけれども、条件整備ということに関わってなんですが、先ほども座長がちょっと触れたかと思うんですけれども、これを展開していくという立場に立つならば、例えば教員養成とか教員研修とか、そういうことへの言及、あるいはどの程度、どういう形で書いていったらいいのかどうなのかというのは、またいろいろなアイデアがあるかとは思いますけれども、養成とか研修へのカリキュラムとかプログラムについての改善、あるいは改善の視点、あるいは双方向性ということについての言及というのも必要になってくるんじゃないかなと思います。

【堀田座長】ありがとうございます。多方面から御意見いただきました。

毛利委員、福田委員の順番で行きます。お願いします。

【毛利委員】つくば市教育委員会の毛利です。先ほど山内委員と事務局からありましたお話の関連でお話させていただきたいと思います。

私も以前から動画とか音声とか、あとは問題とかをたくさん収録してほしいとか、いろいろ、その気持ちは変わらないんですが、こういうお話合いをしていたり、この資料を読んだりしていて、解決できるなと思う方法を考えたので、お話させていただきたいと思いますが、URLとかQRコードというのはもう古い技術で、我々の頭の中にはそれしかない、思い付くのはそれぐらいしかないと思うんですが、この中間取りまとめのための論点整理で苦慮していることは、検定するかしないかということなんですね。

なので、思い切って、教科書とほぼ同一のデジタルのものを国としては作成するが、よく社会の授業なんかは教科書と資料集を一緒に置いて授業しますね。先生は教科書の意義と資料集の意義は分かりますけれども、子供たちは教科書も資料集も同じように大切なものとして授業をします。教科書は国で検定していますが、副教材は教育委員会で許可をして使っています。なので、きっと32年の頃には、教科書と同じようなものをデジタルだけにするとしても、教育委員会でデジタル教材を採用して、それをそこの、例えば英語なら英語のコンテンツに入れると、その教育委員会が採用したアドインで音声もそこに乗っかる。そうすると、山内委員が言った英語とか、アメリカとかイギリスとかという問題も、各教育委員会で採用すればなくなる。

5ページに、「教育委員会等が、その主体的な判断でデジタル教科書と一体的に使用するデジタル教材を選定できるような仕組みが望まれる」とありますが、なので、アドイン、国で定めた教科書の中に教育委員会が選んだ教材を組み込むと、音声もできるようになったり、ルビが振られるようになったり、いろいろな機能をシームレスでなるようにすると。それは、どこが教育委員会が選定したか、どこが国が検定したかは、もちろん大本の国の本当にスタンダードなものが国で、それ以外のものは各教育委員会でやったものということで、あと4年もすればきっとそういう、リンクして飛ばすというような概念ではなくて、そこに入れれば英語のセンテンスが、その教育委員会が意図するようなところを読み上げてくれるものもできるんじゃないかなと。その仕様を公開して、こういう仕組みをあと4年後に作ってくださいと言うと、きっと業者の方は作ってくれるんじゃないかな。

動画についても、国で定めたものの教科書にも写真が載っていますね。それはそのまま写真として利用するが、そこをアドインで、社会のデジタル教材を買ってそこをやれば、そこをクリックしたら、国のではクリックしても動かないが、教材をアドインすれば、そこは動画とかいろいろな一覧が出てきたりとか。それは教育委員会が定めて購入したデジタル教材とやれば、解決するんじゃないかなと思いました。

【堀田座長】今までの議論を集約すると、今のような形になるだろうと。だからビューアが標準化されてというのがここには書かれていて、問題は、その飛んだ先の教材の質保証は非常に重要で、一方で今、紙のそういう検定していない教材はどうやって質保証されているかといったら、それは当然、業界内でと、あとは競争原理によって保たれて、あとは学校の先生の目と教育委員会の認可ですね。それによってやっているわけですから、同じスキームでいけるんじゃないかという判断で、ここには今書かれています。


【福田(純)委員】ありがとうございます。これまでの多岐にわたるお話は、私も分かりやすくまとめられて、また方向性の示された論点整理だと思いました。学校現場の校長として、その感覚の中でお話をさせていただきます。

この論点の整理の中にも触れられてはいるのですが、費用負担と、それから使用環境についてのお話です。先ほどURLとかQRコードとかいうお話も出ていて、毛利先生は、それはもう古くてなんていうお話もあったんですけれども、現場の中では、経済的な面でそういうICTに関わるものが買えない状況が発生していたり、また知識とか技能の面で、その意味すら分からないという格差が生じているのが現状です。

それも踏まえた上でということではあると思うんですけれども、こういう選択肢が幾つかあっても、教科書の選択肢を持てない境遇もあるということで、少なくとも全員ではなくとも、本人又は家庭の意思に伴う選択ができるだけの補助の体制というのを整えていく必要があるのではないかなと思いました。そうなると、学校とか保護者とかのレベルの話かなと思っていたんですけれども、基本的に各教育委員会がそれを決定するということが書かれていて、そこについては安心をしました。

ただ、今の時代に、又はこれからの時代にふさわしい教育を推進する、また今の科学技術の進歩をひとしく享受することができるためには、例えば今、学校にどれだけのICTの整備があるのか。教師に1台、まずあるという段階を経て、それから子供たちに1台の端末が入る。そういうところがステップを踏んだ整備がされない限り、これって現場にとっては、私でさえそうなので、教員レベルまで行ったときには、結局よく分からない話になってしまうような気がするんです。

ただ、だからこれを後戻りするとか、そういう意味ではなくて、逆にこのレベルで、この恩恵を子供たちが享受することができるようにするためには、このレベルまで、この程度の整備が必要だとか、こういうステップが必要だとかいうことを、この会の趣旨とは違うかもしれないんですけれども、提示することが、国とか、又は整備が遅れている各自治体を動かすための一つの大きな要因になるのではないかと期待しています。

ですから、守備範囲がどこまでかということは微妙なところはあると思うのですが、現実的に経済的なところとか、ハード面での整備がある程度のベースがそろわないと、実現が難しいことなのではないかなと思いました。

【堀田座長】ありがとうございました。今のは非常に慎重に言っていただいたんだと思いますけれども、今日は情報教育課からも課長さんがお見えですので、そちらが主として整備なんですけれども、逆にその整備の進捗を考えると心配はあるにしても、教科書までデジタル化されるんだから、ちゃんと整備しておかなきゃいけないんじゃないのみたいなメッセージは、連携しているという前提でしっかりと書ければいいかなと思うんですけれども、何か磯課長、ありますか。

【磯課長】御指摘ありがとうございます。もちろん、デジタル教科書の方向性について、この検討会議で見えてくるということと、あともう一つ、動きとしてありますのは、アクティブ・ラーニング等新しい学びの姿において、ICT活用教育は有効であるという議論が出てきています。

その観点から、私どもは2020年代の教育の情報化に向けた懇談会を立ち上げて、先般、中間取りまとめをしているんですけれども、その中でこういった整備計画、次の整備の在り方についても議論していくということにしています。これからワーキングを立ち上げて、堀田先生にも主査になっていただいて、立ち上げています。その中でもこういった動向を踏まえて、検討してまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

【堀田座長】ありがとうございます。

【福田(孝)委員】失礼いたします。佐賀から福田でございます。このたび私は3月に佐賀県教育委員会を定年退職いたしまして、4月から武雄市にICT教育監という立場でお世話になっておりますので、今回は特に小中学校段階のICT利活用教育について携わらせていただこうと思っております。

今回御提示いただきました中間まとめでございますけれども、小・中学校段階から高等学校までをまたいで、非常によくまとめていただきまして、ありがとうございます。ただ、その中で、3ページの中ほどに、いわゆる選択制というのを排除すべきでないということをお書きいただきまして、その上で、2ページの上段の方ですけれども、調査研究が必要であると。そして4ページにも、導入後における調査研究、これは説明の中では導入前後を含めてとありましたけれども、その研究結果を踏まえて議論をしていくということをお書きいただいております。

そうなってくると、今後、小学校、中学校、高等学校、全体を含めて、全国で全校展開、全体展開になると思うんですけれども、その場合に、先ほど磯課長のご説明の中にもありましたように、端末を含めた全体のICT環境の整備をどうするかがどうしても検討に入ってくると考えます。そうなってくると、私が今回感じたのは、高等学校段階と義務教育段階の決定的な違いとしては、保護者への説明の重要度、これが決定的に違うと思います。私は、義務教育の場に籍を置いて、まだ1か月なんですけれども、その違いをひしひしと感じております。

そうなってきますと、一つのやり方といたしまして、例えば高等学校段階というのは、多様な教育内容が現在も行われておりますし、教科につきましても学校裁量で相当選択の余地が残されていると。そういうことを考えたときに、全体にICT教育の必要性、また教科ごとの識別等をするときに、高等学校段階というのを少し先行実施という形で選択制を提示するのも一つの方法かなと考えております。

ということで、小中高をまたいだときに、高等学校というのを特出しする形で一つの検討の余地にしていただければ、端末の整備等についても義務教育ではございませんので、ある程度学校段階での裁量は許される。その成果を踏まえて、小中学校に対して議論を深めていくというのもあるんじゃないかと思っています。

以上でございます。

【堀田座長】ありがとうございます。特に無償給与の問題がありまして、小中学校は非常にデリケートな部分もありますので、今のような御意見の方向で進めていきたいと思います。

東原委員。

【東原委員】東原です。デジタル教科書の範囲というものが今回明確に示されてきたことによって、最初の頃に子供たちにどういう学習環境が用意できるのだろうかというフリートーキングをやっていたときに、豊かな環境がいっぱい夢見られたわけですけれども、それと対照的に、ちょっと小さくなったという感じがするわけで、そこを保障する、補うという意味合いもあって、今回のまとめを拝見すると、デジタル教科書に関する言及が割としっかりと入ってきたなという、そういう整理なのかと自分は理解しております。そういう観点から、2つぐらいのことをお話させていただきたいと思います。

まず、子供たちにどういう学習環境を提供できるかという話になるわけで、そうすると、5ページのデジタル教材というところに書かれておりますように、デジタル教科書と一体的に使用できるという、「一体的」というところが大事なキーワードであろうと。その一体的であるということと同時に、デジタル教材の方は質を保証しなくちゃいけない。質の保証の担保のことが強調されております。

この辺は大変重要なことだと思うので、賛成なんですけれども、これを実際にやるためには、ここにもう一言追加していただきたい文言がございます。具体的に申し上げますと、今の囲っている中の真ん中あたりに、「デジタル教科書と一体的に使用するデジタル教材」、この行のところに、選定の仕組みはこれから検討しましょうと書かれているんですけれども、選定だけでなくて、デジタル教科書とデジタル教材が一体的に動いてくれるような仕組みも検討すべきだということを、是非追加していただきたいと。

今私が言うデジタル教材の方は、質が担保されるような、教育委員会が認めるようなというのは当然のこととしての話なんですけれども、そういうものについては、ちゃんと関連付ける仕組みが必要なわけで、そのことがここに書かれることが大事じゃないかなと。そうしますと、その下の方にありますコンテンツやビューアの標準化を図るというところと、うまくつながっていくのかなと考えるところです。

いずれにしましても、一体的にというところの話がうまくいきますと、豊かで分かりやすい学習環境になりますし、最近別のところでも話題になっております、個に応じる教材ということに対することを、こうやって保証していくということができるわけですし、というわけなので、一体化するための一つの方法は、教科内容コードみたいなものを定義していったらいいということなんじゃないかと思うんですけれども、そういったことを是非入れておいていただけると有り難いというのが1つ目です。

2つ目も同じところの話なんですけれども、今のちょうど間になりますが、イントラネットという言葉のあたりの話と関わるところです。一方、7ページにもありますが、ネットワーク環境というところ。「学校・家庭を通じて、インターネットへの接続の管理やフィルタリング等により、有害情報対策を徹底すべき」、このとおりであります。その最後のところの、7ページのことをしっかりとやるのであるならば、5ページの方は、あえてイントラネットと書いてしまうと今後の発展を阻害するように思うので、イントラネットという言葉はちょっと強いかなという印象です。

言わんとすることも、趣旨も理解しているつもりでありますので、そこは何も御意見申し上げるところではないんですけれども、「等」という言葉に含まれるということだけでは、ちょっと弱いかなと。この後、もしかしたら中川さんに技術的に補っていただければいいかもしれないんですけれども、豊かで、また個に応じる、いい学習環境を子供に提供するためには、教育委員会が選んだものであって、有用な、有益なものは世の中にいっぱいあるという、そういうのは既に起こっていることなので、この辺、うまくまとめていっていただけると有り難いなと思います。

以上でございます。

【堀田座長】ありがとうございました。安全な学習環境というのは当然のことなんですけれども、今後、良質なものを安価に提供することを考えると、デジタル教科書はともかく、デジタルの教材の方は、恐らく流通に掛かるコストを抑えるために、ネット上にしか置かないというのは当然あると思うんですね。インターネットに接続しないと、それは得られないというふうに考えると、フィルタリング等は当然重要だけれども、そういうインターネット上の教材をうまくハンドリングできるような仕掛けというのは必要になろうかということかと思います。

中川委員。

【中川委員】日本マイクロソフトの中川でございます。

2点ございまして、1点目が2ページ目の上段なんですけれども、健康に関する記述に対する括弧の部分で、導入後も、より実践的な研究調査が必要だという記述がありますけれども、もう一つ踏み込んで、これは有識者のコメントも、山梨大学の山縣先生に頂いたナレッジでございますけれども、VDTの作業における労働衛生管理のガイドラインというのがもう厚労省から出ているというコメントもありましたので、あそこの内容を踏まえて、連続使用時間というものをちゃんと管理できるような仕組みを、これは例えばデジタル教科書を見ていなくても、デジタル授業を見た後に、その後、休み時間も引き続き、何か別のことをやっていて、ずっとディスプレーを見ているということがあると、例えば休み時間を経て2時間、3時間というふうにやってしまうと、連続使用時間になりますので、そういったものをハードウエアやオペレーティングシステムのレベルから管理するような仕組みを設けていることが望ましいというふうに書いてしまった方が、多分これを見た一般の方々が、健康に関してしっかりとガイドラインを踏まえて配慮をしているという印象を与えるのではないかなということで、1つコメントをさせていただきました。

2点目が、東原先生からもコメントがありましたので、技術的な観点ということで、5ページの部分に関してコメントをさせていただきますが、毛利先生もおっしゃっていらっしゃった相互的なリンク、いわゆるURLのリンクのみならず全てのリンケージという観点で言うと、それをするためには、コンピューター屋の立場から言いますと、スキーマがしっかりと公開されていることというのが重要になりますので、ただ東原先生が言ったことをコンピューター屋の言葉で言い換えているだけなんですが、教科におけるスキーマというものがしっかりと公開されていれば、全然別の会社がどこかの教科書にリンクをして優良な副教材を提供したいといった場合に、そういったものが可能になってまいりますので、ここに書くべきかどうかは疑問ですが、スキーマが公開されることというのが標準化のプロセスの中で一つ必要になってくるかなと。

それから、それに関連して、5ページの一番下の囲みには2つ書いてあって、2個目の部分のイントラネットという部分に関しては、社会のトレンドを言いますと、今企業は、自社内に重たいサーバーとかを持っていると非常に工数が掛かるので、安全性が確認されたという前提で、皆さんクラウドの方にどんどんと移行されていらっしゃいます。これは国の機関の一部もそうですけれども、といった流れを考えたときに、私も東原先生と同様で、ここであえてイントラネットということを書くことに意味があるのかなというのは少し疑問がありまして、現場の負担が非常に大きくなります。

一方、IT産業にいる見地からいたしますと、イントラネットであれクラウドであれ、適切な手順を踏めばセキュリティーというのは担保されるという立場にありますので、例えばそれは証明書であったりとか、これが検定を受けた教科書であるということを示すための、例えばブラウジングの仕組みであったりとかというものは、容易に開発が可能だと考えておりまして、ここであえてイントラネットという言葉を使うことには、少し私も違和感があります。

以上です。

【堀田座長】ありがとうございました。こういう技術に関する用語は非常に慎重に使わざるを得ないと思っていますので、御意見ありがとうございます。

高梨委員、行きましょう。

【高梨委員】荒川区の教育長の高梨でございます。6ページのデジタル教科書の費用負担の在り方の項について、意見を述べさせていただきます。

先ほど福田純子委員からもありましたけれども、現場、各自治体の教育委員会においては、公教育において保護者の経済的負担の軽減ですとか、あるいはまた貧困家庭に対する、低所得者家庭に対する支援の充実に努めておりまして、こうした中で、公教育の無償の原則の中で、更に保護者に負担をお願いするというのは極めて厳しい状況にあるという現実を踏まえて、デジタル教科書を導入する際に保護者負担の増になる可能性もあるという書き方をされているんですけれども、多分、実際導入する場合には多くの自治体が、自治体の負担で導入することになるだろうなと想定しております。

ですので、まずは点線の中ですけれども、「導入に当たっては、保護者負担の軽減に向けた検討が必要である」と記載していますが、保護者負担に行く前に、自治体負担の軽減ということで、それを入れていただきたい。多分、保護者負担にすぐは行かない。自治体で何とか保護者の負担を掛けないように、自治体がかぶるということになる可能性が多いですから、自治体負担の軽減ということを入れていただきたいのと、あと、その前の方で、「デジタル教科書についても無償措置の対象とすることは一般的には困難」と書いてありますけれども、「一般的には」ってどういう意味なのか、よく分からない。具体的に、全国でやるとしたら財源確保の点で大きな課題があるとかというのでしたら、話が分かるんですけれども、一般的には困難という第三者的な言い方というのがどうなのかなと思ったんですが。

以上です。

【堀田座長】ありがとうございました。

続いて、井上委員、尾上委員、お立場をうまく使っていただいてお話を、まず頂ければと思います。保護者負担の話も出ていますので、よろしくお願いします。井上委員から。

【井上委員】井上です。よろしくお願いいたします。

軽減負担はもちろんですけれども、保護者としましては、いろいろな立場の皆さん、先生方からお話、議論、今までもしていただいていますし、今後も専門的な委員会がまた発足されて、話合いに持っていくかと思いますけれども、保護者としましては、飽くまでも子供たちが分かりやすく意欲的に取り組める授業を望み、子供たちの成長に即した適切な指導がなされているかどうか不安ではあります。

なので、保護者としましては、直接携わっている教職員の先生ですよね。そちらの先生方とのずれがないように、適切な情報の公開と、その情報が保護者まで均一に差がなく伝わるようにお願いしたいかなと。そこまで行くまでは先生方にお任せするしかないので、保護者としてはそこのラインが最低限伝わってこないと、私の方は高校生が主になりますけれども、なかなか温度差がたくさんありますので、その辺をお願いしたいかと思っております。

【堀田座長】ありがとうございました。

尾上委員、お願いします。

【尾上委員】公益社団法人日本PTA全国協議会の尾上です。

まず、負担の件に関しましては、小中学校の保護者の見方からすると、当然教科書なので負担はないという見方が大勢を占めています。もし仮に負担があるとすれば、もう少し踏み込んだような、専門的に学習したいものが使えるのであればというような、違う認識が多かったように思います。

また最近、デジタル教科書はどうなっているという話がたくさん出ていまして、もうデジタル教科書になるものだという認識が多いです。今検討している内容はそうではないのだよという話をしても、こういったものを出せる機会が今までなかったので、今回の中間まとめのこの部分に関しては、本当に有り難いものであるし、皆さんが検討して、結集した中身になっていると思います。ただ、伝えるに当たっては、天笠委員が言われていたようなことの懸念は多々あります。

あと、中身に関しては、3ページにある「中長期的視点に立った検討」という項目がこの部分にあるのですが、できればこれを抜き出して、最後なのか、どの場面なのか分かりませんが、全体的な中長期の視点というのが分かるようになれば、私としては説明しやすいので、少しその辺の御配慮をお願いしたいと思います。

以上です。

【堀田座長】ありがとうございました。解決すべき課題は多岐にわたっていまして、それを取り急ぎできるような考え方で取り急ぎできることと、法改正も含めて少し中長期。時期が約束できないのが難しいんですけれども、その辺を整理して、できればスケジュール表というか、進行表みたいなのができればいいんですけれども、そこまで行けるかどうかも含めて検討したいと思います。ありがとうございます。

神山委員、近藤委員の順で行きます。どうぞ。

【神山委員】岐阜特別支援学校の神山といいます。よろしくお願いいたします。

この春休みに市内の先生方と意見交換する機会がありました。そのときに聞かれた意見も踏まえさせていただきたいんですが、岐阜市内はかなり指導者用のデジタル教科書は使われているところです。そこの先生方は、教科書使用義務となると、全て教えなきゃいけないという気持ちになっているんだなということを強く思いました。このデジタル教科書も使用義務となると、全て網羅されているコンテンツを使わなきゃいけないという負担感を、現場の先生は不安感として抱いているなと、1点強く感じました。

子供たちも基礎・応用・発展、基礎をじっくりやれば力が付いていく子も、応用・発展までいろいろなコンテンツがいっぱい出てきて、授業が進むことで身に付くこともいっぱいいっぱいになって、力が実際付いたかというと、難しかったという意見もあったので、使用義務の理解の仕方も、このデジタル教科書に関してだけでなく、現場にしっかり伝えていけるといいのかなと思いました。

授業も見させていただいたんですが、導入があって、基礎・基本を押さえる部分があって、みんなで話し合うアクティブ・ラーニング的な活動がなされていったんですが、基礎・応用の部分が非常に少なくて、アクティブ・ラーニングでみんなでわあわあ楽しく進む時間が非常に長くて、子供たちの感想は「楽しかった」となったんだけれども、実際先生に聞いてみたら、単元末テストをやってみたら定着度は少なかったということだったので、このデジタル教科書で扱う部分というのは基礎・基本を重視したところにして、アクティブ・ラーニング的なコンテンツは副教材的なところに収録していくような方向でまとめていけると、現場も使い勝手がよくて、子供たちも生きる力を付けていけるんじゃないかなと。そんなことを感じました。

以上です。

【堀田座長】ありがとうございました。

近藤委員、お願いします。

【近藤委員】東京大学の近藤です。私は主に5ページの、障害のある児童生徒に対する配慮というところについて述べさせていただきたいと思います。

今回のまとめは、非常にしっかりまとめてくださっています。大きく言うと紙とデジタルということを、適切で柔軟な形で併用していくという方向性が示されたということで、非常に私も納得しているところです。更にここの5ページの真ん中のところで、紙とデジタルと柔軟で適切な併用ということと同時に、障害のニーズに対応した教科書やコンテンツの必要性も示されており、その柔軟性、多様性の一つとして、障害に対応した教科書コンテンツも含めていくということであると理解をしています。

それから、ビューアに関しても、いわゆるユニバーサルデザイン等の観点から、障害のある子供たちが利用するということも想定した機能を入れていくということが含められているということも、非常に評価しているところです。

ですけれども、ユニバーサルデザインを想定した機能を用意するというのは当然なんですけれども、ユニバーサルデザインの基本というのは、ワン・サイズ・フィッツ・オールという、1つのもので全てのものに対応するということは不可能であるという考え方を前提としておいております。したがいまして、障害のある子供たちの、個別のニーズに対応したデジタルコンテンツの改変という作業は、結果として今後も残り続けるのであるという観点が示されたと理解しております。

実際、今日お配りした資料の中でも届けておりましたけれども、DO-IT Japanでは、障害のある児童生徒・学生が誰でも登録できる情報提供のプログラムを行っていて、昨年度ですと1年間で800名程度の参加登録がありました。彼らの中で学習障害のある子供たちの比率というのは非常に多くなってきています。そこで私たちの研究室では、教科書を別の形に、障害のある子供たちでも利用できるようなデジタルデータの形に変更したコンテンツを制作して、オンライン図書館で配付しております。昨年1年間では341種類の教科書コンテンツを制作し、150校ほどの学校の児童生徒に利用されているという状況です。

そういう制作をしていると、デジタルコンテンツの改変作業を行う場合に、その元となる教科書データの入手が必要となってきます。このことについては何度か、会議の中でも私から申し上げさせていただいたんですけれども、今回しっかりまとめていただいたので、関連するポイントというのをここで述べておきたいと思います。

まとめにはデジタル教科書の、ビューア等の規格・機能の標準化と書いてあります。これには、コンテンツの規格や機能の標準化も、不可欠となってくると考えます。私たちが行っているように、他のボランティア団体などでも、教科書アクセシビリティを確保するために、コンテンツの改変をして教科書デジタルデータを配ることを行っています。

今後コンテンツの標準化プロセスが進む中で、障害のある児童生徒の利用を想定した改変も想定した標準化になっていないと、その標準化が定まった後、私たちやボランティア団体等の方でアクセシビリティの確保について個別対応できる範囲が非常に狭まってしまうということがあります。ですので、標準化のプロセスの中に、障害のある子供たちへの教科書データ提供ということを考えて、意見が必ず反映されるようにしていただきたいということです。

それと、著作者の権利制限についても言及されていたんですけれども、これについても、現行の教科書バリアフリー法という法律というのは、基本的には印刷された拡大教科書を提供するための法律、それを前提として作られた法律になっているので、音声教科書等のデジタルのものについては、デジタルのものを私たちのようなところが作る場合にどういった権利制限が行われるかということを明示されていないところがあります。なので、障害を考えた音声教科書等を作る場合の権利制限というところには、デジタル教科書のみではなく、我々のようなアクセシブルな、障害のある人もアクセス可能なものを制作することについても含めた権利制限という形にしていただきたいと考えています。

このポイントというのは、5ページのところに標準化と権利制限ということについては、是非含めていただければと思います。今後デジタル教科書が作られることによって、そのデジタル教科書だけで、教科書が利用可能となる障害のある子供たちの数も多くなるとは思います。けれども、そのデジタル教科書の機能だけでは利用できない、障害によるニーズがあることで、取り残される障害のある子供たちが必ず存在しています。なので、こういったデジタルコンテンツの改変に向けたデータ提供の在り方について、標準化と権利制限について、それから合理的配慮として、他の児童生徒と異なるデジタル教科書を、障害のある児童生徒だけがこうしたものを利用することを認めるということも、必ず含めていただければと思います。

以上です。

【堀田座長】ありがとうございました。

新井委員、お願いします。

【新井委員】全体を拝見しまして、私も大変整理できているのではないのかなと思います。ここまで整理していただいておけば、今後具体的な検討は、橋渡しができていけるんじゃないかなと思います。まだ具体的にはもちろん、これは論点整理ですから、検討が必要なんでしょうけれども、守備範囲の問題というのもいろいろ出ていますが、これだけここの範囲で論点が整理できていれば、ここから先、かなり具体的な橋渡しができるんじゃないかなと思います。

それで、悩ましかったのは、デジタル教材のところで、デジタル教科書と教材を一体化というときに、先ほども御指摘が出ていましたが、実際は教科書と教材は現状、採択も流通も違うわけですよね。それがデジタル化されたときに、それを一体化するという形は、これをどういうふうに設計していくかというところが結構悩ましいところなのかなと思います。この文書の5ページのところに、デジタル教材の真ん中あたりに、「一体的に使用するデジタル教材を選定できるような仕組みが望まれる」という一文に、その辺の検討をすることが必要だということが込められていると私は理解しましたが、余りそこを深入りすることは本会ではせずに、その仕組みをどういうふうに設計するかというところの仕組みの指摘が重要かなと思います。

そのときに、デジタル教材は現在のところ、デジタル教材そのものの採択は教育委員会なのですが、実際、紙の教材は学校単位でやっているわけですね。学校個々で事情が違うので、先々学校単位でもデジタル教材が採択できる仕組みを考えるとすれば、このボックスの中の教育委員会等の「等」の中には、学校も含まれるという解釈を私はしたんですが、そういう意味で、ここのボックスの中には、今後の具体的な検討をする時に、重要なことが書かれているなと理解をしました。というのが印象です。

それからあと、大変細かいことで恐縮なんですが、ビューアという表記ですね。これはほかの委員会、例えば標準化の委員会でも、東原委員が座長をされていますが、これの表記がこうだったかどうか、私は記憶がないのですが、ビューアという言葉はあちこち出てきますので、引っ張る棒がない表記もあるし、後に引っ張る棒が付いている場合もあるので、文科省として出すときの表記は統一しておいた方がいいのかなという印象があったのですが、どっちで出していたか、過去のところは私は記憶がないので、それは確認しておいていただいた方がいいかなと思います。

以上でございます。

【堀田座長】ありがとうございました。教材の採択については事実上、学校がある程度責任を持っているとはいえ、教育委員会に届出をしているということで、教育委員会が認めているという形だと思うんですけれども、事務局、何か説明ありますか。

【事務局】基本的には教育委員会規則がどう定められているかによるんですけれども、一般的に申し上げますと、第5回か6回の検討会議でお話ししたかと思うんですけれども、教科書に代えて使用する教材、同等のものについては、教育委員会自らが許可だったり承認をしているパターンが多くて、補助教材、副教材については学校が届出を行うという形の規則になっていることが多いと思います。

ただ、その場合にあっても教育委員会というのは、学校において仮に不適切なものが使われているときには、それを指導監督する責任があるという意味において、教育委員会が責任を持っているという表記にさせていただいております。ということを含めて、昨年、教科書課からではないんですけれども、文部科学省から教育委員会にも通知を出させていただいております。

【堀田座長】ありがとうございます。いかに広いところとつながってしまっているかということが、よく分かることだと思います。ありがとうございます。

ほかに御意見、まだおっしゃっていない方もいらっしゃるので、じゃ、黒川委員、行きましょう。

【黒川委員】光村図書の黒川でございます。今後の課題は、デジタル教科書と定義付けられたものと、デジタル教材との一体的な活用を、どう考えていくかということかと思います。これは業界的にも、非常に大きな関心事であります。

そこにはどうしても一定の標準化が必要とされる。何も無軌道ではできないものですから、ロードマップの作成はその後の議論かと思いますが、大まかな流れの把握が必要なのかと思います。例えば、4ページにあるURLやQRコードの教科書への掲載という問題は、非常に初期的な解決策の一つだと思うんですね。

先ほど、そんな方法は古いというご意見もありましたけれども、そういう段階から、更に発展した形が学校の整備とともに表れてくるという、段階的な議論を今回はしていると思います。そのためにこうした方法が、実現可能性のある範囲として指摘されているわけですが、これはちょっと強調され過ぎているような気もしました。その他、「教科書へのURL/QRコード等の掲載の在り方」というところの「等」はほかに何があるのかなと思いつつ、その辺の問題を他の審議会での議論に委ねていくことが少々不安なところもございます。

もう少し具体的な方向付けがあってもいいのかなというところです。なぜならば、今教科書の場合は、URLやQRコードの掲載に関しての否定はあまりないと思いますので、ここにどのように制限を加えていくのか、要するに質の担保のためにどうしていくべきか、ということを前提とした、他の審議会への申し送りがあるのかなというところを1点申し伝えます。

もう1点、6ページにあります著作権の許諾の問題についても、ほかの委員会審議に委ねられることになっています。ただ、著作権は人格権の問題もありますが、制作コストに大きくはね返るものでして、「学習者用デジタル教科書」を考えた場合、1人1台ごとの端末に著作権料をお支払いしていくという考え方になります。ですので、これは法的な改正なり検討なりをしないと、膨大な額になる可能性があり、国内だけは押さえられても、海外の問題等も含みますと大変な問題がございます。著作権の内容に関しましては、コストの面にライセンスの問題が絡んできますので、もう少し議論を方向付けした方がいいのかなと思っています。大変難しい課題とは思っています。

ネットワークの問題に関しましては、その他の先生方がおっしゃっている通りです。これは感想ですが、「学習者用デジタル教科書」をいくつかの学校で導入していただいていますが、実際、全端末のローカルに入れていくといった、時間も費用もかかるような大変な作業もあって、少しおじけ付いているところがあります。けれども、こうした整備面では、相当なコストが掛かるという前提も踏まえながら、ロードマップが築けたらいいのかなと思います。

最後に、そのコストに関連して、デジタル教科書の価格というものの位置付けが分かりにくいのかなと思っています。非常に制作コストの掛かるものであるということです。当然ながら、可能な限り低廉に抑えるということが絶対条件ではあるんですが、そのレベルがまだよく見えないのかなと。もう少しクリアにしないと、みんな怖くて作れないなというところがございまして、ここは率直なところ、もうちょっと議論したいと思う次第です。

以上です。

【堀田座長】率直に言っていただきまして、ありがとうございます。検定の問題と著作権の問題は、ここでどこまで書けるかというのは分かりませんが、こうすべきであるとは書けないかもしれないけれども、こういうことが現状においては課題がこういうふうにあるんだと。例えば、権利取得にこんな課題があったり、コストにこのぐらい課題があったりしているんだという現状を、しっかりと書くことはできるんじゃないかと思うので、それを開始するための方法を、検討を委ねるという書き方は可能かなと思いますので、そういうテクニカルな部分も含めて、少し検討していきたいと。

最後の定価のことは、事務局、何かありますか。

【事務局】まず基本的に申し上げますと、定価が設定できる製品というのは限られており、電子書籍の類いのものに定価を付けるというのは、制度上不可能となっております。なので、価格という形にはなるんですけれども、ではその価格というのを、定価もそうですけれども、定価というのは作る方が、小売店が消費者に売るときに、売る値段を決めることができるというのが定価でございますので、それが価格になると、例えば教科書の話でいいますと、作った制作者が学校だったり児童生徒に売るときの価格を決め得ないということになる。今、紙の教科書で申し上げますと、定価というのを文科大臣が認可しておって、その認可をすることで定価を低く抑えている状況になるんですが、その仕組み自体が使えないというのが現状でございます。

なので、制度上、定価というものはデジタル教科書には存在しないのを前提とした上で、その価格というものを抑えるためにとなると、先ほど黒川先生がおっしゃったように、コストとか著作権の話とかが出てくるんですけれども、そういったことを、結局は質のいいものをいかに低廉に可能な限り抑えるかといったことが、御検討いただきたいとは思っております。

以上です。

【堀田座長】毛利委員。

【毛利委員】井上委員からもありましたけれども、先生にお任せするしかないとかいうことで、保護者の皆様の中には、「デジタル教科書」と、インターネットと、もっと大げさに言えばゲームと、どう違うのかというふうに思っていらっしゃる方も多いと思うんですね。

このデジタル教科書が出てきた背景には、文部科学省で学びのイノベーション事業等で、デジタル教科書の検証をしてみたり、現在各教科書会社から指導者用デジタル教科書があって、それを実際、いいということでお使いいただいている方々がたくさんいらっしゃる。だけど、保護者の皆様にはそれがなかなか伝わらないということがありまして、これが普及するためには、学校だけじゃなくて、保護者や国民の皆さんにも知っていただくという、デジタル教科書のよさというのを是非知っていただくという活動を、どこの部署でやるかあれですが、それも大切なことかなと思いました。

以上です。

【堀田座長】ありがとうございます。啓発は非常に重要なことかと思います。

ほかにいかがでしょうか。金子委員、よろしいですか。

【金子委員】今回のまとめは非常に現実的にというか、現実にすり合わせてまとめていただいて、有り難いなと思っています。

今回出た、こういった内容というのは、かなり限定されて制約された内容であると思うんですけれども、これが今後浸透・拡大していって、そして一般化していく。その次、何が起こるかというと、もう当たり前の状態。そしてその先に何があるかというと、意識すらされない。それがICTだと思うんですよね、ICTと教育の関係というのは。もしかするといずれ、ここでこういう議論をしたということは、本当にそんなに遠くない未来に、すごい昔話みたいなことになっていくんじゃないのかなと。でも、この一歩というのは非常にゆっくりといえばゆっくりなんですけれども、すごく重い一歩になっていくんじゃないのかということ。

それから、学校にいる者としての立場として、何をやるにしてもそうなので、当たり前のことなんですけれども、学校の教育が活性化するときというのは、教師の都合だけで学校が動くと、学校は沈滞するんですね。だからそのときに、生徒の未来をどう考えるかというのが最優先されて、その次に教員の都合というのがある。そういう状況のときに教育は物すごく活性化するというのを、我々は実感しているんですね。

だから、常に生徒の未来、今いる生徒、これから入ってくる生徒の未来というのが、ずっと考え続けられていくべきことだろうなと思いました。

以上です。

【堀田座長】ありがとうございます。まとめの言葉になりましたので、御意見いただくのはここまでとさせていただきたいんですが、私も委員の一人ですので、少しだけ御意見を話したいと思います。

今、金子委員がおっしゃったように、私どもは当然ながら子供たちの将来を考えて、どういう学習環境であるべきかということと、教科書をデジタルでも提供していくということの制度的な部分の課題を洗い出しているわけでございますけれども、先ほど新井委員がおっしゃったように、教科書と教材というのは今も、紙ではそれぞれにあって、流通経路もみんな違って、制作者も違うんですけれども、学校では授業のやり方で、そこをうまく併用しているわけですよね。それが天笠委員のおっしゃる、授業の方法としてどういうイメージになるのかということを、デジタルでも示すべきだということかなと思うわけです。

ICTになれば、もしかしたらそこはシームレスにという話がありますので、技術がそれをシームレスにすることによって、学びがよりいい方向になっていくということを、どういうふうに私たちは実現しようとしているかということかと思うんです。しかし、それを本当にやろうとすると、現行の法制度の中ではかなり課題がいっぱいあって、その課題を今、洗い出そうとしているんだと考えるわけですね。

この検討会議は、やみくもに長く続けることもできませんし、中教審ももう次の学習指導要領の方向感もかなり明確に出してきていることを考えると、この辺で一段落させて、何らかのメッセージを発出しなきゃいけないと。そのためには、制度をここからあそこを変えろというよりも、まずは現行の制度の中でできる部分をある程度認めて、それをやっていく、やりやすくすることを通して、デジタルと今までの紙がうまく融合していくことによる検討課題ですね。

そして、それがそのうち、デジタルがみんな有効なのは分かっているから、どんどん制度を変えてやっちゃえばいいんじゃないのみたいなことを、多くの人が感じるような段階に、次は持っていきたいと。そのために、まずは現行の枠組みの中で、デジタルをどうやって推進していくかということを検討するに至ったと僕は理解しています。

ですので、この検討会議で何が明らかになったんですかと言われると、何も決まっていないような気はするんですけれども、今のような考え方をほぼ合意して、その結果、今の範囲の中でできることとして、こういうことをやりましょう。そして、課題としてこういうことがありますと。それを短期的にはこういうふうにやって、中期的にはこういうふうに解決していきましょうという方向を出す。検討会議ですから、そういう形なのかなと思います。

これが私たちのミッションだとすると、2つ目なんですけれども、それがこの時期に行われているということの重要なポイントは、次の2020年の学習指導要領で、どういう学習が期待されているかということと、どういうふうに呼応するかということだと。例えば、今回の論点の整理には、まだアクティブ・ラーニングという言葉も、カリキュラム・マネジメントみたいな言葉も、つまり次の学習指導要領で重要な概念になるような用語は、まだ十分に入っていません。そことの関係をはっきりと示すのも、私たちとしては大事なことかなと。

教育内容を決める検討会議ではありませんけれども、主たる教育内容がしっかりと収められている教科書のデジタル版をどうするかということを検討している会議ですので、学びの環境を責任を持って整備するという考え方から、教科書と教材と、あとは条件整備と、守備範囲はいろいろなんですけれども、そういう中で、中教審との関係をある程度はっきりとさせていくべきかと。

どこまで書くかが難しくて、例えばデジタル教科書の範囲をこういうふうに限定すると、デジタル教材に結構いろいろなことを委ねるわけですから、そのデジタル教材の質保証みたいなことについて、どこまで踏み込めるかというと、それは教科書の話じゃないだろうという話もあり得るわけで、だけど「デジタル教科書」の範囲をある程度限定した背景には、現行の法制度を短期間でいじろうとしても、それは難しいという現状と、その中でデジタルをできるだけ入れていこうということを考えたときに、できるだけデジタル教材のところに質保証を委ねながら、豊かな環境を置いてほしいという、そういう制約の中での話ですので、デジタル教材の質保証、あとリンクですね。リンクというんでしょうか、シームレスに使える環境ですね。ここのところがとても大事なことかなと私は思っています。

これから中間まとめまで、一月ちょっとかなと思うんですけれども、そこまでで、まずは事務局と相談しまして中間まとめの案を出して、皆さんに次回、審議していただこうと思いますが、それに向かいまして、皆さんの今日の御意見も含めた貴重な御意見を是非、文案も含めていろいろ頂ければと。このぐらいの段階になると、委員が事務局に質問するみたいな構図になりがちなんですけれども、審議しているのは私たちですから、私たちが意見をしっかりと事務局に伝えて、事務局が責任を持って成文していただくという形かなと思っております。よろしくお願いいたします。

それでは、本日はここまでとさせていただいて、次のスケジュールについて、事務局から御連絡いただきたいと思います。

【事務局】資料2をごらんください。この検討会議、次回でございますけれども、6月2日の午後4時から、場所は未定でございますけれども、先ほど座長がおっしゃっていただいたように、中間まとめ(案)の御審議を頂きたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

以上です。

【堀田座長】ありがとうございました。

それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。皆様、お忙しい中、御出席いただきまして、ありがとうございました。また、たくさんの方に毎度傍聴いただいておりますことを感謝します。
これでお開きといたします。次回もよろしくお願いいたします。

お問合せ先

初等中等教育局教科書課