今後の不登校への対応の在り方について(報告骨子)

第1章 はじめに 本協力者会議の基本姿勢

  1. 不登校の現状に関する認識
    不登校は重要な課題。早急に対応策を講じ、実行することが必要。
  2. 正しい理解に基づく確実な取組の必要性
    平成4年報告は今でも変わらぬ妥当性を持つもの。正しい理解に基づく確実な取組が課題。
  3. 不登校の要因・背景の多様化と教育の果たす役割
    不登校の要因・背景は多様化。ただし教育の果たす役割は大きい。また、取組には改善の余地がある。
  4. 本協力者会議の審議経過と報告のねらい
    本報告は取組の充実のための指針。具体的な指導のための資料は今後別途作成の予定。

第2章 不登校の現状

  1. 不登校の定義や現状
  2. 不登校の要因・背景の多様化・複雑化
    ・不登校の背景と一般的な子供たちの傾向等(無気力、学習意欲の低下、耐性がなく未成熟等の社会性をめぐる問題、学校へ行く義務感の希薄化)等、不登校が「どの子にでも起こりうる」現代の社会状況。
    ・家庭の教育力の低下、一部保護者の意識の変化等の状況
    ・学校におけるいじめ、暴力等の問題。
    ・新たに不登校との関連で指摘されているLD、ADHD、児童虐待等の課題。
    ・要因・背景の特定の難しさ、個々の要因・背景の多様化・複雑化。
    ・多様な要因や背景がある不登校を一括りに扱うことは問題。
  3. 実態把握の在り方
    ・実態把握の在り方の改善(不登校と長期欠席の整理、「複合」の扱い等)。
  4. 高等学校における長期欠席の課題への認識
  5. 「ひきこもり」問題との関連

第3章 不登校に対する基本的な考え方

  1. 将来の社会的自立に向けた支援の視点
    ・不登校問題の解決の目標は、子供たちの将来的な「社会的自立」。
    ・不登校問題は「心の問題」のみならず「進路の問題」。
    ・進路形成に資する学習支援や情報提供等が必要。
  2. 連携ネットワークによる支援
    ・多様な問題へ態様に応じたきめ細かな支援の必要性。児童生徒の状況や必要としている支援を適切に見極める(アセスメント)や適切な支援と多様な学習の場の提供のために、学校、地域、家庭の連携が重要。
    ・公的施設と官・民の連携協力の意義が大きい。また、学校外の施設に通う児童生徒についても進路形成支援の観点から、関わりをなくさないよう公的施設と民間施設等との積極的な連携協力は重要。
  3. 将来の社会的自立のための学校教育の意義・役割
    ・社会性の育成や学習支援の場として、義務教育段階の学校の意義・役割は大きい。
    ・まずは、学校教育の充実のための取組と学校生活に起因する問題の解消への最大限の努力が必要。
  4. 働きかけることや関わりを持つことの重要性
    ・社会的自立や学校復帰に向けて周囲の者が適切な働きかけをすることは重要。児童生徒の状況を理解しようとすることもなく、必要としている支援を行うこともなくただ待つだけでは状況は改善しないという認識が必要。
    ・適切な登校への促しへの認識の改善が必要。
  5. 保護者の役割と家庭への支援
    ・家庭におけるしつけや不登校への対応など、保護者がその役割を果たすことができるよう、時機を失することなく児童生徒や家庭へ適切な働きかけを行う関連から、学校と家庭、関係機関の連携は不可欠。
    ・保護者への働きかけが保護者を追い詰めること等がないよう、保護者との共通する課題意識の下、対応に当たることが重要。
    ・保護者の支援のために気軽に相談できる窓口や保護者同士のネットワークづくりへの支援が必要。さらに、保護者と学校関係者等が相互に意見交換する姿勢も大切。

第4章 学校の取組

  1. 魅力ある学校づくりのための一般的な取組
    ・「心の居場所」「絆づくり」の場としての学校。児童生徒が不登校とならない学校づくりや不登校傾向を持つ児童生徒への未然の対応が重要。
    ・新学習指導要領のねらいの実現、学級活動や児童会・生徒会活動、学校行事等の特別活動の充実。
    ・学校と社会のつながりを強め、開かれた学校づくり。学校が説明責任を果たしていく観点から保護者等への情報提供。
    ・きめ細かい教科指導の実施。(習熟度別の指導、基礎学力の定着に向けたきめ細かな指導の実施等)
    ・学ぶ意欲を育む指導の充実。
    ・安心して通うことができる学校の実現。(いじめ、暴力、体罰への毅然とした指導)
    ・発達段階に応じたきめ細かい配慮。(中学校体験入学、入学時の集中的なオリエンテーションや教員配置の工夫、小規模校からの入学者に対する学級編制の工夫等)
  2. きめ細かく柔軟な個別的・具体的な取組
    ・教員を支援する学校全体の指導体制の充実。(校長のリーダーシップ、校内体制充実、外部の機関との連携)
    ・学校内外のコーディネーター的な役割を果たす「不登校対応担当」の明確化。
    ・教員の資質の向上(児童生徒の教育指導は教員がその中心的役割を果たすことへの認識の確認。児童生徒に対する共感的理解の基本姿勢を持つ大切さ。LD、ADHD等関連する他分野の基礎的知識の習得等。)
    ・養護教諭の役割と保健室、相談室等の環境・条件整備。
    ・スクールカウンセラーや心の教室相談員等との効果的な連携協力。(配置以来の実績の評価、学校のカウンセラーとして必要な資質、学校種別ごとの活用の在り方(早期対応のための学校種別ごとの効果的配置)、保護者支援や訪問指導等における専門性の活用、人材養成や資質の向上、勤務形態の制度的課題を検討する必要性。すべての児童生徒が早期にスクールカウンセラーに相談できる機会を提供することが適当。)
    ・校内・関係者間における情報共有のための個別指導記録の作成。
    ・家庭への訪問等を通じた児童生徒や家庭への適切な働きかけ。(時機を逸さない適切な登校への働きかけの必要性、訪問等を通じた家庭への働きかけや、児童生徒の学習や生活の状況を把握する努力など、児童生徒との継続的な関わりの必要性等。)
    ・不登校児童生徒の学校外の学習状況の把握と学習の評価の工夫。
    ・再登校にあたっての受入体制の工夫。
    ・不登校児童生の立場に立った柔軟なクラス替えや転学等の措置。(いじめられている児童生徒の緊急避難としての欠席、柔軟な学級替えや天候、保護者の意向を踏まえた原級留置。)
  3. 不登校児童生徒の実態に配慮した特色ある教育課程の試み
    ・研究開発学校制度による教育課程の研究や、構造改革特別区域制度の活用による特色ある教育課程や指導方法等による不登校児童生徒のための学校の設置等の試みとその際の検証の必要性。

第5章 関係機関との連携による取組

  1. 入所・通所型の施設の取組
    ・適応指導教室の整備充実。(実際の評価、自治体による格差等もあり質・量両面の充実が必要、適応指導教室の整備指針の策定の必要性、より適切な名称等。)
    ・適応指導教室の指導体制の充実。(量的不足、非常勤職員が多数でノウハウ蓄積が困難、指導員の資質向上、アセスメント等のためのカウンセラー等の専門家の配置。)
    ・地域ネットワークにおける適応指導教室等の中核的機能の整備。(個々の整備充実のほか、既存の教室の活用と資源の共有化を図り、適切なきめ細かい支援や進路支援の観点からの地域ぐるみの支援体制の整備が必要。)
    ・社会教育施設の体験プログラムの積極的な活用。
    ・公的機関と民間施設やNPO等との積極的な連携。(多様な取組の実態への評価、協同の事例検討会、研修講師としての活用、体験活動イベントの共同実施、適応指導教室の運営委託等。民間施設側からの児童生徒の状況や指導の成果等に関する情報提供のための民間施設ガイドライン改訂。)
  2. 訪問型の支援の取組
    ・公的な訪問型の支援の推進。(訪問指導の全国的な展開の必要性、中核的機能を持った適応指導教室等における人材バンク機能の整備。)
    ・訪問型の支援の実施にあたっての配慮・留意点。(訪問にあたっての配慮事項、訪問者の資質向上のための研修やスーパーバイザーの必要性、集団への適応へ結びつく支援の必要性等の留意点等。)
  3. ITの活用
    ・相談等における活用の積極的評価、配慮するべき点。
    ・学習指導におけるITの活用に関する更なる研究の必要性。

第6章 中学校卒業後の課題

  1. 高等学校に関する取組
    ・高等学校入学者選抜等の改善。(自己申告書の活用や面接・実技・作文のみでの評価など選抜方法の多様化の推進や中学校卒業程度認定試験に関する適切な情報提供等。)
    ・高等学校における長期欠席・中途退学への取組の充実。(高等学校における不適応による長期欠席の実態把握の必要性。単位制・選択制の活用による個に応じたカリキュラム、少人数制のわかるまでの指導、加点主義による評価、体験学習の積極的な推進、副担任制の活用による選択制の担任制度等による特色ある高等学校づくり。)
  2. 中学校卒業後の就学・就労や「ひきこもり」への支援
    ・中学校卒業後の青少年の進路の相談や受け皿づくりへの期待。(様々な進学等に関する情報提供や相談窓口、就学も就労もしなかった者のための受け皿の必要性、青少年の自立支援を行う県立の施設の設置の事例、民間における地域と連携した取組事例等。)
    ・中学校卒業後のひきこもり傾向にある青少年への支援。(訪問、ハローワークとの連携など、保健・医療・福祉・労働行政機関との連携による支援。)

第7章 教育委員会に求められる役割

  1. 不登校や長期欠席の早期の把握と対応
    (学校からの報告、報告に基づく迅速な対応、学校と関係機関の連携への支援、フォローアップ、児童虐待の事例における出席督促等。)
  2. 学校等の取組を支援するための教育条件の整備
    ・教員の資質向上。(教員採用の在り方、効果的研修の充実等。)
    ・きめ細かな指導のための適切な人的措置。(学校間の連携の推進のための異校種間の人事交流や兼務、教員の加配など、効果的かつ計画的な人的配置。)
    ・保健室や相談室等の整備。
  3. 学校における指導等への支援
    ・モデル的な個別指導記録の作成。
    ・転校のための柔軟な措置。
  4. 適切な対応の見極め(アセスメント)及びそのための支援体制づくり
    ・不登校の要因・背景の多様化に対応するため、初期に適切な対応の見極め(アセスメント)を行うことは重要であり、そのために各学校をサポートする地域の体制の構築が必要。
  5. 学校外の公的機関等の整備充実
    ・適応指導教室の整備充実やそのための整備指針づくり。
    ・教育センターや教育研究所等における教育相談機能の充実。
  6. 訪問型支援など保護者への支援の充実
  7. 官民の連携ネットワークの整備の推進
    ・他部局との連携協力のためのコーディネート。
    ・関係機関のネットワークづくりと不登校対策の中核的機能の整備充実。
    ・民間施設等との連携協力のための情報収集・情報提供等。

第8章 国に求められる役割

  1. 不登校の実態把握のための概念整理や調査のあり方の検討
    (現状の不登校の概念規定や要因・背景等の実態把握の在り方についての検討、高等学校における長期欠席を把握するための調査の在り方の検討。)
  2. 不登校への対応に関する全国の情報収集・情報提供
    (各教育委員会等で展開されている有効な施策や事例の情報収集・情報提供への努力、指導資料の作成。)
  3. 関係省庁との連携協力
  4. 不登校施策の改善へ向けた不断の取組
    ・当面、これまで行われてきた教員の資質向上・教員配置の充実による学校の指導体制の充実、スクールカウンセラーの配置等による教育相談体制の充実、体験活動等の推進への努力。
    ・新たに(平15~)具体的な取組を支援する指導資料の作成や適応指導教室を中心とした地域ネットワーク整備のための実践的研究の実施、ITの活用の在り方に関する研究の実施等の推進。
    ・そのほか、スクールカウンセラーの配置、不登校児童生徒の実態に配慮した教育課程の試み等の課題に対する取組の成果の検証を行いつつ、さらに必要な検討をするなど、不断の取組の実施。)

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課生徒指導室生徒指導第一係

(初等中等教育局児童生徒課生徒指導室生徒指導第一係)

-- 登録:平成27年08月 --