不登校に関する調査研究協力者会議(令和3年第4回)議事要旨

1.日時

令和4年2月17日(木曜日)14時00分~16時00分

2.場所

Web会議(Webex)

3.議題

  1. 学校の公的機関や民間施設、ICT等の活用による教育機会の確保について
  2. とりまとめ(素案)について
  3. その他

4.出席者

委員

伊藤委員,江川委員,沖山委員,小林委員,齋藤(眞)委員,笹森委員,佐藤(博)委員,白井委員,野田座長,原委員,笛木委員,三橋委員,安田委員,渡邉委員

文部科学省

淵上大臣官房審議官(初等中等教育局担当),大野児童生徒課課長補佐,

5.議事要旨

【事務局】  不登校に関する調査研究協力者会議の令和3年度第4回を開催する。
【座長】  今日の議題は大きく2つ。1つはヒアリングの関係で、学校外の公的機関や民間施設、あるいはICTの活用に関して、まずは、フリースクールと教育委員会との連携について特定非営利法人フリースクール全国ネットワークの江川委員に御発表いただく。 次いでICTに関して、先駆的な取組みを実施しているさいたま市教育委員会から御報告をいただく。この2つの御報告をお聞きした上で、質疑応答の時間を取る。
 2つ目の議題として、今後の取りまとめに向けた素案の協議としたいと思う。
 それでは、議事1について、まずは、フリースクール全国ネットワークの代表を務めておられる江川委員から、民間団体と教育委員会の連携について、ヒアリングを行いたい。
【委員】  フリースクール全国ネットワークは、全国のフリースクール80団体が加盟している団体であり、理事5名で運営している。私は、加盟団体の1団体として福島県の会津若松市で活動をしている。
 資料では「不登校の4象限」と書いたが、縦軸は「子供中心」か「教員中心」か、横軸は「家庭・在宅型」か「通所型」か、という分け方である。多くの教職員は、主に学校で保健室や会議室、場合によっては、教育支援センターを活用しながら支援されており、私たちはフリースクールという、学校外の学びの場で支援しているところである。この意味で、子供たちを中心に学びをつくっているところが我々の特徴である。図の中に「同期・非同期の連続した学び」と書いているが、同期とは、一緒に学ぶ時間である。非同期とは、個人が学ぶ時間である。我々は個人が学ぶ時間と一緒に学ぶ時間の両方を大事にして学びをつくっていることが特徴だと思う。
 一昨年から今年にかけて、私たちは「コロナ禍における相談事業」というのを、「新型コロナウイルス対応緊急支援助成 ~社会的着尺性の高い子どもの支援強化事業~」の中で行った。相談件数は465件あり、年齢別に見ると10歳から12歳、つまり小学校4年生から6年生が多いということが特徴的な点である。相談の主訴について、複数回答可であるが、主に「不登校」や「学校」に関するものが多い。この学校に関するものは、友人関係の問題、教員との関係の問題も含む。
 続いて、実際に教育委員会とフリースクールが、どのような連携の事業を実施し、子供たちの学習機会を提供しているかという事例を紹介する。フリースクール全国ネットワークに加盟している一部のフリースクールに対して、学校から「出席扱い」になっているかという状況を調査した。調査への回答があった24団体全てのフリースクールで「出席扱い」の認定を受けているわけではないことが分かるが、約7割は「出席扱い」の認定を受けている。「出席扱い」については、学校長の判断によるため、学校によって異なる場合もあり、課題である。
 フリースクールは、保護者の相談、スタッフ同士の学び合い、周知・広報も含めて、8つの分野で教育委員会と連携できると思っている。ただし、この8つの分野で連携できることが、実際に現場の教育委員会や学校でどの程度周知されているかは、未知数であり、我々の努力も含めて、今後の課題と思っている。
 9ページはフリースクールが教育支援センターの運営を受託している事例である。東京シューレが運営受託されている世田谷区のほっとスクール「希望丘」では、現在、常勤スタッフ7名、非常勤スタッフ2名で運営をされている。当初、区からの契約では、区内在住の小中学生35名程度が登録する想定がされていたが、実際は135人を超え、非常に人気がある。
 もう1つの北区の事例は、教育支援センターへのプログラムの提供である。これは、概ね週1回、フリースクールのスタッフが教育支援センターに赴き、プログラムの提供をしている。子供たちの探求学習の際の対話の場づくりとして、ファシリテーターのような役割でフリースクールのスタッフが入っている。このほか、絵の講座や音楽の講座等のコンテンツの提供を行っている。また、親の会を受託して年間16回程度実施しており、保護者の相談を民間のフリースクールが受けている。これは、全国でも珍しい事例かと思われる。
 次に、福岡県の事例を紹介する。教育委員会部局ではないが、私学振興部局から、最大200万円のフリースクールに対する支援が行われている。対象費目としては、人件費、活動費、家賃補助、臨床心理士等の謝金、広報代である。また、教育委員会とフリースクールの意見交換会が行われている点が特徴的である。他方で課題としては、生活困窮者の学習支援の費用をフリースクールで使うことに対して、部局が跨るために理解が得られにくいこと、教職員と連携するための会議に出席するのは管理職の教員が多く、現場の教員とフリースクールのノウハウが共有されていないなど、現場の教員とのつながりが弱いことについて挙げられる。
 兵庫県の事例である。「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」(以下、「教育機会確保法」という。)が成立する前は、市町村によって「出席扱い」の基準はばらばらであった。それに対して、同じ施設に通っているのに、一方の市町村では「出席扱い」となるが、他の市町村では「出席扱い」とならないということは適切ではないという見解を兵庫県が出し、兵庫県教育委員会が「民間施設に関するガイドライン」を策定した。これにより、フリースクール・親の会等に関する「出席扱い」の基準が制度的に統一されたことで、「出席扱い」と認められるケースが増えた。
 次に、神奈川県の事例である。学校と34団体のフリースクール、フリースペースが参加する「神奈川県学校・フリースクール等連携協議会」が2006年から設置されている。情報交換だけでなく、お互いの研修等を実施している。例えば横浜市は、市のコーディネーターが、個々のフリースクールを訪問し、現場で情報交換をしている。このことが、子供たちの学習の支援や、現場での保護者の支援につながっている。
 千葉県では、2か月に1回、フリースクールの現場で懇談会を実施している。その懇談会には、教育委員会、千葉県議会議員、フリースクールが参加している。子供たちを支援するための一番良い方法は何か、お互いに模索する。最近のテーマは、必ずしも学校復帰を意図しなくても、子供たちが、教育的な支援を受けられるようにするという視点に変化していると伺っている。今後、千葉県としては、条例化も考えているようだ。
 資料14ページから16ページについて、フリースクールの学びについてまとめた。我々の活動は、基本、10人や20人以下の、ホームルーム的な空間で、子供たちが学び合うということを大事にしている。フリースクールのスタッフと、教員の立ち位置の違いを話す。我々は、教える側でもなく、同級生でもなく、斜めの関係と言っているが、お互いに気軽に相談できる先輩、お兄さん、お姉さんという立ち位置で関わっている。そのため、生徒を指導する関係ではなく、子供たちが相談しやすい関係性を築きやすい。学習については、学校に行かなくなった時期が個人によって異なるため、まず個人から学びを始める。集まって、「実は僕はここが苦手なんだよね」とか「この科目は得意なんだよ」というような、お互いの学びは、対話をしながら作っていくが、基本、個人で学んでいるケースが多い。個人の学びについては、オンラインの教材も使うケースもある。
 今回、色々なところから課題もいただいている。教育機会確保法成立以降、教育支援センターの委託が進んでいない。課題解決には、子供中心に学びをどのように作っていくか、子供が来やすい環境をつくるのが大事。フリースクールでは、そのようなノウハウが蓄積されているので、今後もっと進んでいくことを期待している。また、出席扱いについて、もっと認めてほしい。先ほどの福岡県の事例にもあったが、現場の教員と、我々はもっと意見交換や学び合い、ノウハウを共有したい。また、外国籍の子供たちの場合、まず学籍簿がない状況があり、学籍簿を、民間団体と教育委員会が一緒に作るところから始まる事例もあるため、国籍を問わず、不登校の子供たちに関する情報を名簿のような形で管理し、その中で、この子はどこで学んでいるか分かると、より抜け漏れのない支援ができると思った。あと、我々が、安定的に子供たちに学びを作っていくために、民間施設へのガイドラインの作成も含めた制度的な支援が必要である。また、教育機会確保法の成立以降に増えたモデル事業、フリースクール、民間支援の場等を通じた不登校児童生徒への支援に関して、今後とも拡充をお願いしたい。最後に、民間団体等へ支援をする自治体は、徐々に増えている。しかし、要件や報告が厳しいために、制度はあるが活用できていないところがある。民間団体等が活用しやすいように、民間団体等と話し合いながら制度設計を進めてもらえると、現場での有効な子供への支援につながるのではないか。
【座長】  ICTを活用した学習支援について、さいたま市教育委員会より御説明をお願いする。
【発表者】  それではまず、さいたま市の不登校児童生徒の現状について、過去5年、小学校の不登校児童数は、増加傾向である。中学校は、令和2年度、前年度よりも82名減の921名である。令和2年度において、全国では1,000人当たりの不登校児童生徒数は20.7人、埼玉県では16.5人、さいたま市では13.9人であり、全国・埼玉県と比較して、低い数字となっているが、不登校児童生徒がいることについては、解決すべき喫緊の課題である。
 出現率が低いことについては、さいたま市の今までの不登校児童生徒への支援の取組の成果が現われているのではないか。まず、不登校の未然防止としては、楽しい学校であること、一人一人の居心地が良い学校であることが大切。さいたま市では、授業力の向上のための様々な研修と併せて、教職員が一人一人の小さな変化に気づいたり、児童生徒が不安や悩みを抱えている時に、寄り添って話を聞く力をつけるため、教育相談・カウンセリングの基礎を身につける研修を体系的に実施している。また、学校にはスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、さわやか相談員という相談員がおり、専門職も含めて、様々な相談活動をしている。学校外については、市内6か所に、教育相談室、教育支援センターがあり、学校以外で相談したい子供や保護者の相談を実施しており、24時間のSOS窓口、SNSを活用した相談窓口などによって、不登校をはじめとする様々な相談に乗っている。
 今、申し上げた取組を継続している中で、昨年度、不登校の児童生徒への支援の在り方をさらに探るため、経済産業省が実施している「学びと社会の連携促進事業(「未来の教室」(学びの場)創出事業)」で採択された事業である『OjaCプロジェクト』「不登校児童生徒を対象としたICT在宅学習モデルの構築」(以下、「OjaCプロジェクト」という。)に参加した。令和2年9月末から令和3年3月31日までの期間で、「デキタス」というICT教材を活用した授業、学習習慣のサポートをするチャットによる担任制度、オンラインによる体験活動、楽しさを共有するチャット部活に参加するという事業である。全国で209人が応募したうち、さいたま市は53人が応募している。「OjaCプロジェクト」によって学習を始めた人数が全国では177人、さいたま市では45人である。全国でも、さいたま市でも85%ぐらいの参加率であった。「OjaCプロジェクト」に参加して、学習を始めたさいたま市の児童生徒45人のうち、各学校において、指導要録上の出席扱いをした人数は37人、学習評価に反映した人数は、12人であった。学習評価については、「主体的に学習に取り組む態度」として評価をした、動画を視聴しながら児童生徒が作ったノートから取組を評価したという報告があった。さいたま市からは、チャット部活に19人、応募人数の53人に対する35.8%が参加した。また、体験活動については、応募人数に対する28.3%にあたる15人が参加した。チャットでの担任は、在籍校の担任ではなく、「OjaCプロジェクト」の担任である。この担任とのやり取りについて、既読となったうち、週1回以上の返信があった児童生徒はさいたま市で応募人数に対する36.9%にあたる19.6人である。指導要録上の出席扱いや、学習評価の反映について、さいたま市では、民間施設等に通う児童生徒、ICTを活用した学習を行う児童生徒について「不登校児童生徒の指導要録上の出席扱いに関するガイドライン」を作成しており、各学校にも周知している。しかし「OjaCプロジェクト」での学習を出席扱いとしなかった、できなかった理由は、ログインの記録がなかった、デキタスへのログインだけで、学習の実績がなかったからであると報告がある。また、学習評価に反映しなかった、できなかった理由は、当該学年の学習履歴がなかった、学習履歴はあるが、問題への取組がなかった、学習履歴は確認できたが、定期テスト等への取組がなかったからであると報告がある。
 これらの取組の結果を踏まえると、1人1台端末を使って、学習の場や、部活の場、チャットを使った担任など、様々な場を提供したが、不登校児童生徒の一人一人の状況が様々であるため、なかなか不登校児童生徒とつながり切れない。また、学校との情報共有が難しい場合もあることが、明確になった。つまり、不登校児童生徒への支援の充実のためには、不登校児童生徒一人一人や、保護者と何とかつながること、教職員にも、取組に対する理解をさらに求める、教職員との信頼関係をつくることが重要である。
 そこで、さいたま市における不登校児童生徒への支援の充実のため、令和4年度から「不登校等児童生徒支援センター」、通称「Growth」を設置する。Growthでは、不登校児童生徒だけでなく、年々、さいたま市でも増加している市立の小中高等、中等教育学校の長期欠席の児童生徒を対象として、支援を行っていく。Growthの設置の目的は、不登校や病気等で長期欠席をしている児童生徒に寄り添い、ICTを活用した学習支援、訪問相談等を実施し、児童生徒の社会的自立を目指していくことである。具体的には、例えば、1人1台端末を活用して、小中学校別に、国語、算数・数学、英語、グローバルスタディーのオンライン授業を行うこと。また、学びの習慣が確立していない子供に対して、学習への興味関心を持てるような工夫した楽しいオンライン授業を配信したい。併せてZoom等を活用して、個別の学習相談や、目標設定等のサポートをすることを考えている。また、社会性や協調性を育むということを狙いとした、オンラインホームルームや、オンライン昼食会、日帰り体験活動等、児童生徒が活動を通じて交流する機会を提供したい。さらに、様々な悩みを抱える児童生徒や、保護者との信頼関係を構築するため、市内6か所にある教育相談室においての来所相談・電話相談に加え、オンラインでの相談や、学校や家庭等への訪問による支援なども計画をしていきたい。保護者に対しては、市内6か所の教育相談室で開催している子育て学習会をGrowthでも案内し、保護者同士のつながりをつくって、孤立感や不安感の軽減を図っていきたい。学校との連携については、出席扱いに関するガイドラインの周知や、児童生徒が通っているフリースクールに、校長や学校の職員が出向いて、学習状況等の確認を各学校でしている。また、教育委員会の職員、教育相談室の職員も、児童生徒が通っているフリースクールには、必ず1度は足を運んで、情報交換をしており、フリースクールとの連絡協議会も行っている。このような取組も含め、指導要録上の出席扱いについては、各学校がさらに認定できるよう目指している。さいたま市教育委員会としては、学校外の施設において、一生懸命、社会的自立に向けて努力を続けている児童生徒を支援をしていきたいと考えている。来年度、新たにGrowthを設置することにしており、学習評価に反映するための方法等ついても、さらに学校と協議をし、児童生徒の個々の状況を把握し、取り組んでまいりたい。
【座長】  質疑の時間とする。
【委員】  江川委員がおっしゃっていた学籍簿は、フリースクールに学籍簿を作るというイメージなのか。
【委員】  学籍簿がない子供は、外国籍の子供たちであり、その学区には在籍はしているが、実際、教育委員会にも登録されておらず、小学校にも行っていない子供の事例を述べた。
【座長】  市町村によってタイムラグが出たり、学籍簿に載せるのが遅れたりということはしばしば見られる事例である。どれくらい全国にフリースクールがあって、そのうち組織化できているのはどれぐらいか。
【委員】  文科省が2017年に調査した時、フリースクールは約430か所あったと思うが、我々の実感としては、現在、700から800くらいのフリースクールが全国にあるのではないか。フリースクールの規模感としては、スタッフが1.5人、通う児童生徒の人数が概ね20人以下のところが多い。都市部ではもっと大きい規模のフリースクールがある。保護者がスタッフになったり、雇用されている方の場合もあり、多様である。フリースクール全国ネットワークに加盟しているフリースクールは全体の約10%であり、我々のところに通っている不登校の児童生徒に関しては、約1,200人であると思う。
【委員】  大事なのは出席扱いにすることではなく、学びの保障をすることである。文部科学省が示している「不登校児童生徒が自宅においてICT等を活用した学習活動を行った場合の指導要録上の出席の取扱いについて」の中で、保護者と学校との連携や訪問等による対面指導、計画的な学習プログラム、校長が状況を把握しているかという要件があり、鳥取県では、この要件に沿う形で、ICT等を活用した自宅学習支援を実施し、出席扱いを認めている。さいたま市では、かなり出席扱いとした人数が多いようだが、出席扱いについての考え方を教えていただきたい。
【発表者】  出席扱いについては、さいたま市においても、文部科学省が示したガイドラインと同様のガイドラインである「自宅においてIT等を活用した学習を行う児童生徒について」を作成しており、鳥取県とほぼ同じ基準である。
【委員】  江川委員の発表の中で、支援の制度が活用しにくく、できていないという課題があった。どのようなものであると民間が活用しやすいのか。
 さいたま市教育委員会の発表の中で、指導要録上の出席扱いとしなかった、学習評価に反映しなかった具体的な例として、当該学年の学習履歴がなかったというものがあった。これは、学校を休んでいたことで、当該学年よりも前のところから復習したい児童生徒が多くいたのではないか。そのため、出席扱いや学習評価についてもう少し柔軟性があると良かったのではないかと思う。もう1つ、Growthは、もともとある教育支援センターとは、また別に創られたのか。市の教育委員会が運営する者なのか、それとも様々な組織が統合されているのか。
【委員】  支援について、申請主体が市町村であることが多いため、市町村が計画書を作って、議会を通して申請しなくてはいけない。議会を通すことは、実は力業であり、おおむね、既存の枠の中に当てはめる形で終わってしまう。申請対象が、民間団体等であると、我々は自由に、自治体を経由せずに申請できる。申請対象が民間である支援事業がないという実態がある。
【発表者】  まず、学習評価について、やはりここは大変難しい。児童生徒の個々の状況が違うため、該当学年から学習が始められる児童生徒もいれば、そうでない児童生徒もいる。該当学年から学習を始められない児童生徒の評価を、どのように学校でしていくかは、課題であり、研究をしていかなければいけない。また、教職員の理解も得なければいけない。Growthについては、教育委員会が主体であり、教育相談室、教育支援センターとは別に設置するものである。
【座長】  さいたま市は、教育支援センターが別途あるので、Growthという形で、今度新たに設置される形になるが、一般的な教育支援センターとGrowthは、何か特徴的に違いはあるか。例えば、他で同じような視点で作る時、教育支援センターの枠の中で作って、何か支障がありそうか。
【発表者】  教育支援センターは、通室を基本として支援をしていく。Growthは、相談につながり切れない、通室もできない、家でひきこもりがちになっている、または欠席日数が長期になってきている児童生徒に、家にいながら人とのつながりや、学習の喜び等を提供できないかという取組を、来所相談や電話相談とは別に重点的に行っていくものである。
【座長】  教育支援センターは、実際に通ってくる児童生徒のための支援機関という傾向が強かった。しかし最近では、教育支援センターにSCやSSW等を配置し、教育支援センターでのノウハウを学校現場に還元することや、アウトリーチ支援も視野に入れることが強調されている側面もある。既存の教育支援センターの枠を越えた形で、有効なものとして全国に発信するかは、1つのテーマだろうと思う。
【発表者】  現在も設置している教育相談室にも、心理職や精神福祉士はおり、訪問相談等も行ってはいる。ただ、長期にわたってひきこもってしまっている児童生徒へ支援の手が伸ばせないという現実があるため、手厚くしたい。
【座長】  さいたま市教育委員会は、分析の上で効果的な取組をしている。不登校の発生率の低さについて、どのような取組がベースにあるのか、全国的にも関心があるテーマだと思う。
【委員】  指導要録上の出席扱いや学習評価への反映は現状の大きな課題である。出席扱いそのものが重要なのではなく、こうした活動も学習活動として位置づけることを意識することが重要である。Growthの中で、ICTを活用した学習支援と対話のプログラムの実施をするということだが、主にオンラインでこのような活動を保障するというと、ますます、出席扱いや学習評価として位置づけることが大きく関わってくると思うため、柔軟な出席扱い、学習評価のあり方を考えて発信していただきたい。
【座長】  事務局から、資料3についての説明をお願いする。
【事務局】  学校外での学習の把握方法や出席扱いについての実態を文科省において、全国の教育委員会から聴取した。その結果として、各都道府県の取組の中で、主に特徴的なことについて説明する。
 まず、出席扱いの考え方を整理した例として、不登校児童生徒への支援に係るモデル校に対して、民間団体における出席扱いの要件やチェックリストを紹介している例があった。 あと、観点別学習状況の評価のそれぞれについて不登校児童生徒が、ICTを活用して学習を行った場合に、どのような点に留意すべきかについての考え方を示している市町村もあった。次に学習の状況の把握の工夫として、民間団体との連携協議会を毎年実施している例や、不登校児童生徒が通う民間団体に、教育委員会の担当職員と学校職員が訪問して、学習内容の把握の仕方など、連携の具体について確認している例がある。また、保護者の同意を得た後に、民間団体と、当該学校、市町村教育委員会の三者でケース会議を開催して、情報交流をしている例、民間団体から、定期的に当該児童生徒の通所状況、学習内容を学校に報告されているという例もある。千葉市については、民間団体が実施するような体験活動というものが、各教科の狙いに沿った内容となっているかを確認して、出席扱いとしている事例がある。教育支援センターに通っている子供を、担任や不登校対策コーディネーターなどが訪問しており、児童生徒の様子を確認し、情報交換をしている例や、ICTの活用に関しては、ICT活用支援員を配置し、学習内容を把握して、連絡会で県、市町村、学校と情報共有を行っている例もある。町が導入しているオンライン教材の取扱い会社が、各学校に対して子供の学びの状況を、オンラインで把握する方法を伝達していて、教育支援センターに通う児童生徒については、その方法を利用しながら、学習内容の把握に努めている例もある。また、ICT学習支援員が家庭を訪問し、児童生徒に対して支援を行った状況を、月別報告書にまとめ、該当校に送付しており、対面指導を行った日数も伝えて、指導要録には、出席扱いとして記入してもらうよう依頼をしているケースもあった。あとは、オンラインの双方向授業を動画として作成し、アーカイブ配信をして、いつでも見られるようにしているところもある。
 課題については、学校等と施設では、学習内容とか、指導者、評価に関する考え方等が異なるので、学習評価は難しいという意見がある。また、教育支援センターの立地によれば、遠隔地に住んでいる児童生徒は、通学のための交通手段が確保できず、通いたくても通えない児童生徒が存在する。また、民間施設における支援の内容が非常に様々であるため、それを把握し、連携するのに非常に時間がかかるという課題もある。また、ICTの活用については、積極的に活用することで、不登校児童生徒の登校意欲が減退してしまうのではないかという考え方を持っていたり、ICTを活用した学習の支援の在り方を、しっかりと研究・検討していかないと、対面でしか学べないことを、おろそかにしてしまうのではないかと懸念しているという課題もあった。
【座長】  今までのヒアリングやディスカッションの中で出てきたものを含めて、事務局が報告書の素案を準備している。今日は、必要な頭出しをして、次回は、ほぼ完成できる状態にする必要があるので、考えを聞きたい。
 不登校に関する調査研究協力者会議としては、前回は平成28年に「不登校児童生徒への支援に関する最終報告」をとりまとめた。今回は、不登校が右肩上がりで急増している、さらに新型コロナウイルス感染症の関係により、学校に通うということの意味づけ、ICTの活用も含め様々なことが変わってくる。そのような中で、この時期に取りまとめる報告書として、何を記載するべきか検討していかなくてはいけない。何か抜本的に新しいものというよりは、教育機会確保法の考え方等も含めて、しっかりと足元を固めることが大事である。
 併せて、さいたま市教育委員会の発表にあったGrowthでは、不登校だけではなく、長期欠席を視野に入れている。学校に来ているかどうか、出席扱いするかということではなく、本質的に、その子がしっかりと社会的に自立して、人生を歩んでくれるかというところが、ゴールである。これは病欠か不登校か、あるいは、出席か欠席かとかというのは、行政を運営する上では重要だが、トータルとして子供が自立できるかの方が重要。先ほどの事務局が説明した資料3に記載されている課題の中にもあったが、ICTを活用した学習について、例えば、出席扱いという部分でも議論の余地が多々あると思うし、学習内容の獲得という意味でもあると思うし、対面であることとないことについては研究の余地が多々ある。本質的に対面学習とICT学習について、何を落としていて、何を入れ込めているかというところが、よく分かっていない。不登校という概念も、周辺が正確に切り分けられない。新型コロナウイルス感染症によって学校に来られない状態という新たな長期欠席の考え方も入ってきた中で、一人一人の子供たちを、どこまで自立させることができるか。
【委員】  資料3に記載されている課題の中の下から3つ目。ICT等の活用による出席扱いを積極的に活用することで、不登校児童生徒の登校力が減退してしまうことを懸念しているということについて、私の学校を含めて近隣の学校でも、この課題というのは、もう大きく実感されているところだと思うが、そもそも学校の魅力が、このようなことで減退してしまうという発想を変えていかないといけない。学校での対面学習とICTを活用した学習は、置き換えられるものではなく、対極に位置するものでもない。魅力を学校が、主体的に発していくところに目を向けていかなくてはならない。
 報告書の素案の2ページの下段から3ページにかけて見た時、子供たちが、非常に社会の現象に振り回されているという読み方ができるが、むしろこれは逆ではないか。子供たちの現状に、学校が取り残されているのではないかということを、学校内から声を上げていかないと、なかなか大きな変化にならないのではないか。例えば、当該学年の学習内容が確認できないので、出席にならないという発想が学校でまかり通ってしまう全体的な価値観を、今回の報告書で変えていかなくてはいけないのではないか。例えば、私が勤務している学校では、小学校・中学校での学習経験が十分でない生徒が入学してくるため、足し算、引き算から学習する。これが、高等学校の数学1に準拠していないじゃないかと言われたら、元も子もない。もっと柔らかく考えていかないと、学校がついていけていない。
 今回、1番、私たちが伝えなくてはならないのは、大丈夫だよということ。本人はもちろん、保護者の方々に、不登校でも悲観することはない、これだけたくさんの選択肢もあるし、君の将来は幸せなものになるんだよというメッセージを1番伝えるべきで、環境は、その先からついてくるものでなければならないと思っている。
 今回、ずっと読み込んでいて、不登校が問題行動であると捉えかねない表現が、非常に減ってきているが、大きな問題点としては、義務教育を対象とした発想というのは広まっているが、高等学校は義務教育ではないと言いつつ、今は9割以上の子供たちが高等学校に行っているのに、高等学校に入学すると支援が切れてしまう。高等学校の不登校生徒への支援についてもどこかに入れていく必要があるのではないか。また、先ほどの江川委員の発表の中にあった、相談件数についての資料の中で、発達障害に関しての質問がきわめて多く来ていた。発達障害への無理解、曲解されてしまうことに問題が存在するのであって、発達障害に対しての書きぶりも、今回の報告書の中で触れていく必要があるのではないか。細かいところだが、不登校の要因に関する認識に、学校と児童生徒の間で、やや乖離が見られるとあるが、これは大きな乖離が見られていると思う。こういう細かいところは、後で事務局にメールで、しっかり私の意見は述べたいと思うが、もっと思い切って、メッセージ性のあるものに変えていく必要がある。
 つまり、魅力ある学校づくりについて、何が魅力なのか、学校はどう変化していくべきかが、大きな1つの柱となるべき。もう1つは、例えば、フリースクールやICT等学校以外の選択肢が、これまでのようなセーフティーネットの位置づけから、もっと積極的選択肢として、子供たちの多様な学びを広げていく発想を報告書に入れるべき。細かいところだが、不登校の要因に「無気力」という表現が入っているが、過去の議論の中で、この「無気力」というものに対しての意見も出たところであるため、どこかに加えていく必要があるのではないか。
【事務局】  「無気力」について、「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(以下、「問題行動等調査」という。)における不登校要因の項目について、より不登校児童生徒の状況や背景を的確に捉えて、活用しやすいものに変更すべきだという御意見があったため、今後、様々なエビデンスや、有識者の先生方の意見を踏まえて、必要に応じて、より適した調査項目になるように改善を図るということは記載した。
【座長】  時間が限られているため、発言時間が足りなかった、あるいは、整理しておきたい部分については、箇条書き等で事務局のほうへお送りいただきたい。
【委員】  今、不登校がどんどん増えていく中で、不登校の子供たちの学びの場をどのように、多様な場として確保していくかという視点を一方に持ちながら、学校の魅力化という2つを、同時進行していくという視点が必要である。今回の取りまとめ案には、なかなかフリースクールという文字が出てこない。フリースクール全体は1万人程度の子供たちが通っているというのが、我々の理解であり、不登校児童生徒の全体の20%くらいかもしれないが、この子供たちの学びの場づくりに対して、文科省としてどういう立ち位置を取るのかを明確に位置づけていただきたい。具体的には、学習支援の場づくりの部分で、こども家庭庁について記載されており、不登校の問題は、こども家庭庁がどのように取り扱うのかと誤解されるような表現もある。こども家庭庁と連携することは、大事なポイントだとは思うが、あくまでも学校に通えない子供なので、そこは、文科省は手放さないでほしい。その中で文科省として、学校外の学びの場で、フリースクールは、あくまでも文科省との連携の中で、不登校の支援をやっていくんだというような立ち位置を、明確に取ってほしい。
 ぜひ、不登校支援の学習の場づくりのプログラムをフリースクールの側から提案させてほしい。そしてその提案が通れば、予算化されるというようなスキームをつくってほしい。そうすると、民間の力を発揮する余地が増えていく。
【事務局】  1点、付け加えたい。今回の会議の議題がフリースクールとの関係、ICTとの関係についてであったため、今回の議論を踏まえて、素案を再度、追記するという位置づけである。
【委員】  問題行動等調査の不登校要因の項目については、ぜひ検討をよろしくお願いしたい。要因についての分析が進まなかった1つの理由が、この問題行動等調査の項目ではないかと思っていた。子供たちを理解し、さらに支援を進めていくという視点をもつために、調査を行う学校や教員の理解も深まるような項目、要因・拝啓の理解につながるような項目にしてほしいと感じている。
 「低学年の時期に不登校だった児童生徒について」という記載があるが、家庭支援、保護者支援も含めて、幼児教育との連携を、盛り込んでいただきたい。
 もう1つが、SOSの出し方教育についてである。いかに早く大人が気づくかということもあるが、早い段階で、子供たちに苦しかったら相談していいんだよという教育をしていくということは大切。
【委員】  スクールソーシャルワーカーとして、学校で実際の不登校支援に当たっていて思うことは、学校が様子を見ている間に、何年か経ってしまっているケースがあり、保護者が相談に行けば情報を得られるが、そうでなければフリースクール等を知らないまま時を過ごしてしまって、いつの間にか、卒業を迎えることがある。誰かが責任を持って、この子の教育をしっかり保障するということを確認していかないといけない。つまり学籍を預かった学校は、ありとあらゆる方策を使って、この子の学習保障をしていかなければいけないと明記してほしい。だから、ICTを活用した学習の評価が難しいというのではなく、評価をするんだというところからスタートをしてほしい。
 あともう1つ、報告書の中に書かれている、専門職の扱いや教員の研修の話について、私はスクールソーシャルワーカー、もしくはスクールカウンセラーの立場を考えると、そういった機会が、会計年度任用職員という立場で、十分に与えられている状態ではないということと、知見を重ねたとしても、5年で雇い止めになっていくという現状があると、不登校の子供たちや保護者が頼る相手が、とても頼りない存在になっている。本気でこの子たちを救っていこうと思ったら、専門職の育成、もしくはスクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラー、不登校支援コーディネーター等の定数化というところも、これから先、議論しなければならないということを記載してほしい。
【委員】  民間施設の利用等の保護者負担が大きいという問題に関連して、福岡県には、私立学校の私学協会と、私立学校の教育振興会が一緒に運営している学習支援センターが県内に4か所にあるが、ここには教員が常駐している。技能教科に関しても、非常勤の教員が入って、これを県の予算で運営している。それぞれのセンターの教員が、私立学校で不登校になった子供たちを、ここに預けると、在籍校の教育課程に準じて、個々のプログラムを組んでもらえ、かつ在籍校である60校が、出席扱いとするという教務内規を作り合って、全体の理解の中で運営している珍しい事例ではないか。先ほどのカウンセラーの増員も含めていくと、行政に対して、しっかり予算をつけていただくための提言も、積極的に発信していかないといけないのではないか。
【委員】  教育機会確保法について、予算措置がないため浸透していかないという部分があることも表現ができたら良いと思う。
 もう1つ、フリースクール等に通っている児童生徒に関して、彼らが恩恵を受けるべき義務教育費が、行けなくなった学校に100%渡っていて、彼らが実際に学んでいるところには、全く渡っていないという状況が、いまだに続いていることに関しても、今すぐ結論が出るものではないと思うが、深刻な課題である。お金が払える家庭に生まれた子供と、そうではない子供の間に、大きな格差が生まれることについては、課題として向き合うことについて記載していただきたい。
【委員】  ICTを活用した指導をしていくと、登校意欲が減退してしまうのではないか、そもそも学校に行って学ぼうという意欲を失わせたのではないかという意見は、学校の現場にもあって、私たちが乗り越えて行かないといけない部分だと思う。例えば、不登校の子供たちに何を認めるかということだけではなく、登校できている子供たちにも、教室に行って学んでも良い、自宅でも学ぶことができる、学校外、自宅外の場所でも学ぶことができるということが選択肢として認められる社会にならないかと感じる。東京都でも、新型コロナウイルス感染症の影響で、対面による指導とオンラインの指導を適切に組み合わせて、ここを乗り切っていこうとしているが、新型コロナウイルス感染症の影響が終わったら、ICTを活用した指導の促進がなくなってしまうのではないかと心配している。どういう状況にあっても、対面の指導の大切さは変らないし、オンラインで学ぶことができる選択肢も重要であるし、ということが当たり前に、全ての子供に認められるという形ができたら良いのではないか。
【委員】  「魅力ある学校づくり」として、例えば少人数や、チーム・ティーチング、子供のニーズに応じた柔軟な指導体制の仕組み、保健室、あるいは相談対応、ICTの活用というような、学校がもっと柔軟性を持って、子供に応じた対応ができるような形というところが、予防的なスタートとしては、大切だとは思っている。なので、最初に学校の柔軟性について書かれていて、その流れの中に、本人や保護者がSOSを出せるような環境づくりをするということが書かれ、その後、学校の体制の話という順番ではないか。なので、この「魅力ある学校づくり」では、学校に様々な子供たちがいる中で、まず柔軟な対応をしていくことの大切さを、書いていくことが大事であると思う。SOSが出せない児童もいるということが埋もれないよう、表に出していくべき。教育機会確保法の周知・浸透については、この流れに入れるのではなく、前段に先に述べておいて大前提でそういう法律があるという中で、学校が予防的、組織的な対応をして、学校サイドの仕組みづくりをするという流れでまとめられていくと良い。
【委員】  例えば、学校がもっと柔軟に対応するためには、人が必要である。人を増やすためには、お金が必要である。専門職、スクールカウンセラー等について、15年ぐらい前までは、私が勤めていた学校では、都から配置される週1日しかいなかった。今勤務している大田区の学校では、区のスクールカウンセラーも入れて週3日スクールカウンセラーがいる。専門職の方が、たくさん関わってもらえると、戦力としては大きいが、全国に向けて調査をすると、人がいないという話が色々なところから聞こえてくる。つい最近も、教員自体が足りないという話が結構ある。だからそのことも頭の中でイメージしながら、様々に、こうすると良いということを書かないと、絵に描いた餅のような報告書になってしまう。
【委員】  今、フリースクールの利用費は、平均3万3,000円である。その3万3,000円を払えない子供たちというのは、結構少なくなくて、その子供たちの教育の機会をどうするのか。学校に払われているお金の中から、経済的困難な子供たちの学習費用を捻出できないだろうか。もしくは、生活困窮者の学習支援の予算の中を組み替えて、フリースクールに通う子供たちにも適応できないだろうか。我々が一番困難を抱えているのは、経済的困難を抱えて、社会的なネットワークが弱く、かつ不登校、もしくは高校を中退した子供に対して、どのような場づくり、どのような支援策をつくっていくかが、一番大事だと思っている。それが、将来の日本の貧困の再生産を防ぐ1つの方向性でもあると思っている。経済的な部分で学校外の学びを考えるということも記載できると、抜け漏れのない、誰もが参画できる社会への1つの道しるべになるのではないか。
【委員】  教育機会確保法の考え方の浸透については、不足している。学校も世間一般にも、この法律自体も知られていない現状があるので、正しく理解してほしい。問題ではないというだけではなく、子供たちが悪いのではなく、もしその子供たちや保護者が悩んでいるのであれば、支援は必要だということが抜け落ちており、何もしないで良い等の誤解があるので、教育機会確保法の理念を、どう周知していくか。正しく理解されていないから、本人が追い詰められたり、自己否定をしたり、保護者が悩んだりということがあるので、国主導で周知していきたい。
 最終的なゴールである社会的自立という言葉をどう説明したらいいのかが難しい。自立という言葉が、厳密に受け取られ過ぎると、とても遠いゴールのように見えてしまうし、将来的なゴールとしては間違ってはいないが、具体的にどうしたら良いのか、短期的に何が必要なのかどうも見えなくなる。あと、頼らない、依存しないことが自立かという誤解を、もし含んでいるとしたら、そういうことではなくて、自分のしづらい現状を分かって、人に「助けて」って言えることも自立の1つかと思うので、社会的自立という言葉について、説明があると良いと思う。
【事務局】  私もその点は非常に悩んでおり、一番最後が空欄になっているのは、それが1つ大きな理由である。なので、そこに、どのような将来的なビジョンや、社会的自立という言葉の持つ意味、将来的にどうしていくかという道筋について、先生方に何か御知見があれば、御意見をいただきたい。
【座長】  福祉をメインにしている人間から見ると、障害のある方、ない方、あるいは高齢者を含めて、自立という問題は、かなり議論の歴史はあるかと思う。ただ制度的に、例えば「子どもの権利条約」や、人生全部の自立というよりは、教育の目標として、何を設定するかということが絡むだろうと思う。
 それから、1つのキーワードとして出ている「魅力ある学校づくり」について、魅力があれば、実質も備えているものだと思うが、情緒的な話だけではなく、機会確保法を背景に置きつつ、多様な不登校の状況をしっかりと見切った上で、一番適切な支援を学校が選んで提供するだけではなく、保護者や民間団体等と協議した上で、子供の最善の利益をどのように実現していくのかという表現をしてほしい。「魅力ある」にとどまらず、かといって柔軟といっても、ノウハウやシステムも含めたところから書き出していくという姿勢が求められる。
 一方で、そもそも学籍簿すらもない、出生届も出ていない、あるいは家族・本人も、全く学校に関する方向性や自立を考えていない場合がある。重篤なヤングケアラーや虐待は、典型的かもしれない。そのような場合も、この不登校の中には包含されるので、一旦は学校システムが、あまねく全ての子供たちの自立や幸せについてしっかりと担いつつ、動かしていくということを片方の視野に置きつつ、民間を希望しているがお金がないとか、学びが保障されているかということにつながっていくという指摘はしておく必要があると思う。 不登校の子供、あるいは保護者に、条件を整えれば、全ての子供の最善の利益が確保できるかというと、必ずしもそうではないこともあるため、こども家庭庁との連携の話にもなるかと思いますが、どのように書き込むか意識する必要がある。問題行動等調査、あるいは、前回行った不登校の子供へのアンケート等々を見ていても、答えが1つではないというところが、特徴かと思う。例えば、特別支援やハイパーセンシティブな子供の場合も視野に入れて欲しいということも含めて、いろんな意見があるが、まさに子供たちのニーズ1つ1つを正確に理解しながら、1番適切な支援につなげていく、あるいは、そのような環境を整えることは忘れずに、いろいろな施策を載せていけたらと思う。
【委員】  一部の生徒たちを対象にしたメッセージだと、取られてしまっている可能性がある。平成28年の議論の中で、「不登校の子供たち」という主語が、議論の中で「全ての子供たち」に変わっていったのを記憶している。ですから、不登校とそれ以外の子供たちを、対極化、分極化して考えないということが、大きな議論の出発点になる。だから全体の学校、社会に向けたメッセージにしていく必要があると思う。「経験等により得られた特定の指導・支援方法が適切な場合もあれば、個々の児童生徒の状況によっては適さない場合もあることを、学校や教職員等、不登校児童生徒に関わる関係者」という形で、また特定された表現がある。こういうところは、ノーボーダーにして、主語は、学校や教職員で、通用するはずであるし、皆に宛てたメッセージにすることによって、少しでも現場での浸透を図ることが大切であると思う。いかにして「全ての児童生徒が楽しく」というような主語に変わっていったかという、前回の議論は、折に触れ思い出していかないと、メッセージがぼやけてしまうと思う。
【座長】  事務局より、今後の予定について話す。
【事務局】  この素案は、この後、今日のヒアリングの内容を追加し、先ほどいただいた意見も加味しながら修正した上で、先生方にお送りする。お送りしたものについて、書面審査という形で、今後、報告書についてブラッシュアップしていく過程を取りたい。
【座長】  本日はこれで終了する。

―― 了 ――

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