「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議(第6回) 議事録

1.日時

平成27年12月16日(水曜日)16時~18時

2.場所

文部科学省第二講堂

3.議題

  1. ヒアリング(国立情報学研究所教授 新井紀子氏)
  2. 意見交換
  3. その他

4.出席者

委員

堀田座長、天笠座長代理、新井委員、井上委員、尾上委員、金子委員、黒川委員、神山委員、近藤委員、高梨委員、中川委員、東原委員、福田孝義委員、毛利委員、山内委員、若江委員

文部科学省

関大臣官房政策評価審議官、伯井大臣官房審議官、望月初等中等教育局教科書課長、黄地教科書課教科書企画官、宇高教科書課課長補佐、磯生涯学習政策局情報教育課長、新津情報教育課情報教育振興室長

オブザーバー

新井紀子 国立情報学研究所教授

5.議事録

【堀田座長】 ただいまから「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議の第6回会議を開催させていただきます。皆様お忙しい中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
本日は、前回に引き続き、ヒアリングの後に意見交換を行いたいと思います。今回は報道機関等から写真撮影の希望を頂いておりますので、ヒアリングの冒頭のみこれを許可することとなっておりますので、よろしくお願いいたします。
なお、本日は、福田純子委員が所用により欠席でございます。
それでは、議事に入る前に、事務局より資料の確認をお願いいたします。
【事務局】 それでは、配布資料の確認をさせていただきます。本日の配布資料といたしまして、資料1として、新井教授から御提出いただいている「デジタル教科書の諸問題」、資料2として「今後のスケジュール」を配布しております。
参考資料1として、第5回検討会議の議事録を配布しております。こちらにつきましては、委員の方々には既に御確認いただいておりますので、特段問題がなければ、文部科学省のホームページに掲載させていただきます。参考資料2として、前回配布したものと同様でございますが、「関係法律における教科書の位置付けについて」(「デジタル教科書」関係)、参考資料3として、「現行制度における教材の取扱いについて」、参考資料4-1として、「『デジタル教科書』に関するアンケート結果(小学校・中学校編)」、参考資料4-2として、「『デジタル教科書』に関するアンケート結果(高等学校編)」、参考資料5として、「初等中等教育の向かうべき方向と教育ICT」、参考資料6として、「『デジタル教科書』の位置付けに関する検討会議(第5回)における主な意見」、また、参考資料7として、こちらも前回配布したものと同様でございますが、「『デジタル教科書』に関する検討の視点について」をお配りしております。
【堀田座長】 ありがとうございました。それでは、早速議事を進めさせていただきます。議題1ですが、ヒアリングといたしまして、本日は国立情報学研究所の教授でいらっしゃいます新井紀子教授にお越しいただいています。新井教授は、皆さん御存じかと思いますけれども、数理論理学と人工知能に最近取り組んでいらっしゃり、特に、これは私もよく記事を見ていますが、平成23年より人工知能プロジェクトの「ロボットは東大に入れるか」、いわゆる「東ロボくん」と言われるプロジェクトのディレクターを務めていらっしゃるということで、そのような御専門の観点から御発表いただければと考えております。
なお、本日のヒアリングの流れですが、これまでと同様で、約15分で御説明いただき、その後、質疑応答の時間を15分程度とらせていただきたいと思います。 それでは、新井教授、よろしくお願いいたします。
【新井教授】 今、御紹介にあずかりました国立情報学研究所の新井紀子でございます。堀田座長から御紹介いただきましたけれども、人工知能のプロジェクト、「ロボットは東大に入れるか」と、今現在3,500以上の学校で学校ホームページ、あるいはグループウェア等でお使いいただいているオープンソースのコンテンツマネジメントシステム、NetCommonsの開発普及をしております。本日は、そのような観点から意見を述べさせていただければと思います。
これまでの委員会では、「デジタル教科書」のメリットについては様々御議論があったと思います。私もデジタル教科書についてのメリットは、コンテンツマネジメントシステムを通じて認識しているところではございますが、本日は「デジタル教科書の諸問題」ということで、問題点にスポットライトを当ててお話させていただこうと思います。
まず、議論の初めにということなのですけれども、社会では、何をもって「デジタル教科書」と考えるべきなのかというところから非常に概念が混乱しているというようなことがあり、その混乱によって、受け取る方が、どこまでを国が面倒を見てくれるのか分からないまま議論が進んでいるようなので、まずはその点を整理していただきたいと思っています。
まず、教科書ということなので、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律が指す教科用図書のことを議論するということで、きっとこの検討会議は作られているのだと思います。よって、国が設置者に対して無償給付をする、あるいは、設置者が児童生徒に対して無償給与をする、そして検定をするというようなことを考えますと、議論の対象は、教師用の「デジタル教科書」ではなくて児童生徒用の「デジタル教科書」ということになるのだろうと整理させていただきました。
このときに、上記法律に関しては、高校の教科書はどうなるのか、無償給付でも無償給与でもないということだと思いますけれども、今、高校のIT化というのは、さっぱり進んでいないという現実があります。それでよいのか、つまり、本来IT化ということに関して国にあるバジェットがあったときに、それは「デジタル教科書」に振り向けるべきなのか、それとも高校のIT化をより進めた方が費用対効果がよいのかということは、本当は検討がなされるべきではないかと思います。なぜかというと、今のまま「デジタル教科書」が進めば、小中でデジタル化して高校で紙に戻るという状態が避けられない。それで本当にいいのか。あるいは、小学校で学んだアプリケーションの使い方が、多分それはもう時代遅れで高校のときにはなくなる、そのようなものを小学校で特化して使い方を学ぶことがよいのかということがあります。
高校でのIT化は、大学・就職との接続という意味でも意義が高い。また、回線状況を考えると、小中より費用対効果が高いです。なぜなら、高校は多くの場合、線路の比較的すぐ近くにあることが多いので回線状況が比較的よいからです。一方、小学校の場合は本当に山の分校も含めて考えなければならない。そのような回線状況を考えたときに、高校で一人一台PCという方が現実的なのではないか。ただし、一人一台PCの実現と教科書のデジタル化というのは、そこに必然性があるわけではないので、分けて考えるべきだろうとは思います。そのようなことで、まず整理をさせていただきます。
児童生徒用の「デジタル教科書」の場合、では、どこまでが範囲なのか、ソフトウェアだけが対象なのか、それともハードまでを含むか、ということです。これは、ハードがなければ授業を受けることが実質的には不可能になりますので、先ほどの法律の精神から考えますと、ハードも含めて無償給与をされることが望ましいだろうと思います。けれども、財政上はハードウェアの無償給与は大変難しいだろうと思います。それは1万円未満でしかも3年以上耐用年数があるものでなければ無理だろうと思います。世界市場を見ると、PCの出荷台数は頭打ちになりつつある一方、OSのメンテナンス費用は増大していることから、WindowsのOSなどは価格が劇的に下がることは、現状では考えにくいです。となると、導入されるのはPC未満の何かにならざるを得ないのではないか。もちろん、オープンソースのOSを使うという手もありますけれども、Linuxベースでやろうとしてうまくいかなかったことは過去にも多々ありますので、あまり得策とはいえないでしょう。さらには、その端末を、児童生徒が壊したときは保護者負担なのか、あるいは、耐用年数が来て壊れたものは国負担なのかということの整理も必要になってくるだろうと思います。
このような議論をすると、ハードウェアについては数がそろえば、あるいはネットワークを込みにすれば無償に近くなるだろうという議論があります。ですが、それは飽くまでもネットワークにバンドルした場合に限られるはずです。そうでなければ、ボランティア団体ではない経済主体である企業が完全に無償で配るということを想定して何かを設計することは難しいだろうと思うのです。Free Lunchは存在しない、というのは経済の鉄則です。ネットワークを考えたときには、光による超高速通信を全国津々浦々で配信するというのは、コスト面でもう無理だろうと思います。この先、例えばGoogleとスペースXによる世界インターネットといった話というのが出ていますけれども、それが提供されることを前提する方がまだ現実的なのではないかと、個人的には思います。
以上のことに関して、保護者はどこまでその負担を理解して賛成しているのか、かなり疑問に感じます。佐賀でも御議論があったかと思いますけれども、購入を入学や通学の条件にするということは実は違法なのではないか。あるいは、紙を選ぶ権利が保障される必要があるのではないか、といったことがあると思います。国、あるいは保護者の経済的負担を考えると、それを上回るメリットが「デジタル教科書」にあるということが、ある程度証明されなければ導入は難しいだろうと思います。
では、次に、「デジタル教科書」にそれだけのメリットがあるかということを検証していきたいと思います。
第一に、「デジタル教科書」が、障害や困難がある子供たちには大変恩恵になるのだという議論があります。確かに必要な生徒にデジタル化した教科書を提供する枠組みは非常に重要です。特に、弱視の方、あるいは発達障害のお子さんに、その弱視の程度に合わせて拡大できたり、字ではなくアニメーション等で内容が示せるような「デジタル教科書」というのはメリットが大変大きいので、そのような枠組みがより進んで充実することは望ましいと考えます。
一方、実は、動画や音のコンテンツはユニバーサルデザインではないということについては認識をしなければなりません。国立情報学研究所は、様々なタイプのコンテンツに対して、そのユニバーサルデザインになるような研究をしておりますが、動画、特にアニメーションや音のコンテンツにアノテーションをつけるという方策がないため、盲ろう児は利用できないコンテンツが圧倒的に多いということは認識しておく必要があります。また、テキストより動画の方が深く理解できる児童もいますが、逆に動画ではテキストより理解が減ってしまうという児童もいるということについて認識をする必要もありますし、調査をする必要もあると考えております。
第二に、「デジタル教科書」について一番メリットがあるという御意見の中に、動画・音声など紙の教科書では表現ができないメディアを使うことによって学びが大変広がるのだということがあります。それは、私も否定しません。一方、1万円を切るようなハードということを考えたとき、現状ではタブレット型PCのようなものになります。すると、どうしても画面の面積に大きな制約が伴います。狭い画面に画面切り換えでコンテンツを表示することになるわけです。そのようなことになりますと、複数の教材、例えば、教科書と年表と地図帳と何かとを広げて一覧しつつ学習を進めるということは困難になるということは、認識しなければならないと思います。
画面を切り換えればいいのだから問題ないというお話がありますけれども、フューチャースクールで私が現地に伺ったときには、お子さんが社会科の明治時代の人と暮らしというようなコンテンツで、スライドショーでどんどんいろいろな写真を見ているお子さんが何人もいたので、「この写真の前に何を見ていましたか」とか「今までどんな写真を見ましたか」というふうに尋ねると全員が「分からない」と言うのです。一つ前に何を見ていたと答えられるお子さんが一人もいない。私たちもネットサーフィンをするとそういうことがありますけれど、画面が切り替わると記憶として残らないで単に切り替わってしまうということが脳の反応としてあるのでしょう。そのことに関して、現在、海外では脳科学系で幾つか研究成果が出ていますけれども、そことの関係は調べる必要があるだろうと思います。
もう一つは、抽象的な題材は動画にしても意味が薄いということです。高校数学の「デジタル教科書」の見本を拝見しましたが、その学年まで行きますと、数学は非常に抽象的になります。そうなると、動画化しても内容がわかりやすくなる、ということはほとんどないわけです。実際、拝見した高校の「デジタル教科書」の見本でも、多面体をグルグル動かすとか、歴史に関して何か物語を動画で配信するとか、そうした使われ方しかしていませんでした。高学年以上の国語や数学を動画・音声にするメリットを見出すのはなかなか難しいことのように思います。
もう一つは、テレビによる視聴覚教育について、近年、視聴が大変減少しているという事実があります。私が子供のころは、テレビの視聴覚教育が大きなブームで、たくさん見たのですけれども、今、余り見る機会がないと思います。Eテレのコンテンツは素晴らしいです。あれ以上のものを作るのはなかなか難しいことでしょう。にもかかわらず、Eテレのコンテンツがそれほど見られていないというのはなぜなのか。考えてみる必要があろうかと思います。以上のことから、生徒用デジタル教科書の上で、動画・音声を提示しなければならないような場面はかなり限定的なのではないかと思っています。
つまり、指導者用の「デジタル教科書」にみんなで一緒に見るようなデジタル教材が入っていれば十分なのではないか。そうではないものにはどのような例があるかと探すと、ネイティブによる英語の教科書の読み上げや、実験、体育、音楽、家庭科等における手順の確認、例えば、こういうふうにミシンを使いましょう、こういうふうに実験をしましょうということの確認くらいではないか、と考えます。
第三に、教科書に掲載されている問題の即時採点とフィードバックができるメリットがあるという議論があります。教科書に掲載されている問題、算数、数学、国語とか社会の練習問題や問い掛けの問題、これを即時やらせて採点してフィードバックをかけられるメリットがあるのではないかという御意見です。
AIの専門家として申し上げます。自動採点ができるテストとドリルは穴埋めと選択式問題におおよそ限られると思ってください。今後求められるのはオープンエンドな問題解決力であることを考えると、このようなタイプの自動採点というのが、日常の学びにおけるメリットなのかということがあります。具体的には、どのあたりまでできるかというと、国語ですと漢字書き取りまで、算数では九九まででしょう。筆算のドリルでも、穴埋め式にしてしまうと位取りの確認をしなくなるため効果が半減します。社会と理科は穴埋めと選択式の暗記問題だけになると思われます。
また、このような行動主義に基づく即時フィードバックのドリル学習に子供が慣れてしまうと、かえってオープンエンドな問題に耐えられなくなるということが、問題として考えられます。現在もゲームによって即時フィードバックに慣れているお子さんが、オープンエンドな問題を先生が提示すると、そのことにすぐに答えが出ないことに対してイライラするとか、不安になるというような問題が指摘されていると認識をしています。
自動採点は難しい、と申し上げると、アメリカ等ではe-raterのように小論文さえ自動採点ができているではないかという反論があると思いますので、e-raterが代表する自動採点の仕組みをお話しいたします。資料を御覧ください。例えば、もし、「探検家コロンブスはイザベラ女王と、彼女の夫フェルナンドの支援により、1942年サンタマリア、ニーナ、ピンタの3隻の船でアメリカ大陸に向けて航海した」という文章が正解だった場合、右側の全く意味を成さないような文「アメリカの女王は1492隻の船でサンタマリアへ航海した。彼女の夫、コロンブス王は、インディアンの探検家ニーナ・ピンタがイザベラ海岸に巨大な富を持っていることを知っていたが、フェルナンド大陸から香辛料を獲得することを我慢せざるを得なかった」でも丸がついてしまいます。なぜなら、自然言語処理では、よく書けている解答や典型的なよく書けている文書との距離で採点を行うからです。その距離は、数学的には、キーワードの重なり具合などがパラメーターとして使われます。よって、オリジナリティーがあるエッセイ、論理性が高い平易に書かれた文章などにはしばしば低い点数がつくという傾向があります。
例えば、岩井克人先生の『ヴェニスの商人の資本論』とか、私が書いた『ほんとうにいいの? デジタル教科書』の一文を現在の自動採点システムに入れますと、「語彙が少な過ぎます、平仮名が多過ぎます。もう少し漢字を使いましょう」などという指摘が出まして、点数が低く出たりします。自動採点システムが「学習」した新聞の社説等の正解データとの距離が遠いためだろうと思います。これは、現在及び近未来の自然言語処理の限界によるものですので、2020年になったらもっとよくなる、ということは考えにくいです。
第四に、協調的学習が進むのではないかという議論がありました。つまり、デジタルノートを共有することで協調的な学習が広がるという話です。実は、グループワークにPCを持ち込むことで視線が個人のPC画面に奪われて会話が減るということが、近年、しばしば報告されています。例えば、福島政期氏の「PCを利用したグループワーク講義における対面的画面共有の実践」という論文では、「あなたのグループは活発に議論しましたか」という問いに対して、PC利用のグループは「はい」が50%、一方、紙と付箋利用のグループは「はい」が92%という結果が出ています。
第五に、教科書上に書き込みをすることができるが、それを消すこともできるということが「デジタル教科書」のメリットとして言われています。確かにそのようなことができますが、現状のPCやタブレットでは、書き込みに係る児童の認知負荷が高過ぎます。例えば、ここで色を選ぶとか、太さを選ぶとか、形を選ぶか、文字を探すとか、変換の正しさを確認するというようなところに認知負荷がかかりすぎるため、内容よりも型式を整えることに認知処理のエネルギーが奪われてしまうのです。特に小学生、中学生では厳しいでしょう。実際の授業で、こうしたエディターを使わせると、生徒は喜んでやるのですけれども、結果として書かれた文章を見ると、紋切型の文章が多くなるという傾向が見られます。「大変楽しかったです」とか、「もっとやりたかったです」とか、そのような非常に定型的な文章が増えてしまいオリジナリティーが減るというような現象があります。
もう一つ、「学びのログ」を取ることによって一人一人の個性とニーズに合わせたテーラーメイドの教育が可能になるという言説があります。AIの研究者として申し上げると、これを実現する方法論は、現状のところ、項目応答理論とデータマイニング以外には見つかりません。では、項目応答理論とデータマイニングで何ができるかということなのですが、達成度の精密な分類は、確かに可能になります。アンケート等を同時に実施すれば、特性、例えば経済状態や健康状態等との相関が分かるかもしれません。ですが、これだけではどうしてつまずいているかの原因は分かりませんし、どうすればいいかの手立ては分かりません。また、クリックデータやログイン履歴は、それを勉強した、あるいは理解したということを保証しません。さらにいえば、クリックデータやログイン履歴だけでは、ほとんど意味がある分析はできないだろうと思います。どうしてかというと、学びに影響を与えるであろう多くの要因のうち、取得可能なデータがあまりに少ないからです。例えば、学習塾に行っている間何をしていたかとか、経済的に困窮して食事がとれていないとか、睡眠が不足しているとか、クラブで友達とうまくいっていない等のデータがとれるわけではないので、AIの研究者として、「デジタル教科書」のクリックデータやログイン履歴だけから統計的に有意な差が出る気は、正直、しません。しかも、機械処理できるデータは、ほぼ穴埋めと選択肢問題への解答だけです。そのような問題に子どもたちが最適化した場合、生きる力の伸長に意味があるかが不明です。全国学力・学習状況調査のA問題の正答率が上がってもB問題の正答率は上がっていないということを認識する必要があると思います。
最後ですけれども、「デジタル教科書」によって関連する技術が発達して経済波及効果があるという言説がありますが、日本の小学校の授業に特化して開発されたツールやソフトウェア、例えば、小学生用のプレゼンツールだとか、小学生用のデジタルペンとか漢字書き順チェックソフトというものに国際競争力があるのか、という疑問があります。国際競争力がなければ、ここで経済が回ることはあり得ませんから、投入された税金以内の経済効果しかないということで、波及はしません。実際、「デジタル教科書」関連で開発されたツールやハードが、現在ビジネス利用されているかというと、疑問を呈さざるを得ません。
「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトで開発しているAIは、今年、40万人以上の高校三年生と模擬試験を受けた偏差値57.8という結果を得ました。つまり、AIは既に高校三年生の上位20%以内の学力を有しているのです。AIが入ってくることによって定型的な頭脳労働はAIに代替されますから、そこでは労働力の付加価値が付かなくなり、それは売れない労働力になります。ですから、AIができないような能力を学校で身に付けるということに資源を集中するべきではないかと思います。
まとめさせていただきます。現状の、特に近未来のタブレットPCを前提とすると、「デジタル教科書」を特に小中学校に導入することについて、財政負担を上回るメリットは、私自身は余り感じられません。
個人的な意見ですが、高校のICT化、例えば校内LAN、各教室に埋め込み型プロジェクターか軽量プロジェクターを導入する方が、意義があるのではないかと思います。
障害や発達障害のある児童生徒に対し必要なデジタル教材の提供は進められるべきだと思います。これは是非促進していただきたい。
QRコードの埋め込みによる音源・動画アクセス等は検討されてもいいのではないか、つまり、紙の教科書にQRコードを埋め込んで、例えば英語の読み上げをするといったことはあってもいいのではないかと思います。それは飽くまで付録としての位置づけで、それを再生するためのハードまで提供しなくても、もう十分、スマホ等が普及していますので、それはできるのではないかという気がします。
教育効果がどうなのかということに関しては、フューチャースクールや学びのイノベーション事業で、もう既に何年もやっていらっしゃるので、児童生徒の全国学力・学習状況調査の結果や進学状況等をほかの学校と比較すれば分かると思いますので、是非比較をなさったらよろしいかと思います。
児童生徒や保護者へのアンケートで教育効果を議論するのは科学的ではないのでやめていただきたいと思います。
AIに代替されないような能力をどのように身に付けるかということを検討する方が喫緊の課題であると私は認識しております。
以上でございます。
【堀田座長】 どうもありがとうございました。私たちが検討してきたいろいろなことについて、専門家の視点からかなり厳しい視点で御指摘いただいたと思います。これから委員の皆さんに御質問等をお願いしたいと思うのですけれども、最初に少しだけ確認です。高校のICT化のことが御指摘されていますが、これについて現状がどのようになっているかということの補足をいただけますか。では、新津室長、お願いいたします。
【新津情報教育振興室長】 学校のICT環境につきましては、教育のIT化に向けた環境整備4か年計画、具体的には、26年度から29年度まで、単年度1,679億円、総額6,712億円に基づきまして、小学校、中学校と高等学校を区別することなく地方交付税措置を通じて整備促進を行っているところでございます。
実際の整備状況につきましては、平成26年度の実態調査の結果でございますが、電子黒板を設置している普通教室の割合、これは4か年計画の目標値では一学級当たり一台を目指しているのですが、現状では、小学校で10.9%、中学校で8.1%のところ、高校は6.4%となっており、整備率が一番低くなっております。このため、通常、普通教室で行われる教科指導におけるICT活用は、高校段階が一番進んでいないことが予想できます。
このように、学校種によってICT環境整備の状況に差があることは事実でありますが、さらに、予算措置が地方交付税措置と地財措置であるため、各自治体で予算措置をすることが必要でして、各自治体の取組、御判断によってICT環境整備に関して自治体間の格差が広がっていることも大きな課題だと考えております。
【堀田座長】 ありがとうございました。現状は厳しいということも含めて御説明いただいたわけですけれども、新井先生の御指摘のとおり、私どもは「デジタル教科書」の検討、とりわけ、現状で言うところの学習者用の「デジタル教科書」の検討を進めていますが、それはハードウェアがないと使えないというのはそのとおりです。
一方で、そのハードウェアの条件整備は今の御指摘のように厳しい状況ですが、いずれそれが、自治体間格差はあるにしても環境が整ってきたときに、教科書、日本で言うと主たる教材であるわけですけれども、このデジタル化をどう進め、どこから、どのような手続でやっておけばいいかということを、今のうちから課題として検討しておく必要があります。関連法令が数多くありますので、もし、それらの改正が必要であれば今のうちからもう動いておかなければならないということで、私たちは、「デジタル教科書」なるものの位置付けについて検討しているということですので、正確に言うと条件整備そのものはこの検討会議のミッションではありません。しかし、条件が整備されないと、私たちの検討した結果は余り意味がないという点では、御指摘のとおりということになります。
それでは、委員の皆さん、御質問、御意見等をよろしくお願いいたします。最初に山内委員からお願いします。
【山内委員】 情報処理理論や人間の認知に基づきました詳しい御説明をありがとうございました。二つ質問があります。5ページ目のところに、「デジタル教科書」のメリットの検証としまして、今後求められるのはオープンエンド的な問題解決論とございます。確かにオープンエンド的な問題解決力というのが生きる力にもつながり、必要になるということは分かるのですが、このオープンエンド的な問題解決力を身に付けるためには、いわゆる基礎基本が必要だと思います。その基礎基本を身に付けるためには、暗記やドリル的なものがどうしても必要になってくると思います。しかも、そのドリル的なものなどを人間の教員が指導するのか、あるいは、人間の教員でしか指導できないところを人間の教員がやるのか、このような分類で行きますと、むしろ、基礎基本を身に付けるために、このようなテストやドリル的なものは「デジタル教科書」やコンピューターに任せて、それができない部分について人間の教員がやっていくというようなことも考えられます。このように考えますと、このオープンエンド的な問題解決力の前に基礎基本を身に付けるために「デジタル教科書」を導入していくということはむしろ意味があって、授業の目的と教材と指導法、評価法、この四つの中で適したところに適したものを配置していくことが重要なのではないかと思うのですが、その点についての新井先生の御意見をお聞かせいただきたいというのが一つです。
二つ目は、11ページ目にAIの現在の学力が示されています。私は専門が英語教育でございまして、英語を見ますとリスニングが最低点なのですが、一方で筆記の方は最低ではありません。音声認識に問題があるのか、英語のリスニングの点数が非常に低いわけです。今まで、この「デジタル教科書」の議論の中では、英語は「デジタル教科書」が必要な教科の一つではないかと言われている経過があり、リスニングが最低点というのは非常にショックなので、その原因を教えていただければと思います。
【新井教授】 ドリルは、ある意味、必要悪であり、必要であると私も思います。それに関して、オープンソース、あるいはネットで自由に使えるような非常によくできたコンテンツが今、既にたくさん存在していますし、場合によっては、例えば、NICERの後継になるようなサイトにおいて、そのようなドリルを準備しておいて、項目応答理論によってそういうところでさせるみたいといったことはあってもいいのではないかと思います。しかし、そのことと「デジタル教科書」にするということは全く無関係のことです。やりたいときにできるような教材はあったら良いとは思うのですが、そのことと、法律で規定される教科書にする、というのは筋が違う話だと思うのです。
2点目なのですけれども、リスニングについては、今のAIの聞き取り性能は95%くらいはあります。点数が低かった理由は、選択肢がイラストだったためです。イラストは認識ができない。この中のどれが答えでしょうかというイラストが四つある、そのようなものの認識が極めてできないということであり、リスニング自体は非常に高い精度でできます。
【山内委員】 センター試験には確かに絵を選ぶという問題もありますけれども、そのほかに、文章で聞いて答えるという問題もあります。
【新井教授】 そういうものも難しいです。リスニング自体は問題がないのですが、それをリスニングしたからといって、その内容について認識をして答えるというようなところが難しい。AIにとっては、人間の常識を考えて状況判断をして答えるというのが、とても難しい。英語は特に非定型的な、人間の生活常識を求める問題が多いのです。一方、世界史はそのような生活常識を求めない問題が多いためにAIは比較的得意ということです。
【堀田座長】 ありがとうございました。毛利委員、お願いします。
【毛利委員】 2点教えていただきたいのですが、3ページに「動画・音のコンテンツはユニバーサルデザインではない」ということをお書きになっていますが、私は昨年度まで小中学校の教頭をしており、そこで、特別支援を要する子供たちに、英語の読み上げ機能やテストで問題を読み上げてあげる機能などを先生が使っているのを見て、非常に効果があったような気がします。ユニバーサルデザインではないということについて詳しく教えていただきたいというのが1点です。
それと、11、12ページの両方で、今後AIができないような能力を育てることが重要であるというのは私も大変同感でして、それは本当に大切なことだと思っています。それで、これまでも、紙の教科書においても、教科書だけで授業を1から10まで全て完結することは余り学校でも行ってきていないと思うのです。ですから、「デジタル教科書」だけを使うとこうなってしまうということは分かる気がするのですが、これからアクティブ・ラーニングを活発にするために、それぞれの意見をパッと画面で共有するなどいろいろなデジタルならではの機能で、AIではできないような21世紀型スキルなどの能力を育てることは不可能なのか、そのようなことを検証されているのか、あれば教えていただきたいと思います。
【新井教授】 動画や音のコンテンツがあった方が学習が進む、あるいは支援になるというシーンが多数あることは間違いありません。特に、学習困難者、例えば、ディスレクシアのお子さんに文字ではなくて音でというようなことは重要だと思います。そのことは一切否定しておりません。
一方、例えば、教科書にアニメーションのコンテンツを多数入れる、あるいは、ドリルも、アニメーションの方法でデジタルドリルを提供するというような状態になった場合、目が不自由なお子さんの場合、それにアクセスができません。ユニバーサルデザインは、どなたにも、どのようにでもアクセスが可能であるようなものを言いますので、特定の一部のお子さんにとってメリットがあるものはユニバーサルデザインとは一般には言わないと認識しております。
例えば、目が不自由なお子さんの場合、聴覚と触覚を使って同等の内容が理解できるような形式に変換する必要があるのですが、アニメーションをどうやって変換すればよいか、というと、大変難しい。その方法論すら情報学において確立されていないのです。
2点目ですけれども、AIに代替されない力を身に付けるためにというお話についてです。アクティブ・ラーニングに有益ではないかというお話で、私もコンテンツマネジメントシステムを使っておりますので、そうであってほしいと思っていたのですが、グループワークにPCを持ち込むことで、実は、ディスカッションが低下するということは、いろいろなところで観察されています。何が原因でグループディスカッションが低下するのかということは、例えば、光トポとか視線観測装置とか、いろいろなものをつけたり、あるいはログ観察をしたりしないと分かりません。現在のところ、PCを持ち込むことでアクティブ・ラーニングが活発化したという話の多くは、元々授業が上手でデジタルの活用が得意な先生が意欲をもって導入した、という事例に過ぎないようです。それでは科学的には「PCを持ち込むと授業が活性化する」とは言えません。なぜそれでは駄目かというと、教科書の場合、その教科書を採択した自治体の全ての教室にそれが入るわけですから、どんな先生であっても、アクティブ・ラーニングをしたときにPCがある方が、議論がより活発になるというような確証がある程度得られないと困ります。しかし、今、出ている研究結果では、そのことが言える気がしません。
【堀田座長】 福田委員、お願いします。
【福田(孝)委員】 先ほど2ページの高等学校のことを少し議論していただきましたので、少し、これは新井教授にというよりも、これから進められる他の都道府県に対しての一つのサジェスチョンという意味です。高等学校の場合には、佐賀県では保護者の方に購入していただいていますけれども、これについては有識者の方にも入っていただきまして、例えば、過去の制服裁判などの事例から、高等学校の場合には、いわゆる、募集要項にそれを明記しておくことによって一つのハードルはクリアできるということでやっております。既に学校単位、学科単位、また大学でもそのような先行事例がありました。
一方で、義務教育になった場合にその方法が使えるかというのはなかなか厳しいということで、義務教育段階で保護者の方に購入いただくことについては、非常に大きな壁があると考えております。高等学校の場合には、希望した子供さんで、例えば金銭的に厳しい場合、それが原因で高校に進学できないのは我々としても完全に避けたかったものですから手立てしておりますけれども、例えば、工業高校のお子さんに従前より電卓を買いなさいとか、従前よりもっと昔で言うとソロバンを買いなさいというのと同じような考え方で、教育委員会がそれを決定して明文化して説明する必要があるということは指摘を受けております。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。ちなみに、この検討会では、高等学校の教科書も当然検討しており、義務教育と違うので、むしろここからやるべきではないかという意見も出ています。一方で、ハードウェアについては、先ほどの御指摘のとおりという現状があります。
ほかにいかがでしょうか。黒川委員。
【黒川委員】 本日伺いたい点はたくさんあるのですが、「メリットの検証」として先生がお書きになった部分で、学習者用の「デジタル教科書」のモデルにされているイメージは、学びのイノベーション事業のときの実証を御覧になったことが前提にあるのではないかと思うのです。例えば、5ページのメリットの検証の3番目のところ、自動採点ができるテスト・ドリル等の議論です。ここは私も全く異論はございませんが、実際、学習者用の「デジタル教科書」は、基本的にはまだこの世に存在しないものなので、こうした御意見をしっかりと受け止めて、オープンエンドな問題解決力へ振っていきたいと感じています。
お話を伺っていると、やはり、指導者用の「デジタル教科書」や一般のデジタル教材というイメージで語られているように感じてしまうのです。しかし、教科書は学習指導要領を前提にしていますので、これからの学習指導要領では、ますますこういうオープンエンドな方向を目指す考え方が示されてくると思っています。その点、新井教授はこういう問題に対してどのようにしたら良いとお考えですか。教科書は決してA問題的なものだけを目指しておりませんので、ヒントを頂けたらというのが一つです。
もう一点、ページ8、9にあるメリットの検証の5番目ですが、書き込みについて、認知負荷が高いというお話がありました。今、学習者用デジタル教科書で実証的な研究を進めているのですが、正直なところ、推進している学校でなくても、割合に早い段階で子供たちがこれに慣れているように思います。もしかしたらそれは私の検証不足なのかもしれませんが、この点について、どのような研究をバックグラウンドにして議論をしていったら良いのかということを感じておりまして、もう少し御指摘いただきたいと思います。
最後に、9ページに示されている「学びのログ」、ビックデータを使っていく課題についてお話しいただきました。ただ、これは全く未検証の領域と言っていいかと思います。活用の可能性を感じるところもあるのですが、その点は今後の課題ということで御理解いただけたらと思っているところです。
【新井教授】 「デジタル教科書」と、今出回っているデジタル教材は分けて考えてくださいという御意見だと思います。教材は確かにドリルのようなものが多いかもしれないけれども、教科書は、検定を前提としたきちんとしたものなので、もっと深いものが出てくるのではないかとおっしゃったのだと思います。それと毛利委員がおっしゃっていることというのは、やや違っていて、毛利委員は、教科書だけを使って授業を展開するのではない、様々な方法を使って授業というのは展開されるのであり、その基盤として「デジタル教科書」のハードウェアなりネットワークがあるということがすごく重要だとおっしゃったのだと思うのです。
つまり、教科書がどうかということが一番大事なのだということではなくて、教科書がデジタル化されるということで、一人一台の端末が与えられる。そのことで学校というのは様々な学びができるはずだ、と。確かにそれはそうです。一方で、現実を考えたときには、「デジタル教科書」を導入したときに子どもたちにデジタルのドリルをさせておく時間が非常に長くなるだろうと思います。クラス全員に同じタスクをさせる場合、早く終わる子とそうでない子がどうしても出ます。そうすると、時間が余った子、もう終わってしまった子にデジタルドリルをさせる、といったことがフューチャースクールでも盛んに行われていました。まさか、時間が余った子に、勝手にネットサーフィンでもしていなさい、というわけにはいきませんから、どうしてもデジタル教材をさせておく、ということになる。そして、自学自習できて自動採点できるものは、理論上、穴埋めと簡単なドリルになってしまう。ですから、どうしてもこういうタイプのドリルの利用が一層高まるということになると思います。
今、既に導入されている教師用の「デジタル教科書」の出来が大変いいということについては論を待ちません。皆さん大変力を入れて開発されたと思います。ですが、そのことと、児童がそれぞれ自分のペースで使う「デジタル教科書」が必要か、ということとは、別の問題なのではないかと思います。
その次は、認知負荷の問題でした。認知負荷は本当に高いです。子どもたちが簡単に使いこなす、ということと、認知負荷が実は高いということとは別のことであることに注意が必要です。これは大変有名な認知科学の論文があって、リンクがたくさんついているコンテンツとリンクが何もついていないコンテンツで国語の小説に対する理解度がどれぐらい違うかといったときに、リンクがついている方が低いのです。でも、リンクをクリックしたりめくったりすることのインターフェースはほとんど同じなので、唯一の認知負荷は、リンクをクリックしてしまうということです。いろいろなところに飛ぶことや、パレットから色を探すことは、慣れているとしても認知負荷が高く、集中が途切れるということは間違いありません。
それは、画面を切り換えるということも同じです。画面を切り換えるのはワンクリックなのですごく簡単ですが、画面ががらっと変わるということに対しての認知負荷が高いのです。
【堀田座長】 ありがとうございました。大変貴重な御意見を頂きまして、私どもの議論にこれから役立てていかなければなりません。これでヒアリングを終わったということにいたしまして全体の議論に入りますが、その前に、三つほど情報提供、御説明がございます。
一つ目は、前回、天笠座長代理から、現行制度で、教科書と教材とはどこで線引きされているのか、教材というのはどのように位置付けられているのかということについて、今までは教科書制度を中心に話をしてきましたが、教材についてもしっかりと理解しておく必要があるだろうということの意見が出ましたので、事務局から御説明をお願いします。
【事務局】  参考資料2は前回お出しした資料と同じでございますが、もし、こちらの方の御質問等がございましたら、この後の時間にお尋ねいただければと思います。
参考資料3ですけれども、「現行制度における教材の取扱いについて」ということで、教材につきましては、学校教育法第34条第2項に規定がございまして、「前項の教科用図書以外の図書その他の教材で、有益適切なものは、これを使用することができる」とされております。これが学校教育法の規定なのですが、地方教育行政の組織及び運営に関する法律で、「教科書その他の教材の取扱いに関すること」が教育委員会の職務権限として、第21条第6号に規定されています。
地方教育行政の組織及び運営に関する法律第33条は、教育委員会は教育委員会規則を定めることができるという規定なのですが、その第2項で、「教育委員会は、学校における教科書以外の教材の使用について、あらかじめ、教育委員会に届け出させ、又は教育委員会の承認を受けさせることとする定を設けるものとする」と規定されています。これを受けて、各教育委員会で教育委員会規則が作られております。
それから、今年の3月4日付で「学校における補助教材の適切な取扱いについて」という通知を文部科学省から教育委員会宛てに発出しておりまして、その中の1「補助教材の使用について」というところで、「各学校においては、指導の効果を高めるため、地域や学校及び児童生徒の実態等に応じ、校長の責任の下、教育的見地からみて有益適切な補助教材を有効に活用することが重要であること」とされております。一方で、2(3)の2行目を御覧いただくと、「必要に応じて補助教材の内容を確認するなど、各学校において補助教材が不適切に使用されないよう管理を行うこと」、また、最後ですけれども、「なお、教育委員会が届出・承認にかからしめていない補助教材についても、所管の学校において不適切に使用されている事実を確認した場合には、当該教育委員会は適切な措置をとること」とされております。
2ページ目に移りまして、委員の先生方が所属されている教育委員会の教育委員会規則を例規集からコピーさせていただきましたが、佐賀県の学校管理規則においては、まず、教科書の採択は教育委員会が行うとされており、その上で、第17条で「校長は、教科書が発行されていない教科又は科目の主たる教材として使用する教科用図書を選定するときは、あらかじめ、教育委員会の承認を受けなければならない」と規定しています。また、第18条は「(届出を要する教材)」という規定でございます。荒川区、若しくはつくば市は、少しずつ規定の書きぶりは異なりますが、承認、届出を必ずしも要しない教材等もあるものの、規定に該当する教材については承認、届出という形になっております。
続きまして、学習指導要領上、教材というものがどう扱われているかということについて、基本的には教科書と教材を分けて使ってはおりませんので、学習指導要領の中に書かれている教材には、教科書とそれ以外の教材も含まれるとお考えください。更に言うと、同じ教材という言葉が使われていても、教科書の中に含まれる題材という意味と、教科書以外、例えばドリルなどの意味で使われている教材と、2パターンございます。事務局の方で教材という言葉が使われているところに下線を引いておりますが、下線は細い線と太い線の二つに分けられていると思います。これは事務局の解釈でございますけれども、細い線の教材につきましては、題材などの意味で使われていると考えられるもの、太線の方は、必ずしもそうではない、教科書以外の、ドリル、副教材、補助教材などを指しているであろうというものに引いております。
個別には申し上げませんが、小学校で言えば国語、音楽、道徳、次のページへ移りまして、外国語活動、総合学習の方でそれぞれ教材という言葉が用いられております。
中学校においてもおおむね同様の位置付けとなっております。
説明を省略させていただきますが、高校もおおむね同じです。国語総合、国語表現、現代文、古典といった科目に出てまいります。
学習指導要領の次に、教育課程企画特別部会の論点整理の中で、教材若しくは教科書といったものがどのように扱われているかということを整理させていただきました。
最後のページを御覧ください。4の(2)「学習指導要領等の理念の実現に向けて必要な支援方策等」というところで、「教科書を含めて必要な教材や情報機器についても」、一つ上の方でアクティブ・ラーニングの視点が記載されているのですが、「そこに示した視点を踏まえて改善を図り、新たな学びや多様な学習ニーズに対応したものとしていく必要がある」とされております。
5の各学校段階における記載では、中学校、「特に外国語教育については」というところですけれども、「教科書を含めて必要な教材の改善・充実が求められる」といったような記載がございます。
道徳教育の方でも、「答えが一つではない、多様な見方や考え方の中で子供たちに考えさせる素材を盛り込んだ教材の充実や指導方法の改善が不可欠である」という記載がなされております。
【堀田座長】 ありがとうございました。これにつきましても、私ども、教科書をデジタル化しようといったときに、先ほどのドリルとか、そういったところまで全部検定範囲にするのかとか、そういうことの議論もありまして、どこまでを教科書、どこまでを教材とするかというのを、現状の紙の段階とデジタルで変える必要があるかどうかということが一つの論点になっているということで、このことを御説明いただきました。今のものが一つ目で、あと二つあります。
二つ目ですが、8月に文部科学省において保護者向けの「デジタル教科書」に関するアンケートを実施したということです。これは、尾上委員が特任業務執行理事を務めていらっしゃいます日本PTA全国協議会と、井上委員が理事を務めていらっしゃった全国高等学校PTA連合会、この2団体の御理解、御協力を頂いて実施したということです。本日、その結果が出ておりますので、事務局から御説明いただきたいと思います。
【事務局】 参考資料4-1が、日本PTA全国協議会に御協力いただいた小中学校分、参考資料4-2が、全国高等学校PTA連合会に御協力いただいた高等学校分でございます。参考資料4-1と4-2を並べて御覧いただければと思っております。
まず、小中学校につきましては、8月に開催されました日本PTA全国研究大会に参加された7,200名の方にアンケート用紙をお配りして、そのうち回収できたのは2,837、更にそのうち記載漏れがあったものなどを除いた2,753の回答について集計いたしました。高等学校につきましては、9,540名の参加者に配布いたしまして1,165の回答を頂き、そのうち記載漏れ等があったものを除いて1,136の回答について集計させていただきました。
まず、小中学校の2ページ目を御覧いただきたいのですが、学校や家庭で「デジタル教科書」を使用することについて、「賛成」、又は「どちらかというと賛成」と回答された方が65%、また、「反対」、若しくは「どちらかというと反対」と回答された方が35%でございました。
次のページを御覧ください。このアンケートは保護者の方に宛てたものですが、保護者の方にお子様の学年も併せて聞いており、学年別に「デジタル教科書」を使用することへの賛否を集計したものでございます。ここで、お子様が複数名いらっしゃる保護者の方につきましては、それぞれのところに計上しておりますので、足し上げると、必ずしも先ほど申し上げた2,837にはならないということを御了承ください。
小学校1・2年生、3・4年生、5・6年生、中学生と上がるに連れて、61%、63%、66%、67%と、「賛成」又は「どちらかというと賛成」と回答された方が、微増ではあるのですが、増加傾向にあるという状況でございます。同じようにそれを高校の方で見てみますと、「デジタル教科書」を使用することについて「賛成」、又は「どちらかというと賛成」とお答えになった方は計69%ということになっております。高等学校につきましては学年別という形ではなく、お子様の学科別に集計したのですが、「賛成」又は「どちらかというと賛成」とお答えになった方が、普通科で69%、専門学科でも69%、総合学科で67%と、余り変わらないような形になっております。
続きまして、小中学校の資料の6ページを御覧いただきたいと思います。高校の方は5ページをお開きください。これは、「デジタル教科書」を使用することについて「賛成」又は「どちらかというと賛成」と回答された方について更に質問したものでございます。導入の使用形態の在り方として、「デジタル教科書」のみを使用する方がよいか、それとも紙とデジタルを併用する方がよいかという質問に対して、小中学校につきましては92%、高等学校についても89%の方が「『デジタル教科書』と紙の教科書を併用した方がよい」という回答となっております。
次のページを御覧いただきますと、それぞれの理由を更に質問したところ、「『デジタル教科書』のみ使用するのがよい」とお答えになった方について、小中学校について言えば、「紙の教科書と比べて、持ち運びやすいと考えるから」、「動画や音声、文字の拡大等、紙の教科書にはない機能があると考えるから」が上位二つの回答となっています。これは高校でも、順番は違いますけれども、過半数の方が挙げた理由としては同じで、「持ち運びやすいから」ということと、「紙の教科書にはない機能があると考えるから」となっております。
続きまして、それぞれまた次のページを御覧ください。併用が望ましいと考える理由を質問したところ、小中学校の方は、上から三つまで、「教科や学習によって、紙の方が望ましいものと『デジタル教科書』の方が望ましいものがあると考えるから」、「『デジタル教科書』のみでは書く力や考える力、知識の定着等に不安を感じるから」、「学習には、紙の教科書の特性や機能(一覧性等)も必要と考えるから」とお答えになった方が過半数いらっしゃいます。高校の方も、全く同じ回答が、同じ順番で並んでおります。
次に、「デジタル教科書」の使用に「賛成」若しくは「どちらかというと賛成」とお答えになった方に対して、その導入に当たって留意すべきと思うことは何かということを聞いたのが、小中学校で言うと9、10ページ高校では8、9ページでございます。小中学校の方につきましては、最上位に挙がったのは「子供の有害情報へのアクセスの制限」という項目であり、この項目のみが、過半数の方から特に留意すべきだという回答を頂いております。対して高校の方につきましては、最上位に挙がったのは「個人情報の保護など情報セキュリティ」であり、続いて「子供の有害情報へのアクセス制限」、「保護者の費用負担」、「教員の指導力や「『デジタル教科書』活用能力の確保・向上」となっており、この四つは、過半数の方から、特に留意すべきと考えるとの回答を頂きました。
そのほか、小中学校の方につきましては、例えば、高校の方では先ほど申し上げなかった「教科ごとの特性」であるとか、「子供の発達段階の違い」、若しくは「子供の健康面への影響」といったようなことも留意すべきという回答を頂いております。
小中学校の12ページ、高校の11ページを御覧ください。ここからは「デジタル教科書」の使用に「反対」若しくは「どちらかというと反対」とお答えいただいた方に質問した項目でございます。このうち、小中学校、高等学校ともに最上位に挙がったのは「『デジタル教科書』では書く力や考える力、知識の定着等の面で、子供の学習が充実するとは考えられないから」という項目であり、過半数の方が挙げられております。
この「反対」若しくは「どちらかというと反対」とお答えになった方について、「紙の教科書を使用しつつ『デジタル教科書』を副教材として活用していくことについてどう思うか」ということを聞いたのが、小中学校の方が13ページ、高校が12ページでございます。小中学校の方につきましては46%、高校の方につきましては48%の方が「積極的に活用していくことが望ましい」若しくは「できるだけ活用していくことが望ましい」という回答をされております。
そのほか、アンケート用紙においては自由記述の欄も設けさせていただいたのですが、その自由記述の欄に頂いた御意見を、小中学校では15、16ページ、高校では14ページに記載しております。主なものを御紹介させていただくと、小中学校の方については、「学年が進んでも、同じ端末で下学年の内容を復習できることが可能になればよい」、「ディスレクシア等の学習障害のある子供にとっては非常に有効な手段である」、「教科書自体はシンプルなもので、更に深く調べるツールの一つとしては使用させたい」、「考え、想像する力も付けてほしいので、ある程度学年が進んでからの導入がよいのではないか」、「導入する場合には、有害情報へのアクセス等について、家庭でもルールを作る必要がある」、「導入をする場合には、自治体間や学校間で格差が出ないようにしてほしい」といったものがございます。16ページに進みまして、「まずは、試験的に導入をして、その結果を踏まえて活用の可否を検討すべき」、最後から2番目ですけれども、「『デジタル教科書』を巡る議論について、もっと情報を提供してほしい」といったことが挙げられております。
高校の方も幾つか御紹介させていただきますと、「技術は使い方次第、従来の学習のよい点は残すべき」、最後にありますけれども、「『デジタル教科書』を必要に応じて使用するのは賛成だが、それに頼り過ぎないよう注意すべき」といった御意見を頂いております。
事務局からは以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございます。尾上委員と井上委員、何か付け足しがございましたらお願いいたします。
【尾上委員】 アンケートをさせていただいて、内容については事前にお知らせをさせていただきました。まだまだ情報が少ない中、多くの方が、ある程度「デジタル教科書」の導入に対しては意識を示しているのですが、こちらで今、議論をしているデジタル版教科書という概念の認識が薄いです。そして、この中にも出てきてはおりますが、まだ、教科書に関しては保護者負担ということを考えていない方が多いので、「デジタル教科書」も無償給与であるという認識のもと、このような結果になったのではないかと思います。
また、セキュリティ、有害情報等に関しては、全国的に勉強会が進んでおります。全国大会に来られる保護者の方というのは、そのような面に関してはいろいろと啓発をされている方が多く、ある程度の情報を持っていましたので、このような結果になったのではないかと思います。ただ、小学校、中学校の段階ですので、まだ、スマホを始め、情報端末を持たせないという家庭が多くあります。そのような家庭からは全く反対という意見が出てしまう状況でもあります。できる限り、こういった情報は我々も還元していくということをやっていきたい、加えて、国が進めていることも発信していきたいと思っています。しっかりと、このアンケート結果を発信していきたいと思っております。
【堀田座長】 井上委員。
【井上委員】 今回、アンケート実施に関しまして、思うような回答数は得られなかったのですが、1,000以上の回答の確保ができ、お手伝いする機会を与えていただいたことに感謝しております。
結果について、予想よりも「デジタル教科書」への抵抗が少なかったように思います。親の世代も年々、デジタル機器やインターネットが身近になり、その便利さや有効性に馴染んできていることが背景にあり、特に「デジタル教科書」は、アクティブ・ラーニングにつながる様々な可能性の期待感が出ているのかもしれません。また、タブレットを全ての子供に貸与すると、必然的にタブレットに向かう時間が増えますので、やはり、保護者としては健康面や有害サイトへのアクセスの方も心配しております。
青少年のデジタル機器やインターネットの利用についても、保護者の方の意識は、警戒心を持ちながらも、使わせながら活用実績やルールやマナー、リテラシーを高めていく方向にプラスになればと思っております。児童生徒の発達に応じた「デジタル教科書」の利点を生かした授業づくりを期待したいと思います。加えて、各家庭に持ち帰っての使用があるのであれば、その分の費用や補償、また、ネットワーク環境が各家庭に整っていない家庭への配慮も必要になるかと思います。また、不登校のお子様や治療中のお子様に十分な教育の機会を供給していただきたいと思っております。
本日のお話の中に、高校では、「デジタル教科書」より一人一台のパソコンという指摘もございましたので、その辺を十分に皆様と議論していきたいと思っております。
【堀田座長】 ありがとうございました。保護者の多くからは、紙との併用という、この検討会議での認識にと同じ意見が得られたということです。また、様々な懸念があるけれども、条件整備についてもいろいろな心配があるということが得られているということでございます。どうもありがとうございました。
三つ目です。参考資料5ですが、これは御報告でございます。
12月9日、産業競争力会議実行実現点検会合に、私が呼ばれてプレゼンをしてまいりました。この産業競争力会議というのは、内閣の日本経済再生本部の下で開催されているものですが、日本再興戦略などを作っていくところでして、2015年の段階で既に、教科書のデジタル化が再興戦略に挙げられています。今回、テーマがちょうど「人材育成教育改革」、とりわけ初等中等教育改革ということでヒアリングに呼ばれましたので、行ってまいりましたということです。
かいつまんで御説明しますと、2ページ目にあるように、まず、初等中等教育段階というのは、特に公立学校の場合は、勉強のできるまれな才能みたいな話だけではないですということをお話ししました。続いて、3ページ目の下の方にあるように、これは新井教授が御専門ですけれども、人工知能の発達によって職業が変わっていく時代に入るということです。4ページ目、それに合わせて、文部科学省、あるいは中教審においても様々な教育内容、教育方法の検討がされ始めていますということです。6ページ目、問題の指摘の一つに、日本再興戦略にあるように、教科書のデジタル化は確かに進んでいないけれども、そこについては丸1と丸2のような様々な壁があるということを認識していますということ。そして、デジタル教材の方も十分に普及していないし、それは学習指導要領の目標とICT活用の関係が明確になっていないということもあるだろうということをお話しました。7ページ目に、この検討会議でのこれまでの意見を、紙幅の関係でかなり丸めていますけれども、このような意見が皆さんから挙がっており、検討しているということをお話ししました。
具体的には1番と2番が、私どもの検討会議の所掌範囲で、3番目は直接的にはそうではないのだけれども、この3番目の話は常々出ますということをお話しし、最初から100%を目指すわけではなくて、まず、今のうちからできることからやっていくということで、「デジタル教科書」というと壮大なイメージになるので、「デジタル版教科書」という言葉を操作的に導入して、今の教科書の一部をデジタル化していくようなところからスタートしています、ということをお話ししました。
少し飛びますが、あと、インフラ整備や教員の多忙感等も解説した上で、20ページに記載しているとおり、授業インフラの民間誘導、これは経済産業省などにも関係しているところですので、教科書・教材のデジタル化の参入障壁をうまく下げられないかということをお話ししました。検定を経た教科書、これは質保証としても非常に重要なので、それをデジタルでも使えるようにするという話と、そのコストを大幅に減ずることが非常に重要だということで、今の教科書会社、教材会社のほかにも市場参入ができて、それによって競争力が上がっていくということは考えられるということをお話ししました。
以上、皆さんの検討の状況を私の方で御紹介しましたという報告でございました。
これから意見交換に入りますが、本日は第6回の会議でございます。この検討会議は年明けに第7回を行い、それ以降は論点の整理をして中間まとめを出していくことになります。したがって、次回からは、皆さんに自由に御意見を頂くというよりも、項目を決めて整理していくという形に入ります。逆に言えば、自由に御意見を頂くのは本日までということになります。幸い、本日は多くの委員がお見えですので、是非、言い残しがないように御意見を頂ければと思います。
なお、事務局からは、参考資料6として、前回の議事概要も配布していただいており、これまでのいろいろな議論も書いてありますので、是非、それを踏まえて御発言いただければと思います。では、山内委員。
【山内委員】 アンケートの結果についてです。「デジタル教科書」の導入に、「どちらかというと反対」、又は「反対」とした理由の中で一番上に挙がっているのが、「『デジタル教科書』では書く力や考える力、知識の定着等の面で子供の学習が充実するとは考えられないから」となっています。しかし、ここでは、この「デジタル教科書」の使い方というのが非常にポイントになっていると思います。つまり、「デジタル教科書」を使った児童生徒の活動が、どのぐらい処理水準が深いかどうかによって、理解や記憶定着の程度が変わってくると思います。そのため、「デジタル教科書」をどのような目的で、どのような指導法、練習法をして、どのような評価をするのかというのを、ある程度、明確化した形でアンケートを実施すると、また違った結果が出てきた可能性があるのではないかと感じました。
【堀田座長】 その点は、現状ではまだ保護者には情報不足ということですよね。
【井上委員】 はい。
【堀田座長】 これから私どもの検討会議も含めて、この手の議論についてのたくさんの情報を提供していき、保護者の御理解を頂くことが必要だろうということかと思います。一方で、山内議員から御指摘いただいたように、指導方法についても、これは教科書をデジタル化すれば終わりではないので、その次のこととしては、どのようにそれで指導するかということは、当然、必要になる検討かと思います。
ほかにいかがでしょうか。中川委員。
【中川委員】 マイクロソフトの中川でございます。前回の議論で紙の教科書と同等のものをデジタルでも使えるようにすることによるメリットというお話と、できる部分からというお話がありましたけれども、本日の議論を通じて、例えば、ワークグループでディスカッションをするときの教材として教科書を使っていたかな、と少し思っています。A問題、B問題というお話がありましたけれども、総合的にディスカッションやコラボレーションをしていったときに、何かデジタル教材が提供されて目が行ってしまうと、確かに新井教授がおっしゃるとおり、パフォーマンスは多分出ないだろうと思います。
一方で、本日はたまたま、とある大企業の経営者向けに、経営会議の際にタブレットをどう使うのかという講習をやってきたのですが、その観点で言うと、上手に使えばパフォーマンスが上がることは間違いありません。タブレットを持ち込んだ会議の生産性が低いとすると、弊社はほとんど非常に低い生産性の会議をしていることになってしまいますが、きっとそうではないと思っています。全員は議事をとっていないということを考えると、多分、先生がおっしゃったのも使い方の問題で、全員が議事をとるようなタイプのタブレットの使い方をすると、当然これは民間の企業の会議でもパフォーマンスが出ないわけです。
ちょっと話が発散してしまいましたが、今、紙にない教材を「デジタル教科書」、今までは紙にあるものをデジタル版にしたらどうするのかという議論があったと思いますが、もしタブレットを持ち込んだときには、今、紙にない教材というものをどのようにデジタル化して、それをデジタル版教科書の中に含めるのかということも議論しなければならない観点だと思います。
【堀田座長】 ありがとうございます。新井委員、若江委員でお願いします。
【新井委員】 制度論の整合性をとっていくのは今後非常に大事だと思いまして、1点確認をしておきたいと思います。この参考資料3なのですが、教科書は図書であるという前提なのですが、この場合、ここに示している教材の場合、図書に限られますか。
【事務局】 教材につきましては、紙以外のものも含まれております。
【新井委員】 紙以外も含まれているということですね。それから、最後の教育課程企画特別部会のところの4の最初の丸の「更に」というところで、「教科書を含めて必要な教材や情報機器についても」という下に、「ARの技術等の活用も~」と書いてあるのですが、これは、こうすべきであるという提言だと捉えればいいのでしょうか。あるいは、このような意見が出たという話なのでしょうか。
【事務局】 このような意見が出て、こういったことも考えられるということを記載しているものだと考えられます。飽くまでもこれもまだ論点整理でしかございませんので、今後更に議論されていくものと理解しております。
【新井委員】 分かりました。ありがとうございました。
【堀田座長】 これは難しいところで、「必要がある」というときは必要だということですね、「必要がある」ですから、「考えられる」というのは、それも一つの方法だということだと思います。先ほどのARの話もありましたけれども、実際、今の教科書にもURLが書いてありますから、それがいずれバーコードになって、QRコードになって、それがARになってというのは当然のことかと思うので、紙とデジタルの境目のようなところがその辺にあるのではないかと思います。
【若江委員】 使い方について私なりの意見を述べさせていただきたいと思うのですが、まさに先ほど山内委員や中川委員がおっしゃったように、やはり使い方次第ということだと思うのです。デジタル版教科書を使う場合にはどうしてもデバイスが必要になりますが、そのデバイス、デジタル機器を使うことによって、ドリルの機能や共有のためのいろいろなアプリケーション等が複合的に使えるようになることによって、きっと学びは変わっていくのだと思うのです。それに履歴が残っていたとすると、どう考えても私は、最初のときにも意見を申し上げたように、「デジタル教科書」というのは、教材でもないし、教科書でもないし、デジタルポートフォリオ、ノートみたいなイメージが強いのです。
さて、教科書として使えるとすると、URLやQRコード等から、関心のあるときにスッと深く入っていき、その深く入ったことを中心に友達と話し合ったり、自分の理解度を確認していったりというような、今までとは違う、少し能動的な学びが実現していくと思います。
もう一つ、こんなこともできるのではないかと思うのは、その学年だけではなく、学んだことが過去に振り返って、今やっている単元は小学校3年生のこんなところにつながっているとか、もしかしたら、その単元の知識、技能が緩んでいたとすると、もう一度そこを確認すればいいのだという気付きもあったりもするのかと思います。
今度は逆に、横の、つまり、この教科の、この単元で学んでいることはほかの教科のこんな単元とも連動をしているのだというような、縦と横という今までのペーパーではできなかったつながりみたいなものが実現するとすれば、それをうまく活用することによって、もちろんいろいろな先生から御指摘のあったような負荷はあるでしょうけれども、デジタルをうまく使いこなすというリテラシーは子供たちにとってはもう不可欠なスキルの一つですので、そういった前向きな考え方もしていかなければいけないのではないかということを感じました。
【堀田座長】 特別支援の話が結構出ていましたが、近藤委員、神山委員、いかがでしょうか。
【近藤委員】 東大の近藤です。今回御発表いただいたように、特別支援に限ってはということになりますが、ICTの利用によってアクセシビリティを確保するというのは不可欠なことです。特にこれは読むこと、情報を得るということだけではなく出力をするということ、例えば、ノートをつけるであるとか、作文を書くとかテストを受けるとか、そういうことに関してもキーボード等、若しくは音声入力等の助けを得なければ参加ができない事例というのは存在しています。これはまさに不可欠なことですし、新井教授から御指摘があったような盲ろうの生徒に関しても、例えば、いわゆるピンディスプレイなどを用いて点字などのモダリティに変換することによってアクセスができる教材の範囲が広がるということは、まさに自明のことですし、その点を強調していただけたのは大変有り難いと思います。ただ、それ自身が、本日御指摘にありましたように、全ての生徒にとって必要かどうかというのは全く別の議論だと思いますので、その辺を非常によく整理していただけたと思いました。
これは教科書そのもののことからは離れるのですけれども、本日まとめていただいた「現行制度における教材の取扱いについて」の中で1点、気になっているところがあり、御質問させていただきたいと思います。それは、現実的に障害のある子供の場合は、教科書だけのアクセシビリティが保証されても、その他の教材へのアクセス保証は、現行、行うことができません。というのは、いわゆる教科書バリアフリー法によりデータの提供を受けられるものが教科用図書に限られるためで、副教材その他に関してはデータ提供を受けることができないという制約があります。これは、本日の議論でもかなり不透明になっていたところですけれども、教科書以外の教材が教室において利用されるときに、それを代替するようなアクセス保証というのが、今、非常に得にくい状態にあるということです。
学校教育法第34条第2項では教科用図書以外の図書その他の教材が使用できるという可能性が示されてはいるのですが、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第33条第2項により、教育委員会の承認を受けるという手続があります。つまり、本来、特別支援の目的で言えば、かなり自由に、障害のある子供たちのアクセスを保証するような教材利用の可能性、選択肢が広がるということは非常に重要であると考えているのですが、この承認を受けるということが、実際、教育現場においてはどの程度の制約になっているのでしょうか。例えば、それこそ、私たちがサポートしている場合、数学や算数の理解が難しい子供で、教室においての指導が彼らの理解をほぼ促進しないという場合に、例えば、カーンアカデミーに代表されるようなその他の教材の利用というのを、私たちは結局のところ、家庭でそれを指導するということを行っています。教室においての使用は認められないというケースが非常に多いのです。この承認を受けるところの範囲が広がることによって、例えば、現実的に教材の利用可能性が広がるかどうかというところが、私個人としては興味、関心を感じました。
【堀田座長】 これは、事務局にお願いします。
【事務局】 地方教育行政の組織及び運営に関する法律第33条第2項には、「あらかじめ教育委員会に届け出させ、又は教育委員会の承認を受けさせることをする定を設けるものとする」とあるのですが、これは全ての教材について、届出又は承認のどちらかに振り分けることを求めているわけではなく、承認にかからしめる教材、届出にかからしめる教材をきちんと決めて、その手続を教育委員会規則で定めなければならないという趣旨でございます。
そのような前提に立ちまして、参考資料3の2ページ目の実際の教育委員会規則を御覧いただきますと、おおむねこのくらいのパターンに分かれるのではないかと思います。
まず、承認というのは、例えば佐賀県の学校管理規則の第17条で言いますと、「教科書が発行されていない教科又は科目の主たる教材として使用する教科用図書を選定するときは、あらかじめ、教育委員会の承認を受けなければならない」となっております。つくば市の方も同じような規定になっておりまして、実際には教科書がない教科、科目について、主たる教材というものは絶対必要ですので、それを選ぶときには教育委員会の承認を得ましょうというのが、大体の教育委員会の学校管理規則ではないかと認識しております。
【堀田座長】 それ以外のことは学校長の責任において行うということですか。
【事務局】 もちろん、学校の設置管理者は教育委員会ですので、この承認を求めた場合、承認される場合、不承認となる場合はあると思います。届出をすべき教材や、若しくは、届出すら必要ない教材というものはあると思いますが、それらについて、学校が全く自由にできるかというと、もちろん設置管理者である教育委員会が不適切だと判断すれば何らかの措置を講ずべきということになると思います。ただ、基本的には、学校管理者の手続に沿うというのがこの教育委員会規則ですので、ほかの県や市町村、全部見たわけではないのですが、こういった規定に沿って承認を得れば大丈夫であるが、ただ、余りに児童生徒の教育上よくないと判断されるものについては、もちろん教育委員会なりの措置が入ることはあると思います。そういったことを、参考資料3の1ページ目の一番下、「学校における補助教材の適切な取扱いについて」において、文部科学省からも述べているところでございます。
【堀田座長】 教科書あるいは教材がデジタルでどんどん使われるようになるときにこの辺をどうするかということは、一つの論点かと思います。ありがとうございました。神山委員、いかがでしょうか。
【神山委員】 いわゆる教科書バリアフリー法以降、デイジー教科書、又はアクセスリーディング、ビームというようなものを使える状態にあり、その使いこなしのため、教員向けに夏休みを中心に何年か取り組んでいるのですが、先生方に使いこなし方がなかなか浸透していかないという実感を持っています。その中で、この「デジタル教科書」が導入されていくとなると、先ほどどのように使うかというような話もありましたが、教員養成課程からしっかり見通していかないと、子供の学びにつながる使い方は難しいだろうと思っていますので、位置付けに加え、教員養成というところの視点も持っていたいと感じました。
【堀田座長】 私どもが、今、この検討会議で議論していることが世の中で実現するのはまだ大分先だと思うのですけれども、その前に、今の中教審の教員養成部会で、教員養成課程のカリキュラム改善の指針が出ていまして、そこにはこの手のものをきちんと使えるようにするということが、各教科の指導などに関連して入っていました。ですから、そのような検討はこれから前向きに進んでいくのではないかと思っております。
では、天笠委員、お願いします。
【天笠座長代理】 先ほどのアンケートの結果等々、大変興味深く拝見しました。その中で、紙の教科書と「デジタル教科書」の併用を望ましいとする意見が相当多く集まっていることが、データとして示されています。それを前提にする場合に、これはやや先走った話かもしれませんけれども、論点整理等々でまとめていく過程の中で、併用というのが一体どういう姿なのか、授業の方法上の多様化というのもあれば、制度上のすり合わせというところもあるし、ここまで出てきたそれぞれの議論を丁寧に、その観点から整理していくことも必要ではないかと思うのです。併用の姿を具体的に描いていく、そこにおける意義と課題の整理を行う必要があると受け止めさせていただきました。それが一つです。
もう一つ、この議論の中で、まだ十分ではないと思うのは、教科書というのは、当然、教科ごとにそれぞれいろいろな特色があるのですけれども、それを十把ひとからげにして教科書という議論を進めていくという方向性というのは分かるわけですが、一方においては、教科の特性に応じてという視点は扱っていくべきものの一つではないかと思っております。
本日、学習指導要領の話も出ましたが、学習指導要領が現実にそれぞれの学校、現場に入っていく場合には、教科ごとに浸透していく傾向が非常に強いるわけです。ですから、総論としての教科書といっても、ある段階からは、教科に応じての教科書に転じていくことが想定されるわけです。学習指導要領の浸透過程がそのようなものを持っているわけですけれども、今回の場合、教科書についても、今、申し上げたようなところは、今後の検討事項の一つとして位置付けていく必要があると思いました。
以上です。
【堀田座長】 重要な御指摘だと思います。参考資料6にも、前回出された主な意見として、教科や科目、学校段階や学年ごとの特性に配慮して検討するということは書かれているのだけれども、それは具体的にどのようなことなのかということです。どの教科の、どのようなところからやるべきだとか、活用法についても、どのように使うことが望ましいのか、というようなことのしゅん別が、今の段階ではまだ十分ではないので、中間まとめに向けてしっかりと検討していく必要があるという御指摘かと思います。ありがとうございました。
東原委員、お願いします。
【東原委員】 今の天笠委員のお話と関連することになるかと思うのですが、中央教育審議会が昭和58年6月に出した「教科書の在り方について(答申)」において、教科書の意義として、「児童生徒に国民として必要な基礎的・基本的な教育内容の履修を保障する」ということが示されていました。先ほどの教科ごとという話は、そのような観点から、例えば、英語の基礎的・基本的な教育内容とは一体何なのかという議論につながります。紙の時代だったから今の教科書になっていますが、デジタルの時代だったら音声くらいは、というような議論が今まであったかと思います。その同じ議論を音楽でもやってみると、音楽の教科書の中には、鑑賞教材というのが入っており、「第九」などは、昔やったと思うのですが、そのようなものはやはり入っていることが基礎的、基本的だとみなせるのではないかと思います。
このように、基礎的・基本的な教育内容を保証するためのものを各教科で挙げるとしたら何になるか、という問い掛けをしてみるのが、天笠委員の御指摘に対する私のアイディアです。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。そのことと、著作権の問題が非常に大きく関係してくるという現実があります。
高梨委員、お願いします。
【高梨委員】 私も同様に思います。そしてまた、新井教授が御指摘された教育効果の検証ということで、アンケートも必要だけれども、実際に、「デジタル教科書」なり、ICTを使って教育を受けた子供たちがどのような学力を身に付け、将来的に進学、あるいは就職して社会人として自立する上でどのように役立ったのか、役立たなかったのかということを検証することが大変重要だと思っております。
その意味において、せっかく小学校、中学校で自治体が一生懸命に教育しても、高校になってしまってデジタルがバラバラになってしまうというのは、本当にそれは御指摘のとおりで、是非、都道府県の教育委員会には、高校でもしっかり、地方交付税措置がある、ないに関わらず頑張ってもらいたいなと思っています。
先ほど毛利委員もおっしゃったように、教育効果を上げるために、現場の先生たちは苦労して教科書も使ったり、副教材も使ったりしていろいろなことをやりながら、子供たちの基礎的、基本的な学力を身に付けさせたいと日夜努力しているので、フューチャースクールの実績もそうですけれども、ICT教育を何のために使うのか、国として、初等中等教育で子供たちにICT教育を受けさせることによってどのような効果を目指しているのかということを、今までの目標だけではなく、段階的な到達度も含めて、具体的にお示ししていただけると、これは文部科学省にお願いしたいと思っております。
【堀田座長】 荒川区教育委員会の立場から、区の教育をあずかる者としての御発言だと思います。学習指導要領の改訂は今、少しずつ進んでいるところですが、そのようなことがICTについても当然話題になっていまして、そのことを、私も含めてちょっと頑張ってやっていきたいと思います。ありがとうございました。
では、山内委員、どうぞ。
【山内委員】 環境整備について、参考資料6では、比較的ハード面の環境整備が強調されているのですが、人的な環境整備、つまり、「デジタル教科書」を効果的に使える教員を増やすための教員研修の方向性なども視野に入れていいのではないかと思いました。使い方が重要であり、指導法が重要であると思われます。そうするとそれはどのような指導法なのか。先ほど、アンケート結果の中に、「デジタル教科書」では書く力や考える力、知識の定着等の面で、子供の学習が充実するとは考えられないから、余り使いたくない、いう話がありました。英語の場合、「デジタル教科書」ですと、知らない単語の意味を調べるときに、パッと単語をクリックしたりタッチしたりするとすぐに意味が出てきます。迅速に意味が出てくるとスラスラ読めるのですが、後になって単語の記憶についてのテストをすると余りよく覚えておらず、むしろ紙の辞書を使った方がよく覚えているということがあります。しかし、同じ「デジタル教科書」でも、タッチして意味だけをチェックするのではなく、例文もきちんと見させるという指導法を取り入れた場合には、「デジタル教科書」を使った場合と紙の教科書を使った場合に、その再生率の有意差がなくなった、ほぼ同じになったという検証結果も報告されています。このように、指導法や使い方に関する教員研修の方向性も大切なのではないかと思いました。
【堀田座長】 ありがとうございました。だんだん具体的な話になってきていて、中間まとめに向けて、それは非常に望ましいことだと思っています。教員養成の話は、中教審でも今、話題になっていることですし、人的整備についても、非常に大きな課題として話題になっているところです。最後のものは、それは教科書の機能として入れるべきか、教材としてやるべきかということの議論はまだ終わっていませんけれども、そういうことが望ましい在り方、作り方というがあると思われます。
金子委員、お願いします。
【金子委員】 新井教授のお話の中で、AIに代替されない能力を育てるのだというお話があったと思いますが、それは我々としても全く同感です。やはり、向かう方向というのは同じものなので、ただ、どのような進み方をするかということになるかと思います。私たちの学校が一人一台体制というのを作ったのは、そのようなことを目指したものです。すごく大ざっぱな話になってしまうのですけれども、何かを導入していく、何かをこのように進めていこうとするときには、必ず、マイナス面はなくせないものだと思うのです。そのマイナス面に余りにもこだわり過ぎて、その全部が解決できないから駄目なのだということにしてしまったら、本校のICT化は全く進まなかったと思うのです。そのときに、やはり、プラスのことをできるだけ目立たせ、マイナスの部分をできるだけ大きなものにさせないという中で、絶対にマイナスはなくならない、そのような方向で進むしかないのではないかと思います。
もう一つは、今、学校の中にICTが入ってこないというのは、少し異常な事態だと思っているのです。医療関係など全ての分野で、ここまで進んでいるかという程度にデジタル化、ICT化が進んでいるのに、学校だけが取り残されている。その一方で何が起こっているかというと、生徒たちはスマホを個人的に持ちますから、インターネットであれ何であれ、いろいろな情報に囲まれて、それを手にすることができているのです。しかし、そのほとんどが浪費型、消費型の情報に巻き込まれています。プライベートなところで巻き込まれているものについて学ぶための武器として、いかに、ICTやデジタルをこちら側に取り戻すか、これが今の学校にとっては大きな課題なのだろうと思います。
【堀田座長】 ありがとうございます。新井委員、お願いします。
【新井委員】 進め方についてなのですが、この先、次回から収束していく、まとめていくということについては、参考資料7の「『デジタル教科書』に関する検討の視点について」をベースに議論していくという理解でよろしいでしょうか。
【堀田座長】 現状ではそうです。もちろん、本日の意見が付け加わります。
【新井委員】 では、本日の新井教授の御指摘なども含めて、「『デジタル教科書』に関する検討の視点について」がリバイズされ、それに基づいて次回から具体的に議論していくということですか。
【堀田座長】 具体的にと言いますか、このような形で中間まとめにしていくということについて議論していくということです。
【新井委員】 そうすると、「『デジタル教科書』に関する検討の視点について」の論点を削るということもあるのですか。議論では拡散しているので、この「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議という主要要件からした場合に、全てを議論する必要があるのかどうかということも、どこかで議論する必要があるかもしれません。
それを次回までの間にどのように処理するかという論点の最終的なところ、膨らむ部分、削る部分ということの整理はどのように行うのかということを教えてください。
【堀田座長】 これについては事務局と私の方で少し検討させていただきますが、現状では、とりあえず、この辺からやってはどうかという意見はいろいろ出ていると思うので、まずはそこを片付けるというのが優先されるべきだと思っています。それ以外のことについて、長期的にこのような方向に進むべきだという話と、課題がたくさんあるという指摘と、あとは議論しなくてもいいものがあるかどうかについては、ちょっと今の段階では分かりませんが、後になるものはあるのではないかと思っています。これについては、本日の議論を踏まえて事務局と私の方でもう一度精査したいと思いますが、何か今のうちに、ここはこうじゃないかという御意見があれば、言っておいていただければ有り難いのですけれども。
【新井委員】 例えば、整備の問題は必要で、これは教科書ということを考えれば環境がなければいけないので、整備の問題は重要だと思いますが、一方で、効果などについては、デジタル教材も含めて、情報教育課の方で相当取り組んでいますし、紙との併用もずっとやっていますので、その話をまた改めてここに載せることは不要ではないかと思います。
【堀田座長】 同じことをもう一回やる必要はないということですか。
【新井委員】 そのようなこともありますので、教科書としてどう扱うかということについて絞るかどうも含めて、次回までに何かキャッチボールをして、最後はもちろん座長にお任せしますけれども、そんな手順が必要ではないかという気がいたしました。
【堀田座長】 分かりました、そこは検討させていただきます。当然、私どもの検討会議の所掌範囲、ミッションは条件整備の話ではなく、かといって条件整備は進んでもらわなければ困るのですが、「デジタル教科書」の制度論の整理だと思いますので、そこのところを優先させていただくことになろうかと思います。
本日はここまでにさせていただきます。先ほども述べましたけれども、年明け以降は議論の取りまとめということで、新井委員からの御指摘もあったように、論点をどう整理していくかということも含めて論点の整理をしなければならないということになります。本日、言い足りなかったこと等がありましたら、またメール等で事務局の方にお寄せください。
最後に、次回以降のスケジュールについて事務局より説明をお願いいたします。
【事務局】 次回、第7回のスケジュールですけれども、来年1月18日月曜日、16時から18時で予定しております。また、先ほど座長からもございましたけれども、第7回以降につきましては、論点整理に向けて議論を進めていきたいと思っております。
また、事務局といたしましては、来年春から夏頃に中間まとめができればと考えております。
以上です。
【堀田座長】 スケジュールについては、事務局から説明があったとおりです。課題はたくさんありますが、永遠に議論をしているわけにもいきませんし、アンケートにもございましたが、保護者から見れば、もっと情報が欲しいという御意見もあります。「デジタル教科書」についてどこまでを含めて議論するかということについても様々な認識がありますので、私としては、できれば春頃には何らかの形で、今ここまで議論して、こういうことが話題になっているということは中間まとめとしてお示し、御意見を頂いて、その上で何らかの形の結果を夏以降に出していくこととしたいと思います。皆さんにはまた御意見をたくさん頂きますけれども、引き続き御協力をお願いしたいと思います。
本日はこれで閉会とさせていただきます。いつもながらお忙しいところありがとうございました。また、新井教授におかれましては貴重な御意見をありがとうございました。


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