不登校に関する調査研究協力者会議(令和3年第3回)議事要旨

1.日時

令和3年12月21日(火曜日)14時00分~16時00分

2.場所

Web会議(Webex)

3.議題

  1. 家庭教育支援について
  2. とりまとめに向けた論点案について
  3. その他

4.出席者

委員

伊藤委員,江川委員,沖山委員,小林委員,斎藤(環)委員,齋藤(眞)委員,佐藤(博)委員,佐藤(博之)委員,白井委員,野田座長,原委員,笛木委員,三橋委員,安田委員,渡邉委員

文部科学省

伯井初等中等教育局長、江口児童生徒課長,大野児童生徒課課長補佐,壬生家庭教育支援室長補佐

5.議事要旨

【座長】  只今より、第3回不登校調査研究協力者会議を開催する。
 本日は、まず令和2年度の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(以下、「問題行動等調査」という。)の結果について、前回の質問を事務局より補足をする。家庭教育支援について、文部科学省総合教育政策局地域学習推進課家庭教育支援室より政策関連を御説明いただくと同時に、佐藤委員より民間団体である「ペアレンツキャンプ」の実践について御発表いただく。その後、1時間程度ディスカッションをする時間。
 事務局より、問題行動等調査に係る質問への回答をする。
【事務局】  問題行動等調査における長期欠席の調査方法について、説明する。まず、欠席理由の区分等について、資料1の1ページ目にある表は、実際に学校において長期欠席の人数を記入していただく調査票の中の該当の部分を抜き出したものである。従来、病気、経済的理由、不登校、その他という4つの分類で調査をしていたが、令和2年度については、このオレンジの枠の「新型コロナウイルスの感染回避」を新たな区分として設けて調査を実施した。
 また、同時に、従来は欠席日数30日以上を長期欠席としていたが、令和2年度については、「児童・生徒指導要録」の「欠席日数」だけではなく、「欠席日数」と「出席停止・忌引き等の日数」の合計の日数が30日以上である場合を長期欠席として調査をしている。これは新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、感染が不安なために学校を休ませたいという相談があった場合、合理的な理由があると校長が判断する場合には、「欠席」ではなく、「出席停止・忌引き等」の欄で処理することが可能だという考え方を文部科学省から示したため、長期にわたって登校していない児童生徒の実態を把握するに当たっては、「欠席日数」だけではなく、「出席停止・忌引きの日数」も併せて調査をすることが必要であるという考え方で、この方法で実施した。
 2つ目、長期欠席の理由については「欠席日数」、「出席停止・忌引き等の日数」、どちらで計上されているかにかかわらず、実際に登校しなかった理由によって学校が選択する形で回答してもらっている。例えば、新型コロナウイルスの感染が怖い、不安なので登校しないという場合には、その地域の感染の拡大の状況によって、校長の判断によって「欠席」で処理されている場合もあれば、「出席停止・忌引き等の日数」で処理されている場合もあるが、どちらであるかは関係なく、その子が来なかった理由に基づいて、5つの分類の中から学校が選択をする。それから、理由が複数ある場合ももちろんあると思うが、これは調査上の整理として、従来と変わらず、主な理由を一つ選択することになっている。
 長期欠席の理由の定義は、以下の通り調査票に示している。「病気」については、本人の心身の故障等により、入院、通院、自宅療養等のために長期欠席した者である。「経済的理由」については、家計が苦しく教育費が出せない、児童生徒が働いて家計を助けなければならない等の理由で長期欠席した者である。「不登校」は、何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景によって、児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にある者である。新しく設けた「新型コロナウイルスの感染回避」については、コロナウイルスの感染を回避するために、本人又は保護者の意思で出席しない者、及び医療的ケア児や基礎疾患児で登校すべきでないと校長が判断した者であり、これは学校に行くことで感染することを回避するものであるため、例えば、風邪の症状があり、コロナに感染している可能性があるため、学校で感染を広げてしまうことを防ぐために登校しないという者は、「新型コロナウイルスの感染回避」ではなく、「その他」に計上する。「その他」については、「病気」、「経済的理由」、「不登校」、「コロナの感染回避」のいずれにも該当しない理由によって長期欠席した者であり、例えば、保護者の教育に関する考え方や、家庭の事情によって長期欠席している者、外国での長期滞在、実際に熱が出た、コロナウイルスに感染した、濃厚接触者になった等の事情によって学校教育法又は学校保健安全法に基づく出席停止となったことで登校しなかった日数が30日を超えたという場合である。
【座長】  各項目についての理解の仕方が、それぞれの方で若干ずれがある可能性も高いので、長期欠席や長期欠席の理由の1つとしての不登校に限らず、他との切り分けに関して御質問あれば、発言して欲しい。
【委員】 不登校の理由は、必ずしも正確なものが出てきているとは言えないと思っている。例えば、教員側の発言が元で、子供が学校に行けなくなったことが、家庭の事情に分類されてしまう等、現行の調査で続ける限り、いわゆる学校側のミスで子供を不登校に追いやったという問題は浮かび上がってこないのではないと懸念している。そのため、調査そのものについて根本的に考え直さなければいけないのではないか。根拠が揺らぐ調査で出た数字から対応策を考えても、実態と乖離したものになっているような気がする。
【座長】  御意見として、お引き取りする。同時に、特に要因部分等について、調査に対して回答する際の留意事項をご教示いただきたい。
【事務局】  長期欠席の調査の中で不登校に計上された児童生徒については、さらに詳細を把握する調査項目が続いており、不登校の要因は、先ほどの「病気」、「経済的理由」、「不登校」、「コロナ」といった長期欠席の理由とは別の項目として調査をしている。不登校の要因の調査票については、学級担任など当該児童生徒の状況を最も把握することができる教職員が、本人や保護者の意見を踏まえ、スクールカウンセラー等の専門家を交えたアセスメントを行った上で記入することとしている。ただ、この調査のために、一人一人の不登校児童生徒について、必ず本人に書き込んでもらう等をしているわけではないため、あくまで学校が捉えた要因として回答いただく。
【座長】  本人や保護者、学校に入っている専門職等で不登校の要因を見るように文科省としては依頼をかけているが、学校側のデータの取り方として、限界はあるのかもしれない。
【委員】  県の教育委員会という立場では、不登校について、社会的自立に向けての支援が入っている児童生徒と、支援が入っていない児童生徒を分けて見ることは大事だと思っている。実際今の調査では、教育支援センターやフリースクールに行って出席扱いになっている人も、全て不登校として数えられている。例えば、不登校数(出現率)の内訳として出席扱いになっている数を示すなどすれば、不登校支援の状況等も合わせて見えてくるとともに、不登校の増加だけでなく、さらなる支援にむけた具体策が見えてくる調査になると思う。それぞれの不登校児童生徒の状況が見えやすい調査になるようもう少し検討していただきたい。
【座長】  それでは、資料2について、家庭教育支援室より御説明いただく。
【発表者】 まず、家庭教育支援について簡単に御説明する。
 家庭教育については、教育基本法第10条に規定があり、家庭教育自体は、父母その他の保護者が子供に対して行うものとなっており、この教育については、父母及び保護者が第一義的な責任を有する。その上で、行政については、第2項に規定があり、家庭教育の自主性を尊重しながら、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずることとなっている。
 その上で、今、「地域における家庭教育支援基盤構築事業」を行っている。こちらは学校教育の外における、いわゆる社会教育の分野における家庭教育の基盤を地域でつくっていくものである。具体的には、家庭教育支援に関する推進体制の構築と、家庭教育支援に関する取組の実施、そして、真に支援が必要な家庭への対応を行っている。まず家庭教育支援に関する推進体制の構築として、家庭教育支援に関わる地域の多様な人材の養成、家庭教育支援員等の配置、「家庭教育支援チーム」の組織化を行っている。その上で、家庭教育支援に関する取組の実施として、保護者への学習機会の効果的な提供、親子参加型行事の実施、家庭教育に関する情報提供や相談対応を行っている。最後に、真に支援が必要な家庭への対応として、家庭教育支援員等に対する研修や、保護者に寄り添うアウトリーチ型支援を行っている。家庭教育や子育てに関心が高い家庭に対しては、従来の学びの場の提供や情報提供という形で対応しており、虐待が疑われるような家庭への対応としては警察や児童相談所等の専門的な支援に委ねる。不安や悩みを抱える家庭は子育てに関する悩みや不安を抱えながらも身近に相談できる相手がいない等、地域社会から孤立してしまいがちな家庭が含まれており、このような家庭に対してアウトリーチ型の支援を行う取組を進めている。
 茨城県坂東市の「家庭教育支援チーム」の事例である。こちらの取組の背景・ねらいとしては、不登校や児童虐待、経済的困難等の主体的な家庭教育が困難になっている家庭が増加しているという背景を受け、就学前から18歳未満の子供を持つ家庭、不登校児童生徒を抱え、子育てに不安や悩みがある家庭に対してアウトリーチ型支援を行っている。具体的な取組内容としては、まず6月に不登校児童生徒の状況調査票をもとに学校側と家庭教育支援が必要か否かを意見交換し、支援が必要な家庭を仮選定する。そして、7月に、第1回推進協議会において、大学の教授等を招いて、専門的な視点の指導・助言を受け、支援家庭を決定する。9月に、学校現場とケース会議を行い、初回訪問は学校と事務局が同行して、支援員の訪問につなぐ。令和元年度の取組の成果としては、25家庭に訪問をし、そのうち56%、14家庭が登校するようになった。そして、延べの訪問回数は146回に及んでいる。具体的に何らかの改善・変化が見えた家庭が全体の8割であり、支援員と良好な関係を築くことができた、子供の環境を変える手段を検討できた、保護者と学校をつなぐ役割が担えたという成果が出ている。
【座長】  それでは引き続き、ペアレンツキャンプの不登校支援の取組を佐藤委員から御報告、御発表いただき、その後、一括して質疑をしたい。
【発表者】  昨今、不登校の子供たちに対する支援は、あらゆるケースに対応するために支援が多様化してきている。最初に家庭が相談する窓口は、学校や教育支援センターなどの公的な機関がほとんどであると思う。ペアレンツキャンプで支援を受けた家庭の99%が、最初に相談した窓口は公的な機関だったということがアンケートの調査結果で出ている。しかし、公的な機関での支援では解決できないようなケースもあり、このような場合は、民間機関が受け皿となっている状態である。公的な支援も民間の支援でも、子供への直接的な支援が多く、その子供を支える家庭や保護者への支援が十分でない状況である。実際、ペアレンツキャンプの支援を受けた保護者から、学校以外の居場所もあると言われたが、子供自身がそれを望まず、親としてどうすれば良いか分からないということや、子供とどう接すれば良いか、どのように子供を導いていけば良いか、親としてどうあったら良いかなど、具体的なアドバイスをもらえる機会が少ないという声がある。そのため、家庭に対する不登校支援としては、具体的なアドバイスが求められている。私たちが支援している子供たちの中で、全ての子供たちが学校に行きたくないというわけではなく、何とか行けるのであれば行きたいという声を聞くことは多い。実際聞いた声としては、学校以外のところに行くのが怖い、勉強の遅れを取り戻すためにどうしたら良いか考えると怖い等、全ての子供たちが学校以外の居場所を望んでいるわけではない。ケースによっては、学校以外の選択肢を取る必要はあると思うが、あくまで復学も選択肢の一つと捉える必要があると思う。具体的なアドバイスを求めている保護者や、学校以外の居場所を求めているわけではない子供に対して、家庭を支える家庭教育の支援と、子供を支えるアウトリーチ型支援手法である訪問カウンセリングを組み合わせて、復学を望むケースには、復学を目指すという支援を行っている。復学を果たすことだけでなく、継続的な登校に対しても支援していき、子供も家庭も支えるということで、子供たちの社会的な自立や、家庭の自立を目指していくことが、私たちの支援の目的である。
 支援前は、保護者と子供の歯車がうまくかみ合わず、お互いにどう接したら良いか分からないという状況になってしまっている。そこで、カウンセラーが保護者と子供との歯車がうまくかみ合うように、保護者には家庭教育支援、子供にはアウトリーチ型の支援を行うことで補助していくというイメージ。支援を卒業する頃には、保護者と子供との歯車が、支援がなくても、かみ合うことを目指す。私たちの支援は復学が最終目標ではなく、あくまで家庭と子供の自立を目指した支援である。
ペアレンツキャンプでは、家庭教育支援コースと復学支援コースの2つを用意しており、支援をしている。支援を始める時、まずメールで相談を伺い、メールからできる限りのアセスメントを行い、さらに電話カウンセリングにて詳細な家庭の状況を保護者からヒアリングする。その上で、支援がそもそも行えるのかという判断をする。支援ができないのにできると言って取り組んでしまえば、家庭に対して迷惑かけることや、不幸な状況になることがあるため、基本的に支援ができるケースしか支援は行わない。どうしても支援ができないと判断した場合は、他の支援機関を紹介することや、難しい場合はお断りするケースもある。
 家庭教育支援コースでは、家庭教育アドバイザーが1家庭に1人担当としてついて支援を行う。支援は、基本的には電話カウンセリングと家庭ノートチェック法という、独自の支援手法を用いる。担当のアドバイザーが個々の家庭の状況をアセスメントし、保護者とのヒアリング・カウンセリングの中で、子供に合った家庭教育について具体的にアドバイスをする。そして、保護者がそのアドバイスをもとに実践をし、その結果をカウンセリングの中で受け、さらに分析し、アドバイスして実践してもらう形で、円環的な支援を継続して行いながら、家庭教育アドバイザーのアドバイスやカウンセリングがなくても、その後の会話、行動が、「それぞれの家庭に合った、それぞれの子供のための家庭教育」を構築していき、構築できた時点で支援は終了する。家庭ノートチェック法とは、パソコンやスマートフォン、タブレットを使って、親子間のコミュニケーションの取り方、様子を記録した家庭ノートを送ってもらい、その様子から分析を重ね、その家庭に合ったコミュニケーションの取り方をアドバイスし、実践してもらうというものである。以下、家庭ノートの例である。保護者と子供の会話について、時間や背景、様子、状況を詳しく書いていただき、それに対してアドバイザーが、このような声かけの方が良いのではないか、このような状況であれば、このような言い方の方が子供には合っているのではないかということを具体的にアドバイスする。どうしてもノートだけでは細かいところが説明し切れない部分もあるため、その場合、電話カウンセリングで状況を詳しくお聞きした上で、さらにアドバイスしていく。家庭教育支援を受けていただくことで、家庭教育の中で、子供の自立心、学力、社会性の向上、生活力を身につけていく効果が期待できる。また、不登校に対しても予防効果が期待できると考えており、実際、家庭教育支援の中で、登校に対してしぶりが見られる傾向の子供が、しぶらずに登校できるようになったなどの効果がある。
 復学支援コースは、電話カウンセリングと家庭ノートチェック、メールカウンセリングを用いた家庭教育支援とアウトリーチ型支援である訪問カウンセリングを組み合わせて復学を目指していく支援をしている。よって、先ほどお話しした家庭教育支援コースで行っている家庭教育支援と同じく家庭に対して支援をしつつ、不登校になっている子供に直接カウンセラーが話を聞いてサポートし、復学を目指していくような支援である。家庭教育支援コースは、復学を目指すというよりも、家庭内のコミュニケーションを整えたいという方に対して行う支援で、復学支援コースは、復学を希望される家庭や子供に対して行う支援である。家庭教育支援コースとの違いとして、復学支援コースでは、家庭ノートチェックは同じだが、電話カウンセリングについては、子供の状況によって24時間体制で親からの相談を受けられるようにしている。電話カウンセリングや、メールカウンセリングを用いながら、状況に合わせて、すぐに家庭の相談を受けられるような体制を取っている。
 復学支援には、不登校になる前の子供の状況を分析していくことから始めている。子供が不登校になった時、そのきっかけだけを解決しても、不登校は解決しない。解決するためには、不登校になる前の子供の課題と不登校になってからの子供の課題を分析した上で、根本の原因を解決する必要がある。ペアレンツキャンプの支援を受けた子供たちの不登校前の課題として、年相応の我慢力が低い、親への依頼心が強い、環境への適応力が低いという傾向が保護者へのヒアリングや家庭ノートから見えてくるので、しっかり分析した上で、子供自身が課題の解決を目指せるよう支援していく必要がある。
 不登校になる前、先ほどの課題が影響して不登校になることで、さらに表面化する課題が出てくる。不登校になりたくないのになってしまった時、子供が不安やストレスを抱え、表面化してしまうという課題・行動が見える。支援中によく見受けられるのが、昼夜逆転の生活になってしまうことや、ネット依存になってしまうことである。家だけで勉強しようと思った時、授業を受けられていない状況で勉強することは難しいため、このような原因で勉強に遅れが出てくること等、不登校になったことで起きた課題を解決する必要が出てくる。
一件ずつアセスメントと必要な支援の組み立てを行った上で復学支援を行うが、私たちが行った支援の中で、必要になるケースが多いと思う支援の大まかな流れを説明する。支援の開始をしてから、しっかりとしたアセスメントを行う。アセスメントの最初は、不登校になった原因やきっかけの分析をする。子供の性格傾向の問題、不登校になった課題の問題、子供自身の自立の問題、学校や家庭等の環境の問題など、どのような原因があるのか分析していく。次に、どのような家庭教育をされてきたか、家庭での会話や性格傾向を親から見てどのように感じているか、学校の先生はどのように感じているかなど、保護者から情報収集をする。そして、子供の性格傾向と不登校になってからの行動を分析していくことで、どのようなアプローチが必要か具体的に考え、組み立てていく。このようなアセスメントをしっかり行った上で、支援を開始していく。支援しながらアセスメントをして、復学までどのような道筋を立てて対応していくかを組み立てていく。アセスメントをした上で、アウトリーチ型の支援が必要と判断をした場に、家へ直接出向いてアウトリーチ型の支援をしていく。その中で、復学に必要な準備を訪問カウンセラーがサポートしていく。アウトリーチ型支援で訪問カウンセラーが必要なケースでは、学校に再び登校する際に不安なことや悩みなどを子供に直接ヒアリングし、組み立てていく。学校との連携が必要である場合は、私達が直接学校まで赴いて、支援の説明や家庭の状況をお話し、学校の先生方との連携をしっかり取った上でサポートしていく。先生方の協力がなければ基本的にはサポートできない部分が大きいため、必ず説明をして納得していただいた上で、学校の先生方の協力を頂き、支援をする。復学を果たした後、登校しているからこそ起こる問題に対してもサポートをする。登校時、子供が一人で朝に起きられないことや、不安になってしまうケースも多いため、朝から家へ伺い、登校前のサポートをすることや、顕著に表れやすい学習面の遅れに対してサポートしていく。学校へ行った後の人間関係の悩みに対してもサポートをしていく。
 これは実際に行ったアウトリーチ支援の中で、家庭の状況の写真であるが、障子を破られる、教科書を破ってしまう等の状況になっているケースがある。このような状況では、保護者様は、どうしてあげたらいいのかというところが一番の悩みになってしまうため、それに対して、私たちはその家庭をしっかり支えていく取組を行っている。
復学において、家の中で学校の荷物がどれだけそろっているか分かっていないことや、絵の具が長期間放置されていて使えないこと等、細かいところまでサポートした上で、復学を目指していく。そして、学校の先生やクラスメイト等にも協力してもらいながら、朝、学校に行く時に寄り添って、サポートして登校まで目指していくような支援を行っている。
 最後に、私たちの不登校支援の成果として、保護者の孤立感の解消、子育てに自信が持てた、保護者が楽になった等の成果が得られている。また。子供の行動としても、暴力が治まる、生活習慣が改善される、復学を果たしたことで、毎日楽しそうに生活している姿が見られるようになる、高校以降の進路まで獲得できる等の成果が見られる。課題としては、個々に合わせた支援であるため、支援の可能な件数が多くはない、専門的な支援が必要になるため、人材を集めることが難しい、民間の支援団体であるため、家庭に経済的な負担がかかる等がある。いじめや重度の発達障害などのケースは、支援対象にするのは難しい。家庭教育に関しての重要性の認知が全国的に広がっていないことも課題である。
 家庭教育支援における民間の支援について、個別案件への支援は得意だが、全体に対しては、教育委員会等が全体を把握しているため、行政からの支援の方が行き届く。そのため、もう少し活性化が必要である。子供の不登校の類型化について、子供を育てている家庭の状況も併せた類型化は進んでいない。子供の類型化だけではなく家庭の類型化も必要だということは、以前より文部科学省と議論を進めている。子供と家庭の類型、例えば、家庭が経済的に貧困な状況で、子供が非行に走ってしまっていることについて、子供の不登校についてはその子供のタイプに合わせた支援を、貧困の家庭であれば福祉的な支援を早急に行う必要がある等、軸を家庭と子供の両方を持つことで、スピード感を持って不登校の支援ができるのではないか。
【座長】  文部科学省の地域における家庭教育支援基盤構築の事業説明、並びにペアレンツキャンプの説明について質問を受ける。その後、議論をする。
【委員】  御発表いただいたような取組をするためには、学校との連携や、行政も含めた、ペアレンツキャンプに対する理解、そのための周知が必要になるかと思う。その点どのように工夫をされているか。
【座長】  ペアレンツキャンプの立てつけ等に関するものとして、行政、学校との連携、広報についての質問があったので、お答えいただく前に、それ以外で関連の御質問があればお受けしたい。
【委員】  相談件数も含めて、年間概ねどのぐらいのケースを取り扱っているか。また、原籍校への復帰率は、全体の相談件数のうち、概ね約何%ぐらいか。
【委員】  支援が難しい場合として、御発表の最後のほうで、いじめや重度の発達障害などのケースが挙げられていたが、そのほかに、難しさがある状況はあるか。
【委員】  3点お聞きしたい。まず、ペアレンツキャンプを利用した場合の費用として、具体的に1回の訪問が幾らかかるか。また、家族が利用を強く希望しているが、本人が頑なに訪問者と会うことを拒んでいる場合の対応をどのようにされているか。最後に、平成4年の有識者会議の報告で不登校はどの子にもどの家庭にも起こり得ることが明示されたが、この報告の内容と、御発表にあった類型化という考えに若干の矛盾はないか。
【発表者】  まず委員からの学校との連携、行政との連携、理解・周知という点についてお答えする。基本的に、個別に一家庭ずつ関わる支援であるため、家庭を通じて学校と連携を取っている。その上で、さらに教育委員会等との連携が必要なケースにおいては、保護者とともに私たちも一緒に出向いてお話をすることとなる。続いて、周知に関しては、学校ごとに支援の説明をして御理解いただき、御協力いただくことに努めている。
 委員から頂いた概ねのケースの数、年間の相談件数について、基本的には年間多くて50件程度となっている。1つの家庭の支援に1年~1年半、状況によっては、さらにそれ以上かかり、不登校の支援に限れば、年間10件満たない程度である。また、相談件数は、メールだけのお問合せを含めると概ね300件はあるかと思う。その上で、お受けできるのは多くて50件であり、なかなか難しい。
 原籍校への復帰について、基本的にはそれが子供の要望であるということもあり、復学できたケースでは、復学先はほぼ100%原籍校である。ただし、私学の場合は、学力面等が理由で、学校との相談の上で転校というケースがある。
 委員から頂いた、難しさがある子供の状況について、資料に記載しているような、いじめや重度の発達障害の場合は、家庭教育の面から影響を与えられる点が少なく、お受けしていないのが現状である。また、ひとり親家庭のケースにおいて、状況によっては支援が難しい場合がある。このほか、経済的な面で支援が難しいという判断をするケースもある。
 委員から頂いた、ペアレンツキャンプの費用について、復学支援コースであれば、1月で4万円頂いている。訪問カウンセリングは、対応の状況によって値段の設定を行うが、1回につき、1万1,000円~3万3,000円である。復学、成果に対しては28万5,000円~65万5,000円の間で報酬を頂いている。
 家庭が利用を強く希望して、子供が頑なに拒んでいるケースについて、基本的に子供へのアプローチが難しいケースにおいては、家庭に対する支援から対応している。その中で様子を見ながら、基本的には諦めず、声をかけるようにしている。あるケースでは、トイレに閉じこもっているような場合に、トイレの外から話しかけて、具体的には遊戯療法というものを用いて、お子さんの趣味に合わせた遊びを一緒にしてリレーションをつくっていくような手法を取るなど、諦めずに支援を行っている。ただし、経済的な負担もあるため、そういった支援が難しい場合は、他の支援のリファー等を考えていく場合があるところ。
 最後に、類型化することの矛盾について、不登校にある状態の類型化は文科省においても挙げられている。その不登校の状態と、家庭の状況はリンクする部分があるのではないかというのが私たちの考えである。経済的な状況等の家庭の状況と子供の状況の縦軸・横軸が交わるところに適切な支援を行うスピード感を持つことで、支援を届けられる数が多くなると思っている。復学を全て目指すというよりは、必要な支援を的確に行うために類型化をする必要があるのではないかという考えである。
【委員】  委員の御質問に重なる部分もあるが、親は復学させたいが本人はさほど復学に積極的ではないというケースにおいて、どちらの意見が支援の対象として念頭にあるか。また、そのようなケースの場合は学校の教職員も復学に積極的と思うが、どのような方法で復学までのサポートをするか。
【発表者】  基本的に、保護者がクライアントという見方をしている。ただし、家庭と子供の両輪で支援を行うのが前提であり、子供が復学を望んでいない状況では、その理由等を子供から直接ヒアリングして、その理由をしっかり家庭にも説明をする必要があると考えている。その説明をした上で必要があれば、学校以外の居場所に導くサポートをしていくことになる。もちろん、家庭へは丁寧に説明を重ねて、御理解いただいた上で、子供の状況を踏まえて支援していくのが私たちの支援である。
 復学の具体的なサポートについて、子供自身にヒアリングをして、何を不安として抱えているか、学校にいざ戻ると考えた時に、例えば、一日過ごすと思ったら何が不安だろうかヒアリングし、その不安について解決できるようなサポートをしている。このため、復学を目指す上では、大体1か月ぐらいはしっかりした準備を行い、週に1度から2度は足しげく通いながらヒアリングを重ね、具体的なサポートも重ねて復学を目指すのが基本的な手法である。
【座長】  続いて文部科学省の家庭教育支援室について御質問等はあるか。
【委員】  坂東市の御紹介を頂いたが、この支援に社会教育主事が関わることのメリットは何か。
【発表者】  家庭教育支援室は、もともと社会教育を前提としている。親の学びを支援し、学んだ親がまた支援する側に回ることを理想型としており、その際に重要な役割を担うのが社会教育主事であると考えている。その中で、社会教育主事にも、家庭教育支援チームに入っていただき、そのような観点の下で進めていただきたいと考えている。
【委員】  社会教育主事というのは大きなポイントであり、子育てする家庭が地域から孤立しているという課題に対して、その家庭への働きかけは大切であるが、実は、地域への働きかけ、地域がその子育て家庭を支えることが必要であり、それを担えるのが社会教育主事ではないかと思っている。
【座長】  議事2の資料4について、これは事務局より今後の取りまとめに向けた論議の参考として出してたものである。委員それぞれのお立場、お考えから、どの部分を深めていくか、あるいは、新たにこういう視点が重要ではないかということについて、自由に御議論いただきたい。事務局からも補足はあるか。
【事務局】  今回で第3回ではあるが、不登校の過去の会議の蓄積の中で、引き続き課題としてあると思われる点や、今後、コロナ禍も見据えて力を入れるべき点を、事務局においてある程度整理した。本日はこれにとらわれずに御議論いただきたい。
【座長】  委員からも先ほど平成4年の報告の話があったが、この有識者会議も30年前くらいから続いている。今回の4度目のこの有識者会議の中では何を深めるか、御自由に御発言いただきたい。
【委員】  方向性の(1)のaについて、「不登校を生まない魅力ある学校づくり」は、書きぶりの問題ではあるが、不登校が生み出されたらいけないんだというメッセージが本人、保護者に届いてしまう危険性を感じる。一言、「魅力ある学校づくり」でいいのではないのかと思う。その観点で、答えを出しにくいものではあるが、未然防止という言い方も、結局、問題行動の中に位置づけられているというニュアンスが感じられてしまう。この点は、委員の方々が闊達にお話しいただく中で、新しい表現に入ることもよいかもしれないと、常に悩みながら考えている。
【委員】  委員の御意見に重ねて言うが、cの 「不登校傾向のある児童生徒の早期発見」とあるが、早期発見は疾患に対する予防という印象が強く、良くないことを未然に抑えるという印象になってしまう。支援ニーズの早期の把握で十分ではないかと思う。
【委員】  (1)のdの項目について、以前、地域の方々が学校に出入りしているところは学級崩壊の数が少ないという報告を聞いたことがある。先生以外の大人、保護者や地域の方々の協力を得ながら、別室を活用して、子供たちが一時的にでも駆け込めるようなスペースや、心のよりどころがあると子供たちにとって非常にありがたいことなのではないかと感じた。
 どうしても学校というと閉鎖的な印象を持たれることがあるし、セキュリティの問題等もあるかと思うが、子供たちが先生以外の大人と触れ合うことで、落ち着くこともあるのでは。このような部分に、地域の人材をうまく活用いただくと、先生方も負担が軽くなるのではないか。そのような信頼関係の上で、学校運営も含めて考えられたら良いのではないかと感じた。
【委員】  3点ほどお話をさせていただきたい。
教育機会確保法の目的自体が、要するに、学校に行かない子供たちに対して何らかの教育の機会をつくっていこうということであると認識している。その意味で、学校のみにこだわらず、学校に行かない子供のある時期を、例えば、フリースクール、適応指導教室・教育支援センター等でどのように受けていくか。子供たちがそういう場所につながるにはどうすればいいかという点から、市町村ごとなどで、公民の連携のための協議体が必要になるのではないか。
 続いて、経済的困難を抱えた不登校の子供については、準市町村教育委員会が生活保護法第6条2項に規定する要保護者に準ずる程度に困窮していると認められる児童生徒や、その家庭等に対する経済的支援があるべきではないだろうか。
 最後に、ICT等を使った不登校支援が増えていることは、望ましいことである。ICTを使う不登校支援について、教育委員会、もしくは、学校長ごとの判断でいいと思うが、ある程度判断基準が幅広くオーソライズされるとよいのではないか。現時点では判断基準が曖昧と感じる。教科学習でないとICTによる出席扱いはなかなか認められない部分があるのではと思っており、その点、幅広い本人支援という理解からの不登校支援について文科省から御通達いただきたい。また、不登校の子供に必ずタブレットを自宅に持って帰っていいよということを徹底いただきたい。
【委員】  まず、この論点案の(1)のbに、教育機会確保法の正しい理解の啓発とあるが、啓発と言うと、一般市民等が対象になるような表現かと思う。その前に、学校の先生方とか教育委員会に浸透していない現状があり、啓発以前に、しっかりその内容について研修をしていただき、内容が現場に浸透していくようにすることが、書かれるべきではないかと思う。
 続いて、最初の論点案には入っていたように思うが、多様な教育の場に対する予算措置について、本会議がフリースクールの検討会議と一緒になったという経緯もある中で、以前のフリースクールの会議では、フリースクールに通う子供たちに、いわゆる義務教育の予算が流れていないという状況についてどういうふうに考えるかというところが入っていたように思う。それと併せて、フリースクールの事業評価や教育の内容の担保、質の評価というところまで含めて議論しなければいけないことも盛り込まれていたと思う。
 最後に、この会議以外で、例えば、私が今属している経済産業省の教育イノベーション小委員会等でも、フリースクールとか多様な教育の場に子供たちが行ったときの予算をどうするかというような議論がどんどん進んでいる。そういう議論の扱いについても意識していきたい。
【委員】  (3)の不登校児童生徒の社会的自立、ここでは中長期的支援というように付けていただき、とても理解できるが、社会的自立という言葉について、長期的にはその子が社会の中で一人の人間として生きていく力につながるかと思うが、すぐ目の前、中長期ではなく短期的に考えた時に、どこを目指して行ったらいいのか悩まれる学校の先生方とか保護者も多いのではないかと感じる。社会的自立について、具体的な中身と言うべきか、学校復帰とか進路だけでなく、例えば、自己肯定感、SOSを出す力も一つかと思うし、あるいは、ソーシャルスキルであるとか、多種あるとは思うが、それも含めて提示することについても問題提起として加えていただきたい。
【委員】  今、委員からのお話に関連するが、中長期な支援の中のbについて、家庭教育支援の取組とこの不登校との関わりに関して、不登校になっている子供たちの多くの部分が、家庭的な要因を抱えているケースも多いと感じる。このような点について、幼少期から含めて、早期の段階での家庭的支援が、不登校への支援につながっていくのではと思う。
 今、教育は教育、福祉は福祉の二本柱が動いているように感じられるが、そこをどう連携を図りながら同時に進めていくのかも大きいと思っており、この点は中長期でなく、今すぐやらなければいけないことではないかと感じている。
【委員】  まず保護者・家庭支援については、私もとても重要な部分だと思っている。鳥取県では、保護者専用の不登校相談電話を設置した。これまでの一般的な相談電話に比べ一気に相談が増加した。保護者は、悩みや困り感を持っており、保護者支援、家庭支援をもっと前面に出してほしい。特に、先ほどもあったが、幼保小の連携として、早い段階で保護者の支援、または保護者の困り感を聞いていくとことが大事だと考える。
 次に、SOSの出し方教育、これは自死対策、いじめ対応で出てきた言葉だと思うが、不登校では子供自身もその理由がよく分からない状況の中でなかなか相談にいくのも迷うところである。子供たちの思いに寄り添ったSOSの出し方教育に取り組んでいかないといけないと思う。
 最後に、出席扱いについて、教育機会確保法を幅広く皆さんが捉えられる中で、この出席扱い等でいろいろ対応に困る部分が現場にある。正しい理解の啓発が必要である。
【委員】  まず、いわゆる中1ギャップの問題を私は指摘しておきたい。これは調査統計上明らかなことですが、小学校までの不登校人口というのは100人に1人で、中学に行ってから、いきなり24人に1人になるという急激な増加が見込まれる。このメカニズムは、はっきりした理由があると私は思う。これまで、単純に、思春期を迎えて葛藤が出るからという雑な説明がされてきたが、間違った説明だと思う。
 数年前に文科省の会議で、文科省の側から指摘があったことであるが、1つの理由は、中学に上がると教師の態度が急にきつくなって、呼び捨てになったり、年功序列を強要されたりとか、意味の分からない校則が増えるとか、そのような抑圧の構造が増えることで不登校が増えているという可能性を検証していただきたい。事実と分かった場合は、それを緩和する措置をとっていただきたい。中1ギャップの解決は、不登校を実質的に減らす、より役に立つブレークスルーになる。
 次に、不登校人口は2001年にピークになっていて、13万7,000人になっているが、その翌年、7,000人減っている。その原因はいろいろ言われており、スクールカウンセラー導入だからとも言われているが、多分、これは違うと思う。考えるに、週5日制が始まったからではないか。生徒の負担が軽くなったことが非常に大きいと思う。
 最近増え始めた理由の一つとして、自治体ごとに週6日制に戻して良いという制度があり、週6日に戻す自治体が増えたことも1つの原因ではないかと思う。こういう検証は統計的にできると思うため、それをすることで、例えば、不登校傾向がある生徒に対しては出席率を緩和するとか、具体的な措置ができると思う。
【委員】  検証というのはキーワードではないかと思う。例えば、特別支援教室、フリースクール、いろんな資源の必要性もあるが、不登校の対応における教員の支援の質向上や、保護者の相談先における不登校に関する相談のスキルの向上が、まだ課題としてあるのではと感じる。
 スクールソーシャルワーカーとして、子供たちに対応していて思うことは、早期の子供たちのつまずきを発見することが「早期発見」だと思う。そのつまずきに対する学校の支援や、子供がどういう反応を示していくかが、実はとても重要。委員のお話で、週5日になって少し和らいだのではないかとか。そうすると、締めつけの部分を少し緩めることによって、そのつまずきがある程度解消される。それがユニバーサルなものであれば、学校教育自体の見直しも必要になる。こういったつまずきへの対応、介入の支援の質と、子供たちの反応は、もっと見ていくべきではと思う。
 教育相談についても同様で、保護者に対して、先ほどペアレンツキャンプの話でもあったような支援のノウハウについて、この蓄積を全体でシェアして、支援の質、相談の質の向上がどうあるべきかを真剣に考える必要があると思う。
 最後に、親との連携について、保護者と学校のパートナーシップがうまく作れているケースについては、改善がとても高いと考えている。実際のケースの中で、親の役割と学校の役割をどのように親に伝えていくか。ナーバスな問題であるが、学校が親の役割を説くと、親はやらなければならないと思ってつらくなってしまうときがある。そういったときに、社会教育が入る意味があるのではないかと思う。
【委員】  まず1つ、先ほど委員がおっしゃった中1ギャップの原因の一つに、中学校になると途端に教師の言葉遣いが乱暴になって怖くなって、それが原因だという点について、現場にいる人間としては、おそらくそういうことはないと思う。中1ギャップの起きる原因は、別のところにあるのではないかと、現場の人間として思う。
それから、もう一点、私が今いる学校は、5、6年前、私が着任する前の年が、不登校の出現率が7.5%ととても高かった。私が着任してからも、何をどうしても、4%から下がらなかった。それから区の研究校も引き受けて、不登校対策のモデル校となり、学校に人を入れていただくとか、体制をしっかり整えることができた。また、とても単純なことではあるが、校内に約30人教員がいるが、不登校の数が多かったときは、意思の疎通がうまくいっていなかった。情報を共有するシステムがうまくいっておらず色んなところで行き違いが起きて、それが嫌になった子供も多かったのではないかと考えた。そこで、情報の共有を徹底する仕組みづくりを学校で行った。加えて、月に一度、地域の方、主任児童委員や民生委員に、不登校の子供たちの情報を共有する「支援委員会」に地域の方にも守秘義務を前提にして出席していただき、情報を共有した。学校ではどうにもならない部分、例えば社会教育による家庭教育等を主任児童委員や民生委員の方に請け負っていただくなど、家庭教育の支援をしていただきつつ、子供にはどうやって学校のほうに足を向けてもらうか知恵を出すなど、こうした取組をしたことで、研究発表した年は1%台まで落ちた。
 とにかく、今、学校でいろんなことをやりたいが、体制が足りない、人が足りないし、教員にしても時間が足りない。条件整備をしっかりやらないと、この不登校の話は、なかなか数字的には落ちていかないのではないかなと思う。
【委員】  今、小学校に勤めているが、休み始めた1~2日は電話連絡、3日目には家庭訪問を行うなど担任と保護者とで連絡を取り合っている。とにかく早期に対応することが、基本的なところではあるが、大事だと思う。長期化し、支援が遅くなってしまうと、本格的に不登校になってしまうと実感している。
 中1ギャップについては、小学校では比較的手厚く、個別に面倒を見てもらえているが、中学校では教科担任制になり50分授業で提出課題も増えるなど、授業や生活の速さ・変化になかなか適応できないことも原因の1つかなと感じている。その点、居場所づくりとして、今、学校には空き教室もあったりするので、そこで指導ができる人材確保について、予算面も含めて今後整備していっていただけると、より良くなるのかと思う。
 また、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等の専門的な方が入ってきてくださっているが、活用状況は学校によって差があると感じている。活用の方法や、つなぎ役の職員を必ず配置するなどの体制づくりもしっかり整備していった方が良いと考えている。
【委員】  中1ギャップについて、どの学校の先生に限らず、誠実に一所懸命対応しておられると思うが、体質として、やはり学校に圧が存在しているというのは、事実だと思う。学校が、快適な空間になれていないというところを検証していく必要があると思う。教員が権力を持って、子供が従順でなければならないみたいな構図を、対等に持ってく体質にしないとまずいのではないか。
 例えば、チームワークとか、心一つにとかいう言葉から外れてしまう子たちがしんどい思いをしてしまう。こうなければならないという感覚を教員が持ちすぎており、そうでなければ社会に出て通用しないというプレッシャーが教員にもかかっている。だからこそ、全体的なものとして、本質を変えていく必要があるという危機感を覚えている。
【委員】  委員のお話にもあった、圧ということについて、本校は高等学校であり、ほぼ全員入学してくる生徒が不登校経験を持っている生徒だが、この学校にあっても、教職員の発想の中に、入学者選抜を経て入学してきている生徒なので、登校ありきという発想は根強いものがある。
 600人生徒がいるうちの150人が、残念ながら完全な不登校状態にある。15%の生徒が、登校を望みながら高校に進学して、結局は不登校になってしまうという状況にある。この15%の生徒は何に苦しんでいるかというと、やっぱりよくよく話を聞いていくと、行きたいのに行けないということ。
 私たちができることは、登校できなくても学ぶことをしっかり継続できること。登校できなかったら全て終わりということではなくて、登校できなくても、登校できない期間は、ほかの方法で学ぶことができ、学んだことをしっかりと卒業認定できる単位認定にしっかり結びつけてあげることではないかと思う。
 学校の現場に圧があるということも事実かと思う。それを乗り越えることは一番難しくもあり、課題であると感じる。
【座長】  私からも話させていただく。ペアレンツキャンプの発表の中で、復学を片方に置きながらも、むしろそれ以上に家庭支援を行い、その中で、親子関係の歯車のかみ合っていないところを調整していくというものがあった。その前提として、アセスメントのような、そもそもどこにその関係のずれがあるか、単に分析するだけではなくて、丁寧に手間暇かけて手当てしていって対応されていた。
 興味深かったのは、相談者も最初は公的なところに相談をしている。その中で、相談先を他に探そうとなった人で、お金を準備できる方は、新たな手段に移っている。これは前回のヒアリングのときの鳥取のお話でもあったが、工夫を尽くしても地域が広すぎて社会資源が十分に準備できないところもあれば、大都市のように集約的に準備できるところもあり、オールジャパンでの教育行政としての考え方において、どのような社会資源を準備するかは難しい点。一律、最低限同じサービスがどこに住んでいても受けられるようにしましょうというのは、現実的には非常に難しいと感じる。
 いずれにせよ、教育機会確保法を巡って様々な議論があるが、法は、まず学校は学校で頑張りなさい、その上で、しんどさ感じる子供に対しては、このように支援しなさい、それに加えて、学校に行けないときに、行けないから全部だめなのではなくて、教育の保障というのを多様な形でやるという内容になっている。
 この一連の大きな流れの中で、それぞれのパートの部分で何ができるか。1つは、社会資源のメニューを増やしていこうという流れで、教育支援センターや、フリースクール・民間、あるいは、夜間中学校、いろんな形での議論がこの間行われてきた。そこには、経済的な理由や距離の理由等で十分に活用できるかという課題もある。
 私が一番思うのは、早期対応はすごく重要であるが、その早期対応をして、例えば、3日目に気づいたときに、先生は何をするのか。その点から、おそらく学校内においてもまだまだばらつきがある。不登校の実態の分析を見ても、分かっていることは、答えは一つではないということ。先ほどのペアレンツキャンプの発表でもアセスメントが言われていたが、本来、その前半部分は学校でできていなければいけないことではないかと思う。
 この法の流れも念頭に置き、既存の制度として学校、公的な相談窓口、そのほかの適材適所の資源という大きな地図を横に置きながら、それぞれの課題はどうあるかを考えていく必要がある。
 この点、令和元年10月の通知は、前回までの不登校の調査研究協力者会議の一定の取りまとめを実践例に落とし込んで、かなり要領よくまとめてある。もちろん、その中には機会確保法のことも謳ってある。しかし、十分その内容が本当の意味で、各学校、関係者の方に腑に落ちているか、新たに付け加えたり、修正したりする必要がある部分はどこかというのを片方に基本として置きながら、この委員会としてどういう取りまとめが可能なのかというのは考えたい。
 最後に、御発言ある方はお願いしたい。
【委員】  小学校からの立場で、お話ししたい。ペアレンツキャンプの14ページに、子供たちの不登校前の課題というのがある。小学校現場でも、こういう課題を持っている子供は増えていると感じる。小学校へ上がる前の幼児教育、または幼児期の家庭教育の支援、その必要性は大事なところと思う。
 我慢力が低いなど、ここに書いてある課題が幼児期の育ちの中で十分解決していけば、少し状況は変わるのではと思う。
【委員】  実態調査の報告の中で、子供たちが最初に誰に相談するかについて、保護者に相談するという比率がとても高かった。私どもは、不登校の二次被害というのを問題にしている。二次被害とは、保護者が子供とどう向き合うかというもので、保護者にはあまりノウハウが蓄積されていない。不登校の保護者はそれぞれ苦しんだノウハウを持っているが、個人の中にしか残らず、全体で共有されない。これは非常に大きな課題である。
 例えば、学校の出席を毎日電話しなければいけないと苦しんでいる保護者は多い。そのようなケースを我々としては減らしたいと思っている。いまだに不登校の保護者の経験が個人の中にしか残らないというのは、すごく残念だなと思う。
【委員】  本日、委員の先生方は学校での圧という表現をされたが、私はもう一歩進んで、親として、フリースクールの校長を経験した者として、学校の中に指導という名の人権侵害が行われているケースがまだあると、残念ながら感じている。教師による暴言、ほかの子と同じスピードで同じことができないときに排除されるとか、皆の前で辱めを受けて学校に行けなくなるというようなケースがまだまだある。そのようなことをきっちり調査して、注意喚起をすることが必要ではないかと思う。
【発表者】  ペアレンツキャンプという名前には、親の合宿という意味が込められている。委員からもあったが、幼児からの教育含め、家庭と学校と地域という3つが重なって成立している部分があると思う。その中で、家庭教育の部分で自立が育まれずに、学校にうまく適応できない子供たちが増えているというのは、支援をしている中ですごく実感しているところである。家庭に対する教育面の支援、社会的な自立という言葉は、委員からもありましたが、難しいところではあるが、そういった支援をもう少し拡充していくということを議論の一つにしていただきたいと思っている。
【座長】  それでは、今日のところは一旦、閉じたいと思う。最後に事務局からあるか。
【事務局】  本日頂いた意見も踏まえて整理し、もう少し深めた内容で今後提示していきたい。
【座長】  以上で、第3回の会議は閉会とさせていただく。
 

―― 了 ――

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課