不登校に関する調査研究協力者会議(令和3年第5回)議事要旨

1.日時

令和4年5月23日(月曜日)11時00分~12時00分

2.場所

Web会議(Zoom)

3.議題

  1. 不登校に関する調査研究協力者会議報告書(案)について
  2. その他

4.出席者

委員

伊藤委員,江川委員,沖山委員,小林委員,齋藤(眞)委員,笹森委員,佐藤(博)委員,白井委員,野田座長,原委員,笛木委員,三橋委員,安田委員,渡邉委員

文部科学省

淵上大臣官房審議官(初等中等教育局担当),大野児童生徒課課長補佐

5.議事要旨

【座長】  不登校に関する調査研究協力者会議の令和3年度第5回を開催する。本日は、報告書案について検討いただく。
 それでは、本日の議事に入る前に、事務局より説明をお願いする。
【事務局】  まず、教育進化のための改革ビジョンが令和4年の2月25日に文部科学省から出された。これは文部科学省として今後何を重視して、どのようなことに取り組むのかを示ししたものである。基本理念として、4つの柱がある。GIGAスクールが進んだことによる、リアルとデジタルの最適な組合せによる価値創造的な学びの推進や、これまでの学校では十分な教育や支援が行き届かない子供への教育機会の保障、この中に不登校の子供たちも含んでいる。また、地域の絆を深め共生社会を実現するための学校・家庭・地域の連携強化や、教職員が安心して本務に集中できる環境整備を盛り込んでいる。今後は、同一年齢で同一内容を学習することを前提とした教育の在り方にとらわれず、これまでの日本型学校教育の優れた蓄積も生かして、個々に最適な学びを提供するとともに、地域や企業とも連携して学校内外での豊かな体験機会を確保するために、いくつかの施策を重点的に検討する。その中で、特別な指導や支援が必要な、障害のある児童生徒、不登校、特異な才能のある児童生徒、日本語指導が必要な外国人児童生徒、僻地の子供を対象としたオンラインを活用した教育支援の充実を図っていくというものがある。また、特例校の設置促進などによって、通常の学校だけでは十分な教育支援が届かない子供への学びの場の確保となっている。文部科学省が指定している特例校の中の1つに、不登校特例校があり、この設置促進を図っていく。また、学びの中における個々のニーズに応じた柔軟な指導を実施していくことがまとまっている。
 続いて、第6期の科学技術・イノベーション基本計画において、新たな柱として教育・人材育成に関する事項が盛り込まれたことを踏まえ、内閣府の科学技術・イノベーション会議評価専門調査会の下に、教育・人材育成ワーキンググループが設置された。特に初等・中等教育段階からSociety5.0時代の学びを実現し、好奇心に基づいた探究力の強化に向けて、STEAM教育や、問題発見、課題解決的な学びの充実を図るための具体策について、中央教育審議会委員の参画も得ながら調査・検討を行っている。このワーキンググループは、次の学習指導要領の改訂に向けて、今後5年程度の中で学習環境をどのように整えていくかということと、そのロードマップを示すということを目的としている。この最終とりまとめの中で、不登校児童生徒や、日本語を家であまり話さない児童生徒など、多様な子供が1つの教室の中で紙をベースに学習していくのは限界があるため、タブレットを活用して個別最適な学びや協働的な学びを一体的に充実していくべきであるということが盛り込まれている。これは今後の学習指導要領の改訂の基本になっていくということで、今後5年程度の時間軸の中でこのような形を目指していくということが盛り込まれている。
 公明党において不登校支援のプロジェクトチームが立ち上がり、4月末にその提言が取りまとめられ、文部科学大臣に手交された。この提言では、まず、現在21校ある不登校特例校を、各都道府県、政令指定都市に1校以上設置することを目指すべきであることや、ICTの利用を促進するべきであること、小・中学校において学習指導員や、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーを拡充してほしいということ、保護者支援や地域連携を推進していくことが必要であることについて言及されている。さらには、民間団体と教育支援センターが連携してオンラインを活用した支援を推進していくべきであるということも盛り込まれている。また、不登校児童生徒の実態をより正確に把握するため、「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(以下、「問題行動等調査」という。)の項目や、調査方法について改善を行っていく必要があろうということや、問題行動等調査においても、不登校の要因の中で「生活の乱れ」の割合がかなり高いこともあり、その原因の1つとしてネットゲームなどが考えられるため、不登校の前後を通じてオンラインゲームやSNS等が与える影響について調査研究を行ってほしいと提言がされている。
【座長】  全体としてリアルとバーチャルをどのように融合させていくのか、その中で、既に現在、悩ましさを抱えている児童生徒とその家族、あるいは学校、社会に対して我々はどうしていくかということが今回の提言である。
本日の議題に移る。報告書案に関わる説明を事務局にお願いする。
【事務局】  構成としては、1番に「不登校の現状と実態把握」という柱を立て、2番目に「今後重点的に実施すべき施策の方向性」として組んだ。
 まず、「不登校の現状と実態把握」について、1つ目は、令和2年度の問題行動等調査において、小・中学校における不登校児童生徒数が、調査開始以来の19万6,127人であったこと、コロナ禍による生活環境の変化によって生活リズムが乱れやすい状況であったことが分かった。また、学校内・外いずれの機関においても、相談・指導を受けていない児童生徒が3割近くいたため、相談につながりにくい課題を抱えている児童生徒を学校や教育委員会において早期に把握し、適切な支援につなげていくことが必要である。2つ目、昨年10月に公表した不登校児童生徒本人や保護者に対するアンケート調査の結果についてである。最初に学校に行きづらいと感じ始めたきっかけについて、先生のことや、身体の不調、生活リズムの乱れ、友達のことがそれぞれ3割程度を占めるところから、不登校児童生徒の背景や支援ニーズの多様さが浮き彫りになった。また、学校や教員の対応、理解不足などが原因で不登校となった事例も見受けられた。さらには、最初のきっかけとは別の学校に行きづらくなる理由として、勉強が分からないことがあると分かり、欠席中の学習支援の重要性が示唆された。このような結果から、多様な児童生徒への対応に当たって、経験により得られた特定の指導・支援方法が適切な場合もあれば、個々の児童生徒の状況によっては適さない場合もあるということを、学校や教職員等は常に念頭に置くことが必要であることが分かった。当たり前ではあるが、当たり前だからこそ、もう一度ここで再確認をした。
 このような実態把握を踏まえ、個々の児童生徒の状況を適切に把握して多様な支援を実現することが必要であり、今後重点的に実施すべき施策の方向性として、4つの柱でまとめた。
 まず、1つ目としては、誰一人取り残さない学校づくりである。この会議の中で再三、委員から御意見いただいたところだが、「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の確保等に関する法律」(以下、「教育機会確保法」という。)について、学校現場へ周知がまだできていないため、周知・浸透に向け、広報や啓発資料を作成したり、教育委員会や独立行政法人教職員支援機構などを通じて研修を充実していく。また、チーム学校による魅力ある学校づくりを行っていくこと、さらには、児童生徒本人が様々な自分のストレスや、その解消方法を理解し、安心して周囲の大人や友人にSOSを出せるように、養護教諭含めてスクールカウンセラーを活用した心の健康の保持に係る教育を行っていくことが重要であることを盛り込んでいる。
2つ目は、不登校傾向のある児童生徒に関する支援ニーズの早期把握である。全児童生徒を対象としたスクリーニングを実施していくこと、さらに課題のある子供たちの情報を1つにまとめた児童生徒理解・支援シートを活用して、関係者が連携して情報共有しながら支援策をプランニングしていくことが重要であることを盛り込んでいる。 また、不登校の早期の段階で、教室に入れなくても、学校の別の教室で個別の学習支援や相談ができる、児童生徒がほっとできるような居場所である校内の教育支援センターを充実させていくことを盛り込んでいる。以前は校内適応指導教室というような言い方をしていたが、適応指導教室という言葉の疑義があるため、今後は校内教育支援センターという表現でいきたい。また、スクールカウンセラーによる全員面接を行うことで、そもそもSOSを出していない児童生徒を早期に把握するとともに、実際の面接を経験することで、大人に相談する敷居を低くしていこうということも盛り込んでいる。さらには、1人1台端末を活用し、児童生徒の健康状態や気持ちの変化を確認することも併せて行っていく必要があることを盛り込んでいる。
3つ目、不登校児童生徒の多様な教育機会の確保である。まず、基礎自治体では整備が難しいが、少し広域の都道府県や政令市などによる分教室型を含めた不登校特例校の設置を促進していくこと、さらには、夜間中学との連携等によって、特色ある特例校の設置推進や指導の充実を図っていくことを盛り込んでいる。また、文部科学省の補助事業でも不登校児童生徒支援協議会を各自治体に置いていただくことを進めているが、このような場を通じて、フリースクール等民間団体との対話の場を設けることで連携を促進していきたい。そして、フリースクール等民間団体のノウハウを活用した公設民営の教育支援センターの設置なども行っていく。さらには、教育支援センターの機能強化ということで、遠隔地や、相談につながりにくい児童生徒について、これは基礎自治体だけでは難しいところ、都道府県や政令市など広域を視野に置いた不登校児童生徒支援センターの設置を促進していきたい。
 4つ目、不登校児童生徒の社会的自立を目指すためには、中長期的支援が必要である。教員養成段階において、教員が福祉や心理のスキルを図っていくことも1つであり、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーについて、オンラインを活用した教育相談を充実していく必要がある。また、関係機関が連携してアウトリーチ支援も含め、家庭教育への支援も充実していく必要がある。さらには、学校復帰のみにとらわれず、不登校生徒児童の将来を見据えた社会的自立のために、児童生徒の目標の幅を広げる支援を実施していく必要があることも記載している。
【委員】  報告書を見ると、非常に幅広い視点からまとめられている。ただ、どうしても報告書は文章が大変長いため、学校現場の教職員は読み込めない。広く知らせるためには報告書も必要だが、概要を学校にきちんと周知させていくことが大切。もう1つ、生徒指導提要が改訂作業に入っていると聞いているが、生徒指導提要と報告書に違いがあってはいけないと思っている。もし、今後の生徒指導提要との関わりが分かっていれば教えてほしい。学校現場からすると、生徒指導提要はとても大切にされていくものであるため、報告書の内容と合致しなくてはならないと思っている。
【座長】  教員向けに分かりやすくする必要があることは同感である。例えば学校現場に重要なキーワードが概要には出ていたが、報告書本体からは拾いにくい。教職員に対して、重要な箇所を強調したようなものはあってもいいかと思う。せっかくの報告書であるため、何ができるかは座長と事務局で検討したい。
【事務局】  生徒指導提要と報告書に齟齬があることは良くない。生徒指導提要の見直しの作業が続いていて、この3月末に試案を公表しているが、恐らく考え方として大きな違いはないかと思っている。生徒指導提要は夏頃に公表される予定であるため、報告書も踏まえて、大きな違いがない形で検討を進めていきたい。
【委員】  結局、予算の問題がかなり大きい。例えば今、全国的にスクールカウンセラーは配置が進んで、スクールソーシャルワーカーも配置が進んできたが、スクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカーの給与に差がある。昨年まで私が勤務している学校の担当のスクールソーシャルワーカーが今年辞めてしまった。なぜ辞めたのか聞くと、生活ができないと回答された。そのようなところは、財政からお金を入れないと、今せっかく形が整ってきていることも、充実していかない。不登校については、学校に来ることだけが全てではないという考え方であるため、何人復帰したかということが、事業を進めていくことの評価にはならないと思うが、教職員からは、学校に来られない児童生徒とリモートでつながることができたなど、その児童生徒の様子を見ながら、進歩していると分かるところが、財政当局の人が理解できていないのではないか。学校に戻ってきていないから効果がないので、予算を減額されてしまうと、学校としてはやりようがない。そのため、教職員だけが理解をするだけではなく、例えば財政当局の方の理解も必要ではないか。
【委員】  まず、報告書で、誰一人取り残さない学校づくりと記載いただいたことに感謝したい。また、最後が、社会的自立のために多様な価値観で自身の幅を広げるような支援の実施が必要と記載されていることにも大きな意味がある。不登校児童生徒には、自信と勇気が必要である。そのため、SSWやSCなどの専門職の責任は重大であると思っている。支援の質を高めるためには、福祉や心理が教育においてどのような支援が必要なのか、その在り方の研究を教育と一緒に検討していく必要がある。この重要な専門性を支えるために、そのような研究や専門職の不安定な雇用状況を、国が教員定数法等の支援によって支えてほしい。
【委員】  幅広い報告書で、スクールカウンセラーの全員面接のことまで触れられている。私は、令和3年度、SC及びSSWの常勤化に向けた調査研究をしたが、各都道府県、政令指定都市の教育委員会に伺ったところ、今のスクールカウンセラーの配置状況で十分であると回答したところは0%だった。財政との関係があると思うので、ぜひ国のほうのバックアップもお願いしたい。また、心の健康の保持に関わる教育の実施について、何か不登校傾向が見えた時ではなく、その前から、相談する力をつけることや、ストレスへの対処方法を理解することが重要だと思うが、先ほどの調査研究でも、教育課程の中にそのような時間を明確に設置しておかないと、実際にはなかなか実施できない。特に心理職は強く感じていた。スクールカウンセラーの資質の向上や、内容の精査は必要だと思うが、心の健康の保持に関わる教育の実施について、具体的な実践につなげるために、時間の設定の明確化、位置づけ等を進めていってほしい。
【委員】  まず、不登校に関する調査の学校と当事者の回答の乖離の指摘や、一定の割合で教職員の対応によって不登校となった事例が存在するという指摘に、学校の現場として襟を正したい。一方で、高等学校における不登校の深刻さを、もっと私自身発信すべきであったと反省をした。報告書の中にも、憂慮すべき教育上の課題と示されてはいるが、一読すると、あたかも不登校が小・中学校の問題であるかのような印象がした。これから学校の取組の改善を進めていく過程で、この報告書を早速学校の現場教職員にも広げたいと思うが、その点が少し残念な印象であった。高等学校の現場に根強くある入試を経て入っているので、登校できて当たり前であり、登校できない生徒は通信制に行けば良いという適格化主義のような発想が残念ながらまだまだある。しかし、登校したいができないという生徒が多数在籍している。そのような生徒は、入学後に通信制に改めて送ってしまうことが良い選択肢ではないと思っているので、登校できなくても学びが継続できる仕組みや、履修・修得が認められる仕組みを、さらに作り上げていかなくてはいけない。中学校の不登校特例校は増えてきているが、そこに希望を持っていた中学生の保護者などから、不登校特例校は、登校できる生徒しか対象になっていないという印象がして、結局、登校したくてもできない子供たちはどこへ行けば良いのかという声もたくさん聞いた。このような子供たちが、たくさん本校に入ってくるので、高等学校における不登校について、もう少し盛り込んでいただく必要があったと思う。ただし、報告書の中に、今後、新たに付加すべき視点がないか、今一度整理して検討を進めていく必要があるという指摘があるので、このようなことを踏まえて、学校からも発信をしていかなければいけないと考えている。
【委員】  今日、私が勤務している学校の近隣の中学校で体育大会が行われており、怒号が聞こえてきている。これをなくさない限り、その先の話はないと思う。方法論は幾つでも可能性が広がり、可能性を出せば出すほど、そこにヒットする子供たちも増えていくだろうが、学校を望んでいるが学校がなじまない児童生徒にとっては、「一人も取り残さない」という表現も、場合によっては刺さってしまう。一体感の中に自分たちが入っていけないという現状を教員側がつくってしまっている。それは人権意識の欠如、旧態依然とした集団教育に書きぶりの中でもっと主張していただけると助かる子供たちがたくさんいるのではないかと思う。先ほどの委員の話にもあったが、義務教育ではないことから高等学校への支援が後手に回りがちであるが、事実上、高等学校は義務教育である。九十数%の子供たちが高校生なる時代において、高校生での不登校という状態への支援が欠落しているというのは、自治体や小さい私立学校等の限界を超えているのではないか。大きな発想の転換が必要なのではないか。いずれにしても、今回の報告書の中で、不登校は問題行動ではない、不登校という選択肢も含めて、フリースクールや、学校外の学びにさらに積極的に子供たちが希望と夢を持ってそれを選択していけるような空気が醸成される、そしてその結果、保護者の心労が少しでも軽くなることを願っている。最後に、この委員会、会議回数やまとめの持っていき方が多少拙速であったと思う。素晴らしい委員をお招きした中で、もっと各々の深い見識に触れたかった。会議の回数が少なかったのではないかと思っている。
【座長】  大事な御指摘をいただいた。ただ、回数については、政策的にこの時期に出すことのメリットもあるため、今回はそのような状況でお許しいただきたい。
【委員】  学校や児童生徒の実態・現状に応じて今回提案をしているこの報告書の内容を、学校の教職員や保護者・子どもにどう周知していくかということが重要である。国としては出したが、都道府県等によって認識に違いが起こってはならない。教育委員会が行う土台づくり、予算等かかる部分等、方向性を示したあと動いていくための教育委員会への働きかけをどのように実施していくか。今までと異なる方法で周知するなどを検討する必要があるかと思う。この4月から中学校の校長になった。今回話し合った報告書の内容をもとに、学校現場でより具体的に、成果を上げていけるよう気を引き締め、頑張っていきたい。1つ、これまでも言ってきたところだが、問題行動等調査の調査項目・文言の検討をしていただけることは、ありがたい。これまでの問題行動等調査については、出席扱いになっている児童生徒も不登校の数として計上されるが、ぜひ学校や自治体が取り組んでいる支援が見える調査に変えていくよう検討をお願いしたい。
【委員】  学校現場としては、報告書の内容を実施していくために、子供のより良い成長をしていくために、どうしても人やお金が必要である。今までも様々な政策提言や報告書が出ているが、出た後に学校や教育委員会で実施してほしいという状況があり、教職員の負担が増えている。良い報告書ができているので、より良い方向で実施できるように進んでいくと良いと思う。
【委員】  我々の宣言決議案の中で、これまでいじめ問題、非行問題、そして不登校等の防止に努めるという文言があったが、不登校というだけで問題行動であると受け取られないように配慮する必要があることから、不登校という文言がなくなった。ただ、不登校児童生徒数が増加を続けているという事実を踏まえ、我々PTAとして、また保護者として今後どのように取り組んでいくかは大きな課題である。また、教職員の働き方改革の中で、学校及び教職員は一人一人の児童生徒の人格を尊重し信頼関係を築くということについて、果たして教職員はこのような取組ができるのか、心配に思っている。そのため、このような部分で我々PTA、または保護者、地域の大人として何かしらの関わりを持っていかねばならないと感じた。あとは、悩んでいる児童生徒や保護者の不安を取り除くこと、長期にわたるひきこもりや、自死などにつながらないことを、ぜひ希望したい。
【委員】  先ほど事務局の説明で、当たり前のことであるという言及がありましたが、その当たり前のことが、残念ながら全然世の中に浸透していない中で、その当たり前のことを可視化、明文化していくという取組だった。そのような中で、徐々に教職員にも関心を持っていただき、不登校は問題行動ではないという意識は少しずつ浸透してきたと思っている。例えば適応指導教室など適切でないという指摘がなされてきた名前も、丁寧に変えていくような、1つ1つの取組の積み重ねが大事だと思っている。それが短い間だったが、積み重ねが少しずつできていったプロセスだったかと思う。一方で、当たり前のことを当たり前にできる状態に今、学校等全国の教育の環境が、残念ながらないという状況であるということに向き合う必要がある。教職員はきめ細かい支援はしたいと思っていても、今教職員が足りないため、人材を確保することで精一杯になっていたり、教職員から、フリースクールに入りたいが枠がない児童生徒に関する問合せが来たりする。これについては、予算がないので枠がないという現状である。当たり前のことを当たり前にやっていくために、予算や教職員の働く環境の改善等、不登校という枠を超えた働きかけ、児童生徒の支援の、あるいは児童生徒の教育の環境を整えていくところにつなげていくことが必要である。今、例えばデジタル庁も、「誰も取り残さない」という文言から「誰も取り残されない」という文言にあえて変えた。主体がどこにあるかということで、文言の使い方というのをまた御検討いただきたい。委員の中でも不登校児童生徒が取り残されたような感覚があったように、これは終わりのない取組だと思う。不登校の枠組みを超えて、誰も取り残されない社会をどのようにつくっていくか。今後とも、各々できることを持ち寄る中で、誰も取り残されない、特に子供たちが自分に合った教育環境、成育環境が得られるように取り組んでいきたい。
【委員】  私も息子も、不登校を経験しており、1番当事者性があったと思う。不登校になったこと自体が問題なのではなく、不登校になった後で本人が精神的に受ける抑圧や、周りから受けるハラスメントが非常に大きい問題である。それは保護者に対しても同等である。全員が同じである必要はないという社会の中で、多様な学びという在り方が、次回以降の報告書の中でさらに強く打ち出せると、不登校という状態だけをもって問題にならない社会になってくると思う。それは我々にとってとても大事なことなのではないか。今回の調査結果を基に、これから全国の都道府県の教育委員、各フリースクールへ働きかけ、ぜひ不登校児童生徒への支援について官民協働で取り組みましょうと話しに行こうと思うが、教育委員会に行くと、その報告書はいつのものですかと聞かれるので、ぜひ現場、せめて都道府県の教育委員会には早めに届くことを切に希望したい。
【委員】  私は家庭教育、保護者の支援、家庭の支援をしている立場として話す。不登校になっている状況で、子供が学校以外、他の居場所にも行けない、家庭から出られないというケースも非常に多い。その中で、家庭の関わり、ペアレントトレーニングを支援として入れていこうとしている。家庭の中で保護者が子供にどのように接すればいいのかということについて支援が入っていくことが実現していくのであれば、保護者も安心して子供と接することができるようになっていくと思う。学校が全てではないと思うが、また学校に戻りたいという子供も中にはいると思うので、私は復学支援の立場として、戻りたい子供については戻れるような環境を学校の中で作れるとさらに良いかと思う。さらに家庭の中で保護者が子供とどう接すれば良いかアドバイスをする支援が全国的に広がれば、保護者も子供も安心できる環境が整うか思うので、重点的に支援が進んでいくと良い。
【委員】  報告書は、この概要を活用して内容を把握し、それぞれが実践していければ良いかと思う。養護教諭の立場からは、現場で心の健康教育をスクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラー等専門職と連携しながら、充実させていかなくてはいけないと感じている。さらに、校長先生のリーダーシップの下に、チーム学校として対応することが不登校や心身の健康に課題を抱える子供たちには必要であるため、進めていきたい。
【委員】  この報告書の中では、ヒアリングで聞いたかなり先進的な成功例を盛り込んで、具体的にこういうことができるということを言っているので、参考になる。しかし、教職員は非常に忙しいので、報告書の本体を見ず、概要だけで理解しようとした際、例えば校内教育支援センターや不登校児童生徒支援センター等、今まで使われていなかった言葉が出てくるので、理解がどこまで追いつくか気になる。生徒指導提要では具体例等は記載できないため、この報告書についてどのように全国に具体的に伝えていくか検討する必要がある。
【委員】   報告書について、例えば教職員向けのリーフレットのような形で、学校ではどのように行動するか考えられるものがいいかと思う。報告書の概要について、不登校の現状と実態、今後重点的に実施すべき施策の方向性が記載されているが、不登校自体は問題行動ではないことや、多様性を大切にすべきであること、あるいは学校に行けなくても悲観する必要はない等、不登校をどのように捉えたら良いかというメッセージがあると良い。それは教職員向けだけではなく、そもそも不登校は、このように捉えてほしいというもの。 もう1つは、それぞれの機関がどのように組織として、あるいは体制として支援をしていったら良いかという繋がりをどこかでまとめとして出ていると良い。3.今後重点的に実施すべき施策の方向性(4)不登校児童生徒の社会的自立を目指した中長期的支援では、それぞれが支援のために実施することが並んでいるようなまとめ方であるため、繋がりをまとめたものがあるといいなと思った。
【座長】  今回、残念ながら我々の委員会はオンライン会議のみで開催することとなったが、不登校児童生徒への支援を実践的に取り組んでいただいている委員から大事な御指摘をいただいた。コロナが終息した後、リアルも含めて、改めて交流や意見交換の機会があれば良いかと思う。教育機会確保法にもあるように、学校の中でやるべきこと、それでも学校に通うことが難しい場合でも様々な支援ができるということは、今回の報告書でかなり具体的に記載している。実態調査を見ると、不登校は、単に形容詞としての「多様な」ではなく、1人1人異なる困難を抱えていることを改めて認識した。教職員やその他の大人全員が、思い込みで何か施策を打てば良いということではなく、まさに子供あるいは保護者とのやり取り中で、しっかりと状況や気持ちを聞き取り、どのような支援が必要か教えてもらいながら、最善の支援を実施していくことが重要である。私は中学校、高校で不登校になっており、何とか再度学校へ通ったので、高校は4年で卒業したが、1970年代の初頭の不登校児童生徒数を見ると少なかった。平成の初めに不登校という言葉が使われるようになったが、視野が広がったからであると思う。不登校児童生徒への支援の方法としては、このコロナ禍で逆に広がったという部分もあるのかもしれない。ただ、今後どのように生かしていくかが大切。一方で、方法論だけでなく、子供の発達や、心の発達についても考慮していきたい。
 報告書に修正が必要な場合については、基本的には事務局と座長に一任いただきたい。
【事務局】  最後に大臣官房審議官の淵上より、皆様に御挨拶申し上げたい。
【淵上審議官】  昨年の10月から始まった会議であるが、本日、最終的な審議となった。最終的な表現ぶりについては、本日の御意見も踏まえて、座長と相談をして固めていきたい。委員におかれては、近年の不登校児童生徒の実態や現場での実情、またそれぞれの立場での経験や知見を基に、大変、集中的かつ精力的に御議論いただいた。いただいた提言は貴重な示唆を与えていただけるものばかりであると思う。文部科学省としても、今回の報告書を踏まえ、それぞれの学校や地域における取組がさらに進められるよう、また悩みや不安を抱えている児童生徒への支援がさらに充実されるよう、情報発信や来年度の概算要求に向けた取組、学校の働き方改革も含めて、引き続き全力で取り組んでまいりたい。また、現在、こども家庭庁の創設に向けた審議も国会で進んでいる。これは、「こどもまんなか」社会の実現に向けて新しい仕組みを作っていくものであるため、文部科学省としても、子供たちが真ん中に位置づけられて、輝けるような社会になるよう、全力を挙げていきたい。
【座長】  以上をもって、今年度第5回の会議を閉会する。

―― 了 ――

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