「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議(第4回) 議事録

1.日時

平成27年9月15日(火曜日)16時00分~18時00分

2.場所

中央合同庁舎第7号館(金融庁)12階 共用第2特別会議室

3.議題

  1. 関係団体からのヒアリング(理数系学会教育問題連絡会、日本小児連絡協議会)
  2. 意見交換
  3. その他

4.出席者

委員

堀田座長、天笠座長代理、新井委員、井上委員、尾上委員、金子委員、黒川委員、神山委員、近藤委員、高梨委員、中川委員、東原委員、福田孝義委員、福田純子委員、毛利委員、山内委員

文部科学省

望月初等中等教育局教科書課長、黄地教科書課教科書企画官、宇高教科書課課長補佐、磯生涯学習政策局情報教育課長、新津情報教育課情報教育振興室長、浅田内閣官房教育再生実行会議担当室長

オブザーバー

【理数系学会教育問題連絡会】都築功東京都教職員研修センター学習指導専門員、根本泰雄桜美林大学教授、筧捷彦早稲田大学教授、辰己丈夫放送大学准教授
【日本小児連絡協議会】山縣然太朗山梨大学教授

5.議事録

【堀田座長】 それでは、定刻となりましたので、ただいまから「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議の第4回会議を開催させていただきます。皆様お忙しい中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は、前回に引き続き、関係団体からのヒアリングの後に意見交換を行いたいと思います。今回は報道機関等から写真撮影の希望を頂いておりますので、各団体からのヒアリングの冒頭のみこれを許可したいと思います。
 なお、本日は若江委員が所用により御欠席でございます。
 議事に入る前に、事務局より資料の確認をお願いいたします。
【事務局】 では、まず配付資料の確認をさせていただきます。本日の配付資料として、資料1-1「デジタル教科書」のあり方に関する現時点での見解、資料1-2「デジタル教科書」推進に際してのチェックリストの提案と要望、資料2-1ICTと子どもの健康問題、資料2-2子どもとICT(スマートフォン・タブレット端末など)の問題についての提言、資料3「デジタル教科書」に関する検討の視点について、資料4今後のスケジュールを配付しております。
 また、参考資料1として、第3回の議事録を配付させていただいております。こちらについては、委員の方々には御確認いただいておりますので、文部科学省のホームページに掲載させていただきたいと思います。参考資料2として、平成26年度の学校における教育の情報化の実態等に調査結果【速報値】を配付しております。参考資料3として、中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程企画特別部会の論点整理の関係資料を配付させていただいておりますので御参照ください。
 また、机上資料として、第3回までの検討会議の配付資料をまとめております。こちらの方は会議終了後にそのまま机上の方に置いて帰っていただければと思います。
 配付資料は以上です。過不足等ございましたら事務局の方までお申し出ください。
【堀田座長】 ありがとうございました。
 それでは、早速議事を進めさせていただきます。議題1関係団体からのヒアリングとして、最初に理数系学会教育問題連絡会から御説明いただきたいと思います。本日は、理数系学会教育問題連絡会から東京都教職員研修センター学習指導専門員でいらっしゃいます都築功先生、桜美林大学准教授でいらっしゃいます根本泰雄先生、早稲田大学教授でいらっしゃいます筧捷彦先生、放送大学准教授でいらっしゃいます辰己丈夫先生にお越しいただいております。
 なお、本日のヒアリングの流れについてですが、前回同様、約15分程度で御説明いただいた後に、質疑応答の時間を15分程度取らせていただきたいと考えております。1団体30分程度を予定しておりますので、皆様方、御協力をよろしくお願いいたします。
 それでは、よろしくお願いいたします。
【辰己准教授】 それでは、御説明させていただきます。理数系学会教育問題連絡会です。理数系学会教育問題連絡会というのは、主に理科、数学、及びその周辺の、例えば情報や統計といった専門系の学会の中で、教育に関することを議論している学会の連合体です。私は、情報処理学会のメンバーとして、理数系学会教育問題連絡会に参加している辰己です。よろしくお願いします。
 今、お手元に、資料1-1と資料1-2がございます。資料1-2の方を先に御覧いただけますでしょうか。資料1-2が2010年に、主に情報処理学会が取りまとめとなって日本化学会、日本化学会化学教育協議会、それから日本数学会、日本地球惑星科学連合、日本統計学会、日本動物学会、日本物理教育学会などで、あと間に合わなかった幾つかの学会もあるのですが、共同で出したものです。このときには2010年、つまり平成22年、23年に「デジタル教科書」について幾つか議論がありましたが、そのときにこの文書を提出しております。
 ここでは、「デジタル教科書」の推進に関してのチェックリストと提言と要望ということで説明をさせていただきました。基本的には、例えば教育現場にコンピューターやタブレット、その他、それから情報機器、あるいは実物投影機のようなものも含めて、教育現場にどんどん入っていくことによって、教育活動が情報化され、それによってどんどん良くなることは非常に良いことだと私たちは考えているのですが、それに従って、例えば従来の学習において大事なことが抜けてしまうのではないかということと、それから、情報化が進むと当然のごとく、それに対して副作用というものも出てきて、例えば情報化が進んだことによって、いろいろな問題も出てくるだろうということで、そういった問題がなるべくないようにということを願って作られたチェックリストです。実際には教育現場の情報化以前に、例えばオフィスの情報化であるとか、企業の中の情報化といったことに関しては、情報教育に関係なく情報処理学会のメンバーはよくそのあたりは分かっているというつもりでおりますので、そのときにまとめたものということです。
 資料1-2について、事項として1から9までまとめてございます。基本的には従来、私たちが学校等で学ばれるべきだと思われていることに関して、それが大切である部分に関してはしっかりと維持していただきたいというつもりで書きました。ただ、これは、「デジタル教科書」を導入するなという意味ではなく、「デジタル教科書」を導入してもこれをきちんと守っていただけるようなものが実現すべきだということです。
 かいつまんで簡単に説明させていただきますが、例えば、事項1では、手を動かして実験や観察を行う時間が縮減されてしまうことにならないこと、それから2では、虚構の映像によって実は科学的真実を分かったように理解させるということはないようにしてほしいということ、それから、事項3で、筆記具などを使って考えるということは重視してほしいということ、事項4で、記録し、整理するという活動も、デジタル化されても同じように必要であるということ、事項5で、例えば、コンピューターで答えやすいような穴埋め式問題ばかりが増えていくのではなく、実際、情報処理の世界でも人工知能等も使って、穴埋めではないものもどんどんと採点や評価ができるようになりつつありますから、是非そういうことを含めて、選択式問題などばかり増やすようなことはないようにということです。事項6で、子供たちのディスカッションが阻害されることがないように進めてほしい、事項7で、授業が単にプレゼンテーションになるものではなくて、実際に考える、それから活動する、作るといった活動がプレゼンテーション以外のところでも行われるようになってほしい、事項8で、教員が、デジタル教材があれば勉強しなくてもよいというふうにならないようにしてほしいということです。事項9で、大体、コンピューター、それから電子機器の発達がまだまだ進んでいないというところがありますので、紙の教科書が必要な場合もあり、併用する形でやっていただきたいということです。
 その後に付記1として健康上の問題と、それから付記2としてプライバシーに関する検討というのがあります。これは補足事項ですので、説明は若干省略させていただきたいと思います。今までの事項1から9までの部分は、細かくはどのような議論を重ねて出てきたかというのは、2ページの下から、3ページ、4ページに全て書かれております。これは後で御覧いただければと思います。本日は時間も余りありませんので、割愛させていただきたいと思います。
 資料1-1に戻りまして、今回、この会に資料として提出させていただきたい一番のものは、この資料1-1の方です。というのは、先ほど御紹介したものは、平成22年の文書ですので、今回、それに再度検討を加えたものがこの資料1-1です。基本的には方向性は何も変わっていないと考えておりますが、ただ、より具体的に、教科書がどのような役割を持つべきであるか、教科書はどのような効果があるべきだ、それから、教科書の質を担保するために検定はデジタルという面でどうあるべきか。それから、実際、「デジタル教科書」とは言いますけれども、どの範囲が「デジタル教科書」であるかということについて考えておいてほしい。あとは、法律上の位置付けや、必要となる環境整備などについて幾つか私たちは考えなければならないだろうということでまとめました。
 これに関して、本日は情報処理学会以外の学会も含めてヒアリングに伺っておりますので、一度マイクをお渡ししたいと思います。根本先生、御専門と、これに関しての御意見をお伺いしたいと思います。お願いします。
【根本准教授】 マイクが回ってきましたのでお答えいたします。本務校は桜美林大学の教員ですが、立場は、資料1-2の、提案を出した各学術学協会の中の上から5番目で、そこには一般社団法人と書いてありますけれども、その後変わりまして、今は公益社団法人日本地球惑星科学連合となっている当連合の委員として、この理数系学会教育問題連絡会に参加しております。専門は地球惑星科学で、もう少し細かく言うと、地震学や地震教育、地震防災・減災教育を専門としております。
 先ほど、辰己先生からお話がありましたように、資料1-2の段階においては、その中身に関して日本地球惑星科学連合としても、これは理事会を通して了解をもらっていますが、資料1-1に関しましては、まだ本連絡会内でも最終的な到達はしておらず、日本地球惑星科学連合の委員としても異論がある部分も少しあるので、話をさせていただきます。
 まず、資料1-2に関して、理科の立場で具体的に話をしますと、「デジタル教科書」が主となってきたような状況になったときの長所の方からお話します。例えば、鳥の名前などが出てきたときに、どんな鳴き声ですかという疑問に対して、現状でもパソコンを使えばいいのかもしれませんが、例えば「デジタル教科書」のようなものがあって、先生がクリックすると、鳩はこうやって鳴くんだよとか、ライオンはこうやって鳴くんだよといった指導場面では、おそらく、非常に良い効果があると思います。ところが、御存じの方も多いと思いますが、小学校の先生は8割から9割方、いわゆる文系の大学を卒業して小学校の先生になっていて、実験などの指導を、特にフィールドワークのような指導を非常に嫌がるというか、苦手とされている先生が多いというのは、これは文部科学省の資料からも出ているとおりです。そういう先生に対して、例えば「デジタル教科書」が入ったときに、もう実験はいいや、フィールドワークはいいや、教科書に出てくる動画や画像を使えばいいや、例えば岩石がきれいだというのを、本当は本物を見せたいのですけれども、プロが作ったものが画像としてあったらそれを使えばいいや、というような、実験などの軽視につながるような恐れが生じないか、ということを非常に危惧しております。
 これは逆に言うと、最近、文部科学省の話だと、アクティブ・ラーニングの流れというのが出てきているように思いますが、全く逆行する方向にベクトルを働かせるために活用される可能性もあるのではないか、という点を気にしているところです。
 それから、昨今、私が勤める大学も含む多くの大学で、学生のノートテーキングが非常に問題となっております。「デジタル教科書」を使うことで、その中にデータを入れるとか、書くというようなことを小中高でずっと続けてやってきたとすると、恐らく大学生段階になったときに、ノートをとれない学生が今以上に増えるのではないでしょうか。そういう意味で、全面的に「デジタル教科書」にしていくというのは、日本地球惑星科学連合ではかなり危惧しています。
 そういう意味で言いますと、資料1-1にあります、例えば2ページ目の5番の「デジタル教科書」と紙の教科書との関係についてのところで、繰り返しになりますが、「動的変化のない静的なコンテンツを教科書で扱い、紙版を併用すること」、ここまでは良いのですが、その次の、「将来的にはデジタルが主となることが想定されるが」とありますが、これは恐らく私の属している日本地球惑星科学連合内ではかなりもめると思います。おそらく、主とすることは、例えば地球惑星科学だと、ずっとデータを取って、地道な作業を繰り返した中から理科的な素養を伸ばすというような教育がよく行われており、そういう点に対して、デジタル主となった場合に、実際の子供たちのアクティブ・ラーニング的なものも含めて、理科としての活動を阻害する要因になるのではないかと、地球惑星科学的な分野からは非常に危惧します。
 もう1点だけ、「デジタル教科書」が導入されたときに、特に先ほどの小学校がそうですが、ほとんどの教員がいわゆる文系の中で、故障や、子供が操作方法が分からないといった場面が生じたときに、例えば40人学級として、1人の先生でどう対応するのかということが、どの資料を見ても書かれているのを見た記憶がないのですが、この辺は文部科学省やコンピューター系の教材を作ろうとしているところの方はどう考えておられるのでしょうか。40人のノートを見るだけでも今、教員は手いっぱいな状況なのに、「先生、ここの操作分かりません」、「先生、私の、フリーズしました」、これが3人も5人も同じ時間の中で出てきたら、(先生)「3ページを開けて」、(児童)「見えない」、「見えない」などとなったとき、操作の指導をしているだけで、教科の中身は何も進まないまま時間が過ぎてチャイムが鳴る、こういう状況を想定したときにどうするのかといった話の議論を、是非とも導入に向けて深めていただければというのが意見です。
【辰己准教授】 ありがとうございます。
 では、都築先生、お願いします。
【都築専門員】 都築と申します。よろしくお願いします。
 日本生物教育学会という、生物の教育に関する、幼稚園から大学、あるいは社会教育の方々が集まっている団体でございまして、実は、この中に入っていないのですが、2010年の時点でまだ学会の中での議論がまとまっておらず間に合わなかったというのが実情でございます。
 私自身は、現在、副会長という立場でございますけれども、仕事としては、東京都の管理職を退職いたしまして、今、学校の現場の先生方の理科及び生活科の授業力を向上する指導を行っております。
 生物の立場から、ごく簡単に意見を述べさせていただきたいと思います。先ほどの地球惑星科学の方のお話とかなり重複する部分があるのですけれども、やはり理科というのは、観察、実験、そして体験、一言でいえばリアルというのが非常に重要なところでございます。特に、生物の場合は、実際に生き物と接するということですね。今、非常に鮮明な画像、これは「デジタル教科書」でなくても、以前から視聴覚教育等でいろいろあるわけですけれども、一貫して議論になっているのは、やはり確かに技術的にも画質等についても非常に向上しておるのですが、それがやはり実際の生き物に接し、そしてその生き物から学ぶ、自然から学ぶということ、どんどんそれが軽視されるのではないかということです。
 生物多様性というのが今、一つの環境問題の課題になっておりますが、例えば生物多様性にしても、抽象的な、あるいは知識だけのそういったものでなく、やはり身近な生き物、あるいは野生の生き物を通して、実際に自然の中で体験をするということによって、その大切さというものを知るということが必要だと思います。また、生命尊重ということに関しても、実際に生活科、小学校低学年の中で、実際に生き物を学校で飼育して、モルモットやウサギの温かさとか、そして実際に死ぬ場面もあるわけですが、そういったことを体験するということが必要になってきます。これは決して「デジタル教科書」と矛盾するものではなく、先ほどの資料1-1の教科書との関係についてというところであるように、役割分担ということでもあるわけですが、決して画像のみということにはなってほしくないということを願っているところでございます。
 また、本日の資料には直接入っていない部分、あえて言えば紙の資料との関係というのはあるのですが、例えば、私は生物学オリンピックの仕事もしているのですが、生物学オリンピックの国際大会に出た生徒が高校時代どうしていたかということを聞いてみると、教科書でなく補助教材の図説を暇さえあれば眺めていたと言っていました。今、非常に、例えばサーチエンジンなどいろいろなものが発達し、アプリも発達して、目的のものにすぐ到達できるような時代であります。しかし、昔は例えば辞書なり、あるいは図鑑なりを調べて、そこで視野に入ってくるいろいろな関連する情報、他の情報も入ってきたわけで、あるいは教科書をぺらぺら何げなくめくりながらいろいろな情報が入ってきた。そういった、いわゆる道草みたいなところが、本当はもっともっと見直されていいのではないかというか、目的に一直線に行くのではなく、道草的な、あるいは散歩するような、視野の中にいろいろなものが入ってくるような、そういうような要素も「デジタル教科書」になったときにも、そのような工夫もあると良いという気もいたします。
 私からは以上です。
【辰己准教授】 では、最後に筧先生からお願いします。
【筧教授】 情報処理学会から来ました。検定との絡みで考えたときに、紙でできている、いえ紙でなくてもPDFでも構いませんが、動かないものの検定をすることについては長年の歴史があって、間違いなくいろいろなことができるようになっています。人間の目で確認できるようになっていますが、一旦デジタルになって、その中にプログラムが入るということになった途端に、同じ行数であっても、そこで起こり得る異なる現象はたちまちのうちに、2の何とか乗という勢いで、あるいは10の何とか乗という勢いで増えていきます。そうなると、全数検査すればいいじゃないの、全部見ればいいんだからという話は途端に成り立たなくなります。ということを考えると、これはソフトウエアの検査も同じことですけれども、簡単に考えて「いや同じじゃないの」と思うようにはいかないということがあります。その部分については想定案の検定でもなお事実的にうまく対処のしようがない部分でありますから、簡単に全て「デジタル教科書」に変えて、同じように検定すればいという話ではないということにだけ注意を喚起して、私からの意見具申ということにしたいと思います。
【辰己准教授】 ありがとうございます。
 理数系学会教育問題連絡会としましては、今、3人の先生方にもお話ししていただいたようなところを議論しております。基本的にはやはり学びがどう変わっていくかという意味では、今までより新しい選択肢が増えるという点で賛成なのですが、従来勉強してきたことがなくならないようにということと、それから、今後できることが情報技術がまだまだ追いついていない部分に関しては、未成熟な部分に関しては十分に配慮していただきたいと思います。
 以上です。ありがとうございました。
【堀田座長】 ありがとうございました。大変貴重な意見でございました。
 「デジタル教科書」の導入によって学びが劣化しないようにしてほしいという要望、これは活用の仕方の話にもなるかと思います。あと、最後、筧先生がおっしゃいましたけれども、ソフトウエアの検査でも大変なように、幾何級数的に検査すべきところが増えていくということが「デジタル教科書」の検定においても同じようなことが起こるということを承知しておかないといけないという御指摘だったと思います。
 それでは、ただいまの御説明につきまして、何か御意見や御質問等ございましたら挙手をお願いいたします。
【毛利委員】 御説明ありがとうございました。つくば市教育委員会の毛利と申します。
 事項1から事項8番につきまして、私も全く同感であります。同感でありますが、御質問させていただきたいのですが、これは「デジタル教科書」の際にこういうことだったと思うのですが、紙の教科書のときに同じような提言をされていたんでしょうか。
【辰己准教授】 紙の教科書のときの提言というか、これは2010年の「デジタル教科書」に関する委員会が幾つか国の中にあった、そのときに出したもので、それ以前にこういったものは出しておりません。
【毛利委員】 分かりました。私も教員になってから約30年になりまして、指導主事を教育委員会で7、8年やっておりますが、全くおっしゃるとおりで、こういうことをしていては、例えば子供は結局授業をやっていても嫌になりますし、親やほかの教員が見ていても、これは間違った使い方だなというのがよく分かると思います。ただ、ここにお書きになっていることは、紙の教科書でも同じです。私が前、デジタル、ICTがなかった頃、教えていた頃も同じことが言われていました。小学校の教員は、小学校免許というのは理科の専門でない方もたくさんいますから、教科書だけしかないんですね。逆に、今、指導者用デジタル教科書ができましたので、実験の方法を、ほかの専門の人がいなくても、逆に予備実験でそれを見て、実験をできるという逆のメリットも出てきたりしています。それがないときには教科書しかないので、怖くて実験をしないという人もいたりしたんですね。
 ですから、やはりこの1から8の部分は、紙の教科書であろうと、「デジタル教科書」であろうと、教員の資質の問題といいますか、教員の使い方の問題になりますので、それはやはりデジタルだとそうなりやすいという特性はあると思いますので、やはりそれはしっかりと導入するときに留意しておく必要があると思います。ありがとうございました。
【堀田座長】 何か御意見ありますか。
【辰己准教授】 基本的に全く同じですが、つまり、デジタルによって、この特性、大事だと思われているのが、更に縮減されることがないようにということですから、紙の時代とデジタルとではそういう意味では全く一緒だと考えております。
【堀田座長】 ありがとうございます。
 では、東原委員。
【東原委員】 信州大学の東原と申します。
 ここに書かれていることは、もともと私も理科教育を専門としていた身なのでよく分かることでございますが、せっかくの機会なので教えていただきたいことがあります。それは、もしデジタル化するのだったら、皆様方の御専門の領域からしたら、こういうものをやるべきではないかという、このようなお知恵もいろいろ頂ければと思います。先ほど、鳥の鳴き声の話が具体例で出たこととか、障害のある子供たちのへのことは記載されているかと思いますが、科学者って結局は随分データ処理した結果をいろいろ見ていて、遠くに行った、宇宙に飛び立っていたものが送られてくる信号処理したデータを実は見ているわけで、それはバーチャルなのか本物なのかと迷うところもあるわけですけれども、是非、御専門の立場から、「デジタル教科書」をもし作るのであるならば、こういうものをやらないと意味がないのではないかという御意見を頂けると有り難いと思います。
 以上です。
【辰己准教授】 会の中で議論していて出てきたもので、短くまとめると、例えば非常に短い時間のものを観察するのはできない。それは100万分の1秒で起きるような現象はさすがに観察できないので、そうすると、それは撮影した映像をデジタルで見ないといけないとか、あとは100万年掛かるものを観察することもできないので、時間的におかしいものとか、あとはスケールがおかしくて、例えば非常に小さくて電子顕微鏡では見られないようなものをモデル化してとりあえず勉強しようとなったら、それはさすがに実物を見ることができないといったことがあります。あとは地球とか銀河になると、これはもちろん望遠鏡では見ることができますが、これも実際見にいくことができません。そして、あとは実験で、倫理的にやってはいけない実験に関してはしようがないと思います。そういったことに関しては理科や数学、情報もそうですけれども、学習者がデジタルで見せられたことによって偽物を見せられたというわけではないですから、共有できるのではないかと思っています。
【根本准教授】 少し戻りますが、毛利委員の先ほどの、何か提言を出されましたか、という御質問がありましたけど、物化生地それぞれ各学術学協会として文部科学省に教科書をこうしてくださいとか、この記述はおかしいとか、そのようなものはずっと出し続けておりますので、具体的にといったら、また後でお尋ねいただければと思います。
 また、デジタルにしたらということで、我々、最初この提言を作るときは、紙の教科書が全部「デジタル教科書」に変わる、それをすごく危惧するということが第一段階としてありました。それが今、どのような流れになっているのか、座長から後で伺いたいと思いますが、議論していて分からないのは、何でデジタルの副読本的なものとして入れるのではなくて、これを「デジタル教科書」と言っているのかという、基本的なことを教えていただけると、今の東原委員の御質問にも答えやすいと思います。
 例えば、今、辰己さんがおっしゃった超高速動画のようなものは、別に教科書じゃなくてもよいわけで、それは教材としてあればいいもので、それを教科書に入れる必要性というのは、特に私は感じないのですが、今、この議論というのは、もう将来的には全部デジタルに変わるという議論の中で行われているのでしょうか。それとも、併用でしょうか。おそらくその辺を伺わないと、我々も具体的にこうですという意見は非常に言いにくい、というのが正直なところです。
【堀田座長】 それは議事録で公開されていることになっていまして、今のところ、ここでは全てデジタルにすべきかどうかも含めて議論をしていますが、今のところ、全てデジタルにすべきだという意見はありません。ですから、紙との併用が当面の前提であるということはすべての人が納得しているところだと思います。一方で、デジタルにしないで副教材でいいじゃないかということについては、それでいいけれども、そうすると、購入するという義務が学校には生じてきて、購入できるところとできないところで、デジタル教材が使われたり使われなかったりすることによる格差が今後生じ得るということに対して、教科書は無償給与ですから、そのようなラインにこれを乗せることが、もしかしたら、全ての子供たちにより良い教育を与えることになるのではないかという議論の中で、どこまでできるかということを、法改正も含めて検討しているという状況です。
【根本准教授】 ありがとうございました。
【東原委員】 私の知りたかったところは、例えば、これも今の座長のお話のとおり、決まっているわけではございませんが、英語の教科書で、英語の音声が聞こえるということは、昔、我々の時代にはないけれども、今だったらそれを教科書の範囲に含めてもいいのではなかろうかという合意は割と得られるのではないかと想像するわけです。そうすると、英語の教科書はデジタル化されてとっても魅力的ないいものになるかもしれない。しかし、私もやっていた理科の教科書は、今までの紙のものと同じものがデジタル化されただけだとすると、英語の教科書は随分魅力的になったのに、理科は紙のものがただPDF程度で見られるだけでいいのかなと。もしかしたら、英語に音声を加えるのと同じような、ぎりぎりのレベルで、検定の大変さはおっしゃるとおりなのですけれども、だけど理科だったら、あるいは数学だったら、せめてこのぐらいは教科書の範囲に入れておいた方がいいんじゃないかというのがもしありましたら教えていただけますでしょうか。
【辰己准教授】 理科だけではなくて、数学と統計と情報もありますので、私たちの学会の数学、統計、情報の方でお話しさせていただきます。基本的に最近、統計学が特に中等教育で重視されつつありますが、統計だと大量の計算をしなければいけないんですね。もちろん、手計算でやることも大事ではあるのですけれども、一方でコンピューターの力を使って、単純な数値の計算であれば、高校生ぐらいであれば実際、手計算できるけれどもやらなくてもいいという、そういう発達段階であうと思われます。それから、情報に関して言うと、プログラミングや、データをデジタル、アナログにするといったところに関しては、紙の教科書ではやはり勉強しにくいところはあって、そこはやはり動く教材というのがあれば非常に勉強しやすくなるだろうと思っております。
【堀田座長】 そういうことについてはむしろ賛成であるということですね。
【辰己准教授】 はい、そうです。
【堀田座長】 だから、「デジタル教科書」にするときの仕方と、その使い方について強い御意見があるということですよね。
 では、都築先生、どうぞ。
【都築専門員】 生物なのですが、先ほど、辰己先生がおっしゃったのに尽きるわけですが、少々補足させていただきます。結局、実際に体験できないものを見られるということですが、ただ、このことは結局、今までの視聴覚教材と同じです。ということは、先ほど副読本の話もありましたが、私もあえて教科書に入れなければならないというイメージがなかなかつかみにくいところですけれども、そこが一つあります。
 それから、あと、子供の興味関心に応じてどんどん、いろいろな情報とか、あるいはいろいろなことが広がっていくような、そういう内容が入るといいと思いますが、でも、これも副教材でいいじゃないかと言われれば、そうですねということになってしまうのですけれども、今、思いつくのはそんなところです。
【堀田座長】 ありがとうございました。
 少し時間が押しているのですけれども、どうしてもここで御質問しておきたいという方。
 では、天笠委員、山内委員の順番で。
【天笠座長代理】 御発言の中に、そこに触れられたところがあったかと思うのですけれども、改めて考え方をお伝えいただければと思うのは、初等中等という、そのような学校の段階、あるいは発達の段階における、理数の場合の、位置付けは極めて重要なのではないでしょうか。その一端は、先ほどの御発言にあったと思うのですが、改めて初等という段階とデジタルという段階というのは、私の立場からすると、かなり慎重に扱った方がいいのではないかと、考えているわけですが、改めてそういう立場から、先ほどの御発言について、特にこういう点について配慮する必要があるのではないか、注意する必要があるのではないかという、御提言、御提案がありましたらお願いします。
【都築専門員】 先ほどの流れなのですが、要するに、実際に体験できるもので全部デジタル化しないでほしいということに私の感覚としては尽きると思います。
【天笠座長代理】 数学の分野はいかがでしょうか。
【辰己准教授】 数学に関しては、基本的に数をどういうふうに計算するかとか、図形をどういうふうに見るかというのが初等教育の段階としては重要で、中等教育になって統計的な考え方を割と今、取り入れる傾向にあると思っています。やはり図形をどう見るかといったときに、手で引いてみるということと、コンピューターの画面で引いてみるということでは、やっぱり図形に対するものの考え方が変わってくると思います。だからといってコンピューターで引いてはいけないというのではなくて、両方とも学習活動の中に含まれるべきであろうと思っております。
【天笠座長代理】 どうもありがとうございました。
【堀田座長】 山内委員。
【山内委員】 東京国際大学の山内豊と申します。
 資料1-2の2ページ目の事項9のところに、「現行の紙の教科書を併用し」、その次なのですが、「評価や採択においては紙の教科書を基準とすること」という記述がございます。紙の教科書を基準にしますと、デジタルの良さというものが評価されなくなるという危険性もあるのではないかという気もするのですが、このような、この評価や採択においては紙の教科書を基準とすることという内容がここに入っている理由や背景とか教えていただけますでしょうか。
【辰己准教授】 理由は簡単でして、このときには全てを「デジタル教科書」にして紙をなくすのではないかという危惧が私たちの中にあり、そうなったときに、例えば「デジタル教科書」と当時言われていたもの、今も別の名前でありますが、使えないような情報環境、例えばインターネットがないとか、十分な電池がない端末、それから教室に無線のWi-Fiが飛んでいないというところも想定されます。そうすると、そういった学校で、結局、「デジタル教科書」が正本で、紙のものがむしろ劣っているバージョンだとなると、教育格差が生じてしまうことがあると考えておりました。今、堀田座長からもお話がありましたように、併用ということになれば、この部分に関しては改められた方がいいのではないかというのは、この当時と今との違いとして考えております。
【山内委員】 ありがとうございました。
【堀田座長】 大変恐縮ですが、総合討論のところでまた続きをさせていただくということで、この団体につきましてはここまでとさせていただきます。どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、日本小児連絡協議会から御説明を頂きたいと思います。本日は、日本小児連絡協議会から、山梨大学教授でいらっしゃいます山縣然太朗先生にお越しいただいております。山縣先生は、公益社団法人日本小児保健協会の理事であり、過去に教科用図書検定調査審議会の臨時委員も務められていたということでございます。それでは、よろしくお願いいたします。
【山縣教授】 よろしくお願いいたします。山梨大学の山縣でございます。
 本日は、今、御紹介がありましたように、日本小児連絡協議会を代表して参りました。この日本小児連絡協議会というのは、資料2-2にございますが、今年の1月に、子供とICTの問題に関しての提言をしておりまして、ここに団体名が書いてありますが、小児保健協会、小児科学会、小児科医会、そして小児期外科系の関連学会、その4学会の連合でございます。
 資料2-1を御説明させていただきます。2ページ目を御覧ください。まず、ICTの健康問題というのはどういうものなのかということ、特に、その中でも、パソコン作業の健康障害、VDTについて、それから、ネット利用と健康障害ということで、ネット依存について御説明いたします。私は医師でして、疫学研究、公衆衛生を専門としておりますので、学校での調査等もやっておりますが、それの現状について、そして最後に、この1月に出された提言について簡単に御説明をいたします。
 3ページ目でございますが、このICTの健康問題というのは、まず、ICT端末を使うということそのものが健康障害ということで、三つに大きく分けられるかと思います。最初には、長時間に続けることによる健康障害、すなわちVDT、Visual Display Terminal症候群というふうに言いますが、睡眠や運動などの生活時間が不足することによる健康障害、それからネット依存、この三つでございます。VDTに関してはこの後お話しします。
 それから、次にコンテンツ、いわゆる内容による健康障害についてです。例えば、それはゲームやいろいろな情報よる行動やメンタルへの影響についてです。
 3番目に、情報伝達手段としての健康障害、いわゆるコミュニケーションを直接とるのではなく、スマホ等でコミュニケーションをとるということについてです。このことに関して、後ほど御紹介しますが、社会性の発達への影響等、脳への影響があるという報告がございます。
 次のページを御覧ください。まず、VDT、これは産業保健の現場では、これに対する対応をかなり前から行っていますが、改めて御説明いたします。コンピューターのデジタルディスプレイの画面表示端末を使用した作業を長時間続けることにより、次のような症状、すなわち目や体、心に様々な症状を来す病気のことを言います。特に目であれば、眼精疲労、それから視力低下、ドライアイなど。体の症状としては肩こり、首から肩、腕の痛み、頭痛。それから、心の症状としては、いらいら感、不安感、そして抑鬱状態といったようものが起きるということで、厚生労働省からもVDT作業における労働衛生管理のためのガイドラインが出されております。これは単に大人での疾患ではありませんで、このVDT症候群は小児でも診断され、それに対して治療が行われている現状がございます。
 これが一番大きな、いわゆるこのような端末を使うことに対しての明確に分かっている健康障害と言っていいと思います。
 次に、これも明らかなことでありますが、こういったICTを活用するということは、時間は24時間しかないわけですから、それによって、そのほかの生活時間、睡眠や運動、そういったようなものが不足してしまうということに対する健康障害があります。睡眠の不足、それから、それによって朝起きられなくて、朝食欠食、それによる不登校、それから運動不足、親や友人、他者と関わる時間が不足するといったようなこと、これが疾患レベルになってきますと、いわゆるネット依存症という状態になるということです。
 次のページを御覧ください。このネット依存症、英語ではいろいろな言い方がございますが、実はまだ診断基準がございません。私どもは、診断するときには、症状や検査結果、そういったようなもので審査基準や診断基準を作って、それに当てはまるかどうかで診断をしていくわけでございますが、残念ながら、まだこのネット依存症に関してはその診断基準はございません。ただ、一方で、精神障害の診断と統計マニュアルの中の第5版に、暫定的ながら、いわゆるインターネットゲーム障害というのが記載され、こういったものが疾患概念として入ってきているというのが現状です。
 一方で、こういったインターネットに依存、時間を取られることによって、様々な健康障害、特に子供たちの場合では不登校というのが一番大きな問題となってきます。これに対して依存度テストというものが開発されておりまして、このヤング博士のインターネット依存度テストというのが非常に有名なものでして、各国で使われ、我が国でも使われているものです。このインターネット依存度、次の7ページにございますが、この20項目に関して、それぞれ五つの選択肢が用意されており、「全くない」を1点、「いつもある」を5点として計算していただくと、最低で20点、最高で100点ということになります。点数が高いほど依存度が強いということになり、39点までであれば平均的なオンラインユーザー、40点から60点で問題がややある、70点を超えると重大な問題があるということで算定をするものでございます。これについては、既に昨年も全国の子供たちの調査が厚生労働省の研究班等で調査があり、多くの中学生、高校生が依存度の状態にあるという報告がなされております。
 次に、8ページでございます。こういったICTを活用するものして、研究はまだ始まったばかりでして、厚生労働省の研究班そのものも昨年からやっとそういった実態調査をしていくという、それまで未成年の喫煙やたばこといった研究班でこういったインターネットに関しての研究も始まったということが実情です。一方で、これまでこのようなネット依存の状態にあると、睡眠障害はほぼ必発で、児童生徒、学生は遅刻、欠席、成績低下など、学業に影響を与えるということは国内外で報告されているところです。次の9ページに実際の論文を掲載しております。
 それから、ネット依存の傾向の児童生徒は、気分調整ができなかったり、何でも話せる友人がいなかったり、規範意識の欠如や攻撃衝動があるなど、心理・社会的問題を抱えていることも明らかになったというのは3番目の文献です。それから、ネット依存が心の健康に影響を与えることについては、抑鬱傾向など、これは疾患で、いわゆる鬱病ですが、精神障害の合併症としても数多く報告されています。これは、文献4についてです。それから、ネット依存が脳神経の障害を来す、この辺りが一番シビアなところですが、こういった報告もあり、ただ、この手の研究というのは、まだ一つの論文が出て、それでみんながコンセンサスを得るというものでは当然ありませんので、そのような可能性があるということが幾つか出されているというのが現状です。
 続いて、10ページを御覧ください。これは私どもが調べたものですが、先ほど御紹介しましたヤングの調査票によって、約1,000名の中学校1年生から3年生までの、ある市の調査結果です。ここにありますように、8割の生徒は平均的ユーザーということになっていますが、逆に言うと、2割は問題があるということです。ここにも記載しておりますが、総務省の全国調査では、中学生の43.2%が問題あり、すなわちオレンジ色と赤となっておりますので、この地域は比較的農村部でございますが、そういうところよりは、全国よりは少しはいいということです。ただ、ここは、夜10時以降はこういったスマホ等を使わないようにしようというような申合せがされているという地域でして、そのような影響がここに出ているものと思っております。
 その次、11ページを御覧ください。二つ、ネット依存であるかどうかがどういった生活習慣や疾患と関わっているのかという分析です。左側にありますが、まず、ネット使用に問題がある179名と、平均的なユーザー834名で、24時以降、深夜に就寝する子供の割合を見ますと、これだけの違いがあります。ネット依存があると40%近く、平均的なユーザーであれば14%というふうに、非常に高くなっていて、差があるということです。
 それから、右側、鬱傾向というのは、非常に標準的に私どもがよく使っておりますが、信頼性の高い、子供たちの鬱を評価する指標を使っているものです。これで見ましても、ネット使用に問題がありとなしを比べますと、ネット依存に問題があるお子さんは鬱傾向にあるということが言えます。ただ、こういったものというのは横断研究ですので、どちらが原因でどちらが結果かということに関しては、当然、追跡の調査をしなければいけませんが、常識的に考えて、ネット依存といったものが原因としてあり、その結果としてこういった睡眠・就寝時間、それから鬱傾向といったものがあると解釈するのが妥当だと思っております。
 次のページを御覧ください。ここから今年の1月に、これまで議論を重ねてきた結果として日本小児連絡協議会の提言として出したものです。最初にありますように、スマートフォンなど、ICT機器の不適切な使用は生活習慣を乱し、心身の健康に悪影響を及ぼすのみならず、他者とより良い関係を築く「社会性の発達」や「コミュニケーション能力」を低下させるとの調査結果がある。また、事件に巻き込まれる危険性もある。
 子供がインターネットに関わることで生じやすい問題としては、情報管理が十分できない。それから、日常生活リズムの障害が生じやすい。親子のきずなや実体験不足により社会性の獲得の機会が欠如する危険性がある。一般に子供にはスマホなどを購入し、維持管理する経済能力がない。こういったようなことが問題としてあり、次のページから、各保護者等に向けたメッセージです。
 最初に、保護者に関しては、不適切なICT使用が子供の健やかな成長発達や心身の健康に悪影響を及ぼし得ることを認識し、責任を持ってスマホやタブレット端末を管理するということで、子供ときちんとルールを決めていきましょうとあります。そして、未成年に関しては、その管理者は本人でなく保護者であるということで、ルールが破られたら、それは使用できないといったようなことも必要ではないかという提言でございます。
 次、14ページを御覧ください。学校に対しては、子供や保護者に対する情報モラル教育を推進していただきたいということです。ネット社会における著作権や個人情報の保護のルールを学ぶ、ICTの使い過ぎによる健康障害やネット依存について学ぶ、いじめなどのネットトラブル予防と発生時の対策について学ぶといったようなことです。
 それから、次のページですが、我々医療従事者、それから保育者もこういったICTと健康については十分な知識や技術を持っておりませんで、そういった健康障害の発生の可能性というのをしっかりと認識して業務を行っていこうと、それから4番目に、ICTの開発・普及に関わる業者さんに関しては、不適切なICT利用が子供の心身の健康や健やかな成長発達に悪影響を及ぼし得ることを利用者にしっかりと伝えて、その対策を講じてほしいということです。たばこに、これは害があると書いてあるように、そういったようなことも必要かと考えております。それから、研究者に関しては、不適切なICT利用に起因する子供の健康障害や成長発達障害に関する研究を積極的に行い、その成果を家庭や教育医療現場に還元するということです。
 今までお話しいたしましたように、こういったものに関して十分な健康影響というものはまだ出ておりません。最後にまとめですが、「デジタル教科書」という視点からですと、最初のVDTの問題というのがやはり一番大きくなって、その後のネット依存などに関しては少し次元の違う話ではあるかもしれませんが、少なくとも、デジタルを見ることによって、最近では特にLEDを使った機器に関しては、ブルーライトの問題は非常に有名ですが、眼精疲労、これは要するにただ単に視力障害という問題よりも、このブルーライトを感受する細胞そのものが生体リズムに関わっているということが分かっていて、これを長く見続けることによって、要するに睡眠障害を起こすということが科学的にも医学研究としても明らかになってきています。そういったことを知った上で適切に活用すれば、いろいろな障害のある方にとっても、こういったデジタルを活用した教育というのは非常に有効であることもあります。そういうバランスをきちんととるということが大切であり、今、必ず表と裏がある、それをきちんと認識した上で選択をするということが重要だと考えております。
 以上です。
【堀田座長】 それでは、ただいまの御説明につきまして、御意見、御質問等ございましたら挙手をお願いいたします。
 まず、金子委員。
【金子委員】 私の勤務する学校は私立で、今までICTの活用というのを推進してきたのですけれども、その当初から、一番危惧したことはネット依存、それからデジタル依存で、これをどうやって避けるかということを考えて行ってまいりました。そうならないようにということを考えながら行ってきたのですが、実際、学校で使うということは、生徒たちにとってはある程度公の場での活用ということになるんですね。それ以外の場面というのは、例えば家にいたりしたら、これはプライベートな活用という場面においては、生徒たちというのは実は、自分のスマホを使います。その住み分けは物すごく彼らは上手にやっており、感心させられたところがあります。ですから、学校で使う情報機器でのやりとりに関しては、我々もかなり監視体制といいますか、チェックをできる体制をとっております。ただ、スマホの部分に関しては、全く僕らは手が付けられないというところになります。
 そういった状況を考えたときに、例えば学校の中でそういった情報機器をプラスに使うことがない生徒がいたとして、そういった生徒たちにスマホが与えられた。そうすると、もうスマホの方にかなりの割合の時間が取られていく。それに比べて学校の中で情報機器をプラスの意味で使っているというような場合になると、かなりスマホ依存というものは緩和される可能性があるのではないかと考えております。ICTのことを進めていくに当たっては、むしろプラスのところを増やしていくというような考え方で、そうすると、依存のこともかなり避けられるのではないかという考え方をしていますが、その辺の考え方をお聞きしたいと思います。
【山縣教授】 ありがとうございます。
 そういったことが実際に、例えばモデルの学校を作ってやってみて、対象群と比較するところは、私は研究でやっていくのだと思うのですが、プライベートで使うということのニーズだとか、その要求がどこにあるかによって、そのほかの時間で何を使っているかというのは余り関係なく、要するに独立しているとするならば、プライベートなICT機器を使うということと、学校でICTを使うということが独立している問題であるならば、学校で使う時間を増やしたとしても、プライベートで使う時間が減るとは限らないと思います。ただ、一方で、こういったようなものを、先ほどもありましたが、情報機器に関するリテラシーを上げるとか、モラル教育をしっかりしていくということがあれば、それによってプライベートで使うということに関してもいい影響がある可能性があるとは思います。
 現状では、幾つかの、これもきちんとした研究はございませんが、申合せによって、例えば10時以降は使わない、情報交換をしないといったようなことの申合せが、今、現状では最も子供たちがICTを使う時間を減らす効果的な方法と認識されているのではないかと考えております。
 以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。では、中川委員、毛利委員で。
【中川委員】 私はマイクロソフトに勤務をしておりまして、まさに画面をずっと見ている人間なのですが、大変勉強になりました。ありがとうございます。
 利用のバランスとおっしゃるところは、非常に納得のいくところでございまして、この委員会の中でも、パソコンだけということではなくて、紙との併用というのが議論されておりまして、私が少々不勉強で、前提条件について後学のために知りたいと思ったことが、これはVDTになる利用時間が、連続した時間で何時間なのか、分散した時間で何時間なのか、まとめて連続であれば何時間ぐらいなのかというのを概略で教えていただければと思います。今後、利用のガイドラインを作る際に、多分ここで議論されている中身は、ずっとパソコンだけ見て授業を行うというのを全く想定していませんので、きっとそういうことはないと思いますが、帰ってから使う時間も、学校ではこれぐらい使っているからこれぐらいにするべきといったバランスをとるためのガイドが作れるかなと思いまして、教えていただけばと思います。
【山縣教授】 そこが非常に重要なところだと私も思います。実際にここの資料の4ページにございますが、VDT作業における労働衛生管理のためのガイドラインというのが出ておりまして、ここにどういう作業をすればいいかということが書いてございます。基本的には1時間というのが一つの目安で、連続して1時間、それで10分休みというふうになっております。それではこれが1日中、それを見ることによってどういうふうな影響があるかということについては、これは実はディスプレイを見るということだけではなく、姿勢というのが非常に重要でして、なので、例えばどういう姿勢であるのか、同じ姿勢をずっととっていることが問題であったりしますので、ディスプレイの位置だとか、そういうものをきちんと管理をすることが重要です。作業管理と言いますが、そういったようなことをきちんとすることによって予防が可能であるとなっておりますが、ただ、残念ながらこれは大人の話でして、私も子供を専門としておりますが、子供は大人のミニチュアではないというのが有名な教科書の最初に書いてあるように、子供というのは大人とは一緒ではなくて、発達段階にある子供を考えたときに、やはり新たなガイドラインなどが必要になってくるのだろうと思います。
【堀田座長】 毛利委員。
【毛利委員】 つくば市教育委員会の毛利と申します。
 御説明ありがとうございました。お聞きしたかったのは中川委員と同じことでありまして、夜の利用など睡眠時間が減ってネット依存の場合こうなるというのはとてもよく分かりまして、先ほど先生がおっしゃったように、「デジタル教科書」をもし導入したとすれば、どういうことに注意した機器を導入すればいいのかとか、例えば先ほどのブルーライトのことでしたら、何かブルーライトのフィルターのようなものが必須なのかとか、あるいは先ほどの1回の利用時間についてとか、動画のような刺激のものが目に入ったときどうなのかとか、そういうものについて是非ガイドラインといいますか、そういうものがあると使う側の学校側の関係者も大変助かるのかなと思いました。以上でございます。
【山縣教授】 ありがとうございます。
 全くそのとおりでして、ただ、こういったガイドラインを作るためにはそれなりの科学的根拠というのが必要で、先ほどからもお話ししておりますように、こういったものの健康影響に関しては必ずしも十分な研究がなされておりません。ただし、現実問題としてネット依存症が存在し、それによって学校に来られない子や、いろいろな症状を訴えている子がいるということは事実であり、そのようなものを基にして、科学的な根拠に基づいて何かをやるというよりも、改めてこういうことが予測されるのでこういうふうに気を付けようといったようなガイドラインになろうかと思っております。
 ただ、一方で、動物実験のレベルでは、先ほどもお話ししましたように、ガングリオンフォトレセプターといった細胞がブルーライトを感受し、そのことは、ただ明るさを見るというのではなくて、それに刺激を受けることによって生体リズムそのものが狂うといったようなことがございますので、そうなってくると、そもそも目の問題だけではなくて、そういった生活リズムに影響を、脳の刺激として関わってくるということが分かってくるのであれば、もう少ししっかりした、そういった根拠に基づいたガイドライン等々が必要になってくるかと思っております。
 以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。高梨委員。
【高梨委員】 少し「デジタル教科書」の議論と違っているかもしれませんが、私も教育長という立場でタブレットを導入している者として、先生の今の御報告は大変気になるところです。ネット依存や、あるいはまたゲーム依存によって子供たちの生活習慣が乱れてしまうということは大変憂慮しているところなのですが、例えば、こと、VDTについて言えば、例えば子供の発達段階、小学校の低学年と中学生とはまた少し違うと思うのでが、できれば発達段階に応じて一定、先ほど毛利委員からもありましたけれども、ガイドラインといいますか、一定の基準のようなものを示していただけると有り難いと思います。
【山縣教授】 まさに今のことだと思います。子供たちに関して、例えば今、厚生労働省の出しているVDTというのは大人に対してですので、もう出来上がった体と心に対してどういう影響があるかということでありますが、子供の場合であれば、例えば脳の発達段階にあったときに、姿勢とかというよりも、中のコンテンツや、そのことによってほかのことの時間が奪われるということが問題であったりします。この資料の2-2の資料が提言そのものでございますが、この2ページのところに、これに対する参考文献というのがございまして、これの、例えば1番、2番というのは、小児科医会、小児科学会から、子供とメディアの問題に関する提言、乳幼児のテレビ、ビデオ長時間視聴は危険であるといった提言があります。また、アメリカで研究成果として、子供に2時間以上テレビを見せないようにという非常に有名な提言がありまして、それで日本小児科医会、小児科学会でも、それに基づいてこういった提言をしたということでして、例えばそれはいわゆる教育番組であったとしても、2時間を超えてはいけないというのがこの提言の中身であります。
【堀田座長】 ありがとうございました。
 そろそろお時間かと思うのですけれども、御意見、いかがでしょうか。
 よろしいでしょうか。では、山縣先生、ありがとうございました。
 それでは、二つの団体の皆様から頂いた御意見も踏まえながら、次の議題に進ませていただきます。いずれの団体も、ICTの過剰な使い方といいましょうか、そういうところに対して御提言を頂いたと思います。「デジタル教科書」も使い方に課題があるし、そういう使い方を誘発するようなデジタル化は控えてほしいという御意見だったと理解できます。私どもがこれまでいろいろ議論してきましたことは、いつも資料にまとめてきていただいていますけれども、きょうは資料3ということで検討の視点をまとめてございます。前回から、皆様の御意見を踏まえ、そして座長として私の方で事務局と随分議論しまして、大幅に修正が加わっておりますので、まずは事務局からこの資料3について簡単に説明を頂けますでしょうか。
【事務局】 では、資料3について説明させていただきます。まず、最後のページですが、これまで「デジタル教科書」と言っていたものについて、それが教材なのか、それとも教科書なのか、議論の中ではっきりしないという御指摘もありましたので、便宜的に別添のような用語の整理をさせていただいております。これで決まりというわけでは全くありませんが、今後の議論の際には、こういった用語に沿いたいと思いますので、御協力よろしくお願いします。
 まず、冒頭、「具体の議論に当たっては」というところで、当面講ずべき措置と実施に向けて中長期的に検討していく必要がある措置とに区別して議論していくことが必要ではないかということを書かせていただきました。
 教科書の意義・役割について、二つ目の丸のところで、「また、同様に、教科・科目等によっても、必要となる学習の内容に違いがあるため、教科書以外の他の教材との役割分担も考慮しながら、教科書の意義・役割について検討する必要がある。」という項目を加えさせていただいております。
 その次の項目ですけれども、「教科書がデジタルであることを認めることにより、子供たちにどのような学びの環境を提供することができるのかについて検討する必要がある。」という項目を付け加えております。
 デジタル版教科書と言っておりますけれども、その導入による効果、影響についてというところについて、二つ目の項目のところで、「デジタル版教科書の使用そのものによる効果・影響等の検証については、導入後においてしか実施できないことから、デジタル版教科書の導入後においても実践的に効果・影響等の検証を実施する必要がある。」と記載しております。
 次のページに参りまして、「障害のある児童生徒の学習に有効であると考えられることから、教科書バリアフリー法に基づく取組とともに、関連する取組を更に進める必要があるのではないか。」、また、「デジタル版教科書の具体の使用に当たっては、その利点と課題を十分に考慮する必要がある。」ということにつきまして、利点・課題双方の観点はありますが、情報の更新、若しくは訂正等の容易性、関連情報への接続の容易性といった観点を加えております。
 「また」以降のところで、検討に当たり、その課題自体が導入により一過性のものなのか、それともデジタルの性質上、受容せざるを得ないものなのかを整理した上で議論する必要があるのではないかということを書かせていただいております。
 質の担保のところについてですが、一つ目の項目は、趣旨としては変わっておりませんが、「デジタル版教科書に含まれるコンテンツについても、主たる教材であるという教科書の性質に鑑みれば、基本的には検定により紙の教科書と同水準の質を担保する必要があり、その場合において、紙の教科書と同じ内容のコンテンツについて改めて検定を行う必要があるのかについて検討する必要がある。」ということです。
 その次ですが、デジタル版教科書は膨大な情報量を含み得るということで、情報量の観点をどうするか。若しくは、リンクを張って外部サイト等への閲覧が容易になることもありますので、拡張性の観点というのも考える必要があるということです。また、動画や音声等、従来これらは紙の教科書には含まれておりませんので、そういったものの検定というのは現実的に可能なのかという実行可能性の観点も踏まえる必要があるだろうということを書かせていただいております。
 また、次の丸のところで、「検定を行わない又は行うことができないコンテンツについて、教科書として位置付けることの是非や、教科書としては位置付けない場合に、ただ、デジタル版教科書に含めることの是非についても検討する必要がある。」としております。
 次のページに参りまして、「教科書として位置付けられない機能やコンテンツについて、デジタル版教科書と組み合わせて一体的に使用することの有益性及びそれを踏まえた活用方策について検討する必要がある。」としております。
 一つ飛ばしまして、デジタル版教科書に含まれるコンテンツの更新や訂正といったものにどのような対応をするか。
 次に、動作性という言葉を使っておりますけれども、要は、これは機器やコンテンツについて、実際に動くかどうかというのを担保するべきか、そこまでする必要がないかという観点でございます。
 教科書としての位置付けという項目に参りますが、一つ目の丸は従来から議論にはなっておりましたが、デジタル版教科書と言う際に、コンテンツ、ビューア、ハードウエア、どこまでをそう言うのかということです。
 二つ目の丸につきましては、一つ前の検定のところにも関わりますが、紙の教科書に含まれない動画や音声等のコンテンツや機能を教科書として位置付けることも考えるべきか。また、紙媒体、紙の教科書を前提とせず、デジタルのみによって制作される教科書というものを認めるべきか否か。また、デジタル版教科書というものにどのような機能を付加するかといったことも検討する必要があるだろうということです。括弧書きで例示しておりますが、例えば参考資料、若しくは文具、学習履歴の保存、正答比較等の機能については、教科書の意義・役割を踏まると、教科書として位置付けることは適当ではないと考えていいかどうか。
 また、紙の教科書と同様に、各教科の学習内容を全てカバーするものをデジタル版教科書と呼ぶかそれとももう少し細分化して、例えば単元単位といったようなものをもって制作されたものをデジタル版教科書と言うかどうか、そういう観点もあると考えております。
 次のページに参りまして、こういったデジタル版教科書の範囲を検討するに当たっては、実際に学校で導入されているネットワーク環境や、若しくは情報端末といったものの性能等も考える必要があるということを加えております。デジタル版教科書と紙の教科書の関係についてですが、今まで議論にもなっておりましたが、少なくとも当分の間につきましては、デジタル版教科書は紙の教科書との併用を前提とすることが適当と考えてよいか、その際、発達段階に応じた違いを考慮する必要があるかどうかについて検討する必要があるか、また、仮にデジタル版教科書を導入する場合について、これまでと同様に、紙の教科書のみを使用して学習することをどう考えるか、ということを記載しております。
 次の項目は、各法律上の位置付けについてですが、教科書関係の法律は実は多岐にわたっており、学校教育法、無償措置法、発行法、バリアフリー法、著作権法など、それぞれに議論すべき観点があると思っています。学校教育法について言えば、デジタル版教科書というものは、紙の教科書の存在を前提とすべきと考えてよいか。また、その場合に、紙の教科書には含まれていないデジタル版教科書のコンテンツというものを教材として紙の教科書と併用することについてどう考えるか。また、同じく学校教育法ですが、デジタル版教科書の使用により、学校教育法で規定されている教科書の使用義務といったことを履行したこととすべきかどうか。無償措置法の方は、仮にデジタル版教科書を導入して、更に紙の教科書と併用する場合ですけれども、無償給与を行う教科書の範囲について、デジタル版教科書の性質も考慮して検討する必要があるだろうと。また、保護者の経済的負担というのをどう考えるか。また、発行法において教科書発行者に対する発行指示というものが規定されていますが、そういったものの適用対象とすべきかどうか。また、同じく発行法で教科書の定価を文部科学大臣が認可することになっていますが、デジタル版教科書についてもそういったことをするかどうか。また、教科書バリアフリー法で、紙の教科書と同様に、デジタル版教科書についても、デジタルデータの提供を求める仕組みを創設すべきかどうかという観点もあると思います。次のページに参りまして、著作権法については、こういった今までの議論や「デジタル教科書」の性格を踏まえた上で、教科書に関する著作権法上の権利制限規定の在り方をどのように考えるべきかといった観点があると思います。
 最後に、導入に当たって必要となる環境整備についてですが、ここで新しく加えさせていただいたのは、三つ目の丸のところで、「デジタル版教科書の供給をどのように行うのかについて、選択肢として採り得る各学校への配信方法を踏まえつつ検討する必要がある。」、また、「「指導者用デジタル教科書」の一層の普及促進方策について検討する必要がある。」とあります。また、最後の丸ですけれども、「紙の教科書により教材・授業研究等が行われ、それにより多くの蓄積ができてきた実情を踏まえて、デジタル版教科書の導入に当たっても、個々の教員だけではなく、全ての教職員、保護者、地域住民等を含めて、学校全体として受け入れられるようにすることが必要である。」という観点も書かせていただいております。
 資料の説明は以上です。
【堀田座長】 簡単に説明していただきましたけれども、内容は簡単ではないいうことはよく分かっていただいたと思います。この間、随分、私も議論してきましたけれども、確認というか補足をさせていただきます。
 別添が出てきて、デジタル版教科書というのがまたちょっと分かりにくくしている部分があるかもしれませんが、「デジタル教科書」という用語は文部科学省としては平成23年の教育の情報化ビジョンで言葉として既に出ているんですね。その中には指導者用と学習者用というのがあって、今回、子供たちに給与する教科書をデジタル化するうんぬんのことを私どもは検討しているので、これは文脈で言えば、学習者用デジタル教科書の話になるわけですね。この学習者用デジタル教科書の定義は、学習履歴の把握とか、ネットワークを介した書き込みとか、そういう、これからの未来の学習環境をイメージした、ある意味技術的にも法律的にも壮大なものになっています。これをすべて実現するための法律を改正するといっても、これはまたきっと何年も、場合によっては何十年も掛かるとなると、いつまでも教科書に関することはデジタル化が進まないということになる恐れがあると考えております。
 ですから、今の紙の教科書をデジタルにした、PDFなのかどうかはちょっと今、置いておきますけれども、どうデジタルにするかという、できるだけ最低限のところを考えたときに、それをデジタル版教科書と今、言ってみたとすると、これをまず実現するというやり方を最初に検討してはどうか。そこで既に起こる法的な課題は何と何で、それを当面、急ぎ解決しなければいけない課題として私どもとしては検討した結果、こういうものが急ぐものにありますという提言し、中長期的に今後、学習環境のICT化が非常に進んできた頃に、こういうことについていずれ課題になるので、そういうことについては検討を始めておかなければならないと提言できないかと考えて、暫定的に今、このように言葉を整理したということになります。視点については、皆さんからおおむね合意が頂けているかなと思うものも、検討の視点ですから、既に検討したことも含めていろいろ書いてありますし、皆さんの御意見もある程度踏まえられていると思います。
 本日の議論ですが、本日に限らず、ヒアリングと議論をずっと続けてきておりますが、この資料3の全体的な議論をしたいと考えております。本日の議論を踏まえて、次回は、もしかしたらある部分、どこの部分にするかはまだ定めておりませんけれども、意義と役割から議論しましょうとか、そういう形でどこかにフォーカスしてやっていきたいと思います。そのときに、どちらかというとこれまで、デジタルであるべきかどうかみたいな議論が随分意見としては出てきましたが、デジタルの方がいいこともあるし紙の方がいいこともあるというのは、もう合意が大体できていると思うので、本検討会議においては、当面は共存するという前提で、デジタルにするときに解決すべきこととしてこういうことがあるということをしっかりと把握して、検討したいと思います。
 例えば情報化はもうどんどん進んでいるわけですから、教科書は紙だけであるということについての根拠はあるのかといったことも以前、ヒアリングでは出てきておりますので、このようなことも踏まえて、デジタルの良さを生かしていく形で少しずつでも進められるようにしたいと考えています。そのためにも、短期的なものと中長期的なものに分けることによって、法改正を急ぐものと、少し先で、慎重に検討しなければいけないものというふうに少し住み分けて、できるところから、少しずつデジタル化が進んでいって、徐々に実現しやすくなっていくとしていかないと、今の教科書をそのまますでに存在する「デジタル教科書」の定義の下に全部置き換えることを前提に検討していくと、そもそもあるべき論から始まって、ずっと長い議論になってしまって、一つも先に進まないということになりますので、このようにさせていただきたいということです。
 最後に、今の資料3の方で言うと、後半に書いてあるように、ICT環境ですね。環境整備については、本日は磯課長もお見えですけれども、生涯学習政策局の情報教育課を中心にずっと進めてきているわけですが、必ずしも各自治体が従前なICT環境が整備されているというわけではありません。しかし、子供たちの等しく教育を受ける権利から考えると、これが整備されないまま「デジタル教科書」を導入するというのは少々危険もある。一方で、教科書がデジタルになるならきちんと入れないと、ということも考えられるということもありますので、この会議の使命は、教科書とデジタルの話ですので、ICT環境の整備の話はむしろ情報教育課にリードしていただいて、私どもは、教科書がデジタル化する、「デジタル教科書」はどうあるべきかということについて焦点を当てて検討してまいりたいと思っているところです。
 座長がたくさんしゃべりました。残りが30分でございます。皆さんの御意見をお願いいたしたいと思います。では、福田委員。
【福田(孝)委員】 佐賀県教育委員会の福田でございます。
 私、この資料3を見せていただいたときに一つだけ気になっていることがありまして、本日のヒアリングを終えて、改めて少し思ったのですが、資料3の最初の、教科書の意義・役割のところの二つ目の丸の、先ほどくしくも付記しましたとおっしゃいました「また、同様に、教科・科目等によっても」のフレーズのところです。この文言を見ながら、ここで議論しているのは紙かデジタルかという議論のもう1個前の段階で、そもそも教科書に求めるものは何だろうかというのが少しぶれてきたような気がします。いわゆる教科書というのが、もう本当に幹の幹の部分でよくて、それに付加するものは、例えば映像や説明資料であり、例えば数学の場合であれば練習問題でありというふうに分けていって、幹の幹が教科書となるのか、それとも今の紙の教科書の流れを踏んでいって、それさえ1冊あればもう全ての学習活動が1年間終わるかによって、かなり考え方は違うと思っておりました。
 本日の説明の中で、この部分はデジタル化してもいいと。でも、全体をということになると、健康被害等を考えてもいろいろ検討は必要だということも伺いながら、改めて、佐賀県でも実施してみて思ったのは、すごく子供たちが喜んで使う場面というのもありますが、100%そうかというとそうでもないというところです。そうすると、この2行が非常に私は気になっており、今後少し「また、同様に」の後の「必要となる学習の内容に違いがあるため、教科書以外の他の教材との役割分担も考慮しながら、教科書の意義・役割について検討する必要がある」と、この枕詞に紙やデジタルとは付けずに、単に教科書の本当の意味の教科書、紙だろうがデジタルだろうが関係なしに、この教科書の意義・役割について検討する必要があると読んでよければ、非常に捉えやすいかと思います。
 以上です。
【堀田座長】 これは事務局に答えてもらいますが、その前に、幹の幹というのは具体的に言うとどう考えればいいですか。
【福田(孝)委員】 一番の幹というのは、教科書を開いたときに最初のページにある目次がまさに幹の幹、もっと重要な部分だと思います。それだけは最低教えなさいというところです。教える内容については、その表題を少しずつかみ砕いていって、説明が加わっていくと思いますが、その加える部分の多さによって教科書として求められるデータの量というものが違ってくると思っております。
【堀田座長】 事務局はいかがですか。
【事務局】 教科書の意義・役割についてですが、根本から申し上げますと、基礎的・基本的な教育内容の履修を保障する機能は確実にあると思っています。それが今の紙の教科書の意義・役割だとは思いますが、ただ、今の鍵括弧がついた「デジタル教科書」について言えば、基礎的・基本的な学習内容の履修を保障する機能以上のものを持っているのが現状だと思っております。
 この「また」以降の趣旨ですが、「教科書以外のほかの教材との役割分担も考慮しながら」というところで示しているように、教科書というものは今後どういう役割を果たしていくべきかということを御検討いただきたいという趣旨で書いています。教科書に求める役割は、最低限は基礎的・基本的な教育内容の履修の保障だと考えております。ただ、それ以上、どこまで加えるかということ、すなわち今の紙の教科書に含まれているコンテンツに加えて、動画や音声といったものをどこまで加えていくかということについて、この検討会議で御議論いただきたいと考えております。
【堀田座長】 これは第1回で事務局から随分詳しく説明していただいた、我が国の児童生徒の学力を保障している根幹となる教育制度としての教科書制度を取り巻く制度がたくさんあって、そのことをどこまで崩すのかということだと思います。デジタルになったから、この辺をもう少し膨らませてもいいのではないかということの検討はしなければいけないが、そもそも根本から変えるのかどうかというところについては、そこまでやってしまうとまずいのではないかという意見が今のところ多いかなと感じておりました。
 ありがとうございました。ほかに。黒川委員。
【黒川委員】 事務局の方で大変分かりやすくおまとめいただき、ありがとうございます。
 自分自身の今の立場としては、「紙かデジタルか」という問題は、「紙」にかけて「神学論争」だと思っているのですが、「紙もデジタルも」というようなスタンスでお話をしたいと思います。これは教科書発行会社の基本的スタンスとして、私が持っているイメージなのですが、「教科書のデジタル化」と、それから今、販売されている「指導者用デジタル教科書の教科書化」がいまだに混同されている。つまり、検定教科書のデジタル化という意味で、本日新たに示された「デジタル版教科書」という用語を使わせていただくとすると、これと今あるマルチメディア化されている副教材としての「指導者用デジタル教科書」と混同しないように議論しなければならないと考えております。ということは、教科書と教材との関係を明確にしておく必要があると考えます。教科書というのは、いろいろな見解があると思うのですが、私は学習指導要領に基づいて、教科で学ぶべき基本的な知識や内容、あるいは方法を発達段階に配慮しながら系統的・構造的に配列構成した主たる教材であり、複合的な教材の連なりであると思っております。つまり、系統性が明確にある。ですから、そこには年間の配当時間に対応した一定のカリキュラムが設定されているわけです。
 それに対して教材というのは、やはり限定的な指導目標や狙いに対して用意された単一的な学習素材であり学習材料であって、私のイメージだと、学習全体の一部分を担っているものだと思うのです。それが教材という位置付けで、仮に定義してみますと、現在使用されている市販の「指導者用デジタル教科書」というのは、検定教科書の紙面に加えて、各単元に対応した写真や動画、音声などの多様な資料やコンテンツとの組み合わせで構成されています。その活用や指導の方法はこのように使ってくださいというものではなく、現場の判断に委ねられているわけで、いわばちょっと活用が難しい教材だと思っているんですね。今度の教育課程部会などの議論と合わせると、指導者用を含めた今ある「デジタル教科書」の活用では、指導者側のカリキュラムマネジメントが非常に求められていると思います。
 何が言いたいかというと、今ある「デジタル教科書」が仮に検定教科書となった場合に、実はデジタルでもたらす効果的な部分、リンクされた様々な教材に対して、これは法律的な議論になりますが、使用義務が発生してしまうという問題があるだろうと思っております。また、学校現場では、教科書の活用に加えて、通常、先生方が自作の教材を作られたり、市販教材を活用されたりしている実態がありますが、全部デジタルでやってしまうと教材選択の幅を狭めてしまうという問題も一方であるわけです。指導の自由度を奪ってしまう可能性もあることを危惧しております。したがって、本日示された「デジタル版教科書」ということを考えると、現実的に検定制度もありますので、当面の目標としては、繰り返しになりますが、教科書と教材の役割分担を前提に考えていくべきではないかということを、現場の先生方に伺っていきたいと思っています。
 つまり、紙の教科書のデジタル化を前提としながらも、当面、教科書以外となるデジタル教材は、ここは微妙なところですけれども、検定の対象外として考えていかないと整理がしにくいのではないか。それは、一方では、先ほど堀田座長の方からお話がありましたように、各自治体で自主的に購入するとなると、格差を助長してしまう危険性もあるのですが、スタートの時点では、教科書の部分と教材の部分を切り分けて議論していかないと難しいかと思います。非常に魅力的なものを失ってしまうのかもしれないのですが、出発点はその辺りになるのではないかということについて、と皆さんの御意見を伺いたいと思っている次第です。
 以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。
 今の話につなげて何かありますか。教科書と教材の役割分担をどの辺までにするかということ。山内委員。
【山内委員】 かつて、紙とチョークの時代では、教科書の役割というのは、本当に授業の中心であって、いわゆる教科書の内容そのものを教える、いわゆる教科書を教えるというのが中心だったような気がします。ところが、ICTの時代になってきますと、教科書というのは、いわゆる教育内容がちゃんと整理されたもので、ただ、授業では、いわゆるきっかけとか出発点的なものになっていて、教科書は出発点だけれども、それを更にどう発展させて、また、学習者に興味関心を持たせて授業を展開していくかというのが中心になり、いわゆる教科書で教える、つまり、昔は教科書を教えるというのが中心でしたけれども、ICTの時代は教科書で教えるという時代になってきていると思っております。そういう点から考えると、このデジタル版教科書というのは、教科書で教えるという面がかなり強化された面になるのではないかと思います。
 ただし、教科書で教えるという、教え方もいろいろとあるわけですので、どんな選択肢で教えるのか、それは教員と学習者の関係でいろいろと決まってくるわけです。ですから、教員が選んでいく主体性とか選択性というものが必要になってくると思っております。そういう点では、恐らく教授者、教員にいろいろな選択、目の前にしている児童生徒の興味関心、学習意欲、レベル、そういうものに合わせていろいろな教え方を選択できるようなものが含まれているというものがいいのではないかと思います。いわゆる指導面については、そういうものが今後求められる教科書で教える時代のデジタル版教科書なのかなと思います。
 ただ、そうした場合に、たくさんコンテンツを詰め込むことになるわけですから、インターネットは電子図書館とか言われますけれども、では、デジタル版教科書は図書館的なものになるのかということになってくると、どの辺までのコンテンツを入れるのか、そして、それをどうやって、必要な場合には検定していくのかというのが問題になりますので、今までの文字だけに対して写真とか動画とか音声などについてです。私の場合は英語が専門なのですが、イギリスの小説の中に出てくるものに対してアメリカ英語で録音されているというのはやっぱりおかしいわけで、そういう、より学習者にオーセンティックなといいますか、真実のものに迫れるようなものをデジタル版教科書の中では選択して入れていき、先ほどの鳥とか動物の鳴き声というのもそうだと思うのですけれども、必要最低限のものはどういうものなのかということを絞り込んでいくという作業も必要なのではないかと思います。
【堀田座長】 ありがとうございました。
 今の紙の教科書でも、それにプラスしてどういう教材を例えば作るかとか、選ぶか。そして、それを授業でどう組み立てるかという授業研究は学校現場で実施さてきていて、そういう知見やノウハウ、あるいはそういう文化をなくしてはいけないというのは、天笠委員からも以前、御指摘いただいたところですので、教科書と教材の範囲というのは慎重に、かつ、多くなりすぎないように決めないといけないと理解しております。
 では新井委員。
【新井委員】 それでは、2点申し上げます。
 一つは、先ほど来の議論にちょっと関連してですが、資料3の教科書の意義・役割についての三つ目の丸のところ、どのような学びの環境を提供することができるかについて検討すること、これがどうデザインするかということが、どこかのタイミングで、幾つか何パターンかのデザインができるかと思うのですが、議論した方が、話が分かりやすいのではないかと思います。したがって、ここをどうデザインするかというところに少し焦点を当ててもよいのではないかと思っています。
 それから、二つ目は、先ほど、座長がお話しいただいた視点の全体のところの考え方のところについて、基本的には賛成なのですけれども、その中で、最後の方の環境整備に関してです。これも情報教育課の方でやっているのでというところは賛成です。ただ、その中で1点、供給の問題があって、これは記憶が間違っていれば教えてもらいたいのですが、たしか教科書発行法か何かで使用する教科書が決定した場合は部数を報告するか申告するということがあったかと思うのですが、それを考えた場合、デジタル版の部数の管理とか申告というようなものをどうするかということもあるので、この供給の問題については環境整備ということよりも、法律上の位置付けの検討の必要があれば加えておいた方が良いと思いました。
【堀田座長】 事務局、どうぞ。
【事務局】 2点目の方だけ先に回答させていただきますけれども、新井委員がおっしゃるとおり、確かに供給を環境整備の方に入れるのは少し無理があると思っています。ただ、法律上の位置付けのところで、五つ目の丸のところで、この教科書発行者に対する発行指示等を規定する発行法の適用対象とすべきかどうかということの中に、実はこの発行指示の前提として、教科書が何部必要かという需要数を文部科学省の方に報告するというような規定になっております。ですから、仮に発行法で言うところの教科書にデジタル版教科書を含めるとすれば、デジタル版教科書の需要数についても考える必要が出てくると考えております。
【堀田座長】 天笠委員。
【天笠座長代理】 今の話とずれるかもしれませんが、参考資料3に、学習指導要領の関係の検討が今進んでいるということを、先ほど来の議論に付け加えさせていただきたいと思います。もう委員の皆様は御承知のとおり、学習指導要領がこれまで度重なって改訂がほぼ10年インターバルで行われてきております。少し振り返ってみると、一つの反省事項と言うべきなんでしょうか、必ず指摘されることは、例えば、生きる力といった、言うならば掲げる理念、目標等々がなかなか浸透していかないということが挙げられています。現行の学習指導要領にしても、生きる力という理念はいいけれども、それが各教科等の授業の中になかなかうまく展開していかないという、こういうことが現行の学習指導要領が改訂される際にも中央教育審議会の答申でかなり大きく指摘されたところであり、今回の改訂に向けての動きというのも、認識はやはりこの点についても一つあるということです。言うならば、学習指導要領のレベルでいくと、掲げる目標のところ、各教科の目標のところまでは理念が比較的受け止められて、あるいは浸透していくわけですけれども、その先の各教科等の中身の選択と、目標の選択、目標の設定とがどう関係してつながっていくのかといったところが、これまでは掲げる理念と、そこに存在する内容とが場合によってはそれぞれ別立てのような形に結果的になって置かれているという認識があります。今回の場合は、言うならば掲げる資質・能力というところを前提にして、それに見合う必要な各教科等の、それを整えていこうという形ですが、果たして言い得て、それがどこまで貫徹できるかどうかという課題とが、この年の後半、次年度にかけてそれぞれ検討していくということだと思います。言うならば、振り返ってみれば各教科の内容はいつも固定されたそれであるということです。ついては、振り返ってみると、10年ごとに理念が差し替わっていくような、そういう改訂の結果になっているわけで、そのような点からすると、今回は掲げる、求める資質・能力というところから、それにどう各教科が対応するのか、応じられるのかを検討していくことが必要です。ついては、その今の話の延長線上には教科書ということもその話の中に出てくるわけで、ですから、中身が非常に固定された前提で考えていくとすると、もう一度その辺りのところも考え直してみようということが、今、動きつつあります。その行く末というのが結果的には教科書の在り方にも、どれほど反映されていくのかということについては、ここで、先ほど来言っている、教材と教科書の在り方ということも場合によってはより大きなテーマになる可能性を秘めていると捉えていいのではないかと思います。教育課程企画特別部会の論点整理や、学習指導要領の改訂の経過、行く末というのを注視しながらこの議論を進めていくということも必要なのかなと思います。
 【堀田座長】 ありがとうございました。
 ちょうど参考資料3に関係しそうなところだけ抜粋して事務局に用意していただいていました。昨日、中央教育審議会初等中等教育分科会があって、天笠委員も私も出ていたのですが、やはりこの論点整理についての意見の中で、私の方からは、これから資質・能力の中で、例えば情報リテラシーのようなものが重要な一つになってくるのだとすれば、例えばICTの整備とかアクティブ・ラーニングでデジタルのものを扱うとかいうことは当然必要になってくるわけで、それに合わせたリテラシーの向上や整備が要求されるということをお伝えしたところです。例えば、この今の参考資料3の一番下に、ARの話が出ていますが、これは私が言ったわけではなくて、別の委員が、教科書がこういうふうになっていたらもっといいんじゃないですかとおっしゃったのでここに入っているわけですね。
 このように、「デジタル教科書」を強く検討しているメンバーではないようなところから、教科書がもっとこうなっていたらいいのにという意見はほかにも出ているわけで、そういうような時代背景と、教育課程の再編や改訂が一緒に議論されているということの御紹介でありました。
 まだ御発言いただいていない方、ありますか。では、尾上委員、中川委員、毛利委員の順にお願いします。
【尾上委員】 少し内容から外れるかとは思うのですが、この中で発達段階に応じた形という部分がありますけど、学年で同じ発達段階かといったらそうではなく、やはりその子供の多様性とか、伸ばしたい部分というところを見付けていくには、紙だけではなく、例えば1学年、2学年上の教科書を手に取ってというパターンも必要ではないかと思います。私も娘が中学受験をしたのですが、やはり小学校で学んでいないことが試験項目に入っていたりしたら、塾へ行かないといけないとか、新たなものを買わないといけないという環境がありました。また、学校に入ってみると、例えば英語を伸ばしていくという形からすると、もう既に教える先生方より子供の方が英語のレベルは高くなってしまって、残念ながら、その授業は違うことをやっているという事態が起こってしまっていたんですよね。
 そこを思うと、やはり子供たちが見ている世界は、本当にこれからの自分の伸ばしていくためのことというところを将来見据えたとことも含めてやっているのにもかかわらず、教える側は通り一遍な形というところを当然ながらレベルを合わせなければいけないというところがあると思います。その部分は先ほど何回も出てきたように、音声などは、やはり家庭学習の中でも、保護者に聞いても当然ながら分からないが、自分が学ぼうとするとそこが出てくる。デジタル版教科書の中からは間違った学びを教えないような仕組みができていると、しっかりした学びができてくると思いますので、そういった視点も少し必要かと思います。
【堀田座長】 中川委員。
【中川委員】 議論の冒頭で堀田座長の方から、短期的に実行可能な案というのを考えたときに、検討の視点を見ておりますと、例えば使用義務の問題や検定の問題、その他にも無償で配布・提供や、発行部数のお話がありますが、紙と併用というのを前提として考えるのであれば、デジタルの教科書に使用義務というのを求めるのかというのは、短期的に意味があるのかと感じます。もし将来的にディスプレイの性能が非常に良くなって、紙と全く変わらないような使用心地になったときに、二者択一でどちらかを選べる場合にはそういったことがあっていいと思いますが、これまでの議論の中で併用というのを考えた場合にはそういった部分があるのかなと思います。
 あとは、検定のところに関しましても、マルチメディアの検定というのは非常に難しいなと思っていまして、私は大阪出身なのですが東京が長いものですから、私は大阪弁を話しているつもりでも、あなたのはもう大阪弁じゃないよと言われることもあります。すると何をもって大阪弁の会話なのかというのも、これ、検定するのは多分、教科書検定調査審議会の委員の方は非常に大変だし、意味があるのだろうかとも思います。ただ、マルチメディアのデータがあることによって理解が非常に進むという側面は皆さんがもうおっしゃっていらっしゃいますので、この部分を補助的な教材として併用できるような形にしておけば、何も検定の範囲に持ってくる必要があるのかと思います。ただ、間違ったものを提供というのはよくありませんので、そういった仕組みをどうやって作るのかという議論をした方が建設的なのかと思っております。
【堀田座長】 ありがとうございます。
 毛利委員。
【毛利委員】 先ほど、機能を絞ってというお話がありましたけれども、今まで教えていて教科書の授業でやっていくと、学習の習得進度が中ぐらいの子に合わせていますので、例えば学習の習得進度が早い子や習得進度がゆっくりな子の手立てはよく議論されました。早くて、もう飽きてしまった子のことは議論されていなかったのですが、先ほど、ヒアリングでの説明で、寄り道とか道草とかそういう話がありましたが、やはり「デジタル教科書」でいろいろなもの、魅力あるものがたくさん入っていれば、いろいろな子供に応じた学習が展開しやすいと思います。それを教師が集めてくるのに求めるのか、それともそれを教師が探せばいいとするのか、それとも教師の力量で授業が変わってしまうのではなく、ある程度そういうものを盛り込んでおいて、どの教師が行ったとしても一定水準の、これまでの言う基礎的・基本的な教育内容をここまでにするのか、アクティブ・ラーニングが入ってここまでにするのかはわかりませんが、そこの部分をデジタル版教科書に求めなければ、今までの教育と余り変わりがなくて、学校の先生方、何が新しくなったのかとか、保護者の、これは費用掛けて二つあって何が違うのっていうことになると、魅力あるところはどうなのか、どんどんそぎ落ちてしまうのかという危惧があります。検定のことは考えずにですが、そういう危惧があるのかなと思いました。
【堀田座長】 ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。では、福田委員、井上委員、山内委員お願いします。
【福田(純)委員】 ありがとうございます。
 感想のようなことになってしまうのかもしれないのですが、教科書の機能を押さえた上での教材の在り方ということについて考えました。教科書を意図的に使用して教育内容を指導するのは教師ですので、教師のニーズから発想するというか、そういう側面も大事なように思います。私は小学校の現場でずっと教師をしてきておりますので、そういう頭であることは前提かもしれないのですけれども、教師の本能として、やはり大きく見せたいとか、リアルに見せたいとか、そういうものについては現場の教師はすぐに飛びつくと思うんです。ですから、現在あるものに替わるもので、より進化したものがあれば、たなざらしにならずにすぐに使います。替わるものがまたないもの、先ほどのお話にもありましたけれども、そういうものも大いに活用したいという欲求があります。ただ、全てが出来上がったもの、例えばNHKの教育番組のようなものがあるのではなく、やはり教師が使う補助とか部品である位置付けというものが欲しいとに思います。それは、教師は授業をしながら常に細かいフィードバックをしたり評価をしたりしているので、一連のそういうものが入ってしまうと、若い教師がそこに頼ってしまって、自分自身の授業力というのか、そういうものにより目が向きにくくなるような危惧があります。
 ですから、私は1人の校長として今日の一連のお話を伺いながら、例えばまだその段階ではないと言われると思うのですけれども、研修の手順としては、ICTや「デジタル教科書」の研修の前に、やはりしっかり教師としての授業力や生活指導力、子供たちの健康観察力も含めて、それが前提であって、先ほど毛利委員がおっしゃったように、若手でも、力がない教師でもある一定の授業が保障できる、それは大変魅力的な言葉ではあるのですけれども、でも、それがないと授業できないような人が教師になったら困ると校長としては思います。ですから、やはりそういうような思考の手順というか、そういうものはやはり外せない部分かと感じました。
 以上です。
【堀田座長】 では、井上委員、お願いします。
【井上委員】 ありがとうございます。
 資料3の下から2番目の丸の中で、「悪影響を与える懸念はあるか、また、仮にあるとした場合における対応についても併せて検討する必要がある」という文言のところなのですけれども、ヒアリングの方でも作業1時間に対して10分休憩するだとかいう形で厚生労働省の方でガイドラインが出ているということですので、この「仮に」というところがちょっと引っ掛かりました。「あるとした場合における」という形、ちょっと文言は考えていただいてもと思うのですけれども、「仮に」と言うとないのかな、という印象が大きかったので、ここまで皆さんとお話しさせていただく中でも、ヒアリングでもありましたので、ここのところの文言を考えていただけたらと思います。
 以上です。
【堀田座長】 では、最後に山内委員。
【山内委員】 この1ページ目のところに、次期指導要領の策定との関係で、小学校における英語の教科化というのが出ていますけれども、今現在、小学校の英語については様々な光ディスク等の教材が出ています。そういう教材を見てみますと、小学生に本当に適した教材構成になっているのか、学習になっているのかということについて非常に疑問のところがあります。訳させたりとか、文法的な説明が多かったりとか、小学生なのに不定詞とか動名詞とかいう言葉が出てきたりとか、こういうのは非常に本末転倒なわけで、このデジタル版教科書で小学校における英語の教科化で、いわゆる望ましい、学習者の発達段階に応じた教材というものを作ることは、いわゆる波及効果としまして、ほかの補助教材についても望ましい規範ができるのではないかなと、そういう点でも重要なのではないかなと思いました。
【堀田座長】 ありがとうございました。
 大変たくさんの意見を頂きましたが、予定の時間となっておりますので、本日はこの辺りにしたいと思います。
 本日の資料3ですけれども、これも皆さんの意見で少しずつ修正しておりますので、言い足りなかったことは是非メールで事務局にできるだけ早めに御提出いただければと思います。
 それでは、次回以降のスケジュールにつきまして、事務局より説明をお願いいたします。
【事務局】 では、次回以降の検討会議についてですけれども、資料4の方に第5回といたしまして11月11日の水曜日、16時から18時、また、第6回といたしまして12月16日の16時から18時の予定を考えております。場所の方については未定でございますので、また決まり次第御連絡いたします。
 以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。
 それでは、本日これにてお開きにしたいと思います。皆様、お忙しい中、御出席ありがとうございました。また、傍聴の皆様もたくさん来ていただきましてありがとうございました。改めてお礼を申し上げます。次回以降も引き続きよろしくお願いします。どうもありがとうございました。

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