不登校に関する調査研究協力者会議(令和3年第2回)議事要旨

1.日時

令和3年11月25日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

Web会議(Webex)

3.議題

  1. 令和2年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査の結果について
  2. スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーの効果的な活用等を含む不登校児童生徒への支援策に関する自治体へのヒアリングについて
  3. その他

4.出席者

委員

石川委員,伊藤委員,江川委員,沖山委員,斎藤(眞)委員,笹森委員,佐藤(博)委員,佐藤(博之)委員,白井委員,野田座長,原委員,笛木委員,三橋委員,安田委員,渡邉委員

文部科学省

伯井初等中等教育局長、江口児童生徒課長、鈴木生徒指導室長、大野児童生徒課課長補佐

5.議事要旨

【座長】  不登校に関する調査研究協力者会議の第2回を開催する。
 早速議事に入る。1つ目は、事務局から、10月半ばに公開された令和2年度の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(以下、「問題行動等調査」という。)の結果を説明し、続いて、京都市、鳥取県における取組についてのヒアリングをする。その後、委員の方々から質疑応答並びに御議論をいただく予定である。
 それでは、事務局から、問題行動等調査の概要について、説明する。
【事務局】  まず、小・中学校における長期欠席の状況についてである。長期欠席者数の中には、不登校だけでなく、病気、経済的理由、今年度は新型コロナウイルスの感染回避の人数も計上している。小・中学校における長期欠席者数は28万7,747人であり、このうち不登校によるものは19万6,127人と前年度から増えている。さらに新型コロナウイルスの感染回避による長期欠席者は、2万905人である。
 1,000人当たりの不登校児童生徒数は20.5人である。前年度が18.8人である。不登校児童生徒数は8年連続で増加しており、令和2年度は過去最多である。不登校児童生徒のうち、90日以上欠席した者が54.9%を占めている。学年別の不登校児童生徒数について、どの学年においても増えている状況が見える。特に小学校6年生から中学校1年生の間での増加が顕著である。
 不登校の要因として、学校に係る状況の中で多いものは、いじめを除く友人関係をめぐる問題や学業の不振、入学、転入学といった進級時の不適応であり、教職員との関係をめぐる問題もある。さらに、家庭に係る状況の中では、親子の関わり方が8.9%である。本人に係る問題の中では、無気力、不安が46.9%、生活リズムの乱れ、あそび、非行が12.0%である。学校に係る状況、家庭に係る状況については昨年度よりも減っており、生活リズムの乱れ、あそび、非行が今年度増えている。これについては、学校に対して、不登校とである児童生徒の主たる要因を1つ選択するという方法で調査しているため、第1回会議で説明した「不登校児童生徒の実態把握に関する調査」(以下、「実態調査」という。)の不登校の要因とは少し乖離がある結果になっている。
 学校内外の機関で相談・指導を受けた不登校児童生徒は12万9,000人であり、全体の不登校児童生徒に占める割合は65.7%となっている。前年度が70.4%であるため、若干下がっている。これは恐らくコロナによって相談機関が閉鎖になったことが原因の1つであるのではないか。一方、34.3%の子供たちが相談や指導を受けていないという状況であるため、このような子供たちにどう支援を届けていくかということが、今後の課題である。
 自宅においてICTを活用して学習した場合に、一定の条件で、在籍校の指導要録上の出席扱いができるという制度があり、それを活用した児童生徒数は、令和元年度、中学校において434件だったが、令和2年度は1,806件と大幅に増えた。小学校においても、令和元年度は174件だったが、令和2年度は820件と増えている。
 高等学校における長期欠席者数は8万527人であり、前年度より増えている。このうち不登校によるものは4万3,051人であり、こちらは前年度より若干減っているが、高止まりの状況かと思う。新型コロナウイルスの感染回避による長期欠席者数は9,382人である。1,000人当たりの不登校児童生徒数は、前年度15.8人だったが、令和2年度は13.9人であり、若干減っている。90日以上欠席した者は、不登校生徒数の19.6%である。不登校生徒のうち中途退学、退学に至った者は、約2割である。
【委員】  今年度、調査項目の中で加わった新型コロナウイルスの感染回避の人数と、これまでの不登校の人数の関わりについて、学校の判断であるとは思うが、調査結果からどのように分析をしているか教えてほしい。
【座長】  加えて、どのようなものを新型コロナウイルスの感染回避に分類することになっているのか。本人がコロナに対して不安であるというだけでなく、保護者が不安を感じて学校に行かせないなど何類型かあるだろうが、定義について併せて御説明いただきたい。
【事務局】  1点目、本人が感染をしてしまった場合や、本人や家族等が基礎疾患を持っているため登校することが危険だと判断した場合、学校のある地域で感染が蔓延したため休校になった場合等が新型コロナウイルスの感染回避に分類される。2点目、不登校児童生徒数と新型コロナウイルスの感染回避者数の関係の分析については、あくまで不登校と感染回避は別物である。
【委員】  今回、ICTを活用して学習をした不登校の子供たちの中で指導要録上の出席扱いとされた比率が非常に上がっていることは特徴的である。文科省としては、この背景として、どのような状況があると考えられるか教えてほしい。
【事務局】  GIGAスクールが本格的に始まって、ICTの環境整備も進んだこともあり、令和2年度において、自宅におけるICTを活用した学習活動が多くなり、指導要録上の出席扱いも多くなったと分析している。
【委員】  ICTを活用した学習による出席扱いを希望したが、認められなかった児童生徒はいないのか。
【座長】  これは、かなり本質的な議論であると思う。他にも深掘りしたい部分はあると思うため、後の議論で扱うこととする。2つの教育委員会から、特徴的な取組についてヒアリングをする。まず、京都市教育委員会における不登校児童生徒への支援施策について御説明をお願いする。
【発表者】  平成15年4月に開所した京都市教育相談総合センター(こども相談センターパトナ)が生徒指導、教育相談についての中核組織であり、司令塔として京都市立学校への指導助言や関係機関との連携、支援施策の実施を図っている。京都市は、洛風中学校、洛友中学校の2校の不登校特例校を有している。この2校の運営については、こども相談センターパトナ内の生徒指導課が所管しており、不登校特例校と教育相談センターが一体となった不登校児童生徒への支援につなげている。京都奏和高校は、従前の定時制高校を再編し、不登校経験があるなど様々な困りのある生徒を支える新たな定時制・単位制高校として令和3年4月に開校した。ここでは、学級単位での授業を基本としながらも、2年次になってからでも、履修できなかった1年次の科目を学ぶことができる制度を設けるなど、定時制と単位制のメリットを効果的に融合させ、集団での学習と個々に応じた学習を両立させるよう工夫している。まだ開校したばかりではあるが、在籍生徒へのより効果的な支援に向け、こども相談センターパトナとの連携の在り方を含め、様々な検討を重ねている。また、こども相談センターパトナは、その他の京都市立の学校に対しても、専門的な指導・助言やスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの派遣、学生ボランティアの派遣など、学校が子供たちや家庭を支援するアシストを行っている。加えて、家庭や子供に対して直接事業に支援する取組として、教育・心理専門のカウンセラーによる教育相談・カウンセリングや、ICTを活用した学習支援事業、フリースクール等民間団体との連携した事業などを行っている。フリースクール等との連携事業は、民間ならではのノウハウを生かし、平成17年度から実施しており、現在では児童生徒の各種体験活動や専門家を講師とした保護者学習会、家庭訪問を通じたアウトリーチ支援などの多様な取組を行っている。さらに、フリースクールに通う子供たちに関し、フリースクールと学校との連携がスムーズに行えるように、こども相談センターパトナが双方の橋渡しを行うことも長年続けている。
 さて、京都市と全国の小・中学校における不登校児童の在籍率の推移を比較すると、増減が同じような形をたどっていることが分かる。近年、なぜ不登校の子供たちが増えているのかということがよく議論になっている。そこには様々な要因が絡んでいると思うが、京都市と全国の動きが連動していることから、全国的な社会の変化による影響が大きいのではと考えられる。その要因としては、まず、「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」(以下、「確保法」という。)の成立等により、不登校等の子供たちにとって非常に多様な居場所づくりが広がったということがあげられるだろう。また、子供たちや保護者の中にも、様々な居場所を活用するという意識が高まったことも要因ではないだろうかと考えている。2点目としては、家庭内にインターネットやSNS、ソーシャルゲームが急速に普及したことにより、家庭内であっても外部と容易に繋がれたり、ネット上での友達を作ったりすることができるようになるとともに、家にいても様々な活動や学習、体験を可能とする環境ができたという社会の変化もあげられるのではないかと考えている。このように、不登校の子供たちへの支援を考える上で、社会全体の意識の変化や家庭内のデジタル機器の普及等、全国規模の社会情勢は無視できないのではないだろうか。一方、コロナ禍によって不登校が増えたのではないかという議論もあるが、コロナ禍以前より、不登校児童生徒の割合は上昇傾向にあったことから、それほど大きな要因ではないと考えている。京都市では、コロナ禍における学校臨時休業明けの令和2年6月に、「こころとからだのアンケート」という、子供のストレス等を測るための独自のチェックリストを作成し、全市立学校において実施した。その結果を集計すると、多くの児童生徒は概ね前向きに学校生活を送っているということが示唆された。学校の臨時休業に際した保護者の支えや、学校の教職員の努力の成果ではないかと考えている。
 次に、京都市におけるスクールカウンセラーの配置状況の推移について説明する。平成7年度、中学校1校から配置を開始して以来、配置校数の拡大を図り、平成27年度には全市立学校への配置を完了した。以降、令和2年度に至るまで、1校当たりの配置時間数の拡充を行い、学校における教育相談体制のに取り組んできた。スクールソーシャルワーカーについては、文部科学省が全国規模での活用事業を開始した平成20年度、京都市では、小学校3校への配置を行った。以降、配置の拡充を進め、令和元年度に全市立中学校区への配置を完了した。京都市が特徴的であるのは、平成21年度から、「学校でのスクールソーシャルワーク実践研修」という教職員研修を開始し、スクールソーシャルワークとは何か、スクールソーシャルワーカーによる支援はどういうものかなどを伝え、教職員の知識やスキルの向上を図っていることである。学校がスクールソーシャルワーカーをより活用できるように、またスクールソーシャルワーカーのいない学校においても、スクールソーシャルワーク的な支援を一定程度実践できるようにという意図で研修を始めた。現在はコロナ禍で集合研修の実施が難しい状況ではあるが、オンラインなども活用して研修を続けている。
スライドの9枚目は、京都市の不登校の未然防止に関する基本的な考え方である。一連のフローチャートは京都市教育委員会で発行している「心の居場所づくりハンドブック」という教職員用の指導資料からの抜粋である。この指導資料は、不登校に関する各学校での取組について、専門的知見をベースに、方針を統一して行うことを目的としている。未然防止に当たっては、まず、教職員が児童生徒との信頼関係の構築、保護者との信頼関係の構築をベースとした上で、児童生徒の小さな変化に敏感に気づいていくことが重要としている。これを基に、クラス内の友人関係の構築を支援するとともに、分かりやすく達成感のある授業を展開していくことが大切である。後に述べる「クラスマネジメントシート」の結果などから、友達関係がうまくいかないことと勉強や授業が面白くないということが、子供たちの足を学校から足が遠ざけてしまう大きな要因であるという知見を得たため、不登校の未然防止にとって、これらを非常に重要と考えている。加えて、いじめや学級の荒れによって子供たちが大きな傷を受けることがないよう、クラスの中で安心・安全な居場所を作ることも柱の1つとし、学級経営をしていくことを重視している。このフローチャートの流れについては、一度実施すればいいだけではなく、PDCAサイクルで定期的に見直していくことが大切であり、見直す際のツールとして、京都市では「クラスマネジメントシート」を活用している。スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーは、こうした一連の流れに、教職員とのコンサルテーションやケース会議への参画等を通じて関与する。京都市では、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーは自分たちの専門性単独で不登校の未然防止に対して取り組んでいくのではなく、学校全体の取組の中に入り込み、その学校の取組の中でそれぞれの専門性を生かしていくということを大切にしている。
 スライドの10枚目は、実際に不登校になった子供たちへどう支援していくかについての基本的な考え方である。様々な情報を収集し、その子供たちや保護者の困りの背景にあるものを丁寧にアセスメントし、それに基づいてどのような支援をしていくかという方策を立て、実践していくという流れをPDCAサイクルで回していく。そして、この流れ全体をチーム学校としての動きとなるように、ケース会議で運営していくということが望ましいことを、全ての教職員に示している。未然防止と同様、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーは、学校全体の動きの中で、それぞれの専門性を発揮していくことで、学校による支援がより強化されると考えている。
 繰り返しになるが、「心の居場所づくりハンドブック」は、不登校の未然防止、不登校児童生徒の支援について解説した教職員用の指導資料であり、様々な専門的な知見をベースに、具体的な方策について記載をしている。平成29年度に初版を作成、令和2年度に改訂し、その都度、京都市立学校の全教職員に配付をしている。今年度は、GIGAスクール構想により児童生徒1人1台端末が配備されたことを受け、同ハンドブックの別冊を作成・配付し、GIGA端末を活用した子供たちへの支援の在り方についても示した。
 続いて、「クラスマネジメントシート」について説明する。これは、京都市独自で作成した学級経営等に生かすためのツールであり、平成25年度から京都市立小・中学校で活用している。アンケート調査の結果をグラフで可視化することによって、学級担任等がクラス全体の状況や個々の子供たちの状況を客観的に把握し、それを基に、学級経営や生徒指導を行っていくためのツールである。これを教職員の通常の日常的な子供たちへの関わり、見取りに加えて、アセスメントの大きな材料として使うとなどを想定している。
 最後に、京都市におけるスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの成果と課題についてお話ししたい。スクールカウンセラーの成果としては、コンサルテーションが日常化してきたことがあげられる。つまり、スクールカウンセラーと教職員が日常的に色々なことを気軽に相談できる雰囲気ができているのである。この結果、個別の子供への支援というものが非常に効果的・効率的にできるようになり、また、スクールカウンセラーと教職員が連携することによって、教職員の資質向上にも役立っている。こうしたことが進んできたのは、1つは、やはりスクールカウンセラー、教職員双方の努力や工夫があったからである。例えば、スクールカウンセラーの机を相談室だけでなく、職員室の中にも設けることで、互いに話しやすくなった。また、スクールカウンセラー用のパソコンも学校で用意しているため、電子メールや書類の共有により非常に連携がしやすくなった。スクールカウンセラーもカウンセリングだけでなく、守秘義務を守りながら学校全体で子供や保護者をサポートしていく努力を積み重ねてきた。これらのことにより、互いの信頼関係が築かれてきたと考えている。2つ目としては、保護者や児童生徒が気軽に専門職に相談できる風土の醸成ができたということがある。スクールカウンセラーが教職員と連携し、「スクールカウンセラーだより」の各家庭への配布、保護者対象の講演会、児童生徒向けの心理教育、昼休みの相談室の開放等、スクールカウンセラーを身近に感じてもらえる取組を進めている。こうした結果、市全体でスクールカウンセラー、心理の専門職に対する期待や要望が大きくなってきていると感じる。緊急時の迅速な心理支援が行えるようになったことも大きな成果であろう。子供や学校現場に関わる大きな事件・事故があった際に、心理的な支援を行うことは全国どこでも当たり前のように行われているが、京都市ではこれまでの経験を生かし、迅速な動きがをとれる十分なサポート体制を構築してきた。当該校のスクールカウンセラーはもとより、スーパーバイザー、加えて、必要であればこども相談センターパトナのカウンセラーが学校現場に速やかに駆けつけ、子供たちや保護者、また、教職員も含めて、様々な心理支援を行う体制が整ってきた。一方で、課題としては、幅広い視野を持って多様な支援の方法を身につけた人材を確保・育成することがあげられる。様々な教育課題や最新の心理支援の知見・スキルを身につけた人材を確保・養成していく必要があると感じており、またスクールカウンセラーの継続的な努力を希望している。次に、十分な配置時間数の確保である。カウンセリングが普及してくるに従って申込みが増加し、一方で教職員とコンサルテーションする時間が足りないということもあると考えられる。やはり十分な配置時間数を確保することが、社会全体で望まれている。
 スクールソーシャルワーカーもスクールカウンセラーと同様に、コンサルテーションが日常化してきていることは大きな成果と考えている。京都市としては、スクールソーシャルワーカーの配置拡大だけでなく、教職員研修の実施や「心の居場所づくりハンドブック」の作成・配付により、スクールソーシャルワーカーの役割等を学校現場において周知し、身近に感じてもらうということに注力してきた。これにより、学校の中でケース会議の実施やアセスメントシートの活用など、アセスメントに基づく支援の広がりが見られている。さらに、例えば、児童相談所や各区役所の子供支援部門等と法律に基づいた強い連携ができるようになってきたこともスクールソーシャルワーカー配置の大きな成果である。課題として、福祉の知識だけでなく、子供、家庭、学校に対するソーシャルワークに精通した人材の育成・確保があげられる。児童福祉、特に学校現場で子供や保護者に対して教職員と連携した支援を行うことに対して、専門的な知見、スキルを持っている福祉の有資格者は少ないように思う。このような人々を何とか育成、確保していきたい。京都市においても、スーパーバイザーによる個別の指導や専門的な研鑽を深めるための研修会の開催などにより、現在京都市に勤めているスクールソーシャルワーカーのスキルの向上を図っている。もう一点の課題として、やはり配置時間数の充実が必要と考える。京都市ではスクールソーシャルワーカーを中学校区単位で配置をしているため、拠点校となる学校以外の支援を充実させるという意味でも、配置時間数の増加は望まれるところである。スクールカウンセラーも同様であるが、国からのさらなる財政的支援をお願いしたい。
 学校現場において、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの高度な専門性を生かすためには、学校の努力に加えて、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーそれぞれの努力が必要であるため、教育委員会として生かすサポートしながら、チーム学校としての支援を推進してまいりたい。
【座長】  引き続き、鳥取県教育委員会における不登校児童生徒への支援施策に係る御説明をお願いする。
【発表者】  鳥取県には19市町村あり、人口が最少な県であるため、学校数、児童生徒数、教職員数は他県と比べてあまり多くはない。全国に先駆けて少人数学級を行っており、子供1人に対しての教職員数を表した小・中学校の教員の充足率は約110%である。これは、全国1位であるが、学級数が多いため、学級担任外の教員が多いわけではない。
 鳥取県の不登校支援における強みまたは弱みを5点挙げる。1点目は、小さい県であるため、市町村との連携が行いやすい。2点目は、学校数、児童数が少ない。3点目は、交通手段が発達していないため、自家用車移動が基本となっている。4点目は、専門家、支援者の数が十分にない。5点目は、支援場所が少ない。ただ、弱みも人口が少ない県の強みであると考え、足りない部分については工夫して補い、進めている。
 特にここ数年の小学校の不登校が急増しており、低学年の不登校が増えている。それに対し、中学校では全国を下回っているが、高止まりの状況である。学級担任制と教科担任制による校内体制や組織体制の違いというところが不登校の状況に影響しているのではないかと考えたため、来年度から進める小学校の教科担任制において、専科教員による教科担任制に加え、学級担任間での交換授業を積極的に推進し、担任中心の体制から、チームでの意識、動きができる組織づくりに繋げようと考えている。特に週時間数の多い教科である国語、算数を中心として進めることで、教員の教材研究の時間が減り、業務に余裕ができるとともに、多くの教員が児童と関わることができるため、児童生徒理解が進むのではないかと考えている。モデル校で教科担任制を実践した際、教員からは、学校全体で児童を見守っていく意識が高まったという感想、児童からは、色々な先生と話ができて、相談もできるようになったことや、先生が代わると気持ちの切替えができるという感想があった。このようなことがどう不登校等の予防に繋がっていくのか期待をしている。実際、学校も教員も努力をしている中、なかなか改善しないというところがあるならば、従来からの小学校の在り方、または常識を見直すという視点も必要なのではないか。不登校とコロナの関係については、鳥取県のコロナ感染は全国で一番少ないという状況で、コロナの臨時休校もほとんど全県で一斉というのではなかった。感染者が出た場合の各学校の臨時休校や学級閉鎖は数校程度あったが、コロナの感染に係る不登校への影響は、特に多く報告をされているような状況ではない。しかし、一昨年度では初めて8人のクラスターが出た9月から10月、昨年度では3月末に20人もの感染が報告された後の5月から7月の増加は、前の年と比べて大きい。様々不安を抱えやすい不登校傾向の子供にとって、不安を増す原因となった可能性がある。
 続いて、鳥取県の不登校支援施策の全体像及び重点について申し上げる。以前は、家庭訪問と子供に寄り添うことを中心に実施してきたが、「児童生徒の様々な行動には、必ず理由がある」という考え方を基本として新たな取組に繋げた。その要因や背景を児童生徒の心理面、発達面のほか、家庭生活、学校生活の中から見つけようとする考え方に立った支援が必要であるため、教職員だけでなく、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの専門家の視点も加え、情報を整理してアセスメント、プランニングをした上で支援を組織的に行っていくこととした。そこで、校内組織体制作りと児童生徒理解を2つの柱とした。方針を明確に示すために、手引やマニュアルを作成し、モデル事業等の発信の下に周知、研修を行ってきた。「教育相談体制充実の手引き」の中で、教育相談コーディネーターという新たな役割を各学校に置き、この者を中心に関係機関と連携し、ケース会議を軸とした校内体制づくりを進めていくようお願いした。その後、虐待や愛着課題等の影響、保護者の困り感を基に、家庭支援、保護者支援を柱の1つに加えた。保護者支援については、不登校の保護者相談電話窓口の設置や、親の会の方々に、県の不登校対策連絡協議会の委員として参加していただくことや、親の会が主催するフォーラムに県として出席することで連携を取っている。また、様々な施策を進めていく上で、特に重視したものが、課題分析、実態把握である。児童生徒数が少ない鳥取県だからこそ比較的簡単にできる部分もある。これを見る中で、支援が行き届いていないところについて学校には来られているが、教室に入れない子、学びたいが、家から出ることができない子がいたため、ICTによる自宅学習支援事業を始めた。3か所ある県の教育支援センターに学習支援員を置き、チャット機能を使っての支援や、アウトリーチ支援、保護者支援等も行っている。また、学校に来られるが、教室に入ることができないという生徒の学びを保障するため、校内サポート教室を設置している。本年度は県内で5中学校に行っており、今後増やしていく予定である。これは教室復帰だけを目的としない教室となっており、教科指導ができる教員を配置している。在籍の学級とは別の動きの中で支援が行われている教室となっている。そして現在、不登校等により形式的に卒業した子が、卒業後の学び直しができるように、県立の夜間中学設置に向けた準備を進めている。
 学校外の居場所として、教育支援センター、民間のフリースクール、義務教育終了後のハートフルスペースがある。実際、鳥取県においては公的機関が中心となっており、NPO法人等によるものはほぼないため、選択肢が多くないことが課題である。例えば、県が支援しているフリースクールは4施設、教育支援センターは、小中学校対象の市町村設置のものが11施設あるが、交通機関が十分ではなく、保護者の送迎が基本となってしまうため、利用は多くなかった。高校生対象の教育支援センター、ハートフルスペースが県内に3か所あり、特に入所、退所に繋がる関係機関との連携が重要になるため、連絡協議会を行い、サポートステーション、児童相談所、小児科医、ひきこもり支援センター、フリースクール等と連携して日々の支援を行っている。数少ない機関が、顔の見える関係を作っていかないといけないということを意識している。その他、学齢期の子供たちが対象になる不登校特例校について、転校等課題を感じるところはあるが、研究を進めている。
課題把握の一つとして、小学校の全児童を対象に、不登校の要因・背景把握シートによる調査を平成30年度に行った。問題行動等調査による要因調査もあるが、より細かく具体的な要因・背景を分析するため実施した。特に学校環境に加え、家庭に関わる要因、本人の困り感に関わる要因を詳しく調査した。この調査は、学校や保護者、本人でもなく、俯瞰的に実態を把握できる市町村教育委員会に回答をお願いした。市町村教育委員会が個々の不登校児童生徒の実態をしっかり把握して、学校を指導してほしいという狙いもあったが、調査の項目で、児童生徒理解に向けた様々な視点を示し、多面的な要因把握の下に、具体的に支援に繋げてもらいたいという気持ちもあった。そのため、各項目についてさらに詳しい要因及び支援の方法について、この結果と絡めて、市町村、学校に示した。
 専門家の不足が課題の1つである。県内に臨床心理士、社会福祉士、精神保健福祉士育成の大学、専門学校はない。そのため、これらの者を繋げる関係機関との連携が大変重要になってくる。例えば、スクールカウンセラーについては、臨床心理士会と連携し、配置を含めた様々な相談、県の方針を基にした研修会を開催してもらうなど、若手等の支援体制も作っている。また、スクールソーシャルワーカーについて、人材が不足しているため、県主催で年6回、スクールソーシャルワーカー育成研修を行っており、人材発掘を進めている。また、小児科医の数も少なく、発達に係る診察等が2か月待ちという状況も生じている。そこで県教委としては、小児科医に依頼をし、「専門医による相談会」を開催している。このように専門家等からのアセスメント機会が少ない状況があるため、教員の専門性が必要となってくるため、「教育相談体制充実の手引き」と「ケース会議マニュアル」を作成、周知し、教員の専門性と、ケース会議を通した組織作りを促進している。「ケース会議マニュアル」の内容としては、ケース会議の進め方、特にアセスメント、プランニング、事例が中心である。このマニュアルは、市町村教育委員会や学校だけでなく、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、児童相談所、市町村の要対協事務局にも配付し、鳥取県としての流れを理解していただいた上で、一緒に子供たち、保護者への支援を進めてもらうようにお願いしている。
ある小学校で平成30年度から令和元年度まで、校内体制作り・児童生徒理解、そして、魅力ある学校作りを軸とした、「人間力・組織力による不登校改善事業」の実践をした。事業前の学校の状況としては、市内でも生徒指導面で大変な学校だった。課題のある子が保健室に入り浸ってしまい、保健室形成が成り立たなくなったこともあった。具体的な事業の内容は、子供の人間力、教員の組織力に焦点を当てたもので、教育相談コーディネーターの配置と役割の明確化のために、リーダー性のある担任外の教員をその役に指名し、養護教員との2名体制で事業を進めていくものであった。また、ケース会議を組織的に行い、関係機関との連携、児童生徒理解を進めてもらうため、スクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカーを優先的に配置し、スクリーニング会議、これを基にアセスメント、プランニングを繰り返し行った。その後、教育相談コーディネーターを中心に、職員室で立ったまま行う「井戸端ケース会議」を実施した。教育相談コーディネーターと管理職が中心となってすぐに話し合い、対応するという素早い動きができた。この学校が上手くいった要因は、校長の改善に向けた覚悟とリーダーシップ、先生方がチームとして行っているという安心感、先生方の子供を尊重した関わりを大事にしようと子供への対応が変わっていったところである。この学校は、不登校、問題行動が減っただけでなく、市内で低かった学力も、本年度は上位に位置し、校区内の中学校の不登校も減っている状況である。
 最後に、学校の支援に係る今現在の課題は、思うように浸透しないことである。市町村教育委員会の理解が必要であると考える。校内組織体制作りは、やはり管理職のリーダーシップが大事であることを、校長会、悉皆研修で伝え、具体的な内容、または教育相談コーディネーターの役割やケース会議の方法を発信してきたが、実際、ケース会議の時間が取りにくい点や、アセスメント、プランニングが難しいという点で、なかなか進んでいっていないという実態がある。教育相談コーディネーターの配置状況やケース会議の実施回数は増えてきているが、まだ意図したケース会議になっていない。特に小学校においては、担任外に教育相談コーディネーター等を置き難い状況であるため、十分に機能していないという実態もある。一面的な勘や経験に頼るのではなく、発達面、心理面、家庭生活、学校生活からのアセスメントはすごく大事だが、実際、全ての教員にこのアセスメント、プランニングの力は必要ないように感じている。まずは何を誰にどのように繋ぐかコーディネートができる職員が学校にいれば、組織としては動いていくものである。児童生徒理解について、実際、不登校等の要因・背景は子供自身でも分からないこともある。教員の思い込みで子供たちを傷つけてしまうというようなことが絶対ないようにしていきたい。この2つは、研修で、基本的なことは理解してもらえるが、やはり実践を通して子供たちに寄り添う中で、付いていく能力であるので、再度、県の教育委員会、市町村教育委員会が連携をしつつ進めていきたい。
 鳥取県のいじめ・不登校の支援のスローガンは「あったかい風をみんなで吹かそう」であり、毎年、県内の小・中学生に配布しているクリアファイルに相談窓口等の案内と併せて周知している。
【委員】 京都市の発表について2つ質問したい。1つは、スクールカウンセラーの配置について、年間何時間を目指しているのか。もう1つ、PDCAのサイクルで見直しをする頻度はどれくらいを目指しているのか。
【発表者】  スクールカウンセラーは、令和2年度、一部小規模校を除いて年間280時間の配置を完了した。280時間というのは、大体週に1回7、8時間程度勤務をする想定の時間数である。令和元年度以前は、とりわけ小学校ではスクールカウンセラーの勤務が隔週または、週1回4時間程度ということが多かったが、どの学校でも週に1回7、8時間程度はスクールカウンセラーが勤務することを1つの大きな目標としてきた。カウンセリングは、週1回程度のペースで実施するということが多いため、そこを1つの目安とした目標であった。次の目標については予算の関係もあるため、現在は明確に申し上げる段階ではないが、文部科学省でも進められているように、常勤のスクールカウンセラーの配置や週複数日の配置などを含め、財政状況等も勘案しながら、今後の方向性を考えていきたい。
 もう1点のPDCAサイクルにおける見直しの頻度についてだが、学校に明確な基準を指示しているわけではない。ただ、例示としてクラスマネジメントシートを活用した状況把握については、学期に1回くらいの頻度を推奨している。あまり頻繁にアンケート調査を取ると、子供も飽きてきてしまい、回答の信頼性が損なわれるので、学期に1回程度の実施が望ましいと考えている。ただ、クラスマネジメントシートを取らないから見立てや方策の見直しができないわけではないので、それぞれの学校の判断の中で、随時見直しを進めている。
【委員】  京都市のクラスマネジメントシートは今学期に1回ぐらい、どのクラスも子供たちに回答させ、クラスの学級風土や、子供たちの学習への取組を見るそうだが、どのように進めていくのか。例えば、学校で行う会議等で見直しながら、このクラスにはこのようにした方が良いということを協議し、それからどのように改善したか等を話し合いつつ進めているものなのか。
 もう1つ、鳥取県では、スクールカウンセラーの勤務頻度や時間数はどれくらいなのか。
【委員】  京都市では、こども相談センターパトナと学校との連携促進をしているそうだが、連携事業の実施、連携の促進について、具体的にどのようなことをしているのか教えていただきたい。
【委員】  令和3年4月開校の京都奏和高校の学校形態はどのようなものであるか。
【発表者】  クラスマネジメントシートについては、クラスや個々の児童生徒の状況をアンケートの結果から読み取り、その見立てに基づいた学級経営や子供への支援などに関する方策を立てるという活用の仕方を想定している。またその際には、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーも参加したケース会議等の中で情報共有、協議することが望ましいと考えている。ただ、学校現場は多忙な状況があり、かつ学校評価やいじめに関するもの等アンケート調査が非常に多いので、ケース会議ができなくても、クラスマネジメントシートの結果を参考に担任個人が見立てを行うことや、他の同僚教職員、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーとコンサルテーションを行う中で、検討材料として活用するなど、非常に多様な使い方ができるようなツールであると考えている。。
 2点目のフリースクール等民間団体との連携事業についてだが、例えば、フリースクールのスタッフによる子供対象の農業体験や川遊び、工作などの体験活動の企画・実施、家庭訪問による子供との関わりや保護者との相談事業、専門家を講師として招いた保護者学習会の開催等を行っており、その費用を京都市が負担している。珍しいところでは、不登校の子供たちの助けになりたいという志をお持ちのボクシングジムと連携し、プロのボクサーの方が不登校の子供たちにボクシングを体験的に指導されるという事業も行っている。フリースクール等と学校の連携促進については、保護者の意向もあるが、フリースクールに在籍する子供の活動内容等を学校で共有してほしいとの保護者の意向があるような場合には、こども相談センターパトナが間に入ってフリースクールと学校を繋ぐなど、双方の連携がスムーズにいくよう橋渡しをしている。
 最後、京都奏和高校についてだが、これは定時制・単位制の高校である。主に昼間に学習をして3年間で卒業する課程、昼間に学習をして4年間で卒業する課程、夜間にまたぐ形で学習をして3年間で卒業する課程、夜間中心に学習をして4年間で卒業する課程という4部制で現在運営をしている。まだ初年度であるため、1年生しかいないが、ほとんどの生徒は、昼間に学習して3年間で卒業する課程を選択している。入学選抜に際しては、通信制等を含む既存の高校で学習することが困難であり、京都奏和高校での学びを本当に必要とする生徒を受け入れることができるよう、事前に生徒・保護者との入学相談の機会を丁寧に設けるとともに、学力テストよりも面接を重視した選抜試験を実施している。
【発表者】  鳥取県のスクールカウンセラーの配置時間等について、全ての中学校区に配置しているが、大体中学校に週1回、小学校に月1回、1回につき約4時間である。中学校区での配置であるため、小学校と中学校でやり取りをしながら、この総時間数の中で柔軟に対応している。大変多くの保護者や子供からの相談があり、心理教育の実施もお願いしており、職員室にスクールカウンセラー用の机等は置いているが、机に座っている時間もないぐらい忙しい状況である。毎年の予算要求で時間数を増やすようお願いしているが、難しい。
【委員】  鳥取県が支援をしているフリースクールは4施設あるということだが、ある程度要件を決めているのか、それとも、実際の応募が4施設しかなかったのか。加えて、サドベリースクールは不登校の子供たちがある程度自分たちが学ぶ場を選ぶという視点から考えると、フリースクールとあえて分ける必要がないと思うが、発表の中ではフリースクールとサドベリースクールを分けて記載していた。それは確保法との関係で、フリースクールとサドベリースクールは同じ列で考えることは難しいからなのか。
【委員】  鳥取県の取組の中の高学年の教科担任制について、これから国として取り組むべき課題の1つであると思うが、今回は不登校の子供に対してということで提案があった。教科担任制によって不登校生徒にどのような効果が期待できるか、実際どのような成果が上がっているかについて聞きたい。
【座長】        前述のテーマについては後の議論の中で取り扱う。
【委員】  鳥取県の発表の中に、「校内サポート教室」という記述があるが、これは特別支援教室とは違うものなのか。ここに職員を配置しているのであれば、その職員は「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」に基づく方であるのか。別である場合、どのような雇用の形態なのか。
 もう1つ、フリースクールへの助成は、どのような目的・名目で出しているのか聞きたい。
【発表者】  まず、県内にたくさんのフリースクールがあるわけではない。そのため、県内にある4施設から申請が出され、県が支援している。国の「民間施設についてのガイドライン(試案)」を基に県がガイドラインを作成しており、それに基づき、実際に訪問や聞き取りをしている。県内にサドベリースクールがあり、不登校の子供たちの居場所としては県としても認めているが、このガイドラインにおける普通教育に値する教育が計画的に行われているということ、安全を保障する環境面、支援面などは十分な状況ではなく、県が支援しているフリースクールと分けて記載している。
 教科担任制については、週時間数の少ない教科ではなく、週時間数の多い国語や算数にすることで、多くの教師が学級の子供たちと関われることや、児童生徒理解の促進、小学校では、学級担任中心に相談活動が行われる中、様々な教員と話ができ、子供が苦しい思いを聞いてもらえる等の効果がある今後、間違いなく子供たちにも教員にも余裕が生まれる取組であり、不登校等の改善には繋がっていくと考えている。
 サポート教室の支援員は、定数外の非常勤の教員である。退職した校長が、現在5つの中学校に配置されているが、免許を持った教員、非常勤教員、非常勤講師が支援に入っている。
【委員】  カウンセリングの需要が高まっている中、京都市では、カウンセラー個人が支援方針を決定して、カウンセリングの回数を決定していくという方向になっているのか、それとも学校として支援方針を立てて、カウンセリングの回数を決める形になっているのか。
【発表者】  カウンセリングの方針や頻度については、カウンセラーが実際に相談者に会って判断する部分が大きい。ただ、スクールカウンセラーが単独で決めているわけではなく、多くの場合、スクールカウンセラーの窓口的な業務を行う教員であるスクールカウンセラーコーディネーターと相談しながら、支援の方針や頻度等を決めている。
【座長】  京都市のクラスマネジメントとは、そもそも何なのか。
【発表者】  クラスマネジメントシートは、京都市で開発した心理尺度である。これは、「学級認知尺度」と「生活適応感尺度」の2つの尺度から構成されている。「学級認知尺度」は、学級全体の雰囲気を子供たちのアンケート調査から把握するためのものである。例えば、あるクラスは個々の友人関係は良いが、学級全体としてのまとまりは弱いなどのことが見えてくる。「生活適応感尺度」は、個々の子供たちが自分の毎日の生活の中でどういうことが楽しくて、どういうことが辛いのかなどを把握するものである。例えば、ある子供について、勉強は楽しいけれど、友だちがあまりいないと感じているなどのことが伺える。これらを学級担任等が捉え、学級経営や個々の子供への理解、支援に生かしていくことができる尺度である。
【座長】  クラスマネジメントの著作権は京都市が持っているのか。
【発表者】  京都市教育委員会が開発し、京都市で著作権を保持している。ただし、ご希望をいただいた近隣の市でも、クラスマネジメントシートのことを活用いただいており、京都市から研修講師を派遣するなど、互いに交流しながら実施をさせていただいている。
【座長】  議論の時間とする。
【委員】  例えば、家庭訪問したけど拒否されたり、スクールカウンセリングに来てねと言っても、なかなか子どもが来られない場合、保護者に対して、このような支援があると伝えても、なかなか参加してもらえない等のケースもあると思うが、その場合の保護者や子どもへの支援は実際、どのように行われているのか。支援している中で、子ども自身が不登校になることで周りとの差を感じてしまい、社会に出ることを拒むことがある。その中で全ての支援を拒否してしまう状況は、多く見受けられるのではないか。
【座長】  システムや働きかけはあるが、支援に繋がらないということは、不登校全体のかなり大きな課題であると思う。
【委員】  「新型コロナウイルスの感染回避」による長期欠席者数が新たに調査に加わったが、例えば、これまで不登校として数えられていた子供の中で、コロナに対して不安だから欠席をするということで、学校の中ではいわゆる欠席扱いされないような状況が生まれてきている子供もいるのではないかと思っている。不登校のカウントの仕方に、これまでと差が出てきているのではないか。今後、「新型コロナウイルスの感染回避」をどのように扱っていくかということにも関わってくると思う。
【座長】  長期欠席の中に「不登校」という選択肢もそれ以外の選択肢もあるという分類をした時に、「不登校」をどのようにカウントするか。「新型コロナウイルスの感染回避」による長期欠席がなければ、そもそもこの子供たちはどこに分類されていたのか、「病気」の中や、家庭要因とか環境要因と判断されて「その他」にカウントするものもあれば、やはり「不登校」にカウントするものもあると思うので、長期欠席並びに「不登校」という選択肢をどう捉えていけば良いかということは、アセスメントと関連して非常に重要な枠組みの1つであると思う。今の質問は核心を突いた部分だと思うので、事務局からカテゴリー毎の理解の仕方と今後どのように捉えるのか後日解説いただく。
【委員】  私からは保護者の観点ということで、保護者への支援や保護者の学習会なども既に取組をしていると思う。しかし、親の目線から言うと、未然に防ぐことはできないのかと思う。要は、家庭教育がとても大事だと感じる。その中で、例えば家庭の中で子供からのサインはどのようなものがあるか、家庭の中でできることとは何か、というようなヒントが欲しい。PTAとしては、学校と保護者が協力をしながら、子供の健全育成に取り組んでいきたいと考えているが、その中でも、やはり家庭教育はとても大事である。そのため、家庭に対する注意喚起や、もし自分の子供が不登校になったら、子供とどのように接したらいいのか、不安をどのように解消していけばいいかを、相談する機関はあるのかもしれないが、事前に資料や教材等がもしあれば教えていただきたい。
【座長】  防止という表現が適切かは議論があると思うが、どの家庭にも共通する不登校の未然防止的な部分、一方で不登校児童生徒の保護者へのサポート、家庭で何ができるかということも非常に重要であるため、議論の1つにできたらと思う。
【委員】  不登校は問題行動ではないということが「不登校児童生徒への支援に関する最終報告」の中に記載されているが、結局は学校へ行くことを前提としている実態があまり変わっていない。不登校は防止したり、解決したりするものなのか、1つの選択肢としてもっと受け入れられていいのではないか。現場レベルになってくると、不登校に対する理解者は決して多くない。学校の在り方、常識を見直すことを意識すべきである。例えば教員や学校が理由となって不登校になっていると答えた子供が実態調査では30%近くあったが、問題行動等調査では1.2%である。誰かの代弁と当事者の声にこれだけ乖離があることに注目しないといけない。教員の無慈悲な言動で不登校にならざるを得なかった児童生徒にとっては、不登校の要因は、学校の理不尽なしんどさに尽きると思う。そのため、問題行動等調査の「無気力」という選択肢は果たして的を射ているのか検討する必要がある。
 もう1つは、中央と地方の実態の乖離も大きい。地方に行けば行くほど、学校以外の選択肢が枯渇しているため、なおさら学校の在り方を問うていかないといけない。不登校でも安心できる道筋を示して、肩身の狭い思いを本人にも保護者にもさせないようなものを今回の報告の中に分厚く入れていくような議論をしていきたい。
【委員】  実態調査の結果では、不登校になった子供たちがカウンセラーやソーシャルワーカーに相談している例は1割以下であり、半数以上が家族に相談している。保護者に対しての支援、ノウハウの提供、事例の共有をするべきである。子供たちは保護者に相談しているのに、スクールカウンセラーに対してノウハウを蓄積しているというミスマッチが起きているのではないか。実態に合わせた子供たちとの向き合い方を手厚くしていかないと、結果的に保護者に必要な手当てがされていないという点で抜け漏れが起きるというのが、今の不登校施策の現状ではないか。
【委員】  ICT学習が出席扱いと認められているのが現状、約2,600人であるが、全体の数に比べたら少ないため、希望をしているのに認められていない子供がいるのではないか。確保法の趣旨の浸透に向けて、自治体やフリースクール、スクールカウンセラー等予算面での手当てが重要であるという話は、現在どのような状況であるか、ここで何か議論ができる点があるかについて聞きたい。
 教育委員会が、児童生徒が授業をつまらないと感じると不登校になりやすいことを明言された。恐らく、鳥取県の高学年の教科担任制も、授業についていけないではなく、つまらないという生徒に対する取組の1つではないか。中学生ぐらいになると、優秀な子はほとんど授業を聞かずに内職をする一方、授業についていけない子は早々にドロップアウトをして、ずっと指名される恐怖と闘いながら座っている。少子化が進んで、1人1台端末も行き渡ったため、一人一人の学びの保障ができるという時代になってきたのではないか。どうしたら一人一人に合った学びを保障できるのかという課題意識を、この会議から発信していくということは非常に意義が大きいと思う。
【発表者】  「クラスマネジメントシート」の結果から、子供たちの多くが学校の授業や勉強を分からない、面白くないと思っているということではなく、学校の授業や勉強に充実感を感じにくい生徒ほど、学校から足が遠のいていく傾向があると考えられるということである。
【委員】  スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、フリースクール等地域で組織的に不登校の子供たちを支援すると考えた時、連携と言うのは簡単だが、例えば、不登校児童生徒は家族と学校の教員にしか出会う機会が保障されていない。地域の人たち、社会と触れ合っていく場がないならば、中間領域であるスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、フリースクール等は重要である。子供にとってステージを少しずつ上がるための人や場所の存在は大事。教員がスクールソーシャルワーカーの研修を受けると、組織として考えた時に、スクールソーシャルワーカーもスクールカウンセラーも、子供にとっては教員と同じポジションになってしまう危険がある。教員がそのような中間的な人や場所の存在を認めつつ、教員とは違う存在であるということを子供に伝えないと、子供たちは相談できない、相談してはいけないというハードルが越えられない。
【委員】  不登校は、背景・要因がたくさんあり、何がその子に影響を与えているのかという分析は大切であり、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーにはアセス
メント力が求められている。これには非常に高い専門性が必要だが、任期や勤務時間の関係で、なかなか積み重ならない。
 もう1つ、学校指揮下のチーム学校の一員としての専門職でありながら、専門職としての自立性を担保していかなければ、中間的な立ち位置であるという保証は難しい。教育という分野での非常に高い専門性が必要だが、教員と同等の研究や研修の機会がない。また、培った専門性をどうやって蓄積していくのか、蓄積した専門的な支援成果に全てのカウンセラーやソーシャルワーカーがアクセスをして、そのエビデンスに基づいた適切な支援を行っていくことが求められている。
【委員】  不登校自体が問題ではないということがどのように浸透しているのか不安である。そのため、正しい理解を啓蒙していくことはこれからも必要である。子供たちがしんどくならないように、学校が安全・安心な場であるためには、アセスメントが必要である。特に不登校が多様化していることに加え、関わる支援者も多様であるため、共通の物差しを使い、その子のしんどさをみんなで見ていくところにスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーを組み込むシステムが広がると心強い。子供たちを支えるフリースクールや親の会等を支える仕組みが足りていないということは実感しているため、議論していきたい。
 実態調査の分析をもう少ししなければいけないと思っているので、子供たちから届いた声をどうやって施策に活かしたら良いのか考えたい。
【座長】  県と市町村の役割分担や、社会資源も人も募集をかけたら何とかなるところと、自分のところで育てないと無理であるところ等、各地の状況によって条件が違うため、目配りしながら考えていく必要がある。本日はこれで終了する。
 
―― 了 ――

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