不登校に関する調査研究協力者会議(第9回) 議事要旨

1.日時

平成27年10月28日(水曜日)10時~12時

2.場所

中央合同庁舎第4号館 1214特別会議室

東京都千代田区霞が関3-1-1

3.議題

  1. 取組事例発表
  2. 不登校での重大事態の調査に係る指針について
  3. 児童生徒理解・教育支援シートマニュアルについて
  4. 概算要求について
  5. 児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査結果について
  6. その他

4.出席者

委員

大場委員、木嶋委員、齋藤(眞人)委員、齋藤(宗明)委員、笹森委員、高野委員、成瀬委員、野田委員、藤崎委員、森田委員、森委員、山川委員

文部科学省

小松初等中等教育局長、藤原審議官、坪田児童生徒課長、平居生徒指導室長、齊藤課長補佐

5.議事要旨

(1)不登校児童生徒への支援に関する中間報告意見募集手続についての説明を事務局が行った。

(2)2名の事例発表

(3)事例発表に関する質疑応答を行った。質疑応答の概要は次のとおり。

【委員】TALISの学級運営についての教師の自己効力感は、逆に読めば、日本の先生は極めて真面目というだけではなく、簡単に切り捨てて、懲罰的な方向へいかない、あるいは親を虐待だと言って訴えないという風土で、非常に苦労しており、手詰まり感があると考えている。だからこそ、学校の先生方の取組で、これだけの関わりをしたから、こういう効果が現れたという検証を行い、効果の軽重まで分かるエビデンスを構築していかなければならない。
発表では、不登校のマルチ・レベルの要因連関があるが、打った手ごとの要因関連分析は何かあるか。また、一番効果があることは何か。

【発表者】例えば保健室の来室者の、どういう子が何人減ったかというリアルタイムのデータもある。実際は細かくデータを見ながら対策を打っている。
  先生の関わりがよくなっていること、要するに話を聞くという当たり前のことができるようになるということと、それを友達同士ができるようになるということの効果が大きい。友達同士ができるようになると、先生に頼らなくても、勉強は友達に聞き、困ったときも友達に相談するということが起こる。そうすると、やんちゃな子も、「勉強しよう」と言われると、「うん」と言って残って居残り勉強したりする。そして、テストでいい点数を取るから、何か学校が楽しくなり、先生にも褒められるし、友達にすごいと言ってもらえるという循環が起こると思う。

【委員】SSC(スクールカウンセリングチーフ)の取組で、義務教育より外、例えば保育園、幼稚園、それから、高校とのつなぎ役までするとなったときに、具体的にどのような動きをされているか伺いたい。

【発表者】実は中学校の不登校は減ったが、1年生、2年生の発達障害絡みの子供たちの不登校が多く、小学校の不登校が減らなかった。そのため、幼稚園からスキル教育を始め、スキル教育の研修会に幼稚園の先生たちも参加してもらえるようになった。そして、保育園、認定こども園にも声を掛け、研修会に参加する。幼稚園では公開幼児教育を行い、そこに小学校、中学校の先生が参加して一緒に見る。そして、中学校の研修会にも幼稚園の先生が来るということをしており、このまちの子供をどう育てるかということを、幼稚園から中学校、高校の先生までみんなで共通理解するということができるようになってきており、小学校の先生、中学校の先生というアイデンティティと別に、このまちの先生というアイデンティティがある。そして、高校はピア・サポートでつながっており、小学校に夏休みに勉強しに行ったり、中学校に学校説明に行ったりしている。

【委員】今は学力増進というものが最重要課題になっており、県の中でSSCのようなスーパーティーチャー、軍師官兵衛(かんべい)を育てる仕組み、研修制度が不足しているものの、それを推進する力というのはない状況にある。その場合、市町村と県との関係も含めて、どのような中で軍師官兵衛を育てていけばよいか。

【発表者】学校に一人か二人いれば、その地区全部をひっくり返せるような力を持った人を育てていきたいが、ここのところ教育予算が削られていき、まず研修のお金が削られて、かつての体系的な初級・中級・上級という研修会がなくなっている。だから、人を育てる教員研修体系がない。これをもう一回きちんとやらなければならないが、それを考えるレベルの指導主事がおらず、烏合(うごう)の衆の状態になっている。そこで、一定の研修を経ないと指導主事にはなれないとか、少なくとも校内の生徒指導主事になったら、必ずこの研修を受けなければいけないというシステムをきちんと構築し、そこに、文部科学省がお金を付けるということをやっていかなければならない。

【委員】子供たちが年齢相応の社会性を身に付けてないということが背景となって不登校になったり、暴力行為につながったりということがあり、実践された事例の、スキル教育を幼児期から行っているということは非常に大きなことだと思う。社会性が身に付いていない根本的な背景として、子供が育つ環境の中で当然必要な体験である受容体験や群れ合い体験という基本体験が不足していると思っており、その土台作りをするような体験を用意していくことも大変重要であると考えている。具体的にどのようなことを就学前のスキル教育の中で行うのか。
  それから、SSCについて、横浜市では、各学校に生徒指導専任教諭というのを配置しており、毎月区の専任協議会、そして、市の専任協議会という形で月に3回ほど集まって、午後は研修に当てるということを行っているが、なかなか十分にいかないということで、外部の心理の専門家や福祉の専門家、関係機関、警察等も一緒に入って協議会を行うこともある。効果は上がっているとは思われるが、これといった特効薬にはなってない。学校の教員籍でそれをやるためには、相当な行政側のサポートがないと難しいと思うがいかがか。

【発表者】まず一つ目は、スクールカウセリングチーフについて、横浜市の取組はとても良いと思っており、スクールカウセリングチーフに近いと感じている。さらに、軍師官兵衛としていくためには、戦略を示すことである。戦略から考えろと言われると苦しい。総社市の場合には、包括的なガイダンスプログラムがある。世界の生徒指導では包括的な生徒指導プログラムがあって当然で、日本は問題行動が少なかったから、教師の腹芸で生徒指導をやってきたと思う。生徒指導の困難国では、プログラムで回していかないと、生徒指導ができないため、生徒指導のプログラムがしっかりしている。やるべきことがクリアであれば、軍師はそれを達成するためのどうすればいいかということを考えればいいだけとなる。市としての戦い方の基本戦略をクリアにすると、今のシステムは生きると思う。
   次に、幼稚園で何をしているかについて、例えばチエちゃんはみんなの前で転んでしまいました。どんな気持ちになるかなと聞くと恥ずかしいとか答える。そして、恥ずかしい顔ってどんな顔だろう、描いてみようということをしていく。そうすると、感情の理解ができる、表情から感情を理解するということができるようになる。スキル教育といっても、こういうときにはこういうふうにするという行動のレベルではなく、他者の感情を読み取る能力を伸ばしていく。幼稚園のときからきちんと感情の読み取り能力や自分の感情に気付く能力、自分の感情に気付けば、自分の感情をコントロールすることがでるため、幼稚園では実際の友達と手をつないで仲良くしましょうとか、挨拶しましょうということ以前の、人の気持ちに気付く、自分の気持ちに気付く、自分の気持ちを言葉にするみたいなトレーニングを入れている。

【事務局】具体的にこういう学校が魅力ある学校で、そのためには国はこの施策を打つべきで、人材としてはこういう人材を更に投入すべきだと、そしてその規模は全国一律なのか、一定規模以上なのか。学ぶ選択肢を学校の中で用意するために、更にどういう具体策があるのか。ポイントだけでも教えていただきたい。

【発表者】ビクトリア州での取組が一つあると思う。例えば、トラウマの影響についての自覚を増大させるという部分について、これは完全に臨床心理士の仕事であり、生徒指導担当はどうするかといえば、連携するしかないということになる。こういう戦略で生徒指導をしていくということを打ち出すことが一つである。そうすると、うちの学校はこういうニーズのある子はほとんどいないから、こっちに力を入れていこうなど具体の形は幾らでも作れる。そして、各学校に3名、それをできる教員を育てるということである。それはそんな難しくなく、生徒指導主事になったら、必ず毎週木曜日は丸1日研修だとしてしまい、例えば国や県がこういう内容を押さえた教員研修プログラムをやるようにさせればできると思っている。後は一般の先生は一定水準の研修をする。リーダーが言ったことが理解できるレベルの教員に育っていれば、あとは回っていくと思う。

【委員】不登校児童・生徒連絡会議について、シートを基に取り組んでいるとのことであるが、どういった形でその運営をしているのか。

【発表者】不登校児童・生徒連絡会議は、学校ごとに行っており、10校で月1回ずつ、2時間程度である。スクールカウンセラー、SSW、そして、市の臨床心理士、各学年の学年主任、生活指導主任、そして、子供と家庭の支援員、場合によっては、教育委員会の指導主事が出て、その学校の全てのケースについて話し合うものである。SSWと市の臨床心理士が参加しているため、その方たちが市の方に戻って、教育相談室としての集約を10校行っている。

【委員】カルテについて、保護者への提示とか、あるいは保護者と共通のステージとして活用するというのはどのようにしているのか。

【発表者】今の段階では、カルテそのものを保護者に提示するということはしていない。ただ、不登校カルテの取組を始めたというのは、不登校総合対策、あるいはふっさっ子未来会議の報告書に示してあるため、保護者の方の一定程度は知っている。ただ、全く学校の方に足を運んでくれない保護者に対してどのように示していくかということは課題だと思っている。

(4)資料3の説明を事務局が行った。説明に対する意見等の概要は次のとおり。

【委員】いじめの第三者委員会の資料等を見たときに、子供同士のいじめの場合に関して、学校の対応についてほとんど書かれていない報告書を目にしたことがある。例えば県が市町村を支援する場合はどういうケースなのか、国が支援するのはどういうケースなのか、それから、内容に関しても、学校の対応等もきちんと網羅された報告書ができるように、明確な指針が入ったら良いと思う。1号事案に対しての報告書はいろいろと課題があるので、それも是非併せて検討してほしい。
  不登校に関して、いじめられた子供が転校していくという事態が減っていないと感じる。いじめられた子供が転校しないで済むように、そして、いじめた子供への指導がきちんとなされるような、そういった対策を考えていきたい。

【委員】問題行動等調査の方では、いじめをきっかけとして不登校になった子供、それから、重大事態として、いじめの後不登校になった子供の二つの調査があるが、この違いは何か。

【事務局】平成25年度は、いじめ防止対策推進法が施行されたのが9月28日のため、施行期間が半年という中で、いじめをきっかけとして不登校になった法律の2号による重大事態の件数が122件、不登校のきっかけがいじめの件数というのが1,941件と差がでている。このことについて教育委員会に確認したところ、不登校のきっかけがいじめという件数については、施行前のいじめの事案によって不登校に陥っている子供が1,941人であり、施行前のいじめがきっかけだったので、2号による重大事態の件数には計上していないというものであった。不登校のきっかけがいじめであるという件数と2号による重大事態の件数というのは、基本的にはニアリーイコールの関係だと思っている。

【委員】この会議では、不登校へのかなり早期の対応を求めており、そのプロセスの中でいじめが浮かび上がってきたとき、いじめ対応と不登校対応と両面で対応してもらわなければならない。
  ただ、法的な手続として、いじめによる不登校に関して、重大性の基準としてしっかりとした線引きはなく、1か月相当と書いてあるだけであり、欠席日数だけで厳密に図ることもできない。そのあたりの曖昧(あいまい)さが法律の中には含まれているように思う。その点を今後検討していくべき事柄だと思っている。いずれにしても、この会議は不登校の子供への支援ということに重点を置いていくため、いじめの調査の過程とうまく合わさるように不登校の子供への支援をやっていかなければならない。

【事務局】いじめを受けた側(がわ)が不登校に陥って学習の機会を奪われるとか、転校を余儀なくされるということは、あってはならず、その事態の改善は一日を争うと思う。そのため、2号事案にも1号事案と遜色ない事案もあり、学校や市教委の受け止め方をしっかりしていく必要がある。

(5)森田座長から、児童生徒理解・教育支援シートマニュアルのワーキングチームについて提案があり、了承された。

(6)資料4の説明を事務局が行った。説明に対する意見等の概要は次のとおり。

【委員】税金を投入してやればやっただけの効果があるというところを検証するということが求められていく社会になっている。そういう点も含めて、この予算について考えていかないといけないし、本当に子供たちのためになる予算を組み立てられるように努力したいと思っている

(7)事務局より連絡
  今後の予定
(以上)


お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課生徒指導室生徒指導第一係

(初等中等教育局児童生徒課生徒指導室生徒指導第一係)

-- 登録:平成28年10月 --